以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
(実施形態)
図1は、本実施形態の電動パワーステアリング装置の模式図である。図1に示すように、電動パワーステアリング装置80は、ステアリングホイール81と、ステアリングシャフト82と、ユニバーサルジョイント84と、ロアシャフト85と、ユニバーサルジョイント86と、ピニオンシャフト87と、ピニオン88aと、ラック88bと、を備える。
図1に示すように、ステアリングホイール81は、ステアリングシャフト82に連結される。ステアリングシャフト82の一端は、ステアリングホイール81に連結される。ステアリングシャフト82の他端は、ユニバーサルジョイント84に連結される。ロアシャフト85の一端は、ユニバーサルジョイント84を介してステアリングシャフト82に連結される。ロアシャフト85の他端は、ユニバーサルジョイント86を介してピニオンシャフト87に連結される。ピニオンシャフト87は、ピニオン88aに連結される。ピニオン88aは、ラック88bに噛み合う。ピニオン88aが回転すると、ラック88bが車両の車幅方向に移動する。ピニオン88a及びラック88bは、ピニオンシャフト87に伝達された回転運動を直進運動に変換する。ラック88bは、タイロッド89に連結される。ラック88bが移動することで車輪の角度が変化する。なお、ステアリングホイール81の操作が電気信号に変換され、電気信号によって車輪の角度が変化させられてもよい。すなわち、電動パワーステアリング装置80に、ステアバイワイヤシステムを適用してもよい。
図1に示すように、電動パワーステアリング装置80は、直動アクチュエータ1と、トルクセンサ94と、車速センサ95と、ECU(Electronic Control Unit)90と、を備える。直動アクチュエータ1は、電動モータ93を備える。電動モータ93は、例えばブラシレスモータであるが、ブラシ(摺動子)及びコミュテータ(整流子)を備えるモータであってもよい。電動モータ93は、後述するハウジング100に配置される。トルクセンサ94は、例えばピニオン88aに取り付けられている。トルクセンサ94は、ピニオン88aに伝達された操舵トルクをCAN(Controller Area Network)通信によりECU90に出力する。車速センサ95は、電動パワーステアリング装置80が搭載される車体の走行速度(車速)を検出する。車速センサ95は、車体に備えられ、車速をCAN通信によりECU90に出力する。電動モータ93、トルクセンサ94及び車速センサ95は、ECU90と電気的に接続される。
ECU90は、電動モータ93の動作を制御する。ECU90は、トルクセンサ94及び車速センサ95のそれぞれから信号を取得する。ECU90には、イグニッションスイッチ98がオンの状態で、電源装置99(例えば車載のバッテリ)から電力が供給される。ECU90は、操舵トルク及び車速に基づいて補助操舵指令値を算出する。ECU90は、補助操舵指令値に基づいて電動モータ93へ供給する電力値を調節する。ECU90は、電動モータ93から誘起電圧の情報又は電動モータ93に設けられたレゾルバ等から出力される情報を取得する。
図2は、本実施形態の直動アクチュエータの断面図である。図3は、ボールねじの周辺を拡大した直動アクチュエータの断面図である。図2に示すように、直動アクチュエータ1は、ハウジング100と、ボールねじ10と、軸受60と、伝達機構70と、を備える。
ハウジング100は、ラック88b、電動モータ93、及び軸受60を支持する部材である。ハウジング100は、例えばアルミニウム合金又はマグネシウム合金等の軽金属で形成される。
ボールねじ10は、回転運動を直進運動に変換する装置である。図2に示すように、本実施形態のボールねじ10は、ナット20と、ねじ軸30と、複数のボール40と、を備える。
図2に示すように、ナット20は、ハウジング100の内部に配置される。ナット20は、軸受60によって、回転軸Zを中心に回転できるように支持される。ナット20は、円筒状の本体部21と、フランジ部23と、固定部29と、第1ねじ溝25と、循環路27を備える。
