JP7323972B2 - 眼鏡レンズの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、処理パターンが形成された眼鏡レンズの製造方法に関するものである。
眼鏡レンズは、レンズ基材の表面を覆う様々な層を備えている。例えば、レンズ基材に対して傷が入ることを防止するためのハードコート層、レンズ表面での光反射を防止するための反射防止層、さらにはレンズの水ヤケを防止するための撥水層や、レンズの曇りを防止するための防曇層等である。
また、たとえばピント調節補助機能などを持たせるため、レンズ基材表面に所定の処理パターンが形成された眼鏡レンズが知られている。
また、特許文献1には、眼鏡レンズの表面へのマーキング方法が開示されている。
特開2012-168312号公報 特開2003-246051号公報
上記の処理パターンとしては、例えば、図2に示すような、等方的に均一に配置された多数の円形状の開口部を有するCrなどの金属層からなる処理パターンが知られている。
このような処理パターンは、例えば、レンズ基材上に所定のレジストパターンを形成する工程と、当該レジストパターンが形成されたレンズ基材の全面にCrなどの金属層を形成する工程と、前記レジストパターン及びその上に形成された前記金属層を剥離して前記処理パターンを形成する工程とによって形成することができる。この場合のレジストパターンは、上記処理パターンの開口部を形成するための複数の円形状のドット部を有している。通常、上記処理パターンは、特にその開口部の外観が良好であることを求められることが多く、そのためには、上記レジストパターンにおいても、その外観が良好に形成される必要がある。
上記特許文献1には、インクジェット方式による、眼鏡レンズの表面へのマーキング方法が開示されており、この方法を適用して、レンズ基材表面に上記のレジストパターンを印刷した場合、このレジストパターンを硬化させるため、通常、紫外線照射を行っている。インクジェット方式に用いるインクは、光硬化タイプのものが用いられるため、上記のレジストパターンを印刷後、紫外線照射を行うことによって、レジストパターンの少なくとも表面が硬化して、レジストパターンの各ドット部の形状は保持される。しかしながら、次いで当該レジストパターンが形成されたレンズ基材の全面にCrなどの金属層を蒸着法で形成する場合、蒸着前の真空引き時にインクに含まれている光開始剤、未反応モノマーなどの物質がアウトガスとして発生し、蒸着装置内部に付着して汚してしまうという問題が生じる。
また、上記特許文献2には、印刷物上のUV硬化型インクにUV光を照射後、さらに加熱することにより、UV光照射後も未重合のインクを熱重合させて完全硬化させる方法が開示されているが、この方法を適用したとしても、インク中の未反応物質の揮発はある程度防ぐことが可能であるものの、上述のインクからのアウトガスの発生を十分に防止することはできない。
また、本発明者らの検討によると、印刷したレジストパターンに対して、上記の光照射は行わずに、たとえば加熱処理だけを行うと、ドットサイズの縮小や形状変化が生じることが判明した。
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、インクジェット記録法による印刷直後のレジストパターンの各ドット部のサイズ、形状を保持したままレジストパターンを硬化させ、また蒸着装置内部の汚染も防止することができ、これによって外観の良好な処理パターンが形成された眼鏡レンズの製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するため、レジストパターンの形成にインクジェット記録法を適用し、その印刷されたレジストパターンの硬化方法、硬化条件に着目して鋭意検討した結果、一定の知見を得た。
本発明は得られた知見に基づきなされたものである。すなわち、上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)
処理パターンが形成された眼鏡レンズの製造方法であって、レンズ基材上に、レジストパターンを形成する、レジストパターン形成工程と、前記レジストパターンが形成された前記レンズ基材の全面に非水溶性層を形成する、非水溶性層形成工程と、前記レジストパターン及びその上に形成された前記非水溶性層を剥離して、前記処理パターンを形成する、剥離工程と、を備え、前記レジストパターン形成工程では、インクジェット記録法により、光硬化タイプのインクで前記レンズ基材上に前記レジストパターンを印刷する工程と、印刷された前記レジストパターンに対して光照射を行う光照射工程と、前記光照射工程後、前記レジストパターンに対して、真空下で加熱処理を行う真空加熱処理工程と、を含むことを特徴とする眼鏡レンズの製造方法。
(構成2)
前記インクは、少なくとも、水溶性ポリマーと、(メタ)アクリルモノマーと、光重合開始剤とを含有することを特徴とする構成1に記載の眼鏡レンズの製造方法。
(構成3)
前記光照射工程において、積算照度が140~1200mj/cmの範囲で紫外線照射を行うことを特徴とする構成1又は2に記載の眼鏡レンズの製造方法。
(構成4)
前記真空加熱処理工程における最大到達真空度が5Pa以下であることを特徴とする構成1乃至3のいずれかに記載の眼鏡レンズの製造方法。
(構成5)
前記真空加熱処理工程において、加熱温度が80℃~100℃の範囲で加熱処理を行うことを特徴とする構成1乃至4のいずれかに記載の眼鏡レンズの製造方法。
(構成6)
