JP7323085B1 - 積層体、包装体、積層体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

ポリオレフィン系樹脂基材を用いた緻密でバリア性の良好な積層体、包装体、積層体の製造方法を提供することを課題とし、その解決手段は、ポリオレフィン系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、金属層および/または無機化合物層、被覆層をこの順で有する積層体であって、前記被覆層をFT-IR-ATR法で測定して検出される下記ピーク強度P1とP2の比P1/P2の値が3.5以上8.0以下である積層体、である。P1:1,050~1,080cm-1に存在する最大ピークの強度P2:920~970cm-1に存在する最大ピークの強度

Description

本発明は、ポリオレフィン系樹脂基材を用いたバリア性の良好な積層体、包装体、積層体の製造方法に関する。
食品、医薬品、日用品などの包装材料には、内容物の劣化防止のために酸素バリア性や、水蒸気バリア性が求められる。これらバリア性包装材料として、ポリエステル等の樹脂フィルムにアルミニウム等の金属層や、金属酸化物層、さらには保護層を積層したバリアフィルムが用いられてきた。特に、金属酸化物層を積層した場合は、透明フィルムとなるため視認性がよく、食品の包装においては電子レンジ加熱が可能になるなど利便性が高いため、広く用いられている。
一方で、プラスチック製の包装材料は、使用後埋め立てても土壌で分解されなかったり、焼却時に大きな発熱があったりするため、環境負荷が懸念されている。さらに近年では、流出したプラスチックごみによる海洋汚染も大きな問題となっており、世界的にプラスチック製材料の使用量削減、再利用の機運が高まっている。そこで、環境保全の観点から包装材料の回収・リサイクルが提唱されている。
従来の包装材料に使用されるバリアフィルムの基材フィルムは、耐熱性、透明性が高いポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系樹脂や、機械強度に優れるポリアミド系樹脂が使用されてきた。これらのフィルムには、包装材料の製袋加工等で必要なヒートシール性がないため、熱融着可能なポリプロピレン系樹脂と積層して包装材料に使用されている。しかしながら、異素材の積層体はリサイクルする際の分離が難しいため、リサイクル性を高めるために包装材料を同一素材で構成するモノマテリアル化、つまり、ヒートシール性を有するポリプロピレン系樹脂と類似のオレフィン系素材をバリアフィルムの基材として用いる試みがなされている。しかしながら、オレフィン系素材は、ポリエステル系樹脂や、ポリアミド系樹脂と比較して基材自体の酸素バリア性が悪い課題がある。そこで、酸素バリア性を向上させ、包装材料として内容物の保存性を高めるために、被覆層の形成によってバリア性を向上させる方法が検討されてきた(特許文献1、2)。
特開2007-216504号公報 特開2004-203022号公報
特許文献1では、基材上に無機酸化物の蒸着膜と、ガスバリア性塗布膜を設けたガスバリア性フィルムを開示しているが、加工条件が150℃以上と高温であり、ポリエステル系樹脂よりも耐熱性の低いポリオレフィン系樹脂フィルムに適用すると、シワやクラックが発生する課題があった。特許文献2では、ポリプロピレンフィルムに蒸着層と複合被膜を積層して、包装材料に用いることができる蒸着フィルムを開示しているが、内容物の劣化を抑制するほど緻密に硬化していないためにバリア性を得るには十分ではなく、改善の余地があった。
本発明の課題は、ポリオレフィン系樹脂フィルム上に、金属層および/または無機化合物層と、被覆層を積層した、緻密でバリア性の良好な積層体、包装体、積層体の製造方法を提供することにある。
本発明の好ましい一態様は以下の通りである。
(1)ポリオレフィン系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、無機層を有する積層体であって、前記1層以上の無機層は金属層および/または無機化合物層を有し、前記積層体の少なくとも一方の最表層(以下、被覆層という)をFT-IR-ATR法(全反射フーリエ変換赤外分光法)で測定して検出される下記ピーク強度P1とP2の比P1/P2の値が3.5以上8.0以下である積層体。
P1:1,050~1,080cm-1に存在する最大ピークの強度
P2:920~970cm-1に存在する最大ピークの強度
(2)被覆層が、水溶性樹脂と金属アルコキシドの加水分解物および/またはその重縮合物を含む(1)に記載の積層体。
(3)被覆層をFT-IR-ATR法で分析して検出される下記ピーク強度P1とP2の比P1/P2の値について、120℃1分熱処理した前後の変化量Δ(P1/P2)が-0.5以上0.5以下である(1)または(2)に記載の積層体。
(4)ポリオレフィン系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、1層以上の無機層を有する積層体であって、前記1層以上の無機層は金属層および/または無機化合物層を有し、前記積層体の少なくとも一方の最表層(以下、被覆層という)はビニルアルコール系樹脂に由来するセグメント、多糖類に由来するセグメント、及びアクリルポリオール樹脂に由来するセグメント、より選ばれる1種以上のセグメント、並びに、Si-O結合を有するセグメント、に加え、ケイ素Siを除く金属元素Mを含み、前記被覆層厚みの中央部において、以下の測定条件とした飛行時間型2次イオン質量分析計(TOF-SIMS)により測定される、金属元素Mに由来するフラグメントイオンのピーク強度mと、Si-O結合を有するセグメントに由来するフラグメントイオンのピーク強度sの比率m/sが、0.05以上10.00以下である積層体。
<測定条件>
一次イオン種 :Bi(2pA、50μs)
加速電圧:25kV
検出イオン極性:positive
測定範囲 :100μm×100μm
分解能 :128×128
エッチングイオン種:O2+(2keV、170nA)
エッチング面積:300μm×300μm
エッチングレート:1sec/cycle
(5)前記被覆層に含まれる金属元素Mが、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、のうちの少なくとも1種の金属元素を含む、(4)に記載の積層体。
(6)前記被覆層厚みの中央部において、飛行時間型2次イオン質量分析計(TOF-SIMS)により測定される、炭素に由来するフラグメントイオンのピーク強度cと、Si-O結合を有するセグメントに由来するフラグメントイオンのピーク強度sの比率c/sが、0.015以上0.650以下である、(1)から(5)のいずれかに記載の積層体。
(7)熱機械分析(TMA)により測定される主配向軸方向の121℃における応力をSF121℃、主配向軸方向の145℃における応力をSF145℃としたときに、SF145℃-SF121℃≦2.50MPaを満たす(1)から(6)のいずれかに記載の積層体。
(8)主配向軸方向の145℃におけるtanδが0.25以下である、(1)から(7)のいずれかに記載の積層体。
(9)主配向軸方向の破断点伸度をTとし、該積層体を130℃で10分間熱処理した後に測定される主配向軸方向の破断点伸度をT130としたとき、T/T130の値が1.20以下である(1)から(8)のいずれかに記載の積層体。
(10)前記被覆層は以下の測定条件とした陽電子消滅法で求めた空孔の自由体積半径が0.260nm以下である、(1)から(9)のいずれかに記載の積層体。
<測定条件>
試料前処理:積層体を15mm×15mmのシリコンウェハに貼り付けて、25℃で真空脱気する。
陽電子線源:22Naベースの陽電子消滅
γ線検出器:BaF製シンチレータと光電子増倍管
ビーム強度:3keV
測定温度:25℃
測定雰囲気:真空
総カウント数:約5,000,000カウント。
得られた陽電子消滅寿命曲線に対して、非線形最小二乗プログラムPOSITRONFITで3成分解析を行って、消滅寿命の小さいものからτ1、τ2、τ3とする。
最も長い平均消滅寿命τ3から、下記式を用いて空孔の自由体積半径R3(nm)を算出する。
τ3=(1/2)[1-{R3/(R3+0.166)}+(1/2π)sin{2πR3/(R3+0.166)}]-1
(11)前記ポリオレフィン系樹脂フィルムがポリプロピレンを含む(1)から(10)のいずれかに記載の積層体。
(12)前記被覆層の厚さが200nm以上600nm以下である、(1)から(11)のいずれかに記載の積層体。
(13)前記金属層または無機化合物層がアルミニウムを含む(1)から(12)のいずれかに記載の積層体。
(14)前記積層体の水蒸気透過率が1.0g/m/24hr以下、かつ酸素透過率が1.0cc/m/24hr以下である(1)から(13)のいずれかに記載の積層体。
(15)前記金属層または無機化合物層が、ポリオレフィン系樹脂フィルムに直接接している(1)から(14)のいずれかに記載の積層体。
(16)(1)から(15)のいずれかに記載の積層体を有する包装体。
(17)ポリオレフィン系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に無機層を有する積層体の、無機層を有する面に被覆層を形成する製造方法であって、水溶性樹脂と金属アルコキシドの加水分解物および/またはその重縮合物を含む塗剤と塗布する工程、および乾燥する工程を含み、被覆層をFT-IR-ATR法(全反射フーリエ変換赤外分光法)で測定して検出される下記ピーク強度P1とP2の比P1/P2の値が3.5以上8.0以下である積層体の製造方法。
P1:1,050~1,080cm-1に存在する最大ピークの強度
P2:920~970cm-1に存在する最大ピークの強度
(18)ポリオレフィン系樹脂フィルムおよび1層以上の無機層を有する積層体の、無機層側の少なくとも一方の最表層に、ケイ素アルコキシド、ケイ素アルコキシドの加水分解物、及びケイ素アルコキシドの加水分解物の重縮合物より選ばれる1種以上、ビニルアルコール系樹脂、多糖類、及びアクリルポリオール樹脂、より選ばれる1種以上の樹脂、並びにケイ素Siを除く金属元素Mを含有する化合物を含む塗剤を塗布する工程、および乾燥する工程を含み、前記塗剤を塗布・乾燥して得られた膜に対し、飛行時間型2次イオン質量分析計(TOF-SIMS)により測定した、金属元素Mに由来するフラグメントイオンのピーク強度mと、Si-O結合を有するセグメントに由来するフラグメントイオンのピーク強度sの比率m/sが、0.05以上10.00以下である、積層体の製造方法。
(19)ポリオレフィン系樹脂フィルムおよび1層以上の無機層を有する積層体の、無機層側の少なくとも一方の最表層に、Si(OR)で表されるケイ素アルコキシド、Si(OR)で表されるケイ素アルコキシドの加水分解物、及びSi(OR)で表されるケイ素アルコキシドの加水分解物の重縮合物より選ばれる1種以上、ビニルアルコール系樹脂、多糖類、及びアクリルポリオール樹脂、より選ばれる1種以上の樹脂、並びにケイ素Siを除く金属元素Mを含有する化合物を含む塗剤を塗布する工程、および乾燥する工程を含む(17)または(18)に記載の積層体の製造方法。
R:アルキル基
(20)前記塗剤を塗布する工程、および乾燥する工程を経てして得られた膜に対し、飛行時間型2次イオン質量分析計(TOF-SIMS)により測定した、炭素に由来するフラグメントイオンのピーク強度cと、Si-O結合を有するセグメントに由来するフラグメントイオンのピーク強度sの比率c/sが0.015以上0.650である、(17)から(19)のいずれかに記載の積層体の製造方法。
本発明によれば、ポリオレフィン系樹脂フィルム上に、金属層および/または無機化合物層と、被覆層を積層した、緻密でバリア性の良好な積層体、包装体、積層体の製造方法を提供することができる。
本発明の積層体の構成を示す断面概略図である。 本発明の被覆層をFT-IR-ATR法で分析して得られるIRスペクトルの一例である。
以下、本発明の積層体、包装体、積層体の製造方法の好ましい一態様についてさらに詳しく説明する。