以下の説明において、ナット20の回転軸Zに沿う方向は、単に軸方向と記載される。軸方向に対して直交する方向は、単に径方向と記載される。径方向は、放射方向とも呼ばれる。
図3に示すように、フランジ部23は、本体部21の軸方向の一端に配置される。フランジ部23は、本体部21から径方向の外側に向かって延びる。フランジ部23は、円環状の部材である。フランジ部23は、軸受60の内輪63に接する第1取付部231を備える。第1取付部231は、軸方向に対して直交する平面である。固定部29は、本体部21の軸方向の他端に配置される。
図3に示すように、固定部29は、本体部21の軸方向の他端(フランジ部23が配置される端部とは反対側の端部)に配置される。固定部29は、本体部21の外周面に取り付けられる。固定部29は、円環状の部材である。固定部29は、軸受60の内輪63に接する第2取付部291を備える。固定部29は、ロックナットとも呼ばれる。
図3に示すように、第1ねじ溝25は、本体部21の内周面に配置される。第1ねじ溝25は、螺旋状の溝である。第1ねじ溝25は、本体部21の軸方向の一端から他端に亘って連続して設けられる。第1ねじ溝25の断面形状は、2つの円弧を含むゴシックアーチである。
図2に示すように、ねじ軸30は、ナット20を貫通する。ねじ軸30は、ラック88bの一部である。すなわち、ねじ軸30は、ラック88bと一体である。図3に示すように、ねじ軸30は、外周面に第2ねじ溝35を備える。第2ねじ溝35は、螺旋状の溝である。第2ねじ溝35のピッチは、一定である。第2ねじ溝35の断面形状は、2つの円弧を含むゴシックアーチである。
ボール40は、ナット20の第1ねじ溝25とねじ軸30の第2ねじ溝35との間に配置される。ボール40は、第1ねじ溝25及と第2ねじ溝35とで形成される転動路を移動する。転動路は、ナット20の軸方向の一端から他端まで亘っている。複数のボール40の直径は、互いに同じである。ボール40は、第1ねじ溝25に1点又は2点で接する。ボール40は、第2ねじ溝35に2点で接する。
循環部品50は、ボール40を循環させるための部品である。循環部品50は、ボール40をナット20の一端から他端へ導く。循環部品50は、エンドデフレクタとも呼ばれる。図2に示すように、循環部品50は、ナット20の両端に取り付けられる。2つの循環部品50は、循環路27によって繋がっている。循環部品50は、転動路にあるボール40を循環路27に導く。又は、循環部品50は、循環路27にあるボール40を転動路に導く。ボール40は、転動路を無限循環する。
軸受60は、ハウジング100に対してナット20が回転できるようにナット20を支持する。軸受60は、例えば軸受鋼等の鋼で形成される。図2に示すように、軸受60は、外輪61と、内輪63と、複数の転動体65と、を備える。外輪61は、ハウジング100の内周面に嵌合する。外輪61は、ハウジング100及び環状のプレート69によって、位置決めされる。内輪63は、ナット20の外周面に嵌合する。内輪63は、ナット20と一体となって回転する。転動体65は、外輪61と内輪63との間に配置される。
伝達機構70は、電動モータ93の動力をナット20に伝達する。図2に示すように、伝達機構70は、駆動プーリ71と、従動プーリ73と、動力伝達部材75と、を備える。駆動プーリ71は、電動モータ93のシャフトと連結される。駆動プーリ71は、電動モータ93のシャフトと共に回転する。従動プーリ73は、ナット20と連結される。従動プーリ73は、ナット20と共に回転する。動力伝達部材75は、駆動プーリ71及び従動プーリ73に巻きかけられる。動力伝達部材75は、電動モータ93の動力を、駆動プーリ71から従動プーリ73に伝達する。動力伝達部材75は、例えば環状のベルトである。
電動モータ93が駆動すると、電動モータ93で生じた動力が伝達機構70を介してナット20に伝達される。ナット20が回転すると、ラック88b(ねじ軸30)に軸方向の力が作用する。これにより、ラック88bを移動させるために要する力が小さくなる。電動パワーステアリング装置80は、ラックアシスト式である。
