以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るターボ圧縮機10は、ガスを圧縮する圧縮室11a(図3)を有する圧縮部11と、圧縮部11を駆動する駆動部12と、駆動部12を保持するケーシング13と、を備えている。駆動部12は、図外のモータ等の駆動源によって駆動される駆動軸15と、駆動軸15に設けられたブルギア15aに噛み合う従動ギア(ピニオン)16aが設けられたロータ軸16と、を備えている。駆動軸15は、ケーシング13に装着された後述の軸受により、回転自在にケーシング13に支持されている。
ケーシング13は、図2に示すように、第1ケーシング部19と第2ケーシング部20とに分割されている。第1ケーシング部19及び第2ケーシング部20とは、図略の締結部材によって互いに結合される。したがって、第1ケーシング部19と第2ケーシング部20とを互いに組み合わせることによってケーシング13が完成し、このケーシング13内に駆動部12を収容する空間が形成される。
図3はケーシング13内に収容される駆動部12を示すものであるが、図3では、第1ケーシング部19において、第2ケーシング部20と合わせられる分割面19aが示されている。第2ケーシング部20の分割面20a(図2参照)も、第1ケーシング部19の分割面19aと同様の形状となっている。図3において、分割面19aにはハッチングは施されていない。第1ケーシング部19の分割面19aは、第1ケーシング部19の上面を構成し、第2ケーシング部20の分割面19aは第2ケーシング部20の下面を形成するが、これに限られるものではない。例えば、ケーシング13は、上下に分割される構成でもよく、左右に分割される構成でもよい。
ロータ軸16は、第1ケーシング部19の分割面19aに露出するとともに第2ケーシング部20の分割面20aに露出するように配置されている。したがって、第1ケーシング部19から第2ケーシング部20を分離すると、ロータ軸16が露出する。言い換えると、ケーシング13は、ロータ軸16に沿う面で第1ケーシング部19と第2ケーシング部20とに分割されている。
ロータ軸16は、従動ギア16aが設けられた軸部16bと、軸部16bに形成されたスラストカラー16cと、を備えている。軸部16bの一端部には、圧縮室11a内に配置された羽根車11bが取り付けられている。スラストカラー16cは、一端部とその反対側の端部である他端部との間に配置されており、軸部16bよりも外径の大きく且つ軸部16bに垂直な円板状に形成されている。
軸部16bには、ロータ軸16の回転数を検出するためのキーフェーザ22が設けられている。ケーシング13には、図示省略しているが、軸部16bに向けた検出領域を有する検出端が設けられており、この検出端は、検出領域をキーフェーザ22が通過する時間間隔に応じた信号を出力するように構成されている。検出端に電気的に接続された演算部24(図1参照)は、検出端から出力された信号に基づいて、ロータ軸16の回転数を演算する。
ロータ軸16には、スラストベアリング26と第2スラストベアリング28とジャーナルベアリング30とが装着されている。
スラストベアリング26は、スラストカラー16cに対して羽根車11b側に配置されており、ロータ軸16が羽根車11b側に変位しようとするときにスラストカラー16cからスラスト力を受ける。
スラストベアリング26は、テーパランドスラストベアリングによって構成されている。すなわち、スラストベアリング26は、図4に示すように、軸部16b周りの周方向に並ぶ複数のテーパランド部26aと、隣り合うテーパランド部26a間に位置する給液溝26bとを備えている。各テーパランド部26aは、周方向に傾斜しつつスラストカラー16cに対向するテーパ面26cと、スラストカラー16cに平行に対向するランド面26fと、を有している。このため、テーパ面26cの角度、テーパ面26cやランド面26fの面積等によって、スラストカラー16cとスラストベアリング26との間の潤滑液の膜(例えば油膜)が調整される。
