以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。また、特記しない限り、操作および物性等は、室温(20℃以上25℃以下)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件で測定する。
なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタアクリレートの総称である。(メタ)アクリル酸等の(メタ)を含む化合物等も同様に、名称中に「メタ」を有する化合物と「メタ」を有さない化合物の総称である。
<異方性導電フィルム>
本発明の一形態は、中間層が、第1の絶縁性硬化型接着剤層と、第2の絶縁性硬化型接着剤層とで直接挟持された構造を有し、
中間層は、導電性粒子と、硬化性化合物とを含有する中間層形成用硬化型組成物から構成される未硬化中間層の硬化層であり、
第1の絶縁性硬化型接着剤層および第2の絶縁性硬化型接着剤層は、それぞれ、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物からなり、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物は、共に硬化性化合物を含有し、
未硬化中間層の25℃での粘度(Pa・s)は、第1の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)および第2の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)の1/10以下であり、
中間層の25℃での粘度(Pa・s)は、第1の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)および第2の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)の10倍以上である、
異方性導電フィルムに関する。
本発明の一形態に係る異方性導電フィルムは、硬化されることで、その硬化物により導電性部材間が物理的に接合されてなる接合体において、導電性部材間が異方性導電接続される。
本発明の一形態に係る異方性導電フィルムにおいて、第1の絶縁性硬化型接着剤層と、第2の絶縁性接着剤層との区別は便宜的なものである。その製造時において、未硬化中間層と最初にラミネートする絶縁性硬化型接着剤層を第1の絶縁性硬化型接着剤層とし、次いでラミネートする絶縁性硬化型粘着剤層を第2の絶縁性硬化型接着剤層とする。未硬化中間層と2つの絶縁性硬化型接着剤層を同時にラミネートする場合は、いずれか一方を第1の絶縁性硬化型接着剤層とし、他方を第2の絶縁性硬化型接着剤層とすればよい。
また、本発明の一形態に係る異方性導電フィルムにおいて、第1の絶縁性硬化型接着剤層と、第2の絶縁性接着剤層とは、同一であっても異なっていてもよい。また、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物の組成と、第2の絶縁性硬化型接着剤組成物の組成とは、同一であっても異なっていてもよい。
本発明者は、上記構成を有する異方性導電フィルムを分析することで、上記構成によって課題が解決されるメカニズムの解明を試みたが、そのメカニズムの詳細は不明である。しかしながら、本発明者は、上記構成によって課題が解決されるメカニズムを以下のように推定している。
導電層および絶縁性の接着剤層を含む異方性導電フィルムにおいて、導電層中の導電性粒子の流動性を低減させるためには、導電層の粘度を向上させる必要がある。しかしながら、従来の異方性導電フィルムでは、導電層の粘度を向上させた場合、導電層の樹脂マトリクス自体の流動性が低下する。このため、製造時における圧力による導電性粒子の周囲の樹脂材料の排除が困難となる。言い換えれば、導電層において、導電性粒子と、絶縁性の接着剤層との間に存在する樹脂材料の厚みが増すこととなる。その結果、導電性部材間の接合後においても、異方性導電フィルムの硬化物における、導電性粒子と導電性部材との間に厚い樹脂材料の層が存在することとなる。これより、接続性(導通性)が低下する。反対に、接続性を向上させるためには、導電層の粘度を低下させる必要がある。このとき、導電層の流動性が向上する。その結果、仮圧着時や本圧着時の圧力によって導電性粒子が大きく流動して導電性粒子同士が接触し、ショートが生じることとなり、絶縁性が低下する。
一方、本発明の一形態に係る異方性導電フィルムは、中間層が第1の絶縁性硬化型接着剤層および第2の絶縁性硬化型接着剤層に直接挟持された構造を有する。ここで、中間層は、導電性粒子を含む導電層である。また、当該異方性導電フィルムにおいて、硬化前の未硬化中間層の粘度は、第1の絶縁性硬化型接着剤層の粘度および第2の絶縁性硬化型接着剤層の粘度の1/10以下である。かような未硬化中間層は、流動性が高い。また、第1の絶縁性硬化型接着剤層および第2の絶縁性硬化型接着剤層は、未硬化中間層よりも粘度が高く、流動性は低い。これより、製造時に未硬化中間層に印加される圧力によって、導電性粒子の周囲の樹脂材料がより多く排除される。このとき、導電性部材間の接合後において、異方性導電フィルムの硬化物中の導電性粒子と導電性部材との間には、樹脂材料の層が存在しないか、または存在したとしてもその厚みは顕著に小さくなる。その結果、樹脂材料の層によって導電パスが妨げられることがないことから、高い接続性(導通性)が得られる。また、本発明の一形態に係る異方性導電フィルムの中間層の粘度は、第1の絶縁性硬化型接着剤層の粘度および第2の絶縁性硬化型接着剤層の粘度の10倍以上である。このとき、導電層である中間層中の流動性は著しく低くなり、仮圧着時や本圧着時の圧力による導電性粒子の流動が抑制される。本発明の一形態に係る異方性導電フィルムでは、中間層中での導電性粒子同士の接触が抑制され、この接触に起因して生じるショートの発生も抑制されることから、高い絶縁性が得られる。
なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、その正誤が本発明の技術的範囲に影響を及ぼすものではない。
以下、異方性導電フィルムを構成する各層について詳細に説明する。なお、本発明に係る異方性導電フィルムは、以下で説明する構成に限定されるものではない。
(中間層)
本発明の一形態に係る異方性導電フィルムは、中間層を有する。ここで、中間層は、異方性導電フィルムに異方性導電性を付与する機能を有する。そして、本発明の一形態に係る異方性導電フィルムは、中間層が、第1の絶縁性硬化型接着剤層と、第2の絶縁性硬化型接着剤層とで直接挟持された構造を有する。
本明細書において、「直接挟持される」とは、挟持される部材が、当該部材を挟持する部材と直接接するような形で挟持されることを表す。すなわち、挟持される部材が、当該部材を挟持する部材によって「直接挟持される」とき、挟持される部材と、当該部材を挟持する部材との間には、他の部材は存在しない。
中間層は、中間層形成用硬化型組成物から構成される未硬化中間層の硬化層である。すなわち、中間層形成用硬化型組成物の硬化物からなる。また、中間層形成用硬化型組成物は、導電性粒子と、硬化性化合物とを含有する。したがって、中間層は、導電性粒子を含有する。
本発明の一形態に係る異方性導電フィルムにおいて、未硬化中間層の25℃での粘度(Pa・s)は、第1の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)および第2の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)の1/10以下である。当該粘度比が1/10超であると、接続性が不十分となるからである。このとき、未硬化中間層は、流動性が低くなる。よって、製造時に未硬化中間層に印加される圧力による導電性粒子の周囲の樹脂材料の排除がより困難となる。その結果、導電性部材間の接合後において、異方性導電フィルムの硬化物中の導電性粒子と導電性部材との間に、厚い樹脂材料の層が存在し、導電パスが妨げられる。ここで、未硬化中間層の25℃での粘度(Pa・s)は、第1の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)および第2の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)の1/20以下であることがより好ましく、1/50以下であることがさらに好ましい。なお、当該粘度比は、1/100以下であってもよい。上記範囲であると、接続性がより向上するからである。また、未硬化中間層の25℃での粘度(Pa・s)は、第1の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)および第2の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)の1/100,000以上であることが好ましく、1/10,000以上であることがより好ましい。また、当該粘度比は、1/1,000以上であることがさらに好ましく、1/100以上であることが特に好ましい。上記範囲であると、粒子をより安定して分散でき、生産性がより容易となる。
ここで、第1の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)に対する未硬化中間層の25℃での粘度(Pa・s)の比率と、第2の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)に対する未硬化中間層の25℃での粘度(Pa・s)の比率とが異なっていてもよい。この場合でも、いずれの粘度比も上記挙げた、本発明の一形態でとりうるいずれかの範囲内にあることが好ましい。
未硬化中間層の25℃での粘度(Pa・s)は、特に制限されないが、100Pa・s以上であることが好ましい。また、当該粘度は、200Pa・s以上であることがより好ましく、1,000Pa・s以上であることがさらに好ましい。上記範囲であると、中間層の作製がより容易となるからである。また、中間層の25℃での粘度(Pa・s)は、特に制限されないが、10,000,000Pa・s以下であることが好ましい。そして、当該粘度は、1,000,000Pa・s以下であることがより好ましく、50,000Pa・s以下であることがさらに好ましい。さらに、当該粘度は、10,000Pa・s以下であることがよりさらに好ましく、2,000Pa・s以下であることが特に好ましい。上記範囲であると、導電性がより向上するからである。
なお、未硬化中間層の25℃での粘度(Pa・s)は、これを構成する各成分の添加量比によって調整することができ、例えば、膜形成樹脂や充填剤の比率を高めることで値を大きくすることができる。
