本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る被加工物の加工方法を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係る被加工物の加工方法の加工対象の被加工物1の斜視図である。被加工物1は、実施形態では、シリコン、サファイア、ガリウムヒ素などを基板2とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハである。被加工物1は、図1に示すように、交差(実施形態では、直交)する複数の分割予定ライン3で区画された表面4の各領域にそれぞれデバイス5が形成されている。被加工物1及びデバイス5は、表面4とは反対側の裏面7が平坦に形成されている。被加工物1は、各分割予定ライン3に沿って分割されて、個々のデバイス5に分割される。
次に、実施形態1に係る被加工物の加工方法を説明する。図2は、実施形態1に係る被加工物の加工方法を示すフローチャートである。
被加工物の加工方法は、図2に示すように、保護部材形成ステップST11と、加工ステップST12と、一部剥離ステップST13と、液体供給ステップST14と、全体剥離ステップST15と、を備える。
図3は、図2の保護部材形成ステップST11の一状態を示す断面図である。図4は、図2の保護部材形成ステップST11の図3後の一状態を示す断面図である。保護部材形成ステップST11は、図3及び図4に示すように、被加工物1の一方の面である表面4に熱可塑性樹脂の保護部材103を形成するステップである。
保護部材形成ステップST11では、具体的には、まず、図3に示すように、チャックテーブル10の保持面11で、被加工物1の他方の面である裏面7側を保持する。ここで、チャックテーブル10は、保持面11が設けられかつポーラスセラミック等から形成された保持部12を備え、図示しない真空吸引源と接続され、真空吸引源により吸引されることで、保持面11で被加工物1を吸引、保持する。
保護部材形成ステップST11では、次に、チャックテーブル10に保持された被加工物1において上方に露出した表面4上に、熱可塑性樹脂の保護シート100を載置する(載置ステップ)。これにより、保護部材形成ステップST11では、図3に示すように、チャックテーブル10の保持面11上の被加工物1と熱可塑性樹脂の保護シート100とがこの順で積層された状態を形成する。
ここで、保護部材形成ステップST11で使用する熱可塑性樹脂の保護シート100は、本実施形態では、両面が平坦であり、径方向の厚さが均質であり、糊層を備えない。
熱可塑性樹脂の保護シート100を構成する熱可塑性樹脂は、本実施形態では、軟化点より低温の硬化状態では、流動性を有さない剛体であり、実質的に粘着剤のような粘着性を有さないため、被加工物1における表面4等と粘着することが抑制される。また、熱可塑性樹脂の保護シート100を構成する熱可塑性樹脂は、軟化点より高温の軟化状態では、流動性を有するものの、実質的に粘着剤のような粘着性は概ね見られないため、被加工物1における表面4等と粘着することが低減される。
熱可塑性樹脂の保護シート100を構成する熱可塑性樹脂は、具体的には、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ビニル系樹脂、ポリアセタール、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチル-1-ペンテン),ポリ(1-ブテン)等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン-6,ナイロン-66,ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルイミド、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレン、エーテルポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂、エチレン-不飽和カルボン酸共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、アイオノマー、エチレン-酢酸ビニル-無水マレイン酸三元共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化樹脂、並びに、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
熱可塑性樹脂の保護シート100を構成する熱可塑性樹脂に使用される上記のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体を構成する不飽和カルボン酸は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸、及び、無水イタコン酸等が例示される。ここで、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、エチレンと不飽和カルボン酸の2元共重合体のみならず、更に他の単量体が共重合された多元共重合体を包含するものである。エチレン・不飽和カルボン酸共重合体に共重合されていてもよい上記他の単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルのような不飽和カルボン酸エステルなどが例示される。
熱可塑性樹脂の保護シート100を構成する熱可塑性樹脂の軟化点は、本実施形態では、0℃以上300℃以下の範囲内の温度である。熱可塑性樹脂の保護シート100を構成する熱可塑性樹脂は、上で例示した化合物群が使用されるので、軟化点が0℃以上300℃以下の範囲内の温度となる。熱可塑性樹脂の保護シート100を構成する熱可塑性樹脂は、上で例示した異なる種類の化合物を混ぜることで、軟化点を調整することができ、例えば、軟化点をドライ研磨加工中の被加工物1の温度である40℃~100℃程度よりも高い温度に調整することで、ドライ研磨加工中に軟化状態となることを防止することができる。
熱可塑性樹脂の保護シート100を構成する熱可塑性樹脂は、例えば、試験法JIS K 7210-1もしくは7210-2による条件を温度が190°Cかつ荷重が21.18Nでのメルトマスフローレート(Melt mass-Flow Rate、MFR)が、0.01g/10min以上500g/10min以下、好ましくは0.1g/10min以上100g/10min以下、より好ましくは0.3g/10min以上50g/10min以下であるものが使用される。すなわち、熱可塑性樹脂の保護シート100を構成する熱可塑性樹脂は、190℃以上の高温化で軟化状態になっている場合でも、流動性は小さく、実質的に粘着剤のような粘着性が概ね見られない固い材料のものが例示される。
