JP7304162B2 - 防錆シートおよび防錆トレイ - Google Patents

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Description

本発明は、防錆シートおよびトレイに関するものである。さらに詳細には、鋳鉄のような防錆が難しいものに対しても防錆効果を示し、シート製膜時の生産性に優れる防錆シートおよびそのシートを熱成形してなるトレイに関するものである。
現代社会においては、様々な用途で大量の金属部品が使われている。金属部品の輸送はグローバルに行われているため、長距離にわたる金属部品の輸送量が増大している。輸送中の金属部品の品質を保証するため、特に防錆対策の重要性が高まっている。
輸送中の金属部品の防錆方法としては、古くから防錆油が用いられている。防製油は金属部品自体に直接塗布して使用される。したがって金属部品を使用する前には防錆油を除去する必要がある。また、大量の金属部品に防錆油を塗布する作業は時間や手間がかかるため、より簡便な防錆方法の確立が求められていた。
特許文献1には、防錆を必要とする金属製品を包装するための防錆性多層フィルムが開示されている。特許文献2には、金属を包装するための防錆フィルムが開示されている。これらのフィルムを用いて金属製品を包装することは、防錆油を塗布する従来方法よりは簡便である。しかしながら、作業効率の向上のためにさらなる簡便な方法が求められていた。
特許文献3には、気化性防錆剤を含有したプロピレン系樹脂からなる中間層と、亜硝酸ナトリウムを含有するプロピレン系樹脂からなる表面層とで構成された防錆シートおよびそのシートを熱成形してなる防錆容器が開示されている。特許文献3の防錆容器は、金属部品を防錆油で塗布したり、防錆フィルムで梱包したりする必要がなく、より簡便な防錆対策となりうるものとして開示されている。しかし、特許文献3の防錆容器の、鋳鉄部品の防錆効果は不十分であった。そこで、鋳鉄部品の防錆については、さらなる改良と効果の向上が求められていた。
特開平01-210340号公報 特開2013-7072号公報 特開2008-273121号公報
そこで本発明は、鋳鉄部品に対しても防錆効果を示し、シート製膜時の生産性に優れる多層シートを提供することを目的とする。さらに本発明は、多層シートを熱成形してなる、鋳鉄部品に対しても防錆効果を示す、トレイを提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の物性を示す防錆剤組成物を、特定の構造を有するオレフィン系樹脂組成物に含有させ、多層構造のシートに成形することにより、シート製膜時の生産性を低下させることなく、鋳鉄部品にも防錆性を発現するシートを得ることができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の実施形態は、層(I)および層(II)を有する多層シートであって、該層(I)は、マスターバッチ(A)0.1~60重量%と、エチレン系樹脂(B)40~99.9重量%とを含み(ここで、該マスターバッチ(A)と、該エチレン系樹脂(B)の量は、該マスターバッチ(A)と該エチレン系樹脂(B)との合計量に対する量である。)、該層(II)は、プロピレン系樹脂(C)を含む、前記多層シートである。ここで、該マスターバッチ(A)は、TG-DTA測定において300℃での重量変化率が0.5~2.0重量%である防錆剤を含み、該プロピレン系樹脂(C)の融点は、100~150℃であり、該エチレン系樹脂(B)の融点は、該プロピレン系樹脂(C)の融点よりも低いことを特徴とする。
本発明の他の実施形態は、マスターバッチ(A)0.1~60重量%と、エチレン系樹脂(B)40~99.9重量%とを含む、層(I)と(ここで、該マスターバッチ(A)と、該エチレン系樹脂(B)の量は、該マスターバッチ(A)と該エチレン系樹脂(B)との合計量に対する量である。)、プロピレン系樹脂(C)を含む、層(II)と、から構成される多層シートを熱成形してなる、トレイである。ここで、該マスターバッチ(A)は、TG-DTA測定において300℃での重量変化率が0.5~2.0重量%である防錆剤を含み、該プロピレン系樹脂(C)の融点は、100~150℃であり、該エチレン系樹脂(B)の融点は、該プロピレン系樹脂(C)の融点よりも低いことを特徴とする。
