(第1実施形態)
以下、増速機及びその増速機を備えた遠心圧縮機の第1実施形態について説明する。なお、本実施形態では、遠心圧縮機は、燃料電池が搭載された燃料電池車両(FCV)に搭載されており、当該燃料電池に対して空気を送るのに用いられる。また、図示の都合上、図1等においては、両シャフト11,12を側面図で示し、図1〜3においては、凸部69の突出寸法を、実際よりも大きく示す。
図1に示すように、遠心圧縮機10は、低速側シャフト11及び高速側シャフト12と、低速側シャフト11を回転させる電動モータ13と、低速側シャフト11の回転を増速させて高速側シャフト12に伝達する増速機14と、高速側シャフト12の回転によって流体(本実施形態では空気)を圧縮する圧縮部15とを備えている。両シャフト11,12は、例えば金属で構成されており、詳細には鉄又は鉄の合金で構成されている。
また、遠心圧縮機10は、当該遠心圧縮機10の外郭を構成するものであって、両シャフト11,12、電動モータ13、増速機14及び圧縮部15が収容されたハウジング20を備えている。ハウジング20は、例えば全体として略筒状(詳細には円筒状)となっている。
ハウジング20は、電動モータ13が収容されたモータハウジング21と、増速機14が収容された増速機ハウジング22と、流体が吸入される吸入口23aが形成されたコンプレッサハウジング23とを備えている。吸入口23aは、ハウジング20の軸線方向の一端面20aに設けられている。吸入口23aから見てハウジング20の軸線方向に、コンプレッサハウジング23、増速機ハウジング22及びモータハウジング21の順に配列されている。また、ハウジング20は、増速機ハウジング22とコンプレッサハウジング23との間に設けられたプレート24を備えている。
ちなみに、本実施形態では、遠心圧縮機10は、ハウジング20の軸線方向と水平方向とが一致する状態で車両に搭載されている。そして、図1の紙面上下方向が鉛直方向に対応する。
モータハウジング21は、全体として底部21aを有する筒状(詳細には円筒状)である。モータハウジング21の底部21aの外面が、ハウジング20の軸線方向の両端面20a,20bのうち、吸入口23aがある一端面20aとは反対側の他端面20bを構成している。同様に、増速機ハウジング22は、全体として底部22aを有する筒状(詳細には円筒状)である。
モータハウジング21と増速機ハウジング22とは、モータハウジング21の開口端が増速機ハウジング22の底部22aに突き合わさった状態で連結されている。モータハウジング21の内面と、増速機ハウジング22の底部22aにおけるモータハウジング21側の面とによって、電動モータ13が収容されたモータ収容室S1が形成されている。当該モータ収容室S1には、低速側シャフト11の回転軸線方向とハウジング20の軸線方向とが一致する状態で、低速側シャフト11が収容されている。
低速側シャフト11は、回転可能な状態でハウジング20に支持されている。詳細には、モータハウジング21の底部21aには、増速機ハウジング22に向けて起立した筒状の第1ボス31が設けられている。第1ボス31は、低速側シャフト11の一端部11aよりも一回り大きく形成されている。低速側シャフト11の一端部11aは、第1ボス31内に入り込んでおり、第1ボス31の内面と低速側シャフト11の一端部11aとの間には、低速側シャフト11を回転可能な状態で支持する第1軸受32が設けられている。
同様に、増速機ハウジング22の底部22aには、低速側シャフト11の一端部11aとは反対側の他端部11bよりも一回り大きく形成された貫通孔22bと、当該貫通孔22bの周縁部からモータハウジング21(詳細には第1ボス31)に向けて起立した円筒状の第2ボス33とが設けられている。低速側シャフト11の他端部11bは、第2ボス33内に入り込んでおり、第2ボス33の内面と低速側シャフト11の他端部11bとの間には、低速側シャフト11を回転可能な状態で支持する第2軸受34が設けられている。増速機ハウジング22の貫通孔22bの内面及び第2ボス33の内面の境界付近には、当該両内面から径方向内側に張り出した張出部35が設けられており、第2軸受34は、第2ボス33と張出部35とによって区画された領域に配置されている。
ちなみに、図1に示すように、低速側シャフト11の他端部11bは、増速機ハウジング22の貫通孔22bに挿通されており、低速側シャフト11の一部は、増速機ハウジング22内に配置されている。また、増速機ハウジング22の貫通孔22bの内面と低速側シャフト11の他端部11bとの間には、増速機ハウジング22内に存在するオイルがモータ収容室S1に流れるのを規制するシール部材36が設けられている。シール部材36は、増速機ハウジング22の貫通孔22bの内面と低速側シャフト11の他端部11bとの間の領域において、張出部35に対して第2軸受34とは反対側に配置されている。
図1に示すように、低速側シャフト11は、ハウジング20に対する低速側シャフト11の位置決めを行う位置決め部37を備えている。位置決め部37は、第2軸受34に対して電動モータ13側に設けられており、低速側シャフト11に固定されている。位置決め部37は、低速側シャフト11の外周面から径方向外側に延びた平板リング状である。位置決め部37は、第2軸受34に対して低速側シャフト11の回転軸線方向から当接している。これにより、低速側シャフト11に対して一端部11aから他端部11bに向かう力が付与された場合には、第2軸受34と位置決め部37との当接によって、低速側シャフト11の位置ずれが規制される。
電動モータ13は、低速側シャフト11に固定されたロータ41と、ロータ41の外側に配置されるものであってモータハウジング21の内面に固定されたステータ42とを備えている。ロータ41の回転軸線とステータ42の中心軸線とは、低速側シャフト11の回転軸線と同一軸線上に配置されている。ロータ41とステータ42とは低速側シャフト11の径方向に対向している。
