以下、図面を参照して一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
なお、本明細書において、「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「導電体付きフィルム」は板やシートと呼ばれ得るような部材をも含む概念であり、したがって、「導電体付きフィルム」は、「導電体付板(基板)」や「導電体付きシート」と呼ばれる部材と、呼称の違いのみにおいて区別され得ない。
また、「シート面(板面、フィルム面)」とは、対象となるシート状(板状、フィルム状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材(板状部材、フィルム状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
図1~図25は、一実施の形態及び変形例を説明するための図である。このうち図1は、発熱板を備えた自動車を概略的に示す図であり、図2は、発熱板をその板面の法線方向から見た図であり、図3及び図4は、図2のA-A線に沿った発熱板の断面の一例及び他の例を示す図である。
図1に示されているように、移動体の一例としての自動車1は、フロントウィンドウ、リアウィンドウ、サイドウィンドウ等の窓ガラスを有している。ここでは、フロントウィンドウ5が発熱板10で構成されているものを例示する。また、自動車1はバッテリー等の電源7を有している。
この発熱板10をその板面の法線方向から見たものを図2に示す。また、図2の発熱板10のA-A線に対応する断面図を図3及び図4に示す。図3及び図4に示された例では、発熱板10は、第1方向d1に離間して配置された第1基板11及び第2基板12と、第1基板11及び第2基板12との間に配置された発熱用導電体40と、第1基板11と第2基板12とを接合する接合層30と、を有している。図示された例において、第1方向d1は、発熱板10の厚さ方向に一致し、さらに発熱板10の板面への法線方向に一致している。図3に示す例では、発熱用導電体40は、接合層30における第1方向d1の中間部分に配置されている。一方、図4に示す例では、発熱用導電体40が接合層30における第1方向d1の端部に配置されている。なお、図1および図2に示した例では、発熱板10は湾曲しているが、その他の図では、図示の簡略化および理解の容易化のために、発熱板10、第1基板11及び第2基板12を平板状に図示している。また、図3及び図4は、後述する発熱用導電体40の線状導電体41の長手方向に直交する方向に沿った断面を示す図となっている。
図1及び図2によく示されているように、発熱板10は、発熱用導電体40に通電するための配線部15を有している。図示された例では、バッテリー等の電源7によって、配線部15から発熱用導電体40のバスバー45を介して発熱用導電体40に通電し、発熱用導電体40を抵抗加熱により発熱させる。発熱用導電体40で発生した熱は第1基板11及び第2基板12に伝わり、第1基板11及び第2基板12が温められる。これにより、第1基板11及び第2基板12に付着した結露による曇りを取り除くことができる。また、第1基板11及び第2基板12に雪や氷が付着している場合には、この雪や氷を溶かすことができる。したがって、乗員の視界が良好に確保される。尚、図示は省略するが、通常は、配線部15は電源7と発熱用導電体40のバスバー45との間に開閉器が挿入(直列に接続)される。そして、発熱板10の加熱が必要な時のみ開閉器を閉じて発熱用導電体40に通電する。
以下、発熱板10の各構成要素について説明する。
まず、第1基板11及び第2基板12について説明する。第1基板11及び第2基板12は、図1で示された例のように自動車のフロントウィンドウに用いる場合、乗員の視界を妨げないよう可視光透過率が高いものを用いることが好ましい。例えば、第1基板11及び第2基板12の可視光透過率は90%以上であることが好ましい。ここで、第1基板11及び第2基板12の可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」、JIS K 0115準拠品)を用いて測定波長380nm~780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。このような第1基板11及び第2基板12の材質としては、ソーダライムガラスや青板ガラスが例示できる。なお、第1基板11及び第2基板12の一部または全体に着色するなどして、この一部分の可視光透過率を低くしてもよい。この場合、太陽光の直射を遮ったり、車外から車内を視認しにくくしたりすることができる。
また、第1基板11及び第2基板12は、1mm以上5mm以下の厚みを有していることが好ましい。このような厚みであると、強度及び光学特性に優れた第1基板11及び第2基板12を得ることができる。第1基板11及び第2基板12は、同一の材料で同一に構成されていてもよいし、或いは、材料および構成の少なくとも一方において互いに異なるようにしてもよい。
次に、接合層30について説明する。接合層30は、第1基板11及び第2基板12の間に配置され、第1基板11と第2基板12とを接合する。このような接合層30としては、種々の接着性または粘着性を有した材料からなる層を用いることができる。また、接合層30は、可視光透過率が高いものを用いることが好ましい。典型的な接合層としては、ポリビニルブチラール(PVB)からなる層を例示することができる。また、図3及び図4に示すように、接合層30は、第1部分31及び第2部分32を有している。第1部分31は、発熱用導電体40に隣接している。第1部分31及び第2部分32は、異なる性質を有しており、第1方向d1において互いからずれて位置している。
第1部分31は、第2部分32と比較して、含まれている単位質量あたりの可塑剤の量が少ない、ガラス転移温度が高い、及び、軟化点が高い、のうち少なくともいずれかを満たしている。第1部分31及び第2部分32の単位質量あたりの可塑剤の量、ガラス転移温度、及び、軟化点は、例えば第1部分31に添加される添加剤の含有量と第2部分32に添加される添加剤の含有量を調節することで、適宜に設定することができる。具体的な例として、第1部分31について、含まれている可塑剤の量を25wt%以下とし、ガラス転移温度を60℃以上とし、軟化点を110℃以上とすることができ、さらには、含まれている可塑剤の量を15wt%以下とし、ガラス転移温度を65℃以上とし、軟化点を140℃以上とすることができる。ここで、単位〔wt%〕は、質量パーセント濃度を表している。
第1部分31の厚さT1、すなわち第1方向d1における長さは、第2部分32の厚さT2、すなわち第1方向d1における長さより、短くなっていることが好ましい。具体的な例として、第1部分31の厚さT1を、20μm以上100μm以下とすることができ、さらには、40μm以上80μm以下とすることができる。第2部分32の厚さT2は、合わせガラスの安全性能により選ぶことができ、ガラスが割れた時の衝撃物の貫通性能とガラス破片の飛散防止高めるためにはある程度の厚さが必要であるが、例えば150μm以上1600μm以下とすることができる。
