JP7312223B2 - 護岸用ブロックマット、護岸用ブロック、及び、護岸構造 - Google Patents

護岸用ブロックマット、護岸用ブロック、及び、護岸構造 Download PDF

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Description

本願は河川の護岸のために用いられるブロックマット等を開示する。
特許文献1~4や非特許文献1に開示されているように、河川の法面を保護するために護岸用ブロックや水床が広く用いられている。護岸用ブロックは、その端部を法面に埋め込んだり、帯状のコンクリート体を設置して保護する等の「めくれ対策」が講じられてきた。
特開2013-076263号公報 特開2015-190109号公報 特開2008-013988号公報 特開平8-134871号公報
ISSN 1346-7328 国土技術政策総合研究所資料 第911号 平成28年5月
特許文献1~4や非特許文献1に開示された護岸用ブロックは、法面に設置する際に「めくれ対策」のため施工の手間がかかるという課題がある。また、ブロックを保護するためのコンクリート体を別に設置する場合にはコストが高くなるという課題もある。この点、河川の水流に対する「めくれ対策」を簡易に実施可能である護岸用ブロックが求められている。
本願は上記課題を解決するための手段として、以下の(I)~(XV)を開示する。
(I) 河川の越流に対して堤内地側法面を保護するために使用される護岸用ブロックマットであって、マットと、前記マットの表面に配列された複数のブロックとを備え、前記複数のブロックのうち前記越流の最上流側に設けられるブロック(1)は、側面視において下流側よりも上流側のほうが底面に向かって緩やかに先細りとなっている、護岸用ブロックマット。
(II) 前記ブロック(1)が、平らな底面(1e)と、上流側の端面(1d)と、下流側の端面(1b)と、前記端面(1d)の上端から前記端面(1b)に向かって伸びる傾斜面(1a)と、を備え、前記端面(1d)の高さをD(mm)、前記端面(1b)の高さをB+D(mm)、前記端面(1d)と前記底面(1e)とのなす角度をC(°)、前記傾斜面(1a)と前記底面(1e)とのなす角度をA(°)とした場合、(A×B+C×D)/(B+D)が50以下である、(I)に記載の護岸用ブロックマット。
(III) 河川の水流に対して法面を保護するために使用される護岸用ブロックマットであって、マットと、前記マットの表面に配列された複数のブロックとを備え、前記複数のブロックのうち前記水流の最上流側に設けられるブロック(1)は、側面視において下流側よりも上流側のほうが底面に向かって緩やかに先細りとなっており、前記ブロック(1)が、平らな底面(1e)と、上流側の端面(1d)と、下流側の端面(1b)と、前記端面(1d)の上端から前記端面(1b)に向かって伸びる傾斜面(1a)と、を備え、前記端面(1d)の高さをD(mm)、前記端面(1b)の高さをB+D(mm)、前記端面(1d)と前記底面(1e)とのなす角度をC(°)、前記傾斜面(1a)と前記底面(1e)とのなす角度をA(°)とした場合、(A×B+C×D)/(B+D)が50以下である、護岸用ブロックマット。
(IV) 前記底面(1e)の上流側先端から下流側先端までの長さをE(mm)とした場合、E/(B+D)が2.5以上である、(II)又は(III)に記載の護岸用ブロックマット。
(V) 前記端面(1d)の幅をF(mm)とした場合、Fが100mm以上500mm以下である、(II)~(IV)のいずれかに記載の護岸用ブロックマット。
(VI) Bが15mm以上200mm以下である、(II)~(V)のいずれかに記載の護岸用ブロックマット。
(VII) Dが10mm以上100mm以下である、(II)~(VI)のいずれかに記載の護岸用ブロックマット。
(VIII)前記底面(1e)の上流側先端から下流側先端までの長さをE(mm)とした場合、Eが190mm以上1000mm以下である、(II)~(VII)のいずれかに記載の護岸用ブロックマット。
(IX) Cが60°以上90°以下である、(II)~(VIII)のいずれかに記載の護岸用ブロックマット。
(X) Aが5°以上45°以下である、(II)~(IX)のいずれかに記載の護岸用ブロックマット。