図3に示すように、スラストベアリング26は、ジャーナル軸受として機能するジャーナル軸受部26dと、テーパランド部26a及びジャーナル軸受部26dを保持する保持部26eと、を含んでいる。ジャーナル軸受部26dは、テーパランド部26aに対して羽根車11b側(すなわち、スラストカラー16cとは反対側)に位置していて、この位置でロータ軸16の軸部16bを取り囲んでいる。
第2スラストベアリング28は、スラストカラー16cに対して羽根車11bとは反対側に配置されており、ロータ軸16が羽根車11bとは反対側に変位しようとするときにスラストカラー16cからスラスト力を受ける。
第2スラストベアリング28は、軸部16bの他端部(羽根車11bが設けられた端部とは反対側の端部)に配置されている。すなわち、第2スラストベアリング28は、貫通孔28aを有する筒状に形成されており、第2スラストベアリング28には、この貫通孔28aの軸方向における中間位置まで軸部16bが挿入されている。言い換えると、第2スラストベアリング28は、軸部16bの他端部から軸方向に突出するように軸部16bとの間に隙間を有して軸部16bに外嵌されている。
なお、軸部16bは第2スラストベアリング28の貫通孔28aにおける軸方向の中間位置まで挿入されているが、この構成に限られない。例えば、軸部16bは第2スラストベアリング28の貫通孔28aに挿入されていなくてもよい。この場合、スラストカラー16cが軸部16bの他端部に配置され、スラストカラー16cの端面が第2スラストベアリング28に対面していてもよい。すなわち、スラストカラー16cは、軸部16bにおいて、羽根車11bが取り付けられた一端部以外の部位に形成されていればよい。
第2スラストベアリング28の貫通孔28aは、軸部16bの他端部にアクセスするための空間を形成しており、この空間には、軸方向におけるロータ軸16の変位を検出する変位検出器32が挿入されている。なお、図2に示すように、変位検出器32が取り外された状態では、ケーシング13に形成された開口内に位置する貫通孔28aを通して外部から軸部16bの他端部にアクセスすることができる。
第2スラストベアリング28は、ティルティングパッドスラストベアリングによって構成されている。具体的に、図5に示すように、第2スラストベアリング28は、軸部16b周りの周方向に配置された複数のティルティングパッド28bと、複数のティルティングパッド28bを保持する保持部28cと、を備えている。各ティルティングパッド28bは、保持部28cに支持された図略の保持具によって首振り可能に保持されている。隣り合うティルティングパッド28b間には、間隙が形成されており、保持部28cには、この間隙に位置するように供給口28dが設けられている。供給口28dは、潤滑液を流出させる。潤滑液は、例えば油であり、オイルユニット34(図1)から配管を通して供給される。潤滑液は、スラストカラー16c及び保持部28c間に満たされ、ロータ軸16の回転によって周方向に流動しつつティルティングパッド28bの表面(ベアリング面)に流れるため、第2スラストベアリング28は、液体動力学的なスラストベアリングとして機能する。第2スラストベアリング28に供給された潤滑液は、配管を通してオイルユニット34に戻される。
第2スラストベアリング28は、各ティルティングパッド28bのベアリング面に設けられた第2供給口28eと、第2供給口28eに連続する位置でベアリング面から凹む加圧凹部28fと、をさらに備えている。第2供給口28eは、加圧液を流出させる。加圧液は、例えば油であり、オイルユニット34(図1)から配管を通して供給される。第2供給口28eから流出した加圧液は、加圧凹部28f内に溜められる。すなわち、加圧凹部28fは、ベアリング面において加圧液による加圧面積を確定する。第2スラストベアリング28では、第2供給口28eから流出した加圧液がベアリング面とスラストカラー16cとの間に溜まるため、液体静力学的なスラストベアリングとしても機能する。すなわち、第2スラストベアリング28は、液体動力学的なスラストベアリングとしても液体静力学的なスラストベアリングとしても機能する複合スラストベアリングとして構成されている。第2スラストベアリング28に供給された加圧液は、配管を通してオイルユニット34に戻される。