本発明の一形態に係る異方性導電フィルムにおいて、未硬化中間層の硬化層である中間層の25℃での粘度(Pa・s)は、第1の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)および第2の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)の10倍以上である。中間層の25℃での粘度(Pa・s)が第1の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)および第2の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)の10倍未満であると、絶縁性が不十分となる。中間層の流動性が高く、仮圧着時や本圧着時の圧力による導電性粒子の流動により導電性粒子同士が接触し、ショートが発生するからである。ここで、中間層の25℃での粘度(Pa・s)は、第1の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)および第2の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)の50倍以上であることがより好ましい。なお、中間層の25℃での粘度(Pa・s)は、第1の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)および第2の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)の100倍以上であってもよく、1,000倍以上であってもよい。上記範囲であると、絶縁性がより向上するからである。また、中間層の25℃での粘度(Pa・s)は、第1の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)および第2の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)の1,0000,000倍以下であることが好ましく、1,000,000倍以下であることがより好ましく、100,000倍以下であることがさらに好ましい。そして、中間層の25℃での粘度(Pa・s)は、第1の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)および第2の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)の10,000倍以下であることがよりさらに好ましく、1,000倍以下であることが特に好ましく、100倍以下であることがさらに特に好ましい。上記範囲であると、導電性がより向上するからである。
ここで、第1の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)に対する中間層の25℃での粘度(Pa・s)の比率と、第2の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)に対する中間層の25℃での粘度(Pa・s)の比率とが異なっていてもよい。この場合でも、いずれの粘度比も上記挙げた、本発明の一形態でとりうるいずれかの範囲内にあることが好ましい。
中間層の25℃での粘度(Pa・s)は、特に制限されないが、10,000Pa・s以上であることが好ましい。また、当該粘度は、50,000Pa・s以上であることがより好ましく、100,000Pa・s以上であることがさらに好ましい。そして、当該粘度は、1,000,000Pa・s以上であることが特に好ましい。上記範囲であると、絶縁性がより向上するからである。また、中間層の25℃での粘度(Pa・s)は、特に制限されないが、1,000,000,000Pa・s以下であることが好ましい。また、当該粘度は、500,000,000Pa・s以下であることがより好ましく、100,000,000以下であることがさらに好ましい。そして、当該粘度は、10,000,000以下であってもよく、2,000,000以下であってもよい。上記範囲であると、導電性がより向上するからである。これより、中間層の25℃での粘度の好ましい一例としては、10,000Pa・s以上10,000,000Pa・s以下が挙げられる。
なお、中間層の25℃での粘度(Pa・s)は、これを構成する各成分の添加量比や硬化条件によって調整することができる。例えば、硬化性組成物や充填剤の比率を高めることや、硬化時に付与するエネルギーの総量をより大きくすることで値を大きくすることができる。
ここで、未硬化中間層、その硬化層である中間層、第1の絶縁性硬化型接着剤層および第2の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)は、E型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて、25℃、2.5rpmの条件で測定することができる。それぞれの層についての測定方法の詳細は実施例に記載する。
中間層の膜厚は、特に制限されないが、0.01μm以上100μm以下であることが好ましく、0.1μm以上50μm以下であることがより好ましく、0.5μm以上10μm以下であることがさらに好ましい。上記範囲であると、異方性導電フィルムの接続性および絶縁性がより向上するからである。
中間層形成用硬化型組成物と、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物とは、硬化性が異なることが好ましい。本明細書において、「硬化性が異なる」とは、活性エネルギー線(例えば、放射線、紫外線または可視光線)照射による硬化と、加熱による硬化のような、硬化に必要なエネルギーの付与方法が異なる場合を表す。また、活性エネルギー線照射において、一方の硬化反応が進行し、他方の硬化反応が実質的に進行しないよう異なる活性エネルギー線の種類または波長を選択する場合も含めるものとする。このとき、異方性導電フィルムの接続性および絶縁性の向上との効果をより効率的に得ることができ、また当該効果をより向上させることができる。異方性導電フィルムの製造における硬化段階と、異方性導電フィルム使用時における硬化段階とで、それぞれ異なる層の硬化反応を促進させることが可能となる。これにより、製造時において未硬化中間層に圧力を印加する際には未硬化中間層を低粘度とし、その後これを硬化してなる中間層を高粘度とすることがより容易となるからである。これらの中でも、中間層形成用硬化型組成物は、活性エネルギー線硬化型組成物であり、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物は、共に熱硬化型組成物であることがより好ましい。また、中間層形成用硬化型組成物は、紫外線硬化型組成物であり、後述する紫外線硬化剤をさらに含み、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物は、後述する紫外線無反応型熱硬化剤をさらに含むことがさらに好ましい。
なお、中間層形成用硬化型組成物を構成する各成分の詳細は後述する。
(第1の絶縁性硬化型接着剤層および第2の絶縁性硬化型接着剤層)
本発明の一形態に係る異方性導電フィルムは、第1の絶縁性硬化型接着剤層と、第2の絶縁性硬化型接着剤層とを有する。ここで、第1の絶縁性硬化型接着剤層および第2の絶縁性硬化型接着剤層は、異方性導電性フィルムに接着性を付与し、接続性をより向上させる機能を有する。すなわち、第1の絶縁性硬化型接着剤層および第2の絶縁性硬化型接着剤層が硬化することで、異方性導電フィルムの硬化物によって導電性部材間が十分に接合されることとなる。また、異方性導電フィルムの製造において、硬化前の中間層である未硬化中間層またはその硬化後の中間層を挟持する際にこれらの層に圧力を印加し、導電性粒子の周囲の樹脂材料の排除する機能を有する。そして、本発明の一形態に係る異方性導電フィルムは、第1の絶縁性硬化型接着剤層と、第2の絶縁性硬化型接着剤層とが、中間層を直接挟持する構造を有する。
第1の絶縁性硬化型接着剤層および第2の絶縁性硬化型接着剤層は、それぞれ、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物からなる。また、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物は、共に硬化性化合物を含有する。
第1の絶縁性硬化型接着剤層および第2の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度は、特に制限されないが、1,000Pa・s以上であることが好ましい。また、これらの粘度は、5,000Pa・s以上であることがより好ましく、10,000Pa・s以上であることがさらに好ましい。上記範囲であると、接続性がより向上するからである。また、第1の絶縁性硬化型接着剤層および第2の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度は、特に制限されないが、10,000,000Pa・s以下であることが好ましい。また、これらの粘度は、5,000,000Pa・s以下であることがより好ましく、1,000,000Pa・s以下であることがさらに好ましい。そして、これらの粘度は、100,000Pa・s以下であることがよりさらに好ましく、25,000Pa・s以下であることが特に好ましい。上記範囲であると、中間層の25℃での粘度をより低く設定することができ、接続性がより向上するからである。第1の絶縁性硬化型接着剤層および第2の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度の好ましい一例としては、1,000Pa・s以上1,000,000Pa・s以下が挙げられる。ここで、第1の絶縁性硬化型接着剤層および第2の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)は、前述のように、E型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて、25℃、2.5rpmの条件で測定することができる。測定方法の詳細は実施例に記載する。
ここで、第1の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)と、第2の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)とが異なっていてもよい。この場合でも、いずれの粘度も上記挙げた、本発明の一形態がとりうるいずれかの範囲内にあることが好ましい。
なお、第1の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)および第2の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)は、これらを構成する各成分の添加量比によって調整することができ、例えば、膜形成樹脂や充填剤の比率を高めることで値を大きくすることができる。
第1の絶縁性硬化型接着剤層および第2の絶縁性硬化型接着剤層の導通抵抗値は、10Ω以上であることが好ましい。上記範囲であると、絶縁性がより向上するからである。導通抵抗値は、以下のように測定することができる。まず、異方性導電フィルムの製造と同条件で、第1の絶縁性硬化型接着剤層および第2の絶縁性硬化型接着剤層をそれぞれ形成してテストサンプルとする。次いで、ガラス基板として、ITO(Indium Tin Oxide)膜がパターニングされた平均厚み0.5mmのITO配線板を用いた。電子部品として、ICチップ(1.8mm×20mm、t(厚み)=0.5mm、Au-plated bump 30μm×85μm、h(高さ)=15μm)を準備する。続いて、前記ITO配線板と上記テストサンプルとの積層体におけるテストサンプルの表面に前記ICチップを配置し、緩衝材として平均厚み50μmのテフロン(登録商標)が被覆されたヒートツールを用いて、接合温度60℃、接合圧力1MPa、接合時間1秒の接合条件で接合(仮圧着)することで仮貼りをする。その後、前記ヒートツールを用いて、接合温度140℃、接合圧力60MPa、接合時間5秒の接合条件で接合(本圧着)することで、接合体を完成させる。これら第1の絶縁性硬化型接着剤層および第2の絶縁性硬化型接着剤層を用いた接合体の抵抗値を、それぞれ、デジタルマルチメータ(品番:デジタルマルチメータ7555、横河電機株式会社製)を用いて、4端子法にて、電流1mAの条件で測定する。
第1の絶縁性硬化型接着剤層および第2の絶縁性硬化型接着剤層の膜厚は、特に制限されない。しかしながら、それぞれ、0.1μm以上100μm以下であることが好ましく、0.5μm以上50μm以下であることがより好ましく、1μm以上10μm以下であることがさらに好ましい。上記範囲であると、異方性導電フィルムの接続性および絶縁性がより向上するからである。
なお、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物を構成する各成分の詳細は後述する。
