JP2023094546A - 発光粒子含有硬化性樹脂組成物、光変換層、カラーフィルター、波長変換フィルムおよび発光素子 - Google Patents

発光粒子含有硬化性樹脂組成物、光変換層、カラーフィルター、波長変換フィルムおよび発光素子 Download PDF

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Koichi Nobuto
祐貴 野中
Yuki Nonaka
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Abstract

Figure 2023094546000001
【課題】 本発明の目的は、水、酸素の存在下で光に対する安定性に優れた発光粒子含有硬化性樹脂組成物、該組成物を用いた光変換層、カラーフィルター、波長変換フィルムおよび発光素子を提供することにある。
【解決手段】 本発明の発光粒子含有硬化性樹脂組成物は、半導体ナノ結晶及び無機被覆層を備える発光粒子と、有機無機複合粒子と、光重合性化合物とを含むことを特徴とする。本発明の光変換層は、上記発光粒子含有硬化性樹脂組成物の重合体を含むことを特徴とする。本発明の発光素子は、上記光変換層を備えることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、発光粒子含有硬化性樹脂組成物、光変換層、カラーフィルター、波長変換フィルムおよび発光素子に関する。
従来、液晶表示装置等のディスプレイにおけるカラーフィルター画素部は、例えば、赤色有機顔料粒子又は緑色有機顔料粒子と、アルカリ可溶性樹脂及び/又はアクリル系単量体とを含有する硬化性レジスト材料を用いて、フォトリソグラフィー法により製造されてきた。
近年、ディスプレイの低消費電力化が強く求められるようになり、上記赤色有機顔料粒子又は緑色有機顔料粒子に代えて、例えば量子ドット、量子ロッド、その他の無機蛍光体粒子等の発光性ナノ粒子を用いて赤色光又は緑色光を取り出す光変換シートやカラーフィルター画素部のような光変換層が、活発に研究されている。
前記発光性ナノ粒子は、蛍光又は燐光を発し、発光波長の半値幅が狭いという特徴がある。前記発光性ナノ結晶として、初期にはCdSeが使用されていたが、その有害性を回避するために、最近では、InPやペロブスカイト構造を有するものが使用されている。ペロブスカイト構造の発光性ナノ粒子として、例えば、CsPbX(Xはハロゲン元素であり、Cl、BrまたはIを示す。)で表される化合物が知られている。
半導体ナノ結晶等の発光性ナノ粒子は、水蒸気、酸素等の存在下での光照射によって劣化が生じやすい。特に、光変換層はバックライトからの強い光によって加熱されるため、高温下における光照射によって発光性ナノ粒子が劣化して発光強度が低下するという問題がある。この問題に対しては、例えば、TEOS等のシランカップリング剤で粒子表面を被覆することにより、耐光性を高める技術が提案されている(非特許文献1参照)。
ペロブスカイト型構造を有する発光性ナノ結晶は、ハロゲン元素の種類とその存在割合を調整することにより発光波長を制御することができるため、生産性に優れるという利点がある。そして、例えば、ペロブスカイト型構造を有する発光性結晶とアクリレートポリマー由来の固体ポリマー含有組成物および発光性部品が開示されている(特許文献1)。また、ペロブスカイト化合物を劣化させることなく、光の吸収効率、および量子収率を向上させ得る組成物として、ペロブスカイト化合物、アルミナ等の無機微粒子とを含む組成物およびフィルムが開示されている(特許文献2)。
国際公開第2018/028870号公報 国際公開第2019/022194号公報
Journal of Materials Chemistry C,2019,7,9813
しかしながら、ペロブスカイト型構造の発光性ナノ粒子は、水分や酸素の存在下において光により劣化しやすいため、これら組成物およびフィルムは、該組成物または該組成物から形成された光変換層が光にばく露された際に、発光強度の経時的低下を抑制できないという不都合があった。
本発明の目的は、上記事情に鑑みてなされたものであって、水分や酸素下での光に対する優れた安定性を備え、かつ、光学特性および分散性の長期保存性に優れた組成物を実現できる発光粒子含有硬化性樹脂組成物を提供する。さらに、該硬化性樹脂組成物を用いた光変換層並びに発光素子を提供する。
本発明者らは、鋭意検討の結果、半導体ナノ結晶を含む発光粒子含有硬化性樹脂組成物において、特定の有機無機複合粒子を含有することにより、該組成物が優れた分散性を有し、該組成物を重合した硬化膜の耐光性が優れることを見出し、本発明に想到した。
すなわち、本発明の発光粒子含有硬化性樹脂組成物は、半導体ナノ結晶及び前記半導体ナノ結晶の表面を被覆し無機材料を含む無機被覆層を備える発光粒子と、有機無機複合粒子と、光重合性化合物とを備えることを特徴とする。
前記有機無機複合粒子が、一般式(Z1-1)又は(Z1-2)で表される構造単位を有するポリマーZを含むことを特徴とする。
Figure 2023094546000002
(式中、R、R及びRは、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、RZ1は、一級アミノ基、二級アミノ基、三級アミノ基、四級アンモニウム基、イミノ基、ピリジル基、ピリミジン基、ピペラジニル基、ピペリジル基、イミダゾリル基、ピロリジニル基及びイミダゾリジニル基の群から選ばれる1価の塩基性基を表し、X及びXは、各々独立して、-COO-、-OCO-、窒素原子によって置換されてもよい炭素原子数が1~8のアルキル鎖、単結合を表す。)
前記有機無機複合粒子が、下記一般式(G)で表される重合体を含むことが好ましい。
Figure 2023094546000003
(式中、RG1及びRG2は、それぞれ独立にアルキル基を表し、RG3及びRG4は、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、n1は0又は1を表し、m1は1以上の整数を表す。)
前記半導体ナノ結晶が、A,M及びXを含み、
前記Aが、Cs、Rb、メチルアンモニウム、ホルムアミジニウム、アンモニウム、2-フェニルエチルアンモニウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、1-ブチル-1-メチルピペリジニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム及びベンジルトリエチルアンモニウムからなる群から選ばれる1以上の陽イオンを表し、
前記Mが、Ag、Au、Bi、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Eu、Fe、Ga、Ge、Hf、In、Ir、Mg、Mn、Mo、Na、Nb、Nd、Ni、Os、Pb、Pd、Pt、Re、Rh、Ru、Sb、Sc、Sm、Sn、Sr、Ta、Te、Ti、V、W、Zn及びZrからなる群から選ばれる1以上の金属イオンを表し、
前記XがF、Cl、Br及びIからなる群から選ばれる1以上のハロゲン化物イオンを表すことが好ましい。
前記半導体ナノ結晶がペロブスカイト構造を有することが好ましい。
前記無機被覆層が、シロキサン結合を有することが好ましい。
本発明の他の一側面は、上記発光粒子含有樹脂組成物の重合体を含む光変換層に関する。
本発明の他の一側面は、上記光変換層を用いたカラーフィルターに関する。
本発明の他の一側面は、上記光変換層を用いた波長変換フィルムに関する。
本発明の他の一側面は、上記カラーフィルターを備えた発光素子に関する。
本発明の他の一側面は、上記波長変換フィルムを備えた発光素子に関する。
本発明によれば、光に対する優れた安定性を備え、かつ、光学特性および分散性の長期保存性に優れた組成物を実現できる発光粒子、該発光粒子を含有する発光粒子含有樹脂組成物、該樹脂組成物を用いた光変換層並びに発光素子を提供することができる。
本発明に係る半導体ナノ結晶を含む発光粒子の一実施形態を示す断面図である。 本発明に係る有機無機複合粒子の一実施形態を示す模式的断面図である。 本発明に係る発光素子の一実施形態を示す模式的断面図である。 本発明に係る発光素子の一実施形態を示す模式的断面図である。 アクティブマトリックス回路の構成を示す概略図である。 アクティブマトリックス回路の構成を示す概略図である。
以下、本発明の発光粒子含有硬化性樹脂組成物、光変換層および発光素子について、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
1.発光粒子含有硬化性樹脂組成物
本発明の実施形態の半導体ナノ結晶を含む発光粒子含有硬化性樹脂組成物は、半導体ナノ結晶及び前記半導体ナノ結晶の表面を被覆し無機材料を含む無機被覆層を備える発光粒子と、有機無機複合粒子と、光重合性化合物とを含有することを特徴とする。一実施形態の半導体ナノ結晶を含む発光粒子含有硬化性樹脂組成物は、後述するように、有機ELを用いた発光表示素子の光変換層を形成する用途に好適に用いることができる。該組成物は、比較的高額である半導体ナノ結晶を含む発光粒子、硬化性樹脂等の材料を無駄に消費せずに、必要な箇所に必要な量を用いるだけで画素部(光変換層)を形成できる点で、フォトリソグラフィー方式よりも、インクジェット方式に適合するよう、適切に調製して用いることが好ましい。また、該組成物は、バリアフィルムあるいはガラスフィルム間に担持させ、波長変換フィルムとして用いることが好ましい。
1-1.発光粒子
本発明の発光粒子含有硬化性樹脂組成物における半導体ナノ結晶を含む発光粒子は、例えば、所定の波長の光を吸収することにより、吸収した波長とは異なる波長の光(蛍光又は燐光)を発することができる発光性を有する半導体ナノ結晶を含むナノ粒子である。すなわち、発光性とは、電子の励起により発光する性質であることが好ましく、励起光による電子の励起により発光する性質であることがより好ましい。発光性を有する半導体ナノ結晶は、605~665nmの範囲に発光ピーク波長を有する光(赤色光)を発する、赤色発光性のナノ結晶であってよく、500~560nmの範囲に発光ピーク波長を有する光(緑色光)を発する、緑色発光性のナノ結晶であってよく、420~480nmの範囲に発光ピーク波長を有する光(青色光)を発する、青色発光性のナノ結晶粒子であってもよい。
発光性を有する半導体ナノ結晶は、半導体材料を含む発光性ナノ結晶粒子(発光性半導体ナノ結晶)であってよい。発光性を有する半導体ナノ結晶としては、量子ドット、量子ロッド等が挙げられる。これらの中でも、発光スペクトルの制御が容易であり、信頼性を確保した上で、生産コストを低減し、量産性を向上させることができる観点から量子ドットが好ましい。さらに、発光性ナノ結晶は、より半値幅の狭い発光ピークを得ることができる観点から、メタルハライドからなる量子ドットであることが好ましい。本実施形態では、以下、メタルハライドからなる量子ドットからなるナノ粒子について説明するが、本発明は、これに限定されず、種々の発光性を有する半導体ナノ結晶を含むナノ粒子について適用可能である。
本発明における半導体ナノ結晶を含む発光粒子の1つの形態を図1に示す。発光粒子91は、メタルハライドからなり発光性を有する半導体ナノ結晶(以下、単に「ナノ結晶911」と言うこともある。)と、ナノ結晶911の表面に配位した配位子とを含有する。ナノ結晶911の表面に配位子が配位していることによって分散性を確保することができる。配位子として、例えば、オレイン酸、オクタン酸、オレイルアミン、オクチルアミン、トリオクチルホスフィン、等を用いることができる。
配位子として、上記オレイン酸等に加えて、シロキサン結合を形成可能な化合物を併用する。これにより、ナノ結晶911の表面にシロキサン結合を含むシェル層912(以下、「第1のシェル層912」と記載する。)が形成されている。第1のシェル層912により、ナノ結晶911を、熱、空気、水分等から保護することができる。
本実施形態では、さらに、第1のシェル層912の表面に、無機被覆層として、加水分解シリル基を有するシラン化合物の分子同士がシロキサン結合を形成したシェル層913(以下、「第2のシェル層913」と記載する。本発明の「無機被覆層」に相当する。)を備えている。第2のシェル層913により、第1のシェル層912のみの場合と比較して、ナノ結晶911を熱、空気、水分等からさらに確実に保護することができる。
かかる発光粒子91は、例えば、以下のようにして得ることができる。ナノ結晶911の前駆体と、オレイン酸、オレイルアミン等の配位子と、シロキサン結合可能な部位を有する配位子とを混合し、ナノ結晶911を析出させると同時に該配位子をナノ結晶911表面に配位させ、その後引き続き、シロキサン結合を生じさせて第1のシェル層912を形成する。その後、第1のシェル層912表面に塩基性基を有する構造単位を含むポリマーを吸着させた後、加水分解シリル基を有するシラン化合物を混合してシロキサン結合を生じさせることにより第2のシェル層913を形成する。該発光粒子91は、ナノ結晶911が第1のシェル層912および第1のシェル層912の表面に位置する第2のシェル層913により保護されるため、水分や酸素下での光に対する優れた安定性を得ることができ、その結果、優れた発光特性を得ることができる。
この発光粒子91は、それ自体、単体で発光粒子として使用することが可能であるが、樹脂組成物に添加して使用することが好ましい。
<ナノ結晶911>
ナノ結晶911は、メタルハライドからなり、励起光を吸収して蛍光または燐光を発光するナノサイズの結晶体(ナノ結晶粒子)である。かかるナノ結晶911は、例えば、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡によって測定される最大粒子径が100nm以下である結晶体である。ナノ結晶911は、例えば、所定の波長の光エネルギーや電気エネルギーにより励起され、蛍光または燐光を発することができる。
メタルハライドからなるナノ結晶911は、A、M及びXを含む半導体であり、一般式:Aで表される化合物である。
式中、Aは1価の陽イオンを表し、有機カチオンおよび金属カチオンのうちの少なくとも1種である。有機カチオンとしては、アンモニウム、メチルアンモニウム、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、プロトン化チオウレア等が挙げられ、金属カチオンとしては、Cs、Rb、K、Na、Li等のカチオンが挙げられる。
Mは金属イオンを表し、少なくとも1種の金属カチオンである。金属カチオンとしては、1族、2族、3族、4族、5族、6族、7族、8族、9族、10族、11族、13族、14族、15族から選ばれる金属カチオンが挙げられる。より好ましくは、Ag、Au、Bi、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Eu、Fe、Ga、Ge、Hf、In、Ir、Mg、Mn、Mo、Na、Nb、Nd、Ni、Os、Pb、Pd、Pt、Re、Rh、Ru、Sb、Sc、Sm、Sn、Sr、Ta、Te、Ti、V、W、Zn、Zr等のカチオンが挙げられる。
Xは、少なくとも1種のアニオンである。アニオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、シアン化物イオン等のハロゲン化物イオンが挙げられる。
aは、1~7であり、bは、1~4であり、cは、3~16である。
かかるナノ結晶911は、その粒子サイズ、Xサイトを構成するアニオンの種類および存在割合を調整することにより、発光波長(発光色)を制御することができる。
一般式Aで表される化合物は、具体的には、AMX、AMX、AMX、AMX、AMX、AM、AMX、AMX、AMX、A、AMX、AMX、AM、AMX、A、AMX、A、A、A10、A16で表される化合物が好ましい。
式中、Aは、有機カチオンおよび金属カチオンのうちの少なくとも1種である。有機カチオンとしては、アンモニウム、メチルアンモニウム、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、プロトン化チオウレア等が挙げられ、金属カチオンとしては、Cs、Rb、K、Na、Li等のカチオンが挙げられる。
式中、Mは、少なくとも1種の金属カチオンである。具体的には、1種の金属カチオン(M)、2種の金属カチオン(M α β)、3種の金属カチオン(M α β γ)、4種の金属カチオン(M α β γ δ)などが挙げられる。ただし、α、β、γ、δは、それぞれ0~1の実数を表し、かつα+β+γ+δ=1を表す。金属カチオンとしては、1族、2族、3族、4族、5族、6族、7族、8族、9族、10族、11族、13族、14族、15族から選ばれる金属カチオンが挙げられる。より好ましくは、Ag、Au、Bi、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Eu、Fe、Ga、Ge、Hf、In、Ir、Mg、Mn、Mo、Na、Nb、Nd、Ni、Os、Pb、Pd、Pt、Re、Rh、Ru、Sb、Sc、Sm、Sn、Sr、Ta、Te、Ti、V、W、Zn、Zr等のカチオンが挙げられる。
式中、Xは、少なくとも1種のハロゲンを含むアニオンである。具体的には、1種のハロゲンアニオン(X)、2種のハロゲンアニオン(X α β)などが挙げられる。アニオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、シアン化物イオン等が挙げられ、少なくとも1種のハロゲン化物イオンを含む。
上記一般式Aで表されるメタルハライドからなる化合物は、発光特性をよくするために、Bi、Mn、Ca、Eu、Sb、Ybなどの金属イオンが添加(ドープ)されたものであってもよい。
上記一般式Aで表されるメタルハライドからなる化合物の中で、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は、その粒子サイズ、Mサイトを構成する金属カチオンの種類および存在割合を調整し、さらにXサイトを構成するアニオンの種類および存在割合を調整することにより、発光波長(発光色)を制御することができる点で、半導体ナノ結晶として利用する上で特に好ましい。具体的には、AMX、AMX、AMX、AMX、AMXで表される化合物が好ましい。式中のA、M及びXは上記のとおりである。また、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は、上述のように、Bi、Mn、Ca、Eu、Sb、Ybなどの金属イオンが添加(ドープ)されたものであってもよい。
ペロブスカイト型結晶構造を示す化合物の中でも、合成の容易さ、良好な発光特性および結晶構造の堅牢性の観点から、AはCs、Rb、K、Na、Li、メチルアンモニウム、ホルムアミジニウムからなる群から選ばれる陽イオンであることが好ましく、AはCs、Rb、メチルアンモニウム及びホルムアミジニウムから選ばれる陽イオンであることがより好ましく、AはCs及びホルムアミジニウムから選ばれる陽イオンであることが特に好ましい。Mは1種の金属カチオン(M)、または2種の金属カチオン(M α β(但し、αとβはそれぞれ0~1の実数を表し、α+β=1を表す。))であり、合成の容易さ、良好な発光特性および結晶構造の堅牢性の観点から、Pb、Sn、Ge、Bi、Sb、Ag、In、Cu、Yb、Ti、Pd、Mn、Eu、Zr及びTbからなる群から選ばれる金属イオンであることが好ましく、MはPb、Sn、Bi、Sb、Ag、In、Cu、Mn及びZrからなる群から選ばれる金属イオンであることがより好ましく、MはPb、Sn及びCuからなる群から選ばれる金属イオンであることがさらに好ましく、MはPbイオンであることが特に好ましい。Xは塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンであることが好ましい。合成の容易さ、良好な発光特性および結晶構造の堅牢性の観点から、XはF、Cl、Br及びIからなる群から選ばれるハロゲン化物イオンであることが好ましく、XはCl、Br及びIからなる群から選ばれるハロゲン化物イオンであることがより好ましく、XはBr及びIからなる群から選ばれるハロゲン化物イオンであることがさらにより好ましく、XはBrイオンであることが特に好ましい。
メタルハライドからなり、ペロブスカイト型結晶構造を有するナノ結晶911の具体的な組成として、CsPbBr、CHNHPbBr、CHNPbBr、CsPbI等のMとしてPbを用いたナノ結晶911は、光強度に優れると共に量子効率に優れることから、好ましい。また、CsSnBr、CsSnCl、CsSnBr1.5Cl1.5、CsSbBr、(CHNHBiBr、(CNHAgBiBr、等のMとしてPb以外の金属カチオンを用いたナノ結晶911は、低毒性であって環境への影響が少ないことから、好ましい。
ナノ結晶911として、605~665nmの波長範囲に発光ピークを有する光(赤色光)を発する赤色発光性の結晶、500~560nmの波長範囲に発光ピークを有する光(緑色光)を発する緑色発光性の結晶、及び、420~480nmの波長範囲に発光ピークを有する光(青色光)を発する青色発光性の結晶を選択して用いることができる。また、一実施形態において、これらのナノ結晶を複数組み合わせて用いてもよい。
なお、ナノ結晶911の発光ピークの波長は、例えば、絶対PL量子収率測定装置を用いて測定される蛍光スペクトルまたは燐光スペクトルにおいて確認することができる。
赤色発光性のナノ結晶911は、665nm以下、663nm以下、660nm以下、658nm以下、655nm以下、653nm以下、651nm以下、650nm以下、647nm以下、645nm以下、643nm以下、640nm以下、637nm以下、635nm以下、632nm以下または630nm以下の波長範囲に発光ピークを有することが好ましく、628nm以上、625nm以上、623nm以上、620nm以上、615nm以上、610nm以上、607nm以上または605nm以上の波長範囲に発光ピークを有することが好ましい。
これらの上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。なお、以下の同様の記載においても、個別に記載した上限値および下限値は任意に組み合わせ可能である。
緑色発光性のナノ結晶911は、560nm以下、557nm以下、555nm以下、550nm以下、547nm以下、545nm以下、543nm以下、540nm以下、537nm以下、535nm以下、532nm以下または530nm以下の波長範囲に発光ピークを有することが好ましく、528nm以上、525nm以上、523nm以上、520nm以上、515nm以上、510nm以上、507nm以上、505nm以上、503nm以上または500nm以上の波長範囲に発光ピークを有することが好ましい。
