JP7307778B2 - ピストンリングの組合せ、及び内燃機関 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関においてピストンに組付けられるピストンリングの組合せ、及び内燃機関に関する。
一般的な自動車に搭載される内燃機関は、コンプレッションリング(圧力リング)とオイルリングとを含むピストンリングの組合せをピストンに形成されたリング溝に装着した構成を採用している。ピストンの軸方向において、コンプレッションリングが燃焼室側に設けられ、オイルリングがクランク室側に設けられ、これらがシリンダの内壁面を摺動することで能力を発揮する。燃焼室から最も遠いオイルリングは、シリンダの内壁面に付着した余分なエンジンオイル(潤滑油)をクランク室側に掻き落とすことでオイルの燃焼室側への流出(オイル上がり)を抑制するオイルシール機能や、潤滑油膜がシリンダの内壁面に適切に保持されるようにオイル量を調整することで内燃機関の運転に伴うコンプレッションリングやピストンの焼き付きを防止する機能を有する。コンプレッションリングは、気密を保持することで燃焼室側からクランク室側への燃焼ガスの流出(ブローバイ)を抑制するガスシール機能や、オイルリングが掻き落とし切れなかった余分なオイルを掻き落とすことでオイル上がりを抑制するオイルシール機能を有する。一般的な火花点火機関や小型中型ディーゼル機関では、2本のコンプレッションリングと1本のオイルリングとが用いられる。
これに関連して、特許文献1には、複数のコンプレッションリングをピストンに組み付けた内燃機関において、燃焼室に最も近いコンプレッションリングの下面にガスリーク溝を形成することが開示されている。
特開平10-331973号公報
近年の内燃機関の高出力化に伴い、環境性能における対策が急務となっている。特に、ブローバイガスの低減が重要な課題である。ブローバイガスの低減においては、オイルリングよりもコンプレッションリングの役割が大きい。ディーゼルエンジンに例示される圧縮着火機関では、特に大型ディーゼルエンジンにおいて、3本以上のコンプレッションリングとオイルリングとを用いることで、何れかのコンプレッションリングに摩耗等が生じてもコンプレッションリングとしての機能を長く維持することを可能とし、メンテナンス頻度を少なくすることが行われている。この場合、オイルリングとしては2ピース型のオイルリングが一般的に採用されている。しかしながら、ピストンリングの本数が増加すると、それに伴ってピストン自体も大きくなることから、エンジン重量が増加するという問題がある。また、圧縮着火機関のうち特に小型中型ディーゼルエンジンや、ガソリンエンジンに代表される火花点火内燃機関のうち圧縮比が比較的高いエンジンについては、近年、エンジンの使用回転域が中速域までの範囲において、更なるブローバイの低減とオイル消費の低減とを実現する必要性が増してきている。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、内燃機関においてブローバイガスを低減し、オイル消費の増加を抑制可能な技術を提供することである。
上記課題を解決するために、本発明は、以下の構成を採用した。即ち、本発明は、内燃機関のシリンダに装着されるピストンに組み付けられる複数のピストンリングの組合せであって、4本のコンプレッションリングを含み、前記4本のコンプレッションリングのうち、前記内燃機関の燃焼室に最も近い位置に組み付けられる第1コンプレッションリングの外周面は、前記第1コンプレッションリングの周長方向に直交する断面において、前記第1コンプレッションリングにおいて最大径となる頂部を含んで径方向外側に凸状となるように湾曲したバレル面を含み、前記4本のコンプレッションリングのうち、前記第1コンプレッションリングの次に前記燃焼室に近い位置に組み付けられる第2コンプレッションリングの外周面は、前記第2コンプレッションリングの周長方向に直交する断面において、前記第2コンプレッションリングにおいて最大径となる外周端部と、前記外周端部から前記燃焼室側に向かうに従って縮径するように傾斜したテーパ面と、を含み、前記4本のコンプレッションリングのうち、前記第2コンプレッションリングの次に前記燃焼室に近い位置に組み付けられる第3コンプレッションリングの外周面は、前記第3コンプレッションリングの周長方向に直交する断面において、前記第3コンプレッションリングにおいて最大径となる外周端部と、前記外周端部から前記燃焼室側に向かうに従って縮径するように傾斜したテーパ面と、を含み、前記4本のコンプレッションリングのうち、前記燃焼室から最も遠い位置に組み付けられる第4コンプレッションリングの外周面は、前記第4コンプレッションリングの周長方向に直交する断面において、前記第4コンプレッションリングにおいて最大径となる外周端部と、前記外周端部から前記燃焼室側に向かうに従って縮径するように傾斜したテーパ面と、を含む、ピストンリングの組合せである。
つまり、本発明に係るピストンリングの組合せは、外周形状がバレル形状の第1コンプレッションリング、外周形状がテーパ形状の第2コンプレッションリング、外周形状がテーパ形状の第3コンプレッションリング、及び外周形状がテーパ形状の第4コンプレッションリングによって構成されている。このようなピストンリングの組合せによると、ガスシール性に優れたコンプレッションリングを4本用いることでブローバイガスを低減でき、4本のうちクランク室側に位置する3本のコンプレッションリングの外周形状をオイル掻き性能に優れたテーパ形状とすることでオイル消費の増加を抑制できる。また、オイルリングを用いないため、ピストンの軸方向長さを短くすることができ、ピストンを軽量化することができる。また、第2コンプレッションリングの外周形状をオイル掻き性能に優れたテーパ形状とすることにより、オイル消費の増加をより抑制することができる。
