以下、本開示に係る燃料供給装置について、給油所に設けられた給油装置を例に、図面に基づき説明する。
図1は、燃料供給装置の一実施の形態としての、給油所に設けられた給油装置の一実施例の全体構成図である。
給油装置1は、給油装置本体(燃料供給装置本体)10と、給油装置本体10から導出された給油ホース(燃料供給ホース)20と、給油ホース20の先端に設けられた給油ノズル(燃料供給ノズル)30とを有する。
給油装置本体10内には、ポンプモータ11により駆動されるポンプ12と、給油ノズル30から車輌の燃料タンク等の燃料補給対象に吐出された油量を計測する流量計13が備えられている。流量計13には、単位量毎の油液の流れに対応した流量パルスを生成する流量発信器15が付設されている。
この場合、ポンプ12は、通常、流入口と流出口とが備えられた一の筐体ユニットに、空気分離器、フィルタ等のポンプ付設機器とともに一体的に設けられ、ポンプユニットとして構成されている。ポンプユニットは、上流側(流入口の地下貯油タンク側)から下流側(流出口の流量計13側)へ、ストレーナ、流入側逆止弁、ポンプ12、空気分離器、フィルタ、流出側逆止弁が順次配置された構成になっている。加えて、ポンプユニットには、空気分離器の流出側とポンプ12の流入側(吸い込み側)との間を連通するように気液分離器が配置され、フィルタの流出側とポンプ12の流入側(吸い込み側)との間を連通するように、リリーフ弁を備えたリリーフ通路が設けられた構成になっている。
ポンプ12の吸込口は、吸込口配管14、及び図示せぬ地中配管を介して、図示せぬ地下貯油タンク内と連通接続されている。ポンプ12の吐出口は、流量計13の流入口に連通接続されている。流量計13の流出口は、流出口配管16を介して、給油ホース20の基端側が他方に接続されたスイベル継手17と連通接続されている。
これにより、図示の給油装置1においては、吸込口配管14、ポンプ12、流量計13、流出口配管16によって、給油ノズル30に対する給油装置1の本体内燃料供給路が構成され、給油ホース20によって、給油ノズル30に対する給油装置1の本体外燃料供給路が構成されている。
給油ホース20の途中には、後述する安全継手50が設けられ、給油ホース20は、安全継手50を境にして、本体側ホース部分21とノズル側ホース部分22とに分かれている。図示の例では、安全継手50を給油ホース20の途中に設けた実施例を示したが、安全継手50の配設位置はこれに限定されず、給油ホース20の基端や先端に設けられていてもよい。安全継手50は、給油ホース20に所定値以上の引張力が作用した場合に上流側継手部と下流側継手部とに分離して、本体側ホース部分21及びノズル側ホース部分22からの燃料の漏出や溢出を防ぐ。なお、図1では、安全継手50を保護カバーで覆われた使用形態で表しているため、後述する上流側継手部60と下流側継手部70とを備えた安全継手50の構成(図2参照)は表れていない。
給油ノズル30は、給油ホース20の先端側に連通接続され、ノズル本体32内の図示せぬ主弁を操作レバー31の操作に応動して開閉できる。ノズル本体32内には、給油した液面が吐出パイプ33の先端側に到達したら、操作レバー31の開弁操作状態に関わらず、主弁を閉弁して吐出パイプ33からの油液の吐出を停止させる自動閉弁機構が内蔵されている。
給油ノズル30は、給油作業に用いられていない待機時は、給油装置本体10に備えられたノズル掛け(ノズル収納部)18に収納されている。ノズル掛け18には、給油ノズル30の取り出し及び収納を検出するノズルスイッチ19が設けられている。
一方、給油装置本体10には、給油ノズル30を操作して車輌の燃料タンク等に給油された給油量等の給油情報を表示する給油情報表示器41が、その表示面を給油装置本体10外部に臨ませて設けられている。
