以下、本発明の発光性ナノ結晶を含むインク組成物、その製造方法および発光素子について、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の発光性ナノ結晶を含むナノ粒子の製造方法の一実施形態を示す断面図である。中空粒子として中空シリカ粒子を用いた場合の製造例を示す。なお、図1では、下段のナノ結晶原料付与以降の中空粒子912において、細孔912bの記載を省略する。また、図2及び図3は、ナノ粒子の他の構成例を示す断面図である。
1.発光性ナノ結晶を含むインク組成物
本発明の実施形態の発光性ナノ結晶を含むインク組成物は、光重合性化合物と、光散乱性粒子と、光重合性化合物と、光重合開始剤と、反応性シリコーン化合物と、を含有する。一実施形態の発光性ナノ結晶を含むインク組成物は、後述するように、有機ELを用いた発光表示素子の光変換層をインクジェット方式で形成する用途に好適に用いることができる。該インク組成物は、比較的高額である発光性ナノ結晶を含むナノ粒子、光重合性化合物等の材料を無駄に消費せずに、必要な箇所に必要な量を用いるだけで画素部(光変換層)を形成できる点で、フォトリソグラフィ方式よりも、インクジェット方式に適合するよう、適切に調製して用いることが好ましい。
一般に、インク組成物は、含有させる添加剤によっては、インク組成物の表面張力が低下せずに、インクジェットヘッドのノズル部から正常にインクが吐出できなくなってしまう場合がある。これに対して、本発明のインク組成物は、反応性シリコーン化合物を含むことにより、インク吐出異常を起こしにくく、優れた吐出安定性を備える。また、本発明のインク組成物により得られる光変換層によれば、優れた外部量子効率が得られる。
以下では、光変換層を構成するカラーフィルタ画素部形成用のインクジェットインク組成物を例に挙げて、本実施形態の発光性ナノ結晶を含むナノ粒子含有インク組成物及びその構成成分について説明する。構成成分としては、発光性ナノ結晶を含むナノ粒子、光散乱性粒子、光重合性化合物、光重合開始剤及び反応性シリコーン化合物の他に、酸化防止剤、高分子分散剤等が挙げられる。
1-1.発光性ナノ結晶を含むナノ粒子
1-1-1.中空粒子内包発光粒子
本発明における発光性ナノ結晶を含むナノ粒子は、発光性ナノ結晶からなる粒子そのものであってもよいが、発光性ナノ結晶を酸素、熱、水分等から保護するための構造を備えることが好ましい。ここでは、中空粒子に発光性ナノ結晶を内包した粒子について説明する。
例えば図1に示す発光粒子91は、中空部912aと中空部912aに連通する細孔912bとを有する中空粒子912と、中空部912aに収容され、発光性を有するメタルハライドからなる半導体ナノ結晶911(以下、単に「ナノ結晶911」ということもある。)と、を備える(以下、「中空粒子内包発光粒子91」ということもある。)。かかる発光粒子91は、例えば、中空粒子912の中空部912aにナノ結晶911を析出させることにより得ることができる。発光粒子91は、ナノ結晶911が中空粒子912により保護されるため、熱や酸素に対する優れた安定性を得ることができ、その結果、優れた発光特性を得ることができる。
発光粒子91は、その表面を疎水ポリマーからなるポリマー層92を備えた発光粒子90(以下、「ポリマー被覆発光粒子」と記載することがある。)であることがより好ましい。ポリマー被覆発光粒子90は、ポリマー層92を備えることにより、熱、酸素に対する安定性をさらに向上させると共に、優れた粒子分散性を得ることができるため、光変換層とした際により優れた発光特性を得ることができる。
<ナノ結晶911>
ナノ結晶911は、II-VI族化合物、III-V族化合物、IV-VI族化合物、IV族化合物、これら2種以上からなる複合体や、メタルハライド化合物等からなり、励起光を吸収して蛍光または燐光を発光するナノサイズの結晶体(ナノ結晶粒子)である。適正な粒子サイズに比較的容易に調整可能であることから、ナノ結晶911はメタルハライドからなる発光性ナノ結晶であることが好ましい。
メタルハライドからなる発光性ナノ結晶としては、例えば、後述するペロブスカイト型結晶構造を有する量子ドットが好ましい。かかるナノ結晶911は、例えば、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡によって測定される最大粒子径が100nm以下である結晶体である。ナノ結晶911は、例えば、所定の波長の光エネルギーや電気エネルギーにより励起され、蛍光または燐光を発することができる。
メタルハライドからなるナノ結晶911は、一般式:AaMbXcで表される化合物である。
式中、Aは、有機カチオンおよび金属カチオンのうちの少なくとも1種である。有機カチオンとしては、アンモニウム、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、プロトン化チオウレア等が挙げられ、金属カチオンとしては、Cs、Rb、K、Na、Li等のカチオンが挙げられる。
Mは、少なくとも1種の金属カチオンである。金属カチオンとしては、1族、2族、3族、4族、5族、6族、7族、8族、9族、10族、11族、13族、14族、15族から選ばれる金属カチオンが挙げられる。より好ましくは、Ag、Au、Bi、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Eu、Fe、Ga、Ge、Hf、In、Ir、Mg、Mn、Mo、Na、Nb、Nd、Ni、Os、Pb、Pd、Pt、Re、Rh、Ru、Sb、Sc、Sm、Sn、Sr、Ta、Te、Ti、V、W、Zn、Zr等のカチオンが挙げられる。
Xは、少なくとも1種のアニオンである。アニオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、シアン化物イオン等が挙げられる、少なくとも1種のハロゲンを含む。
aは、1~7であり、bは、1~4であり、cは、3~16の整数である。
一般式AaMbXcで表される化合物は、具体的にはAMX、A4MX、AMX2、AMX3、A2MX3、AM2X3、A2MX4、A2MX5、A3MX5、A3M2X5、A3MX6、A4MX6、AM2X6、A2MX6、A4M2X6、A3MX8、A3M2X9、A3M3X9、A2M2X10、A7M3X16で表される化合物が好ましい。
式中、Aは、有機カチオンおよび金属カチオンのうちの少なくとも1種である。有機カチオンとしては、アンモニウム、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、プロトン化チオウレア等が挙げられ、金属カチオンとしては、Cs、Rb、K、Na、Li等のカチオンが挙げられる。
式中、Mは、少なくとも1種の金属カチオンである。具体的には、1種の金属カチオン(M1)、2種の金属カチオン(M1
αM2
β)、3種の金属カチオン(M1
αM2
βM3
γ)、4種の金属カチオン(M1
αM2
βM3
γM4
δ)などが挙げられる。ただし、α、β、γ、δは、それぞれ0~1の実数を表し、かつα+β+γ+δ=1を表す。金属カチオンとしては、1族、2族、3族、4族、5族、6族、7族、8族、9族、10族、11族、13族、14族、15族から選ばれる金属カチオンが挙げられる。より好ましくは、Ag、Au、Bi、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Eu、Fe、Ga、Ge、Hf、In、Ir、Mg、Mn、Mo、Na、Nb、Nd、Ni、Os、Pb、Pd、Pt、Re、Rh、Ru、Sb、Sc、Sm、Sn、Sr、Ta、Te、Ti、V、W、Zn、Zr等のカチオンが挙げられる。
式中、Xは、少なくとも1種のハロゲンを含むアニオンである。具体的には、1種のハロゲンアニオン(X1)、2種のハロゲンアニオン(X1
αX2
β)などが挙げられる。アニオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、シアン化物イオン等が挙げられ、少なくとも1種のハロゲンを含む。
上記一般式AaMbXcで表されるメタルハライドからなる化合物は、発光特性をよくするために、上記Mサイトに用いた金属カチオンとは異なる、Bi、Mn、Ca、Eu、Sb、Ybなどの金属イオンが添加(ドープ)されたものであってもよい。
上記一般式AaMbXcで表されるメタルハライドからなる化合物の中で、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は、Mサイトを構成する金属カチオンの種類および存在割合を調整し、さらにXサイトを構成するアニオンの種類および存在割合を調整することにより、発光波長(発光色)を制御することができる点で、発光性ナノ結晶として利用する上で特に好ましい。具体的には、AMX3、A3MX5、A3MX6、A4MX6、A2MX6で表される化合物が好ましい。式中のA、M及びXは上記のとおりである。また、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は、上述のように、上記Mサイトに用いた金属カチオンとは異なる、Bi、Mn、Ca、Eu、Sb、Ybなどの金属イオンが添加(ドープ)されたものであってもよい。
ペロブスカイト型の半導体ナノ結晶は、その粒子サイズの他、ハロゲン原子の存在割合の調整により発光波長を制御することができる。この調整操作は簡便に行えるので、ペロブスカイト型の半導体ナノ結晶は、従来のコアシェル型の半導体ナノ結晶と比較して、発光波長の制御がより容易であり、よって生産性が高いという特徴を有している。
ペロブスカイト型結晶構造を示す化合物の中でも、さらに良好な発光特性を示すために、AはCs、Rb、K、Na、Liであり、Mは1種の金属カチオン(M1)、または2種の金属カチオン(M1
αM2
β)であり、Xは塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンであることが好ましい。但し、αとβはそれぞれ0~1の実数を表し、α+β=1を表す。具体的には、Mは、Ag、Au、Bi、Cu、Eu、Fe、Ge、K、In、Na、Mn、Pb、Pd、Sb、Si、Sn、Yb、Zn、Zrから選ばれることが好ましい。
ペロブスカイト型結晶構造を示すメタルハライドからなる発光性ナノ結晶粒子の具体的な組成として、CsPbBr3、CH3NH3PbBr3、CHN2H4PbBr3等のMとしてPbを用いたナノ結晶粒子は、光強度に優れると共に量子効率に優れることから、好ましい。また、CsSnBr3、CsEuBr3、CsYbI3等のMとしてPb以外の金属カチオンを用いた発光性ナノ結晶粒子は、低毒性であって環境への影響が少ないことから、好ましい。
ナノ結晶911として、605~665nmの波長範囲に発光ピークを有する光(赤色光)を発する赤色発光性の結晶、500~560nmの波長範囲に発光ピークを有する光(緑色光)を発する緑色発光性の結晶、及び、420~480nmの波長範囲に発光ピークを有する光(青色光)を発する青色発光性の結晶を選択して用いることができる。また、一実施形態において、これらのナノ結晶を複数組み合わせて用いてもよい。
なお、ナノ結晶911の発光ピークの波長は、例えば、絶対PL量子収率測定装置を用いて測定される蛍光スペクトルまたは燐光スペクトルにおいて確認することができる。
赤色発光性のナノ結晶911は、665nm以下、663nm以下、660nm以下、658nm以下、655nm以下、653nm以下、651nm以下、650nm以下、647nm以下、645nm以下、643nm以下、640nm以下、637nm以下、635nm以下、632nm以下または630nm以下の波長範囲に発光ピークを有することが好ましく、628nm以上、625nm以上、623nm以上、620nm以上、615nm以上、610nm以上、607nm以上または605nm以上の波長範囲に発光ピークを有することが好ましい。
これらの上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。なお、以下の同様の記載においても、個別に記載した上限値および下限値は任意に組み合わせ可能である。
緑色発光性のナノ結晶911は、560nm以下、557nm以下、555nm以下、550nm以下、547nm以下、545nm以下、543nm以下、540nm以下、537nm以下、535nm以下、532nm以下または530nm以下の波長範囲に発光ピークを有することが好ましく、528nm以上、525nm以上、523nm以上、520nm以上、515nm以上、510nm以上、507nm以上、505nm以上、503nm以上または500nm以上の波長範囲に発光ピークを有することが好ましい。
青色発光性のナノ結晶911は、480nm以下、477nm以下、475nm以下、470nm以下、467nm以下、465nm以下、463nm以下、460nm以下、457nm以下、455nm以下、452nm以下または450nm以下の波長範囲に発光ピークを有することが好ましく、450nm以上、445nm以上、440nm以上、435nm以上、430nm以上、428nm以上、425nm以上、422nm以上または420nm以上の波長範囲に発光ピークを有することが好ましい。
ナノ結晶911の形状は、特に限定されず、任意の幾何学的形状であってもよく、任意の不規則な形状であってもよい。ナノ結晶911の形状としては、例えば、直方体状、立方体状、球状、正四面体状、楕円体状、角錐形状、ディスク状、枝状、網状、ロッド状等が挙げられる。なお、ナノ結晶911の形状としては、直方体状、立方体状または球状が好ましい。
ナノ結晶911の平均粒子径(体積平均径)は、40nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることがさらに好ましい。また、ナノ結晶911の平均粒子径は、1nm以上であることが好ましく、1.5nm以上であることがより好ましく、2nm以上であることがさらに好ましい。かかる平均粒子径を有するナノ結晶911は、所望の波長の光を発し易いことから好ましい。なお、ナノ結晶911の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡により測定し、体積平均径を算出することにより得られる。
<中空粒子912>
中空粒子912は、内部にナノ結晶911を収容可能な空間である中空部912aと、中空部912aに連通する細孔912bとを備えたものであればよく、全体の形状として、直方体状、立方体状、球状(略真球状)、細長い球状(楕円球状)、ハニカム形状(断面が六角形であって両端が開口した筒を隙間なく並べた形状)等の粒子を用いることができる。直方体状、立方体状、略真球状、楕円球状の中空粒子は、バルーン構造又は中空構造を備えた粒子である。これらのバルーン構造又は中空構造を備えた中空粒子は、中空部912aに収容されたナノ結晶911を全体に亘って覆うことによって、熱や酸素に対する安定性をより確実に得ることができるため、より好ましい。さらに、得られる発光性ナノ粒子90においては、後述するポリマー層92との間に中空粒子912が介在するため、ナノ結晶911の酸素ガス、水分に対する安定性も向上する。
中空部912aには、1個のナノ結晶911が収容されてよく、複数個のナノ結晶911が収容されてもよい。また、中空部912aは、1個または複数のナノ結晶911によって全体が占有されていてもよく、一部のみが占有されていてもよい。
中空粒子としては、ナノ結晶911を保護できるものであれば、どのような材料であってもかまわない。合成の容易さ、透過率、コスト等の観点から、中空粒子としては、中空無機ナノ粒子である中空シリカ粒子、中空アルミナ粒子、中空酸化チタン粒子、または中空ポリマー粒子である中空ポリスチレン粒子、中空PMMA粒子であることが好ましく、中空シリカ粒子または中空アルミナ粒子であることがより好ましい。粒子表面処理が容易である点から、中空シリカ粒子であることがさらに好ましい。
中空粒子912の平均外径は、特に限定されないが、5~300nmであることが好ましく、6~100nmであることがよりこのましく、8~50nmであることがさらに好ましく、10~25nmであることが特に好ましい。かかるサイズの中空粒子912であれば、ナノ結晶911の酸素、水分および熱に対する安定性を十分に高めることができる。
中空粒子912の平均内径、すなわち、中空部912aの直径は、特に限定されないが、1~250nmであることが好ましく、2~100nmであることがより好ましく、3~50nmであることがさらに好ましく、5~15nmであることが特に好ましい。中空粒子912の平均内径が過度に小さい場合には中空部912a内でナノ結晶911が析出しないおそれがあり、過度に大きい場合には中空部91a内でナノ結晶911が過度に凝集して発光効率が低下するおそれがある。上記範囲の平均内径を備えた中空粒子912であれば、凝集を抑制しつつナノ結晶911を析出させることができる。
また、細孔912bのサイズは、特に限定されないが、0.5~10nmであることが好ましく、1~5nmであることがより好ましい。この場合、ナノ結晶911の原料化合物を含有する溶液を中空部912a内に円滑かつ確実に浸透させることができる。
中空シリカ粒子912には、市販品を使用することもできる。かかる市販品としては、例えば、日鉄鉱業株式会社製の「SiliNax SP-PN(b)」等が挙げられる。
<中空粒子内包発光粒子91の製造方法>
本発明では、中空粒子に、半導体ナノ結晶の原料化合物を含有する溶液(Z)を含浸し(図1中の(d))、乾燥することにより、前記中空粒子の前記中空部912a内に、発光性を有するメタルハライドからなる半導体ナノ結晶が析出し(図1中の(d))、発光粒子(中空粒子内包発光粒子)91を得ることができる。
さらに、前記得られた発光粒子91は、後述する光重合性化合物、具体的には、例えばイソボルニルメタクリレートに添加することにより発光粒子91を含む分散液とすることもできる。
半導体ナノ結晶の原料化合物を含む溶液(Z)としては、固形分濃度0.5~20質量%の溶液であることが中空粒子912への含侵性の点から好ましい。また、有機溶媒はナノ結晶911との良溶媒であればよいが、特に、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアミド、エタノール、メタノール、2-プロパノール、γ-ブチロラクトン、酢酸エチル、水及びこれらの混合溶媒であることが相溶性の点から好ましい。
また、溶液を調製する方法としては、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で、反応容器に、原料化合物と有機溶媒とを混合することが好ましい。この際の温度条件は室温~350℃であることが好ましく、また、混合時の攪拌時間は1分~10時間であることが好ましい。
半導体ナノ結晶の原料化合物は、例えば、三臭化鉛セシウム溶液を調製する場合は、臭化セシウムと、臭化鉛(II)とを前記有機溶媒と混合することが好ましい。このとき、良溶媒1000質量部に対して、臭化セシウムが0.5~200質量部、臭化鉛(II)が0.5~200質量部となるように、それぞれの添加量を調整することが好ましい。
次に、前記反応容器に中空シリカ粒子912を室温下で添加することにより、中空シリカ粒子912の中空部912a内に三臭化鉛セシウム溶液を含浸させる。その後、前記反応溶液内の溶液をろ過することにより、過剰な前記三臭化鉛セシウム溶液を除去し固形物を回収する。そして、得られた固形物を-50~200℃で減圧乾燥する。以上により、中空シリカ粒子911の中空部912aに、ペロブスカイト型の半導体ナノ結晶911が析出した発光粒子91を得ることができる。
<中空粒子内包発光粒子91の変形例>
さらに、中空粒子内包発光粒子91は、図2(a)に示すように、中空粒子92の中空部912aの壁面と半導体ナノ結晶911との間に位置し、半導体ナノ結晶911の表面に配位した配位子で構成される中間層913を備えることが好ましい。図2(a)に示す発光粒子91は、MサイトとしてPbカチオン(図中、黒丸で示す。)を含むナノ結晶911の表面に、配位子としてオレイン酸、オレイルアミン等を配位させて中間層913が形成されている。なお、図2(a)では、中空粒子912において細孔912bの記載を省略した。中間層913を備える発光粒子91は、中間層913によって、ナノ結晶911の酸素、水分、熱等に対する安定性をさらに高めることができる。
配位子で構成される中間層913を備えた発光粒子91は、ナノ結晶911の原料化合物を含有する溶液中に配位子を添加しておき、この溶液を中空シリカ粒子912に含浸し乾燥することによって得ることができる。
配位子は、ナノ結晶911に含まれるカチオンに結合する結合性基を有する化合物が好ましい。結合性基としては、例えば、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、スルホン酸基およびボロン酸基のうちの少なくとも1種であることが好ましく、カルボキシル基およびアミノ基のうちの少なくとも1種であることがより好ましい。かかる配位子としては、カルボキシル基またはアミノ基含有化合物等が挙げられ、これらの1種を単独で使用し、または2種以上を併用することができる。
カルボキシル基含有化合物としては、例えば、炭素原子数1~30の直鎖状または分岐状の脂肪族カルボン酸が挙げられる。
アミノ基含有化合物としては、例えば、炭素原子数1~30の直鎖状または分岐状の脂肪族アミンが挙げられる。
また、発光粒子91を作製する際に、ナノ結晶911の原料化合物を含有する溶液中に、反応性基を有する配位子(例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン)を添加することができる。この場合、図2に示すように、中空粒子912とナノ結晶911との間に位置し、ナノ結晶911の表面に配位した配位子で構成され、配位子の分子同士がシロキサン結合を形成している中間層913を有する母粒子91とすることも可能である。かかる構成によれば、中間層913を介してナノ結晶911を中空粒子912により強固に固定することができる。
反応性基を有する配位子は、ナノ結晶911に含まれるカチオンに結合する結合性基と、Siを含有し、シロキサン結合を形成する反応性基とを有する化合物が好ましい。なお、反応性基は、中空粒子912とも反応可能である。
結合性基としては、例えば、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、スルホン酸基、ボロン酸基等が挙げられる。中でも、結合性基としては、カルボキシル基およびアミノ基のうちの少なくとも1種であることが好ましい。これらの結合性基は、反応性基よりもナノ結晶911に含まれるカチオンに対する親和性(反応性)が高い。このため、配位子は、結合性基をナノ結晶911側にして配位し、より容易かつ確実に中間層913を形成することができる。
一方、反応性基としては、シロキサン結合が容易に形成されることから、シラノール基、炭素原子数が1~6のアルコキシシリル基のような加水分解性シリル基が好ましい。
かかる配位子としては、カルボキシル基またはアミノ基含有ケイ素化合物等が挙げられ、これらの1種を単独で使用し、または2種以上を併用することができる。
さらに、図2(b)に示すように、中空粒子内包発光粒子91の表面に疎水性ポリマーからなるポリマー層92を備えた発光粒子90(以下、「ポリマー被覆発光粒子90」と記載することがある。)であることがより好ましい。ポリマー被覆発光粒子90は、ポリマー層92を備えることにより、熱、酸素に対する安定性をさらに向上させると共に、優れた粒子分散性を得ることができるため、光変換層とした際により優れた発光特性を得ることができる。