青色発光性のナノ結晶911は、480nm以下、477nm以下、475nm以下、470nm以下、467nm以下、465nm以下、463nm以下、460nm以下、457nm以下、455nm以下、452nm以下または450nm以下の波長範囲に発光ピークを有することが好ましく、450nm以上、445nm以上、440nm以上、435nm以上、430nm以上、428nm以上、425nm以上、422nm以上または420nm以上の波長範囲に発光ピークを有することが好ましい。
ナノ結晶911の形状は、特に限定されず、任意の幾何学的形状であってもよく、任意の不規則な形状であってもよい。ナノ結晶911の形状としては、例えば、直方体状、立方体状、球状、正四面体状、楕円体状、角錐形状、ディスク状、枝状、網状、ロッド状等が挙げられる。なお、ナノ結晶911の形状としては、直方体状、立方体状または球状が好ましい。
ナノ結晶911の平均粒子径(体積平均径)は、40nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることがさらに好ましい。また、ナノ結晶911の平均粒子径は、1nm以上であることが好ましく、1.5nm以上であることがより好ましく、2nm以上であることがさらに好ましい。かかる平均粒子径を有するナノ結晶911は、所望の波長の光を発し易いことから好ましい。なお、ナノ結晶911の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡により測定し、体積平均径を算出することにより得られる。
<第1のシェル層912>
前記第1のシェル層912は、ナノ結晶911の表面に配位可能で、かつ、分子同士がシロキサン結合を形成可能な化合物を含む配位子から構成されている。
かかる配位子は、ナノ結晶911に含まれるカチオンあるいはアニオンに結合する結合性基を有する化合物であり、Siを含有しシロキサン結合を形成する反応性基を有する化合物を含む。前記結合性基としては、例えば、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、スルホン酸基、ボロン酸基およびそれらの塩のうちの少なくとも1種であることが好ましく、カルボキシル基、アミノ基、メルカプト基、スルホン酸基およびそれらの塩のうちの少なくとも1種であることがより好ましい。かかる配位子としては、カルボキシル基、アミノ基含有化合物、スルホン酸基およびそれらの塩が挙げられ、これらの1種を単独で使用し、または2種以上を併用することができる。かかる配位子としては、ナノ結晶911の安定性を向上させるため、カルボキシル基含有化合物、アミノ基含有化合物、スルホン酸基含有化合物及びそれらの塩の1種以上を用いると共に、Siを含有し、シロキサン結合を形成可能な反応基を有する化合物の1種以上を用いることが好ましい。かかる配位子は、ナノ結晶911を合成する際に使用するか、或いは、ナノ結晶911を形成したのちに、ナノ結晶911の合成時に使用した配位子とは異なる化合物からなる配位子に置換することが好ましい。
カルボキシル基含有化合物としては、例えば、炭素原子数1~30の直鎖状または分岐状の脂肪族カルボン酸が挙げられる。かかるカルボキシル基含有化合物の具体例としては、例えば、アラキドン酸、クロトン酸、trans-2-デセン酸、エルカ酸、3-デセン酸、cis-4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸、4-デセン酸、all cis-5,8,11,14,17-エイコサペンタエン酸、all cis-8,11,14-エイコサトリエン酸、cis-9-ヘキサデセン酸、trans-3-ヘキセン酸、trans-2-ヘキセン酸、2-ヘプテン酸、3-ヘプテン酸、2-ヘキサデセン酸、リノレン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、3-ノネン酸、2-ノネン酸、trans-2-オクテン酸、ペトロセリン酸、エライジン酸、オレイン酸、3-オクテン酸、trans-2-ペンテン酸、trans-3-ペンテン酸、リシノール酸、ソルビン酸、2-トリデセン酸、cis-15-テトラコセン酸、10-ウンデセン酸、2-ウンデセン酸、酢酸、酪酸、ベヘン酸、セロチン酸、デカン酸、アラキジン酸、ヘンエイコサン酸、ヘプタデカン酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ヘプタコサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、メリシン酸、オクタコサン酸、ノナデカン酸、ノナコサン酸、n-オクタン酸、パルミチン酸、ペンタデカン酸、プロピオン酸、ペンタコサン酸、ノナン酸、ステアリン酸、リグノセリン酸、トリコサン酸、トリデカン酸、ウンデカン酸、吉草酸等が挙げられる。
アミノ基含有化合物としては、例えば、炭素原子数1~30の直鎖状または分岐状の脂肪族アミンが挙げられる。かかるアミノ基含有化合物の具体例としては、例えば、1-アミノヘプタデカン、1-アミノノナデカン、ヘプタデカン-9-アミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、2-n-オクチル-1-ドデシルアミン、アリルアミン、アミルアミン、2-エトキシエチルアミン、3-エトキシプロピルアミン、イソブチルアミン、イソアミルアミン、3-メトキシプロピルアミン、2-メトキシエチルアミン、2-メチルブチルアミン、ネオペンチルアミン、プロピルアミン、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、1-アミノデカン、ノニルアミン、1-アミノウンデカン、ドデシルアミン、1-アミノペンタデカン、1-アミノトリデカン、ヘキサデシルアミン、テトラデシルアミン等が挙げられる。
メルカプト基含有化合物としては、例えば、n-ドデシルチオール、Tert-ドデシルチオール、1-ドデカンチオール、n-オクタンチオール、1-オクタデカンチオール等が挙げられる。
スルホン酸基含有化合物、その塩としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸、4-n-オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-ドデシルベンゼン-1-スルホン酸ナトリウム、4-ウンデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-テトラデシルベンゼン-1-スルホン酸ナトリウム、4-トリデシルベンゼン-1-スルホン酸ナトリウム、1-デカンスルホン酸ナトリウム、1-ドデカンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
また、Siを含有し、シロキサン結合を形成する反応性基を有するシラン化合物Aは、ナノ結晶911に含まれるカチオンあるいはアニオンに結合する結合性基を有することが好ましい。
反応性基としては、シロキサン結合が容易に形成されることから、シラノール基、炭素原子数が1~6のアルコキシシリル基のような加水分解性シリル基が好ましく、シラノール基、炭素原子数が1~2のアルコキシシリル基がより好ましい。
結合性基としては、例えば、カルボキシル基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、スルホン酸基、ボロン酸基等が挙げられる。中でも、結合性基としては、カルボキシル基、メルカプト基およびアミノ基のうちの少なくとも1種であることが好ましい。これらの結合性基は、上述の反応性基よりもナノ結晶911に含まれるカチオンあるいはアニオンに対する親和性が高い。このため、配位子は、結合性基をナノ結晶911側にして配位し、より容易かつ確実に第1のシェル層912を形成することができる。
Siを含有し、シロキサン結合を形成する反応性基を有する化合物としては、結合性基を含有するケイ素化合物を1種以上含有し、または2種以上を併用することができる。
好ましくは、カルボキシル基含有ケイ素化合物、アミノ基含有ケイ素化合物、メルカプト基含有ケイ素化合物の何れか1種を含有し、または2種以上を併用することができる。
カルボキシル基含有ケイ素化合物の具体例としては、例えば、3-(トリメトキシシリル)プロピオン酸、3-(トリエトキシシリル)プロピオン酸、2-、カルボキシエチルフェニルビス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-N’-カルボキシメチルエチレンジアミン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]フタルアミド、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン-N,N’,N’-三酢酸、(6-トリエトキシシリル)-3-[[[3-(トリエトキシシリル)プロピル]アミノ]カルボニル]ヘキサン酸等が挙げられる。
一方、アミノ基含有ケイ素化合物の具体例としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジプロポキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジイソプロポキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリプロポキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチルジメチルメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-11-アミノウンデシルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルシラントリオール、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリプロポキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリイソプロポキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェニルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェニルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェニルトリプロポキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェニルトリイソプロポキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルメチルジメトキシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-N-γ-(N-ビニルベンジル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(N-ジ(ビニルベンジル)アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(N-ジ(ビニルベンジル)アミノエチル)-N-γ-(N-ビニルベンジル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ベンジルアミノエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリプロポキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリイソプロポキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリプロポキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリイソプロポキシシラン、N-[2-[3-(トリメトキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン、N-[2-[3-(トリエトキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン、N-[2-[3-(トリプロポキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン、N-[2-[3-(トリイソプロポキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン等が挙げられる。
メルカプト基含有ケイ素化合物の具体例としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルメチルジメトキシシラン、2-メルカプトエチルメチルジエトキシシラン、3-[エトキシビス(3,6,9,12,15-ペンタオキサオクタコサン-1-イルオキシ)シリル]-1-プロパンチオール等が挙げられる。
第1のシェル層912は、前記ナノ結晶911の表面に、配位子として、例えば、オレイン酸、3-アミノプロピルトリメトキシシランを配位させ、さらに3-アミノプロピルトリメトキシシランを反応させることにより形成することができる。
第1のシェル層912の厚さは、0.5~50nmであることが好ましく、1.0~30nmであることがより好ましい。かかる厚さの第1のシェル層912を有する発光粒子であれば、ナノ結晶911の熱に対する安定性を十分に高めることができる。
なお、第1のシェル層912の厚さは、配位子の結合基と反応性基とを連結する連結構造の原子数(鎖長)を調整することで変更することができる。
本発明の発光粒子は、前記配位子を備える以外に、添加剤がナノ結晶911表面に配位していても良い。前記添加剤としては、例えばアンモニウム塩が挙げられる。前記アンモニウム塩としては、例えばジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、フェネチルアンモニウムブロミド(PEAB)、フェネチルアンモニウムヨージド(PEAI)、メチルトリオクチルアンモニウムブロミド、テトラオクチルアンモニウムブロミド、ジデシルジメチルアンモニウムブロミド、ジテトラデシルジメチルアンモニウムブロミド、テトラオクチルアンモニウムブロミド(TOAB)が挙げられる。
第1のシェル層912を備えた発光粒子は、具体的には、ナノ結晶911の原料化合物を含む溶液と、ナノ結晶911に含まれるカチオンあるいはアニオンに結合する結合性基を有する化合物と、Siを含有しシロキサン結合を形成し得る反応性基を有する化合物とを含む溶液とを混合した後に、析出したナノ結晶911の表面に配位したSiを含有しシロキサン結合を形成し得る反応性基を有する化合物中の反応性基を縮合させることにより、容易に作製することができる。このとき、加熱を行って製造する方法と、加熱を行わずに製造する方法とがある。
まず、加熱を行って第1のシェル層912を有する発光粒子を製造する方法について説明する。半導体ナノ結晶を反応によって合成する2種の原料化合物を含む溶液をそれぞれ調製する。この際、2種の溶液の何れか一方にナノ結晶911に含まれるカチオンに結合する結合性基を有する化合物を、もう一方にSiを含有しシロキサン結合を形成し得る反応性基を有する化合物を加えておく。次いで、これらを不活性ガス雰囲気下で混合、140~260℃の温度条件下に反応させる。次いで、-20~30℃に冷却し、攪拌することにより、ナノ結晶を析出させる方法が挙げられる。析出したナノ結晶はナノ結晶911の表面にシロキサン結合を有する第1のシェル層912が形成されたものとなり、遠心分離等の定法によりナノ結晶を得ることができる。
具体的には、例えば、炭酸セシウムとオレイン酸とを有機溶媒とを含む溶液を調製する。有機溶媒として、1-オクタデセン、ジオクチルエーテル、ジフェニルエーテル等を用いることができる。このとき、有機溶媒40mLに対して、炭酸セシウムが0.2~2g、オレイン酸が0.1~10mLとなるように、それぞれの添加量を調製することが好ましい。得られた溶液を90~150℃で10~180分間減圧乾燥した後、アルゴン、窒素等の不活性ガス雰囲気下で100~200℃に加熱することにより、セシウム-オレイン酸溶液を得る。
一方、臭化鉛(II)と前述のものと同一の有機溶媒とを含む溶液を調製する。このとき、有機溶媒5mLに対して臭化鉛(II)を20~100mg添加する。得られた溶液を90~150℃で10~180分間減圧乾燥した後、アルゴン、窒素等の不活性ガス雰囲気下で0.1~2mLの3-アミノプロピルトリエトキシシランを添加する。
そして、臭化鉛(II)及び3-アミノプロピルトリエトキシシランを含む溶液を140~260℃に加熱した状態で上述のセシウム-オレイン酸溶液を添加し、1~10秒間加熱撹拌させることにより反応させた後に、得られた反応液を氷浴で冷却する。このとき、臭化鉛(II)及び3-アミノプロピルトリエトキシシランを含む溶液5mLに対して、セシウム-オレイン酸溶液を0.1~1mL添加することが好ましい。-20~30℃で撹拌中に、ナノ結晶911が析出すると共に、ナノ結晶911の表面に3-アミノプロピルトリエトキシシラン及びオレイン酸が配位する。
その後、得られた反応液を、大気下、室温(10~30℃、湿度5~60%)で5~300分間撹拌した後、0.1~50mLのエタノールを添加することにより懸濁液を得る。大気下、室温での撹拌中に3-アミノプロピルトリエトキシシランのアルコキシシリル基が縮合し、ナノ結晶911の表面にシロキサン結合を有する第1のシェル層912が形成される。
得られた懸濁液を遠心分離することにより固形物を回収し、固形物をヘキサンに添加することにより、三臭化鉛セシウムからなるナノ結晶911の表面にシロキサン結合を有する第1のシェル層912を備えた発光粒子がトルエンに分散した発光粒子分散液を得ることができる。
次に、加熱を行わずに第1のシェル層912を備えた発光粒子を製造する方法について説明する。半導体ナノ結晶の原料化合物及びナノ結晶911に含まれるカチオンに結合する結合性基を有する化合物(Siを含有しシロキサン結合を形成し得る反応性基を有する化合物は含まない)を含む溶液を、Siを含有しシロキサン結合を形成し得る反応性基を有する化合物をナノ結晶に対して貧溶媒である有機溶剤に溶解した溶液中に大気下にて滴下・混合することにより、ナノ結晶を析出させる方法が挙げられる。有機溶剤の使用量は半導体ナノ結晶に対して質量基準で10~1000倍量であることが好ましい。また、析出したナノ結晶はナノ結晶911の表面にシロキサン結合を有する第1のシェル層912が形成されたものとなり、遠心分離等の定法によりナノ結晶を得ることができる。
具体的には、半導体ナノ結晶の原料化合物を含む溶液として、例えば、臭化鉛(II)と臭化セシウムとオレイン酸とオレイルアミンと有機溶剤とを含む溶液を調製する。有機溶剤は、ナノ結晶の良溶媒であればよいが、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアミド、及びこれらの混合溶媒であることが相溶性の点から好ましい。このとき、有機溶剤10mLに対して、臭化鉛(II)が10~50mg、臭化セシウムが5~25mg、オレイン酸が0.2~2mL、オレイルアミンが0.05~0.5mlとなるように、それぞれの添加量を調整することが好ましい。
一方、Siを含有しシロキサン結合を形成し得る反応性基を有する化合物とナノ結晶に対して貧溶媒である有機溶剤とを含む溶液として、例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシランと貧溶媒とを調製する。貧溶媒としては、イソプロピルアルコール、トルエン、ヘキサン等を用いることができる。このとき、貧溶媒5mLに対して、3-アミノプロピルトリエトキシシランが0.01~0.5mLとなるように、それぞれの添加量を調整することが好ましい。
そして、上述の臭化鉛(II)と臭化セシウムとオレイン酸とオレイルアミンを含む溶液0.1~1mLを、上述の3-アミノプロピルトリエトキシシランと貧溶媒を含む溶液5mLに対して、大気下、0~30℃で添加し、瞬時に大気下で5~180秒間撹拌した後に、遠心分離によって固形物を回収する。混合物を負溶媒に添加したときに、ナノ結晶911が析出すると共に、ナノ結晶911の表面に3-アミノプロピルトリエトキシシラン、オレイン酸及びオレイルアミンが配位する。そして、大気下での撹拌中に3-アミノプロピルトリエトキシシランのアルコキシシリル基が縮合し、ナノ結晶911の表面にシロキサン結合を有する第1のシェル層912が形成される。
この回収された固形物をトルエンに添加することにより、三臭化鉛セシウム結晶からなるナノ結晶911の表面にシロキサン結合を有する第1のシェル層912を備えた発光粒子がトルエンに分散した発光粒子分散液を得ることができる。
<第2のシェル層913>
前記シェル層913を前記第1のシェル層912の表面に均一に形成するために、第2のシェル層913は、塩基性基を含む構造単位を有するポリマーBと、加水分解シリル基を有するシラン化合物Cに由来するものであることが好ましい。第1のシェル層912の表面に第2のシェル層913を均一に被覆するためには、第1のシェル層912表面に該シラン化合物の反応場が存在することが好ましいからである。まず、第1のシェル層912表面にポリマーBが有する塩基性基を吸着させることにより、第1のシェル層912の表面に反応場を形成する。ついでシラン化合物Cを混合することにより、該反応場においてシラン化合物Cが加水分解性シリル基の加水分解によりシロキサン結合を形成することから、第1のシェル層912表面に第2のシェル層913を均一に形成することが可能となる。該第2のシェル層913を備えた発光粒子は、水分や酸素下における光に対する優れた安定性を確実に得ることができ、その結果、優れた発光特性を得ることができる。
前記ポリマーBは、塩基性基を含む構造単位を有する化合物であり、塩基性基を有する第一の構造単位と、分散媒への親和性に優れた親溶媒性であって塩基性基を有さない第二の構造単位とを備えたポリマーである。ここでいう分散媒とは、発光粒子を分散させる化合物であり、各種有機溶剤や光重合性化合物等の樹脂であってよい。
前記塩基性基を有する第一の構造単位としては、半導体ナノ結晶への吸着性の観点から下記式(B1)、(B2)で表される構造単位を有することがより好ましい。
Figure 2023094546000004
