JP7316020B2 - 表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法、及び表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板 - Google Patents

表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法、及び表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、亜鉛系めっき鋼板用表面処理液、表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法、及び表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板に関する。
亜鉛系めっき鋼板は、自動車、家電、建材などの分野で広く利用されている。従来、耐食性を向上させる目的で、亜鉛系めっき鋼板の表面に、クロム酸、重クロム酸またはその塩類を主要成分とした処理液によるクロメート処理を施した表面処理鋼板が広く用いられてきた。しかしながら、最近の地球環境問題から、クロメートフリーの表面処理を施した亜鉛系めっき鋼板(以下、「クロメートフリー表面処理鋼板」と呼称する。)を採用することへの要請が高まっており、種々の特性を改善したクロメートフリー処理鋼板が提案されている。
特許文献1には、グリシジル基を有するシランカップリング剤、テトラアルコキシシラン、炭酸ジルコニウム化合物、ガラス転移点(Tg)が80~130℃であるアニオン性ポリウレタン樹脂、バナジウム化合物、モリブデン酸化合物、及び水が添加され、pHが8.0~10.0で、かつ、各成分の添加量が所定の関係を満足する表面処理液を用いて、亜鉛系めっき鋼板に表面処理皮膜を形成する、表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法が記載されている。この方法によれば、表面処理皮膜にクロム化合物を含まず、耐熱変色性、耐熱割れ性、平板部耐食性、アルカリ脱脂後耐食性、耐黒変性、スタック耐黒変性(鋼板同士が重ねられた状態で高温多湿環境下で評価する耐黒変性)、耐水しみ性、耐溶剤性、耐汗性、塗装密着性のいずれにも優れる表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板を製造可能であり、かつ、表面処理液の貯蔵安定性にも優れる。
国際公開2018/070350号
しかしながら、本発明者らが特許文献1に記載のクロメートフリー表面処理鋼板について検討したところ、この表面処理鋼板を曲げ加工した場合に、表面処理皮膜にクラックが生じ、下地の亜鉛系めっき層が露出することから、曲げ加工部の耐食性に改善の余地があることが明らかとなってきた。
そこで本発明は、上記課題に鑑み、表面処理皮膜にクロム化合物を含まず、耐熱変色性、耐熱割れ性、平板部耐食性、アルカリ脱脂後耐食性、耐黒変性、スタック耐黒変性、耐水しみ性、耐溶剤性、耐汗性、及び塗装密着性に加えて、曲げ加工部耐食性にも優れる表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板を製造可能で、貯蔵安定性に優れる表面処理液を提供することを目的とする。また、本発明は、当該表面処理液を用いた表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法と、当該製造方法により製造された表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、グリシジル基を有するシランカップリング剤(A)、テトラアルコキシシラン(B)、炭酸ジルコニウム化合物(C)、ガラス転移点(Tg)が80~130℃であるアニオン性ポリウレタン樹脂(D)、バナジウム化合物(E)、モリブデン酸化合物(F)、架橋剤(G)、及び水を含有し、pHが8.0~10.0で、かつ、各成分の含有量が所定の関係を満足する表面処理液を用いて、亜鉛系めっき鋼板に表面処理皮膜を形成することによって、上記課題を解決できることを見出した。特に、曲げ加工部の耐食性を向上させるには、表面処理液にカルボキシル基と反応する架橋剤(G)を所定量添加することが有効であることを見出した。
本発明は、このような知見に基づきなされたものであり、その要旨構成は以下のとおりである。
[1]グリシジル基を有するシランカップリング剤(A)、テトラアルコキシシラン(B)、炭酸ジルコニウム化合物(C)、ガラス転移点(Tg)が80~130℃であるアニオン性ポリウレタン樹脂(D)、バナジウム化合物(E)、モリブデン酸化合物(F)、架橋剤(G)、及び水を含有し、pHが8.0~10.0で、かつ、各成分の含有量が以下の(1)~(7)を満足することを特徴とする亜鉛系めっき鋼板用表面処理液。
(1)グリシジル基を有するシランカップリング剤(A)の固形分質量(A)、テトラアルコキシシラン(B)の固形分質量(B)、及び炭酸ジルコニウム化合物(C)中のZrO換算質量(C)の合計質量(X)の、アニオン性ポリウレタン樹脂(D)の固形分質量(D)に対する質量比(X/D)が0.05~0.35
(2)グリシジル基を有するシランカップリング剤(A)の固形分質量(A)の、前記合計質量(X)に対する質量比(A/X)が0.20~0.40
(3)テトラアルコキシシラン(B)の固形分質量(B)の、前記合計質量(X)に対する質量比(B/X)が0.010~0.30
(4)炭酸ジルコニウム化合物(C)中のZrO換算質量(C)の、前記合計質量(X)に対する質量比(C/X)が0.45~0.70
(5)バナジウム化合物(E)中のV換算質量(E)の、前記合計質量(X)とアニオン性ポリウレタン樹脂(D)の固形分質量(D)との合計質量(X+D)に対する質量比(E/(X+D))が0.0010~0.015
(6)モリブデン酸化合物(F)中のMo換算質量(F)の、前記合計質量(X)とアニオン性ポリウレタン樹脂(D)の固形分質量(D)との合計質量(X+D)に対する質量比(F/(X+D))が0.0010~0.015
(7)架橋剤(G)の固形分質量(G)の、前記合計質量(X)とアニオン性ポリウレタン樹脂(D)の固形分質量(D)との合計質量(X+D)に対する質量比(G/(X+D))が0.010~0.085
[2]さらに珪酸ナトリウム(H)を含有し、その含有量が以下の(8)を満足する、上記[1]に記載の亜鉛系めっき鋼板用表面処理液。
(8)珪酸ナトリウム(H)の固形分質量(H)の、前記合計質量(X)と珪酸ナトリウム(H)の固形分質量(H)との合計質量(X+H)に対する質量比(H/(X+H))が0.050未満(0.000を含む)
[3]さらにワックス(I)を含有し、その含有量が以下の(9)を満足する、上記[1]又は[2]に記載の亜鉛系めっき鋼板用表面処理液。
(9)ワックス(I)の固形分質量(I)の、前記合計質量(X)とアニオン性ポリウレタン樹脂(D)の固形分質量(D)との合計質量(X+D)に対する質量比(I/(X+D))が0.002~0.10
[4]亜鉛系めっき鋼板の表面に、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の亜鉛系めっき鋼板用表面処理液を塗布する第1工程と、
その後、塗布された前記亜鉛系めっき鋼板用表面処理液を大気中で乾燥する第2工程と、
その後、塗布された前記亜鉛系めっき鋼板用表面処理液を加熱炉で加熱乾燥して、付着量が50~2,000mg/mの表面処理皮膜を形成する第3工程と、
を有し、
前記第3工程の加熱開始時における前記亜鉛系めっき鋼板の温度をX、前記第3工程における前記亜鉛系めっき鋼板の最高到達温度をYとしたとき、Yが60~150℃であり、前記第3工程における加熱時間をz秒としたとき、(Y-X)/zが1~100℃/sであることを特徴とする表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
[5]上記[4]に記載の表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法で製造された表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板であって、
前記表面処理皮膜のFT-IRによる反射スペクトルにおいて、1733cm-1の吸光度(I1733)の1712cm-1の吸光度(I1712)に対する比(I1733/I1712)が0.88以上1.10以下であり、
前記表面処理皮膜はZr含有相とZr非含有相から構成され、前記Zr含有相の体積分率が5~40%である
ことを特徴とする表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板。
[6]前記亜鉛系めっき鋼板が、基板である鋼板の少なくとも一方の表面に、質量%で、Al:3.0~6.0%、Mg:0.2~1.0%、Ni:0.01~0.10%を含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する溶融Zn-Al系合金めっき層を有する溶融Zn-Al系合金めっき鋼板である、上記[5]に記載の表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板。
