JP2020172564A - フィラー粒子、膜形成用組成物、膜を備えた物品、成形用樹脂材料および成形品 - Google Patents
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Abstract
Description
フィラー粒子は、例えば、膜の耐擦傷性の向上、硬度の向上などの目的で膜形成用組成物に添加される。
例えば、特許文献1には「透明性」に優れた硬化塗膜を得ることができると記載されているため、粒子の粒径は、可視光の波長以下であると考えられる。
電子顕微鏡観察に基づく一次粒子の平均粒子径が0.4〜3μmである、フィラー粒子。
2つのRは、互いに独立に、水素原子、1価の有機基または下記一般式(2)で表される基であり、かつ、2つのRのうち少なくとも1つは下記一般式(2)で表される基であり、
Lは、2価の連結基であり、
*は、他の化学構造との連結手である。
R1は、直鎖または分岐の炭素数4以上のアルキル基を含む基、ケイ素原子含有基またはフッ素原子含有基であり、
R2は、水素原子またはメチル基である。
上記のフィラー粒子を含む膜形成用組成物
が提供される。
上記の膜形成用組成物を用いて形成された膜を備えた物品
が提供される。
上記のフィラー粒子と、熱可塑性樹脂とを含む成形用樹脂材料
が提供される。
上記の成形用樹脂材料を用いて形成された成形品
が提供される。
本明細書中、数値範囲の説明における「a〜b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1〜5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換か無置換かを記していない表記は、置換基を有しないものと置換基を有するものの両方を包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書における「(メタ)アクリル」との表記は、アクリルとメタクリルの両方を包含する概念を表す。「(メタ)アクリレート」等の類似の表記についても同様である。
本明細書における「有機基」の語は、特に断りが無い限り、有機化合物から1つ以上の水素原子を除いた原子団のことを意味する。例えば、「1価の有機基」とは、任意の有機化合物から1つの水素原子を除いた原子団のことを表す。
本実施形態のフィラー粒子は、下記一般式(1)で表される構造を含む基で修飾されている。別の言い方として、本実施形態のフィラー粒子の表面には、下記一般式(1)で表される化学構造が存在している。
また、本実施形態のフィラー粒子の、電子顕微鏡観察に基づく一次粒子の平均粒子径は、0.4〜3μmである。
2つのRは、互いに独立に、水素原子、1価の有機基または下記一般式(2)で表される基であり、かつ、2つのRのうち少なくとも1つは下記一般式(2)で表される基であり、
Lは、2価の連結基であり、
*は、他の化学構造との連結手である。
R1は、直鎖または分岐の炭素数4以上のアルキル基を含む基、ケイ素原子含有基、または、フッ素原子含有基であり、
R2は、水素原子またはメチル基である。
ここで、R1が、直鎖または分岐の炭素数4以上のアルキル基を「含む基」であるとは、R1が、直鎖または分岐の炭素数4以上のアルキル基そのものであるか、または、R1が、直鎖または分岐の炭素数4以上のアルキル基を部分構造として含む基であることを意味する。
以下では、「直鎖または分岐の炭素数4以上のアルキル基」を「特定アルキル基」とも表記する。
特定アルキル基は、C−C結合の自由回転により、様々な立体配座(コンフォメーション)をとりうる。よって、エントロピーの観点からは、アルキル基が膜の内部ではなく表面に出て比較的自由に(乱雑に)熱運動できる状態が有利となる。このことにより、膜形成の際、フィラー粒子は沈降しにくくなると考えられる。
フィラー粒子の使用量を少なくできることは、直接的にはコスト削減につながる。また、膜中の粒子量を少なくすることができるため、フィラー粒子を用いたとしても透明な膜を得やすい。このことは、本実施形態のフィラー粒子は、いわゆるクリヤー塗料にも適用可能なことを意味する(クリヤー塗料とは、顔料を含まない、実質的に透明な塗料のことである。クリヤー塗料は、通常、基材または着色された下層膜の意匠性を維持しつつ、その上に透明な塗膜を形成するために用いられる。)。
一般式(1)において、Rが、一般式(2)で表される基ではない場合、Rは、水素原子または1価の有機基である。ここでの1価の有機基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基などを挙げることができる。
1価の有機基の炭素数は特に限定されないが、例えば1〜20、具体的には1〜10である。