図3に示すように、位置P1における第1ねじ溝25の幅D1は、位置P2における第1ねじ溝25の幅D2よりも小さい。位置P1は、第1取付部231及び第2取付部291の間の位置である。例えば、位置P1は、第1取付部231及び第2取付部291から等距離の位置である。位置P2は、位置P1よりも第1取付部231に近い。幅D2は、位置P3における第1ねじ溝25の幅D3よりも小さい。位置P3は、位置P2よりも第1取付部231に近い。
図3に示すように、幅D1は、位置P4における第1ねじ溝25の幅D4よりも小さい。位置P4は、位置P1よりも第2取付部291に近い。幅D4は、位置P5における第1ねじ溝25の幅D5よりも小さい。位置P5は、位置P4よりも第2取付部291に近い。なお、図中の第1ねじ溝25の幅は、説明のため誇張して描かれており、実際の幅とは異なる場合がある。
本実施形態において、第1ねじ溝25の幅は、位置P1において最小となる。幅D1は、ねじ軸30の第2ねじ溝35の幅と等しい。第1ねじ溝25の幅は、位置P1から離れるにしたがって連続的に大きくなっている。第1ねじ溝25の幅は、位置P1から離れるにしたがって単調増加している。第1ねじ溝25の幅は、軸方向の中央から両端に向かって、徐々に大きくなっている。第1ねじ溝25の幅は、位置P1からの距離に比例している。
図3に示すように、第1ねじ溝25のピッチLは、一定であり、第2ねじ溝35のピッチと等しい。ピッチLは、回転軸Zを含む平面でナット20を切った断面(図3に示す断面)において、隣り合う第1ねじ溝25の幅方向の中心間の距離である。
第1ねじ溝25は、例えば、砥石を用いた研削によって形成される。第1ねじ溝25の製造方法は、第1ステップと、第2ステップと、第3ステップと、を備える。まず第1ステップにおいて、ナット20を回転させながら、本体部21の内周面に当てた砥石が軸方向に一定の速さで移動させられる。これにより、本体部21の内周面に一定幅の螺旋状の溝が形成される。以下の説明において、第1ステップにおける砥石の移動方向を第1方向とし、第1方向とは反対方向を第2方向とする。
次に、第2ステップにおいて、第1ステップで形成された螺旋状の溝の幅が、第1方向に拡げられる。第2ステップにおいては、ナット20を回転させながら、本体部21の内周面に当てた砥石が第1方向に移動させられる。第2ステップにおける砥石の第1方向の移動の速さは、第1ステップにおける砥石の第1方向の移動の速さに補正値を加えた速さである。補正値は、砥石の第1方向への移動量が大きくなるにつれて、徐々に大きくなる。これにより、溝の中心よりも第1方向側の幅のみが連続的に大きくなる螺旋状の溝が形成される。
次に、第3ステップにおいて、第2ステップで形成された螺旋状の溝の幅が、第2方向に拡げられる。第3ステップにおいては、ナット20を回転させながら、本体部21の内周面に当てた砥石が第2方向に移動させられる。第3ステップにおける砥石の第2方向の移動の速さは、第1ステップにおける砥石の第1方向の移動の速さに補正値を加えた速さである。補正量は、砥石の第2方向への移動量が大きくなるにつれて、徐々に大きくなる。第2ステップで形成された螺旋状の溝の、中心よりも第2方向側の幅が拡げられることによって、第1ねじ溝25が形成される。
図4は、ナットの第1取付部に荷重が加わった時の本実施形態の直動アクチュエータの断面図である。図5は、ナットの第1取付部に荷重が加わった時の本実施形態のボールの負荷を示すグラフである。図5の縦軸は、ボール40の負荷である。図5の横軸は、第1取付部231からの距離である。図5のグラフの左端が、第1取付部231に最も近い位置にあるボール40の負荷を示す。図5のグラフの右端が、第2取付部291に最も近い位置にあるボール40の負荷を示す。図5の実線がボール40の負荷を示す。図5の破線は、第1ねじ溝25の幅が一定である場合のボール40の負荷を示す。
図4に示すように、ナット20には軸方向の荷重Fが加わる。ねじ軸30が軸方向に移動する時、ナット20には軸受60からの反力として荷重Fが加わる。具体的には、内輪63から第1取付部231又は第2取付部291に荷重Fが加わる。図4は、第1取付部231に荷重Fが加わる場合を示している。ナット20に荷重Fが加わると、ナット20が弾性変形する。一方、ねじ軸30は、ナット20ほどは弾性変形しない。ナット20の弾性変形量とねじ軸30の弾性変形量との間には差がある。このため、ボール40がナット20及びねじ軸30に圧縮されるので、ボール40に加わる負荷が大きくなる。