(中間層形成用硬化型組成物、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物)
以下に、中間層形成用硬化型組成物、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物として用いられる各硬化型組成物について、これらを構成する各成分の詳細を記載する。
[導電性粒子]
中間層形成層硬化型組成物に用いられる硬化型組成物は、導電性粒子を含有する。したがって、中間層形成層硬化型組成物の硬化物からなる中間層は、導電性粒子を含有する。導電性粒子は、異方性導電フィルムの硬化物により導電性部材間が物理的に接合されてなる接合体において、導電性部材間を異方性導電接続させる機能を有する。
導電性粒子としては、特に制限されないが、異方性導電フィルム分野において使用されている公知の導電性粒子を用いることができる。導電性粒子としては、例えば、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、錫(Sn)、鉛(Pb)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、銀(Ag)、金(Au)等の各種金属や金属合金の粒子、金属酸化物、カーボン、グラファイト、ガラス、セラミック、樹脂等の粒子の表面に金属をコートした粒子、これらの粒子の表面に更に絶縁薄膜をコートした粒子等が挙げられる。これらの中でも、樹脂等の粒子の表面に金属をコートした粒子であることが好ましい。異方性導電フィルムの接続性(導通性)および絶縁性の両立をより高いレベルで実現し、ファインピッチへの適用性をより向上させることができるからである。樹脂粒子の表面に金属をコートした粒子において、樹脂粒子としては、特に制限されないが、例えば、エポキシ化合物、フェノール樹脂、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、スチレン系樹脂等の粒子を用いることができる。また、樹脂粒子の表面に金属をコートした粒子において、コートに用いられる金属としては、特に制限されないが、例えば、ニッケル、鉄、銅、アルミニウム、錫、鉛、クロム、コバルト、銀、金等の各種金属や金属合金を用いることができる。これらの中でも、ニッケル、銅、銀および金から選択される少なくとも1種の金属からなる単層または2層以上の薄膜であることが好ましく、ニッケル/金薄膜であることがより好ましい。
導電性粒子の平均粒子径d(μm)は、特に制限されないが、1μm以上40μm以下であることが好ましく、1μm以上10μm以下であることがより好ましく、2μm以上6μm以下であることがさらに好ましく、2μm以上3μm以下であることが特に好ましい。ここで、平均粒子径d(μm)は、公知の方法、装置を用いて測定することができ、例えば、湿式粒度分布計、レーザー式粒度分布計等を用いて、または電子顕微鏡等で粒子を観察し、算出することで求めることができる。本明細書において、導電性粒子の平均粒子径d(μm)は、粒度分布測定装置(株式会社セイシン企業製、「PITA-1」)にて測定した平均粒子径を採用する。
導電性粒子は、市販品を用いてもよく、例えば、積水化学工業株式会社製のミクロパール(登録商標)AUシリーズ(例えば、3μm品、4μm品(AUL704)、7.25μm品)等が挙げられる。
ただし、導電性粒子は、これらに限定されるものではない。また、導電性粒子は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
中間層形成用硬化型組成物中の導電性粒子の含有量は、特に制限されない。しかしながら、硬化性化合物100質量部に対して、1質量部以上500質量部以下であることが好ましく、50質量部以上300質量部以下であることがより好ましい。そして、当該含有量は、硬化性化合物100質量部に対して、100質量部以上200質量部以下であることがさらに好ましく、120質量部以上150質量部以下であることが特に好ましい。上記範囲であると、異方性導電フィルムの接続性および絶縁性がより向上するからである。なお、硬化型組成物からなる層や、硬化型組成物の硬化物中における好ましい含有量の範囲も上記と同様である。
導電性粒子の捕捉数、すなわち2,000平方μmの面積当たりに存在する粒子数の下限値は、5個/2,000平方μm以上であることが好ましい。より好ましくは、10個/2,000平方μm以上であり、さらに好ましくは、20個/2,000平方μm以上である。上記範囲であると、異方性導電フィルムの接続性(導通性)をより向上させることができる。また、導電性粒子の捕捉数、すなわち2,000平方μmの面積当たりに存在する粒子数の上限値は、特に制限されない。しかしながら、100個/2,000平方μm以下であることが好ましく、50個/2,000平方μm以下であることがより好ましく、25個/2,000平方μm以下であることがさらに好ましい。上記範囲であると、異方性導電フィルムの絶縁性がより向上するからである。なお、捕捉数は、光学顕微鏡観察によって求めることができる。なお、測定方法の詳細は実施例に記載する。
一方、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物に用いられる硬化型組成物は、導電性粒子を実質的に含有しないことが好ましい。なお、本明細書において、「導電性粒子を実質的に含有しない」とは、導電性粒子の含有量が、硬化性化合物100質量部に対して、0.1質量部以下であることを表す(下限0質量部)。なお、硬化型組成物からなる層や、硬化型組成物の硬化物中における好ましい含有量の範囲も上記範囲と実質的に同様である。
[硬化性化合物]
中間層形成層硬化型組成物、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物に用いられる硬化型組成物は、それぞれ、硬化性化合物を含有する。したがって、中間層形成層硬化型組成物の硬化物からなる中間層は、硬化性化合物の硬化反応物を含有する。硬化性化合物は、これを含む組成物に硬化性を付与する機能を有する。中間層形成層硬化型組成物が硬化性化合物を含むことで、製造時において圧力を印加する際には未硬化中間層の状態とし、その後に中間層を形成するために硬化をすることができるようになる。これにより、異方性導電フィルムの接続性および絶縁性を向上させることができる。また、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物が硬化性化合物を含むことで、異方性導電性フィルムに接着性を付与することができるようになる。これより、異方性導電フィルムの接続性を向上させることができる。
本明細書において、硬化性化合物とは、硬化反応をして高分子の網目状構造を形成することでこれを含む組成物に硬化性を付与する機能を有する、低分子化合物、オリゴマーまたは高分子の重合性化合物を表すものとする。
硬化型組成物の硬化手段の選択は、硬化性化合物の種類の選択によって行ってもよい。硬化性化合物を硬化しうる硬化手段は、活性エネルギー線照射または加熱であることが好ましい。
硬化型組成物は、硬化性化合物としてエポキシ化合物を含有することが好ましい。エポキシ化合物は、エポキシ基を有する化合物である。また、エポキシ化合物は、一般的には、カチオン重合性の硬化性化合物である。
エポキシ化合物としては、特に制限されないが、分子内にエポキシ基を平均で2個以上有する化合物であることが好ましい。
エポキシ化合物としては、特に制限されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物;ビスフェノールF型エポキシ化合物;ビスフェノールS型エポキシ化合物;テトラメチルビスフェノールA型エポキシ化合物;ビフェニル型エポキシ化合物;ナフタレン型エポキシ化合物;フルオレン型エポキシ化合物;フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物等のノボラック型エポキシ化合物;脂肪族エーテル型エポキシ化合物等のグリシジルエーテル型エポキシ化合物;グリシジルエーテルエステル型エポキシ化合物;グリシジルエステル型エポキシ化合物;グリシジルアミン型エポキシ化合物;ヒダントイン型エポキシ化合物;脂環式エポキシ化合物;脂環式環を形成する炭素原子に直接結合するエポキシ基を有するエポキシ化合物(本明細書において、脂環式環結合エポキシ基含有エポキシ化合物とも称する);ならびにこれらのハロゲン化物;これらの水素添加物;およびウレタン変性、ゴム変性、シリコーン変性等のこれらの変性された化合物等が挙げられる。これらの中でも、脂環式エポキシ化合物または脂環式環結合エポキシ基含有エポキシ化合物が好ましく、脂環式エポキシ化合物がより好ましい。異方性導電フィルムの接続性および絶縁性がより向上するからである。ただし、エポキシ化合物はこれらに限定されるものではない。
本明細書において、脂環式エポキシ化合物とは、脂環式環上にあるエポキシ基を分子内に1個以上有するエポキシ化合物を意味する。脂環式環上にあるエポキシ基を分子内に1個以上有するエポキシ化合物において、脂環式環上にあるエポキシ基は、脂環式環を形成する2個の炭素原子と、エポキシ基を形成する2個の炭素原子とが共有される構造を有する。
これらの中でも、下記式(I)に示す構造から、エポキシ基を構成しない脂環式環を構成する炭素原子と結合する水素原子を1個または複数個取り除いた部分構造を有する脂環式エポキシ化合物が特に好ましい。また、下記式(II)で表される構造から、エポキシ基と結合しない脂環式環を構成する炭素原子と結合する水素原子を1個または複数個取り除いた部分構造を有する脂環式環結合エポキシ基含有エポキシ化合物も特に好ましい。そして、下記式(I)で表される構造からエポキシ基と結合しない脂環式環を構成する炭素原子と結合する水素原子を1個または複数個取り除いた部分構造を有する、脂環式エポキシ化合物が極めて好ましい。
脂環式エポキシ化合物、または脂環式環結合エポキシ基含有エポキシ化合物としては、特に制限されないが、例えば、液状エポキシ化合物である3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性 3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、ブタンテトラカルボン酸 テトラ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル) 修飾ε-カプロラクトン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレートや、固形エポキシ化合物である2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物等を好ましく用いることができる。これらの中でも、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートがより好ましい。
エポキシ化合物としては、液状エポキシ化合物を含有することが好ましい。液状エポキシ化合物とは、常温で液状であるエポキシ化合物を表す。液状エポキシ化合物を用いることで、層の柔軟性が向上し、異方性導電フィルムの生産性がより良好となるからである。
エポキシ化合物のエポキシ当量は、特に制限されないが、70以上500以下であることが好ましい。当該エポキシ当量は、90以上400以下であることがより好ましく、150以上300以下であることがさらに好ましい。上記範囲であると、異方性導電フィルムの接続性および絶縁性がより向上するからである。
