JP7321444B2 - 紫外線硬化型塗料組成物、硬化膜、硬化膜を備えた物品 - Google Patents
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Description
ところが、着色顔料や光輝顔料を含む着色用の紫外線硬化型塗料は、紫外線硬化時に、塗膜中に含まれている着色顔料や光輝顔料が紫外線を反射・吸収するため、塗膜の深部まで紫外線が届かず硬化不良が起きるといった問題が発生する傾向がある。
また、紫外線が均一に届かず、塗膜表面が均一に硬化しないため「硬化ムラ」が発生し、硬化膜の外観不良が起きるといった問題が発生する傾向がある。
本発明は、
(メタ)アクリル樹脂(A)と
光重合開始剤(B)と
顔料(C)とを含み、
前記(メタ)アクリル樹脂が、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有し、
前記顔料が、着色顔料及び光輝顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種類を含む、
紫外線硬化型塗料組成物である。
本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」の意である。
本実施形態の紫外線硬化型塗料組成物は、
紫外線硬化型塗料組成物であって、
(メタ)アクリル樹脂(A)と
光重合開始剤(B)と
顔料(C)とを含み、
前記(メタ)アクリル樹脂が、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有し、
前記顔料が、着色顔料及び光輝顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種類を含む、
紫外線硬化型塗料組成物である。
樹脂(A)は、前述したような硬化膜形成成分としての役割だけではなく、顔料(C)の分散状態を向上する効果がある。樹脂(A)は顔料の周囲に存在し、顔料(C)同士の凝集を防ぎ、顔料(C)の分散状態が向上すると考えられる。
樹脂(A)の顔料分散効果によって、顔料(C)は塗膜中に均一に存在することができ、紫外線硬化の際、顔料の移動を防ぐことができると考えられる。そのため、塗膜中の顔料濃淡が発生しにくく、外観不良が発生しにくいと考えられる。
樹脂(A)は、硬化収縮が起きにくいという特性がある。これは、樹脂(A)中での(メタ)アクリロイル基同士の距離が、樹脂(A)以外のいわゆる一般的な多官能(メタ)アクリレート化合物中の(メタ)アクリロイル基同士の距離よりも大きい傾向があるためである。
そのため塗膜中の成分が流動しにくく、さらに、顔料(C)が移動することを防止すると考えられる。また、樹脂(A)は側鎖に(メタ)アクリロイル基を有しているため、紫外線照射後、速やかに硬化し、顔料(C)が移動しにくくすることができると推定される。
そのため、樹脂(A)を使用することで顔料の移動が抑制され、塗膜中の顔料濃度の濃淡が発生しにくく、塗膜外観が良好になる。
[(メタ)アクリル樹脂(A)]
(樹脂(A)の特性)
本実施形態の塗料組成物は、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有している(メタ)アクリル樹脂を含む。前述したとおり、本明細書中に記載の(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基とメタクリロイル基の両方の概念を含んでいる。
アクリロイル基は、メタクリロイル基と比較し反応速度が速いため、紫外線硬化性、硬化膜の各種物性の観点から、樹脂(A)は側鎖にアクリロイル基を有している(メタ)アクリル樹脂であることがより好ましい。
樹脂(A)の数平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは1,000~30,000であり、より好ましくは2,000~20,000であり、さらに好ましくは3,000~10,000である。また、樹脂(A)の重量平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは2,000~60,000であり、より好ましくは4,000~40,000であり、さらに好ましくは6,000~20,000である。
このような数値範囲とすることで、顔料(C)を安定的に分散するため、紫外線硬化の際、顔料の移動を防止し、外観が良好な硬化膜を得ることができる。
