本開示の蓄電デバイス用外装材は、少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、前記基材層は、単層のポリエステルフィルムから構成されており、前記バリア層の少なくとも一方側の表面には、耐腐食性皮膜を備えており、前記耐腐食性皮膜について、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて分析した場合に、CePO4 -に由来するピーク強度PCePO4に対するPO2 -に由来するピーク強度PPO2の比PPO2/PCePO4が、90以上150以下の範囲内にあることを特徴とする。
以下、図1から図4を参照しながら、本開示の蓄電デバイス用外装材、当該蓄電デバイス用外装材の製造方法、及び当該蓄電デバイス用外装材を用いた蓄電デバイスについて、詳述する。
なお、本明細書において、「〜」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2〜15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。
1.蓄電デバイス用外装材の積層構造
本開示の蓄電デバイス用外装材は、例えば図1から図4に示すように、少なくとも、基材層1、バリア層3、及び熱融着性樹脂層4をこの順に有する積層体から構成されている。本開示の蓄電デバイス用外装材において、基材層1が最外層側になり、熱融着性樹脂層4は最内層になる。即ち、蓄電デバイスの組み立て時に、蓄電デバイス素子の周縁に位置する熱融着性樹脂層4同士が熱融着して蓄電デバイス素子を密封することにより、蓄電デバイス素子が封止される。
バリア層3の少なくとも一方側の表面には、耐腐食性皮膜を備えている。当該耐腐食性皮膜は、セリウムを含んでいる。図1から図4には、本開示の蓄電デバイス用外装材が、バリア層3の熱融着性樹脂層4側の表面に、耐腐食性皮膜3aを備える場合の模式図を示している。また、図2から図4には、本開示の蓄電デバイス用外装材が、バリア層3の両面に、それぞれ、耐腐食性皮膜3a,3bを備える場合の模式図を示している。なお、後述の通り、本開示の蓄電デバイス用外装材においては、バリア層3の熱融着性樹脂層4側の表面のみに、耐腐食性皮膜3aを備えていてもよいし、バリア層3の基材層1側の表面のみに、耐腐食性皮膜3bを備えていてもよいし、バリア層3の両面に、それぞれ、耐腐食性皮膜3a,3bを備えていてもよい。
本開示の蓄電デバイス用外装材は、図3及び図4に示すように、基材層1とバリア層3との間に、これらの接着性を高める目的で、必要に応じて、接着剤層2を備えていてもよい。また、図3及び図4に示すように、バリア層3と熱融着性樹脂層4との間に、これらの接着性を高める目的で、必要に応じて、接着層5を備えていてもよい。また、本開示の蓄電デバイス用外装材は、図4に示すように、意匠性、耐電解液性、耐擦過性、成形性の向上などを目的として、必要に応じて、基材層1のバリア層3とは反対側に、必要に応じて、表面被覆層6を備えていてもよい。
蓄電デバイス用外装材10を構成する積層体の厚みとしては、特に制限されないが、上限については、コスト削減、エネルギー密度向上等の観点からは、好ましくは約180μm以下、約155μm以下、約120μm以下が挙げられ、下限については、蓄電デバイス素子を保護するという蓄電デバイス用外装材の機能を維持する観点からは、好ましくは約35μm以上、約45μm以上、約60μm以上、約100μm以上が挙げられ、好ましい範囲については、例えば、35〜180μm程度、35〜155μm程度、35〜120μm程度、45〜180μm程度、45〜155μm程度、45〜120μm程度、60〜180μm程度、60〜155μm程度、100〜155μm程度、60〜120μm程度が挙げられ、これらの中でも100〜155μm程度が特に好ましい。
本開示の蓄電デバイス用外装材10において、蓄電デバイス用外装材10の積層構成のバランスなどを考慮すると、特に好ましい具体的な積層構成としては、以下の積層構成1,2が挙げられる。
積層構成1:単層のポリエチレンテレフタレートフィルムから構成された基材層1(厚さ22〜28μm)/接着剤層2(厚さ2〜5μm)/両面に後述の耐腐食性皮膜3a,3bが形成されたアルミニウム合金箔から構成されたバリア層3(厚さ35〜45μm)/酸変性ポリプロピレンから構成された接着層5(厚さ12〜18μm)/ポリプロピレンから構成された熱融着性樹脂層4(厚さ25〜35μm)がこの順に積層された積層構成。
積層構成2:単層のポリエチレンテレフタレートフィルムから構成された基材層1(厚さ22〜28μm)/接着剤層2(厚さ2〜5μm)/両面に後述の耐腐食性皮膜3a,3bが形成されたアルミニウム合金箔から構成されたバリア層3(厚さ35〜45μm)/酸変性ポリプロピレンから構成された接着層5(厚さ22〜28μm)/ポリプロピレンから構成された熱融着性樹脂層4(厚さ50〜60μm)がこの順に積層された積層構成。
なお、蓄電デバイス用外装材において、後述のバリア層3については、通常、その製造過程における縦方向(MD)と横方向(TD)を判別することができる。例えば、バリア層3がアルミニウム合金箔により構成されている場合、アルミニウム合金箔の圧延方向(RD:Rolling Direction)には、アルミニウム合金箔の表面に、いわゆる圧延痕と呼ばれる線状の筋が形成されている。圧延痕は、圧延方向に沿って伸びているため、アルミニウム合金箔の表面を観察することによって、アルミニウム合金箔の圧延方向を把握することができる。また、積層体の製造過程においては、通常、積層体のMDと、アルミニウム合金箔のRDとが一致するため、積層体のアルミニウム合金箔の表面を観察し、アルミニウム合金箔の圧延方向(RD)を特定することにより、積層体のMDを特定することができる。また、積層体のTDは、積層体のMDとは垂直方向であるため、積層体のTDについても特定することができる。
2.蓄電デバイス用外装材を形成する各層
[基材層1]
本開示において、基材層1は、蓄電デバイス用外装材の基材としての機能を発揮させることなどを目的として設けられる層である。基材層1は、蓄電デバイス用外装材10の外層側に位置する。
本開示において、基材層1は、単層のポリエステルフィルムから構成されている。より具体的には、本開示の蓄電デバイス用外装材10において、バリア層3よりも外側に存在するポリエステルフィルムは1層であり、当該ポリエステルフィルムが基材層1を構成している。
ポリエステルフィルムは、未延伸フィルムであってもよいし、延伸フィルムであってもよい。延伸フィルムとしては、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムが挙げられ、二軸延伸フィルムが好ましい。二軸延伸フィルムを形成する延伸方法としては、例えば、逐次二軸延伸法、インフレーション法、同時二軸延伸法等が挙げられる。
ポリエステルフィルムを構成するポリエステルとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、共重合ポリエステル等が挙げられる。また、共重合ポリエステルとしては、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等が挙げられる。具体的には、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてエチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/フェニル−ジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)等が挙げられる。これらのポリエステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ポリエステルフィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。なお、ポリエチレンテレフタレートフィルムを構成する主たる樹脂(例えば、80質量%以上、さらには90質量%以上)がポリエチレンテレフタレートであり、その他に、例えばポリブチレンテレフタレート等が含まれていてもよい。
基材層1を構成するポリエステルフィルムの表面及び内部の少なくとも一方には、滑剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤、耐電防止剤等の添加剤が存在していてもよい。添加剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
本開示において、蓄電デバイス用外装材の成形性を高める観点からは、基材層1の表面には、滑剤が存在していることが好ましい。滑剤としては、特に制限されないが、好ましくはアミド系滑剤が挙げられる。アミド系滑剤の具体例としては、例えば、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、脂肪酸エステルアミド、芳香族ビスアミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸アミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸アミドの具体例としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどが挙げられる。置換アミドの具体例としては、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミドなどが挙げられる。また、メチロールアミドの具体例としては、メチロールステアリン酸アミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドなどが挙げられる。脂肪酸エステルアミドの具体例としては、ステアロアミドエチルステアレートなどが挙げられる。また、芳香族ビスアミドの具体例としては、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドなどが挙げられる。滑剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