保護部材形成ステップST11では、次に、図4に示すように、押圧部材21において平坦な面状に形成されチャックテーブル10の保持面11と対向して設けられた押圧面22で熱可塑性樹脂の保護シート100を被加工物1の表面4に向けて押圧しつつ、押圧部材21の内部に備えられた熱源23で押圧面22側から熱可塑性樹脂の保護シート100を加熱して軟化する(熱圧着ステップ)。これにより、保護部材形成ステップST11では、被加工物1の表面4上に載置した熱可塑性樹脂の保護シート100を、被加工物1の表面4に熱圧着して実質的に貼着することで、熱可塑性樹脂の保護シート100に基づく熱可塑性樹脂の保護部材103を被加工物1の表面4に形成する。なお、チャックテーブル10にも熱源が備えられていると保護シート100が軟化しやすくより効率的に保護シート100を被加工物1に密着させることができる。
保護部材形成ステップST11では、押圧面22に離型材料が塗布された押圧部材21を使用することが好ましく、この場合、押圧部材21の押圧面22と軟化した熱可塑性樹脂の保護シート100との間の貼着を抑制することができる。押圧面22に塗布される離型材料としては、フッ素樹脂が好適なものとして例示される。他にも、離型シートとして機能する平坦な樹脂シートを押圧面22に配置しておき、後述する加工ステップST12の前または後に熱可塑性樹脂の保護部材103からめくって剥離しても良い。なお、押圧面22に配置する樹脂シートは、表面に離型材料が塗布されていることが好ましい。
図5は、図2の加工ステップST12の一状態を示す断面図である。加工ステップST12は、保護部材形成ステップST11の後に実施され、図5に示すように、保護部材103の方をチャックテーブル35に保持し反対の面である裏面7側から被加工物1を加工するステップである。ここで、被加工物1は、被加工物1の一方の面である表面4に熱可塑性樹脂の保護シート100に基づく熱可塑性樹脂の保護部材103が形成されて、保護層付き被加工物200を構成している。
加工ステップST12では、本実施形態では、被加工物1の加工の一例である研削加工を実施しており、図5に示すように、保護層付き被加工物200の保護部材103側の露出面である表面104を研削装置30のチャックテーブル35の保持面36で吸引保持し、保護層付き被加工物200の被加工物1を裏面7側から研削加工する。
加工ステップST12では、より具体的には、図5に示すように、保護層付き被加工物200を保護部材103側から保持したチャックテーブル35を不図示の回転駆動源により軸心周りに回転させつつ、研削装置30の研削液供給部31から被加工物1の裏面7に研削液32を供給しながら、研削装置30に装着された研削砥石33を軸心回りに回転させて被加工物1の裏面7に接触させて研削する。
図6は、図2の一部剥離ステップST13の一状態を示す断面図である。一部剥離ステップST13は、加工ステップST12の後に実施され、図6に示すように、保護部材103の端の一部を被加工物1から剥離するステップである。
一部剥離ステップST13では、具体的には、図6に示すように、剥離装置40の剥離基点形成部41で、保護層付き被加工物200の端の一部において、被加工物1に対して保護部材103を相対的に引き離す方向に力を加えることで、当該端の一部において被加工物1と保護部材103との間に保護部材103の剥離基点を形成して、保護部材103の端の一部を被加工物1から剥離する。
図7は、図2の液体供給ステップST14の一状態を示す断面図である。図8は、図2の液体供給ステップST14の図7後の一状態を示す断面図である。液体供給ステップST14は、一部剥離ステップST13の後に実施され、図7及び図8に示すように、一部剥離ステップST13によって形成された保護部材103と被加工物1との隙間に液体43を供給するステップである。
液体供給ステップST14では、具体的には、図7に示すように、剥離基点形成部41で剥離基点を形成することにより形成された保護部材103と被加工物1との隙間に向けて、剥離装置40の液体供給部42で液体43を噴射して供給する。これにより、液体供給ステップST14では、図8に示すように、供給した液体43が保護部材103及び被加工物1の双方に対して濡れ、保護部材103と被加工物1との隙間を概ね完全に埋める。
ここで、液体供給ステップST14で供給する液体43は、保護部材103を構成する熱可塑性樹脂と被加工物1とのいずれに対して、溶解や重合等の化学反応を起こさず、なおかつ、保護部材103と被加工物1との双方に対して、所定の濡れ性を以って濡れるものが、好適に採用される。液体供給ステップST14で供給する液体43は、水(蒸留水、純水)、炭酸水、エタノールやIPA(Iso-Propyl Alcohol、2-プロパノール)等のアルコール類、アセトンが好適なものとして使用される。
図9は、図2の全体剥離ステップST15の一状態を示す断面図である。全体剥離ステップST15は、液体供給ステップST14の後に実施され、図9に示すように、液体43によって保護部材103と被加工物1との密着を解除し保護部材103を被加工物1から剥離するステップである。
全体剥離ステップST15では、具体的には、図9に示すように、剥離装置40の剥離基点形成部41で、一部剥離ステップST13と同様に、保護層付き被加工物200の端の一部において、被加工物1に対して保護部材103を相対的に引き離す方向に力を加える。これにより、全体剥離ステップST15では、保護部材103の剥離基点から、保護部材103の被加工物1からの剥離を徐々に進展させる。全体剥離ステップST15では、その後、液体供給ステップST14で供給された液体43が、液体43自身の濡れ性により、この剥離の進展に伴って進展する保護部材103と被加工物1との隙間を埋めるように浸透し、保護部材103と被加工物1との密着を解除する領域を進展させる。この結果、全体剥離ステップST15では、液体43が保護部材103の被加工物1からの剥離を全面に進展させることで、保護部材103を被加工物1から完全に剥離させる。
実施形態1に係る被加工物の加工方法は、全体剥離ステップST15を実施した後に、液体43を除去する液体除去ステップがさらにあっても良い。液体除去ステップでは、被加工物1をテーブルに保持した状態でテーブルを回転させて乾燥させる方法が挙げられ、乾燥させる前に洗浄水を供給し被加工物1を洗浄してもよい。液体除去ステップでは、液体43として上記した好適なものを使用した場合、被加工物1の表面4の純度を適切に保持することができるので、好ましい。液体除去ステップでは、液体43として上記した好適なもののうち、揮発性の高いアルコール類やアセトンを使用した場合、特に、被加工物1の表面4から揮発するので、容易に液体43を除去することができるので、好ましい。
実施形態1に係る被加工物の加工方法は、以上のように、保護部材103の端の一部を被加工物1から剥離する一部剥離ステップST13と、一部剥離ステップST13によって形成された保護部材103と被加工物1との隙間に液体43を供給する液体供給ステップST14と、液体43によって保護部材103と被加工物1との密着を解除し保護部材103を被加工物1から剥離する全体剥離ステップST15と、を備える。
このために、実施形態1に係る被加工物の加工方法は、液体43により保護部材103と被加工物1との密着を解除させることで、被加工物1に密着している保護部材103を被加工物1から容易に剥離できるという作用効果を奏する。