酸価は、樹脂(A)の酸性基の量を表している。酸性基は、薬品、特に、日焼け止めや化粧料といった極性の高い薬品との親和性が高く、硬化膜の耐薬品性に影響する。
酸価をこの数値範囲にすることで、酸性基の影響を受けにくく、硬化膜外観が良好で、耐薬品性が良好な硬化膜を得ることができる。
なお、本明細書内記載の樹脂(A)の酸価は、本塗料組成物から樹脂(A)を単離精製し、JIS-K-5601-2-1に準じて測定することが出来る。
このような数値範囲とすることで、紫外線硬化において、塗膜中の顔料(C)の移動を防止し、紫外線硬化性が優れる塗料組成物となり、外観が良好な硬化膜を得ることができる。
なお、本明細書中で(メタ)アクリル系モノマーとは、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルのモノマーのことを表す。
たとえば、溶剤中にて重合開始剤の存在下および加熱下に、(メタ)アクリル系モノマーの1種または2種以上を重合させることによって、本発明で使用する(メタ)アクリル共重合体が得られる。
なお、(メタ)アクリル共重合体のガラス転移温度は、種々の方法で求めることが可能であるが、例えば以下式(Foxの式として知られている)に基づいて求めることができる。
1/Tg=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)+(W3/Tg3)+・・・+(Wn/Tgn)
第一の官能基としてはグリシジル基、水酸基、イソシアネート基、カルボキシル基などが挙げられる。その中でも、耐薬品性や合成のしやすさの観点から、グリシジル基、水酸基、イソシアネート基であることが好ましい。これらのような第一の官能基を有する(メタ)アクリル共重合体を使用することで、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル樹脂(樹脂(A))を得ることができる。
以下に、説明する(メタ)アクリル共重合体はあくまで、例示であり本発明の構成を限定するものではない。
第一の官能基としてグリシジル基を有する(メタ)アクリル共重合体は、共重合可能な不飽和二重結合及びグリシジル基とを併有するモノマーと該モノマーと共重合可能なモノマーを共重合することで得ることが出来る。例えば、下記一般式(3)で示すようなグリシジル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを単独で重合したり、または、該モノマーと共重合可能なモノマーなどと共重合したりすることで得ることができる。
第一の官能基として水酸基を有する(メタ)アクリル共重合体は、共重合可能な不飽和二重結合及び水酸基を併有するモノマーと該モノマーと共重合可能なモノマーを共重合することで得ることが出来る。例えば、下記一般式(4)で示すような水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマーを単独で重合したり、または、該モノマーと共重合可能なモノマーなどと共重合したりすることで得ることができる。
第一の官能基としてイソシアネート基を有する(メタ)アクリル共重合体は、共重合可能な不飽和二重結合及びイソシアネート基を併有するモノマーと該モノマーと共重合可能なモノマーを共重合することで得ることが出来る。例えば、下記一般式(5)のようなイソシアネート基を有する(メタ)アクリル系モノマーを単独で重合したり、または、該モノマーと共重合可能なモノマーなどと共重合したりすることで得ることができる。
第一の官能基としてカルボキシル基を有する(メタ)アクリル共重合体は、共重合可能な不飽和二重結合及びカルボキシル基を併有するモノマーと該モノマーと共重合可能なモノマーを共重合することで得ることが出来る。例えば、下記、一般式(6)、一般式(7)で示すようなカルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを単独で重合したり、または、該モノマーと共重合可能なモノマーなどと共重合したりすることで得ることができる。
第二の官能基は、第一の官能基と反応する官能基であれば特に限定はされない。