また、本発明において、前記第2コンプレッションリングと前記第3コンプレッションリングと前記第4コンプレッションリングとのうち、少なくとも何れか1本のコンプレッションリングには、当該コンプレッションリングの軸方向端面であってクランク室側に面する下面と当該コンプレッションリングの前記外周端部との間に段差状の切欠が形成されてもよい。
また、本発明は、4本のコンプレッションリングを含み、前記4本のコンプレッションリングのうち、前記内燃機関の燃焼室に最も近い位置に組み付けられる第1コンプレッションリングの外周面は、前記第1コンプレッションリングの周長方向に直交する断面において、前記第1コンプレッションリングにおいて最大径となる頂部を含んで径方向外側に凸状となるように湾曲したバレル面を含み、前記4本のコンプレッションリングのうち、前記第1コンプレッションリングの次に前記燃焼室に近い位置に組み付けられる第2コンプレッションリングの外周面は、前記第2コンプレッションリングの周長方向に直交する断面において、前記第2コンプレッションリングにおいて最大径となる頂部を含んで径方向外側に凸状となるように湾曲したバレル面を含み、前記4本のコンプレッションリングのうち、前記第2コンプレッションリングの次に前記燃焼室に近い位置に組み付けられる第3コンプレッションリングの外周面は、前記第3コンプレッションリングの周長方向に直交する断面において、前記第3コンプレッションリングにおいて最大径となる外周端部と、前記外周端部から前記燃焼室側に向かうに従って縮径するように傾斜したテーパ面と、を含み、前記4本のコンプレッションリングのうち、前記燃焼室から最も遠い位置に組み付けられる第4コンプレッションリングの外周面は、前記第4コンプレッションリングの周長方向に直交する断面において、前記第4コンプレッションリングにおいて最大径となる外周端部と、前記外周端部から前記燃焼室側に向かうに従って縮径するように傾斜したテーパ面と、を含む、ピストンリングの組合せであってもよい。
また、本発明において、前記第3コンプレッションリングと前記第4コンプレッションリングとのうち、少なくとも何れか一方のコンプレッションリングには、当該コンプレッションリングの軸方向端面であってクランク室側に面する下面と当該コンプレッションリングの前記外周端部との間に段差状の切欠が形成されてもよい。
また、本発明において、前記第3コンプレッションリングの張力をFt(3)とし、前記第4コンプレッションリングの張力をFt(4)としたとき、Ft(4)≧Ft(3)であってもよい。
また、本発明において、前記第3コンプレッションリングの合口隙間の大きさをs1(3)とし、前記第4コンプレッションリングの合口隙間の大きさをs1(4)としたとき、s1(3)≧s1(4)であってもよい。
また、本発明において、前記第3コンプレッションリングの捩れ角度は、前記第3コンプレッションリングを前記ピストンに組付け、且つ、前記ピストンを前記シリンダに装着した状態で、0′~-85′であってもよい。
また、本発明は、上述までのピストンリングの組合せを備える、内燃機関であって、前記内燃機関の使用回転域における前記ピストンの速度が平均18m/s未満であってもよい。
本発明によれば、内燃機関においてブローバイガスの低減やオイル消費の増加の抑制が可能となる。
実施形態1に係るピストン構造を備える内燃機関の一部を示す図である。 外周形状がバレル形状のコンプレッションリングの断面図である。 外周形状がテーパ形状のコンプレッションリングの断面図である。 外周形状がテーパアンダーカット形状のコンプレッションリングの断面図である。 実施形態1に係る内燃機関のピストン構造の断面図である。 比較例1に係る内燃機関のピストン構造の断面図である。 比較例2に係る内燃機関のピストン構造の断面図である。 第3コンプレッションリングが第3リング溝内で捩れた状態を示す断面図である。 第3コンプレッションリングの捩れ角度とオイル消費量との関係を示すグラフである。 ピストンの速度とオイル消費量との関係を示すグラフである。 実施形態2に係る内燃機関のピストン構造の断面図である。 実施例1~3に係るピストンリングの組合せと比較例1,2に係るピストンリングの組合せのブローバイ量を比較したグラフである。
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について説明する。なお、以下の実施形態に記載されている構成は、特に記載がない限りは発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。本発明に係るピストンリングの組合せは、内燃機関に適用することができ、内燃機関には、ガソリンエンジンに例示される火花点火機関やディーゼルエンジンに例示される圧縮着火機関が含まれる。
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係るピストンとピストンリングとの組合せ構造(以下、ピストン構造)110を備える内燃機関100の一部を示す図である。図1では、ピストンの中心軸に沿う断面が図示されている。図1に示すように、実施形態1に係る内燃機関100は、シリンダ10と、シリンダ10に装着(挿入)されたピストン20と、ピストン20に組み付けられた複数のピストンリングからなるピストンリングの組合せ120と、を備える。内燃機関100において、符号30で示す燃焼室側を上側とし、符号40で示すクランク室側を下側とする。内燃機関100のうち、ピストン20とピストンリングの組合せ120とを含む構成がピストン構造110となる。以下、ピストン構造110について説明する。
[ピストンリング]
図1に示すように、実施形態1に係るピストン構造110では、第1コンプレッションリングR1、第2コンプレッションリングR2、第3コンプレッションリングR3、及び第4コンプレッションリングR4を含む計4本のコンプレッションリング(圧力リング)から構成されるピストンリングの組合せ120がピストン20に組み付けられている。コンプレッションリングは、内燃機関のシリンダに装着されたピストンに組み付けられ、ピストンの往復運動に伴ってシリンダの内壁面を摺動する摺動部材である。以下、第1コンプレッションリングR1、第2コンプレッションリングR2、第3コンプレッションリングR3、及び第4コンプレッションリングR4を区別せずにこれらの共通の構成について説明する場合には、単にコンプレッションリングCRと称する。