フィラー粒子をより沈みにくくする観点からは、Rは、直鎖または分岐の炭素数4以上のアルキル基を含む基であることが好ましく、直鎖または分岐の炭素数4以上のアルキル基であることがより好ましい。
L全体としての炭素数は特に限定されない。例えば、Lがアルキレン基である場合、好ましい炭素数は1〜12、より好ましい炭素数は1〜6である。Lが脂環式基である場合、好ましい炭素数は3〜12である。Lが芳香族基である場合、好ましい炭素数は6〜20である。
素材の入手性、製造の容易性などの観点から、R1は、特定アルキル基そのものである(部分構造として特定アルキル基を含む基ではなく、全体として特定アルキル基である)ことが好ましい。
これらの中でも、原料の入手容易性などから、アルキルシリル基を含む基またはポリシロキサン構造を含む基が好ましい。ここで、ポリシロキサン構造としてより具体的には、ポリジメチルシロキサン構造(−Si(CH3)2−O−)などのポリジアルキルシロキサン構造、ポリジフェニルシロキサン構造(−Si(C6H5)2−O−)などを好ましく挙げることができる。
R1のフッ素原子含有基は、水素原子の全てがフッ素原子で置換されたもの(パーフルオロ基)であってもよいし、水素原子の一部のみがフッ素原子で置換されたものであってもよい。フィラー粒子をより沈降しにくくする観点からは、R1のフッ素原子含有基は、水素原子の50mol%以上がフッ素原子で置換されたものであることが好ましい。
フィラー粒子は、典型的には、無機粒子である。別の言い方として、フィラー粒子は、無機粒子が少なくとも一般式(1)で表される構造を含む基で修飾されたものということができる。
無機粒子としては、塗料やコーティング剤などの分野でのフィラー素材として知られている各種素材を挙げることができる。無機粒子は、例えば、酸化物、窒化物、水酸化物、無機塩などであることができる。
無機粒子には何らかの表面処理がされていてもよい。例えば、無機粒子は、一般式(1)で表される構造を含む基とは異なる修飾構造をさらに備えていてもよい。
別観点として、シリカ粒子は、フュームドシリカであってもよいし、コロイダルシリカであってもよい。さらに別観点として、シリカ粒子は、天産品であってもよいし合成品であってもよい。
シリカ粒子は、東ソー・シリカ株式会社、日本アエロジル株式会社、DSL.ジャパン株式会社、株式会社アドマテックス、富士シリシア化学株式会社、エボニック社などから入手可能である。
フィラー粒子の一次粒子の平均粒子径は、0.4〜3μmであればよいが、好ましくは0.5〜2.0μm、より好ましくは0.6〜1.5μmである。一次粒子の平均粒子径を適切な数値とすることで、フィラー粒子を沈降しにくくしつつ、耐擦傷性を一層高めることができる。
本明細書において、フィラー粒子の粒子径は、電子顕微鏡で撮影された画像に基づいて求められる。例えば以下のような手順で粒子径を求めることができる。
(1)フィラー粒子を、メチルエチルケトンなどの適当な溶剤を分散媒として、超音波でできるだけ分散させて分散液とする。
(2)試料台に上記分散液を滴下し、常温常圧下で溶剤を乾燥させて、粒子径測定用の試料とする。
(3)電子顕微鏡としてSEM(走査型電子顕微鏡)を用いる場合には、スパッタ法や蒸着法により試料表面を被覆する(10nm程度)。
(4)電子顕微鏡で試料を撮影する。SEMを用いる場合、加速電圧は例えば25kV程度とする。
(5)上記(4)で撮影された画像の中から、一次粒子(凝集していない粒子)と判断される粒子100個の真円相当径を測定する。ここで、真円相当径とは、画像中の粒子の面積と同じ面積を有する真円の直径のことである。
(6)上記(5)で得られた数値データに基づき、一次粒子の平均粒子径、粒径0.4μm以下の一次粒子の割合、粒径2.8μm以上の一次粒子の割合などを求める。
フィラー粒子の製造法は特に限定されない。例えば、以下第一工程および第二工程のようにして製造することができる。後掲の実施例における例3、4および5では、おおよそ、このような二段階の工程によりフィラー粒子を得ている。
まず、原料粒子(無機粒子など)と、下記一般式(1a)で表されるシランカップリング剤とを反応させて、原料粒子の表面に−NH2構造を導入する。
R3は、複数存在する場合はそれぞれ独立に、アルキル基またはアシル基であり、
R4は、複数存在する場合はそれぞれ独立に、アルキル基であり、
mは1〜3の整数、nは0〜2の整数、m+nは3であり、
Lは、2価の連結基である。
R3の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などのアルキル基、−CO−R'で表されるアシル基(R'は例えばここで挙げられたアルキル基のいずれかである)などを挙げることができる。