(XI) 河川の越流に対して堤内地側法面を保護するために使用される護岸用ブロックであって、側面視において前記越流の下流側よりも上流側のほうが底面に向かって緩やかに先細りとなっている、護岸用ブロック。
(XII) 平らな底面(1e)と、上流側の端面(1d)と、下流側の端面(1b)と、前記端面(1d)の上端から前記端面(1b)に向かって伸びる傾斜面(1a)と、を備え、前記端面(1d)の高さをD(mm)、前記端面(1b)の高さをB+D(mm)、前記端面(1d)と前記底面(1e)とのなす角度をC(°)、
前記傾斜面(1a)と前記底面(1e)とのなす角度をA(°)とした場合、(A×B+C×D)/(B+D)が50以下である、(XI)に記載の護岸用ブロック。
(XIII) 河川の水流に対して法面を保護するために使用される護岸用ブロックであって、側面視において前記水流の下流側よりも上流側のほうが底面に向かって緩やかに先細りとなっており、平らな底面(1e)と、上流側の端面(1d)と、下流側の端面(1b)と、前記端面(1d)の上端から前記端面(1b)に向かって伸びる傾斜面(1a)と、を備え、前記端面(1d)の高さをD(mm)、前記端面(1b)の高さをB+D(mm)、前記端面(1d)と前記底面(1e)とのなす角度をC(°)、
前記傾斜面(1a)と前記底面(1e)とのなす角度をA(°)とした場合、(A×B+C×D)/(B+D)が50以下である、護岸用ブロック。
(XIV) (I)若しくは(II)に記載の護岸用ブロックマット又は(XI)若しくは(XII)に記載の護岸用ブロックが、河川の堤内地側法面に敷設されてなる、護岸構造。
(XV) (III)に記載の護岸用ブロックマット又は(XIII)に記載の護岸用ブロックが、河川の法面に敷設されてなる、護岸構造。
「堤内地側」とは市街地側(川裏側)を意味し、「堤外地側」とは河川側(川表側)を意味する。
「マットの表面に配列された複数のブロック」とは、規則的に配列された複数のブロックであっても、ランダムに配列された複数のブロックであってもよい。
「越流に対して最上流側に設けられるブロック(1)」とは、ブロックマットを堤内地側法面に設置した場合において、当該ブロックマットの上方最前列(法肩側)に固定されているブロックをいう。言い換えれば、護岸用ブロックマットにおいて、ブロック(1)よりも上流側にブロック(1)以外のブロックは存在しない。
「側面視において下流側よりも上流側のほうが底面に向かって緩やかに先細りとなっている」とは、ブロック(1)の側面形状(シルエット)において、下流側の先細り構造よりも、上流側の先細り構造の方が緩やかであることをいう。
具体的には、図1(A)に示すように、ブロック(1)の側面形状(シルエット)において、最上流側の下端(P1)から一点破線で示される最上部(P3)に至るまでの長さ(P1からP2までの長さとP2からP3までの長さとの合計)の方が、最下流側の下端(P4)から一点破線で示される最上部(P5)にいたるまでの長さよりも長い。
尚、図1(B)に示すように、下流側に先細り構造が無い場合(下流側の端部角度が直角である場合)は、上流側に底面に向かう先細り構造を有するだけで、自ずと、下流側よりも上流側のほうが底面に向かって緩やかに先細りとなる。ブロック(1)はこのような形態も含むものとする。
また、図1(C)に示すように、ブロック(1)は、上流側の先細り構造が直角を含むものであってもよい。
或いは、図1(D)に示すように、ブロック(1)の上流側の先細り構造は、必ずしも直線状である必要はなく、曲線状であってもよい。
一方で、上記解決課題及び後述の効果等から自明ではあるが、図1(E)に示すように、ブロック(1)の側面形状(シルエット)において、上流側先端が「上面に向かって先細りとなっている」形態は、本開示のブロック(1)とはなり得ない。
尚、図1(F)に示すように、ブロック(1)の側面形状(シルエット)において、下流側先端が「上面に向かって先細りとなっている」形態は、一定の効果が期待できることから、本開示のブロック(1)に含まれるものとする。
「水流」とは、上記した堤内地側法面への越流であってもよいし、堤外地側法面における河川の水の流れであってもよい。
「自重モーメント」とは、ブロックが受ける重力(N)と、ブロック後端(下流側の端)からブロック重心までの水平距離(m)との積をいう。