また、実施形態1に係る被加工物の加工方法は、保護部材103及び保護部材103を形成する元となっている熱可塑性樹脂の保護シート100は、糊層を備えず、熱圧着によって被加工物1に貼着される。このため、実施形態1に係る被加工物の加工方法は、保護部材103及び保護シート100が、粘着テープに使用される粘着層と異なり、実質的に粘着剤のような粘着性は概ね見られず、実質的に粘着性を有さない状態となるため、被加工物1から剥離されても被加工物1に残渣として残らないという作用効果を奏する。
なお、実施形態1に係る被加工物の加工方法は、熱可塑性樹脂の保護シート100が糊層を備えない形態に限定されず、被加工物1のうちデバイス5が形成されていない外周余剰領域と対向する部分にのみ糊層が形成されている保護シート100を採用してもよい。この場合、実施形態1に係る被加工物の加工方法は、保護部材形成ステップST11における載置ステップの精度を上げることができるとともに、被加工物1のうちデバイス5が形成されている部分と対向する部分について、実質的に粘着性を有さない状態となるため、被加工物1から剥離されても被加工物1に残渣として残らないという作用効果を奏する。
また、実施形態1に係る被加工物の加工方法は、液体43が、水(蒸留水、純水)、エタノールやIPA(Iso-Propyl Alcohol、2-プロパノール)等のアルコール類、アセトンのいずれかであることが好ましい。このため、実施形態1に係る被加工物の加工方法は、安価で、取り扱いも容易で、被加工物1にも溶解や重合等の化学反応を起こさないこれらの液体43を用いて、好適に、保護部材103を被加工物1から容易に剥離できるという作用効果を奏する。
〔変形例1〕
本発明の実施形態1の変形例1に係る被加工物の加工方法を図面に基づいて説明する。図10は、実施形態1の変形例1に係る被加工物の加工方法の保護部材形成ステップST11の一状態を示す断面図である。図10は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
実施形態1の変形例1に係る被加工物の加工方法は、実施形態1に係る被加工物の加工方法において、保護部材形成ステップST11における熱可塑性樹脂の保護シート100を被加工物1の表面4に熱圧着する方法を変更したものである。実施形態1の変形例1に係る保護部材形成ステップST11では、図10に示すように、所定の温度に加熱された熱圧着ローラ25で、熱可塑性樹脂の保護シート100を加熱して軟化するとともに、被加工物1の表面4に向けて押圧しながら、熱可塑性樹脂の保護シート100の露出面の全面に渡って転がすことで、熱可塑性樹脂の保護シート100を被加工物1の表面4に熱圧着する。
実施形態1の変形例1に係る被加工物の加工方法は、実施形態1に係る被加工物の加工方法において、熱可塑性樹脂の保護シート100を被加工物1の表面4に熱圧着する方法を変更したものであるので、実施形態1に係る被加工物の加工方法と同様に、液体43により保護部材103と被加工物1との密着を解除させることで、被加工物1に密着している保護部材103を被加工物1から容易に剥離できるという作用効果を奏する。実施形態1の変形例1に係る被加工物の加工方法は、その他についても、実施形態1と同様の作用効果を奏するものとなる。
〔変形例2〕
本発明の実施形態1の変形例2に係る被加工物の加工方法を図面に基づいて説明する。図11は、実施形態1の変形例2に係る被加工物の加工方法の保護部材形成ステップST11の一状態を示す断面図である。図11は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
実施形態1の変形例2に係る被加工物の加工方法は、実施形態1に係る被加工物の加工方法において、保護部材形成ステップST11における熱可塑性樹脂の保護シート100の径方向の大きさを被加工物1よりも大きく変更したものである。
実施形態1の変形例2に係る保護部材形成ステップST11では、熱可塑性樹脂の保護シート100が被加工物1よりも大きいため、被加工物1が保持面11及び保持部12よりも径方向の大きさが小さい場合には、保持面11で被加工物1を吸引保持することに伴い、熱可塑性樹脂の保護シート100を保持面11に向けて吸引することで、熱可塑性樹脂の保護シート100を被加工物1の表面4に向けて押圧することができる。このため、実施形態1の変形例2に係る保護部材形成ステップST11では、チャックテーブル10による被加工物1の吸引保持と、熱可塑性樹脂の保護シート100の加熱とのみによって、熱可塑性樹脂の保護シート100を被加工物1の表面4に熱圧着することができる。ここで、実施形態1の変形例2に係る保護部材形成ステップST11では、温風を吹き付けるか、もしくは、赤外線を照射すること等により、熱可塑性樹脂の保護シート100を加熱する。
実施形態1の変形例2に係る保護部材形成ステップST11では、図11に示すように、熱可塑性樹脂の保護シート100を被加工物1の表面4に熱圧着することにより、被加工物1の表面4に熱可塑性樹脂の保護シート100に基づく熱可塑性樹脂の保護部材103が形成されると同時に、被加工物1の外周より径方向にはみ出した余剰部分106が形成される。
実施形態1の変形例2に係る保護部材形成ステップST11では、図11に示すように、切除装置50のカッター51で、チャックテーブル10の保持面11で保持された被加工物1に形成された余剰部分106を切除する余剰部分切除ステップを実施することが好ましい。ここで、切除装置50は、被加工物1の外周に向けてカッター51を保持する円板52と、円板52を軸心周りに回転駆動する不図示の回転駆動源とを備え、回転駆動源により円板52を軸心周りに回転させることで、カッター51を被加工物1の外周に沿って回転移動させて、余剰部分106を切除する。
実施形態1の変形例2に係る被加工物の加工方法は、実施形態1の変形例1に係る被加工物の加工方法と同様に、実施形態1に係る被加工物の加工方法において、熱可塑性樹脂の保護シート100を被加工物1の表面4に熱圧着する方法を変更したものであるので、実施形態1に係る被加工物の加工方法と同様の作用効果を奏するものとなる。
実施形態1の変形例2に係る被加工物の加工方法は、さらに、被加工物1を囲繞して設けられる環状のフレームが余剰部分106に熱圧着される場合についても同様に適用することができる。また、実施形態1の変形例2に係る被加工物の加工方法は、実施形態1の変形例1に係る被加工物の加工方法と組み合わせることもできる。
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る被加工物の加工方法を図面に基づいて説明する。図12は、実施形態2に係る被加工物の加工方法の加工対象の被加工物1-2の斜視図である。図13は、実施形態2に係る被加工物の加工方法の保護部材形成ステップST11の一状態を示す断面図である。図14は、実施形態2に係る被加工物の加工方法の保護部材形成ステップST11の図13後の一状態を示す断面図である。図15は、実施形態2に係る被加工物の加工方法の保護部材形成ステップST11の図14後の一状態を示す断面図である。図12~図15は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
実施形態2に係る被加工物の加工方法は、実施形態1に係る被加工物の加工方法において、加工対象を被加工物1から被加工物1-2に変更し、これに伴い、保護部材形成ステップST11を変更したものである。