第1コンプレッションリングR1は、ピストンリングの組合せ120を構成する4本のコンプレッションリングCRのうち、燃焼室30に最も近い位置に組み付けられるコンプレッションリングCRである。第2コンプレッションリングR2は、第1コンプレッションリングR1の次に燃焼室30に近い位置に組み付けられるコンプレッションリングCRである。第3コンプレッションリングR3は、第2コンプレッションリングR2の次に燃焼室30に近い位置に組み付けられるコンプレッションリングCRである。第4コンプレッションリングR4は、第3コンプレッションリングR3の次に燃焼室30に近い位置に組み付けられるコンプレッションリングCRであって、4本のコンプレッションリングCRのうち、燃焼室30から最も遠い位置に組み付けられるコンプレッションリングCRである。
以下、図1に示すように各ピストンリングがピストン20に組み付けられ、且つ、ピストン20がシリンダ10に装着された状態を、「使用状態」と称する。また、図1に示すように、ピストンリングの中心軸A1に沿う方向(軸方向)をピストンリングの「上下方向」と定義する。また、ピストンリングの軸方向のうち、内燃機関100における燃焼室30側(図2における上側)を「上側」と定義し、その反対側、即ち、クランク室側(図2における下側)を「下側」と定義する。コンプレッションリングCRは、使用状態において外周面がシリンダ10の内壁面10aを押圧するように自己張力を有している。これにより、ガスシール機能やオイルシール機能が得られる。
次に、本発明に係るピストンリングの組合せにおいて採用されるコンプレッションリングの外周形状について説明する。本明細書におけるコンプレッションリングの外周形状について、「バレル形状」とは、コンプレッションリングにおいて最大径となる頂部を含んで径方向外側に凸状となるように湾曲したバレル面を有する外周形状のことを指す。「バレル形状」には、バレル面の頂部が外周面の上下中央に位置すると共に外周面が上下対称な「対称バレル形状」や頂部が外周面の上下中央位置から離れており外周面が上下非対称な「偏心バレル形状」が含まれる。また、「テーパ形状」とは、コンプレッションリングにおいて最大径となる外周端部と外周端部から燃焼室側に向かうに従って縮径するように傾斜したテーパ面とを有する外周形状のことを指す。また、テーパ形状のうち、下面と外周端部との間に段差状の切欠が形成された外周形状を「テーパアンダーカット形状」と称する。
図2は、外周形状がバレル形状のコンプレッションリングCRの断面図である。図3は、外周形状がテーパ形状のコンプレッションリングCRの断面図である。図4は、外周形状がテーパアンダーカット形状のコンプレッションリングCRの断面図である。図2~図4では、コンプレッションリングCRの周長方向に直交する断面が図示されている。図2~図4の符号CL1は、コンプレッションリングCRの軸方向における中央を通る直線(中央線)である。
図2~4に示すように、コンプレッションリングCRは、外周面1と内周面2と上面3と下面4とを有する。上面3と下面4とによって、コンプレッションリングCRの軸方向における幅が規定される。コンプレッションリングCRは、内燃機関100において、その軸方向における両端面の一方である上面3が上側に面すると共に他方である下面4が下側に面し、外周面1がシリンダ10の内壁面10aに摺接するように、ピストン20に組み付けられる。
まず、図2を用いてバレル形状について説明する。図2に示す外周面1は、バレル面11と、バレル面11と上面3及び下面4とをそれぞれ接続する一対の接続面12,13と、を含む。図2に示すように、バレル面11は、コンプレッションリングCRの周長方向に直交する断面において、コンプレッションリングCRにおいて最大径となる頂部P1を含んで径方向外側に凸状となるように湾曲している。これにより、図2のコンプレッションリングCRの外周形状は、バレル形状となっている。なお、図2では、バレル面11の頂部P1が外周面1の上下中央に位置しており、外周面1が上下対称であるため、コンプレッションリングCRの外周形状が対称バレル形状となっている。但し、本発明のバレル形状は対称バレル形状に限定されず、偏心バレル形状であってもよい。例えば、図2において、バレル面11の頂部P1が上下中央位置よりも下側(クランク室側)に位置し、外周面1が上下非対称であってもよい。一対の接続面12,13は、面取り加工により形成された所謂R面(コーナーR)であり、コンプレッションリングCRの周長方向に直交する断面において、バレル面11とは曲率半径の異なる円弧状に形成されている。図2に示すように、接続面12がバレル面11の上縁と上面3の外周縁とを接続しており、接続面13がバレル面11の下縁と下面4の外周縁とを接続している。なお、バレル形状において、一対の接続面12,13は必須の構成ではない。例えば、外周面1は、一対の接続面12,13を有さず、全体がバレル面11として形成されてもよい。
次に、図3を用いてテーパ形状について説明する。図3に示す外周面1は、外周端部P2と、テーパ面14と、テーパ面14と上面3及び下面4とをそれぞれ接続する一対の接続面15,16と、を含む。図3に示すように、外周端部P2は、コンプレッションリングCRの周長方向に直交する断面において、コンプレッションリングCRにおいて最大径となる部位である。図3に示す外周端部P2は、周縁として形成されているが、外周端部P2は、軸方向の位置によらず外径が一様な平坦面として形成されてもよい。テーパ面1