基材層1の表面に滑剤が存在する場合、その存在量としては、特に制限されないが、好ましくは約3mg/m2以上、より好ましくは4〜15mg/m2程度、さらに好ましくは5〜14mg/m2程度が挙げられる。
基材層1の表面に存在する滑剤は、基材層1を構成する樹脂に含まれる滑剤を滲出させたものであってもよいし、基材層1の表面に滑剤を塗布したものであってもよい。
基材層1の厚みについては、基材としての機能を発揮すれば特に制限されないが、好ましくは、3〜50μm程度、10〜35μm程度、22〜28μm程度が挙げられる。これらの中でも、基材層1の厚みは、特に22〜28μmの範囲にあることが特に好ましい。
基材層1を構成するポリエステルフィルムの少なくとも一方向(厚み方向とは垂直方向)の引張破断強度としては、好ましくは50〜90N/15mm程度、より好ましくは60〜80N/15mm程度が挙げられる。より具体的には、ポリエステルフィルムのMDの方向における引張破断強度としては、好ましくは50〜90N/15mm程度、より好ましくは60〜90N/15mm程度が挙げられる。また、ポリエステルフィルムのTDの方向における引張破断強度としては、好ましくは60〜80N/15mm程度、より好ましくは60〜75N/15mm程度が挙げられる。基材層1を構成するポリエステルフィルムの引張破断強度は、以下の方法により測定された値である。基材層1を構成するポリエステルフィルムの引張破断強度がこれらの範囲内にあることにより、本開示の蓄電デバイス用外装材の成形時のピンホールやクラックの発生を効果的に抑制して、成形性を高めることができる。基材層1を構成するポリエステルフィルムの引張破断強度は、ポリエステルフィルムを二軸延伸する際のTダイからの押出幅、延伸倍率、熱処理温度などを調整することにより制御することができる。
<ポリエステルフィルムの引張破断強度>
ポリエステルフィルムの縦方向(MD)、横方向(TD)における引張破断強度を、それぞれ、引張り試験機(例えば島津製作所製、AG−Xplus(商品名))を用いて測定する。なお、測定条件は、サンプル幅を15mmの矩形状、標線間距離を30mm、引張速度を50mm/分、試験環境は23℃とする。
本開示の蓄電デバイス用外装材の成形性を高める観点から、ポリエステルフィルムの引張破断強度は、縦方向(MD)、横方向(TD)の差が小さいことが好ましく、当該差は、0〜10N/15mm程度であることが好ましい。
[接着剤層2]
本開示の蓄電デバイス用外装材において、接着剤層2は、基材層1とバリア層3との接着性を高めることを目的として、必要に応じて、これらの間に設けられる層である。
接着剤層2は、基材層1とバリア層3とを接着可能である接着剤によって形成される。接着剤層2の形成に使用される接着剤は限定されないが、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。また、2液硬化型接着剤(2液性接着剤)であってもよく、1液硬化型接着剤(1液性接着剤)であってもよく、硬化反応を伴わない樹脂でもよい。また、接着剤層2は単層であってもよいし、多層であってもよい。
接着剤に含まれる接着成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、共重合ポリエステル等のポリエステル;ポリエーテル;ポリウレタン;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミド等のポリアミド;ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、酸変性環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリ酢酸ビニル;セルロース;(メタ)アクリル樹脂;ポリイミド;ポリカーボネート;尿素樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム;シリコーン樹脂等が挙げられる。これらの接着成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの接着成分の中でも、好ましくはポリウレタン接着剤が挙げられる。また、これらの接着成分となる樹脂は適切な硬化剤を併用して接着強度を高めることができる。前記硬化剤は、接着成分の持つ官能基に応じて、ポリイソシアネート、多官能エポキシ樹脂、オキサゾリン基含有ポリマー、ポリアミン樹脂、酸無水物などから適切なものを選択する。
ポリウレタン接着剤としては、例えば、ポリオール化合物を含有する主剤と、イソシアネート化合物を含有する硬化剤とを含むポリウレタン接着剤が挙げられる。好ましくはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびアクリルポリオール等のポリオールを主剤として、芳香族系又は脂肪族系のポリイソシアネートを硬化剤とした二液硬化型のポリウレタン接着剤が挙げられる。また、ポリオール化合物としては、繰り返し単位の末端の水酸基に加えて、側鎖にも水酸基を有するポリエステルポリオールを用いることが好ましい。接着剤層2がポリウレタン接着剤により形成されていることで蓄電デバイス用外装材に優れた電解液耐性が付与され、側面に電解液が付着しても基材層1が剥がれることが抑制される。
また、接着剤層2は、接着性を阻害しない限り他成分の添加が許容され、着色剤や熱可塑性エラストマー、粘着付与剤、フィラーなどを含有してもよい。接着剤層2が着色剤を含んでいることにより、蓄電デバイス用外装材を着色することができる。着色剤としては、顔料、染料などの公知のものが使用できる。また、着色剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
顔料の種類は、接着剤層2の接着性を損なわない範囲であれば、特に限定されない。有機顔料としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アンスラキノン系、ジオキサジン系、インジゴチオインジゴ系、ペリノン−ペリレン系、イソインドレニン系、ベンズイミダゾロン系等の顔料が挙げられ、無機顔料としては、カーボンブラック系、酸化チタン系、カドミウム系、鉛系、酸化クロム系、鉄系等の顔料が挙げられ、その他に、マイカ(雲母)の微粉末、魚鱗箔等が挙げられる。
着色剤の中でも、例えば蓄電デバイス用外装材の外観を黒色とするためには、カーボンブラックが好ましい。
顔料の平均粒子径としては、特に制限されず、例えば、0.05〜5μm程度、好ましくは0.08〜2μm程度が挙げられる。なお、顔料の平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定されたメジアン径とする。
接着剤層2における顔料の含有量としては、蓄電デバイス用外装材が着色されれば特に制限されず、例えば5〜60質量%程度、好ましくは10〜40質量%が挙げられる。
接着剤層2の厚みは、基材層1とバリア層3とを接着できれば、特に制限されないが、下限については、例えば、約1μm以上、約2μm以上が挙げられ、上限については、約10μm以下、約5μm以下が挙げられ、好ましい範囲については、1〜10μm程度、1〜5μm程度、2〜10μm程度、2〜5μm程度が挙げられ、これらの中でも2〜5μm程度が特に好ましい。
[着色層]
着色層は、基材層1とバリア層3との間に必要に応じて設けられる層である(図示を省略する)。接着剤層2を有する場合には、基材層1と接着剤層2との間、接着剤層2とバリア層3との間に着色層を設けてもよい。また、基材層1の外側に着色層を設けてもよい。着色層を設けることにより、蓄電デバイス用外装材を着色することができる。
着色層は、例えば、着色剤を含むインキを基材層1の表面、接着剤層2の表面、またはバリア層3の表面に塗布することにより形成することができる。着色剤としては、顔料、染料などの公知のものが使用できる。また、着色剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
着色層に含まれる着色剤の具体例としては、[接着剤層2]の欄で例示したものと同じものが例示される。
[バリア層3]
蓄電デバイス用外装材において、バリア層3は、少なくとも水分の浸入を抑止する層である。
バリア層3としては、例えば、バリア性を有する金属箔、蒸着膜、樹脂層などが挙げられる。蒸着膜としては金属蒸着膜、無機酸化物蒸着膜、炭素含有無機酸化物蒸着膜などが挙げられ、樹脂層としてはポリ塩化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)を主成分としたポリマー類やテトラフルオロエチレン(TFE)を主成分としたポリマー類やフルオロアルキル基を有するポリマー、およびフルオロアルキル単位を主成分としたポリマー類などのフッ素含有樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体などが挙げられる。また、バリア層3としては、これらの蒸着膜及び樹脂層の少なくとも1層を設けた樹脂フィルムなども挙げられる。バリア層3は、複数層設けてもよい。バリア層3は、金属材料により構成された層を含むことが好ましい。バリア層3を構成する金属材料としては、具体的には、アルミニウム合金、ステンレス鋼、チタン鋼、鋼板などが挙げられ、金属箔として用いる場合は、アルミニウム合金箔及びステンレス鋼箔の少なくとも一方を含むことが好ましい。