1-1-2.シリカ被覆発光粒子
本発明における発光性ナノ結晶を含むナノ粒子の別の形態は、図3(a)に示す発光粒子91として、発光性を有するペロブスカイト型の半導体ナノ結晶(以下、単に「ナノ結晶911」と言うこともある。)と、このナノ結晶911の表面に配位した配位子で構成され、さらに、配位子のうちシラン化合物である分子同士がシロキサン結合を形成した表面層914とを備える(以下、「シリカ被覆発光粒子91」ということもある。)。かかる発光粒子91は、例えば、ナノ結晶911の前駆体、オレイン酸、オレイルアミン等の配位子とシロキサン結合可能な部位を有する配位子とを混合し、ナノ結晶911を析出させると同時に該配位子をナノ結晶911表面に配位させ、その後引き続き、シロキサン結合を生じさせることにより得ることができる。該発光粒子91は、ナノ結晶911がシリカ表面層914により保護されるため、熱や酸素に対する優れた安定性を得ることができ、その結果、優れた発光特性を得ることができる。
さらに、シリカ被覆発光粒子91(b)に示すように、シリカ被覆発光粒子91の表面に疎水性ポリマーからなるポリマー層92を備えた発光粒子90(以下、「ポリマー被覆発光粒子90」と記載することがある。)であることがより好ましい。ポリマー被覆発光粒子90は、ポリマー層92を備えることにより、熱、酸素に対する安定性をさらに向上させると共に、優れた粒子分散性を得ることができるため、光変換層とした際により優れた発光特性を得ることができる。
図3(a)に示すシリカ被覆発光粒子91は、発光性を有する前記ナノ結晶911と、このナノ結晶911の表面に配位した配位子で構成され、さらに、配位子のうちシラン化合物である分子同士がシロキサン結合を形成した表面層914とを有する。そのため、シリカ被覆発光粒子91は、ナノ結晶911が表面層914により保護されるため、優れた発光特性を維持することができる。
かかるシリカ被覆発光粒子91は、半導体ナノ結晶の原料化合物を含む溶液と、脂肪族カルボン酸と、Siを含有しシロキサン結合を形成し得る反応性基を有する化合物を含む脂肪族アミンとを含む溶液とを混合することにより、発光性を有するペロブスカイト型の半導体ナノ結晶を析出させると共に当該半導体ナノ結晶の表面に前記化合物を配位させ、その後、配位した前記化合物中の前記反応性基を縮合させることにより、前記半導体ナノ結晶の表面に前記シロキサン結合を有する表面層を形成した粒子91を得る方法により製造することができる。このシリカ被覆発光粒子91は、それ自体、単体で発光粒子として使用することが可能である。
<表面層914>
前記表面層914は、ナノ結晶911の表面に配位可能でありかつ分子同士がシロキサン結合を形成可能な化合物を含む配位子から構成されている。
かかる配位子は、ナノ結晶911に含まれるカチオンに結合する結合性基を有する化合物であり、Siを含有し、シロキサン結合を形成する反応性基を有する化合物を含む。該結合性基としては、例えば、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、スルホン酸基およびボロン酸基のうちの少なくとも1種であることが好ましく、カルボキシル基およびアミノ基のうちの少なくとも1種であることがより好ましい。かかる配位子としては、カルボキシル基またはアミノ基含有化合物等が挙げられ、これらの1種を単独で使用し、または2種以上を併用することができる。
また、Siを含有し、シロキサン結合を形成する反応性基を有する化合物は、ナノ結晶911に含まれるカチオンに結合する結合性基を有することが好ましい。
反応性基としては、シロキサン結合が容易に形成されることから、シラノール基、炭素原子数が1~6のアルコキシシリル基のような加水分解性シリル基が好ましい。
結合性基としては、例えば、カルボキシル基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、スルホン酸基、ボロン酸基等が挙げられる。中でも、結合性基としては、カルボキシル基、メルカプト基およびアミノ基のうちの少なくとも1種であることが好ましい。これらの結合性基は、上述の反応性基よりもナノ結晶911に含まれるカチオンに対する親和性が高い。このため、配位子は、結合性基をナノ結晶911側にして配位し、より容易かつ確実に表面層914を形成することができる。
Siを含有し、シロキサン結合を形成する反応性基を有する化合物としては、結合性基を含有するケイ素化合物を1種以上含有し、または2種以上を併用することができる。
好ましくは、カルボキシル基含有ケイ素化合物、アミノ基含有ケイ素化合物、メルカプト基含有ケイ素化合物の何れか1種を含有し、または2種以上を併用することができる。
カルボキシル基含有ケイ素化合物の具体例としては、例えば、3-(トリメトキシシリル)プロピオン酸、3-(トリエトキシシリル)プロピオン酸、2-、カルボキシエチルフェニルビス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-N’-カルボキシメチルエチレンジアミン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]フタルアミド、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン-N,N’,N’-三酢酸等が挙げられる。
一方、アミノ基含有ケイ素化合物の具体例としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジプロポキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジイソプロポキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリプロポキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチルジメチルメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-11-アミノウンデシルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルシラントリオール、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリプロポキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリイソプロポキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェニルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェニルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェニルトリプロポキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェニルトリイソプロポキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルメチルジメトキシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-N-γ-(N-ビニルベンジル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(N-ジ(ビニルベンジル)アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(N-ジ(ビニルベンジル)アミノエチル)-N-γ-(N-ビニルベンジル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ベンジルアミノエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリプロポキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリイソプロポキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリプロポキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリイソプロポキシシラン、N-[2-[3-(トリメトキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン、N-[2-[3-(トリエトキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン、N-[2-[3-(トリプロポキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン、N-[2-[3-(トリイソプロポキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン等が挙げられる。
メルカプト基含有ケイ素化合物の具体例としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルメチルジメトキシシラン、2-メルカプトエチルメチルジエトキシシラン、3-[エトキシビス(3,6,9,12,15-ペンタオキサオクタコサン-1-イルオキシ)シリル]-1-プロパンチオール等が挙げられる。
図3(a)に示すシリカ被覆発光粒子91は、MサイトとしてPbカチオンを含むナノ結晶911の表面に、配位子としてオレイン酸、オレイルアミン、3-アミノプロピルトリメトキシシランを配位させ、さらに3-アミノプロピルトリメトキシシランを反応させることにより表面層914を形成している。
表面層914の厚さは、0.5~50nmであることが好ましく、1.0~30nmであることがより好ましい。かかる厚さの表面層914を有する発光粒子91であれば、ナノ結晶911の熱に対する安定性を十分に高めることができる。
なお、表面層914の厚さは、配位子の結合基と反応性基とを連結する連結構造の原子数(鎖長)を調製することで変更することができる。
<シリカ被覆発光粒子91の作製方法>
このようなシリカ被覆発光粒子91は、ナノ結晶911の原料化合物を含む溶液と、ナノ結晶911に含まれるカチオンに結合する結合性基を有する化合物と、Siを含有しシロキサン結合を形成し得る反応性基を有する化合物とを含む溶液とを混合した後に、析出したナノ結晶911の表面に配位したSiを含有しシロキサン結合を形成し得る反応性基を有する化合物中の反応性基を縮合させることにより、容易に作製することができる。このとき、加熱を行って製造する方法と、加熱を行わずに製造する方法とがある。
まず、加熱を行ってシリカ被覆発光粒子91を製造する方法について説明する。半導体ナノ結晶を反応によって合成する2種の原料化合物を含む溶液をそれぞれ調製する。この際、2種の溶液の何れか一方にナノ結晶911に含まれるカチオンに結合する結合性基を有する化合物を、もう一方にSiを含有しシロキサン結合を形成し得る反応性基を有する化合物を加えておく。次いで、これらを不活性ガス雰囲気下で混合、140~260℃の温度条件下に反応させる。次いで、-20~30℃に冷却し、攪拌することにより、ナノ結晶を析出させる方法が挙げられる。析出したナノ結晶はナノ結晶911の表面にシロキサン結合を有する表面層914が形成されたものとなり、遠心分離等の定法によりナノ結晶を得ることができる。
次に、加熱を行わずにシリカ被覆発光粒子91を製造する方法について説明する。半導体ナノ結晶の原料化合物及びナノ結晶911に含まれるカチオンに結合する結合性基を有する化合物(Siを含有しシロキサン結合を形成し得る反応性基を有する化合物は含まない)を含む溶液を、Siを含有しシロキサン結合を形成し得る反応性基を有する化合物をナノ結晶に対して貧溶媒である有機溶剤に溶解した溶液中に大気下にて滴下・混合することにより、ナノ結晶を析出させる方法が挙げられる。有機溶剤の使用量は半導体ナノ結晶に対して質量基準で10~1000倍量であることが好ましい。また、析出したナノ結晶はナノ結晶911の表面にシロキサン結合を有する表面層914が形成されたものとなり、遠心分離等の定法によりナノ結晶を得ることができる。
1-1-3.ポリマー被覆発光粒子
図1、図2(b)及び図3(b)に示すポリマー被覆発光粒子90は、上述の工程で得られた中空粒子内包発光粒子91又はシリカ被覆発光粒子91を母粒子とし(以下、これらの発光粒子91をを「母粒子91」と記載することがある。)、母粒子91の表面を、疎水性ポリマーで被覆してポリマー層92を形成することによって得ることができる。ポリマー被覆発光粒子90は、疎水性のポリマー層92を備えることにより、発光粒子90に酸素、水分に対する高い安定性を付与することができ、さらには、発光粒子90の分散安定性を向上することができる。
<ポリマー被覆発光粒子の作製方法>
かかるポリマー層92は、被覆対象の粒子(以下、「母粒子」ともいう。)の表面を疎水性ポリマーで被覆することによって形成される。ポリマー層は、母粒子、非水溶媒および重合体(P)の存在下で、単量体(M)を重合させることによって形成される。
[非水溶媒]
非水溶媒は、疎水性ポリマーを溶解し得る有機溶媒が好ましく、発光粒子91を均一に分散可能であれば、さらに好ましい。このような非水溶媒を用いることにより、非常に簡便に疎水性ポリマーを発光粒子91に吸着させてポリマー層92を被覆させることができる。さらに、好ましくは、非水溶媒は低誘電率溶媒である。低誘電率溶媒を用いることにより、疎水性ポリマーと発光粒子91とを当該非水溶媒中で混合するだけで、疎水性ポリマーが発光粒子91表面に強固に吸着し、ポリマー層を被覆させることができる。
このようにして得られたポリマー層92は、後述するように発光粒子90を溶媒で洗浄しても、発光粒子91から除去され難い。さらに、非水溶媒の誘電率は低いほど好ましい。具体的には、非水溶媒の誘電率は、好ましくは10以下であり、さらに好ましくは6以下であり、特に好ましくは5以下である。好ましい非水溶媒としては、脂肪族炭化水素系溶媒、脂環式炭化水素系溶媒および芳香族炭化水素系溶媒からなる群から選択される少なくとも一つを含む有機溶媒であることが好ましい。
脂肪族炭化水素系溶媒としては、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、イソヘキサン等が挙げられ、脂環式炭化水素系溶媒としては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等が挙げられ、芳香族炭化水素系溶媒としては、トルエン、キシレン等が挙げられる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、非水溶媒として、脂肪族炭化水素系溶媒、脂環式炭化水素系溶媒および芳香族炭化水素系溶媒からなる群から選択される少なくとも一つに、他の有機溶媒を混合した混合溶媒を使用してもよい。かかる他の有機溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸アミルのようなエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン系溶媒;メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノールのようなアルコール系溶媒等が挙げられる。
混合溶媒として使用する際には、脂肪族炭化水素系溶媒、脂環式炭化水素系溶媒および芳香族炭化水素系溶媒からなる群のうち少なくとも一つの使用量を、50質量%以上とすることが好ましく、60質量%以上とすることがより好ましい。
[重合体(P)]
重合体(P)は、非水溶媒に可溶な重合性不飽和基を含有する重合体である。重合体(P)として、炭素原子数4以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(A1)、末端に重合性官能基を有する(メタ)アクリレート(A2)、重合性不飽和基を有する含フッ素化合物(B、C)、または重合性不飽和基を有する含ケイ素化合物(D)を単量体成分とする共重合体に重合性不飽和基を導入したポリマー、あるいは、炭素原子数4以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(A1)、末端に重合性官能基を有する(メタ)アクリレート(A2)、含フッ素化合物(B、C)を主成分とする重合性不飽和基を有する単量体、または含ケイ素化合物(D)を主成分とする重合性不飽和基を有する単量体の共重合体からなるマクロモノマー等を使用することができる。
アルキル(メタ)アクリレート(A1)としては、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、末端に重合性官能基を有する(メタ)アクリレート(A2)としては、例えば、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ(メタ)アクリレート;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸のような不飽和ジカルボン酸と1価アルコールとのジエステル系化合物が挙げられる。ここで、本明細書中において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートおよびアクリレートの双方を意味する。「(メタ)アクリロイル」との表現についても同様である。
重合性不飽和基を有する含フッ素化合物(B)としては、下記式(B1-1)~(B1-7)で表されるメタクリレート、下記(B1-8)~(B1-15)で表されるアクリレート等が挙げられる。なお、これらの化合物は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
また、重合性不飽和基を有する含フッ素化合物(C)としては、例えば、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖と、その両末端に重合性不飽和基とを有する化合物が挙げられる。
含フッ素化合物(C)の具体例としては、下記式(C-1)~(C-13)で表される化合物が挙げられる。なお、下記式(C-1)~(C-13)中の「-PFPE-」は、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖である。
中でも、含フッ素化合物(C)としては、工業的製造が容易である点から、上記式(C-1)、(C-2)、(C-5)または(C-6)で表される化合物が好ましく、母粒子91の表面への絡み易い重合体(P)を合成可能である点から、上記式(C-1)で表されるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖の両末端にアクリロイル基を有する化合物、または上記式(C-2)で表されるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖の両末端にメタクリロイル基を有する化合物がより好ましい。
また、重合性不飽和基を有する含ケイ素化合物(D)としては、例えば、下記一般式(D1)で表される化合物が挙げられる。
上記一般式(D1)中、Pは重合性官能基、XaはSiR11R22であり、Rdは水素原子、フッ素原子、メチル基、アクリロイル基またはメタクリロイル基(ただし、R11、R22はメチル基、あるいはSi(CH3)基、アミノ基、グリシジル基であり、mは0~100の整数であり、nは0~4の整数である。)である。
含ケイ素化合物(D)の具体例としては、下記式(D-1)~(D-13)で表される化合物が挙げられる。
また、重合体(P)として、上記アルキル(メタ)アクリレート(A1)、末端に重合性官能基を有する(メタ)アクリレート化合物(A2)、含フッ素化合物(B、C)および含ケイ素化合物(D)以外の化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、ビニルトルエンのような芳香族ビニル系化合物;ベンジル(メタ)アクリレート、ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリレート系化合物等が挙げられる。
これらの化合物は、アルキル(メタ)アクリレート(A1)、末端に重合性官能基を有する(メタ)アクリレート(A2)、含フッ素化合物(B、C)または含ケイ素化合物(D)とのランダム共重合体として使用することが好ましい。これにより、得られる重合体(P)の非水溶媒への溶解性を十分に高めることができる。
重合体(P)として使用可能な化合物は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。中でも、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリルメタクリレートのような直鎖状または分岐状の炭素原子数4~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(A1)を使用することが好ましい。
これらの化合物を常法によって重合することによって当該化合物の共重合体を得た後に、当該共重合体に重合性不飽和基を導入することにより、重合体(P)が得られる。
重合性不飽和基の導入方法としては、例えば、予め共重合成分としてアクリル酸、メタクリル酸のようなカルボン酸基含有重合性単量体、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのようなアミノ基含有重合性単量体を配合し共重合させ、カルボン酸基またはアミノ基を有する共重合体を得た後、このカルボン酸基またはアミノ基にグリシジルメタクリレートのようなグリシジル基および重合性不飽和基を有する単量体を反応させる方法を挙げることができる。
[単量体(M)]
単量体(M)は、非水溶媒に可溶でありかつ重合後に不溶もしくは難溶になる重合性不飽和単量体である。単量体(M)としては、例えば、反応性極性基(官能基)を有さないビニル系モノマー類、アミド結合含有ビニル系モノマー類、(メタ)アクリロイロキシアルキルホスフェート類、(メタ)アクリロイロキシアルキルホスファイト類、リン原子含有ビニル系モノマー類、水酸基含有重合性不飽和単量体類、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類、エポキシ基含有重合性不飽和単量体類、イソシアネート基含有α,β-エチレン性不飽和単量体類、アルコキシシリル基含有重合性不飽和単量体類、カルボキシル基含有α,β-エチレン性不飽和単量体類等が挙げられる。
反応性極性基を有さないビニル系モノマー類の具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンのようなオレフィン類等が挙げられる。
アミド結合含有ビニル系モノマー類の具体例としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-オクチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、アルコキシ化N-メチロール化(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。
(メタ)アクリロイロキシアルキルホスフェート類の具体例としては、例えば、ジアルキル[(メタ)アクリロイロキシアルキル]ホスフェート類、(メタ)アクリロイロキシアルキルアシッドホスフェート類等が挙げられる。