4は、その下縁が外周端部P2に接続されており、コンプレッションリングCRの周長方向に直交する断面において、外周端部P2から上側(燃焼室30側)に向かうに従って中心軸A1に近づくように(つまり、縮径するように)傾斜している。これにより、図3のコンプレッションリングCRの外周形状は、テーパ形状となっている。図3に示すように、接続面15がテーパ面14の上縁と上面3の外周縁とを接続しており、接続面16がテーパ面14の下縁と下面4の外周縁とを接続している。なお、テーパ形状において、一対の接続面15,16は必須の構成ではない。例えば、外周面1は、一対の接続面15,16を有さず、全体がテーパ面14として形成されてもよい。
次に、図4を用いてテーパ形状の一種であるテーパアンダーカット形状について説明する。図4に示す外周面1は、接続面16に代えてアンダーカット面17を有する点で、図3に示した外周面1と相違する。具体的には、図4の外周面1は、外周端部P2と、テーパ面14と、テーパ面14と上面3とを接続する接続面15と、テーパ面14と下面4とを接続するアンダーカット面17と、を含む。図4に示すように、アンダーカット面17が外周端部P2に対して径方向内側に凹むことで、下面4と外周端部P2との間には、段差状の切欠18が形成されている。アンダーカット面17は、外周端部P2から径方向内側に延びる第1カット面171と、第1カット面171と下面4とを接続すると共に軸方向に延びる第2カット面172と、を含む。切欠18は、コンプレッションリングCRの全周に亘って形成されている。これにより、図4のコンプレッションリングCRの外周形状は、テーパアンダーカット形状となっている。なお、切欠18は、必ずしもコンプレッションリングCRの全周に亘って形成されていなくともよく、合口端部には形成されていなくてもよい。また、第1カット面171は、径方向に対して傾斜してもよく、第2カット面172は、軸方向に対して傾斜してもよい。また、外周端部P2の先端には、面取り加工が施されてもよい。
以上、本発明に係るピストンリングの組合せにおいて採用されるコンプレッションリングの外周形状について説明したが、本発明に係るコンプレッションリングの形状は図2~図4で示した形状と同一でなくてもよい。例えば、コンプレッションリングは、そのエッジ部がインターナルベベル形状やインターナルステップ形状であってもよい。また、コンプレッションリングの上下面の何れか又は両方がキーストン形状であってもよい。
[ピストン]
図5は、実施形態1に係る内燃機関100のピストン構造110の断面図である。図5では、ピストン20の中心軸に沿う断面が図示されている。図5に示すように、内燃機関100では、ピストン20の外周面20aとシリンダ10の内壁面10aとの間に所定の離間距離D1が確保されることにより、ピストン隙間PC1が形成されている。また、ピストン20の外周面20aには、ピストン20の軸方向に所定の間隔を空けて上側(燃焼室30側)から順に第1リング溝201と第2リング溝202と第3リング溝203と第4リング溝204とが形成されている。以下、第1リング溝201、第2リング溝202、第3リング溝203、及び第4リング溝204を区別せずに説明する場合には、単に「リング溝」と称する。
リング溝は、ピストン20の軸回りに環状に延びる溝として外周面20aの全周に形成されている。図5に示すように、各リング溝は、上下に対向配置された一対の溝壁(内壁)を含んで形成されている。一対の溝壁のうち、上側の溝壁を上壁W1と称し、下側の溝壁を下壁W2と称する。また、各リング溝における、上壁W1の内周縁と下壁W2の内周縁とを接続する溝壁を底壁W3と称する。図5に示すように、第1リング溝201に第1コンプレッションリングR1が装着され、第2リング溝202に第2コンプレッションリングR2が装着され、第3リング溝203に第3コンプレッションリングR3が装着され、第4リング溝204に第4コンプレッションリングR4が装着されている。
[ピストンリングの組合せ]
図5に示すように、実施形態1に係るピストンリングの組合せ120では、第1コンプレッションリングR1の外周形状がバレル形状となっており、第2コンプレッションリングR2の外周形状がテーパ形状となっており、第3コンプレッションリングR3の外周形状がテーパ形状となっており、第4コンプレッションリングR4の外周形状がテーパ形状となっている。
ここで、図5に示すように、第1コンプレッションリングR1の軸方向幅をh1(1)とし、第2コンプレッションリングR2の軸方向幅をh1(2)とし、第3コンプレッションリングR3の軸方向幅をh1(3)とし、第4コンプレッションリングR4の軸方向幅をh1(4)とする。また、ピストンリングの軸方向幅の合計をh1(total)とする。つまり、h1(total)=h1(1)+h1(2)+h1(3)+h1(4)である。
[比較例1]
図6は、比較例1に係る内燃機関100Xのピストン構造110Xの断面図である。比較例1に係るピストン構造110Xは、3本のコンプレッションリングCRと1本のオイルリングORからなるピストンリングの組合せ120Xを備える。比較例1に係るピストン構造110Xは、ピストンリングの組合せ120Xが第4コンプレッションリングR4に代えてオイルリングORを有する点で実施形態1に係るピストン構造110と相違する。
[比較例2]
図7は、比較例2に係る内燃機関100Yのピストン構造110Yの断面図である。比較例2に係るピストン構造110Yは、2本のコンプレッションリングCRと1本のオイルリングORからなるピストンリングの組合せ120Yを備える。比較例2に係るピストン構造110Yは、以下の点で実施形態1に係るピストン構造110と相違する。比較例2では、ピストン20に第4リング溝204が形成されていない。また、比較例2に係るピストンリングの組合せ120Yは、第4コンプレッションリングR4を有さず、第3コンプレッションリングR3に代えてオイルリングORを有する。オイルリングORは、所謂3ピース型のオイルリングであり、シリンダ10の内壁面10aを摺動する一対のセグメントSG1,SG1と、これらを径方向外側(内壁面10a側)に付勢するスペーサエキスパンダEX1と、を備える。
[作用・効果]
