以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。図1は、本発明の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2の展開図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤとして好適に使用される。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではなく、重荷重用の空気入りタイヤや、タイヤの内部に加圧された空気が充填されない非空気式タイヤに用いられても良い。
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、車両への装着の向きが指定されたトレッド部2を有する。トレッド部2は、タイヤ1の車両装着時に車両外側に位置する第1トレッド端Te1と、車両装着時に車両内側に位置する第2トレッド端Te2とを有する。車両への装着の向きは、例えば、サイドウォール部(図示省略)に、文字又は記号で表示される。
第1トレッド端Te1及び第2トレッド端Te2は、空気入りタイヤの場合、正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。正規状態とは、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
トレッド部2は、第1トレッド端Te1と第2トレッド端Te2との間でタイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝3と、これらの周方向溝3に区分された複数の陸部4で構成されている。本実施形態のトレッド部2は、3本の周方向溝3によって4つの陸部4に区分されている。但し、このような態様に限定されるものではなく、トレッド部2は、例えば、4本の周方向溝3によって5つの陸部4に区分されても良い。
周方向溝3は、例えば、第1ショルダー周方向溝5と、第2ショルダー周方向溝6と、クラウン周方向溝7とを含む。第1ショルダー周方向溝5は、第1トレッド端Te1とタイヤ赤道Cとの間に配され、最も第1トレッド端Te1側に配されている。第2ショルダー周方向溝6は、第2トレッド端Te2とタイヤ赤道Cとの間に配され、最も第2トレッド端Te2側に配されている。クラウン周方向溝7は、第1ショルダー周方向溝5と第2ショルダー周方向溝6との間に配されている。
タイヤ赤道Cから第1ショルダー周方向溝5又は第2ショルダー周方向溝6の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離Laは、例えば、トレッド幅TWの0.20~0.35倍であるのが望ましい。タイヤ赤道Cからクラウン周方向溝7の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離Lbは、例えば、トレッド幅TWの0.15倍以下であるのが望ましい。トレッド幅TWは、前記正規状態での第1トレッド端Te1から第2トレッド端Te2までのタイヤ軸方向の距離である。
本実施形態のクラウン周方向溝7は、例えば、タイヤ赤道Cと第2トレッド端Te2との間に設けられている。但し、クラウン周方向溝7の位置は、このような態様に限定されるものではない。
本実施形態の各周方向溝3は、例えば、タイヤ周方向に平行に直線状に延びている。各周方向溝3は、例えば、波状に延びるものでも良い。
各周方向溝3の溝幅Waは、少なくとも3.0mm以上であり、例えば、トレッド幅TWの4.0%~7.0%であるのが望ましい。溝幅とは、溝中心線と直交する方向の溝縁間の距離である。各周方向溝3の深さは、乗用車用の空気入りタイヤの場合、例えば、5~10mmであるのが望ましい。
陸部4は、第1ミドル陸部11と、第2ミドル陸部12と、第1ショルダー陸部13と、第2ショルダー陸部14とを含んでいる。第1ミドル陸部11は、第1ショルダー周方向溝5とクラウン周方向溝7との間に区分されている。本実施形態では、上述の周方向溝3の配置により、第1ミドル陸部11がタイヤ赤道C上に設けられている。第2ミドル陸部12は、第2ショルダー周方向溝6とクラウン周方向溝7との間に区分されている。第1ショルダー陸部13は、第1ショルダー周方向溝5と第1トレッド端Te1との間に区分されている。第2ショルダー陸部14は、第2ショルダー周方向溝6と第2トレッド端Te2との間に区分されている。