本発明の表面処理液は、表面処理皮膜にクロム化合物を含まず、耐熱変色性、耐熱割れ性、平板部耐食性、アルカリ脱脂後耐食性、耐黒変性、スタック耐黒変性、耐水しみ性、耐溶剤性、耐汗性、及び塗装密着性に加えて、曲げ加工部耐食性にも優れる表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板を製造可能で、貯蔵安定性に優れる。本発明の表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法は、上記のような良好な特性を有する表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板を製造可能である。本発明の表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板は、上記のような良好な特性を有する。
<亜鉛系めっき鋼板>
本発明で使用する亜鉛系めっき鋼板は、電気亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、亜鉛-アルミニウム合金めっき鋼板、亜鉛-鉄合金めっき鋼板、亜鉛-マグネシウムめっき鋼板、亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金めっき鋼板等を用いることができる。
さらに好ましくは、基板である鋼板の少なくとも一方の表面に、質量%で、Al:3.0~6.0%、Mg:0.2~1.0%、Ni:0.01~0.10%を含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなる溶融Zn-Al系合金めっき層を有する溶融Zn-Al系合金めっき鋼板を用いることができる。この鋼板を使用した場合、その他のめっき鋼板を用いた場合に対し耐赤錆性が優れるという利点がある。このため、屋外等、より厳しい腐食環境で使用する際に有利となる。この溶融Zn-Al系合金めっき鋼板は、溶融Zn-Al系合金めっき層にZn-Al-Mg系三元共晶を含有することが、より好ましい。このZn-Al-Mg系三元共晶は、めっき層表面における面積率で1~50%含有することが好ましい。
本発明の表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板は、亜鉛系めっき鋼板と、該亜鉛系めっき鋼板の表面に、以下に説明する表面処理液を塗布し、乾燥して得た、片面当たりの付着量が50~2,000mg/mの表面処理皮膜(以下、単に「皮膜」ともいう。)と、を有し、耐熱変色性、耐熱割れ性、平板部耐食性、アルカリ脱脂後耐食性、曲げ加工部耐食性、耐黒変性、スタック耐黒変性、耐水しみ性、耐溶剤性、耐汗性、塗装密着性、貯蔵安定性のいずれにも優れる。
(亜鉛系めっき鋼板用表面処理液)
本発明の亜鉛系めっき鋼板用表面処理液(以下、単に「表面処理液」という。)は、グリシジル基を有するシランカップリング剤(A)、テトラアルコキシシラン(B)、炭酸ジルコニウム化合物(C)、ガラス転移点(Tg)が80~130℃であるアニオン性ポリウレタン樹脂(D)、バナジウム化合物(E)、モリブデン酸化合物(F)、架橋剤(G)、及び水を含有し、さらに必要に応じて、珪酸ナトリウム(H)、ワックス(I)を含有してもよい。
<グリシジル基を有するシランカップリング剤(A)>
本発明の表面処理液は、グリシジル基を有するシランカップリング剤(A)を含有する。該シランカップリング剤(A)は、グリシジル基、および加水分解性基として炭素数が1~5、好ましくは1~3である低級アルコキシ基がSi元素に直接結合したものであれば、特に限定されず、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランなどが挙げられ、なかでも、グリシジル基を有するシランカップリング剤(A)同士の縮合点や、後述するテトラアルコキシシラン(B)、炭酸ジルコニウム化合物(C)との縮合点をより多く生成しやすく、それによって成膜後に高いバリア性が得られるという観点から、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。
グリシジル基を有するシランカップリング剤(A)は、その化合物中のSi元素にアルコキシ基が直接結合しており、そのアルコキシ基は、水溶液中で水と反応することによりシラノール基を形成する。このシラノール基は、亜鉛系めっき鋼板の表面と反応したり、後述する成分(B),(C)との間で複合的に縮合反応したりする。
グリシジル基を有するシランカップリング剤(A)の固形分質量(A)の、前記合計質量(X)に対する質量比(A/X)は0.20~0.40とする必要があり、好ましくは0.24~0.37、より好ましくは0.27~0.34である。質量比が0.20未満の場合は、平板部耐食性、アルカリ脱脂後耐食性、及び曲げ加工部耐食性に劣る。質量比が0.40超えの場合は、耐熱割れ性に劣る。
<テトラアルコキシシラン(B)>
成分(A)を単独で使用すると耐熱割れ性に劣るため、本発明の表面処理液は、テトラアルコキシシラン(B)を含有する。成分(B)がない場合、500℃以上の加熱雰囲気では、成分(A)の有機官能基が熱酸化分解するため、大きなクラック発生の要因となる。それに対し、成分(B)を適量添加すると、成分(A)の添加量を耐熱割れ性が許容される程度に抑えつつ、緻密でバリア性の高い皮膜が得られる。成分(A)と成分(B)から得られる皮膜は緻密であるため、加熱時のクラックも微細化することができ、目視で確認されるようなクラックは生じず、優れた耐熱割れ性が得られる。
テトラアルコキシシラン(B)は、Si元素に直接結合する加水分解性基として4個の低級アルコキシ基を有するものであり、一般式Si(OR)(式中、Rは同一の又は異なる炭素数1~5のアルキル基を示す)で示されるものであれば、特に限定されず、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシランなどが挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。なかでも、テトラアルコキシシラン(B)同士や、成分(A)、後述する成分(C)との縮合点をより多く生成しやすく、それによって成膜後に高いバリア性が得られるという観点から、テトラエトキシシランおよびテトラメトキシシランが好ましい。
テトラアルコキシシラン(B)は、その化合物中のSi元素にアルコキシ基が直接結合しており、そのアルコキシ基は、水溶液中で水と反応することによりシラノール基を形成する。このシラノール基は、亜鉛系めっき鋼板の表面と反応したり、成分(A)や、後述する成分(C)との間で複合的に縮合反応したりする。
テトラアルコキシシラン(B)の固形分質量(B)の、前記合計質量(X)に対する質量比(B/X)は0.010~0.30とする必要があり、好ましくは0.03~0.23、より好ましくは0.06~0.15である。質量比が0.010未満の場合は、耐熱割れ性が低下する。質量比が0.30超えの場合は、平板部耐食性、アルカリ脱脂後耐食性、及び曲げ加工部耐食性が低下する。
成分(A)及び成分(B)は、各々単体で使用してもよいが、成分(A)と成分(B)を縮合反応させて低縮合物としてから、表面処理液に添加するのが好ましく、成膜後により高いバリア性が得られる。この低縮合物は、(A)および(B)のシラノール基同士の縮合反応により形成されるポリシロキサン結合を主骨格とするものであり、Si元素に結合する末端の基の全てがアルコキシ基であるものでもよく、Si元素に直接結合する基の一部がアルコキシ基であるものでもよい。
成分(A)と成分(B)の縮合反応により得られる低縮合物は、縮合度が2~30が好適であり、2~10がより好適である。縮合度が30以下であれば、水溶液中において白色沈殿を生じることなく、成分(A)及び成分(B)を安定に使用することができる。この低縮合物は、成分(A)と、成分(B)と、後述するキレート剤とを、反応温度1~70℃で10分間~20時間程度反応させ、オートクレーブ処理を行うことにより得ることができる。キレート剤は、例えば、リンゴ酸、酢酸、酒石酸等のヒドロキシカルボン酸;モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、クエン酸、アジピン酸等のジカルボン酸またはトリカルボン酸等のポリカルボン酸;およびグリシン等のアミノカルボン酸等などが挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。
この低縮合物の縮合状態は、JIS-K7252-4に記載されているゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)、NMR、およびFT-IRを用いて測定することができる。
この低縮合物の安定化に作用するキレート剤は、成分(A)のアルコキシ基と、成分(B)のアルコキシ基が、水とキレート剤によって加水分解反応する際に作用する。キレート剤による安定化作用は、その理由は定かでないが、加水分解反応によって生じる(A)及び(B)に由来のシラノール基にキレート剤が適度に配位することによって得られるものと考えられる。すなわち、シラノール基へのキレート剤の適度な配位作用が、(A)及び(B)の過度の縮合を抑制するため、貯蔵安定性に優れる表面処理液を得ることができる。さらには、長期に亘る表面処理液の保管後も安定した皮膜の品質が得られる。
キレート剤は、貯蔵安定性に加え、耐食性を確保する上でも有効である。その理由は定かでないが、キレート剤は、後述するバナジウム化合物(E)とも配位すると考えられ、皮膜が腐食環境に晒されると、バナジウム化合物(E)に配位したキレート剤はバナジウム化合物(E)とともに溶出し、それによって皮膜内で配位子を失った(A)及び(B)の縮合が進むことによって、より皮膜のバリア性が高まり、耐食性に寄与するものと考えられる。
<炭酸ジルコニウム化合物(C)>