上述のように、実施形態1に係るピストンリングの組合せ120は、4本のコンプレッションリングCRにより構成されている。つまり、ピストンリングの組合せ120は、上述の比較例1や比較例2のような3ピース型のオイルリングや2ピース型のオイルリングを用いず、4本のコンプレッションリングのみを用いている。このような4本のコンプレッションリングからなるピストンリングの組合せ120によると、オイルリングよりもガスシール性能に優れたコンプレッションリングを4本用いることで、比較例1や比較例2よりもブローバイガスを低減することができる。更に、ピストンリングの組合せ120は、第3コンプレッションリングR3と第4コンプレッションリングR4との組み合わせによりオイルシール性能を発揮する。そのため、オイル消費の増加を抑えつつブローバイガスを低減することができる。また、一般に、コンプレッションリングは、オイルリングと比較して軸方向幅が薄幅であることから、ピストンにおいて、コンプレッションリングを装着するための領域に必要な軸方向幅は、オイルリングを装着するための領域に必要な軸方向幅よりも短くて済む。そのため、ピストンリングの本数がピストンリングの組合せ120と同じ4本である比較例2と比較において、ピストンリングの組合せ120は、オイルリングORに代えてオイルリングORよりも薄幅の第4コンプレッションリングR4を用いることで、ピストン20の軸方向長さを短くすることができる。これにより、ピストン20を軽量化し、内燃機関100の燃費を向上させることができる。更に、ピストンリングの組合せ120は、4本のコンプレッションリングCRによりブローバイガスを低減することで、オイルの劣化を抑制できる。これに加え、オイルリングを用いないことで、耐スティック性を向上させ、カーボンやスラッジによるピストンリングの固着を抑制できる。
更に、実施形態1に係るピストンリングの組合せ120は、第1コンプレッションリングR1の外周形状をバレル形状とし、第2コンプレッションリングR2の外周形状をテーパ形状とし、第3コンプレッションリングR3の外周形状をテーパ形状とし、第4コンプレッションリングR4の外周形状をテーパ形状としている。このようなピストンリングの組合せ120によると、4本のコンプレッションリングCRのうちクランク室40側に位置する3本のコンプレッションリングCRの外周形状をオイル掻き性能に優れたテーパ形状とすることで、オイルリングを用いなくてもオイル消費の増加を抑えることができる。つまり、実施形態1に係るピストンリングの組合せ120によると、ブローバイガスだけでなくオイル消費の増加も抑えることができる。
なお、実施形態1に係るピストンリングの組合せ120は、第2コンプレッションリングR2と第3コンプレッションリングR3と第4コンプレッションリングR4とのうち、少なくとも何れか1本のコンプレッションリングCRの外周形状をテーパアンダーカット形状としてもよい。テーパアンダーカット形状は、より燃焼室30から遠い(よりクランク室40に近い)コンプレッションリングCRに適用するのが好ましい。従って、第4コンプレッションリングR4の外周形状をテーパアンダーカット形状とすることが、より好ましい。これにより、オイル消費をより一層低減することができる。
ここで、第1コンプレッションリングR1の張力をFt(1)とし、第2コンプレッションリングR2の張力をFt(2)とし、第3コンプレッションリングR3の張力をFt(3)とし、第4コンプレッションリングR4の張力をFt(4)とし、ピストンリングの張力の合計をFt(TOTAL)とする。つまり、Ft(TOTAL)=Ft(1)+Ft(2)+Ft(3)+Ft(4)である。このとき、オイル消費の低減やフリクションの抑制の観点では、Ft(4)≧Ft(3)とすることが好ましい。4本のコンプレッションリングCRのうち、燃焼室30から最も遠い第4コンプレッションリングR4の張力を第3コンプレッションリングR3の張力以上にして第4コンプレッションリングR4のオイル掻き性能を高めることで、Ft(TOTAL)の増加を抑えながらもオイル消費を低減できる。つまり、オイル消費を低減すると共に、4本のコンプレッションリングCRのフリクションの総和が増加することを抑制できる。但し、本発明におけるコンプレッションリングの張力の関係はこれに限定されない。
ここで、図1の符号G1は第1コンプレッションリングR1に形成された合口隙間を示し、符号G2は第2コンプレッションリングR2に形成された合口隙間を示し、符号G3は第3コンプレッションリングR3に形成された合口隙間を示し、符号G4は第4コンプレッションリングR4に形成された合口隙間を示す。また、第1コンプレッションリングR1の合口隙間G1の幅(具体的には、合口端面同士の間隔)をs1(1)とし、第2コンプレッションリングR2の合口隙間G2の幅をs1(2)とし、第3コンプレッションリングR3の合口隙間G1の幅をs1(3)とし、第4コンプレッションリングR4の合口隙間G4の幅をs1(4)とする。このとき、オイル消費の低減の観点では、s1(3)≧s1(4)とすることが好ましい。第3コンプレッションリングR3の合口隙間G3の幅を第4コンプレッションリングR4の合口隙間G4の幅以上とすることで、第3コンプレッションリングR3の合口隙間G3からのブローバイガスによるオイル吹き下げ効果を維持し、第4コンプレッションリングR4の合口隙間G4からのオイル上がりを抑制できる。これにより、オイル消費をより低減することができる。但し、本発明における合口隙間の幅はこれに限定されない。また、ブローバイガスの低減の観点においても、s1(3)≧s1(4)とすることが好ましい。クランク室40に最も近い第4コンプレッションリングR4の合口隙間G4の幅を第3コンプレッションリングR3の合口隙間G3の幅以下とすることで、ブローバイガスを低減できる。