前記真空加熱処理工程における加熱処理時間は少なくとも30分以上であることを特徴とする構成5に記載の眼鏡レンズの製造方法。
(構成7)
前記レジストパターンが、等方的に均一に配置された複数のドット部を有し、各ドット部の周縁形状は円形状に形成されていることを特徴とする構成1乃至6のいずれかに記載の眼鏡レンズの製造方法。
(構成8)
前記レンズ基材の表面は凸面状であることを特徴とする構成1乃至7のいずれかに記載の眼鏡レンズの製造方法。
(構成9)
前記レジストパターンを形成する前記レンズ基材の最表面にハードコート層を有することを特徴とする構成1乃至8のいずれかに記載の眼鏡レンズの製造方法。
(構成10)
前記非水溶性層は、金属層であることを特徴とする構成1乃至9のいずれかに記載の眼鏡レンズの製造方法。
本発明の眼鏡レンズの製造方法によれば、インクジェット記録法による印刷直後のレジストパターンの各ドット部のサイズ、形状を保持したままレジストパターンを硬化させることができ、また蒸着装置内部の汚染も防止することができ、これによって外観の良好な処理パターンが形成された眼鏡レンズを得ることができる。
本発明の一実施の形態に係る眼鏡レンズの断面図である。 本実施の形態における処理パターンの一部拡大平面図である。 本発明におけるレジストパターン形成工程を説明するための工程図である。 レジストパターン例を示し、(A)は正常なドットパターン例、(B)は正常でないドットパターン例を示す。 真空加熱処理における加熱温度と、金属層形成に用いる蒸着装置での真空引き前後のインク固形分濃度変化との関係を示す図である。 真空加熱処理における加熱温度と、到達真空度との関係を示す図である。 真空加熱炉内でのレンズ載置例を示す模式図であり、(A)は縦置きの状態、(B)は平置きの状態を示す。 (A)は図7(A)の縦置きにした場合の昇温カーブ、(B)は図7(B)の平置きにした場合の昇温カーブを示す。 非水溶性層形成工程を説明するための模式図である。 剥離工程後の眼鏡レンズの断面図である。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳述する。
[眼鏡レンズの構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係る眼鏡レンズの厚み方向の断面図である。眼鏡レンズの構成について、図1を参照して説明する。また、処理パターンを構成する非水溶性層として、金属層を用いる場合を例にとり説明する。
図1に示すように、本実施形態の眼鏡レンズ1は、レンズ基材11を有し、レンズ基材11の第一主面11a上に、ハードコート層12と、処理パターン15aと、反射防止層13、撥水層14とをこの順に有する。図示していないが、さらに防曇層を有していてもよい。
なお、本実施形態の眼鏡レンズ1では、ハードコート層12の表面に上記処理パターン15aが形成されているが、レンズ基材11の第一主面11aの表面に上記処理パターン15aが形成され、その上に上記ハードコート層12を有する実施態様であってもよい。
<レンズ基材>
レンズ基材11は、第一主面11a、第二主面11b、及びコバ面(図示せず)を有する。
レンズ基材11の材質としては、プラスチックであっても、無機ガラスであってもよい。レンズ基材の材質は、例えば、ポリチオウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂等のポリウレタン系材料、ポリスルフィド樹脂等のエピチオ系材料、ポリカーボネート系材料、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート系材料等が挙げられる。
レンズ基材11としては、通常無色のものが使用されるが、透明性を損なわない範囲で着色したものを使用することができる。
レンズ基材11の屈折率は、例えば、1.50以上1.74以下である。
レンズ基材11として、フィニッシュレンズ、セミフィニッシュレンズのいずれであってもよい。
レンズ基材11の表面形状は特に限定されず、平面、凸面、凹面等のいずれであってもよい。
本実施形態の眼鏡レンズ1は、単焦点レンズ、多焦点レンズ、累進屈折力レンズ等のいずれであってもよい。累進屈折力レンズについては、通常、近用部領域(近用部)及び累進部領域(中間領域)が下方領域に含まれ、遠用部領域(遠用部)が上方領域に含まれる。
<ハードコート層>
ハードコート層12は、例えば、無機酸化物粒子とケイ素化合物とを含む硬化性組成物を硬化して得られる。ハードコート層12は、レンズ基材11の材質に応じて組成が選択される。なお、ハードコート層12の屈折率(nD)は、例えば、1.50以上1.74以下である。
<処理パターン>
図2は、本実施の形態における処理パターン15aの一部拡大平面図である。図2に示されるように、本実施形態では、等方的に均一に配置された多数の円形状の開口部15bを有するCrなどの金属層からなる処理パターン15aが形成されている。
処理パターン15aの材質である金属としては、例えば、Cr、Ta、Nb、Ti、Zr、Au、Ag、及びAlの中から選ばれる少なくとも一種の金属を含み、好ましくはCrである。なお、処理パターン15aの材質を金属とすることで帯電防止の効果も発揮される。
<反射防止層>
反射防止層13は、屈折率の異なる膜を積層させた多層構造を有し、干渉作用によって光の反射を防止する膜である。このような反射防止層13は、一例として低屈折率層Lと高屈折率層Hとを多層積層してなる多層構造が挙げられる。低屈折率層Lの屈折率は、波長500~550nmで例えば、1.35~1.80である。高屈折率層Hの屈折率は、波長500~550nmで例えば、1.90~2.60である。