なお、発熱板10には、図示された例に限られず、特定の機能を発揮することを期待されたその他の機能層が設けられても良い。また、1つの機能層が2つ以上の機能を発揮するようにしてもよい。例えば、発熱板10の第1基板11及び第2基板12、接合層30の第1部分31及び第2部分32の少なくとも一つに、何らかの機能を付与するようにしてもよい。発熱板10に付与され得る機能としては、一例として、反射防止(AR)機能、耐擦傷性を有したハードコート(HC)機能、赤外線遮蔽(反射)機能、紫外線遮蔽(反射)機能、防汚機能等を例示することができる。
次に、図5及び図6を参考にしながら、発熱用導電体40について説明する。図5及び図6は、発熱用導電体40を発熱板10の板面の法線方向から見た平面図である。図5は、発熱用導電体40を形成する線状導電体41の配置パターンの一例を示しており、図6は、発熱用導電体40を形成する線状導電体41の配置パターンの他の例を示している。
発熱用導電体40は、一対のバスバー45と、一対のバスバー45に間に配置された複数の線状導電体41と、を有している。一対のバスバー45は、第2方向d2に離間して配置されており、それぞれが対応する配線部15と電気的に接続している。第2方向d2は、発熱板10の板面に沿った方向であり、図示された例において、第1方向d1と直交または略直交している。一対のバスバー45間には、配線部15と接続された電源7の電圧が印加されるようになる。線状導電体41は、その両端において一対のバスバー45に接続している。したがって、線状導電体41は、一対のバスバー45を電気的に接続している。線状導電体41は、配線部15及びバスバー45を介して電圧を印加されると、抵抗加熱によって発熱する。そして、この熱が接合層30を介して第1基板11及び第2基板12に伝わることで、第1基板11及び第2基板12が温められる。
発熱用導電体40を適切な発熱量で発熱させるために、印加電圧に合わせて発熱用導電体40のシート抵抗を調整することが好ましい。例えば、印加電圧12V程度では0.1Ω/□以上1Ω/□以下であることが好ましく、印加電圧48V程度では1Ω/□以上13Ω/□以下であることが好ましい。よって、印加電圧12-48Vの範囲では、シート抵抗0.1Ω/□以上13Ω/□以下であることが好ましい。発熱用導電体40の抵抗が大きすぎると、発熱用導電体40における発熱量が不足し、第1基板11及び第2基板12を適切に暖めることができない。また、発熱用導電体40の抵抗が小さすぎると、発熱用導電体40における発熱量が多くなりすぎて、線状導電体41の近傍の領域とその他の領域との間で発熱むらが生じやすくなる。
発熱用導電体40は、種々のパターンで配置することができる。図5に示されている発熱用導電体40の一例では、発熱用導電体40は、線状導電体41が複数の開口領域47を画成するメッシュ状のパターンで配置されることによって形成されている。発熱用導電体40は、2つの分岐点46の間を延びて、開口領域47を画成する複数の接続要素48を含んでいる。すなわち、発熱用導電体40の線状導電体41は、両端において分岐点46を形成する複数の接続要素48の集まりとして構成されている。メッシュ状のパターンは、図5のように、各開口領域47の形状及び大きさが合同ではなく、平面内で一定の繰り返し周期の無い不規則なメッシュパターンでもよいし、各開口領域47の形状及び大きさが合同であり、平面内で開口領域47が一定の繰り返し周期をもつ周期格子のメッシュパターンでもよい。
図5に示した発熱用導電体40において、隣り合う2つの開口領域47の重心間距離が大きすぎると、発熱用導電体40において発熱むらが発生するため、開口領域47の重心間距離の平均は10000μm以下となっていることが好ましく、7000μm以下となっていることがより好ましく、5000μm以下となっていることがさらに好ましい。また、隣り合う2つの開口領域47の重心間距離が小さすぎると、透過率が悪化し、透視性が損なわれるため、開口領域47の重心間距離の平均は100μm以上となっていることが好ましい。
図6に示されている発熱用導電体40のパターンの他の例では、発熱用導電体40は、一対のバスバー45間を連結する複数の線状導電体41がストライプ状のパターンで配置されることによって形成されている。より具体的には、複数の線状導電体41が、第2方向d2に延びながら、第2方向d2とは非平行な方向に隙間49を空けて配列されている。
図6に示した発熱用導電体40において、隙間49が大きすぎると、発熱用導電体40において発熱むらが発生するため、隙間49の大きさ、言い換えると隙間49の配列方向である第2方向d2とは非平行な方向に沿った長さの平均、さらに言い換えると隣り合う線状導電体41の間の距離の平均は、12000μm以下となっていることが好ましく、7000μm以下となっていることがより好ましく、3000μm以下となっていることがさらに好ましい。また、隙間49が小さすぎると、透過率が悪化し、透視性が損なわれるため、隣り合う線状導電体41の間の距離の平均は100μm以上となっていることが好ましい。
図3及び図4に示すように、発熱用導電体40は、接合層30内に埋め込まれた状態となっている。図3に示した一例では、発熱用導電体40は、接合層30の第1部分31と第2部分32との間に配置されている。言い換えると、発熱用導電体40は、第1方向d1における接合層30の中間部分に配置されている。また、発熱用導電体40は、第1部分31だけでなく第2部分32にも隣接している。この場合、接合層30の第1部分31が、第1基板11と接し、第2部分32が、第2基板12と接する。一方、図4に示した他の例では、発熱用導電体40は、接合層30内に埋め込まれた状態で、第1方向d1における接合層30の端部に配置されている。すなわち、発熱用導電体40は、接合層30と隣接している。また、発熱用導電体40は、第1基板11と接している。さらに、図4に示した断面において、発熱用導電体40の線状導電体41は、第1基板11と接する面40aを有している。このような発熱用導電体40の第1基板11と接する側の面40aの表面粗さSzは、3.0μm以下であることが好ましく、2.0μm以下であることがより好ましく、1.0μm以下であることが更に好ましい。なお、表面粗さSzとは、ISO25178で規定されるSzのことを意味する。
また、図3及び図4に示す例のいずれにおいても、発熱用導電体40の接合層30と隣接する側の面40bの表面粗さSzは、1.0μmより大きいことが好ましく、3μm以上となっていることがより好ましい。
このような線状導電体41及びバスバー45を構成するための材料としては、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、クロム、モリブデン、ニッケル、チタン、パラジウム、インジウム、タングステン、及び、これらの合金の一以上を例示することができる。線状導電体41及びバスバー45は、同一の材料を用いて形成されていてもよいし、或いは、互いに異なる材料を用いて形成されていてもよい。