R3として好ましくはメチル基またはエチル基であり、特に好ましくはメチル基である。
R4の具体例としては、R3の具体例として挙げたアルキル基を挙げることができる。
R4として好ましくはメチル基またはエチル基であり、特に好ましくはメチル基である。
nは好ましくは0または1、より好ましくは0である。
原料粒子の表面に導入された−NH2に、特定アルキル基を含む基、ケイ素原子含有基、または、フッ素原子含有基を有する化合物を結合させる。より具体的には、原料粒子の表面に導入された−NH2に、以下一般式(2a)で表される化合物をマイケル付加させる。これにより、一般式(2a)で表される化合物の炭素−炭素二重結合の部分と−NH2とが反応して結合する。
このような手順とは別に、(i)まず、一般式(1a)で表されるシランカップリング剤と、一般式(2a)で表される化合物とを反応させ、(ii)次に、(i)で得た反応物を原料粒子と反応させることで、フィラー粒子を製造してもよい。後掲の実施例において、例1、2および6に記載の手順はこの手順に該当する。
本実施形態の膜形成用組成物は、上述のフィラー粒子を含む。
膜形成用組成物中のフィラー粒子の含有率は、組成物の不揮発成分中、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは0.8〜5質量%である。含有率が0.5質量%以上であることで、フィラー粒子を用いることによる効果(例えば耐擦傷性)を十分に得ることができる。含有率が10質量%以下であることで、膜形成用の成分(例えば後述の重合性化合物や樹脂)の比率を十分大きくすることができ、塗布性や成膜性などをより高めることができる。
一例として、膜形成用組成物は、フィラー粒子に加え、樹脂を含む。
別の例として、膜形成用組成物は、フィラー粒子に加え、重合性化合物および光重合開始剤を含む。この場合、膜形成用組成物は、光硬化性である。
膜形成用組成物は、樹脂を含むことができる。
樹脂としては、塗料分野等で公知のものを挙げることができる。(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキド樹脂等、樹脂に特に制限は無い。
柔軟部分構造を有する樹脂を用いることで、膜に自己修復性を付与することができる。すなわち、フィラー粒子の働きにより傷が付きにくいだけでなく、もし傷が付いたとしても、その傷が修復されるようにすることができる、または、目立たなくなるようにすることができる。
(メタ)アクリル系樹脂は、典型的には、共重合体である。
(メタ)アクリル系樹脂は、硬化剤との反応などのため、好ましくは、側鎖にヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート構造単位を含む。この構造単位としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を挙げることができる。
この構造単位の量は、(メタ)アクリル系樹脂全体に対して、例えば1〜50質量%、より好ましくは2〜30質量%、さらに好ましくは3〜25質量%である。
この構造単位の量は、(メタ)アクリル系樹脂全体に対して、例えば1〜60質量%、より好ましくは2〜50質量%、さらに好ましくは3〜40質量%である。
この構造単位としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等のモノマーに由来する構造単位を挙げることができる。
この構造単位の量は、(メタ)アクリル系樹脂全体に対して、例えば1〜90質量%、より好ましくは10〜85質量%、さらに好ましくは20〜80質量%である。
アミド基を有する構造単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸アミド、より具体的には、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド等のモノマーに由来する構造単位が挙げられる。これらの中でもN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドが好ましい。
アミド基を有する構造単位としては、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、等のモノマーに由来する構造単位を挙げることができる。
(メタ)アクリル系樹脂がアミド基を有する構造単位を含む場合、その量は、(メタ)アクリル系樹脂全体に対して、通常20〜85質量%、好ましくは30〜80質量%、より好ましくは40〜75質量%である。
この構造単位の量は、(メタ)アクリル系樹脂全体に対して、例えば0.1〜30質量%、より好ましくは0.2〜20質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%である。