また、給油装置本体10内には、ノズルスイッチ19からのノズル取り出し/収納検出信号に基づきポンプモータ11の駆動/停止を制御し、流量発信器15からの流量パルスに基づき燃料補給対象に対する給油量を演算し、給油情報表示器41に表示したりして、給油装置1の各部を作動制御する給油制御装置40が設けられている。
そして、作業者は、図示の給油装置1を用いて、燃料補給対象に対する給油作業を、例えば次のようにして行う。
作業者は、給油ノズル30をノズル掛け18から取り出し、その吐出パイプ33を燃料補給対象の給油口に挿入し、操作レバー31を開弁操作してノズル本体内の主弁を開弁して、燃料補給対象に対する燃料吐出を開始する。その際、ポンプモータ11は、ノズルスイッチ19からのノズル取り出し検出信号の出力に基づき、給油制御装置40によって駆動され、ポンプ12は給油ノズル30に対する燃料の送液を開始する。燃料補給対象に対する給油ノズル30からの燃料吐出量(燃料吐出流速)は、操作レバー31の操作量に応じたノズル本体内の主弁の開弁量で調整される。また、給油ノズル30からの燃料補給対象に対する燃料供給量は、流量発信器15からの流量パルス出力に基づき、給油制御装置40によって演算され、給油情報表示器41に表示される。
一方、燃料補給対象に対する給油ノズル30からの燃料吐出は、作業者による操作レバー31の閉弁操作又は自動閉弁機構の作動によりノズル本体32内の主弁が閉弁されることで、中断又は終了される。作業者は、燃料補給対象に対する所望量の給油が終了したならば、自動閉弁機構の作動により操作レバー31が閉弁操作されていない場合は操作レバー31を閉弁操作してから、給油ノズル30をノズル掛け18に収納する。給油制御装置40は、ノズルスイッチ19からのノズル収納検出信号の出力に基づき、ポンプモータ11すなわちポンプ12の送液駆動を停止させる。
次に、給油ホース20に所定値以上の引張力が作用した場合に上流側継手部60と下流側継手部70とに分離して、本体側ホース部分21及びノズル側ホース部分22からの燃料の漏出や溢出を防ぐ安全継手50の詳細な構成について、図面に基づき説明する。
図2は、図1に示した給油装置における安全継手の構成断面図である。
図3は、図2に示した安全継手に設けられた係合部材の構成説明図である。
安全継手50は、上流側継手部60と下流側継手部70とを一体的に液密に連結接続した構成になっている。上流側継手部60には、下流側継手部70が分離した際に本体側ホース部分21側に収容された油液の流出を防止するための上流側弁機構61が備えられ、下流側継手部70には、上流側継手部60が分離した際にノズル側ホース部分22側に収容された油液の流出を防止する下流側弁機構71が備えられている。
安全継手50の上流側継手部60は、貫通孔61aが形成された筒状の継手ケーシング61'を有し、その孔軸方向に沿った一端側の内周部分が、安全継手50の一端側の外部接続部61bとなり、孔軸方向に沿った他端側の外周部分が下流側継手部70との継手接続部61eとなっている。
貫通孔61aの孔軸方向に沿った継手接続部61e側の孔内には、孔軸方向に沿った一端側から他端側に向かって、ボール弁体(弁体)66の収容部61c、この収容部61cに収容されたボール弁体66が離着座する弁座67としての弁座部61dが、順次形成された構成になっている。
そして、収容部61c内のボール弁体66は、外部接続部61bと貫通孔61a内の収容部61cとの境界段部に一端側が支持され、他端側がボール弁体66に係合しているばね部材68の付勢力によって、弁座67に対する着座方向に、常時、付勢されている構成になっている。
すなわち、図示の例の場合、上流側弁機構61は、ボール弁体66、弁座67、ばね部材68を有して構成されている。