線状導電体41は、上述したように不透明な金属材料を用いて形成され得る。その一方で、線状導電体41によって覆われていない領域の割合、すなわち非被覆率(開口率)は、70%以上99%以下程度と高くなっている。また、線状導電体41の線幅は、2μm以上20μm以下となっている。このため、線状導電体41が設けられている領域は、全体として透明に把握され、線状導電体41の存在が発熱板10の透視性を害さないようになっている。
図3及び図4に示された例では、線状導電体41は、全体として矩形形状の断面を有している。上述したように、線状導電体41の幅W、すなわち、発熱板10の板面に沿った幅Wは2μm以上20μm以下とし、高さ(厚さ)H、すなわち、発熱板10の板面への法線方向に沿った高さ(厚さ)Hは1μm以上30μm以下とすることが好ましい。このような寸法の線状導電体41によれば、その線状導電体41が十分に細線化されているので、線状導電体41を効果的に不可視化することができる。
さらに、線状導電体41の各位置において、線状導電体41の線幅Wに対する高さHの比(H/W)は、0.5以上1.8以下であることが好ましく、0.7以上1.5以下であることがより好ましく、0.9以上1.35以下であることがさらに好ましい。このような寸法比の線状導電体41は、製造が容易であり、また高さに対して幅が大きすぎて透視性を害することを抑制できる。また、このような寸法比の線状導電体41を発熱板10の法線方向に傾斜した方向から観察しても、視認される線状導電体41の幅がほとんど変わらない。言い換えると、発熱板10の法線方向に傾斜した方向から観察しても、透視性が害されにくい。
また、特に図4に示された例では、線状導電体41の高さHに対する接合層30の第1部分31の厚さT1の比(T1/H)は、3以上8以下であることが好ましく、4以上7以下であることがより好ましい。さらに、線状導電体41の高さHに対する接合層30の第2部分32の厚さT2の比(T2/H)は、20以上130以下であることが好ましく、60以上110以下であることがより好ましい。このような場合、後述する発熱板10の製造工程において、発熱用導電体40が接合層30の第1部分31(基材フィルム21)に埋め込まれる際に、空気等が入り込むことを効果的に抑制することができる。
また、図3及び図4に示されたように、線状導電体41は、導電層42、導電層42の表面のうち、第1基板11に対向する側の面を覆う第1暗色層43、導電層42の表面のうち、第2基板12に対向する側の面及び両側面を覆う第2暗色層44を含むようにしてもよい。とりわけ、線状導電体41は、第1暗色層43を少なくとも含んでいることが好ましい。優れた導電性を有する金属材料からなる導電層42は、比較的高い反射率を呈する。そして、線状導電体41をなす導電層42によって光が反射されると、その反射した光が視認されるようになり、乗員の視界を妨げる場合がある。また、外部から導電層42が視認されると、意匠性が低下する場合がある。そこで、第1暗色層43及び第2暗色層44が、導電層42の表面の少なくとも一部分を覆っている。第1暗色層43及び第2暗色層44は、導電層42よりも可視光の反射率が低い層であればよく、例えば黒色等の暗色の層である。具体的には、第1暗色層43及び第2暗色層44は、可視光の反射率が15%以下、好ましくは8%以下、より好ましくは5%以下となっている。この第1暗色層43及び第2暗色層44によって、導電層42が視認されづらくなり、乗員の視界を良好に確保することができる。また、外部から見たときの意匠性の低下を防ぐことができる。
特に、発熱用導電体40の接合層30と隣接する側の面40bの表面が粗くなっているため、線状導電体41の表面に形成される導電層42の側面に形成される第1暗色層43及び第2暗色層44は、粗化されている。
ところで、特許文献3に記載されている発熱板では、タングステンワイヤからなる発熱用導電体は、ヒートシール性を有する透明基材フィルムに支持された状態で、2つの基板の間に配置され、接合層によって各基板に接合していた。このようなタングステンから形成される電熱線(ワイヤ)は、その体積抵抗率が比較的高い。一方、通電時の電熱線の抵抗加熱による発熱量を増やすためには、電熱線の抵抗が小さくすることが望まれる。発熱量を確保することを考慮すると、タングステンから形成される電熱線を極端に細く形成することは困難である。また、細い電熱線は断線しやすいため、歩留まり良く発熱板を加工することも困難である。これらの理由から、タングステンから形成される電熱線は太く形成されていた。このため、発熱板に含まれる電熱線は視認されやすく、発熱板を介した視界の透視性を悪化させていた。
一方、特許文献4に記載されている発熱板では、銅等で形成された線幅10μm以下の電熱線からなる発熱用導電体は、ポリエチレンテレフタレート(PET)等からなる透明基材に支持された状態で、2つの接合層の間に配置され、接合層によって各基板に接合していた。そのため、発熱用導電体は視認されづらく、良好な透視性が得ることに効果があった。しかしながら、発熱用導電体に電圧を印加して発熱板を発熱させると、発熱板を介した視界において、ひずみが発生することがあった。ひずみは、発熱板を介した視界を悪化させ得る。
本件発明者らが鋭意検討した結果、このようなひずみは、図24に示すように樹脂層130内に屈折率差が生じることで発生することが知見された。ここで、樹脂層130とは、接合層を含む層である。樹脂層130は、ガラス等からなる基板111,112より温度上昇によって屈折率が変化しやすい。また、樹脂層130内での屈折率差の発生は、樹脂層130内に温度のむらに起因していることも、本件発明者らによって確認された。そして本件発明者らの更なる検討の結果として、発熱用導電体40に電圧を印加して発熱板10を発熱させても、発熱板10を介した視界において、ひずみの発生を抑制することができる工夫がなされた本実施の形態による発熱板10が得られた。
図24に示すように、従来の発熱板110の断面において、発熱用導電体140が発熱すると、発熱用導電体140の各線状導電体141の近傍である周辺領域A2は、その他の領域より熱を受けやすい。言い換えると、線状導電体141の周辺領域A2は、その他の領域より温められる。すなわち、周辺領域A2とその他の領域との間で、温度のむらが生じる。温められた線状導電体141の周辺領域A2においては、樹脂層130に熱による変質が生じる。変質により、周辺領域A2における樹脂層130の屈折率が変化する。このようにして、樹脂層130の周辺領域A2と周辺領域A2以外の領域との間で、屈折率差が生じる。この屈折率差に応じて、周辺領域A2と周辺領域A2以外の領域との間を透過する光は、図24に示す実線矢印のように、屈折する。発熱板110に入射した光は、発熱している状態の発熱板110を透過すると、屈折しない光を示す点線矢印に比べて、大きく進路が変わって出射してしまう。この出射する光は、樹脂層130の変質が生じる領域A2が大きくなるほど、大きく広がることになる。発熱板110を透過して出射する光が大きく広がって出射することで、発熱板110を介した視界において、ひずみが発生する。