本発明におけるポリオレフィン系樹脂フィルムは、オレフィン系炭化水素を主構成単位とする樹脂を主成分とするフィルムである。主構成単位とは、樹脂に含まれるモノマー単位のうち最も含有量(個数単位)の多いものをいい、主成分とは、構成するすべての成分の中で最も含有量(質量%)の多いものをいう。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレンの他プロピレンや4-メチル-1ペンテンなど側鎖にアルキル基を有するα-オレフィンの重合体およびこれらの共重合体、または、α-オレフィンとアクリル酸、C=C結合含有カルボン酸、C=C結合含有カルボン酸塩あるいはC=C結合含有カルボン酸アルキルエステル等を共重合して得られる共重合体、ノルボルネンやシクロジエンの重合体およびこれらの重合体であり、単層であっても複数層であってもよい。これらの中でも、比較的安価であることから、ポリエチレンまたはポリプロピレンを含むことが好ましく、耐熱性の点でポリプロピレンを含むことがより好ましく、同様の観点でポリプロピレンを主成分とすることがさらに好ましい。また、フィルムは未延伸であっても、延伸されていてもよいが、熱寸法安定性の観点から二軸延伸されていることが好ましい。すなわち、二軸配向ポリオレフィン系樹脂フィルムであることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂フィルムは、融点が150℃以上であることが好ましい。融点を150℃以上とすることで、金属酸化物を形成したり、包装材構成に加工したりする工程の熱による熱負けを防止し、加工後の耐熱性も高くなるため、バリア性の劣化を抑制できる。なお、フィルムの融点は、DSC(示差走査熱量測定)で以下の方法で測定することができる。示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製EXSTAR DSC6220)を用いて、窒素雰囲気中で3mgの試料を30℃から260℃まで、昇温速度20℃/分で昇温し、次いで、260℃で5分間保持した後、20℃/分の条件で30℃まで降温する。さらに、30℃で5分間保持した後、30℃から260℃まで20℃/分の条件で再昇温し、この再昇温時に得られる吸熱カーブのピーク温度を表層の樹脂組成物の融点とする。なお複数のピーク温度が観測できる場合には最も高温の温度を表層の樹脂組成物の融点とする。
前記ポリオレフィン系樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)は50℃以下であることが好ましい。本態様とすることにより、低温においてもフィルムの柔軟性が高くなり、包装体としたときに低温でも硬くなることがなく、広い温度範囲で安定した使用が可能となる。
ポリオレフィン系樹脂フィルムの厚さは、3μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下がより好ましく、8μm以上30μm以下がさらに好ましい。フィルムの厚さを3μm以上とすることで支持体としての剛性を保つことができ、100μm以下とすることで、包装材料としての柔軟性を維持し、追従性が向上するため好ましい。なお、ポリオレフィン系樹脂フィルムの厚さは実施例に記載の方法で求めるものとする。
また、ポリオレフィン系樹脂フィルムは表面が平滑であることが好ましい。表面平滑性は、ISO25178(2012)で定義される算術平均高さSaで表すことができ、Saは50nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましい。Saは、非接触の表面観察装置、例えば株式会社日立ハイテクサイエンス製走査型白色干渉顕微鏡で測定することができ、本発明においてSaは実施例に記載の方法で求めるものとする。表面を平滑にすることで、表面に積層する無機酸化物層の欠点を減らすことができ、良好な無機酸化物層とすることができ、バリア性を向上させることができる。
本発明における積層体は、ポリオレフィン系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に無機層を有する積層体であって、前記無機層は金属層および/または無機化合物層を有することが好ましい。
前記金属層および/または前記無機化合物層は、周期表の2族から14族(ただし炭素を除く)より選ばれる1種以上の元素を含み、無機化合物層はさらに、酸素、窒素の少なくとも1種を含む層であることが好ましい。これらの中でも加工コストやガスバリア性の観点から、金属層はアルミニウムを含有することが好ましく、アルミニウムを主成分とすることがより好ましい。また、同様の観点から、前記無機化合物層は少なくともアルミニウム、マグネシウム、チタン、スズ、インジウム、及びケイ素より選ばれる1種以上を含むことが好ましく、ケイ素またはアルミニウムを含むことがより好ましい。好ましい無機化合物層としては、例えば、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウムが挙げられる。さらに、前記無機酸化物層において、周期表の2族から14族(ただし炭素を除く)の元素の総和に占めるアルミニウムの割合が50atomic%以上であることが好ましい。
金属層を有する場合、前記金属層の厚さは、5nm以上500nm以下であることが好ましく、10nm以上100nm以下であることが好ましい。厚さを5nm以上とすることで、バリア性を向上することができ、500nm以下とすることで、成膜中に基材が熱負けすることを抑制できるので好ましい。
無機化合物層を有する場合、前記無機化合物層の厚さは、2nm以上50nm以下が好ましく、2nm以上20nm以下がより好ましく、4nm以上10m以下がさらに好ましい。厚さを1nm以上とすることで無機化合物層のピンホールなどの欠陥を減らすことができ、50nm以下とすることでクラックを抑制することができ好ましい。
なお、金属層や無機化合物層の厚さは実施例に記載の方法で求めることとする。
本発明の積層体は、金属層および/または無機酸化物層が、ポリオレフィン系樹脂フィルムの表面に直接接していることが好ましい。本発明において「直接接している」とは、ポリオレフィン系樹脂フィルムと無機酸化物層の間に他の層が存在しない態様をいう。このような態様とすることにより、積層体の製造コストやリサイクル性が向上する。
本発明における被覆層とは、前記積層体の少なくとも一方の最表層をいい、金属層および/または無機化合物層の、ポリオレフィン系樹脂とは反対側の面に積層された層であることがより好ましい。前記被覆層は水溶性樹脂と、金属アルコキシドおよび/または金属アルコキシドの加水分解物とを含む層であることが好ましい。
被覆層の水溶性樹脂は、ビニルアルコール系樹脂に由来するセグメント、多糖類に由来するセグメント、及びアクリルポリオール樹脂に由来するセグメント、より選ばれる1種以上のセグメントを含むことが好ましい。ビニルアルコール系樹脂に由来するセグメント、多糖類に由来するセグメント、及びアクリルポリオール樹脂に由来するセグメントを含む樹脂は、ビニルアルコール系樹脂、メチルセルロース等の多糖類、アクリルポリオール系樹脂などが好ましく挙げられるが、酸素バリア性をより向上できる点から、ビニルアルコール系樹脂が好ましい。ビニルアルコール系樹脂としては例えば、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、変性ポリビニルアルコール等が挙げられ、これらの樹脂は単独で用いても、2種以上の混合物であってもよい。ビニルアルコール系樹脂の平均分子量(JIS K 6726(1994)に準拠)は、500以上3,000以下が好ましい。分子量が小さい場合、層中でポリマーが固定されにくく、バリア性が低下する場合がある。
ビニルアルコール系樹脂は、一般に、ポリ酢酸ビニルをけん化して得られるものであり、酢酸基の一部をけん化して得られる部分けん化であっても、完全けん化であってもよいが、けん化度が高い方が好ましい。けん化度(JISK 6727(1994)に準拠)は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上である。けん化度が高いと、立体障害の大きい酢酸基が少なく、被覆層の自由体積が小さくなるとともに、樹脂の結晶化度が上がるため、バリア性向上に有利になり好ましい。
本発明の変性ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリビニルアルコールに異なる化学構造の単量体を化学反応させたもの、または異なる化学構造の単量体を共重合させたものを指す。変性ポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸ビニル、プロピオンビニル等のビニルエステル系、カルボン酸系、メタアクリル酸エステル系、メチルビニルエーテル等のビニルエーテル系、グリコール系、などが挙げられる。例えば、環状構造中にカルボニル基を有する環式化合物構造を含有する変性ポリビニルアルコール系樹脂を用いることができる。カルボニル基を有する環式化合物構造を有することで、樹脂自体の疎水化と、カルボニル基による樹脂周囲の相互作用によって緻密な構造の膜となり、被覆層の耐水性が向上し、水蒸気バリア性や耐湿性を向上することができる。環状構造は、三員環以上( 例えば、三~六員環)であれば特に限定されるわけではなく、また環状構造内に例えば炭素以外の窒素、酸素、硫黄、リンなどのヘテロ元素等を有する複素環のような環式化合物構造であってもよい。また、この環式化合物構造を有する部位は、ビニルアルコール系樹脂における主鎖や側鎖、または架橋鎖のうちいずれに存在していてもよい。これら環状構造中にカルボニル基を有する環式化合物構造として、具体的には例えば環状エステルであるラクトン構造や環状アミドであるラクタム構造が挙げられ、これらは単独であっても、2種以上を含んでいてもよく、特に限定されるものではないが、好ましくはラクトン構造である。ラクトン構造であると、高温熱水処理や後述するシリコンアルコキシドの加水分解に使用する酸触媒に対し安定でありガスバリア性が維持しやすい。なお、カルボニル基を有する環式化合物構造は、変性ポリビニルアルコール系樹脂の主鎖に組み込まれていることが好ましい。側鎖に環式化合物構造を有する場合は立体障害により被覆層の自由体積が大きくなるためバリア性が低下する場合があるが、主鎖の一部に環式化合物構造を有する場合は立体障害を小さくでき、被覆層の自由体積も小さくなるためバリア性向上に有利になり好ましい。
前記被覆層に含まれるビニルアルコール系樹脂に由来するセグメント、多糖類に由来するセグメント、及びアクリルポリオール樹脂に由来するセグメント、については、以下の方法で分析することができる。
フィルム片を重水素化イソプロパノールへ浸漬し、被覆層組成物を溶媒に溶解させる、または被覆層をスパチュラ等を用いて物理的に削る。被覆層が溶解したかどうか、または被覆層を削り取れたかは、後述する膜厚み評価方法と同様に被覆層の膜厚みを測定することで確認できる。次いで、溶媒に溶解させた試料を液体NMRで、または削り出した試料を固体NMRで、13Cについて分析し、各ピークを帰属することで各セグメントが含まれているかを確認できる。
前記金属アルコキシドは、Si-O結合を有するセグメントとなる、Si(OR)で表されるシリコンアルコキシド、シリコンアルコキシドの加水分解物、及びシリコンアルコキシドの加水分解物の重縮合物より選ばれる1種以上、および、一般式 M(OR)で表される。式中nは自然数であり、Mは金属原子、例えば、チタン、アルミニウム、ジルコニウムなどであることが好ましい。ここでは、Rはアルキル基であり、特に炭素数1~4の低級アルキル基が好ましい。とりわけ、反応性と安定性、コストの観点から例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランを好適に用いることができ、これらは単独であっても、2種類以上の混合物であってもよい。これら金属アルコキシドは、ネットワークを形成するために加水分解したり、重縮合したりしていてもよい。
金属アルコキシドの加水分解および/または重縮合は、水、触媒、有機溶媒の存在下で進めることができる。反応に使用する水は、Si(OR)および/またはM(OR)のアルコキシ基に対して0.8当量以上5当量以下であることが好ましい。水の量を0.8当量以上とすることで、十分に加水分解を進行させてネットワークを形成できるため好ましい。水の量を5当量以下にすることで、加水分解進行度を調整してランダムなネットワーク形成を抑制でき、膜の自由体積を小さくしてバリア性が向上するため好ましい。
金属アルコキシドの反応に使用する触媒は、酸触媒であることが好ましい。酸触媒の例としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、酒石酸等が挙げられ、特に限定されるものではない。通常、金属アルコキシドの加水分解および重縮合反応は、酸触媒であっても塩基触媒であっても進めることができる。酸触媒を用いた場合、系中のモノマーは平均的に加水分解されやすく、直鎖状やネットワーク構造で縮合が進みやすい。一方、塩基触媒を用いた場合は、同一分子に結合したアルコキシドの加水分解・重縮合反応が進みやすい反応機構となるため、反応生成物は自由体積が大きく空隙の多い粒状になりやすい。膜中の空隙は、水蒸気や酸素の透過経路となるため、酸触媒を用いることが好ましい。触媒の使用量は、金属アルコキシド総モル量に対して、0.1モル%以上0.05モル%以下であることが好ましい。
金属アルコキシドの反応に使用する有機溶媒は、水および金属アルコキシドと混合可能なメチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール等のアルコール類を用いることができる。