これに対し、下流側継手部70は、図示の例では、弁座77が形成された弁座部材72と、弁体76が変位可能に装着される弁体支持部材73と、弁体76が支持された弁体支持部材73を弁座部材72に対して固定保持する保持部材74とを有して分割構成されている。
弁座部材72は、貫通孔72aが形成された筒状の弁座部材ケーシング72’を有し、その孔軸方向に沿った一端側の内周部分が上流側継手部60の継手接続部61eが装着される被装着部72bとなっており、孔軸方向に沿った他端側の内周部分が、保持部材74の被装着部72fとなっている。
また、下流側継手部70の被装着部72bと被装着部72fとの間の貫通孔72a内周部分には、孔軸方向に沿って被装着部72b側から被装着部72fに向かって、後述する係合部材80の取付部72c、弁座77としての環状の弁座部72d、弁体支持部材73の被当接段部72eが順次形成された構成になっている。
弁体支持部材73は、弁座部材72の被装着部72f側から弁座部材72の貫通孔72a内に挿設可能な、筒状の支持部材ケーシング73’を有して形成されている。支持部材ケーシング73’の貫通孔73aの軸部分には、弁体76の弁軸76aが挿入されて、弁軸76aを摺動可能に案内支持する案内筒部73bが、支持部材ケーシング73’の内周面から立設された脚部73cによって、弁体76の弁軸76aが環状の弁座部72dと同軸になるように支持された構成になっている。
弁体支持部材73は、一端側の環状端面が、弁座部材72の被当接段部72eとの係合当接部73dとなり、他端側の環状端面が、保持部材74との保持部材被当接部73eとなっている。
保持部材74は、貫通孔74aが形成された筒状の保持部材ケーシング74’を有し、その孔軸方向に沿った一端側の外周部分は、弁座部材72の被装着部72fに対する装着部74bとなり、孔軸方向に沿った他端側の外周部分は、安全継手50の他端側の外部接続部74cとなっている。
弁体76は、弁体支持部材73によってその弁軸76aを案内支持されて、弁座部材72の弁座部72dに対して離着座可能に、弁座部材72の貫通孔72a内に収容される。弁体76には、弁体支持部材73の案内筒部73bと脚部73cとの接合部との間に、ばね部材78が縮設されている。
弁体76は、このばね部材78によって、常時、着座方向に付勢されている。本実施例の場合、ばね部材78の付勢力の大きさは、例えば、前述した本体内燃料供給路から安全継手50の一端側の上流側継手部60へ油液の送液が行われている場合は、下流側継手部70の弁体76が弁座77から離座して開弁し、本体内燃料供給路から安全継手50の一端側の上流側継手部60へ油液の送液が行われていない場合は、弁体76が弁座77に着座して閉弁し得る付勢力の大きさに設定されている。
すなわち、図示の例の場合、下流側弁機構71は、弁体76、弁座77、ばね部材78を有して構成されている。
そして、安全継手50は、上流側継手部60の上流側弁機構61と下流側継手部70の下流側弁機構71との間に図3に示すような係合部材80を介在させて、上流側継手部60の継手接続部61eを下流側継手部70の被装着部72bに液密に嵌合し、シェアピン63により抜け止め係止し、上流側継手部60と下流側継手部70とを一体的に連結して構成されている。
図3は、係合部材の一実施例の構成図である。
図示の実施例の場合、係合部材80は、上流側弁機構係合部81と、下流側弁機構係合部82とを有して構成される。
図示の例では、上流側弁機構係合部81は、互いに反対向きを向いたU字状若しくはコ字状のフレーム部81a,81aの対を、互いに同じ向きを向いたU字状若しくはコ字状のフレーム部81b,81bの対で一体的に連結した形状の係合部フレーム81’で構成されている。なお、図示の例では、互いに反対向きを向いたU字状若しくはコ字状のフレーム部81a,81aの対は、U字状若しくはコ字状のフレーム部81a,81aの開放側を相対向させるように形成したが、U字状若しくはコ字状のフレーム部81a,81aの非開放側を相対向させるようにしてもよい。