ただし、柔軟性、他成分との相溶性、溶剤溶解性などの観点から、(メタ)アクリル系樹脂中の(メタ)アクリル系モノマーではないモノマーに由来する構造単位の量は、好ましくは(メタ)アクリル系樹脂全体の50質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは0である。
膜形成用組成物が樹脂を含む場合、その量は、組成物中の不揮発成分全体を基準(100質量%)として、例えば10〜80質量%、好ましくは30〜70質量%、より好ましくは40〜60質量%である。
膜形成用組成物は、硬化剤を含むことができる。硬化剤は、組成物を加熱したときに、例えば樹脂と反応するなどして、膜を硬化させるものである限り、任意のものを用いることができる。換言すると、膜形成用組成物が硬化剤を含む場合、膜形成用組成物は、通常は熱硬化性である。
硬化剤として好ましくは、イソシアネート化合物(ブロックイソシアネート化合物を含む)を挙げることができる。イソシアネート化合物は、特に、樹脂がヒドロキシ基を有する場合に硬化性が良好である。保存安定性の点では、ブロックイソシアネート化合物がより好ましい。
イソシアネート化合物は、好ましくは多官能イソシアネートである。多官能イソシアネートは、好ましくは2〜6官能(つまり、1分子あたり2〜6個の反応性イソシアネート基を有する)、より好ましくは2〜4官能である。
膜形成用組成物が硬化剤を含む場合、硬化剤の含有量は、組成物の不揮発成分全体を基準(100質量%)として、好ましくは5〜55質量%、より好ましくは10〜50質量%、さらに好ましくは15〜45質量%である。
膜形成用組成物は、ポリオールを含んでもよい。ここでのポリオールは、上述の樹脂に該当しないものである。
特に、硬化剤としてイソシアネート化合物を用いる場合、ポリオールを併用することで、例えば膜の架橋密度を高めることができる。これにより、膜の耐擦傷性をより高めたり、膜の耐汚染性を高めたり、膜の機械強度を高めたりすることができる。
架橋密度を高めるという観点からは、ポリオールは、トリオールまたはテトラオールが好ましく、テトラオールがより好ましい。
組成物がポリオールを含む場合、その含有量は、組成物の不揮発成分全体に対して、好ましくは1〜80質量%であり、より好ましくは5〜70質量%であり、さらに好ましくは10〜60質量%である。
膜形成用組成物は、重合性化合物を含んでもよい。重合性化合物は、具体的には、カチオン重合性化合物および/またはラジカル重合性化合物を含むことができる。
カチオン重合性化合物は、1〜4官能であることが好ましく、2〜4官能であることがより好ましい。
一分子のラジカル重合性化合物が有する重合性の炭素−炭素二重結合の上限は特にないが、典型的には8以下、好ましくは6以下である。
光重合開始剤は、具体的には、光カチオン重合開始剤および/または光ラジカル重合開始剤を含むことができる。
光カチオン重合開始剤の市販品としては、CPI−100P、CPI−200K(サンアプロ社製)、WPI−113、WPI−124(富士フィルム和光純薬株式会社製)等を挙げることができる。
光ラジカル重合開始剤の市販品としては、BASF社にて販売されているIRGACURE(登録商標)シリーズ等を挙げることができる。もちろん、これ以外の光ラジカル重合開始剤も使用可能である。
膜形成用組成物が光重合開始剤を含む場合、その量は、不揮発成分100質量部中、通常0.5〜15質量部、好ましくは1.0〜10質量部である。
膜形成用組成物は、溶剤を含んでもよい。ただし、例えば膜形成用組成物が光硬化系である場合などには、膜形成用組成物は溶剤を含まなくてもよい。
ただし、膜形成時の乾燥の早さの観点からは、溶剤の大部分または全部は有機溶剤であることが好ましい。具体的には、溶剤全体に対する水の量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。特に好ましくは、本実施形態の膜形成用組成物は、実質的に水を含まない(製造の過程や経時により不可避的に含まれる水分を除く)。
膜形成用樹脂組成物は、上記以外にも任意成分を1または2以上含んでもよい。例えば、硬化促進剤(硬化触媒等)、界面活性剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、意匠性を高めるための成分(例えば顔料などの色素)などを含んでもよい。
または、膜形成用組成物は、いわゆる2液系であってもよい。例えば、膜形成用組成物は、硬化剤とそれ以外の成分とを別容器とした2液系の組成物であってもよい。
上述の膜形成用組成物を用いて膜を形成することができる。また、上述の膜形成用組成物を用いて物品の表面に膜を形成することで、膜を備えた物品を製造することができる。