図2には、第1ミドル陸部11の拡大図が示されている。図2に示されているように、第1ミドル陸部11は、例えば、4つの陸部4の中で最も大きいタイヤ軸方向の幅W1を有している。このような第1ミドル陸部11は、高い剛性を有し、舗装路での操縦安定性を高めるのに役立つ。第1ミドル陸部11の前記幅W1は、例えば、トレッド幅TW(図1に示され、以下、同様である。)の0.25~0.35倍であるのが望ましい。
第1ミドル陸部11には、第1端15aと第2端15bとを有する複数の曲がり溝15と、複数の副溝25とが設けられている。複数の曲がり溝15の第1端15aのそれぞれは、第1ショルダー周方向溝5に連通している。また、複数の曲がり溝15の第2端15bのそれぞれは、タイヤ周方向に隣接する他の前記曲がり溝15に連通している。このような前記複数の曲がり溝15は、相互に連通することで、タイヤ周方向に連続して延びる非直線の溝を提供する。このような溝は、雪上走行時、溝内部で固い雪柱を形成し、かつ、せん断することで、優れた雪上性能を発揮する。
副溝25は、曲がり溝15からクラウン周方向溝7側に延びかつ第1ミドル陸部11内で途切れる内側副溝26と、曲がり溝15から第1ショルダー周方向溝5側に延びかつ第1ミドル陸部11内で途切れる外側副溝30とを含む。内側副溝26及び外側副溝30は、第1ミドル陸部11内で途切れているため、第1ミドル陸部11内に、タイヤ周方向の剛性が比較的高い陸部分を提供することができ、舗装路での操縦安定性を維持しながら、雪上性能を高めることができる。
また、外側副溝30の曲がり溝15側の端部は、曲がり溝15を介して内側副溝26の曲がり溝15側の端部とタイヤ軸方向で対向している。このような内側副溝26及び外側副溝30は、曲がり溝15との連通部分においてより固い雪柱を形成でき、雪上性能をさらに高めることができる。
2つの端部がタイヤ軸方向で対向するとは、一方の端部が、他方の端部をタイヤ軸方向に平行に延長した領域の少なくとも一部と重複することを意味する。したがって、外側副溝30の曲がり溝15側の端部は、内側副溝26の曲がり溝15側の端部をタイヤ軸方向に平行に延長した領域の少なくとも一部と重複する。
図3には、曲がり溝15の輪郭を示す拡大図が示されている。図3に示されるように、本実施形態では、曲がり溝15の第1端15a側の第1曲がり部16の角度θ1が、第2端15b側の第2曲がり部17の角度θ2よりも大きいのが望ましい。これにより、第1曲がり部16は、第2曲がり部17と比較して、溝内の水が移動し易くなる。このため、ウェット走行時、曲がり溝15内の水は、第2曲がり部17側から第1曲がり部16側に向かって移動し易くなり、ひいては前記水が前記第1ショルダー周方向溝5側に排出され易くなる。本実施形態では、このような排水メカニズムを発揮することにより、操縦安定性及び耐摩耗性能を維持しつつウェット性能を高めることができる。
角度θ1は、例えば、鈍角であり、望ましくは120°以上、より望ましくは130°以上であり、望ましくは150°以下、より望ましくは140°以下である。このような第1曲がり部16は、耐摩耗性能とウェット性能とをバランス良く高めるのに役立つ。
同様の観点から、角度θ2は、例えば、鈍角であり、望ましくは100°以上、より望ましくは110°以上であり、望ましくは160°以下、より望ましくは140°以下である。
第2曲がり部17の曲率半径R2は、第1曲がり部16の曲率半径R1よりも大きいのが望ましい。このような第2曲がり部17は、雪上走行時、内部に雪が詰まるのを抑制でき、優れた雪上性能を持続して発揮できる。
曲がり溝15は、第1端15aから第1曲がり部16の頂点16tまでの第1部分21と、第1曲がり部16の頂点16tから第2曲がり部17の頂点17tまでの第2部分22と、第2曲がり部17の頂点17tから第2端15bまでの第3部分23とを含む。なお、各曲がり部の頂点は、各曲がり部の溝中心線の曲率が最大となる点を意味し、曲がり部が一定の曲率半径で曲がっている場合は、曲がり部の長さ方向の中心位置に相当する。