一方、下流側弁機構係合部82は、互いに径の大きさが異なる円筒部82a,82bのそれぞれ端部を同軸に、鍔部82cを介して一体的に連結した段付き円筒形状の係合部フレーム82’で構成されている。そして、係合部フレーム82’の小径円筒部82aには、筒壁を貫通する連通孔82dが設けられている。
係合部フレーム82’の小径円筒部82aの外径は、下流側継手部70の弁座部72dの径よりも小さくなっている。係合部フレーム82’は、小径円筒部82a側の筒端を、下流側継手部70の弁体76の表面に密接でき、小径円筒部82aを、下流側継手部70における係合部材80の取付部72cと弁座部72dとの間の貫通孔72aの孔部分72gに遊嵌できる。
また、係合部フレーム82’の小径円筒部82aの軸方向長さは、係合部フレーム82’の鍔部82cの鍔面を下流側継手部70における係合部材80の取付部72cに密着させ、小径円筒部82aを下流側継手部70における貫通孔72aの孔部分72gに遊嵌した場合、係合部フレーム82’の小径円筒部82a側の筒端が、下流側継手部70の弁座部72dよりも弁体76側に突出し、弁体76を弁座77から離座させることができる軸方向長さになっている。
したがって、係合部フレーム82’は、下流側継手部70における貫通孔72aの孔部分72gに対しての遊嵌状態で、係合部フレーム82’の小径円筒部82aの外周面と貫通孔72aの孔部分72gの孔内周面との間に、流路空間を形成できる。
また、係合部フレーム82’の小径円筒部82aには、筒壁を貫通する連通孔82dが設けられている。係合部フレーム82’は、小径円筒部82a側の筒端が下流側継手部70の弁体76の表面に密接している状態であっても、小径円筒部82aの外周面と貫通孔72aの孔部分72gの孔内周面との間の流路空間、及び小径円筒部82aの連通孔82dによって、弁体76の下流側すなわち給油ノズル30側に対し、流量を絞った連通状態が保たれている。
また、係合部フレーム82’の大径円筒部82b若しくは鍔部82cの外径は、下流側継手部70における係合部材80の取付部72cと弁座部72dとの間の孔部分72gの孔径よりも大きく、下流側継手部70における係合部材80の取付部72cの外径よりも小さくなっている。係合部フレーム82’は、鍔部82cの鍔面を下流側継手部70における係合部材80の取付部72cに密着させて、下流側継手部70の貫通孔72a内で油液の流れに抗して保持される。
選択的に、下流側継手部70における係合部材80の取付部72cの外径と略等しくすることにより、鍔部82cの鍔面を取付部72cに密着させて保持されている状態で、小径円筒部82aの外周面における連通孔82dの開口が、下流側継手部70の貫通孔72aの孔部分72gの内周面で閉塞されてしまうのを確実に防止できるとともに、係合部フレーム82’の小径円筒部82aの軸芯を、下流側継手部70の弁座部72dの中心、弁体76の軸芯に対して同軸に保持することができる。
また、選択的に、係合部フレーム82’の大径円筒部82bの内径の大きさを、係合部フレーム81’の互いに反対向きを向いたU字状若しくはコ字状のフレーム部81a,81aそれぞれが大径円筒部82bと小径円筒部82aとの間の段差面に当接し、かつ大径円筒部82bの筒内壁にも当接する大きさにすれば、係合部フレーム82’が鍔部82cの鍔面を取付部72cに密着させて鍔部82cが保持されている状態で、係合部フレーム81’の中心を、上流側継手部60の弁座部61dの中心、ボール弁体66の軸芯に対して同軸に保持することができる。