式中、RB11、RB21及びRB22は、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、RB12は、塩基性を有する1価の基、例えば、一級アミノ基、二級アミノ基、三級アミノ基、四級アンモニウム基、イミノ基、ピリジル基、ピリミジン基、ピペラジニル基、ピペリジル基、イミダゾリル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基を含む塩基性基を表し、
B11及びXB12は、各々独立して、-COO-、-OCO-、窒素原子によって置換されてもよい炭素原子数が1~8のアルキル鎖、単結合を表す。
前記式(B1)で表される第一の構造単位を与える化合物としては、具体的には、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、4-アミノスチレン、4-ジメチルアミノスチレン、1-ビニルイミダゾール、N-ビニル-2-ピロリドン、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、アリルアミン等が挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート及びアクリレートの一方又は両方を意味する。
前記式(B2)で表される第一の構造単位を与える化合物としては、エチレンイミン、プロピレンイミン等が挙げられる。
前記親溶媒性の第二の構造単位としては、半導体ナノ結晶粒子への分散性の観点から下記式(B3)、(B4)で表される構造単位を有することがより好ましい。
Figure 2023094546000005
式中、RB21及びRB41は、水素原子又はメチル基を表し、RB32は、直鎖状或いは分岐状の炭素数2~15のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数4~20のシクロアルキル基、末端がヒドロキシ基又はアルコキシ基である炭素数10~50のポリアルキレンオキサイド基、置換基を有してもよい芳香族基、または一般式(B3)で表される基を表し、XB31及びXB41は、-COO-、-OCO-、炭素原子数が1~8のアルキル鎖、単結合を表し、
B42は、一般式(B4-1)で表される基を表し、
Figure 2023094546000006
B43は、炭素数1~20の直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を表し、aは0または1を表し、bは1~100を表す。
一般式(B4-1)におけるポリエステル骨格は、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンの自己縮合、もしくはヒドロキシカルボン酸とラクトンの混合縮合により得られる。ヒドロキシカルボン酸としては、12-ヒドロキシステアリン酸などが挙げられ、ラクトンとしては、ε-カプロラクトン、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトンなどが挙げられるが、12-ヒドロキシステアリン酸、バレロラクトンあるいはカプロラクトンから誘導される構造単位を少なくとも一つ有することが好ましい。
前記式(B3)で表される第二の構造単位を与える化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、イコサニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式構造を有する(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール、ステアロキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アリロキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のアルキル基末端ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物;スチレン、α-メチルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、p-イソブチルスチレン等のスチレン誘導体モノマー、アリルアミンとポリエステルの縮合物等が挙げられる。
前記式(B4)で表される第二の構造単位を与える化合物としては、エチレンイミンとポリエステルの縮合物、プロピレンイミンとポリエステルの縮合物等が挙げられる。
前記ポリマーBにおいては、式(B1)及び式(B2)で表される構造単位の少なくとも1種以上を用いることができ、また、式(B3)及び式(B4)で表される構造単位の少なくとも1種以上を用いることができる。さらに、前記ポリマーBは、式(B1)で表される第一の構造単位を第一のポリマーブロックとして有し、式(B3)で表される第二の構造単位を第二のポリマーブロックとして有するブロックコポリマーであってもよく、式(B1)で表される第一の構造単位と式(B3)で表される第二の構造単位をランダムに有するランダムポリマーであってもよく、式(B2)で表される第一の構造単位と式(B4)で表される第二の構造単位を有するグラフトポリマーであってもよい。第1のシェル層912を備えた発光粒子の表面への吸着性の観点から、前記ポリマーBは、ブロックコポリマー、グラフトポリマーであることが好ましい。
ポリマーBにおける第一の構造単位の含有量は、ポリマーBを構成する全構造単位を基準として、例えば、3モル%以上、4モル%以上、又は5モル%以上であることが好ましく、50モル%以下、30モル%以下、又は20モル%以下であることが好ましい。
ポリマーBにおける第二の構造単位の含有量は、ポリマーBを構成する全構造単位を基準として、例えば、70モル%以上、75モル%以上、又は80モル%以上であることが好ましく、97モル%以下、96モル%以下、又は95モル%以下であることが好ましい。
ポリマーBは、第一の構造単位及び第二の構造単位に加えて、他の構造単位を含むものであってもよい。その場合、ポリマーBにおける第一の構造単位及び第二の構造単位の合計の含有量は、ポリマーBを構成する全構造単位を基準として、例えば、70モル%以上、80モル%以上、又は90モル%以上であることが好ましい。
例えば、ポリマーBは、第一の構造単位及び第二の構造単位に加えて、酸性基を有する構造単位を備えたものであってもよい。
酸性基としては、カルボキシル基(-COOH)、スルホ基(-SOH)、硫酸基(-OSOH)、ホスホン酸基(-PO(OH))、リン酸基(-OPO(OH))、ホスフィン酸基(-PO(OH)-)、メルカプト基(-SH)、が挙げられる。
非イオン性官能基としては、ヒドロキシ基、エーテル基、チオエーテル基、スルフィニル基(-SO-)、スルホニル基(-SO-)、カルボニル基、ホルミル基、エステル基、炭酸エステル基、アミド基、カルバモイル基、ウレイド基、チオアミド基、チオウレイド基、スルファモイル基、シアノ基、アルケニル基、アルキニル基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基が挙げられる。
酸性基を有する構造単位を与える化合物としては、カルボキシ基を有する(メタ)アクリレート、リン酸基を有する(メタ)アクリレート、スルホン基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。前記カルボキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレアート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート等のヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートに無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸等の酸無水物を反応させたモノマー、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。前記スルホン酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、スルホン酸エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。前記リン酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸2-(ホスホノオキシ)エチル等が挙げられる。
ポリマーBにおける重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定された値であり、標準ポリスチレン換算値で表す。発光性粒子の分散性の観点から、3,000以上200,000以下の範囲であることが好ましく、4,000以上100,000以下の範囲であることがより好ましく、5,000以上80,000以下の範囲であることがさらにより好ましい。測定条件は、本明細書の実施例と同一の条件とする。
前記シラン化合物Cとしては、例えば、下記式(C1)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2023094546000007
式中、RC1及びRC2は、それぞれ独立にアルキル基を表し、RC3及びRC4は、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、nは0又は1を表し、mは1以上の整数を表す。mは、10以下の整数であることが好ましい。
式(C1)で表される化合物は、具体的には、例えば、テトラブトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-デシルルトリメトキシシラン、n-ドデシルトリメトキシシラン、n-ドデシルトリエトキシシラン、n-ヘキサデシルトリメトキシシラン、n-ヘキサデシルトリエトキシシラン、n-オクタデシルトリメトキシシラン、トリメトキシ(3、3、3-トリフルオロプロピル)シラン、トリメトキシ(ペンタフルオロフェニル)シラン、トリメトキシ(11-ペンタフルオロフェノキシウンデシル)シラン、トリメトキシ(1H、1H、2H、2H-ノナフルオロヘキシル)シラン、テトラメトキシシランの部分加水分解オリゴマー(製品名:メチルシリケート51、メチルシリケート53A(以上、コルコート株式会社製))、テトラエトキシシランの部分加水分解オリゴマー(製品名:エチルシリケート40、エチルシリケート48(以上、コルコート株式会社製)、テトラメトキシシランとテトラエトキシシラン混合物の部分加水分解オリゴマー(製品名:EMS-485(コルコート株式会社製))等が挙げられる。
シラン化合物Cとして、上述の式(C1)で表される化合物に加えて、例えば、下記式(C2)で表される化合物及び(C3)で表される化合物を併用することも可能である。
Figure 2023094546000008
式中、RC21、RC22、RC31は、それぞれ独立にアルキル基を表し、RC23、RC24、RC32、RC33、及びRC34は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、フェニル基、シクロヘキシル基を表し、前記アルキル基中の炭素原子は酸素原子あるいは窒素原子に置換されていてもよく、m2は1以上10以下の整数を表す。
式(C2)で表される化合物及び式(C3)で表される化合物としては、具体的には、例えば、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシランが挙げられる。式(C1)で表される化合物は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。式(C2)で表される化合物及び(C3)で表される化合物は、一般式(C1)で表される化合物と1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
第2のシェル層913の形成方法としては、例えば、前記第1のシェル層912を備えた発光粒子と、前記ポリマーB及び前記溶媒を含むポリマー溶液と、シラン化合物Cを含む溶液とを混合する。シラン化合物Cの加水分解性シリル基が縮合してシロキサン結合を形成することにより、第1のシェル層912を備えた発光粒子の表面にポリマーB及びシラン化合物Cの重合体を含む層である第2のシェル層913が形成される。この結果、前記半導体ナノ結晶粒子の表面に、Siを含有する第1のシェル層912および913を備えた発光性粒子が形成される。前記シェル層は、シラン化合物A由来のポリシロキサン、ポリマーB及びシラン化合物C由来のポリシロキサンを含む。その後、得られた反応液を遠心分離し、上澄みを回収する。回収した上澄みに貧溶媒を加えて遠心分離し、上澄みを除去した残留物を得る。この残留物に光重合性化合物を加え均一化したのち遠心分離し、上澄みを回収することにより、前記発光粒子が光重合性化合物に分散した溶液を得ることができる。
具体的には、例えば、ポリマーB溶液中のシラン化合物A由来のポリシロキサンを備えた発光粒子1質量部に対して、シラン化合物Cが例えば0.1~50質量部となるように、ポリマー溶液にシラン化合物Cを含む溶液を添加し、例えば5~300分間撹拌する。
ポリマー溶液とシラン化合物Cを含む溶液との混合後に、加水分解制御の観点から、水(例えばイオン交換水)を更に添加してもよい。水の添加量は、例えば、シラン化合物C 100質量部に対して1~100質量部であってよい。水を添加後、例えば5~300分間撹拌する。
続いて、得られた反応液を、例えば3000~15000回転/分、1~30分間の条件で遠心分離した後、その上澄み液(例えば、反応液全量に対して70~100体積%分の上澄み液)を回収する。回収した上澄み液に対して2倍体積%のシクロヘキサンを加えて振とう攪拌したのち、例えば3000~15000回転/分、1~30分間の条件で遠心分離した後、上澄み液を除去する。上澄み除去後の残留物を回収することにより、発光性ナノ結晶911の表面に第1のシェル層912および913を備えた発光粒子を得ることができる。
第1のシェル層912および第2のシェル層913を合計した厚さは、0.5~50nmであることが好ましく、1.0~30nmであることがより好ましい。かかる厚さの第1のシェル層912および第2のシェル層913を有する発光粒子91であれば、ナノ結晶911の光に対する安定性を十分に高めることができる。なお、上記厚さは、例えば高分解能電子顕微鏡により測定することができる。
なお、第1のシェル層912および第2のシェル層913を合計した厚さは、配位子の結合基と反応性基とを連結する連結構造の原子数(鎖長)を調整することで変更することができる。
本発明の発光粒子の平均粒子径(体積平均径)は、200nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましく、50nm以下であることが特に好ましい。また、発光粒子の平均粒子径は、1nm以上であることが好ましく、1.5nm以上であることがより好ましく、2nm以上であることがさらに好ましく、5nm以上であることが特に好ましい。かかる平均粒子径を有する発光粒子は、所望の波長の光を発し易いことから好ましい。なお、発光粒子の平均粒子径(体積平均径)は、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡より各粒子の粒子径を測定し、体積平均径を算出することにより得られる。
本発明の発光粒子は、バッチリアクターを使用して製造することができる。また、粒子サイズのバラつき低減、不純物の混入防止、製造効率、温度制御等の観点から、連続層流、液滴ベース又は強制薄膜式等のフローリアクターを使用して製造することがより好ましい。配位子層、シリカ層及び有機層におけるシロキサン結合の形成を促進するために、反応時に水を添加しても良い。また、水を添加せずに反応溶媒又は反応雰囲気に含まれる微量の水分によって、シロキサン結合を形成しても良い。また、加熱によってシロキサン結合の形成を促進しても良い。その場合、加熱温度は20℃以上、120℃以下が好ましく、30℃以上、100℃以下がより好ましく、40℃以上、80℃以下が特に好ましい。
本発明の発光粒子は、溶媒に分散したコロイド溶液として得ることができる。得られた発光粒子を含有するコロイド溶液は、精製によって、過剰の製造原料又は前駆体、配位子、不純物、望ましくない粒子サイズを有する粒子等を除去することが好ましい。精製方法としては、濾過、再沈殿、抽出、遠心分離、吸着、再結晶、カラムクロマトグラフ等が挙げられる。作業の容易さ、コストの観点から、得られた発光粒子を含有するコロイド溶液を、遠心分離により精製することが好ましい。精製した発光粒子は、有機溶媒に再分散させても良く、乾燥させて固体として取り出しても良い。次工程にすぐに使用しない場合は、光学特性の安定性及び分散安定性の観点から、精製した発光粒子はコロイド溶液とすることが好ましい。精製後の発光粒子を分散させる有機溶媒としては、低極性の溶媒が好ましい。有機溶媒として具体的には、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンが挙げられる。得られた発光粒子を含有するコロイド溶液は、光学物性の安定性の観点から、水、アルコール等の不純物をなるべく含有しないことが好ましい。得られた発光粒子を含有するコロイド溶液において、水又はアルコールは1.0%以下であることが好ましく、水又はアルコールは0.1%以下であることがより好ましく、水又はアルコールは100ppm以下であることが特に好ましい。また、得られた発光粒子を含有するコロイド溶液は、コロイド溶液の分散安定性の観点から、遮光下、低温で保管することが好ましい。その場合、保管温度は-70℃以上、40℃以下が好ましく、-50℃以上、30℃以下がより好ましく、-30℃以上、20℃以下がさらに好ましく、-20℃以上、10℃以下が特に好ましい。
1-2.有機無機複合粒子
有機無機複合粒子は、無機成分を含むと共に有機成分を含む。この有機成分は発光粒子への親和性を優れたものとするだけではなく、光重合性化合物への親和性も優れたものとする。そのため、有機無機複合粒子は、発光粒子含有硬化性樹脂組成物中で凝集体を形成することなく存在することができ、したがって該組成物は分散安定性に優れたものとなる。また該組成物を使用した塗膜とする場合には、紫外線照射による光重合性化合物の重合に伴い、親和性が良好な発光粒子の近傍に局在化しやすくなることから、有機無機複合粒子が発光粒子の疑似表面層として作用し、その結果、発光粒子の耐光性を向上できる。
前記有機無機複合粒子の有機成分はポリマーに由来する成分であり、無機成分はシラン化合物に由来する成分である。該ポリマーは特に限定されないが、塩基性基を含む構造単位を有するポリマーであることが好ましい。また、該シラン化合物は特に限定されないが、加水分解シリル基を有するシラン化合物であることが好ましい。
有機無機複合粒子の1つの形態を図2に示す。有機無機複合粒子500は、塩基性基を含む構造単位を有するポリマー501と、シラン化合物である分子同士がシロキサン結合を形成した無機酸化物部位502を備える。かかる有機無機複合粒子500は、ポリマー501を溶媒に溶解させ、加水分解シリル基を有するシラン化合物を混合してシロキサン結合を生じさせることにより得ることができる。該有機無機複合粒子500は、該粒子表面から外側に向かう方向にポリマー501由来の有機鎖が配置するため、優れた分散安定性を得ることができる。
具体的には、例えば、まず、ポリマーを濃度0.1~100mg/mLとなるように溶媒に添加し、20~80℃の温度で溶解させる。続いて、シラン化合物が例えば0.1~50質量部となるように、ポリマー溶液にシラン化合物を添加し、例えば5~300分間攪拌する。ポリマー溶液とシラン化合物との混合後に、加水分解制御の観点から、水(例えばイオン交換水)を更に添加してもよい。水の添加量は、例えば、シラン化合物 100質量部に対して1~100質量部であってよい。水を添加後、例えば5~300分間撹拌する。得られた溶液を、例えば3000~10000回転/分、1~30分間の条件で遠心分離した後、その上澄み液(例えば、溶液全量に対して70~100体積%分の上澄み液)を回収することにより、溶媒に分散した有機無機複合粒子を得ることができる。
前記ポリマーとしては、塩基性基を含む構造単位を有するポリマーであれば何でもよく特に限定されるものではないが、該ポリマーとしては、前記発光粒子に用いたポリマーであってもよい。該ポリマーとしては、有機無機複合粒子の粒子サイズを制御する観点から、一般式(Z1-1)又は(Z1-2)で表される、塩基性基を含む構造単位を有するポリマーZであることが好ましい。
Figure 2023094546000009
式中、R、R及びRは、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、RZ1は、塩基性を有する1価の基、例えば、一級アミノ基、二級アミノ基、三級アミノ基、四級アンモニウム基、イミノ基、ピリジル基、ピリミジン基、ピペラジニル基、ピペリジル基、イミダゾリル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基を含む塩基性基を表し、
及びXは、各々独立して、-COO-、-OCO-、窒素原子によって置換されてもよい炭素原子数が1~8のアルキル鎖、単結合を表す。
前記式(Z1-1)で表される第一の構造単位を与える化合物としては、具体的には、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、4-アミノスチレン、4-ジメチルアミノスチレン、1-ビニルイミダゾール、N-ビニル-2-ピロリドン、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、アリルアミン等が挙げられる。
前記式(Z1-2)で表される第一の構造単位を与える化合物としては、エチレンイミン、プロピレンイミン等が挙げられる。
前記ポリマーZは、親溶媒性基として第二の構造単位を備えていても良い。第二の構造単位としては、有機無機複合粒子の粒子サイズの制御の観点から、下記式(Z2-1)、(Z2-2)で表される構造単位を有することがより好ましい。
Figure 2023094546000010
式中、R及びRは、水素原子又はメチル基を表し、RZ3は、直鎖状或いは分岐状の炭素数2~15のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数4~20のシクロアルキル基、末端がヒドロキシ基又はアルコキシ基である炭素数10~50のポリアルキレンオキサイド基、置換基を有してもよい芳香族基、または一般式(Z3)で表される基を表し、
及びXは、-COO-、-OCO-、炭素原子数が1~8のアルキル鎖、単結合を表し、