本塗料組成物は、開始剤(B)を含む。本塗料組成物に使用できる光重合開始剤としては、特に限定されるものはなく、用途や目的に応じて使い分けることができる。具体的には、アセトフェノン系化合物、ベンジル系化合物、アントラキノン系化合物、ベンジルメチルケタール化合物、α-ヒドロキシアルキルフェノン系化合物、α-アミノアルキルフェノン系化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、オキシムエステル系化合物、ビイミダゾール系化合物、アリールヨードニウム塩系化合物などが挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用しても良い。
4-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾ
ール、2,2’-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テト
ラフェニル-1,2’-ビイミダゾールが挙げられる。
より具体的には、370~420nmの範囲内に極大吸収波長を有する開始剤(B)と、360nm以下の範囲内に極大吸収波長を有する開始剤(B)を1種類以上組み合わせることが好ましい。
例えば、開始剤(B)の含有量は、樹脂(A)100質量部に対して1質量部~10質量部であることが好ましく、2質量部~9質量部であることがより好ましい。また、本塗料組成物が後述する多官能(メタ)アクリレート化合物(D)を含む場合、開始剤(B)の含有量は、樹脂(A)と多官能(メタ)アクリレート化合物(D)との総量100質量部に対して、1質量部~10質量部であることが好ましく、2質量部~9質量部であることがより好ましい。
開始剤(B)の含有量が、1質量部以上であれば、本塗料組成物に十分な紫外線硬化性を与えることが可能となり、一方で、光重合開始剤の含有量が10質量部以下であれば、硬化膜の黄変や、光重合開始剤が硬化膜からブリードアウトするなどの不具合が生じにくくなる。
本塗料組成物は着色に寄与する顔料(C)を含む。
前述したとおり、一般的に、顔料は、紫外線硬化を阻害し、硬化膜外観不良の原因となる可能性がある。そのため、紫外線硬化型塗料組成物に、着色に必要な量の顔料を添加することは困難であった。しかし、本塗料組成物は、樹脂(A)を使用することで顔料(C)の移動を防ぎ、良好な硬化膜外観を得ることができる。そのため、本塗料組成物は、十分な着色に必要な量の顔料(C)を含むことが可能である。
顔料(C)を含むことより、着色された物品を得ることができる。
本実施形態の塗料組成物は、2種以上の顔料(C)を含んでいてもよい。
メタリック顔料としては、例えば、アルミニウムフレーク、銅ブロンズフレーク、ガラスフレーク、雲母状酸化鉄、マイカフレーク、金属酸化物を被覆した雲母状酸化鉄、金属酸化物を被覆したマイカフレーク等が挙げられる。
顔料(C)はあらかじめ分散剤で分散されたものを使用してもよいし、本塗料組成物を製造する際に分散剤を用いて分散させてもよい。
また、顔料(C)は、顔料(C)と分散剤を含む市販の顔料ペーストを使用してもよいし、自ら分散剤を用いて分散させたものを用いても良い。
分散剤に樹脂(A)を用いた場合、硬化膜に分散剤も固定されるため硬化膜硬度が向上したり、耐薬品性が向上する傾向がある。
例えば、顔料(C)の含有量が、樹脂(A)100質量部に対して0.5~100質量部含むことが好ましく、1~90質量部含むことがより好ましい。
また、本塗料組成物が後述する多官能(メタ)アクリレート化合物(D)を含む場合、顔料(C)の含有量は、樹脂(A)と多官能(メタ)アクリレート化合物(D)との総量100質量部に対して、0.5~100質量部含むことが好ましく、1~90質量部含むことがより好ましい。顔料(C)の含有量がこのような範囲であれば、紫外線硬化性が良好な塗料組成物となり、十分に着色された硬化膜が得られる。
より具体的には、顔料(C)の添加量が多いほど、塗膜の「透明性」は低くなり、全光線透過率が低くなる。換言すると、全光線透過率が低いほど、十分に着色されていると言える。そこで、硬化膜の「透明性」(全光線透過率)を指標として、着色の程度を調整した。
しかし、見た目の着色の程度(可視光領域での全光線透過率)は、紫外線硬化性に影響する傾向がある。一般的に、硬化膜の全光線透過率が低いすなわち硬化膜の「透明性」が低いほど、紫外線が塗膜に十分に到達せず、十分に硬化しない傾向がある。加えて、そのような塗料組成物は、前述の理由により、紫外線硬化時の顔料移動の影響を受けやすく、硬化ムラも起きやすい傾向がある。
硬化膜の全光線透過率が上記の範囲であれば、紫外線硬化性が良好な塗料組成物となり、着色された硬化膜が得られる。
顔料(C)の平均粒子径がこのような範囲であれば、紫外線硬化性が良好な塗料組成物となり、着色された硬化膜を得られる。
