JP7306648B2 - トルク検出装置及びパワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
ところが、複数の磁歪式トルクセンサを設けると、コイルを励磁する際に、励磁周波数を同じに設定すると、それぞれの励磁回路の性能のばらつきにより、励磁周波数が実際には同じとならない場合がある。その結果、それぞれの磁歪式トルクセンサ間に干渉が生じ、出力信号にうなりが発生する。そして、磁歪式トルクセンサを、例えば、パワーステアリング装置に搭載した場合、操舵フィーリングに違和感を与える恐れがあった。
本発明は、磁歪式トルクセンサ間に干渉が生じにくく、出力信号にうなりが発生しにくいトルク検出装置等を提供することにより、運転者の違和感を低減させることを目的とする。
ここでは、第1の実施形態についてまず説明を行なう。
図1は、第1の実施形態に係るトルク検出装置200の概略構成を示す図である。図2は、第1トルクセンサ201の概略構成を示す図である。
本実施の形態のトルク検出装置200は、磁歪に起因する磁気特性の変化に基づいて回転軸390に印加された印加トルクTaを検出する磁歪式のセンサである第1トルクセンサ201と第2トルクセンサ202とを備えている。回転軸390は、軸の一例である。この場合、第1トルクセンサ201及び第2トルクセンサ202は、何れか一方のみでも、印加トルクTaを検出することが可能である。しかし、本実施の形態のトルク検出装置200は、トルクセンサを2個備えることで冗長性を与えている。そのため、何れか一方が故障しても印加トルクTaを検出することが可能となる。なお、本実施の形態では、トルクセンサは、第1トルクセンサ201及び第2トルクセンサ202の2個であるが、3個以上でもよい。
また、トルク検出装置200は、第1トルクセンサ201及び第2トルクセンサ202から出力された値に基づいて印加トルクTaに応じた値を出力すると共に第1トルクセンサ201及び第2トルクセンサ202の故障を診断する出力装置300を備えている。
第1トルクセンサ201の構成と第2トルクセンサ202の構成とは同一であるので、以下に、代表して第1トルクセンサ201について説明する。
第1トルクセンサ201は、回転軸390に加えられた印加トルクTaを検出するトルク検出部210と、トルク検出部210による検出に基づいて印加トルクTaに応じた電圧を出力するトルク検出回路250とを備えている。なお、上述したように、本実施の形態では、トルクセンサは、複数存在し、トルク検出部210及びトルク検出回路250は、それぞれのトルクセンサ毎に複数備えられる。上述したように、実施の形態では、トルクセンサとして、2個のトルクセンサである第1トルクセンサ201及び第2トルクセンサ202を備える、そして、第1トルクセンサ201及び第2トルクセンサ202は同様の構成であるため、第2トルクセンサ202にもトルク検出部210及びトルク検出回路250と同様のものが備えられている。
トルク検出部210は、印加トルクTaに応じて後述する2個のコイル(第1検出コイル221、第2検出コイル222)のインダクタンスを変化させ、トルク検出回路250は、これら2個のコイルのインダクタンスの変化に基づいて印加トルクTaに応じた電圧を出力する。
第1磁歪膜211及び第2磁歪膜212は、歪みの変化に対して透磁率の変化が大きい素材からなる金属膜であり、例えば、回転軸390の外周にメッキ法で形成したNi-Fe系の合金膜であることを例示することができる。第1磁歪膜211は、回転軸390の軸線方向に対して約45度傾斜した方向に磁気異方性を備えるように構成されており、第2磁歪膜212は、第1磁歪膜211の磁気異方性の方向に対して約90度傾斜した方向に磁気異方性を備えるように構成されている。すなわち、第1磁歪膜211、第2磁歪膜212の磁気異方性は互いに約90度位相を異にしている。
トルク検出回路250は、第1トルクセンサ201から出力された出力信号を基に、回転軸390に加わるトルクの大きさを検出する。トルク検出回路250は、CPU等からなる算術論理演算回路であり、図2に示すように、第1端子231,第2端子232それぞれから延びた信号線と電気的に接続された検出回路251を備えている。また、トルク検出回路250は、第3端子233,第4端子234それぞれから延びた信号線と電気的に接続された励磁モニタ回路252を備えている。また、トルク検出回路250は、第5端子235,第6端子236それぞれから延びた信号線と電気的に接続されて、交流電流を流して磁束を発生させる励磁回路253を備えている。そして、かかる構成により、検出回路251は、第1検出コイル221の一端と第2検出コイル222の他端の電圧を検出し、励磁モニタ回路252は、第1検出コイル221の一端と第2検出コイル222の他端の電圧と、第1検出コイル221の他端と第2検出コイル222の一端との接続部の電圧とを検出する。