低屈折率層Lは、例えば、屈折率1.43~1.47程度の二酸化珪素(SiO)からなる。また、高屈折率層Hは、低屈折率層Lよりも高い屈折率を有する材料からなり、例えば、酸化ニオブ(Nb)、酸化タンタル(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化イットリウム(Y)、酸化アルミニウム(Al)等の金属酸化物を、適宜の割合で用いて構成される。
<撥水層>
撥水層14は、例えば、フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物を含有する。この撥水層14は、反射防止層13と合わせて反射防止機能を奏するように設定された膜厚を有している。
<防曇層>
上記したように、図1では図示していないが、例えば、上記撥水層14上に、さらに防曇層を有していてもよい。
[眼鏡レンズの製造方法]
次に、本実施の形態に係る眼鏡レンズ1の製造方法について説明する。図3、図9および図10は、上述の構成を有する実施の形態に係る眼鏡レンズ1の製造方法を示す図である。
まず、レンズ基材11上にハードコート層12を形成する。ハードコート層12の形成は、例えば無機酸化物粒子とケイ素化合物とを含む硬化性組成物を溶解させた溶液を用いた浸漬法(ディップ法)によって成膜し、硬化させることで形成する。
次に、レンズ基材11上のハードコート層12上に、水溶性ポリマーを含むレジストパターン3を形成する。本発明では、インクジェット装置を用いてインクジェット記録法によりレジストパターン3を印刷する。
レジストパターン3は、ハードコート層(ハードコート層を形成しない場合はレンズ基材)上の非水溶性層を形成する領域を露出させる。本発明では、レジストパターン3の印刷後には、レジストパターン3に対して、光照射および真空加熱処理を行うことにより、レジストパターン3を形成するインクを硬化させる。これに関して詳しくは後述する。
レジストパターン3は、眼鏡レンズ表面に形成する処理パターン15aの開口部15bに対応するドット部3aを有している。本実施の形態では、レジストパターン3は、等方的に均一に配置された複数のドット部3aを有し、各ドット部3aの周縁形状は円形状である。このような周縁形状が円形状である複数のドット部3aを有するレジストパターン3をレンズ基材表面上に形成する場合に本発明は好適である。複数のドット部3aは、例えば格子状に配置される。本実施形態では、複数のドット部3aは、レンズ基材11またはハードコート層12を有するレンズ基材の一方の主面上全体に形成されている。本発明は、このようにレンズ基材の一方の主面上全体にレジストパターン3が形成される場合に好適である。
ここで、「等方的に均一に配置された」とは、一方向に一定間隔で配置されていることを意味する。また、「一定間隔」とは、各ドット部を構成する、ドット部中心から隣接するドット部中心までの距離が、例えば、平均値±40%以内に含まれる配列であることを意味する。また、「円形状」とは、周囲がまるい形を意味するが、いわゆる真円や楕円も含むものとする。
上記のように、本発明において、レジストパターン形成工程では、インクジェット記録法により、光硬化タイプのインクで前記レンズ基材上に所望のレジストパターンを印刷する工程と、印刷されたレジストパターンに対して光照射を行う光照射工程と、この光照射工程後、前記レジストパターンに対して、真空下で加熱処理を行う真空加熱処理工程とを含む。
図3は、上記したレジストパターン形成工程の工程図である。図3の(A)に示されるように、レジストパターンの印刷では、インクジェット装置2のインクジェットノズル21から複数の液滴22を吐出する。続いて、同図(B)に示されるように、吐出された液滴22は、眼鏡レンズの表面で他の液滴と結合し、1つのドット部3aを形成する。このように複数の液滴22が集合したドット部3aが配列し、レジストパターン3を形成する。
眼鏡レンズ上に、円状のドットを形成する観点から、形成面は疎水性が高い方が好ましく、例えば、プラズマ処理、イオン照射処理、コロナ放電処理、アルカリ処理等の親水化処理が行われていない表面にレジストパターンを印刷することが好ましい。
<インク>
インクジェット記録法に用いられるインクは、後述の剥離工程において水系溶媒を使用する場合には優れた剥離性を得る観点から、及び、インクの吐出安定性の観点から、好ましくは水溶性ポリマーを含み、水系溶媒による優れた剥離性と、硬化性とを得る観点から、より好ましくは水溶性ポリマーと(メタ)アクリルモノマーとを含む。また、本発明では、光硬化タイプのインクを用いるため、インク中には光重合開始剤を含む。
水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらの中でも、水系溶媒による優れた剥離性を得る観点から、ポリビニルピロリドンが好ましい。
水溶性ポリマーの重量平均分子量は、水系溶媒による優れた剥離性を得る観点から、好ましくは100以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上、更に好ましくは1,000以上、更に好ましくは5,000以上であり、そして、好ましくは100,000以下、インクジェット記録法におけるインクの吐出安定性の観点から、より好ましくは30,000以下、更に好ましくは15,000以下である。
