JP7313600B2 - コネクタ用端子材及びコネクタ用端子 - Google Patents
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Description
これらは耐熱性に優れているが、純銀同士の接触となるので摺動時に凝着が発生し、摩擦係数が高くなる。
特許文献2の構成では、加熱によってアンチモンがめっき層最表面に拡散し、濃化後、酸化して接触抵抗が増大する問題がある。
また、ニッケルはアンチモンに比べて融点が高いので、熱によって拡散しがたく、このため、アンチモンと異なり、加熱後も最表面に濃化しがたく、加熱後の接触抵抗の増加を抑え、摩擦係数を低く維持し、耐摩耗性を保持することができる。銀とニッケルとの原子半径差は、銀とアンチモンとの原子半径差に比べて大きいため、銀ニッケル合金めっき層内におけるニッケル含有量を0.1at%以上1.8at%以下と、僅かに共析させるだけで硬度を高めることができる。なお、銀ニッケル合金めっき層のニッケル含有量が0.1at%未満であると、耐熱性及び耐摩耗性が低下し、摩擦係数も増大する。ニッケル含有量が1.8at%を超えると銀ニッケル合金めっき層の抵抗が増加し、また、加熱後の接触抵抗も増加しやすくなる。
銀ニッケル合金めっき層は、少なくとも、コネクタとして成形されたときの接点部に配置されるように設けられていればよい。
ニッケルめっき層の上に中間層としてCo,Pd,Sn,Cuのいずれか一種を主成分として含有する中間層が形成されているので、ニッケルめっき層と銀めっき層との間の密着性が良好となり、銀ニッケル合金めっき層の耐摩耗性を有効に発揮させることができる。
銀めっき層の純度を99at%以上とするのは、銀めっき層に不純物が多く含まれると、接触抵抗が高くなる傾向にあるからである。なお、純度99at%以上にはC,H,O,S,Nなどの軽元素は除かれる。
前述したように、ニッケルは熱によって拡散しがたいため、加熱後も最表面に濃化しがたい。上記の加熱条件で加熱した後の表面のニッケル濃度が5at%以下であれば、高温環境下での接触抵抗の増大を抑制することができる。
このコネクタ用端子は、接点部分に硬い銀ニッケル金合金めっき層が形成されているので、耐摩耗性に優れている。
本実施形態のコネクタ用端子材1は、図1に断面を模式的に示したように、少なくとも表層が銅又は銅合金からなる板状の基材2と、該基材2の上面に形成されたニッケル又はニッケル合金からなるニッケルめっき層3と、Co,Pd,Sn,Cuのいずれか一種を主成分として含有する中間めっき層4と、中間めっき層4の上面に形成された銀めっき層5と、銀めっき層5の上に形成された銀ニッケル合金めっき層6と、を備えている。
まず、基材2として、少なくとも表層が銅又は銅合金からなる板材を用意し、この板材に脱脂、酸洗等をすることによって表面を清浄する前処理を行う。
この基材2の表面の少なくとも一部に対して、ニッケル又はニッケル合金からなるめっきを施してニッケルめっき層3を基材2に形成する。例えば、スルファミン酸ニッケル300g/L、塩化ニッケル30g/L、ホウ酸30g/Lからなるニッケルめっき浴を用いて、浴温45℃、電流密度3A/dm2の条件下でニッケルめっきを施して形成される。なお、ニッケルめっき層3を形成するニッケルめっきは、緻密なニッケル主体の膜が得られるものであれば特に限定されず、公知のワット浴を用いて電気めっきにより形成してもよい。
基材2に形成されたニッケルめっき層3の表面に5質量%~10質量%の硫酸水溶液を用いて活性化処理を行った後、中間めっき層4を形成する。この中間めっき層4形成のためのめっき浴は、均一に成膜できれば、浴種は問わない。中間めっき層4が銅めっき層であれば硫酸銅浴、パラジウムめっき層であれば塩化パラジウム等のパラジウム化合物を含むめっき浴、コバルトめっき層であれば硫酸コバルトを含むめっき浴など、その金属種に代表的なめっき浴を用いればよい。
[銀ストライクめっき工程]
銀ストライクめっきを施すためのめっき浴の組成は、特に限定されないが、例えば、シアン化銀(AgCN)1g/L~5g/L、シアン化カリウム(KCN)80g/L~120g/Lからなる。そして、この銀めっき浴に対してアノードとしてステンレス鋼(SUS316)を用いて、浴温25℃、電流密度1A/dm2の条件下で銀めっきを30秒程度施す。この銀ストライクめっきにより膜厚0.01μm以上0.1μm以下の銀めっき層(銀ストライクめっき層)が形成される。この銀ストライクめっき層は、その後にさらに銀めっきが施されることにより、層としての識別は困難になる。