Z4は、一般式(Z3)で表される基を表し、
Figure 2023094546000011
は、炭素数1~20の直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を表し、aは0または1を表し、bは1~100を表す。
一般式(Z3)におけるポリエステル骨格は、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンの自己縮合、もしくはヒドロキシカルボン酸とラクトンの混合縮合により得られる。ヒドロキシカルボン酸としては、12-ヒドロキシステアリン酸などが挙げられ、ラクトンとしては、ε-カプロラクトン、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトンなどが挙げられるが、12-ヒドロキシステアリン酸、バレロラクトンあるいはカプロラクトンから誘導される構造単位を少なくとも一つ有することが好ましい。
前記式(Z2-1)で表される第二の構造単位を与える化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、イコサニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式構造を有する(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール、ステアロキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アリロキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のアルキル基末端ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物;スチレン、α-メチルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、p-イソブチルスチレン等のスチレン誘導体モノマー、アリルアミンとポリエステルの縮合物等が挙げられる。
前記式(Z2-2)で表される第二の構造単位を与える化合物としては、エチレンイミンとポリエステルの縮合物、プロピレンイミンとポリエステルの縮合物等が挙げられる。
前記ポリマーZにおいては、式(Z1)及び式(Z2)で表される構造単位を各々1種で用いることもでき、各々2種以上併用することもできる。さらに、前記ポリマーZは、式(Z1)で表される第一の構造単位を第一のポリマーブロックとして有し、式(Z2)で表される第二の構造単位を第二のポリマーブロックとして有するブロックコポリマーであってもよく、式(Z1)で表される第一の構造単位と式(Z2)で表される第二の構造単位をランダムに有するランダムポリマーであってもよく、式(Z1)で表される第一の構造単位と式(Z2)で表される第二の構造単位を有するグラフトポリマーであってもよい。工程S1で得られた前記前駆体粒子を含む固形物の表面への吸着性の観点から、前記ポリマーZは、ブロックコポリマー、グラフトポリマーであることが好ましい。
前記ポリマーZにおいては、式(Z1-1)及び式(Z1-2)で表される構造単位の少なくとも1種以上を用いることができ、また、式(Z2-1)及び式(Z2-2)で表される構造単位の少なくとも1種以上を用いることができる。さらに、前記ポリマーBは、式(Z1-1)で表される第一の構造単位を第一のポリマーブロックとして有し、式(Z2-1)で表される第二の構造単位を第二のポリマーブロックとして有するブロックコポリマーであってもよく、式(Z1-2)で表される第一の構造単位と式(Z2-2)で表される第二の構造単位をランダムに有するランダムポリマーであってもよく、式(Z1-2)で表される第一の構造単位と式(Z2-2)で表される第二の構造単位を有するグラフトポリマーであってもよい。前記有機無機複合粒子サイズの均一性の観点から、前記ポリマーZは、ブロックコポリマー、グラフトポリマーであることが好ましい。
ポリマーZにおける第一の構造単位の含有量は、ポリマーZを構成する全構造単位を基準として、例えば、3モル%以上、4モル%以上、又は5モル%以上であることが好ましく、50モル%以下、30モル%以下、又は20モル%以下であることが好ましい。
ポリマーZにおける第二の構造単位の含有量は、ポリマーZを構成する全構造単位を基準として、例えば、70モル%以上、75モル%以上、又は80モル%以上であることが好ましく、97モル%以下、96モル%以下、又は95モル%以下であることが好ましい。
ポリマーZは、第一の構造単位及び第二の構造単位に加えて、他の構造単位を含むものであってもよい。その場合、ポリマーZにおける第一の構造単位及び第二の構造単位の合計の含有量は、ポリマーZを構成する全構造単位を基準として、例えば、70モル%以上、80モル%以上、又は90モル%以上であることが好ましい。
例えば、ポリマーZは、第一の構造単位及び第二の構造単位に加えて、酸性基を有する構造単位を備えたものであってもよい。
酸性基としては、カルボキシル基(-COOH)、スルホ基(-SOH)、硫酸基(-OSOH)、ホスホン酸基(-PO(OH))、リン酸基(-OPO(OH))、ホスフィン酸基(-PO(OH)-)、メルカプト基(-SH)、が挙げられる。
非イオン性官能基としては、ヒドロキシ基、エーテル基、チオエーテル基、スルフィニル基(-SO-)、スルホニル基(-SO-)、カルボニル基、ホルミル基、エステル基、炭酸エステル基、アミド基、カルバモイル基、ウレイド基、チオアミド基、チオウレイド基、スルファモイル基、シアノ基、アルケニル基、アルキニル基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基が挙げられる。
酸性基を有する構造単位を与える化合物としては、カルボキシ基を有する(メタ)アクリレート、リン酸基を有する(メタ)アクリレート、スルホン基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。前記カルボキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレアート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート等のヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートに無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸等の酸無水物を反応させたモノマー、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。前記スルホン酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、スルホン酸エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。前記リン酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸2-(ホスホノオキシ)エチル等が挙げられる。
ポリマーZにおける重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定された値であり、標準ポリスチレン換算値で表す。発光性粒子の分散性の観点から、3,000以上200,000以下の範囲であることが好ましく、4,000以上100,000以下の範囲であることがより好ましく、5,000以上80,000以下の範囲であることがさらにより好ましい。
前記シラン化合物としては、シラン化合物の加水分解性シリル基が縮合してシロキサン結合による架橋構造を形成するものであれば何でもよく特に限定されるものではないが、該シラン化合物は、前記発光粒子に用いたシラン化合物Cであってもよい。該シラン化合物としては、有機無機複合粒子の形成しやすさの観点から、例えば、一般式(G)で表される化合物を含むことが好ましい。
Figure 2023094546000012
式中、RG11及びRG12は、それぞれ独立にアルキル基を表し、RG13及びRG14は、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、n11は0又は1を表し、m11は1以上の整数を表すが、m11は10以下の整数であることが好ましい。
式(G)で表される化合物は、具体的には、例えば、テトラブトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-デシルルトリメトキシシラン、n-ドデシルトリメトキシシラン、n-ドデシルトリエトキシシラン、n-ヘキサデシルトリメトキシシラン、n-ヘキサデシルトリエトキシシラン、n-オクタデシルトリメトキシシラン、トリメトキシ(3、3、3-トリフルオロプロピル)シラン、トリメトキシ(ペンタフルオロフェニル)シラン、トリメトキシ(11-ペンタフルオロフェノキシウンデシル)シラン、トリメトキシ(1H、1H、2H、2H-ノナフルオロヘキシル)シラン、テトラメトキシシランの部分加水分解オリゴマー(製品名:メチルシリケート51、メチルシリケート53A(以上、コルコート株式会社製))、テトラエトキシシランの部分加水分解オリゴマー(製品名:エチルシリケート40、エチルシリケート48(以上、コルコート株式会社製)、テトラメトキシシランとテトラエトキシシラン混合物の部分加水分解オリゴマー(製品名:EMS-485(コルコート株式会社製))等が挙げられる。
シラン化合物として、上述の式(G)で表される化合物に加えて、例えば、下記式(G2)で表される化合物及び(G3)で表される化合物を併用することも可能である。
Figure 2023094546000013
式中、RG21、RG22、RG31は、それぞれ独立にアルキル基を表し、RG23、RG24、RG32、RG33、及びRG34は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、フェニル基、シクロヘキシル基を表し、前記アルキル基中の炭素原子は酸素原子あるいは窒素原子に置換されていてもよく、m21は1以上10以下の整数を表す。
式(G2)で表される化合物及び式(G3)で表される化合物としては、具体的には、例えば、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシランが挙げられる。式(G1)で表される化合物は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。式(G2)で表される化合物及び(G3)で表される化合物は、一般式(G)で表される化合物と1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
有機無機複合粒子の平均粒子径(体積平均径)は、例えば、10nm以上、15nm以上、又は20nm以上であることが好ましく、400nm以下、300nm以下、又は200nm以下であることが好ましい。有機無機複合粒子の平均粒子径は、動的光散乱法により測定される体積平均径を意味する。
本発明の発光粒子含有硬化性樹脂組成物中に含まれる有機無機複合粒子の含有量は、光学特性、分散性の観点から、0.01以上10質量%以下であることが好ましく、0.1以上8質量%以下であることがより好ましく、0.5以上6質量%以下であることがさらに好ましく、1以上5質量%以下であることが特に好ましい。
1-3.光重合性化合物
本発明の発光粒子含有硬化性樹脂組成物中に含まれる光重合性化合物は、硬化物中においてバインダーとして機能し、光(活性エネルギー線)の照射によって重合する化合物であり、光重合性のモノマー又はオリゴマーを用いてもよい。
光重合性化合物は、ラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、アニオン重合性化合物等を用いることができるが、速硬化性の観点から、ラジカル重合性化合物を用いる事が好ましい。
ラジカル重合性化合物は、例えば、エチレン性不飽和基を有する化合物である。本明細書において、エチレン性不飽和基とは、エチレン性不飽和結合(重合性炭素-炭素二重結合)を有する基を意味する。エチレン性不飽和基を有する化合物におけるエチレン性不飽和結合の数(例えばエチレン性不飽和基の数)は、例えば、1~4である。
エチレン性不飽和基を有する化合物としては、例えば、ビニル基、ビニレン基、ビニリデン基、(メタ)アクリロイル基等のエチレン性不飽和基を有する化合物が挙げられる。外部量子効率をより向上させることができる観点では、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、単官能又は多官能の(メタ)アクリレートがより好ましく、単官能又は二官能の(メタ)アクリレートが更に好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及びそれに対応する「メタクリロイル基」を意味する。「(メタ)アクリレート」との表現についても同様である。また、単官能の(メタ)アクリレートとは、(メタ)アクリロイル基を1つ有する(メタ)アクリレートを意味し、多官能の(メタ)アクリレートとは、(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する(メタ)アクリレートを意味する。
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、こはく酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、N-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]フタルイミド、N-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]テトラヒドロフタルイミド等が挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートは、2官能(メタ)アクリレート、3官能(メタ)アクリレート、4官能(メタ)アクリレート、5官能(メタ)アクリレート、6官能(メタ)アクリレート等である。例えば、ジオール化合物の2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、トリオール化合物の2つまたは3つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジまたはトリ(メタ)アクリレート等を用いることができる。
2官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、1モルのネオペンチルグリコールに4モル以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、1モルのビスフェノールAに2モルのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、1モルのトリメチロールプロパンに3モル以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるトリオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、1モルのビスフェノールAに4モル以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
3官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1モルのトリメチロールプロパンに3モル以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるトリオールの3つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
4官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
5官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
6官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートは、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のジペンタエリスリトールの複数の水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたポリ(メタ)アクリレート、一分子中にエチレン性二重結合を2つ以上有する芳香族ウレタンオリゴマー、脂肪族ウレタンオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー及びその他特殊オリゴマーからなる群から選択される少なくとも一種の化合物であってもよい。
(メタ)アクリレート化合物は、リン酸基を有する、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキルリン酸(メタ)アクリレート等であってもよい。
本発明の硬化性樹脂組成物において、硬化可能成分を、光重合性化合物のみ又はそれを主成分として構成する場合には、光重合性化合物としては、重合性官能基を1分子中に2以上有する2官能以上の光重合性化合物を必須成分として用いることが、硬化物の耐久性(強度、耐熱性等)をより高めることができることからより好ましい。
該組成物を調製した際の粘度安定性に優れる観点、吐出や塗布性により優れる観点および発光粒子塗膜の製造時における硬化収縮に起因する塗膜の平滑性の低下を抑制し得る観点から、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを組み合わせて用いることが好ましい。
光重合性化合物の分子量は、例えば、50以上であり、100以上又は150以上であってもよい。光重合性化合物の分子量は、例えば、500以下であり、400以下又は300以下であってもよい。該組成物をインクジェット方式の印刷方式を用いて塗布する場合、粘度と、吐出後のインクの耐揮発性を両立しやすい観点から、好ましくは50~500であり、より好ましくは100~400である。該組成物をロールコーター、グラビアコーター、フレキソコーター、ダイコーター等の印刷方式を用いてフィルム等の基材に塗布する場合には、粘度とレベリング性を両立しやすい観点から、好ましくは100~500であり、より好ましくは150~400である。
該組成物の硬化物の表面のべたつき(タック)を低減する観点では、光重合性化合物として、環状構造を有するラジカル重合性化合物を用いることが好ましい。環状構造は、芳香環構造であっても非芳香環構造であってもよい。環状構造の数(芳香環及び非芳香環の数の合計)は、1又は2以上であるが、3以下であることが好ましい。環状構造を構成する炭素原子の数は、例えば、4以上であり、5以上又は6以上であることが好ましい。炭素原子の数は、例えば20以下であり、18以下であることが好ましい。
芳香環構造は、炭素数6~18の芳香環を有する構造であることが好ましい。炭素数6~18の芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環等が挙げられる。芳香環構造は、芳香族複素環を有する構造であってもよい。芳香族複素環としては、例えば、フラン環、ピロール環、ピラン環、ピリジン環等が挙げられる。芳香環の数は、1であっても、2以上であってもよいが3以下であることが好ましい。有機基は、2以上の芳香環が単結合により結合した構造(例えば、ビフェニル構造)を有していてもよい。
非芳香環構造は、例えば、炭素数5~20の脂環を有する構造であることが好ましい。炭素数5~20の脂環としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環等のシクロアルカン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロヘプテン環、シクロオクテン環等のシクロアルケン環などが挙げられる。脂環は、ビシクロウンデカン環、デカヒドロナフタレン環、ノルボルネン環、ノルボルナジエン環、イソボルニル環等の縮合環であってもよい。非芳香環構造は、非芳香族複素環を有する構造であってもよい。非芳香族複素環としては、例えば、テトラヒドロフラン環、ピロリジン環、テトラヒドロピラン環、ピぺリジン環等が挙げられる。
環状構造を有するラジカル重合性化合物は、好ましくは、環状構造を有する単官能又は多官能(メタ)アクリレートである。環状構造を有する単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル( メタ) アクリレート等が挙げられる。環状構造を有する多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、PO変性ビスフェノールAジアクリレート等が挙げられる。
環状構造を有するラジカル重合性化合物の含有量は、該硬化性樹脂組成物の表面のべたつき(タック)を抑制しやすい観点から、該硬化性樹脂組成物中における光重合性化合物の全質量を基準として、3~85質量%であることが好ましく、5~65質量%であることがより好ましく、10~45質量%であることがさらに好ましく、15~35質量%であることが特に好ましい。
光重合性化合物としては、画素部の表面の均一性に優れる観点、該硬化性樹脂組成物の硬化性が良好となる観点、画素部(該硬化性樹脂組成物の硬化物)の耐溶剤性及び耐磨耗性が向上する観点、及び、より優れた光学特性(例えば外部量子効率)が得られる観点から、2種以上のラジカル重合性化合物を用いることが好ましく、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを組み合わせて用いることが好ましい。発光粒子含有組成物中に含まれる光重合性化合物の量は、40質量%以上、95質量%以下であることが好ましく、45質量%以上、94質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上、93質量%以下であることが特に好ましい。
光重合性化合物は、信頼性に優れる画素部(該硬化性樹脂組成物の硬化物)が得られやすい観点から、アルカリ不溶性であることが好ましい。本明細書中、光重合性化合物がアルカリ不溶性であるとは、1質量%の水酸化カリウム水溶液に対する25℃における光重合性化合物の溶解量が、光重合性化合物の全質量を基準として、30質量%以下であることを意味する。光重合性化合物の上記溶解量は、好ましくは、10質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。