エポキシ化合物は、市販品を用いてもよい。市販品の具体例としては、例えば、株式会社ダイセル製 セロキサイド(登録商標)2021P、2081、2000、EHPE(登録商標)3150、3150CE、エポリード(登録商標)GT401、サイクロマー(登録商標)M、DIC株式会社製 EPICLON(登録商標)840、三菱化学株式会社製 jER(登録商標)1001、1031S、157S70、日本化薬株式会社製 NC-3000、NC-3000H、XD-1000、NC-7000L、NC-7300L、EPPN-501H、EPPN-501HY、EPPN-502H、EOCN-1020、EOCN-1025、EOCN-1035、EOCN-1045、EPPN-201、EPPN-S、EPPN-105等が挙げられる。
硬化性化合物は、ラジカル重合性の硬化性化合物(ラジカル重合性化合物)であってもよい。ラジカル重合性化合物としては、特に制限されず、異方性導電フィルム分野で使用されうる公知のものが挙げられる。例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、分子内に(メタ)アクリロイル基を平均で2個以上有する化合物であることが好ましい。
(メタ)アクリロイル化合物としては、分子内に(メタ)アクリロイル基を(メタ)アクリロイルオキシの形で有する化合物(以下、(メタ)アクリレート化合物とも称する)であることが好ましい。(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n又はi-プロピル(メタ)アクリレート、n,i,sec又はtert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルアクリレ-ト等の単官能(メタ)アクリレート化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2-シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジメタクリレート等の2官能(メタ)アクリレート化合物;グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等の3官能(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の4官能の(メタ)アクリレート化合物;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の5官能以上の(メタ)アクリレート化合物:およびこれらをウレタン変性、エチレンオキサイド変性、プロピレンオキサイド変性等のこれらの変性された化合物等が挙げられる。
ただし、硬化性化合物は、これらに限定されるものではない。また、硬化性化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
硬化型組成物中の硬化性化合物の含有量は、特に制限されないが、硬化型組成物の総質量に対して、1質量%以上70質量%以下であることが好ましい。当該含有量は、硬化型組成物の総質量に対して、10質量%以上60質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上40質量%以下であることがさらに好ましい。上記範囲であると、異方性導電フィルムの接続性および絶縁性がより向上するからである。中間層形成用硬化型組成物中の硬化性化合物の含有量は、中間層形成用硬化型組成物の総質量に対して、28質量%以上40質量%以下であることが特に好ましい。上記範囲であると、異方性導電フィルムの接続性がより向上するからである。なお、硬化型組成物からなる層や、硬化型組成物の硬化物中における好ましい含有量の範囲も上記と同様である。
中間形成用硬化型組成物に含まれる硬化性化合物は、エポキシ化合物または(メタ)アクリレート化合物である。第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第1の絶縁性硬化型粘着剤組成物に含まれる硬化性化合物は、エポキシ化合物であることが好ましい。
[硬化剤]
中間層形成層硬化型組成物、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物に用いられる硬化型組成物は、それぞれ、硬化剤をさらに含有することが好ましい。したがって、中間層形成層硬化型組成物の硬化物からなる中間層は、硬化剤または硬化剤と硬化性化合物との硬化反応物をさらに含有することが好ましい。硬化剤は、硬化性化合物および硬化剤を含む組成物の硬化を促進する機能を有する。硬化性化合物である重合性化合物の硬化反応(架橋反応)をより促進させることができる。そして、中間層形成層硬化型組成物が硬化剤および硬化性化合物を含むことで、中間層の粘度をより向上させることができる。これにより、異方性導電フィルムの接続性および絶縁性の向上との効果をより向上させることができる。また、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物が硬化剤および硬化性化合物を含むことでも、異方性導電性フィルムの接着性および接続性をより向上させることができる。
硬化剤の種類は、特に制限されないが、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤等の公知の硬化剤を硬化性化合物の種類や目的に応じて適宜選択して用いることができる。
硬化型組成物の硬化手段の選択は、硬化剤の種類、または硬化剤と硬化性化合物との組み合わせの選択によって行うことが好ましい。
硬化型組成物が活性エネルギー線(例えば、放射線、紫外線または可視光線)硬化型組成物である場合、硬化剤は、光硬化剤であることが好ましい。本願明細書において、光硬化剤とは、放射線、紫外線または可視光線によって硬化性化合物の硬化反応を促進させる化合物を表す。また、本願明細書において、光硬化剤には、放射線、紫外線または可視光線によっても加熱によっても硬化性化合物の硬化反応を促進させる化合物も含まれるものとする。これらの中でも、紫外線によって硬化性化合物の硬化反応を促進させる化合物(以下、紫外線硬化剤とも称する)であることが好ましい。異方性導電フィルムの生産効率、安全性およびコスト等がより向上するからである。
光硬化剤としては、特に制限されないが、光ラジカル重合開始剤、光アニオン重合開始剤、光カチオン重合開始剤等が挙げられる。
光ラジカル重合開始剤としては、特に制限されないが、紫外線ラジカル重合開始剤であることが好ましい。紫外線ラジカル重合開始剤としては、特に制限されず公知の化合物を用いることができる。紫外線ラジカル重合開始剤としては、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンジルケタール系光重合開始剤、リン系光重合開始剤等が挙げられる。
光アニオン重合開始剤としては、特に制限されないが、紫外線アニオン重合開始剤であることが好ましい。紫外線アニオン重合開始剤としては、公知の化合物を用いることができる。
光カチオン重合開始剤としては、特に制限されないが、紫外線カチオン重合開始剤であることが好ましい。紫外線カチオン重合開始剤としては、特に制限されず、公知の化合物を用いることができる。例えば、紫外線によりカチオン重合性の硬化性化合物をカチオン重合させうる酸を発生する、公知のヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、フェロセン類等を用いることができる。これらの中でも、スルホニウム塩が好ましく、芳香族スルホニウム塩がより好ましい。紫外線カチオン重合開始剤の好ましい例としては、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロボレート、トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロボレート等が挙げられる。紫外線カチオン重合開始剤の市販品としては、例えば、株式会社ADEKA製 SP-150、SP-170、CP-66、CP-77、日本曹達株式会社製 CI-2855、CI-2639、三新化学工業株式会社製 サンエイド(登録商標)SI-60L、SI-80L、SI-100L、SI-110L、SI-180L、ユニオンカーバイド社製のCYRACURE(登録商標) UVI-6990、UVI-6974等が挙げられる。なお、上記の具体的な化合物および市販品は、紫外線によっても熱によってもカチオン重合性の硬化性化合物をカチオン重合させ得る酸を発生する化合物である。
中間層形成用硬化型組成物、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物または第2の絶縁性硬化型接着剤組成物が熱硬化型組成物である場合、硬化剤は、活性エネルギー線無反応型熱硬化剤であることが好ましい。本願明細書において、活性エネルギー線無反応型熱硬化剤とは、放射線、紫外線または可視光線によっては実質的に硬化性化合物の促進効果を発現せず、加熱によって硬化性化合物の硬化反応を促進させる化合物を表す。これらの中でも、紫外線によっては実質的に硬化性化合物の促進効果を発現せず、加熱によって硬化性化合物の硬化反応を促進させる化合物(以下、紫外線無反応型熱硬化剤とも称する)であることが好ましい。異方性導電フィルムの生産効率、安全性およびコスト等がより向上するからである。
活性エネルギー線無反応型熱硬化剤としては、特に制限されないが、活性エネルギー線無反応型熱ラジカル重合開始剤、活性エネルギー線無反応型熱アニオン開始剤および活性エネルギー線無反応型熱カチオン重合開始剤等が挙げられる。これより、紫外線無反応型熱硬化剤としては、特に制限されないが、紫外線無反応型熱ラジカル重合開始剤、紫外線無反応型熱アニオン開始剤および紫外線無反応型熱カチオン重合開始剤等が挙げられる。これらの中でも、紫外線無反応型熱カチオン重合開始剤が好ましい。
紫外線無反無反応型熱ラジカル重合開始剤としては、特に制限されないが、例えば、有機過酸化物等が挙げられる。
紫外線無反応型熱アニオン開始剤としては、熱によりアニオン重合性の硬化性化合物をアニオン重合させ得る塩基を発生するが、紫外線によりかような塩基を発生しない、公知の化合物等が挙げられる。
紫外線無反応型熱カチオン重合開始剤としては、特に制限されないが、例えば、分子内に芳香環構造を有しない化合物であることが好ましい。紫外線無反応型熱カチオン重合開始剤の市販品としては、例えば、King Industries,Inc製 CXC-1612、CXC-1821等が挙げられる。
ただし、硬化剤は、これらに限定されるものではない。また、硬化剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
硬化剤の含有量は、特に制限されないが、硬化性化合物100質量部に対して、0.1質量部以上250質量部以下であることが好ましい。当該含有量は、硬化性化合物100質量部に対して、10質量部以上120質量部以下であることがより好ましく、20質量部以上60質量部以下であることがさらに好ましい。上記範囲であると、異方性導電フィルムの接続性および絶縁性がより向上するからである。なお、硬化型組成物からなる層や、硬化型組成物の硬化物中における好ましい含有量の範囲も上記と同様である。
前述のように、中間層形成用硬化型組成物と、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物とは、硬化手段が異なることが好ましい。ここで、中間層形成用硬化型組成物は、活性エネルギー線硬化型組成物であり、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物は、共に熱硬化型組成物であることがより好ましい。そして、硬化型組成物の硬化手段の選択は、硬化剤の種類、または硬化剤と硬化性化合物との組み合わせの選択によって行うことが好ましい。このことから、中間層形成用硬化型組成物は、硬化剤として光硬化剤をさらに含み、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物は、活性エネルギー線無反応型熱硬化剤を含むことが好ましい。また、中間層形成用硬化型組成物は、紫外線硬化型組成物であり、紫外線硬化剤をさらに含み、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および前記第2の絶縁性硬化型接着剤組成物は、紫外線無反応型熱硬化剤をさらに含むことがより好ましい。