本塗料組成物には、樹脂(A)、開始剤(B)、顔料(C)に加えて、さらに樹脂(A)と異なる多官能(メタ)アクリレート化合物(D)、すなわち(メタ)アクリル樹脂骨格を持たない多官能(メタ)アクリレート化合物を含んでもよい。多官能(メタ)アクリレート化合物(D)は、樹脂(A)の硬化膜物性に加えて、異なる硬化膜物性(例えば、高硬度の硬化膜を得ることや、耐薬品性の向上など、多官能(メタ)アクリレート化合物(D)に由来する物性)を付与することができる。
そのため、多官能(メタ)アクリレート化合物(D)のみが硬化膜形成成分である着色用紫外線硬化型塗料組成物は、硬化膜の外観不良が発生しやすい。しかし、樹脂(A)と併用すると、樹脂(A)の顔料(C)の移動を防ぐ効果と、顔料(C)の分散効果を維持しつつ、多官能(メタ)アクリレート化合物(D)に由来する物性を発揮することができる。
多官能(メタ)アクリレート化合物の含有量をこの範囲にすることで、高硬度の硬化膜が得られ、かつ良好な硬化膜外観を得ることが出来る。
本塗料組成物は、本発明の効果を損なわない限り、前記(A)~(D)成分以外の成分(以下、「その他の成分」という)をさらに含んでいてもよい。その他の成分としては、具体的には、顔料(C)以外の顔料、艶消し剤、熱重合禁止剤、ヒンダードフェノール・ホスファイト等の酸化防止剤、ヒンダードアミン等の光安定剤(HALS)、紫外線吸収剤(UVA)、界面活性剤、熱線反射・吸収性付与剤、可撓性付与剤、帯電防止剤、防汚性付与剤、撥水性付与剤、消泡剤、レベリング剤、可塑剤、発泡剤、難燃剤、帯電防止剤、老化防止剤、抗菌・防黴剤等が挙げられる。
なお、これらの顔料(C)以外の顔料は、紫外線を吸収しにくく、紫外線硬化性や、硬化膜外観に影響しにくい。
本塗料組成物の製造方法としては特に限定されるものではなく、上記の各構成成分を公知の方法により混合することで製造することができる。例えば、上記の各成分を全て一括で混合し、公知の高速分散機等で撹拌することにより製造することができる。
本発明の硬化膜は、本塗料組成物の硬化物から形成されるものである。
硬化膜の形成方法は、特に限定されるものではなく、例えば、基材上に、公知の方法により本塗料組成物を塗装し、紫外線照射し硬化させることで形成することができる。
上述のような方法によって得られる硬化膜を備える塗装物品としては、特に限定はしないが、例えば、各種のプラスチック成形品、例えば、携帯電話、電家製品、自動車のバンパー等が挙げられ、有機素材、無機素材を問わず使用できる。
(樹脂(A-1)の合成)
撹拌装置、温度計、還流冷却管、窒素導入管を備えた4つ口フラスコを準備した。
このフラスコに、イソ酢酸ブチル100部を仕込み、窒素雰囲気中で115℃まで撹拌しながら加温した。ついで、イソボルニルメタクリレート25部、メタクリル酸グリシジル75部、1,1’-アゾビス-1-シクロヘキサンカルボニトリル(和光純薬工業株式会社製、V-40)4質量部を混ぜた混合液を2時間かけて上記フラスコに滴下した。
(メタ)アクリル共重合体の前述のFoxの式に基づき使用したモノマー配合比より求めたガラス転移温度は67℃であった。ここで求めたアクリル共重合体のガラス転移温度は、後述する(メタ)アクリル樹脂(A-1)の主鎖のガラス転移温度を表す。
・使用機器:HLC8220GPC(株式会社東ソー製)
・使用カラム:TSKgel SuperHZM-M、TSKgel GMHXL-H、TSKgel G2500HXL、TSKgel G5000HXL(株式会社東ソー製)
・カラム温度:40℃
・標準物質:TSKgel 標準ポリスチレンA1000、A2500、A5000、F1、F2、F4、F10(株式会社東ソー製)
・検出器:RI(示差屈折)検出器
・溶離液:テトラヒドロフラン
・流速:1ml/min
酸価も同様に樹脂(A)を精製し、残存モノマーの影響を除いた状態で、JIS-K-5601-2-1(酸価滴定法)に準ずる手法により測定した。
(メタ)アクリル樹脂(A-2)~(A-6)についても、樹脂(A-1)の合成法に準じた方法で合成した。
また、樹脂(A-7)については、樹脂(A-1)と同様に表2の原料を用いて第一の官能基として水酸基を有する(メタ)アクリル共重合体を含む(メタ)アクリル共重合体組成物を得た。
樹脂(A-8)については、樹脂(A-1)と同様に表2の原料を用いて第一の官能基としてカルボキシル基を有する(メタ)アクリル共重合体を含む(メタ)アクリル共重合体組成物を得た。