第1トルクセンサ201では、第1検出コイル221、第2検出コイル222に関する磁歪特性曲線における印加トルクTaの中立点(ゼロ点)付近の一定勾配とみなされる領域を使用し、原点を通る直線であって、縦軸及び横軸の正側、負側に存在する直線を利用することで、検出回路251は、印加トルクTaの方向と大きさに応じた第1トルク検出信号TS1を出力する。
一方、第2トルクセンサ202の検出回路251は、第1端子231を介して出力される電圧と第2端子232を介して出力される電圧との差を所定の増幅度で増幅し、バイアス電圧(例えば、2.5V)を加えた電圧を第2トルク検出信号TS2として出力する。以下、第1トルク検出信号TS1と第2トルク検出信号TS2とをまとめて「トルク検出信号TS」と称する場合もある。
トルク検出信号TSは、図3に示すように、印加トルクTaの一方方向への大きさが増加するのに伴って上昇すると共に、最大電圧VHiと最小電圧VLoとの間で変化する。最大電圧VHiは4.5V、最小電圧VLoは0.5Vであることを例示することができる。かかる場合、0.5V以上4.5V以下の範囲がトルク検出信号TSの出力正常範囲となり、0.5Vより小さい範囲及び4.5Vより大きい範囲がトルク検出信号TSの出力異常範囲となる。
つまり、それぞれの励磁周波数を同じに設定した場合、それぞれの励磁回路のわずかな性能のばらつきにより、励磁周波数は実際には同じにならず、わすかに差が生じる。その結果、それぞれの周波数が、干渉を起こし、出力信号にうなりが生ずる。この周波数差は、比較的低い周波数であり、トルク検出装置200を、例えば、パワーステアリング装置に適用した場合、操舵フィーリングに違和感を与える。
出力装置300は、第1トルクセンサ201に動作電圧を供給する第1電源310と、第2トルクセンサ202に動作電圧を供給する第2電源320とを備えている。第1電源310,第2電源320は、車載バッテリの電源電圧を、それぞれ第1トルクセンサ201,第2トルクセンサ202に適した動作電圧に調圧し、調圧された動作電圧を出力装置300の第1電源端子301,第2電源端子302にそれぞれ印加する。また、出力装置300は、グランド電位に設定された第1グランド端子303と第2グランド端子304とを備えている。第1電源端子301及び第1グランド端子303に配線を介して第1トルクセンサ201が接続されることで、第1トルクセンサ201の電源が確保されている。また、第2電源端子302及び第2グランド端子304に配線を介して第2トルクセンサ202が接続されることで、第2トルクセンサ202の電源が確保されている。
故障診断部330には、第1トルクセンサ201から出力される第1トルク検出信号TS1及び第1故障診断用信号TSIG1、第2トルクセンサ202から出力される第2トルク検出信号TS2及び第2故障診断用信号TSIG2が入力される。そして、故障診断部330は、第1トルク検出信号TS1及び第2トルク検出信号TS2に基づいて、第1トルクセンサ201又は第2トルクセンサ202が故障しているか否かを診断する。故障診断方法については後で詳述する。
励磁出力命令部340は、故障診断部330が第1トルクセンサ201及び第2トルクセンサ202が故障していないと診断している場合には、第1トルクセンサ201の励磁回路253及び第2トルクセンサ202の励磁回路(図示せず)に対して励磁を命令する。
切替部350は、故障診断部330が第1トルクセンサ201及び第2トルクセンサ202が故障していないと判断している場合には、その旨の信号と共に、第1トルクセンサ201から出力される第1トルク検出信号TS1を、トルク信号Tdとして出力する。
また、切替部350は、第2トルクセンサ202が故障していると故障診断部330が判断している場合には、その旨の信号と共に、第1トルクセンサ201から出力される第1トルク検出信号TS1を、トルク信号Tdとして出力する。
また、切替部350は、第1トルクセンサ201が故障していると故障診断部330が判断している場合には、その旨の信号と共に、第2トルクセンサ202から出力される第2トルク検出信号TS2を、トルク信号Tdとして出力する。
また、切替部350は、故障診断部330が第1トルクセンサ201及び第2トルクセンサ202が故障していると判断している場合には、その旨の信号を出力する。
以下、故障診断部330が行う故障診断について説明する。