本発明の表面処理液は、炭酸ジルコニウム化合物(C)を含有する。成分(A)、(B)と、炭酸ジルコニウム化合物(C)を併用することにより、バリア性が高く緻密な、耐熱割れ性、平板部耐食性、アルカリ脱脂後耐食性、曲げ加工部耐食性、耐水しみ性、耐汗性、耐黒変性、スタック耐黒変性に優れた皮膜が得られる。バリア性が高くなるのは、炭酸ジルコニウム化合物(C)は、シラノール基との縮合点となる水酸基を有するためである。さらに、炭酸ジルコニウム化合物(C)は、乾燥させると酸化ジルコニウムと水酸化ジルコニウムを生成するため、平板部耐食性、アルカリ脱脂後耐食性、曲げ加工部耐食性、耐水しみ性、耐汗性、耐黒変性、スタック耐黒変性の高い皮膜が得られる。また、耐熱割れ性が高くなるのは、500℃以上の加熱雰囲気に晒されても、酸化ジルコニウムの体積収縮率が低いこと、さらに、めっき層の熱膨張より酸化ジルコニウム皮膜に目視では確認されないマイクロクラックを生じ、このマイクロクラックが応力を分散させることにより目視で確認されるようなクラックは生じず、優れた耐熱割れ性を得るものと考えられる。炭酸ジルコニウム化合物(C)としては、例えば、炭酸ジルコニウム化合物のナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウムなどの塩が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。なかでも、炭酸ジルコニウムアンモニウムが造膜性、耐水しみ性などの点から好ましい。
炭酸ジルコニウム化合物(C)中のZrO換算質量(C)の、前記合計質量(X)に対する質量比(C/X)は0.45~0.70とする必要があり、好ましくは0.48~0.67、より好ましくは0.50~0.63である。質量比が0.45未満の場合には、炭酸ジルコニウム化合物(D)由来のバリア性が不足し、平板部耐食性、アルカリ脱脂後耐食性、曲げ加工部耐食性、スタック耐黒変性が低下する。なお、耐黒変性は維持される。一方、質量比が0.70超えの場合には、炭酸ジルコニウム化合物由来の硬質な成分が多く、良好な塗装密着性が得られない。
以上で記述した成分(A)~(C)を含む皮膜は、通常時は硬質でバリア性、平板部耐食性、アルカリ脱脂後耐食性、曲げ加工部耐食性に優れ、500℃を超える加熱時においても、テトラアルコキシシラン(B)及び炭酸ジルコニウム化合物(C)の緻密な皮膜によって、目視で確認されるようなクラックは生じず、耐熱割れ性に優れる。
<アニオン性ポリウレタン樹脂(D)>
本発明の表面処理液は、無機成分由来のクラックを抑制するために、ガラス転移点(Tg)が80~130℃であるアニオン性ポリウレタン樹脂(D)を含有する。これにより、耐熱変色性、耐熱割れ性、耐黒変性、スタック耐黒変性、耐水しみ性、耐汗性に優れた皮膜を得ることができる。ポリウレタン樹脂は高分子量であり、かつ、ウレタン結合が高い分子間凝集力を有するため、緻密でバリア性が高く、それ自体でも基材との密着性を有すが、成分(A)~(C)と併用することで、さらにバリア性を高めることができる。そのため、上記のような優れた性能を有する皮膜を得ることができる。
ウレタン樹脂の性質を左右する基本骨格であるポリオールの種類としては、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオールが挙げられる。ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオールは極性基を有するため、分子間の相互作用によって強靭な皮膜が得られる。ポリカーボネート系ポリオールは高価ではあるが、機械的強度に優れる。ポリエーテル系ポリオールは極性基を有していないため、機械的強度には多少劣るが、耐加水分解性など化学的には安定である。本発明で使用する成分(D)のポリオールについては特に制限はないが、本発明の目的とするアルカリ脱脂後耐食性、耐水しみ性などの観点より、ポリエーテル系ポリオールを使用することが好ましい。
成分(D)の重量平均分子量は、JIS-K7252-4に記載されているゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した場合、10,000~500,000程度であることが好ましく、50,000~300,000程度であることがより好ましい。重量平均分子量を大きくするとウレタン樹脂のTgや機械物性を高めることができるため、皮膜のバリア性が向上し、平板部耐食性、アルカリ脱脂後耐食性、耐水しみ性、耐溶剤性、耐汗性などをより高めることができる。
アニオン性ポリウレタン樹脂(D)は、ポリエーテルポリオール(特にジオール)とポリイソシアネート(特にジイソシアネート)を原料として、一般的な合成方法により得られるものである。限定的に解釈されるものではないが、より具体的な合成は、例えば、ポリエーテルジオールとジイソシアネートから両端にイソシアナト基を有するウレタンプレポリマーを製造し、これにヒドロキシル基を2個有するカルボン酸又はその反応性誘導体を溶媒中で反応させて両端にイソシアナト基を有する誘導体とし、ついでカウンターカチオンとしてトリエタノールアミンなどを加えてから、水に加えてエマルジョンとすることにより、アニオン性ポリウレタン樹脂を得ることができる。この後、必要に応じて、さらにジアミンを加えて鎖延長を行ってもよい。
成分(D)を製造する際に用いるポリイソシアネートとしては、脂肪族、脂環式及び芳香族ポリイソシアネートがあり、いずれも使用可能である。具体的には、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。これらの中で、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族または脂環式ポリイソシアネートを用いる場合は、耐溶剤性、平板部耐食性、アルカリ脱脂後耐食性等だけではなく、耐熱変色性に優れた皮膜が得られるので好ましい。
成分(D)を製造する際に用いるポリエーテルポリオール類としては、例えば、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール等の前記低分子ポリオールの他、ビスフェノールA、エチレンジアミン等のアミン化合物等へのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
成分(D)を製造する際に用いる、ヒドロキシル基を2個以上、好ましくは2個有するカルボン酸もしくはその反応性誘導体は、成分(D)に酸性基を導入するため、および成分(D)を水分散性にするために用いる。上記カルボン酸としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールペンタン酸、ジメチロールヘキサン酸などのジメチロールアルカン酸などが挙げられる。また、反応性誘導体としては、酸無水物などが挙げられる。このように成分(D)を自己水分散性にし、乳化剤を使用しないか極力使用しないようにすることにより、耐水しみ性に優れた皮膜が得られる。
成分(D)を製造する際にポリアミンや水等が用いられる。このポリアミンや水等は、調整したプレポリマーの鎖を伸長するために使用される。用いるポリアミンとしては、例えばヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、テトラメチレンジアミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン、ピペラジン、1,1’-ビシクロヘキサン-4,4’-ジアミン、ジフェニルメタンジアミン、エチルトリレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどが挙げられ、これらを単独で又は数種を組み合わせて使用することができる。
成分(D)の合成時の樹脂の安定性、さらには造膜時の周囲環境が低温乾燥下にある場合の造膜性を高めるために、合成に際して造膜助剤を配合することが好ましい。造膜助剤としては、ブチルセロソルブ、N-メチル-2-ピロリドン、ブチルカルビトール、テキサノールなどが挙げられ、N-メチル-2-ピロリドンが好ましい。
成分(D)のガラス転移点(Tg)は80~130℃とする必要があり、好ましくは85~125℃であり、より好ましくは90~120℃である。ガラス転移点は使用するポリオールの分子量などにより調整される。ガラス転移点(Tg)が80℃未満の場合、耐溶剤性に劣る。皮膜になった際の成分(D)間や、成分(A)~(C)との凝集性が不足し、皮膜のバリア性が低下するからである。一方、ガラス転移点(Tg)が130℃超えの場合は、皮膜が過度に硬くなり、優れた塗装密着性が得られない。なお、成分(D)のガラス転移点(Tg)は、動的粘弾性測定装置(RSAG2,TA Instrment)を用い、測定試料として、室温24時間乾燥後、80℃6時間乾燥、さらに120℃20分乾燥し作製したフィルムを用い、動的粘弾性を測定し、tanδの極大値から求めることができる。
成分(A)~(C)の合計質量(X)の、アニオン性ポリウレタン樹脂(D)の固形分質量(D)に対する質量比(X/D)は0.05~0.35とする必要があり、好ましくは0.10~0.32、より好ましくは0.19~0.28である。質量比が0.05未満の場合には、アニオン性ポリウレタン樹脂の量が多く、バリア性が不足するため、平板部耐食性、アルカリ脱脂後耐食性、曲げ加工部耐食性、耐溶剤性が低下する。一方、質量比が0.35超えの場合は、アニオン性ポリウレタン樹脂の量が少なく、耐熱変色性、耐熱割れ性、耐黒変性、スタック耐黒変性、耐水しみ性、耐汗性が劣る。
<バナジウム化合物(E)>
本発明の表面処理液は、バナジウム化合物(E)を含有する。バナジウム化合物(E)は、皮膜中では均一に分散して存在するが、腐食環境下においては適度に溶出し、同じく腐食環境下で溶出する亜鉛イオンと結合し緻密な不働態膜を形成することによって、平板部耐食性、アルカリ脱脂後耐食性、及び曲げ加工部耐食性を高める。バナジウム化合物(E)としては、例えば、メタバナジン酸アンモニウム、メタバナジン酸ナトリウム、バナジウムアセチルアセトネートが挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。