本開示の護岸用ブロック(ブロック(1))は、水流の上流側が下流側よりも緩やかに先細りとなっている。これにより、水流から受ける揚力及び抗力が小さくなり、ブロックがめくれ難くなる。護岸用ブロックマットを構成する場合は、このようなブロック(1)を水流に対して最上流側となる位置に配置することで、マットのめくれを抑制することもできる。これら護岸用ブロックや護岸用ブロックマットを用いて護岸構造を構成することで、法面を水流から適切に保護することができる。
護岸用ブロック(ブロック(1))の側面形状を説明するための概略図である。 護岸用ブロックマット10の構成を説明するための概略図である。 護岸用ブロックマット10’の構成を説明するための概略図である。 護岸用ブロック(ブロック(1))の全体形状を説明するための概略図である。 自重モーメントについて説明するための概略図である。 護岸構造100を説明するための概略図である。 護岸構造100による効果を説明するための概略図である。 実施例及び比較例に係る護岸用ブロック(ブロック(1))の側面形状を説明するための概略図である。 流体力モーメントについて説明するための概略図である。
1.護岸用ブロックマット(第1実施形態)
図2に第1実施形態に係る護岸用ブロックマット10の構成を概略的に示す。護岸用ブロックマット10は、河川の越流に対して堤内地側法面を保護するために使用される護岸用ブロックマットであって、マット5と、マット5の表面に配列された複数のブロックとを備え、複数のブロックのうち越流の最上流側に設けられるブロック1は、側面視において下流側よりも上流側のほうが底面に向かって緩やかに先細りとなっている。
1.1.マット
護岸用ブロックマット10に用いられるマット5そのものは公知である。例えば、マット5の材質としては、PET、PP、PE等から選ばれる1種以上を採用することができる。また、マット5の形状としては、護岸用ブロックマット10の大きさに応じて適宜決定すればよい。例えば、幅630mm以上2000mm以下、長さ1000mm以上9000mm以下、厚み2mm以上10mm以下とすることが好ましい。マット5の具体例としては、三菱ケミカルインフラテック社製のゴビマットのような各種マットを採用できる。
1.2.ブロック
護岸用ブロックマット10には、複数のブロックが規則的に配列されている。ただし、本開示の護岸用ブロックマットにおいて、複数のブロックは規則的に配列されていても、ランダムに配列されていてもよい。護岸用ブロックマットにおける複数のブロックの配列そのものは公知である。護岸用ブロックマットにおけるブロックの数も特に限定されない。マット5の大きさ等に応じて適切な数を決定すればよい。複数のブロックは、通常マット5の表面に固定されている。
護岸用ブロックマット10において、複数のブロックは、越流に対して最上流側(法肩側)に設けられるブロック1と、当該ブロック1よりも下流側に設けられるブロック2とに大別される。図3に示す護岸用ブロック10’のように、マット5におけるブロック1、1、1、1の上流側端部の位置が各々バラバラであってもよい。護岸用ブロックマット10は、これら複数のブロックのうち特にブロック1の形状に特徴を有する。すなわち、ブロック1は、側面視において下流側よりも上流側のほうが底面に向かって緩やかに先細りとなっている。
図4にブロック1の形状の一例を示す。図4(A)及び(C)が斜視概略図、図4(B)及び(D)が側面概略図である。図4に示すように、ブロック1は側面形状(シルエット)において、下流側の先細り構造1yよりも、上流側の先細り構造1xの方が緩やかである。
図4に示すように、ブロック1は、平らな底面1eと、上流側の端面1dと、下流側の端面1bと、端面1dの上端から端面1bに向かって伸びる傾斜面1aと、を備えることが好ましい。ここで、端面1dの高さをD(mm)、端面1bの高さをB+D(mm)、端面1dと前記底面1eとのなす角度をC(°)、傾斜面1aと底面1eとのなす角度をA(°)とした場合、(A×B+C×D)/(B+D)が50以下であることが好ましい。(A×B+C×D)/(B+D)は、ブロック1の流れ正面方向の面と設置面とのなす角度を、流れ方向のブロック1の投影面積で荷重平均したものともいえる。(A×B+C×D)/(B+D)が50以下であることにより、流体から受ける揚力及び抗力が一層小さくなり、越流に対してブロック1が一層めくれ難くなる。(A×B+C×D)/(B+D)は、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下、特に好ましくは37以下である。