アルミニウム合金箔は、蓄電デバイス用外装材の成形性を向上させる観点から、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム合金などにより構成された軟質アルミニウム合金箔であることがより好ましく、より成形性を向上させる観点から、鉄を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。鉄を含むアルミニウム合金箔(100質量%)において、鉄の含有量は、0.1〜9.0質量%であることが好ましく、0.5〜2.0質量%であることがより好ましい。鉄の含有量が0.1質量%以上であることにより、より優れた成形性を有する蓄電デバイス用外装材を得ることができる。鉄の含有量が9.0質量%以下であることにより、より柔軟性に優れた蓄電デバイス用外装材を得ることができる。軟質アルミニウム合金箔としては、例えば、JIS H4160:1994 A8021H−O、JIS H4160:1994 A8079H−O、JIS H4000:2014 A8021P−O、又はJIS H4000:2014 A8079P−Oで規定される組成を備えるアルミニウム合金箔が挙げられる。また必要に応じて、ケイ素、マグネシウム、銅、マンガンなどが添加されていてもよい。
また軟質化は焼鈍処理などで行うことができる。
また、ステンレス鋼箔としては、オーステナイト系、フェライト系、オーステナイト・フェライト系、マルテンサイト系、析出硬化系のステンレス鋼箔などが挙げられる。さらに成形性に優れた蓄電デバイス用外装材を提供する観点から、ステンレス鋼箔は、オーステナイト系のステンレス鋼により構成されていることが好ましい。
ステンレス鋼箔を構成するオーステナイト系のステンレス鋼の具体例としては、SUS304、SUS301、SUS316Lなどが挙げられ、これら中でも、SUS304が特に好ましい。
バリア層3の厚みは、金属箔の場合、少なくとも水分の浸入を抑止するバリア層としての機能を発揮すればよく、例えば9〜200μm程度が挙げられる。バリア層3の厚みは、例えば、上限については、好ましくは約85μm以下、より好ましくは約50μm以下、さらに好ましくは約40μm以下、特に好ましくは約35μm以下が挙げられ、下限については、好ましくは約10μm以上、さらに好ましくは約20μm以上、より好ましくは約25μm以上が挙げられ、当該厚みの好ましい範囲としては、10〜85μm程度、10〜50μm程度、10〜40μm程度、10〜35μm程度、20〜85μm程度、20〜50μm程度、20〜40μm程度、20〜35μm程度、25〜85μm程度、25〜50μm程度、25〜40μm程度、25〜35μm程度が挙げられる。バリア層3がアルミニウム合金箔により構成されている場合、上述した範囲が特に好ましく、35〜45μm程度が特に好ましい。また、特に、バリア層3がステンレス鋼箔により構成されている場合、ステンレス鋼箔の厚みとしては、上限については、好ましくは約60μm以下、より好ましくは約50μm以下、さらに好ましくは約40μm以下、さらに好ましくは約30μm以下、特に好ましくは約25μm以下が挙げられ、下限については、好ましくは約10μm以上、より好ましくは約15μm以上が挙げられ、好ましい厚みの範囲としては、10〜60μm程度、10〜50μm程度、10〜40μm程度、10〜30μm程度、10〜25μm程度、15〜60μm程度、15〜50μm程度、15〜40μm程度、15〜30μm程度、15〜25μm程度が挙げられる。
[耐腐食性皮膜3a、3b]
本開示の蓄電デバイス用外装材においては、バリア層3の少なくとも一方側の表面に耐腐食性皮膜を備えている。本開示の蓄電デバイス用外装材においては、バリア層3の熱融着性樹脂層4側の表面のみに、耐腐食性皮膜3aを備えていてもよいし、バリア層3の基材層1側の表面のみに、耐腐食性皮膜3bを備えていてもよいし、バリア層3の両面に、それぞれ、耐腐食性皮膜3a,3bを備えていてもよい。
また、本開示の蓄電デバイス用外装材においては、耐腐食性皮膜について、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて分析した場合に、CePO4 -に由来するピーク強度PCePO4に対するPO2 -に由来するピーク強度PPO2の比PPO2/PCePO4が、90〜150の範囲内にあることを特徴としている。当該ピーク強度比PPO2/PCePO4、上記の範囲内にあればよいが、耐腐食性皮膜3a,3bのいずれについても、前記ピーク強度比PPO2/PCePO4が、上記の範囲内にあることが好ましい。特に、バリア層の熱融着性樹脂層側に位置している耐腐食性皮膜3aと、これに隣接する層(例えば、必要に応じて設けられる接着層5、熱融着性樹脂層4など)とは、電解液の浸透によって密着性が低下しやすいため、本開示の蓄電デバイス用外装材においては、バリア層3の少なくとも熱融着性樹脂層4側の表面に、耐腐食性皮膜3aを備えていることが好ましく、耐腐食性皮膜3aについての前記ピーク強度比PPO2/PCePO4が、上記の範囲内にあることが好ましい。これらの点については、以下に示す各ピーク強度比についても、同様である。
本開示において、CePO4 -に由来するピーク強度PCePO4に対するPO2 -に由来するピーク強度PPO2の比PPO2/PCePO4は、90〜150の範囲にあればよいが、耐腐食性皮膜を備えたバリア層の密着性をより高める観点から、比PPO2/PCePO4としては、下限は、好ましくは約110以上が挙げられ、上限は、好ましくは約130以下、より好ましくは約116以下が挙げられる。また、当該ピーク強度比PPO2/PCePO4の範囲としては、好ましくは90〜130程度、90〜116程度、110〜150程度、110〜130程度、110〜116程度が挙げられる。
耐腐食性皮膜3a,3bについて、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて分析する方法は、具体的には、飛行時間型2次イオン質量分析装置を用いて、次の測定条件で行うことができる。
(測定条件)
1次イオン:ビスマスクラスターのダブルチャージイオン(Bi3 ++)
1次イオン加速電圧:30 kV
質量範囲(m/z):0〜1500
測定範囲:100μm×100μm
スキャン数:16 scan/cycle
ピクセル数(1辺):256 pixel
エッチングイオン:Arガスクラスターイオンビーム(Ar−GCIB)
エッチングイオン加速電圧:5.0 kV
また、耐腐食性皮膜にセリウムが含まれていることは、X線光電子分光を用いて確認することができる。具体的には、まず、蓄電デバイス用外装材において、バリア層に積層されている層(接着剤層、熱融着性樹脂層、接着層など)を物理的に剥離する。次に、バリア層を電気炉に入れ、約300℃、約30分間で、バリア層の表面に存在している有機成分を除去する。その後、バリア層の表面のX線光電子分光を用いて、セリウムが含まれることを確認する。
耐腐食性皮膜3a,3bは、バリア層3の表面を、酸化セリウムなどのセリウム化合物を含む処理液で化成処理することにより形成することができる。
セリウム化合物を含む処理液を用いた化成処理としては、例えば、リン酸及び/またはその塩中に、酸化セリウムなどのセリウム化合物を分散させたものをバリア層3の表面に塗布し、焼付け処理を行うことにより、バリア層3の表面に耐腐食性皮膜を形成する方法が挙げられる。
耐腐食性皮膜3a,3bのピーク強度比PPO2/PCePO4は、例えば、耐腐食性皮膜3a,3bを形成する処理液の組成、処理後の焼付け処理の温度や時間等の製造条件などによって調整することができる。
セリウム化合物を含む処理液におけるセリウム化合物とリン酸及び/またはその塩との割合としては、特に制限されないが、上記ピーク強度比PPO2/PCePO4を上記の範囲内に設定する観点からは、セリウム化合物100質量部に対するリン酸及び/またはその塩の割合としては、好ましくは12〜28程度、より好ましくは15〜25質量部程度が挙げられる。リン酸及びその塩としては、例えば、縮合リン酸及びその塩を使用することもできる。
また、セリウム化合物を含む処理液には、アニオン性ポリマーと、該アニオン性ポリマーを架橋させる架橋剤をさらに含んでいてもよい。アニオン性ポリマーとしては、ポリ(メタ)アクリル酸またはその塩、(メタ)アクリル酸またはその塩を主成分とする共重合体などが挙げられる。また、架橋剤としては、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、オキサゾリン基のいずれかの官能基を有する化合物や、シランカップリング剤などが挙げられる。アニオン性ポリマー及び架橋剤は、それぞれ、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
また、優れた耐腐食性を発揮しつつ、耐腐食性皮膜を備えたバリア層の密着性を高める観点から、セリウム化合物を含む処理液には、アミノ化フェノール重合体が含まれることが好ましい。セリウム化合物を含む処理液において、アミノ化フェノール重合体の含有量としては、セリウム化合物100質量部に対して、好ましくは100〜400質量部程度、より好ましくは200〜300質量部程度が挙げられる。また、アミノ化フェノール重合体の重量平均分子量としては、好ましくは5000〜20000程度が挙げられる。なお、アミノ化フェノール重合体の重量平均分子量は、標準サンプルとしてポリスチレンを用いた条件で測定された、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定された値である。
セリウム化合物を含む処理液の溶媒としては、処理液に含まれる成分を分散させ、その後の加熱により蒸発させられるものであれば特に制限されないが、好ましくは水が挙げられる。セリウム化合物を含む処理液の固形分濃度としては、例えば、8〜30質量%程度が挙げられる。