中間層形成用硬化型組成物は、カチオン重合性の硬化性化合物と、光カチオン重合開始剤とを含むことが好ましく、エポキシ化合物と、紫外線カチオン重合開始剤とを含むことがより好ましい。また、中間層形成用硬化型組成物は、ラジカル重合性の硬化性化合物と、光ラジカル重合開始剤とを含むことがより好ましく、(メタ)アクリレート化合物と、紫外線ラジカル重合開始剤とを含むことがさらに好ましい。そして、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物は、カチオン重合性の硬化性化合物と、活性エネルギー線無反応型熱カチオン重合開始剤とを含むことが好ましい。また、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物は、エポキシ化合物と、紫外線無反応型熱カチオン重合開始剤を含むことがより好ましい。
[膜形成樹脂]
中間層形成層硬化型組成物、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物に用いられる硬化型組成物は、それぞれ、膜形成樹脂をさらに含有することが好ましい。したがって、中間層は、膜形成樹脂をさらに含有することが好ましい。膜形成樹脂は、硬化性組成物からなる層の膜形成性をより向上させる機能を有する。その結果、異方性導電フィルムの接続性および絶縁性をより向上させることができる。本明細書において、膜形成樹脂とは、熱可塑性樹脂であって、上記の硬化性化合物とは異なるものである。
膜形成樹脂として用いられうる熱可塑性樹脂としては、特に制限されないが、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ブチラール樹脂等の種々の樹脂が挙げられる。これらの中でも、フェノキシ樹脂が好ましい。硬化性組成物からなる層の膜形成性がより向上し、異方性導電フィルムの接続性および絶縁性をより向上するからである。
フェノキシ樹脂としては、市販品を用いてもよく、市販品としては、例えば、新日鉄住金化学株式会社製 YP-50、YP-70、FX-316ATM55、FX-293AT40等が挙げられる。
膜形成樹脂の重量平均分子量は、特に制限されないが、10,000以上であることが好ましい。フィルム形成性の観点から、10,000以上80,000以下であることがより好ましい。
ただし、膜形成樹脂は、これらに限定されるものではない。また、膜形成樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
硬化型組成物中の膜形成樹脂の含有量は、特に制限されないが、硬化性化合物100質量部に対して、0.1質量部以上500質量部以下であることが好ましい。当該含有量は、硬化性化合物100質量部に対して、20質量部以上200質量部以下であることがより好ましく、30質量部以上100質量部以下であることがさらに好ましい。上記範囲であると、接着剤層の膜形成性をより向上させることができ、異方性導電フィルムの接続性および絶縁性がより向上するからである。中間層形成用硬化型組成物中の膜形成樹脂の含有量は、硬化性化合物100質量部に対して、30質量部以上40質量部以下であることが特に好ましい。上記範囲であると、異方性導電フィルムの接続性がより向上するからである。
[充填剤]
中間層形成層硬化型組成物、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物に用いられる硬化型組成物は、それぞれ、充填剤をさらに含有することが好ましい。したがって、中間層は、充填剤を含有することが好ましい。充填剤は、硬化型組成物からなる層の硬さをより適切な値とし、異方性導電フィルムの接続性および絶縁性をより向上させる機能を有する。
充填剤としては、特に制限されず公知のものを用いることができ、有機充填剤であっても無機充填剤であってもよい。これらの中でも、無機充填剤が好ましい。ブロッキング発生の抑制効果をより向上させることができるからである。
無機充填剤としては、特に制限されないが、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸ジルコニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、二酸化珪素(シリカ)、チタン酸カリウム、カオリン、タルク、アスベスト粉、石英粉、雲母、ガラス繊維等が挙げられる。これらの中でも、シリカが好ましい。硬化型組成物からなる層の硬さをより適切な値とするができ、異方性導電フィルムの接続性および絶縁性がより向上するからである。
また、充填剤の形状としては、特に制限されないが、粒子状であることが好ましい。これより、特に好ましい充填剤は、シリカ粒子である。シリカ粒子としては、特に制限されず、非晶性シリカ、結晶性シリカ等、公知のものを適宜使用できる。シリカ粒子の具体例としては、疎水性ヒュームドシリカ粒子、低級アルコールが吸着したシリカ球状粒子等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
充填剤の分散性としては、特に制限されないが、単分散性を有するものを含むことが好ましい。充填剤として単分散性を有するものを用いる場合、充填剤の添加に伴う粘度上昇がより抑制され、仮貼り特性および低温接続性がより向上する。この理由は、詳細は不明であるが、一次粒子の状態で分散される充填剤は、凝集性が低いからであると推測できる。また、一次粒子の状態で分散される充填剤は、または凝集を開始するのが遅く、仮に凝集が生じる場合であっても凝集サイズが小さくなるからであると推測できる。
なお、本明細書においては、平均粒子径の5倍以内の粒子径の個数の割合が、粒子の総個数に対して90%以上となる状態を、単分散性であるとしている。ここで、平均粒子径は、株式会社島津製作所製 レーザー回折式粒度分布測定装置 SALD-2300によって測定を行い、この結果より算出できる。
単分散性を有する充填剤としては、単分散シリカ粒子が特に好ましい。具体的には、単分散シリカ粒子は、シリカゾルを用いることが好ましい。そして、単分散シリカ粒子の中でも、低級アルコールが吸着したシリカ球状粒子が最も好ましい。硬化型組成物中でより良好に分散性を示し、単分散シリカ粒子の添加効果がより向上するからである。
充填剤として、単分散シリカ粒子とその他の充填剤とを併用する場合、単分散シリカ粒子の含有量は、充填剤の総質量に対して、10質量%以上が好ましい。当該含有量は、充填剤の総質量に対して、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい(上限100質量%)。充填剤の添加に伴う粘度上昇がより抑制させることができ、仮貼り特性および低温接続性がより向上させることができるからである。
充填剤の平均粒子径は、特に限定されないが、硬化型組成物からなる層の硬さをより適切な値であることが好ましい。異方性導電フィルムの接続性および絶縁性がより向上するからである。
充填剤は、市販品を用いてもよい。シリカ粒子の市販品としては、例えば、日本アエロジル株式会社製 AEROSIL(登録商標) R130、R200、R300、R805、R812、R812S、R8200、R972、R972V、R974、株式会社日本触媒製 シーホスター(登録商標) KE-E10、KE-E30、KE-E40、KE-E150、KE-W10、KE-W30、KE-W50、KE-P10、KE-P30、KE-P50、KE-P100、KE-P150、KE-P250、KE-S10、KE-S30、KE-S50、KE-S100、KE-S150、KE-S250、株式会社トクヤマ製 レオロシール(登録商標) DM30S、HM20S、HM30S、HM-40S、ZD30S、株式会社アドマテックス社製 アドマナノ(登録商標) YA010C、YA050C、YC100C等が挙げられる。
ただし、充填剤はこれらに限定されるものではない。また、充填剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
充填剤の含有量は、特に制限されないが、硬化性化合物100質量部に対して、0.1質量部以上250質量部以下であることが好ましい。当該含有量は、硬化性化合物100質量部に対して、10質量部以上150質量部以下であることがより好ましく、20質量部以上100質量部以下であることがさらに好ましい。上記範囲であると、硬化型組成物からなる層の硬さをより適切な値とするができ、異方性導電フィルムの接続性および絶縁性がより向上するからである。なお、硬化型組成物からなる層や、硬化型組成物の硬化物中における好ましい含有量の範囲も上記と同様である。
[カップリング剤]
中間層形成層硬化型組成物、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物に用いられる硬化型組成物は、それぞれ、カップリング剤をさらに含有することが好ましい。したがって、中間層は、カップリング剤をさらに含有することが好ましい。カップリング剤は、異方性導電フィルムを構成する異なる層間の接着性や、異方性導電フィルムと、ガラス、プラスチック等を含む各種導電性部材との接着性をより向上させる機能を有する。その結果、異方性導電フィルムの接続性および絶縁性をより向上させることができる。なお、本明細書において、カップリング剤が重合性官能基を含有する場合であっても、カップリング剤は上記の硬化性化合物とは異なるものとして取り扱う。
カップリング剤としては、特に制限されず公知のものを用いることができる。これらの中でも、シランカップリング剤が好ましい。異方性導電フィルムの接続性および絶縁性がより向上するからである。
ここで、シランカップリング剤としては、特に制限されず、例えば、エポキシ系シランカップリング剤、(メタ)アクリル系シランカップリング剤、アミン系シランカップリング剤、チオール系シランカップリング剤、ビニル系シランカップリング剤、スチリル系シランカップリング剤、イソシアヌレート系シランカップリング剤、ウレイド系シランカップリング剤、イソシアネート系シランカップリング剤等が挙げられる。これらの中でも、エポキシ系シランカップリング剤が好ましい。異方性導電フィルムの接続性および絶縁性がより向上するからである。
エポキシ系シランカップリング剤としては、特に制限されないが、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。入手が容易であり、異方性導電フィルムの接続性および絶縁性がより向上するからである。
カップリング剤は、市販品を用いてもよい。シランカップリング剤の市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製 KBM-303、KBM-402、KBM-403、KBE-402、KBE-403、KBM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503、KBM-5103、KBM-602、KBM-603、KBM-903、KBE-903、KBE-9103、KBM-573、KBM-575、KBM-802、KBM-803等が挙げられる。
ただし、カップリング剤はこれらに限定されるものではない。また、カップリング剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
