以下に、本発明の実施の形態に係る直流電源装置および冷凍サイクル適用機器を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る直流電源装置100の構成例を示す図である。直流電源装置100は、交流電源1から供給される三相交流を直流に変換して負荷11に供給する。交流電源1は、三相電源を想定しているが、単相電源であってもよい。負荷11は、例えば、冷凍サイクル適用機器に用いられる圧縮機モータを駆動するインバータ負荷などを想定しているが、一例であり、これに限定されない。
直流電源装置100は、三相交流を整流する整流回路2と、整流回路2の出力側に接続されたリアクトル3と、負荷11に対して並列に直列接続された第1のコンデンサ6aおよび第2のコンデンサ6bと、を備える。また、直流電源装置100は、第1のコンデンサ6aおよび第2のコンデンサ6bの一方または両方を選択的に充電する充電部7と、充電部7を制御する制御部8と、第1のコンデンサ6aの充電電流Ipおよび第2のコンデンサ6bの充電電流Inを検出する電流検出部9と、を備える。整流回路2は、6つの整流ダイオードがフルブリッジ接続された三相全波整流回路である。なお、整流回路2は、交流電源1が単相電源の場合は、単相交流を整流する回路構成となる。リアクトル3は、図1の例では、整流回路2の出力側に接続されているが、整流回路2の入力側に相毎に接続された構成であってもよい。すなわち、リアクトル3は、整流回路2の前段に接続されていてもよいし、整流回路2の後段に接続されていてもよい。整流回路2の前段とは、交流電源1と整流回路2との間である。整流回路2の後段とは、整流回路2と充電部7との間である。
充電部7は、制御部8の制御によって、第1のコンデンサ6aおよび第2のコンデンサ6bの一方または両方を選択的に充電する。充電部7は、第1のスイッチング素子4aと、第2のスイッチング素子4bと、第1の逆流防止素子5aと、第2の逆流防止素子5bと、を備える。第1のスイッチング素子4aは、第1のコンデンサ6aの充電と非充電とをスイッチング、すなわち切り替える。第2のスイッチング素子4bは、第2のコンデンサ6bの充電と非充電とをスイッチング、すなわち切り替える。第1のスイッチング素子4aおよび第2のスイッチング素子4bとしては、例えば、パワートランジスタ、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの半導体素子が用いられる。第1の逆流防止素子5aは、第1のスイッチング素子4aのコレクタから第1のコンデンサ6aと負荷11との接続点に向けて順方向に接続されている。第1の逆流防止素子5aは、第1のコンデンサ6aの充電電荷の第1のスイッチング素子4aへの逆流を防止する。第2の逆流防止素子5bは、第2のコンデンサ6bと負荷11との接続点から第2のスイッチング素子4bのエミッタに向けて順方向に接続されている。第2の逆流防止素子5bは、第2のコンデンサ6bの充電電荷の第2のスイッチング素子4bへの逆流を防止する。
第1のスイッチング素子4aおよび第2のスイッチング素子4bからなる直列回路の中点と、第1のコンデンサ6aおよび第2のコンデンサ6bからなる直列回路の中点とが、電流検出部9を介して接続されている。すなわち、電流検出部9は、第1のコンデンサ6aおよび第2のコンデンサ6bの接続点と充電部7との間に配置されている。電流検出部9は、第1のコンデンサ6aの充電電流Ipを検出し、検出した充電電流Ipを検出値として制御部8へ出力する。電流検出部9は、第2のコンデンサ6bの充電電流Inを検出し、検出した充電電流Inを検出値として制御部8へ出力する。第1のコンデンサ6aおよび第2のコンデンサ6bには、同容量のコンデンサが用いられる。
制御部8は、充電部7を制御して、具体的には、第1のスイッチング素子4aおよび第2のスイッチング素子4bのオンオフを制御することによって、負荷11に供給する直流電圧を制御する。また、制御部8は、電流検出部9から検出値を取得し、電流検出部9から取得した検出値を用いて、充電部7による第1のコンデンサ6aおよび第2のコンデンサ6bの充電を制御する。制御部8は、電流検出部9から取得した検出値を用いて充電部7を制御し、第1のコンデンサ6aの両端電圧Vpと第2のコンデンサ6bの両端電圧Vnとの電圧アンバランスを抑制する。以下の説明において、第1のコンデンサ6aの両端電圧Vpを単に第1のコンデンサ6aの電圧Vpと称し、第2のコンデンサ6bの両端電圧Vnを単に第2のコンデンサ6bの電圧Vnと称することがある。制御部8による第1のスイッチング素子4aおよび第2のスイッチング素子4bのスイッチング制御について説明する。