被加工物1-2は、被加工物1において、デバイス5の表面に複数の電極バンプ6が搭載されたものである。電極バンプ6は、デバイス5の表面から突出している。被加工物1-2では、デバイス5は、表面4に電極バンプ6が搭載されていることで、凹凸を有している。なお、実施形態2において、被加工物1-2は、デバイス5の表面に電極バンプ6が搭載されて凹凸を有しているが、本発明では、これに限定されない。
実施形態2に係る被加工物の加工方法の保護部材形成ステップST11では、まず、図13に示すように、被加工物1-2の表面4上に、熱可塑性樹脂の保護シート100-2を載置する(拡張載置ステップ)。なお、熱可塑性樹脂の保護シート100-2を構成する熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂の保護シート100を構成する熱可塑性樹脂と同様である。これにより、実施形態2に係る保護部材形成ステップST11では、図13の拡大図に示すように、熱可塑性樹脂の保護シート100-2が、被加工物1-2の表面4上の電極バンプ6の外形に密接に追従して配設され、被加工物1-2の表面4上に熱可塑性樹脂の保護シート100-2に基づく熱可塑性樹脂の保護部材103-2が形成される。
実施形態2に係る保護部材形成ステップST11では、次に、図14に示すように、キャリア111の表面に硬化性樹脂層112が形成された樹脂キャリア110を、熱可塑性樹脂の保護部材103-2が形成された被加工物1-2に配設する(樹脂キャリア載置ステップ)。実施形態2に係る保護部材形成ステップST11では、具体的には、樹脂キャリア110の硬化性樹脂層112側の面を、被加工物1-2に形成された熱可塑性樹脂の保護部材103-2側の露出面である表面104-2に対向させて配設する。
ここで、キャリア111は、本実施形態では、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、シリコン、又はガラスで形成されているが、後述するように、硬化性樹脂層112が紫外線照射により硬化する紫外線硬化性樹脂を多く含む場合、紫外線を透過する材料で形成されていることが好ましい。
また、硬化性樹脂層112は、本実施形態では、例えば、エポキシ樹脂やフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂成分、又は、紫外線硬化性樹脂等の硬化性樹脂成分と、アクリル系ポリマー等のバインダーポリマー成分とで構成される。
実施形態2に係る保護部材形成ステップST11では、その次に、互いに対向させて配設した熱可塑性樹脂の保護部材103-2が形成された被加工物1-2と樹脂キャリア110とを、互いに接近する方向に押圧するとともに、図14に示すように、樹脂キャリア110の硬化性樹脂層112を硬化装置61で硬化させる(圧縮硬化ステップ)。これにより、実施形態2に係る保護部材形成ステップST11では、樹脂キャリア110の硬化性樹脂層112を、熱可塑性樹脂の保護部材103-2の表面形状に沿って、すなわち、電極バンプ6を有する被加工物1-2の表面4上の形状に沿って変形させてから、硬化性樹脂層112を硬化させる。実施形態2に係る保護部材形成ステップST11では、硬化性樹脂層112を硬化させることで、図15の拡大図に示すように、電極バンプ6を有する被加工物1-2の表面4を保持する硬化樹脂層113とする。この結果、実施形態2に係る保護部材形成ステップST11では、熱可塑性樹脂の保護部材103-2が形成された被加工物1-2と樹脂キャリア110とを一体化させた保護層付き被加工物200-2を形成する。
ここで、実施形態2に係る保護部材形成ステップST11では、硬化性樹脂層112が熱硬化性樹脂である場合、硬化装置61として加熱装置を採用し、温風等によりキャリア111を介して硬化性樹脂層112を加熱することで、熱硬化させる。また、実施形態2に係る保護部材形成ステップST11では、硬化性樹脂層112が紫外線硬化性樹脂である場合、硬化装置61として例えば紫外線照射装置を採用し、キャリア111を介して紫外線を照射することにより硬化性樹脂層112を紫外線硬化させる。
実施形態2に係る被加工物の加工方法は、加工ステップST12以降の各処理について、実施形態1に係る被加工物の加工方法において、処理する対象を保護層付き被加工物200から保護層付き被加工物200-2に変更したものであり、その他については同様である。
実施形態2に係る被加工物の加工方法における一部剥離ステップST13、液体供給ステップST14及び全体剥離ステップST15では、キャリア111と硬化樹脂層113とで構成される樹脂キャリア110と、熱可塑性樹脂の保護シート100-2に基づく熱可塑性樹脂の保護部材103-2とが一体となった状態のまま、同時に被加工物1-2の表面4から剥離する剥離処理を実行してもよい。また、実施形態2に係る被加工物の加工方法では、加工ステップST12を実行した後に、先に樹脂キャリア110を熱可塑性樹脂の保護シート100-2に基づく熱可塑性樹脂の保護部材103-2から取り外してから、一部剥離ステップST13、液体供給ステップST14及び全体剥離ステップST15で、熱可塑性樹脂の保護シート100-2に基づく熱可塑性樹脂の保護部材103-2のみについて、被加工物1-2の表面4から剥離する剥離処理を実行してもよい。
実施形態2に係る被加工物の加工方法における一部剥離ステップST13、液体供給ステップST14及び全体剥離ステップST15では、電極バンプ6によって凹凸を有する被加工物1-2の表面4と熱可塑性樹脂の保護シート100-2に基づく熱可塑性樹脂の保護部材103-2との界面を剥離しているが、液体43の濡れ性や表面張力等の性質を利用しているので、凹凸の影響をほとんど受けることがない。このため、実施形態2に係る被加工物の加工方法における一部剥離ステップST13、液体供給ステップST14及び全体剥離ステップST15では、電極バンプ6による凹凸を有する場合でも、好適に、熱可塑性樹脂の保護シート100-2に基づく熱可塑性樹脂の保護部材103-2を被加工物1-2の表面4から剥離することができる。
実施形態2に係る被加工物の加工方法は、実施形態1に係る被加工物の加工方法において、加工対象である被加工物1を電極バンプ6が搭載された被加工物1-2に変更したものであるので、実施形態1と同様の作用効果を奏するものとなる。
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3に係る被加工物の加工方法を図面に基づいて説明する。図16は、実施形態3に係る被加工物の加工方法の保護部材形成ステップST11の一例を示す断面図である。図17は、実施形態3に係る被加工物の加工方法の保護部材形成ステップST11の図16後の一状態を示す断面図である。図18は、実施形態3に係る被加工物の加工方法の保護部材形成ステップST11の図17後の一状態を示す断面図である。図19は、実施形態3に係る被加工物の加工方法の保護部材形成ステップST11の図18後の一状態を示す断面図である。図20は、実施形態3に係る被加工物の加工方法の保護部材形成ステップST11の図19後の一状態を示す断面図である。なお、図16~図20は、拡大図を除き、電極バンプ6を省略している。図16~図20は、実施形態1及び実施形態2と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