第2スラストベアリング28は、図6にも示すように、保持部28cと複数のティルティングパッド28bとを有するベアリング本体28gを備えている。また、第2スラストベアリング28は、このベアリング本体28gを収容するリテーナ28hをも備えている。なお、第2スラストベアリング28は、リテーナ28hを備えない構成であってもよい。この場合、ティルティングパッド28b及び保持部28cが直接第1ケーシング部19に保持されることとなる。
図3に示すように、ジャーナルベアリング30は、従動ギア16aに対して羽根車11b側に配置されている。一方、スラストベアリング26に設けられたジャーナル軸受部26dは従動ギア16aに対して羽根車11bとは反対側に配置されている。このため、ジャーナルベアリング30とスラストベアリング26に設けられたジャーナル軸受部26dとは、軸方向において従動ギア16aの両側に分かれて配置されている。したがって、ロータ軸16は、従動ギア16aの両側でケーシング13に回転自在に支持されている。
第1ケーシング部19には、駆動軸15を収容する駆動側収容溝38と、ロータ軸16、スラストベアリング26、第2スラストベアリング28及びジャーナルベアリング30を収容する軸収容溝39と、駆動側収容溝38と軸収容溝39とを繋ぐ接続溝40と、が形成されている。駆動側収容溝38、軸収容溝39及び接続溝40は、分割面19aから凹むように形成されている。
第2ケーシング部20にも、これらの溝38~40と同じ形状の図略の駆動側収容溝、軸収容溝及び接続溝が形成されている。したがって、第1ケーシング部19の駆動側収容溝38が第2ケーシング部20に形成された駆動側収容溝に組み合わされることにより、ケーシング13内には、駆動軸15を収容する駆動用空間が形成される。この駆動用空間は、ケーシング13の外面に開口しており、この開口を通して駆動軸15がケーシング13の外部に延出している(図2参照)。すなわち、駆動軸15は、ケーシング13外部の駆動源からブルギア15aに対して駆動力を入力する入力軸として機能する。
また、第1ケーシング部19の軸収容溝39が第2ケーシング部20に形成された軸収容溝に組み合わされることにより、ケーシング13内には、ロータ軸16、スラストベアリング26、第2スラストベアリング28及びジャーナルベアリング30を収容する空間が形成される。
軸収容溝39には、スラストベアリング26が配置される第1部位39aと、スラストカラー16cが配置される第2部位39bと、第2スラストベアリング28が配置される第3部位39cと、ジャーナルベアリング30が配置される第4部位39dと、が含まれている。第4部位39dは、接続溝40に対して羽根車11b側に位置している。一方、第1部位39a、第2部位39b及び第3部位39cは、接続溝40に対して羽根車11bとは反対側に位置している。第1部位39a、第2部位39b及び第3部位39cは、羽根車11b側からこの順に配置されるともに、互いに繋がるように形成されている。
軸収容溝39の第1部位39aは、軸収容溝39に配置されるロータ軸16の軸部16bと同心状の断面半円形状の空間を形成する形状を有している。そして、この空間にも軸部16bが配置される。このため、分割面19aを平面視したときに、この空間は、軸部16bに対する一方側(図6における上側)で開口するとともに、軸部16bに対する他方側(図6における下側)でも開口した状態に見える。すなわち、分割面19aにおけるこの空間の開口は、軸部16bによって2つに分けられている。軸収容溝39の第1部位39aは、第2ケーシング部20に形成された軸収容溝39の第1部位39aと組み合わせられることにより、スラストベアリング26を収容する収容空間を形成する。