なお、金属アルコキシドの重縮合物として、市販のシリケートオリゴマーやポリシロキサンを用いることもできる。シリケートオリゴマーやポリシロキサンは単独で用いても、低分子の金属アルコキシドと混合して用いてもよいが、過剰な架橋によるクラック発生を抑制するため、低分子の金属アルコキシドと混合して用いることが好ましい。なお、シリケートオリゴマーやポリシロキサンを使用する場合も、直鎖状やネットワーク構造のものを選定すると、膜の自由体積が小さくなり、バリア性が向上しやすく好ましい。
前記被覆層に含まれる金属アルコキシドは、フィルム表面をFT-IR-ATR法を用いて分析し、各ピークを帰属することでSi-O結合を有するセグメント、およびM-O結合が含まれているかを確認できる。
本発明の被覆層は、前記水溶性樹脂と、前記金属アルコキシドの加水分解および/または重縮合物を混合して得られる塗剤を、金属層および/または無機化合物層に塗布・乾燥して得ることができる。被覆層に含まれる樹脂と金属アルコキシドの加水分解物および/またはその重縮合物の比率は、金属アルコキシドの中心原子が完全酸化した場合の質量(SiO、MOの換算質量)と樹脂の質量比率で、樹脂/金属アルコキシドの酸化物の換算質量=15/85~85/15の範囲が好ましく、20/80~65/35の範囲がより好ましく、20/80~40/60の範囲がさらに好ましく20/80~50/50の範囲が特に好ましい。この比率を15/85以上とすることで、過剰量の金属アルコキシドの加水分解物および/または重縮合物成分によって膜が脆弱化してクラックが発生することを抑制でき、好ましい。この比率を85/15以下とすることで、金属アルコキシドの加水分解物および/または重縮合物のネットワークで樹脂を固定化し、水蒸気バリア性の低下を抑制することができ、好ましい。同様の観点から、前記被覆層厚みの中央部において、飛行時間型2次イオン質量分析計(TOF-SIMS)により測定される、炭素に由来するフラグメントイオンのピーク強度cと、Si-O結合を有するセグメントに由来するフラグメントイオンのピーク強度sの比率c/sが0.015以上0.650以下であることが好ましい。なお、被覆層が最表面に露出している状態であれば特に前処理は必要ないが、被覆層上に他の層が形成されている場合は、各層の膜厚み分をアルゴンイオンビーム等の各種イオンでエッチングしたり、薬液処理して除去したりしてから分析することができる。測定方法の詳細は後述するm/sの測定と同様である。
本発明の被覆層は、FT-IR-ATR法で測定して検出されるピーク強度P1とP2の比P1/P2の値が3.5以上8.0以下であることが好ましく、4.0以上6.5以下であることがより好ましい(ただし、P1:1,050~1,080cm-1に存在する最大ピークの強度、P2:920~970cm-1に存在する最大ピークの強度を示す。なお、ピーク強度とは、ピーク位置における吸光度(単位無し)である)。FT-IR-ATR法では、表面の被覆層の特徴をとらえることができ、P1は反応生成物であるSi-O-Siを示し、P2は反応原料であるSi-OHの量を示す。したがって、ピーク強度のP1とP2の比P1/P2は、金属アルコキシドの重縮合が進行するほど大きくなる。金属アルコキシドの重縮合反応が進行すると、末端のOHが減少して強固な膜となり、バリア性が向上するとともに、包装材料としてレトルト処理される際の耐湿熱性も向上する。P1/P2を3.5以上にすると、末端OHが減少して強固な膜となっておりバリア性、耐湿熱性に優れる層とすることができる。P1/P2を8.0以下にすることで、膜の収縮によるクラックや脆化を抑制することができ、好ましい。なお、P1、P2は実施例に記載の方法で求めることとする。
FT-IR-ATR法で測定して検出されるピーク強度P1とP2の比P1/P2を好ましい範囲にするためには、金属アルコキシドの反応を十分に進行させる必要がある。金属アルコキシドの重縮合は脱水反応であるため、加熱によって進行させることができるが、本発明の積層体を構成するポリオレフィン系樹脂フィルムは、従来のポリエステル系樹脂と比較して耐熱性が低いため、反応を十分に進行させることが難しい課題があった。発明者らは鋭意検討した結果、低温でネットワークを形成できる成分を混合することによって、低温の加工でも適切な特性の膜を得ることに成功した。また、P1/P2を3.5以上8.0以下に調整することで、後工程におけるバリア性の劣化も抑制できることを見出した。本発明の積層体を包装材料として使用する場合、印刷や製袋の工程を通るため、加熱されたり、圧力がかかったりする。このとき、適度にネットワークを構成した被覆は保護膜としても機能でき、好ましい。一方で、たとえばP1/P2が3.5未満であると、未反応の金属アルコキシドが多いため、被覆層が硬化できておらずキズが入ってバリア性が劣化しやすかったり、加工条件によっては未反応の金属アルコキシドが硬化収縮し、バリア劣化したりする。一方、P1/P2が8.0を超える場合は、被覆層が脆化してしまい、貼合時の圧力や搬送張力によってクラックが発生しやすくバリア性が劣化することがある。
本発明の被覆層の、FT-IR-ATR法で測定して検出されるピーク強度P1とP2の比P1/P2の値は、120℃で1分間熱処理した前後での変化量Δ(P1/P2)が-0.5以上0.5以下であることが好ましい。ここで、変化量Δ(P1/P2)は熱処理後のP1/P2から熱処理前のP1/P2を差し引いた値とする。120℃で1分間熱処理とは、23℃50%RHの実験室環境下で、設定温度120℃で10分以上安定した状態のオーブン(例えばエスペック株式会社製 安全扉付き恒温器セーフティオーブンSPHH-201)に投入して1分後に取り出す処理をいう。本発明の積層体は、印刷やフィルム貼合、製袋などの後加工で加熱される工程がある。これらの加熱によって被覆層の金属アルコキシドの反応が大きく進むと、硬化収縮や脆化によってクラックが発生し、バリア性が低下するおそれがある。したがって、積層体の被覆層は熱に対する安定性が要求される。本発明の被覆層を120℃で1分間熱処理した前後でのFT-IR-ATRのピーク比率の変化量Δ(P1/P2)は、加熱したときの反応進行度合いを示す指標であり、この値が小さいほど熱に対して安定であるといえる。-0.5以上0.5以下とすることで、後工程の加熱でも安定した特性を得ることができ、好ましい。十分に安定した層とするためには、前述の方法によって反応を適切に進行させておくことで達成できる。
本発明の好ましい態様の一つとしては、被覆層中に2種以上の金属アルコキシドおよび/またはその重縮合物を含む例が挙げられる。被覆層を形成する金属アルコキシドの加水分解物および/またはその重縮合物は、前述の通り、液の安定性と反応性のバランスから、シリコンアルコキシドの加水分解物またはその重縮合物とすることが好ましい。しかしながら、シリコンアルコキシドの安定性ゆえに、十分に反応を進行させるには十分な熱エネルギーが必要となる。そこで、反応性の高い金属アルコキシドM(OR)を混合することで、適度な反応性と塗液の安定性を両立出来ることを見出した。反応性の高い金属アルコキシドには、シリコンアルコキシドが複数結合することができ、反応性の高い金属アルコキシドの中心金属を介してシリコンアルコキシド同士が近接することで反応を促進できる。すなわち、反応性の高い金属アルコキシドは、シリコンアルコキシド同士の反応の活性エネルギーを下げることとなり、重縮合を進めるために必要とされる熱エネルギーを小さくすることができる。混合する好ましい金属アルコキシドとしては、アルミニウム、チタン、ジルコニウムのアルコキシドを例示することができる。これらを添加した場合の塗液安定性を確保するためには、キレートとして混合することが好ましく、例えば、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、チタンラクテート、チタンジエタノールアミネート、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジルコニウムラクテート等が挙げられる。中でも、反応後の配位子残渣が小さい場合は、配位子由来の自由体積増大を抑えられるため、小さい配位子でも安定性が得られるチタンキレートが好ましい。混合する金属アルコキシドは、シリコンアルコキドの加水分解物および/またはその重縮合物に対して0.1質量%以上15質量%以下であることが好ましい。0.1%以上とすることで、反応促進の効果を得ることができ、15%質量以下とすることで塗液の安定性を維持することができる。
本発明の別の好ましい態様として、被覆層にアルコキシシリル基を複数有する化合物を含む例が挙げられる。アルコキシシリル基を複数有する化合物としては、例えば、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアネート、ビス-(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、N,N’-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エタン-1,2-ジアミン、1,8-ビス(トリエトキシシリル)オクタン等が挙げられる。アルコキシシリル基を複数有する化合物は、1分子で金属アルコキシドと複数の点で結合して、2次元的に広がるネットワーク構造を形成できるため、金属アルコキシドを固定化できる。これによって、分子鎖が固定化される点ができ、分子鎖同士の反応点の出会い確率を上げられるため、全体として金属アルコキシドの反応を進行させることができる。アルコキシシリル基を複数有する化合物は、金属アルコキシドの加水分解物および/またはその重縮合物の総質量に対して0.5質量%以上30質量%以下含むことが好ましい。アルコキシシリル基を複数有する化合物を0.5質量%以上含むことで、ネットワークを形成して金属アルコキシドを十分に反応させ、耐湿熱性に優れる被覆層を得ることができる。アルコキシシリル基を複数有する化合物の量を30質量%以下とすることで、塗液中でネットワークを多く形成して塗液粘度が上がったり、固化して塗布できなくなったりすることを回避できる。
前記被覆層のもう一つの好ましい態様は、ビニルアルコール系樹脂に由来するセグメント、多糖類に由来するセグメント、及びアクリルポリオール樹脂に由来するセグメント、より選ばれる1種以上のセグメント、並びに、Si-O結合を有するセグメント、に加え、金属元素Mを含む層であることが好ましい。
ビニルアルコール系樹脂に由来するセグメント、多糖類に由来するセグメント、及びアクリルポリオール樹脂に由来するセグメントは、前述の水溶性樹脂であり、Si-O結合を有するセグメントは、前述の金属アルコキシドのうち、Si(OR)で表されるシリコンアルコキシド、シリコンアルコキシドの加水分解物、及びシリコンアルコキシドの加水分解物の重縮合物より選ばれる1種以上のことである。
被覆層に含まれる金属元素Mはケイ素Siを除くものとする。被覆層が金属元素Mを有することにより、被覆層を緻密なものとすることができる。緻密性は後述する陽電子消滅法で求めた空孔の自由体積半径で評価することができる。被覆層が金属元素Mを有することにより、被覆層を緻密なものとすることができるのは、金属元素Mを含有する化合物がSi-O結合の繰り返しの中に適度に入り込むことで、結合に適度な自由度を生み、Si-O結合のみの繰り返しと比べて、非常に微細な構造欠陥やクラックが入ることを抑制できるためであると考えている。
金属元素Mを含有する化合物は、ケイ素を除く少なくとも1種の金属や半金属の金属元素のうち少なくとも1種の金属元素の錯体(キレート)、またはアルコレートであることが好ましく、2種類の金属元素を含んでもよい。金属元素Mは、空軌道を有する金属元素を含むことが好ましく、金属元素M(ケイ素を除く)の総和100atom%中、空軌道を有する金属元素の元素比率の和が80atom%以上であることが好ましい。金属元素Mは、アルミニウム、チタン、ジルコニウムのうちの少なくとも1種の金属元素を含むことが好ましく、金属元素M(ケイ素を除く)の総和100atom%中、アルミニウム、チタン、ジルコニウムの元素比率の和が80atom%以上であることがより好ましく、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、から選ばれる少なくとも1種以上のみからなることがさらに好ましく、金属元素M(Siを除く)の総和100atom%中、チタン、ジルコニウムの元素比率の和が80atom%以上であることが特に好ましく、ジルコニウム、および/またはチタンTiからなることが最も好ましい。
アルミニウム元素を含むキレート、またはアルコレートの例としては、アルミニウムトリス(アセチルアセトネ-ト)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウム-ジ-n-ブトキシド-モノエチルアセトアセテート、アルミニウム-ジ-イソ-プロポキシド-モノメチルアセトアセテート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が例示される。