また、第3コンプレッションリングR3のオイルシール性能の観点では、第3コンプレッションリングR3をピストン20に組付け、且つ、ピストン20をシリンダ10に装着した使用状態において、第3コンプレッションリングR3の捩れ角度が0′~-85′であることが好ましい。捩れ角度は、水平面(ピストンの軸と直交する平面)に対する第3コンプレッションリングR3の軸方向端面(上下面)の傾斜角度として定義される。軸方向端面が径方向外側に向かって上方(燃焼室側)傾斜する場合に正の値とし、径方向外側に向かって下方(クランク室側)傾斜する場合に負の値とする。また、捩れ角度の測定には、例えば、シリンダボアの直径d1に等しい直径の測定用リングゲージ内に合い口を閉じた第3コンプレッションリングR3を挿入した状態で、表面粗さ計等を用いて軸方向端面を測定し、捩れ角度を算出する方法を用いてもよい。図8は、第3コンプレッションリングR3が第3リング溝203内で捩れた状態を示す断面図である。図8のθ2は、捩れ角度を示す。使用状態において第3コンプレッションリングR3が上記の範囲で下方傾斜となるように捩れる(負に捩れる)ことで、図8に示すように、第3コンプレッションリングR3の上面3が第3リング溝203の上壁W1に当接し、下面4が第3リング溝203の下壁W2に当接する。これにより、第4コンプレッションリングR4で掻き落とせずに第3コンプレッションリングR3の背面(径方向内側側)に回り込もうとするオイルが第3コンプレッションリングR3でシールされる。このように、第3コンプレッションリングR3の上面3及び下面4のオイルシール性能を高めることで、オイル上がりを防止し、オイル消費を低減することができる。ここで、図3及び図4のθ1は、第3コンプレッションリングR3のテーパ面14の、軸方向に対する傾斜角度を示す。θ1は、図3及び図4に示すように上側に向かうに従って中心軸A1に近づくようにテーパ面14が傾斜する場合に正の値とする。このとき、θ1は、1°30′~5°であることが好ましく、また、第3コンプレッションリングR3の捩れ角度θ2の絶対値よりも大きいことが望ましい。つまり、θ1+θ2>0であることが望ましい。θ1をθ2の絶対値よりも大きくすることで、テーパ面14によるオイル乗り上げ効果が得られ、オイルの掻き上げを防止することができる。
図9は、実施形態1に係る内燃機関100における第3コンプレッションリングR3の捩れ角度(捩れ量)とオイル消費量との関係を示すグラフである。図9の横軸は第3コンプレッションリングR3の捩れ角度を示し、縦軸はオイル消費量の比率を示す。図9に示すように、捩れ角度が0′~-85′の場合では、第3コンプレッションリングR3のオイルシール性能が十分に発揮され、オイル消費が顕著に低減する。なお、下方傾斜の捩れ角度が-85′を超えるとスティック現象が発生する虞がある。このように、第3コンプレッションリングR3の捩れ角度を0′~-85′とすることで、第3コンプレッションリングR3のオイルシール性能を好適に高め、オイル消費を低減できる。但し、本発明に係る第3コンプレッションリングの捩れ角度は、0′~-85′に限定されない。なお、第3コンプレッションリングR3の背面にオイルが回り込むことを抑制するためには、第3コンプレッションリングR3の内周面2と第3リング溝203の底壁W3との隙間(バッククリアランス)を小さくすることでも効果が得られる。また、オイル消費の低減の観点では、第3コンプレッションリングR3の上面3と第3リング溝203の上壁W1との隙間(サイドクリアランス)や第4コンプレッションリングR4の上面3と第4リング溝204の上壁W1との隙間(サイドクリアランス)を小さくすることでも効果が得られる。
また、実施形態1に係るピストンリングの組合せ120は、内燃機関の使用回転域(運転領域)におけるピストンの平均速度が中速域までの内燃機関において、ブローバイガス及びオイル消費を好適に低減できる。具体的には、内燃機関の使用回転域におけるピストンの速度が平均で18m/s未満であることが好ましい。但し、本発明はこれに限定されない。図10は、実施形態1に係る内燃機関100におけるピストン20の速度とオイル消費量との関係を示すグラフである。図10の横軸はピストン20の速度を示し、縦軸はオイル消費量の比率を示す。図10に示すように、ピストン20の速度が18m/s未満の中速域までの場合に、オイル消費が顕著に低減する。
以上のように、実施形態1に係るピストンリングの組合せ120によると、ディーゼルエンジンに代表される圧縮着火機関のうち特に乗用車に搭載される小型ディーゼルエンジンや、ガソリンエンジンに代表される火花点火機関のうち圧縮比が比較的高いエンジンについて、使用回転域が中速域までの範囲において、ブローバイガスの増加を抑えつつもオイル消費量の増加を抑制することが可能となる。但し、本発明に係るピストンリングの組合せは、圧縮比が高くない火花点火機関についても適用が可能であり、また、大型ディーゼルエンジンにおいても同様の効果を見込むことができる。また、2ストロークエンジン、特に大型ディーゼルエンジンにおいても本発明を適用し、ブローバイガスの低減を図ることができる。
<実施形態2>
以下、実施形態2に係るピストン構造について説明する。以下の説明では、実施形態1のピストン構造110との相違点を中心に説明し、実施形態1と同様の構成については同一の符号を付すことにより詳細な説明は割愛する。図11は、実施形態2に係る内燃機関200のピストン構造210の断面図である。図11では、ピストン20の中心軸に沿う断面が図示されている。図11に示すように、実施形態2に係るピストンリングの組合せ220では、第1コンプレッションリングR1の外周形状がバレル形状となっており、第2コンプレッションリングR2の外周形状がバレル形状となっており、第3コンプレッションリングR3の外周形状がテーパ形状となっており、第4コンプレッションリングR4の外周形状がテーパ形状となっている。つまり、実施形態2に係るピストンリングの組合せ220は、第2コンプレッションリングR2の外周形状がバレル形状となっている点で、実施形態1に係るピストンリングの組合せ120と相違する。