特に、図25に示すように、発熱板110が発熱用導電体140を支持する透明基材135を含む場合、接合層131,132と透明基材135との間に屈折率差が生じる。このため、図25に示す実線矢印のように、接合層131,132を透過する光は、発熱用導電体140の発熱によって変質する線状導電体141の近傍の周辺領域A3と周辺領域A3以外の領域との間の界面、及び接合層131,132と透明基材135との間の界面で屈折する。発熱板110に入射した光は、屈折しない光を示す点線矢印に比べて大きく進路が変わって出射してしまう。図示された例では、出射する光は、進路が変わることで大きく広がっている。発熱板110を透過して出射する光の進路が大きく変わって出射することで、発熱板110を介した視界において、ひずみが発生する。
特に、透明基材135は、接合層131,132に比べて剛性が高く、収縮しにくいため、発熱板110を加工する際に、透明基材135に皺や厚さのばらつき等が生じやすい。また、発熱用導電体140に段差を生じ得る。この場合、接合層131,132と透明基材135との間の屈折率差が生じている界面は、図25に示すように、局所的に大きな曲率を有する曲面となり得る。このため、接合層131,132を透過する光は、大きな曲率を有する曲面で屈折することになる。したがって、発熱板110に入射した光は、屈折しない光を示す点線矢印に比べてより大きく進路が変わって出射することになり、発熱板110を介した視界において、より大きなひずみが発生し得る。特に、図25に示すように、発熱用導電体140の発熱によって変質する線状導電体141の近傍の周辺領域A3以外の領域でも、ひずみが発生し得る。
また、透明基材135を含む発熱板110に入射した光は、接合層131,132と透明基材135との間の屈折率差によって、接合層131,132と透明基材135との間の界面で反射や散乱が生じ得る。さらに、透明基材135が有するリタデーションによって、発熱板110を介した視界において、虹ムラが発生し得る。これらは、発熱板110を介した視界を悪化させ得る。
また、透明基材135上に発熱用導電体140を配置する場合、透明基材135と発熱用導電体140との間には、透明基材135上に発熱用導電体140を固定するための接着剤が設けられることがある。接着剤が設けられている場合、発熱板110において、接合層131,132と透明基材135との間だけでなく、接合層131と接着剤との間及び接着剤と透明基材135の間に、屈折率差が生じる。したがって、発熱板110に入射した光は、接合層131と接着剤との間の界面及び接着剤と透明基材135の間の界面で屈折することになる。すなわち、発熱板110に入射した光は、大きく進路が変わって出射し、発熱板110を介した視界において、ひずみが発生する。
さらに、透明基材135が配置されている場合、発熱板110の製造工程において、透明基材135と接合層131,132との間に空気が混入し得る。混入した空気に含まれる酸素は、透明基材135及び接着剤を酸化させ得る。透明基材135及び接着剤は酸化すると黄変するため、発熱板110を介した視界を悪化させ得る。
一方、本実施の形態の発熱板10では、接合層30の第1部分31は、第1方向d1において第1部分31からずれて位置する第2部分32と比較して、単位質量あたりの可塑剤の量が少ない、ガラス転移温度が高い、及び、軟化点が高い、のうち少なくともいずれかを満たしている。言い換えると、第1部分31は、第2部分32より、熱による変質が生じにくくなっている。そして、その第1部分31が、発熱用導電体40に隣接している。このため、熱による変質が生じ得る発熱用導電体40の線状導電体41の周辺領域A1(図7A及び図7B参照)を、従来の発熱板110における変質が生じ得る周辺領域A2に比べて、小さくすることができる。したがって、図7A及び図7Bに実線矢印で示すように、発熱板10に入射した光は、発熱している状態の発熱板10を透過すると、屈折しない光を示す点線矢印に比べて、少ししか進路が変わらずに出射する。このようにして、ひずみの発生を、従来の発熱板110に比べて、抑制することができる。
なお、図7Aは、図3に示された発熱板10の作用を示しており、図7Bは、図4に示された発熱板10の作用を示している。
具体的には、第1部分31は、可塑剤の量が25wt%以下、ガラス転移温度が60℃以上、及び軟化点が110℃以上のうち少なくとも1つを満たしている。このような場合、第1部分31に伝達し得る熱によって、変質が生じ得る周辺領域A1の大きさを効果的に小さくすることができる。したがって、発熱板10を介した視界において、ひずみの発生を効果的に抑制することができる。なお、ひずみ抑制の観点からは、第1部分31について、可塑剤の量が15wt%以下、ガラス転移温度が65℃以上、及び、軟化点が140℃以上のうち少なくとも1つが満たされていることがより好ましく、可塑剤の量が0wt%、ガラス転移温度が70℃以上、及び、軟化点が175℃以上のうち少なくとも1つが満たされていることが更に好ましい。
また、図3及び図4に示すように、好ましくは、第1部分31の厚さT1は、第2部分32の厚さT2より薄くなっている。具体的には、第1部分31の厚さT1は、20μm以上100μm以下となっており、より好ましくは80μm以下となっている。熱による変質が生じにくい第1部分31の厚さT1が薄くなっていることで、接合層30全体では、熱による変質を生じさせやすくすることができる。したがって、接合層30による第1基板11及び第2基板12の接合を、容易に行うことができる。
図3に示す例では、発熱用導電体40は、接合層30の第1部分31と第2部分32との間に配置されており、且つ第2部分32に隣接している。すなわち、発熱用導電体40は、第1方向d1における接合層30の中間部分に配置されており、第1部分31と第2部分32との両方に隣接している。このため、発熱板10は、発熱用導電体40を安定して保持することができる。また、第1部分31が第2部分32より薄くなっていると、第1部分31を介して発熱用導電体40で発生した熱を第1基板11に伝達しやすくすることができる。すなわち、第1基板11に、より多くの熱が伝導される。言い換えると、接合層30に伝導される熱が少なくなる。このため、熱による変質が生じ得る周辺領域A1を、より小さくすることができる。発熱板10に入射した光の進路が少ししか変わらなくなるため、ひずみの発生を、より抑制することができる。また、第1基板11に熱が伝達しやすいため、第1基板11を効率よく発熱させることができる。図1に示した自動車1のフロントウィンドウ5の外側等、発熱板10の一方の側のみを効率よく発熱させたい場合には、特に有効である。