軸収容溝39の第1部位39aには、図6に示すように、スラストベアリング26を収容する収容空間の周面に沿って延びる突条部(第1突条部)42が形成されている。突条部42は、軸部16bと同心状の円環を半分にした形状であり、第1ケーシング部19において収容空間を区画する周面から径方向の内側に突出している。第2ケーシング部20にも同様の形状の突条部が形成されているため、第1ケーシング部19の突条部42及び第2ケーシング部20の突条部は、第1ケーシング部19と第2ケーシング部20とが互いに組み合わされると1つの環状となる。したがって、ケーシング13には、軸部16bと同心状の環状の突条部42が設けられている。突条部42は、軸方向の端面(第1端面)42aと、第1端面42aとは反対側の端面(第2端面)42bと、第1端面42aの内周端と第2端面42bの内周端とを繋ぐ接続面42cと、によって形成されている。第1端面42a及び第2端面42bは軸部16bに垂直である。このため、軸部16bを含む平面内における突条部42の断面は、矩形状となっている。
一方、スラストベアリング26には、その外周面において、環状の突条部42を受け入れる環状の溝部(第1溝部)44が設けられている。すなわち、スラストベアリング26の外周面には、軸方向の中間部において径方向に凹んだ溝部44が形成されている。溝部44は、軸方向の端部に位置する第1側面44aと、この第1側面44aに対向する第2側面44bと、第1側面44aの内周端と第2側面44bの内周端を繋ぐ接続面44cと、によって形成されている。第1側面44aは、軸部16bに垂直であり、突条部42の第1端面42aに軸方向に対向している。第2側面44bは、軸部16bに垂直であり、突条部42の第2端面42bに軸方向に対向している。接続面44cは、周面によって形成されている。このため、軸部16bを含む平面内における溝部44の断面は、矩形状となっている。
スラストベアリング26を収容する収容空間には、第1空間46と第2空間48とが含まれている。第1空間46は、溝部44と突条部42との間の空間であって、突条部42に対してスラストカラー16c側に位置している。第1空間46は、溝部44の第1側面44aと、溝部44の接続面44cと、突条部42の第1端面42aと、ケーシング13における収容空間を区画する内周面(第1部位39aの内周面)と、によって区画され、軸部16bを含む平面内における断面が矩形状に形成されている。
第1空間46は、軸部16b周りの環状の空間を半分にした形状であり、分割面19aにおいて、軸部16bに対して一方側に一端部が開口するとともに、軸部16bに対してもう一方側に他端部が開口している。
第2空間48は、溝部44と突条部42との間の空間であって、突条部42に対してスラストカラー16cとは反対側に位置している。第2空間48は、溝部44の第2側面44bと、溝部44の接続面44cと、突条部42の第2端面42bと、ケーシング13における収容空間を区画する内周面(第1部位39aの内周面)と、によって区画され、軸部16bを含む平面内における断面が矩形状に形成されている。
第2空間48は、軸部16b周りの環状の空間を半分にした形状であり、分割面19aにおいて、軸部16bに対して一方側に一端部が開口するとともに、軸部16bに対してもう一方側に他端部が開口している。
第1空間46には、第1リング51が挿入されており、第2空間48には、第2リング52が挿入されている。第1リング51は、図7に示すように、2つの円弧部材51aに分割された構成である。円弧部材51aは、円弧状に延びる形状を有しており、長手方向に一定の厚みを有している。円弧部材51aは、第1空間46において分割面19aに開口する端部から周方向に沿って第1空間46内に挿入される。したがって、第1リング51の円弧部材51aを第1空間46に挿入する際に、スラストベアリング26をロータ軸16から取り外しておく必要がない。
第2リング52も、第1リング51と同様に、2つの円弧部材(図示省略)に分割された構成である。したがって、第2リング52を構成する円弧部材は、第2空間48において分割面19aに開口する端部から周方向に沿って第2空間48内に挿入される。したがって、第2リング52の円弧部材を第2空間48に挿入する際に、スラストベアリング26をロータ軸16から取り外しておく必要がない。