角度A(°)、角度C(°)がそれぞれ同じと仮定した場合、ブロック1は、自重モーメント(重量×重心距離)が大きいことが好ましい。「自重モーメント(重量×重心距離)」とは、ブロック重量と、ブロック後端(下流側の端、ブロックがめくれる場合に支点となり得る部分)からブロック重心までの水平距離との積をいう。図5に示すように、ブロック1の自重モーメントが大きいほど、越流に対抗することができ、ブロック1がめくれ難くなる。
図4に示すように、ブロック1において、底面1eの上流側先端から下流側先端までの長さをE(mm)とした場合、E/(B+D)が2.5以上であることが好ましい。これにより、流体から受ける揚力及び抗力が一層小さくなり、越流に対してブロック1が一層めくれ難くなる。E/(B+D)はより好ましくは3以上、特に好ましくは3.5以上である。
図4に示すように、ブロック1において、端面1dの幅をF(mm)とした場合、Fが100mm以上600mm以下であることが好ましい。これにより、流体から受ける揚力及び抗力が一層小さくなり、越流に対してブロック1が一層めくれ難くなる。Fは下限がより好ましくは200mm以上、さらに好ましくは250mm以上、特に好ましくは300mm以上であり、上限がより好ましくは500mm以下、さらに好ましくは450mm以下、特に好ましくは400mm以下である。
尚、ブロック1は、端面1dから端面1bにかけて、全体として略同じ幅を有していることが好ましい。
ブロック1は、上記のBが15mm以上200mm以下であることが好ましい。これにより、流体から受ける揚力及び抗力が一層小さくなり、越流に対してブロック1が一層めくれ難くなる。Bは下限がより好ましくは35mm以上、さらに好ましくは50mm以上、特に好ましくは70mm以上であり、上限がより好ましくは150mm以下、特に好ましくは100mm以下である。
ブロック1は、上記のDが10mm以上100mm以下であることが好ましい。これにより、流体から受ける揚力及び抗力が一層小さくなり、越流に対してブロック1が一層めくれ難くなる。Dは下限がより好ましくは15mm以上、特に好ましくは20mm以上であり、上限がより好ましくは75mm以下、特に好ましくは50mm以下である。
ブロック1は、上記のEが190mm以上1000mm以下であることが好ましい。これにより、流体から受ける揚力及び抗力が一層小さくなり、越流に対してブロック1が一層めくれ難くなる。Eは下限がより好ましくは290mm以上、さらに好ましくは340mm以上、特に好ましくは390mm以上であり、上限がより好ましくは800mm以下、特に好ましくは600mm以下である。
ブロック1は、上記のCが60°以上90°以下であることが好ましい。これにより、流体から受ける揚力及び抗力が一層小さくなり、越流に対してブロック1が一層めくれ難くなる。Cは下限がより好ましくは65°以上、特に好ましくは70°以上であり、上限がより好ましくは88°以下、特に好ましくは86°以下である。
ブロック1は、上記のAが5°以上45°以下であることが好ましい。これにより、流体から受ける揚力及び抗力が一層小さくなり、越流に対してブロック1が一層めくれ難くなる。Aは下限がより好ましくは7°以上、特に好ましくは10°以上であり、上限がより好ましくは40°以下、特に好ましくは35°以下である。
ただし、ブロック1の上流側の先細り構造1xは、直角を含む階段構造であってもよい(図1(C)参照)し、曲線によって構成されるものであってもよい(図1(D)参照)。これらの場合でも一定の効果が得られ、上記課題を解決可能である。ただし、より一層顕著な効果を確保する観点からは、図4に示すように、ブロック1の上流側の先細り構造1xは、側面形状(シルエット)において、直角を含まず、底面1eに向かって先細りとなるように2以上の直線によって構成されることが好ましい。また、この2以上の直線の接合部となるエッジ部には、ブロックのかけ防止やブロックの成形上の観点から、Rが施されていてもよい。
