JP2022039097A - 表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板及びその製造方法 - Google Patents

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和久 岡井
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Abstract

【課題】表面処理皮膜にクロム化合物を含まず、耐熱変色性、耐熱割れ性、平板部耐食性、耐黒変性、スタック耐黒変性、耐水しみ性、耐溶剤性、塗装密着性、厳しい条件下での耐汗性、及び曲げ加工部耐食性のいずれにも優れる表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板を製造可能で、表面処理液の貯蔵安定性にも優れる、表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法を提供する。【解決手段】所定のカチオンを含むイオン結合性塩と所定のキレート剤と水とを含有する第1表面処理液を用いて、亜鉛系めっき鋼板の表面に第1皮膜を形成する。次いで、グリシジル基を有するシランカップリング剤、テトラアルコキシシラン、炭酸ジルコニウム化合物、所定のアニオン性ポリウレタン樹脂、バナジウム化合物、モリブデン酸化合物、及び水を所定量含有する第2表面処理液を用いて、第1皮膜の表面に第2皮膜を形成する。【選択図】なし

Description

本発明は、表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板及びその製造方法に関する。
亜鉛系めっき鋼板は、自動車、家電、建材などの分野で広く利用されている。従来、耐食性を向上させる目的で、亜鉛系めっき鋼板の表面に、クロム酸、重クロム酸またはその塩類を主要成分とした処理液によるクロメート処理を施した表面処理鋼板が広く用いられてきた。しかしながら、最近の地球環境問題から、クロメートフリーの表面処理を施した亜鉛系めっき鋼板(以下、「クロメートフリー処理鋼板」と呼称する。)を採用することへの要請が高まっており、種々の特性を改善したクロメートフリー処理鋼板が提案されている。
特許文献1には、グリシジル基を有するシランカップリング剤、テトラアルコキシシラン、炭酸ジルコニウム化合物、ガラス転移点(Tg)が80~130℃であるアニオン性ポリウレタン樹脂、バナジウム化合物、モリブデン酸化合物、及び水が添加され、pHが8.0~10.0で、かつ、各成分の添加量が所定の関係を満足する表面処理液を用いて、亜鉛系めっき鋼板に表面処理皮膜を形成する、表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法が記載されている。この方法によれば、表面処理皮膜にクロム化合物を含まず、耐熱変色性、耐熱割れ性、平板部耐食性、アルカリ脱脂後耐食性、耐黒変性、スタック耐黒変性(鋼板同士が重ねられた状態で高温多湿環境下で評価する耐黒変性)、耐水しみ性、耐溶剤性、耐汗性、塗装密着性のいずれにも優れる表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板を製造可能であり、かつ、表面処理液の貯蔵安定性にも優れる。
国際公開2018/070350号
しかしながら、特許文献1に記載のクロメートフリー表面処理鋼板では、汗変色促進試験時間が4時間という比較的緩やかな条件での耐汗性を担保するに留まっている。実際には、クロメートフリー表面処理鋼板は、その表面に汗が付着した後、高温多湿環境下で長時間にわたって保管される。このことを考慮すると、より厳しい条件下での耐汗性が求められる。
また、本発明者らが特許文献1に記載のクロメートフリー表面処理鋼板について検討したところ、この表面処理鋼板を曲げ加工した場合に、表面処理皮膜にクラックが生じ、下地の亜鉛系めっき層が露出することから、曲げ加工部の耐食性に改善の余地があることが明らかとなってきた。
そこで本発明は、上記課題に鑑み、表面処理皮膜にクロム化合物を含まず、耐熱変色性、耐熱割れ性、平板部耐食性、耐黒変性、スタック耐黒変性、耐水しみ性、耐溶剤性、塗装密着性、厳しい条件下での耐汗性、及び曲げ加工部耐食性のいずれにも優れる表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板を製造可能で、表面処理液の貯蔵安定性にも優れる、表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、以下のことを見出した。
Ce3+、Ce4+、La3+、Bi3+、Y3+、Co2+、及びAl3+からなる群から選択される少なくとも一種のカチオンを含むイオン結合性塩と、分子内に極性官能基及び配位性元素の一方又は両方を合計2つ以上有するキレート剤と、水と、を含有する第1表面処理液を用いて、亜鉛系めっき鋼板の表面に第1皮膜を形成し、その後、特許文献1に記載の表面処理液を用いて、第1皮膜の表面に第2皮膜を形成する。すると、厳しい条件下での汗変色促進試験においても変色が抑制され、優れた耐汗性を示す。これは、汗変色促進試験中に生じる、亜鉛系めっき層上のカソードサイトにおいて、第1皮膜に含まれるカチオン成分とカソード反応で生じるOH-とが反応し、金属水酸化物からなる保護皮膜が形成されるためである。さらに、アノードサイトでは、第1皮膜に含まれるキレート剤が、初期のアノード反応で溶出した多価の金属イオンを捕捉し、錯体状の沈殿皮膜を形成することで、その後の腐食反応を抑制する。上記のイオン結合性塩とキレート剤の効果により、汗変色の原因であるCl、O2、H2Oなどが第1皮膜を透過するのが抑制され、優れた耐汗性を示す。
また、上記の第1皮膜を形成すると、曲げ加工部耐食性が向上する。これは、加工部で第1皮膜及び第2皮膜に傷が入り、亜鉛系めっき層が露出し、腐食反応が加速される場合でも、上記のように形成された金属水酸化物からなる保護皮膜及び錯体状の沈殿皮膜が、傷部を補修する効果を有するからであると考えられる。
本発明は、このような知見に基づきなされたものであり、その要旨構成は以下のとおりである。
[1]Ce3+、Ce4+、La3+、Bi3+、Y3+、Co2+、及びAl3+からなる群から選択される少なくとも一種のカチオンを含むイオン結合性塩と、分子内に極性官能基及び配位性元素の一方又は両方を合計2つ以上有するキレート剤と、水と、を含有する第1表面処理液を、亜鉛系めっき鋼板の表面に塗布し、加熱乾燥して、前記亜鉛系めっき鋼板の表面に第1皮膜を形成する工程と、
グリシジル基を有するシランカップリング剤(A)、テトラアルコキシシラン(B)、炭酸ジルコニウム化合物(C)、ガラス転移点(Tg)が80~130℃であるアニオン性ポリウレタン樹脂(D)、バナジウム化合物(E)、モリブデン酸化合物(F)、及び水を含有し、pHが8.0~10.0で、かつ、各成分の含有量が以下の(1)~(6)を満足する第2表面処理液を、前記第1皮膜の表面に塗布し、加熱乾燥して、前記第1皮膜の表面に第2皮膜を形成する工程と、
を有することを特徴とする表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
(1)グリシジル基を有するシランカップリング剤(A)の固形分質量(AS)、テトラアルコキシシラン(B)の固形分質量(BS)、及び炭酸ジルコニウム化合物(C)中のZrO2換算質量(CZ)の合計質量(XS)の、アニオン性ポリウレタン樹脂(D)の固形分質量(DS)に対する質量比(XS/DS)が0.05~0.35
(2)グリシジル基を有するシランカップリング剤(A)の固形分質量(AS)の、前記合計質量(XS)に対する質量比(AS/XS)が0.20~0.40
(3)テトラアルコキシシラン(B)の固形分質量(BS)の、前記合計質量(XS)に対する質量比(BS/XS)が0.010~0.30
(4)炭酸ジルコニウム化合物(C)中のZrO2換算質量(CZ)の、前記合計質量(XS)に対する質量比(CZ/XS)が0.45~0.70
(5)バナジウム化合物(E)中のV換算質量(EV)の、前記合計質量(XS)とアニオン性ポリウレタン樹脂(D)の固形分質量(DS)との合計質量(XS+DS)に対する質量比(EV/(XS+DS))が0.0010~0.015