耐腐食性皮膜を形成する処理液に含まれるセリウム化合物の固形分濃度としては、特に制限されないが、上記ピーク強度比PPO2/PCePO4を上記所定の範囲に設定して、優れた耐腐食性を発揮しつつ、耐腐食性皮膜を備えたバリア層の密着性を高める観点から、溶媒(水など)100質量部に対して、9.0〜10.0質量部程度とすることが好ましく、9.1〜10.0質量部程度とすることがより好ましい。
耐腐食性皮膜の厚さとしては、特に制限されないが、優れた耐腐食性を発揮しつつ、耐腐食性皮膜を備えたバリア層の密着性を高める観点から、好ましくは1nm〜10μm程度、より好ましくは1〜100nm程度、さらに好ましくは1〜50nm程度が挙げられる。なお、耐腐食性皮膜の厚さは、透過電子顕微鏡による観察、又は、透過電子顕微鏡による観察と、エネルギー分散型X線分光法もしくは電子線エネルギー損失分光法との組み合わせによって測定することができる。
同様の観点から、バリア層3の表面1m2当たりの耐腐食性皮膜の量としては、好ましくは2〜100mg程度、より好ましくは2〜70mg程度、さらに好ましくは2〜40mg程度が挙げられる。
処理液をバリア層3の表面に塗布する方法としては、例えば、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法などが挙げられる。
上記ピーク強度比PPO2/PCePO4をそれぞれ上記所定の範囲に設定して、優れた耐腐食性を発揮しつつ、耐腐食性皮膜を備えたバリア層の密着性を高める観点から、処理液を焼付けして耐腐食性皮膜にする際の加熱温度としては、好ましくは170〜250℃程度、より好ましくは180〜220℃程度、さらに好ましくは190〜220℃程度が挙げられる。また、同様の観点から、焼付けする時間としては、好ましくは2〜10秒程度、より好ましくは3〜6秒程度が挙げられる。
バリア層の表面の化成処理をより効率的に行う観点から、バリア層3の表面に耐腐食性皮膜を設ける前には、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法、酸活性化法などの公知の処理方法で脱脂処理を行うことが好ましい。
[熱融着性樹脂層4]
本開示の蓄電デバイス用外装材において、熱融着性樹脂層4は、最内層に該当し、蓄電デバイスの組み立て時に熱融着性樹脂層同士が熱融着して蓄電デバイス素子を密封する機能を発揮する層(シーラント層)である。
熱融着性樹脂層4を構成している樹脂については、熱融着可能であることを限度として特に制限されないが、ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィンなどのポリオレフィン骨格を含む樹脂が好ましい。熱融着性樹脂層4を構成している樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能である。また、熱融着性樹脂層4を構成している樹脂を赤外分光法で分析すると、無水マレイン酸に由来するピークが検出されることが好ましい。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。熱融着性樹脂層4が無水マレイン酸変性ポリオレフィンより構成された層である場合、赤外分光法にて測定すると、無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;エチレン−αオレフィン共重合体;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等のポリプロピレン;プロピレン−αオレフィン共重合体;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー等が挙げられる。これらの中でも、ポリプロピレンが好ましい。共重合体である場合のポリオレフィン樹脂は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。これらポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、ポリオレフィンは、環状ポリオレフィンであってもよい。環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。また、環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは環状アルケン、さらに好ましくはノルボルネンが挙げられる。
酸変性ポリオレフィンとは、ポリオレフィンを酸成分でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。酸変性されるポリオレフィンとしては、前記のポリオレフィンや、前記のポリオレフィンにアクリル酸若しくはメタクリル酸等の極性分子を共重合させた共重合体、又は、架橋ポリオレフィン等の重合体等も使用できる。また、酸変性に使用される酸成分としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボン酸またはその無水物が挙げられる。
酸変性ポリオレフィンは、酸変性環状ポリオレフィンであってもよい。酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、酸成分に代えて共重合することにより、または環状ポリオレフィンに対して酸成分をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。酸変性される環状ポリオレフィンについては、前記と同様である。また、酸変性に使用される酸成分としては、前記のポリオレフィンの変性に使用される酸成分と同様である。
好ましい酸変性ポリオレフィンとしては、カルボン酸またはその無水物で変性されたポリオレフィン、カルボン酸またはその無水物で変性されたポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
熱融着性樹脂層4は、1種の樹脂単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。さらに、熱融着性樹脂層4は、1層のみで形成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂によって2層以上で形成されていてもよい。
また、熱融着性樹脂層4は、必要に応じて滑剤などを含んでいてもよい。熱融着性樹脂層4が滑剤を含む場合、蓄電デバイス用外装材の成形性を高め得る。滑剤としては、特に制限されず、公知の滑剤を用いることができる。滑剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
滑剤としては、特に制限されないが、好ましくはアミド系滑剤が挙げられる。滑剤の具体例としては、基材層1で例示したものが挙げられる。滑剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
熱融着性樹脂層4の表面に滑剤が存在する場合、その存在量としては、特に制限されないが、蓄電デバイス用外装材の成形性を高める観点からは、好ましくは10〜50mg/m2程度、さらに好ましくは15〜40mg/m2程度が挙げられる。
熱融着性樹脂層4の表面に存在する滑剤は、熱融着性樹脂層4を構成する樹脂に含まれる滑剤を滲出させたものであってもよいし、熱融着性樹脂層4の表面に滑剤を塗布したものであってもよい。
また、熱融着性樹脂層4の厚みとしては、熱融着性樹脂層同士が熱融着して蓄電デバイス素子を密封する機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば約100μm以下、好ましくは約85μm以下、より好ましくは15〜85μm程度が挙げられる。例えば、後述の接着層5の厚みが10μm以上である場合には、熱融着性樹脂層4の厚みとしては、好ましくは、約85μm以下、25〜35μm程度、50〜60μm程度などが挙げられる。より具体的には、蓄電デバイス用外装材10の積層構成のバランスなどを考慮すると、接着層5の厚みが12〜18μm程度に設定されている場合には、熱融着性樹脂層4の厚みは25〜35μm程度とすることが好ましく、接着層5の厚みが22〜28μm程度に設定されている場合には、熱融着性樹脂層4の厚みは50〜60μm程度に設定することが好ましい。なお、例えば後述の接着層5の厚みが10μm未満である場合や接着層5が設けられていない場合には、熱融着性樹脂層4の厚みとしては、好ましくは約20μm以上、より好ましくは35〜85μm程度が挙げられる。
[接着層5]
本開示の蓄電デバイス用外装材において、接着層5は、バリア層3(又は耐腐食性皮膜3a)と熱融着性樹脂層4を強固に接着させるために、これらの間に必要に応じて設けられる層である。
接着層5は、バリア層3(又は耐腐食性皮膜3a)と熱融着性樹脂層4とを接着可能である樹脂によって形成される。接着層5の形成に使用される樹脂としては、例えば接着剤層2で例示した接着剤と同様のものが使用できる。なお、接着層5の形成に使用される樹脂としては、ポリオレフィン骨格を含んでいることが好ましく、前述の熱融着性樹脂層4で例示したポリオレフィン、酸変性ポリオレフィンが挙げられる。接着層5を構成している樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能であり、分析方法は特に問わない。また、接着層5を構成している樹脂を赤外分光法で分析すると、無水マレイン酸に由来するピークが検出されることが好ましい。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