一方、図4に示す例では、発熱用導電体40が第1基板11と接する面40aを有している。発熱用導電体40が第1基板11と接する面40aを有していると、発熱用導電体40で発生した熱を第1基板11に効率よく伝達することができる。特に、一般に、ガラス等からなる第1基板11は、樹脂等からなる接合層30より熱伝導しやすい。すなわち、第1基板11に、より多くの熱が伝導される。言い換えると、接合層30に伝導される熱が少なくなる。このため、熱による変質が生じ得る周辺領域A1を、小さくすることができる。発熱板10に入射した光の進路が少ししか変わらなくなるため、ひずみの発生を、抑制することができる。また、第1基板11に熱が伝達しやすいため、第1基板11を効率よく発熱させることができる。図1に示した自動車1のフロントウィンドウ5の外側等、発熱板10の一方の側のみを効率よく発熱させたい場合には、特に有効である。
線状導電体41の長手方向に直交する断面、すなわち図3及び図4の断面において、線状導電体41は、第1基板11と接する面40aを有していることが好ましい。この場合、発熱用導電体40で発生した熱を第1基板11に効率よく伝達させることができる。すなわち、第1基板11に、より多くの熱が伝導される。言い換えると、接合層30に伝導される熱が少なくなる。このため、熱による変質が生じ得る周辺領域A1を、より小さくすることができる。発熱板10に入射した光の進路が少ししか変わらなくなるため、ひずみの発生を、より抑制することができる。また、第1基板11に熱が伝達しやすいため、第1基板11を効率よく発熱させることができる。図1に示した自動車1のフロントウィンドウ5の外側等、発熱板10の一方の側のみを効率よく発熱させたい場合には、特に有効である。
とりわけ、発熱用導電体40の第1基板11と接する側の面40aの表面粗さSzは、好ましくは3.0μm以下、より好ましくは2.0μm以下となっており、さらに好ましくは1.0μm以下となっている。すなわち、発熱用導電体40と第1基板11とが接する部分が大きくなっている。この場合、発熱用導電体40で発生した熱を第1基板11に効率よく伝達させることができる。すなわち、第1基板11に、より多くの熱が伝導される。言い換えると、接合層30に伝導される熱が少なくなる。このため、熱による変質が生じ得る周辺領域A1を、より小さくすることができる。発熱板10に入射した光の進路が少ししか変わらなくなるため、ひずみの発生を、より抑制することができる。また、第1基板11に熱が伝達しやすいため、第1基板11を効率よく発熱させることができる。図1に示した自動車1のフロントウィンドウ5の外側等、発熱板10の一方の側のみを効率よく発熱させたい場合には、特に有効である。
発熱用導電体40の接合層30と隣接する側の面40bの表面粗さSzは、1.0μmより大きいことが好ましく、3.0μm以上となっていることがより好ましい。言い換えると、発熱用導電体40と接合層30とが接する部分は、小さくなっていることが好ましい。この場合、発熱用導電体40で発生した熱は、接合層30に熱伝導により伝達しにくくなる。このため、熱による変質が生じ得る周辺領域A1を、より小さくすることができる。発熱板10に入射した光の進路が少ししか変わらなくなるため、ひずみの発生を、より抑制することができる。また、発熱用導電体40の表面が粗くなると、発熱用導電体40で発生した熱は、輻射(放射)によって伝達させやすくなる。輻射による熱の伝達によれば、熱伝導による伝達より、発熱板10の局所的な加熱を回避して、より均一な加熱を実現することができる。このため、熱による変質が生じ得る周辺領域A1を、より小さくすることができる。発熱板10に入射した光の進路が少ししか変わらなくなるため、ひずみの発生を、より抑制することができる。また、輻射による熱の伝達によれば、第1基板11及び第2基板12を効率よく発熱させることができる、あるいは、発熱板10の表面に付着した雪や水滴等を直接温めることができる。すなわち、発熱板10の機能を、より効率よく発揮させることができる。
線状導電体41は、その表面の少なくとも一部に設けられた第1暗色層43又は第2暗色層44を含んでいることが好ましい。とりわけ、線状導電体41は、第1基板11に対向する側に設けられた第1暗色層43を含んでいることが好ましい。発熱板10が例えば図1に示す自動車1のフロントウィンドウ5に適用される場合、外部となる側に第1暗色層43が設けられていると、意匠性の低下を防ぐことができる。また、第1暗色層43及び第2暗色層44が設けられていると、発熱用導電体40で発生した熱を輻射によって伝達させやすくなる。輻射による熱の伝達によれば、熱伝導による伝達より、発熱板10の一部が局所的に加熱されることを回避して、より均一な加熱を実現することができる。このため、熱による変質が生じ得る周辺領域A1を、より小さくすることができる。発熱板10に入射した光の進路が少ししか変わらなくなるため、ひずみの発生を、より抑制することができる。また、輻射による熱の伝達によれば、第1基板11及び第2基板12を効率よく発熱させることができるあるいは、発熱板10の表面に付着した雪や水滴等を直接温めることができる。すなわち、発熱板10の機能を、より効率よく発揮させることができる。
図5に示した発熱用導電体40において、隣り合う2つの開口領域47の重心間距離は、100μm以上10000μm以下となっており、より好ましくは7000μm以下となっており、更に好ましくは5000μm以下となっている。また、図6に示した発熱用導電体40において、隙間49の第2方向とは非平行な方向に沿った長さの平均は、100μm以上12000μm以下となっており、より好ましくは7000μm以下となっており、更に好ましくは3000μm以下となっている。このような発熱用導電体40では、発熱用導電体40の透視性を確保しながら、発熱むらの発生を抑制することができる。このため、熱による変質が生じ得る周辺領域A1を、より小さくすることができる。発熱板10に入射した光の進路が少ししか変わらなくなるため、ひずみの発生を、より抑制することができる。
また、発熱用導電体40のシート抵抗は、0.1Ω/□以上1Ω/□以下となっており、より好ましくは0.2Ω/□以上となっており、更に好ましくは0.3Ω/□以上となっている。このような発熱用導電体40では、発熱用導電体40における発熱性能を確保しながら、発熱量が多すぎることで線状導電体41の近傍の領域とその他の領域との間で発熱むらが生じることを抑制することができる。このため、熱による変質が生じ得る周辺領域A1を、より小さくすることができる。発熱板10に入射した光の進路が少ししか変わらなくなるため、ひずみの発生を、より抑制することができる。
さらに、本実施の形態の発熱板10のように、発熱用導電体40がポリエチレンテレフタレート等からなる基材に支持されておらず、接合層30の第1部分31に隣接している場合、透明基材を含む従来の発熱板110に比べて、透明基材に起因する発熱板を介した視界の悪化も抑制することができる。さらに、透明基材の材料コスト及び透明基材の加工コストを削減することもできる。