第1取付部231に荷重Fが加わる時、第1ねじ溝25の弾性変形量は、位置によって異なる。第1ねじ溝25は、荷重Fが作用する部分である第1取付部231に近い部分ほど大きく変形する。すなわち、第1ねじ溝25の弾性変形量は、第1取付部231に近付くにしたがって大きくなる。このため、第1取付部231の最も近くにあるボール40に、最も大きな負荷が加わる。図5の破線で示すように、仮に第1ねじ溝25の幅が一定である場合、第1取付部231の最も近くにあるボール40に加わる負荷と、第1取付部231から最も遠くにあるボール40に加わる負荷との間の差が大きくなる。すなわち、ボール40の負荷分布の偏りが大きくなる。これにより、直動アクチュエータ1の寿命が低下する可能性がある。
これに対して、本実施形態においては、第1取付部231の最も近くにあるボール40と第1ねじ溝25との間の隙間が、位置P1にあるボール40と第1ねじ溝25との間の隙間よりも大きくなっている。これにより、第1取付部231の最も近くにあるボール40に加わる負荷が低減する。このため、図5の実線で示すように、第1取付部231の最も近くにあるボール40に加わる負荷と、第1取付部231から最も遠くにあるボール40に加わる負荷との間の差が小さくなる。すなわち、ボール40の負荷分布の偏りが抑制される。その結果、直動アクチュエータ1は、寿命を向上させることができる。また、ボール40の転動路及び循環路27での移動がスムーズになる。
第2取付部291に荷重Fが加わる場合、弾性変形した後の第1ねじ溝25の形状は、図4に示す第1ねじ溝25の形状が左右反転した形状となる。第2取付部291に荷重Fが加わる場合、ボール40の負荷を示すグラフは、図5に示すグラフが左右反転したグラフとなる。第1取付部231に荷重Fが加わる場合と同様に、第2取付部291に荷重Fが加わる場合も、ボール40の負荷分布の偏りが抑制される。
また、ナット20にはモーメントが加わることがある。例えば、車輪が路面等から受ける外力がねじ軸30を介してナット20に加わる時、ナット20にモーメントが加わる。この場合、第1ねじ溝25の弾性変形量は、位置P1で最も小さくなり、位置P1から離れるにしたがって大きくなる。本実施形態においては、位置P1から離れるにしたがって、ボール40と第1ねじ溝25との間の隙間が大きくなっている。これにより、位置P1から離れた位置にあるボール40に加わる負荷が低減する。すなわち、ボール40の負荷分布の偏りが抑制される。
なお、第1ねじ溝25の幅は、軸方向の全長に亘って変化していなくてもよい。例えば、ナット20は、第1ねじ溝25の幅が一定である部分を備えていてもよい。また、第1ねじ溝25は、必ずしもナット20の軸方向の一端から他端まで繋がっていなくてもよい。第1ねじ溝25及び第2ねじ溝35で形成される転動路は、複数の区画に分けられていてもよい。例えば、ボール40が1リード毎に循環してもよい。循環部品50は、例えばこま等であってもよい。
循環部品50は、本実施形態で説明したものに限らず、公知のものを使用することができる。例えば、循環部品50は、リターンチューブなどであってもよく、ナット20に取り付けられていてもよい。ただし、上述したようにナット20に循環路27が直接設けられていると、ナット20の弾性変形に伴い、循環路27もナット20の軸方向に伸びるので、ナット20に荷重Fが加わった状態でも、スムーズにボール40を循環させることができる。