(メタ)アクリル樹脂(A-9)についても、(メタ)アクリル樹脂(A-8)の合成法に準じた方法で合成した。
(メタ)アクリル樹脂(A-10)に関しては、二段階目の反応は行わず、表2記載の原料を用いて、(メタ)アクリル樹脂(A-10)を含む(メタ)アクリル樹脂組成物を得た。
なお、表2の原料の欄における、配合量の数値の単位は「質量部」である。
・GMA・・・メタクリル酸グリシジル
・HEMA・・・2-ヒドロキシエチルメタクリレート
・AA・・・アクリル酸
・MMA・・・メチル(メタ)アクリレート
・BMA・・・n-ブチルメタクリレート
・IB-X・・・イソボルニルメタクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名ライトエステルIB-X)
・BA・・・nーブチルアクリレート
・AOI・・・イソシアネートエチルアクリレート(昭和電工株式会社製、商品名カレンズAOI)
・4HBAGE・・・4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(三菱ケミカル株式会社製)
<塗料組成物の調製>
上記で合成した(メタ)アクリル樹脂(A-1)を含む(メタ)アクリル樹脂組成物250質量部(含まれる樹脂(A-1)は100質量部)と、カーボンブラック分散体(大日精化工業株式会社製、型番FPGS245S)16質量部(含まれるカーボンブラックは1.3質量部)と、4.5質量部のイルガキュアー184とを混合し、さらにイソプロピルアルコールを添加して、固形分30質量%の塗料組成物を作製した。
表3~7に記載した配合割合となるように、実施例1と同様にして、各塗料組成物を作製した。
なお、表6中のアルミペーストの値についても、上記のカーボンブラックと同様に、アルミペーストとしての量ではなく、アルミペースト中に含まれるアルミ顔料の量を記載している。
各実施例および比較例で得られた各塗料組成物を、黒色ABS樹脂板(エンジニアリングテストサービス社製、厚さ1.0mm、辺の長さ100mm×100mmの正方形状)に乾燥後の膜厚が5μmになるようにエアスプレーで塗装し、その後、80℃で5分間乾燥させた。さらに、高圧水銀ランプ(アイグラフィックス株式会社製)を使用して、積算光量500mJ/cm2の条件で紫外線照射を行って硬化させ、膜厚5μmの硬化膜を備えた樹脂板(以下、試験塗板という)を得た。
得られた各種の塗料組成物から得られた試験塗板と評価用膜(硬化膜)について、以下の評価を行った(なお、全光線透過率の評価についてのみ、評価用膜(硬化膜)そのものを使用し、それ以外の評価については試験塗板を用いた)。各評価結果については、各種の塗料組成物の配合とともに表3~6に記載した。
試験塗板上の硬化膜に2mmの間隔で格子パターン方向に26本ずつ線を引き格子(25マス×25マス)を描写した。そのうち格子1マスずつ、外観異常がないか(硬化ムラが無いかどうか)を目視で確認し、外観異常のある格子の数で外観異常の面積の割合を評価した。
5・・・どの格子にも硬化膜外観異常が見られない。
4・・・外観異常(硬化ムラ)の面積の割合が10%未満
3・・・外観異常(硬化ムラ)面積の割合が10%以上20%未満
2・・・外観異常(硬化ムラ)面積の割合が20%以上50%未満
1・・・外観異常(硬化ムラ)面積の割合が50%以上
試験塗板上の硬化膜の硬化状態について、以下の評価基準に従って評価した。
硬化膜を指で触り、指に塗料組成物が付着する程度を下記の評価基準で評価した。
5・・・硬化膜を指で触っても、硬化膜に変化がない。
4・・・硬化膜を指で触ると、うっすらと指の跡が残る。
3・・・硬化膜を指で触ると、はっきり指の跡が残る
2・・・硬化膜を指で触ると、少し指に塗料組成物が付着する。
1・・・硬化膜を指で触ると、べったりと指に付着する。
試験塗板上の硬化膜の60°光沢(光沢(60°))を、BYK-Gardner GmbH社製の光沢計「マイクロ-グロス」で測定した。艶消し剤含まない塗料組成物では、この光沢値が高いほど硬化膜の外観が良好な傾向がある。
ヘーズメーター(東京電色社製、オートマチックヘーズメーター TC-H3DPK/2)で、評価用膜(硬化膜)の全光線透過率を測定した。全光線透過率が低いほど膜が十分に着色されている傾向にある。
なお、先に説明したとおり、本評価についてのみ、ポリプロピレン樹脂板から剥離した「評価用膜(硬化膜)そのもの」を用いて行なっている。