ステータ42は、円筒形状のステータコア43と、ステータコア43に捲回されたコイル44とを備えている。コイル44に電流が流れることによって、ロータ41と低速側シャフト11とが一体的に回転する。
プレート24は、例えば増速機ハウジング22と同一径の円板状である。プレート24と、軸線方向の一方が開口した有底筒状の増速機ハウジング22とは、当該増速機ハウジング22の開口端とプレート24の第1板面24aとが突き合わさった状態で組み付けられている。これにより、プレート24の第1板面24aと増速機ハウジング22の内面とによって、増速機14が収容された増速機室S2が形成されている。
図1に示すように、プレート24には、増速機14の一部を構成する高速側シャフト12が挿通可能なプレート貫通孔24bが形成されている。高速側シャフト12の一部は、プレート貫通孔24bを介してコンプレッサハウジング23内に配置されている。
なお、プレート貫通孔24bの内面と高速側シャフト12との間には、増速機ハウジング22内のオイルがコンプレッサハウジング23内に流出するのを規制するシール部材50が設けられている。
コンプレッサハウジング23は、軸線方向に貫通したコンプ貫通孔51を有する略筒状である。コンプレッサハウジング23の軸線方向の一端面23bがハウジング20の軸線方向の一端面20aを構成しており、コンプ貫通孔51における上記一端面23b側にある開口が吸入口23aとして機能する。
コンプレッサハウジング23とプレート24とは、コンプレッサハウジング23の軸線方向の一端面23bとは反対側の他端面23cと、プレート24における第1板面24aとは反対側の第2板面24cとが突き合わさった状態で、組み付けられている。この場合、コンプ貫通孔51の内面とプレート24の第2板面24cとによって、圧縮部15としてのインペラ52が収容されたインペラ室S3が形成されている。つまり、コンプ貫通孔51は、吸入口23aとして機能するとともに、インペラ室S3を区画するものとして機能する。吸入口23aとインペラ室S3とは連通している。
ここで、コンプ貫通孔51は、吸入口23aから軸線方向の途中位置までは一定の径であり、上記途中位置からプレート24の第2板面24cに向かうに従って徐々に拡径した略円錐台形状となっている。このため、コンプ貫通孔51の内面によって区画されるインペラ室S3は、略円錐台形状となっている。
インペラ52は、基端面52aから先端面52bに向かうに従って徐々に縮径した筒状である。インペラ52は、インペラ52の回転軸線方向に延び、且つ、高速側シャフト12が挿通可能な挿通孔52cを有している。インペラ52は、高速側シャフト12におけるコンプ貫通孔51内に突出している部分が挿通孔52cに挿通された状態で、高速側シャフト12と一体回転するように高速側シャフト12に取り付けられている。これにより、高速側シャフト12が回転することによってインペラ52が回転して、吸入口23aから吸入された流体が圧縮される。
また、遠心圧縮機10は、インペラ52によって圧縮された流体が流入するディフューザ流路53と、ディフューザ流路53を通った流体が流入する吐出室54とを備えている。ディフューザ流路53は、コンプレッサハウジング23におけるコンプ貫通孔51の第2板面24c側の開口端と連続し且つ当該第2板面24cと対向する面と、プレート24の第2板面24cとによって区画された流路である。ディフューザ流路53は、インペラ室S3よりも高速側シャフト12の径方向R外側に配置されており、インペラ52(及びインペラ室S3)を囲むように環状(詳細には円環状)に形成されている。吐出室54は、ディフューザ流路53よりも高速側シャフト12の径方向R外側に配置された環状である。インペラ室S3と吐出室54とはディフューザ流路53を介して連通している。インペラ52によって圧縮された流体は、ディフューザ流路53を通ることによって、更に圧縮されて吐出室54に流れ、当該吐出室54から吐出される。
次に、増速機14について説明する。
本実施形態の増速機14は、所謂トラクションドライブ式(摩擦ローラ式)である。図1に示すように、増速機14は、低速側シャフト11の他端部11bに連結されたリング部材60を備えている。リング部材60は、例えば金属等で構成されている。
リング部材60は、低速側シャフト11の他端部11bに連結された板状(詳細には円板状)のベース部61と、当該ベース部61(詳細にはベース部61の縁部)からプレート24に向けて起立したリング部62とを備えている。ベース部61及びリング部62は、低速側シャフト11の回転に伴って回転する。
リング部62は、高速側シャフト12の回転軸線方向Zから見て環状(詳細には円環状)に形成されており、内周面63及び外周面64を有している。リング部62は、ベース部61側の端部である基端部65と、基端部65とは反対側の先端部66とを有している。先端部66は、ベース部61側とは反対側の端部とも言える。
本実施形態では、リング部62の内周面63の径は、回転軸線方向Zに関わらず一定であり、当該径は、低速側シャフト11の他端部11bの径よりも長く設定されている。
なお、説明の便宜上、以降の説明において、リング部62における基端部65と同一の壁厚(厚さ)を有する部分を本体部67とし、本体部67と先端部66との間の部分であって本体部67及び先端部66の双方と連続する部分を連続部68とする。
本実施形態では、リング部材60は、ベース部61の回転軸線(リング部材60の回転軸線)と低速側シャフト11の回転軸線とが一致するように低速側シャフト11に連結されている。この場合、リング部62の回転軸線も低速側シャフト11の回転軸線と一致している。なお、リング部62の内径及び外径とは、低速側シャフト11の回転軸線を中心とする径である。