1-4.光重合開始剤
本発明の発光粒子含有硬化性樹脂組成物中に用いられる光重合開始剤は、例えば光ラジカル重合開始剤が挙げられる。光ラジカル重合開始剤としては、分子開裂型又は水素引き抜き型の光ラジカル重合開始剤が好適である。
分子開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキサイド等が好適に用いられる。これら以外の分子開裂型の光ラジカル重合開始剤として、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン及び2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オンを併用してもよい。
水素引き抜き型の光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルスルフィド等が挙げられる。分子開裂型の光ラジカル重合開始剤と水素引き抜き型の光ラジカル重合開始剤とを併用してもよい。
本発明の硬化性樹脂組成物中に用いられる光重合開始剤は、フォトブリーチング性を有する開始剤を含有することが好ましい。この場合、硬化物の光透過性が高まりやすい。フォトブリーチング性を有する開始剤は、例えば、フォトブリーチング性を有するオキシムエステル系化合物とアシルフォスフィンオキサイド系化合物とのうち少なくとも一方を含有する。
フォトブリーチング性を有するオキシムエステル系化合物としては、例えば、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン2-(O-ベンゾイルオキシム)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。
フォトブリーチング性を有するアシルフォスフィンオキサイド系化合物としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
本発明の硬化性樹脂組成物中に用いられる光重合開始剤は、少なくとも1種以上のアシルホスフィンオキサイド系化合物を含有することが好ましい。これにより、塗膜の内部硬化性に優れ、かつ硬化膜の初期着色度が小さい塗膜を形成することができる。特に、少なくとも1種以上のアシルホスフィンオキサイド系化合物を含有する場合には、365ナノメートル、385ナノメートル、395ナノメートル又は405ナノメートル等、特定波長を中心とする±15ナノメートル域の狭スペクトル出力を有する紫外発光ダイオード(UV-LED)に適しており、好ましい。
光重合開始剤の含有量は、光重合性化合物への溶解性の観点、硬化性樹脂組成物の硬化性の観点、画素部(該組成物の硬化物)の経時安定性(外部量子効率の維持安定性)の観点から、光重合性化合物100質量%に対して、0.1~20質量%であることが好ましく、0.5~15質量%であることがより好ましく、1~15質量%であることがさらに好ましく、3~7質量%であることが特に好ましい。
光重合開始剤におけるアシルホスフィンオキサイド系化合物の含有比率は、該硬化性樹脂組成物の硬化性の観点から、50~100質量%であることが好ましく、60~100質量%であることがより好ましく、70~100質量%であることが特に好ましい。
1-5.その他の成分
本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上述した成分以外の成分を更に含有していてもよい。具体的には、重合禁止剤、酸化防止剤、分散剤、界面活性剤、光散乱粒子、連鎖移動剤、溶剤等が挙げられる。
重合禁止剤として具体的には、p-メトキシフェノール、クレゾール、tert-ブチルカテコール、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン等のキノン系化合物、p-フェニレンジアミン、4-アミノジフェニルアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン等のアミン系化合物、フェノチアジン、ジステアリルチオジプロピオネート等のチオエーテル系化合物、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルフリーラジカル、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルフリーラジカル等のN-オキシル化合物、N-ニトロソジフェニルアミン、N-ニトロソフェニルナフチルアミン、N-ニトロソジナフチルアミン等のニトロソ系化合物が挙げられる。重合禁止剤の添加量は、発光粒子含有硬化性樹脂組成物に含まれる光重合性化合物の総量に対して、0.01質量%以上、1.0質量%以下であることが好ましく、0.02質量%以上、0.5質量%以下であることが特に好ましい。
酸化防止剤として、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等の従来公知の酸化防止剤として用いられる化合物が挙げられる。具体的には、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(「IRGANOX1010」(IRGANOXは登録商標である。))、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(「IRGANOX1035」)、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(「IRGANOX1076」)が挙げられる。酸化防止剤の添加量は、発光粒子含有硬化性樹脂組成物に含まれる光重合性化合物の総量に対して、0.01質量%以上、2.0質量%以下であることが好ましく、0.02質量%以上、1.0質量%以下であることが特に好ましい。
分散剤として具体的には、TOP(トリオクチルフォスフィン)、TOPO(トリオクチルフォスフィンオキサイド)、ヘキシルホスホン酸(HPA)等のリン原子含有化合物、オレイルアミン、オクチルアミン、トリオクチルアミン等の窒素原子含有化合物、1-デカンチオール、オクタンチオール、ドデカンチオール等の硫黄原子含有化合物、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の高分子分散剤、DISPERBYK(ビックケミー社製、登録商標)、TEGO Dispers(エボニック社製、TEGOは登録商標である。)、EFKA(BASF社製、登録商標)、SOLSPERSE(日本ルーブリゾール社製、登録商標)、アジスパー(味の素ファインテクノ社製、登録商標)、DISPARLON(楠本化成社製、登録商標)、フローレン(共栄社化学社製)が挙げられる。分散剤の添加量は、発光粒子含有硬化性樹脂組成物に含まれる光重合性化合物の総量に対して、0.05質量%以上、10質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上、5質量%以下であることが特に好ましい。
界面活性剤は、発光粒子91を含有する薄膜を形成する場合に、膜厚ムラを低減させ得る化合物が好ましい。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類および脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類およびポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、及び第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤、並びにシリコーン系やフッ素系の界面活性剤が挙げられる。具体的には、例えば、「メガファックF-114」、「メガファックF-251」、「メガファックF-281」(以上、DIC社製、メガファックは登録商標である。)、「フタージェント100」、「フタージェント100C」、「フタージェント110」(以上、ネオス社製、フタージェントは登録商標である。)、「BYK-300」、「BYK-302」、「BYK-306」(以上、BYK社製、BYKは登録商標である。)、「TEGO Rad2100」、「TEGO Rad2011」、「TEGO Rad2200N」(以上、エボニック社製、TEGOは登録商標である。)、「DISPARLON OX-880EF」、「DISPARLON OX-881」、「DISPARLON OX-883」(以上、楠本化成社製、DISPARLONは登録商標である。)、「ポリフローNo.7」、「フローレンAC-300」、「フローレンAC-303」(以上、共栄社化学社製)が挙げられる。界面活性剤の添加量は、発光粒子含有硬化性樹脂組成物に含まれる光重合性化合物の総量に対して、0.005質量%以上、2質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上、0.5質量%以下であることが特に好ましい。
光散乱粒子は光学的に不活性な無機微粒子であることが好ましい。光散乱粒子は、発光層(光変換層)に照射された光源部からの光を散乱させることができる。光散乱粒子を構成する材料としては、例えば、タングステン、ジルコニウム、チタン、白金、ビスマス、ロジウム、パラジウム、銀、スズ、プラチナ、金のような単体金属;シリカ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、アルミナホワイト、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛のような金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、次炭酸ビスマス、炭酸カルシウムのような金属炭酸塩;水酸化アルミニウムのような金属水酸化物;ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等の複合酸化物、次硝酸ビスマスのような金属塩等が挙げられる。
中でも、光散乱粒子を構成する材料としては、漏れ光の低減効果により優れる観点から、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウムおよびシリカからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、酸化チタン、硫酸バリウムおよび炭酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも一種を含むことがより好ましく、酸化チタンであることが特に好ましい。
光散乱粒子の含有量は、本発明の発光粒子含有硬化性樹脂組成物をカラーフィルター層の形成材料として用いる場合、バックライトの青色光の透過を抑える観点で、該組成物の100質量部において、1質量部~10質量部であることが好ましく、2質量部~7.5質量部であることがより好ましく、3質量部~5質量部であることが特に好ましい。また、本発明の発光粒子含有硬化性樹脂組成物を光変換シートの形成材料として用いる場合、バックライトの青色光の取出しの観点で、該組成物の100質量部において、0.1質量部~5質量部であることが好ましく、0.15質量部~3質量部であることがより好ましく、0.2質量部~1.5質量部であることが特に好ましい。
連鎖移動剤は、該組成物の基材との密着性をより向上させること等を目的として使用される成分である。連鎖移動剤としては、例えば、芳香族炭化水素類;クロロホルム、四塩化炭素、四臭化炭素、ブロモトリクロロメタンのようなハロゲン化炭化水素類;オクチルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン、n-ペンチルメルカプタン、n-ヘキサデシルメルカプタン、n-テトラデシルメル、n-ドデシルメルカプタン、t-テトラデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタンのようなメルカプタン化合物;ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4-ブタンジオールビスチオプロピオネート、1,4-ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4-ジメチルメルカプトベンゼン、2、4、6-トリメルカプト-s-トリアジン、2-(N,N-ジブチルアミノ)-4,6-ジメルカプト-s-トリアジンのようなチオール化合物;ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィドのようなスルフィド化合物;N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジビニルアニリン、ペンタフェニルエタン、α-メチルスチレンダイマー、アクロレイン、アリルアルコール、ターピノーレン、α-テルピネン、γ-テルビネン、ジペンテン等が挙げられるが、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、チオール化合物が好ましく、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートがより好ましく、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)が特に好ましい。
連鎖移動剤の添加量は、発光粒子含有硬化性樹脂組成物に含まれる光重合性化合物の総量に対して、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上25質量%以下であることがより好ましく、5.0質量%以上20質量%以下であることが特に好ましい。
溶剤としては、例えば、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、クロロホルム、トルエン、オクタン、クロロベンゼン、テトラリン、ジフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート、又はそれらの混合物などが挙げられる。溶剤の沸点は、画素部の形成時に、該組成物の硬化前に該組成物から溶剤を除去する必要があるため、溶剤を除去しやすい観点から、溶剤の沸点は300℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることがさらに好ましい。発光粒子含有硬化性樹脂組成物が溶剤を含む場合、溶剤の含有量は、該組成物の全質量(溶剤を含む)を基準として、0~5質量%以下であることが好ましい。
1-5.発光粒子含有硬化性樹脂組成物の調製方法
本発明の該硬化性樹脂組成物、例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、上記した各成分を配合することにより調製することができる。該組成物を調製する具体的な方法は、前記発光粒子91を有機溶剤中で合成、遠心分離により分取した沈殿物から有機溶剤を除去し、次いで光重合性化合物に分散させる。また、前記有機無機複合粒子を有機溶剤中で合成、遠心分離により分取し有機溶剤を除去した後光重合性化合物に分散させる。発光粒子91および有機無機複合粒子の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、3本ロールミル、ペイントコンディショナー、アトライター、分散攪拌機、超音波等の分散機を使用することにより行うことができる。さらに、これら分散液を混合した溶液に光重合開始剤、必要に応じて、発光粒子、有機無機複合粒子、光重合性化合物および光重合開始剤以外の成分を添加、攪拌混合することにより調製することができる。また、光散乱粒子を使用する場合は、該光散乱粒子と高分子分散剤を混合、ビーズミルにより前記光重合性化合物へ分散させたミルベースを別途作成し、前記発光粒子と共に光重合性化合物、光重合開始剤とを混合することにより調製することができる。
2.発光粒子含有硬化性樹脂組成物の使用例
本発明の発光粒子含有硬化性樹脂組成物は、波長変換フィルム用途に好適である。本発明の発光粒子含有硬化性樹脂組成物を基板上に担持させる際の方法としては、スピンコーティング、ダイコーティング、エクストルージョンコーティング、ロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティング、ディッピング、インクジェット法、プリント法等を挙げることができる。またコーティングの際、発光粒子含有組成物に有機溶媒を添加しても良い。有機溶媒としては、炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、非プロトン性溶媒が挙げられるが、発光粒子の安定性の観点から、炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、エステル系溶媒が好ましい。有機溶媒として具体的には、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンが挙げられる。これらは単独でも、組み合わせて用いても良く、その蒸気圧と発光粒子含有組成物の溶解性を考慮し、適宜選択すれば良い。添加した有機溶媒を揮発させる方法としては、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥を用いることができる。フィルムの膜厚は、用途に応じて適宜調整して良いが、例えば0.1μm以上、10mm以下であることが好ましく、1μm以上、1mm以下であることが特に好ましい。
本発明の発光粒子含有硬化性樹脂組成物を基板上に担持させる際の基板の形状としては、平板の他に、曲面を構成部分として有していても良い。基板を構成する材料は、有機材料、無機材料を問わずに用いることができる。基板の材料となる有機材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリアリレート、ポリスルホン、トリアセチルセルロース、セルロース、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられ、また、無機材料としては、例えば、シリコン、ガラス、方解石等が挙げられる。
本発明の発光粒子含有硬化性樹脂組成物を基板上に担持させ重合させる際、迅速に重合が進行することが望ましいため、紫外線又は電子線等の活性エネルギー線を照射することにより重合させる方法が好ましい。照射時の温度は、本発明の発光粒子の粒子形状が保持される温度範囲内であることが好ましい。光重合によってフィルムを製造しようとする場合には、意図しない熱重合の誘起を避ける意味からも可能な限り室温に近い温度、即ち、典型的には25℃での温度で重合させることが好ましい。活性エネルギー線の強度は、0.1mW/cm以上、2.0W/cm以下であることが好ましい。強度が0.1mW/cm未満の場合、光重合を完了させるのに多大な時間が必要になり生産性が悪化してしまい、2.0W/cmよりも高い場合、発光粒子又は発光粒子含有組成物が劣化してしまう危険がある。
重合によって得られた本発明の発光粒子含有硬化性樹脂組成物を形成材料とする波長変換フィルムは、初期の特性変化を軽減し、安定的な特性発現を図ることを目的として熱処理を施すこともできる。熱処理の温度は50~250℃の範囲であることが好ましく、熱処理時間は30秒~12時間の範囲であることが好ましい。
このような方法によって製造された本発明の発光粒子含有組成物を形成材料とする波長変換フィルムは、基板から剥離して単体で用いても良く、剥離せずに用いても良い。また、得られた波長変換フィルムを積層しても良く、他の基板に貼り合わせて用いても良い。
本発明の発光粒子含有硬化性樹脂組成物を形成材料とする波長変換フィルムを積層構造体に用いる場合、積層構造体は、例えば基板、バリア層、光散乱層等の任意の層を有していても良い。基板を構成する材料としては例えば前記のものが挙げられる。積層構造体の構成例としては、例えば、2枚の基板間に本発明の発光粒子含有組成物を形成材料とする光変換層を挟持した構造が挙げられる。その場合、空気中の水分や酸素から発光粒子含有組成物を形成材料とする光変換層を保護するために、基板間の外周部を封止材によって封止しても良い。また、バリア層としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ガラスが挙げられる。光を均一に散乱させるために、光散乱層を有しても良い。光散乱層としては、例えば、前記光散乱粒子を含有する層及び光散乱フィルムが挙げられる。図3は、本実施形態の積層構造体の構成を模式的に示す断面図である。図3では、図面が煩雑になることを避けるため、断面を示すハッチングの記載を省略している。積層構造体40は、第1の基板41及び第2の基板42の間に、本実施形態の波長変換フィルム44が挟持されている。波長変換フィルム44は、光散乱粒子441と発光粒子442とを含有する発光粒子含有組成物を形成材料として形成され、光散乱粒子441及び発光粒子442は、波長変換フィルム中に均一に分散している。波長変換フィルム44は、封止材によって形成された封止層43によって封止されている。
本発明の発光粒子含有硬化性樹脂組成物を形成材料とする積層構造体は、発光デバイス用途に好適である。発光デバイスの構成例としては、例えば、プリズムシート、導光板、本発明の発光粒子を含む積層構造体及び光源を有する構造が挙げられる。光源としては、例えば、発光ダイオード、レーザー、電界発光デバイスが挙げられる。
本発明の発光粒子含有硬化性樹脂組成物を形成材料とする積層構造体は、ディスプレイ用の波長変換部材として使用されることが好ましい。波長変換部材として使用する場合の構成例としては、例えば、2枚のバリア層の間に本発明の発光粒子含有硬化性樹脂組成物を形成材料とする波長変換フィルムを封止した積層構造体を、導光板上に設置する構造が挙げられる。この場合、導光板の側面に設置された発光ダイオードからの青色光を、前記積層構造体を通すことによって、緑色光や赤色光へと変換し、青色光、緑色光及び赤色光が混色されて白色光を得ることができることから、ディスプレイ用のバックライトとして使用することができる。
上述の発光粒子含有硬化性樹脂組成物は、例えば、インクジェットプリンター、フォトリソグラフィー、スピンコーター等、種々の方法によって基板上に被膜を形成し、この被膜を加熱して硬化させることにより硬化物を得ることができる。以下、青色有機LEDバックライトを備えた発光素子のカラーフィルター画素部を発光粒子含有硬化性樹脂組成物にて形成する場合を例に挙げて説明する。