(6)モリブデン酸化合物(F)中のMo換算質量(FM)の、前記合計質量(XS)とアニオン性ポリウレタン樹脂(D)の固形分質量(DS)との合計質量(XS+DS)に対する質量比(FM/(XS+DS))が0.0010~0.015
[2]前記キレート剤が、チオカルボン酸化合物、チオアミド化合物、キノリン化合物、アゾール化合物、アセチルアセトン化合物、及び芳香族カルボン酸化合物からなる群から選択される少なくとも一種を含む、上記[1]に記載の表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
[3]前記イオン結合性塩が、F-、Cl-、Br-、I-、SO4 2-、及びNO3 -からなる群から選択される少なくとも一種のアニオンを含む、上記[1]又は[2]に記載の表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
[4]前記第2表面処理液が、さらに珪酸ナトリウム(G)を含有し、その含有量が以下の(7)を満足する、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
(7)珪酸ナトリウム(G)の固形分質量(GS)の、前記合計質量(XS)と珪酸ナトリウム(G)の固形分質量(GS)との合計質量(XS+GS)に対する質量比(GS/(XS+GS))が0.05未満(0.00を含む)
[5]前記第2表面処理液が、さらにワックス(H)を含有し、その含有量が以下の(8)を満足する、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
(8)ワックス(H)の固形分質量(HS)の、前記合計質量(XS)とアニオン性ポリウレタン樹脂(D)の固形分質量(DS)との合計質量(XS+DS)に対する質量比(HS/(XS+DS))が0.002~0.10
[6]前記第1皮膜は、片面当たり50~1,000mg/m2の付着量を有する、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
[7]前記第2皮膜は、片面当たり50~2,000mg/m2の付着量を有する、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
[8]上記[1]~[7]のいずれか一項に記載の表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法により製造された表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板。
本発明の表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法は、表面処理皮膜にクロム化合物を含まず、耐熱変色性、耐熱割れ性、平板部耐食性、耐黒変性、スタック耐黒変性、耐水しみ性、耐溶剤性、塗装密着性、厳しい条件下での耐汗性、及び曲げ加工部耐食性のいずれにも優れる表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板を製造可能であり、表面処理液の貯蔵安定性にも優れている。
(表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法)
本発明の表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法は、以下に説明する第1表面処理液を亜鉛系めっき鋼板の表面に塗布し、加熱乾燥して、前記亜鉛系めっき鋼板の表面に第1皮膜を形成する工程と、以下に説明する第2表面処理液を前記第1皮膜の表面に塗布し、加熱乾燥して、前記第1皮膜の表面に第2皮膜を形成する工程と、を有する。
[亜鉛系めっき鋼板]
本発明で使用する亜鉛系めっき鋼板は、電気亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、亜鉛-アルミニウム合金めっき鋼板、亜鉛-鉄合金めっき鋼板、亜鉛-マグネシウムめっき鋼板、亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金めっき鋼板等を用いることができる。
さらに好ましくは、基板である鋼板の少なくとも一方の表面に、質量%で、Al:3.0~11.0%、Mg:0.2~5.0%、Ni:0.01~0.10%を含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなる溶融Zn-Al系合金めっき層を有する溶融Zn-Al系合金めっき鋼板を用いることができる。この鋼板を使用した場合、その他のめっき鋼板を用いた場合に対し耐赤錆性が優れるという利点がある。このため、屋外等、より厳しい腐食環境で使用する際に有利となる。この溶融Zn-Al系合金めっき鋼板は、溶融Zn-Al系合金めっき層にZn-Al-Mg系三元共晶を含有することが、より好ましい。このZn-Al-Mg系三元共晶は、めっき層表面における面積率で1~50%含有することが好ましい。
[第1表面処理液]
本発明で用いる第1表面処理液は、イオン結合性塩とキレート剤と水とを含有する。
第1表面処理液に含まれるイオン結合性塩は、Ce3+、Ce4+、La3+、Bi3+、Y3+、Co2+、及びAl3+からなる群から選択される少なくとも一種のカチオンを含む。これらのカチオンの水酸化物M(OH)Xの溶解度積は小さい。このため、これらのカチオンはOH-を捕捉して、錯体状の沈殿皮膜を形成しやすい。中でも、イオン結合性塩がCe3+、Ce4+、La3+、Bi3+、及びY3+からなる群から選択される少なくとも一種のカチオンを含む場合、金属水酸化物からなる保護皮膜の緻密性が高く、Cl、O2、H2Oなどの腐食因子の透過をより十分に抑制することができるため、好ましい。
第1表面処理液に含まれるイオン結合性塩は、F-、Cl-、Br-、I-、SO4 2-、及びNO3 -からなる群から選択される少なくとも一種のアニオンを含むことが好ましい。これらのアニオンは、水溶液への溶解性が高いため、均一な付着量の第1皮膜を得ることができる。その結果、平板部耐食性及び曲げ加工部耐食性が向上する。
第1表面処理液に含まれるイオン結合性塩におけるカチオンとアニオンの組み合わせは任意であるが、上記のカチオンと上記のアニオンとの組み合わせを採用することが好ましい。
第1表面処理液に含まれるキレート剤は、分子内にカルボキシル基、カルボニル基、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基などの極性官能基及びN、O、Sなどの配位性元素の一方又は両方を合計2つ以上有し、イオン結合性塩中の金属カチオンと反応して6員環又は5員環キレート錯体を形成することができる化合物であることが好ましい。このようにして形成された錯体状の沈殿皮膜は高いバリア性及び腐食抑制効果を有するため、耐汗性及び曲げ加工部耐食性の向上に寄与する。キレート剤は、チオカルボン酸化合物、チオアミド化合物、キノリン化合物、アゾール化合物、アセチルアセトン化合物、及び芳香族カルボン酸化合物からなる群から選択されることが好ましい。チオカルボン酸化合物としては、例えば、オクチルチオプロピオン酸ナトリウム、チオグリコール酸、n-ブチルチオグリコール酸、3-メルカプトプロピオン酸、3-(n-ブチルメルカプト)プロピオン酸、ジチオプロピオン酸などが挙げられる。チオアミド化合物としては、ジチオオキサミド、ジフェニルチオカルバゾンなどが挙げられる。キノリン化合物としては、8-キノリノール、8-キノリンカルボン酸、8-アミノキノリン、8-メルカプトキノリンなどが挙げられる。アゾール化合物としては、ベンゾトリアゾール、ピラゾール、テトラゾール、イソチアゾールなどが挙げられる。アセチルアセトン化合物としては、アセチルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、メチルアセチルアセトン、ジベンゾイルメタンなどが挙げられる。芳香族カルボン酸化合物としては、サリチル酸、アントラニル酸、2-メルカプト安息香酸などが挙げられる。なお、HSAB則によると、硬い金属イオンは硬い陰イオンと安定な錯体を形成し、柔らかい金属イオンは柔らかい陰イオンと安定な錯体を形成する。本発明において、めっき元素であるZnイオンは中間程度の硬さであるため、8-キノリノール、3-メルカプトプロピオン酸ナトリウム、及びベンゾトリアゾールの少なくとも一種を用いれば、より安定した錯体を形成することができ、好ましい。