ちなみに、リング部材60と低速側シャフト11とが連結されている点に着目すれば、低速側シャフト11を位置決めしている位置決め部37は、リング部材60の位置決め部としても機能していると言える。すなわち、位置決め部37は、高速側シャフト12の回転軸線方向Zにおけるハウジング20に対するリング部材60(リング部62)の位置決めを行うものと言える。
高速側シャフト12の一部は、リング部62の内側に配置されている。そして、図2(a)及び図2(b)に示すように、増速機14は、高速側シャフト12とリング部62との間に設けられ、後述するリング部62の凸部69及び高速側シャフト12の外周面12aの双方と当接する複数のローラ71〜73を備えている。各ローラ71〜73は円柱状である。各ローラ71〜73の回転軸線方向は、高速側シャフト12の回転軸線方向Zと一致している。このため、高速側シャフト12の回転軸線方向Zは、各ローラ71〜73の回転軸線方向と言い換えることもできる。
複数のローラ71〜73は、高速側シャフト12の周方向に所定の間隔(例えば120度)ずつ隔てて並んで配置されている。なお、各ローラ71〜73は例えば金属で構成されている。詳細には、各ローラ71〜73は、高速側シャフト12及びリング部材60(リング部62)と同一金属、例えば鉄又は鉄の合金で構成されている。高速側シャフト12、リング部62及び各ローラ71〜73にはオイルが供給される。
図1及び図2に示すように、増速機14は、プレート24と協働して各ローラ71〜73を回転可能に支持する支持部材80を備えている。支持部材80はリング部62内に配置されている。支持部材80は、リング部62よりも一回り小さく形成された円板状の支持ベース部81と、当該支持ベース部81から起立した柱状の3つの支持部82〜84とを備えている。支持ベース部81は、リング部材60のベース部61と板面同士が対向する位置に配置されている。支持ベース部81は、プレート24に対して回転軸線方向Zに対向配置されている。3つの支持部82〜84は、支持ベース部81におけるプレート24の第1板面24aと対向する対向板面81aからプレート24に向けて起立しており、リング部62の内周面63と、隣り合う2つのローラの外周面とによって区画された3つの空間を埋めるように形成されている。
図2(a)に示すように、第1支持部82は、リング部62の内周面63、第1ローラ71の外周面71a及び第2ローラ72の外周面72aに対して一定の隙間を形成した状態で、リング部62の内周面63と第1ローラ71の外周面71aと第2ローラ72の外周面72aとによって区画された空間を埋めている。
第2支持部83は、リング部62の内周面63、第2ローラ72の外周面72a及び第3ローラ73の外周面73aに対して一定の隙間を形成した状態で、リング部62の内周面63と第2ローラ72の外周面72aと第3ローラ73の外周面73aとによって区画された空間を埋めている。
第3支持部84は、リング部62の内周面63、第1ローラ71の外周面71a及び第3ローラ73の外周面73aに対して一定の隙間を形成した状態で、リング部62の内周面63と第1ローラ71の外周面71aと第3ローラ73の外周面73aとによって区画された空間を埋めている。
図1及び図2(a)に示すように、各支持部82〜84には、固定具としてのボルト91が螺合可能なネジ孔92が形成されている。ネジ孔92に対応させて、プレート24の第1板面24aには、ネジ孔92と連通するネジ穴93が形成されている。各支持部82〜84は、ネジ孔92とネジ穴93とが連通し、且つ、当該各支持部82〜84の先端面が第1板面24aに突き合わさった位置に配置されており、その状態でネジ孔92とネジ穴93とに跨るようにボルト91が螺合されることによってプレート24に固定される。
第1ローラ71、第2ローラ72及び第3ローラ73は、プレート24と支持ベース部81との間に配置されており、プレート24に固定された第1ローラ軸受94と、支持ベース部81に固定された第2ローラ軸受95とによってそれぞれ回転可能に支持されている。
詳細には、図1に示すように、第1ローラ71における回転軸線方向Zの両端面には、該両端面から突出した突起101,102が形成されている。突起101,102は、上記両端面の中央に設けられた円柱状である。
プレート24の第1板面24aには、当該第1板面24aから凹んだプレート凹部103が形成されている。プレート凹部103におけるプレート24の径方向の長さは、第1突起101の径よりも長く且つ第1ローラ71の径よりも短くなっている。そして、プレート凹部103の周縁部には、第1板面24aから起立した円筒部104が形成されている。円筒部104の内径は、プレート凹部103の径と同一である。第1突起101は、円筒部104とプレート凹部103とによって形成された空間内に配置されている。第1ローラ軸受94は、第1突起101と、円筒部104及びプレート凹部103の内壁との間に配置されており、第1突起101を回転可能に支持した状態でプレート24に取り付けられている。
また、支持ベース部81の対向板面81aには、当該対向板面81aから凹んだ支持凹部105が設けられている。支持凹部105における回転軸線方向Zと交わる方向の長さは、第2突起102の径よりも長く且つ第1ローラ71の径よりも短くなっている。第2突起102は、支持凹部105内に収容されている。そして、第2ローラ軸受95は、第2突起102と支持凹部105の側壁との間に配置されており、第2突起102を回転可能に支持した状態で支持部材80に取り付けられている。
なお、第2ローラ72及び第3ローラ73についても、第1ローラ71と同様な構成によって、回転可能に支持されている。