図4は、本発明の発光素子の一実施形態を示す断面図であり、図5および図6は、それぞれアクティブマトリックス回路の構成を示す概略図である。なお、図4では、便宜上、各部の寸法およびそれらの比率を誇張して示し、実際とは異なる場合がある。また、以下に示す材料、寸法等は一例であって、本発明は、それらに限定されず、その要旨を変更しない範囲で適宜変更することが可能である。以下では、説明の都合上、図4の上側を「上側」または「上方」と、上側を「下側」または「下方」と言う。また、図4では、図面が煩雑になることを避けるため、断面を示すハッチングの記載を省略している。
図3に示すように、発光素子100は、下基板1と、EL光源部200と、充填層10と、保護層11と、発光粒子91を含有し発光層として作用する光変換層12と、上基板13とをこの順に積層した構造を備える。光変換層12に含有される発光粒子91は、ポリマー被覆発光粒子91であってもよく、ポリマー層92で被覆されていない発光粒子91であってもよい。EL光源部200は、陽極2と、複数の層からなるEL層14と、陰極8と、図示しない偏光板と、封止層9とを順に備える。EL層14は、陽極2側から順次積層された正孔注入層3と、正孔輸送層4と、発光層5と、電子輸送層6と、電子注入層7とを含む。
かかる発光素子100は、EL光源部200(EL層14)から発せられた光を光変換層12によって吸収及び再放出するか或いは透過させ、上基板13側から外部に取り出すフォトルミネセンス素子である。このとき、光変換層12に含まれる発光粒子91によって所定の色の光に変換される。以下、各層について順次説明する。
<下基板1および上基板13>
下基板1および上基板13は、それぞれ発光素子100を構成する各層を支持および/または保護する機能を有する。発光素子100がトップエミッション型である場合、上基板13が透明基板で構成される。一方、発光素子100がボトムエミッション型である場合、下基板1が透明基板で構成される。ここで、透明基板とは、可視光領域の波長の光を透過可能な基板を意味し、透明には、無色透明、着色透明、半透明が含まれる。
透明基板としては、例えば、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の透明なガラス基板、石英基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)等で構成されるプラスチック基板(樹脂基板)、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅等で構成される金属基板、シリコン基板、ガリウム砒素基板等を用いることができる。これらの中でも、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラスからなるガラス基板を用いることが好ましい。具体的には、コーニング社製の「7059ガラス」、「1737ガラス」、「イーグル2000」及び「イーグルXG(登録商標)」、旭硝子社製の「AN100」、日本電気硝子社製の「OA-10G」及び「OA-11」が好適である。これらは、熱膨脹率の小さい素材であり寸法安定性及び高温加熱処理における作業性に優れる。また、発光素子100に可撓性を付与する場合には、下基板1および上基板13には、それぞれ、プラスチック基板(高分子材料を主材料として構成された基板)、比較的厚さの小さい金属基板が選択される。
下基板1および上基板13の厚さは、それぞれ特に限定されないが、100~1,000μmの範囲であることが好ましく、300~800μmの範囲であることがより好ましい。
なお、発光素子100の使用形態に応じて、下基板1および上基板13のいずれか一方または双方を省略することもできる。
図4に示すように、下基板1上には、R、G、Bで示される画素電極PEを構成する陽極2への電流の供給を制御する信号線駆動回路C1および走査線駆動回路C2と、これらの回路の作動を制御する制御回路C3と、信号線駆動回路C1に接続された複数の信号線706と、走査線駆動回路C2に接続された複数の走査線707とを備えている。また、各信号線706と各走査線707との交差部近傍には、図5に示すように、コンデンサ701と、駆動トランジスタ702と、スイッチングトランジスタ708とが設けられている。
コンデンサ701は、一方の電極が駆動トランジスタ702のゲート電極に接続され、他方の電極が駆動トランジスタ702のソース電極に接続されている。駆動トランジスタ702は、ゲート電極がコンデンサ701の一方の電極に接続され、ソース電極がコンデンサ701の他方の電極および駆動電流を供給する電源線703に接続され、ドレイン電極がEL光源部200の陽極4に接続されている。
スイッチングトランジスタ708は、ゲート電極が走査線707に接続され、ソース電極が信号線706に接続され、ドレイン電極が駆動トランジスタ702のゲート電極に接続されている。また、本実施形態において、共通電極705は、EL光源部200の陰極8を構成している。なお、駆動トランジスタ702およびスイッチングトランジスタ708は、例えば、薄膜トランジスタ等で構成することができる。
走査線駆動回路C2は、走査線707を介して、スイッチングトランジスタ708のゲート電極に走査信号に応じた走査電圧を供給または遮断し、スイッチングトランジスタ708のオンまたはオフする。これにより、走査線駆動回路C2は、信号線駆動回路C1が信号電圧を書き込むタイミングを調整する。一方、信号線駆動回路C1は、信号線706およびスイッチングトランジスタ708を介して、駆動トランジスタ702のゲート電極に映像信号に応じた信号電圧を供給または遮断し、EL光源部200に供給する信号電流の量を調整する。
したがって、走査線駆動回路C2から走査電圧がスイッチングトランジスタ708のゲート電極に供給され、スイッチングトランジスタ708がオンすると、信号線駆動回路C1から信号電圧がスイッチングトランジスタ708のゲート電極に供給される。このとき、この信号電圧に対応したドレイン電流が電源線703から信号電流としてEL光源部200に供給される。その結果、EL光源部200は、供給される信号電流に応じて発光する。
<EL光源部200>
[陽極2]
陽極2は、外部電源から発光層5に向かって正孔を供給する機能を有する。陽極2の構成材料(陽極材料)としては、特に限定されないが、例えば、金(Au)のような金属、ヨウ化銅(CuI)のようなハロゲン化金属、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)のような金属酸化物等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
陽極2の厚さは、特に制限されないが、10~1,000nmの範囲であることが好ましく、10~200nmの範囲であることがより好ましい。
陽極2は、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法のような乾式成膜法により形成することができる。この際、フォトリソグラフィー法やマスクを用いた方法により、所定のパターンを有する陽極2を形成してもよい。
[陰極8]
陰極8は、外部電源から発光層5に向かって電子を供給する機能を有する。陰極8の構成材料(陰極材料)としては、特に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、銀、ナトリウム-カリウム合金、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、希土類金属等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
陰極8の厚さは、特に限定されないが、0.1~1,000nmの範囲であることが好ましく、1~200nmの範囲であることがより好ましい。
陰極3は、例えば、蒸着法やスパッタリング法のような乾式成膜法により形成することができる。
[正孔注入層3]
正孔注入層3は、陽極2から供給された正孔を受け取り、正孔輸送層4に注入する機能を有する。なお、正孔注入層3は、必要に応じて設けるようにすればよく、省略することもできる。
正孔注入層3の構成材料(正孔注入材料)としては、特に限定されないが、例えば、銅フタロシアニンのようなフタロシアニン化合物;4,4’,4’’-トリス[フェニル(m-トリル)アミノ]トリフェニルアミンのようなトリフェニルアミン誘導体;1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル、2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノ-キノジメタンのようなシアノ化合物;酸化バナジウム、酸化モリブデンのような金属酸化物;アモルファスカーボン;ポリアニリン(エメラルディン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT-PSS)、ポリピロールのような高分子等が挙げられる。これらの中でも、正孔注入材料としては、高分子であることが好ましく、PEDOT-PSSであることがより好ましい。また、上述の正孔注入材料は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
正孔注入層3の厚さは、特に限定されないが、0.1~500mmの範囲であることが好ましく、1~300nmの範囲であることがより好ましく、2~200nmの範囲であることがさらに好ましい。正孔注入層3は、単層構成であっても、2層以上が積層された積層構成であってもよい。
このような正孔注入層4は、湿式成膜法または乾式成膜法により形成することができる。正孔注入層3を湿式成膜法で形成する場合には、通常、上述の正孔注入材料を含有するインクを各種塗布法により塗布し、得られた塗膜を乾燥する。塗布法としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット印刷法(液滴吐出法)、スピンコート法、キャスト法、LB法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。一方、正孔注入層3を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スパッタリング法等を好適に用いることができる。
[正孔輸送層4]
正孔輸送層4は、正孔注入層3から正孔を受け取り、発光層6まで効率的に輸送する機能を有する。また、正孔輸送層4は、電子の輸送を防止する機能を有していてもよい。なお、正孔輸送層4は、必要に応じて設けるようにすればよく、省略することもできる。
正孔輸送層4の構成材料(正孔輸送材料)としては、特に限定されないが、例えば、TPD(N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(3-メチルフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’ジアミン)、α-NPD(4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル)、m-MTDATA(4、4’,4’’-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)のような低分子トリフェニルアミン誘導体;ポリビニルカルバゾール;ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)-ベンジジン](poly-TPA)、ポリフルオレン(PF)、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)-ベンジジン(Poly-TPD)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-コ-(4,4’-(N-(sec-ブチルフェニル)ジフェニルアミン))(TFB)、ポリフェニレンビニレン(PPV)のような共役系化合物重合体;およびこれらのモノマー単位を含む共重合体等が挙げられる。
これらの中でも、正孔輸送材料としては、トリフェニルアミン誘導体、置換基が導入されたトリフェニルアミン誘導体を重合することにより得られた高分子化合物であることが好ましく、置換基が導入されたトリフェニルアミン誘導体を重合することにより得られた高分子化合物であることがより好ましい。また、上述の正孔輸送材料は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
正孔輸送層4の厚さは、特に限定されないが、1~500nmの範囲であることが好ましく、5~300nmの範囲であることがより好ましく、10~200nmの範囲であることがさらに好ましい。正孔輸送層4は、単層構成であっても、2層以上が積層された積層構成であってもよい。
このような正孔輸送層4は、湿式成膜法または乾式成膜法により形成することができる。正孔輸送層4を湿式成膜法で形成する場合には、通常、上述の正孔輸送材料を含有するインクを各種塗布法により塗布し、得られた塗膜を乾燥する。塗布法としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット印刷法(液滴吐出法)、スピンコート法、キャスト法、LB法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。一方、正孔輸送層4を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スパッタリング法等を好適に用いることができる。
[電子注入層7]
電子注入層7は、陰極8から供給された電子を受け取り、電子輸送層6に注入する機能を有する。なお、電子注入層7は、必要に応じて設けるようにすればよく、省略することもできる。
電子注入層7の構成材料(電子注入材料)としては、特に制限されないが、例えば、LiO、LiO、NaS、NaSe、NaOのようなアルカリ金属カルコゲナイド;CaO、BaO、SrO、BeO、BaS、MgO、CaSeのようなアルカリ土類金属カルコゲナイド;CsF、LiF、NaF、KF、LiCl、KCl、NaClのようなアルカリ金属ハライド;8-ヒドロキシキノリノラトリチウム(Liq)のようなアルカリ金属塩;CaF、BaF、SrF、MgF、BeFのようなアルカリ土類金属ハライド等が挙げられる。これらの中でも、アルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ土類金属ハライド、アルカリ金属塩であることが好ましい。また、上述の電子注入材料は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
電子注入層7の厚さは、特に限定されないが、0.1~100nmの範囲であることが好ましく、0.2~50nmの範囲であることがより好ましく、0.5~10nmの範囲であることがさらに好ましい。電子注入層7は、単層構成であっても、2層以上が積層された積層構成であってもよい。
このような電子注入層7は、湿式成膜法または乾式成膜法により形成することができる。電子注入層7を湿式成膜法で形成する場合には、通常、上述の電子注入材料を含有するインクを各種塗布法により塗布し、得られた塗膜を乾燥する。塗布法としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット印刷法(液滴吐出法)、スピンコート法、キャスト法、LB法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。一方、電子注入層7を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スパッタリング法等が適用されうる。
[電子輸送層8]
電子輸送層8は、電子注入層7から電子を受け取り、発光層5まで効率的に輸送する機能を有する。また、電子輸送層8は、正孔の輸送を防止する機能を有していてもよい。なお、電子輸送層8は、必要に応じて設けるようにすればよく、省略することもできる。
電子輸送層8の構成材料(電子輸送材料)としては、特に制限されないが、例えば、トリス(8-キノリラート)アルミニウム(Alq3)、トリス(4-メチル-8-キノリノラート)アルミニウム(Almq3)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム(BeBq2)、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)(p-フェニルフェノラート)アルミニウム(BAlq)、ビス(8-キノリノラート)亜鉛(Znq)のようなキノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体;ビス[2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラート]亜鉛(Zn(BOX)2)のようなベンズオキサゾリン骨格を有する金属錯体;ビス[2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラート]亜鉛(Zn(BTZ)2)のようなベンゾチアゾリン骨格を有する金属錯体;2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(PBD)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(TAZ)、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(OXD-7)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]カルバゾール(CO11)のようなトリまたはジアゾール誘導体;2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(TPBI)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(mDBTBIm-II)のようなイミダゾール誘導体;キノリン誘導体;ペリレン誘導体;4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(BPhen)のようなピリジン誘導体;ピリミジン誘導体;トリアジン誘導体;キノキサリン誘導体;ジフェニルキノン誘導体;ニトロ置換フルオレン誘導体;酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO)のような金属酸化物等が挙げられる。これらの中でも、電子輸送材料としては、イミダゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、金属酸化物(無機酸化物)であることが好ましい。また、上述の電子輸送材料は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
電子輸送層7の厚さは、特に限定されないが、5~500nmの範囲であることが好ましく、5~200nmの範囲であることがより好ましい。電子輸送層6は、単層であっても、2以上が積層されたものであってもよい。
このような電子輸送層7は、湿式成膜法または乾式成膜法により形成することができる。電子輸送層6を湿式成膜法で形成する場合には、通常、上述の電子輸送材料を含有するインクを各種塗布法により塗布し、得られた塗膜を乾燥する。塗布法としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット印刷法(液滴吐出法)、スピンコート法、キャスト法、LB法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。一方、電子輸送層6を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スパッタリング法等が適用され得る。
[発光層5]
発光層5は、発光層5に注入された正孔および電子の再結合により生じるエネルギーを利用して発光を生じさせる機能を有する。本実施形態の発光層5は、400~500nmの範囲の波長の青色光を発し、より好ましくは420~480nmの範囲である。
発光層5は、発光材料(ゲスト材料またはドーパント材料)およびホスト材料を含むことが好ましい。この場合、ホスト材料と発光材料との質量比は、特に制限されないが、10:1~300:1の範囲であることが好ましい。発光材料には、一重項励起エネルギーを光に変換可能な化合物または三重項励起エネルギーを光に変換可能な化合物を使用することができる。また、発光材料としては、有機低分子蛍光材料、有機高分子蛍光材料および有機燐光材料からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
一重項励起エネルギーを光に変換可能な化合物としては、蛍光を発する有機低分子蛍光材料または有機高分子蛍光材料が挙げられる。
有機低分子蛍光材料としては、アントラセン構造、テトラセン構造、クリセン構造、フェナントレン構造、ピレン構造、ペリレン構造、スチルベン構造、アクリドン構造、クマリン構造、フェノキサジン構造またはフェノチアジン構造を有する化合物が好ましい。