下流側弁機構係合部82の上述した構成に対応して、上流側弁機構係合部81としての係合部フレーム81’は、基部としてのU字状若しくはコ字状のフレーム部81a,81aそれぞれが、係合部フレーム82’の鍔部82cの裏面(大径円筒部82bと小径円筒部82aとの間の内周側の段差面)と当接することができる大きさになっている。選択的に、基部としてのU字状若しくはコ字状のフレーム部81a,81aそれぞれは、大径円筒部82bの筒内壁にも当接することができる大きさになっている。
また、下流側弁機構係合部82の上述した構成に対応して、上流側弁機構係合部81としての係合部フレーム81’は、基部に対して立設した状態になっている同じ向きを向いたU字状若しくはコ字状のフレーム部81b,81bが上流側継手部60の弁座67としての弁座部61dの開口を通過でき、基部としてのU字状若しくはコ字状のフレーム部81a,81aが、係合部フレーム82’が鍔部82cの鍔面を取付部72cに密着させて鍔部82cが保持されている状態で、係合部フレーム82’の鍔部82cの裏面に搭載されてボール弁体66を弁座67から離座させることができる大きさ(高さも含む)になっている。
上流側弁機構係合部81と下流側弁機構係合部82とを有して構成される係合部材80は、上流側継手部60と下流側継手部70との連結状態において、図3に示すように、係合部フレーム81’が係合部フレーム82’の鍔部82cの裏面に搭載されている状態で、上流側継手部60の継手接続部61e側の端部と下流側継手部70の取付部72cとで係合部フレーム82’の大径円筒部82b側の端部及び鍔部82cが挟持されて、安全継手50の貫通孔61a,72a,73a,74aで構成される継手流路内における、上流側継手部60の上流側弁機構61と下流側継手部70の下流側弁機構71との間に設けられている。
次に、上述したように構成された安全継手50が設けられた給油装置1の作用について説明する。
給油ノズル30がノズル掛け18に収納されていて給油作業が行われていない待機時は、ポンプ12は送液停止状態にあるので、本体内燃料供給路を介して本体外燃料供給路である給油ホース20に対して油液の送液は行われていない。そのため、安全継手50は、図3に示すように、上流側継手部60の上流側弁機構61は、係合部材80の上流側弁機構係合部81の係合部フレーム81’がボール弁体66に当接して、ボール弁体66をばね部材68の付勢力に抗して弁座67から離座させ、開弁している。一方、下流側継手部70の下流側弁機構71は、係合部材80の下流側弁機構係合部82の係合部フレーム82’が弁体76に液密に当接して、弁体76をばね部材78の付勢力に抗して弁座77(弁座部72d)から離座させている。そのため、弁体76の上流側と下流側とは、係合部フレーム82’の小径円筒部82aの筒壁を貫通する連通孔82d、及び係合部フレーム82’の小径円筒部82aの外周面と弁座部材72の貫通孔72aにおける孔部分72gの孔内周面との間に形成された流路空間を介して、流量が絞られた連通状態に保持されている。
作業者が、給油ノズル30をノズル掛け18から取り出し、ポンプ12が送液駆動され、本体内燃料供給路を介して本体外燃料供給路である給油ホース20に対して油液の送液が開始される。そして、安全継手50の下流側継手部70の下流側弁機構71では、上流側弁機構61が開弁状態になっている上流側継手部60からの油液の流れ(送液)を受け、弁体76が、ばね部材78の付勢力に抗して、係合部材80における係合部フレーム82’の小径円筒部82a側の筒端から離間する。これにより、弁体76の上流側と下流側とは、係合部フレーム82’の小径円筒部82aの筒壁を貫通する連通孔82d、及び係合部フレーム82’における小径円筒部82aの外周面と貫通孔72aの孔部分72gの孔内周面との間に形成された流路空間からなる絞り流路に加えて、弁体76と小径円筒部82a側の筒端との間に形成された弁流路を介しても連通するようになる。したがって、ポンプ12から送出される油液は、安全継手50の、ボール弁体66が開弁状態になっている上流側継手部60の上流側弁機構61、及び、絞り流路に加えて弁体76と係合部フレーム82’の小径円筒部82a側の筒端との間の隙間流路が開通された下流側継手部70の下流側弁機構71を介して、給油ノズル30に供給される。