図2は、実施の形態1に係る直流電源装置100におけるスイッチング制御状態を示す図である。なお、図2に示す例では、各構成要素の符号を省略している。
状態Aは、第1のスイッチング素子4aおよび第2のスイッチング素子4bが双方ともオフ制御されている状態を示している。この状態では、直流電源装置100において、第1のコンデンサ6aおよび第2のコンデンサ6bの充電が行われる。
状態Bは、第1のスイッチング素子4aのみオン制御されている状態を示している。この状態では、直流電源装置100において、第2のコンデンサ6bのみ充電が行われる。
状態Cは、第2のスイッチング素子4bのみオン制御されている状態を示している。この状態では、直流電源装置100において、第1のコンデンサ6aのみ充電が行われる。
本実施の形態では、制御部8が、図2に示す各状態を適宜切り替えることによって、負荷11に供給する直流電圧を制御する。
図3は、実施の形態1に係る直流電源装置100における各動作モードでの各スイッチング素子のスイッチング状態を示す図である。図3に示すように、直流電源装置100において制御部8は、充電部7の動作を制御する動作モードとして、第1のスイッチング素子4aおよび第2のスイッチング素子4bを常時オフ制御状態とした全波整流モードと、第1のスイッチング素子4aおよび第2のスイッチング素子4bを交互にオン制御する昇圧モードとを有している。
昇圧モードとしては、第1のスイッチング素子4aおよび第2のスイッチング素子4bのオンデューティが50%の昇圧モードaと、第1のスイッチング素子4aおよび第2のスイッチング素子4bのオンデューティが50%未満の昇圧モードbとがある。なお、昇圧モードaのことを、倍電圧モードと称することがある。
全波整流モードでは、第1のスイッチング素子4aおよび第2のスイッチング素子4bを常時オフ制御状態とする。このときの直流電源装置100からの出力電圧は、整流回路2によって全波整流された電圧となる。
昇圧モードaでは、第1のスイッチング素子4aのオンタイミングと第2のスイッチング素子4bのオフタイミングとがほぼ同時となり、第1のスイッチング素子4aのオフタイミングと第2のスイッチング素子4bのオンタイミングとがほぼ同時となり、図2に示す状態Bと状態Cとが繰り返される。このときの直流電源装置100からの出力電圧は、全波整流モードにおける出力電圧の略2倍となる。
昇圧モードbでは、第1のスイッチング素子4aおよび第2のスイッチング素子4bが共にオフとなる同時オフ期間を設けている。このとき、図2に示す状態B→状態A→状態C→状態Aの状態遷移が周期的に繰り返される。このときの直流電源装置100からの出力電圧は、全波整流モードにおける出力電圧と、倍電圧モードである昇圧モードaにおける出力電圧との中間電圧となる。
このように、本実施の形態では、制御部8は、第1のスイッチング素子4aおよび第2のスイッチング素子4bのオンデューティを変化させることによって、負荷11に供給する直流電圧を制御することが可能である。
つぎに、実施の形態1に係る直流電源装置100の各昇圧モードにおける第1のコンデンサ6aおよび第2のコンデンサ6bの充電周波数について、図1を参照して説明する。ここで、第1のコンデンサ6aおよび第2のコンデンサ6bの充電周波数とは、第1のコンデンサ6aおよび第2のコンデンサ6bの1組の充電期間と非充電期間とを組み合わせた期間、つまり、第1のスイッチング素子4aおよび第2のスイッチング素子4bの1組のオン期間とオフ期間とを組み合わせた期間を1周期とするとき、この1周期の逆数であるスイッチング周波数を示すものとする。なお、以下の説明では、第1のコンデンサ6aおよび第2のコンデンサ6bを主体とする表現においては「充電周波数」を用いて説明し、第1のスイッチング素子4aおよび第2のスイッチング素子4bを主体とする表現においては「スイッチング周波数」を用いて説明する。