バリア層3(又は耐腐食性皮膜3a)と熱融着性樹脂層4とを強固に接着する観点から、接着層5は、酸変性ポリオレフィンを含むことが好ましい。酸変性ポリオレフィンとしては、カルボン酸またはその無水物で変性されたポリオレフィン、カルボン酸またはその無水物で変性されたポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが特に好ましい。
さらに、蓄電デバイス用外装材の厚みを薄くしつつ、成形後の形状安定性に優れた蓄電デバイス用外装材とする観点からは、接着層5は、酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることがより好ましい。酸変性ポリオレフィンとしては、好ましくは、前記のものが例示できる。
また、接着層5は、酸変性ポリオレフィンと、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含む樹脂組成物の硬化物であることが好ましく、酸変性ポリオレフィンと、イソシアネート基を有する化合物及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含む樹脂組成物の硬化物であることが特に好ましい。また、接着層5は、ポリウレタン、ポリエステル、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ポリウレタン及びエポキシ樹脂を含むことがより好ましい。ポリエステルとしては、例えばアミドエステル樹脂が好ましい。アミドエステル樹脂は、一般的にカルボキシル基とオキサゾリン基の反応で生成する。接着層5は、これらの樹脂のうち少なくとも1種と前記酸変性ポリオレフィンを含む樹脂組成物の硬化物であることがより好ましい。なお、接着層5に、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、エポキシ樹脂などの硬化剤の未反応物が残存している場合、未反応物の存在は、例えば、赤外分光法、ラマン分光法、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)などから選択される方法で確認することが可能である。
また、バリア層3(又は耐腐食性皮膜3a)と接着層5との密着性をより高める観点から、接着層5は、酸素原子、複素環、C=N結合、及びC−O−C結合からなる群より選択される少なくとも1種を有する硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることが好ましい。複素環を有する硬化剤としては、例えば、オキサゾリン基を有する硬化剤、エポキシ基を有する硬化剤などが挙げられる。また、C=N結合を有する硬化剤としては、オキサゾリン基を有する硬化剤、イソシアネート基を有する硬化剤などが挙げられる。また、C−O−C結合を有する硬化剤としては、オキサゾリン基を有する硬化剤、エポキシ基を有する硬化剤、ポリウレタンなどが挙げられる。接着層5がこれらの硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることは、例えば、ガスクロマトグラフ質量分析(GCMS)、赤外分光法(IR)、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)、X線光電子分光法(XPS)などの方法で確認することができる。
イソシアネート基を有する化合物としては、特に制限されないが、バリア層3(又は耐腐食性皮膜3a)と接着層5との密着性を効果的に高める観点からは、好ましくは多官能イソシアネート化合物が挙げられる。多官能イソシアネート化合物は、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されない。多官能イソシアネート系硬化剤の具体例としては、ペンタンジイソシアネート(PDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、これらをポリマー化やヌレート化したもの、これらの混合物や他ポリマーとの共重合物などが挙げられる。また、アダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体などが挙げられる。
接着層5における、イソシアネート基を有する化合物の含有量としては、接着層5を構成する樹脂組成物中、0.1〜50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、バリア層3(又は耐腐食性皮膜3a)と接着層5との密着性を効果的に高めることができる。
オキサゾリン基を有する化合物は、オキサゾリン骨格を備える化合物であれば、特に限定されない。オキサゾリン基を有する化合物の具体例としては、ポリスチレン主鎖を有するもの、アクリル主鎖を有するものなどが挙げられる。また、市販品としては、例えば、日本触媒社製のエポクロスシリーズなどが挙げられる。
接着層5における、オキサゾリン基を有する化合物の割合としては、接着層5を構成する樹脂組成物中、0.1〜50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、バリア層3(又は耐腐食性皮膜3a)と接着層5との密着性を効果的に高めることができる。
エポキシ基を有する化合物としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、分子内に存在するエポキシ基によって架橋構造を形成することが可能な樹脂であれば、特に制限されず、公知のエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂の重量平均分子量としては、好ましくは50〜2000程度、より好ましくは100〜1000程度、さらに好ましくは200〜800程度が挙げられる。なお、本開示において、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、標準サンプルとしてポリスチレンを用いた条件で測定された、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定された値である。
エポキシ樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパンのグリシジルエーテル誘導体、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
接着層5における、エポキシ樹脂の割合としては、接着層5を構成する樹脂組成物中、0.1〜50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、バリア層3と接着層5との密着性を効果的に高めることができる。
ポリウレタンとしては、特に制限されず、公知のポリウレタンを使用することができる。接着層5は、例えば、2液硬化型ポリウレタンの硬化物であってもよい。
接着層5における、ポリウレタンの割合としては、接着層5を構成する樹脂組成物中、0.1〜50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、電解液などのバリア層の腐食を誘発する成分が存在する雰囲気における、バリア層3(又は耐腐食性皮膜3a)と接着層5との密着性を効果的に高めることができる。
なお、接着層5が、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種と、前記酸変性ポリオレフィンとを含む樹脂組成物の硬化物である場合、酸変性ポリオレフィンが主剤として機能し、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物は、それぞれ、硬化剤として機能する。
接着層5の厚さは、上限については、好ましくは、約50μm以下、約40μm以下、約30μm以下、約20μm以下、約5μm以下が挙げられ、下限については、好ましくは、約0.1μm以上、約0.5μm以上が挙げられ、当該厚さの範囲としては、好ましくは、0.1〜50μm程度、0.1〜40μm程度、0.1〜30μm程度、0.1〜20μm程度、0.1〜5μm程度、0.5〜50μm程度、0.5〜40μm程度、0.5〜30μm程度、0.5〜20μm程度、0.5〜5μm程度が挙げられる。より具体的には、接着剤層2で例示した接着剤や、酸変性ポリオレフィンと硬化剤との硬化物である場合は、好ましくは1〜10μm程度、より好ましくは1〜5μm程度が挙げられる。また、熱融着性樹脂層4で例示した樹脂を用いる場合であれば、好ましくは、2〜50μm程度、10〜40μm程度、12〜18μm程度、22〜28μm程度などが挙げられる。前述の通り、蓄電デバイス用外装材10の積層構成のバランスなどを考慮すると、接着層5の厚みが12〜18μm程度に設定されている場合には、熱融着性樹脂層4の厚みは25〜35μm程度とすることが好ましく、接着層5の厚みが22〜28μm程度に設定されている場合には、熱融着性樹脂層4の厚みは50〜60μm程度に設定することが好ましい。なお、接着層5が接着剤層2で例示した接着剤や、酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である場合、例えば、当該樹脂組成物を塗布し、加熱等により硬化させることにより、接着層5を形成することができる。また、熱融着性樹脂層4で例示した樹脂を用いる場合、例えば、熱融着性樹脂層4と接着層5との押出成形により形成することができる。
[表面被覆層6]
本開示の蓄電デバイス用外装材は、意匠性、耐電解液性、耐傷性、成形性などの向上の少なくとも一つを目的として、必要に応じて、基材層1の上(基材層1のバリア層3とは反対側)に、表面被覆層6を備えていてもよい。表面被覆層6は、蓄電デバイス用外装材を用いて蓄電デバイスを組み立てた時に、蓄電デバイス用外装材の最外層側に位置する層である。