バナジウム化合物(E)中のV換算質量(E)の、成分(A)~(C)の合計質量(X)と成分(D)の固形分質量(D)との合計質量(X+D)に対する質量比(E/(X+D))は0.0010~0.015とする必要があり、好ましくは0.0017~0.011であり、より好ましくは0.0023~0.007である。質量比が0.0010未満の場合には、亜鉛イオンとの不働態膜形成効果が不足するため、平板部耐食性、アルカリ脱脂後耐食性、及び曲げ加工部耐食性が低下する。一方、質量比が0.015超えの場合には、良好な耐黒変性、スタック耐黒変性、耐水しみ性、耐汗性、塗装密着性が得られない。さらに、500℃を超える加熱時にバナジウムの酸化変色が現れるため、耐熱変色性、耐熱割れ性も低下する。
<モリブデン酸化合物(F)>
本発明の表面処理液は、優れた耐黒変性及びスタック耐黒変性を得るために、モリブデン酸化合物(F)を含有する。モリブデン酸化合物としては、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸マグネシウム、モリブデン酸亜鉛などが挙げられ、本発明では、これらのうちから選んだ1種以上を使用することが好ましい。
亜鉛系めっき層の黒変現象は、亜鉛系めっき層が高温高湿潤雰囲気に晒された際に、酸素欠乏型の酸化亜鉛が生成するためと考えられている。モリブデンは様々な価数を持つ第二遷移金属であり、空気中では酸素と結合してMoOやMoOで存在する。本発明では、MoO 2-等のモリブデン酸塩を使用する。このモリブデン酸塩は、皮膜に均一に添加された後、高温高湿雰囲気下においてMoO等のモリブデン酸化物に還元されると考えられる。この作用によって、亜鉛めっき層表面の亜鉛には適度に酸素が供給されるため、酸素欠乏型の酸化亜鉛の生成が抑制されると考えられる。一方で、モリブデン酸塩を過度に添加すると、平板部耐食性、アルカリ脱脂後耐食性、及び曲げ加工部耐食性の低下を引き起こす。
モリブデン酸化合物(F)中のMo換算質量(F)の、成分(A)~(C)の合計質量(X)と成分(D)の固形分質量(D)との合計質量(X+D)に対する質量比(F/(X+D))は0.0010~0.015とする必要があり、好ましくは0.0027~0.012であり、より好ましくは0.0043~0.009である。質量比が0.0010未満の場合には、優れた耐黒変性及びスタック耐黒変性が得られない。質量比が0.015超えの場合には、良好な平板部耐食性、アルカリ脱脂後耐食性、及び曲げ加工部耐食性が得られない。
<架橋剤(G)>
本発明の表面処理液は、優れた曲げ加工部耐食性を得るために、カルボキシル基に反応する架橋剤(G)を含有する。皮膜中にはアニオン性ポリウレタン樹脂が持つカルボキシル基があり、架橋剤(G)はそれと架橋反応することで、皮膜の有機成分が改質される。すなわち、バリア性と可撓性が高い皮膜が形成され、曲げ加工を行っても表面処理皮膜のクラックが抑制されることによって、曲げ加工部の耐食性が向上する。架橋剤(G)としては、1分子中にカルボキシル基と反応できる官能基を2個以上有する化合物が好ましい。カルボキシル基と反応できる官能基としては、例えば、エポキシ基、カルボジイミド基、オキサゾリン基が挙げられる。架橋剤(G)としては、例えば、エポキシ樹脂、カルボジイミド樹脂、オキサゾリン基含有ポリマーが挙げられ、これらのうちから選んだ1種以上を使用することが好ましい。
架橋剤(G)の固形分質量(G)の、成分(A)~(C)の合計質量(X)と成分(D)の固形分質量(D)との合計質量(X+D)に対する質量比(G/(X+D))は0.010~0.085とする必要があり、好ましくは0.020~0.050である。質量比が0.010未満の場合には、優れたバリア性が得られず曲げ加工部耐食性が低下する。質量比が0.085超えの場合は、成膜時に反応しきれなかった架橋剤により皮膜が膨潤しやすくなるため、耐溶剤性が低下する。
<珪酸ナトリウム(H)>
本発明の表面処理液は、優れた耐熱割れ性を向上させるため、一部の炭酸ジルコニウム(C)に代えて珪酸ナトリウム(H)を含有してもよい。珪酸ナトリウム(H)の含有量を増やすことで、炭酸ジルコニウム(C)を減らすことができる。珪酸ナトリウム(H)に含まれるナトリウムは、熱によってSiO連結網から分断されたSiO四面体の酸素原子へ結合する。そのため、SiO連結網の再結合が防止される。この作用によって、成分(H)は珪酸ガラスに流動性を与え、1,700℃以上にある珪酸ガラスの軟化温度を500℃~700℃に低下させる。本発明では、この作用を利用し、成分(A)~(C)を含む硬質で熱膨張率の小さい皮膜が500℃以上に加熱された際に、その皮膜に流動性を与えることによって、優れた耐熱割れ性を得るものと考える。
本発明で用いる珪酸ナトリウム(H)は、SiOとNaOを含み、そのモル比は、SiO/NaOが4~1のものであれば特に限定されない。例えば、2号珪酸ナトリウム、3号珪酸ナトリウムなどが挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。より好ましいモル比は、SiO/NaOが4~2である。SiO/NaOが4を超える場合、耐熱割れ性に対する効果が十分に得られない。SiO/NaOが1を下回る場合は、耐熱割れ性に対する効果は飽和するが、珪酸ナトリウム(H)の皮膜中への固定化が困難となるため、耐黒変性は維持できるが、より厳しい環境下での評価であるスタック耐黒変性に劣る。
珪酸ナトリウム(H)の含有量は、スタック耐黒変性を低下させない観点から、珪酸ナトリウム(H)の固形分質量(H)の、成分(A)~(C)の合計質量(X)と珪酸ナトリウム(H)の固形分質量(H)との合計質量(X+H)に対する質量比(H/(X+H))が0.050未満(0.000、すなわち添加しない場合を含む)とするのが好ましい。より好ましくは0.047以下、さらに好ましくは0.042以下とする。質量比が0.050以上の場合には、スタック耐黒変性が劣る。一方、下限は、0.000とするのが好ましいが、耐熱割れ性をより向上させる効果を期待するという理由から0.001以上としても良く、さらに好ましくは0.005以上としても良い。
<ワックス(I)>
本発明の表面処理液は、潤滑性を向上させるためにワックス(I)を含有してもよい。ワックス(I)としては、液に相溶するものであれば特に制限はなく、例えば、ポリエチレン等のポリオレフィンワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、ラノリン系ワックス、シリコン系ワックス、フッ素系ワックスなどが挙げられ、これらの1種以上を好適に使用することができる。また、前記ポリオレフィンワックスとしては、例えばポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどが挙げられ、これら1種以上を使用することができる。
ワックス(I)の固形分質量(I)の、成分(A)~(C)の合計質量(X)と成分(D)の固形分質量(D)との合計質量(X+D)に対する質量比(I/(X+D))は0.002~0.10とすることが好ましく、0.01~0.08がより好ましい。質量比が0.002以上の場合、十分な潤滑性向上効果が得られる。一方、質量比が0.10以下の場合、潤滑性が高まりすぎてコイル製造時の巻き取り工程におけるコイル潰れを生じるという懸念がない。さらに、平板部耐食性、アルカリ脱脂後耐食性や塗装密着性が低下する懸念もない。
<pHが8.0~10.0>
本発明の表面処理液は、上述した成分を脱イオン水、蒸留水等の水中で混合することにより得られる。表面処理液の固形分割合は適宜選択すればよいが10~20質量%が好ましい。また、表面処理液のpHは、8.0~10.0に調製する必要があり、好ましくは8.5~9.5である。pHが8.0未満または10.0超えの場合には、表面処理液の貯蔵安定性が低下する。さらに、pHが10.0超えの場合には、亜鉛系めっき層のエッチングが過多となり、平板部耐食性、アルカリ脱脂後耐食性、及び曲げ加工部耐食性が低下する。pHを調整する場合は、アンモニアまたはその塩、及び、前述したキレート剤の何れか1種以上を適宜使用すればよい。
さらに、表面処理液には、必要に応じてアルコール、ケトン、セロソルブ、アミン系の水溶性溶剤、消泡剤、防菌防カビ剤、着色剤、均一塗工のための濡れ性向上剤、樹脂、界面活性剤等の添加剤を添加してもよい。ただし、これら添加剤は本発明で得られる品質を損なわない程度に添加することが重要であり、添加量は多くても表面処理液の全固形分に対して5質量%未満とすることが好ましい。
(表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法)
本発明の表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法は、亜鉛系めっき鋼板の表面に、上記の表面処理液を塗布する第1工程と、その後、塗布された前記表面処理液を大気中で乾燥する第2工程と、その後、塗布された前記表面処理液を加熱炉で加熱乾燥して、付着量が50~2,000mg/mの表面処理皮膜を形成する第3工程と、を有する。以下に、その皮膜の形成条件・方法について詳述する。
<表面処理皮膜の付着量>
加熱乾燥後の表面処理皮膜の付着量は、片面あたり50~2,000mg/mであり、好ましくは500~1,500mg/mである。付着量が50mg/m未満ではバリア性が不足するため、平板部耐食性、アルカリ脱脂後耐食性、曲げ加工部耐食性、耐黒変性、耐水しみ性、耐汗性が得られない。一方、付着量が2,000mg/mを超えると、皮膜が厚いため、耐熱変色性、耐熱割れ性が劣る。