実施形態3に係る被加工物の加工方法は、実施形態2に係る被加工物の加工方法において、保護部材形成ステップST11を変更したものである。実施形態3に係る被加工物の加工方法における保護部材形成ステップST11は、具体的には、樹脂供給ステップと、カバーステップと、冷却ステップと、を備える。
実施形態3に係る保護部材形成ステップST11では、まず、図16に示すように、チャックテーブル10-3の保持面11で裏面7側を保持した被加工物1-2の表面4に、塊状又は粒状の熱可塑性樹脂100-3を供給する(樹脂供給ステップ)。なお、熱可塑性樹脂100-3は、熱可塑性樹脂の保護シート100を構成する熱可塑性樹脂と同様である。
実施形態3に係る保護部材形成ステップST11では、具体的には、被加工物1-2の表面4に、1個または複数個の熱可塑性樹脂100-3を供給する。実施形態3に係る保護部材形成ステップST11では、熱可塑性樹脂100-3を、被加工物1-2の表面4上に広く分散して供給することが好ましい。実施形態3に係る保護部材形成ステップST11では、図16に示す実施形態では、7個の熱可塑性樹脂100-3が供給されているが、本発明はこれに限定されず、1個から6個でもよく、8個以上でもよい。実施形態3に係る保護部材形成ステップST11では、本実施形態では、図16の拡大図に示すように、電極バンプ6よりも大きな塊状又は粒状の熱可塑性樹脂100-3が、複数の電極バンプ6上に跨いで載置される。
ここで、実施形態3に係る保護部材形成ステップST11で供給される熱可塑性樹脂100-3は、被加工物1-2の表面4の全面において電極バンプ6を覆うことが可能な体積を有する。すなわち、実施形態3に係る保護部材形成ステップST11で供給される熱可塑性樹脂100-3は、後述するカバーステップを経て、表面4を途切れなく覆う層を形成することが可能であり、電極バンプ6によって形成された表面4上の凹凸より厚い層を形成することが可能な体積を有する。
実施形態3に係る保護部材形成ステップST11では、樹脂供給ステップを実行した後で、図17及び図18に示すように、樹脂供給ステップで供給した熱可塑性樹脂100-3を加熱しつつ、軟化した熱可塑性樹脂100-3を被加工物1-2の表面4に沿って押し広げ、被加工物1-2の表面4を覆う保護層101-3を熱可塑性樹脂100-3で形成する(カバーステップ)。
実施形態3に係る保護部材形成ステップST11では、具体的には、まず、チャックテーブル10-3の保持部12の内部に備えられた熱源13により被加工物1-2側から熱可塑性樹脂100-3を加熱する。また、実施形態3に係る保護部材形成ステップST11では、これに合わせて、図17に示すように、押圧部材21の押圧面22を、樹脂供給ステップで熱可塑性樹脂100-3が供給された被加工物1-2の表面4に向けて接近させて、押圧部材21の熱源23で押圧面22側を加熱する。
実施形態3に係る保護部材形成ステップST11では、被加工物1-2側から熱可塑性樹脂100-3が徐々に加熱され、軟化する。また、実施形態3に係る保護部材形成ステップST11では、これに合わせて、押圧部材21の押圧面22が熱可塑性樹脂100-3の一部と接触し、さらに押圧することで、押圧部材21側から熱可塑性樹脂100-3が徐々に加熱され、軟化する。実施形態3に係る保護部材形成ステップST11では、そして、平坦な面である押圧部材21の押圧面22で、被加工物1-2の表面4上の軟化した熱可塑性樹脂100-3を押圧して、押圧面22及び被加工物1-2の表面4に沿って変形させて押し広げる。これにより、実施形態3に係る保護部材形成ステップST11では、図18に示すように、押圧面22と被加工物1-2の表面4との間において、被加工物1-2の表面4を覆う保護層101-3を熱可塑性樹脂100-3で形成する。実施形態3に係る保護部材形成ステップST11では、保護層101-3は、押圧面22で押された面である表面102-3が、押圧面22に沿って平坦に形成される。表面102-3は、保護層101-3の露出面となる。なお、チャックテーブル10-3にも熱源が備えられると熱可塑性樹脂100-3がより軟化しやすくなり好ましい。
本実施形態では、被加工物1-2の表面4の全面において電極バンプ6を覆うことが可能な体積の熱可塑性樹脂100-3が樹脂供給ステップで供給されているので、熱可塑性樹脂100-3は、カバーステップで被加工物1-2の表面4を途切れなく覆う保護層101-3に変形し、保護層101-3は、電極バンプ6によって形成された表面4上の凹凸より厚く形成される。
実施形態3に係る保護部材形成ステップST11では、本実施形態では、熱源13及び熱源23により、被加工物1-2側及び押圧部材21側の両側から熱可塑性樹脂100-3を加熱して軟化しているが、本発明はこれに限定されず、熱源13及び熱源23のうちいずれか一方により、被加工物1-2側及び押圧部材21側のうちいずれか一方から熱可塑性樹脂100-3を加熱して軟化してもよい。実施形態3に係る保護部材形成ステップST11では、これらの場合、熱可塑性樹脂100-3を加熱する側の熱源13または熱源23だけが設けられている装置系で実行しても良い。
実施形態3に係る保護部材形成ステップST11では、カバーステップを実行した後で、図19に示すように、カバーステップで形成した保護層101-3を冷却して硬化させることで保護部材103-3とする(冷却ステップ)。
実施形態3に係る保護部材形成ステップST11では、具体的には、熱源13及び熱源23をオフにして熱源13及び熱源23による加熱を停止する。これにより、実施形態3に係る保護部材形成ステップST11では、熱源13及び熱源23による保護層101-3の加熱が停止され、軟化状態の保護層101-3の冷却が開始する。実施形態3に係る保護部材形成ステップST11では、例えば大気により、大気の温度程度まで軟化状態の保護層101-3が十分に冷却され、硬化状態の保護部材103-3となる。実施形態3に係る保護部材形成ステップST11では、保護層101-3が保護部材103-3となることに伴い、平坦に形成された保護層101-3の表面102-3が、平坦な保護部材103-3の露出面である表面104-3となる。実施形態3に係る保護部材形成ステップST11では、図19の拡大図に示すように、隣接する電極バンプ6の間の領域に熱可塑性樹脂100-3が埋め込まれて、保護部材103-3が形成される。実施形態3に係る保護部材形成ステップST11では、その後、図19に示すように、保護層101-3の冷却後に、保護層101-3の形成のために被加工物1-2の表面4に向けて押圧していた押圧部材21を被加工物1-2から退避させて、保護部材103-3が形成された被加工物1-2を取り出す。
なお、実施形態3に係る保護部材形成ステップST11では、押圧部材21で熱可塑性樹脂100-3を押圧したまま、熱源13及び熱源23による加熱を停止するとともに、押圧部材21を空冷又は水冷等で冷却することで、押圧部材21により保護層101-3を冷却してもよい。