第2リング52の厚みは、第1リング51の厚みと同じでもよく、異なっていても良い。すなわち、第1リング51及び第2リング52の一方は、スラストカラー16cに対するスラストベアリング26の軸方向における位置を調整するために用いられる。このため、第1リング51及び第2リング52の一方は、スラストベアリング26がスラストカラー16cに対して所定の位置に決められるような厚みを有するものが使用されている。これに対し、第1リング51及び第2リング52の他方は、スラストベアリング26が前記所定の位置に定められた結果、当該リング51,52が配置される空間46,48の幅に応じた厚みのものが使用されている。すなわち、第1リング51及び第2リング52の他方は、スラストベアリング26が軸方向に移動することを制限するために設けられる。
なお、本実施形態では、第1リング51及び第2リング52は、2つの円弧部材51aに分割された構成であるが、これに限られず、3つ以上の円弧部材に分割された構成であってもよい。
図6に戻る。軸収容溝39の第2部位39bは、第2ケーシング部20に形成された軸収容溝の第2部位と組み合わされることによって、スラストカラー16cを収容する空間を形成する。
軸収容溝39の第3部位39cは、軸収容溝39に配置されるロータ軸16の軸部16bと同心状の断面半円形状の空間を形成する形状を有している。この空間にも部分的に軸部16bが配置される。軸収容溝39の第3部位39cは、第2ケーシング部20に形成された軸収容溝の第3部位と組み合わせられることにより、第2スラストベアリング28を収容する第2収容空間を形成する。
軸収容溝39の第3部位39cには、第2スラストベアリング28を収容する第2収容空間の周面に沿って延びる第2突条部54が形成されている。第2突条部54は、軸部16bと同心状の円環を半分にした形状である。第2ケーシング部20にも同様の形状の第2突条部が形成されているため、第1ケーシング部19の第2突条部54及び第2ケーシング部20の第2突条部は、第1ケーシング部19と第2ケーシング部20とが互いに組み合わされると1つの環状となる。したがって、ケーシング13には、軸部16bと同心状の環状の第2突条部54が設けられている。第2突条部54は、軸方向の端面(第1端面)54aと、第1端面54aとは反対側の端面(第2端面)54bと、第1端面54aの内周端と第2端面54bの内周端とを繋ぐ接続面54cと、によって形成されている。第1端面54a及び第2端面54bは軸部16bに垂直である。このため、軸部16bを含む平面内における第2突条部54の断面は、矩形状となっている。
一方、第2スラストベアリング28には、その外周面において、環状の第2突条部54を受け入れる環状の第2溝部56が設けられている。すなわち、第2スラストベアリング28の外周面には、軸方向の中間部において径方向の内側に凹んだ第2溝部56が形成されている。第2溝部56は、軸方向の端部に位置する第1側面56aと、この第1側面56aに対向する第2側面56bと、第1側面56aの内周端と第2側面56bの内周端を繋ぐ接続面56cと、によって形成されている。第1側面56aは、軸部16bに垂直であり、第2突条部54の第1端面54aに軸方向に対向している。第2側面56bは、軸部16bに垂直であり、第2突条部54の第2端面54bに軸方向に対向している。接続面は、周面によって形成されている。このため、軸部16bを含む平面内における第2溝部56の断面は、矩形状となっている。
第2溝部56と第2突条部54との間には、空間が形成されていない。このため、第2溝部56の第1側面56aと第2突条部54の第1端面54aとは互いに接触しており、第2溝部56の第2側面56bと第2突条部54の第2端面54bとは互いに接触している。
本実施形態に係るターボ圧縮機10では、ロータ軸16が駆動されず羽根車11bが回転しない時(停止時)において、羽根車11bには、圧縮室11a内のガスによって軸方向の力がかかっている。このため、第2スラストベアリング28には、スラストカラー16cから受けるスラスト力が作用している。このスラスト力は、羽根車11bが取り付けられた軸部16bの一端部から他端部に向かう方向の力である。このとき、第2スラストベアリング28のベアリング面には、オイルユニット34から第2供給口28eを介して加圧液が供給されている。したがって、ベアリング面とスラストカラー16cとの間には、加圧液が存在している。これにより液体静力学的なスラストベアリングとして機能する。