第1表面処理液に含まれるイオン結合性塩及びキレート剤は、水を100としたときの含有量が、それぞれ0.5~10質量%であることが好ましい。
さらに、第1表面処理液には、必要に応じてアルコール、ケトン、セロソルブ、アミン系の水溶性溶剤、消泡剤、防菌防カビ剤、着色剤、均一塗工のための濡れ性向上剤、樹脂、界面活性剤等の添加剤を添加してもよい。ただし、これら添加剤は本発明で得られる品質を損なわない程度に添加することが重要であり、添加量は多くても第1表面処理液の全固形分に対して5質量%未満とすることが好ましい。
[第2表面処理液]
本発明で用いる第2表面処理液は、グリシジル基を有するシランカップリング剤(A)、テトラアルコキシシラン(B)、炭酸ジルコニウム化合物(C)、ガラス転移点(Tg)が80~130℃であるアニオン性ポリウレタン樹脂(D)、バナジウム化合物(E)、モリブデン酸化合物(F)、及び水を含有し、さらに必要に応じて、珪酸ナトリウム(G)及びワックス(H)の一方又は両方を含有してもよい。
<グリシジル基を有するシランカップリング剤(A)>
第2表面処理液は、グリシジル基を有するシランカップリング剤(A)を含有する。該シランカップリング剤(A)は、グリシジル基、および加水分解性基として炭素数が1~5、好ましくは1~3である低級アルコキシ基がSi元素に直接結合したものであれば、特に限定されず、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランなどが挙げられ、なかでも、グリシジル基を有するシランカップリング剤(A)同士の縮合点や、後述するテトラアルコキシシラン(B)、炭酸ジルコニウム化合物(C)との縮合点をより多く生成しやすく、それによって成膜後に高いバリア性が得られるという観点から、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。
グリシジル基を有するシランカップリング剤(A)は、その化合物中のSi元素にアルコキシ基が直接結合しており、そのアルコキシ基は、水溶液中で水と反応することによりシラノール基を形成する。このシラノール基は、第1皮膜と反応したり、後述する成分(B),(C)との間で複合的に縮合反応したりする。
グリシジル基を有するシランカップリング剤(A)の固形分質量(AS)の、前記合計質量(XS)に対する質量比(AS/XS)は0.20~0.40とする必要があり、好ましくは0.24~0.37、より好ましくは0.27~0.34である。質量比が0.20未満の場合は、平板部耐食性、耐汗性及び曲げ加工部耐食性に劣る。質量比が0.40超えの場合は、耐熱割れ性に劣る。
<テトラアルコキシシラン(B)>
成分(A)を単独で使用すると耐熱割れ性に劣るため、第2表面処理液は、テトラアルコキシシラン(B)を含有する。成分(B)がない場合、500℃以上の加熱雰囲気では、成分(A)の有機官能基が熱酸化分解するため、大きなクラック発生の要因となる。それに対し、成分(B)を適量添加すると、成分(A)の添加量を耐熱割れ性が許容される程度に抑えつつ、緻密でバリア性の高い皮膜が得られる。成分(A)と成分(B)から得られる皮膜は緻密であるため、加熱時のクラックも微細化することができ、目視で確認されるようなクラックは生じず、優れた耐熱割れ性が得られる。
テトラアルコキシシラン(B)は、Si元素に直接結合する加水分解性基として4個の低級アルコキシ基を有するものであり、一般式Si(OR)4(式中、Rは同一の又は異なる炭素数1~5のアルキル基を示す)で示されるものであれば、特に限定されず、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシランなどが挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。なかでも、テトラアルコキシシラン(B)同士や、成分(A)、後述する成分(C)との縮合点をより多く生成しやすく、それによって成膜後に高いバリア性が得られるという観点から、テトラエトキシシランおよびテトラメトキシシランが好ましい。
テトラアルコキシシラン(B)は、その化合物中のSi元素にアルコキシ基が直接結合しており、そのアルコキシ基は、水溶液中で水と反応することによりシラノール基を形成する。このシラノール基は、第1皮膜と反応したり、成分(A)や、後述する成分(C)との間で複合的に縮合反応したりする。
テトラアルコキシシラン(B)の固形分質量(BS)の、前記合計質量(XS)に対する質量比(BS/XS)は0.010~0.30とする必要があり、好ましくは0.03~0.23、より好ましくは0.06~0.15である。質量比が0.010未満の場合は、耐熱割れ性が低下する。質量比が0.30超えの場合は、平板部耐食性、耐汗性及び曲げ加工部耐食性が低下する。
成分(A)及び成分(B)は、各々単体で使用してもよいが、成分(A)と成分(B)を縮合反応させて低縮合物としてから、第2表面処理液に添加するのが好ましく、成膜後により高いバリア性が得られる。この低縮合物は、(A)および(B)のシラノール基同士の縮合反応により形成されるポリシロキサン結合を主骨格とするものであり、Si元素に結合する末端の基の全てがアルコキシ基であるものでもよく、Si元素に直接結合する基の一部がアルコキシ基であるものでもよい。
成分(A)と成分(B)の縮合反応により得られる低縮合物は、縮合度が2~30が好適であり、2~10がより好適である。縮合度が30以下であれば、水溶液中において白色沈殿を生じることなく、成分(A)及び成分(B)を安定に使用することができる。この低縮合物は、成分(A)と、成分(B)と、後述するキレート剤とを、反応温度1~70℃で10分間~20時間程度反応させ、オートクレーブ処理を行うことにより得ることができる。キレート剤は、例えば、リンゴ酸、酢酸、酒石酸等のヒドロキシカルボン酸;モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、クエン酸、アジピン酸等のジカルボン酸またはトリカルボン酸等のポリカルボン酸;およびグリシン等のアミノカルボン酸等などが挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。
この低縮合物の縮合状態は、JIS-K7252-4に記載されているゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)、NMR、およびFT-IRを用いて測定することができる。
この低縮合物の安定化に作用するキレート剤は、成分(A)のアルコキシ基と、成分(B)のアルコキシ基が、水とキレート剤によって加水分解反応する際に作用する。キレート剤による安定化作用は、その理由は定かでないが、加水分解反応によって生じる(A)及び(B)に由来のシラノール基にキレート剤が適度に配位することによって得られるものと考えられる。すなわち、シラノール基へのキレート剤の適度な配位作用が、(A)及び(B)の過度の縮合を抑制するため、貯蔵安定性に優れる表面処理液を得ることができる。さらには、長期に亘る表面処理液の保管後も安定した皮膜の品質が得られる。
キレート剤は、貯蔵安定性に加え、耐食性を確保する上でも有効である。その理由は定かでないが、キレート剤は、後述するバナジウム化合物(E)とも配位すると考えられ、第2皮膜が腐食環境に晒されると、バナジウム化合物(E)に配位したキレート剤はバナジウム化合物(E)とともに溶出し、それによって第2皮膜内で配位子を失った(A)及び(B)の縮合が進むことによって、より第2皮膜のバリア性が高まり、耐食性に寄与するものと考えられる。
<炭酸ジルコニウム化合物(C)>