以上で説明したように、直動アクチュエータ1は、ナット20と、ねじ軸30と、複数のボール40と、支持部材(軸受60)と、を備える。ナット20は、内周面に設けられる第1ねじ溝25を備える。ねじ軸30は、外周面に設けられる第2ねじ溝35を備え、ナット20を貫通する。複数のボール40は、第1ねじ溝25及び第2ねじ溝35の間に配置される。支持部材(軸受60)は、ナット20が回転できるようにナット20を支持する。ナット20は、支持部材(軸受60)の一方の端面に接する第1取付部231と、支持部材(軸受60)の他方の端面に接する第2取付部291と、を備える。第1取付部231及び第2取付部291の間にある第1位置(位置P1)における第1ねじ溝25の幅D1は、第1位置(位置P1)よりも第1取付部231又は第2取付部291に近い第2位置(例えば位置P2又は位置P4)における第1ねじ溝25の幅(例えば幅D2又は幅D4)よりも小さい。
ナット20に軸方向の荷重F又はモーメントが加わる時、第1ねじ溝25が弾性変形する。第1ねじ溝25の弾性変形量は、第1位置(位置P1)から離れるほど大きくなる。すなわち、第2位置における第1ねじ溝25の弾性変形量は、第1位置における第1ねじ溝25の弾性変形量よりも大きい。このため、第1ねじ溝25が一定である場合には、第2位置においてボール40に加わる負荷が大きくなる。これに対して、本実施形態のボールねじ10においては、第1位置における第1ねじ溝25の幅が第2位置における第1ねじ溝25の幅よりも小さい。このため、第2位置におけるボール40と第1ねじ溝25との間の隙間は、第1位置におけるボール40と第1ねじ溝25との間の隙間よりも大きい。これにより、第2位置においてボール40に加わる負荷が低減する。したがって、ボール40の負荷分布の偏りが抑制される。このため、ボール40の転動路及び循環路27での移動がスムーズになる。また、ナット20の第1ねじ溝25は、容易に製造できる。さらに1つのボールねじ10に直径の異なる複数種類のボール40を用いる必要がない。よって、本実施形態の直動アクチュエータ1は、ボールの負荷分布の偏りを抑制でき且つ容易に製造できる。
直動アクチュエータ1において、第1ねじ溝25の幅は、少なくとも一部において、第1位置(位置P1)から離れるにしたがって連続的に大きくなっている。
仮に区画された各転動路ごとに異なる直径を有するボールが配置される場合、ボールの負荷分布の偏りが低減されるものの、ボールの負荷は軸方向の位置によって段階的に変わることになる。これに対して、本実施形態のボールねじ10においては、第1位置(位置P1)から離れるにしたがって、第1ねじ溝25とボール40との間の隙間が滑らかに大きくなる。ボール40の負荷は軸方向の位置によって連続的に変わることになる。このため、直動アクチュエータ1は、ボールの負荷分布の偏りをより抑制できる。
(第1変形例)
図6は、第1変形例の直動アクチュエータの断面図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図6に示すように、第1変形例の直動アクチュエータ1Aは、上述したナット20とは異なるナット20Aを備える。ナット20Aは、第1ねじ溝25Aを備える。
図6に示すように、第1ねじ溝25Aは、本体部21の内周面に配置される。第1ねじ溝25Aは、螺旋状の溝である。第1ねじ溝25Aは、本体部21の軸方向の一端から他端に亘って連続して設けられる。
図6に示すように、位置P11における第1ねじ溝25Aの幅D11は、位置P12における第1ねじ溝25Aの幅D12よりも小さい。位置P11は、第1取付部231及び第2取付部291の間の位置である。例えば、位置P11は、第1取付部231及び第2取付部291から等距離の位置である。位置P12は、位置P11よりも第1取付部231に近い。幅D12は、位置P13における第1ねじ溝25Aの幅D13よりも小さい。位置P13は、位置P12よりも第1取付部231に近い。
図6に示すように、幅D11は、位置P14における第1ねじ溝25Aの幅D14よりも小さい。位置P14は、位置P11よりも第2取付部291に近い。幅D14は、位置P15における第1ねじ溝25Aの幅D15よりも小さい。位置P15は、位置P14よりも第2取付部291に近い。なお、図中の第1ねじ溝25Aの幅は、説明のため誇張して描かれており、実際の幅とは異なる場合がある。
第1ねじ溝25Aの幅は、位置P11において最小となる。幅D11は、ねじ軸30の第2ねじ溝35の幅と等しい。第1ねじ溝25Aの幅は、位置P11から離れるにしたがって連続的に大きくなっている。第1ねじ溝25Aの幅は、位置P11から離れるにしたがって単調増加している。第1ねじ溝25Aの幅は、軸方向の中央から両端に向かって、徐々に大きくなっている。第1ねじ溝25Aの幅は、位置P11からの距離に比例している。