なお、図4に示す例において、線状導電体41の高さHに対する接合層30の第1部分31の厚さT1の比(T1/H)は、3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましい。第1部分31の厚さT1が線状導電体41の高さに対して十分に大きいと、発熱板10の製造工程における発熱用導電体40が接合層30の第1部分31(基材フィルム21)に埋め込まれる際に、発熱用導電体40が第1部分31に容易かつ完全に埋め込まれる。言い換えると、発熱用導電体40が第1部分31に隙間なく埋め込まれる。このため、第1基板11と接合層30との間に空気等が入り込むことを効果的に抑制することができる。
さらに、図4に示す例において、線状導電体41の高さHに対する接合層30の第2部分32の厚さT2の比(T2/H)は、20以上であることが好ましく、60以上であることがより好ましい。第2部分32の厚さT2が線状導電体41の高さに対して十分に大きいと、発熱板10の製造工程における発熱用導電体40が接合層30の第1部分31(基材フィルム21)に埋め込まれる際に、発熱用導電体40が第1部分31に埋め込まれて生じる第1部分31の変形を、第2部分32で容易に平坦化することができる。言い換えると、第1部分31と第2部分32との間に隙間を生じさせないようにできる。このため、第1部分31と第2部分32との間や第2部分32と第2基板12との間に空気等が入り込むことを効果的に抑制することができる。
ただし、発熱板10の全体の厚さを厚くなりすぎないようにするため、線状導電体41の高さHに対する接合層30の第1部分31の厚さT1の比(T1/H)は、8以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましい。同様の理由から、線状導電体41の高さHに対する接合層30の第2部分32の厚さT2の比(T2/H)は、130以下であることが好ましく、110以下であることがより好ましい。
次に、発熱板10の製造方法の一例について、説明する。
まず、図8に示すように、接合層30の一部を形成するようになる基材フィルム21上に、第1暗色層43を形成するようになる暗色膜43aを設ける。基材フィルム21は、ヒートシール性を有している。暗色膜43aは、粗くなるように処理された状態で設けられている。あるいは、暗色膜43aは、基材フィルム21上に設けられた後、粗くなるように処理される。暗色膜43aは、例えば亜塩素酸ナトリウム水溶液と水酸化ナトリウム水溶液との混合液に浸漬させることで、粗くなるよう処理することができる。すなわち、表面粗さSzが大きな面となる。
次に、導電層42を形成するようになる導電膜42aを暗色膜43a上に設ける。導電膜42aは、公知の方法で形成され得る。例えば、銅箔等の金属箔を貼着する方法、電界めっき及び無電界めっきを含むめっき法、スパッタリング法、CVD法、PVD法、イオンプレーティング法、又はこれらの二以上を組み合わせた方法を採用することができる。あるいは、導電膜42aは、導電性の金属等を含むペースト状の材料を塗布することで形成されてもよい。また、粗くなるよう処理された暗色膜43aを備えた導電膜42aからなる電解銅箔または圧延銅箔を貼着することで2層同時に形成してもよい。
その後、図9に示すように、導電膜42a上に、レジストパターン50を設ける。レジストパターン50は、形成されるべき線状導電体41の配置パターンに対応した形となっている。このレジストパターン50は、公知のフォトリソグラフィー技術を用いたパターニングにより形成することができる。
次に、レジストパターン50をマスクとして、導電膜42a及び暗色膜43aをエッチングする。このエッチングにより、導電膜42a及び暗色膜43aがレジストパターン50と略同一のパターンにパターニングされる。この結果、図10に示すように、パターニングされた導電膜42aから、線状導電体41の一部をなすようになる導電層42が形成される。また、パターニングされた暗色膜43aから、線状導電体41の一部をなすようになる第1暗色層43が、形成される。
なお、エッチング方法はエッチング液を用いるウェットエッチングに限られることはなく、公知の方法が採用できる。公知の方法としては、例えば、プラズマエッチングなどであってもよい。エッチング工程の後、図11に示すように、レジストパターン50を除去する。
その後、図12に示すように、導電層42の第1暗色層43が設けられた面と反対側の面及び側面に第2暗色層44を形成する。第2暗色層44は、例えば導電層42をなす材料の一部分に暗色化処理(黒化処理)を施して、導電層42をなしていた一部分から、金属酸化物や金属硫化物からなる第2暗色層44を形成することができる。また、導電層42の表面に第2暗色層44を設けるようにしてもよい。また、導電層42の表面を粗化して第2暗色層44を設けるようにしてもよい。
以上の工程によって、発熱用導電体40と、発熱用導電体40を支持する基材フィルム21と、を有する導電体付きフィルム20が作製される。なお、発熱用導電体40のバスバー45は、導電膜42aのパターニングによって線状導電体41の導電層42と一体的に形成されてもよいし、或いは、基材フィルム21上に設けられた線状導電体41とは別途の導電体としてもよい。
最後に、図13に示すように、基材フィルム21に支持された発熱用導電体40を、第1基板11及び第2基板12の間に配置する。さらに、第1基板11及び第2基板12の間であって、導電体付きフィルム20の発熱用導電体40の側に、接着フィルム22を配置する。接着フィルム22は、ヒートシール性を有する。この状態で、第1基板11及び第2基板12を互いに向けて加圧・加熱して接合する。このとき、発熱用導電体40は、主として接着フィルム22に埋め込まれる。基材フィルム21及び接着フィルム22が加熱・加圧されることで、基材フィルム21は、接合層30の第1部分31となり、接着フィルム22は、接合層30の第2部分32となる。言い換えると、基材フィルム21と接着フィルム22とによって、接合層30が形成される。以上の工程により、図3に示した発熱板10が作製される。
なお、基材フィルム21は、接着フィルム22と比較して、単位質量あたりの可塑剤の量が少ない、ガラス転移温度が高い、及び、軟化点が高い、のうち少なくともいずれかを満たしている。また、基材フィルム21の厚さは、接着フィルム22の厚さより、薄くなっている。このようにすることで、第1部分31が、第2部分32と比較して、含まれている単位質量あたりの可塑剤の量が少ない、ガラス転移温度が高い、及び、軟化点が高い、のうち少なくともいずれかを満たしており、且つ、第1部分31の厚さT1が、第2部分32の厚さT2より短くなっている、接合層30が製造される。
また、図13に示された工程において、図示された向きとは逆向きで導電体付きフィルム20を配置して、すなわち、図14に示すように発熱用導電体40が第1基板11の側を向き且つ基材フィルム21が接着フィルム22及び第2基板12の側を向くように導電体付きフィルム20を配置して、第1基板11及び第2基板12を互いに向けて加圧・加熱して接合することで、発熱用導電体40は、第1基板11に接しながら、基材フィルム21に埋め込まれる。このような工程により、図4に示した発熱板10を作製することができる。