本実施の形態では、第1のコンデンサ6aおよび第2のコンデンサ6bの充電周波数が、三相交流の周波数の3n倍となるように制御するようにしている。なお、nは自然数とする。つまり、スイッチング周波数を三相交流の周波数の3n倍とし、第1のスイッチング素子4aおよび第2のスイッチング素子4bを交互にオン制御する。このようにすれば、直流電源装置100は、スイッチング制御を行った際に各相電流に現れる歪みが各相毎に等しい位相で発生するため、各相電流の波形を電源周期に対して120度ずつずれた相似形とすることができ、三相交流の各相電流の不平衡を解消することができる。すなわち、交流が三相交流の場合、制御部8は、第1のコンデンサ6aおよび第2のコンデンサ6bの1組の充電期間と非充電期間とを合わせた期間を1周期とするときの当該1周期の逆数である充電周波数が、三相交流の周波数の3n倍となるように充電部7を制御する。
これに対し、スイッチング周波数を三相交流の周波数の3n倍以外の周波数とした場合、直流電源装置100では、各相電流の波形が相似形とならず、各相電流の不平衡が生じることとなる。また、直流電源装置100では、三相交流の周波数に同期してスイッチング制御を行う場合においても同様に、三相交流の各相電流の不平衡が生じる。つまり、直流電源装置100では、三相交流の周波数の3n倍で第1のスイッチング素子4aおよび第2のスイッチング素子4bのスイッチングが行われず、各相毎に異なる位相でスイッチングが行われた場合には、各相電流の不平衡が生じることとなり、延いては、各相電流の歪み率が大きくなり、力率の悪化や高調波電流の増加を招くこととなる。
本実施の形態では、上述したように、制御部8は、第1のスイッチング素子4aおよび第2のスイッチング素子4bのスイッチング周波数、つまり、第1のコンデンサ6aおよび第2のコンデンサ6bの充電周波数が、三相交流の周波数の3n倍となるように制御する。これにより、直流電源装置100では、電源周期に対して120度ずつずれた三相交流の各相の同一位相で第1のスイッチング素子4aおよび第2のスイッチング素子4bのスイッチングが行われる。この結果、直流電源装置100では、第1のスイッチング素子4aおよび第2のスイッチング素子4bの同時オフ期間が生じる昇圧モードbであっても、三相交流の各相電流の波形が相似形となり、各相電流の不平衡が生じず、延いては、各相電流の歪み率が極小値となり、力率の改善や高調波電流の抑制が可能となる。
また、制御部8は、n=1、つまり、三相交流の周波数の3倍で第1のスイッチング素子4aおよび第2のスイッチング素子4bを交互にオン制御するようにすれば、ノイズの発生量も少なく、交流電源1と同一の系統に接続された他の機器に与える影響を少なくすることが可能となる。
また、電源周波数は50Hzおよび60Hzが広く用いられており、設置場所に応じて使い分ける必要がある場合、直流電源装置100は、電源電圧を検出するセンサなどの図示しない電源電圧検出手段を設け、電源電圧のゼロクロスタイミングを検出することで、交流電源1の周波数を把握することが可能である。また、制御部8は、50Hzおよび60Hzの最小公倍数である300Hzの3m倍でスイッチング動作を行うことによって、交流電源1の周波数を把握することなく各相電流の不平衡を解消することが可能であり、電源電圧検出手段を設ける必要がなくなるため低コスト化にも寄与する。なお、mは自然数とする。
つぎに、第1のコンデンサ6aの電圧Vpおよび第2のコンデンサ6bの電圧Vnがアンバランスとなる具体例について、図1、図4および図5を参照して説明する。図4は、実施の形態1に係る直流電源装置100の昇圧モードaにおいて、正しいタイミングでスイッチ動作した例を示す図である。また、図5は、実施の形態1に係る直流電源装置100の昇圧モードaにおいて、第1のスイッチング素子4aのオンタイミングが遅延した例を示す図である。
図4および図5に示す例では、n=1、つまり、三相交流の周波数の3倍で第1のスイッチング素子4aおよび第2のスイッチング素子4bを交互にオン制御した例を示している。図4(a)および図5(a)は、交流電源1の各相電源電圧波形を示し、図4(b)および図5(b)は、整流回路2の出力電圧波形を示している。また、図4(c)および図5(c)は、第1のスイッチング素子4aのスイッチング波形を示し、図4(d)および図5(d)は、第2のスイッチング素子4bのスイッチング波形を示している。また、図4(e)および図5(e)は、第1のコンデンサ6aの電圧Vp波形および第2のコンデンサ6bの電圧Vn波形を示している。