表面被覆層6は、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂により形成することができる。
表面被覆層6を形成する樹脂が硬化型の樹脂である場合、当該樹脂は、1液硬化型及び2液硬化型のいずれであってもよいが、好ましくは2液硬化型である。2液硬化型樹脂としては、例えば、2液硬化型ポリウレタン、2液硬化型ポリエステル、2液硬化型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でも2液硬化型ポリウレタンが好ましい。
2液硬化型ポリウレタンとしては、例えば、ポリオール化合物を含有する主剤と、イソシアネート化合物を含有する硬化剤とを含むポリウレタンが挙げられる。好ましくはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびアクリルポリオール等のポリオールを主剤として、芳香族系又は脂肪族系のポリイソシアネートを硬化剤とした二液硬化型のポリウレタンが挙げられる。また、ポリオール化合物としては、繰り返し単位の末端の水酸基に加えて、側鎖にも水酸基を有するポリエステルポリオールを用いることが好ましい。表面被覆層6がポリウレタンにより形成されていることで蓄電デバイス用外装材に優れた電解液耐性が付与される。
表面被覆層6は、表面被覆層6の表面及び内部の少なくとも一方には、該表面被覆層6やその表面に備えさせるべき機能性等に応じて、必要に応じて、前述した滑剤や、アンチブロッキング剤、艶消し剤、難燃剤、酸化防止剤、粘着付与剤、耐電防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、平均粒子径が0.5nm〜5μm程度の微粒子が挙げられる。添加剤の平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定されたメジアン径とする。
添加剤は、無機物及び有機物のいずれであってもよい。また、添加剤の形状についても、特に制限されず、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、鱗片状などが挙げられる。
添加剤の具体例としては、タルク、シリカ、グラファイト、カオリン、モンモリロナイト、マイカ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化セリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸リチウム、安息香酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、アルミナ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、高融点ナイロン、アクリレート樹脂、架橋アクリル、架橋スチレン、架橋ポリエチレン、ベンゾグアナミン、金、アルミニウム、銅、ニッケルなどが挙げられる。添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの添加剤の中でも、分散安定性やコストなどの観点から、好ましくはシリカ、硫酸バリウム、酸化チタンが挙げられる。また、添加剤には、表面に絶縁処理、高分散性処理などの各種表面処理を施してもよい。
表面被覆層6を形成する方法としては、特に制限されず、例えば、表面被覆層6を形成する樹脂を塗布する方法が挙げられる。表面被覆層6に添加剤を配合する場合には、添加剤を混合した樹脂を塗布すればよい。
表面被覆層6の厚みとしては、表面被覆層6としての上記の機能を発揮すれば特に制限されず、例えば0.5〜10μm程度、好ましくは1〜5μm程度が挙げられる。
3.蓄電デバイス用外装材の製造方法
蓄電デバイス用外装材の製造方法については、本開示の蓄電デバイス用外装材が備える各層を積層させた積層体が得られる限り、特に制限されず、少なくとも、基材層1、バリア層3、及び熱融着性樹脂層4がこの順となるように積層する工程を備える方法が挙げられる。すなわち、本開示の蓄電デバイス用外装材の製造方法は、少なくとも、基材層1と、バリア層3と、熱融着性樹脂層4とがこの順となるように積層して積層体を得る工程を備えており、基材層1は、単層のポリエステルフィルムから構成されており、バリア層3の少なくとも一方側の表面には、耐腐食性皮膜を備えており、耐腐食性皮膜について、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて分析した場合に、CePO4 -に由来するピーク強度PCePO4に対するPO2 -に由来するピーク強度PPO2の比PPO2/PCePO4が、90以上150以下の範囲内にあることを特徴としている。
本開示の蓄電デバイス用外装材の製造方法の一例としては、以下の通りである。まず、基材層1、接着剤層2、少なくとも一方側の表面に耐腐食性皮膜を備えるバリア層3が順に積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。積層体Aの形成は、具体的には、基材層1上又は表面が化成処理されたバリア層3に接着剤層2の形成に使用される接着剤を、グラビアコート法、ロールコート法などの塗布方法で塗布、乾燥した後に、当該バリア層3又は基材層1を積層させて接着剤層2を硬化させるドライラミネート法によって行うことができる。
次いで、積層体Aのバリア層3上に、熱融着性樹脂層4を積層させる。バリア層3上に熱融着性樹脂層4を直接積層させる場合には、積層体Aのバリア層3上に、熱融着性樹脂層4をサーマルラミネート法、押出ラミネート法などの方法により積層すればよい。また、バリア層3と熱融着性樹脂層4の間に接着層5を設ける場合には、例えば、(1)積層体Aのバリア層3上に、接着層5及び熱融着性樹脂層4を押出しすることにより積層する方法(共押出しラミネート法、タンデムラミネート法)、(2)別途、接着層5と熱融着性樹脂層4が積層した積層体を形成し、これを積層体Aのバリア層3上にサーマルラミネート法により積層する方法や、積層体Aのバリア層3上に接着層5が積層した積層体を形成し、これを熱融着性樹脂層4とサーマルラミネート法により積層する方法、(3)積層体Aのバリア層3と、予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層4との間に、溶融させた接着層5を流し込みながら、接着層5を介して積層体Aと熱融着性樹脂層4を貼り合せる方法(サンドイッチラミネート法)、(4)積層体Aのバリア層3上に、接着層5を形成させるための接着剤を溶液コーティングし、乾燥させる方法や、さらには焼き付ける方法などにより積層させ、この接着層5上に予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層4を積層する方法などが挙げられる。
表面被覆層6を設ける場合には、基材層1のバリア層3とは反対側の表面に、表面被覆層6を積層する。表面被覆層6は、例えば表面被覆層6を形成する上記の樹脂を基材層1の表面に塗布することにより形成することができる。なお、基材層1の表面にバリア層3を積層する工程と、基材層1の表面に表面被覆層6を積層する工程の順番は、特に制限されない。例えば、基材層1の表面に表面被覆層6を形成した後、基材層1の表面被覆層6とは反対側の表面にバリア層3を形成してもよい。
上記のようにして、必要に応じて設けられる表面被覆層6/基材層1/必要に応じて設けられる接着剤層2/少なくとも一方側の表面に耐腐食性皮膜を備えるバリア層3/必要に応じて設けられる接着層5/熱融着性樹脂層4をこの順に備える積層体が形成されるが、必要に応じて設けられる接着剤層2の接着性を強固にするために、さらに、加熱処理に供してもよい。
蓄電デバイス用外装材において、積層体を構成する各層には、必要に応じて、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理などの表面活性化処理を施すことにより加工適性を向上させてもよい。例えば、基材層1のバリア層3とは反対側の表面にコロナ処理を施すことにより、基材層1表面へのインクの印刷適性を向上させることができる。
4.蓄電デバイス用外装材の用途
本開示の蓄電デバイス用外装材は、正極、負極、電解質などの蓄電デバイス素子を密封して収容するための包装体に使用される。すなわち、本開示の蓄電デバイス用外装材によって形成された包装体中に、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子を収容して、蓄電デバイスとすることができる。なお、本開示の蓄電デバイス用外装材において、前記のピーク強度などは、蓄電デバイスから蓄電デバイス用外装材を切り出して分析することができる。蓄電デバイスから蓄電デバイス用外装材を切り出す場合には、蓄電デバイスの天面、底面など、熱融着性樹脂層同士が熱融着されていない部分からサンプルを取得して分析に供する。
具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子を、本開示の蓄電デバイス用外装材で、前記正極及び負極の各々に接続された金属端子が外側に突出させた状態で、蓄電デバイス素子の周縁にフランジ部(熱融着性樹脂層同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、前記フランジ部の熱融着性樹脂層同士をヒートシールして密封させることによって、蓄電デバイス用外装材を使用した蓄電デバイスが提供される。なお、本開示の蓄電デバイス用外装材により形成された包装体中に蓄電デバイス素子を収容する場合、本開示の蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂部分が内側(蓄電デバイス素子と接する面)になるようにして、包装体を形成する。