ブロック1の下流側の先細り構造1yについては、上流側の先細り構造1xよりも急峻であればよく、特に限定されるものではない。また、ブロック1は下流側に先細り構造を有していなくてもよい。すなわち、下流側上端及び下端が側面形状において直角となっていてもよい(図1(B)参照)。
図4に示すブロック1は、端面1dを有する。ただし、上記課題を解決する観点からは、ブロック1においては必ずしも端面1dは必要ではない。すなわち、傾斜面1aの上流側の先端がブロック1の上流側の下端(底面1e)と一致していてもよい。しかしながら、ブロック1に十分な耐久性を確保する観点、砂礫や流木等の流下物がブロック先端に衝突した場合に耐衝撃性を確保する観点、ブロックのかけ防止の観点等からは、ブロック1は端面1dを有することが好ましい。
図4に示すブロック1は、上面が、傾斜面1aと水平面1cとからなっている。水平面1cは底面1eと略平行な面である。ただし、上記課題を解決する観点からは、ブロック1においては必ずしも水平面1cは必要ではない。すなわち、ブロック1の上面は、端面1dと傾斜面1aとからなるものであってもよいし、傾斜面1aのみからなるものであってもよいが、ブロック1は上面に水平面1cを有することが好ましい。
上記の形状を有するブロック1の材質は特に限定されるものではない。護岸用ブロックとして公知の材質を採用すればよい。例えば、コンクリート、モルタル、ポリマーセメントモルタル、石材等を採用可能である。ブロック1の重量は特に限定されるものではない。例えば、5kg以上360kg以下とすることができる。
ブロック2について、その形状等は特に限定されるものではない。護岸用ブロックマット10においては、ブロック1によって十分なめくれ対策が講じられていることから、ブロック2の形状等は比較的自由に設計可能である。ブロック2については公知の護岸用ブロックをいずれも採用可能である。例えば、三菱ケミカルインフラテック社製のゴビマットに使用されているような各種コンクリートブロックを採用できる。本願を参照した当業者にとって自明であることから、ここでは詳細な説明を省略する。
以上の通り、第1実施形態に係る護岸用ブロックマット10は、河川の越流に対してめくれ難く、堤内地側法面を適切に保護することができる。
2.護岸用ブロックマット(第2実施形態)
上記では、河川の越流時に堤内地側法面を保護するための護岸用ブロックマット10について説明した。しかしながら、護岸用ブロックマットの用途は上記に限定されるものではない。例えば、護岸用ブロックマット10を河川の水流に対して法面(堤外地側法面であっても堤内地側法面であってもよい)を保護するために使用することもできる。
すなわち、第2実施形態に係る護岸用ブロックマットは、河川の水流に対して法面を保護するために使用される護岸用ブロックマットであって、マットと、前記マットの表面に配列された複数のブロックとを備え、前記複数のブロックのうち水流の最上流側に設けられるブロック(1)は、側面視において下流側よりも上流側のほうが底面に向かって緩やかに先細りとなっており、前記ブロック(1)が、平らな底面(1e)と、上流側の端面(1d)と、下流側の端面(1b)と、前記端面(1d)の上端から前記端面(1b)に向かって伸びる傾斜面(1a)と、を備え、前記端面(1d)の高さをD(mm)、前記端面(1b)の高さをB+D(mm)、前記端面(1d)と前記底面(1e)とのなす角度をC(°)、前記傾斜面(1a)と前記底面(1e)とのなす角度をA(°)とした場合、(A×B+C×D)/(B+D)が50以下である、護岸用ブロックマットである。
第2実施形態に係る護岸用ブロックマットは、第1実施形態に係る護岸用ブロックマット10とは、その用途が異なるのみで、その形状自体は護岸用ブロックマット10と同様とすればよい。好ましい形態についても、護岸用ブロックマット10と同様である。ここでは詳細な説明を省略する。
以上の通り、第2実施形態に係る護岸用ブロックマットは、河川の水流に対してめくれ難く、法面を適切に保護することができる。
3.護岸用ブロック
上記の通り、ブロック1はその形状を工夫することでめくれ対策が講じられる。このようなブロック1は、それ単独で護岸用ブロックとして使用することも可能である。すなわち、第1実施形態に係る護岸用ブロック1は、河川の越流に対して堤内地側法面を保護するために使用される護岸用ブロックであって、側面視において越流の下流側よりも上流側のほうが底面に向かって緩やかに先細りとなっている、護岸用ブロックである。