硬化型組成物中のカップリング剤の含有量は、特に制限されないが、硬化性化合物100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。当該含有量は、硬化性化合物100質量部に対して、0.5質量部以上20質量部以下であることがより好ましく、1質量部以上10質量部以下であることがさらに好ましい。上記範囲であると、異方性導電フィルムの接続性および絶縁性がより向上するからである。なお、硬化型組成物からなる層や、硬化型組成物の硬化物中における好ましい含有量の範囲も上記と同様である。
[その他の添加剤]
中間層形成層硬化型組成物、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物に用いられる硬化型組成物は、その他の公知の添加剤をさらに含んでもよい。当該添加剤としては、応力緩和剤、安定化剤、水分吸収剤、着色剤、軟化剤、難燃化剤等をはじめとする、接着剤分野および異方性導電フィルム分野における公知の添加剤が挙げられる。これらの添加量は、目的に応じて適宜選択されうる。
(積層フィルム)
本発明の一形態に係る異方性導電フィルムは、本発明の効果を損なわない限り、異方性導電フィルム分野、粘着フィルム分野、接着フィルム分野等に適用されうる他の部材をさらに含む、積層フィルムの形態であってもよい。他の部材としては、上記各分野で用いられる公知のフィルムや公知の層等が挙げられる。
なお、前述のように、本発明の一形態に係る異方性導電フィルムは、中間層が、第1の絶縁性硬化型接着剤層と、第2の絶縁性硬化型接着剤層とで直接挟持された構造を有する。他の部材は、第1の絶縁性硬化型接着剤層または第2の絶縁性硬化型接着剤層の中間層が存在する側とは反対側に設けられることとなる。
他の部材としては、特に制限されないが、例えば、剥離フィルムが挙げられる。剥離フィルムとしては、特に制限されず公知のものを用いることができ、例えば、後述する第1接着剤層形成工程および第2接着剤層形成工程の説明で例示したものを用いることができる。
剥離フィルムは、異方性導電フィルムの片面のみに配置されていても、両面に配置されていてもよいが、両面に配置されていることが好ましい。
[異方性導電フィルムの製造方法]
上記異方性導電性フィルムは、特に制限されないが、以下の製造方法によって製造されることが好ましい。すなわち、本発明の他の一形態は、下記(1)または下記(2)で表される、中間層形成工程と、を有する異方性導電フィルムの製造方法に関する。:
(1)未硬化中間層と、第1の絶縁性硬化型接着剤層とを直接接するようラミネートし、未硬化中間層と、第2の絶縁性硬化型接着剤層とが直接接するようラミネートし、その後、未硬化中間層を硬化して、未硬化中間層の硬化層である中間層を形成する工程、
(2)未硬化中間層と、第1の絶縁性硬化型接着剤層とが直接接するようラミネートした後、未硬化中間層を硬化して、未硬化中間層の硬化層である中間層を形成し、その後、中間層と、第2の絶縁性硬化型接着剤層とが直接接するようラミネートする工程。
ここで、本発明の一形態に係る製造方法は、
第1の絶縁性硬化型接着剤組成物から構成される、第1の絶縁性硬化型接着剤層を形成する、第1接着剤層形成工程と、
第2の絶縁性硬化型接着剤組成物から構成される、第2の絶縁性硬化型接着剤層を形成する、第2接着剤層形成工程と、
中間層形成用硬化型組成物から構成される、未硬化中間層を形成する、未硬化中間層形成工程と、
上記(1)または上記(2)で表される、中間層形成工程と、を有する異方性導電フィルムの製造方法であることがより好ましい。
ここで、上述したように、中間層は、第1の絶縁性硬化型接着剤層と、第2の絶縁性硬化型接着剤層とで直接挟持された構造を有する。第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物は、共に硬化性化合物を含有する。また、中間層形成用硬化型組成物は、硬化性化合物と、導電性粒子とを含有する。そして、未硬化中間層の25℃での粘度(Pa・s)は、第1の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)および第2の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)の1/10以下である。また、中間層の25℃での粘度(Pa・s)は、第1の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)および第2の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa/s)の10倍以上である。
(第1接着剤層形成工程および第2接着剤層形成工程)
本発明の一形態に係る製造方法は、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物から構成される、第1の絶縁性硬化型接着剤層を形成する、第1接着剤層形成工程を有することが好ましい。さらに、本発明の一形態に係る製造方法は、第2の絶縁性硬化型接着剤組成物から構成される、第2の絶縁性硬化型接着剤層を形成する、第2接着剤層形成工程を有することが好ましい。
第1の絶縁性硬化型接着剤層および第2の絶縁性硬化型接着剤層の形成方法は、特に制限されず、公知の接着剤層の形成方法を用いることができる。
第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物は、それぞれ、これらを構成する各成分を常法に従って混合することにより調製することができる。ここで、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物は、共に硬化性化合物を含有する。なお、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物を構成する各成分については、上記説明した各成分と同様である。
第1の絶縁性硬化型接着剤層および第2の絶縁性硬化型接着剤層の形成方法としては、塗布法が好ましい。塗布法で使用する第1の絶縁性硬化型接着剤層形成用塗布液および第2の絶縁性硬化型接着剤層形成用塗布液は、常法に従って調整できる。すなわち、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物を構成する各成分と、任意に用いられる溶剤とを、常法に従って混合することにより調製することができる。混合方法は、特に制限されないが、例えば、遊星攪拌機を用いて行うことが好ましい。
溶剤としては、特に制限されず目的に応じて公知の溶剤から適宜選択すればよく、有機溶剤を用いることが好ましい。有機溶剤としては、特に制限はなく、例えば、MEK(メチルエチルケトン)、MIBK(メチルイソブチルケトン)、PGMEA(プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセタート)、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、トルエン、アルコール(メタノール、エタノール等)等が挙げられる。
溶剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
溶剤の含有量は、接着剤組成物の総質量に対して、10質量%以上90質量%以下であることが好ましい。当該含有量は、接着剤組成物の総質量に対して、30質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、40質量%以上60質量%以下であることがさらに好ましい。溶剤の含有量を適度に少なくすることで、厚膜の接着剤層の形成をより容易とすることができ、また乾燥の時間をより短縮することができる。
第1の絶縁性硬化型接着剤層および第2の絶縁性硬化型接着剤層は、それぞれ、調製した第1の絶縁性硬化型接着剤層形成用塗布液および第2の絶縁性硬化型接着層形成用塗布液を塗布することにより形成することができる。塗布方法としては、特に制限されず目的に応じて適宜選択することができ、例えば、バーコーティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、リバースロールコーティング、ダイコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、リップコーティング、エアーナイフコーティング、カーテンコーティング、コンマコート法、ディッピング法等が挙げられる。
第1の絶縁性硬化型接着剤層および第2の絶縁性硬化型接着剤層は、それぞれ、第1の絶縁性硬化型接着剤層形成用塗布液および第2の絶縁性硬化型接着剤層形成用塗布液を剥離フィルム上に塗布して、剥離フィルムとの積層体の形態で形成されることが好ましい。
剥離フィルム上への塗布を行う場合、剥離フィルムとしては、特に制限されず目的に応じて公知のものを適宜選択することができる。これらの中でも、熱可塑性樹脂フィルムを使用することが好ましい。熱可塑性樹脂フィルムとしては、特に制限されず目的に応じて公知の熱可塑性樹脂フィルムを適宜選択することができる。これらの中でも、ポリエステルフィルムまたはポリオレフィンフィルムが好ましく、ポリエステルフィルムがより好ましい。さらに、ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリエチレンナフタレートフィルムがさらに好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。また、熱可塑性樹脂フィルムは、必要に応じて剥離処理されていてもよい。剥離処理としては、特に制限されず目的に応じて公知の方法を適宜選択することができるが、公知のシリコーン剥離処理であることが好ましい。
第1の絶縁性硬化型接着層形成用塗布液および第2の絶縁性硬化型接着層形成用塗布液をそれぞれ塗布した後には、溶剤を除去して層状の塗膜とするため、乾燥を行うことが好ましい。乾燥温度は、特に制限されないが、40℃以上100℃以下が好ましく、40℃以上80℃以下がより好ましい。乾燥時間は、特に制限されないが、1分以上30分以下が好ましく、1分以上5分以下がより好ましい。なお、乾燥は、硬化性化合物の硬化をできる限り進行させない条件で行われることが好ましい。
第1の絶縁性硬化型接着剤層および第2の絶縁性硬化型接着剤層の形成において、塗工および乾燥の後、エージング処理がさらに行われてもよい。
(未硬化中間層形成工程)
本発明の一形態に係る製造方法は、中間層形成用硬化型組成物から構成される、未硬化中間層を形成する、未硬化中間層形成工程を有することが好ましい。
未硬化中間層の形成方法は、特に制限されず、公知の接着剤層または異方性導電性層の形成方法を用いることができる。
中間層形成用硬化型組成物は、これを構成する各成分を常法に従って混合することにより調製することができる。なお、中間層形成用硬化型を構成する各成分については、上記説明した異方性導電フィルムにおける中間層を構成する各成分と同様である。
未硬化中間層の形成方法としては、塗布法が好ましい。塗布法で使用する中間層形成用塗布液は、それぞれ、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物を構成する各成分と、任意に用いられる溶剤とを、常法に従って混合することにより調製することができる。混合方法は、特に制限されないが、例えば、遊星攪拌機を用いて行うことが好ましい。
溶剤としては、特に制限されず目的に応じて公知の溶剤から適宜選択すればよく、有機溶剤を用いることが好ましい。有機溶剤としては、例えば、MEK(メチルエチルケトン)、MIBK(メチルイソブチルケトン)、PGMEA(プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセタート)、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、トルエン、アルコール(メタノール、エタノール等)等が挙げられる。
溶剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