図4は、図2に示した安全継手の、給油ノズルからの油液吐出状態における構成断面図である。
給油作業が開始されたときに、安全継手50の下流側継手部70において、弁体76の上流側と下流側との間を遮断及び連通する、係合部材80の係合部フレーム82’の小径円筒部82a側の筒端、弁体76、ばね部材78は、弁座77(環状の弁座部72d)、弁体76、ばね部材78とともに、下流側継手部70の下流側弁機構71を構成する。したがって、安全継手50における下流側継手部70の下流側弁機構71は、ばね部材78によって付勢された弁体76、弁座77(環状の弁座部72d)に加えて、図4に示すように、係合部材80の係合部フレーム82’の小径円筒部82a側の筒端からなる弁座77’を有するようになっている。
作業者が、給油ノズル30をノズル掛け18から取り出して、給油ノズル30の操作レバー31を開弁操作するまでの間は、ノズル本体32内の主弁は閉弁したままなので、ポンプ吐出側の本体内燃料供給路内及び給油ホース20内の液圧は、所定圧力(例えば、ポンプ12のリリーフ圧)まで徐々に上昇することになる。本体外燃料供給路である給油ホース20内全体の圧力がこの所定圧力に達するまでは、安全継手50は、本体内燃料供給路内からの油液の流れの圧力を受けているので、図4に示す状態で連通したままである。
そして、作業者が、給油ノズル30の操作レバー31を開弁操作して、給油ノズル30からの燃料吐出が開始されると、安全継手50に対して下流側である給油ノズル30側の燃料供給路内の液圧が下がり、給油ホース20内全体の圧力も下がるが、安全継手50の上流側継手部60の上流側弁機構61及び下流側継手部70の下流側弁機構71は、本体内燃料供給路内からの油液の流れの圧力を受けているので、給油ノズル30からの燃料吐出中も、図4に示す状態で連通したままである。
一方、燃料補給対象に対する所望量の給油が行われ、作業者がそれまで開弁操作していた給油ノズル30の操作レバー31を燃料吐出量の絞り操作を経ずにいきなり閉弁操作したり、給油ノズル30に備えられた自動閉弁機構が作動して、給油ノズル30からの燃料吐出が急停止させられると、今まで吐出されていた燃料流体が給油ノズル30で急激にせき止められることによって、給油ノズル30を起点とした瞬間的かつ急激な圧力上昇が発生する。そして、この瞬間的かつ急激な圧力上昇は、燃料供給路内を給油ノズル30側から上流側の本体内燃料供給路側に向かって、本体外燃料供給路である給油ホース20内を伝播しようとする。
このような瞬間的かつ急激な圧力上昇が安全継手50の下流側から伝播されると、安全継手50は、下流側継手部70の下流側弁機構71における弁体76がばね部材55の付勢力とともにその急激な圧力上昇とを受けることにより、係合部材80の下流側弁機構係合部82の弁座77’(係合部フレーム82’の小径円筒部82a側の筒端)に即座に着座し、弁体76と係合部フレーム82’の小径円筒部82a側の筒端との間の弁流路を遮断する。これにより、本体内燃料供給路を含む、安全継手50の下流側継手部70よりも上流側の燃料供給路内に、この給油ノズル30を起点とした瞬間的かつ急激な圧力上昇がいきなりそのまま伝播されてしまうことを防止できる。