試験塗板を使用し、表面性測定器(新東科学株式会社製、トライボギア14FW)及び鉛筆硬度測定用鉛筆(三菱鉛筆株式会社製の三菱Uni)を用い、JIS‐K‐5600-5-4(1999)硬化膜の機械的性質―引っかき硬度(鉛筆法)」に準拠した試験を行った。測定荷重は750g、測定の速度は30mm/min、測定距離は5mmとした。測定は5回行い、合格数が4/5を超えた鉛筆の硬度を評価結果とした。
・DPHA・・・新中村化学株式会社製、NKエステルA-DPH、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
・PETA・・・東亞合成株式会社製、アロニックスM-305、ペンタエリスリトールトリアクリレート
・A-9300・・・新中村化学株式会社製、NKエステルA-9300、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート
・A-200・・・新中村化学株式会社製、NKエステルA-200、ポリエチレングリコールジアクリレート
・カーボンブラック・・・カーボンブラック分散体、型番FPGS245S、大日精化工業株式会社製、平均粒径0.024μm、顔料濃度8質量%
・酸化チタン CR-95・・・石原産業株式会社製、酸化チタン、平均粒径0.28μm
・アルミペーストFZ-U75C・・・東洋アルミ社製、アルミペースト、平均粒径30μm、顔料濃度43質量%
・イルガキュアー184・・・BASF株式会社製、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、極大吸収波長:330nm
・イルガキュアー127・・・BASF株式会社製、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、極大吸収波長:330nm
・イルガキュアー819・・・BASF株式会社製、ビス(2,4、6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、極大吸収波長:380nm
一方、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有していない(メタ)アクリル樹脂を使用したものでは(比較例1~4)、得られる硬化膜の外観が良好で、紫外線硬化性が良好な紫外線硬化型塗料組成物を得ることができなかった。また、硬化膜形成成分として樹脂(A)を含まずに、多官能(メタ)アクリレート化合物(D)のみを使用したもの(比較例5)においては、良好な硬化膜外観を得ることができなかった。
上記の各種評価に加えて耐薬品性の評価を行った。
<耐薬品性の評価>
(耐薬品性)
試験塗板の硬化膜の表面に、日焼け止め剤[商品名:ウルトラシアードライタッチ・サンブロックSPF45,ニュートロジーナ社製,紫外線吸収剤:サリチル酸エステル誘導体(10質量%)及びベンゾフェノン誘導体(5質量%)]を0.1g/20cm2の割合で塗布し、その後、強制対流のない乾燥機(温度はそれぞれ40±2℃と80±2℃)にて4時間静置した。その後、水洗して日焼け止め剤を除去し、硬化膜の外観を以下の評価基準にて目視で判定した。
5・・・硬化膜外観に変化が全くない。
4・・・硬化膜のツヤがわずかに低下する。
3・・・硬化膜にわずかに痕跡が残る
2・・・硬化膜にはっきりと痕跡が残る
1・・・硬化膜が基材から剥離する。
この理由としては、実施例2及び実施例21は、実施例3や実施例8、実施例32と比較して、樹脂(A)1gあたりの(メタ)アクリロイル基の含有量が多いために硬化膜が密に架橋し、これにより薬品が硬化膜中に浸透しにくくなって耐薬品性が良好な結果になったことが考えられる。
さらに詳しく見ると、実施例30及び実施例34は、実施例31や実施例35と比較して、耐薬品性がより良好となっている。この理由としては、これらの実施例で使用している樹脂(A-8)は酸価が低いため、硬化膜に薬品が浸透しにくくなっていることが考えられる。
Claims (11)
- 紫外線硬化型塗料組成物であって、
(メタ)アクリル樹脂(A)と光重合開始剤(B)と顔料(C)とを含み、
前記(メタ)アクリル樹脂が、
側鎖に(メタ)アクリロイル基を有し、
前記顔料が、着色顔料及び光輝顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種類を含み、
前記紫外線硬化型塗料組成物から得られる膜厚5μm硬化膜の全光線透過率が0%以上60%以下となるように顔料を含み、
前記(メタ)アクリロイル基の含有量が、前記(メタ)アクリル樹脂1gあたり1mmol以上10mmol以下であり、