チタン元素を含むキレート、またはアルコレートの例としては、テトラノルマルブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、テトラメチルチタネート等のチタンオルソエステル類;チタンアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート、ポリチタンアセチルアセトナート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、チタンエチルアセトアセテート等のチタンキレート類等が例示される。
ジルコニウム元素を含むキレート、またはアルコレートの例としては、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムモノアセチルアセトナート、ジルコニウムビスアセチルアセトナート等が例示される。
これらを添加した場合の塗液安定性を確保するためには、キレートとして混合することが好ましく、例えば、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、チタンラクテート、チタンジエタノールアミネート、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジルコニウムラクテート等が挙げられる。中でも、反応後の配位子残渣を小さくすると、配位子由来の自由体積増大を抑えられるため、小さい配位子でも安定性が得られるチタンキレートが好ましい。
被覆層を形成するシリコンアルコキシドの重縮合物は、バリア性の観点から十分に反応を進行させる必要がある。そこで、反応性の高い金属キレートを混合することで、適度な反応性と塗液の安定性を両立出来る。
本発明における被覆層は、被覆層厚みの中央部において飛行時間型2次イオン質量分析計(TOF-SIMS)により測定される、金属元素Mに由来するフラグメントイオンのピーク強度mと、Si-O結合を有するセグメントに由来するフラグメントイオンのピーク強度sの比率m/sが、0.05以上10.00以下であることが好ましい。
飛行時間型2次イオン質量分析計(TOF-SIMS)により測定される、金属元素Mに由来するフラグメントイオンのピーク強度mと、Si-O結合を有するセグメントに由来するフラグメントイオンのピーク強度sの比率m/sは以下の方法で求めるものとする。
<装置・測定条件>
ION TOF社製、飛行時間型2次イオン質量分析計TOF-SIMS5
<測定条件>
一次イオン種 :Bi(2pA、50μs)
加速電圧 :25kV
検出イオン極性:positive
測定範囲 :100μm×100μm
分解能 :128×128
エッチングイオン種:O2+(2keV、170nA)
エッチング面積:300μm×300μm
エッチングレート:1sec/cycle。
<被覆層中央部の特定>
実施例に記載の膜厚算出方法にて被覆層の膜厚を算出し、膜厚の2分の1を中央部とする。次いで被覆層の膜厚み分を上記測定条件にてエッチングしながら分析する。分析後の試料を触針式の段差計(BRUKER社製 Dektak XTL)を用いて、実測のクレータ深さを求める。求めた深さをエッチング時間で割った平均のエッチングレートを用いて換算し、中央部の値を読み取る。なお、ちょうど膜厚の2分の1となる部分のTOF-SIMS測定データが無い場合は、膜厚の2分の1となる部分に最も近い測定点のTOF-SIMS測定データを用いることとする。膜厚の2分の1となる部分に最も近い測定点が1つで無い場合は、各測定点の測定データから求められるm/sの平均値を膜厚の2分の1となる部分のm/sとする。
<前処理条件>
被覆層が最表面に露出している状態であれば特に前処理は必要ないが、被覆層上に他の層が形成されている場合は、それらの層を除去してから被覆層を分析する。被覆層上に形成される層を除去する方法は、各層の膜厚み分をアルゴンイオンビーム等の各種イオンエッチングや薬液処理により除去することができる。また、各層の膜厚みについては実施例に記載の方法で求めることとする。
<解析方法>
ION TOF社製、飛行時間型2次イオン質量分析計TOF-SIMS5測定ソフトSURFACE LAB 7.1を用いてraw dataを読み込み、質量スペクトルから各種イオンに帰属されるピークを読み取る。
m/sを0.05以上にすると、低温の加工条件においても反応促進効果が得られ、また、金属元素Mの効果により被覆層を緻密なものとすることができ、バリア性、耐湿熱性に優れる層とすることができる。m/sは0.30以上であることがより好ましく、0.50以上がさらに好ましい。m/sを0.05以上にすると、被覆層内に存在する金属元素Mの量を一定量以上とすることができ、金属元素Mが触媒として作用するため、低温の加工条件においても反応促進効果が得られる。
なお、緻密性は後述する陽電子消滅法で求めた空孔の自由体積半径で評価することができる。m/sを0.05以上にすることにより、被覆層を緻密なものとすることができる理由として、金属元素Mを含有する化合物がSi-O結合の繰り返しの中に適度に入り込むことで、結合に適度な自由度を生み、Si-O結合のみの繰り返しと比べて、非常に微細な構造欠陥やクラックが入ることを抑制できるためであると考えている。ほかにも、ビニルアルコール系樹脂に由来するセグメント、多糖類に由来するセグメント、及びアクリルポリオール樹脂に由来するセグメント、より選ばれる1種以上のセグメントを被覆層が有した状態で、被覆層が金属元素Mを有し、m/sを0.05以上にすることにより、Si-O結合に起因した構造と上記セグメントによる構造との親和性が上がって、非常に微細な構造欠陥やクラックが入ることを抑制できるためであると考えている。
金属元素Mはキレートを形成しやすいものであることが好ましい。キレートを形成することで反応性を確保しながら塗液状態での安定性を両立することができる。このような金属元素として、アルミニウム、チタン、ジルコニウムなどが挙げられる。金属元素Mを含む金属キレートを使用する場合では、価数と配位数の差である空位の配位座を持つことが好ましい。すなわち当該金属キレートはルイス酸として機能する。空位の配位座は電子的に不安定となり、その部分が攻撃されやすいため反応性が向上し、より低温での反応促進効果を得ることができる。また、金属元素Mを含む金属キレートは、シリコンアルコキシドが複数結合することができるため、近接したシリコンアルコキシド同士の反応を促進できる。すなわち、反応性の高い金属キレートは、シリコンアルコキシド同士の反応の活性化エネルギーを下げることとなり、重縮合を進めるために必要とされる熱エネルギーを小さくすることができるため、より低温での反応促進効果を得ることができる。
m/sは10.00以下であることが好ましい。m/sを10.00以下にすると、被覆層内に存在する金属元素Mの量が過剰となることを防ぎ、塗液状態での反応性を制御できるため、塗液の安定性を維持できる。さらには、被覆層において金属元素Mが存在する周辺では微視的に見れば、金属元素Mにより結合の自由度が上がるため、金属元素Mが多量に存在すると緻密性が悪化すると考えられる。この観点から、m/sを10.00以下とすることによりバリア性を優れたものとすることができる。また、金属元素Mを含む金属キレートを使用する場合では、反応後の配位子残渣が被覆層中に残る場合があるため、m/sを8.00以下とすることにより配位子残渣が過剰になることを防ぐことができ、ひいては被覆層の自由体積増大を抑えられ、よりバリア性を優れたものとすることができる。同様の観点から、m/sを1.80以下とすることがさらに好ましく、m/sを1.00以下とすることが特に好ましい。
なお、複数の金属元素(ケイ素を除く)を含む場合は、各金属元素におけるm/sを算出し、その和を被覆層のm/sとする。
本発明の積層体は、包装材料の回収・リサイクルが可能になるように、ポリオレフィン系樹脂フィルムを基材として用いている。ポリオレフィン系樹脂フィルムは、従来のポリエステル系樹脂やポリアミド系樹脂と比較して、ガラス転移温度が低い。そのため、ロールで保存している間にも、周囲の温度変化でフィルムが収縮して巻き締まりが起こりやすい。そのとき、被覆層は巻き外のフィルムの背面に強く押しつけられることになり、従来の樹脂基材よりも劣化しやすい課題があった。この課題に対して鋭意検討した結果、FT-IR-ATR法で測定して検出されるピーク強度P1とP2の比P1/P2の値が3.5以上8.0以上にする、または、被覆層厚みの中央部において飛行時間型2次イオン質量分析計(TOF-SIMS)により測定される、金属元素Mに由来するフラグメントイオンのピーク強度mと、Si-O結合を有するセグメントに由来するフラグメントイオンのピーク強度sの比率m/sを0.05以上10.00以下にする、またはこれらの両方の要件を満たすことで、ポリオレフィン系樹脂フィルムで巻き締まりが起こる場合であっても、バリア劣化が抑制できることがわかった。P1/P2を3.5以上にすると、追硬化による大幅な収縮が低減できてフィルムに応力がかかることを抑制でき、m/sを0.05以上にすると、低温の加工条件においても反応促進効果が得られるため低温加工が可能となり、追加硬化による被覆層の収縮でフィルムに応力がかかることを抑制でき、P1/P2を8.0以下および/または、m/sを10.00以下にすることで、過度な反応の進行を制御することができ、被覆層の脆化を抑え、巻き締まりによってフィルムが押しつけられたときのバリア劣化を抑えることができる。
本発明の積層体は、熱機械分析(TMA)により測定される主配向軸方向の121℃における応力をSF121℃、主配向軸方向の145℃における応力をSF145℃としたときに、SF145℃-SF121℃≦2.50MPaを満たすことが好ましい。積層体の主配向軸方向とは、長さ50mm(測定方向)×幅10mmの矩形状サンプルを、室温下で引張速度を300mm/分として測定方向に引っ張ったときの、破断するまでの最大荷重より求めた最大点強度の応力が最も大きくなる方向をいい、その決定方法の詳細は実施例に記載の通りである。SF145℃-SF121℃≦2.50MPaを満たすことで、本発明の積層体にヒートシール等の高温処理を含む後加工を施す際に、積層体が熱によって変形し、無機酸化物層にピンホールやクラックといった欠陥が生成するのを抑制できる。その結果、積層体は優れた水蒸気バリア性を維持することが可能となる。
SF145℃-SF121℃≦2.50MPaを満たすことは、121℃以上の高温領域における収縮応力が小さいことを意味する。121℃以上の高温領域での収縮応力が小さい場合、121℃未満から室温に至るまでの温度領域においては収縮応力がより一層小さくなり、経時での寸法変化が極めて小さくなる。そのため、本発明の積層体で製袋加工する際、寸法安定性が良好になるため、印刷やラミネート、製袋加工時の変形による品位の低下が軽減できる。特に製袋加工のヒートシールの際、加熱した部分のシワや収縮が抑えられ、最終製品の収率も高くなるため好ましい。また、本発明の積層体をロールで長期保管する際にもロールの変形、たとえばシワの発生(巻き締まり)の抑制も期待できる。
上記観点からSF145℃-SF121℃の上限は、好ましくは2.00MPa、より好ましくは1.80MPa、さらに好ましくは1.70MPa、特に好ましくは1.50MPaである。なお、SF145℃-SF121℃は小さいほど好ましく、下限は特に限定されないが、実質的には0.05MPa程度である。
SF145℃やSF121℃は、実施例に示す温度条件、荷重条件で熱機械分析を行い、得られた熱収縮応力曲線より読み取ることができる。熱機械分析装置は、測定が可能なものであれば特に制限されず適宜選択することができ、例えば、TMA/SS6000(セイコーインスツルメント(株)製)等を用いることができる。
積層体のSF145℃-SF121℃を2.50MPa以下もしくは上記の好ましい範囲に制御する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、積層体を構成するポリプロピレン系樹脂フィルムの製膜時にテンター装置の条件を調整する方法が挙げられる。より具体的には、テンターの熱処理温度の下限を140℃、より好ましくは150℃、さらに好ましくは155℃、特に好ましくは161℃とし、上限を167℃、より好ましくは166℃、さらに好ましくは165℃とする方法、弛緩率の下限を2%、より好ましくは5%、さらに好ましくは7%、特に好ましくは9%とし、上限を20%、より好ましくは18%、さらに好ましくは17%、特に好ましくは15%とする方法等が挙げられる。テンターの熱処理温度を168℃以上にすると、主配向軸方向に強く配向していた分子鎖が緩み、SF145℃-SF121℃を2.50MPa以下に制御することが困難になる場合がある。また、ポリプロピレン系樹脂フィルムを構成するポリプロピレン系樹脂組成物について、分子量分布Mz/Mwを1.5以上4.5以下とする方法や、対数分子量Log(M)が6.5のときの微分分布値を1.0%以上10%以下とする方法も挙げられる。なお、これらの方法はいずれも必須要件というわけではなく、また適宜組み合わせることもできる。なおMzはZ平均分子量、Mwは重量平均分子量である。対数分子量Log(M)はポリマー分子量Mの常用対数を取ったものである。