本発明の多層シートは、製膜性に優れ、生産性が高い。また本発明の多層シートは、鋳鉄に対する防錆効果を発揮することができる。本発明のトレイは、中に納めた鋳鉄部品に対し防錆効果を発揮するため、鋳鉄を含む金属部品全般の運搬に有効に用いることができる。
一の実施形態は、層(I)および層(II)を有する多層シートであって、該層(I)は、マスターバッチ(A)0.1~60重量%と、エチレン系樹脂(B)40~99.9重量%とを含み(ここで、該マスターバッチ(A)と、該エチレン系樹脂(B)の量は、該マスターバッチ(A)と該エチレン系樹脂(B)との合計量に対する量である。)、該層(II)は、プロピレン系樹脂(C)を含む、前記多層シートである。本明細書においてシートとは、概して面積が広く厚みの薄い物体のことを指す。多層シートとは、複数の層構造が積み重ねられた構造を有するシート形状の物のことである。実施形態の多層シートは、少なくとも層(I)と層(II)との2つの層が重ね合わされた構造を有している。
層(I)は、マスターバッチ(A)0.1~60重量%と、エチレン系樹脂(B)40~99.9重量%とを含む。ここで、マスターバッチ(A)と、エチレン系樹脂(B)の量は、マスターバッチ(A)とエチレン系樹脂(B)との合計量に対する量のことである。本明細書においてマスターバッチとは、プラスチックと多量の添加剤(染料、顔料、帯電防止剤等に代表される、一般的なプラスチック添加剤)とから構成された、高濃度の添加剤コンパウンドのことを指す。本実施形態では、マスターバッチ(A)は、防錆剤を含む。防錆剤については後に詳述する。実施形態で用いるマスターバッチ(A)は、後述する防錆剤と、分散剤と、エチレン系の樹脂との混合物であることが好ましい。マスターバッチに使用されるエチレン系樹脂として、たとえば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンが挙げられる。またマスターバッチに用いられる分散剤として、たとえば、ステアリン酸1,2-ヒドロキシステアリン酸等の高級脂肪酸類、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸金属塩類、天然ワックス類、多価アルコール部分エステル類、パラフィンワックス、低分子ポリエチレン等の炭化水素類、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコール等のアルコールが挙げられる。
ここで、マスターバッチ(A)は、TG-DTA測定において300℃での重量変化率が0.5~2.0重量%である防錆剤を含む。TG-DTA測定とは、熱重量・示差熱分析による測定のことである。熱重量分析(TG)とは、試料の温度を一定のプログラムにしたがい変化させながら試料の質量を温度の関数として測定することを云い、示差熱分析とは、試料を加熱または冷却した際に起こる物理変化や化学変化に伴い発生する熱変化を基準物質との温度差として検出することを云う。いずれも、物質の脱水、分解、酸化、還元等の化学変化や、昇華、蒸発、吸脱着等の物理変化、転移、融解、凝固、硬化、ガラス転移などの状態変化を分析することができる。実施形態で用いられるマスターバッチ(A)に含まれている防錆剤は、TG-DTA測定において300℃での重量変化率が0.5~2.0重量%である。300℃での重量変化率は、たとえば、以下の方法に従って測定することができる:TG-DTA測定器(たとえば、(株)リガクのThermo Plus Evo TG8120)を用いて、試片5~10mgを通気速度100ml/分で空気雰囲気下としながら、5℃/分の昇温速度で400℃まで昇温させる。上記記載の方法に従って測定された重量変化カーブにおいて、室温から300℃に昇温した際の重量変化率を300℃での重量変化率とする。なお本明細書で防錆剤と云うときは、防錆剤の主成分および有効成分と、その他の基剤等とを含む防錆剤組成物をも包含するものとする。