実施形態2に係るピストンリングの組合せ220によると、実施形態1に係るピストンリングの組合せ120と同様に、ガスシール性に優れたコンプレッションリングを4本用いることでブローバイガスを低減でき、4本のうちクランク室側に位置する2本のコンプレッションリングの外周形状をオイル掻き性能に優れたテーパ形状とすることでオイル消費の増加を抑制できる。また、オイルリングを用いないため、ピストン20の軸方向長さを短くすることができ、ピストン20を軽量化することができる。また、実施形態2に係るピストンリングの組合せ220によると、第2コンプレッションリングR2の外周形状をガスシール性能に優れたバレル形状とすることにより、ブローバイガスをより低減することができる。
なお、実施形態2に係るピストンリングの組合せ220は、第3コンプレッションリングR3と第4コンプレッションリングR4とのうち、少なくとも何れか一方のコンプレッションリングCRの外周形状をテーパアンダーカット形状としてもよい。テーパアンダーカット形状は、より燃焼室30から遠い(よりクランク室40に近い)コンプレッションリングCRに適用するのが好ましい。従って、第4コンプレッションリングR4の外周形状をテーパアンダーカット形状とすることが、より好ましい。これにより、オイル消費の増加をより抑えることができる。
また、実施形態2に係るピストンリングの組合せ220においても、Ft(4)≧Ft(3)とすることで、オイル消費の増加を抑えながらもフリクションの増加を抑制できる。また、s1(3)≧s1(4)とすることで、オイル消費やブローバイガスをより低減できる。また、使用状態における第3コンプレッションリングR3の捩れ角度を0′~-85′とすることで、オイル消費をより一層低減できる。また、実施形態2に係るピストンリングの組合せ220においても、内燃機関の使用回転域におけるピストンの速度が平均で18m/s未満であることが、オイル消費の低減において好ましい。但し、本発明は、上記に限定されない。また、第3コンプレッションリングR3の外周形状をバレル形状としてもよい。これにより、ブローバイガスを更に低減できる。
[実施例]
表1に、本発明の実施例1~3と比較例1,2のピストンリングの組合せにおける各ピストンリングの種別と形状を示す。表2に、本発明の実施例1~3と比較例1、2のピストンリングの組合せにおける各ピストンリングの軸方向幅、張力、及び合口隙間の幅を示す。表1及び表2では、ピストンに組付けられるピストンリングを、燃焼室側から順に第1リング、第2リング、第3リング、及び第4リングとしている。また、表1の「バレル」は、外周形状が図2で示したようなバレル形状であることを意味し、「テーパ」は、外周形状が図3で示したようなテーパ形状であることを意味する。なお、各リングの外径は80mmとした。
Figure 0007307778000001

Figure 0007307778000002

実施例1及び実施例3は、図5で示した実施形態1に係るピストンリングの組合せ120と同様に構成されている。実施例2は、図11で示した実施形態2に係るピストンリングの組合せ220と同様に構成されている。比較例1は、図6で示した比較例1に係るピストンリングの組合せ120Xと同様に構成されている。比較例2は、図7で示した比較例2に係るピストンリングの組合せ120Yと同様に構成されている。
表1に示すように、実施例1及び実施例2では、s1(3)>s1(4)となっている。実施例3では、s1(3)<s1(4)となっている。実施例1,2のFt(TOTAL)は、同等である。実施例1~3のh1(TOTAL)は、比較例1,2の何れのh1(TOTAL)よりも小さい。また、実施例1~3のFt(TOTAL)は、比較例1,2の何れのFt(TOTAL)よりも小さい。
図12は、実施例1~3に係るピストンリングの組合せと比較例1,2に係るピストンリングの組合せのブローバイ量を比較したグラフである。図12の縦軸はブローバイ量の比率を示す。図12に示すように、実施例1~3と比較例1,2とを比較すると、実施例1~3の方が比較例よりもブローバイガスの量が少ない。これにより、オイルリングを用いずに4本のコンプレッションリングを用いることによるブローバイガスの低減効果を確認できた。また、実施例1と実施例2とを比較すると、実施例2の方が実施例1よりもブローバイガスの量が少ない。これにより、第2コンプレッションリングをバレル形状とすることによるブローバイガスの低減効果を確認できた。実施例1,2と実施例3とを比較すると、実施例1,2の方が実施例3よりもブローバイガスの量が少ない。これにより、s1(3)>s1(4)とすることによるブローバイガスの低減効果を確認できた。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上述した種々の形態は、可能な限り組み合わせることができる。本発明において、ピストンリングの組合せは、5本以上のピストンリングを含んで構成されてもよい。但し、ピストンの重量増加の抑制には、4本のコンプレッションリングのみでピストンリングの組合せを構成した方が有利である。上述の実施形態に係るピストンリングの組合せは、4本のコンプレッションリングのみで構成されることで、ブローバイガスの低減とオイル消費の増加抑制とを可能としながらも、ピストンの重量増加を好適に抑えることができる。
100,200 :内燃機関
110,210 :ピストンとピストンリングとの組合せ構造
120,220 :ピストンリングの組合せ
10 :シリンダ
20 :ピストン
30 :燃焼室
40 :クランク室
R1 :第1コンプレッションリング
R2 :第2コンプレッションリング
R3 :第3コンプレッションリング
R4 :第4コンプレッションリング

Claims (6)

  1. 内燃機関のシリンダに装着されるピストンに組み付けられる複数のピストンリングの組合せであって、
    4本のコンプレッションリングのみを含み、