さらに、発熱板10の製造方法の他の例について、説明する。
まず、図15に示すように、上述した発熱板10の製造方法の一例と同様に、基材フィルム21上に暗色膜43aを設け、暗色膜43a上に導電膜42aを設ける。その後、図16に示すように、基材フィルム21の導電膜42aが設けられた側とは逆側から、可塑剤等の添加剤を添加する。このように可塑剤を添加することで、基材フィルム21の導電膜42aが設けられた側の部分に含まれる単位質量あたりの可塑剤の量は、基材フィルム21の導電膜42aが設けられた側とは逆側の部分に含まれる単位質量あたりの可塑剤の量より、少なくすることができる。基材フィルム21のうち、導電膜42aが設けられた側の部分が接合層30の第1部分31を形成するようになり、導電膜42aが設けられた側とは逆側の部分が接合層30の第2部分32を形成するようになる。
次に、上述した発熱板10の製造方法の一例と同様に、導電膜42a上にレジストパターン50を設けて、導電膜42a及び暗色膜43aをパターニングする。パターニングされた導電膜42aから導電層42が形成され、パターニングされた暗色膜43aから第1暗色層43が形成される。その後、導電層42の第1暗色層43が設けられた面と反対側の面及び側面に第2暗色層44を形成する。
以上の工程によって、発熱用導電体40と、発熱用導電体40を支持する基材フィルム21と、を有する導電体付きフィルム20が作製される。最後に、図17に示すように、第1基板11及び第2基板12の間に、発熱用導電体40が形成された側が第1基板11と対面するように、基材フィルム21を配置する。この状態で、第1基板11及び第2基板12を互いに向けて加圧・加熱して接合する。このとき、発熱用導電体40は、第1基板11に接しながら、基材フィルム21に埋め込まれる。以上の工程により、図4に示した発熱板10が作製される。
なお、上述した基材フィルム21に可塑剤を添加する工程は、導電膜42a及び暗色膜43aをパターニングする工程の後に行われてもよい。
以上のように、本実施の形態の発熱板10は、第1方向d1に離間して配置された第1基板11及び第2基板12と、第1基板11及び第2基板12の間に配置され、電圧を印加されることで発熱する発熱用導電体40と、第1基板11と第2基板12とを接合する接合層30と、を備え、接合層30は、発熱用導電体40に隣接する第1部分31と、第1方向d1において第1部分31からずれて位置する第2部分32と、を含み、第1部分31は、第2部分32と比較して、単位質量あたりの可塑剤の量が少ない、ガラス転移温度が高い、及び、軟化点が高い、のうち少なくともいずれかを満たす。このような発熱板10によれば、第1部分31は、第2部分32より、熱による変質が生じにくくなっている。このため、熱による変質が生じ得る発熱用導電体40の線状導電体41の周辺領域A1を小さくすることができる。したがって、発熱板10を発熱させた状態で、発熱板10を介した視界におけるひずみの発生を、抑制することができる。
さらに、本実施の形態の発熱板10の製造方法は、ヒートシール性を有する基材フィルム21上に導電膜42aを設ける工程と、導電膜42aをパターニングする工程と、第1基板11及び第2基板12の間に基材フィルム21を配置した状態で、第1基板11及び第2基板12を互いに向けて加圧・加熱して接合する工程と、を備える。このような発熱板10の製造方法によれば、ヒートシール性を有する基材フィルム21に導電層42を形成する導電膜42aが形成されるため、上述した発熱板10を、容易に製造することができる。
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。
前述した実施の形態において、発熱板10が曲面状に形成されている例を示したが、この例に限られず、発熱板10が、平板状に形成されていてもよい。
また、上述した実施の形態では、線状導電体41は、矩形形状の断面を有している。すなわち、線状導電体41は、断面において、第1方向d1に対向する対辺が平行且つ同一長さを有している。しかしながら、線状導電体41は、矩形形状に限られず、例えば台形形状の断面を有していてもよい。さらに、線状導電体41は、第1方向d1に対向する対辺が異なる長さを有していてもよい。
図18に示す例では、発熱用導電体40が接合層30の第1部分31と第2部分32との間に配置されており、線状導電体41の断面形状は、第1基板11に対向する側が平行な2本の対辺のうちの短くない方の辺となる台形形状となっている。線状導電体41は、第1方向d1に沿った断面において、対辺の幅が異なるようにしてもよい。とりわけ、線状導電体41の第1方向d1に直交する方向に沿った幅が、第1基板11に対向する側よりも、第2基板12に対向する側において、狭くなっていてもよい。
また、図19に示す例では、発熱用導電体40が接合層30における第1方向d1の端部に配置されており、線状導電体41の断面形状は、第1基板11に接する側が平行な2本の対辺のうちの短くない方の辺となる台形形状となっている。線状導電体41は、第1方向d1に沿った断面において、対辺の幅が異なるようにしてもよい。とりわけ、線状導電体41の第1方向d1に直交する方向に沿った幅が、第1基板11に対向する側、すなわち第1基板11に接する位置よりも、最も第2基板12に接近する位置において、狭くなっていてもよい。
さらに、図18や図19に示された例において、線状導電体41の第1方向d1に直交する方向に沿った幅が、第1基板11の側から第2基板12の側へ向けてしだいに狭くなっていくようにしてもよい。これらの場合、線状導電体41の断面における脚、すなわち線状導電体41の側面が、第1方向に直交する方向に対して傾斜して第2基板12の側を向くようにすることができる。このため、線状導電体41の側面からの輻射によって伝達される熱は、第2基板12に向かいやすくなる。すなわち、第1基板11だけでなく、第2基板12も適切に発熱させることができる。なお、線状導電体41の側面は、第1方向d1に沿った断面において、図18や図19に示された例のような直線に限られず、曲線状であってもよい。
とりわけ、線状導電体41の側面の表面粗さSzが1.0μmより大きい場合、線状導電体41の側面からの輻射によって発熱板10の局所的な加熱を回避して発熱板10を均一に加熱しながら、第2基板12に熱を伝達させることができる。言い換えると、第2基板12を効率よく発熱させることができる。さらに、線状導電体41の側面が第2暗色層44を含んでいる場合、線状導電体41の側面からの輻射を促進することができる。線状導電体41の側面からの輻射によって発熱板10の局所的な加熱をより効果的に回避して発熱板10を均一に加熱しながら、第2基板12に効率よく熱を伝達させることができる。言い換えると、より効率よく第2基板12を発熱させることができる。