図4および図5において、第1のスイッチング素子4aのオン期間T1は、第2のコンデンサ6bの充電期間に等しく、第2のスイッチング素子4bのオン期間T2は、第1のコンデンサ6aの充電期間に等しい。図4に示すように、第1のスイッチング素子4aのオン期間T1、つまり、第2のコンデンサ6bの充電期間と、第2のスイッチング素子4bのオン期間T2、つまり、第1のコンデンサ6aの充電期間とが等しい場合には(図4(c),(d)参照)、第1のコンデンサ6aの電圧Vpと第2のコンデンサ6bの電圧Vnとが等値となる(図4(e)参照)。
これに対し、図5に示すように、素子ばらつきなどにより第1のスイッチング素子4aのオンタイミングがΔtだけ遅延し、第1のスイッチング素子4aのオン期間T1、つまり、第2のコンデンサ6bの充電期間が、第2のスイッチング素子4bのオン期間T2、つまり、第1のコンデンサ6aの充電期間よりも短くなった場合には(T1=T2-Δt<T2、図5(c),(d)参照)、第1のコンデンサ6aの電圧Vpが第2のコンデンサ6bの電圧Vnよりも大きくなり、第1のコンデンサ6aの電圧Vpと第2のコンデンサ6bの電圧Vnとがアンバランス状態となる(Vp>Vn、図5(e)参照)。この場合、このまま昇圧モードa、つまり、倍電圧モードで運転を継続して行うと、一方のコンデンサ(ここでは、第1のコンデンサ6a)の電圧(ここでは、Vp)が高電圧となり、コンデンサ(ここでは、第1のコンデンサ6a)の寿命が短くなる、あるいは、素子耐圧を超える電圧が印加される虞がある。このため、制御部8は、第1のコンデンサ6aの電圧Vpと第2のコンデンサ6bの電圧Vnとが等値となるように制御する必要がある。以下、この制御を「電圧アンバランス抑制制御」という。
ここで、電流検出部9は、第1のスイッチング素子4aの立ち上がりを検知した場合は第2のコンデンサ6bの充電電流Inを検出し、検出値すなわち充電電流Inを制御部8へ出力することが可能である。また、電流検出部9は、第2のスイッチング素子4bの立ち上がりを検知した場合は第1のコンデンサ6aの充電電流Ipを検出し、検出値すなわち充電電流Ipを制御部8へ出力することが可能である。電流検出部9は、第2のコンデンサ6bの充電電流Inと第1のコンデンサ6aの充電電流Ipとでは電流の流れる向きが異なるため、検出した電流の向きによって、第1のスイッチング素子4aの立ち上がりおよび第2のスイッチング素子4bの立ち上がりを検知することができる。
図6は、実施の形態1に係る直流電源装置100の制御部8の一構成例を示す図である。制御部8は、実効値算出部81a,81bと、加算部82と、増幅部83と、差分値算出部84a,84bと、PI(Proportional Integral)制御部85a,85bと、補正部86と、比較部87a,87bと、を備える。
実効値算出部81aは、電流検出部9から取得した検出値である充電電流Inを用いて、第2のコンデンサ6bの充電電流Inの実効値In’を算出する。実効値算出部81bは、電流検出部9から取得した検出値である充電電流Ipを用いて、第1のコンデンサ6aの充電電流Ipの実効値Ip’を算出する。加算部82は、実効値算出部81aで算出された第2のコンデンサ6bの充電電流Inの実効値In’および実効値算出部81bで算出された第1のコンデンサ6aの充電電流Ipの実効値Ip’を加算し、加算した値を中間電流Imとして出力する。増幅部83は、加算部82から出力された中間電流Imを0.5倍にして、第2のコンデンサ6bの充電電流Inの実効値In’および第1のコンデンサ6aの充電電流Ipの実効値Ip’の目標電流Im*を得る。
差分値算出部84aは、増幅部83の出力値である目標電流Im*と、第2のコンデンサ6bの充電電流Inの実効値In’との差分値ΔInを算出する。差分値算出部84bは、増幅部83の出力値である目標電流Im*と、第1のコンデンサ6aの充電電流Ipの実効値Ip’との差分値ΔIpを算出する。PI制御部85aは、差分値ΔInがゼロになるような制御値S1を求めて出力する。PI制御部85bは、差分値ΔIpがゼロになるような制御値S2を求めて出力する。補正部86は、1から制御値S1を差し引いた補正値である制御値S1’を出力する。比較部87aは、キャリア信号と制御値S1’とを比較して、第1のスイッチング素子4aの駆動信号SW1を生成する。比較部87aは、生成した第1のスイッチング素子4aの駆動信号SW1を、充電部7の第1のスイッチング素子4aへ出力する。比較部87bは、キャリア信号と制御値S2とを比較して、第2のスイッチング素子4bの駆動信号SW2を生成する。比較部87bは、生成した第2のスイッチング素子4bの駆動信号SW2を、充電部7の第2のスイッチング素子4bへ出力する。