実施形態において、防錆剤が上記のような重量変化率を有するものであることは、重要である。実施形態の多層シートは、後述するように、成形加工して成形体を作製するのに用いられる。成形体の加工中に、多層シート中に含まれている防錆剤が蒸発(本明細書では、「揮発」または「蒸散」の意味を含む。)してしまうと、得られた成形体に防錆剤が残らない。一方、成形体に加工した後には、適切なタイミングで防錆剤が蒸発し、防錆効果を発揮させる必要がある。つまり、多層シートの加工中には防錆剤が蒸発せず、成形体加工後には適切なタイミングで防錆剤が蒸発するようにするために、実施形態で用いる防錆剤は、TG-DTA測定において300℃での重量変化率が0.5~2.0重量%である必要がある。
上記のような防錆剤の主成分として、気化性防錆剤を含むことができる。気化性防錆剤とは、実施形態の多層シートあるいは多層シートから作製された成形体から気化することにより金属部品への錆の発生を防止または抑制する物質のことである。気化性防錆剤は、金属面に空気中の水分が結露してできた結露水中に溶解して、酸素や液体の水と金属との反応を防止したり、金属面に被膜を形成したりして、金属表面に錆が形成するのを防止することができる。気化性防錆剤として、たとえば、亜硝酸ナトリウム、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジシクロヘキシルアンモニウムサリシレート、モノエタノールアミンベンゾエート、ジシクロヘキシルアンモニウムベンゾエート、ジイソプロピルアンモニウムベンゾエート、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、シクロヘキシルアミンカーバメート、ニトロナフタレンアンモニウムナイトライト、シクロヘキシルアミンベンゾエート、ジシクロヘキシルアンモニウムシクロヘキサンカルボキシレート、シクロヘキシルアミンシクロヘキサンカルボキシレート、ジシクロヘキシルアンモニウムアクリレート、シクロヘキシルアミンアクリレートを挙げることができる。本実施形態では亜硝酸ナトリウムを主成分として含むことができる。亜硝酸ナトリウムは、金属表面処理や食品添加剤として用いられる結晶化合物である。
さらに上記のような防錆剤の有効成分の一つとして、以下の化学式(1):
Figure 0007304162000001
(ここでXは、炭素数が1~10のアルキレン基であり、YおよびYは、同一または異なって、アルカリ金属であり、またはYおよびYは一緒になってアルカリ土類金属である。)で表される二塩基酸塩が挙げられる。実施形態の多層シートに用いられる防錆剤の有効成分として、マロン酸二ナトリウム、マロン酸二カリウム、マロン酸カルシウム、コハク酸二ナトリウム、コハク酸二カリウム、コハク酸カルシウム、グルタル酸二ナトリウム、グルタル酸二カリウム、グルタル酸カルシウム、アジピン酸二ナトリウム、アジピン酸二カリウム、アジピン酸カルシウム、セバシン酸二ナトリウム、セバシン酸二カリウム、セバシン酸カルシウム等の二塩基酸を挙げることができる。上記の防錆剤の有効成分は、主に接触防錆剤としてはたらく。特に防錆剤の有効成分として、セバシン酸二ナトリウムを用いると、上記の主成分と相まって、実施形態の多層シートに効果的な防錆性を与えることができる。