<前処理>
亜鉛系めっき鋼板に表面処理液を塗布する前に、必要に応じて、亜鉛系めっき鋼板表面の油分や汚れを除去することを目的とした前処理を亜鉛系めっき鋼板に施してもよい。亜鉛系めっき鋼板は、防錆目的で防錆油が塗られている場合が多く、また、防錆油で塗油されていない場合でも、作業中に付着した油分や汚れ等がある。上記の前処理を施すことにより、亜鉛系めっき層の表面が清浄化され、均一に濡れやすくなる。亜鉛系めっき鋼板表面に油分や汚れ等がなく、表面処理液が均一に濡れる場合は、前処理工程は特に必要はない。なお、前処理の方法は特に限定されず、例えば湯洗、有機溶剤洗浄、アルカリ脱脂洗浄等の方法が挙げられる。
<第1工程>
表面処理液を亜鉛系めっき鋼板の表面に塗布する方法としては、処理される亜鉛系めっき鋼板の形状等によって適宜最適な方法を選択すればよく、ロールコート法、バーコート法、浸漬法、スプレー塗布法等が挙げられる。また、塗布後にエアーナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。
表面処理液を塗布する際の、亜鉛系めっき鋼板の温度及び表面処理液の温度をそれぞれT及びTとし、T-TをΔTとしたとき、Tは15~55℃とし、Tは10~40℃とし、ΔTは5~40℃とすることが好ましい。
は室温近辺、すなわち10~40℃が好ましい。Tが10℃以上であれば、表面処理液の流動性が低下することがなく、40℃以下であれば、表面処理液の貯蔵安定性が低下することがない。Tは、後述のZr含有相が所望の体積分率となる2相分離皮膜を得るためのΔTを確保するために、15~55℃とすることが好ましい。
ΔTが5℃以上であれば、表面処理液膜中の水分が気化するため、後述のZr含有相が所望の体積分率となる2相分離皮膜を得ることでき、また40℃以下であれば、上記の縮合反応を開始する前に、表面処理液膜中の水分が気化し始めることがないため、皮膜の骨格となる樹脂成分からなる相(後述のZr非含有相)を所定量確保できる。
<第2工程(予備乾燥工程)>
温度差ΔTとの関係で、予備乾燥工程の時間t(秒)を決定することが好ましい。具体的には、ΔT/tを1~60℃/sとすることが好ましい。これにより、鋼板表面に形成された表面処理液膜中の水分を徐々に気化させることができる。すなわち、鋼板表面に形成された表面処理液膜中において、水分が気化する前にSiがZrと共に水分と縮合反応を開始し、所望の表面処理皮膜を得ることができる。ΔT/tが1℃/s以上であれば、上記の縮合反応が過剰となることがなく、後述の体積分率となる2相分離皮膜を得ることができ、また60℃/s以下であれば、上記の縮合反応が不十分となることがなく、皮膜の骨格となる樹脂成分からなる相(後述のZr非含有相)を所定量確保できる。
<第3工程(加熱炉による加熱乾燥工程)>
加熱炉としては、熱風炉、高周波誘導加熱炉、及び赤外線炉などを用いることができる。本発明では、第3工程の加熱開始時における亜鉛系めっき鋼板の温度をX、第3工程における亜鉛系めっき鋼板の最高到達温度(Peak Metal Temperature:PMT)をYとしたとき、Yが60~150℃であり、第3工程における加熱時間をz秒としたとき、(Y-X)/zが1~100℃/sであることが重要である。すなわち、PMTを所定の温度域とし、XとYとの温度差ΔWとの関係で、加熱時間z(秒)を決定することが重要である。これにより、皮膜の骨格となる樹脂成分の一部を改質させることができる。すなわち、加熱乾燥工程において、皮膜の骨格となる樹脂成分と架橋剤が反応し、軟質な相が形成される。本発明では、加工時に皮膜中のZrを含む無機成分からなる相を起点とした割れが、Zrを含まない樹脂相に進展するが、該樹脂相中に架橋剤との架橋領域を均一に分散させることによって、その割れ進展を抑制することができる。このため、曲げ加工部耐食性が劣化することを抑制することができる。
PMTが60℃未満の場合、軟質な相(架橋領域)を形成するための架橋反応が不十分となり、軟質な相を所定量確保できず、十分な曲げ加工部耐食性を得ることができない。PMTが150℃超えの場合、形成した軟質な相が熱分解するため、同様に軟質な相を所定量確保できず、十分な曲げ加工部耐食性を得ることができない。よって、PMTは60~150℃とし、好ましくは80~120℃とする。
ΔW/zが1℃/s未満の場合、Zr非含有相だけでなくZr含有相も架橋剤と反応することから、Zr非含有相に形成される軟質な相が不十分となる。このため、皮膜を軟質化することができず、十分な曲げ加工部耐食性を得ることができない。また、ΔW/zが100℃/s超えの場合、軟質な相が局所的に粗大化し、Zr非含有相中に分散しにくくなる。このため、皮膜を軟質化することができず、十分な曲げ加工部耐食性を得ることができない。よって、ΔW/zは1~100℃/sとし、好ましくは15~65℃/sとする。
(表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板)
本発明の表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板は、上記の製造方法で製造された表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板である。
<表面処理皮膜の化学結合状態>
本発明では、表面処理皮膜のフーリエ変換赤外分光法(FT-IR)による反射スペクトルにおいて、1733cm-1の吸光度(I1733)の1712cm-1の吸光度(I1712)に対する比(I1733/I1712)が0.88以上1.10以下である。前記1733cm-1および1712cm-1の吸収が何に由来するかを完全に同定するのは難しいが、それぞれ、エステル結合とカルボキシル基の増減に大きく依存していると考えることができる。本発明で添加した架橋剤(G)により架橋反応が適正に生じると、カルボキシル基が減少し、かわりに架橋反応により生じるエステル結合が増加すると考えられる。このことから、両者の比を測定することで架橋反応が適正に生じているかどうかを判定することができる。
比(I1733/I1712)が0.88未満の場合、架橋剤の添加量が不足している、加熱乾燥条件が適切でないなどの理由で、架橋反応が不十分であるため、十分な曲げ加工部耐食性を得ることができない。比(I1733/I1712)が1.10超えの場合、架橋反応は十分に生じているものの、架橋剤の添加量が多すぎることで、耐溶剤性の劣化を招く。よって、比(I1733/I1712)は0.88~1.10であり、好ましくは0.90~1.02である。
FT-IRの反射スペクトル測定においては、好適な表面処理皮膜の厚さを鑑みて、高感度反射法を用いるとよい。測定の際に必要なリファレンス試料としては、測定する試料と同じ亜鉛系めっき鋼板で、表面処理皮膜を成膜していない試料を用いるのが最も適切であるが、それが入手困難な場合は、できるだけ近いめっき条件で製造された同種の亜鉛系めっき鋼板で代替してもよい。
<表面処理皮膜の形態>
表面処理皮膜中のZrは、Zrを含む無機系物質から構成される相を形成させる上で重要な元素である。前記亜鉛系めっき鋼板表面に成膜された表面処理皮膜は、加熱乾燥時に、Zrと共にSiが縮合反応を起こすことにより、Zr含有相とZr非含有相に分離する。
ここで、「Zr非含有相」とは、構成元素全体に対するZrの含有量が5質量%未満の相をいう。Zr非含有相は、表面処理皮膜を形成する基本骨格をなし、C、Oを主体とし、さらにSiを含む樹脂成分からなる相である。
Zr含有相は、主としてSi、Zr、V、Moの酸化物等の無機系物質から構成される相である。Zr含有相にはSiが濃縮されるため、Zr含有相のSi濃度は、Zr非含有相のSi濃度より高い。
表面処理皮膜中のSiは、Si同士の結合性、Zr含有相とZr非含有相との結合性、および皮膜とめっき層表面との結合性を増強し、耐食性を向上させることができる。Zr含有相におけるSi、Zr、VおよびMo合計濃度に対するSi濃度の割合:Si/(Si+Zr+V+Mo)(質量比として)は、0.05~0.30が好ましく、0.10~0.15がさらに好ましい。
表面処理皮膜中のVは、Zr含有相に共存させることにより、腐食環境下で適度に溶出し、めっき表面から溶出する亜鉛イオンと結合して緻密な不動態膜を形成するため、耐食性を向上させることができる。この効果を得るために、Zr含有相におけるSi、Zr、VおよびMo合計濃度に対するV濃度の割合:V/(Si+Zr+V+Mo)(質量比として)は、0.003~0.06が好ましく、0.01~0.03がさらに好ましい。
表面処理皮膜中のMoは、耐黒変性及びスタック耐黒変性の向上に寄与する。この効果を得るために、Zr含有相におけるSi、Zr、VおよびMo合計濃度に対するMo濃度の割合:Mo/(Si+Zr+V+Mo)(質量比として)は、0.003~0.2が好ましく、0.01~0.1がさらに好ましい。
Zr含有相を表面処理皮膜中に分布させることにより、Zr非含有相との結合性を増強し、バリア性が高く緻密な皮膜とすることができる。この効果を得るためには、表面処理皮膜全体に対して、Zr含有相の体積分率が5~40%であることが好ましく、5~30%がより好ましい。