制御部8は、第1のコンデンサ6aの充電電流Ipの実効値Ip’および第2のコンデンサ6bの充電電流Inの実効値In’が目標電流Im*に近づくように制御することで、電圧アンバランス抑制制御を実現する。
なお、PI制御部85a,85bについて、ここでは、PI制御すなわち比例積分制御を行うことを想定しているが、これに限定されない。差分値ΔIn,ΔIpをそれぞれゼロにするような制御値S1,S2を得ることができればよいので、PI制御部85a,85bに替えて、P(Proportional)制御すなわち比例制御を行う制御部を用いてもよいし、PID(Proportional Integral Differential)制御すなわち比例積分微分制御を行う制御部を用いてもよい。PI制御部85a,85bにおける制御手法により本発明が限定されるものではない。また、比例積分制御では、目標電流Im*と、第1のコンデンサ6aの充電電流Ipの実効値Ip’または第2のコンデンサ6bの充電電流Inの実効値In’とが性能の限界によって完全に一致しない場合、差分値ΔIp,ΔInの誤差が蓄積されて、例えば、マイコン(マイクロコンピュータ)などで比例積分制御を実現した場合に、オーバーフローなどにより誤動作が発生する可能性がある。このような場合には、制御値S1,S2に上下限のリミッタを設けることで信頼性を向上させることが可能である。なお、この場合には、キャリア信号の底点と頂点とを上下限リミッタの値として設定することが望ましい。
図7は、実施の形態1に係る直流電源装置100の倍電圧モードである昇圧モードaにおける電圧アンバランス抑制制御例を示す図である。図8は、実施の形態1に係る直流電源装置100の昇圧モードbにおける電圧アンバランス抑制制御例を示す図である。図7および図8は、制御部8による充電部7に対する制御状態の推移を示すものである。図7および図8に示す例では、初期状態において第1のコンデンサ6aの電圧Vpが第2のコンデンサ6bの電圧Vnよりも誤差電圧ΔVだけ大きい例を示している。
昇圧モードaでは、上述した電圧アンバランス抑制制御によって、図7に示すように、第1のスイッチング素子4aの駆動信号SW1のハイ期間が徐々に長くなり、第2のスイッチング素子4bの駆動信号SW2のハイ期間が徐々に短くなる。この結果、第1のスイッチング素子4aおよび第2のスイッチング素子4bのオンデューティが変化し、第1のスイッチング素子4aのオン期間、つまり、第2のコンデンサ6bの充電期間が長くなり、第2のスイッチング素子4bのオン期間、つまり、第1のコンデンサ6aの充電期間が短くなる。これにより、第1のコンデンサ6aの電圧Vpが低下し、第2のコンデンサ6bの電圧Vnが上昇することで、第1のコンデンサ6aの電圧Vpと第2のコンデンサ6bの電圧Vnとの電圧アンバランスが抑制される。
昇圧モードbでは、昇圧モードaと同様、上述した電圧アンバランス抑制制御によって、図8に示すように、第1のスイッチング素子4aの駆動信号SW1のハイ期間が徐々に長くなり、第2のスイッチング素子4bの駆動信号SW2のハイ期間が徐々に短くなる。この結果、第1のスイッチング素子4aおよび第2のスイッチング素子4bのオンデューティが変化し、第1のスイッチング素子4aのオン期間、つまり、第2のコンデンサ6bの充電期間が長くなり、第2のスイッチング素子4bのオン期間、つまり、第1のコンデンサ6aの充電期間が短くなる。これにより、第1のコンデンサ6aの電圧Vpが低下し、第2のコンデンサ6bの電圧Vnが上昇することで、第1のコンデンサ6aの電圧Vpと第2のコンデンサ6bの電圧Vnとの電圧アンバランスが抑制される。
このように、制御部8は、第1のコンデンサ6aの充電期間および第2のコンデンサ6bの充電期間のうち少なくとも一方を制御することによって、第1のコンデンサ6aの電圧Vpと第2のコンデンサ6bの電圧Vnとの電圧アンバランスを抑制する。