ここで、図2(a)に示すように、各ローラ71〜73の径(各ローラ71〜73における回転軸線方向Zと交わる方向の長さ)は高速側シャフト12の径よりも長く設定されている。各ローラ71〜73の径は、リング部62内に各ローラ71〜73が配置可能となるように、リング部62の内周面63の半径より短く設定されている。
ちなみに、図2(a)に示すように、第1ローラ71の径と、第2ローラ72及び第3ローラ73の径とは異なっており、詳細には第1ローラ71の径が、第2ローラ72及び第3ローラ73の径よりも長く設定されている。このため、各ローラ71〜73によって押し付けられて支持された高速側シャフト12と、リング部62(換言すれば低速側シャフト11)とは偏心している。詳細には、高速側シャフト12の回転軸線とリング部62の回転軸線とは、ずれている。
図1に示すように、高速側シャフト12の外周面12aには、当該外周面12aから高速側シャフト12の径方向R外側に突出した一対のフランジ部96が設けられている。一対のフランジ部96は、回転軸線方向Zに離間して対向配置されている。複数のローラ71〜73は、一対のフランジ部96によって回転軸線方向Zから挟まれている。これにより、回転軸線方向Zにおける高速側シャフト12と複数のローラ71〜73との位置ずれが抑制されている。例えばインペラ52の回転によって回転軸線方向Zのスラスト力が発生した場合、第1ローラ71における回転軸線方向Zのインペラ52側の端面と、一対のフランジ部96のうちインペラ52側に配置されているフランジ部96とが当接し、それ以上の移動が規制される。
一対のフランジ部96の回転軸線方向Zの離間距離は、各ローラ71〜73の回転軸線方向Zの長さよりも若干広く設定されている。このため、フランジ部96とローラ71〜73の回転軸線方向Zの端面との間には、オイルが入り込み可能な隙間が形成されている。
支持ベース部81の中央部には、フランジ部96よりも一回り大きい貫通孔81bが形成されており、当該貫通孔81b内に、ベース部61側にあるフランジ部96が配置されている。また、インペラ52側に配置されているフランジ部96は、プレート貫通孔24b内に配置されている。
以下、図1〜図3を用いて、本件の要部であるリング部62について説明する。なお、図3においては、図示の都合上、第1ローラ71とリング部62との当接態様についてのみ示すが、各ローラ71〜73とリング部62との当接態様は、基本的に同一である。また、以降の説明においては、特に断りがない限り、両シャフト11,12及び各ローラ71〜73が回転していない静止時を前提とする。
図1〜図3に示すように、リング部62の内周面63には、当該内周面63から高速側シャフト12の径方向R内側に向けて突出した凸部69が設けられている。
図2(a)に示すように、凸部69は、リング部62の周方向に延びた環状(詳細には円環状)である。図3に示すように、凸部69は、リング部62の周方向と直交する方向に切断した場合の断面が半円状となっている。凸部69と各ローラ71〜73の外周面71a〜73aとが当接している。
なお、凸部69と各ローラ71〜73の外周面71a〜73aとが当接している状況においては、リング部62の内周面63と各ローラ71〜73の外周面71a〜73aとは離間している。
図3に示すように、本実施形態においては、リング部62の先端部66は、本体部67よりも壁厚が厚く形成されている。なお、先端部66の壁厚は、回転軸線方向Zの位置によらず一定である。同様に、本体部67の壁厚は、回転軸線方向Zの位置によらず一定である。
リング部62における先端部66と本体部67とに連続する連続部68の壁厚は、回転軸線方向Zの位置に応じて変動するものであり、詳細にはリング部62の基端側から先端側に向かうに従って徐々に厚くなっている。連続部68も、本体部67よりも壁厚が厚い部分である。本実施形態では、先端部66及び連続部68が「厚肉部」に相当し、本体部67及び基端部65が「薄肉部」に相当する。
上記のようにリング部62の壁厚が回転軸線方向Zに応じて異なることに対応させて、リング部62の外周面64は段差状となっている。一方、リング部62の内周面63は、壁厚の相違に起因した段差が形成されていない平坦面となっている。
図3に示すように、リング部62の内周面63は、先端部66に対応し且つ各ローラ71〜73の外周面71a〜73aにおける高速側シャフト12の回転軸線方向Zの中央部及びその周辺と高速側シャフト12の径方向Rに対向している先端内周面63aを有している。リング部62の内周面63は、本体部67に対応する本体内周面63bと、連続部68に対応する中間内周面63cとを有している。各内周面63a,63b,63cは面一となっている。なお、本実施形態では、先端内周面63a及び中間内周面63cが「前記リング部の内周面のうち前記厚肉部に対応する部分」に相当する。
リング部62の外周面64は、先端部66に対応する先端外周面64aと、本体部67に対応する本体外周面64bと、連続部68に対応する段差面64cと、を有している。
本体外周面64bは、高速側シャフト12の回転軸線方向Zに沿った面である。すなわち、本体外周面64bと回転軸線方向Zとは平行であり、両者の傾斜角度は「0」又はそれに近い。本体外周面64bの径は、回転軸線方向Zに関わらず一定である。
先端外周面64aは、本体外周面64bよりも径が大きい円周面であり、本体外周面64bよりも高速側シャフト12の径方向R外側に配置されている。先端外周面64aは、高速側シャフト12の回転軸線方向Zに沿って延設している。先端外周面64aの径は、回転軸線方向Zに関わらず一定である。
段差面64cは、径が異なる先端外周面64aと本体外周面64bとを繋いでいる面である。段差面64cは、リング部62の基端側から先端側に向かうに従って徐々に径が大きくなる逆テーパ状である。
かかる構成において、凸部69は、相対的に壁厚が本体部67よりも厚い先端部66に設けられている。詳細には、凸部69は、各ローラ71〜73の外周面71a〜73aにおける高速側シャフト12の回転軸線方向Zの中央部と高速側シャフト12の径方向Rに対向配置された先端内周面63aに設けられている。