本発明の積層体は、145℃での主配向軸方向のtanδが0.25以下であることが好ましい。tanδは損失正接とも呼ばれ、積層体を構成する樹脂の分子鎖の運動性の程度と相関し、一般的に100℃以上の領域では高温になるほど増加する。145℃での主配向軸方向のtanδは、145℃付近でのフィルム中の分子鎖の運動性の程度と相関する指標である。この値を小さくすること、言い換えれば高温での分子鎖の運動を抑制することで、積層体の高温下での熱収縮応力を抑制し、積層体の熱機械分析(TMA)により測定される主配向軸方向の121℃における応力をSF121℃、主配向軸方向の145℃における応力をSF145℃としたときに、SF145℃-SF121℃≦2.50MPaを満たすことが容易になる。上記観点から145℃での主配向軸方向のtanδは、好ましくは0.23以下、より好ましくは0.21以下、さらに好ましくは0.19以下である。なお、145℃での主配向軸方向のtanδは小さいほど好ましく、下限は特に限定されないが、実質的には0.01程度である。tanδは、-100℃まで低温冷却し、昇温開始後-100℃から180℃に到達するまでの粘弾性-温度曲線より求めることができ、その測定方法の詳細は実施例に記載の通りである。
積層体の145℃での主配向軸方向のtanδを0.25以下とする方法は、特に限定されるものではないが、ポリプロピレン系フィルムを構成する樹脂組成物の分子量分布Mz/Mwを小さくする方法や、ポリプロピレン系樹脂フィルムの製膜工程において、一軸延伸後に加熱弛緩処理を施す方法、テンターの熱処理温度を高くする方法、テンターのリラックス率を高くする方法等が挙げられる。これらの方法を単独で又は適宜組み合わせて用いることで、tanδを小さくすることができる。
本発明の積層体は、主配向軸の破断点伸度をTとし、該積層体を130℃で10分間熱処理した後に測定される主配向軸方向の破断点伸度をT130としたとき、T/T130の値が1.20以下であることが好ましい。破断点伸度は、主配向軸方向を長辺として、長さ150mm×幅10mmの矩形状サンプルを準備し、室温下で引っ張り速度を300mm/minとして測定方向に引っ張ったときの、破断時の最大伸度である。破断点伸度は、試験前の試料長さをl、破断時の長さをlとしたとき、(l-l)/l×100で求められる。本発明において、T/T130の値が1.20以下であることは、130℃で10分間熱処理した後も熱処理前からの変化が小さく、製造時の熱ダメージが小さいことを示している。130℃で10分間の熱処理とは、23℃50%RHの実験室環境下で、設定温度130℃で10分以上安定した状態のオーブン(例えばエスペック株式会社製 安全扉付き恒温器セーフティオーブンSPHH-201)に投入して10分後に取り出す処理をいう。T/T130を1.20以下とすることで、積層体製造時の熱ダメージを抑えることができ、良好なバリア性を発現できる。また、ポリオレフィン系樹脂フィルムの巻き締まりを抑制してバリア性の低下を抑制できる。T/T130の下限は実質的には0.5である。
本発明の積層体の130℃10分間の熱処理前後の主配向軸方向の破断点伸度の比率T/T130を1.20以下にするためには、製造工程で高温にさらさないことが好ましい。基材フィルムとなるポリオレフィン系樹脂フィルムとして、例えばポリプロピレン樹脂を用いた場合は熱の影響を受けやすく、高温にさらされることで結晶構造がくずれたり、配向が緩和したりして、破断点伸度が低下する。一度高温にさらされてポリマーの構造が崩れると、再度、高温にさらされた時、さらに破断点伸度は低下する。すなわち、高温にさらされることなく製造した積層体の場合は、T130の低下が小さく、T/T130の値が1.20以下となる一方、高温で製造した積層体はT130の低下が著しく、T/T130は1.20を超える値となる。本発明の積層体の製造において高温にさらされる工程としては、金属層または金属酸化物層を積層する工程、被覆層を積層する工程がある。金属層または金属酸化物層を積層する工程は、後述の通り、蒸着法等の公知の方法を適用できる。この工程ではメインロールを冷却して基材のダメージを抑えることができ、また非常に高速で加工するため、熱影響を比較的おさえることができる。一方で、被覆層を積層したり、その反応を進行させたりする工程は、塗液の乾燥と被覆層の反応進行のための加熱を回避することはできないため、基材に与える影響が大きい。熱ダメージの観点で、被覆層の乾燥工程の好ましい温度範囲としては、たとえば130℃以下、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは110℃以下である。被覆層のバリア性を向上させるために、乾燥後、さらに熱処理する場合もなるべく熱ダメージをおさえるため、処理温度は100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。また、処理時間は14日以下とすると熱ダメージを抑えられ、生産効率の点からも好ましい。
本発明の被覆層は、陽電子消滅法で求めた空孔の自由体積半径が0.260nm以下であることが好ましい。陽電子ビーム法は、陽電子消滅寿命測定法の一つであり、陽電子が試料に入射してから消滅するまでの時間(数百ps~数十nsオーダー)を測定し、その消滅寿命から約0.1~10nmの空孔の大きさ、数濃度、さらには大きさの分布に関する情報を非破壊的に評価する手法である。陽電子線源として放射性同位体(22Na)の代わりに陽電子ビームを用いる点が、通常の陽電子消滅法と大きく異なり、シリコンや石英基板上に製膜された数百nm厚程度の薄膜の測定を可能とした手法である。得られた測定値から非線形最小二乗プログラムPOSITRONFITにより、平均細孔半径や細孔の数濃度を求めることができる。
被覆層の自由体積半径が0.260nm以下であると、被覆層の空孔サイズが小さく緻密な層であるため、バリア性が良好となる。自由体積半径の下限は特に限定されないが、割れやすさの観点から0.240nm以上であることが好ましい。
自由体積半径を小さくする方法としては、前述のシリコンアルコキシドの結合様態を制御することが挙げられる。シリコンアルコキシドは、上記した樹脂を固定化するため、加水分解、重縮合生成物となる。その際、加水分解条件、すなわち、加水分解触媒として酸を使用すると、直鎖状またはネットワーク構造を形成し、自由体積半径が小さくなる。
また、別の方法として、シリコンアルコキシドの重縮合反応を十分に進行させてネットワーク構造を形成し、樹脂を固定することも自由体積半径の低減に効果的である。未反応のシリコンアルコキシドが多く残存している場合、未反応部分は運動の自由度が高くなり、自由体積が増大する。シリコンアルコキシドの反応を十分に進行させるためには、原料の一部にシリケートオリゴマーやポリシロキサンを用いたり、塗工後の乾燥や、積層体の熱処理において十分な熱エネルギーを与えたりすることができる。しかしながら、本発明の積層体を構成するポリオレフィン系樹脂フィルムは、従来のポリエステル系樹脂と比較して耐熱性が低いため、高い温度で熱処理して自由体積半径を小さくすることは困難である。
さらに、立体障害が大きい構造の化合物を使用しないことも、自由体積半径を小さくするためには有効である。例えば、ビニルアルコール系樹脂のけん化度が低い場合、ビニルアルコール系樹脂にはヒドロキシル基に代わって立体障害の大きい酢酸基が多く存在することになる。酢酸基が存在すると、その立体障害によって自由体積が大きくなる場合があるため、けん化度は高い方が好ましい。同様の観点から、複数のアルコキシシリル基を有する化合物を添加する場合も、その配位子は小さい方が好ましく、余剰成分が自由体積を拡大しないように過剰に添加しないように設定することも重要である。また、金属元素Mを含む金属キレートにおいても、配位子は小さい構造のものが好ましい。反応後の配位子残渣が小さい場合は、配位子由来の自由体積増大を抑えられるため好ましい。
上記した観点から、本発明において前記被覆層は分子量が100以上1000以下の金属元素Mを含む金属キレート化合物を含むことが好ましく、前記被覆層は分子量が200以上500以下の金属元素Mを含む金属キレート化合物を含むことがより好ましい。
本発明の被覆層は、厚さが200nm以上600nm以下であることが好ましく、320nm以上500nm以下がより好ましい。厚さを200nm以上とすることで、金属層および/または金属化合物層を欠点なく被覆できるとともに、バリア性を向上することができる。厚さを600nm以下とすることで、硬化時の熱収縮によるクラックや、硬化不足を防止することができ、好ましい。なお、被覆層の厚さは実施例に記載の方法で求めることとする。
本発明の積層体は、水蒸気透過率が1.0g/m/24hr以下であることが好ましく、0.5g/m/24hr以下であることがより好ましい。また、酸素透過率は1.0cc/m/24hr以下であることが好ましく、0.3cc/m/24hr以下であることがより好ましい。水蒸気透過率、酸素透過率は小さいほど好ましく、下限は特に限定されないが、実質的には水蒸気透過率は0.01g/m/24hr、酸素透過率は0.01cc/m/24hrである。水蒸気透過率を1.0g/m/24hr以下、酸素透過率を1.0cc/m/24hr以下とすることで、包装体としたときの内容物の吸湿や酸化による劣化を防止できるので好ましい。
本発明の積層体は、ポリオレフィン系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、金属層および/または無機化合物層を形成した後、さらに被覆層を積層して得ることができる。金属層および/または無機化合物層は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマ気相成長法などの公知の方法を用いて形成することができるが、特に、生産性よく高速で成膜できる点から、蒸着法を好適に用いることができる。真空蒸着法の蒸着方式は、電子線(EB)蒸着法、抵抗加熱法、誘導加熱法などが挙げられるが、それらに限定されるものではない。なお、長尺の樹脂フィルムロール対に金属層および/または無機化合物層を形成する場合、蒸着のメインロールは、フィルムの熱負けを防止するために冷却することが好ましく、その温度は、好ましくは20℃以下、より好ましくは0℃以下である。金属層を得る方法としては、目的の金属を原料として蒸着する例が挙げられる。無機化合物層を得る方法としては、目的とする組成の化合物を原料として蒸着する他、金属を原料として使用し、蒸着した金属蒸気に反応ガスを導入して無機化合物を得る方法を例示することができる。例えば、酸化アルミニウム層を得る場合は、アルミニウムを蒸着原料として使用し、蒸発させたアルミニウム蒸気に酸素を含むガスを導入してフィルム上に無機酸化物層を形成する。導入するガスは、蒸発金属と反応し、層に取り込まれる組成のガスを含んでいれば良く、膜質制御のために不活性ガスなどを含んでいても構わない。金属層および/または無機化合物層を形成する樹脂フィルムの表面は、層間密着力を向上するために、表面改質処理をしてもよい。表面改質処理は、インラインでもオフラインでも良く、改質処理方法は特に限定されないが、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、イオンビーム処理、フレーム処理等、公知のものが挙げられる。これらの表面改質処理は、大気中の他、アルゴン、窒素、酸素、炭酸ガス、水素、アンモニア、炭化水素(C2n+2、ただしnは1~4の整数)等の各種ガスもしくはこれらの混合ガスの雰囲気下で処理されてもよい。表面改質処理に使用するガスは、放電のしやすさや得られる活性種のエネルギー、導入したい官能基の種類によって選定できるが、官能基を導入するために炭酸ガスや酸素ガス、安定放電しやすいアルゴンや窒素を含むことが好ましい。
本発明の積層体は、ポリオレフィン系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に無機層を有する積層体の、無機層を有する面に、水溶性樹脂と金属アルコキシドの加水分解物および/またはその重縮合物を含む塗剤と塗布する工程、および乾燥する工程を含む製造方法で製造されることが好ましい。また、ポリオレフィン系樹脂フィルムおよび1層以上の無機層を有する積層体の、無機層側の少なくとも一方の最表層に、シリコンアルコキシド、シリコンアルコキシドの加水分解物、及びシリコンアルコキシドの加水分解物の重縮合物より選ばれる1種以上、ビニルアルコール系樹脂、多糖類、及びアクリルポリオール樹脂、より選ばれる1種以上の樹脂、並びに金属元素Mを含有する化合物を含む塗剤を塗布する工程、および乾燥する工程を含む、積層体の製造方法により得られることが好ましい。本態様とすることにより、緻密でバリア性の良好な積層体を得ることができる。また、製造時の環境負荷を抑えつつも水蒸気バリア性と酸素バリア性の高い積層体を得ることができる。特に、本態様とすることにより、低温でも十分硬化できたり、高温であっても特に短時間で十分硬化できたりすることから、製造時の環境負荷を低減でき、好ましい。