水溶性ポリマーの含有量は、インク中、水系溶媒による優れた剥離性を得る観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下、優れた硬化性を得る観点から、更に好ましくは5質量%以下、更に好ましくは4質量%以下である。
(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中でも、レジストパターン形成後の硬化性の観点から、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの組み合わせが好ましい。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタアクリレートから選ばれる少なくとも一種を意味する。
単官能(メタ)アクリリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アルコキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
アルコキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートのアルコキシ基の炭素数は、好ましくは1~4であり、より好ましくは1~3であり、更に好ましくは1又は2である。
ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。アルコキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらの中でも、インクジェット記録法におけるインクの吐出安定性の観点から、アルコキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好ましく、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレートがより好ましく、メトキシトリエチレングリコールモノアクリレートが更に好ましい。
多官能(メタ)アクリレートは、好ましくは二官能(メタ)アクリレートである。二官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中でも、レジストパターン形成後の硬化性の観点から、及び、インクジェット記録法におけるインクの吐出安定性の観点から、ポリエチレングリコールジアクリレートが好ましい。ポリエチレングリコールジアクリレートのポリエチレングリコール部位の平均付加モル数は、好ましくは3以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは9以上であり、そして、このましくは30以下、より好ましくは25以下、更に好ましくは18以下である。
(メタ)アクリレートの含有量は、インク中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、そして、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
単官能(メタ)アクリレートの含有量は、インク中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、そして、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
多官能(メタ)アクリレートの含有量は、インク中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
多官能(メタ)アクリレート/単官能(メタ)アクリレートの質量比は、硬化性の観点から、好ましくは5/95以上、より好ましくは8/92以上、更に好ましくは10/90以上であり、そして、好ましくは40/60以下、より好ましくは30/70以下、更に好ましくは20/80%以下である。
光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤を使用することができるが、水酸基を2以上有する光重合開始剤が好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシー2-メチル-1-プロパンー1-オンが挙げられる。
光重合開始剤の含有量は、インク中、硬化性を高める観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
光重合開始剤の含有量は、(メタ)アクリレートの合計の含有量の100質量部に対して、硬化性の観点から、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。
インクは、レジストパターンの形成性を向上させる観点から、高沸点溶媒を含むことが好ましい。
高沸点溶媒の沸点は、好ましくは150℃以上、より好ましくは160℃以上、更に好ましくは170℃以上、更に好ましくは180℃以上であり、そして、好ましくは350℃以下、より好ましくは330℃以下、更に好ましくは300℃以下である。
高沸点溶媒としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のオキシエチレン又はオキシプロピレン付加重合体;プロピレングリコール等のジオール類;グリセリン等のトリオール類;チオジグリコール;トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等の低級アルキルグリコールエーテル類;トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル等の低級ジアルキルグリコールエーテル類等が挙げられる。これらは単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、プロピレングリコールが好ましい。