これにより、給油ノズル30を起点とした瞬間的かつ急激な圧力上昇が発生しても、給油ノズル30と本体内燃料供給路との間の燃料供給路に設けた、すなわち実施例では給油ホース20の途中に設けた安全継手50の作動によって、安全継手50の下流側継手部70よりも上流側の燃料供給路に設けられた構成部材(例えば、配管接続部のシール部材等)や構成機器内の部品(例えば、スイベル継手17内のシール部材や、流量計13やポンプ12のパッキン等)の強度の劣化や損傷を抑制して、これら構成部材や構成機器からの油漏れも防止できる。この結果、上流側の燃料供給路の構成部材や構成機器内の部品の耐久寿命が延び、給油装置1自体のメンテナンス間隔を延ばすことができ、メンテナンス費用の低減もはかれる。
加えて、安全継手50における下流側継手部70の下流側弁機構71に備えられた弁座77’(係合部材80の係合部フレーム82’の小径円筒部82a側の筒端)、弁体76、ばね部材78からなる弁機構の作動によることで、安全継手50よりも下流側の燃料供給路であるノズル側ホース部分22に閉じ込められた、給油ノズル30を起点とした瞬間的かつ急激な圧力上昇は、弁体76が弁座77’に着座して閉弁した後、給油ノズル30が長時間、開弁操作されなくとも、安全継手50の下流側継手部70における、係合部フレーム82’の小径円筒部82aの筒壁を貫通する連通孔82d、及び係合部フレーム82’の小径円筒部82aの外周面と弁座部材72の貫通孔72aの孔部分72gの孔内周面との間に形成された流路空間で形成された絞り流路を介して、弁体76の下流側と上流側とは小流量ながら油液が流通できるようになっているので、この絞り流路を圧力逃がし通路として使用して、安全継手50の下流側継手部70の下流側弁機構71よりも上流側の燃料供給路に対して徐々に解放することができる。
これにより、安全継手50は、下流側継手部70の下流側弁機構71における弁体76と係合部材80の小径円筒部82a側の筒端との間の弁流路の遮断によって、ノズル側ホース部分22に閉じ込められた、給油ノズル30を起点とした瞬間的かつ急激な圧力上昇を起こした油液は、その後の周囲環境温度の上昇等によってさらに圧力上昇を起こすこともなくなり、安全継手50よりも下流側の構成機器内の部品(例えば、ノズル側ホース部分22と給油ノズル30とを接続するエルボ継手34のシール部材や、ノズル本体32内に備えられたシール部材等)の強度の劣化や損傷も抑制することができる。
そして、作業者が給油作業を終えて給油ノズル30をノズル掛け18に収納すると、ポンプ12が駆動停止され、給油装置は待機状態になる。その際、ノズル側ホース部分22に閉じ込められた油液の給油ノズル30を起点とした瞬間的かつ急激な圧力上昇がまだ十分に開放されていない場合であっても、係合部フレーム82’の小径円筒部82aの筒壁を貫通する連通孔82d、及び係合部フレーム82’の小径円筒部82aの外周面と弁座部材72の貫通孔72aの孔部分72gの孔内周面との間に形成された流路空間で形成された絞り流路は維持されているので、待機状態でも圧力の開放を継続できる。
安全継手50の下流側継手部70における下流側弁機構71の弁体76の弁座77’(係合部フレーム82’の小径円筒部82a側の筒端)に対する離着座に応じて、弁体76と小径円筒部82a側の筒端との間に形成された弁流路を連通・遮断する、給油装置1の上述した通常状態に対して、ノズル側ホース部分22に所定値以上の引張力が作用した異常状態では、給油装置1は次のように作用する。
図5は、図2に示した安全継手が分離した際の構成断面図である。
ノズル側ホース部分22に所定値以上の引張力が作用した場合は、給油ホース20が破断する前に、安全継手50は、ノズル側ホース部分22と接続された下流側継手部70にも所定値以上の引張力が作用することとなり、シェアピン63が破断し、図2及び図3に示された上流側継手部60と下流側継手部70との連結が、図5に示すように解除される。この上流側継手部60と下流側継手部70との分離に伴い、両者によって挟持されていた係合部材80が、下流側弁機構71のばね部材78の付勢力が作用している弁体76により押動されて、下流側継手部70から外れる。