層(I)を構成する成分であるエチレン系樹脂(B)は、エチレンを重合したポリエチレン構造を基本骨格として有する単独重合体または共重合体のことである。エチレン系樹脂(B)として、たとえば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、超高密度ポリエチレンを用いることができる。エチレン系樹脂(B)の融点(Tm)は、多層シートから作製される成形体の外観を良好にする、あるいは剛性や衝撃強度等の機械的強度を高めるという観点から、好ましくは60~130℃である。エチレン系樹脂(B)の融点は、より好ましくは70~130℃であり、さらに好ましくは80~125℃である。ここで樹脂類の融点(Tm)は、示差走査熱量計を用いて測定された融解吸熱カーブにおいて、吸熱量が最大であるピークのピーク温度のことである。示差走査熱量計を用いた融点の測定法として、たとえば以下のような方法がある:樹脂試片5mgを窒素雰囲気下180℃で10分間加熱して融解させた後、10℃/分の降温速度で30℃まで降温させる。その後、10℃/分で昇温させて得られた融解吸熱カーブに基づき融点を求める。
層(I)中、マスターバッチ(A)とエチレン系樹脂(B)とは、0.1:99.9~60:40の割合で混合されていることが好ましい。ここで上記割合は、マスターバッチ(A)とエチレン系樹脂(B)との合計重量に対する割合である。多層シート加工性の観点から、好ましくは、マスターバッチ(A)0.5~50重量%とエチレン系樹脂(B)50~99.5重量%を配合することが好ましく、マスターバッチ(A)1~50重量%とエチレン系樹脂(B)50~99重量%とを配合することがさらに好ましい。なお、マスターバッチ(A)の配合量を増やせば、多層シートの防錆効果は向上するが、層(I)の柔軟性が損なわれる場合がある。そこで層(I)の柔軟性と、多層シートの防錆性とのバランスを考慮して、マスターバッチ(A)とエチレン系樹脂(B)とを上記の割合で混合することが望ましい。
実施形態で用いられるエチレン系樹脂(B)の密度は、多層シートから作製される成形体の外観を良好にする、あるいは剛性や衝撃強度等の機械的強度を高めるという観点から、好ましくは0.860~0.950g/cmである。エチレン系樹脂(B)の密度は、より好ましくは0.870~0.940g/cmであり、さらに好ましくは0.880~0.930g/cmである。
実施形態で用いられるエチレン系樹脂(B)の溶融流量(メルトフローレート、MFR)は、多層シートから作製される成形体の外観不良や衝撃強度の低下の防止、真空成形等の2次加工性を維持するという観点から、好ましくは0.01~20g/10分である。エチレン系樹脂(B)のMFRは、より好ましくは0.1~10g/10分であり、さらに好ましくは0.2~5g/10分である。なお、MFRは、JIS K7210-1に従い、190℃、2.16kg荷重で測定した値である。
実施形態で用いられるエチレン系樹脂(B)は、市販の樹脂を用いることができる。市販されているエチレン系樹脂(B)として、たとえば、ノバテック、ハーモレックス、カーネル(日本ポリエチレン(株))、エボリュー、エボリューH、ハイゼックス、ウルトゼックス((株)プライムポリマー)、エクセレン、スミカセン(住友化学(株))が挙げられる。
実施形態の多層シートは、層(I)のほかに層(II)を有する。層(II)は、プロピレン系樹脂(C)を含む。プロピレン系樹脂(C)は、プロピレンを重合したポリプロピレン構造を基本骨格として有する単独重合体または共重合体のことである。プロピレン系樹脂(C)として、アタクティックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、エチレン・ブテン1・プロピレン三元重合体、ブテン1・プロピレン二元重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体等を用いることができる。ここでプロピレン系樹脂(C)の融点は、100~150℃であることが好ましい。プロピレン系樹脂(C)の融点が100~150℃であると、多層シートから作製される成形体の外観が向上し、さらに成形体の剛性や衝撃強度等の機械的強度が向上する。
実施形態で用いられるプロピレン系樹脂(C)は、市販の樹脂を用いることができる。市販されているプロピレン系樹脂(C)として、たとえば、ノバテックPP、ウィンテック、ウェルネクス、ウェイマックス(日本ポリプロ(株))、プライムポリプロ(プライムポリマー(株))、ノーブレン、エクセレン(住友化学(株))が挙げられる。