前記(メタ)アクリル樹脂の酸価が0mgKOH/g以上10mgKOH/g以下であり、
前記(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量が2,000以上60,000以下である
紫外線硬化型塗料組成物。 - 紫外線硬化型塗料組成物であって、
(メタ)アクリル樹脂(A)と光重合開始剤(B)と顔料(C)とを含み、
前記(メタ)アクリル樹脂が、
側鎖に(メタ)アクリロイル基を有し、
前記顔料が、着色顔料及び光輝顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種類を含み、
前記紫外線硬化型塗料組成物から得られる膜厚5μm硬化膜の全光線透過率が0%以上60%以下となるように顔料を含み、
前記(メタ)アクリロイル基の含有量が、前記(メタ)アクリル樹脂1gあたり1mmol以上10mmol以下であり、
前記(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量が2,000以上60,000以下であり、
前記(メタ)アクリル樹脂の酸価が0mgKOH/g以上20mgKOH/g以下であり、
前記(メタ)アクリル樹脂の主鎖のガラス転移温度が30℃以上100℃以下である
紫外線硬化型塗料組成物。 - 請求項2に記載の紫外線硬化型塗料組成物であって、
前記(メタ)アクリル樹脂の酸価が0mgKOH/g以上10mgKOH/g以下である
紫外線硬化型塗料組成物。 - 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の紫外線硬化型塗料組成物であって、
前記(メタ)アクリル樹脂は、
側鎖に第一の官能基を有する(メタ)アクリル共重合体と、
前記第一の官能基と反応する第二の官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーとの反応物を含み、
前記第一の官能基がグリシジル基であり、
前記第二の官能基がカルボキシル基である、
紫外線硬化型塗料組成物。 - 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の紫外線硬化型塗料組成物であって、
前記(メタ)アクリル樹脂は、
側鎖に第一の官能基を有する(メタ)アクリル共重合体と、
前記第一の官能基と反応する第二の官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーとの反応物を含み、
前記第一の官能基が水酸基であり、
前記第二の官能基がイソシアネート基である、
紫外線硬化型塗料組成物。 - 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の紫外線硬化型塗料組成物であって、
前記(メタ)アクリル樹脂は、
側鎖に第一の官能基を有する(メタ)アクリル共重合体と、
前記第一の官能基と反応する第二の官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーとの反応物を含み、
前記第一の官能基がイソシアネート基であり、
前記第二の官能基が水酸基である、
紫外線硬化型塗料組成物。 - 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の紫外線硬化型塗料組成物であって、
前記(メタ)アクリル樹脂は、
側鎖に第一の官能基を有する(メタ)アクリル共重合体と、
前記第一の官能基と反応する第二の官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーとの反応物を含み、
前記第一の官能基がカルボキシル基であり、
前記第二の官能基がグリシジル基である、
紫外線硬化型塗料組成物。 - 請求項1乃至7のいずれか一項に記載の紫外線硬化型塗料組成物であって、
前記顔料は、
平均粒径0.01μm以上50μm以下の顔料を含む、
紫外線硬化型塗料組成物。 - 請求項1乃至8のいずれか一項に記載の紫外線硬化型塗料組成物であって、
前記(メタ)アクリル樹脂と異なる多官能(メタ)アクリレート化合物(D)をさらに含む、
紫外線硬化型塗料組成物。 - 請求項1乃至9のいずれか一項に記載の紫外線硬化型塗料組成物の硬化膜。
- 請求項10に記載の硬化膜を備えた物品。
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