本実施形態では、凸部69は、各ローラ71〜73の外周面71a〜73aにおける高速側シャフト12の回転軸線方向Zの中央部と当接している。但し、これに限られず、回転軸線方向Zにおける各ローラ71〜73の外周面71a〜73aに対する凸部69の当接位置については任意である。
また、図1に示すように、各ローラ71〜73の一部は、リング部62よりもプレート24側にはみ出している。つまり、各ローラ71〜73の外周面71a〜73aの一部は、リング部62の内周面63と高速側シャフト12の径方向Rに対向しておらずリング部62から露出している。但し、上記構成に限られず、リング部は、各ローラ71〜73の外周面71a〜73aの全体と対向する構成でもよい。
図2(a)に示すように、各ローラ71〜73とリング部材60と高速側シャフト12とは、リング部62によって締め付けられた状態で、ユニット化されており、高速側シャフト12は、3つのローラ71〜73によって回転可能に支持されている。この場合、ローラ71〜73の外周面71a〜73aと凸部69との当接箇所であるリング側当接箇所Pa1〜Pa3には締め付けに起因して凸部69から各ローラ71〜73への押圧力(付勢力)F1が付与される。同様に、図2(b)に示すように、ローラ71〜73の外周面71a〜73aと高速側シャフト12の外周面12aとの当接箇所であるシャフト側当接箇所Pb1〜Pb3にも押圧力F2が付与されている。
ここで、図2(a)に示すように、各リング側当接箇所Pa1〜Pa3は、各シャフト側当接箇所Pb1〜Pb3よりも、高速側シャフト12の周方向に延びている。
一方、図1に示すように、各シャフト側当接箇所Pb1〜Pb3は、回転軸線方向Zに延びている。これに対して、凸部69が形成されていることによって、各リング側当接箇所Pa1〜Pa3の回転軸線方向Zの長さは、各シャフト側当接箇所Pb1〜Pb3の回転軸線方向Zの長さよりも短くなっている。
なお、各リング側当接箇所Pa1〜Pa3の面積は、リング部の内周面が高速側シャフト12の回転軸線方向Zに亘って同一径となるように形成されている場合と比較して、各シャフト側当接箇所Pb1〜Pb3の面積に近づいていれば、各シャフト側当接箇所Pb1〜Pb3の面積よりも大きくてもよいし小さくてもよい。また、各リング側当接箇所Pa1〜Pa3の面積と各シャフト側当接箇所Pb1〜Pb3の面積とは同一であってもよい。
かかる構成によれば、両当接箇所Pa1〜Pa3,Pb1〜Pb3にオイルが十分に供給されている状況において、低速側シャフト11が回転することによってリング部62が回転すると、リング側当接箇所Pa1〜Pa3に対応する部分にてオイル膜(弾性流体潤滑膜(EHL))が形成される。リング側当接箇所Pa1〜Pa3に対応する部分とは、凸部69と各ローラ71〜73の外周面71a〜73aとの間である。この場合、凸部69と各ローラ71〜73の外周面71a〜73aとは、オイル膜を介して対向することとなる。そして、リング部62の回転力がオイル膜を介してローラ71〜73に伝達され、ローラ71〜73が同一回転方向に回転する。
同様に、ローラ71〜73が回転すると、シャフト側当接箇所Pb1〜Pb3に対応する部分、詳細には高速側シャフト12の外周面12aと各ローラ71〜73の外周面71a〜73aとの間にもオイル膜が形成される。換言すれば、高速側シャフト12の外周面12aとローラ71〜73の外周面71a〜73aとはオイル膜を介して対向する。そして、ローラ71〜73の回転力がオイル膜を介して、高速側シャフト12に伝達され、その結果高速側シャフト12が回転することとなる。この場合、ベース部61及びリング部62は、低速側シャフト11と同一速度で回転し、各ローラ71〜73は低速側シャフト11よりも高速で回転する。更に、各ローラ71〜73よりも径が短い高速側シャフト12は、各ローラ71〜73よりも高速で回転する。
以上のことから、増速機14によって、低速側シャフト11から高速側シャフト12に動力が伝達されるとともに、高速側シャフト12が低速側シャフト11よりも高速で回転する。
本実施形態では、遠心圧縮機10は、当該増速機ハウジング22内にオイルが循環するように構成されている。詳細には、図1に示すように、増速機ハウジング22の上部には、オイルが流入する流入口111が形成されており、増速機ハウジング22の下部には、オイルが排出される排出口112が形成されている。流入口111から流入したオイルは、増速機14、詳細にはリング部62内に流れ込み、各当接箇所Pa1〜Pa3,Pb1〜Pb3に供給される。その後、オイルは、排出口112から排出される。すなわち、増速機14は、オイルが供給されるように構成されている。
以上詳述した本実施形態によれば以下の作用効果を奏する。なお、以下においては、説明の便宜上、各ローラ71〜73のうち第1ローラ71とリング部62との関係について述べる。但し、他のローラ72,73についても同様の作用効果を奏する。
(1)増速機14は、低速側シャフト11の回転に伴って回転する環状のリング部62と、リング部62の内側に配置された高速側シャフト12と、リング部62と高速側シャフト12との間に設けられた第1ローラ71とを備えている。
増速機14は、リング部62の内周面63に設けられ、当該内周面63から高速側シャフト12の径方向R内側に向けて突出した凸部69を備えている。そして、第1ローラ71は、静止時において、凸部69及び高速側シャフト12の外周面12aの双方に当接している外周面71aを有している。