また、実施形態3に係る保護部材形成ステップST11では、熱源23をオフにすることに代えて、図19に示すように、押圧部材21を被加工物1-2から退避させることで、押圧部材21内の熱源23による保護層101-3の加熱を停止し、軟化状態の保護層101-3の冷却を開始させてもよい。実施形態3に係る保護部材形成ステップST11では、この場合、押圧部材21を被加工物1-2から退避させた状態を保持させることで、大気により保護層101-3を十分に空冷することで、硬化状態の保護部材103-3が形成される。
なお、冷却ステップは、カバーステップで熱源13及び熱源23を熱可塑性樹脂100-3の加熱及び軟化に使用するか否かに応じて、適宜変更することができる。
実施形態3に係る被加工物の加工方法は、保護部材形成ステップST11の後に、図20に示すように、切除装置50で保護部材103-3の余剰部分106-3を切除する余剰部分切除ステップをさらに有することが好ましい。
実施形態3に係る被加工物の加工方法は、保護部材形成ステップST11を経て、図20に示すような、被加工物1-2の表面4に保護層101-3に基づく保護部材103-3が形成された保護層付き被加工物200-3を得る。保護層付き被加工物200-3では、保護部材103-3(保護層101-3)の露出した面である表面104-3(表面102-3)が平坦に形成される。また、保護層付き被加工物200-3では、図19に示すように、保護部材103-3(保護層101-3)が形成された被加工物1-2の表面4が電極バンプ6による凹凸を有し、保護部材103-3(保護層101-3)がこの凹凸を超える厚さに形成されている。
実施形態3に係る被加工物の加工方法は、加工ステップST12以降の各処理について、実施形態1及び実施形態2に係る被加工物の加工方法において、処理する対象を保護層付き被加工物200及び保護層付き被加工物200-2から保護層付き被加工物200-3に変更したものであり、その他については同様である。
実施形態3に係る被加工物の加工方法における一部剥離ステップST13、液体供給ステップST14及び全体剥離ステップST15では、実施形態1及び実施形態2とほぼ同様に、保護部材103-3(保護層101-3)を被加工物1-2の表面4から剥離する剥離処理を実行する。
実施形態3に係る被加工物の加工方法は、実施形態2に係る被加工物の加工方法において、保護部材形成ステップST11を変更し、これに伴い、被加工物1-2の表面4から剥離する対象を保護部材103-3(保護層101-3)に変更したものであるので、実施形態2と同様の作用効果を奏するものとなる。
また、実施形態3に係る被加工物の加工方法は、保護部材形成ステップST11で、表面4に電極バンプ6による凹凸が形成されていても、充分に軟化した熱可塑性樹脂100-3が凹凸を覆いつつ、保護層101-3の露出面である表面102-3を平坦に形成することが出来るので、凹凸のある被加工物1-2を平坦な状態で強力に固定する事を可能にする保護層101-3を容易に形成できるという作用効果を奏する。
また、実施形態3に係る被加工物の加工方法は、保護部材形成ステップST11で、保護層101-3及び保護層101-3に基づく保護部材103-3が、従来に保護部材として用いられる粘着テープと異なり、厚さが規定されていないため、熱可塑性樹脂100-3の供給量や押し広げる際の押圧量に応じて、所望の厚さに形成できるため、準備する熱可塑性樹脂100-3の種類を増やす必要が無くコスト削減に繋がるという作用効果も奏する。
また、実施形態3に係る被加工物の加工方法は、保護部材形成ステップST11で、熱可塑性樹脂100-3が、1つ又は複数個が被加工物1-2の表面4に供給され、表面4を途切れなく覆う保護層101-3に変形する。このため、実施形態3に係る被加工物の加工方法は、保護部材形成ステップST11で、保護層101-3及び保護層101-3に基づく保護部材103-3が、粘着テープに使用される粘着層と異なり、途切れなく覆うことで、被加工物1-2を全面に渡って安定して保護し、凹凸のある被加工物1-2を平坦な状態でより強力に固定する事を可能にする。
また、実施形態3に係る被加工物の加工方法は、保護部材形成ステップST11で、熱可塑性樹脂100-3を平坦な面で押圧して押し広げ、露出した保護層101-3の面が平坦に形成される。このため、実施形態3に係る被加工物の加工方法は、保護部材形成ステップST11で、保護層101-3及び保護層101-3に基づく保護部材103-3が、凹凸のある被加工物1-2をより平坦な状態でさらに強力に固定する事を可能にする。
また、実施形態3に係る被加工物の加工方法は、保護部材形成ステップST11で、被加工物1-2の表面4が凹凸を備え、熱可塑性樹脂100-3で形成した保護層101-3が、凹凸より厚く形成される。このため、実施形態3に係る被加工物の加工方法は、保護部材形成ステップST11で、保護層101-3及び保護層101-3に基づく保護部材103-3が、凹凸のある被加工物1-2をより平坦な状態でさらに強力に固定する事を可能にする。
また、実施形態3に係る被加工物の加工方法は、表面4に電極バンプ6による凹凸が形成されていても、加工ステップST12で、電極バンプ6による凹凸にとらわれることなく、被加工物1-2の裏面7側を精度よく加工することができるという作用効果を奏する。
〔変形例3〕
本発明の実施形態3の変形例3に係る被加工物の加工方法を図面に基づいて説明する。図21は、実施形態3の変形例3に係る被加工物の加工方法の加工対象の被加工物1-3の一部分を示す斜視図である。図22は、実施形態3の変形例3に係る被加工物の加工方法の加工対象の被加工物1-3の外観を示す斜視図である。なお、図21は、封止剤8を省略している。図21及び図22は、実施形態3と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
実施形態3の変形例3に係る被加工物の加工方法は、被加工物の加工方法の加工対象が被加工物1-3であり、被加工物1-3の形状に応じて、使用されるチャックテーブル10-3、押圧部材21、切除装置50及び研削装置30の形状が異なること以外、実施形態3と同じである。
被加工物1-3は、実施形態3の変形例3では、絶縁性の絶縁板及び絶縁板の内部に埋設され導電性の金属により構成されたグランドラインを有し、表面4-3及び裏面7-3に電極や各種配線が形成された配線基板2-3を備えたパッケージ基板である。被加工物1-3は、図21に示すように、交差(実施形態3の変形例3では、直交)する複数の分割予定ライン3-3で区画された表面4-3の各領域にそれぞれデバイス5-3が形成されている。被加工物1-3は、配線基板2-3の表面4-3に、各デバイス5-3及び各デバイス5-3にワイヤボンディングにより形成された不図示のワイヤを封止する封止剤8が形成されている。封止剤8は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、又はポリイミド樹脂等により構成された所謂モールド樹脂である。被加工物1-3は、表面4-3に封止剤8が形成されていることで、凹凸を有している。被加工物1-3は、裏面7-3が平坦に形成されている。被加工物1-3は、各分割予定ライン3-3に沿って分割されて、個々のデバイス5-3に分割される。