第1部分21の長さL1(第1部分21に沿った所謂ペリフェリ長さに相当し、以下、同様である。)は、例えば、第1ミドル陸部11のタイヤ軸方向の幅W1(図2に示され、以下、同様である。)の0.30~0.60倍である。また、第1部分21は、一定の溝幅で延びているのが望ましい。
第1部分21は、例えば、タイヤ軸方向に対して20~30°の角度で傾斜している。このような第1部分21は、ウェット走行時、内部の水を第1ショルダー周方向溝5側に案内し易い。
第2部分22の長さL2は、例えば、第1部分21の長さL1よりも大きい。具体的には、第2部分22の長さL2は、第1部分21の長さL1の2.5~3.5倍である。また、第2部分22の溝幅は、第1部分21側に向かって漸増しているのが望ましい。このような第2部分22は、ウェット走行時、タイヤの回転を利用して内部の水を第1部分21側に案内し、ひいてはウェット性能を高める。
第2部分22は、タイヤ軸方向に対して第1部分21と同じ向きに傾斜している。第2部分22のタイヤ軸方向に対する角度は、第1部分21のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きい。具体的には、第2部分22のタイヤ軸方向に対する角度は、70~90°である。
図4には、第2部分22の一部について、その長さ方向に沿った断面を示す図が示されている。図4は、図2の第2部分22のA-A線断面図に相当する。図4に示されるように、第2部分22は、溝底が隆起したタイバー24が設けられているのが望ましい。タイバー24の深さd2は、第2部分22の最大の深さd1の0.60~0.80倍である。このようなタイバー24は、第1ミドル陸部11が接地したときに第2部分22が過度に開くのを抑制し、操縦安定性及び耐摩耗性能を高めるのに役立つ。
図3に示されるように、タイバー24は、例えば、第2部分22の長さ方向の中心位置よりも第1部分21側に配されているのが望ましい。より望ましい態様では、タイバー24は、第2部分22の第1曲がり部16側の端に設けられている。
第3部分23の長さL3は、例えば、第1部分21の長さL1及び第2部分22の長さL2よりも小さい。第3部分23の長さL3は、例えば、第1部分21の長さL1の0.30~0.60倍である。
第3部分23は、例えば、タイヤ軸方向に対して第1部分21及び第2部分22とは逆向きに傾斜している。第3部分23のタイヤ軸方向に対する角度は、第1部分21のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きく、かつ、第2部分22のタイヤ軸方向に対する角度よりも小さいのが望ましく、例えば、40~50°である。これにより、ウェット走行時、曲がり溝15内の水が第3部分23側から第1部分21側に向かって案内され易くなり、優れたウェット性能が得られる。
第3部分23の端、すなわち、曲がり溝15の第2端15bは、タイヤ周方向で隣り合う曲がり溝15の第2部分22に連通しているのが望ましい。より望ましくは、第2端15bは、前記第2部分22の長さ方向の中心位置よりも第1曲がり部16側に連通している。本実施形態では、前記第2端15bの連通部と第1曲がり部16との間に、上述のタイバー24が配されている。これにより、耐摩耗性能及び操縦安定性がさらに向上する。
第3部分23と、第2端15bが連通する曲がり溝15の第2部分22との間の角度θ3(以下、「接続部分の角度」という場合がある)は、前記角度θ1及び前記角度θ2よりも小さいのが望ましい。前記接続部分の角度θ3は、望ましくは90°以下、より望ましくは80°以下であり、望ましくは45°以上、より望ましくは65°以上である。これにより、雪上走行時、2つの曲がり溝15の接続部分で固い雪柱が形成され、雪上性能が高められる。
図5には、曲がり溝15及び副溝25の輪郭を示す拡大図が示されている。図5に示されるように、内側副溝26は、タイヤ赤道Cを横切っているのが望ましい。また、内側副溝26の溝幅は、クラウン周方向溝7側に向かって漸減しているのが望ましい。このような内側副溝26により、固い雪柱が形成され易くなる。
内側副溝26の最大の深さは、例えば、曲がり溝15の最大の深さの0.80~0.90倍である。また、内側副溝26の深さは、曲がり溝15側から内側副溝26の途切れ端側に向かって漸減しているのが望ましい。このような内側副溝26は、操縦安定性と雪上性能とをバランス良く高めるのに役立つ。