(メタ)アクリロイロキシアルキルホスファイト類の具体例としては、例えば、ジアルキル[(メタ)アクリロイロキシアルキル]ホスファイト類、(メタ)アクリロイロキシアルキルアシッドホスファイト類等が挙げられる。
リン原子含有ビニル系モノマー類の具体例としては、例えば、上記(メタ)アクリロイロキシアルキルアシッドホスフェート類または(メタ)アクリロイロキシアルキルアシッドホスファイト類のアルキレンオキシド付加物、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレートのようなエポキシ基含有ビニル系モノマーとリン酸、亜リン酸またはこれらの酸性エステル類とのエステル化合物、3-クロロ-2-アシッドホスホキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
水酸基含有重合性不飽和単量体類の具体例としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジ-2-ヒドロキシエチルフマレート、モノ-2-ヒドロキシエチルモノブチルフマレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートのような重合性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類またはこれらとε-カプロラクトンとの付加物;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和モノまたはジカルボン酸、ジカルボン酸と1価のアルコールとのモノエステル類のような重合性不飽和カルボン酸類;上記重合性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類とポリカルボン酸の無水物(マレイン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘンゼントリカルボン酸、ベンゼンテトラカルボン酸、「ハイミック酸」、テトラクロルフタル酸、ドデシニルコハク酸等)との付加物等の各種不飽和カルボン酸類と1価のカルボン酸のモノグリシジルエステル(やし油脂肪酸グリシジルエステル、オクチル酸グリシジルエステル等)、ブチルグリシジルエーテル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のモノエポキシ化合物との付加物またはこれらとε-カプロラクトンとの付加物;ヒドロキシビニルエーテル等が挙げられる。
ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類の具体例としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エポキシ基含有重合性不飽和単量体類の具体例としては、例えば、重合性不飽和カルボン酸類、水酸基含有ビニルモノマーと上記ポリカルボン酸の無水物との等モル付加物(モノ-2-(メタ)アクリロイルオキシモノエチルフタレート等)のような各種不飽和カルボン酸に、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する各種ポリエポキシ化合物を等モル比で付加反応させて得られるエポキシ基含有重合性化合物、グリシジル(メタ)アクリレート、(β-メチル)グルシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグルシジルエーテル等が挙げられる。
イソシアネート基含有α,β-エチレン性不飽和単量体類の具体例としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートとの等モル付加物、イソシアネートエチル(メタ)アクリレートのようなイソシアネート基およびビニル基を有するモノマー等が挙げられる。
アルコキシシリル基含有重合性不飽和単量体類の具体例としては、例えば、ビニルエトキシシラン、α-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシロキシエチル(メタ)アクリレートのようなシリコーン系モノマー類等が挙げられる。
カルボキシル基含有α,β-エチレン性不飽和単量体類の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和モノまたはジカルボン酸、ジカルボン酸と1価アルコールとのモノエステル類のようなα,β-エチレン性不飽和カルボン酸類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジ-2-ヒドロキシエチルフマレート、モノ-2-ヒドロキシエチル-モノブチルフマレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートのようなα,β-不飽和カルボン酸ヒドロアルキルエステル類とマレイン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ベンゼントリカルボン酸、ベンゼンテトラカルボン酸、「ハイミック酸」、テトラクロルフタル酸、ドデシニルコハク酸のようなポリカルボン酸の無水物との付加物等が挙げられる。
中でも、単量体(M)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートのような炭素原子数3以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましい。
疎水性ポリマーからなるポリマー層92は、発光粒子91、非水溶媒および重合体(P)の存在下で、単量体(M)を重合させることにより形成される。
発光粒子91と重合体(P)とは、重合を行う前に混合することが好ましい。混合には、例えば、ホモジナイザー、ディスパー、ビーズミル、ペイントシェーカー、ニーダー、ロールミル、ボールミル、アトライター、サンドミル等を使用することができる。
本発明において、使用する発光粒子91の形態は、特に限定されず問わず、スラリー、ウエットケーキ、粉体等のいずれであってもよい。
発光粒子91と重合体(P)との混合後に、単量体(M)および後述する重合開始剤をさらに混合し、重合を行うことにより、重合体(P)と単量体(M)との重合物で構成されるポリマー層92が形成される。これにより、発光粒子90が得られる。
この際、重合体(P)の数平均分子量は、1,000~500,000であることが好ましく、2,000~200,000であることがより好ましく、3,000~100,000であることがさらに好ましい。このような範囲の分子量を有する重合体(P)を用いることにより、発光粒子91の表面に良好にポリマー層92を被覆し得る。
また、重合体(P)の使用量は、目的に応じて適宜設定されるため、特に限定されないが、通常、100質量部の発光粒子91に対して、0.5~50質量部であることが好ましく、1~40質量部であることがより好ましく、2~35質量部であることがさらに好ましい。
また、単量体(M)の使用量も、目的に応じて適宜設定されるため、特に限定されないが、通常、100質量部の発光粒子91に対して、0.5~40質量部であることが好ましく、1~35質量部であることがより好ましく、2~30質量部であることがさらに好ましい。
最終的に発光粒子91の表面を被覆する疎水性ポリマーの量は、100質量部の発光粒子91に対して、1~60質量部であることが好ましく、2~50質量部であることがより好ましく、3~40質量部であることがさらに好ましい。
この場合、単量体(M)の量は、100質量部の重合体(P)に対して、通常、10~100質量部であることが好ましく、30~90質量部であることがより好ましく、50~80質量部であることがさらに好ましい。
ポリマー層92の厚さは、0.5~100nmであることが好ましく、0.7~50nmであることがより好ましく、1~30nmであることがさらに好ましい。ポリマー層92の厚さが0.5nm未満であると、分散安定性が得られない場合が多い。ポリマー層92の厚さが100nmを超えると発光粒子91を高濃度で含有させることが困難となる場合が多い。かかる厚さのポリマー層92で発光粒子91を被覆することにより、発光粒子90の酸素、水分に対する安定性をより向上させることができる。
発光粒子91、非水溶媒および重合体(P)の存在下における単量体(M)の重合は、公知の重合方法によって行うことができるが、好ましくは重合開始剤の存在下で行われる。
かかる重合開始剤としては、例えば、ジメチル-2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ベンゾイルパーオキシド、t-ブチルパーベンゾエート、t-ブチル-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルハイドロパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
非水溶媒に難溶の重合開始剤は、単量体(M)に溶解した状態で、発光粒子91と重合体(P)とを含む混合液に添加することが好ましい。
また、単量体(M)または重合開始剤を溶解した単量体(M)は、重合温度に達した混合液に滴下法により添加して重合させてもよいが、昇温前の常温の混合液に添加し、充分に混合した後に昇温して重合させるのが安定であり好ましい。
重合温度は、60~130℃の範囲であることが好ましく、70~100℃の範囲であることがより好ましい。かかる重合温度で単量体(M)の重合を行えば、ナノ結晶911の形態変化(例えば、変質、結晶成長等)を好適に防止することができる。
単量体(M)の重合後、発光粒子91表面に吸着しなかったポリマーを除去することにより、発光粒子91の表面にポリマー層92が形成された発光粒子(ポリマー被覆発光粒子)90を得る。吸着しなかったポリマーを除去する方法としては、遠心沈降、限外ろ過が挙げられる。遠心沈降では、ポリマー被覆発光粒子90と吸着されなかったポリマーとを含む分散液を高速で回転させ、当該分散液中のポリマー被覆発光粒子90を沈降させて、吸着しなかったポリマーを分離する。限外ろ過では、ポリマー被覆発光粒子90と吸着しなかったポリマーとを含む分散液を適切な溶媒で希釈し、適切な孔サイズを有するろ過膜に当該希釈液を通して、吸着しなかったポリマーとポリマー被覆発光粒子90とを分離する。
以上のようにして、ポリマー被覆発光粒子90が得られる。ポリマー被覆発光粒子90は、分散媒、樹脂あるいは重合性化合物に分散させた状態で(すなわち、分散液として)保存してもよく、分散媒を除去して粉体(ポリマー被覆発光粒子90の集合体)として保存してもよい。
インク組成物がポリマー被覆発光粒子90を含む場合には、ポリマー被覆発光粒子90の含有量は、0.1~20質量%であることが好ましく、0.5~15質量%であることがより好ましく、1~10質量%であることがさらに好ましい。同様に、発光粒子含有インク組成物がポリマー層92によって被覆されていないナノ結晶911、中空粒子内包発光粒子91及びシリカ被覆発光粒子91を含む場合も、発光粒子91の含有量は、0.1~20質量%であることが好ましく、0.5~15質量%であることがより好ましく、1~10質量%であることがさらに好ましい。発光粒子含有インク組成物中のポリマー被覆発光粒子90(又は発光粒子91)の含有量を前記範囲に設定することにより、発光粒子含有インク組成物をインクジェット印刷法により吐出する場合には、その吐出安定性をより向上させることができる。また、発光粒子90(又は発光粒子91)同士が凝集し難くなり、得られる発光層(光変換層)の外部量子効率を高めることもできる。
インク組成物は、発光性ナノ結晶を含む発光粒子90(又は発光粒子91)として、赤色発光粒子、緑色発光粒子及び青色発光粒子のうちの2種以上を含んでいてもよいが、これらの粒子のうちの1種のみを含むことが好ましい。インク組成物が赤色発光粒子を含む場合、緑色発光粒子の含有量及び青色発光粒子の含有量は、発光粒子の全質量を基準として、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは0質量%である。インク組成物が緑色発光粒子を含む場合、赤色発光粒子の含有量及び青色発光粒子の含流量は、発光粒子の全質量を基準として、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは0質量%である。
1-2.光散乱性粒子
インク組成物は、光散乱性粒子を含有する。光散乱性粒子は、例えば、光学的に不活性な無機微粒子であることが好ましい。インク組成物が光散乱性粒子を含有する場合、光散乱性粒子は、発光層(光変換層)に照射された光源部からの光を散乱させることができる。
光散乱性粒子を構成する材料としては、例えば、タングステン、ジルコニウム、チタン、白金、ビスマス、ロジウム、パラジウム、銀、スズ、プラチナ、金のような単体金属;シリカ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、アルミナホワイト、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛のような金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、次炭酸ビスマス、炭酸カルシウムのような金属炭酸塩;水酸化アルミニウムのような金属水酸化物;ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等の複合酸化物、次硝酸ビスマスのような金属塩等が挙げられる。
中でも、光散乱性粒子を構成する材料としては、漏れ光の低減効果により優れる観点から、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウムおよびシリカからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、酸化チタン、硫酸バリウムおよび炭酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも一種を含むことがより好ましく、酸化チタンであることが特に好ましい。
酸化チタンを用いる場合には、分散性の観点から、表面処理がなされた酸化チタンであることが好ましい。酸化チタンの表面処理方法としては公知の方法があるが、少なくともアルミナを含んだ表面処理がなされていることがより好ましい。
アルミナを含んだ表面処理がなされた酸化チタンとは、酸化チタン粒子表面に少なくともアルミナを析出させる処理をいい、アルミナの他にシリカ等を用いることができる。また、アルミナあるいはシリカには、それらの水和物も含まれる。
このように、酸化チタン粒子にアルミナを含んだ表面処理を行うことにより、酸化チタン粒子表面が均一に表面被覆処理され、少なくともアルミナにより表面処理された酸化チタン粒子を用いると、酸化チタン粒子の分散性が良好となる。
また、シリカによる処理とアルミナによる処理を酸化チタン粒子に施す場合には、アルミナ及びシリカ処理は同時に行っても良く、特にアルミナ処理を最初に行い、次いでシリカ処理を行うこともできる。また、アルミナとシリカの処理をそれぞれ行う場合には、アルミナ及びシリカの処理量は、アルミナよりもシリカの多いものが好ましい。
前記酸化チタンのアルミナ、シリカ等の金属酸化物による表面処理は湿式法により行うことができる。例えば、アルミナ、又はシリカの表面処理を行った酸化チタン粒子は以下のように作製することができる。
酸化チタン粒子(数平均一次粒子径:200~400nm)を50~350g/Lの濃度で水中に分散させて水性スラリーとし、これに水溶性のケイ酸塩又は水溶性のアルミニウム化合物を添加する。その後、アルカリ又は酸を添加して中和し、酸化チタン粒子の表面にシリカ、又はアルミナを析出させる。続いて濾過、洗浄、乾燥を行い目的の表面処理酸化チタンを得る。前記水溶性のケイ酸塩としてケイ酸ナトリウムを使用した場合には、硫酸、硝酸、塩酸等の酸で中和することができる。一方、水溶性のアルミニウム化合物として硫酸アルミニウムを用いたときは水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリで中和することができる。
本発明において、光散乱性粒子の分散性を高めるために高分子分散剤を用いることができる。該高分子分散剤としては、アミン価を持った高分子分散剤を用いることが好ましい。例えば、ディスパロン(登録商標)DA-325(アミン価:14mgKOH/g)、ディスパロンDA-234(アミン価:20mgKOH/g)、DA-703-50(アミン価:40mgKOH/g)(以上、楠本化成株式会社製)、アジスパー(登録商標)PB821(アミン価:10mgKOH/g)、アジスパーPB822(アミン価:17mgKOH/g)、アジスパーPB824(アミン価:17mgKOH/g)、アジスパーPB881(アミン価:17mgKOH/g)(以上、味の素ファインテクノ株式会社製)、Efka(登録商標) PU4046(アミン価:19mgKOH/g)、Efka PX4300(アミン価:56mgKOH/g)、Efka PX4320(アミン価:28mgKOH/g)、Efka PX4330(アミン価:28mgKOH/g)、Efka PX4350(アミン価:12mgKOH/g)、Efka PX4700(アミン価:60mgKOH/g)、Efka PX4701(アミン価:40mgKOH/g)、Efka4731(アミン価:25mgKOH/g)、Efka-4732(アミン価:25mgKOH/g)、Efka4751(アミン価:12mgKOH/g)、Dispex(登録商標) Ultra FA4420(アミン価:35mgKOH/g)、Dispex Ultra FA4425(アミン価:35mgKOH/g)(以上、BASFジャパン株式会社製)、DISPERBYK(登録商標)-162,DISPERBYK-163、DISPERBYK-164、DISPERBYK-180、DISPERBYK-109、DISPERBYK-2000、DISPERBYK-2001、DISPERBYK-2050、DISPERBYK-2150(以上、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、ソルスパース(登録商標)24000GR、ソルスパース32000、ソルスパース26000、ソルスパース13240、ソルスパース13940、ソルスパース33500、ソルスパース38500、ソルスパ―ス71000(日本ルーブリゾール株式会社)等が挙げられる。
光散乱性粒子の形状は、球状、フィラメント状、不定形状等、種々の形状のものを使用することができる。しかしながら、光散乱性粒子としては、粒子形状として方向性の少ない粒子(例えば、球状、正四面体状等の粒子)を用いることが、発光粒子含有インク組成物の均一性、流動性及び光散乱性をより高められる点で好ましい。
発光粒子含有インク組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、漏れ光の低減効果により優れる観点から、0.05μm以上、0.2μm以上、0.3μm以上であることが好ましい。発光粒子含有インク組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、インクの保存安定性、吐出安定性に優れる観点から、1.0μm以下、0.6μm以下、0.4μm以下であることが好ましい。発光粒子含有インク組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、0.05~1.0μm、0.05~0.6μm、0.05~0.4μm、0.2~1.0μm、0.2~0.6μm、0.2~0.4μm、0.3~1.0μm、0.3~0.6μm、又は0.3~0.4μmであることが好ましい。このような平均粒子径(体積平均径)が得られやすい観点から、使用する光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、50nm以上1000nm以下であることが好ましい。発光粒子含有インク組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、動的光散乱式ナノトラック粒度分布計により測定し、体積平均径を算出することにより得られる。また、使用する光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、例えば透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡により各粒子の粒子径を測定し、体積平均径を算出することにより得られる。
光散乱性粒子を上記粒径範囲に分散調製するためには、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等を用いることができる。
光散乱性粒子の含有量は、漏れ光の低減効果により優れる観点から、発光粒子含有インク組成物の不揮発分の質量を基準として、0.1質量%以上、1質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、10質量%以上、12質量%以上であることが好ましい。光散乱性粒子の含有量は、漏れ光の低減効果により優れる観点及び吐出安定性に優れる観点から、発光粒子含有インク組成物の不揮発分の質量を基準として、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下であることが好ましい。本実施形態では、発光粒子含有インク組成物が高分子分散剤を含むため、光散乱性粒子の含有量を上記範囲とした場合であっても光散乱性粒子の良好に分散させることができる。
発光粒子90の含有量に対する光散乱性粒子の含有量の質量比(光散乱性粒子/発光性ナノ結晶を含むナノ粒子)は、漏れ光の低減効果により優れる観点から、0.1以上、0.2以上、0.5以上であることが好ましい。質量比(光散乱性粒子/発光性ナノ結晶を含むナノ粒子)は、漏れ光の低減効果により優れ、インクジェット印刷時の連続吐出性に優れる観点から、5.0以下、2.0以下、1.5以下であることが好ましい。なお、光散乱性粒子による漏れ光低減は、次のようなメカニズムによると考えられる。すなわち、光散乱性粒子が存在しない場合、バックライト光は画素部内をほぼ直進して通過するのみであり、発光粒子90に吸収される機会が少ないと考えられる。一方、光散乱性粒子を発光粒子90と同一の画素部内に存在させると、その画素部内でバックライト光が全方位に散乱され、それを発光粒子90が受光することができるため、同一のバックライトを用いていても、画素部における光吸収量が増大すると考えられる。結果的に、このようなメカニズムで漏れ光を防ぐことが可能になったと考えられる。
光散乱性粒子の含有量は、インク組成物の全質量を基準として、0.5~10質量%であることが好ましく、1~9質量%であることがより好ましく、2~8質量%であることが特に好ましい。
1-3.光重合性化合物
本発明のインク組成物中に含まれる光重合性化合物は、硬化物中においてバインダーとして機能する、光(活性エネルギー線)の照射によって重合する化合物であり、光重合性のモノマー又はオリゴマーを用いることができる。これらは、基本的には光重合開始剤とともに用いられる。
光重合性化合物は、ラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、アニオン重合性化合物等を用いることができるが、速硬化性の観点から、ラジカル重合性化合物を用いる事が好ましい。ラジカル重合性化合物は、例えば、エチレン性不飽和基を有する化合物である。本明細書において、エチレン性不飽和基とは、エチレン性不飽和結合(重合性炭素-炭素二重結合)を有する基を意味する。エチレン性不飽和基を有する化合物におけるエチレン性不飽和結合の数(例えばエチレン性不飽和基の数)は、例えば、1~4である。