前記積層体の製造方法において、水蒸気バリア性と酸素バリア性の高い積層体を得る観点から、シリコンアルコキシドは、上記したSi(OR)で表されるシリコンアルコキシドであることがより好ましい。また、同様の観点から前記塗剤はビニルアルコール系樹脂を含むことがより好ましい。また、金属元素Mを含有する化合物として、分子量が100以上1000以下の金属元素Mを含む金属キレート化合物を含むことが好ましく、分子量が200以上500以下の金属元素Mを含む金属キレート化合物を含むことがより好ましい。また、水蒸気バリア性と酸素バリア性の観点から前記塗剤における樹脂とケイ素化合物の比率は、シリコンアルコキシドの中心原子Siが完全酸化した場合の質量(SiO換算質量)と樹脂の質量比率で、樹脂/シリコンアルコキシドのSiO換算質量=15/85~85/15の範囲が好ましく、20/80~65/35の範囲がより好ましく、20/80~40/60の範囲がさらに好ましく20/80~50/50の範囲が特に好ましい。
また、前記積層体の製造方法において、前記塗剤を塗布する工程、および乾燥する工程を経てして得られた膜に対し、飛行時間型2次イオン質量分析計(TOF-SIMS)により測定した、金属元素Mに由来するフラグメントイオンのピーク強度mと、Si-O結合を有するセグメントに由来するフラグメントイオンのピーク強度sの比率m/sが、0.05以上10.00以下であることが好ましい。m/sを0.05以上にすると、低温の加工条件においても反応促進効果が得られ、環境負荷を低減しつつもバリア性、耐湿熱性が優れる層とすることができる。m/sを10.00以下にすることで、塗液の安定性を維持することができるため生産性がよく環境負荷を低減することができる。
また、前記積層体の製造方法において、得られた積層体に関して上述したT/T130の値が1.20以下であることが好ましい。本態様とすることは、実質的には低温で短時間硬化させることに相当することから、加熱による環境負荷を低減し、ポリオレフィン系樹脂フィルムが収縮によって被覆層がダメージを受けることを抑制しつつ、被覆層を緻密に硬化させることができる。また、本態様とすることは、実質的には低温で短時間硬化させることに相当することから、ポリオレフィン系樹脂フィルムの巻き締まりを抑制できバリア性を保つことができる。
塗布方法は、ダイレクトグラビア方式、リバースグラビア方式、マイクログラビア方式、ロッドコート方式、バーコート方式、ダイコート方式、スプレーコート方式等、特に限定はなく既知の方法を用いることができる。塗布後の乾燥温度は、70℃以上150℃以下であることが好ましく、100℃以上130℃以下であることがより好ましい。塗布後の乾燥温度は120℃以下がさらに好ましく、特に好ましくは110℃以下である。なお、乾燥温度は、フィルム表面の最高到達温度を指す。70℃以上とすることで溶媒を除去し、層とすることができ、150℃以下とすることで、ポリオレフィン系樹脂フィルムの熱収縮や変形を抑制することができる。塗布・乾燥後、本発明の積層体は、シリコンアルコキシドの重縮合反応を進行させてバリア性を向上させるために、さらに熱処理してもよい。熱処理温度は、30℃以上100℃以下が好ましく、40℃以上80℃以下がより好ましい。熱処理時間は、1日以上14日以下が好ましく、3日以上7日以下がより好ましい。熱処理温度を30℃以上とすることで、被覆層の架橋を進行させてバリア性を向上でき、100℃以下とすることで、熱処理によるフィルムのカールや収縮を抑制することができる。なお、熱処理温度は雰囲気温度を指す。
本発明の包装体は、前記積層体を有する。包装体は、印刷等や、製袋のためのヒートシール層、剛性を向上させるために別の樹脂フィルムと積層されていてもよい。ヒートシール層や剛性向上のための樹脂フィルムは、リサイクル性を向上させるため、ポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。包装体に前記積層体を含むことで、良好で安定した水蒸気バリア性および酸素バリア性となり、内容物の劣化を抑えられるため好ましい。
以下に本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを発明の範囲から除外するものではない。
[評価方法]
(1)基材フィルムの厚さ
任意の10箇所の厚みを、23℃65%RHの雰囲気下で、アンリツ株式会社製電子マイクロメータ(K-312A型)を用いて測定した。得られた10点の厚みの算術平均値を基材フィルムの厚さ(単位:μm)とした。
(2)基材フィルム表面の算術平均高さSa
三次元非接触表面形状の測定器である、株式会社日立ハイテクサイエンスの走査型白色干渉顕微鏡VertscanVS1540を使用して測定した。解析においては付属の解析ソフトにより、撮影画面を多項式4次近似面補正にてうねり成分を除去し、次いでメジアン(3×3)フィルタにて処理後、補間処理(高さデータの取得ができなかった画素に対し周囲の画素より算出した高さデータで補う処理)を施した。測定条件は下記の通りとした。
・測定条件:対物レンズ 10×
鏡筒 1×
ズームレンズ 1×
波長フィルタ 530nm white
・測定モード:Wave
・測定ソフトウェア:VS-Measure Version10.0.4.0
・解析ソフトフェア:VS-Viewer Version10.0.3.0
・測定面積:0.561×0.561mm
(3)金属層および/または無機化合物層の厚さ
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた断面観察により測定した。株式会社日立製作所製マイクロサンプリングシステムFB-2000Aを使用して、FIB法により(具体的には「高分子表面加工学」(岩森暁著)p.118~119に記載の方法に基づいて)観察用サンプルを作製した。続いて、株式会社日立製作所製透過型電子顕微鏡H-9000UHRIIにより、加速電圧300kVとして、観察用サンプルの断面を観察し、任意の10箇所について金属層および/または無機化合物層の厚さを確認した。それらの算術平均値を金属層および/または無機化合物層の厚さ(単位:nm)とした。
(4)FT-IR-ATR法での分析:P1/P2
30mm×30mmにサンプリングした積層体を用い、日本分光株式会社製フーリエ変換赤外分光光度計FT/IR-6100を使用してスペクトル測定し、解析ソフトのピーク検出モードで所定のピークP1、P2を検出した。得られたP1とP2の値からP1/P2を算出した。
位置の異なる3点でP1/P2を算出し、3点の値を平均してそのサンプルのP1/P2とした。
・光源:高輝度セラミック光源
・検出器:TGS
・ビームスプリッター:Ge/KBr
・測定モード:ATR法(Geプリズム、入射角45°)
・測定波数範囲:4,000cm-1~600cm-1
・分解能:4cm-1
・積算回数:32回
・解析:Spectra Manager Version2 スペクトル解析プログラムでピーク検出した。
(5)P1/P2の変化率(Δ(P1/P2))
積層体を30mm×30mmにサンプリングし、(4)の方法で熱処理前のP1/P2を算出した。その後、測定したサンプルの四隅を粘着テープ(日東電工株式会社製No.31B)でシワが入らないように50mm×50mm、厚さ1.1mmのソーダライムガラスに貼り付けて、120℃に設定したオーブン(エスペック株式会社製 安全扉付き恒温器セーフティオーブンSPHH-201)の上段に、貼り付けたサンプルを上側に向けて投入し、1分間熱処理した。熱処理したサンプルを取り出して固定していたテープを剥離して(4)の方法で熱処理後のP1/P2を算出した。熱処理後のP1/P2から熱処理前のP1/P2を差し引いた値を変化量Δ(P1/P2)とした。
(6)金属元素Mに由来するフラグメントイオンのピーク強度mと、Si-O結合を有するセグメントに由来するフラグメントイオンのピーク強度sの比率m/s、炭素に由来するフラグメントイオンのピーク強度cと、Si-O結合を有するセグメントに由来するフラグメントイオンのピーク強度sの比率c/s
ION TOF社製、飛行時間型2次イオン質量分析計TOF-SIMS5および同社測定ソフトSURFACE LAB 7.1を用い、被覆層の中央部について、2次イオン質量分析法によって金属元素Mに由来するフラグメントイオンのピーク強度mとSi-O結合を有するセグメントに由来するフラグメントイオンのピーク強度sを測定し、ピーク強度比m/sを求めた。同様に、炭素に由来するフラグメントイオンのピーク強度cと、Si-O結合を有するセグメントに由来するフラグメントイオンのピーク強度sの比率c/sを求めた。測定条件は以下の通りである。
・一次イオン種 :Bi(2pA、50μs)
・加速電圧:25kV
・検出イオン極性:positive
・測定範囲 :100μm×100μm
・分解能: :128×128
・エッチングイオン種:O2+(2keV、170nA)
・エッチング面積:300μm×300μm
・エッチングレート:1sec/cycle。
(7)陽電子消滅法による自由体積半径の算出
積層体を15mm×15mmのシリコンウェハに貼り付けて、25℃で真空脱気した試料を用いて以下の条件で陽電子消滅寿命を測定した。
測定装置:フジ・インバック製小型陽電子消滅発生装置PALS-200A
陽電子線源:22Naベースの陽電子消滅
γ線検出器:BaF製シンチレータと光電子増倍管
ビーム強度:3keV
測定温度:25℃
測定雰囲気:真空
総カウント数:約5,000,000カウント。
得られた陽電子消滅寿命曲線に対して、非線形最小二乗プログラムPOSITRONFITで3成分解析を行って、消滅寿命の小さいものからτ1、τ2、τ3とした。最も長い平均消滅寿命τ3から、下記式を用いて空孔の自由体積半径R3(nm)を算出した。
τ3=(1/2)[1-{R3/(R3+0.166)}+(1/2π)sin{2πR3/(R3+0.166)}]-1
(8)被覆層の厚さ
積層体をミクロトームでフィルム表面に対して垂直方向に切削し、積層体断面を走査型電子顕微鏡で観察して測定した。観察は、株式会社日立製作所製STEM(走査透過型電子顕微鏡/H-9000UHRII)を使用し、100,000倍の倍率で3点撮像した。得られた3つの画像で、被覆層の厚さを測定し、それらを平均した値を被覆層の厚さとした。
(9)水蒸気透過率
JISK7129(2008)のB法に従い、MOCON/Modern Controls社製の水蒸気透過率透過率測定装置(“PERMATRAN”(登録商標)W3/31)を使用して、温度40℃湿度90%RHの条件で測定した。測定は2枚の試験片について2回ずつ行い、合計4つの測定値の平均値を算出し、水蒸気透過率とした。
(10)酸素透過率
JISK7126-2(2006)の等圧法に従い、MOCON/Modern Controls社製の酸素透過率測定装置(“OXTRAN”(登録商標)2/20)を用いて、温度23℃湿度90%RHの条件で測定した。測定は2枚の試験片について2回ずつ行い、得られた4つの測定値の平均値を算出し、酸素透過率とした。
(11)バリア安定性(巻き締まり等によるバリア劣化の評価)
積層体を100mm×100mmにサンプリングし、東レ株式会社製ポリプロピレンフィルム“トレファン”を重ね合わせ、大成ラミネーター株式会社製VA-420H型ラミネーターを用いて、23℃、エア圧力0.4MPa、搬送速度0.5m/minの条件でラミネーターを通した。その後、積層体を取り出し、上記(10)、(11)の方法でバリア性を測定して、後加工耐性および巻き締まりによる圧力への耐性としてバリア安定性を調べた。
(12)SF145℃-SF121℃
<積層体の主配向軸の特定>
積層体の任意の方向を長辺として、長さ50mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプル<1>とした。この際、矩形のサンプル<1>の長辺が向く方向を0°と定義した。次に、長辺方向が0°方向から右に15°回転した方向となるように、同サイズのサンプル<2>を採取した。以下同様に、矩形のサンプルの長辺方向を15°ずつ回転させ、同様にサンプル<3>~<12>を採取した。次に、各矩形のサンプルを引張試験機(オリエンテック株式会社製“テンシロン”(登録商標)UCT-100)に、長辺方向が引張方向となるように初期チャック間距離20mmでセットし、室温の雰囲気下で引張速度を300mm/分として引張試験を行った。このときサンプルが破断するまでの最大荷重を読み取り、試験前の試料の断面積(フィルム厚み×幅)で除した値を最大点強度の応力として算出した。各サンプルについて同様の測定を5回ずつ行って最大点強度の応力の平均値を求め、当該平均値が最大であったサンプルの長辺方向を積層体の主配向軸とした。