ロータ軸16の回転に伴って、供給口28dからティルティングパッド28b間に潤滑液が流出し、ティルティングパッド28b間は、潤滑液で満たされる。ロータ軸16が回転している最中には、キーフェーザ22及び演算部24によってロータ軸16の回転数が監視されている。そして、ロータ軸16の回転数が定格の回転数に達すると、オイルユニット34からの第2供給口28eを介したベアリング面への加圧液の供給が停止される。この状態では、供給口28dからティルティングパッド28b間に供給される潤滑液によってスラストカラー16cとティルティングパッド28b間の潤滑が維持される。
以上説明したように、本実施形態では、スラストカラー16cに対するスラストベアリング26の隙間幅を調整するために、軸方向における第1空間46及び第2空間48の幅に応じた厚みを有する第1リング51及び第2リング52が用いられる。例えば第1リング51が第1空間46内に配置された状態で、スラストベアリング26又はケーシング13をロータ軸16の軸部16bの軸方向に移動させることにより、軸方向における第1空間46の幅が第1リング51の幅に調整される。この結果、第1リング51の幅に応じてスラストベアリング26とスラストカラー16cとの間の隙間幅が微調整される。微調整が完了した時点で、軸方向における第2空間48の幅が決まるため、この第2空間48の幅に応じた厚みを有する第2リング52を第2空間48に配置させることができる。これにより、軸方向においてスラストベアリング26がケーシング13に対して移動しないようにすることができる。
一方、第2リング52が第2空間48内に配置された状態でスラストベアリング26又はケーシング13をロータ軸16の軸方向に移動させることもできる。この場合には、まず、軸方向における第2空間48の幅が第2リング52の幅に応じて調整される。この結果、スラストベアリング26とスラストカラー16cとの間の隙間幅の微調整が完了する。そして、この幅調整の結果に応じて決まる第1空間46の幅に合わせた厚みを有する第1リング51が第1空間46に挿入される。これにより、軸方向においてスラストベアリング26がケーシング13に対して移動しないようにすることができる。
ケーシング13は、ロータ軸16に沿う面で第1ケーシング部19と第2ケーシング部20とに分割されている。本実施形態では、ロータ軸16の軸心を通る仮想平面上で分割面19aと分割面20aが接しており、第1ケーシング部19と第2ケーシング部20とを互いに組み合わせることによって、ケーシング13に、スラストベアリング26を収容する収容空間が形成される。一方、第1リング51及び第2リング52は何れも複数の円弧部材51aに分割された構成であり、第1ケーシング部19と第2ケーシング部20とが分離された状態で、第1リング51は第1空間46に周方向に挿入され、第2リング52は第2空間48に周方向に挿入される。したがって、第1リング51を第1空間46に挿入する場合に、スラストベアリング26をロータ軸16から取り外す作業は必要ない。また、第2リング52を第2空間48に挿入する場合にも、スラストベアリング26をロータ軸16から取り外す作業は必要ない。したがって、スラストカラー16cに対するスラストベアリング26の位置調整作業、すなわち、ケーシング13に対するスラストベアリング26の位置調整作業が繁雑になること抑制することができる。
しかも、ケーシング13が、軸部16b周りの環状の突条部42を有し、スラストベアリング26が、突条部42を受け入れる環状の溝部44を有する。このため、ボルト等の締結部材によってスラストベアリング26をケーシング13に締結することなく、スラストベアリング26をケーシング13内で固定することができる。
また本実施形態では、スラストベアリング26がテーパランドスラストベアリングによって構成されるため、傾斜したテーパ面26cの角度、テーパ面26cやランド面26fの面積等に応じて、スラストカラー16cとスラストベアリング26との間の潤滑液の膜(例えば油膜)を調整することができる。また、スラストベアリング26は軸部16bの端面でなく軸部16bより大径のスラストカラー16cでスラスト力を受けるため、より大きなスラスト力を受けることが可能である。また、テーパランドスラストベアリングがスラストカラー16cに対して羽根車11b側に位置しているので、ロータ軸16を羽根車11b側に移動させるスラスト力をテーパランドスラストベアリングにて受けることができる。