加えて、基材フィルム21に支持された発熱用導電体40を第1基板11及び第2基板12の間に配置した状態で、第1基板11及び第2基板12を互いに向けて加圧・加熱して接合する工程において、線状導電体41の断面における脚、すなわち線状導電体41の側面が、第1方向d1に直交する方向に対して傾斜し第2基板12の側を向いている場合、図13に示す例では、発熱用導電体40が接着フィルム22に埋め込まれる際に、基材フィルム21と接着フィルム22及び発熱用導電体40との間に、空気等が入り込むことを効果的に抑制することができる。また、図14や図17に示す例では、発熱用導電体40が基材フィルム21に埋め込まれる際に、第1基板11と基材フィルム21及び発熱用導電体40との間に、空気等が入り込むことを効果的に抑制することができる。したがって、気泡によって発熱板10を介した視界が悪化することを避けることができる。また、空気に触れた接合層30が酸化して黄変することや、空気に触れた発熱用導電体40が酸化して導電性が低下することを効果的に抑制することができる。
あるいは、図20に示すように、線状導電体41の断面形状は、第1基板11に対向する側が平行な2本の対辺のうちの長くない方の辺となる台形形状であってもよい。とりわけ、線状導電体41の第1方向d1に直交する方向に沿った幅が、第1基板11に対向する側よりも、第2基板12に対向する側において、広くなっていてもよい。
また、図21に示すように、線状導電体41の断面形状は、第1基板11に接する側が平行な2本の対辺のうちの長くない方の辺となる台形形状であってもよい。とりわけ、線状導電体41の第1方向d1に直交する方向に沿った幅が、第1基板11に対向する側、すなわち第1基板11に接する位置よりも最も第2基板12に接近する位置において、広くなっていてもよい。
さらに、線状導電体41の第1方向d1に直交する方向に沿った幅が、第1基板11の側から第2基板12の側へ向けてしだいに広くなっていくようにしてもよい。これらの場合、線状導電体41の断面における脚、すなわち線状導電体41の側面が、第1方向d1に直交する方向に対して傾斜し第1基板11の側を向くようにすることができる。このため、線状導電体41の側面からの輻射によって伝達される熱は、第1基板11に向かいやすくなる。すなわち、第1基板11を効率よく発熱させることができる。なお、線状導電体41の側面は、第1方向d1に沿った断面において、図20及び図21に示された例のような直線に限られず、曲線状であってもよい。
これらの場合でも、線状導電体41の側面の表面粗さSzが1.0μmより大きい場合、線状導電体41の側面からの輻射によって発熱板10の局所的な加熱を回避して発熱板10を均一に加熱しながら、第1基板11に効率よく熱を伝達させることができる。言い換えると、効率よく第1基板11の全体を発熱させることができる。さらに、線状導電体41の側面が第2暗色層44を含んでいる場合、線状導電体41の側面からの輻射を促進することができる。線状導電体41の側面からの輻射によって発熱板10の局所的な加熱をより効果的に回避して発熱板10を均一に加熱しながら、第1基板11に効率よく熱を伝達させることができる。言い換えると、より効率よく第1基板11の全体を発熱させることができる。
上述したような断面形状がテーパ状となる線状導電体41は、例えば、第1暗色層43を形成する暗色膜43aを、導電層42を形成する導電膜42aよりエッチングされにくくすることで、またはエッチングされやすくすることで、形成することができる。すなわち、暗色膜43aが導電膜42aよりエッチングされにくいと、暗色膜43aの溶解が導電膜42aより進行しにくく、暗色膜43aの側の導電膜42aのエッチングが進行しにくくなる。このため、図19に示すように、線状導電体41の断面形状が第1基板11に対向する側に向けて先細りするテーパ形状、典型的には、線状導電体41の断面形状が第1基板11に対向する側が平行(略平行)な2本の対辺のうちの短くない方の辺となる台形形状となる。また、暗色膜43aが導電膜42aよりエッチングされやすいと、暗色膜43aの溶解が導電膜42aより進行し、溶解した暗色膜43aの側からも導電膜42aがエッチングされる。このため、図19に示すように、線状導電体41の断面形状が、第1基板11に対向する側に向けて先太りするテーパ形状、典型的には、第1基板11に対向する側が平行(略平行)な2本の対辺のうちの長くない方の辺となる台形形状となる。
また、上述した発熱板10の製造方法の一例において、第2暗色層44は、次のようにして設けられてもよい。まず、エッチング工程によって導電膜42a及び暗色膜43aがレジストパターン50と略同一のパターンにパターニングされた後、レジストパターン50を除去せずに、導電層42の側面に粗化された第2暗色層44の一部を形成する。その後、レジストパターン50を除去し、導電層42の第1暗色層43が設けられた面と反対側の面に粗化されていない第2暗色層44の他の一部を形成する。
このように第2暗色層44を設けることで、第1基板11と接する側の発熱用導電体40の表面粗さSzを、容易に小さくすることができる。すなわち、発熱用導電体40の第1基板11と接する側の表面粗さSzを、容易に3.0μm以下とすることができる。
あるいは、図22に示すように、発熱用導電体40の線状導電体41において、第1基板11に対向する側に第2暗色層44が設けられていなくてもよいし、図23に示すように、第1基板11と接する側に第2暗色層44が設けられていなくてもよい。すなわち、第2暗色層44は、導電層42の側面にのみ設けられていてもよい。このような第2暗色層44は、エッチング工程によって導電膜42a及び暗色膜43aがレジストパターン50と略同一のパターンにパターニングされた後、レジストパターン50を除去せずに、導電層42の側面に粗化された第2暗色層44の一部を形成することで、設けることができる。
このような発熱用導電体40は、第1基板11と接する側において導電層42が露出している。導電層42は、表面粗さが小さい。したがって、第1基板11と接する側の発熱用導電体40の表面粗さSzを、容易に小さくすることができる。すなわち、発熱用導電体40の第1基板11と接する側の表面粗さSzを、容易に3.0μm以下とすることができる。
発熱板10は、自動車1のリアウィンドウ、サイドウィンドウやサンルーフに用いてもよい。また、自動車以外の、鉄道車両、航空機、船舶、宇宙船等の移動体の窓或いは扉の透明部分に用いてもよい。
さらに、発熱板10は、移動体以外にも、特に室内と室外とを区画する箇所、例えばビルや店舗、住宅の窓或いは扉の透明部分、建物の窓又は扉、冷蔵庫、展示箱、戸棚等の収納乃至保管設備の窓あるいは扉の透明部分等に使用することもできる。
発熱板10は、デフロスタとして用いられてもよいし、第1基板11及び第2基板12の曇り止めとして用いられてもよい。あるいは、暖房器具等の他の用途として用いられてもよい。
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。