塗布方法は、スプレー、刷毛、ローラーなど特に限定されない。各種コーティング装置や印刷装置を用いてもよい。
熱硬化の温度や時間は、基材層の変形などが無い範囲で適宜設定すればよい。温度は例えば40〜120℃、時間は例えば10分〜24時間である。熱硬化の方法としては、熱風や、公知のコーティングマシンの乾燥炉(ドライヤー)を用いる等の方法を挙げることができる。
上述のフィラー粒子と、熱可塑性樹脂とを、例えば溶融混錬することにより、成形用樹脂材料を得ることができる。この成形用樹脂材料を用いて、射出成形や押出成形等のいわゆる熱成形を行うことで、例えば耐擦傷性が良好な成形品を製造することができる。
フィラー粒子は、成形用樹脂材料を溶融して金型に注入する際に、表面に偏在する傾向があると考えられる。
成形用樹脂材料は、熱可塑性樹脂を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
[例1:表面修飾粒子1]
まず、以下成分を混合し、70℃で16時間撹拌して反応させた。
・3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−903)(以下、「3−APTMS」という) 21.6質量部
・イソステアリルアクリレート(新中村化学工業株式会社製、NKエステルS−1800A)(以下、「ISA」という) 78.4質量部
(モル比・・・3−APTMS:ISA=1:2)
・アルミノケイ酸ナトリウムの球状粒子(水澤化学工業株式会社製、シルトンAMT08L、コールターカウンター法により測定される体積平均粒子径0.9μm) 20質量部
・上記で得られた化合物1 1質量部
・ヘプタン 30質量部
・ジラウリン酸ジブチルすず(堺化学工業株式会社製、TN−12) 0.05質量部
以上により、化合物1によって表面処理され、一般式(1)で表される構造を含む基(特定アルキル基であるイソステアリル基を含む)で修飾された粒子を得た。
この粒子を表面修飾粒子1とする。
シルトンAMT08Lの代わりに、シルトンAMT25(水澤化学工業株式会社製、コールターカウンター法により測定される体積平均粒子径2.5μm)を使用したこと以外は、例1と同様にして、一般式(1)で表される構造を含む基(特定アルキル基であるイソステアリル基を含む)で修飾された粒子を得た。
この粒子を表面修飾粒子2とする。
(1)アクリロイル基とポリジメチルシロキサン構造を含む基とを有する化合物の合成
攪拌機、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコ内に、トルエン100質量部、および、メタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサンマクロモノマー(JNC株式会社製、FM0721、分子量約5000)40質量部を仕込んだ。そして、窒素雰囲気下で、撹拌しながら110℃まで加熱した。
この4つ口フラスコに、以下成分からなる混合物を2時間かけて滴下した。
・メチルメタクリレート 40質量部
・イソシアネートエチルメタクリレート(昭和電工株式会社製、カレンズMOI)20質量部
・2,2−アゾビス−2−メチルブチロニトリル(重合開始剤、和光純薬株式会社製、V−59) 5質量部
そして、滴下終了後、そのままの温度で5時間加熱撹拌して、(メタ)アクリル系樹脂の合成を行い、(メタ)アクリル系樹脂を含む組成物を得た。
・トルエン 80質量部
・ヒドロキシ基含有多官能アクリレート化合物(東亞合成株式会社製のアロニックスM305、ペンタエリスリトールトリアクリレート含有)(以下、「PETA」という) 80質量部
・ジブチル錫ジラウレート 0.03質量部
・ハイドロキノンモノメチルエーテル0.2質量部
まず、以下成分を混合し、80℃で30分間加熱撹拌した。これにより、シルトンAMT08Lと3−APTMSとを反応させた。
・シルトンAMT08L 40質量部
・3−APTMS 1質量部
・トルエン 58質量部
・酢酸 1質量部
この粒子を表面修飾粒子3とする。
シルトンAMT08Lの代わりに、シルトンAMT25を使用したこと以外は、例3と同様にして、一般式(1)で表される構造を含む基で修飾された粒子を得た。
この粒子を表面修飾粒子4とする。
まず、以下成分を混合し、80℃で30分間加熱撹拌した。これにより、シルトンAMT25と3−APTMSとを反応させた。
・シルトンAMT25 40質量部
・3−APTMS 1質量部
・トルエン 58質量部
・酢酸 1質量部
この粒子を表面修飾粒子5とする。
まず、以下成分を混合し、70℃で16時間撹拌して反応させた。
・3−APTMS 21.6質量部