有機低分子蛍光材料の具体例としては、例えば、5,6-ビス[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-2,2’-ビピリジン、5,6-ビス[4’-(10-フェニル-9-アントリル)ビフェニル-4-イル]-2,2’-ビピリジン(、N,N’-ビス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニルスチルベン-4,4’-ジアミン、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)トリフェニルアミン、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン、4-(10-フェニル-9-アントリル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン、4-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン、ペリレン、2,5,8,11-テトラ(tert-ブチル)ペリレン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-ピレン-1,6-ジアミン、N,N’-ビス(ジベンゾフラン-2-イル)-N,N’-ジフェニルピレン-1,6-ジアミン、N,N’-ビス(ジベンゾチオフェン-2-イル)-N,N’-ジフェニルピレン-1,6-ジアミン、N,N’’-(2-tert-ブチルアントラセン-9,10-ジイルジ-4,1-フェニレン)ビス[N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン]、N,9-ジフェニル-N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン、N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン-2,7,10,15-テトラアミン、クマリン30、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン、N,N,9-トリフェニルアントラセン-9-アミン、クマリン6、クマリン545T、N,N’-ジフェニルキナクリドン、ルブレン、5,12-ビス(1,1’-ビフェニル-4-イル)-6,11-ジフェニルテトラセン、2-(2-{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-6-メチル-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル、2-{2-メチル-6-[2-(2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)テトラセン-5,11-ジアミン、7,14-ジフェニル-N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)アセナフト[1,2-a]フルオランテン-3,10-ジアミン、2-{2-イソプロピル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル、2-{2-tert-ブチル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル、2-(2,6-ビス{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル、2-{2,6-ビス[2-(8-メトキシ-1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル、5,10,15,20-テトラフェニルビスベンゾ[5,6]インデノ[1,2,3-cd:1’,2’,3’-lm]ペリレン等が挙げられる。
有機高分子蛍光材料の具体例としては、例えば、フルオレン誘導体に基づく単位からなるホモポリマー、フルオレン誘導体に基づく単位とテトラフェニルフェニレンジアミン誘導体に基づく単位とからなるコポリマー、タ―フェニル誘導体に基づく単位からなるホモポリマー、ジフェニルベンゾフルオレン誘導体に基づく単位からなるホモポリマー等が挙げられる。
三重項励起エネルギーを光に変換可能な化合物としては、燐光を発する有機燐光材料が好ましい。有機燐光材料の具体例としては、例えば、イリジウム、ロジウム、白金、ルテニウム、オスミウム、スカンジウム、イットリウム、ガドリニウム、パラジウム、銀、金、アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含む金属錯体が挙げられる。中でも、有機燐光材料としては、イリジウム、ロジウム、白金、ルテニウム、オスミウム、スカンジウム、イットリウム、ガドリニウムおよびパラジウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含む金属錯体が好ましく、イリジウム、ロジウム、白金およびルテニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含む金属錯体がより好ましく、イリジウム錯体または白金錯体がさらに好ましい。
ホスト材料としては、発光材料のエネルギーギャップより大きいエネルギーギャップを有する化合物の少なくとも1種を使用することが好ましい。さらに、発光材料が燐光材料である場合、ホスト材料としては、発光材料の三重項励起エネルギー(基底状態と三重項励起状態とのエネルギー差)よりも三重項励起エネルギーの大きい化合物を選択することが好ましい。
ホスト材料としては、例えば、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)、バソフェナントロリン、バソキュプロイン、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9,10-ジフェニルアントラセン、N,N-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン、4-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン、N,9-ジフェニル-N-{4-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]フェニル}-9H-カルバゾール-3-アミン、6,12-ジメトキシ-5,11-ジフェニルクリセン、9-[4-(10-フェニル-9-アントラセニル)フェニル]-9H-カルバゾール、3,6-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-フェニル-3-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール、7-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール、6-[3-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン、9-フェニル-10-{4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)ビフェニル-4’-イル}アントラセン、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン、9,9’-ビアントリル、9,9’-(スチルベン-3,3’-ジイル)ジフェナントレン、9,9’-(スチルベン-4,4’-ジイル)ジフェナントレン、1,3,5-トリ(1-ピレニル)ベンゼン、5,12-ジフェニルテトラセンまたは5,12-ビス(ビフェニル-2-イル)テトラセン等が挙げられる。これらのホスト材料は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
発光層5の厚さは、特に限定されないが、1~100nmの範囲であることが好ましく、1~50nmの範囲であることがより好ましい。
このような発光層5は、湿式成膜法または乾式成膜法により形成することができる。発光層5を湿式成膜法で形成する場合には、通常、上述の発光材料およびホスト材料を含有するインクを各種塗布法により塗布し、得られた塗膜を乾燥する。塗布法としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット印刷法(液滴吐出法)、スピンコート法、キャスト法、LB法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。一方、発光層5を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スパッタリング法等が適用され得る。
なお、EL光源部200は、さらに、例えば、正孔注入層3、正孔輸送層4および発光層5を区画するバンク(隔壁)を有していてもよい。バンクの高さは、特に限定されないが、0.1~5μmの範囲であることが好ましく、0.2~4μmの範囲であることがより好ましく、0.2~3μmの範囲であることがさらに好ましい。
バンクの開口の幅は、10~200μmの範囲であることが好ましく、30~200μmの範囲であることがより好ましく、50~100μmの範囲であることがさらに好ましい。バンクの開口の長さは、10~400μmの範囲であることが好ましく、20~200μmの範囲であることがより好ましく、50~200μmの範囲であることがさらに好ましい。また、バンクの傾斜角度は、10~100°の範囲であることが好ましく、10~90°の範囲であることがより好ましく、10~80°の範囲であることがさらに好ましい。
<光変換層12>
光変換層12は、EL光源部200から発せられた光を変換して再発光するか、或いは、EL光源部200から発せられた光を透過する。図3に示すように、画素部20として、前記範囲の波長の光を変換して赤色光を発する第1の画素部20aと、前記範囲の波長の光を変換して緑色光を発する第2の画素部20bと、前記範囲の波長の光を透過する第3の画素部20cとを有している。複数の第1の画素部20a、第2の画素部20b及び第3の画素部20cが、この順に繰り返すように格子状に配列されている。そして、隣り合う画素部の間、すなわち、第1の画素部20aと第2の画素部20bとの間、第2の画素部20bと第3の画素部20cとの間、第3の画素部20cと第1の画素部20aとの間に、光を遮蔽する遮光部30が設けられている。言い換えれば、これらの隣り合う画素部同士は、遮光部30によって離間されている。なお、第1の画素部20aおよび第2の画素部20bは、それぞれの色に対応した色材を含んでもよい。
第1の画素部20a及び第2の画素部20bは、それぞれ上述した実施形態の発光粒子含有硬化性樹脂組成物の硬化物を含有する。硬化物は、発光粒子91と硬化成分とを必須として含有し、さらに、光を散乱させて外部へ確実に取り出すために光散乱粒子を含むことが好ましい。硬化成分は、熱硬化性樹脂の硬化物であり、例えばエポキシ基を含有する樹脂の重合によって得られる硬化物である。すなわち、第1の画素部20aは、第1の硬化成分22aと、第1の硬化成分22a中にそれぞれ分散された第1の発光粒子91aおよび第1の光散乱粒子21aとを含む。同様に、第2の画素部20bは、第2の硬化成分22bと、第2の硬化成分22b中にそれぞれ分散された第1の発光粒子91b及び第1の光散乱粒子21bとを含む。第1の画素部20a及び第2の画素部20bにおいて、第1の硬化成分22aと第2の硬化成分22bとは同一であっても異なっていてもよく、第1の光散乱粒子22aと第2の光散乱粒子22bとは同一であっても異なっていてもよい。
第1の発光粒子91aは、420~480nmの範囲の波長の光を吸収し605~665nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発する、赤色発光粒子である。すなわち、第1の画素部20aは、青色光を赤色光に変換するための赤色画素部と言い換えてよい。また、第2の発光粒子91bは、420~480nmの範囲の波長の光を吸収し500~560nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発する、緑色発光粒子である。すなわち、第2の画素部20bは、青色光を緑色光に変換するための緑色画素部と言い換えてよい。
発光粒子含有硬化性樹脂組成物の硬化物を含む画素部20a、20bにおける発光粒子91の含有量は、外部量子効率の向上効果により優れる観点及び優れた発光強度が得られる観点から、発光粒子含有硬化性樹脂組成物の硬化物の全質量を基準として、好ましくは0.1質量%以上である。同様の観点から、発光粒子91の含有量は、発光粒子含有硬化性樹脂組成物の硬化物の全質量を基準として、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、5質量%以上であることが好ましい。発光粒子91の含有量は、画素部20a、20bの信頼性に優れる観点及び優れた発光強度が得られる観点から、発光粒子含有硬化性樹脂組成物の全質量を基準として、好ましくは30質量%以下である。同様の観点から、発光粒子91の含有量は、発光粒子含有硬化性樹脂組成物の硬化物の全質量を基準として、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下であることが好ましい。
発光粒子含有硬化性樹脂組成物の硬化物を含む画素部20a、20bにおける光散乱粒子21a、21bの含有量は、外部量子効率の向上効果により優れる観点から、該硬化性樹脂組成物の硬化物の全質量を基準として、0.1質量%以上、1質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、10質量%以上、12質量%以上であることが好ましい。光散乱粒子21a、21bの含有量は、外部量子効率の向上効果により優れる観点及び画素部20の信頼性に優れる観点から、該硬化性樹脂組成物の硬化物の全質量を基準として、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下であることが好ましい。
第3の画素部20cは、420~480nmの範囲の波長の光に対し30%以上の透過率を有する。そのため、第3の画素部20cは、420~480nmの範囲の波長の光を発する光源を用いる場合に、青色画素部として機能する。第3の画素部20cは、例えば、上述の熱硬化性樹脂を含有する組成物の硬化物を含む。硬化物は、第3の硬化成分22ccを含有する。第3の硬化成分22cは、熱硬化性樹脂の硬化物であり、具体的には、エポキシ基を含有する樹脂の重合によって得られる硬化物である。すなわち、第3の画素部20cは、第3の硬化成分22cを含む。第3の画素部20cが上述の硬化物を含む場合、熱硬化性樹脂を含有する組成物は、420~480nmの範囲の波長の光に対する透過率が30%以上となる限りにおいて、上述の発光粒子含有硬化性樹脂組成物に含有される成分のうち、熱硬化性樹脂、硬化剤、溶剤以外の成分を更に含有していてもよい。なお、第3の画素部20cの透過率は、顕微分光装置により測定することができる。
画素部(第1の画素部20a、第2の画素部20b及び第3の画素部20c)の厚さは、特に限定されないが、例えば、1μm以上、2μm以上、3μm以上であることが好ましい。画素部(第1の画素部20a、第2の画素部20b及び第3の画素部20c)の厚さは、例えば、30μm以下、25μm以下、20μm以下であることが好ましい。
[光変換層12の形成方法]
以上の第1~3の画素部20a~20cを備える光変換層12は、湿式成膜法により形成した塗膜を乾燥、加熱して硬化させることより形成することができる。第1の画素部20a及び第2の画素部20bは、本発明の発光粒子含有硬化性樹脂組成物を用いて形成することができ、第3の画素部20cは当該発光粒子含有硬化性樹脂組成物に含まれる発光粒子91を含まない該硬化性樹脂組成物を用いて形成することができる。以下、本発明の発光粒子含有硬化性樹脂組成物を用いた塗膜形成方法について詳述するが、本発明の発光粒子含有硬化性樹脂組成物を用いる場合も同様に行うことができる。
本発明の発光粒子含有硬化性樹脂組成物の塗膜を得るための塗布法としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット印刷法(ピエゾ方式またはサーマル方式の液滴吐出法)、スピンコート法、キャスト法、LB法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。ここで、ノズルプリント印刷法とは、発光粒子含有硬化性樹脂組成物をノズル孔から液柱としてストライプ状に塗布する方法である。中でも、塗布法としては、インクジェット印刷法(特に、ピエゾ方式の液滴吐出法)が好ましい。これにより、発光粒子含有硬化性樹脂組成物を吐出する際の熱負荷を小さくすることができ、発光粒子91の熱による劣化を防ぐことができる。
インクジェット印刷法の条件は、次のように設定することが好ましい。発光粒子含有硬化性樹脂組成物の吐出量は、特に限定されないが、1~50pL/回であることが好ましく、1~30pL/回であることがより好ましく、1~20pL/回であることがさらに好ましい。
また、ノズル孔の開口径は、5~50μmの範囲であることが好ましく、10~30μmの範囲であることがより好ましい。これにより、ノズル孔の目詰まりを防止しつつ、発光粒子含有硬化性樹脂組成物の吐出精度を高めることができる。
塗膜を形成する際の温度は、特に限定されないが、10~50℃の範囲であることが好ましく、15~40℃の範囲であることがより好ましく、15~30℃の範囲であることがさらに好ましい。かかる温度で液滴を吐出するようにすれば、発光粒子含有硬化性樹脂組成物中に含まれる各種成分の結晶化を抑制することができる。
また、塗膜を形成する際の相対湿度も、特に限定されないが、0.01ppm~80%の範囲であることが好ましく、0.05ppm~60%の範囲であることがより好ましく、0.1ppm~15%の範囲であることがさらに好ましく、1ppm~1%の範囲であることが特に好ましく、5~100ppmの範囲であることが最も好ましい。相対湿度が上記下限値以上であると、塗膜を形成する際の条件の制御が容易となる。一方、相対湿度が上記上限値以下であると、得られる光変換層12に悪影響を及ぼし得る塗膜に吸着する水分量を低減することができる。
発光粒子含有硬化性樹脂組成物中に有機溶剤を含有する場合、塗膜を硬化させる前に、乾燥によって有機溶剤を塗膜から除去することが好ましい。前記乾燥は、室温(25℃)で放置して行っても、加熱することにより行ってもよいが、生産性の観点から加熱することによって行うのが好ましい。乾燥を加熱により行う場合、乾燥温度は特に限定されないが、発光粒子含有硬化性樹脂組成物に使用される有機溶剤の沸点及び蒸気圧を考慮した温度とすることが好ましい。乾燥温度は、塗膜中の有機溶剤を除去するプリベーク工程として、50~130℃であることが好ましく、60~120℃であることがより好ましく、70~110℃であることが特に好ましい。乾燥温度が50℃以下であると有機溶剤が除去できないことがあり、一方、130℃以上であると有機溶剤の除去が瞬時に起こり、塗膜の外観が著しく劣ることがあるため、好ましくない。また、乾燥は、減圧下で行うことが好ましく、0.001~100Paの減圧下で行うことがより好ましい。さらに、乾燥時間は、1~30分間であることが好ましく、1~15分間であることがより好ましく、1~10分間であることが特に好ましい。このような乾燥条件で塗膜を乾燥することにより、有機溶剤が確実に塗膜中から除去され、得られる光変換層12の外部量子効率をより向上させることができる。
本発明の発光粒子含有硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線(例えば、紫外線)の照射により硬化させることができる。照射源(光源)としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、LED等が使用されるが、塗膜への熱負荷の低減、低消費電力の観点からLEDが好ましい。
照射する光の波長は、200nm以上であることが好ましく、440nm以下であることがより好ましい。また、光の強度は、0.2~2kW/cmであることが好ましく、0.4~1kW/cmであることがより好ましい。0.2kW/cm未満の光の強度では十分に塗膜を硬化できず、2kW/cm以上の光の強度では塗膜表面と内部の硬化度にムラが発生し、塗膜表面の平滑性が劣るため好ましくない。光の照射量(露光量)は、10mJ/cm以上であることが好ましく、4000mJ/cm以下であることがより好ましい。
塗膜の硬化は、空気中あるいは不活性ガス中で行うことができるが、塗膜表面の酸素阻害及び塗膜の酸化を抑制するために、不活性ガス中で行うことがより好ましい。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、二酸化炭素等が挙げられる。このような条件で塗膜を硬化させることにより、塗膜が完全に硬化できることから、得られる光変換層9の外部量子効率をより向上させることができる。
上述したように、本発明の発光粒子含有硬化性樹脂組成物は熱に対する安定性が優れることから、熱硬化後の成形体である画素部20においても、良好な発光を実現することができる。さらには、本発明の発光粒子組成物は分散性に優れるため、発光粒子91の分散性に優れ、且つ、平坦な画素部20を得ることができる。
さらに、第1の画素部20a及び第2の画素部20bに含まれる発光粒子91は、ペロブスカイト型を有する半導体ナノ結晶を含むため、300~500nmの波長領域の吸収が大きい。そのため、第1の画素部20a及び第2の画素部20bにおいて、第1の画素部20a及び第2の画素部20bに入射した青色光が上基板13側へ透過する、すなわち、青色光が上基板13側へ漏れることを防ぐことができる。したがって、本発明の第1の画素部20a及び第2の画素部20bによれば、青色光が混色されることなく、色純度の高い赤色光及び緑色光を取り出すことができる。
遮光部30は、隣り合う画素部20を離間して混色を防ぐ目的及び光源からの光漏れを防ぐ目的で設けられる、いわゆるブラックマトリックスである。遮光部30を構成する材料は、特に限定されず、クロム等の金属の他、バインダーポリマーにカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させたインク組成物の硬化物等を用いることができる。ここで用いられるバインダーポリマーとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種又は2種以上混合したもの、感光性樹脂、O/Wエマルジョン型のインク組成物(例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの)などを用いることができる。遮光部30の厚さは、例えば、1μm以上15μm以下であることが好ましい。
発光素子100は、トップエミッション型に代えて、ボトムエミッション型として構成することもできる。また、発光素子100は、EL光源部200に代えて、他の光源を使用することもできる。
以上、本発明の発光粒子含有硬化性樹脂組成物及びその製造方法、並びに、当該組成物を用いて製造した光変換層を備えた発光素子について説明したが、本発明は、上述した実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、本発明の発光粒子、発光粒子分散体、発光粒子含有硬化性樹脂組成物および発光素子は、それぞれ、上述した実施形態の構成において、他の任意の構成を追加して有していてもよいし、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてよい。また、本発明の発光粒子の製造方法は、上述した実施形態の構成において、他の任意の目的の工程を有していてもよいし、同様の効果を発揮する任意の工程と置換されていてよい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
[発光粒子含有分散液の調製]
(発光粒子含有分散液1の調製)
まず、0.12gの炭酸セシウムと、5mLの1-オクタデセンと、0.5mLのオレイン酸とを混合して混合液を得た。次に、この混合液を120℃で30分間、減圧乾燥した後、アルゴン雰囲気下に150℃で加熱した。これにより、セシウム-オレイン酸溶液を得た。