実施形態で用いられる層(I)中のエチレン系樹脂(B)は、層(II)中のプロピレン系樹脂(C)より融点が低い。好ましくは、プロピレン系樹脂(C)よりエチレン系樹脂(B)の融点は5℃低く、より好ましくは10℃低く、さらに好ましくは15℃低い。エチレン系樹脂(B)とプロピレン系樹脂(C)との融点の差が小さすぎると、多層シート製造時に層(I)中の防錆剤が蒸発してしまい、製造した多層シートの防錆性能が低下する場合がある。一方、エチレン系樹脂(B)とプロピレン系樹脂(C)との融点の差が大きすぎると、多層シートの製造時に層(I)と層(II)との界面が乱れることがあり、これにより、多層シートの製膜安定性が損なわれる場合がある。
実施形態の多層シートにおける層(I)には、マスターバッチ(A)、エチレン系樹脂(B)以外の高分子化合物をさらに添加することもできる。マスターバッチ(A)、エチレン系樹脂(B)以外に層(I)に添加できる高分子化合物として、たとえば、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーが挙げられる。
実施形態の多層シートにおける層(II)には、プロピレン系樹脂(C)以外の高分子化合物をさらに添加することもできる。プロピレン系樹脂(C)以外に層(II)に添加できる高分子化合物として、たとえば、エチレン系樹脂(B)として挙げられる高分子化合物やスチレン系エラストマーが挙げられる。多層シートの真空成形性を向上させるために、層(II)としてエチレン系樹脂(B)とプロピレン系樹脂(C)との混合物を用いる場合は、エチレン系樹脂(B)1~30重量%と、プロピレン系樹脂(C)70~99重量%とを配合することが好ましく、エチレン系樹脂(B)3~20重量%と、プロピレン系樹脂(C)80~97重量%とを配合することがさらに好ましく、エチレン系樹脂(B)5~20重量%と、プロピレン系樹脂(C)80~95重量%とを配合することが特に好ましい。
実施形態の多層シートは、従来から用いられているシート加工方法およびシート製造方法により製造することができる。たとえば、インフレーション成形法、押出Tダイキャスト成形法により好適に製造できる。実施形態の多層シートは、好ましくは、押出Tダイキャスト法にて製造することが好ましい。
実施形態の多層シートは、層(I)および層(II)の間、あるいは層(I)の外側および/または層(II)の外側に、層(I)および層(II)とは異なる別の層を有していてもよい。層(I)および層(II)とは異なる別の層として、接着層、加飾や光沢を目的とした被覆層、強度や耐擦傷性の向上を目的に設けられる保護層等を挙げることができる。
本発明の他の実施形態は、マスターバッチ(A)0.1~60重量%と、エチレン系樹脂(B)40~99.9重量%とを含む、層(I)と(ここで、該マスターバッチ(A)と、該エチレン系樹脂(B)の量は、該マスターバッチ(A)と該エチレン系樹脂(B)との合計量に対する量である。)、プロピレン系樹脂(C)を含む、層(II)と、から構成される多層シートを熱成形してなる、トレイである。ここでマスターバッチ(A)は、TG-DTA測定において300℃での重量変化率が0.5~2.0重量%である防錆剤を含み、プロピレン系樹脂(C)の融点は、100~150℃であり、エチレン系樹脂(B)の融点は、プロピレン系樹脂(C)の融点よりも低いことを特徴とする。実施形態のトレイは、本発明の他の実施形態の多層シートを熱成形してなる。実施形態におけるトレイは、従来から用いられている熱成形方法により作製することができるが、特に、真空成形法、圧空成形法、プレス成形法等により好ましく作製できる。