・イソアミルアクリレート(共栄社化学株式会社製、ライトアクリレートIAA)(以下、「IAA」という) 34.3質量部とを混合し
(モル比・・・3−APTMS:IAA=1:2)
・シルトンAMT25 20質量部
・上記で得られた化合物2 1質量部
・ヘプタン 30質量部
・ジラウリン酸ジブチルすず(堺化学工業株式会社製、TN−12) 0.05質量部
以上により、化合物2によって表面処理され、一般式(1)で表される構造を含む基(特定アルキル基であるイソアミル基を含む)で修飾された粒子を得た。
この粒子を表面修飾粒子6とする。
得られた表面修飾粒子1〜6の、一次粒子の平均粒子径、粒径0.4μm以下の一次粒子の割合および粒径2.8μm以上の一次粒子の割合を、以下のようにして求めた。
(1)粒子を、メチルエチルケトンで濃度1質量%程度に希釈し、超音波洗浄機(アズワン株式会社製、ASU−6)を利用して1分間分散処理を行い、分散液を得た。
(2)試料台(日新EM株式会社製、真鍮製SEM試料台AB)に上記分散液を滴下し、常温常圧下でメチルエチルケトンを乾燥させた。
(3)上記で乾燥させた粒子にスパッタリング処理を施し、10nm程度の金で表面を被覆し、SEM(走査型電子顕微鏡)観察用試料を作成した。
(4)SEM(走査型電子顕微鏡)を用い、加速電圧25kVで、上記観察用試料を撮影した。
(5)撮影された画像の中から、一次粒子(凝集していない粒子)と判断される粒子100個の真円相当径を測定した。
(6)(5)で得られた数値データに基づき、一次粒子の平均粒子径、粒径0.4μm以下の一次粒子の割合および粒径2.8μm以上の一次粒子の割合(個数基準)を求めた。
[光(紫外線)硬化性の膜形成用組成物の製造:実施例1〜7、比較例1〜3]
まず、攪拌機、温度計及びコンデンサーを備えたフラスコに、以下成分を投入して60℃まで昇温し、同温度で3時間加熱撹拌して反応を行なった。これによりウレタン(メタ)アクリレート化合物を含む組成物(固形分50質量%)を得た。
・トルエン 145質量部
・イソシアネート化合物(旭化成株式会社製、TPA−100、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートタイプ、イソシアネート基含有率23質量%、固形分100質量%) 50質量部
・ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(株式会社ダイセル製、プラクセルFA2)95質量部
・ジブチル錫ジラウレート 0.02質量部
・ハイドロキノンモノメチルエーテル 0.2質量部
・上記で得られた組成物(固形分50質量%) 400質量部(固形分としては200質量部)
・表面修飾粒子3を製造する際に得た「中間組成物」(固形分50質量%) 200質量部
・ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物 400質量部
・光重合開始剤(BASF株式会社製、イルガキュア184) 50質量部
以上により、光硬化性の膜形成用組成物を得た。
まず、撹拌基、温度計、コンデンサーおよび窒素ガス同入管を備えたフラスコにメチルイソブチルケトン100質量部を仕込み、110℃まで昇温した。
・メチルメタクリレート(MMA) 49質量部
・n−ブチルメタクリレート(BMA) 30質量部
・ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(株式会社ダイセル製 プラクセルFA2D)5質量部
・2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA) 15質量部
・メタクリル酸(MAA) 1質量部
・1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(和光純薬工業株式会社製、V−40) 3質量部
その後、イソシアネート化合物(旭化成株式会社製、TPA−100、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートタイプ、イソシアネート基含有率23質量%、固形分100質量%)20質量部を追添、混合した。
そして、酢酸ブチルを添加して固形分濃度を30質量%に調整した。
以上により、熱硬化性の膜形成用組成物を得た。
[光硬化性の膜形成用組成物を用いた膜の作製]
光硬化性の膜形成用組成物を、無色(透明)と黒色のポリカーボネート板(TP技研株式会社製、厚さ1.0mm、辺の長さ100mm×100mmの正方形状)に、それぞれ、エアスプレーで塗装した。
その後、80℃、5分の条件で乾燥させて溶剤を除去し、さらに、高圧水銀ランプ(アイグラフィック株式会社製)を使用して、積算光量800mJ/cm2の条件で紫外線照射を行った。