図6に示すように、位置P11における第1ねじ溝25Aの幅方向の中心を、中心C11とする。位置P12における第1ねじ溝25Aの幅方向の中心を、中心C12とする。位置P13における第1ねじ溝25Aの幅方向の中心を、中心C13とする。位置P14における第1ねじ溝25Aの幅方向の中心を、中心C14とする。位置P15における第1ねじ溝25Aの幅方向の中心を、中心C15とする。また、位置P11における第2ねじ溝35の幅方向の中心を中心E11とする。位置P12における第2ねじ溝35の幅方向の中心を中心E12とする。位置P13における第2ねじ溝35の幅方向の中心を中心E13とする。位置P14における第2ねじ溝35の幅方向の中心を中心E14とする。位置P15における第2ねじ溝35の幅方向の中心を中心E15とする。
図6に示すように、中心C11及び中心E11は、軸方向において同じ位置にある。位置P1においては、第1ねじ溝25Aは、幅方向の全長で第2ねじ溝35に面する。中心C12は、中心E12よりも、位置P11に近い。中心C13は、中心E13よりも、位置P11に近い。中心C14は、中心E14よりも、位置P11に近い。中心C15は、中心E15よりも、位置P11に近い。このため、第1ねじ溝25Aのピッチは、一定でない。
以下の説明において、軸方向にのうち位置P1側を内側、軸方向にのうち位置P1側とは反対側を外側とする。第1ねじ溝25Aの内側の端部は、第2ねじ溝35の内側の端部よりも、内側に配置される。第1ねじ溝25Aの外側の端部、及び第2ねじ溝35の外側の端部は、軸方向において同じ位置に配置される。第1ねじ溝25Aの幅は、第2ねじ溝35に対して、内側のみ拡大されている。
図7は、ナットの第1取付部に荷重が加わった時の第1変形例の直動アクチュエータの断面図である。図8は、ナットの第1取付部に荷重が加わった時の第1変形例のボールの負荷を示すグラフである。図8の縦軸は、ボール40の負荷である。図8の横軸は、第1取付部231からの距離である。図8のグラフの左端が、第1取付部231に最も近い位置にあるボール40の負荷を示す。図8のグラフの右端が、第2取付部291に最も近い位置にあるボール40の負荷を示す。図8の実線が第1変形例のボール40の負荷を示す。図8の二点鎖線は、上述した実施形態のボール40の負荷を示す。
第1変形例において、第1取付部231の最も近くにあるボール40と第1ねじ溝25Aとの間の隙間が、位置P1にあるボール40と第1ねじ溝25Aとの間の隙間よりも大きい。これにより、第1取付部231の最も近くにあるボール40に加わる負荷が低減する。このため、図8の実線で示すように、第1取付部231の最も近くにあるボール40に加わる負荷と、第1取付部231から最も遠くにあるボール40に加わる負荷との間の差が小さくなる。すなわち、ボール40の負荷分布の偏りが抑制される。その結果、直動アクチュエータ1は、寿命を向上させることができる。また、ボール40の転動路及び循環路27での移動がスムーズになる。
さらに、第1ねじ溝25Aの幅は、第2ねじ溝35に対して、内側のみ拡大されている。これにより、第1変形例においては、図8に示すように上述した実施形態と比較して、第1取付部231から最も遠くにあるボール40に加わる負荷が大きくなり、且つ第1取付部231の最も近くにあるボール40に加わる負荷が小さくなる。したがって、第1変形例においては、ボール40の負荷分布の偏りが抑制される。
以上で説明したように、第1変形例の直動アクチュエータ1Aにおいて、第2位置(例えば位置P12又は位置P14)における第1ねじ溝25Aの幅方向の中心(例えば中心C12又は中心C14)は、第2位置における第2ねじ溝35の幅方向の中心(例えば中心E12又は中心E14)よりも、第1位置(位置P1)に近い。