エチレン性不飽和基を有する化合物としては、例えば、ビニル基、ビニレン基、ビニリデン基、(メタ)アクリロイル基等のエチレン性不飽和基を有する化合物が挙げられる。外部量子効率をより向上させることができる観点では、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、単官能又は多官能の(メタ)アクリレートがより好ましく、単官能又は二官能の(メタ)アクリレートが更に好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及びそれに対応する「メタクリロイル基」を意味する。「(メタ)アクリレート」との表現についても同様である。また、単官能の(メタ)アクリレートとは、(メタ)アクリロイル基を1つ有する(メタ)アクリレートを意味し、多官能の(メタ)アクリレートとは、(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する(メタ)アクリレートを意味する。
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、こはく酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、N-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]フタルイミド、N-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]テトラヒドロフタルイミド等が挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートは、2官能(メタ)アクリレート、3官能(メタ)アクリレート、4官能(メタ)アクリレート、5官能(メタ)アクリレート、6官能(メタ)アクリレート等である。例えば、ジオール化合物の2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、トリオール化合物の2つまたは3つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジまたはトリ(メタ)アクリレート等を用いることができる。
2官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、1モルのネオペンチルグリコールに4モル以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、1モルのビスフェノールAに2モルのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、1モルのトリメチロールプロパンに3モル以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるトリオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、1モルのビスフェノールAに4モル以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
3官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1モルのトリメチロールプロパンに3モル以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるトリオールの3つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
4官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
5官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
6官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
本発明のインク組成物において、硬化可能成分を、光重合性化合物のみ又はそれを主成分として構成する場合には、光重合性化合物としては、重合性官能基を1分子中に2以上有する2官能以上の光重合性化合物を必須成分として用いることが、硬化物の耐久性(強度、耐熱性等)をより高めることができることからより好ましい。
該インク組成物を調製した際の粘度安定性に優れる観点、吐出安定性により優れる観点および発光粒子塗膜の製造時における硬化収縮に起因する塗膜の平滑性の低下を抑制し得る観点から、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを組み合わせて用いることが好ましい。
光重合性化合物の分子量は、例えば、50以上であり、100以上又は150以上であってもよい。光重合性化合物の分子量は、例えば、500以下であり、400以下又は300以下であってもよい。インクジェットインクとしての粘度と、吐出後のインクの揮発性を両立しやすい観点から、好ましくは50~500であり、より好ましくは100~400である。
インク組成物の硬化物の表面のべたつき(タック)を低減する観点では、光重合性化合物として、環状構造を有するラジカル重合性化合物を用いることが好ましい。環状構造は、芳香環構造であっても非芳香環構造であってもよい。環状構造の数(芳香環及び非芳香環の数の合計)は、1又は2以上であるが、3以下であることが好ましい。環状構造を構成する炭素原子の数は、例えば、4以上であり、5以上又は6以上であることが好ましい。炭素原子の数は、例えば20以下であり、18以下であることが好ましい。
芳香環構造は、炭素数6~18の芳香環を有する構造であることが好ましい。炭素数6~18の芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環等が挙げられる。芳香環構造は、芳香族複素環を有する構造であってもよい。芳香族複素環としては、例えば、フラン環、ピロール環、ピラン環、ピリジン環等が挙げられる。芳香環の数は、1であっても、2以上であってもよいが3以下であることが好ましい。有機基は、2以上の芳香環が単結合により結合した構造(例えば、ビフェニル構造)を有していてもよい。
非芳香環構造は、例えば、炭素数5~20の脂環を有する構造であることが好ましい。炭素数5~20の脂環としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環等のシクロアルカン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロヘプテン環、シクロオクテン環等のシクロアルケン環などが挙げられる。脂環は、ビシクロウンデカン環、デカヒドロナフタレン環、ノルボルネン環、ノルボルナジエン環、イソボルニル環等の縮合環であってもよい。非芳香環構造は、非芳香族複素環を有する構造であってもよい。非芳香族複素環としては、例えば、テトラヒドロフラン環、ピロリジン環、テトラヒドロピラン環、ピぺリジン環等が挙げられる。
環状構造を有するラジカル重合性化合物は、好ましくは、環状構造を有する単官能又は多官能(メタ)アクリレートであり、より好ましくは環状構造を有する単官能(メタ)アクリレートである。具体的には、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル( メタ) アクリレート等が好ましく用いられる。
環状構造を有するラジカル重合性化合物の含有量は、インク組成物の表面のべたつき(タック)を抑制しやすい観点、インクジェットインクとして適正な粘度が得られやすく、優れた吐出性が得られやすい観点から、インク組成物中における光重合性化合物の全質量を基準として、3~85質量%であることが好ましく、5~65質量%であることがより好ましく、10~45質量%であることがさらに好ましく、15~35質量%であることが特に好ましい。
優れた吐出性が得られやすい観点では、インク組成物として、炭素数が3以上である直鎖構造を有するラジカル重合性化合物を用いることが好ましく、炭素数が4以上である直鎖構造を有するラジカル重合性化合物を用いることがより好ましい。該直鎖構造とは、炭素数3以上の炭化水素鎖を表す。直鎖構造を有するラジカル重合性化合物は、直鎖構造を構成する炭素原子に直結した水素原子がメチル基又はエチル基に置換されていてもよいが、置換される数は3以下であることが好ましい。炭素数が4以上である直鎖構造を有するラジカル重合性化合物は、該直鎖構造が水素原子以外の原子が枝分かれせずに連なっている構造であることが好ましく、炭素原子及び水素原子の他に、酸素原子等のヘテロ原子を有していてもよい。すなわち、直鎖構造は、炭素原子が直鎖状に3つ以上連続する構造に限られず、3つ以上の炭素原子が酸素原子等のヘテロ原子を介して結直鎖状に連なる構造であってもよい。直鎖構造は、不飽和結合を有していてもよいが、好ましくは飽和結合のみからなる。直鎖構造を構成する炭素原子の数は、好ましくは5以上であり、より好ましくは6以上であり、更に好ましくは7以上である。直鎖構造を構成する炭素原子の数は、好ましくは25以下であり、より好ましくは20以下であり、更に好ましくは15以下である。なお、炭素数の合計が3以上である直鎖構造(直鎖構造を形成する炭素原子に直結した水素原子が置換されたメチル基又はエチル基の炭素原子は数に含まない)を有するラジカル重合性化合物は、吐出性の観点から、環状構造を有しないことが好ましい。
直鎖構造は、例えば、炭素数が4以上の直鎖アルキル基を有する構造であることが好ましい。炭素数が4以上の直鎖アルキル基としては、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等が挙げられる。このような構造を有するラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリロイルオキシ基に上記直鎖アルキル基が直接結合してなるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
直鎖構造は、例えば、炭素数が4以上の直鎖アルキレン基を有する構造であることが好ましい。炭素数が4以上の直鎖アルキレン基としては、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基等が挙げられる。このような構造を有するラジカル重合性化合物としては、2つの(メタ)アクリロイルオキシ基が上記直鎖アルキレン基で結合されてなるアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
直鎖構造は、例えば、直鎖アルキル基と1以上の直鎖アルキレン基が酸素原子を介して結合した構造(アルキル(ポリ)オキシアルキレン基を有する構造)であることが好ましい。直鎖アルキレン基の数は2以上であり、6以下であることが好ましい。直鎖アルキレン基の数が2以上である場合、2以上のアルキレン基は、同一であっても異なっていてもよい。直鎖アルキル基及び直鎖アルキレン基の炭素数は、1以上であればよく、2以上又は3以上であってもよいが、4以下であることが好ましい。直鎖アルキル基としては、上述した炭素数が4以上の直鎖アルキル基の他、メチル基、エチル基及びプロピル基が挙げられる。直鎖アルキレン基としては、上述した炭素数が4以上の直鎖アルキレン基の他、メチレン基、エチレン基及びプロピレン基が挙げられる。このような構造を有するラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリロイルオキシ基に上記アルキル(ポリ)オキシアルキレン基が直接結合してなるアルキル(ポリ)オキシアルキレン(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
炭素数が3以上である直鎖構造を有するラジカル重合性化合物の含有量は、インクジェットインクとして適正な粘度が得られやすく、優れた吐出性が得られやすい観点、インク組成物の硬化性に優れる観点、インク組成物の表面のべたつき(タック)を抑制しやすい観点から、インク組成物中における光重合性化合物の全質量を基準として、10~90質量%であることが好ましく、15~80質量%であることがより好ましく、20~70質量%であることが特に好ましい。
光重合性化合物としては、画素部の表面の均一性に優れる観点から、2種以上のラジカル重合性化合物を用いることが好ましく、上述した環状構造を有するラジカル重合性化合物と、上述した炭素数が3以上である直鎖構造を有するラジカル重合性化合物と、を組み合わせて用いることがより好ましい。外部量子効率を向上させるために、発光性ナノ結晶を含むナノ粒子の量を増やした場合には、画素部の表面の均一性が低下することがあるが、このような場合にも、上記光重合性化合物の組み合わせによれば、表面の均一性に優れた画素部が得られる傾向がある。
上述した環状構造を有するラジカル重合性化合物と、上述した炭素数が3以上である直鎖構造を有するラジカル重合性化合物と、を組み合わせて用いる場合、環状構造を有するラジカル重合性化合物の含有量MCに対する、炭素数が3以上である直鎖構造を有するラジカル重合性化合物の含有量MLの質量比(ML/MC)は、画素部の表面の均一性に優れる観点から、0.05~5であることが好ましく、0.1~3.5であることがより好ましく、0.1~2であることが特に好ましい。
光重合性化合物は、信頼性に優れる画素部(インク組成物の硬化物)が得られやすい観点から、アルカリ不溶性であることが好ましい。本明細書中、光重合性化合物がアルカリ不溶性であるとは、1質量%の水酸化カリウム水溶液に対する25℃における光重合性化合物の溶解量が、光重合性化合物の全質量を基準として、30質量%以下であることを意味する。光重合性化合物の上記溶解量は、好ましくは、10質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。
該インク組成物中に含まれる光重合性化合物の含有量は、インクジェットインクとして適正な粘度が得られやすい観点、インク組成物の硬化性が良好となる観点、並びに、画素部(インク組成物の硬化物)の耐溶剤性及び耐磨耗性が向上する観点、及び、より優れた光学特性(例えば外部量子効率)が得られる観点から、インク組成物の全質量を基準として、70~95質量%であることが好ましく、75~93質量%であることがより好ましく、80~90質量%であることがさらに好ましい。
1-4.光重合開始剤
本発明のインク組成物中に用いられる光重合開始剤は、例えば光ラジカル重合開始剤が挙げられる。光ラジカル重合開始剤としては、分子開裂型又は水素引き抜き型の光ラジカル重合開始剤が好適である。
分子開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキサイド等が好適に用いられる。これら以外の分子開裂型の光ラジカル重合開始剤として、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン及び2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オンを併用してもよい。
水素引き抜き型の光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルスルフィド等が挙げられる。分子開裂型の光ラジカル重合開始剤と水素引き抜き型の光ラジカル重合開始剤とを併用してもよい。
本発明のインク組成物中に用いられる光重合開始剤は、少なくとも1種以上のアシルホスフィンオキサイド系化合物を含有することが好ましい。これにより、塗膜の内部硬化性に優れ、かつ硬化膜の初期着色度が小さい塗膜を形成することができる。特に、少なくとも1種以上のアシルホスフィンオキサイド系化合物を含有する場合には、365ナノメートル、385ナノメートル、395ナノメートル又は405ナノメートル等、特定波長を中心とする±15ナノメートル域の狭スペクトル出力を有する紫外発光ダイオード(UV-LED)に適しており、好ましい。
さらに、該光重合開始剤として、アシルホスフィンオキサイド系化合物を用いる場合、モノアシルホスフィンホスフィンオキサイド系化合物1種以上と、ビスアシルホスフィンホスフィンオキサイド系化合物1種以上とを併用することがより好ましい。これらを併用することにより、インク粘度の低減と、光重合性開始剤の析出抑制とを確実に両立することが可能となる。
モノアシルホスフィンホスフィンオキサイド系化合物としては、特に限定されないが、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンホスフィンオキサイド、エトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンホスフィンオキサイド、2,4,6-トリエチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリフェニルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドが挙げられる。これらの中でも、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドであることが好ましい。
モノアシルホスフィンオキサイド系化合物の市販品としては、例えば、Omnirad(登録商標) TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド)、Omnirad TPO-L(エトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド)(以上、IGM Resins B.V.社製)が挙げられる。
ビスアシルホスフィンオキサイド系化合物としては、特に限定されないが、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイドが挙げられる。これらの中でも、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドであることが好ましい。
ビスアシルホスフィンオキサイド系化合物の市販品としては、例えば、Omnirad 819(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド)(IGM Resins B.V.社製)が挙げられる。
光重合開始剤の含有量は、光重合性化合物への溶解性の観点、インク組成物の硬化性の観点、画素部(インク組成物の硬化物)の経時安定性(外部量子効率の維持安定性)の観点から、光重合性化合物100質量%に対して、0.1~20質量%であることが好ましく、0.5~15質量%であることがより好ましく、1~10質量%であることがさらに好ましく、3~7質量%であることが特に好ましい。
1-5.反応性シリコーン化合物
本発明における反応性シリコーン化合物とは、重合性官能基を有するシリコーン化合物である。具体的には、1つ以上のラジカル重合性官能基を有すると共に、ジメチルシロキサン構造を繰り返し単位として有する。ジメチルポリシロキサンは、ポリジメチルシロキサンとも呼ばれる。
前記反応性シリコーン化合物は、下記式(I)で表される構造単位を有すると共に、当該構造単位の少なくとも一方の末端にスペーサー基を介して重合性官能基を有するシリコーン化合物であることが好ましい。スペーサー基は、2価の連結基を表す。2価の連結基として、例えば、-O-、-N-、アルキレン基、アルキルエーテル基、アルキルエステル基が挙げられる。
或いは、前記反応性シリコーン化合物は、前記反応性シリコーン化合物が、下記式(I)で表される構造単位と、下記式(II)で表される構造単位とを有するシリコーン化合物であることが好ましい。
式(II)中、Xは、炭素原子数1から30の直鎖もしくは分岐鎖状のアルキレン基を表すが、当該アルキレン基中の1つの-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は、各々独立して-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-NH-、-NH-CO-から選択される基によって置換されてもよく、当該アルキレン基中の任意の水素原子はヒドロキシ基に置換されてもよく、R1は、水素原子又は重合性官能基を表す。前記反応性シリコーン化合物中に式(II)で表される構造単位が複数含まれる場合、複数のR1は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
反応性シリコーン化合物において、上記式(I)で表される構造単位及び式(II)で表される構造単位は、それぞれランダムに配置されていてもよい。
重合性官能基としては、ラジカル重合性の光重合性化合物を含むインク組成物における硬化プロセスにより塗膜中に固定化されやすい観点から、アクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい。前記反応性シリコーン化合物は、インク組成物中に1種又は2種以上を含有してもよい。
前記反応性シリコーン化合物中の重合性基の数は、架橋密度の向上を目的として、2官能以上の化合物が好ましく、反応性シリコーン化合物の両末端にアクリロイル基あるいはメタクリロイル基を有する化合物、あるいは、反応性シリコーン化合物の側鎖末端にアクリロイル基あるいはメタクリロイル基を有する化合物がより好ましい。
前記反応性シリコーン化合物の具体例としては、例えば、下記式(2a)及び(2b)で表される重合体等が好ましい。
式(2a)及び(2b)中、式中、R3は炭素原子数が1~6のアルキル基を表し、R4及びR5は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素原子数が1~3のアルキレン基、炭素原子数が1~3のアルキレンオキシ基を表し、R6及びR7は、それぞれ独立して、メタクリロイル基、アクリロイル基を表し、
Z1及びZ2は、それぞれ独立して、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子を含むヘテロ原子で置換されていてもよい、炭素原子数が1~10の直鎖又は分岐のアルキレン基を表すが、Z1及びZ2が複数現れる場合には各々が同一であっても異なっていてもよく、
m1及びn1は、それぞれ独立して1~100の整数を表し、m2は1~75の整数を表し、p1及びq1は、それぞれ独立して0~10の整数を表すが、p1+q1>0を満たし、s1及びs2は、それぞれ独立して0~20の整数を表す。
一般式(2a)で表される反応性シリコーン化合物としては、側鎖に存在するアルキレンエーテル基あるいはグリシジル基由来のヒドロキシ基が光重合性化合物との相溶性に優れる観点から、具体的には、下記一般式(2a-1)及び式(2a-2)で表されることが好ましい。
式(2a-1)及び式(2a-2)中、R8は、水素原子あるいはメチル基を表し、p11は10~15の整数を表し、q11は0~5の整数を表し、m11は20~25の整数を表し、n11は1~5の整数を表し、m12は1~5の整数を表し、n12は1~5の整数を表す。
一般式(2a-1)で表される反応性シリコーン化合物としては、例えば、Tego(登録商標) Rad2300(分子量2000~4500、粘度200~700mPa・s)、Tego Rad2200N(分子量2000~4500、粘度700~2500mPa・s)、Tego Rad2250(分子量1500~4500、粘度250~700mPa・s)等が挙げられる。