溶剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、接着剤組成物の総質量に対して、10質量%以上90質量%以下であることが好ましい。当該含有量は、接着剤組成物の総質量に対して、30質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、40質量%以上60質量%以下であることがさらに好ましい。溶剤の含有量を適度に少なくすることで、厚膜の接着剤層の形成をより容易とすることができ、また乾燥の時間をより短縮することができる。
塗布方法としては、特に制限されず目的に応じて適宜選択することができ、例えば、バーコーティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、リバースロールコーティング、ダイコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、リップコーティング、エアーナイフコーティング、カーテンコーティング、コンマコート法、ディッピング法等が挙げられる。
未硬化中間層は、中間層形成用塗布液を剥離フィルム上に塗布して、剥離フィルムとの積層体の形態で形成されることが好ましい。剥離フィルムの例や好ましい態様は、上記第1接着剤層形成工程および第2接着剤層形成工程の説明と同様である。
中間層形成用塗布液をそれぞれ塗布した後には、溶剤を除去して層状の塗膜とするため、乾燥を行うことが好ましい。乾燥温度は、特に制限されないが、40℃以上100℃以下が好ましく、40℃以上80℃以下がより好ましい。乾燥時間は、特に制限されないが、1分以上30分以下が好ましく、1分以上5分以下がより好ましい。なお、乾燥は、硬化性化合物の硬化をできる限り進行させない条件で行われることが好ましい。
未硬化中間層の形成において、塗工および乾燥の後、エージング処理がさらに行われてもよい。
(中間層形成工程)
本発明の一形態に係る製造方法は、下記(1)または下記(2)で表される、中間層形成工程を有することが好ましい:
(1)未硬化中間層と、第1の絶縁性硬化型接着剤層とが直接接するようラミネートし、未硬化中間層と、第2の絶縁性硬化型接着剤層とが直接接するようラミネートした後、未硬化中間層を硬化して、未硬化中間層の硬化層である中間層を形成する工程、
(2)未硬化中間層と、第1の絶縁性硬化型接着剤層とが直接接するようラミネートした後、未硬化中間層を硬化して、未硬化中間層の硬化層である中間層を形成し、その後、中間層と、第2の絶縁性硬化型接着剤層とが直接接するようラミネートする工程。
上記中間層形成では、未硬化中間層の流動性が高い。これにより、未硬化中間層を第1の絶縁性硬化型接着剤層または第2の絶縁性硬化型接着剤層の少なくとも一方でラミネートする際に、ラミネート時の圧力によって、導電性粒子の周囲の樹脂材料がより多く排除されることとなる。このとき、導電性部材間の接合後において、当該方法によって製造された異方性導電フィルムの硬化物中の導電性粒子と導電性部材との間には、樹脂材料の層が存在しないか、または存在したとしてもその厚みは顕著に小さくなる。その結果、樹脂材料の層によって導電パスが妨げられることがないことから、高い接続性(導通性)が得られる。
中間層形成工程は、上記(1)で表される工程であることが好ましい。ラミネート時の圧力によってより多くの導電性粒子の周囲の樹脂材料を排除することができ、より高い接続性が得られるからである。
また、上記(1)の工程は、最初に未硬化中間層と、第1の絶縁性硬化型接着剤層とをラミネートし、次いで未硬化中間層と、第2の絶縁性硬化型接着剤層とをラミネートする工程であることがより好ましい。
未硬化中間層を、第1の絶縁性硬化型接着剤層と、第2の絶縁性硬化型接着剤層とで直接挟持するラミネート方法は、特に制限されず、公知の粘着剤層を有する異方性導電フィルムの製造方法と同様の方法を用いることができる。
ラミネート方法としては、特に制限されず目的に応じて公知の方法から適宜選択することができる。例えば、ラミネーターを用いる方法や、ハンドローラーを用いる方法等が挙げられる。
上記(1)で表される工程において、ラミネート順序としては、例えば、未硬化中間層と、第1の絶縁性硬化型接着剤層とが直接接するようラミネートした後、未硬化中間層と、第2の絶縁性硬化型接着剤層とが直接接するようラミネートすることが挙げられる。また、例えば、未硬化中間層と第1の絶縁性硬化型接着剤層および第2の絶縁性硬化型接着剤層を同時に貼合することが挙げられる。
未硬化中間層、第1の絶縁性硬化型接着剤層および第2の絶縁性硬化型接着剤層が、それぞれ、剥離フィルムとの積層体として存在する場合、例えば、下記のような順序が好ましい例として挙げられる。まず、未硬化中間層と剥離フィルムの積層体と、第1の絶縁性硬化型接着剤層と剥離フィルムとの積層体とを、未硬化中間層と、第1の絶縁性硬化型接着剤層とが直接接するようようラミネートする。次いで、得られた積層体から未硬化中間層側の剥離フィルムを剥離して未硬化中間層の表面を露出させる。そして、得られた積層体の露出した未硬化中間層と、第2の絶縁性硬化型接着剤層と剥離フィルムの積層体とを、未硬化中間層と、第2の絶縁性硬化型接着剤層とが直接接するようラミネートする。
未硬化中間層と第1の絶縁性硬化型接着剤層または第2の絶縁性硬化型接着剤層との貼合時の温度は、特に制限されない。
未硬化中間層と、第1の絶縁性硬化型接着剤層または第2の絶縁性硬化型接着剤層とが直接接するようラミネートする際に印加する圧力(本明細書では、単にラミネート圧力とも称する)は、特に制限されず、従来公知の条件を適用することができる。
未硬化中間層の硬化方法は、特に制限されず目的に応じて公知の方法から適宜選択することができる。例えば、中間層形成用硬化型組成物が活性エネルギー線(例えば、放射線、紫外線または可視光線)硬化型組成物である場合、活性エネルギー線(例えば、放射線、紫外線または可視光線)照射によって行うことが好ましい。また、例えば、中間層形成用硬化型組成物が熱硬化型組成物である場合、加熱によって行うことが好ましい。
活性エネルギー線照射の場合、用いられる活性エネルギー線の種類としては、放射線、紫外線または可視光線が挙げられる。これらの中でも、制御性および取り扱い性の良さ、コストの点から紫外線であることが好ましい。より好ましくは、波長200nm以上400nm以下の紫外線である。活性エネルギー線照射装置は、特に制限されないが、紫外線照射の場合、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、エキシマランプ、UV光レーザー等の光源が例として挙げられる。光照射エネルギー量は、適宜設定されうるが、紫外線照射処理の場合、50mJ/cm2以上5,000mJ/cm2以下であることが好ましい。さらに、100mJ/cm2以上3,000mJ/cm2以下であることがより好ましく、300mJ/cm2以上1,500mJ/cm2以下であることがさらに好ましい。活性エネルギー線照射条件を上記のように設定することで、架橋反応がより適切に進行し、異方性導電フィルムの絶縁性がより向上するからである。
加熱の場合、加熱温度は、特に制限されない。例えば、20℃以上150℃以下であることが好ましく、40℃以上150℃以下であることがより好ましい。また、加熱温度は、50℃以上140℃以下であることがさらに好ましく、80℃以上130℃以下であることが特に好ましい。また、加熱時間は、特に制限されないが、例えば、5秒以上20分以下であることが好ましく、30秒以上10分以下であることがより好ましく、1分以上7分以下であることがさらに好ましい。加熱条件を上記のように設定することで、架橋反応がより適切に進行し、異方性フィルムの絶縁性がより向上するからである。
未硬化中間層と、第1の絶縁性硬化型接着剤層および第2の絶縁性硬化型接着剤層とは、硬化手段が異なることが好ましい。当該構成は、例えば、上述したように、中間層形成用硬化型組成物と、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物との硬化性が異なることで実現されうる。本明細書において、「硬化手段が異なる」とは、活性エネルギー線(例えば、放射線、紫外線または可視光線)照射による硬化と、加熱による硬化のような、硬化に必要なエネルギーの付与方法が異なる場合を表す。また、活性エネルギー線照射において、一方の硬化反応が進行し、他方の硬化反応が実質的に進行しないよう異なる活性エネルギー線の種類または波長を選択する場合も含めるものとする。このとき、異方性導電フィルムの接続性および絶縁性の向上との効果をより効率的に得ることができ、また当該効果をより向上させることができる。異方性導電フィルムの製造における硬化段階と、異方性導電フィルム使用時における硬化段階とで、それぞれ異なる層の硬化反応を促進させることが可能となる。これにより、未硬化中間層を第1の絶縁性硬化型接着剤層または第2の絶縁性硬化型接着剤層の少なくとも一方でラミネートする際には未硬化中間層を低粘度とし、その後これを硬化してなる中間層を高粘度とすることがより容易となるからである。これらの中でも、中間層形成工程における未硬化中間層の硬化手段は、活性エネルギー線照射であり、第1の絶縁性硬化型接着剤層および第2の絶縁性硬化型接着剤層を硬化するための硬化手段は、加熱であることがより好ましい。当該構成は、例えば、上記の説明にあるように、中間層形成用硬化型組成物が、活性エネルギー線硬化型組成物であり、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物が、共に熱硬化型組成物であることで実現されうる。ここで、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物は、活性エネルギー線照射によって硬化反応が進行しないことがさらに好ましい。当該構成は、上記の説明にあるように、例えば、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物が、硬化剤として活性エネルギー線無反応型熱硬化剤を含むことよって実現されうる。ここで、中間層形成工程における未硬化中間層の硬化手段は、紫外線照射であることが特に好ましい。当該構成は、上記の説明にあるように、中間層形成用硬化型組成物が紫外線硬化剤を含むことによって実現されうる。
なお、本発明の一形態に係る製造方法において、形成される中間層の好ましい態様は、上記の異方性導電フィルムの説明と同様である。当該方法によって形成される中間層の25℃での好ましい粘度も、上記の異方性導電フィルムにおける中間層の好ましい粘度と同様である。
<用途>
本発明の一形態に係る異方性導電フィルムの好ましい用途は、以下のとおりである。すなわち、一方の導電性部材(例えば、第1の電子部品の端子)と他方の導電性部材(例えば、第2の電子部品の端子)とを、その硬化物によって異方性導電接続する際に、好ましく用いられる。
異方性導電フィルムは、硬化されることで、その硬化物により導電性部材間を物理的に接合させ、得られる接合体の導電性部材間を異方性導電接続させる。異方性導電フィルムの硬化物は、主に、第1の絶縁性硬化型接着剤組成物および第2の絶縁性硬化型接着剤組成物が硬化することによって、導電性部材間を異方性導電接続させる。よって、本発明のさらなる他の一形態は、本発明の一形態に係る異方性導電フィルムの硬化物に関する。
導電性部材としては、発光素子、半導体チップ、半導体モジュールなどの公知の電気素子、フレキシブルプリント配線基板、ガラス配線基板、ガラスエポキシ基板等を適用することができる。また、端子は、銅、金、アルミ、ITOなどの公知の材料から形成された配線や電極パッドあるいはバンプであってもよく、そのサイズにも特に制限はない。
なお、導電性部材同士を物理的に接合させて得られる接合体(接続構造体)は、特に制限されない。例えば、COG(chip on glass)、COF(chip on film)、FOG(film on glass)、FOB(film on board)等と称されるものを挙げることができる。
