JP7304237B2 - 無機多孔質成形体 - Google Patents
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Description
本実施形態のセメント硬化体の原料であるセメント組成物は、水硬性材料と、無機多孔質粒子と、パルプ材と、を含む。以下、各含有成分について説明する。
水硬性材料は、後述する無機多孔質粒子及びパルプ材の結合剤として用いられ、セメントに対し、珪砂、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、珪藻土、シラス、シリカヒューム等の珪酸質原料を加えて生成されるものである。
本実施形態において、水硬性材料中のカルシウム/シリカのモル比であるC/Sは、0.8~1.6である。また、セメント組成物における水硬性材料の含有量は特に制限されるものではないが、固形分比率で30~58質量%含まれることが好ましい。
本実施形態に係るセメント組成物に含まれるセメントとしては、特に制限されず、水と混合されて水和反応により硬化体を形成する各種セメント類が用いられる。例えば、早強ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等のポルトランドセメントや、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、耐硫酸塩性セメント等を、セメント硬化体の使用目的に応じて適宜選択することができる。これらのセメントは1種のみを用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。
珪砂は、二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とする砂状物質であり、本実施形態に係るセメント組成物の骨材として用いられる。骨材としての珪砂は吸水率が低く、強度及び耐久性が高く、化学的な安定性が高いことから好ましく用いられる。このような珪砂としては、例えば、石英を粉砕加工及び分級して製造される人造珪砂や、石英砂の状態で陸地や河口、海岸等で採取及び分級される天然珪砂等が用いられる。
無機多孔質粒子は、本実施形態に係るセメント硬化体における、細孔径1.0μm以上の細孔の細孔容積の割合を10~45%の範囲内に制御するために用いられる。このような無機多孔質粒子としては、パーライト、ゼオライト、黒曜石発泡体、シラス発泡体、気泡コンクリート、ロックウール、軽石等が用いられる。中でもパーライトを用いることが好ましい。
無機多孔質粒子としては、嵩比重が0.1以下であるものがより好ましく用いられる。嵩比重が0.2を超える無機多孔質粒子を用いた場合、セメント硬化体の比重を1.0以下にするためには、無機多孔質粒子の添加量が増加し、相対的なセメントの量が減少するため、セメント硬化体の強度が低下する。
パルプ材は、本実施形態に係るセメント硬化体の強度を高めるために用いられる。このようなパルプ材としては、特に制限されないが、N材パルプ、L材パルプ等の木材パルプや古紙パルプ、機械パルプ、化学パルプ等の各種パルプ材が用いられる。
本実施形態に係るセメント組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で上記成分の他、公知のセメント組成物に含まれ得る成分が含まれていてもよい。例えば、珪砂以外の細骨材、粗骨材などの骨材、又は、マイカ、シリカヒューム、スラグ、フライアッシュ、補強繊維(ポリプロピレン等)、木質繊維、硬化促進剤(塩化カルシウム等)、撥水剤、減水剤、遅延剤、発泡剤、消泡剤、又は、リサイクル材(セメント硬化体の製造工程で発生する、硬化前又は硬化後のセメント硬化体の不良材)等が含まれていてもよい。
中でも、撥水材が含まれることでセメント硬化体の吸水率が低下するため好ましい。撥水材の種類は特に制限されず、脂肪酸系、シリコーン系等の撥水材が用いられる。
本実施形態に係る無機多孔質成形体としてのセメント硬化体の製造方法としては、特に制限されるものではなく、公知の方法で製造できる。例えば、上記セメント組成物と水とをミキサー等で混合・混錬させてスラリーを作成した後、押出成形、注型成形、抄造成形、プレス成形等により成形し、必要に応じてオートクレーブ養生や湿潤養生、常温養生等により硬化させることで製造できる。
本実施形態に係る無機多孔質成形体としてのセメント硬化体は、全細孔容積に対する細孔径1.0μm以上の細孔の細孔容積の割合が10~45%であり、比重が1.0以下である。なお、本明細書における「細孔」とは、水銀圧入法で測定される細孔を示し、全細孔容積及び、特定範囲の細孔径の細孔容積の累計は、市販の水銀ポロシメータを用いて測定することができる。