故障診断部330は、例えば、第1トルク検出信号TS1の電圧と第2トルク検出信号TS2の電圧との差が所定範囲内である場合には第1トルクセンサ201及び第2トルクセンサ202は正常であると診断し、第1トルク検出信号TS1の電圧と第2トルク検出信号TS2の電圧との差が所定範囲外である場合には第1トルクセンサ201又は第2トルクセンサ202が故障していると診断する。また、故障診断部330は、第1トルク検出信号TS1,第2トルク検出信号TS2が出力正常範囲内である場合には、第1トルクセンサ201,第2トルクセンサ202は正常であると診断し、第1トルク検出信号TS1,第2トルク検出信号TS2が出力異常範囲内である場合には、第1トルクセンサ201,第2トルクセンサ202は異常であると診断する。
また、トルク検出装置200においては、第2トルクセンサ202が故障していると故障診断部330が診断した場合には、励磁出力命令部340は、第2トルクセンサ202の励磁回路253に対して、励磁を停止するよう命令する。また、トルク検出装置200は、故障した第2トルクセンサ202に動作電圧を供給する第2電源320による電圧の供給を遮断する。
次に、第2の実施形態について説明を行なう。第2の実施形態では、第1の実施形態の構成に対し、トルクセンサにノッチフィルタを加える。
図4は、第2の実施形態に係る第1トルクセンサ201の概略構成を示す図である。なお、第2トルクセンサ202も同一の構成を有する。
図示するように、第2の実施形態に係る第1トルクセンサ201は、第1の実施形態に係る第1トルクセンサ201と比較して、トルク検出回路250にノッチフィルタ254をさらに備える点が異なる。なお、他は同様の構成となっている。
ノッチフィルタは254は、複数のトルク検出部のうち一のトルク検出部から出力される出力信号から、他のトルク検出部の励磁周波数成分の通過を阻害する。つまり、ノッチフィルタは25は、他のトルク検出部の励磁周波数を選択的にカットするフィルタである。
換言すれば、第1トルクセンサ201のノッチフィルタ254は、第2トルクセンサ202で使用される励磁周波数をカットする。また、第2トルクセンサ202のノッチフィルタは、第1トルクセンサ201で使用される励磁周波数をカットする。
このうち図5(a)は、周波数と振幅との関係を示した図であり、横軸は周波数(Frequency)を表し、縦軸は振幅(Magnitude)を表す。また、図5(b)は、周波数と位相との関係を示した図であり、横軸は周波数(Frequency)を表し、縦軸は位相(Phase)を表す。
図示する例は、20.8kHzの周波数をカットオフするノッチフィルタ254であり、図5(a)に示すように、振幅が、周波数20.8kHzにおいて極小値となる。
この場合、20.8kHzの周波数の振幅は、-40dB(約1/100)以下となる。トルク検出装置200を、例えば、パワーステアリング装置に適用した場合、うなりの周波数における振幅が、-40dB以下の範囲になれば、「操舵フィーリングに違和感を与えない」、と言うことができる。
図6(a)の場合、電圧の最大値と最小値が点線で示したようにほぼ一定であり、出力信号が安定することがわかる。この場合、検出回路251において検出する電圧の精度が向上する。
対して、図6(b)の場合、電圧の最大値と最小値がそれぞれ点線で示したように周期的に変動する。この変動の周波数は、上述したうなりの周波数である。この場合、この変動は、AM変調ノイズとなり、検出回路251において検出する電圧の精度が悪化する。
次に、第3の実施形態について説明を行なう。第3の実施形態では、第1の実施形態の構成に対し、トルクセンサにローパスフィルタを加える。
図7は、第3の実施形態に係る第1トルクセンサ201の概略構成を示す図である。なお、第2トルクセンサ202も同一の構成を有する。
図示するように、第3の実施形態に係る第1トルクセンサ201は、第1の実施形態に係る第1トルクセンサ201と比較して、トルク検出回路250にローパスフィルタ255をさらに備える点が異なる。なお、他は同様の構成となっている。
ローパスフィルタ255は、トルク検出回路から出力される検出信号から、それぞれのトルク検出部で使用する励磁周波数の差分の周波数成分の通過を阻害する。つまり、ローパスフィルタ255は、上述したうなりの周波数である5.2kHz、10.4kHz、15.6kHz等の周波数成分をカットオフする。
このうち図8(a)は、周波数と振幅との関係を示した図であり、横軸は周波数(Frequency)を表し、縦軸は振幅(Magnitude)を表す。また、図8(b)は、周波数と位相との関係を示した図であり、横軸は周波数(Frequency)を表し、縦軸は位相(Phase)を表す。
図示する例は、800Hzのローパスフィルタのフィルタ特性である。この場合、点F1でプロットするように、5.2kHzの周波数成分は、振幅が、-15dB(約1/6)となる。また、点F2でプロットするように、10.4kHzの周波数成分は、振幅が、-21dB(約1/10)となる。さらに、点F3でプロットするように、15.6kHzの周波数成分は、振幅が、-25dB(約1/18)となる。