一方、0.2gの臭化鉛(II)と15mLの1-オクタデセンと、1.5mLのオレイン酸とを混合して混合液を得た。次に、この混合液を90℃で10分間、減圧乾燥した後、アルゴン雰囲気下に混合液に1.5mLの3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)を添加した。その後さらに20分間減圧乾燥を行った後、アルゴン雰囲気下に140℃で加熱した。
その後、上記臭化鉛(II)を含む混合液に150℃で1.5mLの前記セシウム-オレイン酸溶液を添加し、5秒間加熱撹拌することにより反応させた後、氷浴で冷却した。次いで、30mLの酢酸メチルを添加した。得られた懸濁液を遠心分離(10,000回転/分、1分間)した後、上澄み液を除去して得られた固形物(中間体粒子1)にトルエン20mLを加え振倒攪拌し分散させた。得られたコロイド溶液を25℃、10,000rpmで3分間遠心分離した。上澄み液を回収することにより、ペロブスカイト構造を有するCsPbBrをコアに有し、かつシロキサン結合を含む配位子層を有する中間体粒子1のコロイド溶液1を得た。中間体粒子1を構成するナノ結晶を走査透過電子顕微鏡観察により分析したところその平均粒子径は10nmであった。
下記式(B4)で表される構造を有するブロックコポリマー(S2VP、PolymerSource.社製)0.8gをトルエン80mLに添加し、60℃で加熱溶解させた。上記コロイド溶液1に、ブロックコポリマーが溶解したトルエン溶液80mLを添加し、15分間撹拌した後、遠心分離して、上澄み液を回収することにより、中間体粒子1及びブロックコポリマーを含むトルエン分散液1を得た。
Figure 2023094546000014
上記トルエン分散液1の2mLに対して、下記式(C4)で表される化合物(MS-51、コルコート株式会社製、式(C4)中のmの平均値は4)0.01mLを添加し、室温で2時間撹拌し、次いで、イオン交換水0.05mLを更に添加して2時間撹拌した。
Figure 2023094546000015
得られた溶液を、9,000回転/分、5分間の条件で遠心分離した後、上澄み液2mLを回収することにより、中間体粒子1の表面にシリカ層を有する発光粒子1がトルエンに分散した発光粒子含有分散液1を得た。このシリカ層は、上述した無機被覆層である第2のシェル層913に相当する。前記発光粒子1について、走査透過電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分析法(STEM-EDS)によって元素分布を評価したところ、発光粒子の表面層にSiが含まれていることを確認した。当該表面層の厚さを測定したところ、約4nmであった。また、前記発光粒子1について、熱重量示差熱分析(TG-DTA;昇温速度10℃/分、窒素雰囲気下)測定により、200~550℃の範囲で重量減少が確認されたことから、有機成分が含まれていることが示唆された。一方、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析計(TD/Py-GC/MS)測定により、使用したポリマーB4が成分として同定された。
(発光粒子含有分散液2の調製)
アルゴン雰囲気下、3口フラスコにホルムアミジン酢酸塩0.06g、オレイン酸0.50mL、1-オクタデセン5mLを加えた。真空ポンプで減圧しながら(15±3kPa)、120℃で30分間加熱撹拌した。アルゴン雰囲気のまま大気圧に戻した。150℃に昇温し、均一な溶液となるまで撹拌し、ホルムアミジニウム-オレイン酸溶液を得た。
アルゴン雰囲気下、上記とは別の3口フラスコに臭化鉛(II)0.20g、オレイン酸1.50mL、1-オクタデセン15mLを加えた。真空ポンプで減圧しながら(15±3kPa)、120℃で30分間加熱撹拌した。アルゴン雰囲気のまま大気圧に戻し、1.5mLの3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)を加えた。140℃に昇温し、均一な溶液となるまで撹拌した。その後、上記臭化鉛(II)を含む混合液に150℃で前記ホルムアミジニウム-オレイン酸溶液1.5mLを添加し、5秒間加熱撹拌することにより反応させた後、氷浴で冷却した。次いで、30mLの酢酸メチルを添加した。得られた懸濁液を遠心分離(10,000回転/分、3分間)した後、上澄み液を除去して得られた固形物(中間体粒子2)にトルエン20mLを加え振倒攪拌し分散させた。得られたコロイド溶液を25℃、10,000rpmで3分間遠心分離した。上澄み液を回収することにより、ペロブスカイト構造を有するFAPbBrをコアに有し、かつシロキサン結合を含む配位子層を有する中間体粒子2のコロイド溶液2を得た。なお、中間体粒子2を走査透過電子顕微鏡観察により分析したところその平均粒子径は11nmであった。
式(B4)で表される構造を有するブロックコポリマー(S2VP、PolymerSource.社製)0.8gをトルエン80mLに添加し、60℃で加熱溶解させた。上記コロイド溶液2に、ブロックコポリマーが溶解したトルエン溶液80mLを添加し、15分間撹拌した後、遠心分離して、上澄み液を回収することにより、中間体粒子2及びブロックコポリマーを含むトルエン分散液2を得た。
上記トルエン分散液2の2mLに対して、式(C4)で表される化合物(MS-51、コルコート株式会社製、式(C4)中のmの平均値は4)0.01mLを添加し、室温で2時間撹拌し、次いで、イオン交換水0.05mLを更に添加して2時間撹拌した。
得られた溶液を、9,000回転/分、5分間の条件で遠心分離した後、上澄み液2mLを回収することにより、中間体粒子2の表面にシリカ層を有する発光粒子2がトルエンに分散した発光粒子含有分散液2を得た。このシリカ層は、上述した無機被覆層である第2のシェル層913に相当する。前記発光粒子2について、走査透過電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分析法(STEM-EDS)によって元素分布を評価したところ、発光粒子の表面層にSiが含まれていることを確認した。当該表面層の厚さを測定したところ、約4nmであった。
(発光粒子含有分散液3の調製)
撹拌子を備えたガラス製バイアルに、中間体粒子1のコロイド溶液2mLを加えた。1mgの中間体粒子1に対して0.3μmolとなるようにドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)を加え、室温で1時間撹拌した。その後、攪拌しながら、酢酸メチル30mLを加えた。得られた懸濁液を高速冷却遠心機Avanti J-E(Beckman Coulter社製)を用いて、25℃、10,000rpmで1分間遠心分離した。上澄み液を除去し、得られた固形物にトルエン20mLを加え振り混ぜ溶解させた。得られたコロイド溶液を25℃、10,000rpmで3分間遠心分離した。上澄み液を回収することにより、中間体粒子1の配位子を一部DBSAに置換した、ペロブスカイト構造を有するCsPbBrをコアに有し、かつシロキサン結合を含む配位子層を有する中間体粒子3のコロイド溶液を得た。
式(B4)で表される構造を有するブロックコポリマー(S2VP、PolymerSource.社製)0.8gをトルエン80mLに添加し、60℃で加熱溶解させた。上記コロイド溶液2に、ブロックコポリマーが溶解したトルエン溶液80mLを添加し、15分間撹拌した後、遠心分離して、上澄み液を回収することにより、中間体粒子3及びブロックコポリマーを含むトルエン分散液3を得た。
上記トルエン分散液3の2mLに対して、式(C4)で表される化合物(MS-51、コルコート株式会社製、式(C4)中のmの平均値は4)0.01mLを添加し、室温で2時間撹拌し、次いで、イオン交換水0.05mLを更に添加して2時間撹拌した。
得られた溶液を、9,000回転/分、5分間の条件で遠心分離した後、上澄み液2mLを回収することにより、中間体粒子3の表面にシリカ層を有する発光粒子3がトルエンに分散した発光粒子含有分散液3を得た。このシリカ層は、上述した無機被覆層である第2のシェル層913に相当する。前記発光粒子3について、走査透過電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分析法(STEM-EDS)によって元素分布を評価したところ、発光粒子の表面層にSiが含まれていることを確認した。当該表面層の厚さを測定したところ、約4nmであった。
(発光粒子含有分散液4の調製)
発光粒子含有分散液3の調製において、ドデシルベンゼンスルホン酸をオクチルホスホン酸(OctPA)に置き換えた以外は同様の方法によって、ペロブスカイト構造を有するCsPbBrをコアに、かつシロキサン結合を含む配位子層を有し、その表面にさらにシリカ層を有する発光粒子4のコロイド溶液を得た。
(発光粒子含有分散液5の調製)
発光粒子含有分散液3の調製において、中間体粒子1を中間体粒子2に置き換えた以外は同様の方法によって、ペロブスカイト構造を有するFAPbBrをコアに、かつシロキサン結合を含む配位子層を有し、その表面にさらにシリカ層を有有する発光粒子5のコロイド溶液を得た。
<有機無機複合粒子の合成>
(有機無機複合粒子1の調製)
ポリマーZとして、上記発光粒子の調製に用いた下記式(Z4)で表される構造を有するブロックコポリマー(S2VP、前記B4と同一品)800mgをトルエン80mLに添加し、60℃で加熱溶解させた。
Figure 2023094546000016
上記トルエン溶液80mLに対して、下記式(G4)で表される化合物(MS-51、コルコート株式会社製、式(G4)中のmの平均値は4、前記C4と同一品)400μLを添加し、5分間撹拌し、次いで、イオン交換水100μLを更に添加して2時間撹拌した。
Figure 2023094546000017
得られた溶液を、9,000回転/分、5分間の条件で遠心分離した後、上澄み液80mLを回収し乾燥することにより、有機無機複合粒子1を得た。該複合粒子をメチルエチルケトンに分散させ、動的光散乱式ナノトラック粒度分布計を用いて平均粒子径を測定したところ165nmであった。前記有機無機複合粒子1を十分にアセトン洗浄したのち、熱重量示差熱分析(TG-DTA;昇温速度10℃/分、窒素雰囲気下)測定を行ったところ、200~550℃の範囲で重量減少が確認されたことから、該複合粒子1には有機成分が含まれていることが示唆された。一方、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析計(TD/Py-GC/MS)測定により、使用したポリマーB4が成分として同定された。
(有機無機複合粒子2の調製)
反応容器に、12ヒドロキシステアリン酸15部、ε-カプロラクトン285部、及び触媒としてモノブチルスズオキシド0.05部を仕込み、窒素ガスで置換した後、120℃で4時間加熱撹拌し、ポリエステル中間体を得た。次に反応容器に、ポリアリルアミン10%水溶液(日東紡績(株)製「PAA-1LV」、数平均分子量約3,000)100部を160℃で撹拌し、分離装置を使用して水を溜去すると共に、これにポリエステル中間体200部を160℃まで昇温したものを加え、2時間160℃で反応を行い、グラフトコポリマーZ1を得た。得られたポリマーの重量平均分子量(Mw)を、後述する条件のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により求めたところ、ポリスチレン標準で、44,000であり、常温で淡黄色固体であった。
得られたグラフトコポリマーZ5をトルエン80mLに添加し、60℃で加熱溶解させた。ついで、シラン化合物MS-51(コルコート株式会社製)400μLを添加し、5分間撹拌し、次いで、イオン交換水100μLを更に添加して2時間撹拌した。
得られた溶液を、9,000回転/分、5分間の条件で遠心分離した後、上澄み液80mLを回収し乾燥することにより、有機無機複合粒子2を得た。該複合粒子をメチルエチルケトンに分散させ、動的光散乱式ナノトラック粒度分布計を用いて平均粒子径を測定したところ190nmであった。。前記有機無機複合粒子2を十分にアセトン洗浄したのち、熱重量示差熱分析(TG-DTA;昇温速度10℃/分、窒素雰囲気下)測定を行ったところ、200~550℃の範囲で重量減少が確認されたことから、該複合粒子2には有機成分が含まれていることが示唆された。一方、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析計(TD/Py-GC/MS)測定により、使用したポリマーZ1が成分として同定された。
(有機無機複合粒子3の調製)
有機無機複合粒子1の調製において、MS-51をテトラエトキシシラン(TEOS)に置き換えた以外は同様の方法によって有機無機複合粒子3を得た。
<発光粒子含有硬化性樹脂組成物の調製>
(実施例1)
(発光粒子含有硬化性樹脂組成物(1)の調製)
上記で得られた発光粒子含有分散液1を100mLとヘキサン200mLを混合し、得られた懸濁液を4,000rpmで1分間遠心分離した。上澄み液を除去することで得られた残留物に対して、ライトアクリレートPO-A(共栄社化学株式会社製)及びライトアクリレートDCPA(共栄社化学株式会社製)を各々10μL加え、室温にて振倒攪拌することにより均一分散させた。その後、Omnirad TPO(BASFジャパン株式会社製)1.1μgを加え均一溶解させた。溶解後、有機無機複合粒子1 0.2μgをさらに加え、振倒攪拌することにより発光粒子含有硬化性樹脂組成物(1)を得た。
(分散安定性)
得られた発光粒子含有硬化性樹脂組成物(1)を、遮光下、35℃にて3か月間保管した。分散安定性を、目視によって評価したところ、沈殿物の凝集物は全く生じていなかった。
評価基準:
S:保存後の発光粒子含有組成物に、沈殿物の凝集物が全く生じていない。
A:沈殿物の凝集物がごくわずかに生じている。
B:沈殿物の凝集物がやや多く生じている。
C:沈殿物の凝集物が非常に多く生じている。
(光変換層1の製造)
得られた発光粒子含有硬化性樹脂組成物(1)を、ガラス基板EagleXG(コーニング社製)に滴下し、もう一枚のガラス基板EagleXGを重ね置き、窒素雰囲気下、主波長が395nmのUV光を、積算光量が10J/cmになるように照射することによって、発光粒子を含有する厚み50μmの光変換層1を製造した。
(耐光性の評価)
得られた光変換層1について、耐光性試験機(シーシーエス社製)を用いて、空気中、ピーク発光波長450nmの青色光を、ステージ温度30℃で100mW/cm、100時間照射した。光照射前後におけるフィルムの絶対量子収率(PLQY)を測定し、光照射後のPLQY保持率(%)を求めたところ94%であった。なお、光照射後のPLQY保持率(%)は、下記の式(2)によって算出した。
光照射後PLQY保持率(%)=(光照射後の光変換層のPLQY)/(光照射前の光変換層のPLQY)×100 (2)
(実施例2~12)
(発光粒子含有硬化性樹脂組成物(2)~(12)および(C1)~(C3)の調製)
有機無機複合粒子の添加量を下記表1~4に示す添加量に変更した以外は、発光粒子含有硬化性樹脂組成物(1)の調製と同一条件で、本発明の発光粒子含有硬化性樹脂組成物(2)~(12)及び比較用発光粒子含有硬化性樹脂組成物(C1)~(C3)を得た。
得られた該組成物の分散安定性を表1~4に示す。
なお、各樹脂組成物に使用した光重合性化合物及び光重合開始剤は、以下のとおりである。
(光重合性化合物)
PhEA:フェノキシエチルアクリレート(製品名:ライトアクリレートPO-A、共栄社化学株式会社製)
DCPA:ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート(製品名:ライトアクリレートDCP-A、共栄社化学株式会社製)
(光重合開始剤)
TPO:ジフェニル(2,4,6-トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド(製品名:Omnirad TPO、BASFジャパン株式会社製)
(連鎖移動化合物)
PE1:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(製品名:カレンズMT PE1、昭和電工株式会社製)
(光変換層2~12及びC1~C3の製造)
発光粒子含有硬化性樹脂組成物(1)を該組成物(2)~(12)及び(C1)~(C3)に変更した以外は、光変換層1の製造と同一条件で、本発明の光変換層2~12及び比較用の光変換層C1~C3を製造した。得られた光変換層2~12及びC1~C3について、光照射後のPLQY保持率(%)を下記の表1~4に示した。
Figure 2023094546000018
Figure 2023094546000019
Figure 2023094546000020

Figure 2023094546000021

実施例1から実施例12に示したように、本発明の発光粒子含有硬化性樹脂組成物は、比較例1から比較例3に示した有機無機複合粒子を含有しない該組成物と比較して、長期保存後の分散安定性がいずれも高いことがわかる。また、光照射後PLQY保持率(%)がいずれも高いことから、水分および酸素存在下での光に対する安定性が高いことがわかる。これは、発光粒子表面の有機成分と有機無機複合粒子表面の有機成分が相互作用しやすく、膜中において発光粒子の表面近傍に有機無機複合粒子が存在しやすいことから、有機無機複合粒子が疑似的に無機被覆層として作用することにより発光粒子の劣化を抑えることができると推定される。
以上のことから、実施例1~12の発光粒子含有硬化性樹脂組成物によって得られた光変換層は、発光特性に優れ、かつ耐光性に優れることが明らかである。よって、これらの光変換層を用いて、発光素子の光変換フィルムやカラーフィルター画素部を構成した場合には、優れた発光特性を得ることができるものと期待できる。
100 発光素子
200 EL光源部
1 下基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電子輸送層
7 電子注入層
8 陰極
9 封止層
10 充填層
11 保護層
12 光変換層
13 上基板
14 EL層
20 画素部、
20a 第1の画素部
20b 第2の画素部
20c 第3の画素部
21a 第1の光散乱粒子
21b 第2の光散乱粒子
21c 第3の光散乱粒子
22a 第1の硬化成分
22b 第2の硬化成分
22c 第3の硬化成分
90a 第1の発光粒子
90b 第1の発光粒子
30 遮光部
40 積層構造体
41 第1の基板
42 第2の基板
43 封止層
44 波長変換フィルム
441 光散乱粒子
442 発光粒子
500 有機無機複合粒子
501 塩基性基を含む構造単位を有するポリマー
502 無機酸化物層
91 発光粒子
911 半導体ナノ結晶
912 第1のシェル層
913 第2のシェル層(無機被覆層)
701 コンデンサ
702 駆動トランジスタ
705 共通電極
706 信号線
707 走査線
708 スイッチングトランジスタ
C1 信号線駆動回路
C2 走査線駆動回路
C3 制御回路
PE,R,G,B 画素電極

Claims (11)

  1. 半導体ナノ結晶及び前記半導体ナノ結晶の表面を被覆し無機材料を含む無機被覆層を備える発光粒子と、有機無機複合粒子と、光重合性化合物とを含むことを特徴とする、発光粒子含有硬化性樹脂組成物。
  2. 前記有機無機複合粒子が、一般式(Z1-1)又は(Z1-2)で表される構造単位を有するポリマーZを含むことを特徴とする、請求項1に記載の発光粒子含有硬化性樹脂組成物。
    Figure 2023094546000022
    (式中、R、R及びRは、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、RZ1は、一級アミノ基、二級アミノ基、三級アミノ基、四級アンモニウム基、イミノ基、ピリジル基、ピリミジン基、ピペラジニル基、ピペリジル基、イミダゾリル基、ピロリジニル基及びイミダゾリジニル基の群から選ばれる1価の塩基性基を表し、X及びXは、各々独立して、-COO-、-OCO-、窒素原子によって置換されてもよい炭素原子数が1~8のアルキル鎖、単結合を表す。)
  3. 前記有機無機複合粒子が下記一般式(G)で表されるシラン化合物の重合体を含むことを特徴とする、請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載の発光粒子含有硬化性樹脂組成物。
    Figure 2023094546000023
    (式中、RG1及びRG2は、それぞれ独立にアルキル基を表し、RG3及びRG4は、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、n1は0又は1を表し、m1は1以上の整数を表す。)
  4. 前記半導体ナノ結晶が、A、B及びXを含み、
    前記AがCs、Rb、メチルアンモニウム、ホルムアミジニウム、アンモニウム、2-フェニルエチルアンモニウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、1-ブチル-1-メチルピペリジニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム及びベンジルトリエチルアンモニウムからなる群から選ばれる1つ以上の陽イオンを表し、
    前記BがPb、Sn、Ge、Bi、Sb、Ag、In、Cu、Yb、Ti、Pd、Mn、Eu、Zr及びTbからなる群から選ばれる金属イオンを表し、
    前記XがF、Cl、Br及びIからなる群から選ばれる1つ以上のハロゲン化物イオンを表す、請求項1又は請求項2に記載の発光粒子含有硬化性樹脂組成物。
  5. 前記半導体ナノ結晶がペロブスカイト構造を有する、請求項4に記載の発光粒子含有硬化性樹脂組成物。
  6. 前記無機被覆層が、シロキサン結合を有することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の発光粒子含有硬化性樹脂組成物。
  7. 請求項1又は請求項2に記載の発光粒子含有硬化性樹脂組成物の重合体を含むことを特徴とする光変換層。
  8. 請求項7に記載の光変換層を備えたカラーフィルター。
  9. 請求項7に記載の光変換層を備えた波長変換フィルム。
  10. 請求項8に記載のカラーフィルターを備えることを特徴とする発光素子。
  11. 請求項9に記載の波長変換フィルムを備えることを特徴とする発光素子。
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