高沸点溶媒の含有量は、インク中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
インクは、粘度調整の観点から、水を含むことが好ましい。水としては、例えば、水道水、純水、イオン交換水等が挙げられる。
水の含有量は、インク中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
インクの粘度は、インクジェット記録法によってインクを配置する観点から、好ましくは1mPa・s以上、より好ましくは5mPa・s以上、更に好ましくは8mPa・s以上であり、そして、好ましくは40mPa・s以下、より好ましくは30mPa・s以下、更に好ましくは20mPa・s以下、更に好ましくは15mPa・s以下である。
インクのpHは、好ましくは3.0以上、より好ましくは3.5以上、更に好ましくは4.0以上であり、そして、好ましくは12以下、より好ましくは11以下、更に好ましくは10以下である。
インクのレジストパターン形成表面に対する接触角が、レジストパターンのドット形状を例えばより真円に近づける観点から、好ましくは25°以上、より好ましくは30°以上、更に好ましくは45°以上であり、そして、好ましくは65°以下、より好ましくは60°以下、更に好ましくは55°以下、更に好ましくは53°以下である。なお、接触角は、JIS R 3257:1990の静滴法により測定される値である。
本発明で適用されるインクジェット記録法は、型式や方式が限定されることはなく、連続型であってもオンデマンド型であってもよい。オンデマンド型であればピエゾ方式であってもサーマル方式であってもよい。
印刷条件としては、印刷ヘッドに対するレンズ基材の移動速度、移動方向の解像度、移動方向に垂直な幅方向の解像度、インク液滴のサイズ、インク液滴のドロップ周波数、同一着弾点に滴下するインク液滴数などである。これらの印刷条件は、相互に関連性を有しているため、適宜調整することによって、レジストパターン3の印刷を行う。
形成されるレジストパターン3のドット部3aのサイズは、例えば、300μm~500μm程度である。ドット部3aのサイズは、ノズルからの吐出量を調整することによって、所望のドットサイズに調整することが可能である。
また、インクジェット装置のノズル(図3の符号21参照)とレンズ基材主面(主面が凸面の場合はその頂部)との離間距離は10mm以下とすることが好適であり、特に8mm以下とすることが好適である。この離間距離が10mmを超えると、レジストパターンを形成するレンズ基材の片主面側が凸面である場合、この凸面の周縁領域でのレジストパターンの外観不良が発生しやすい。
インクジェット記録法におけるドット密度は、レジストパターン形成性を向上させる観点から、好ましくは300dpi(dots per inch)以上、より好ましくは400dpi以上、更に好ましくは500dpi以上であり、そして、好ましくは1000dpi以下、より好ましくは900dpi以下、更に好ましくは800dpi以下である。
また、ドットひとつあたりのインク吐出量は、形成されたドットの硬化性を高め、レジストパターン形成性を向上させる観点から、好ましくは600pl(picolitre)以上、より好ましくは1000pl以上、更に好ましくは2000pl以上であり、そして、好ましくは6000pl以下、より好ましくは5000pl以下、更に好ましくは4000pl以下である。
本発明における特徴的な構成は、上記のようにインクジェット記録法によりレンズ基材上に印刷されたレジストパターンに対して光照射を行う光照射工程と、当該光照射工程後、上記レジストパターンに対して、真空下で加熱処理を行う真空加熱処理工程とを実施して、上記レジストパターンを硬化させることである。
次に、上記の光照射工程および真空加熱処理工程についてそれぞれ説明する。
<光照射工程>
上記のようにインクジェット記録法によりレンズ基材上に印刷されたレジストパターンに対して光照射を行う。たとえば、図3(C)に示されるように、レンズ基材11上に印刷されたレジストパターン3に対して紫外線照射装置4を用いて紫外線(UV)等の光照射を行う。これにより、レジストパターン3の少なくとも表面が硬化して収縮を防ぎ、各ドット部3aのサイズを保持できる。
本発明では、光照射工程において、積算照度が140~1200mj/cmの範囲で紫外線照射を行うことが好ましい。
本発明者らは、後述の実施例1と同様にして、ドットサイズ440μmの格子状のドット部からなるレジストパターンを印刷した後、このレジストパターンに対して、波長365nm、積算照度を50~1500mJ/cmの範囲内で変えて紫外線照射を行った。そして、光照射工程に続く真空加熱処理工程後の、レジストパターンの各ドット部の印刷直後に対するサイズ変化を検証した。その結果、積算照度が140~1200mJ/cmの範囲内で光照射を行うと、真空加熱処理を実施してもレジストパターンの各ドット部のサイズが変化しないことが確認された。
光照射に使用する光源波長は、インク中に含まれる光硬化成分、光開始剤の種類によって適宜選択すればよいが、本発明では、例えば230nm~440nmの波長領域であることが好ましい。
<真空加熱処理工程>