本発明では、Zrを含まない樹脂成分からなる相には、上述の架橋剤との架橋反応で樹脂成分の一部が改質された領域(架橋領域)が存在する。架橋反応の結果、架橋領域は周囲に比べて弾性率が下がるため、曲げ加工時に皮膜が割れにくくなり、曲げ加工部耐食性を高めることができる。Zr非含有相の表面に分散している架橋領域の密度が10μm当たりに6個以上の場合、架橋反応が十分に進行したため、十分な曲げ加工部耐食性を得ることができる。よって、Zr非含有相の表面には、10μm当たりに6個以上の架橋領域が分散して存在することが好ましい。他方、Zr非含有相の表面に分散している架橋領域の密度が過大の場合、架橋反応は十分に生じているものの、架橋剤の添加量が多すぎることで、耐溶剤性の劣化を招く。よって、Zr非含有相の表面に分散して存在する架橋領域の密度は、10μm当たりに28個以下であることが好ましい。同じ観点から、Zr非含有相における架橋領域の面積率は2.0~8.0%とすることが好ましい。
Zr含有相とZr非含有相との識別、及び、Zr非含有相中の架橋領域の識別は、皮膜の表面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察して、SEM像においてコントラスト差に基づいて行うことができる。近年のSEMでは、メーカーや機種によりさまざまなタイプの二次電子検出器や反射電子検出器があり、観察条件により異なる情報が得られることが報告されている。従って、皮膜表面の観察には、都度使用される装置に応じて適切な観察条件を用いればよい。ただし、加速電圧については、大きく異なる場合には、情報深さが変わり評価が異なる可能性があるため、0.5~3kVの範囲で評価することが好ましい。例えば、0.5kV程度の低い加速電圧で、一般的な二次電子検出器であるEverhart-Thornley型検出器を用いた二次電子像観察を行うと、無機系物質から構成されるZr含有相は明るく、樹脂成分からなるZr非含有相は暗く、Zr非含有相中の架橋領域はさらに暗く観察されるので、コントラストを元に、これらを判別することができる。
Zr含有相の体積分率は、皮膜の表面または断面を電子顕微鏡で観察することにより評価できる。皮膜表面の観察には、前記相判別と同様、SEMを用いて、比較的低い加速電圧である0.5~3kVの範囲で観察することで評価することができる。皮膜断面の観察には、集束イオンビーム(FIB)で加工した皮膜の断面をSEMで観察するか、もしくはFIBで薄片状にまで加工した試料を、透過電子顕微鏡(TEM)または走査透過電子顕微鏡(STEM)で観察する方法が適している。また、ある領域がZr含有相かZr非含有相かを判別するためには、上記走査透過電子顕微鏡(STEM)による断面観察において、エネルギー分散分光法(EDS)による元素分析が利用できる。それぞれの相における元素分析により、それぞれの相においてZrを含むか含まないかを判断することができる。得られた画像からZr含有相の面積率を算出し、体積分率とみなすことができる。また、EDSによる元素分析に基づいて、Si/(Si+Zr+V+Mo)、V/(Si+Zr+V+Mo)およびMo/(Si+Zr+V+Mo)の値を算出することができる。観察倍率としては、1~3万倍程度が好ましい。また、観察場所によりばらつきがあることが考えられるため、ひとつの試料につき、少なくとも5視野以上の画像を取得し、その平均を評価値とすることが好ましい。
以下、実施例および比較例により本発明の効果を説明するが、本実施例はあくまで本発明を説明する一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
(1)供試板
以下に示す各種亜鉛系めっき鋼板を供試板として使用した。なお、亜鉛系めっき層は鋼板の両面に形成され、表1中の付着量は片面当たりの亜鉛系めっき層の付着量を意味する。また、以下の方法で求めたZn-Al-Mg系三元共晶の表面面積率も表1に示す。めっき層の表面の無作為な部位を観察倍率100倍でSEM観察する。次いで、同視野でEDSによりMgのマッピングを行う。その分析結果を画像解析して、白黒の2階調化する。この2階調化した画像よりZn-Al-Mg系三元共晶の面積割合を計算する。同様の評価を任意の8視野で実施し、最後に全視野の面積割合を算術平均し、得られた平均値をZn-Al-Mg系三元共晶の表面面積率とする。
Figure 0007316020000001
(2)前処理(洗浄)
上述の供試板の表面を、日本パーカライジング(株)製パルクリーンN364Sを用いて処理し、表面の油分や汚れを取り除いた。次に、水道水で水洗して供試板の表面が水で100%濡れることを確認した後、さらに純水(脱イオン水)を流しかけ、100℃雰囲気のオーブンで水分を乾燥した。
(3)表面処理液の調製
表2-1及び表3-1に示す(A)~(I)の各成分を、表2-1及び表3-1に示す質量比にて水中で混合し、固形分が15質量%の表面処理液を得た。
以下に、表2-1及び表3-1で使用された化合物について説明する。
<グリシジル基を有するシランカップリング剤(A)>
A1:3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
A2:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
<テトラアルコキシシラン(B)>
B1:テトラメトキシシラン
B2:テトラエトキシシラン
<炭酸ジルコニウム化合物(C)>
C1:炭酸ジルコニウムカリウム(ZrO:20.0質量%)
C2:炭酸ジルコニウムアンモニウム(ZrO:20.0質量%)
<アニオン性ポリウレタン樹脂(D)>
製造方法1(アニオン性ポリウレタン樹脂D1)
ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールから得られた数平均分子量1560のポリエーテルポリオール100質量部、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール5質量部、4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート100質量部、2,2-ジメチロールプロピオン酸20質量部、および、N-メチル-2-ピロリドン120質量部を反応器内に加えて、不揮発分に対する遊離のイソシアナト基含有量が5%であるウレタンプレポリマーを得た。次に、テトラメチレンジアミン16質量部及びトリエチルアミン10質量部を脱イオン水500質量部に加えてホモミキサーで攪拌しながら、上記ウレタンプレポリマーを加えて乳化分散した。最後に、脱イオン水を加えて固形分25質量%の水分散性ポリウレタン樹脂を得た。なお、得られたポリウレタン樹脂(D1)のガラス転移点(Tg)を、動的粘弾性測定装置を用いて測定したところ、85℃であった。
製造方法2(アニオン性ポリウレタン樹脂D2)
反応器内に2,2-ジメチロールプロピオン酸20質量部に替えて、1,4-ブタンジオール-2-スルホン酸20質量部を使用した以外は、製造方法1と同様にして固形分25質量%の水分散性ウレタン樹脂を得た。なお、得られたポリウレタン樹脂(D2)のガラス転移点(Tg)を、動的粘弾性測定装置を用いて測定したところ、85℃であった。
製造方法3(アニオン性ポリウレタン樹脂D3)
反応器内にポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとから得られた数平均分子量5000のポリエーテルポリオール100質量部に替えて、1、6-ヘキサンジオールとアジピン酸から得られた数平均分子量2220のポリエステルポリオール100質量部を使用した以外は、製造方法1と同様にして固形分25質量%の水分散性ウレタン樹脂を得た。なお、得られたポリウレタン樹脂(D3)のガラス転移点(Tg)を、動的粘弾性測定装置を用いて測定したところ、70℃であった。
製造方法4(アニオン性ポリウレタン樹脂D4)
反応器内にポリエチレングリコールとポリプロピレンとから得られた数平均分子量5000のポリエーテルポリオール100質量部に替えて、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールから得られた数平均分子量1560のポリエーテルポリオール100質量部を使用した以外は、製造方法1と同様にして固形分25質量%の水分散性ウレタン樹脂を得た。なお、得られたポリウレタン樹脂(D4)のガラス転移点(Tg)を、動的粘弾性測定装置を用いて測定したところ、105℃であった。
製造方法5(アニオン性ポリウレタン樹脂D5)
反応器内にポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとから得られた数平均分子量5000のポリエーテルポリオール100質量部に替えて、1、6-ヘキサンジオールとアジピン酸から得られた数平均分子量1320のポリエステルポリオール100質量部を使用した以外は、製造方法1と同様にして固形分25質量%の水分散性ウレタン樹脂を得た。なお、得られたポリウレタン樹脂(D5)のガラス転移点(Tg)を、動的粘弾性測定装置を用いて測定したところ、120℃であった。
製造方法6(アニオン性ポリウレタン樹脂D6)
反応器内にポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとから得られた数平均分子量5000のポリエーテルポリオール100質量部に替えて、1、6-ヘキサンジオールとアジピン酸から得られた数平均分子量1000のポリエステルポリオール100質量部を使用した以外は、製造方法1と同様にして固形分25質量%の水分散性ウレタン樹脂を得た。なお、得られたポリウレタン樹脂(D6)のガラス転移点(Tg)を、動的粘弾性測定装置を用いて測定したところ、140℃であった。
<バナジウム化合物(E)>
E1:メタバナジン酸アンモニウム(V:43.5質量%)
E2:メタバナジルアセチルアセトネート(V:19.2質量%)
<モリブデン酸化合物(F)>
F1:モリブデン酸アンモニウム(Mo:54.4質量%)
F2:モリブデン酸ナトリウム(Mo:43.8質量%)
<架橋剤(G)>
G1:エポキシ樹脂(固形分:100質量%、ナガセケムテックス株式会社製 デナコール(登録商標)EX-313)