    前記4本のコンプレッションリングのうち、前記内燃機関の燃焼室に最も近い位置に組み付けられる第1コンプレッションリングの外周面は、前記第1コンプレッションリングの周長方向に直交する断面において、前記第1コンプレッションリングにおいて最大径となる頂部を含んで径方向外側に凸状となるように湾曲したバレル面を含み、
    前記4本のコンプレッションリングのうち、前記第1コンプレッションリングの次に前記燃焼室に近い位置に組み付けられる第2コンプレッションリングの外周面は、前記第2コンプレッションリングの周長方向に直交する断面において、前記第2コンプレッションリングにおいて最大径となると共に前記第2コンプレッションリングの軸方向中央よりもクランク室側に位置する外周端部と、前記外周端部から前記燃焼室側に向かうに従って縮径するように傾斜したテーパ面と、を含み、
    前記4本のコンプレッションリングのうち、前記第2コンプレッションリングの次に前記燃焼室に近い位置に組み付けられる第3コンプレッションリングの外周面は、前記第3コンプレッションリングの周長方向に直交する断面において、前記第3コンプレッションリングにおいて最大径となると共に前記第3コンプレッションリングの軸方向中央よりもクランク室側に位置する外周端部と、前記外周端部から前記燃焼室側に向かうに従って縮径するように傾斜したテーパ面と、を含み、
    前記4本のコンプレッションリングのうち、前記燃焼室から最も遠い位置に組み付けられる第4コンプレッションリングの外周面は、前記第4コンプレッションリングの周長方向に直交する断面において、前記第4コンプレッションリングにおいて最大径となると共に前記第4コンプレッションリングの軸方向中央よりもクランク室側に位置する外周端部と、前記外周端部から前記燃焼室側に向かうに従って縮径するように傾斜したテーパ面と、を含み、
    前記第3コンプレッションリングの張力をFt(3)とし、前記第4コンプレッションリングの張力をFt(4)としたとき、
    Ft(4)≧Ft(3)であり、
    前記第3コンプレッションリングの合口隙間の大きさをs1(3)とし、前記第4コンプレッションリングの合口隙間の大きさをs1(4)としたとき、
    s1(3)≧s1(4)である、
    ピストンリングの組合せ。
  2. 内燃機関のシリンダに装着されるピストンに組み付けられる複数のピストンリングの組合せであって、
    4本のコンプレッションリングのみを含み、
    前記4本のコンプレッションリングのうち、前記内燃機関の燃焼室に最も近い位置に組み付けられる第1コンプレッションリングの外周面は、前記第1コンプレッションリングの周長方向に直交する断面において、前記第1コンプレッションリングにおいて最大径となる頂部を含んで径方向外側に凸状となるように湾曲したバレル面を含み、
    前記4本のコンプレッションリングのうち、前記第1コンプレッションリングの次に前記燃焼室に近い位置に組み付けられる第2コンプレッションリングの外周面は、前記第2コンプレッションリングの周長方向に直交する断面において、前記第2コンプレッションリングにおいて最大径となる頂部を含んで径方向外側に凸状となるように湾曲したバレル面を含み、
    前記4本のコンプレッションリングのうち、前記第2コンプレッションリングの次に前記燃焼室に近い位置に組み付けられる第3コンプレッションリングの外周面は、前記第3コンプレッションリングの周長方向に直交する断面において、前記第3コンプレッションリングにおいて最大径となると共に前記第3コンプレッションリングの軸方向中央よりもクランク室側に位置する外周端部と、前記外周端部から前記燃焼室側に向かうに従って縮径するように傾斜したテーパ面と、を含み、
    前記4本のコンプレッションリングのうち、前記燃焼室から最も遠い位置に組み付けられる第4コンプレッションリングの外周面は、前記第4コンプレッションリングの周長方向に直交する断面において、前記第4コンプレッションリングにおいて最大径となると共に前記第4コンプレッションリングの軸方向中央よりもクランク室側に位置する外周端部と、前記外周端部から前記燃焼室側に向かうに従って縮径するように傾斜したテーパ面と、を含み、
    前記第3コンプレッションリングの張力をFt(3)とし、前記第4コンプレッションリングの張力をFt(4)としたとき、
    Ft(4)≧Ft(3)であり、
    前記第3コンプレッションリングの合口隙間の大きさをs1(3)とし、前記第4コンプレッションリングの合口隙間の大きさをs1(4)としたとき、
    s1(3)≧s1(4)である、
    ピストンリングの組合せ。
  3. 前記第2コンプレッションリングと前記第3コンプレッションリングと前記第4コンプレッションリングとのうち、少なくとも何れか1本のコンプレッションリングには、当該コンプレッションリングの軸方向端面であってクランク室側に面する下面と当該コンプレッションリングの前記外周端部との間に段差状の切欠が形成されている、
    請求項1に記載のピストンリングの組合せ。
  4. 前記第3コンプレッションリングと前記第4コンプレッションリングとのうち、少なくとも何れか一方のコンプレッションリングには、当該コンプレッションリングの軸方向端面であってクランク室側に面する下面と当該コンプレッションリングの前記外周端部との間に段差状の切欠が形成されている、
    請求項2に記載のピストンリングの組合せ。
  5. 前記第3コンプレッションリングの捩れ角度は、前記第3コンプレッションリングを前記ピストンに組付け、且つ、前記ピストンを前記シリンダに装着した状態で、0′~-85′である、
    請求項1からの何れか一項に記載のピストンリングの組合せ。
  6. 前記ピストンと請求項1からの何れか一項に記載のピストンリングの組合せを備える、内燃機関であって、
    前記内燃機関の使用回転域における前記ピストンの速度が平均18m/s未満である、
    内燃機関。
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