本開示の蓄電デバイス用外装材は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である。本開示の蓄電デバイス用外装材が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシターなどが挙げられる。これらの二次電池の中でも、本開示の電池用外装材の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
本開示の蓄電デバイス用外装材において、当該耐腐食性皮膜を備えるバリア層は、長期間にわって密着性を保持することができる。このため、本開示の蓄電デバイス用外装材は、例えばハイブリッド自動車、電気自動車などの車両などに使用される大型の蓄電デバイスの外装材として、特に有用である。
以下に、実施例及び比較例を示して本開示を詳細に説明する。ただし、本開示は、実施例に限定されない。
<蓄電デバイス用外装材の製造>
実施例1
基材層として、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、厚さ25μm)を用意した。次に、後述の方法で両面に化成処理を施して、耐腐食性皮膜(厚さ20nm)を備えたアルミニウム合金箔(JIS H4160:1994 A8021H−O、厚さ40μm)から構成されるバリア層を、基材層の表面にドライラミネート法により積層させた。具体的には、耐腐食性皮膜を備えたアルミニウム合金箔の一方面に、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)を塗布し、接着剤層(厚さ3μm)を形成した。次いで、耐腐食性皮膜を備えたバリア層上の接着剤層と、基材層を積層した後、エージング処理を実施することにより、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/接着剤層/両面に耐腐食性皮膜を備えたバリア層の積層体を作製した。
次に、得られた積層体の耐腐食性皮膜の表面に、接着層としての無水マレイン酸変性ポリプロピレンと、熱融着性樹脂層としてランダムポリプロピレンとを共押出しすることにより、接着層(厚さ15μm)と熱融着性樹脂層(厚さ30μm)を積層させた。次に、得られた積層体をエージングすることにより、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(基材層 25μm)/接着剤層(3μm)/両面に耐腐食性皮膜(20nm)を備えたバリア層(40μm)/酸変性ポリプロピレン(接着層 15μm)/ランダムポリプロピレン(熱融着性樹脂層 30μm)がこの順に積層された蓄電デバイス用外装材を得た。
バリア層の表面における耐腐食性皮膜は、酸化セリウム100質量部に対して、無機リン化合物(リン酸ナトリウム塩)が20質量部配合された処理液(溶媒として水が含まれており、固形分濃度が10質量%程度)を用意し、バリア層の両面に当該処理液を塗布し(乾燥後の膜厚が20nm)、バリア層の表面温度が190℃程度となる温度で、3秒間程度、加熱乾燥させることにより形成した。
実施例2
実施例1において、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/接着剤層/両面に耐腐食性皮膜を備えたバリア層の積層体の耐腐食性皮膜の表面に、接着層としての無水マレイン酸変性ポリプロピレンと、熱融着性樹脂層としてランダムポリプロピレンとを共押出しすることにより、接着層(厚さ25μm)と熱融着性樹脂層(厚さ55μm)を積層させたこと以外は、実施例1と同様にして、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(基材層 25μm)/接着剤層(3μm)/両面に耐腐食性皮膜(20nm)を備えたバリア層(40μm)/酸変性ポリプロピレン(接着層 25μm)/ランダムポリプロピレン(熱融着性樹脂層 55μm)がこの順に積層された蓄電デバイス用外装材を得た。なお、バリア層としてのアルミニウム合金箔は、実施例1と同じ耐腐食性皮膜を備えるものを用いた。
比較例1
基材層としての2軸延伸ナイロンフィルム(25μm)の表面に、後述の方法で両面に化成処理を施して、クロムを含む耐腐食性皮膜(厚さ20nm)を備えたアルミニウム合金箔(JIS H4160:1994 A8021H−O、厚さ40μm)から構成されるバリア層をドライラミネート法により積層させた。具体的には、耐腐食性皮膜を備えたアルミニウム合金箔の一方面に、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)を塗布し、接着剤層(厚さ3μm)を形成した。次いで、耐腐食性皮膜を備えたバリア層上の接着剤層と、基材層として2軸延伸ナイロンフィルムを積層した後、エージング処理を実施することにより、2軸延伸ナイロンフィルム/接着剤層/両面に耐腐食性皮膜を備えたバリア層の積層体を作製した。
次に、得られた積層体の耐腐食性皮膜の表面に、接着層として、カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂と多官能イソシアネート化合物からなる接着剤(硬化後の厚さが3μm)を塗布し、乾燥させた。その積層体の接着剤側に、第1の熱融着性樹脂層として未延伸の積層ポリプロピレンフィルム(ランダムポリプロピレン(厚さ4μm)/ブロックポリプロピレン(厚さ22μm)/ランダムポリプロピレン(厚さ4μm)、合計厚さ30μm)を積層し、加熱した2つのロール間を通過させて接着した。さらに、その上から、第2の熱融着性樹脂層としてのランダムポリプロピレン(厚さ20μm)を押出すことにより、バリア層上に接着層/熱融着性樹脂層(2層)を積層させた。次に、得られた積層体をエージングすることにより、2軸延伸ナイロンフィルム(25μm)/接着剤層(3μm)/両面に耐腐食性皮膜(厚さ20nm)を備えたバリア層(40μm)/接着層(3μm)/未延伸の積層ポリプロピレンフィルム(30μm)/ランダムポリプロピレン(20μm)がこの順に積層された蓄電デバイス用外装材を得た。
バリア層の表面における耐腐食性皮膜の形成は、次のようにして行った。水100質量に対して、アミノ化フェノール重合体43質量部、フッ化クロム16質量部、リン酸13質量部を含む処理液を用意し、バリア層の両面に当該処理液を塗布し(乾燥後の膜厚が20nm)、バリア層の表面温度が190℃程度となる温度で、3秒間程度、加熱乾燥させた。
比較例2
熱融着性樹脂層として、ランダムポリプロピレン(厚さ20μm)の代わりに、ランダムポリプロピレン(厚さ50μm)を押出したこと以外は、比較例1と同様にして、2軸延伸ナイロンフィルム(25μm)/接着剤層(3μm)/両面に耐腐食性皮膜(厚さ20nm)を備えたバリア層(40μm)/接着層(3μm)/未延伸の積層ポリプロピレンフィルム(30μm)/ランダムポリプロピレン(50μm)がこの順に積層された蓄電デバイス用外装材を得た。なお、バリア層としてのアルミニウム合金箔は、比較例1と同じ耐腐食性皮膜を備えるものを用いた。
比較例3,4
基材層として、ポリエチレンテレフタレートとナイロンとが共押出しにより積層され、2軸延伸した積層フィルムを用意した。当該積層フィルムにおいて、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ5μm)と2軸延伸ナイロンフィルム(厚さ20μm)との間は、不飽和カルボン酸誘導体成分でグラフト変性した変性熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を用いた接着剤層(接着剤、厚さ1μm)により接着されている。次に、後述の方法で両面に化成処理を施して、耐腐食性皮膜(厚さ20nm)を備えたアルミニウム合金箔(JIS H4160:1994 A8021H−O、厚さ40μm)から構成されるバリア層を、2軸延伸ナイロンフィルム側の表面にドライラミネート法により積層させた。具体的には、耐腐食性皮膜を備えたアルミニウム合金箔の一方面に、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)を塗布し、接着剤層(厚さ3μm)を形成した。次いで、耐腐食性皮膜を備えたバリア層上の接着剤層と、基材層の2軸延伸ナイロンフィルム側を積層した後、エージング処理を実施することにより、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/接着剤/2軸延伸ナイロンフィルム/接着剤層/両面に耐腐食性皮膜を備えたバリア層の積層体を作製した。
次に、得られた積層体の耐腐食性皮膜の表面に、接着層として、カルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂と多官能イソシアネート化合物からなる接着剤(硬化後の厚さが3μm)を塗布し、乾燥させた。その積層体の接着剤側に、熱融着性樹脂層として、未延伸の積層ポリプロピレンフィルム(ランダムポリプロピレン(厚さ5μm)/ブロックポリプロピレン(厚さ30μm)/ランダムポリプロピレン(厚さ5μm)、合計厚さ40μm)を積層し、加熱した2つのロール間を通過させて接着することにより、バリア層上に接着層/熱融着性樹脂層を積層させた。次に、得られた積層体を硬化(エージング)することにより、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(5μm)/接着剤(1μm)/2軸延伸ナイロンフィルム(20μm)/接着剤層(3μm)/両面に耐腐食性皮膜(厚さ20nm)を備えたバリア層(40μm)/接着層(3μm)/未延伸の積層ポリプロピレンフィルム(40μm)がこの順に積層された蓄電デバイス用外装材を得た。