そして、凍害を抑制するには、毛細管現象の起こり難い、より細孔径の小さい細孔の細孔容積の割合のみを増大させることが重要であると考えられていた。
また、同様に1.0μm以上の細孔の細孔容積の割合は45%以下である。これにより、無機多孔質成形体の凍害を抑制できる。
すなわち、本実施形態に係る無機多孔質成形体において、細孔径1.0μm以上の細孔の細孔容積の割合を10~45%とすることで、無機多孔質成形体の軽量化と、凍害の抑制とを両立できる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は本発明に含まれる。
表1に示した配合量で(表1中の数字の単位は質量部、C/Sはモル比を示す)、パルプ材に水を添加し混合して得られたパルプ水に水硬性材料、無機多孔質体、等を添加し混合して得られた混合物を加圧脱水して成形し、170℃、8時間オートクレーブ養生を行い、実施例1~6、比較例1~4の無機多孔質成形体を得た。なお、実施例4,5,6は、原料の配合量は同一であるが、得られる無機多孔質成形体の狙い比重が異なる。
・セメントA:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
・セメントB:中庸熱ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
・セメントC:低熱ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
・パーライトA:嵩比重0.2、浮水率79%
・パーライトB:嵩比重0.2、浮水率90%
・パーライトC:嵩比重0.1、浮水率94%
上記パーライトの浮水率、とは、約10gの試料を200mlのメスシリンダーに入れて水を入れ、十分に攪拌した後に静置し、水の濁りがなくなるまで置き、浮いた試料の容積Va(cm3)と、沈んだ試料の容積Vb(cm3)を測定し、Va/(Va+Vb)×100(vol%)の式により算出したものである。
なお、表1中の「リサイクル材」は、無機多孔質成形体の製造工程で発生する、硬化前又は硬化後の無機多孔質成形体の不良材を示す。
実施例1~6及び比較例1~4で得られた無機多孔質成形体について、比重、細孔径容積、吸水率、曲げ強度、耐凍害性の測定を行った。測定条件は以下の通りである。
全細孔径容積(cc/g)及び1.0μm以上の細孔の細孔容積(cc/g)並びに全細孔容積に対する1.0μm以上の細孔の細孔容積の割合(%)については、細孔径分布測定結果から得た。細孔径分布測定は、全自動細孔径分布測定装置(Poremaster 33P、Quantachrome社)を用い、以下の測定条件により測定した。結果を表2に示す。
(測定条件)
測定回数:検体当たり1回
測定範囲:8.6kPa-200MPa(細孔直径6.4nm-175μm)
加圧モード:連続加圧 speed=5
前処理条件:室温真空排気 10min
使用セル:SM-2mm標準セル
試料乾燥:真空12時間以上
ScanMode:11
実施例1~6及び比較例1~4で得られた無機多孔質成形体について、吸水率(%)を測定した。吸水率はJIS A 5430に準拠した方法に従って、浸漬時間をそれぞれ1時間、又は24時間として測定した。結果を表2に示す。
実施例1~6及び比較例1~4で得られた無機多孔質成形体について、曲げ強度(kgf/cm2)を測定した。曲げ強度は、JIS A 5422及びJIS A 1408に準拠した方法に従って測定した。結果を表2に示す。
実施例1~6及び比較例1~4で得られた無機多孔質成形体について、耐凍害性を評価した。耐凍害性の評価は、72時間吸水した上記実施例及び比較例の無機多孔質成形体の試験板でASTMC666-A法に準ずる凍結融解サイクル試験を行い、50サイクル時点での体積膨張率(ΔV%)を測定して行った。体積膨張率(ΔV%)が12.5%未満を〇と評価し、12.5%以上を×と評価した。結果を表2に示す。
Claims (2)
- 全細孔容積に対する細孔径1.0μm以上の細孔の細孔容積の割合が10~45%であり、
比重が1.0以下であり、
全細孔容積に対する細孔径0.1μm未満の細孔の細孔容積の割合が40~65%であり、
全細孔容積が0.4~1.0cc/gであり、
セメントと、珪砂と、無機多孔質粒子と、を含み、
前記無機多孔質粒子は、パーライト、ゼオライト、黒曜石発泡体、シラス発泡体、気泡コンクリート、ロックウール、及び軽石からなる群より選ばれる少なくとも一種であり、
前記無機多孔質粒子の嵩比重は0.2以下である、無機多孔質成形体。 - 前記無機多孔質粒子は、パーライトである、請求項1に記載の無機多孔質成形体。
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