次に、第4の実施形態について説明を行なう。第4の実施形態では、第1の実施形態の構成に対し、トルクセンサにノッチフィルタ及びローパスフィルタの双方を加える。
図9は、第4の実施形態に係る第1トルクセンサ201の概略構成を示す図である。なお、第2トルクセンサ202も同一の構成を有する。
図示するように、第4の実施形態に係る第1トルクセンサ201は、第1の実施形態に係る第1トルクセンサ201と比較して、トルク検出回路250に、ノッチフィルタ254及びローパスフィルタ255をさらに備える点が異なる。なお、他は同様の構成となっている。
この構成によれば、ノッチフィルタ254及びローパスフィルタ255の双方の効果が期待できる。
そしてさらに、第1の実施形態のように、複数のトルク検出部のそれぞれの励磁コイルを励磁する周波数である励磁周波数を互いに異なるように設定することで、うなりの周波数における振幅は、さらに小さくなり、-50dB(約1/300)程度となる。
またさらに、第2の実施形態によれば、ノッチフィルタは254は、複数のトルク検出部のうち一のトルク検出部から出力される出力信号から、他のトルク検出部の励磁周波数成分の通過を阻害するため、磁歪式トルクセンサ間に干渉が生じにくく、うなりがさらに発生しにくい。
そして、第3の実施形態によれば、ローパスフィルタは255は、トルク検出回路から出力される検出信号から、それぞれのトルク検出部で使用する励磁周波数の差分の周波数成分の通過を阻害する。その結果、うなりの周波数をカットし、うなりがさらに発生しにくい。
また、第4の実施形態によれば、ノッチフィルタは254及びローパスフィルタは255を双方使用するため、うなりがさらに発生しにくくなる。
第5の実施形態では、上述した第1の実施形態~第4の実施形態に係るトルク検出装置200を、パワーステアリング装置に利用する。つまり、このパワーステアリング装置は、車両のステアリングホイールの操舵に対してアシスト力を付与するモータと、ステアリングホイールの操舵トルクを検出する、上述したトルク検出装置200と、を備える。
Claims (7)
- 軸の径方向に形成された磁歪膜の径方向周囲に設けられ、励磁を行なう励磁コイルと前記軸に加わるトルクの大きさに応じて変化するインダクタンスの変化に応じた出力信号を出力する検出コイルと、を有する複数のトルク検出部と、
前記トルク検出部から出力された出力信号を基に、前記軸に加わるトルクの大きさを検出するトルク検出回路と、
を備え、
前記複数のトルク検出部のそれぞれの前記励磁コイルを励磁する周波数である励磁周波数を互いに異なるように設定し、
前記複数のトルク検出部のうち一のトルク検出部から出力される出力信号から、他のトルク検出部の励磁周波数成分の通過を阻害するノッチフィルタをさらに備えることを特徴とするトルク検出装置。 - 前記ノッチフィルタは、前記トルク検出部と前記トルク検出回路における前記出力信号の電圧を検出する検出回路との間にそれぞれ設けられることを特徴とする請求項1に記載のトルク検出装置。
- 前記複数のトルク検出部は、第1トルク検出部及び第2トルク検出部の2個からなり、
前記ノッチフィルタは、前記第1トルク検出部が有する前記検出コイルである第1検出コイルから出力される出力信号である第1出力信号から、前記第2トルク検出部の励磁周波数である第2励磁周波数成分の通過を阻害する第1ノッチフィルタ、及び前記第2トルク検出部が有する前記検出コイルである第2検出コイルから出力される出力信号である第2出力信号から、前記第1トルク検出部の励磁周波数である第1励磁周波数成分の通過を阻害する第2ノッチフィルタからなることを特徴とする請求項1に記載のトルク検出装置。 - 前記トルク検出回路から出力される検出信号から、それぞれのトルク検出部で使用する励磁周波数の差分の周波数成分の通過を阻害するとともに、カットオフ周波数がサンプリング定理により制御可能な周波数以上であるローパスフィルタをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のトルク検出装置。
- 前記ローパスフィルタは、100Hzの周波数成分をほぼカットしないことを特徴とする請求項4に記載のトルク検出装置。
- 車両のステアリングホイールの操舵に対してアシスト力を付与するモータと、
前記ステアリングホイールの操舵トルクを検出する、請求項1から5の何れか1項に記載のトルク検出装置と、
を備えるパワーステアリング装置。 - 前記複数のトルク検出部のうち一のトルク検出部から出力される出力信号から、他のトルク検出部の励磁周波数成分の通過を操舵フィーリングに影響を与えない範囲に阻害するノッチフィルタをさらに備えることを特徴とする請求項6に記載のパワーステアリング装置。
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