トレイの作製に用いる多層シートは、本発明の他の実施形態の多層シートである。多層シートは、マスターバッチ(A)0.1~60重量%と、エチレン系樹脂(B)40~99.9重量%とを含む、層(I)と、プロピレン系樹脂(C)を含む、層(II)と、から構成される。ここで、マスターバッチ(A)と、エチレン系樹脂(B)の量は、マスターバッチ(A)とエチレン系樹脂(B)との合計量に対する量である。層(I)に含まれているマスターバッチ(A)は、TG-DTA測定において300℃での重量変化率が0.5~2.0重量%である防錆剤を含む。また層(II)に含まれているプロピレン系樹脂(C)の融点は、100~150℃であることが好ましい。そして層(I)に含まれているエチレン系樹脂(B)の融点は、層(II)に含まれているエチレン系樹脂(C)の融点よりも低いことが好ましい。
実施形態のトレイにおいて、防錆剤は、亜硝酸ナトリウムを主成分とし、セバシン酸二ナトリウムを有効成分として含む防錆剤組成物であることが好ましい。
以下、実施例および比較例によって、本発明を説明する。実施例または比較例で用いた評価用多層シート試料の製造方法を以下に示す。
評価用多層シート試料のTダイ押出成形方法
日立造船製成形機を用いて、下記の条件で評価用多層シート試料を作製した:
日立造船製Tダイ押出成形機
スクリュー径:120mm
スクリュータイプ:フルフライト
成形条件
エアーナイフ方式
層(I):シリンダー設定温度:170℃
層(II):シリンダー設定温度:200℃
第1ロール設定温度:65℃
引取速度:3.4m/分
シート幅:700mm
多層シート試料の評価は、以下の方法で行った:
(1)シート製膜性(単位:-)
上記条件で多層シートを作製した際に、目視で観察を行い、以下の基準で判定した。
不良:Tダイ出口に蓄積した分解物や発泡物が大量に製膜した多層シート表面に付着して、多層シート表面の外観が損なわれている
良好:上記の事象が発生しない
(2)簡易防錆性(単位:-)
簡易防錆性の評価は、JIS K2246の方法に準拠して行った。具体的には、49℃、相対湿度95%以上に状態調整されたガラス瓶の中に、鋳鉄のサンプル(サイズ:φ15mm×5mm厚)と、多層シート試料(サイズ:63mm×75mm)とを入れて1時間放置した後、鋳鉄のサンプルを取り出して30分室温で放置した。その後、鋳鉄のサンプルの表面を観察して、下記のとおり判定した。
良好:サンプル表面に茶色の錆の発生が観られなかった。
不良:サンプル表面に茶色の錆の発生が観られた。
(3)熱重量測定
防錆剤の熱重量測定は、(株)リガクのThermo Plus Evo TG8120を用いて、以下の測定条件で行った:
昇温速度:5.0℃/分
試料量:5~10mg
空気を100mL/分で通気
[実施例1]
製膜するTダイ押出シートの下流側から層(I)/層(II)とした。層(I)は、(株)大和化成研究所製防錆剤(VERZONE HR-P11)が入ったマスターバッチVERZONE HR-P11 MB(A-1)を50重量%、住友化学(株)製F101-1(B-1)(密度:923kg/m、MFR:1.5g/10分、融点:112℃)を50重量%混合した。層(II)は、日本ポリプロ(株)製EG7F(C-1)(融点:143℃、MFR:0.4g/10分)を90重量%、住友化学(株)製F101-1(B-1)(密度:923kg/m、MFR:1.5g/10分、融点:112℃)を10重量%混合した。上記のTダイ押出成形方法で層(I)と層(II)とを製膜して、厚み1200μmの多層シートを得た。なお得られた多層シート中の層(I)の厚みは300μm、層(II)の厚みは900μmであった。
[比較例1]
(株)大和化成研究所製防錆剤VERZONE HR-P11の代わりに防錆剤VERZONE HR-P5が入ったマスターバッチVERZONE HR-P5 MB(A-2)を用いた以外は、実施例1と同様にして行った。
[比較例2]
(株)大和化成研究所製防錆剤VERZONE HR-P11の代わりに防錆剤VERZONE HR-P8が入ったマスターバッチVERZONE HR-P8 MB(A-3)を用いた以外は、実施例1と同様にして行った。
[比較例3]