第2表面処理液は、炭酸ジルコニウム化合物(C)を含有する。成分(A)、(B)と、炭酸ジルコニウム化合物(C)を併用することにより、バリア性が高く緻密な、耐熱割れ性、平板部耐食性、耐水しみ性、耐黒変性、スタック耐黒変性、耐汗性、曲げ加工部耐食性に優れた皮膜が得られる。バリア性が高くなるのは、炭酸ジルコニウム化合物(C)は、シラノール基との縮合点となる水酸基を有するためである。さらに、炭酸ジルコニウム化合物(C)は、乾燥させると酸化ジルコニウムと水酸化ジルコニウムを生成するため、平板部耐食性、耐水しみ性、耐黒変性、スタック耐黒変性、耐汗性、曲げ加工部耐食性の高い皮膜が得られる。また、耐熱割れ性が高くなるのは、500℃以上の加熱雰囲気に晒されても、酸化ジルコニウムの体積収縮率が低いこと、さらに、めっき層の熱膨張より酸化ジルコニウム皮膜に目視では確認されないマイクロクラックを生じ、このマイクロクラックが応力を分散させることにより目視で確認されるようなクラックは生じず、優れた耐熱割れ性を得るものと考えられる。炭酸ジルコニウム化合物(C)としては、例えば、炭酸ジルコニウム化合物のナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウムなどの塩が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。なかでも、炭酸ジルコニウムアンモニウムが造膜性、耐水しみ性などの点から好ましい。
炭酸ジルコニウム化合物(C)中のZrO2換算質量(CZ)の、前記合計質量(XS)に対する質量比(CZ/XS)は0.45~0.70とする必要があり、好ましくは0.48~0.67、より好ましくは0.50~0.63である。質量比が0.45未満の場合には、炭酸ジルコニウム化合物(D)由来のバリア性が不足し、平板部耐食性、スタック耐黒変性、耐汗性、及び曲げ加工部耐食性が低下する。なお、耐黒変性は維持される。一方、質量比が0.70超えの場合には、炭酸ジルコニウム化合物由来の硬質な成分が多く、良好な塗装密着性が得られない。
以上で記述した成分(A)~(C)を含む皮膜は、通常時は硬質でバリア性、平板部耐食性及び曲げ加工部耐食性に優れ、500℃を超える加熱時においても、テトラアルコキシシラン(B)及び炭酸ジルコニウム化合物(C)の緻密な第2皮膜によって、目視で確認されるようなクラックは生じず、耐熱割れ性に優れる。
<アニオン性ポリウレタン樹脂(D)>
第2表面処理液は、無機成分由来のクラックを抑制するために、ガラス転移点(Tg)が80~130℃であるアニオン性ポリウレタン樹脂(D)を主成分として含有する。これにより、耐熱変色性、耐熱割れ性、平板部耐食性、耐黒変性、スタック耐黒変性、耐水しみ性、耐溶剤性、塗装密着性、耐汗性に優れた第2皮膜を得ることができる。ポリウレタン樹脂は高分子量であり、かつ、ウレタン結合が高い分子間凝集力を有するため、緻密でバリア性が高く、それ自体でも基材との密着性を有すが、成分(A)~(C)と併用することで、さらにバリア性を高めることができる。そのため、上記のような優れた性能を有する第2皮膜を得ることができる。
ウレタン樹脂の性質を左右する基本骨格であるポリオールの種類としては、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオールが挙げられる。ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオールは極性基を有するため、分子間の相互作用によって強靭な皮膜が得られる。ポリカーボネート系ポリオールは高価ではあるが、機械的強度に優れる。ポリエーテル系ポリオールは極性基を有していないため、機械的強度には多少劣るが、耐加水分解性など化学的には安定である。本発明で使用する成分(D)のポリオールについては特に制限はないが、本発明の目的とする耐水しみ性、曲げ加工部耐食性などの観点より、ポリエーテル系ポリオールを使用することが好ましい。
成分(D)の重量平均分子量は、JIS-K7252-4に記載されているゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した場合、10,000~500,000程度であることが好ましく、50,000~300,000程度であることがより好ましい。重量平均分子量を大きくするとウレタン樹脂のTgや機械物性を高めることができるため、皮膜のバリア性が向上し、平板部耐食性、耐水しみ性、耐溶剤性、耐汗性、曲げ加工部耐食性などをより高めることができる。
アニオン性ポリウレタン樹脂(D)は、ポリエーテルポリオール(特にジオール)とポリイソシアネート(特にジイソシアネート)を原料として、一般的な合成方法により得られるものである。必要に応じて、さらに、ポリアミン(特にジアミン)、ヒドロキシル基を2個以上(特に好ましくは2個)有するカルボン酸、及び、前記カルボン酸の反応性誘導体を、原料として追加してもよい。限定的に解釈されるものではないが、より具体的な合成は、例えば、ポリエーテルジオールとジイソシアネートから両端にイソシアナト基を有するウレタンプレポリマーを製造し、これにヒドロキシル基を2個有するカルボン酸又はその反応性誘導体を溶媒中で反応させて両端にイソシアナト基を有する誘導体とし、ついでカウンターカチオンとしてトリエタノールアミンなどを加えてから、水に加えてエマルジョンとすることにより、アニオン性ポリウレタン樹脂を得ることができる。この後、必要に応じて、さらにジアミンを加えて鎖延長を行ってもよい。
成分(D)を製造する際に用いるポリイソシアネートとしては、脂肪族、脂環式及び芳香族ポリイソシアネートがあり、いずれも使用可能である。具体的には、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。これらの中で、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族または脂環式ポリイソシアネートを用いる場合は、耐溶剤性、平板部耐食性等だけではなく、耐熱変色性に優れた第2皮膜が得られるので好ましい。
成分(D)を製造する際に用いるポリエーテルポリオール類としては、例えば、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール等の前記低分子ポリオールの他、ビスフェノールA、エチレンジアミン等のアミン化合物等へのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
成分(D)を製造する際に用いる、ヒドロキシル基を2個以上、好ましくは2個有するカルボン酸もしくはその反応性誘導体は、成分(D)に酸性基を導入するため、および成分(D)を水分散性にするために用いる。上記カルボン酸としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールペンタン酸、ジメチロールヘキサン酸などのジメチロールアルカン酸などが挙げられる。また、反応性誘導体としては、酸無水物などが挙げられる。このように成分(D)を自己水分散性にし、乳化剤を使用しないか極力使用しないようにすることにより、耐水しみ性に優れた第2皮膜が得られる。
成分(D)を製造する際にポリアミンや水等が用いられる。このポリアミンや水等は、調整したプレポリマーの鎖を伸長するために使用される。用いるポリアミンとしては、例えばヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、テトラメチレンジアミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン、ピペラジン、1,1’-ビシクロヘキサン-4,4’-ジアミン、ジフェニルメタンジアミン、エチルトリレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどが挙げられ、これらを単独で又は数種を組み合わせて使用することができる。
成分(D)の合成時の樹脂の安定性、さらには造膜時の周囲環境が低温乾燥下にある場合の造膜性を高めるために、合成に際して造膜助剤を配合することが好ましい。造膜助剤としては、ブチルセロソルブ、N-メチル-2-ピロリドン、ブチルカルビトール、テキサノールなどが挙げられ、N-メチル-2-ピロリドンが好ましい。
成分(D)のガラス転移点(Tg)は80~130℃とする必要があり、好ましくは85~125℃であり、より好ましくは90~120℃である。ガラス転移点は使用するポリオールの分子量などにより調整される。ガラス転移点(Tg)が80℃未満の場合、耐溶剤性に劣る。皮膜になった際の成分(D)間や、成分(A)~(C)との凝集性が不足し、第2皮膜のバリア性が低下するからである。一方、ガラス転移点(Tg)が130℃超えの場合は、第2皮膜が過度に硬くなり、優れた塗装密着性が得られない。なお、成分(D)のガラス転移点(Tg)は、動的粘弾性測定装置(RSAG2,TA Instrment)を用い、測定試料として、室温24時間乾燥後、80℃6時間乾燥、さらに120℃20分乾燥し作製したフィルムを用い、動的粘弾性を測定し、tanδの極大値から求めることができる。