G2:カルボジイミド樹脂(固形分:40質量%、日清紡ケミカル株式会社製 カルボジライト(登録商標)SV-02)
G3:オキサゾリン基含有ポリマー(固形分:40質量%、日本触媒株式会社製 エポクロス(登録商標)K-2020)
<珪酸ナトリウム(H)>
H1:3号珪酸ナトリウム(固形分:38.5質量%)
H2:2号珪酸ナトリウム(固形分:40.6質量%)
<ワックス(I)>
I1:ポリエチレンワックス(固形分:40.0質量%、三井化学株式会社製、ケミパール(登録商標)W900)
I2:マイクロクリスタリンワックス(固形分:46.0質量%、サンノプコ株式会社製 ノプコ(登録商標)1245-M-SN)
(4)処理方法
表2-2及び表3-2の「鋼板」欄に示した前処理後の各種供試板に、表2-1及び表3-1の各種表面処理液をバーコーターで塗布し、その後、水洗することなく、そのままオーブンに入れて塗布された表面処理液を加熱乾燥して、表2-2及び表3-2に示す付着量(片面あたり)を有する表面処理皮膜を片面に形成した。なお、付着量は、配合した炭酸ジルコニウム化合物(C)のZrを蛍光X線分析装置により定量し、Zr付着量から皮膜付着量へ換算して求めた。
表面処理液を塗布する際の、供試板の温度Tは33℃、表面処理液の温度Tは25℃、T-T(ΔT)は8℃とした。また、供試板をオーブンに入れるまでの予備乾燥の時間tは1秒とした。ΔT/tは8℃/sである。オーブンでの加熱開始時における供試板の温度Xと、供試板の最高到達温度Yと、Y-X(=ΔW)と、オーブンでの加熱時間zと、ΔW/zは、表2-2及び表3-2に示した。
(5)表面処理皮膜の化学結合状態の評価
FT-IRで高感度反射法を用いて、皮膜のスペクトルを測定した。測定の際には、リファレンス試料として、測定する試料と同じ亜鉛系めっき鋼板で、表面処理皮膜を成膜していない試料を用いた。得られたFT-IRスペクトルより、1733cm-1の吸光度(I1733)の1712cm-1の吸光度(I1712)に対する比(I1733/I1712)を算出した。一部の水準における吸光度比を、代表して表3-2に示した。
(6)皮膜組織の評価
皮膜断面をSTEM-EDSで解析した。解析に供した試料は、FIBによる薄片加工で作製した。皮膜部分のEDSスペクトラルマップを取得し、そこから皮膜中の各領域での定量計算を実施し、Zr含有相の面積率を求めて体積分率とした。また、前記定量計算に基づいて、Si/(Si+Zr+V+Mo)、V/(Si+Zr+V+Mo)、及びMo/(Si+Zr+V+Mo)の値を算出した。一部の水準におけるZr含有相の面積率を、代表して表3-2に示した。
(7)表面組織の評価
皮膜表面をSEMで観察した。観察時の加速電圧を0.5kVとし、Everhart-Thornley型検出器を用いて二次電子像を取得した。観察倍率は2万倍(観察領域として約6μm×4μm)とし、1024×700ピクセル、グレースケール256階調のデジタル画像として取得した。観察像のコントラストから、架橋領域を抽出した。Zr非含有相における架橋領域の密度(10μm当たり)と面積率を測定した。一部の水準における測定値を、代表して表3-2に示した。
(8)評価試験の方法
製造した各水準の表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板から採取したサンプルに対して、以下の(8-1)~(8-12)の評価を行った。また、各水準の表面処理液に対して、以下の(8-13)の評価を行った。これらの結果を、表2-2に示す。(8-5)加工部耐食性及び(8-9)耐溶剤性の評価結果は、表3-2にも示した。評価基準△及び×は性能不足のため好ましくない。
(8-1)耐熱変色性
各サンプルを赤外線イメージ炉にて30秒で板温:500℃に加熱し、5分間保持した後、室温まで自然放冷した時の表面外観を目視観察した。その評価基準は以下のとおりである。
(評価基準)
◎ :変色なし
○ :極僅かに黄色味あり
○-:僅かに黄色味あり
○=:極僅かに褐色味あり
○≡:僅かに褐色味あり
△ :褐色に変色
× :茶褐色に変色
(8-2)耐熱割れ性
各サンプルを赤外線イメージ炉にて30秒で板温:500℃に加熱し、5分間保持した後、室温まで自然放冷した時の表面外観を目視観察した。目視でクラックを確認できない場合、光学顕微鏡を用いて1000倍で観察した。その評価基準は以下のとおりである。
(評価基準)
◎ :クラックなし
○ :僅かに目視で確認されないクラックあり
○-:目視で確認されるクラックはないが目視確認されないクラックあり
○=:極僅かにクラックあり
○≡:僅かにクラックあり
△ :全面に幅の細いクラックあり
× :全面に幅の細いクラックに加え、広いクラックあり
(8-3)平板部耐食性
各サンプルに対して、平板の状態で、JIS-Z-2371-2000に準拠する塩水噴霧試験(SST)を実施した。240時間後の白錆発生面積率で平板部耐食性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
(評価基準)
◎ :白錆面積率5%未満
○ :白錆面積率5%以上10%未満
○-:白錆面積率10%以上25%未満
△ :白錆面積率25%以上50%未満
× :白錆面積率50%以上100%以下
(8-4)アルカリ脱脂後の耐食性
アルカリ脱脂剤FC-E6406(日本パーカライジング(株)製)を20g/Lの濃度で純水に溶解し、60℃に加温した。このアルカリ溶液に各サンプルを2分間浸漬し、取り出して水洗して乾燥した。各サンプルについて塩水噴霧試験(JIS-Z-2371-2000)を行い、120時間経過後の白錆発生面積率で評価した。評価基準は上記(8-3)に示したとおりである。
(8-5)曲げ加工部の耐食性
各サンプルに対して、3Rで90°に曲げた状態で、JIS-Z-2371-2000に準拠する塩水噴霧試験(SST)を実施した。144時間後の頭頂部の白錆発生面積率で曲げ加工部の耐食性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
(評価基準)
◎ :曲げ加工部の白錆発生面積率5%未満
○ :曲げ加工部の白錆発生面積率5%以上、10%未満
○-:曲げ加工部の白錆発生面積率10%以上、25%未満
△ :曲げ加工部の白錆発生面積率25%以上、50%未満
× :曲げ加工部の白錆発生面積率50%以上
(8-6)耐黒変性
各サンプルを温度:80℃、相対湿度:98%の雰囲気に制御された恒温恒湿機に24時間静置した際の明度(L値)の変化(ΔL=試験後のL値-試験前のL値)で算出した。評価基準は以下のとおりである。L値は、日本電色工業(株)製のSR2000を使用し、SCIモード(正反射光込み)で測定した。
(評価基準)
◎ :-6<△L、かつ、ムラが無い均一な外観
○ :-10<△L≦-6、かつ、ムラが無い均一な外観
○-:-14<△L≦-10、かつ、ムラが無い均一な外観
△ :-14<△L≦-10、かつ、微細な黒点あり
× :△L≦-14、または、外観ムラあり
(8-7)スタック耐黒変性
同一皮膜のサンプル2枚で対象面を重ね合わせ、トルク強度20kgfで締め付けたものを、温度:50℃、相対湿度:98%の雰囲気に制御された恒温恒湿機に4週間静置した後、その表面外観を目視観察した。評価基準は以下のとおりである。
(評価基準)
◎ :変色がなく、かつ、ムラが無い均一な外観
○ :極僅かに黒色に変色、かつ、ムラが無い均一な外観
○-:僅かに黒色に変色、かつ、ムラが無い均一な外観
○=:極僅かに黒色に変色、かつ、微細な黒点あり
○≡:僅かに黒色に変色、かつ、微細な黒点あり
△ :黒色に変色、かつ、微細な黒点あり
× :黒色に変色、かつ、外観ムラあり
(8-8)耐水しみ性
各サンプルについて、平板の状態で、サンプル表面に脱イオン水を100μL滴下し、炉内温度100℃の熱風オーブンに10分間投入し、オーブンから取り出した後の水滴滴下跡を目視観察して、耐水しみ性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
(評価基準)
◎ :水滴境界が見る角度によらず確認されない。
○ :水滴境界が見る角度によって若干確認される。
○-:水滴境界が見る角度によらず若干確認される。
△ :水滴境界が見る角度によらずはっきり確認される。
× :水滴境界が滴下範囲を超えてはっきり確認される。
(8-9)耐溶剤性
各サンプルの表面にエタノールを染み込ませたガーゼを4.90N(500gf)の荷重をかけて押し付け、その荷重のまま10回往復するように擦った。その擦った痕を目視にて評価した。評価基準は以下のとおりである。
(評価基準)
◎ :痕跡なし
○ :上から見ると痕跡が見ないが、斜めから見ると明らかに見える。
○-:上から見て僅かに痕跡が見える。
△ :上から見て痕跡が明らかに見える。
× :皮膜が剥離している。
(8-10)耐汗性
各サンプルの表面に、JIS-B7001-1995に準ずる人工汗を10μL滴下し、シリコン製のゴム栓を滴下部に押し付けて、一定面積の人工汗で汚染された部位を作製した。この試験片を温度:40℃、相対湿度:80%の雰囲気に制御された恒温恒湿機に4時間静置した後に、汚染部位の外観変化を評価した。評価基準は次のとおりである。
(評価基準)
◎ :変色なし
○ :極僅かに変色あり
○-:僅かに変色あり
△ :やや黒変
× :明らかに黒変
(8-11)塗装密着性
メラミンアルキッド系塗料であるデリコン(登録商標)#700(大日本塗料(株)製)を各サンプルに塗装し、130℃で30分間焼付け、膜厚:30μmの塗膜を形成した。その後、沸騰水に2時間浸漬し、直ちに、碁盤目(10×10個、1mm間隔)の鋼素地まで達するカットを入れた。さらにエリクセン押し出し機にてカット部が外(表)側となる様に5mm押し出し加工を施し、接着テープによる貼着・剥離を行い、塗膜の剥離面積を測定した。評価の基準は以下のとおりである。なお、エリクセン押し出し条件は、JISZ-2247-2006に準拠し、ポンチ径:20mm、ダイス径:27mm、絞り幅:27mmとした。