内側副溝26は、第1内側副溝27と、第1内側副溝27よりも第1ショルダー周方向溝5側で途切れる第2内側副溝28とを含む。第1内側副溝27は、例えば、曲がり溝15の第2曲がり部17に連通している。第2内側副溝28は、第1曲がり部16と第2曲がり部17との間、すなわち、曲がり溝15の第2部分22に連通している。
第1内側副溝27のタイヤ軸方向の長さL4、及び、第2内側副溝28のタイヤ軸方向の長さL5は、例えば、第1ミドル陸部11のタイヤ軸方向の幅W1の0.20~0.35倍である。
第1内側副溝27と第2内側副溝28とは、タイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜している。本実施形態では、第1内側副溝27及び第2内側副溝28は、曲がり溝15の第1部分21と同じ向きに傾斜している。
第1内側副溝27及び第2内側副溝28は、例えば、タイヤ軸方向に対して20~50°の角度で傾斜している。より望ましい態様では、第2内側副溝28のタイヤ軸方向に対する角度は、第1内側副溝27のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きい。第1内側副溝27と第2内側副溝28とのタイヤ軸方向に対する角度の差は、例えば、15°以下である。このような第1内側副溝27及び第2内側副溝28は、第1ミドル陸部11の偏摩耗を抑制するのに役立つ。
第1内側副溝27と曲がり溝15の第2部分22との間の角度θ4は、望ましくは100°以上、より望ましくは120°以上であり、望ましくは160°以下、より望ましくは140°以下である。また、第2内側副溝28と曲がり溝15の第2部分22との間の角度θ5は、望ましくは25°以上、より望ましくは35°以上であり、望ましくは55°以下、より望ましくは45°以下である。これにより、曲がり溝15と内側副溝26との連通部分で固い雪柱が形成され、優れた雪上性能が発揮される。
本実施形態の外側副溝30は、例えば、曲がり溝15の第2部分22に連通している。外側副溝30は、曲がり溝15からタイヤ軸方向に延びる横溝部31と、横溝部31に連なりタイヤ周方向に延びる縦溝部32とを含む。このような外側副溝30は、雪路での旋回性能を高めるのに役立つ。
内側副溝26と横溝部31とは、タイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜している。横溝部31のタイヤ軸方向に対する角度θ6は、例えば、内側副溝26のタイヤ軸方向に対する角度よりも小さいのが望ましい。横溝部31の前記角度θ6は、例えば、20~30°である。また、横溝部31と曲がり溝15の第2部分22との間の角度θ7は、例えば、120~140°である。このような横溝部31は、内側副溝26とともに、雪路でのトラクションを提供する。
横溝部31のタイヤ軸方向の長さL6は、例えば、第1ミドル陸部11のタイヤ軸方向の幅W1の0.25~0.35倍である。横溝部31の前記長さL6は、内側副溝26のタイヤ軸方向の長さよりも大きいのが望ましい。このような横溝部31は、操縦安定性と雪上性能とをバランス良く高める。
同様の観点から、横溝部31及び第2内側副溝28の合計長さL7(横溝部31の端から第2内側副溝28の端までのタイヤ軸方向の長さである。)は、第1ミドル陸部11のタイヤ軸方向の幅W1の0.60~0.70倍である。
縦溝部32は、タイヤ軸方向に対して横溝部31と同じ向きに傾斜している。これにより、横溝部31と縦溝部32との間の角度θ8は、鋭角であり、例えば、40~55°である。本実施形態の縦溝部32は、曲がり溝15の第2部分22に沿って延びている。縦溝部32と前記第2部分22とのタイヤ周方向に対する角度差は、5°以下である。このような縦溝部32は、耐摩耗性能を維持しつつ、雪路での旋回性能を高める。
外側副溝30の最大の深さは、例えば、曲がり溝15の最大の深さの0.80~0.90倍である。外側副溝30は、曲がり溝15から縦溝部32の途切れ端に向かって深さが漸減しているのが望ましい。このような外側副溝30は、操縦安定性及び耐摩耗性能を維持するのに役立つ。
図2に示されるように、本実施形態の第1ミドル陸部11には、複数のサイプ34が設けられている。なお、本明細書において、「サイプ」とは、幅が1.5mm以下の切れ込みである。