かかる構成によれば、凸部69と第1ローラ71の外周面71aとが当接するため、リング部の内周面が高速側シャフト12の回転軸線方向Zに亘って同一径となるように形成されている場合と比較して、第1リング側当接箇所Pa1の面積を小さくすることができる。これにより、凸部69と第1ローラ71との当接箇所である第1リング側当接箇所Pa1における圧力を大きくすることができる。よって、回転時において第1リング側当接箇所Pa1に対応する部分にオイル膜を形成させることを、比較的小さい締め付けで実現できる。
また、本実施形態によれば、両当接箇所Pa1,Pb1において適切な圧力を発生させることができる。
詳述すると、高速側シャフト12と第1ローラ71とは、外周面12a,71a同士が当接する関係上、第1シャフト側当接箇所Pb1の面積は小さくなり易い。詳細には、第1シャフト側当接箇所Pb1付近においては、第1ローラ71の外周面71aと高速側シャフト12の外周面12aとは、凸となる向きが逆となっている。
一方、第1ローラ71の外周面71aとリング部62の内周面63とが当接する構成においては、両者の当接箇所である第1リング側当接箇所Pa1付近においては、第1ローラ71の外周面71aとリング部62の内周面63とは、同一方向に凸となる。このため、第1リング側当接箇所Pa1の面積は、第1シャフト側当接箇所Pb1の面積よりも広くなり易い。すなわち、第1リング側当接箇所Pa1における圧力は、第1シャフト側当接箇所Pb1における圧力よりも小さくなり易い。第1リング側当接箇所Pa1における圧力が小さいと、回転時に固化されたオイル膜が十分に形成されず、リング部62から第1ローラ71への動力伝達が好適に行われない場合が生じ得る。
これに対して、例えばリング部62による締め付けを強くすることも考えられる。しかしながら、この場合、第1シャフト側当接箇所Pb1における圧力も大きくなるため、第1シャフト側当接箇所Pb1における動力損失が大きくなったり、高速側シャフト12に過度な負担が付与されたりする。
この点、本実施形態では、凸部69によって第1リング側当接箇所Pa1の面積を小さくできる一方、第1シャフト側当接箇所Pb1の面積は凸部69の影響を受けない。これにより、高速側シャフト12に過度な負担を付与することなく、第1リング側当接箇所Pa1における圧力を大きくすることができる。よって、回転時において両当接箇所Pa1,Pb1に対応する部分にオイル膜を好適に形成することができ、リング部62から高速側シャフト12への動力伝達を好適に行うことができる。
(2)凸部69は、リング部62の周方向に延びた環状である。これにより、リング部62の回転位置に関わらず、第1ローラ71に対して安定した押圧力F1を付与することができ、それを通じて第1リング側当接箇所Pa1において安定した圧力を維持することができる。
(3)凸部69は、リング部62の周方向と直交する方向に切断した場合の断面が半円状となっている。かかる構成によれば、第1リング側当接箇所Pa1の面積をより小さくすることができるため、第1リング側当接箇所Pa1における圧力をより大きくすることができる。
(4)リング部62は、本体部67と、当該本体部67よりも壁厚が厚い先端部66と、を備えている。凸部69は、リング部62の内周面63のうち先端部66に対応する先端内周面63aに設けられている。これにより、必要な押圧力F1,F2を確保しつつ、リング部62の軽量化を図ることができる。
(5)凸部69は、第1ローラ71の外周面71aにおける高速側シャフト12の回転軸線方向Zの中央部に当接している。これにより、第1シャフト側当接箇所Pb1における圧力が、回転軸線方向Zの一端部側よりも他端部側の方が大きくなる等といった圧力の偏りが生じる事態を抑制できる。
また、第1ローラ71を回転可能に支持する両ローラ軸受94,95に付与される負担を均等に近づけることができ、両ローラ軸受94,95のいずれか一方が早期に劣化するという事態を抑制できる。
(6)遠心圧縮機10は、低速側シャフト11を回転させる電動モータ13と、高速側シャフト12に取り付けられたインペラ52と、増速機14とを備えている。これにより、電動モータ13の駆動回転数よりも高い回転数でインペラ52を回転させることができる。そして、リング部62から高速側シャフト12への動力伝達を好適に行うことを通じて、遠心圧縮機10を好適に運転させることができる。
(第2実施形態)
本実施形態では、凸部の形状が第1実施形態と異なっている。その異なる点について以下に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、リング部62と第1ローラ71との関係について説明するが、他のローラ72,73についても同様である。また、図4においては、図示の都合上、凸部120の突出寸法を、実際よりも大きく示す。
図4に示すように、リング部62の周方向に延びた環状の凸部120は、先端面121と、一対の側面122,123とを有している。なお、リング部62の周方向は、高速側シャフト12の周方向とも言える。
先端面121は、リング部62の内周面63(本実施形態では先端内周面63a)よりも高速側シャフト12の径方向R内側に配置されている。先端面121は、リング部62の周方向に延びるとともに高速側シャフト12の回転軸線方向Zに延びている。先端面121が第1ローラ71の外周面71aに当接している。このため、本実施形態では、先端面121と第1ローラ71の外周面71aとの当接箇所が第1リング側当接箇所Pa11である。
本実施形態の第1リング側当接箇所Pa11は、リング部62の周方向に延びるとともに高速側シャフト12の回転軸線方向Zに延びている。第1リング側当接箇所Pa11が高速側シャフト12の回転軸線方向Zに延びている分だけ、第1リング側当接箇所Pa11の面積は、第1実施形態の第1リング側当接箇所Pa1よりも大きい。
なお、高速側シャフト12の回転軸線方向Zを凸部120の幅方向とする。すなわち、先端面121は、リング部62の回転軸線(換言すれば低速側シャフト11の回転軸線)を中心とし、高速側シャフト12の回転軸線方向Zに幅を有する円周面である。