また本実施形態では、スラストベアリング26が、一体的に構成されたジャーナル軸受としての機能をも有するので、スラストベアリング26とは別の空間にジャーナル軸受を追加的に設ける必要がない。したがって、ロータ軸16に対するベアリングの組み付け作業が増えることを抑制することができる。
また本実施形態において、ティルティングパッドスラストベアリングでは、周方向に配置された複数のティルティングパッド28bによってスラスト力を受けるため、大きなスラスト力に対しても有効に作用することができる。しかも、ティルティングパッド28bによってスラストカラー16cに対する姿勢が自動的に調整されるため、軸部16bの軸方向に対するスラストカラー16cの垂直度のずれの影響を受けること(例えば、不安定振動を生じること)なく、ティルティングパッドスラストベアリングによってスラスト力を受けることができる。またティルティングパッドスラストベアリングは液体動力学的なスラストベアリングとして機能し、羽根車11bの回転力を受けてロータ軸16が回転することによって、潤滑液を供給口28dから流出させてスラスト面に潤滑液を供給する。
また本実施形態において、ティルティングパッドスラストベアリングは、第2供給口28eから流出して加圧凹部28fに入った加圧液により、スラストカラー16cを押圧する。ティルティングパッドスラストベアリングは、液体静力学的なスラストベアリングとしても機能するため、羽根車11bの停止時にもロータ軸16に作用するスラスト力が負荷される。なお、本実施形態では、加圧凹部28fは、円盤状の空間を形成するように構成されているが、リング状の空間を形成する構成であってもよい。
また本実施形態では、スラストカラー16cに対して羽根車11bとは反対側に配置されている第2スラストベアリング28には、羽根車11bが圧縮対象のガスから受ける力によって生ずるスラストカラー16cからのスラスト力が負荷される。特に、ティルティングパッドスラストベアリングによって構成されている第2スラストベアリング28が、液体静力学的なスラストベアリングとしても機能する複合スラストベアリングとして構成されているため、羽根車11bの停止時にもロータ軸16が大きな軸方向荷重を受けている場合に有効となる。
また本実施形態では、スラスト力がロータ軸16に作用して、ロータ軸16が変位すると、変位検出器32はこの変位を検出する。したがって、変位検出器32により、ロータ軸16の変位量が所定値以上になることをモニタリングすることが可能となる。
また本実施形態では、第2スラストベアリング28が、ベアリング本体28gを収容するリテーナ28hを備えているので、ケーシング13がベアリング本体28gの形状及び大きさに応じた形状に形成されていない場合でも、ベアリング本体28gをケーシング13に取り付けることができる。したがって、ケーシング13をベアリング本体28gの形状及び大きさに応じて専用に設計する必要がないため、ケーシング13のコスト低減に寄与する。
また本実施形態では、ケーシング13が、軸部16b周りの環状の第2突条部54を有し、第2スラストベアリング28が、第2突条部54を受け入れる環状の第2溝部56を有する。このため、ボルト等の締結部材によって第2スラストベアリング28をケーシング13に締結することなく、第2スラストベアリング28をケーシング13内で固定することができる。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記実施形態では、ケーシング13に突条部(第1突条部)42が形成される一方で、スラストベアリング26に溝部(第1溝部)44が形成されているが、この構成に限られない。図8に示すように、スラストベアリング26に突条部(第1突条部)42が形成される一方で、スラストベアリング26に溝部(第1溝部)44が形成されていてもよい。