一般式(2a-2)で表される反応性シリコーン化合物としては、例えば、Tego Rad2100(分子量1000~2500、粘度590mPa・s)、Tego Rad2500(分子量1000~2500、粘度150mPa・s)(以上、デグサ社製)等が挙げられる。
一般式(2b)で表される反応性シリコーン化合物としては、主鎖に存在するアルキル基あるいはアルキレンエーテル基が光重合性化合物との相溶性に優れる観点から、具体的には、下記一般式(2b-1)で表されることが好ましい。
式(2b-1)中、R9は、水素原子あるいはメチル基を表し、X12及びX22は、それぞれ独立して、炭素原子数が2~6のアルキレン基、単結合を表すが、該アルキレン基中の1つの-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は、各々独立して-O-、-CO-、-COO-、-OCO-から選択される基によって置換されてもよく、Z12及びZ22は、それぞれ独立して、-O-、-N-、アルキレン基、単結合を表し、m21は1~75の整数を表し、s21及びs22は、それぞれ独立して、1~100の整数を表す。
一般式(2b-1)で表される反応性シリコーン化合物としては、例えば、X-22-164B(分子量3200、粘度54mPa・s)、X-22-164C(分子量4800、粘度88mPa・s)、X-24-164E(分子量7200、粘度184mPa・s)、X-22-2445(分子量3200、粘度54mPa・s)(以上、信越化学工業株式会社製)、BYK-UV3500(分子量5000、粘度470mPa・s)、BYK-UV3570(分子量3000)(以上、ビックケミー・ジャパン社製)等が挙げられる。
前記反応性シリコーン化合物の25℃における粘度は、50mPa・s以上、100mPa・s以上、500mPa・s以上であることが好ましく、5000mPa・s以下、又は3000mPa・s以下であることが好ましい。粘度が50mPa・s以上であると、光変換層の面上により優れ、また、粘度が2000mPa・s以下であるとインク組成物において白濁が生じない。なお、反応性シリコーン化合物の25℃における粘度は、E型粘度計により測定される。
前記反応性シリコーン化合物の重量平均分子量Mwは、1000以上、2000以上、5000以上、又は10000以上であってよく、500000以下、100000以下、又は50000以下であってよい。反応性シリコーン化合物の分子量は重量平均分子量(Mw)であり、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される、ポリスチレン換算で求められる重量平均分子量を意味する。
前記反応性シリコーン化合物の含有量は、インクジェットプロセスへの適合性と光学特性及びその再現性の点で更に優れる観点から、インク組成物の不揮発分の総量に対して、0.001質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.02質量%以上であることが特に好ましい。反応性シリコーン化合物の含有量は、高濃度の発光性ナノ結晶粒子を含有するインク組成物の粘度をインクジェットにより適した粘度及び表面張力とする観点から、インク組成物の不揮発分の総量に対して、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%以下であることが特に好ましい。特に、反応性シリコーン化合物が光重合性化合物と反応したり、発光性ナノ結晶粒子と相互作用して増粘したりすることを抑制する観点から、反応性シリコーン化合物の含有量が上記の上限値以下であることが好ましい。
1-5.その他の成分
インク組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上述した成分以外の成分を更に含有していてもよい。かかる成分としては、酸化防止剤、重合禁止剤、増感剤、分散剤、連鎖移動剤、熱可塑性樹脂等が挙げられる。
1-5-1.酸化防止剤
インク組成物は、本発明の効果を阻害しない限り、酸化防止剤として機能する化合物を含有してよい。このような化合物としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等の従来公知のものが挙げられる。これらの中でも、外部量子効率の低下をより一層抑制できる傾向があることから、フェノール系酸化防止剤及びリン酸エステル系酸化防止剤を用いることが好ましい。
フェノール系酸化防止剤は、好ましくはヒンダードフェノール系化合物である。ヒンダードフェノール系化合物の具体例としては、例えば、「2,4,6-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)メシチレン」(製品名:アデカスタブ(登録商標)AO-330(株式会社ADEKA製))、「2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン」(製品名:IRGANOX(登録商標)565(BASFジャパン株式会社製))、「ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]」(製品名:IRGANOX1010(BASFジャパン株式会社製)、製品名:アデカスタブAO-60(株式会社ADEKA製))、「オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート」(製品名:IRGANOX1076(BASFジャパン株式会社製)、製品名:アデカスタブAO-50(株式会社ADEKA製))、「2,6-ジ-t-ブチル-4-ノニルフェノール」(製品名:Ionol(登録商標) 926(エボニック社製))、「チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]」(製品名:IRGANOX1035(BASFジャパン株式会社製))、「2,2’-メチレンビス-(6-(1-メチルシクロヘキシル)-p-クレゾール)」(製品名:ノンフレックス(登録商標)CBP(精工化学株式会社製))、「N,N-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナムアミド)」(製品名:IRGANOX1098(BASFジャパン株式会社製))、「2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン」、「2,5-ジ-t-アミル-ヒドロキノン、2,4-ジメチル-6-(1-メチルシクロヘキシル)-フェノール」(製品名:ANTAGE(登録商標) DBH(川口化学工業株式会社製))、「6-t-ブチル-o-クレゾール」、「6-t-ブチル-2,4-キシレノール」(製品名:Ionol K(エボニック社製))、「2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール」(製品名:IRGANOX1141(BASFジャパン株式会社製))、「2,4-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール」(製品名:IRGANOX1520(BASFジャパン株式会社製))、「2,4-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾール」(製品名:IRGANOX1726(BASFジャパン株式会社製))、「エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]」(製品名:IRGANOX245(BASFジャパン株式会社製))、「3,9-ビス[2-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン」(製品名:アデカスタブAO-80(株式会社ADEKA製)、製品名:SUMILIZER(登録商標) GA-80(住友化学株式会社製))、「2-t-アミルフェノール」、「2-t-ブチルフェノール」、「2,4-ジ-t-ブチルフェノール」、「1,1,3-トリス-(2’-メチル-4’-ヒドロキシ-5’-t-ブチルフェニル)-ブタン」(製品名:アデカスタブAO-30(株式会社ADEKA製)、製品名:ヨシノックス930(吉富製薬株式会社製))、「4,4’-ブチリデン-ビス-(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)」(製品名:アデカスタブAO-40(株式会社ADEKA製)、製品名:SUMILIZER BBM-S(住友化学株式会社製))等を挙げることができる。
リン酸エステル系酸化防止剤の具体例としては、アデカスタブ1178(製品名、株式会社ADEKA製)、JP-351(製品名、城北化学工業株式会社製)等として市販されている「亜リン酸トリス(4-ノニルフェニル)」(融点6℃、分子量689)、アデカスタブ2112(製品名、株式会社ADEKA製)、IRGAFOS168(製品名、BASFジャパン株式会社製)、JP-650(製品名、城北化学工業株式会社製)等として市販されている「亜リン酸トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル」(融点183℃、分子量647)、アデカスタブHP-10(製品名、株式会社ADEKA製)等として市販されている「2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)-6-[(2-エチルヘキシル)オキシ]-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン」(融点148℃、分子量583)、アデカスタブPEP-8(製品名、株式会社ADEKA製)、JPP-2000PT(製品名、城北化学工業株式会社製)等として市販されている「3,9-ビス(オクタデシルオキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン」(軟化点52℃、分子量733)、アデカスタブPEP-24(製品名、株式会社ADEKA製)等として市販されている「3,9-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン」(融点165℃、分子量604)、アデカスタブPEP-36(製品名、株式会社ADEKA製)等として市販されている「3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン」(融点237℃、分子量633)、アデカスタブTPP(製品名、株式会社ADEKA製)、JP-360(製品名、城北化学工業株式会社製)等として市販されている「トリフェニルホスファイト」(融点25℃、分子量310)、JP-351(製品名、城北化学工業株式会社製)等として市販されている「トリスノニルフェニルホスファイト」(融点20℃以下、分子量689)、JP-3CP「トリクレジルホスファイト」(融点20℃以下、分子量352)、JP-302(製品名、城北化学工業株式会社製)等として市販されている「トリエチルホスファイト」(融点-122℃、分子量166)、JP-308E(製品名、城北化学工業株式会社製)等として市販されている「トリス(2-エチルヘキシルホスファイト」(融点20℃以下、分子量419)、JP-310(製品名、城北化学工業株式会社製)、アデカスタブ3010(製品名、株式会社ADEKA製)等として市販されている「トリデシルホスファイト」(融点20℃以下、分子量503)、JP-312L(製品名、城北化学工業株式会社製)等として市販されている「トリラウリルホスファイト」(融点20℃以下、分子量589)、JP-333(製品名、城北化学工業株式会社製)等として市販されている「トリス(トリデシル)ホスファイト」(融点20℃以下、分子量629)、JP-318-O(製品名、城北化学工業株式会社製)等として市販されている「トリオレイルホスファイト」(融点20℃以下、分子量833)、JPM-308(製品名、城北化学工業株式会社製)、アデカスタブC(製品名、株式会社ADEKA製)等として市販されている「ジフェニルモノ(2-エチルヘキシル)ホスファイト」(融点20℃以下、分子量346)、JPM-311(製品名、城北化学工業株式会社製)等として市販されている「ジフェニルモノデシルホスファイト」(融点18℃、分子量375)、JPM-313(製品名、城北化学工業株式会社製)等として市販されている「ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト」(融点20℃以下、分子量416)、、JA-805(製品名、城北化学工業株式会社製)、アデカスタブ1500(製品名、株式会社ADEKA製)等として市販されている「」(融点20℃以下、分子量1112)、JPE-10(製品名、城北化学工業株式会社製)等として市販されている「ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト」(融点20℃以下、分子量508)、JP-318E(製品名、城北化学工業株式会社製)等として市販されている「トリステアリルホスファイト」(融点45~52℃、分子量839)、HOSTANOX(登録商標) P-EPQ(製品名、クラリアントケミカルズ株式会社製)等として市販されている「テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-1,1-ビフェニル-4,4’-ジイルビスホスフォナイト」(融点85~100℃、分子量1035)、GSY-P100(製品名、堺化学工業株式会社製)等として市販されている「テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスフォナイト」(融点235~240℃、分子量1092)、等があげられる。
前記リン酸エステル系酸化防止剤は、インク組成物の貯蔵安定性及び光変換層の熱による外部量子効率の低下を抑制できる観点から、亜リン酸ジエステル系化合物であることが好ましい。
酸化防止剤の含有量は、外部量子効率の低下がより抑制されやすくなる観点から、インク組成物の全質量を基準として、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましく、5質量%以上であることが特に好ましい。酸化防止剤の含有量は、インク組成物の全質量を基準として、10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、3質量%以下であることが特に好ましい。
1-5-2.重合禁止剤
インク組成物は、重合禁止剤を更に含有しても良い。重合禁止剤は、例えば、フェノール系化合物、キノン系化合物、アミン系化合物、チオエーテル系化合物、N-オキシル化合物、ニトロソ系化合物等が挙げられる。
重合禁止剤の含有量は、インク組成物に含まれる光重合性化合物の総量に対して、0.01~1.0質量%であることが好ましく、0.02~0.5質量%であることがより好ましい。
1-5-3.増感剤
増感剤としては、光重合性化合物と付加反応を起こさないアミン類を用いることができる。増感剤としては、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p-ジエチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N-ジメチルベンジルアミン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
1-5-4.分散剤
分散剤は、インク組成物中で発光性ナノ結晶を含むナノ粒子の分散安定性を向上させ得る化合物であれば、特に限定されない。分散剤は、低分子分散剤と高分子分散剤とに分類される。本明細書中において、「低分子」とは、重量平均分子量(Mw)が5,000以下の分子を意味し、「高分子」とは、重量平均分子量(Mw)が5,000超の分子を意味する。なお、本明細書中において、「重量平均分子量(Mw)」は、ポリスチレンを標準物質としたゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を用いて測定された値を採用することができる。
低分子分散剤としては、例えば、オレイン酸;リン酸トリエチル、TOP(トリオクチルフォスフィン)、TOPO(トリオクチルフォスフィンオキサイド)、ヘキシルホスホン酸(HPA)、テトラデシルホスホン酸(TDPA)、オクチルホスフィン酸(OPA)のようなリン原子含有化合物;オレイルアミン、オクチルアミン、トリオクチルアミン、ヘキサデシルアミンのような窒素原子含有化合物;1-デカンチオール、オクタンチオール、ドデカンチオール、アミルスルフィドのような硫黄原子含有化合物等が挙げられる。
一方、高分子分散剤としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリウレア系樹脂、アミノ系樹脂、ポリアミン系樹脂(ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン等)、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、ウッドロジン、ガムロジン、トール油ロジンのような天然ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、水添ロジン、酸化ロジン、マレイン化ロジンのような変性ロジン、ロジンアミン、ライムロジン、ロジンアルキレンオキシド付加物、ロジンアルキド付加物、ロジン変性フェノールのようなロジン誘導体等が挙げられる。
高分子分散剤の市販品としては、例えば、ビックケミー社製のDISPERBYK(登録商標)シリーズ、エボニック社製のTEGO Dispersシリーズ、BASF社製のEFKAシリーズ、日本ルーブリゾール社製のSOLSPERSE(登録商標)シリーズ、味の素ファインテクノ社製のアジスパーシリーズ、楠本化成製のDISPARLON(登録商標)シリーズ、共栄社化学社製のフローレンシリーズ等を使用することができる。
分散剤の配合量は、100質量部の発光微粒子910、90に対して、それぞれ0.05~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましい。
1-5-5.連鎖移動剤
連鎖移動剤は、インク組成物の基材との密着性をより向上させること等を目的として使用される成分である。
連鎖移動剤としては、例えば、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、メルカプタン化合物、スルフィド化合物等が挙げられる。
連鎖移動剤の添加量は、インク組成物に含まれる光重合性化合物の総量に対して、0.1~10質量%であることが好ましく、1.0~5質量%であることがより好ましい。
1-5-6.熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレンマレイン酸系樹脂、スチレン無水マレイン酸系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂等が挙げられる。
1-6.インク組成物の粘度
本発明に係るインク組成物の粘度は、例えば、インクジェット印刷時の吐出安定性の観点から、2mPa・s以上であることが好ましく、5mPa・s以上であることがより好ましく、7mPa・s以上であることがさらに好ましい。インク組成物の粘度は、20mPa・s以下であることが好ましく、15mPa・s以下であることがより好ましく、12mPa・s以下であることがさらに好ましい。インク組成物の粘度が2mPa・s以上である場合、吐出ヘッドのインク吐出孔の先端におけるインク組成物のメニスカス形状が安定するため、インク組成物の吐出制御(例えば、吐出量及び吐出のタイミングの制御)が容易となる。一方、粘度が20mPa・s以下である場合、インク吐出孔からインク組成物を円滑に吐出させることができる。インク組成物の粘度は、2~20mPa・sであることが好ましく、5~15mPa・sであることがより好ましく、7~12mPa・sであることがさらに好ましい。インク組成物の粘度は、例えば、E型粘度計によって測定される。インク組成物の粘度は、例えば、光重合性化合物、光重合開始剤等を変更することで所望の範囲に調整することができる。
1-7.インク組成物の表面張力
本発明に係るインク組成物の表面張力は、インクジェット方式に適した表面張力であることが好ましく、具体的には、20~40mN/mの範囲であることが好ましく、25~35mN/mであることがより好ましい。表面張力を該範囲とすることで飛行曲がりの発生を抑制することができる。なお、飛行曲がりとは、インク組成物をインク吐出孔から吐出させたとき、インク組成物の着弾位置が目標位置に対して30μm以上のずれを生じることをいう。表面張力が40mN/m以下である場合、インク吐出孔の先端におけるメニスカス形状が安定するため、インク組成物の吐出制御(例えば、吐出量及び吐出のタイミングの制御)が容易となる。一方、表面張力が20mN/m以下である場合、飛行曲がりの発生を抑制できる。すなわち、着弾すべき画素部形成領域に正確に着弾されずにインク組成物の充填が不十分な画素部が生じたり、着弾すべき画素部形成領域に隣接する画素部形成領域(又は画素部)にインク組成物が着弾し、色再現性が低下したりすることがない。インク組成物の表面張力は、例えば、上述のシリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などを併用することで所望の範囲に調整することができる。
1-8.インク組成物の調製方法
本発明のインク組成物、例えば、活性エネルギー線硬化性のインク組成物は、上記した各成分を配合することにより調製することができ、インクジェット用のインクとして用いることができる。インクジェット用インク組成物を調製する具体的な方法は、前記発光粒子90又は発光粒子91を有機溶剤中で合成、遠心分離により分取した沈殿物から有機溶剤を除去し、次いで光重合性化合物に分散させる。発光粒子90又は発光粒子91の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、3本ロールミル、ペイントコンディショナー、アトライター、分散攪拌機、超音波等の分散機を使用することにより行うことができる。さらに、この分散液に光重合開始剤及び酸化防止剤を添加、攪拌混合することにより調製することができる。また、光散乱性粒子を使用する場合は、該光散乱性粒子と高分子分散剤を混合、ビーズミルにより前記光重合性化合物へ分散させたミルベースを別途作成し、前記発光粒子と共に光重合性化合物、光重合開始剤とを混合することにより調製することができる。
次に、本発明に係るインク組成物の調製方法について具体的に説明する。インク組成物は、例えば、上述したインク組成物の構成成分を混合し、分散処理を行うことによって得ることができる。また、構成成分を個別に混合し、必要に応じて分散処理した分散液を準備し、各分散液を混合することによって得ることができる。以下では、インク組成物の製造方法の一例として、光散乱性粒子及び高分子分散剤を更に含有するインク組成物の製造方法を説明する。
光散乱性粒子の分散液を用意する工程では、光散乱性粒子、高分子分散剤及び光重合性化合物とを混合し、分散処理を行うことにより光散乱性粒子の分散液を調製することができる。混合及び分散処理は、ビーズミル、ペイントコンディショナー、遊星撹拌機等の分散装置を用いて行うことができる。上述の方法によると、光散乱性粒子の分散性が良好となり、光散乱性粒子の平均粒子径を所望の範囲に調整しやすい観点から、ビーズミル又はペイントコンディショナーを用いることが好ましい。