第1実施形態に係る護岸用ブロック1の好ましい形態は上記の通りである。例えば、護岸用ブロック1は、平らな底面1eと、上流側の端面1dと、下流側の端面1bと、端面1dの上端から端面1bに向かって伸びる傾斜面1aと、を備えることが好ましい。ここで、端面1dの高さをD(mm)、端面1bの高さをB+D(mm)、端面1dと底面1eとのなす角度をC(°)、傾斜面1aと底面1eとのなす角度をA(°)とした場合、(A×B+C×D)/(B+D)が50以下であることが好ましい。
護岸用ブロック1は、河川の越流だけでなく、河川の水流全般に対して法面を保護するために使用することができる。すなわち、第2実施形態に係る護岸用ブロック1は、河川の水流に対して法面を保護するために使用される護岸用ブロックであって、側面視において前記水流の下流側よりも上流側のほうが底面に向かって緩やかに先細りとなっており、平らな底面1eと、上流側の端面1dと、下流側の端面1bと、端面1dの上端から端面1bに向かって伸びる傾斜面1aと、を備え、端面1dの高さをD(mm)、端面1bの高さをB+D(mm)、端面1dと底面1eとのなす角度をC(°)、傾斜面1aと底面1eとのなす角度をA(°)とした場合、(A×B+C×D)/(B+D)が50以下である、護岸用ブロックである。
第2実施形態に係る護岸用ブロックについても、好ましい形態は上記の通りであり、ここでは詳細な説明を省略する。
4.護岸構造(第1実施形態)
上記の通り、第1実施形態に係る護岸用ブロックマット10(又は護岸用ブロック1)は、河川の越流に対して堤内地側法面を保護するために使用することができる。この場合、河川の堤内地側法面の全面に護岸用ブロックマット10(又は護岸用ブロック1)を敷設してもよいし、コスト面等を考慮して、堤内地側法面の一部に護岸用ブロックマット10(或いは、護岸用ブロック1)を敷設してもよい。
図6に第1実施形態に係る護岸構造100を示す。図6に示すように、護岸構造100においては、護岸用ブロックマット10(又は護岸用ブロック1)が河川の堤内地側法面に敷設されてなる。図6に示すように、護岸用ブロックマット10は、平地から法尻を跨いで堤内地側法面の中腹まで敷設されており、越流に対して上流側にブロック1が配置されるように敷設されている。このように、護岸用ブロックマット10が法尻を跨いで敷設されることで、越流時の法面の侵食をより適切に抑制できる。
図7(A)に示すように、従来の護岸構造では、河川の越流の際、ブロック2の小口に越流が衝突し、乱流が発生して法面上部の侵食が進行し、ブロック2のめくれが発生し易くなっていた。これに対し、図7(B)に示すように、護岸構造100においては、ブロック1の先細り構造1xによって、小口への越流の衝突が低減され、法面上部の侵食も抑制できることから、護岸用ブロック1及び護岸用ブロックマット10が越流に対してめくれ難い。そのため、越流に対して堤内地側法面を適切に保護することができる。
5.護岸構造(第2実施形態)
上記の通り、第2実施形態に係る護岸用ブロックマット(又は護岸用ブロック1)は、河川の水流に対して法面を保護するために使用することができる。例えば、河川の通常時の水流に対して、堤外地側法面を保護するために使用することができる。この場合、河川の法面の全面に第2実施形態に係る護岸用ブロックマット(又は護岸用ブロック1)を敷設してもよいし、コスト面等を考慮して、法面の一部に護岸用ブロックマット(或いは、護岸用ブロック1)を敷設してもよい。第2実施形態に係る護岸構造の形態は上記の説明から自明であることから、ここでは図示を省略する。
このように、第2実施形態に係る護岸用ブロックマット(又は護岸用ブロック1)が河川の法面に敷設されてなる護岸構造によっても、水流に対して護岸用ブロックマット(或いは護岸用ブロック1)がめくれ難いことから、水流に対して法面を適切に保護することができる。
図8及び下記表1に示されるような形状を有するブロック(比較例1及び実施例1~5)について、水流に対するめくれ難さを評価した。
1.評価方法
1.1.自重モーメント
ブロックが受ける重力(N)と、ブロック後端(下流側の端)からブロック重心までの水平距離(重心距離)(m)との積(Nm)を自重モーメント(図5参照)として算出した。
1.2.流体力モーメント