サイプ34は、例えば、内側途切れサイプ35を含む。内側途切れサイプ35は、クラウン周方向溝7から延びかつ曲がり溝15に連通することなく第1ミドル陸部11内で途切れている。内側途切れサイプ35は、そのエッジによって摩擦力を提供し、比較的硬く締まった圧雪路での雪上性能をさらに高める。また、内側途切れサイプ35は、第1ミドル陸部11内で途切れているため、複数の曲がり溝15とクラウン周方向溝7との間の領域に、タイヤ周方向の剛性が比較的高い陸部分を提供することができ、舗装路での操縦安定性を維持することができる。
内側途切れサイプ35は、例えば、タイヤ軸方向に対して傾斜している。本実施形態の内側途切れサイプ35は、タイヤ軸方向に対して内側副溝26と同じ向きに傾斜している。
内側途切れサイプ35は、例えば、第1内側途切れサイプ36と、第1内側途切れサイプ36よりも曲がり溝15側で途切れる第2内側途切れサイプ37とを含む。本実施形態の第1内側途切れサイプ36は、例えば、タイヤ赤道Cよりもクラウン周方向溝7側で途切れており、第2内側途切れサイプ37は、タイヤ赤道Cを横切っている。このような第1内側途切れサイプ36及び第2内側途切れサイプ37は、耐摩耗性能を維持しつつ、優れたエッジ効果を発揮する。
第2内側途切れサイプ37のタイヤ軸方向の長さは、例えば、第1内側途切れサイプ36のタイヤ軸方向の長さの1.5~2.5倍である。
第1内側途切れサイプ36及び第2内側途切れサイプ37は、例えば、タイヤ軸方向に対して30~40°の角度で傾斜している。また、第1内側途切れサイプ36と第2内側途切れサイプ37とは、互いに平行に延びている。このような第1内側途切れサイプ36及び第2内側途切れサイプ37は、第1ミドル陸部11の偏摩耗を抑制するのに役立つ。
サイプ34は、例えば、クラウン周方向溝7から曲がり溝15まで延びる貫通サイプ38を含む。貫通サイプ38は、例えば、タイヤ軸方向に対して内側途切れサイプ35と同じ向きに傾斜している。より望ましい態様では、貫通サイプ38と内側途切れサイプ35とが互いに平行に配されている。貫通サイプ38は、雪上性能をさらに高めることができる。
サイプ34は、例えば、複数の外側途切れサイプ40を含む。外側途切れサイプ40は、曲がり溝15と第1ショルダー周方向溝5との間に配され、一端が第1ミドル陸部11内で途切れている。
外側途切れサイプ40は、例えば、タイヤ軸方向に対して内側途切れサイプ35と同じ向きに傾斜している。外側途切れサイプ40のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、30~40°である。
外側途切れサイプ40は、例えば、曲がり溝15から延びかつ第1ミドル陸部11内で途切れる第1外側途切れサイプ41及び第2外側途切れサイプ42を含む。第2外側途切れサイプ42は、第1外側途切れサイプ41よりも第1ショルダー周方向溝5側で途切れている。また、第2外側途切れサイプ42のタイヤ軸方向の長さは、外側副溝30の横溝部31のタイヤ軸方向の長さよりも小さい。第1外側途切れサイプ41及び第2外側途切れサイプ42は、操縦安定性と雪上性能とをバランス良く高めるのに役立つ。
外側途切れサイプ40は、例えば、第1ショルダー周方向溝5から延びかつ第1ミドル陸部11内で途切れる第3外側途切れサイプ43及び第4外側途切れサイプ44を含む。第4外側途切れサイプ44は、第3外側途切れサイプ43よりも曲がり溝15側で途切れている。また、第4外側途切れサイプ44のタイヤ軸方向の長さは、外側途切れサイプ40の中で最も長い。
本実施形態のサイプ34は、例えば、第1ショルダー周方向溝5から外側副溝30まで延びる接続サイプ45を含む。このような接続サイプ45は、外側副溝30に雪が詰まるのを抑制でき、優れた雪上性能を長期に亘って発揮するのに役立つ。
図6には、第2ミドル陸部12の拡大図が示されている。図6に示されるように、第2ミドル陸部12のタイヤ軸方向の幅W2は、例えば、トレッド幅TWの0.10~0.20倍である。
第2ミドル陸部12は、第2ミドル陸部12を完全に横切る複数のミドル横溝47と、複数のミドル横溝47に区分された複数のミドルブロック48とを含む。
ミドル横溝47は、例えば、タイヤ軸方向に対して30~60°の角度θ9で傾斜している。但し、ミドル横溝47は、このような態様に限定されるものではない。