これにより、荷重の作用点から遠い位置におけるボール40の負荷が高くなりやすい。一方、荷重の作用点に近い位置におけるボール40の負荷が低くなりやすい。このため、ボール40の負荷分布の偏りがより抑制される。このため、ボール40の転動路及び循環路27での移動がスムーズになる。また、第1ねじ溝25Aは、第2ねじ溝35と同じ形状の溝に対して片側のみ拡大することによって製造できる。このため、ナット20の製造がより容易となる。よって、第1変形例の直動アクチュエータ1Aは、ボールの負荷分布の偏りをより抑制でき且つより容易に製造できる。
(第2変形例)
図9は、第2変形例の直動アクチュエータの断面図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図9に示すように、第2変形例の直動アクチュエータ1Bは、上述したナット20とは異なるナット20Bを備える。ナット20Bは、第1ねじ溝25Bを備える。
図9に示すように、第1ねじ溝25Bは、本体部21の内周面に配置される。第1ねじ溝25Bは、螺旋状の溝である。第1ねじ溝25Bは、本体部21の軸方向の一端から他端に亘って連続して設けられる。
図9に示すように、位置P21における第1ねじ溝25Bの幅D21は、位置P22における第1ねじ溝25Bの幅D22、及び位置P24における第1ねじ溝25Bの幅D24と等しい。位置P21は、第1取付部231及び第2取付部291の間の位置である。例えば、位置P21は、第1取付部231及び第2取付部291から等距離の位置である。位置P22は、位置P21よりも第1取付部231に近い。位置P24は、位置P21よりも第2取付部291に近い。
図9に示すように、幅D22は、位置P23における第1ねじ溝25Bの幅D23よりも小さい。位置P23は、位置P22よりも第1取付部231に近い。幅D24は、位置P25における第1ねじ溝25Bの幅D25よりも小さい。位置P25は、位置P24よりも第2取付部291に近い。なお、図中の第1ねじ溝25Bの幅は、説明のため誇張して描かれており、実際の幅とは異なる場合がある。
第1ねじ溝25Bの幅は、位置P21、位置P22、及び位置P24において最小となる。幅D21、幅D22、及び幅D24は、ねじ軸30の第2ねじ溝35の幅と等しい。第1ねじ溝25Bの幅は、一部において、位置P21から離れるにしたがって連続的に大きくなっている。第1ねじ溝25Bの幅は、一部において、位置P21から離れるにしたがって単調増加している。第1ねじ溝25Bの幅は、位置P22又は位置P24から端部に向かって、徐々に大きくなっている。第1ねじ溝25Bの幅は、位置P22からの距離、又は位置P24からの距離に比例している。第1ねじ溝25BのピッチLは、一定であり、第2ねじ溝35のピッチと等しい。
図10は、ナットの第1取付部に荷重が加わった時の第2変形例の直動アクチュエータの断面図である。図11は、ナットの第1取付部に荷重が加わった時の第2変形例のボールの負荷を示すグラフである。図11の縦軸は、ボール40の負荷である。図11の横軸は、第1取付部231からの距離である。図11のグラフの左端が、第1取付部231に最も近い位置にあるボール40の負荷を示す。図11のグラフの右端が、第2取付部291に最も近い位置にあるボール40の負荷を示す。図11の実線が第2変形例のボール40の負荷を示す。図11の二点鎖線は、上述した実施形態のボール40の負荷を示す。
第2変形例においては、第1取付部231の最も近くにあるボール40と第1ねじ溝25Aとの間の隙間が、位置P1にあるボール40と第1ねじ溝25Aとの間の隙間よりも大きくなっている。これにより、第1取付部231の最も近くにあるボール40に加わる負荷が低減する。このため、図11の実線で示すように、第1取付部231の最も近くにあるボール40に加わる負荷と、第1取付部231から最も遠くにあるボール40に加わる負荷との間の差が小さくなる。すなわち、ボール40の負荷分布の偏りが抑制される。その結果、直動アクチュエータ1Bは、寿命を向上させることができる。また、ボール40の転動路及び循環路27での移動がスムーズになる。なお、第1ねじ溝25Bのうち幅が拡大された範囲は、上述した第1ねじ溝25のうちの幅が拡大された範囲よりも狭い。このため、第2変形例においては、上述した実施形態と比較して、図11に示すようにボール40の負荷が全体的に高くなる。