インク組成物の調製方法は、第2の工程の前に、発光粒子及び光重合性化合物とを含有する、発光粒子の分散液を用意する工程を更に備えていてもよい。この場合、第2の工程では、光散乱性粒子の分散液と、発光粒子の分散液と、光重合開始剤と、酸化防止剤とを混合する。この方法によれば、発光粒子を充分に分散させることができる。そのため、画素部における漏れ光を低減することができると共に、吐出安定性に優れるインク組成物を容易に得ることができる。発光粒子の分散液を用意する工程では、光散乱性粒子の分散液を用意する工程と同様の分散装置を用いて、発光粒子と、光重合性化合物との混合及び分散処理を行ってよい。
本実施形態のインク組成物を、インクジェット方式用のインク組成物として用いる場合には、圧電素子を用いた機械的吐出機構による、ピエゾジェット方式のインクジェット記録装置に適用することが好ましい。ピエゾジェット方式では、吐出に際して、インク組成物が瞬間的に高温に晒されることがなく、発光粒子の変質が起こり難いため、所望の発光特性を備えたカラーフィルタ画素部(光変換層)を得ることができる。
以上、カラーフィルタ用インク組成物の一実施形態について説明したが、上述した実施形態のインク組成物は、インクジェット方式の他に、例えば、フォトリソグラフィ方式で用いることもできる。この場合、インク組成物は、バインダーポリマーとしてアルカリ可溶性樹脂を含有する。
インク組成物をフォトリソグラフィ方式で用いる場合、まず、インク組成物を基材上に塗布し、インク組成物が溶剤を含有する場合には、さらにインク組成物を乾燥させて塗布膜を形成する。このようにして得られる塗布膜は、アルカリ現像液に可溶性であり、アルカリ現像液で処理されることでパターニングされる。この際、アルカリ現像液は、現像液の廃液処理の容易さ等の観点から、水溶液であることが大半を占めるため、インク組成物の塗布膜は水溶液で処理されることとなる。一方、発光粒子(量子ドット等)を用いたインク組成物の場合、発光粒子が水に対して不安定であり、発光性(例えば蛍光性)が水分により損なわれる。このため本実施形態においては、アルカリ現像液(水溶液)で処理する必要のない、インクジェット方式が好ましい。
また、インク組成物の塗布膜に対してアルカリ現像液による処理を行わない場合でも、インク組成物がアルカリ可溶性である場合、インク組成物の塗布膜が大気中の水分を吸収しやすく、時間が経過するにつれて発光粒子(量子ドット等)の発光性(例えば蛍光性)が損なわれてゆく。この観点から、本実施形態においては、インク組成物の塗布膜はアルカリ不溶性であることが好ましい。すなわち、本実施形態のインク組成物は、アルカリ不溶性の塗布膜を形成可能なインク組成物であることが好ましい。このようなインク組成物は、光重合性化合物として、アルカリ不溶性の光重合性化合物を用いることにより得ることができる。インク組成物の塗布膜がアルカリ不溶性であるとは、1質量%の水酸化カリウム水溶液に対する25℃におけるインク組成物の塗布膜の溶解量が、インク組成物の塗布膜の全質量を基準として、30質量%以下であることを意味する。インク組成物の塗布膜の上記溶解量は、好ましくは、10質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。なお、インク組成物がアルカリ不溶性の塗布膜を形成可能なインク組成物であることは、インク組成物を基材上に塗布した後、溶剤を含む場合80℃、3分の条件で乾燥して得られる厚さ1μmの塗布膜の、上記溶解量を測定することにより確認できる。
2.発光粒子含有インク組成物の使用例
上述の発光粒子含有インク組成物は、例えば、インクジェットプリンター、フォトリソグラフィ、スピンコーター等、種々の方法によって基板上に被膜を形成し、この被膜を加熱して硬化させることにより硬化物を得ることができる。以下、青色有機LEDバックライトを備えた発光素子のカラーフィルタ画素部を発光粒子含有インク組成物にて形成する場合を例に挙げて説明する。
図3は、本発明の発光素子の一実施形態を示す断面図であり、図4および図5は、それぞれアクティブマトリックス回路の構成を示す概略図である。なお、図3では、便宜上、各部の寸法およびそれらの比率を誇張して示し、実際とは異なる場合がある。また、以下に示す材料、寸法等は一例であって、本発明は、それらに限定されず、その要旨を変更しない範囲で適宜変更することが可能である。以下では、説明の都合上、図3の上側を「上側」または「上方」と、上側を「下側」または「下方」と言う。また、図3では、図面が煩雑になることを避けるため、断面を示すハッチングの記載を省略している。
図3に示すように、発光素子100は、下基板1と、EL光源部200と、充填層10と、保護層11と、発光粒子90を含有し発光層として作用する光変換層12と、上基板13とをこの順に積層した構造を備える。光変換層12に含有される発光粒子90は、ポリマー被覆発光粒子90であってもよく、ポリマー層92で被覆されていない発光粒子91であってもよい。EL光源部200は、陽極2と、複数の層からなるEL層14と、陰極8と、図示しない偏光板と、封止層9とを順に備える。EL層14は、陽極2側から順次積層された正孔注入層3と、正孔輸送層4と、発光層5と、電子輸送層6と、電子注入層7とを含む。
かかる発光素子100は、EL光源部200(EL層14)から発せられた光を光変換層12によって吸収及び再放出するか或いは透過させ、上基板13側から外部に取り出すフォトルミネセンス素子である。このとき、光変換層12に含まれる発光粒子90によって所定の色の光に変換される。以下、各層について順次説明する。
<下基板1および上基板13>
下基板1および上基板13は、それぞれ発光素子100を構成する各層を支持および/または保護する機能を有する。発光素子100がトップエミッション型である場合、上基板13が透明基板で構成される。一方、発光素子100がボトムエミッション型である場合、下基板1が透明基板で構成される。ここで、透明基板とは、可視光領域の波長の光を透過可能な基板を意味し、透明には、無色透明、着色透明、半透明が含まれる。
透明基板としては、例えば、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の透明なガラス基板、石英基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)等で構成されるプラスチック基板(樹脂基板)、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅等で構成される金属基板、シリコン基板、ガリウム砒素基板等を用いることができる。これらの中でも、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラスからなるガラス基板を用いることが好ましい。具体的には、コーニング社製の「7059ガラス」、「1737ガラス」、「イーグル200(登録商標)」及び「イーグルXG(登録商標)」、旭硝子社製の「AN100」、日本電気硝子社製の「OA-10G」及び「OA-11」が好適である。これらは、熱膨脹率の小さい素材であり寸法安定性及び高温加熱処理における作業性に優れる。また、発光素子100に可撓性を付与する場合には、下基板1および上基板13には、それぞれ、プラスチック基板(高分子材料を主材料として構成された基板)、比較的厚さの小さい金属基板が選択される。
下基板1および上基板13の厚さは、それぞれ特に限定されないが、100~1,000μmの範囲であることが好ましく、300~800μmの範囲であることがより好ましい。
なお、発光素子100の使用形態に応じて、下基板1および上基板13のいずれか一方または双方を省略することもできる。
図4に示すように、下基板1上には、R、G、Bで示される画素電極PEを構成する陽極2への電流の供給を制御する信号線駆動回路C1および走査線駆動回路C2と、これらの回路の作動を制御する制御回路C3と、信号線駆動回路C1に接続された複数の信号線706と、走査線駆動回路C2に接続された複数の走査線707とを備えている。また、各信号線706と各走査線707との交差部近傍には、図5に示すように、コンデンサ701と、駆動トランジスタ702と、スイッチングトランジスタ708とが設けられている。
コンデンサ701は、一方の電極が駆動トランジスタ702のゲート電極に接続され、他方の電極が駆動トランジスタ702のソース電極に接続されている。駆動トランジスタ702は、ゲート電極がコンデンサ701の一方の電極に接続され、ソース電極がコンデンサ701の他方の電極および駆動電流を供給する電源線703に接続され、ドレイン電極がEL光源部200の陽極4に接続されている。
スイッチングトランジスタ708は、ゲート電極が走査線707に接続され、ソース電極が信号線706に接続され、ドレイン電極が駆動トランジスタ702のゲート電極に接続されている。また、本実施形態において、共通電極705は、EL光源部200の陰極8を構成している。なお、駆動トランジスタ702およびスイッチングトランジスタ708は、例えば、薄膜トランジスタ等で構成することができる。
走査線駆動回路C2は、走査線707を介して、スイッチングトランジスタ708のゲート電極に走査信号に応じた走査電圧を供給または遮断し、スイッチングトランジスタ708のオンまたはオフする。これにより、走査線駆動回路C2は、信号線駆動回路C1が信号電圧を書き込むタイミングを調整する。一方、信号線駆動回路C1は、信号線706およびスイッチングトランジスタ708を介して、駆動トランジスタ702のゲート電極に映像信号に応じた信号電圧を供給または遮断し、EL光源部200に供給する信号電流の量を調整する。
したがって、走査線駆動回路C2から走査電圧がスイッチングトランジスタ708のゲート電極に供給され、スイッチングトランジスタ708がオンすると、信号線駆動回路C1から信号電圧がスイッチングトランジスタ708のゲート電極に供給される。このとき、この信号電圧に対応したドレイン電流が電源線703から信号電流としてEL光源部200に供給される。その結果、EL光源部200は、供給される信号電流に応じて発光する。
<EL光源部200>
[陽極2]
陽極2は、外部電源から発光層5に向かって正孔を供給する機能を有する。陽極2の構成材料(陽極材料)としては、特に限定されないが、例えば、金(Au)のような金属、ヨウ化銅(CuI)のようなハロゲン化金属、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)のような金属酸化物等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
陽極2の厚さは、特に制限されないが、10~1,000nmの範囲であることが好ましく、10~200nmの範囲であることがより好ましい。
陽極2は、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法のような乾式成膜法により形成することができる。この際、フォトリソグラフィー法やマスクを用いた方法により、所定のパターンを有する陽極2を形成してもよい。
[陰極8]
陰極8は、外部電源から発光層5に向かって電子を供給する機能を有する。陰極8の構成材料(陰極材料)としては、特に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、銀、ナトリウム-カリウム合金、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、希土類金属等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
陰極8の厚さは、特に限定されないが、0.1~1,000nmの範囲であることが好ましく、1~200nmの範囲であることがより好ましい。
陰極3は、例えば、蒸着法やスパッタリング法のような乾式成膜法により形成することができる。
[正孔注入層3]
正孔注入層3は、陽極2から供給された正孔を受け取り、正孔輸送層4に注入する機能を有する。なお、正孔注入層3は、必要に応じて設けるようにすればよく、省略することもできる。
正孔注入層3の構成材料(正孔注入材料)としては、特に限定されないが、例えば、銅フタロシアニンのようなフタロシアニン化合物;4,4’,4’’-トリス[フェニル(m-トリル)アミノ]トリフェニルアミンのようなトリフェニルアミン誘導体;1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル、2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノ-キノジメタンのようなシアノ化合物;酸化バナジウム、酸化モリブデンのような金属酸化物;アモルファスカーボン;ポリアニリン(エメラルディン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT-PSS)、ポリピロールのような高分子等が挙げられる。これらの中でも、正孔注入材料としては、高分子であることが好ましく、PEDOT-PSSであることがより好ましい。また、上述の正孔注入材料は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
正孔注入層3の厚さは、特に限定されないが、0.1~500mmの範囲であることが好ましく、1~300nmの範囲であることがより好ましく、2~200nmの範囲であることがさらに好ましい。正孔注入層3は、単層構成であっても、2層以上が積層された積層構成であってもよい。
このような正孔注入層4は、湿式成膜法または乾式成膜法により形成することができる。正孔注入層3を湿式成膜法で形成する場合には、通常、上述の正孔注入材料を含有するインクを各種塗布法により塗布し、得られた塗膜を乾燥する。塗布法としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット印刷法(液滴吐出法)、スピンコート法、キャスト法、LB法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。一方、正孔注入層3を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スパッタリング法等を好適に用いることができる。
[正孔輸送層4]
正孔輸送層4は、正孔注入層3から正孔を受け取り、発光層6まで効率的に輸送する機能を有する。また、正孔輸送層4は、電子の輸送を防止する機能を有していてもよい。なお、正孔輸送層4は、必要に応じて設けるようにすればよく、省略することもできる。
正孔輸送層4の構成材料(正孔輸送材料)としては、特に限定されないが、例えば、TPD(N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(3-メチルフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’ジアミン)、α-NPD(4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル)、m-MTDATA(4、4’,4’’-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)のような低分子トリフェニルアミン誘導体;ポリビニルカルバゾール;ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)-ベンジジン](poly-TPA)、ポリフルオレン(PF)、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)-ベンジジン(Poly-TPD)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-コ-(4,4’-(N-(sec-ブチルフェニル)ジフェニルアミン))(TFB)、ポリフェニレンビニレン(PPV)のような共役系化合物重合体;およびこれらのモノマー単位を含む共重合体等が挙げられる。
これらの中でも、正孔輸送材料としては、トリフェニルアミン誘導体、置換基が導入されたトリフェニルアミン誘導体を重合することにより得られた高分子化合物であることが好ましく、置換基が導入されたトリフェニルアミン誘導体を重合することにより得られた高分子化合物であることがより好ましい。また、上述の正孔輸送材料は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
正孔輸送層4の厚さは、特に限定されないが、1~500nmの範囲であることが好ましく、5~300nmの範囲であることがより好ましく、10~200nmの範囲であることがさらに好ましい。正孔輸送層4は、単層構成であっても、2層以上が積層された積層構成であってもよい。
このような正孔輸送層4は、湿式成膜法または乾式成膜法により形成することができる。正孔輸送層4を湿式成膜法で形成する場合には、通常、上述の正孔輸送材料を含有するインクを各種塗布法により塗布し、得られた塗膜を乾燥する。塗布法としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット印刷法(液滴吐出法)、スピンコート法、キャスト法、LB法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。一方、正孔輸送層4を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スパッタリング法等を好適に用いることができる。
[電子注入層7]
電子注入層7は、陰極8から供給された電子を受け取り、電子輸送層6に注入する機能を有する。なお、電子注入層7は、必要に応じて設けるようにすればよく、省略することもできる。
電子注入層7の構成材料(電子注入材料)としては、特に制限されないが、例えば、Li2O、LiO、Na2S、Na2Se、NaOのようなアルカリ金属カルコゲナイド;CaO、BaO、SrO、BeO、BaS、MgO、CaSeのようなアルカリ土類金属カルコゲナイド;CsF、LiF、NaF、KF、LiCl、KCl、NaClのようなアルカリ金属ハライド;8-ヒドロキシキノリノラトリチウム(Liq)のようなアルカリ金属塩;CaF2、BaF2、SrF2、MgF2、BeF2のようなアルカリ土類金属ハライド等が挙げられる。これらの中でも、アルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ土類金属ハライド、アルカリ金属塩であることが好ましい。また、上述の電子注入材料は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
電子注入層7の厚さは、特に限定されないが、0.1~100nmの範囲であることが好ましく、0.2~50nmの範囲であることがより好ましく、0.5~10nmの範囲であることがさらに好ましい。電子注入層7は、単層構成であっても、2層以上が積層された積層構成であってもよい。
このような電子注入層7は、湿式成膜法または乾式成膜法により形成することができる。電子注入層7を湿式成膜法で形成する場合には、通常、上述の電子注入材料を含有するインクを各種塗布法により塗布し、得られた塗膜を乾燥する。塗布法としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット印刷法(液滴吐出法)、スピンコート法、キャスト法、LB法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。一方、電子注入層7を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スパッタリング法等が適用されうる。
[電子輸送層8]
電子輸送層8は、電子注入層7から電子を受け取り、発光層5まで効率的に輸送する機能を有する。また、電子輸送層8は、正孔の輸送を防止する機能を有していてもよい。なお、電子輸送層8は、必要に応じて設けるようにすればよく、省略することもできる。
電子輸送層8の構成材料(電子輸送材料)としては、特に制限されないが、例えば、トリス(8-キノリラート)アルミニウム(Alq3)、トリス(4-メチル-8-キノリノラート)アルミニウム(Almq3)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム(BeBq2)、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(p-フェニルフェノラート)アルミニウム(BAlq)、ビス(8-キノリノラート)亜鉛(Znq)のようなキノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体;ビス[2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラート]亜鉛(Zn(BOX)2)のようなベンズオキサゾリン骨格を有する金属錯体;ビス[2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラート]亜鉛(Zn(BTZ)2)のようなベンゾチアゾリン骨格を有する金属錯体;2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(PBD)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(TAZ)、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(OXD-7)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]カルバゾール(CO11)のようなトリまたはジアゾール誘導体;2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(TPBI)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(mDBTBIm-II)のようなイミダゾール誘導体;キノリン誘導体;ペリレン誘導体;4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(BPhen)のようなピリジン誘導体;ピリミジン誘導体;トリアジン誘導体;キノキサリン誘導体;ジフェニルキノン誘導体;ニトロ置換フルオレン誘導体;酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO2)のような金属酸化物等が挙げられる。これらの中でも、電子輸送材料としては、イミダゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、金属酸化物(無機酸化物)であることが好ましい。また、上述の電子輸送材料は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
電子輸送層7の厚さは、特に限定されないが、5~500nmの範囲であることが好ましく、5~200nmの範囲であることがより好ましい。電子輸送層6は、単層であっても、2以上が積層されたものであってもよい。