これにより、下流側継手部70の下流側弁機構71では、弁体76がそれまで離着座していた弁座77’(係合部フレーム82’の小径円筒部82a側の筒端)が無くなり、係合部フレーム82’の小径円筒部82aの筒壁を貫通する連通孔82d、及び係合部フレーム82’の小径円筒部82aの外周面と弁座部材72の貫通孔72aの孔部分72gの孔内周面との間に形成された流路空間で形成された絞り流路も無くなる。
その結果、下流側弁機構71のばね部材78の付勢力が作用している弁体76は、係合部材80が外れたことにより、それまで離着座していた弁座77’(係合部フレーム82’の小径円筒部82a側の筒端)の代わりに、即座に、今度は下流側継手部70を構成する弁座部材72(弁座部材ケーシング72’)に形成された弁座部72d(弁座77)に着座する。
したがって、弁座部72d(弁座77)に対する弁体76の着座によって下流側弁機構71が閉弁すると、弁座部72d(弁座77)には、それまで離着座していた弁座77’のように弁体76の上流側と下流側とを連通する絞り流路は付設されていないので、給油ホース20の破断も、ノズル側ホース部分22に貯留されている燃料油液の下流側継手部70の下流側弁機構71からの漏出も確実に防止することができる。
また、分離した他方の上流側継手部60の上流側弁機構61も、係合部材80の外れによりばね部材68によって付勢されているボール弁体66が弁座67に即座に着座することにより、給油ホース20の破断も、本体側ホース部分21に貯留されている燃料油液の下流側継手部70の下流側弁機構71からの漏出も確実に防止することができる。
本実施形態の給油装置1によれば、給油ノズル30を起点とした瞬間的かつ急激な圧力上昇が発生しても、結合状態の上流側継手部60と下流側継手部70とによって挟持され、ポンプ12から給油ノズル30へ燃料の送出が行われていない状態でばね部材68,78の付勢力に抗して上流側継手部60及び下流側継手部70のそれぞれ弁体66,76を離座状態に保持する安全継手50の係合部材80が、給油ノズル30を起点とした瞬間的かつ急激な圧力上昇がそのまま下流側継手部70の上流側の燃料供給路の伝播してしまうことを緩衝するので、安全継手50の耐久寿命が延び、給油装置1自体のメンテナンス間隔を延ばすことができ、メンテナンス費用の低減もはかれる。そして、構造が従来技術に対し非常に簡単なので、その組立も容易になり、給油装置1の製造コストの上昇を抑制できる。
なお、係合部材80の具体的構成は、上記説明した上流側弁機構係合部81と、下流側弁機構係合部82と、からなる構成に限定されない。係合部材80は、上流側弁機構係合部81と下流側弁機構係合部82とを一体的に構成したものでもよいし、上流側弁機構係合部81,下流側弁機構係合部82の具体的な構成も、ポンプ12から給油ノズル30へ燃料の送出が行われていない状態でばね部材68,78の付勢力に抗して上流側継手部60及び下流側継手部70のそれぞれ弁体66,76を離座状態に保持することができるものであるならば、図示した構成に限定されない。例えば、上述した実施形態では、係合部材は、下流側弁機構71の弁体76が離着する弁座77’と、弁体76の上流側と下流側とを連通する絞り流路とを備える構成としたが、例えば、絞り流路は弁座77’の弁座面に一体的に形成してもよく、さらには、絞り流路を廃して、弁座77’に対する弁体76の離座状態を直接調整する構成としてもよい。また、上流側弁機構61の弁体66は、係合部材により離座状態が保持される構成としたが、これに限らず例えば、下流側継手部の取付部72cにより保持される構成でもよい。
また、上記説明した実施形態の燃料供給装置は、給油装置1を例に説明したが、給油装置は、地上設置式の給油装置に限らず、例えば懸垂式の給油装置等、各種燃料の燃料供給装置に適用に可能である。