上記の光照射工程後、上記レジストパターンに対して、真空下で加熱処理を行う。この真空加熱処理により、レジストパターンのインクの粘度が上昇し、ドット形状を保持しながらインク溶媒が揮発するため、後の蒸着工程(非水溶性層形成工程)で用いる蒸着装置内部の汚染を防止できる。
前述したように、上記の光照射工程だけを実施した場合、ドットサイズは維持できるが、後の蒸着工程での真空引きの際、インクからアウトガス(インク中の光開始剤、未反応モノマーなど)が発生し、蒸着装置のチャンバー内に付着して汚してしまうことになる。光照射工程後に、真空加熱処理を実施することによって、このようなアウトガスの発生を防止して、蒸着装置内部の汚染を防止できる。
また、レンズ基材上に印刷されたレジストパターンに対して、光照射工程は省いて、真空加熱処理だけを実施した場合、印刷直後のレジストパターンの各ドット部のサイズが縮小するとともに、形状変化(形状崩れなど)が発生してしまう。参考までに、図4(A)は本発明による正常なドットパターン例を示し、同図(B)は、真空加熱処理だけを実施した場合のサイズ縮小や形状変化の発生した正常でないドットパターン例を示している。
本発明では、真空加熱処理工程において、加熱温度が80℃~100℃の範囲で加熱処理を行うことが好ましい。
図5は、真空加熱処理における加熱温度と、後の蒸着工程で使用する蒸着装置での真空引き前後のインク固形分濃度変化との関係を示す図である。図5を参照すると明らかなように、加熱温度が80℃以上であれば、真空引き前後のインク固形分濃度変化はほとんど無いことがわかる。つまり、加熱温度が80℃以上であれば、真空加熱処理によってインク中の溶媒等の揮発が十分に行われるため、その後の真空引きによって、インクからのアウトガスの発生を防止できる。
上記のとおり、真空加熱処理工程での加熱温度は80℃~100℃の範囲であることが好ましいが、80℃~90℃の範囲がより好ましい。加熱温度が100℃を超えると、レンズ基材の変色や変形が生じる恐れがある。
上記真空加熱処理工程における最大到達真空度が5Pa以下であることが好ましい。
図6は、真空加熱処理における加熱温度と、到達真空度との関係を示す図であるが、図6を参照すると、図5で説明した真空引き前後のインク固形分濃度変化のほとんど無い条件(加熱温度80℃以上)での到達真空度は5Pa以下であることがわかる。
また、上記真空加熱処理工程における加熱処理時間は少なくとも30分以上であることが好ましい。加熱処理時間が30分未満であると、真空加熱処理が不十分である恐れがある。また、加熱処理時間があまり長くても状態変化はないため、60分以下であることが好ましい。
また、図7は、上記の真空加熱処理を実施する真空加熱炉内でのレンズ載置例を示す模式図であり、(A)はレンズ基材を縦置きにした状態、(B)はレンズ基材を平置きにした状態を示す。また、図8の(A)は図7(A)の縦置きにした場合の昇温カーブ、(B)は図7(B)の平置きにした場合の昇温カーブを示す。なお、図7中の符号1~4は、レンズ基材の設置位置を示し、具体的には図8中に記載している。
図8の(A)と(B)を対比すると、縦置きに比べて平置きは、設置位置によるレンズ基材の昇温速度のバラツキが少ないことがわかる。また、縦置き(図8(A))の場合は、30分加熱処理しても目標温度(例えば80℃)に達していない。
したがって、本発明では、真空加熱処理を実施する真空加熱炉内で、レンズ基材は平置きとすることが好適である。
以上のとおり、インクジェット記録法によりレンズ基材上に印刷されたレジストパターンに対して、本発明による光照射工程および真空加熱処理工程を行ってレジストパターンを硬化させることにより、印刷直後のレジストパターンの各ドット部のサイズ、形状を維持したままレジストパターンを硬化させることができる。また、後の蒸着工程に使用する蒸着装置内部の汚染も防止できる。
上述のレジストパターン形成工程後の、非水溶性層形成工程においては、レジストパターン3が形成されたハードコート層12上に非水溶性層を形成する。
図9は、上記工程の模式図である。図9に示されるように、例えば、蒸着装置5により、非水溶性層として金属層15を蒸着する。金属層15の材質は前述したとおりである。金属層15の膜厚は、例えば1~100nmであり、好ましくは1~50nmである。
上述の非水溶性層形成工程後の、剥離工程では、レジストパターン3を水系溶媒により除去することで、レジストパターン3上に形成された非水溶性層(金属層15)を剥離する。図10は、剥離工程後の眼鏡レンズ1の断面図である。
水系溶媒により、水溶性ポリマーを含むレジストパターン3が除去されることで、レジストパターン3上に形成された金属層15が剥離され、開口部15bと処理パターン15aが形成された眼鏡レンズ1が得られる。レジストパターン3のドット部3a上の金属層15が剥離され、ドット部3aと同一の位置に形成された同一形状の開口部15bが金属層15に形成されることによって、開口部15bを有する処理パターン15aが形成される。
剥離工程で、水系溶媒を使用することで、レンズ表面の浸食を抑制しつつ、処理パターンが形成された眼鏡レンズを得ることができる。
ここで、水系溶媒とは、水を60質量%以上含有する溶媒を意味する。水系溶媒としては水が好ましい。水系溶媒に、水以外に含まれ得る溶媒としては、エタノール、メタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒が挙げられる。
水系溶媒中、水の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