<熱機械分析(TMA)による熱収縮応力の測定>
積層体を、前述のように定めた「主配向軸方向」を長辺として幅4mm、長さ50mmの長方形の試料に切り出し、試長20mmとなるよう金属製チャックに挟み込んだ。その後に下記の熱機械分析装置にセットし、下記温度条件、荷重条件にて試長を一定保持した積層体における主配向軸方向の熱収縮応力曲線を求めた。
(装置)
・装置 :TMA/SS6000(セイコーインスツルメント(株)製)
(温度条件)
・温度範囲 :23~200℃
・昇温速度 :10℃/分
・保持 :10分
・サンプリング時間:10秒/回
・窒素冷却 :なし
(荷重条件)
・制御モード :L
・待機中上限変位 :0μm
・スタート変位 :0μm
・荷重レート :0.1μm/分
・保持 :600分
・測定雰囲気 :窒素中
・測定厚み :基材フィルムの厚さ、金属層および/または無機化合物層の厚さ、および被覆層の厚さの総和。
<SF145℃-SF121℃の算出>
前述の測定方法で得た熱収縮応力曲線から、25℃に最も近い温度における収縮応力値をゼロ点として補正した上で、以下の各数値を読み取り、SF145℃-SF121℃を算出した。
SF145℃:積層体の主配向軸方向の145℃における熱収縮応力(MPa)
SF121℃:積層体の主配向軸方向の121℃における熱収縮応力(MPa)。
(13)主配向軸方向の145℃におけるtanδ
(12)で定めた積層体の主配向軸方向を測定方向とし、測定方向を長辺として切り出した試験片(幅5mm×長さ20mm)を23℃雰囲気下で装置チャック部に取付け、-100℃まで低温冷却し、昇温開始後-100℃から180℃に到達するまでのtanδを測定した。動的粘弾性法により粘弾性-温度曲線を描き、各温度でのtanδを算出した。試験はn=3で行い得られた値の平均値を当該測定方向におけるtanδとした。なお、測定装置及び条件は下記の通りである。
・装置 :Rheogel-E4000(UBM製)
・ジオメトリー :引張
・チャック間距離:10mm
・周波数 :10Hz
・歪み :0.1~0.2%
・温度範囲 :-100~180℃
・昇温速度 :5℃/分
・測定雰囲気 :窒素。
(14)製袋加工性
積層体に、接着剤を用いてヒートシールフィルムを貼り合わせて、製袋加工性を評価した。まず、DIC株式会社製の接着剤“ディックドライ”(登録商標)LX-500を5g、硬化剤KO-55を0.5gはかり取り、酢酸エチルで固形分濃度16%に希釈した。積層体の被覆層を有する面に、接着剤を厚さ3μmになるように塗布して、80℃で乾燥した後、東レフィルム加工株式会社製無延伸ポリプロピレンフィルムZK207(厚さ70μm)を貼り合わせ、40℃で3日間エージングした。貼り合わせた無延伸ポリプロピレンフィルム同士を対向させて、テスター産業株式会社製ヒートシールテスターTP-701-Bを用いて、ニップ上部180℃、下部80℃で0.1MPaで1秒間プレスして貼り合わせ、ヒートシール部の変形を評価した。
A:ヒートシール部に縮みやシワなし
B:ヒートシール部に縮みやシワの変形あり。
(15)破断点伸度の比(T/T130
<破断点伸度の測定>
(12)で定めた積層体の主配向軸方向を測定方向とし、積層体の主配向軸方向を長辺として、長さ150mm×幅10mmの矩形にサンプリングした。オリエンテック株式会社製“テンシロン”(登録商標)万能試験機RTG-1210を用いて、に、長辺方向が引張方向となるように初期チャック間距離120mmでセットし、室温下で引っ張り速度を300mm/minとして測定方向に引っ張ったときの、破断時の長さから破断点伸度を求めた。破断点伸度は、試験前の試料長さをl、破断時の長さをlとしたとき、(l-l)/l×100である。破断点伸度T-は、事前の熱処理なしで測定した。破断点伸度T130は、23℃50%RHの実験室環境下で、設定温度130℃で10分以上安定した状態のオーブン(エスペック株式会社製 安全扉付き恒温器セーフティオーブンSPHH-201)に投入して10分後に取り出し、室温まで戻した後に測定した。
[実施例1]
(金属層または無機化合物層の形成)
厚さ12μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(東レ株式会社製ポリプロピレンフィルム 融点170℃、Sa21nm)の片面に、無機化合物層として酸化アルミニウム層を7nm形成した。酸化アルミニウム層は、アルミニウムを蒸発させ、蒸着部に酸素を導入して酸化させる反応蒸着法で蒸着した。
(被覆層の形成)
水溶性高分子として、ポリビニルアルコール(以下PVAと略することもある、株式会社クラレ製ポバール28-98)を質量比で水/イソプロピルアルコール=97/3の溶媒に投入し、90℃で加熱攪拌して固形分10質量%の水溶性高分子液を得た。次に、テトラエトキシシシラン(以下、TEOSと略することもある)6.7gとメタノール2.7gを混合した溶液に、0.02N塩酸水溶液10.6gを液滴しながら攪拌して、TEOS加水分解液を得た。水溶性高分子液のPVA固形分と、TEOSのSiO換算質量の比率がPVA固形分/SiO換算質量=35/65になるように水溶性高分子液とTEOS加水分解液を混合した。得られた混合液にアルミニウムキレート(川研ファインケミカル株式会社製アルミキレートD:アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート))を、TEOS質量比3.0%添加し、全体の固形分が13質量%になるように水で希釈して塗工液を得た。塗工液を、上述の酸化アルミニウム層上に塗布し、120℃で1分間乾燥させて積層体を得た。また、塗工液は23℃50%RH環境で24時間静置後、析出物やゲル化の発生がないことを確認し、塗工液の安定性を確認したため実用上は問題ないが、72時間静置後には微量の析出物が発生した。
[実施例2]
アルミニウムキレートの代わりに、ジルコニウムキレート(マツモトファインケミカル株式会社製オルガチックスZC-300:ジルコニウムラクテートアンモニウム塩)をTEOS質量比3.0%添加したこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。また、塗工液は23℃50%RH環境で24時間静置後、析出物やゲル化の発生がないことを確認し、塗工液の安定性が十分であることを確認した。
[実施例3]
被覆層の水溶性高分子を変性ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製“エクセバール”(登録商標)RS-1717)にしたこと、ジルコニウムキレート(マツモトファインケミカル株式会社製オルガチックスZC-300:ジルコニウムラクテートアンモニウム塩)をTEOS質量比1.5%添加したこと、および塗工液を酸化アルミニウム層上に塗布して120℃乾燥後、さらに80℃で1週間熱処理したこと以外は実施例2と同様にして積層体を得た。また、塗工液は23℃50%RH環境で24時間静置後、析出物やゲル化の発生がないことを確認し、塗工液の安定性が十分であることを確認した。
[実施例4]
被覆層を以下に示す手順で形成した以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
(被覆層の形成)
水溶性高分子として、変性ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製“エクセバール”(登録商標)RS-1717)を質量比で水/イソプロピルアルコール=97/3の溶媒に投入し、90℃で加熱攪拌して固形分10質量%の水溶性高分子液を得た。次に、TEOS6.7gとメタノール2.7gを混合した溶液に、0.02N塩酸水溶液10.6gを液滴しながら攪拌して、TEOS加水分解液を得た。水溶性高分子液のPVA固形分と、TEOSのSiO換算質量の比率がPVA固形分/SiO換算質量=20/80になるように水溶性高分子液とTEOS加水分解液を混合した液に、チタンキレート(マツモトファインケミカル株式会社製TC-310:チタンラクテート)を、TEOS質量比1.5%添加し、全体の固形分が13質量%になるように水で希釈して塗工液を得た。塗工液を、上述の酸化アルミニウム層上に塗布し、120℃で1分間乾燥させた後、80℃で1週間熱処理して積層体を得た。また、塗工液は23℃50%RH環境で24時間静置後、析出物やゲル化の発生がないことを確認し、塗工液の安定性が十分であることを確認した。
[実施例5]
被覆層の塗液調合において、水溶性高分子液のPVA固形分とTEOS加水分解液のSiO換算質量の比率を、PVA固形分/SiO換算質量=80/20にしたこと、ジルコニウムキレート(マツモトファインケミカル株式会社製オルガチックスZC-300:ジルコニウムラクテートアンモニウム塩)をTEOS質量比3.0%添加に変更した以外は、実施例3と同様にして積層体を得た。また、塗工液は23℃50%RH環境で24時間静置後、析出物やゲル化の発生がないことを確認し、塗工液の安定性が十分であることを確認した。
[実施例6]
被覆層の塗液調合において、水溶性高分子液のPVA固形分とTEOS加水分解液のSiO換算質量の比率を、PVA固形分/SiO換算質量=55/45に変更した以外は、実施例5と同様にして積層体を得た。また、塗工液は23℃50%RH環境で24時間静置後、析出物やゲル化の発生がないことを確認し、塗工液の安定性が十分であることを確認した。
[実施例7]
被覆層の塗液調合において、水溶性高分子液のPVA固形分とTEOS加水分解液のSiO換算質量の比率を、PVA固形分/SiO換算質量=5/95に変更した以外は、実施例5と同様にして積層体を得た。また、塗工液は23℃50%RH環境で24時間静置後、析出物やゲル化の発生がないことを確認し、塗工液の安定性が十分であることを確認した。
[実施例8~11]
ジルコニウムキレートの代わりに、チタンキレート(マツモトファインケミカル製TC-400:チタントリエタノールアミネート)をTEOS質量比4.0%添加し、塗工厚みを変えた以外は実施例3と同様にして積層体を得た。また、塗工液は23℃50%RH環境で24時間静置後、析出物やゲル化の発生がないことを確認し、塗工液の安定性が十分であることを確認した。
[実施例12]
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの片面に、金属層として、真空蒸着法で厚さ50nmのアルミニウム層を形成したこと以外は実施例3と同様にして積層体を得た。
[実施例13]
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの片面に、アンダーコート層を形成してから、無機化合物層を形成したこと以外は実施例3と同様にして積層体を得た。また、塗工液は23℃50%RH環境で24時間静置後、析出物やゲル化の発生がないことを確認し、塗工液の安定性が十分であることを確認した。
アンダーコート層は、以下の手順で形成した。ポリエステルウレタン系水分散性樹脂である“ハイドラン”(登録商標)AP-201(DIC株式会社製、固形分濃度23質量%)100質量部に対し、架橋剤としてメラミン化合物“アミディア”(登録商標)APM(DIC株式会社製)を6質量部添加し、さらに架橋触媒として水溶性の酸性化合物である“キャタリスト”PTS(DIC株式会社製)を1質量部添加した。続いて純水を添加し、全体の固形分濃度が10質量%となるように調整して、混合塗剤を得た。この混合塗液を二軸延伸ポリプロピレンフィルムの片面に塗布し、110℃で30秒乾燥して厚さ700nmのアンダーコート層を形成した。
[実施例14]
ジルコニウムキレート(マツモトファインケミカル株式会社製オルガチックスZC-300:ジルコニウムラクテートアンモニウム塩)をTEOS質量比3.0%添加したこと、乾燥温度を100℃としたこと以外は実施例3と同様にして積層体を得た。
[実施例15~17]
ジルコニウムキレートの添加量をTEOS質量比3.0%、10.5%、12%としたこと以外は実施例3と同様にして積層体を得た。また、実施例15の塗工液は23℃50%RH環境で24時間静置後、析出物やゲル化の発生がないことを確認し、塗工液の安定性が十分であることを確認した。実施例16、17の塗工液は23℃50%RH環境で24時間静置後、析出物やゲル化の発生がないことを確認したため実用上は問題ないが、72時間静置後には塗液粘度の上昇が発生した。
[実施例18~20]
ジルコニウムキレートの代わりに、チタンキレート(マツモトファインケミカル製TC-310:チタンラクテート)をTEOS質量比0.5%、1.5%、3.0%添加したこと以外は実施例3と同様にして積層体を得た。また、塗工液は23℃50%RH環境で24時間静置後、析出物やゲル化の発生がないことを確認し、塗工液の安定性が十分であることを確認した。