流体解析ソフト(Flow-3D、Flow Science Japan社製)を用いて、図9に示すような流体力モーメントを算出した。具体的には、開水路の底面にブロックを配置した場合に、流体から受ける抗力及び揚力から、揚力係数及び抗力係数を算出した。また、抗力、揚力及び回転モーメントから、流体合力の回転半径を算出して、それと抗力と揚力との大きさの比から、抗力回転半径及び揚力回転半径を算出した。このようにして算出した、抗力係数、揚力係数、抗力回転半径及び揚力回転半径から、流体力モーメントを任意の流速に対して算出した。
1.3.安定方向モーメント
めくれに抗する自重モーメントから、流体力モーメントを差し引いたものを、安定方向モーメントとした。自重モーメントは流速によらないが、流体力モーメントは流速の増大に伴い大きくなる。したがって、流速を増大させると、安定方向モーメントは漸減してゼロになる。この安定方向モーメントがゼロになるときの流速を、めくれが発生する流速とみなして評価を行った。
1.4.指標
1:2勾配の堤防の堤内地側法面に、ブロックを設置することを想定したときの、めくれが発生すると予想される越流の流速(めくれる流速)を求めた。従来のブロック(比較例1)のめくれる速度を1(基準)として、めくれる流速比率が2倍以上である場合を「○」、1.5倍以上2倍未満である場合を「△」として、めくれ難さを評価した。
2.評価結果
結果を下記表1に示す。
表1に示す結果から明らかなように、従来のブロックである比較例1に対して、上流側の先細り構造を緩やかにすることで、めくれる流速が増加することが分かる。
特に(A×B+C×D)/(B+D)が50以下である場合に、めくれる流速比率を1.5倍以上と極めて大きくすることができる。(A×B+C×D)/(B+D)はより好ましくは45以下である。
本開示のブロックやブロックマットは、河川の法面を保護するための護岸構造に利用できる。
1 ブロック(本開示の護岸用ブロック)
2 ブロック
5 マット
10 護岸用ブロックマット
100 護岸構造

Claims (7)

  1. 河川の水流に対して法面を保護するために使用される護岸用ブロックマットであって、
    マットと、前記マットの表面に配列された複数のブロックとを備え、
    前記複数のブロックのうち前記水流の最上流側に設けられるブロック(1)は、側面視に
    おいて下流側よりも上流側のほうが底面に向かって緩やかに先細りとなっており、
    前記ブロック(1)が、平らな底面(1e)と、上流側の端面(1d)と、下流側の端面
    (1b)と、前記端面(1d)の上端から前記端面(1b)に向かって伸びる傾斜面(1
    a)と、を備え、
    前記端面(1d)の高さをD(mm)、
    前記端面(1b)の高さをB+D(mm)、
    前記端面(1d)と前記底面(1e)とのなす角度をC(°)、
    前記傾斜面(1a)と前記底面(1e)とのなす角度をA(°)とした場合、
    (A×B+C×D)/(B+D)が50以下であり、
    前記底面(1e)の上流側先端から下流側先端までの長さをE(mm)とした場合、E/
    (B+D)が2.5以上であ
    前記Cが60°以上86°以下である、
    護岸用ブロックマット。
  2. 前記端面(1d)の幅をF(mm)とした場合、Fが100mm以上600mm以下であ
    る、
    請求項1に記載の護岸用ブロックマット。
  3. Bが15mm以上200mm以下である、
    請求項1または2に記載の護岸用ブロックマット。
  4. Dが10mm以上100mm以下である、
    請求項1~3のいずれか1項に記載の護岸用ブロックマット。
  5. 前記底面(1e)の上流側先端から下流側先端までの長さをE(mm)とした場合、Eが
    190mm以上1000mm以下である、
    請求項1~4のいずれか1項に記載の護岸用ブロックマット。
  6. Aが5°以上45°以下である、
    請求項1~のいずれか1項に記載の護岸用ブロックマット。
  7. 請求項1~のいずれか1項に記載の護岸用ブロックマットが、河川の法面に敷設されて
    なる、護岸構造。
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