実施形態3の変形例3に係る被加工物の加工方法は、実施形態3と同様に、表面4-3に封止剤8による凹凸が形成されていても、充分に軟化した熱可塑性樹脂100-3が凹凸を覆いつつ、保護層101-3の露出面である表面102-3を平坦に形成することが出来るので、凹凸のある被加工物1-3を平坦な状態で強力に固定する事を可能にする保護層101-3を容易に形成できるという作用効果を奏する。実施形態3の変形例3に係る被加工物の加工方法は、その他についても、実施形態3と同様の作用効果を奏するものとなる。
また、実施形態3の変形例3に係る被加工物の加工方法は、保護層101-3の形成に熱可塑性樹脂100-3を使用しているので、熱可塑性樹脂100-3が、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、又はポリイミド樹脂等といった封止剤8に使用されている硬化反応済みの硬化性樹脂とほとんど反応することなく、保護層101-3を安定して形成することができるという作用効果をさらに奏する。
また、実施形態2に係る被加工物の加工方法の加工対象を、実施形態3の変形例3に係る被加工物の加工方法の加工対象である被加工物1-3としてもよく、この場合についても、実施形態3の変形例3に係る被加工物の加工方法と同様の作用効果を奏するものとなる。
〔変形例4〕
本発明の実施形態3の変形例4に係る被加工物の加工方法を図面に基づいて説明する。図23は、実施形態3の変形例4に係る被加工物の加工方法の一例である研削加工を示す断面図である。図24は、実施形態3の変形例4に係る被加工物の加工方法の別の一例である切削加工を示す断面図である。図25は、実施形態3の変形例4に係る被加工物の加工方法の別の一例であるレーザー加工を示す断面図である。なお、図23から図25は、電極バンプ6を省略している。図23から図25は、実施形態3と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
実施形態3の変形例4に係る被加工物の加工方法は、被加工物1を他方の面側である裏面7側から施す加工方法以外、実施形態3と同じである。
実施形態3の変形例4に係る被加工物の加工方法の第1例は、図23に示すように、被加工物1-2の最外周の側端部分を残し、その内周のみを研削装置30の研削砥石33により裏面7側から研削して、被加工物1-2を薄化する方法であり、すなわち、被加工物1-2を裏面7側から所謂TAIKO(登録商標)研削する方法である。
実施形態3の変形例4に係る被加工物の加工方法の第2例は、図24に示すように、チャックテーブル75の保持面76で被加工物1-2を保護部材103-3側から保持した状態で、切削装置70の切削液供給部71から被加工物1-2の裏面7に切削液72を供給しながら、切削装置70に装着された切削ブレード73を軸心回りに回転させて、不図示の駆動源によりチャックテーブル75または切削装置70の切削ブレード73を加工送り、割り出し送り、及び切り込み送りすることで、被加工物1-2を裏面7側から切削する方法である。実施形態3の変形例4に係る被加工物の加工方法の第2例では、例えば、分割予定ライン3に沿って被加工物1-2を裏面7側から切削することで、被加工物1-2を各デバイス5に分割する。
実施形態3の変形例4に係る被加工物の加工方法の第3例は、図25に示すように、チャックテーブル85の保持面86で保護部材103-3側から保持した被加工物1-2の裏面7に向けて、レーザー照射装置80からレーザー光線81を照射することで、被加工物1-2を裏面7側からレーザー加工する方法である。なお、実施形態3の変形例4に係る被加工物の加工方法の第3例では、パルス状のレーザー光線81が使用されても良い。実施形態3の変形例4に係る被加工物の加工方法の第3例では、例えば、分割予定ライン3に沿って被加工物1-2を裏面7側からレーザー光線81を照射する。実施形態3の変形例4に係る被加工物の加工方法の第3例では、所謂アブレーション加工をすることで、被加工物1-2をハーフカットしたり、各デバイス5に分割したりしてもよいし、改質層を内部に形成してもよい。
これらの実施形態3の変形例4に係る被加工物の加工方法においても、保護層101-3及び保護層101-3に基づく保護部材103-3を形成した被加工物1-2に対して裏面7側から加工を施すものであるため、実施形態3と同様の作用効果を奏するものとなる。また、これらの実施形態3の変形例4に係る被加工物の加工方法においても、実施形態3の変形例3に係る被加工物1-3を加工対象とすることができる。
また、被加工物の加工方法は、実施形態3の変形例4に限定されず、本発明では、実施形態3に係る保護層101-3及び保護層101-3に基づく保護部材103-3を形成した被加工物1-2に対して、保護層101-3に基づく保護部材103-3が形成された表面4側から、所定のレーザー光線を保護部材103-3越しに照射することで、被加工物1-2をアブレーション加工してもよく、特にデバイス5のデバイス面にアブレーション加工を実施する場合、保護部材103-3がアブレーション加工で発生したデブリの被加工物1-2への付着を抑制するという作用効果を奏する。
また、実施形態3の変形例4に係る被加工物の加工方法を、実施形態1、実施形態1の変形例1及び変形例2、並びに実施形態2に対して適用してもよく、この場合についても、実施形態3の変形例4に係る被加工物の加工方法と同様の作用効果を奏するものとなる。
〔変形例5〕
本発明の実施形態3の変形例5に係る被加工物の加工方法を図面に基づいて説明する。図26、図27、図28、図29、図30、図31及び図32は、いずれも、実施形態3の変形例5に係る被加工物の加工方法の保護部材形成ステップST11の別の一例を示す斜視図である。なお、図26から図32は、分割予定ライン3、デバイス5及び電極バンプ6を省略している。図26から図32は、実施形態3と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
実施形態3の変形例5に係る被加工物の加工方法は、保護部材形成ステップST11の樹脂供給ステップが異なること以外、実施形態3と同じである。
実施形態3の変形例5に係る保護部材形成ステップST11の樹脂供給ステップの第1例は、図26に示すように、粉状の熱可塑性樹脂100-4(熱可塑性樹脂粉末)を供給するものである。実施形態3の変形例5に係る保護部材形成ステップST11の樹脂供給ステップの第2例は、図27に示すように、ブロック状の熱可塑性樹脂100-5(熱可塑性樹脂ブロック)を供給するものである。実施形態3の変形例5に係る保護部材形成ステップST11の樹脂供給ステップの第3例は、図28に示すように、ドーナツ状の熱可塑性樹脂100-6(熱可塑性樹脂ドーナツ)を供給するものである。実施形態3の変形例5に係る保護部材形成ステップST11の樹脂供給ステップの第4例は、図29に示すように、麺状(繊維状)の熱可塑性樹脂100-7(熱可塑性樹脂繊維)を供給するものである。実施形態3の変形例5に係る保護部材形成ステップST11の樹脂供給ステップの第5例は、図30に示すように、タブレット状の熱可塑性樹脂100-8(熱可塑性樹脂タブレット)を供給するものである。実施形態3の変形例5に係る保護部材形成ステップST11の樹脂供給ステップの第6例は、図31に示すように、被加工物1-2より面積が小さく、被加工物1-2の凹凸に係る凸部の高さよりも厚い板体状またはシート体状の熱可塑性樹脂100-9(熱可塑性樹脂板体、熱可塑性樹脂シート体)を供給するものである。例えば、熱可塑性樹脂100-9の厚さは、被加工物1-2の凹凸に係る凸部の高さが300μmである場合、700μmである。実施形態3の変形例5に係る保護部材形成ステップST11の樹脂供給ステップの第7例は、図32に示すように、渦巻き状に配した繊維状の熱可塑性樹脂100-10(熱可塑性樹脂渦巻き)を供給するものである。