ミドルブロック48は、第2ショルダー周方向溝6に連通する2本の第1ミドルサイプ51と、2本の第1ミドルサイプ51の間に配された第2ミドルサイプ52とを含む。第1ミドルサイプ51は、例えば、トレッド平面視においてジグザグ状に延びている。第2ミドルサイプ52は、例えば、トレッド平面視において直線状に延びている。これらのサイプは、そのエッジによる摩擦力を提供し、雪上性能を高めるのに役立つ。
図7には、第1ミドルサイプ51のB-B線断面図が示されている。図7に示されるように、本実施形態では、第1ミドルサイプ51は、その深さ方向に波状に延びている。第1ミドルサイプ51は、駆動時及び制動時において、互いに向き合うサイプ壁同士が噛み合ってミドルブロック48の見かけの剛性を高め、耐摩耗性能を維持するのに役立つ。
図8には、第2ミドルサイプ52のC-C線断面図が示されている。図8に示されるように、本実施形態では、第2ミドルサイプ52は、その深さ方向に直線状に延びている。第2ミドルサイプ52は、第1ミドルサイプ51と比べて開き易いため、大きな接地圧が作用し易く、ひいてはより強い力で路面を引っ掻くことができる。
図6に示されるように、本実施形態の第2ミドルサイプ52は、第2ショルダー周方向溝6から延びかつ第2ミドル陸部12内で途切れているため、ミドルブロック48にタイヤ周方向の剛性が比較的高い陸部分を提供し、耐摩耗性能を維持することができる。
図9には、第1ミドルサイプ51のサイプ壁51aを示す拡大斜視図が示されている。図9に示されるように、第1ミドルサイプ51は、サイプの深さ方向及び長さ方向に波状に延びる、所謂3Dサイプとして構成されている。このようなサイプは、互いに向き合うサイプ壁が強固に噛み合うことができ、上述の効果をさらに高めることができる。
図6に示されるように、トレッド平面視における第1ミドルサイプ51の振幅量A1(ピークトゥピークの振幅量であり、以下、同様である。)は、例えば、1.0~3.5mmであり、望ましくは1.5~3.0mmである。これにより、タイヤ加硫時の成形不良が抑制されつつ、サイプの開きが抑制される。
図7に示されるように、サイプの長さ方向と直交する断面における第1ミドルサイプ51の振幅量A2は、例えば、0.5~2.5mmであり、望ましくは1.0~2.0mmである。
図6に示されるように、第1ミドルサイプ51及び第2ミドルサイプ52は、タイヤ軸方向に対して傾斜している。本実施形態では、第1ミドルサイプ51及び第2ミドルサイプ52は、タイヤ軸方向に対してミドル横溝47と同じ向きに傾斜している。第1ミドルサイプ51及び第2ミドルサイプ52のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、30~60°であり、望ましくは35~50°である。
本実施形態のミドルブロック48には、クラウン周方向溝7から延びかつミドルブロック48内で途切れる複数のミドル短溝53が設けられている。また、第1ミドルサイプ51は、ミドル短溝53に連通している。第1ミドルサイプ51のタイヤ軸方向の長さL8は、第2ミドル陸部12のタイヤ軸方向の幅W2の0.70~0.90倍である。
第2ミドルサイプ52は、第2ミドル陸部12のタイヤ軸方向の中心位置よりもクラウン周方向溝7側で途切れている。第2ミドルサイプ52のタイヤ軸方向の長さL9は、第1ミドルサイプ51のタイヤ軸方向の長さL8よりも小さい。第2ミドルサイプ52の前記長さL9は、第2ミドル陸部12のタイヤ軸方向の幅W2の0.50~0.70倍である。このような第2ミドルサイプ52は、耐摩耗性能と雪上性能とをバランス良く高める。
図10には、第1ショルダー陸部13の拡大図が示されている。図10に示されるように、第1ショルダー陸部13には、複数の第1ショルダー横溝55が設けられている。第1ショルダー横溝55は、第1トレッド端Te1から第1ショルダー周方向溝5まで延びている。これにより、第1ショルダー横溝55は、第1ショルダー周方向溝5との連通部55aを含む。
第1ショルダー横溝55は、例えば、タイヤ軸方向に対して曲がり溝15の第1部分21とは逆向きに傾斜している。第1ショルダー横溝55のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、5~15°である。このような第1ショルダー横溝55は、雪上走行時のトラクション性能を高める。