成分(A)~(C)の合計質量(XS)の、アニオン性ポリウレタン樹脂(D)の固形分質量(DS)に対する質量比(XS/DS)は0.05~0.35とする必要があり、好ましくは0.10~0.32、より好ましくは0.19~0.28である。質量比が0.05未満の場合には、アニオン性ポリウレタン樹脂の量が多く、バリア性が不足するため、平板部耐食性、耐溶剤性、耐汗性、及び曲げ加工部耐食性が低下する。一方、質量比が0.35超えの場合は、アニオン性ポリウレタン樹脂の量が少なく、耐熱変色性、耐熱割れ性、耐黒変性、スタック耐黒変性、耐水しみ性、塗装密着性、耐汗性、及び曲げ加工部耐食性が劣る。
<バナジウム化合物(E)>
第2表面処理液は、バナジウム化合物(E)を含有する。バナジウム化合物(E)は、第2皮膜中では均一に分散して存在するが、腐食環境下においては適度に溶出し、同じく腐食環境下で溶出する亜鉛イオンと結合し緻密な不働態膜を形成することによって、平板部耐食性及び曲げ加工部耐食性を高める。バナジウム化合物(E)としては、例えば、メタバナジン酸アンモニウム、メタバナジン酸ナトリウム、バナジウムアセチルアセトネートが挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。
バナジウム化合物(E)中のV換算質量(EV)の、成分(A)~(C)の合計質量(XS)と成分(D)の固形分質量(DS)との合計質量(XS+DS)に対する質量比(EV/(XS+DS))は0.0010~0.015とする必要があり、好ましくは0.0017~0.011であり、より好ましくは0.0023~0.007である。質量比が0.0010未満の場合には、亜鉛イオンとの不働態膜形成効果が不足するため、平板部耐食性及び曲げ加工部耐食性が低下する。一方、質量比が0.015超えの場合には、良好な耐黒変性、スタック耐黒変性、耐水しみ性、塗装密着性、耐汗性が得られない。さらに、500℃を超える加熱時にバナジウムの酸化変色が現れるため、耐熱変色性、耐熱割れ性も低下する。
<モリブデン酸化合物(F)>
第2表面処理液は、優れた耐黒変性及びスタック耐黒変性を得るために、モリブデン酸化合物(F)を含有する。モリブデン酸化合物としては、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸マグネシウム、モリブデン酸亜鉛などが挙げられ、本発明では、これらのうちから選んだ1種以上を使用することが好ましい。
亜鉛系めっき層の黒変現象は、亜鉛系めっき層が高温高湿潤雰囲気に晒された際に、酸素欠乏型の酸化亜鉛が生成するためと考えられている。モリブデンは様々な価数を持つ第二遷移金属であり、空気中では酸素と結合してMoO2やMoO3で存在する。本発明では、MoO4 2-等のモリブデン酸塩を使用する。このモリブデン酸塩は、第2皮膜に均一に添加された後、高温高湿雰囲気下においてMoO3等のモリブデン酸化物に還元されると考えられる。この作用によって、亜鉛めっき層表面の亜鉛には適度に酸素が供給されるため、酸素欠乏型の酸化亜鉛の生成が抑制されると考えられる。一方で、モリブデン酸塩を過度に添加すると、平板部耐食性及び曲げ加工部耐食性の低下を引き起こす。
モリブデン酸化合物(F)中のMo換算質量(FM)の、成分(A)~(C)の合計質量(XS)と成分(D)の固形分質量(DS)との合計質量(XS+DS)に対する質量比(FM/(XS+DS))は0.0010~0.015とする必要があり、好ましくは0.0027~0.012であり、より好ましくは0.0043~0.009である。質量比が0.0010未満の場合には、優れた耐黒変性及びスタック耐黒変性が得られない。質量比が0.015超えの場合には、良好な平板部耐食性及び曲げ加工部耐食性が得られない。
<珪酸ナトリウム(G)>
第2表面処理液は、優れた耐熱割れ性を向上させるため、一部の炭酸ジルコニウム(C)に代えて珪酸ナトリウム(G)を含有してもよい。珪酸ナトリウム(G)の含有量を増やすことで、炭酸ジルコニウム(C)を減らすことができる。珪酸ナトリウム(G)に含まれるナトリウムは、熱によってSiO4連結網から分断されたSiO4四面体の酸素原子へ結合する。そのため、SiO4連結網の再結合が防止される。この作用によって、成分(G)は珪酸ガラスに流動性を与え、1,700℃以上にある珪酸ガラスの軟化温度を500℃~700℃に低下させる。本発明では、この作用を利用し、成分(A)~(C)を含む硬質で熱膨張率の小さい第2皮膜が500℃以上に加熱された際に、その第2皮膜に流動性を与えることによって、優れた耐熱割れ性を得るものと考える。
本発明で用いる珪酸ナトリウム(G)は、SiO2とNa2Oを含み、そのモル比は、SiO2/Na2Oが4~1のものであれば特に限定されない。例えば、2号珪酸ナトリウム、3号珪酸ナトリウムなどが挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。より好ましいモル比は、SiO2/Na2Oが4~2である。SiO2/Na2Oが4を超える場合、耐熱割れ性に対する効果が十分に得られない。SiO2/Na2Oが1を下回る場合は、耐熱割れ性に対する効果は飽和するが、珪酸ナトリウム(G)の第2皮膜中への固定化が困難となるため、耐黒変性は維持できるが、より厳しい環境下での評価であるスタック耐黒変性に劣る。
珪酸ナトリウム(G)の添加量は、スタック耐黒変性を低下させない観点から、珪酸ナトリウム(G)の固形分質量(GS)の、成分(A)~(C)の合計質量(XS)と珪酸ナトリウム(G)の固形分質量(GS)との合計質量(XS+GS)に対する質量比(GS/(XS+GS))が0.05未満(0.00、すなわち添加しない場合を含む)とするのが好ましい。より好ましくは0.047以下、さらに好ましくは0.042以下とする。質量比が0.05以上の場合には、スタック耐黒変性が劣る。一方、下限は、0.00とするのが好ましいが、耐熱割れ性をより向上させる効果を期待するという理由から0.001以上としても良く、さらに好ましくは0.005以上としても良い。
<ワックス(H)>
第2表面処理液は、潤滑性を向上させるためにワックス(H)を含有してもよい。ワックス(H)としては、液に相溶するものであれば特に制限はなく、例えば、ポリエチレン等のポリオレフィンワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、ラノリン系ワックス、シリコン系ワックス、フッ素系ワックスなどが挙げられ、これらの1種以上を好適に使用することができる。また、前記ポリオレフィンワックスとしては、例えばポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどが挙げられ、これら1種以上を使用することができる。
ワックス(H)の固形分質量(HS)の、成分(A)~(C)の合計質量(XS)と成分(D)の固形分質量(DS)との合計質量(XS+DS)に対する質量比(HS/(XS+DS))は0.002~0.10とすることが好ましく、0.01~0.08がより好ましい。質量比が0.002以上の場合、十分な潤滑性向上効果が得られる。一方、質量比が0.10以下の場合、潤滑性が高まりすぎてコイル製造時の巻き取り工程におけるコイル潰れを生じるという懸念がない。さらに、平板部耐食性、曲げ加工部耐食性や塗装密着性が低下する懸念もない。
<pHが8.0~10.0>
第2表面処理液は、上述した成分を脱イオン水、蒸留水等の水中で混合することにより得られる。第2表面処理液の固形分割合は適宜選択すればよいが10~20質量%が好ましい。また、第2表面処理液のpHは、8.0~10.0に調製する必要があり、好ましくは8.5~9.5である。pHが8.0未満または10.0超えの場合には、第2表面処理液の貯蔵安定性が低下する。さらに、pHが10.0超えの場合には、亜鉛系めっき層のエッチングが過多となり、平板部耐食性及び曲げ加工部耐食性が低下する。pHを調整する場合は、アンモニアまたはその塩、及び、前述した成分(A),(B)の反応の際に用いるキレート剤の何れか1種以上を適宜使用すればよい。