制御部8の動作を、フローチャートを用いて説明する。図9は、実施の形態1に係る直流電源装置100の制御部8が電圧アンバランス抑制制御を実施する動作を示すフローチャートである。制御部8は、第1のスイッチング素子4aがオンしている期間において、電流検出部9から、検出値として第2のコンデンサ6bの充電電流Inを取得する(ステップST1)。制御部8は、自身で第1のスイッチング素子4aに対する駆動信号SW1および第2のスイッチング素子4bに対する駆動信号SW2を出力しているので、各駆動信号SW1,SW2の出力期間から、電流検出部9から取得した検出値が、第1のコンデンサ6aの充電電流Ipなのか、第2のコンデンサ6bの充電電流Inなのかを判定することができる。この場合、制御部8は、第1のスイッチング素子4aのオン時に第2のコンデンサ6bの充電電流Inとして電流検出部9から検出値を取得し、第2のスイッチング素子4bのオン時に第1のコンデンサ6aの充電電流Ipとして電流検出部9から検出値を取得する。なお、前述のように、電流検出部9は、検出した電流が第1のコンデンサ6aの充電電流Ipか、または第2のコンデンサ6bの充電電流Inかを判定することが可能である。この場合、制御部8は、電流検出部9から、検出値とともに、検出値が第2のコンデンサ6bの充電電流Inであるのか、または第1のコンデンサ6aの充電電流Ipであるのかの情報を取得してもよい。
制御部8は、第2のスイッチング素子4bがオンしている期間において、電流検出部9から、検出値として第1のコンデンサ6aの充電電流Ipを取得する(ステップST2)。なお、制御部8は、ステップST1およびステップST2の順番を入れ替えてもよい。制御部8は、第1のコンデンサ6aの充電電流Ip、および第2のコンデンサ6bの充電電流Inを用いて、前述のような制御によって、第1のコンデンサ6aの電圧Vpおよび第2のコンデンサ6bの電圧Vnの電圧アンバランスを抑制するような駆動信号SW1,SW2を生成する(ステップST3)。制御部8は、駆動信号SW1を第1のスイッチング素子4aへ出力し、駆動信号SW2を第2のスイッチング素子4bへ出力する(ステップST4)。制御部8は、第1のスイッチング素子4aのオンデューティおよび第2のスイッチング素子4bのオンデューティのうち少なくとも一方を制御して、第1のコンデンサ6aの電圧Vpと第2のコンデンサ6bの電圧Vnとの電圧アンバランスを抑制する。
つづいて、直流電源装置100が備える制御部8のハードウェア構成について説明する。図10は、実施の形態1に係る直流電源装置100が備える制御部8を実現するハードウェア構成の一例を示す図である。制御部8は、プロセッサ201及びメモリ202により実現される。
プロセッサ201は、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、DSP(Digital Signal Processor)ともいう)、またはシステムLSI(Large Scale Integration)である。メモリ202は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリー、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)といった不揮発性または揮発性の半導体メモリを例示できる。またメモリ202は、これらに限定されず、磁気ディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、またはDVD(Digital Versatile Disc)でもよい。
以上説明したように、本実施の形態によれば、直流電源装置100において、制御部8は、電流検出部9から検出値として、第1のコンデンサ6aの充電電流Ipおよび第2のコンデンサ6bの充電電流Inを取得し、第1のコンデンサ6aおよび第2のコンデンサ6bの充電期間を制御するなどの手法を用いて、第1のコンデンサ6aの電圧Vpと第2のコンデンサ6bの電圧Vnとの電圧アンバランスを抑制することとした。これにより、直流電源装置100は、装置が大型化することなく、また、製品コストが増加することなく、負荷11の両端間に直列接続される複数のコンデンサの電圧アンバランスを抑制することができ、負荷11を安定駆動するとともに、コンデンサの長寿命化を図り高信頼性に寄与することができる。また、直流電源装置100は、1つの電流検出部9からの検出値のみで抑制できるため、複数の検出器を用いた場合に想定される検出器間の誤差を考慮する必要が無く、第1のコンデンサ6aの電圧Vpと第2のコンデンサ6bの電圧Vnとの電圧アンバランスを精度良く抑制することができる。
実施の形態2.