(評価基準)
◎ :剥離なし
○ :剥離面積3%未満
○-:剥離面積3%以上、10%未満
△ :剥離面積10%以上、30%未満
× :剥離面積30%以上
(8-12)潤滑性
各サンプルより直径:100mmの円板状の試験片を切り出し、ポンチ径:50mm、ダイス径:51.91mm、しわ押さえ力:1トンの条件でカップ状に成型した。成型品の絞り加工を受けた面(カップの側面外側)の外観を目視によって調べ、傷つき程度および黒化程度を評価した。評価基準は次のとおりである。
(評価基準)
◎ :全面に渡って殆ど変化なく、外観が均一
○ :傷つきおよび黒化が少し発生し、外観が明らかに不均一
○-:局部的に傷つきおよび黒化が発生し、外観が明らかに不均一
△ :コーナー部を中心に傷つきおよび黒化が激しく発生
× :成型できずに割れた
(8-13)貯蔵安定性
表2に示した各表面処理液を40℃の恒温槽に30日間保管した。取り出して、各表面処理液の外観を目視によって調べ、評価した。評価基準は次のとおりである。
(評価基準)
◎ :変化なし
○ :極微量の沈殿が見られる
○-:微量の沈殿がみられる
△ :微量の沈殿が見られ、やや粘度が高くなった
× :多量の沈殿が見られる、もしくはゲル化した
Figure 0007316020000002
Figure 0007316020000003
Figure 0007316020000004
Figure 0007316020000005
Figure 0007316020000006
Figure 0007316020000007
Figure 0007316020000008
Figure 0007316020000009
Figure 0007316020000010
Figure 0007316020000011
Figure 0007316020000012
Figure 0007316020000013
Figure 0007316020000014
Figure 0007316020000015
表2-1及び表2-2に示すNo.1~133は、加熱乾燥条件(X,Y,ΔW,z)を固定し、表面処理液の種類、鋼板の種類、及び付着量を振った水準である。そのうち、架橋剤の質量比(G/(X+D))を振った水準であるNo.109~115,122~133は、表3-1及び表3-2にも含まれ、皮膜構造評価の結果を示した。表3-1及び表3-2に示すNo.134~159は、架橋剤の種類G1~G3の各々を用いて加熱乾燥条件(X,Y,ΔW,z)を振った水準である。
表2-2に示すように、本発明例は、耐熱変色性、耐熱割れ性、平板部耐食性、アルカリ脱脂後耐食性、曲げ加工部耐食性、耐黒変性、スタック耐黒変性、耐水しみ性、耐溶剤性、耐汗性、塗装密着性、貯蔵安定性のいずれに優れる。これに対し、いずれかの要件が本発明の適正範囲を逸脱した比較例は、上記いずれかの特性を十分に得ることができない。また、比較例No.105では、表面処理液のpHが低いため、表面処理液を調製できずに、供試板の評価ができなかった。
また、表3-1及び表3-2に示すように、架橋剤の質量比と加熱乾燥条件の両方が本発明範囲の場合に、吸光度比及び架橋領域の密度が本発明の範囲となり、優れた加工部耐食性と耐溶剤性の両立を図ることができた。なお、表3-1及び表3-2に示す全ての水準において、Zrを含む相では、Si/(Si+Zr+V+Mo)の値が、質量比で0.05~0.3であり、V/(Si+Zr+V+Mo)の値が0.003~0.06であり、Mo/(Si+Zr+V+Mo)の値が0.003~0.2であった。また、表2-1及び表2-2に示され表3-1及び表3-2に示されていない水準であるNo.1~108,116~121では、架橋剤の質量比及び加熱乾燥条件が固定されているため、吸光度比及び架橋領域の密度はほぼ同等の値(本発明の範囲)となった。
本発明の表面処理液を用いて製造された表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板は、曲げ加工を必要とする用途に好適であることはもちろん、家電製品用鋼板、建材用鋼板、自動車用鋼板など種々の用途に用いることができる。

Claims (5)

  1. 亜鉛系めっき鋼板の表面に、グリシジル基を有するシランカップリング剤(A)、テトラアルコキシシラン(B)、炭酸ジルコニウム化合物(C)、ガラス転移点(Tg)が80~130℃であるアニオン性ポリウレタン樹脂(D)、バナジウム化合物(E)、モリブデン酸化合物(F)、架橋剤(G)、及び水を含有し、pHが8.0~10.0で、かつ、各成分の含有量が以下の(1)~(7)を満足することを特徴とする亜鉛系めっき鋼板用表面処理液を塗布する第1工程と、
    その後、塗布された前記亜鉛系めっき鋼板用表面処理液を大気中で乾燥する第2工程と、
    その後、塗布された前記亜鉛系めっき鋼板用表面処理液を加熱炉で加熱乾燥して、付着量が50~2,000mg/m の表面処理皮膜を形成する第3工程と、
    を有し、
    前記第3工程の加熱開始時における前記亜鉛系めっき鋼板の温度をX、前記第3工程における前記亜鉛系めっき鋼板の最高到達温度をYとしたとき、Yが60~150℃であり、前記第3工程における加熱時間をz秒としたとき、(Y-X)/zが1~100℃/sであることを特徴とする表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法
    (1)グリシジル基を有するシランカップリング剤(A)の固形分質量(A)、テトラアルコキシシラン(B)の固形分質量(B)、及び炭酸ジルコニウム化合物(C)中のZrO換算質量(C)の合計質量(X)の、アニオン性ポリウレタン樹脂(D)の固形分質量(D)に対する質量比(X/D)が0.05~0.35
    (2)グリシジル基を有するシランカップリング剤(A)の固形分質量(A)の、前記合計質量(X)に対する質量比(A/X)が0.20~0.40
    (3)テトラアルコキシシラン(B)の固形分質量(B)の、前記合計質量(X)に対する質量比(B/X)が0.010~0.30
    (4)炭酸ジルコニウム化合物(C)中のZrO換算質量(C)の、前記合計質量(X)に対する質量比(C/X)が0.45~0.70
    (5)バナジウム化合物(E)中のV換算質量(E)の、前記合計質量(X)とアニオン性ポリウレタン樹脂(D)の固形分質量(D)との合計質量(X+D)に対する質量比(E/(X+D))が0.0010~0.015
    (6)モリブデン酸化合物(F)中のMo換算質量(F)の、前記合計質量(X)とアニオン性ポリウレタン樹脂(D)の固形分質量(D)との合計質量(X+D)に対する質量比(F/(X+D))が0.0010~0.015
    (7)架橋剤(G)の固形分質量(G)の、前記合計質量(X)とアニオン性ポリウレタン樹脂(D)の固形分質量(D)との合計質量(X+D)に対する質量比(G/(X+D))が0.010~0.085
  2. 前記亜鉛系めっき鋼板用表面処理液は、さらに珪酸ナトリウム(H)を含有し、その含有量が以下の(8)を満足する、請求項1に記載の表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法
    (8)珪酸ナトリウム(H)の固形分質量(H)の、前記合計質量(X)と珪酸ナトリウム(H)の固形分質量(H)との合計質量(X+H)に対する質量比(H/(X+H))が0.050未満(0.000を含む)
  3. 前記亜鉛系めっき鋼板用表面処理液は、さらにワックス(I)を含有し、その含有量が以下の(9)を満足する、請求項1又は2に記載の表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法
    (9)ワックス(I)の固形分質量(I)の、前記合計質量(X)とアニオン性ポリウレタン樹脂(D)の固形分質量(D)との合計質量(X+D)に対する質量比(I/(X+D))が0.002~0.10
  4. 請求項1~3のいずれか一項に記載の表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法で製造された表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板であって、
    前記表面処理皮膜のFT-IRによる反射スペクトルにおいて、1733cm-1の吸光度(I1733)の1712cm-1の吸光度(I1712)に対する比(I1733/I1712)が0.88以上1.10以下であり、
    前記表面処理皮膜はZr含有相とZr非含有相から構成され、前記Zr含有相の体積分率が5~40%である
    ことを特徴とする表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板。
  5. 前記亜鉛系めっき鋼板が、基板である鋼板の少なくとも一方の表面に、質量%で、Al:3.0~6.0%、Mg:0.2~1.0%、Ni:0.01~0.10%を含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する溶融Zn-Al系合金めっき層を有する溶融Zn-Al系合金めっき鋼板である、請求項に記載の表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板。
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