一方、銀ストライクめっきの後に行われる銀めっきのためのめっき浴の組成は、特に限定されないが、例えば、シアン化銀カリウム(K[Ag(CN)2])1g/L~5g/L、シアン化銀(AgCN)5g/L~15g/L、シアン化カリウム(KCN)10g/L~30g/L、炭酸カリウム(K2CO3)10g/L~20g/L、添加剤5mm/Lからなるめっき浴に対してアノードとして純銀板を用いて、浴温が常温(25℃~30℃)で、電流密度0.1A/dm2~3A/dm2の条件下でめっきを施す。
これら二工程で銀めっきを施すことにより、膜厚0.5μm以上10μm以下の銀めっき層5が形成される。
銀めっき層5上に銀ニッケル合金めっきを施して銀ニッケル合金めっき層6を形成する。この銀ニッケル合金めっき層6を形成するためのめっき浴の組成は、例えば、シアン化銀(AgCN)30g/L~50g/L、シアン化カリウム(KCN)100g/L~150g/L、炭酸カリウム(K2CO3)15g/L~40g/L、テトラシアノニッケル(II)酸カリウム(K2[Ni(CN)4]・H2O)80g/L~150g/L、銀めっき層を平滑に析出させるための添加剤からなる。この添加剤は、アンチモンを含まないものであれば、一般的な添加剤で構わない。なお、シアン化銀をAモル、テトラシアノニッケル(II)酸カリウムをBモルとしたときのモル比(A:B)が(3~4):(5~6)、A+B=0.7モル~1.0モルとなるように調整するとよい。
次いで、5質量%の水酸化カリウム水溶液を用いて表面を清浄化する活性化処理を行った。この活性化処理後に、試料4~7,12については膜厚80nmで表1に示す材質の中間層を形成し、その他の試料については中間層を形成せずに、銀ストライクめっきを施した後に銀めっきを施して、表1に示す膜厚の銀めっき層(Ag層)を形成し、次いで、銀ニッケル合金めっきにより、表1に示す膜厚、ニッケル含有量の銀ニッケル合金めっき層(AgNi層)を形成した。ただし、試料15は銀ニッケル合金めっき層を形成せず、最表面を銀めっき層とした。
<ニッケルめっき条件>
・めっき浴組成
スルファミン酸ニッケル:300g/L
塩化ニッケル:30g/L
ホウ酸:30g/L
・浴温:45℃
・電流密度:3A/dm2
・めっき浴組成
塩化パラジウム:17g/L
リン酸アンモニウム:100ml/L
塩化アンモニウム:25g/L
・浴温:30℃
・電流密度:1A/dm2
・アノード:Pt/Ti(チタン製板に白金を被覆した不溶性電極)
・めっき浴組成
硫酸コバルト7水和物:140g/L
ホウ酸:40g/L
・浴温:30℃
・電流密度:1A/dm2
・アノード:Pt/Ti
・めっき浴組成
シアン化銀:2g/L
シアン化カリウム:100g/L
・アノード:SUS316
・浴温:25℃
・電流密度:1A/dm2
・めっき浴組成
シアン化銀カリウム:55g/L
シアン化カリウム:130g/L
炭酸カリウム:15g/L
光沢剤(アトテックジャパン株式会社製AgO-56):4ml/L
・浴温:25℃
・電流密度:3A/dm2
・アノード:純銀板
・めっき浴組成
シアン化銀:35g/L
シアン化カリウム:120g/L
炭酸カリウム:35g/L
テトラシアノニッケル(II)酸カリウム・一水和物:100g/L
添加剤:5ml/L
・アノード:純銀板
・浴温:25℃
・電流密度:4A/dm2~10A/dm2
ニッケル含有量を電流密度によって調整した。
銀ニッケル合金めっき層及び第2銀めっき層の膜厚は、セイコーインスツル株式会社製の集束イオンビーム装置:FIB(型番:SMI3050TB)を用いて断面加工を行い、傾斜角60°の断面SIM(Scanning Ion Microscopy)像における任意の3箇所の膜厚を測長し、その平均を求めた後、実際の長さに変換した。
銀ニッケル合金めっき層のニッケル含有量(at%)は、日本電子株式会社製の電子線マイクロアナライザー:EPMA(型番JXA-8530F)を用いて、加速電圧10kV、ビーム径φ30μmとし、各試料の表面の任意の3箇所を測定し、その平均を求めた。