これらの実施形態3の変形例5に係る保護部材形成ステップST11の樹脂供給ステップにおいても、実施形態3と同様の保護層101-3を容易に形成できるので、実施形態3と同様の作用効果を奏するものとなる。また、これらの実施形態3の変形例5に係る被加工物の加工方法においても、実施形態3の変形例3に係る被加工物1-3を加工対象とすることができる。
〔変形例6〕
本発明の実施形態3の変形例6に係る被加工物の加工方法を図面に基づいて説明する。図33は、実施形態3の変形例6に係る被加工物の加工方法の保護部材形成ステップST11の一例を示す断面図である。なお、図33は、電極バンプ6及び保持部12を省略している。図23は、実施形態3と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
実施形態3の変形例6に係る被加工物の加工方法は、保護部材形成ステップST11の樹脂供給ステップが異なること以外、実施形態3と同じである。
実施形態3の変形例6に係る被加工物の加工方法における保護部材形成ステップST11の樹脂供給ステップでは、図33に示すように、被加工物1-2の表面4に、熱可塑性樹脂100-9を加熱して軟化させつつ供給する。実施形態3の変形例6に係る被加工物の加工方法における保護部材形成ステップST11の樹脂供給ステップでは、具体的には、図33に示すように、まず、チャックテーブル10-4の内部に備えられた熱源14で保持面11側を加熱する。実施形態3の変形例6に係る被加工物の加工方法における保護部材形成ステップST11の樹脂供給ステップでは、次に、固形の熱可塑性樹脂100-11を、被加工物1-2の表面4に接触させて押圧しながら、被加工物1-2の表面4の全面に渡って移動させる。実施形態3の変形例6に係る被加工物の加工方法における保護部材形成ステップST11の樹脂供給ステップでは、これにより、被加工物1-2の表面4の全面に渡って、固形の熱可塑性樹脂100-11の被加工物1-2の表面4と接触している部分が被加工物1-2を介して熱源14により加熱されて軟化して、被加工物1-2の表面4に軟化状態で供給される。
実施形態3の変形例6に係る被加工物の加工方法においても、実施形態3と同様の保護層101-3を容易に形成できるので、実施形態3と同様の作用効果を奏するものとなる。また、実施形態3の変形例6に係る被加工物の加工方法においても、実施形態3の変形例3に係る被加工物1-3を加工対象とすることができる。実施形態3の変形例6を実施形態3の変形例5に組み合わせて被加工物の加工方法を実行してもよく、この場合も、実施形態3と同様の保護層101-3を容易に形成できるので、実施形態3と同様の作用効果を奏するものとなる。
また、実施形態3の変形例6に係る被加工物の加工方法における保護部材形成ステップST11の樹脂供給ステップでは、被加工物1-2の表面4に、熱可塑性樹脂100-11を加熱して軟化させつつ供給する方法は、上記した方法に限定されず、グルーガン等を使用して、熱可塑性樹脂100-11をグルーガン等に備え付けられた加熱体で加熱して軟化させて、当該グルーガン等から熱可塑性樹脂100-11を被加工物1-2の表面4に供給するものとしてもよい。
〔変形例7〕
本発明の実施形態3の変形例7に係る被加工物の加工方法を以下に説明する。実施形態3の変形例7に係る被加工物の加工方法は、保護部材形成ステップST11の樹脂供給ステップで供給する熱可塑性樹脂100-3に熱可塑性樹脂100-3より熱膨張係数が小さい充填剤であるフィラーを混合すること以外は、実施形態3に係る被加工物の加工方法と同じである。
実施形態3の変形例7に係る被加工物の加工方法における保護部材形成ステップST11の樹脂供給ステップで供給される熱可塑性樹脂100-3に混合されるフィラーは、熱可塑性樹脂100-3より熱膨張係数が小さい無機充填剤または有機充填剤が好適に使用される。熱可塑性樹脂100-3は、このようなフィラーが混合されることにより、保護部材形成ステップST11のカバーステップで加熱されて被加工物1-2を覆った保護層101-3が、保護部材形成ステップST11の冷却ステップで冷却時に収縮することを防止することができ、これに伴い、被加工物1-2が撓んだり変形したりすることを防止することができる。
熱可塑性樹脂100-3に混合されるフィラーは、無機充填剤であることが好ましく、具体的には、溶融シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、クレー、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ベリリウム、酸化鉄、酸化チタン、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、マイカ、ガラス、石英、雲母等が好適に使用される。また、熱可塑性樹脂100-3に混合されるフィラーは、上記の2種類以上を混合して使用しても良い。熱可塑性樹脂100-3に混合されるフィラーは、上記した無機充填剤のうち、溶融シリカや結晶性シリカ等のシリカ類が使用されることが好ましく、この場合、フィラーのコストを好適に抑制することができる。
実施形態3の変形例7に係る被加工物の加工方法は、保護部材形成ステップST11の樹脂供給ステップで供給する熱可塑性樹脂100-3には、フィラーが混合されている。このため、実施形態3の変形例7に係る被加工物の加工方法は、保護部材形成ステップST11のカバーステップで加熱されて被加工物1-2を覆った熱可塑性樹脂100-3によって構成された保護層101-3(保護部材103-3)が、混合されたフィラーの効果により、保護部材形成ステップST11の冷却ステップで冷却時に収縮することを防止することができ、これに伴い、被加工物1-2と熱可塑性樹脂100-3との間の熱膨張係数差に起因して被加工物1-2が撓んだり変形したりすることを防止することができる。また、実施形態3の変形例7を変形例5または変形例6に組み合わせて被加工物の加工方法を実行してもよく、この場合には、変形例5に係る熱可塑性樹脂100-4から熱可塑性樹脂100-10、または、変形例6に係る熱可塑性樹脂100-11は、いずれも、フィラーが混合されたものとなる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上記した各実施形態及び各変形例において使用する熱可塑性樹脂の保護シート100,100-2、及び、熱可塑性樹脂100-3~100-11は、紫外線からの回路保護や回路の秘匿を目的として、黒などの暗色に着色されていてもよく、紫外線吸収剤を混練させてもよい。