第1ショルダー横溝55の少なくとも1本について、第1ショルダー周方向溝5との連通部55aをタイヤ軸方向に平行にタイヤ赤道C側に延長した領域は、曲がり溝15の第1端15aと重複するのが望ましい。これにより、雪上走行時、第1ショルダー周方向溝5、曲がり溝15の第1部分21及び前記連通部55aによって固い雪柱が形成され、優れた雪上性能が発揮される。
第1ショルダー横溝55と曲がり溝15の第1部分21との間の角度θ10は、第1曲がり部16の角度θ1及び第2曲がり部17の角度θ2よりも大きいのが望ましい。前記角度θ10は、望ましくは140°以上、より望ましくは145°以上であり、望ましくは165°以下、より望ましくは155°以下である。これにより、雪上走行時においてトラクション性能だけでなく、旋回性能も向上する。
第1ショルダー陸部13には、例えば、タイヤ軸方向にジグザグ状に延びる複数のショルダーサイプ56が設けられている。このようなショルダーサイプ56は、第1ショルダー陸部13の剛性を維持しつつ、ウェット性能及び雪上性能を高めることができる。
図11には、第2ショルダー陸部14の拡大図が示されている。図11に示されるように、第2ショルダー陸部14には、第2ショルダー周方向溝6から第2トレッド端Te2まで延びる複数の第2ショルダー横溝58が設けられている。
第2ショルダー横溝58は、第2ショルダー周方向溝6との連通部58aを含む。第2ショルダー横溝58の少なくとも1本について、連通部58aをタイヤ軸方向に平行にタイヤ赤道側に延長した領域は、ミドル横溝47の第2ショルダー周方向溝6側の端と重複する。このような第2ショルダー横溝58の配置は、雪上性能を高めるのに役立つ。
第2ショルダー横溝58とミドル横溝47との角度θ11は、例えば、第1ショルダー横溝55と曲がり溝15の第1部分21との間の角度θ10よりも小さいのが望ましい。具体的には、前記角度θ11は、130~150°である。これにより、第2ショルダー周方向溝6に雪が詰まり難くなり、優れた雪上性能が持続して発揮される。
第2ショルダー陸部14には、例えば、第1ショルダーサイプ61と、第2ショルダーサイプ62と、第3ショルダーサイプ63とが設けられている。第1ショルダーサイプ61は、第2ショルダー周方向溝6から第2トレッド端Te2まで延びている。第2ショルダーサイプ62は、第2ショルダー周方向溝6から延びかつ第2ショルダー陸部14内で途切れている。第3ショルダーサイプ63は、第2トレッド端Te2から延びかつ第2ショルダー陸部14内で途切れている。第2ショルダーサイプ62の途切れ端と第3ショルダーサイプ63の途切れ端とは、第1ショルダーサイプ61を介して互いに向き合っているのが望ましい。このような第2ショルダーサイプ62は、ウェット性能及び雪上性能を高める。
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
図1の基本パターンを有するサイズ215/60R16のタイヤが試作された。比較例として、図12に示される第1ミドル陸部aを有するタイヤが試作された。比較例のタイヤは、第1ミドル陸部aに、曲がり溝b及び外側副溝cが設けられ、本発明の内側副溝が設けられていない。なお、比較例のタイヤは、上記の事項を除き、図1に示されるものと実質的に同じパターンを具えている。各テストタイヤの雪上性能及び操縦安定性がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:16×6.5
タイヤ内圧:240kPa
テスト車両:排気量2500cc、前輪駆動車
タイヤ装着位置:全輪
<雪上性能>
上記テスト車両で雪路を走行したときの性能が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、雪上性能が優れていることを示す。
<操縦安定性>
上記テスト車両で舗装路を走行したときの操縦安定性が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、操縦安定性が優れていることを示す。
テスト結果が表1及び2に示される。
テストの結果、実施例のタイヤは、操縦安定性を維持しつつ優れた雪上性能を発揮していることが確認できた。