当該剥離工程は、例えば、上記非水溶性層が全面に形成された眼鏡レンズを水系溶媒に浸漬して行う。水系溶媒の温度は、好ましくは15℃以上、より好ましくは20℃以上、そして、好ましくは70℃以下、より好ましくは60℃以下、更に好ましくは55℃以下である。
浸漬時に、超音波照射を行ってもよい。超音波の周波数は、例えば、29kHz以上50kHz以下である。
また、上記剥離工程は、上記のような水系溶媒を用いた湿潤(ウエット)条件下で行ってもよいが、乾燥(ドライ)条件下で行うこともできる。具体的には、例えば、発泡体(メラミン樹脂フォーム、ウレタン樹脂フォームなど)、エラストマー(ゴム、ウレタンエラストマーなど)、布、研磨パッド、又はブラシなどの固体摺洗材を接触させて、レンズ基材の表面を擦る(スクラブ)ことで、レジストパターン及びその上に形成された金属層(非水溶性層)を除去する。例えば、スピンコータのステージにレンズ基材を保持し、レンズ基材を回転させて、乾燥条件下で、上記固体摺洗材を接触させる。この場合、剥離屑が乾燥した状態で発生するため、当該屑を粘着テープ又はエアブロー等の簡単な手段で除去することが可能となる。
本実施形態の眼鏡レンズ1では、上記処理パターン15aがハードコート層12上に形成された眼鏡レンズの表面上に、さらに機能層として、例えば、前記の反射防止層13、撥水層14や、防曇層などを形成する。これらの機能層の材質等に関しては前述したとおりである。これらの機能層の成膜は、例えば、イオンアシスト蒸着等を適用することができる。
なお、上記機能層としては、反射防止層13、撥水層14や、防曇層を挙げたが、これらに限られるものではなく、他の機能層を有する実施態様も本発明に含まれるものとする。
以上説明したように、本発明の眼鏡レンズの製造方法によれば、レンズ基材上に所望のレジストパターンを形成する工程において、インクジェット記録法による印刷直後のレジストパターンの各ドット部のサイズ、形状を保持したままレジストパターンを硬化させることができ、また、レジストパターンが形成されたレンズ基材上に例えば金属層等の非水溶性層を形成する工程において、蒸着装置内部の汚染も防止することができ、これによって外観の良好な処理パターンが形成された眼鏡レンズを得ることができる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
(実施例1)
<インクの調製>
サンプル瓶に、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均付加モル数14、CAS No.26570-48-9)、メトキシトリエチレングリコールアクリレート(CAS No.48067-72-7)及び水を加え、撹拌した。その後、プロピレングリコールを加え、更に撹拌した。さらに、1質量%NaOH水溶液を添加し、pHを調整した。その後さらに、光重合開始剤として、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシー2-メチル-1-プロパンー1-オン(CAS No.106797-53-9)を添加して撹拌し、20質量%のポリビニルピロリドン水溶液(重量平均分子量10,000、CAS No.9003-39-8)を添加し撹拌して、フィルタリングを行って不溶分を取り除き、pH7のインクを得た。得られたインクは、粘度14.5mPa・s、レジストパターン形成表面(後述のハードコート層表面)に対する接触角50°であった。
<レジストパターン形成>
眼鏡レンズ用モノマー(三井化学株式会社製、商品名「MR8」)により製造した眼鏡用レンズ基材の凸面に、ハードコート液(HOYA株式会社製、商品名「HC60S」)にて形成したハードコート層を設けたレンズ基材上に、上記の得られたインクを用いて、ノズル(京セラ株式会社製、商品名「KJ4A」)を装着したインクジェット装置により、9600×600dpiのドット密度で、印字幅108mmで、ドットサイズ(直径)440μmの格子状のドット部からなるレジストパターンを印刷した。各ドット部は円形状に形成されていた。なお、ノズルとレンズ基材の凸面頂部との離間距離は10mmとし、当該レジストパターンは、レンズ基材の片主面(凸面)側のハードコート層上の全面に形成した。
次に、上記のレジストパターンを形成後、紫外線装置(ウシオ電機製、水銀ランプタイプ、型式UVX-01212S1CS01)により、波長365nm、照射量300mJ/cmで照射し、眼鏡レンズ基材上のレジストパターンを硬化した。
続いて、上記の紫外線照射後のレジストパターンに対して、真空下で加熱処理する真空加熱処理を行った。具体的には、真空加熱炉内に、上記の紫外線照射後のレンズ基材(当該基材表面にハードコート層および上記レジストパターンが形成されている)を平置きにしてセットし、炉内を真空引きした後、加熱温度90℃で45分間の加熱処理を行った。なお、この真空加熱処理時の炉内の最大到達真空度は5Pa以下であった。
以上のようにして、眼鏡用レンズ基材上のレジストパターンを硬化させた。
[レジストパターンの各ドット部のサイズ、形状の評価]
上記の真空加熱処理後のレジストパターンの各ドット部のサイズ、形状を、上記のインクジェット装置による印刷直後のレジストパターンの各ドット部のサイズ、形状と対比して評価を行った結果、真空加熱処理後のレジストパターンの各ドット部のサイズ、形状は、印刷直後のレジストパターンの各ドット部のサイズ、形状を維持していた。つまり、インクジェット記録法によりレンズ基材上に印刷されたレジストパターンに対して、本発明の光照射および真空加熱処理を行ってレジストパターンを硬化させることにより、印刷直後のレジストパターンの各ドット部のサイズ、形状を維持したままレジストパターンを硬化させることができることが確認できた。