(株)大和化成研究所製防錆剤VERZONE HR-P11 MBの代わりに防錆剤VERZONE HR-P10が入ったマスターバッチVERZONE HR-P10 MB(A-4)を用いた以外は、実施例1と同様にして行った。
Figure 0007304162000002
なお、表1中の略号は、以下の意味を表す:
A-1:(株)大和化成研究所製防錆剤入りマスターバッチ VERZONE HR-P11 MB
A-2:(株)大和化成研究所製防錆剤入りマスターバッチ VERZONE HR-P5 MB
A-3:(株)大和化成研究所製防錆剤入りマスターバッチ VERZONE HR-P8 MB
A-4:(株)大和化成研究所製防錆剤入りマスターバッチ VERZONE HR-P10 MB
B-1:住友化学(株) F101-1
C-1:日本ポリプロ(株) EG7F
防錆剤入りマスターバッチA-1、A-2、A-3およびA-4は、亜硝酸ナトリウムを気化防錆剤として含み各々異なる有効成分を含む防錆剤が入ったマスターバッチである。なお、防錆剤入りマスターバッチA-1の有効成分は、以下の化学式(1):
Figure 0007304162000003
(ここでXは、炭素数が1~10のアルキレン基であり、YおよびYは、同一または異なって、アルカリ金属であり、またはYおよびYは一緒になってアルカリ土類金属である。)で表される二塩基酸塩である。防錆剤VERZONE HR-P11、VERZONE HR-P5、VERZONE HR-P8およびVERZONE HR-P10のTG-DTA測定における300℃での重量変化率は、各々表1に示したとおりである。
本発明の実施例の多層シートは、多層シートの製膜性に優れ、かつ鋳鉄に対する防錆性も良好に発揮できる。本発明の多層シートを成形加工して得られた成形体(たとえばトレイ)は、鋳鉄部品を運搬する際に好適に用いることができると考えられる。

Claims (2)

  1. 層(I)および層(II)を有する多層シートであって、
    該層(I)は、マスターバッチ(A)0.1~60重量%と、エチレン系樹脂(B)40~99.9重量%とを含み(ここで、該マスターバッチ(A)と、該エチレン系樹脂(B)の量は、該マスターバッチ(A)と該エチレン系樹脂(B)との合計量に対する量である。)、
    該層(II)は、プロピレン系樹脂(C)を含む、前記多層シートここで、該マスターバッチ(A)は、TG-DTA測定において300℃での重量変化率が0.5~2.0重量%である、亜硝酸ナトリウムを主成分とし、セバシン酸二ナトリウムを有効成分として含む防錆剤組成物から選択される防錆剤を含み、
    該プロピレン系樹脂(C)は、エチレン・ブテン1・プロピレン三元重合体、またはプロピレン-エチレンランダム共重合体であり、該プロピレン系樹脂(C)の融点は、100~150℃であり、
    該エチレン系樹脂(B)の融点は、該プロピレン系樹脂(C)の融点よりも低い。)
  2. マスターバッチ(A)0.1~60重量%と、エチレン系樹脂(B)40~99.9重量%とを含む、層(I)と(ここで、該マスターバッチ(A)と、該エチレン系樹脂(B)の量は、該マスターバッチ(A)と該エチレン系樹脂(B)との合計量に対する量である。)、
    プロピレン系樹脂(C)を含む、層(II)と、
    から構成される多層シートを熱成形してなる、トレイであって、
    該マスターバッチ(A)は、TG-DTA測定において300℃での重量変化率が0.5~2.0重量%である、亜硝酸ナトリウムを主成分とし、セバシン酸二ナトリウムを有効成分として含む防錆剤組成物から選択される防錆剤を含み、
    該プロピレン系樹脂(C)は、エチレン・ブテン1・プロピレン三元重合体、またはプロピレン-エチレンランダム共重合体であり、該プロピレン系樹脂(C)の融点は、100~150℃であり、
    該エチレン系樹脂(B)の融点は、該プロピレン系樹脂(C)の融点よりも低いことを特徴とする、前記トレイ。
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