先端面121は、平坦性を有している。例えば、先端面121の表面粗さは、第1リング側当接箇所Pa11に対応する部分にて形成されるオイル膜の厚さよりも小さくなるように設定されている。
ここで、先端面121の幅Zxは、例えばリング部62が第1ローラ71を押圧する押圧力(荷重)F1と、リング部62の縦弾性係数及びポアソン比である第1縦弾性係数E1及び第1ポアソン比ν1と、第1ローラ71の縦弾性係数及びポアソン比である第2縦弾性係数E2及び第2ポアソン比ν2とに基づいて設定されている。詳細には、凸部120の形状を半円と仮定した場合の半径を「r1」とし、第1ローラ71の半径を「r2」とすると、先端面121の幅Zxは、ヘルツの接触理論に基づく式から算出される接触領域形状に即した値としている。
第1縦弾性係数E1及び第1ポアソン比ν1は、リング部62の材質の固有値であり、第2縦弾性係数E2及び第2ポアソン比ν2は、第1ローラ71の材質の固有値である。また、押圧力F1は、リング部62の締め付け具合によって決まるパラメータである。これらのことを考慮すると、本実施形態の先端面121の幅Zxは、リング部62の締め付け具合と、リング部62及び第1ローラ71の材質と、両半径r1,半径r2とに基づいて設定されているとも言える。
なお、本実施形態では、リング部62と第1ローラ71とは同一材質で構成されている。このため、両縦弾性係数E1,E2は同一値であり、両ポアソン比ν1,ν2は同一値である。但し、これに限られず、リング部62と第1ローラ71とが別材質で構成されていてもよい。
図4に示すように、一対の側面122,123は、先端面121の幅方向の両端121a,121bとリング部62の内周面63とに連続している。詳細には、第1側面122は、先端面121の第1端121aとリング部62の内周面63とに連続しており、第2側面123は、先端面121の第2端121bとリング部62の内周面63とに連続している。
一対の側面122,123は、リング部62の内周面63から先端面121に向かうに従って凸部120の幅(高速側シャフト12の回転軸線方向Zの長さ)が徐々に小さくなるように湾曲している。すなわち、本実施形態の凸部120は、リング部62の内周面63よりも高速側シャフト12の径方向R内側に配置された先端面121と湾曲した一対の側面122,123とを有するクラウニング形状となっている。
一対の側面122,123は、高速側シャフト12の径方向R内側に向けて凸となっている。詳細には、一対の側面122,123は、リング部62の周方向から見て対数曲線状に湾曲している。このため、リング部62の周方向から見た場合、リング部62の内周面63から先端面121に向かうに従って、一対の側面122,123の接線が徐々に高速側シャフト12の回転軸線方向Zに近づくようになっている。したがって、先端面121の両端121a,121bと側面122,123との境界部分における角度は緩やかとなっている。換言すれば、先端面121の両端121a,121bと側面122,123とのなす角度は、90度よりも大きくなっている。
以上詳述した本実施形態によれば、(1)、(2)、(4)〜(6)の効果に加えて、以下の作用効果を奏する。なお、以下においては、説明の便宜上、各ローラ71〜73のうち第1ローラ71とリング部62との関係について述べる。但し、他のローラ72,73についても同様の作用効果を奏する。
(7)リング部62の内周面63から高速側シャフト12の径方向R内側に向けて突出した凸部120は、リング部62の周方向に延びるとともに高速側シャフト12の回転軸線方向Zに延びた先端面121を有しており、当該先端面121が第1ローラ71の外周面71aに当接している。かかる構成によれば、先端面121が高速側シャフト12の回転軸線方向Zに延びているため、第1実施形態の第1リング側当接箇所Pa1と比較して、第1リング側当接箇所Pa11の面積が大きくなっている。これにより、第1リング側当接箇所Pa11にて生じる圧力が過度に高くなることを抑制できる。
詳述すると、第1リング側当接箇所Pa11の面積が小さくなるほど、第1リング側当接箇所Pa11にて生じる圧力は高くなり易い。当該圧力が過度に高くなると、リング部62又は第1ローラ71が変形したり、第1リング側当接箇所Pa11における摩擦熱によってリング部62又は第1ローラ71が焼き付いてしまったりする。
これに対して、本実施形態では、高速側シャフト12の回転軸線方向Zを幅方向として延びた先端面121が第1ローラ71の外周面71aに当接しているため、第1リング側当接箇所Pa11の面積が大きくなっている。換言すれば、第1実施形態では、凸部69と第1ローラ71の外周面71aとは線接触である一方、本実施形態では、凸部120と第1ローラ71の外周面71aとは面接触となっている。これにより、圧力が過度に高くなることを抑制できる。
また、第1リング側当接箇所Pa11が高速側シャフト12の回転軸線方向Zに延びているため、リング部62が高速側シャフト12の回転軸線方向Zに対して傾きにくくなっている。これにより、リング部62の姿勢の安定化を図ることができ、リング部62が傾くことによって生じる振動を抑制できる。
(8)先端面121は平坦面である。これにより、凸部120の加工の容易化を図ることができる。
詳述すると、凸部と第1ローラ71の外周面71aとの間に形成されるオイル膜(EHL)を介して動力を伝達する増速機14では、凸部の表面と第1ローラ71の外周面71aとにおいて、小さい表面粗さが求められる。この場合、第1実施形態の凸部69のような円弧状の表面よりも、本実施形態のような高速側シャフト12の回転軸線方向Zに延びた平坦な先端面121の方が、小さい表面粗さを容易に実現できる。したがって、凸部120の加工の容易化を図ることができる。