加熱前の試料と、150℃×240時間加熱後の試料とを切り出し、最表面から深さ方向にX線光電子分光分析(XPS;ULVAC-PHI PHI Quantera)でニッケル濃度の測定を行った。測定エリアは直径で約100μmとした。なお、表面の汚れを取るため、測定前に、SiO2換算で深さ1.3nmのArスパッタを行った。Arスパッタは2kVで行い、スパッタレートはSiO2換算で2.6nm/minとした。最表層のニッケルのAtomic Concentration(%)が、加熱後で5at%以下の場合、ニッケルが濃化してない(「無」)と判断し、5at%を超える場合はニッケルが濃化した(「有」)と判断した。
JCBA(日本伸銅協会技術標準)T307の試験方法(項目4)に準拠し、圧延方向に対して曲げの軸が直交方向になるように特性評価用条材から幅10mm×長さ30mmの試験片を複数採取し、この試験片を曲げ角度が90度、曲げ半径が0.5mmのW型の治具を用い、9.8×103Nの荷重でW曲げ試験を行った。
その後、光学顕微鏡にて曲げ加工部を観察し、割れがないか確認した。50倍の観察でめっき材に入った亀裂の下から下地層(ニッケルめっき層)が認められたものを割れ「有」、認められなかったものを割れ「無」とした。
加熱前の各試料及び150℃で240時間加熱後の各試料のそれぞれを60mm×10mmの試験片に切り出し、平板サンプルをオス端子の代用(オス端子試験片)とし、この平板サンプルに曲率半径3mmの凸加工を行ったサンプルをメス端子の代用(メス端子試験片)とした。これらを加熱前及び150℃で140時間加熱後について、それぞれ接触抵抗(mΩ)を測定した。測定に際しては、ブルカー・エイエックスエス株式会社の摩擦摩耗試験機(UMT-Tribolab)を用い、水平に設置したオス端子試験片にメス端子試験片の凸面を接触させ、オス端子試験片に10Nの荷重をかけた時の接触抵抗値を4端子法により測定した。
[摩擦係数]
同一試料について、60mm×10mmの試験片に切り出し、平板状のサンプルをオス端子の代用(オス端子試験片)とし、この平板状サンプルに曲率半径3mmの凸加工を行ったサンプルをメス端子の代用(メス端子試験片)とした。摺動試験は、ブルカー・エイエックスエス株式会社の摩擦摩耗試験機(UMT-Tribolab)を用い、水平に設置したオス端子試験片にメス端子試験片の凸面を接触させ、5Nの荷重を負荷した状態で、オス端子試験片を水平に移動距離10mmで摺動させた。摺動距離3mm~10mmの平均摩擦係数を摩擦係数の値とした。
その結果を表2に示す。
また、表2の結果から摩擦係数も小さいことがわかる。
2 基材
3 ニッケルめっき層
4 中間めっき層
5 銀めっき層
6 銀ニッケル合金めっき層
Claims (6)
- 少なくとも表層が銅又は銅合金からなる基材と、該基材の上に形成された銀めっき層と、該銀めっき層の上の少なくとも一部に形成された銀ニッケル合金めっき層と、を備え、前記銀ニッケル合金めっき層は、膜厚が0.05μm以上2.0μm以下で、ニッケル含有量が0.1at%以上0.9at%以下であることを特徴とするコネクタ用端子材。
- 前記基材と前記銀めっき層との間には、ニッケル又はニッケル合金からなるニッケルめっき層が設けられ、該ニッケルめっき層の膜厚は0.3μm以上3.0μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ用端子材。
- 前記ニッケルめっき層と前記銀めっき層との間に、Co,Pd,Sn,Cuのいずれか一種を主成分として含有する中間めっき層が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のコネクタ用端子材。
- 前記銀めっき層は、銀の純度が99at%以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のコネクタ用端子材。
- 150℃で240時間加熱後の表面のニッケル濃度が5at%以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のコネクタ用端子材。
- 請求項1から5のいずれか一項に記載のコネクタ用端子材からなるコネクタ用端子であって、相手方コネクタ用端子との接点部分の表面に前記銀ニッケル合金めっき層が形成されていることを特徴とするコネクタ用端子。
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