図8に示す構成では、突条部42は、スラストベアリング26の外周面から径方向の外側に突出する点で、前記実施形態と異なっている。突条部42の接続面42cは、第1端面42aの外周端と、第2端面42bの外周端とを繋いでいる。一方、溝部44は、ケーシング13において収容空間を区画する周面から径方向の外側に凹んでいる。溝部44の接続面44cは、第1側面44aの外周端と第2側面44bの外周端を繋いでいる。
また、図8に示すように、第2スラストベアリング28に第2突条部54が形成される一方で、ケーシング13に第2溝部56が形成されていてもよい。すなわち、第2突条部54は、第2スラストベアリング28の外周面から径方向の外側に突出していてもよい。この場合、第2突条部54の接続面54cは、第1端面54aの外周端と、第2端面54bの外周端とを繋いでいる。また、第2溝部56は、ケーシング13において第2収容空間を区画する周面から径方向の外側に凹んでいてもよい。この場合、第2溝部56の接続面56cは、第1側面56aの外周端と第2側面56bの外周端を繋いでいる。なお、図8において、第2突条部54及び第2溝部56は、図3に示す構成が採用されていてもよい。すなわち、突条部42がスラストベアリング26に形成されるとともに溝部44がケーシング13に形成される一方で、第2突条部54がケーシング13に形成されるとともに第2溝部56がスラストベアリング26に形成された構成であってもよい。あるいは、突条部42がケーシング13に形成されるとともに溝部44がスラストベアリング26に形成される一方で、第2突条部54がスラストベアリング26に形成されるとともに第2溝部56がケーシング13に形成された構成であってもよい。
前記実施形態では、溝部44と突条部42との間に第1空間46及び第2空間48が形成され、第2溝部56と第2突条部54との間には空間が形成されていない。これに対し、図9に示す構成では、第2溝部56と第2突条部54との間に第1空間46及び第2空間48が形成され、溝部(第1溝部)44と突条部(第1突条部)42との間には第1空間46及び第2空間48が形成されていない。そして、第1リング51は、第2溝部56と第2突条部54との間の第1空間46に配置され、第2リング52は、第2溝部56と第2突条部54との間の第2空間48に配置されている。
前記実施形態では、スラストベアリング26がテーパランドスラストベアリングによって構成されているが、これに限られない。例えば、スラストベアリング26は、ティルティングパッドスラストベアリング等、他のタイプのスラストベアリングによって構成されていてもよい。
前記実施形態では、スラストベアリング26がジャーナル軸受部26dを含む構成となっているが、これに限られない。スラストベアリング26と別箇にジャーナル軸受が設けられていてもよい。
前記実施形態では、第2スラストベアリング28がティルティングパッドスラストベアリングによって構成されているが、これに限られない。例えば、第2スラストベアリング28は、他のタイプのスラストベアリングによって構成されていてもよい。
前記実施形態では、第2スラストベアリング28が複合スラストベアリングとして構成されているが、これに限られない。羽根車11bの停止時に羽根車11bにガスから力が加わらない場合には、第2スラストベアリング28は、液体動力学的なスラストベアリングとして機能すれば十分であり、液体静力学的なスラストベアリングとして機能しなくてもよい。
前記実施形態では、ロータ軸16の変位を検出する変位検出器32が設けられているが、変位検出器32を省略してもよい。
前記実施形態では、ロータ軸16の回転数が定格の回転数に達すると、オイルユニット34からの第2供給口28eを介したベアリング面への加圧液の供給が停止されている。しかしながらこの構成に限られるものではなく、ロータ軸16の回転数が定格の回転数に達した場合でも加圧液の供給を停止せずに継続するようにしてもよい。
前記実施形態では、スラストベアリング26および第2スラストベアリングを含むベアリングの周方向の固定方法について示していないが、廻り止めピン等により適宜公知の廻り止めを施せばよい。