以上により、厚さ15μmの硬化膜を備えたポリカーボネート板2種(以下、試験板という)を得た。
熱硬化性の膜形成用組成物を、無色(透明)と黒色のポリカーボネート板(TP技研株式会社製、厚さ1.0mm、辺の長さ100mm×100mmの正方形状)にそれぞれエアスプレーで塗装した。
その後、80℃で60分間加熱し、そして常温(25℃)で24時間静置した。
以上により、厚さ15μmの硬化膜を備えたポリカーボネート板2種(以下、試験板という)を得た。
[耐擦傷性]
消しゴム試験機(ソニー株式会社製)を用い、黒色のポリカーボネート板上に膜を形成した試験板上に、スチールウール#0000(ボンスター販売株式会社製、ボンスタースチールウールポンド巻、B−204)を接触させ、以下に示す条件でスチールウールを往復させた。
・実施例1〜7、比較例1〜3(光硬化性の膜形成用組成物で膜形成):1kg荷重、300往復、ストローク20mm
・実施例8〜11、比較例4および5(熱硬化性の膜形成用組成物で膜形成):500g荷重、100往復、ストローク20mm
ヘイズメーター(東京電色社製、TC−H3DPK/2)を用いて、無色(透明)ののポリカーボネート板上に膜を形成した試験板のヘイズを測定した。
別の見方として、フィラー粒子として表面修飾された粒子を用いることで、より少量の粒子で良好な光沢保持率(耐擦傷性)が得られることが分かった(特に実施例6、7を参照されたい)。
表面修飾粒子が沈降しにくくなっていることを直接的に確認するため、レーザー顕微鏡による膜表面の観察と、EDS(エネルギー分散型X線分光法)による膜表面の元素分析とを行った。具体的には以下のように行った。
これら膜形成用組成物を、それぞれ、上記[熱硬化性の膜形成用組成物を用いた膜の作製]に記載したようにして、硬化膜とした。
Claims (14)
- 下記一般式(1)で表される構造を含む基で修飾され、
電子顕微鏡観察に基づく一次粒子の平均粒子径が0.4〜3μmである、フィラー粒子。
2つのRは、互いに独立に、水素原子、1価の有機基または下記一般式(2)で表される基であり、かつ、2つのRのうち少なくとも1つは下記一般式(2)で表される基であり、
Lは、2価の連結基であり、
*は、他の化学構造との連結手である。
R1は、直鎖または分岐の炭素数4以上のアルキル基を含む基、ケイ素原子含有基またはフッ素原子含有基であり、
R2は、水素原子またはメチル基である。 - 請求項1に記載のフィラー粒子であって、
数基準における粒径0.4μm以下の一次粒子の割合が10%以下である、フィラー粒子。 - 請求項1または2に記載のフィラー粒子であって、
数基準における粒径2.8μm以上の一次粒子の割合が20%以下である、フィラー粒子。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィラー粒子であって、
無機粒子が前記一般式(1)で表される構造を含む基で修飾されたものである、フィラー粒子。 - 請求項4に記載のフィラー粒子であって、
前記無機粒子がアルミノケイ酸塩粒子、アルミナ粒子およびシリカ粒子からなる群より選ばれる少なくともいずれかであるフィラー粒子。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィラー粒子であって、
一般式(2)におけるR1が、分岐アルキル基を含む基であるフィラー粒子。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィラー粒子であって、
一般式(2)におけるR1が、ポリジメチルシロキサン構造を含む基であるフィラー粒子。 - 請求項1〜7のいずれか1項に記載のフィラー粒子を含む膜形成用組成物。
- 請求項8に記載の膜形成用組成物であって、
重合性化合物および光重合開始剤を含む膜形成用組成物。 - 請求項8に記載の膜形成用組成物であって、
ポリカプロラクトン、ポリカプロラクタム、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリエーテルからなる群より選択される少なくともいずれかの部分構造を有する樹脂を含む膜形成用組成物。 - 請求項8〜10のいずれか1項に記載の膜形成用組成物であって、
不揮発成分全体中の前記フィラー粒子の含有率が0.5〜10質量%である膜形成用組成物。 - 請求項8〜11のいずれか1項に記載の膜形成用組成物を用いて形成された膜を備えた物品。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載のフィラー粒子と、熱可塑性樹脂とを含む成形用樹脂材料。
- 請求項13の成形用樹脂材料を用いて形成された成形品。
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