本実施の形態では、実施の形態1に記載した直流電源装置100を適用した冷凍サイクル適用機器について説明する。
ここでは、実施の形態2に係る冷凍サイクル適用機器のより具体的な構成について、図11を参照して説明する。図11は、実施の形態2に係る冷凍サイクル適用機器110の一構成例を示す図である。冷凍サイクル適用機器110は、実施の形態1の直流電源装置100を備える。冷凍サイクル適用機器110としては、例えば、空気調和機、ヒートポンプ給湯機、冷蔵庫、および冷凍機などを想定しており、図11に示す例では、実施の形態1において図1で説明した直流電源装置100の負荷11として、インバータ20、圧縮機21、モータ22、冷凍サイクル23を含み構成される冷凍空調装置を接続した構成例を示している。
インバータ20は、直流電源装置100から供給される直流電圧によって動作し、圧縮機21に内蔵されるモータ22を可変速度、可変電圧で駆動することで、圧縮機21にて冷凍サイクル23内の冷媒を圧縮して冷凍サイクル23と動作させる。これにより、冷凍サイクル適用機器110は、冷房、暖房など所望の動作を行う。
図11に示すように構成された冷凍サイクル適用機器110では、上述した実施の形態1において説明した直流電源装置100により得られる効果を享受することができる。
つまり、全波整流モード、昇圧モードa、および昇圧モードbの何れの動作モードにおいても、実施の形態1において説明した電圧アンバランス抑制制御により、第1のコンデンサ6aの電圧Vpと第2のコンデンサ6bの電圧Vnとの電圧アンバランスが抑制される。
以上説明したように、実施の形態2の冷凍サイクル適用機器110によれば、上述した実施の形態1に記載の直流電源装置100を用いて構成することにより、実施の形態1において説明した直流電源装置100により得られる効果を享受することができる。
なお、上述した実施の形態1,2において、充電部7を構成するスイッチング素子および逆流防止素子としては、一般的には珪素(Si:シリコン)を材料とするSi系半導体を用いるのが主流であるが、炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、またはダイヤモンドを材料とするワイドバンドギャップ(WBG:Wide Band Gap)半導体を用いてもよい。すなわち、第1のスイッチング素子4a、第2のスイッチング素子4b、第1の逆流防止素子5a、および第2の逆流防止素子5bのうちの少なくとも1つがWBG半導体で形成されていてもよい。このようなWBG半導体によって形成されたスイッチング素子および逆流防止素子は、耐電圧性が高く、許容電流密度も高い。そのため、スイッチング素子および逆流防止素子の小型化が可能であり、これら小型化されたスイッチング素子および逆流防止素子を用いることにより、これらの素子を用いて構成した直流電源装置100の小型化が可能となる。
また、このようなWBG半導体によって形成されたスイッチング素子および逆流防止素子は、耐熱性も高い。そのため、ヒートシンクの放熱フィンの小型化、および水冷部の空冷化が可能であるので、直流電源装置100の一層の小型化が可能になる。さらに、このようなWBG半導体によって形成されたスイッチング素子および逆流防止素子は、電力損失が低い。そのため、スイッチング素子および逆流防止素子の高効率化が可能であり、延いては直流電源装置100の高効率化が可能になる。なお、スイッチング素子および逆流防止素子の両方がWBG半導体によって形成されていることが望ましいが、いずれか一方の素子がWBG半導体によって形成されていてもよく、上述した効果を得ることが可能である。
また、上述した実施の形態では、スイッチング素子として、例えば、パワートランジスタ、パワーMOSFET、IGBTを例として挙げたが、高効率なスイッチング素子として知られているスーパージャンクション構造のMOSFET、絶縁ゲート半導体装置、バイポーラトランジスタなどを用いても、同様の効果を得ることが可能である。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。