さらに、第2表面処理液には、必要に応じてアルコール、ケトン、セロソルブ、アミン系の水溶性溶剤、消泡剤、防菌防カビ剤、着色剤、均一塗工のための濡れ性向上剤、樹脂、界面活性剤等の添加剤を添加してもよい。ただし、これら添加剤は本発明で得られる品質を損なわない程度に添加することが重要であり、添加量は多くても第2表面処理液の全固形分に対して5質量%未満とすることが好ましい。
[表面処理液の塗布及び加熱・乾燥]
亜鉛系めっき鋼板に第1表面処理液を塗布する前に、必要に応じて、亜鉛系めっき鋼板表面の油分や汚れを除去することを目的とした前処理を亜鉛系めっき鋼板に施してもよい。亜鉛系めっき鋼板は、防錆目的で防錆油が塗られている場合が多く、また、防錆油で塗油されていない場合でも、作業中に付着した油分や汚れ等がある。上記の前処理を施すことにより、亜鉛系めっき層の表面が清浄化され、均一に濡れやすくなる。亜鉛系めっき鋼板表面に油分や汚れ等がなく、第1表面処理液が均一に濡れる場合は、前処理工程は特に必要はない。なお、前処理の方法は特に限定されず、例えば湯洗、有機溶剤洗浄、アルカリ脱脂洗浄等の方法が挙げられる。
第1表面処理液を亜鉛系めっき鋼板の表面に塗布する方法としては、処理される亜鉛系めっき鋼板の形状等によって適宜最適な方法を選択すればよく、ロールコート法、バーコート法、浸漬法、スプレー塗布法等が挙げられる。また、塗布後にエアーナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。第2表面処理液を第1皮膜の表面に塗布する方法についても、第1表面処理液の塗布と同様である。
第1及び第2表面処理液を塗布後、亜鉛系めっき鋼板の加熱乾燥を行う手段としては、ドライヤーの他、熱風炉、高周波誘導加熱炉、及び赤外線炉などの乾燥炉を用いることができる。
塗布された第1及び第2表面処理液の乾燥に関しては、大気中での予備乾燥工程と、その後の乾燥炉での加熱乾燥工程との2段階の乾燥とするのが好ましい。加熱乾燥工程については、特に限定されないが、最高到達板温(Peak Metal Temperature:PMT)は60~200℃が好ましく、80~180℃がより好ましい。PMTが200℃以下であれば、第1及び第2皮膜のクラックや第1及び第2皮膜成分の熱分解は生じ難く、本発明が求める諸性能は低下しない。一方、PMTが60℃以上であれば、第1及び第2皮膜の成分間の結合が十分に得られ、本発明が求める諸性能が低下しない。加熱時間は、使用される亜鉛系めっき鋼板の組成、製造ラインの工程および構成等によって適宜最適な条件が選択され、生産性等の観点からは、0.1~60秒が好ましく、1~30秒が特に好ましい。
第1皮膜の加熱乾燥後の付着量は、好ましくは片面あたり50~1,000mg/m2であり、より好ましくは100~1,000mg/m2であり、さらに好ましくは100~500mg/m2である。付着量が50mg/m2以上であれば、カチオン成分とOH-との反応によって生成する金属水酸化物からなる保護皮膜を均一に形成することができる。一方、付着量が1,000mg/m2以下であれば、コストアップを招くことがない。
第2皮膜の加熱乾燥後の付着量は、好ましくは片面あたり50~2,000mg/m2であり、より好ましくは500~1,500mg/m2である。付着量が50mg/m2未満ではバリア性が不足するため、平板部耐食性、曲げ加工部耐食性、耐黒変性、耐水しみ性、耐汗性が得られない。一方、付着量が2,000mg/m2を超えると、第2皮膜が厚いため、耐熱変色性、耐熱割れ性が劣る。
(表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板)
本発明の表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板は、上記の製造方法で製造された表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板である。すなわち、本発明の表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板は、亜鉛系めっき鋼板と、該亜鉛系めっき鋼板の表面に上記第1表面処理液を塗布し、乾燥して得た第1皮膜と、該第1皮膜の表面に上記第2表面処理液を塗布し、乾燥して得た第2皮膜と、を有し、第1及び第2皮膜にクロム化合物を含まず、耐熱変色性、耐熱割れ性、平板部耐食性、耐黒変性、スタック耐黒変性、耐水しみ性、耐溶剤性、塗装密着性、厳しい条件下での耐汗性、及び曲げ加工部耐食性のいずれにも優れる。
以下、実施例および比較例により本発明の効果を説明するが、本実施例はあくまで本発明を説明する一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
(1)供試板
以下に示す各種亜鉛系めっき鋼板を供試板として使用した。なお、亜鉛系めっき層は鋼板の両面に形成され、表1中の付着量は片面当たりの亜鉛系めっき層の付着量を意味する。また、以下の方法で求めたZn-Al-Mg系三元共晶の表面面積率も表1に示す。めっき層の表面の無作為な部位を観察倍率100倍でSEM観察する。次いで、同視野でEDSによりMgのマッピングを行う。その分析結果を画像解析して、白黒の2階調化する。この2階調化した画像よりZn-Al-Mg系三元共晶の面積割合を計算する。同様の評価を任意の8視野で実施し、最後に全視野の面積割合を算術平均し、得られた平均値をZn-Al-Mg系三元共晶の表面面積率とする。
Figure 2022039097000001
(2)前処理(洗浄)
上述の供試板の表面を、日本パーカライジング(株)製パルクリーンN364Sを用いて処理し、表面の油分や汚れを取り除いた。次に、水道水で水洗して供試板の表面が水で100%濡れることを確認した後、さらに純水(脱イオン水)を流しかけ、100℃雰囲気のオーブンで水分を乾燥した。
(3-1)第1表面処理液の調製
表2に示す種々のイオン結合性塩と、表3に示す種々のキレート剤とを組み合わせて、それぞれ1質量%で水に溶解し、種々の第1表面処理液を得た。なお、表3中に示すキレート剤の一つであるオクチルチオプロピオン酸ナトリウムは、市販の試薬がないため、3-メルカプトプロピオン酸オクチル(富士フィルム和光(株)製)及び塩化ナトリウム(富士フィルム和光(株)製)から合成して使用した。表5には、各水準におけるイオン結合性塩のカチオン種及びアニオン種と、キレート剤の種類を示した。
(3-2)第2表面処理液の調製
表4に示す(A)~(H)の各成分を、表4に示す質量比にて水中で混合し、固形分が15質量%の第2表面処理液を得た。以下に、表4で使用された化合物について説明する。
<グリシジル基を有するシランカップリング剤(A)>
A1:3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
A2:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
<テトラアルコキシシラン(B)>
B1:テトラメトキシシラン
B2:テトラエトキシシラン
<炭酸ジルコニウム化合物(C)>
C1:炭酸ジルコニウムカリウム(ZrO2:20.0質量%)
C2:炭酸ジルコニウムアンモニウム(ZrO2:20.0質量%)
<アニオン性ポリウレタン樹脂(D)>
アニオン性ポリウレタン樹脂D1
ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールから得られた数平均分子量1900のポリエーテルポリオール100質量部、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール5質量部、4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート100質量部、2,2-ジメチロールプロピオン酸20質量部、および、N-メチル-2-ピロリドン120質量部を反応器内に加えて、不揮発分に対する遊離のイソシアナト基含有量が5%であるウレタンプレポリマーを得た。次に、テトラメチレンジアミン16質量部及びトリエチルアミン10質量部を脱イオン水500質量部に加えてホモミキサーで攪拌しながら、上記ウレタンプレポリマーを加えて乳化分散した。最後に、脱イオン水を加えて固形分25質量%の水分散性ポリウレタン樹脂を得た。なお、得られたポリウレタン樹脂(D1)のガラス転移点(Tg)を、動的粘弾性測定装置を用いて測定したところ、90℃であった。