ただし、本発明の一形態に係る異方性導電フィルムの用途は、これらに限定されるものではない。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
以下の手順に従って、異方性導電フィルムを製造した。以下、硬化性組成物の調製および保管、ならびに異方性導電フィルム製造および評価は、全て、紫外線を遮蔽するイエロールーム内にて実施した。すなわち、硬化性組成物および異方性導電フィルムは、下記異方性導電フィルムの製造および評価にて意図的に紫外線にさられる場合を除き、その調製から評価が完了するまでの間、紫外線遮蔽環境下に存在していた。
<異方性導電フィルムの製造>
(硬化型組成物1~5の調製)
下記表1に示す種類および配合量で、膜形成樹脂、硬化性化合物、充填剤、カップリング剤、硬化剤、導電性粒子および溶剤を、遊星攪拌機を用いて均一に混合して硬化型組成物1~5の酢酸エチル溶液を得た。なお、下記表1における各成分の詳細を以下に示す;
[膜形成樹脂]
・YP-50(新日鉄住金化学株式会社製、フェノキシ樹脂)、
[硬化性化合物]
・CEL2021P(セロキサイド(登録商標)2021P、株式会社ダイセル製、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、脂環式エポキシ化合物、エポキシ当量128~145)、
[充填剤]
・R8200(AEROSIL(登録商標)R8200、日本アエロジル株式会社製、疎水性ヒュームドシリカ粒子)、
・YA050C(アドマナノ(登録商標)YA050C、株式会社アドマテックス社製、単分散シリカ粒子)、
[カップリング剤]
・KBM-403(信越化学工業株式会社製、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、
[紫外線硬化剤]
・SI-60L(サンエイド(登録商標)SI-60L、三新化学工業株式会社製、カチオン重合開始剤、紫外線硬化能あり)、
[紫外線無反応型熱硬化剤]
・CXC-1612(King Industries,Inc製、カチオン重合開始剤、紫外線硬化能無し)
[導電性粒子]
・AUL703(ミクロパール(登録商標)AUL703、積水化学工業株式会社製、Au/Niめっき樹脂粒子、平均粒子径3μm)、
[溶剤]
・酢酸エチル。
[シリカ粒子の分散性]
ここで、充填剤であるシリカ粒子の分散性は、以下のように評価を行った。まず、株式会社 島津製作所製 レーザ回折式粒度分布測定装置SALD-2300を用いてシリカ粒子の測定を行い、平均粒子径を算出し、粒子径分布を求めた。次いで、平均粒子径と個々の粒子の粒子径分布との値から、平均粒子径の5倍以内の粒子径の個数の割合が、粒子の総個数に対して90%以上となる状態を、単分散であるとした。
[導電性粒子の平均粒子径dの測定]
導電性粒子の平均粒子径d(μm)は、粒度分布測定装置(株式会社セイシン企業製、「PITA-1」)にて測定した平均粒子径を採用した。
(異方性導電フィルムの製造)
上記調製した各硬化型組成物を、異方性導電フィルムにおける第1の絶縁性硬化型接着剤組成物、第2の絶縁性硬化型接着剤組成物および中間層形成用硬化型組成物として用いた。各異方性導電フィルムにおけるこれらの組み合わせを下記表2に示す。
剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離フィルムとして準備した。次いで、バーコーターを用いて、剥離フィルムの表面上に各硬化型組成物を塗布し、60℃で5分間乾燥した。ここで、第1の絶縁性硬化型接着剤層、第2の絶縁性硬化型接着剤層の形成では、乾燥膜厚が5μmとなるよう各硬化型組成物の塗布を行った。また、未硬化中間層の形成については、乾燥膜厚が3μmとなるよう各硬化型組成物の塗布を行った。このようにして、剥離フィルム上に第1の絶縁性硬化型接着剤層、第2の絶縁性硬化型接着剤層および未硬化中間層を形成した(第1接着剤層形成工程、第2接着剤層形成工程、未硬化中間層形成工程)。
続いて、剥離フィルムと未硬化中間層との積層体と、剥離フィルムと第1の絶縁性硬化型接着剤層との積層体とを、未硬化中間層と、第1の絶縁性硬化型接着剤層とが直接接するようラミネートした。ここで、ラミネート条件は、40℃、0.5MPaとした。このようにして、剥離フィルム、第1の絶縁性硬化型接着剤層、未硬化中間層がこの順に積層された積層体を形成した。そして、未硬化中間層に貼合された剥離フィルムを除去して、未硬化中間層が露出した状態の積層体を得た。この積層体と、剥離フィルムと第2の絶縁性硬化型接着剤層との積層体とを、未硬化中間層と、第2の絶縁性硬化型接着剤層とが直接接するようラミネートした。ここで、ラミネート条件は、40℃、0.5MPaとした。このようにして、剥離フィルム、第1の絶縁性硬化型接着剤層、未硬化中間層、第2の絶縁性硬化型接着剤層、剥離フィルムがこの順に積層された積層体を形成した。さらに、得られた積層体に対して、下記表2に記載のように必要に応じて紫外線を照射した。ここで、紫外線は、第1の絶縁性硬化型接着剤層側から、波長365nm、積算光量100mJ/cm2で照射した(中間層形成工程)。
このようにして、中間層が、第1の絶縁性硬化型接着剤層と、第2の絶縁性硬化型接着剤層とで挟持された構造を有する、異方性導電フィルムを製造した。なお、紫外線照射後の中間層の膜厚は3μmであった。これより、異方性導電フィルムは、第1の絶縁性硬化型接着剤層、中間層、第2の絶縁性硬化型接着剤層の3層積層構造に加えて、これらの両外面に配置された剥離フィルムを含む積層フィルムの状態で製造された。
<異方性導電フィルムの評価>
上記製造された異方性導電フィルムについて、下記の各測定を行った。また、上記製造された異方性導電フィルムを用いて、以下の方法により接合体を製造し、下記の各評価を行った。
(未硬化中間層、第1の絶縁性硬化型接着剤層、第2の絶縁性硬化型接着剤層の粘度測定)
上記異方性導電フィルムの製造と同様の条件で、剥離フィルム上に第1の絶縁性硬化型接着剤層、第2の絶縁性硬化型接着剤層および未硬化中間層を形成した。
そして、第1の絶縁性硬化型接着剤層および第2の絶縁性硬化型接着剤層の25℃での粘度(Pa・s)を、E型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて、25℃、2.5rpmの条件で測定した。この値を下記表2に示す。
(中間層の粘度測定)
上記異方性導電フィルムの製造と同様の条件で、剥離フィルム上に未硬化中間層を形成した。次いで、必要に応じて、上記異方性導電フィルムの製造と同様の条件で紫外線を照射した。
そして、中間層の25℃での粘度(Pa・s)を、E型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて、25℃、2.5rpmの条件で測定した。この値を下記表2に示す。
(試験用接合体の製造)
ガラス基板として、ITO(Indium Tin Oxide)膜がパターニングされた平均厚み0.5mmのITO配線板を用いた。電子部品として、ICチップ(1.8mm×20mm、t(厚み)=0.5mm、Au-plated bump 30μm×85μm、h(高さ)=15μm)を用いた。
上記得られた異方性導電フィルムを3mm×200mmにスリットして、一方の剥離フィルムを剥離した。次いで、露出した第1の絶縁性硬化型接着剤層の表面を前記ITO配線板に貼り付けた。続いて、この異方性導電フィルムから、他方の剥離フィルムを剥離した。そして、露出した第2の絶縁性硬化型接着剤層の表面に前記ICチップを配置し、緩衝材として平均厚み50μmのテフロン(登録商標)が被覆されたヒートツールを用いて、接合温度60℃、接合圧力1MPa、接合時間1秒の接合条件で接合(仮圧着)することで仮貼りをした。その後、前記ヒートツールを用いて、接合温度140℃、接合圧力60MPa、接合時間5秒の接合条件で接合(本圧着)することで、試験用接合体を完成させた。
(絶縁性試験)
上記製造された試験用接合体のうち、BUMP間距離(隣接する2つのBUMP間の距離、すなわち絶縁部分の幅)が8μmの部分の絶縁抵抗値を測定し、8箇所のうち、接続性評価として導通を行った際のショート発生数を確認した。ショート発生数は、デジタルマルチメータ(品番:デジタルマルチメータ7555、横河電機株式会社製)を用いて2端子法にて値を測定し、以下の基準に従い評価を行った;
[評価基準]
○:8箇所全てにおいて、ショートの発生が確認されなかった、
△:8箇所中1箇所において、ショートの発生が確認された、
×:8箇所中2箇所以上において、ショートの発生が確認された。
なお、本試験では、評価△以上が許容されうる結果とした。絶縁性試験の結果として、ショート発生数を下記表2に示す。下記表2において、カッコ内の数値は接合体中の8箇所においてショートが発生した数(箇所)を示す。
(捕捉数の評価)
BUMP上の粒子数を、上記製造された試験用接合体のITO配線板側から光学顕微鏡を用いて確認した。BUMP表面にピントを合わせ、2,000平方μmの面積当たりに存在する粒子数の確認を、BUMP上の100箇所で行った。そして、各測定で確認されたBUMP上2,000平方μmの面積当たりに存在する粒子数の平均値を相加平均として算出して、異方性導電フィルムの捕捉数とした;
[評価基準]
○:捕捉数が15個/2,000平方μm以上である、
△:捕捉数が5個/2,000平方μm以上15個/2,000平方μm未満である、
×:捕捉数が5個/2,000平方μm未満である。
なお、本試験では、評価△以上が許容されうる結果とした。捕捉数の評価結果を下記表2に示す。下記表2において、カッコ内の数値は捕捉数(個/2,000平方μm)を示す。
(接続性試験)
上記で製造された接合体について、接続性評価として初期(Initial)導通抵抗値を測定した。抵抗値は、デジタルマルチメータ(品番:デジタルマルチメータ7555、横河電機株式会社製)を用いて4端子法にて電流1mAを流したときの値を測定した。接続性試験の結果は、抵抗値の数値が小さいほど優れた結果を表す;
[評価基準]
○:抵抗値が2Ω未満である、
△:抵抗値が2Ω以上10Ω未満である、
×:抵抗値が10Ω以上である。
なお、本試験では、評価△以上が許容されうる結果とした。抵抗値が10Ω未満であれば導通が良好である。また、抵抗値が2Ω未満であれば導通が極めて良好である。これらの結果を下記表2に示す。
上記表2の結果より、本発明に係る異方性導電フィルム6、7は、圧着時の導電性粒子の流動が抑えられて捕捉数が多くなり、絶縁性および導通に優れることが確認された。
一方、本発明の範囲外である比較例に係る異方性導電フィルム1~5は、絶縁性および導通の両立が得られないことが確認された。
ここで、異方性導電フィルム1~3は、未硬化中間層を有するものであり、絶縁性が不十分であった。この理由は、仮圧着時または本圧着時の中間層中の導電性粒子の流動性が高く、導電性粒子の流動によって導電性粒子間の意図せぬ接触が生じたからであると考えられる。
また、異方性導電フィルム4は、導通が不十分であった。この理由は、以下のように考えられる。異方性導電フィルムの製造時の紫外線照射処理において、紫外線硬化型接着剤組成物から構成される第1の絶縁性硬化型接着剤層および第2の絶縁性硬化型接着剤層が紫外線を吸収する。このため、中間層に紫外線が十分に届かず、中間層の硬化が不十分となる。その結果、仮圧着時または本圧着時の中間層中の導電性粒子の流動性が高く、導電性粒子の流動によって導電性粒子間の意図せぬ接触が生じたからである。
そして、異方性導電フィルム5は、導通が不十分であった。この理由は、紫外線硬化型接着剤組成物から構成される第1の絶縁性硬化型接着剤層および第2の絶縁性硬化型接着剤層が硬化して粘度が過剰に大きくなる。このため、圧着時に中間層に含まれる導電性粒子の接続部への接触が阻害されるからであると考えられる。