このような電子輸送層7は、湿式成膜法または乾式成膜法により形成することができる。電子輸送層6を湿式成膜法で形成する場合には、通常、上述の電子輸送材料を含有するインクを各種塗布法により塗布し、得られた塗膜を乾燥する。塗布法としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット印刷法(液滴吐出法)、スピンコート法、キャスト法、LB法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。一方、電子輸送層6を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スパッタリング法等が適用され得る。
[発光層5]
発光層5は、発光層5に注入された正孔および電子の再結合により生じるエネルギーを利用して発光を生じさせる機能を有する。本実施形態の発光層5は、400~500nmの範囲の波長の青色光を発し、より好ましくは420~480nmの範囲である。
発光層5は、発光材料(ゲスト材料またはドーパント材料)およびホスト材料を含むことが好ましい。この場合、ホスト材料と発光材料との質量比は、特に制限されないが、10:1~300:1の範囲であることが好ましい。発光材料には、一重項励起エネルギーを光に変換可能な化合物または三重項励起エネルギーを光に変換可能な化合物を使用することができる。また、発光材料としては、有機低分子蛍光材料、有機高分子蛍光材料および有機燐光材料からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
一重項励起エネルギーを光に変換可能な化合物としては、蛍光を発する有機低分子蛍光材料または有機高分子蛍光材料が挙げられる。
有機低分子蛍光材料としては、アントラセン構造、テトラセン構造、クリセン構造、フェナントレン構造、ピレン構造、ペリレン構造、スチルベン構造、アクリドン構造、クマリン構造、フェノキサジン構造またはフェノチアジン構造を有する化合物が好ましい。
有機低分子蛍光材料の具体例としては、例えば、5,6-ビス[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-2,2’-ビピリジン、5,6-ビス[4’-(10-フェニル-9-アントリル)ビフェニル-4-イル]-2,2’-ビピリジン(、N,N’-ビス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニルスチルベン-4,4’-ジアミン、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)トリフェニルアミン、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン、4-(10-フェニル-9-アントリル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン、4-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン、ペリレン、2,5,8,11-テトラ(tert-ブチル)ペリレン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-ピレン-1,6-ジアミン、N,N’-ビス(ジベンゾフラン-2-イル)-N,N’-ジフェニルピレン-1,6-ジアミン、N,N’-ビス(ジベンゾチオフェン-2-イル)-N,N’-ジフェニルピレン-1,6-ジアミン、N,N’’-(2-tert-ブチルアントラセン-9,10-ジイルジ-4,1-フェニレン)ビス[N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン]、N,9-ジフェニル-N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン、N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン-2,7,10,15-テトラアミン、クマリン30、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン、N,N,9-トリフェニルアントラセン-9-アミン、クマリン6、クマリン545T、N,N’-ジフェニルキナクリドン、ルブレン、5,12-ビス(1,1’-ビフェニル-4-イル)-6,11-ジフェニルテトラセン、2-(2-{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-6-メチル-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル、2-{2-メチル-6-[2-(2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)テトラセン-5,11-ジアミン、7,14-ジフェニル-N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)アセナフト[1,2-a]フルオランテン-3,10-ジアミン、2-{2-イソプロピル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル、2-{2-tert-ブチル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル、2-(2,6-ビス{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル、2-{2,6-ビス[2-(8-メトキシ-1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル、5,10,15,20-テトラフェニルビスベンゾ[5,6]インデノ[1,2,3-cd:1’,2’,3’-lm]ペリレン等が挙げられる。
有機高分子蛍光材料の具体例としては、例えば、フルオレン誘導体に基づく単位からなるホモポリマー、フルオレン誘導体に基づく単位とテトラフェニルフェニレンジアミン誘導体に基づく単位とからなるコポリマー、タ―フェニル誘導体に基づく単位からなるホモポリマー、ジフェニルベンゾフルオレン誘導体に基づく単位からなるホモポリマー等が挙げられる。
三重項励起エネルギーを光に変換可能な化合物としては、燐光を発する有機燐光材料が好ましい。有機燐光材料の具体例としては、例えば、イリジウム、ロジウム、白金、ルテニウム、オスミウム、スカンジウム、イットリウム、ガドリニウム、パラジウム、銀、金、アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含む金属錯体が挙げられる。中でも、有機燐光材料としては、イリジウム、ロジウム、白金、ルテニウム、オスミウム、スカンジウム、イットリウム、ガドリニウムおよびパラジウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含む金属錯体が好ましく、イリジウム、ロジウム、白金およびルテニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含む金属錯体がより好ましく、イリジウム錯体または白金錯体がさらに好ましい。
ホスト材料としては、発光材料のエネルギーギャップより大きいエネルギーギャップを有する化合物の少なくとも1種を使用することが好ましい。さらに、発光材料が燐光材料である場合、ホスト材料としては、発光材料の三重項励起エネルギー(基底状態と三重項励起状態とのエネルギー差)よりも三重項励起エネルギーの大きい化合物を選択することが好ましい。
ホスト材料としては、例えば、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)、バソフェナントロリン、バソキュプロイン、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9,10-ジフェニルアントラセン、N,N-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン、4-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン、N,9-ジフェニル-N-{4-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]フェニル}-9H-カルバゾール-3-アミン、6,12-ジメトキシ-5,11-ジフェニルクリセン、9-[4-(10-フェニル-9-アントラセニル)フェニル]-9H-カルバゾール、3,6-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-フェニル-3-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール、7-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール、6-[3-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン、9-フェニル-10-{4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)ビフェニル-4’-イル}アントラセン、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン、9,9’-ビアントリル、9,9’-(スチルベン-3,3’-ジイル)ジフェナントレン、9,9’-(スチルベン-4,4’-ジイル)ジフェナントレン、1,3,5-トリ(1-ピレニル)ベンゼン、5,12-ジフェニルテトラセンまたは5,12-ビス(ビフェニル-2-イル)テトラセン等が挙げられる。これらのホスト材料は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
発光層5の厚さは、特に限定されないが、1~100nmの範囲であることが好ましく、1~50nmの範囲であることがより好ましい。
このような発光層5は、湿式成膜法または乾式成膜法により形成することができる。発光層5を湿式成膜法で形成する場合には、通常、上述の発光材料およびホスト材料を含有するインクを各種塗布法により塗布し、得られた塗膜を乾燥する。塗布法としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット印刷法(液滴吐出法)、スピンコート法、キャスト法、LB法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。一方、発光層5を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スパッタリング法等が適用され得る。
なお、EL光源部200は、さらに、例えば、正孔注入層3、正孔輸送層4および発光層5を区画するバンク(隔壁)を有していてもよい。バンクの高さは、特に限定されないが、0.1~5μmの範囲であることが好ましく、0.2~4μmの範囲であることがより好ましく、0.2~3μmの範囲であることがさらに好ましい。
バンクの開口の幅は、10~200μmの範囲であることが好ましく、30~200μmの範囲であることがより好ましく、50~100μmの範囲であることがさらに好ましい。バンクの開口の長さは、10~400μmの範囲であることが好ましく、20~200μmの範囲であることがより好ましく、50~200μmの範囲であることがさらに好ましい。また、バンクの傾斜角度は、10~100°の範囲であることが好ましく、10~90°の範囲であることがより好ましく、10~80°の範囲であることがさらに好ましい。
<光変換層12>
光変換層12は、EL光源部200から発せられた光を変換して再発光するか、或いは、EL光源部200から発せられた光を透過する。図3に示すように、画素部20として、前記範囲の波長の光を変換して赤色光を発する第1の画素部20aと、前記範囲の波長の光を変換して緑色光を発する第2の画素部20bと、前記範囲の波長の光を透過する第3の画素部20cとを有している。複数の第1の画素部20a、第2の画素部20b及び第3の画素部20cが、この順に繰り返すように格子状に配列されている。そして、隣り合う画素部の間、すなわち、第1の画素部20aと第2の画素部20bとの間、第2の画素部20bと第3の画素部20cとの間、第3の画素部20cと第1の画素部20aとの間に、光を遮蔽する遮光部30が設けられている。言い換えれば、これらの隣り合う画素部同士は、遮光部30によって離間されている。なお、第1の画素部20aおよび第2の画素部20bは、それぞれの色に対応した色材を含んでもよい。
第1の画素部20a及び第2の画素部20bは、それぞれ上述した実施形態の発光粒子含有インク組成物の硬化物を含有する。硬化物は、発光粒子90と硬化成分とを必須として含有し、さらに、光を散乱させて外部へ確実に取り出すために光散乱性粒子を含むことが好ましい。硬化成分は、熱硬化性樹脂の硬化物であり、例えばエポキシ基を含有する樹脂の重合によって得られる硬化物である。すなわち、第1の画素部20aは、第1の硬化成分22aと、第1の硬化成分22a中にそれぞれ分散された第1の発光粒子90aおよび第1の光散乱性粒子21aとを含む。同様に、第2の画素部20bは、第2の硬化成分22bと、第2の硬化成分22b中にそれぞれ分散された第1の発光粒子90b及び第1の光散乱性粒子21bとを含む。第1の画素部20a及び第2の画素部20bにおいて、第1の硬化成分22aと第2の硬化成分22bとは同一であっても異なっていてもよく、第1の光散乱性粒子22aと第2の光散乱性粒子22bとは同一であっても異なっていてもよい。
第1の発光粒子90aは、420~480nmの範囲の波長の光を吸収し605~665nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発する、赤色発光粒子である。すなわち、第1の画素部20aは、青色光を赤色光に変換するための赤色画素部と言い換えてよい。また、第2の発光粒子90bは、420~480nmの範囲の波長の光を吸収し500~560nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発する、緑色発光粒子である。すなわち、第2の画素部20bは、青色光を緑色光に変換するための緑色画素部と言い換えてよい。
発光粒子含有インク組成物の硬化物を含む画素部20a、20bにおける発光粒子90の含有量は、外部量子効率の向上効果により優れる観点及び優れた発光強度が得られる観点から、発光粒子含有インク組成物の硬化物の全質量を基準として、好ましくは0.1質量%以上である。同様の観点から、発光粒子90の含有量は、発光粒子含有インク組成物の硬化物の全質量を基準として、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、5質量%以上であることが好ましい。発光粒子90の含有量は、画素部20a、20bの信頼性に優れる観点及び優れた発光強度が得られる観点から、発光粒子含有インク組成物の全質量を基準として、好ましくは30質量%以下である。同様の観点から、発光性粒子90の含有量は、発光粒子含有インク組成物の硬化物の全質量を基準として、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下であることが好ましい。
発光粒子含有インク組成物の硬化物を含む画素部20a、20bにおける光散乱性粒子21a、21bの含有量は、外部量子効率の向上効果により優れる観点から、インク組成物の硬化物の全質量を基準として、0.1質量%以上、1質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、10質量%以上、12質量%以上であることが好ましい。光散乱性粒子21a、21bの含有量は、外部量子効率の向上効果により優れる観点及び画素部20の信頼性に優れる観点から、インク組成物の硬化物の全質量を基準として、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下であることが好ましい。
第3の画素部20cは、420~480nmの範囲の波長の光に対し30%以上の透過率を有する。そのため、第3の画素部20cは、420~480nmの範囲の波長の光を発する光源を用いる場合に、青色画素部として機能する。第3の画素部20cは、例えば、上述の熱硬化性樹脂を含有する組成物の硬化物を含む。硬化物は、第3の硬化成分22ccを含有する。第3の硬化成分22cは、熱硬化性樹脂の硬化物であり、具体的には、エポキシ基を含有する樹脂の重合によって得られる硬化物である。すなわち、第3の画素部20cは、第3の硬化成分22cを含む。第3の画素部20cが上述の硬化物を含む場合、熱硬化性樹脂を含有する組成物は、420~480nmの範囲の波長の光に対する透過率が30%以上となる限りにおいて、上述の発光粒子含有インク組成物に含有される成分のうち、熱硬化性樹脂、硬化剤、溶剤以外の成分を更に含有していてもよい。なお、第3の画素部20cの透過率は、顕微分光装置により測定することができる。
画素部(第1の画素部20a、第2の画素部20b及び第3の画素部20c)の厚さは、特に限定されないが、例えば、1μm以上、2μm以上、3μm以上であることが好ましい。画素部(第1の画素部20a、第2の画素部20b及び第3の画素部20c)の厚さは、例えば、30μm以下、25μm以下、20μm以下であることが好ましい。
[光変換層12の形成方法]
以上の第1~3の画素部20a~20cを備える光変換層12は、湿式成膜法により形成した塗膜を乾燥、加熱して硬化させることより形成することができる。第1の画素部20a及び第2の画素部20bは、本発明の発光粒子含有インク組成物を用いて形成することができ、第3の画素部20cは当該発光粒子含有インク組成物に含まれる発光粒子90を含まないインク組成物を用いて形成することができる。以下、本発明の発光粒子含有インク組成物を用いた塗膜形成方法について詳述するが、本発明の発光粒子含有インク組成物を用いる場合も同様に行うことができる。
本発明の発光粒子含有インク組成物の塗膜を得るための塗布法としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット印刷法(ピエゾ方式またはサーマル方式の液滴吐出法)、スピンコート法、キャスト法、LB法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。ここで、ノズルプリント印刷法とは、発光粒子含有インク組成物をノズル孔から液柱としてストライプ状に塗布する方法である。中でも、塗布法としては、インクジェット印刷法(特に、ピエゾ方式の液滴吐出法)が好ましい。これにより、発光粒子含有インク組成物を吐出する際の熱負荷を小さくすることができ、発光粒子90の熱による劣化を防ぐことができる。
インクジェット印刷法の条件は、次のように設定することが好ましい。発光粒子含有インク組成物の吐出量は、特に限定されないが、1~50pL/回であることが好ましく、1~30pL/回であることがより好ましく、1~20pL/回であることがさらに好ましい。
また、ノズル孔の開口径は、5~50μmの範囲であることが好ましく、10~30μmの範囲であることがより好ましい。これにより、ノズル孔の目詰まりを防止しつつ、発光粒子含有インク組成物の吐出精度を高めることができる。
塗膜を形成する際の温度は、特に限定されないが、10~50℃の範囲であることが好ましく、15~40℃の範囲であることがより好ましく、15~30℃の範囲であることがさらに好ましい。かかる温度で液滴を吐出するようにすれば、発光粒子含有インク組成物中に含まれる各種成分の結晶化を抑制することができる。
また、塗膜を形成する際の相対湿度も、特に限定されないが、0.01ppm~80%の範囲であることが好ましく、0.05ppm~60%の範囲であることがより好ましく、0.1ppm~15%の範囲であることがさらに好ましく、1ppm~1%の範囲であることが特に好ましく、5~100ppmの範囲であることが最も好ましい。相対湿度が上記下限値以上であると、塗膜を形成する際の条件の制御が容易となる。一方、相対湿度が上記上限値以下であると、得られる光変換層12に悪影響を及ぼし得る塗膜に吸着する水分量を低減することができる。
発光粒子含有インク組成物中に有機溶剤を含有する場合、塗膜を硬化させる前に、乾燥によって有機溶剤を塗膜から除去することが好ましい。前記乾燥は、室温(25℃)で放置して行っても、加熱することにより行ってもよいが、生産性の観点から加熱することによって行うのが好ましい。乾燥を加熱により行う場合、乾燥温度は特に限定されないが、発光粒子含有インク組成物に使用される有機溶剤の沸点及び蒸気圧を考慮した温度とすることが好ましい。乾燥温度は、塗膜中の有機溶剤を除去するプリベーク工程として、50~130℃であることが好ましく、60~120℃であることがより好ましく、70~110℃であることが特に好ましい。乾燥温度が50℃以下であると有機溶剤が除去できないことがあり、一方、130℃以上であると有機溶剤の除去が瞬時に起こり、塗膜の外観が著しく劣ることがあるため、好ましくない。また、乾燥は、減圧下で行うことが好ましく、0.001~100Paの減圧下で行うことがより好ましい。さらに、乾燥時間は、1~30分間であることが好ましく、1~15分間であることがより好ましく、1~10分間であることが特に好ましい。このような乾燥条件で塗膜を乾燥することにより、有機溶剤が確実に塗膜中から除去され、得られる光変換層12の外部量子効率をより向上させることができる。
本発明の発光粒子含有インク組成物は、活性エネルギー線(例えば、紫外線)の照射により硬化させることができる。照射源(光源)としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、LED等が使用されるが、塗膜への熱負荷の低減、低消費電力の観点からLEDが好ましい。
照射する光の波長は、250nm~440nmであることが好ましく、300nm~400nmであることがより好ましい。LEDを用いる場合には、10μm以上の膜厚を十分に硬化させる観点から、例えば、350nm以上400nm以下であることが好ましい。また、光の強度は、0.2~2kW/cm2であることが好ましく、0.4~1kW/cm2であることがより好ましい。0.2kW/cm2未満の光の強度では十分に塗膜を硬化できず、2kW/cm2以上の光の強度では塗膜表面と内部の硬化度にムラが発生し、塗膜表面の平滑性が劣るため好ましくない。光の照射量(露光量)は、10mJ/cm2以上であることが好ましく、4000mJ/cm2以下であることがより好ましい。
塗膜の硬化は、空気中あるいは不活性ガス中で行うことができるが、塗膜表面の酸素阻害及び塗膜の酸化を抑制するために、不活性ガス中で行うことがより好ましい。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、二酸化炭素等が挙げられる。このような条件で塗膜を硬化させることにより、塗膜が完全に硬化できることから、得られる光変換層9の外部量子効率をより向上させることができる。
上述したように、本発明の発光粒子インク組成物は熱に対する安定性が優れることから、熱硬化後の成形体である画素部20においても、良好な発光を実現することができる。さらには、本発明の発光粒子組成物は分散性に優れるため、発光粒子90の分散性に優れ、且つ、平坦な画素部20を得ることができる。
さらに、第1の画素部20a及び第2の画素部20bに含まれる発光粒子90は、ペロブスカイト型を有する半導体ナノ結晶を含むため、300~500nmの波長領域の吸収が大きい。そのため、第1の画素部20a及び第2の画素部20bにおいて、第1の画素部20a及び第2の画素部20bに入射した青色光が上基板13側へ透過する、すなわち、青色光が上基板13側へ漏れることを防ぐことができる。したがって、本発明の第1の画素部20a及び第2の画素部20bによれば、青色光が混色されることなく、色純度の高い赤色光及び緑色光を取り出すことができる。