アニオン性ポリウレタン樹脂D2
反応器内にポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとから得られた数平均分子量5000のポリエーテルポリオール100質量部に替えて、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールから得られた数平均分子量1560のポリエーテルポリオール100質量部を使用した以外は、D1と同様にして固形分25質量%の水分散性ウレタン樹脂を得た。なお、得られたポリウレタン樹脂(D2)のガラス転移点(Tg)を、動的粘弾性測定装置を用いて測定したところ、105℃であった。
アニオン性ポリウレタン樹脂D3
反応器内にポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとから得られた数平均分子量5000のポリエーテルポリオール100質量部に替えて、1,6-ヘキサンジオールとアジピン酸から得られた数平均分子量1320のポリエステルポリオール100質量部を使用した以外は、D1と同様にして固形分25質量%の水分散性ウレタン樹脂を得た。なお、得られたポリウレタン樹脂(D3)のガラス転移点(Tg)を、動的粘弾性測定装置を用いて測定したところ、120℃であった。
<バナジウム化合物(E)>
E1:メタバナジン酸アンモニウム(V:43.5質量%)
E2:メタバナジルアセチルアセトネート(V:19.2質量%)
<モリブデン酸化合物(F)>
F1:モリブデン酸アンモニウム(Mo:54.4質量%)
F2:モリブデン酸ナトリウム(Mo:43.8質量%)
<珪酸ナトリウム(G)>
G1:3号珪酸ナトリウム(固形分:38.5質量%)
G2:2号珪酸ナトリウム(固形分:40.6質量%)
<ワックス(H)>
H1:ポリエチレンワックス(固形分:40.0質量%、三井化学株式会社製、ケミパール(登録商標)W900)
H2:マイクロクリスタリンワックス(固形分:46.0質量%、サンノプコ株式会社製 ノプコ(登録商標)1245-M-SN)
(4)処理方法
表5の「鋼板」欄に示した各種供試板に、表5に示す組成の第1表面処理液をバーコーターで塗布し、その後、水洗することなく、そのままオーブンに入れて、塗布された第1表面処理液を表5に示すPMTで加熱乾燥して、表5に示す付着量(片面あたり)を有する第1皮膜を片面に形成した。次いで、各水準の第1皮膜の表面に、表5に示す種類の第2表面処理液をバーコーターで塗布し、その後、水洗することなく、そのままオーブンに入れて、塗布された第2表面処理液を表5に示すPMTで加熱乾燥して、表5に示す付着量(片面あたり)を有する第2皮膜を形成した。なお、第1皮膜の付着量は、イオン結合性塩中に含まれるCe、La、Bi、Y、Co、又はAlを蛍光X線分析装置により定量し、それぞれの金属の付着量から皮膜付着量に換算して求めた。第1皮膜がキレート剤のみである皮膜(実施例No.11~13)は、Cを定量し、C量から皮膜付着量に換算して求めた。また、第2皮膜の付着量は、配合した炭酸ジルコニウム化合物(C)のZrを蛍光X線分析装置により定量し、Zr付着量から皮膜付着量へ換算して求めた。
(5)評価試験の方法
製造した各水準の表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板から採取したサンプルに対して、以下の(5-1)~(5-11)の評価を行った。また、各水準の第2表面処理液に対して、以下の(5-12)の評価を行った。これらの結果を表5に示す。評価基準△及び×は性能不足のため好ましくない。
(5-1)耐熱変色性
各サンプルを赤外線イメージ炉にて30秒で板温:500℃に加熱し、5分間保持した後、室温まで自然放冷した時の表面外観を目視観察した。その評価基準は以下のとおりである。
(評価基準)
◎ :変色なし
○ :極僅かに黄色味あり
○-:僅かに黄色味あり
○=:極僅かに褐色味あり
○≡:僅かに褐色味あり
△ :褐色に変色
× :茶褐色に変色
(5-2)耐熱割れ性
各サンプルを赤外線イメージ炉にて30秒で板温:500℃に加熱し、5分間保持した後、室温まで自然放冷した時の表面外観を目視観察した。目視でクラックを確認できない場合、光学顕微鏡を用いて1000倍で観察した。その評価基準は以下のとおりである。
(評価基準)
◎ :クラックなし
○ :僅かに目視で確認されないクラックあり
○-:目視で確認されるクラックはないが目視確認されないクラックあり
○=:極僅かにクラックあり
○≡:僅かにクラックあり
△ :全面に幅の細いクラックあり
× :全面に幅の細いクラックに加え、広いクラックあり
(5-3)平板部耐食性
各サンプルに対して、平板の状態で、JIS-Z-2371-2000に準拠する塩水噴霧試験(SST)を実施した。240時間後の白錆発生面積率で平板部耐食性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
(評価基準)
◎ :白錆面積率5%未満
○ :白錆面積率5%以上10%未満
○-:白錆面積率10%以上25%未満
△ :白錆面積率25%以上50%未満
× :白錆面積率50%以上100%以下
(5-4)耐黒変性
各サンプルを温度:80℃、相対湿度:98%の雰囲気に制御された恒温恒湿機に24時間静置した際の明度(L値)の変化(ΔL=試験後のL値-試験前のL値)で算出した。評価基準は以下のとおりである。L値は、日本電色工業(株)製のSR2000を使用し、SCIモード(正反射光込み)で測定した。
(評価基準)
◎ :-6<△L、かつ、ムラが無い均一な外観
○ :-10<△L≦-6、かつ、ムラが無い均一な外観
○-:-14<△L≦-10、かつ、ムラが無い均一な外観
△ :-14<△L≦-10、かつ、微細な黒点あり
× :△L≦-14、または、外観ムラあり
(5-5)スタック耐黒変性
同一皮膜のサンプル2枚で対象面を重ね合わせ、トルク強度20kgfで締め付けたものを、温度:50℃、相対湿度:98%の雰囲気に制御された恒温恒湿機に4週間静置した後、その表面外観を目視観察した。評価基準は以下のとおりである。
(評価基準)
◎ :変色がなく、かつ、ムラが無い均一な外観
○ :極僅かに黒色に変色、かつ、ムラが無い均一な外観
○-:僅かに黒色に変色、かつ、ムラが無い均一な外観
○=:極僅かに黒色に変色、かつ、微細な黒点あり
○≡:僅かに黒色に変色、かつ、微細な黒点あり
△ :黒色に変色、かつ、微細な黒点あり
× :黒色に変色、かつ、外観ムラあり
(5-6)耐水しみ性
各サンプルについて、平板の状態で、サンプル表面に脱イオン水を100μL滴下し、炉内温度100℃の熱風オーブンに10分間投入し、オーブンから取り出した後の水滴滴下跡を目視観察して、耐水しみ性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
(評価基準)
◎ :水滴境界が見る角度によらず確認されない。
○ :水滴境界が見る角度によって若干確認される。
○-:水滴境界が見る角度によらず若干確認される。
△ :水滴境界が見る角度によらずはっきり確認される。
× :水滴境界が滴下範囲を超えてはっきり確認される。
(5-7)耐溶剤性
各サンプルの表面にエタノールを染み込ませたガーゼを4.90N(500gf)の荷重をかけて押し付け、その荷重のまま10回往復するように擦った。その擦った痕を目視にて評価した。評価基準は以下のとおりである。
(評価基準)
◎ :痕跡なし
○ :上から見ると痕跡が見ないが、斜めから見ると明らかに見える。
○-:上から見て僅かに痕跡が見える。
△ :上から見て痕跡が明らかに見える。
× :皮膜が剥離している。
(5-8)塗装密着性
メラミンアルキッド系塗料であるデリコン(登録商標)#700(大日本塗料(株)製)を各サンプルに塗装し、130℃で30分間焼付け、膜厚:30μmの塗膜を形成した。その後、沸騰水に2時間浸漬し、直ちに、碁盤目(10×10個、1mm間隔)の鋼素地まで達するカットを入れた。さらにエリクセン押し出し機にてカット部が外(表)側となる様に5mm押し出し加工を施し、接着テープによる貼着・剥離を行い、塗膜の剥離面積を測定した。評価の基準は以下のとおりである。なお、エリクセン押し出し条件は、JISZ-2247-2006に準拠し、ポンチ径:20mm、ダイス径:27mm、絞り幅:27mmとした。