バリア層の表面における耐腐食性皮膜は、バリア層の表面における耐腐食性皮膜の形成を、比較例3では、リン酸が実施例1の半分(質量比)程度、比較例4では、リン酸が実施例の1.5倍(質量比)程度となるようにして行ったこと以外は、実施例1と同様にして、それぞれ、蓄電デバイス用外装材を得た。
<飛行時間型2次イオン質量分析>
耐腐食性皮膜の分析は、次のようにして行った。まず、バリア層と接着層との間を引き剥がした。この際、水や有機溶剤、酸やアルカリの水溶液などを利用せずに、物理的に剥離させた。バリア層と接着層との間を剥離した後には、バリア層の表面に接着層が残存していたため、残存している接着層をAr−GCIBによるエッチングで除去した。このようにして得られたバリア層の表面について、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて、耐腐食性皮膜の分析を行った。それぞれ、CePO4 -及びPO2 -に由来するピーク強度PCePO4及びPPO2と、ピーク強度PCePO4に対するピーク強度PPO2の比PPO2/PCePO4を、それぞれ、表1に示す。なお、比較例1,2においては、化成処理の処理液にクロムが使用されており、セリウムは使用されていないため、表1には、CePO4 -のピーク強度PCePO4に関する項目について「−」で示した。
飛行時間型2次イオン質量分析法の測定装置及び測定条件の詳細は次の通りである。
測定装置:ION−TOF社製 飛行時間型2次イオン質量分析装置TOF.SIMS5(測定条件)
1次イオン:ビスマスクラスターのダブルチャージイオン(Bi3 ++)
1次イオン加速電圧:30 kV
質量範囲(m/z):0〜1500
測定範囲:100μm×100μm
スキャン数:16 scan/cycle
ピクセル数(1辺):256 pixel
エッチングイオン:Arガスクラスターイオンビーム(Ar−GCIB)
エッチングイオン加速電圧:5.0 kV
<密着性の評価>
以下の方法により、蓄電デバイス用外装材に電解液が付着した場合のバリア層と熱融着性樹脂層との間の密着性の評価を、剥離強度(N/15mm)を測定することにより行った。
まず、上記で得られた各蓄電デバイス用外装材をそれぞれ、15mm(TD:Transverse Direction、横方向)、100mm(MD:Machine Direction、縦方向)のサイズに裁断して試験片とした。ガラス瓶に試験片を入れ、さらに電解液(エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート:ジメチルカーボネート=1:1:1の容積比で混合した溶液に6フッ化リン酸リチウム(溶液中濃度1×103mol/m3))を入れて、試験片の全体が電解液に浸漬されるようにした。この状態でガラス瓶に蓋をして密封した。密封したガラス瓶を、85℃に設定されたオーブン内に入れ、24時間静置した。次に、ガラス瓶をオーブンから取り出し、さらに試験片をガラス瓶から取り出して水洗し、試験片の表面の水分をタオルで拭き取った。
次に、試験片の熱融着性樹脂層とバリア層間を剥離させ、試験片の熱融着性樹脂層側とバリア層側とを引張試験機(島津製作所製の商品名AGS−XPlus)を用いて、標線間距離50mm、50mm/分の速度で180°の方向に引張り、試験片の剥離強度(N/15mm)を測定した。なお、試験片の剥離強度の測定は、試験片の表面の水分をタオルで拭き取ってから10分以内に行った。標線間距離が57mmに達した際の強度を試験片の剥離強度とした。
一方、初期密着性を次のようにして評価した。まず、実施例1,2及び比較例1〜4で得られた各蓄電デバイス用外装材を15mm(TD)、100mm(MD)のサイズに裁断して試験片とした。次に、試験片の熱融着性樹脂層とバリア層間を剥離させ、熱融着性樹脂層とバリア層とを引張試験機(島津製作所製の商品名AGS−XPlus)を用いて、標線間距離50mm、50mm/分の速度で180°の方向に引張り、試験片の剥離強度(N/15mm)を測定し、初期密着性とした。結果を表1に示す。なお、熱融着性樹脂層とバリア層間を剥離させた際、これらの層の間に位置する接着層は、熱融着性樹脂層とバリア層のいずれか一方又は両層に積層された状態となる。
<基材層の引張破断強度>
実施例1,2で基材層として用いた2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと、比較例1,2で基材層として使用した2軸延伸ナイロンフィルムについて、それぞれ、縦方向(MD)、横方向(TD)における引張破断強度を、引張り試験機(島津製作所製、AG−Xplus(商品名))を用いて測定した。なお、測定条件は、サンプル幅を15mmの矩形状、標線間距離を30mm、引張速度を50mm/分、試験環境は23℃とした。結果を表1に示す。
表1において、PETはポリエチレンテレフタレートフィルム、DLはドライラミネート法により形成された接着剤層又は接着層、ALMはアルミニウム合金箔、PPaは無水マレイン酸変性ポリプロピレン、PPはポリプロピレン、CPPは未延伸の積層ポリプロピレンフィルム、Nyはナイロンフィルム、ADはPETとNyとの接着層を意味している。また、各層に付された数値は厚み(μm)を意味しており、例えば「PET25」との表記は、「厚さが25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム」を意味している。
表1に示される結果から明らかなとおり、基材層が単層のポリエステルフィルムから構成されており、バリア層の少なくとも一方側の表面には、耐腐食性皮膜を備えており、耐腐食性皮膜について、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて分析した場合に、CePO4 -に由来するピーク強度PCePO4に対するPO2 -に由来するピーク強度PPO2の比PPO2/PCePO4が、90〜150の範囲内にある実施例1、2の蓄電デバイス用外装材は、バリア層の表面に耐腐食性皮膜を備えているにも拘わらず、電解液浸漬後において、バリア層と熱融着性樹脂層との間の密着性に優れることが分かる。
以上の通り、本開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、
前記基材層は、単層のポリエステルフィルムから構成されており、
前記バリア層の少なくとも一方側の表面には、耐腐食性皮膜を備えており、
前記耐腐食性皮膜について、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて分析した場合に、CePO4 -に由来するピーク強度PCePO4に対するPO2 -に由来するピーク強度PPO2の比PPO2/PCePO4が、90以上150以下の範囲内にある、蓄電デバイス用外装材。
項2. 前記バリア層の少なくとも前記熱融着性樹脂層側の表面に、前記耐腐食性皮膜を備えている、項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
項3. 前記耐腐食性皮膜と前記熱融着性樹脂層とが、接着層を介して積層されている、項2に記載の蓄電デバイス用外装材。
項4. 前記接着層を構成している樹脂は、ポリオレフィン骨格を有している、項3に記載の蓄電デバイス用外装材。
項5. 前記接着層が、酸変性ポリオレフィンを含む、項3又は4に記載の蓄電デバイス用外装材。
項6. 前記接着層を赤外分光法で分析すると、無水マレイン酸に由来するピークが検出される、項3〜5のいずれかに記載の蓄電デバイス用外装材。
項7. 前記接着層の前記酸変性ポリオレフィンが、無水マレイン酸変性ポリプロピレンであり、
前記熱融着性樹脂層が、ポリプロピレンを含む、項6に記載の蓄電デバイス用外装材。
項8. 前記接着層が、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む樹脂組成物の硬化物である、項3〜7のいずれかに記載の蓄電デバイス用外装材。
項9. 前記接着層が、酸素原子、複素環、C=N結合、及びC−O−C結合からなる群より選択される少なくとも1種を有する硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である、項3〜8のいずれかに記載の蓄電デバイス用外装材。
項10.
前記接着層が、ウレタン樹脂、エステル樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む、項3〜9のいずれかに記載の蓄電デバイス用外装材。
項11. 前記バリア層が、アルミニウム合金箔により構成されている、項1〜10のいずれかに記載の蓄電デバイス用外装材。
項12. 前記熱融着性樹脂層を構成している樹脂が、ポリオレフィン骨格を含んでいる、項1〜11のいずれかに記載の蓄電デバイス用外装材。
項13. モバイル機器の蓄電デバイスに使用される包装材料である、項1〜12のいずれかに記載の蓄電デバイス用外装材。
項14. 少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とがこの順となるように積層して積層体を得る工程を備えており、
前記基材層は、単層のポリエステルフィルムから構成されており、
前記バリア層の少なくとも一方側の表面には、耐腐食性皮膜を備えており、
前記耐腐食性皮膜について、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて分析した場合に、CePO4 -に由来するピーク強度PCePO4に対するPO2 -に由来するピーク強度PPO2の比PPO2/PCePO4が、90以上150以下の範囲内にある、蓄電デバイス用外装材の製造方法。
項15. 少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子が、項1〜13のいずれかに記載の蓄電デバイス用外装材により形成された包装体中に収容されている、蓄電デバイス。