(9)凸部120は、先端面121の幅方向の両端121a,121bとリング部62の内周面63とに連続する一対の側面122,123を有している。一対の側面122,123は、リング部62の内周面63から先端面121に向かうに従って凸部120の幅が小さくなり、且つ、高速側シャフト12の径方向R内側に向けて凸となるように湾曲している。
かかる構成によれば、先端面121の両端121a,121bと側面122,123とが緩やかに連続する。換言すれば、先端面121の両端121a,121bと側面122,123との境界部分における角度が緩やかとなる。これにより、先端面121の両端121a,121bに圧力が集中することを抑制できる。したがって、先端面121の両端121a,121bに圧力が集中することによって生じ得る不都合、詳細には両端121a,121bでシールされてしまい、オイルが先端面121の幅方向の中央側に向けて流れ込みにくくなることを抑制できる。
(10)一対の側面122,123は、リング部62の周方向から見て対数曲線状に湾曲している。かかる構成によれば、先端面121の両端121a,121bと側面122,123とが、より緩やかに連続し、先端面121の両端121a,121bと側面122,123との境界部分における角度が緩やかとなる。これにより、先端面121の両端121a,121bへの圧力集中を、より好適に抑制できる。
(11)先端面121の幅Zxは、リング部62が第1ローラ71を押圧する押圧力F1と、リング部62及び第1ローラ71の縦弾性係数E1,E2及びポアソン比ν1,ν2と、両半径r1,半径r2と、に基づいて設定されている。かかる構成によれば、第1リング側当接箇所Pa11において適切な圧力を確保することができる。
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 凸部の形状は、第1実施形態及び第2実施形態のものに限られない。例えば、図5に示すように、凸部130は、リング部62の周方向と直交する方向に切断した場合の断面が矩形状であってもよい。この場合、凸部130の先端面131が、各ローラ71〜73の外周面71a〜73aと当接しているとよい。先端面131は、リング部62の周方向及び高速側シャフト12の回転軸線方向Zに延びている。
但し、当接箇所の面積を小さくできる点に着目すれば、リング部62の周方向と直交する方向に切断した場合の断面形状は、矩形状よりも半円状である方が好ましいし、先端面の幅方向の両端における圧力集中を抑制する点に着目すれば、第2実施形態の凸部120のようにクラウニング形状であるとよい。
○ 第1実施形態では、凸部69は、リング部62の周方向に延びた環状であったが、これに限られない。例えば、凸部は半球状であってもよい。この場合、凸部は周方向に複数並んで設けられているとよい。かかる構成によれば、凸同士の当接を実現することができるため、リング側当接箇所Pa1〜Pa3の面積の更なる低減を図ることができる。同様に、第2実施形態の凸部120も、完全に閉じた環状ではなく、リング部62の周方向に離間して複数配列されている構成でもよい。
○ リング部62の壁厚は一定でもよい。つまり、厚肉部及び薄肉部は必須ではない。
○ 段差面64cは、逆テーパ面に限られず、任意であり、例えば回転軸線方向Zと直交する面でもよい。
○ 凸部69,120の設置位置については任意である。例えば、中間内周面63cに凸部69,120を設けてもよいし、本体内周面63bに凸部69,120を設けてもよい。また、リング部62の内周面63のうち先端側よりも基端側に凸部69,120を設けてもよい。
○ ベース部61と低速側シャフト11とが一体形成されており、リング部62がベース部61に取り付けられている構成であってもよい。また、ベース部61、リング部62、低速側シャフト11がそれぞれ別体であって、互いに連結されている構成でもよい。
○ オイルを供給するための具体的な構成は任意である。例えば増速機ハウジング22内にオイルを循環させるオイルポンプが設けられていてもよい。
○ ローラ71〜73の数は3つに限られず、任意である。
○ 各ローラ71〜73のうち少なくとも1つのローラが、低速側シャフト11のトルクに応じて可動する構成でもよい。
○ 各ローラ71〜73の径は同一に設定されてもよい。この場合、高速側シャフト12とリング部材60(低速側シャフト11)とは同一軸線上に配置されてもよい。
○ 第2実施形態では、第1ローラ71の半径r2に対応させて、先端面121の幅Zxが設定されていたが、これに限られず、第2ローラ72の半径又は第3ローラ73の半径に対応させて、先端面121の幅Zxが設定されていてもよい。つまり、各ローラ71〜73の半径が異なる場合には、先端面121の幅Zxを規定するパラメータ(r2)として、各ローラ71〜73の半径の最小値を選択してもよいし、各ローラ71〜73の半径の最大値を選択してもよい。
○ 第2実施形態において、一対の側面122,123は、対数曲線状ではなく円弧状であってもよい。また、一対の側面122,123は、高速側シャフト12の径方向R外側に向けて凸となっていてもよいし、線形のテーパ状であってもよい。
○ 先端面121の幅Zxは任意に設定されていてもよい。
○ 圧縮部15の具体的な構成は、インペラ52を有する構成に限られず任意であり、例えばベーン式やスクロール式などであってもよい。
○ 増速機14の搭載対象は、遠心圧縮機10に限られず、任意である。例えば、ポンプなど流体の圧縮を行わない流体機械に搭載されてもよい。
○ 増速機14及び遠心圧縮機10の搭載対象は、車両に限られず任意である。
○ 遠心圧縮機10の適用対象及び圧縮対象の流体は任意である。例えば、遠心圧縮機10は空調装置に用いられていてもよく、圧縮対象の流体は冷媒であってもよい。
○ 上記各実施形態及び別例を適宜組み合わせてもよい。