遮光部30は、隣り合う画素部20を離間して混色を防ぐ目的及び光源からの光漏れを防ぐ目的で設けられる、いわゆるブラックマトリックスである。遮光部30を構成する材料は、特に限定されず、クロム等の金属の他、バインダーポリマーにカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させたインク組成物の硬化物等を用いることができる。ここで用いられるバインダーポリマーとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種又は2種以上混合したもの、感光性樹脂、O/Wエマルジョン型のインク組成物(例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの)などを用いることができる。遮光部30の厚さは、例えば、1μm以上15μm以下であることが好ましい。
発光素子100は、トップエミッション型に代えて、ボトムエミッション型として構成することもできる。また、発光素子100は、EL光源部200に代えて、他の光源を使用することもできる。
以上、本発明の発光粒子含有インク組成物及びその製造方法、並びに、当該インク組成物を用いて製造した光変換層を備えた発光素子について説明したが、本発明は、上述した実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、本発明の発光粒子、発光粒子分散体、発光粒子含有インク組成物および発光素子は、それぞれ、上述した実施形態の構成において、他の任意の構成を追加して有していてもよいし、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてよい。また、本発明の発光粒子の製造方法は、上述した実施形態の構成において、他の任意の目的の工程を有していてもよいし、同様の効果を発揮する任意の工程と置換されていてよい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
下記実施例では、発光粒子を製造する操作及び発光粒子含有インク組成物を製造する操作は、窒素で満たしたグローブボックス内又は大気を遮断し窒素気流下のフラスコ内で行った。また、以下で例示するすべての原料は、その容器内に導入した窒素ガスで容器内の大気を置換した後に用いた。尚、液体材料に関しては、その容器内に導入した窒素ガスで液体材料中の溶存酸素を置換した後に用いた。
また、以下で用いる、イソボルニルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレートは、あらかじめモレキュラーシーブス(3Aあるいは4Aを使用)で48時間以上脱水したものを用いた。酸化チタンについては使用前に、1mmHgの減圧下、2時間、120℃で加熱し、窒素ガス雰囲気下で放冷した。
<発光粒子分散液の調製>
(発光粒子分散液1の調製)
まず、0.12gの炭酸セシウムと、5mLの1-オクタデセンと、0.5mLのオレイン酸とを混合して混合液を得た。次に、この混合液を120℃で30分間、減圧乾燥した後、アルゴン雰囲気下に150℃で加熱した。これにより、セシウム-オレイン酸溶液を得た。
一方、0.1gの臭化鉛(II)と7.5mLの1-オクタデセンと、0.75mLのオレイン酸とを混合して混合液を得た。次に、この混合液を90℃で10分間、減圧乾燥した後、アルゴン雰囲気下に混合液に0.75mLの3-アミノプロピルトリエトキシシランを添加した。その後さらに20分間減圧乾燥を行った後、アルゴン雰囲気下に140℃で加熱した。
その後、上記臭化鉛(II)を含む混合液に150℃で0.75mLの前記セシウム-オレイン酸溶液を添加し、5秒間加熱撹拌することにより反応させた後、氷浴で冷却した。次いで、60mLの酢酸メチルを添加した。得られた懸濁液を遠心分離(10,000回転/分、1分間)した後、上澄み液を除去することにより固形物を回収し、発光粒子X-1を得た。この発光粒子X-1は、表面層を備えたペロブスカイト型の三臭化鉛セシウム結晶であり、透過型電子顕微鏡観察により平均粒子径は10nmであった。また、表面層は3-アミノプロピルトリエトキシシランで構成される層であり、その厚さは約1nmであった。すなわち、発光粒子X-1は、シリカで被覆された粒子である。
さらに、発光粒子X-1を固形分濃度が2.5質量%となるようにイソボルニルメタクリレートに分散することにより、発光粒子X-1が分散した発光粒子分散液1を得た。
(発光粒子分散液2の調製)
1mLのN,N-ジメチルホルムアミド溶液に、15.0mgの臭化鉛(II)、8.5mgの臭化セシウム、オレイン酸及びオレイルアミンを添加することにより、半導体ナノ結晶の原料化合物を含む溶液を得た。
一方、0.25mLの3-アミノプロピルトリエトキシシランと、5mLのトルエンとを混合し、エトキシシラン-トルエン溶液を得た。その後、上述の1mLの半導体ナノ結晶の原料化合物を含む溶液を、上述の20mLのエトキシシラン-トルエン溶液に大気下、室温で攪拌しながら添加し、さらに、そのまま1500rpmで20秒間室温で撹拌した。その後、遠心分離(12,100回転/分、5分間)により固形物を回収し、発光粒子X-2を得た。
この発光粒子X-2は、表面層を備えたペロブスカイト型の三臭化鉛セシウム結晶であり、透過型電子顕微鏡観察により平均粒子径は11nmであった。また、表面層は3-アミノプロピルトリエトキシシランで構成される層であり、その厚さは約1nmであった。すなわち、発光粒子X-2は、シリカで被覆された粒子である。
さらに、発光粒子X-2を固形分濃度が2.5質量%となるようにイソボルニルメタクリレートに分散することにより、発光粒子X-2が分散した発光粒子分散液2を得た。
(発光粒子分散液3の調製)
温度計、攪拌機、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、190質量部のヘプタンを供給し、85℃に昇温した。同温度に到達した後、66.5質量部のラウリルメタクリレート、3.5質量部のジメチルアミノエチルメタクリレートおよび0.5質量部のジメチル-2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)を20質量部のヘプタンに溶解した混合物を、上記四つ口フラスコのへプタンに3.5時間かけて滴下し、滴下終了後も、同温度に10時間保持し、反応を継続した。その後、反応液の温度を50℃に降温した後、0.01質量部のt-ブチルピロカテコールを1.0質量部のヘプタンに溶解した溶液を添加し、さらに1.0質量部のグリシジルメタクリレートを添加した後、85℃まで昇温し、同温度で5時間反応を継続した。これにより、重合体(P)を含有する溶液を得た。なお、溶液中に含まれる不揮発分(NV)の量は25.1質量%であり、重合体(P)の重量平均分子量(Mw)は10,000であった。
次いで、温度計、攪拌機、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、26質量部のヘプタンと、3質量部の上述の発光粒子X-2と、3.6質量部の上述の重合体(P)を含有する溶液を供給した。さらに上記四つ口フラスコに、0.2質量部のエチレングリコールジメタクリレートと、0.4質量部のメチルメタクリレートと、0.12質量部のジメチル-2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)とを供給した。その後、上記四つ口フラスコ内の混合液を、室温で30分間攪拌した後、80℃に昇温し、同温度で15時間反応を継続した。反応終了後、反応溶液内の発光粒子Aに吸着しなかったポリマーを遠心分離により分離し、次いで、沈降した粒子を室温で2時間真空乾燥することにより、母粒子としての発光粒子X-2の表面が疎水性ポリマーからなるポリマー層で被覆されたポリマー被覆発光粒子X-3を得た。
得られたポリマー被覆発光粒子X-3を透過型電子顕微鏡で観察したところ、発光粒子X-3の表面に厚さ約10nmのポリマー層が形成されていた。その後、得られたポリマー被覆発光粒子X-3を固形分濃度が2.5質量%となるようにイソボルニルメタクリレートに分散することにより、発光粒子分散液3を得た。
(発光粒子分散液4の調製)
中空粒子として、日鉄鉱業株式会社製「SiliNax(登録商標) SP-PN(b)」のシリカ粒子を用いた。この中空粒子は、全体が直方体であって、中空構造を備えたシリカ粒子であり、平均外径が100nmであり、平均内径が80nmである。まず、この中空シリカ粒子を150℃で8時間減圧乾燥した。次いで、乾燥した中空シリカ粒子200.0質量部を桐山ロートに秤取した。
次に、アルゴン雰囲気下、三つ口フラスコに63.9質量部の臭化セシウム、110.1質量部の臭化鉛(II)および3000質量部のN-メチルホルムアミドを供給し、50℃で30分間撹拌することにより、三臭化鉛セシウム溶液を得た。
次に、前記三つ口フラスコに中空シリカ粒子を供給して、得られた三臭化鉛溶液を中空シリカ粒子に含浸させた後、過剰な三臭化鉛セシウム溶液をろ過により除去し、固形物を回収した。その後、得られた固形物を120℃で1時間減圧乾燥することにより、ペロブスカイト型の三臭化鉛セシウムからなるナノ結晶を中空シリカ粒子に内包した発光粒子X-4を得た。発光粒子X-4は、中空粒子内包発光粒子である。
得られた発光粒子X-4を固形分濃度が2.5質量%となるようにイソボルニルメタクリレートに分散することにより、発光粒子X-4が分散した発光粒子分散液4を得た。
(発光粒子分散液5の調製)
まず、発光粒子X-1に代えて発光粒子X-4を用いたこと以外は、ポリマー被覆発光粒子X-3と同様にして、母粒子としての発光粒子X-4が疎水性ポリマーからなるポリマー層で被覆されたポリマー被覆発光粒子X-5を得た。そして、発光粒子として、ポリマー被覆発光粒子X-3に代えてポリマー被覆発光粒子X-5を用いた以外は発光粒子分散液3と同様にして、発光粒子分散液5を得た。
(発光粒子分散液6の調製)
発光粒子X-1を固形分濃度が4.1質量%となるようにイソボルニルメタクリレートに分散することにより、発光粒子X-1が分散した発光粒子分散液6を得た。
<光散乱性粒子分散液の調製>
(光散乱性粒子分散液1の調製)
窒素ガスで満たした容器内で、酸化チタン(石原産業株式会社製「CR60-2」)10.0質量部と、高分子分散剤「Efka PX4701」(アミン価:40.0mgKOH/g、BASFジャパン株式会社製)1.0質量部と、フェノキシエチルメタクリレート(ライトエステルPO;共栄社化学株式会社製)14.0質量部とを混合した。さらに、得られた配合物にジルコニアビーズ(直径:1.25mm) を加え、前記容器を密栓しペイントコンディショナーを用いて2時間振とうさせて配合物の分散処理を行うことにより、光散乱性粒子分散体1を得た。分散処理後の光散乱性粒子の平均粒子径は、NANOTRAC WAVE IIを用いて測定したところ、0.245μmであった。
<インク組成物の調製>
(インク組成物(1)の調製)
実施例1のインク組成物として、発光粒子分散液1(発光粒子濃度2.5質量%)6.0質量部と、光散乱性粒子分散体1(酸化チタン含有量40.0質量%)0.75質量部と、光重合性化合物として「ラウリルメタクリレート」(製品名:ライトエステルLM、共栄社化学株式会社製)0.74質量部及び「1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート」(製品名:ライトエステル1,6-HX、共栄社化学株式会社製)2.0質量部と、光重合開始剤として「ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド」(製品名:Omnirad TPO-H、BASFジャパン株式会社製)0.3質量部及び「フェニルビス(2、4、6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド」(製品名:Omnirad 819、BASFジャパン株式会社製)0.1質量部と、次亜リン酸ジエステル化合物として「テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-1,1-ビフェニル-4,4’-ジイルビスホスフォナイト」(製品名:HOSTANOX P-EPQ(製品名、クラリアントケミカルズ株式会社製)0.05質量部と、次亜リン酸ジエステル化合物以外の酸化防止剤として「ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]」(製品名:Irganox1010、BASFジャパン株式会社製)0.05質量部と、反応性シリコーン化合物としてBYK-UV3500(ビックケミー・ジャパン株式会社製)0.01質量部を、アルゴンガスで満たした容器内で混合、均一に溶解した後、グローブボックス内で、溶解物を孔径5μmのフィルターでろ過した。さらに、得られたろ過物を入れた容器内にアルゴンガスを導入し、容器内をアルゴンガスで飽和させた。次いで、減圧してアルゴンガスを除去することにより、インク組成物(1)を得た。発光粒子の含有量は1.5質量%であり、IB-Xの含有量は58.5質量%であり、LMの含有量は7.4質量%であり、POの含有量は4.2質量%であり、1,6-HXの含有量は20.0質量%であり、TPO-Hの含有量は3.0質量%であり、819の含有量は1.0質量%であり、P-EPQの含有量は0.5質量%であり、Irganox1010の含有量は0.5質量%であり、反応性シリコーン化合物の含有量は0.1質量%であり、光散乱性粒子の含有量は3.0質量%であり、高分子分散剤の含有量は、0.3質量%であった。なお、上記含有量はインク組成物の全質量を基準とする含有量である。
(インク組成物(2)~(12)及び(C1)~(C3)の調製)
発光粒子分散液1~6、光散乱性粒子分散液1、光重合性化合物B-2~B-3、光重合開始剤C-1~C-2、酸化防止剤D-1~D-2、反応性シリコーン化合物A-1~A-5の添加量を、下記表1~2に示す添加量に変更した以外は、インク組成物(1)の調製と同一条件で、実施例2~12のインク組成物(2)~(12)及び比較例1~3のインク組成物(C1)~(C3)を得た。
(反応性シリコーン化合物)
化合物(A-1):BYK-UV3500(ビックケミー・ジャパン株式会社製、重合性官能基としてアクリロイル基を分子主鎖の両末端に2つ有する)
化合物(A-2):BYK-UV3570(ビックケミー・ジャパン株式会社製、重合性官能基としてアクリロイル基を分子主鎖の両末端に有する)
化合物(A-3):TEGO Rad2300(エボニックデグサジャパン社製、重合性官能基としてアクリロイル基を分子側鎖部位に2つ有する)
化合物(A-4):TEGO Rad2500(エボニックデグサジャパン社製、重合性官能基としてアクリロイル基を分子側鎖部位に2つ有する)
化合物(A-5):X-22-164B(信越化学工業株式会社製、重合性官能基としてメタクリロイル基を分子主鎖の両末端に2つ有する)
化合物(a-1):KF-351A(信越化学工業株式会社製、重合性官能基を有しない)
(光重合性化合物)
化合物(B-1):イソボルニルメタクリレート(製品名「ライトエステルIB-X」、共栄社化学株式会社製)
化合物(B-2):ラウリルメタクリレート(製品名「ライトエステルL」、共栄社化学株式会社製)
化合物(B-3):1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート(製品名「ライトエステル1,6-HX」、共栄社化学株式会社製)
化合物(B-4):フェノキシエチルメタクリレート(製品名「ライトエステルPO」、共栄社化学株式会社製)
(光重合開始剤)
化合物(C-1):「ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド」(モノアシルホスフィンオキサイド系化合物、製品名「Omnirad TPO-H」、IGM RESINS社製)
化合物(C-2):「フェニルビス(2、4、6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド」(ビスアシルホスフィンオキサイド系化合物、製品名「Omnirad 819」、IGM RESINS社製)
(酸化防止剤)
化合物(D-1):「テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-1,1-ビフェニル-4,4’-ジイルビスホスフォナイト」(製品名:HOSTANOX P-EPQ(クラリアントケミカルズ株式会社製)、融点85~100℃、分子量1035)
化合物(D-2):「テトラキス[メチレン-3(3’5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒロドキシフェニル)プロピオネート]メタン」(ヒンダードフェノール系酸化防止剤、製品名:IRGANOX 1010(BASFジャパン株式会社製)、融点110~130℃、分子量1178)
<インク組成物の評価>
(実施例1)
<<ノズルプレート撥液性>>
インクジェットプロセスへの適合性評価として、ノズルプレートに対する撥液性を評価した。具体的には、リコー社製インクジェットヘッド(MH5421F)のノズルプレートをインク組成物(1)に接液し、5分静置した。その後、ノズルプレートを垂直に引き上げ、ノズルプレート上のインクを滑落させた。垂直に引き上げた後のノズルプレート上に残存したインクの面積を観察することにより、ノズルプレートに対する初期の撥液性を評価したところ、残存インクの面積は20%未満であり、非常に良好であった。
さらに、ノズルプレートをインク組成物(1)に接液した状態で、50℃で1週間静置した後、上記と同様にプレートを垂直に引き上げインクを滑落させた。静置後のノズルプレートに対する撥液性を評価したところ、残存インクの面積は20%未満であり、非常に良好であった。
[評価基準]
A(非常に良好):残存インクの面積が20%未満である
B(良好):残存インクの面積が20%以上50%未満である
C(やや不良):残存インクの面積が50%以上75%未満である
D(不良):残存インクの面積が75%以上である
<<インクジェット吐出性評価>>
インク組成物(1)を、インクジェットプリンター(富士フィルムDimatix社製、「DMP-2831」)を用いて10分間連続で吐出した。その結果、16個のノズル中、連続吐出後に正常に吐出できるノズルが10個以上あり、良好な吐出性であった。なお、本インクジェットプリンターのインクを吐出するヘッド部には16個のノズルが形成されており、1回の吐出の際に1個のノズルから吐出されるインク組成物の吐出量を10pLに設定し評価を行った。
[評価基準]
A(非常に良好):16個のノズル中、正常に吐出できるノズルが13個以上。
B(良好):16個のノズル中、正常に吐出できるノズルが9~12個。
C(やや不良):16個のノズル中、正常に吐出できるノズルが5~8個
D(不良):16個のノズル中、正常に吐出できるノズルが5~0個。
<<光学特性の再現性>>
マイクロジェット社インクジェット印刷装置(DevicePrinter-NM1)に、コニカミノルタ社製インクジェットヘッド(KM1024i)を搭載し、インク組成物(1)を充填したのち、非画線部にブラックマトリックスが形成されたコーニング社製ガラス基板(イーグルXG)に、厚さ10μmとなるようにインクジェット印刷を行った(工程1)。続いて、主波長395nmのLEDランプを用いたUV照射装置で積算光量1500mJ/cm2になるようにUV照射を行い、ガラス基板上にインク組成物の硬化物からなる塗膜(光変換層)を形成した(工程2)。この工程1~2を10回繰り返し、インクジェット印刷の再現性評価用塗膜サンプル(光変換層)を10枚得た。この10枚の塗膜サンプルの光学密度(OD)を測定し、バラつきを評価したところ、バラツキが3%未満であった。
[評価基準]
A(非常に良好):光学特性(OD)のバラつきが3%未満である
B(良好):光学特性(OD)のバラつきが3%以上10%未満である
C(不良):光学特性(OD)のバラつきが10%以上である
なお、ODの測定方法は、以下のように行った。面発光光源としてシーシーエス(株)社製の青色LED(ピーク発光波長:450nm)を用い、この光源上にガラス基板側を下側にして光変換フィルターを設置した。大塚電子(株)製の放射分光光度計(商品名「MCPD-9800」)に積分球を接続し、青色LED上に設置した光変換フィルター上に積分球を近接させた。この状態で青色LEDを点灯させ、観測される青色光(380~500nmの波長域)の強度Isを測定した。また、ガラス基板のみを設置した際の青色光の強度I0も測定した。光学濃度(OD)は、以下の式で表され、光変換フィルターが吸収する青色光の程度を表している。ODが大きいことは光変換フィルターが青色光をよく吸収する、すなわち漏れ光が少ない良好な光変換層であることを意味する。
OD=-log(Is/I0)
<<ブリード試験>>
得られた光変換層1を60℃で30日間静置した後、さらに25℃に1日静置して得られた塗膜の表面を目視にて観察し、ブリードの有無(塗膜中から溶出した成分が塗膜表面ににじみ出ているか否か)を確認した。
[評価基準]
〇:ブリードなし
△:ブリードあり(溶出成分による白化なし)
×:ブリードあり(溶出成分による白化あり)
(実施例2~12)
本発明のインク組成物(2)~(12)を用いて、実施例1と同様に、インク組成物(2)~(12)のノズルプレート撥液性、インクジェット吐出性、光学特性の再現性、耐ブリード性の評価を行った。
(比較例1~3)
比較用のインク組成物(C1)~(C3)を用いて、実施例1と同様に、比較用インク組成物(C1)~(C3)のノズルプレート撥液性、インクジェット吐出性、光学特性の再現性、耐ブリード性の評価を行った。
<インク組成物及び光変換層の評価結果>
実施例1~12、及び比較例1~3のインク組成物、並びに、それらを用いて作製した光変換層について検討する。反応性シリコーン化合物及び非反応性シリコーン化合物のいずれも含有しない比較例1のインク組成物は、ノズルプレートの撥液性が悪く、インクジェット吐出性も劣る。そして、比較例1のインク組成物を用いて形成された光変換層は、光学特性のバラつきが大きく、光学特性の再現性が低い。。また、非反応性シリコーン化合物を含有する比較例2及び3のインク組成物は、ノズルプレートの撥液性が悪く、インクジェット吐出性も劣る。そして、比較例2及び3のインク組成物を用いて形成された光変換層は、光学特性のバラつきが大きく、耐ブリード性にも劣るため、実使用に耐えないことが明らかである。
これに対して、反応性シリコーン化合物を含有する実施例1~12のインク組成物は、反応性シリコーン化合物を含有することから、ノズルプレートの撥液性及びインクジェットの吐出性に優れており、また、実施例1~12のインク組成物から形成された光変換層としたときの光学特性のバラつきが小さく、耐ブリード性も良好である。
以上のことから、実施例1~12のインク組成物は、比較例1~3と比較して、良好なインクジェット適性を有し、光変換層となった場合には、光学特性のバラツキが少なく、表面調整剤のブリードがない、優れた光変換層であることが明らかである。よって、これらの光変換層を用いて、発光素子のカラーフィルタ画素部を構成した場合には、優れた発光特性を得ることができるものと期待できる。