(評価基準)
◎ :剥離なし
○ :剥離面積3%未満
○-:剥離面積3%以上、10%未満
△ :剥離面積10%以上、30%未満
× :剥離面積30%以上
(5-9)耐汗性
各サンプルの表面に、JIS-B7001-1995に準ずる人工汗を10μL滴下し、シリコン製のゴム栓を滴下部に押し付けて、一定面積の人工汗で汚染された部位を作製した。この試験片を温度:40℃、相対湿度:80%の雰囲気に制御された恒温恒湿機に96時間静置した後に、汚染部位の外観変化を評価した。評価基準は次のとおりである。
(評価基準)
◎ :変色なし
○ :極僅かに変色あり
○-:僅かに変色あり
△ :やや黒変
× :明らかに黒変
(5-10)曲げ加工部の耐食性
各サンプルを直径2mmの棒(ステンレス製)を挟み込むようにして120°曲げて、万力を用いて絞め込んだ。この曲げたサンプルに対してJIS-Z-2371-2000に準拠する塩水噴霧試験(SST)を実施し、240時間経過後の曲げ加工部外表面の白錆発生状態を評価した。評価基準は以下のとおりである。
(評価基準)
◎ :白錆発生面積率5%未満
○ :白錆発生面積率5%以上10%未満
○-:白錆発生面積率10%以上25%未満
△ :白錆発生面積率25%以上50%未満
× :白錆発生面積率50%以上100%以下
(5-11)潤滑性
各サンプルより直径:100mmの円板状の試験片を切り出し、ポンチ径:50mm、ダイス径:51.91mm、しわ押さえ力:1トンの条件でカップ状に成型した。成型品の絞り加工を受けた面(カップの側面外側)の外観を目視によって調べ、傷つき程度および黒化程度を評価した。評価基準は次のとおりである。
(評価基準)
◎ :全面に渡って殆ど変化なく、外観が均一
○ :傷つきおよび黒化が少し発生し、外観が明らかに不均一
○-:局部的に傷つきおよび黒化が発生し、外観が明らかに不均一
△ :コーナー部を中心に傷つきおよび黒化が激しく発生
× :成型できずに割れた
(5-12)貯蔵安定性
表4に示した各第2表面処理液を40℃の恒温槽に30日間保管した。取り出して、各第2表面処理液の外観を目視によって調べ、評価した。評価基準は次のとおりである。
(評価基準)
◎ :変化なし
○ :極微量の沈殿が見られる
○-:微量の沈殿がみられる
△ :微量の沈殿が見られ、やや粘度が高くなった
× :多量の沈殿が見られる、もしくはゲル化した
Figure 2022039097000002
Figure 2022039097000003
Figure 2022039097000004
Figure 2022039097000005
Figure 2022039097000006
Figure 2022039097000007
表5に示すように、本発明例は、耐熱変色性、耐熱割れ性、平板部耐食性、耐黒変性、スタック耐黒変性、耐水しみ性、耐溶剤性、塗装密着性、厳しい条件下での耐汗性、及び曲げ加工部耐食性、貯蔵安定性のいずれにも優れる。
本発明の製造方法により製造された表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板は、家電製品用鋼板、建材用鋼板、自動車用鋼板など種々の用途に用いることができる。

Claims (8)

  1. Ce3+、Ce4+、La3+、Bi3+、Y3+、Co2+、及びAl3+からなる群から選択される少なくとも一種のカチオンを含むイオン結合性塩と、分子内に極性官能基及び配位性元素の一方又は両方を合計2つ以上有するキレート剤と、水と、を含有する第1表面処理液を、亜鉛系めっき鋼板の表面に塗布し、加熱乾燥して、前記亜鉛系めっき鋼板の表面に第1皮膜を形成する工程と、
    グリシジル基を有するシランカップリング剤(A)、テトラアルコキシシラン(B)、炭酸ジルコニウム化合物(C)、ガラス転移点(Tg)が80~130℃であるアニオン性ポリウレタン樹脂(D)、バナジウム化合物(E)、モリブデン酸化合物(F)、及び水を含有し、pHが8.0~10.0で、かつ、各成分の含有量が以下の(1)~(6)を満足する第2表面処理液を、前記第1皮膜の表面に塗布し、加熱乾燥して、前記第1皮膜の表面に第2皮膜を形成する工程と、
    を有することを特徴とする表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
    (1)グリシジル基を有するシランカップリング剤(A)の固形分質量(AS)、テトラアルコキシシラン(B)の固形分質量(BS)、及び炭酸ジルコニウム化合物(C)中のZrO2換算質量(CZ)の合計質量(XS)の、アニオン性ポリウレタン樹脂(D)の固形分質量(DS)に対する質量比(XS/DS)が0.05~0.35
    (2)グリシジル基を有するシランカップリング剤(A)の固形分質量(AS)の、前記合計質量(XS)に対する質量比(AS/XS)が0.20~0.40
    (3)テトラアルコキシシラン(B)の固形分質量(BS)の、前記合計質量(XS)に対する質量比(BS/XS)が0.010~0.30
    (4)炭酸ジルコニウム化合物(C)中のZrO2換算質量(CZ)の、前記合計質量(XS)に対する質量比(CZ/XS)が0.45~0.70
    (5)バナジウム化合物(E)中のV換算質量(EV)の、前記合計質量(XS)とアニオン性ポリウレタン樹脂(D)の固形分質量(DS)との合計質量(XS+DS)に対する質量比(EV/(XS+DS))が0.0010~0.015
    (6)モリブデン酸化合物(F)中のMo換算質量(FM)の、前記合計質量(XS)とアニオン性ポリウレタン樹脂(D)の固形分質量(DS)との合計質量(XS+DS)に対する質量比(FM/(XS+DS))が0.0010~0.015
  2. 前記キレート剤が、チオカルボン酸化合物、チオアミド化合物、キノリン化合物、アゾール化合物、アセチルアセトン化合物、及び芳香族カルボン酸化合物からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1に記載の表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
  3. 前記イオン結合性塩が、F-、Cl-、Br-、I-、SO4 2-、及びNO3 -からなる群から選択される少なくとも一種のアニオンを含む、請求項1又は2に記載の表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
  4. 前記第2表面処理液が、さらに珪酸ナトリウム(G)を含有し、その含有量が以下の(7)を満足する、請求項1~3のいずれか一項に記載の表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
    (7)珪酸ナトリウム(G)の固形分質量(GS)の、前記合計質量(XS)と珪酸ナトリウム(G)の固形分質量(GS)との合計質量(XS+GS)に対する質量比(GS/(XS+GS))が0.05未満(0.00を含む)
  5. 前記第2表面処理液が、さらにワックス(H)を含有し、その含有量が以下の(8)を満足する、請求項1~4のいずれか一項に記載の表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
    (8)ワックス(H)の固形分質量(HS)の、前記合計質量(XS)とアニオン性ポリウレタン樹脂(D)の固形分質量(DS)との合計質量(XS+DS)に対する質量比(HS/(XS+DS))が0.002~0.10
  6. 前記第1皮膜は、片面当たり50~1,000mg/m2の付着量を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
  7. 前記第2皮膜は、片面当たり50~2,000mg/m2の付着量を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
  8. 請求項1~7のいずれか一項に記載の表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板の製造方法により製造された表面処理皮膜付き亜鉛系めっき鋼板。
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