[実施例21]
ジルコニウムキレートの代わりに、アルミニウムキレート(川研ファインケミカル株式会社製アルミキレートD:アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート))を、TEOS質量比1.5%添加したこと以外は実施例3と同様にして積層体を得た。また、塗工液は23℃50%RH環境で24時間静置後、析出物やゲル化の発生がないことを確認し、塗工液の安定性を確認したため実用上は問題ないが、72時間静置後には微量の析出物が発生した。
[実施例22]
被覆層の塗液調合において、水溶性高分子液のPVA固形分とTEOS加水分解液のSiO換算質量の比率を、PVA固形分/SiO換算質量=88/12にしたこと、ジルコニウムキレートの代わりに、アルミニウムキレート(川研ファインケミカル株式会社製アルミキレートD:アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート))をTEOS質量比3.0%添加に変更した以外は、実施例3と同様にして積層体を得た。また、塗工液は23℃50%RH環境で24時間静置後、析出物やゲル化の発生がないことを確認し、塗工液の安定性を確認したため実用上は問題ないが、72時間静置後には微量の析出物が発生した。
[実施例23]
使用した二軸延伸ポリプロピレンフィルムを、東レ株式会社製ポリプロピレンフィルム 融点170℃、Sa41nmとした以外は実施例3と同様にして積層体を得た。
[比較例1]
被覆層を形成しないこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
[比較例2]
アルミニウムキレートを添加しないこと、塗工液を塗布後、120℃で1分間乾燥し、さらに80℃で1週間熱処理したこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。また、積層体表面を指で擦り、硬化状態(タックがない)であることを確認した。
[比較例3]
ジルコニウムキレートを添加しないこと、塗工液を塗布後、120℃で1分間乾燥し、さらに80℃で1ヶ月熱処理したこと以外は実施例3と同様にして積層体を得た。また、積層体表面を指で擦り、硬化状態(タックがない)であることを確認した。
[比較例4]
ジルコニウムキレートを添加しないこと、塗工液を塗布後、120℃で1分間乾燥し、さらに40℃で1ヶ月熱処理したこと以外は実施例3と同様にして積層体を得た。また、積層体表面を指で擦り、硬化状態(タックがない)であることを確認した。
[比較例5]
ジルコニウムキレートを添加しないこと、塗工液を塗布後、160℃で1分間乾燥したこと以外は実施例3と同様にして積層体を得た。
[比較例6]
ジルコニウムキレートの添加量をTEOS質量比15%としたこと以外は実施例3と同様にして積層体を得た。また、比較例6の塗工液は23℃50%RH環境で24時間静置後、析出物やゲル化の発生がないためサンプルを作製できたが、塗液粘度の上昇が発生し、塗工液の安定性は不十分であった。
[比較例7]
ジルコニウムキレートの添加量をTEOS質量比0.05%としたこと以外は実施例3と同様にして積層体を得た。
Figure 0007323085000001
Figure 0007323085000002
Figure 0007323085000003
Figure 0007323085000004
Figure 0007323085000005
Figure 0007323085000006
比較例2では、添加剤がなく、被覆層の乾燥温度が低いため被覆層内に未反応部位が残り、バリア安定性を得ることができなかったと考えられる。
比較例3では、被覆層乾燥後の熱処理時間が長く、フィルムの収縮によって被覆層がダメージを受けたためバリア性が大幅に劣化したと考えられる。
比較例4では、被覆層乾燥後の熱処理温度が低いため、熱処理時間が長くてもフィルムの収縮によるダメージは少ないが、被覆層が十分に緻密化しておらず、バリア性は悪くなったと考えられる。
比較例5では、被覆層の乾燥温度が高く、フィルムの収縮によって被覆層がダメージを受け、微小なクラックなどがはいったため酸素バリア性が大幅に劣化したと考えられる。
上記の結果から、本発明は耐熱性の低いポリオレフィン系樹脂基材を用いた積層体において、良好なバリア性、さらには良好なバリア安定性を提供できる。
1 ポリオレフィン系樹脂フィルム
2 金属層および/または無機酸化物層
3 被覆層
4 P1を示すピーク
5 P2を示すピーク

Claims (20)

  1. ポリオレフィン系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、無機層を有する積層体であって、前記1層以上の無機層は金属層および/または無機化合物層を有し、前記積層体の少なくとも一方の最表層(以下、被覆層という)をFT-IR-ATR法(全反射フーリエ変換赤外分光法)で測定して検出される下記ピーク強度P1とP2の比P1/P2の値が3.5以上8.0以下である積層体。
    P1:1,050~1,080cm-1に存在する最大ピークの強度
    P2:920~970cm-1に存在する最大ピークの強度
  2. 被覆層が、水溶性樹脂と金属アルコキシドの加水分解物および/またはその重縮合物を含む請求項1に記載の積層体。
  3. 被覆層をFT-IR-ATR法で分析して検出される下記ピーク強度P1とP2の比P1/P2の値について、120℃1分熱処理した前後の変化量Δ(P1/P2)が-0.5以上0.5以下である請求項1または2に記載の積層体。
  4. ポリオレフィン系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、1層以上の無機層を有する積層体であって、前記1層以上の無機層は金属層および/または無機化合物層を有し、前記積層体の少なくとも一方の最表層(以下、被覆層という)はビニルアルコール系樹脂に由来するセグメント、多糖類に由来するセグメント、及びアクリルポリオール樹脂に由来するセグメント、より選ばれる1種以上のセグメント、並びに、Si-O結合を有するセグメント、に加え、ケイ素Siを除く金属元素Mを含み、前記被覆層厚みの中央部において、以下の測定条件とした飛行時間型2次イオン質量分析計(TOF-SIMS)により測定される、金属元素Mに由来するフラグメントイオンのピーク強度mと、Si-O結合を有するセグメントに由来するフラグメントイオンのピーク強度sの比率m/sが、0.05以上10.00以下である積層体。
    <測定条件>
    一次イオン種 :Bi(2pA、50μs)
    加速電圧:25kV
    検出イオン極性:positive
    測定範囲 :100μm×100μm
    分解能 :128×128
    エッチングイオン種:O2+(2keV、170nA)
    エッチング面積:300μm×300μm
    エッチングレート:1sec/cycle
  5. 前記被覆層に含まれる金属元素Mが、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、のうちの少なくとも1種の金属元素を含む、請求項4に記載の積層体。
  6. 前記被覆層厚みの中央部において、飛行時間型2次イオン質量分析計(TOF-SIMS)により測定される、炭素に由来するフラグメントイオンのピーク強度cと、Si-O結合を有するセグメントに由来するフラグメントイオンのピーク強度sの比率c/sが、0.015以上0.650以下である、請求項1から5のいずれかに記載の積層体。
  7. 熱機械分析(TMA)により測定される主配向軸方向の121℃における応力をSF121℃、主配向軸方向の145℃における応力をSF145℃としたときに、SF145℃-SF121℃≦2.50MPaを満たす請求項1から6のいずれかに記載の積層体。
  8. 主配向軸方向の145℃におけるtanδが0.25以下である、請求項1から7のいずれかに記載の積層体。
  9. 主配向軸方向の破断点伸度をTとし、該積層体を130℃で10分間熱処理した後に測定される主配向軸方向の破断点伸度をT130としたとき、T/T130の値が1.20以下である請求項1から8のいずれかに記載の積層体。
  10. 前記被覆層は以下の測定条件とした陽電子消滅法で求めた空孔の自由体積半径が0.260nm以下である、請求項1から9のいずれかに記載の積層体。
    <測定条件>
    試料前処理:積層体を15mm×15mmのシリコンウェハに貼り付けて、25℃で真空脱気する。
    陽電子線源:22Naベースの陽電子消滅
    γ線検出器:BaF製シンチレータと光電子増倍管
    ビーム強度:3keV
    測定温度:25℃
    測定雰囲気:真空
    総カウント数:約5,000,000カウント。
    得られた陽電子消滅寿命曲線に対して、非線形最小二乗プログラムPOSITRONFITで3成分解析を行って、消滅寿命の小さいものからτ1、τ2、τ3とする。
    最も長い平均消滅寿命τ3から、下記式を用いて空孔の自由体積半径R3(nm)を算出する。
    τ3=(1/2)[1-{R3/(R3+0.166)}+(1/2π)sin{2πR3/(R3+0.166)}]-1
  11. 前記ポリオレフィン系樹脂フィルムがポリプロピレンを含む請求項1から10のいずれかに記載の積層体。
  12. 前記被覆層の厚さが200nm以上600nm以下である、請求項1から11のいずれかに記載の積層体。
  13. 前記金属層または無機化合物層がアルミニウムを含む請求項1から12のいずれかに記載の積層体。
  14. 前記積層体の水蒸気透過率が1.0g/m/24hr以下、かつ酸素透過率が1.0cc/m/24hr以下である請求項1から13のいずれかに記載の積層体。
  15. 前記金属層または無機化合物層が、ポリオレフィン系樹脂フィルムに直接接している請求項1から14のいずれかに記載の積層体。
  16. 請求項1から15のいずれかに記載の積層体を有する包装体。
  17. ポリオレフィン系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に無機層を有する積層体の、無機層を有する面に被覆層を形成する製造方法であって、水溶性樹脂と金属アルコキシドの加水分解物および/またはその重縮合物を含む塗剤と塗布する工程、および乾燥する工程を含み、被覆層をFT-IR-ATR法(全反射フーリエ変換赤外分光法)で測定して検出される下記ピーク強度P1とP2の比P1/P2の値が3.5以上8.0以下である積層体の製造方法。
    P1:1,050~1,080cm-1に存在する最大ピークの強度
    P2:920~970cm-1に存在する最大ピークの強度
  18. ポリオレフィン系樹脂フィルムおよび1層以上の無機層を有する積層体の、無機層側の少なくとも一方の最表層に、ケイ素アルコキシド、ケイ素アルコキシドの加水分解物、及びケイ素アルコキシドの加水分解物の重縮合物より選ばれる1種以上、ビニルアルコール系樹脂、多糖類、及びアクリルポリオール樹脂、より選ばれる1種以上の樹脂、並びにケイ素Siを除く金属元素Mを含有する化合物を含む塗剤を塗布する工程、および乾燥する工程を含み、前記塗剤を塗布・乾燥して得られた膜に対し、飛行時間型2次イオン質量分析計(TOF-SIMS)により測定した、金属元素Mに由来するフラグメントイオンのピーク強度mと、Si-O結合を有するセグメントに由来するフラグメントイオンのピーク強度sの比率m/sが、0.05以上10.00以下である、積層体の製造方法。
  19. ポリオレフィン系樹脂フィルムおよび1層以上の無機層を有する積層体の、無機層側の少なくとも一方の最表層に、Si(OR)で表されるケイ素アルコキシド、Si(OR)で表されるケイ素アルコキシドの加水分解物、及びSi(OR)で表されるケイ素アルコキシドの加水分解物の重縮合物より選ばれる1種以上、ビニルアルコール系樹脂、多糖類、及びアクリルポリオール樹脂、より選ばれる1種以上の樹脂、並びにケイ素Siを除く金属元素Mを含有する化合物を含む塗剤を塗布する工程、および乾燥する工程を含む請求項17または18に記載の積層体の製造方法。
    R:アルキル基
  20. 前記塗剤を塗布する工程、および乾燥する工程を経てして得られた膜に対し、飛行時間型2次イオン質量分析計(TOF-SIMS)により測定した、炭素に由来するフラグメントイオンのピーク強度cと、Si-O結合を有するセグメントに由来するフラグメントイオンのピーク強度sの比率c/sが0.015以上0.650である、請求項17から19のいずれかに記載の積層体の製造方法。
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