次に、上記レジストパターン上の基材全面に、蒸着により、両面に夫々SiO層を有するクロム層(以下、単に「クロム層」と呼ぶ。)を形成した。
なお、同様にして100枚のレジストパターンを有するレンズ基材に対してクロム層の蒸着を行ったが、蒸着装置のチャンバー内の汚染は無かった。
次いで、上記のクロム層を形成したレンズ基材をスピンコータのステージに保持し、レンズ基材を回転させて、乾燥条件下で、固体摺洗材(メラミン樹脂フォーム)を接触させて、レンズ基材の表面を擦る(スクラブ)ことで、レジストパターン及びその上に形成されたクロム層を除去した。こうして、前述の図2に示すような開口部を有するクロム層による処理パターンが形成された眼鏡レンズを得た。
本実施例では、レンズ基材上に印刷されたレジストパターンに対して、本発明の光照射および真空加熱処理を行うことにより、上記のように印刷直後のレジストパターンの各ドット部のサイズ、形状を維持したままレジストパターンを硬化させることができるため、上記の処理パターンについても開口部のサイズ、形状等の外観が良好であった。また、上記のように、金属層蒸着に使用する蒸着装置内部の汚染も防止できる。
(比較例1)
実施例1におけるレジストパターン形成において、レンズ基材上に印刷されたレジストパターンに対して、実施例1と同様の光照射だけを行い、続く真空加熱処理を省いたこと以外は、実施例1と同様にして、処理パターンが形成された眼鏡レンズを作製した。
本比較例では、クロム層の蒸着を行った蒸着装置のチャンバー内の汚染が認められた。これは、印刷されたレジストパターンのインク中の溶媒の揮発が不十分であるため、蒸着工程での真空引きの際、インクからアウトガス(インク中の光開始剤、未反応モノマーなど)が発生し、蒸着装置のチャンバー内に付着して汚してしまうことによる。
(比較例2)
実施例1におけるレジストパターン形成において、レンズ基材上に印刷されたレジストパターンに対して、実施例1の光照射を行わずに、続く実施例1と同様の真空加熱処理だけを行ったこと以外は、実施例1と同様にして、処理パターンが形成された眼鏡レンズを作製した。
本比較例では、レンズ基材上に印刷されたレジストパターンに対して、光照射を行わずに、真空加熱処理だけを行ったため、印刷直後のレジストパターンの各ドット部のサイズが縮小するとともに、形状変化が発生した(図4(B)参照)。これが原因で、最終的に形成された処理パターンにおいても開口部のサイズ、形状等の外観の良好なものが得られなかった。
1 眼鏡レンズ
2 インクジェット装置
3 レジストパターン
3a ドット部
4 紫外線照射装置
5 蒸着装置
11 レンズ基材
12 ハードコート層
13 反射防止層
14 撥水層
15 金属層(非水溶性層)
15a 処理パターン
15b 開口部
21 インクジェットノズル
22 液滴

Claims (6)

  1. 処理パターンが形成された眼鏡レンズの製造方法であって、
    レンズ基材上に、レジストパターンを形成する、レジストパターン形成工程と、
    前記レジストパターンが形成された前記レンズ基材の全面に非水溶性層を形成する、非水溶性層形成工程と、
    前記レジストパターン及びその上に形成された前記非水溶性層を剥離して、前記処理パターンを形成する、剥離工程と、
    を備え、
    前記レジストパターン形成工程では、
    インクジェット記録法により、光硬化タイプのインクで前記レンズ基材上に前記レジストパターンを印刷する工程と、
    印刷された前記レジストパターンに対して光照射を行う光照射工程と、
    前記光照射工程後、前記レジストパターンに対して、真空下で加熱処理を行う真空加熱処理工程と、
    を含み、
    前記光照射工程において、積算照度が140~1200mj/cm の範囲で紫外線照射を行い、
    前記真空加熱処理工程における最大到達真空度が5Pa以下であり、
    前記真空加熱処理工程において、加熱温度が80℃~100℃の範囲で加熱処理を行い、
    前記真空加熱処理工程における加熱処理時間は少なくとも30分以上である
    ことを特徴とする眼鏡レンズの製造方法。
  2. 前記インクは、少なくとも、水溶性ポリマーと、(メタ)アクリルモノマーと、光重合開始剤とを含有することを特徴とする請求項1に記載の眼鏡レンズの製造方法。
  3. 前記レジストパターンが、等方的に均一に配置された複数のドット部を有し、各ドット部の周縁形状は円形状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の眼鏡レンズの製造方法。
  4. 前記レンズ基材の表面は凸面状であることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の眼鏡レンズの製造方法。
  5. 前記レジストパターンを形成する前記レンズ基材の最表面にハードコート層を有することを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の眼鏡レンズの製造方法。
  6. 前記非水溶性層は、金属層であることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の眼鏡レンズの製造方法。
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