以下に、本発明の実施の形態に係る直流電源装置、モータ駆動装置および空気調和機を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る直流電源装置100の構成例を示す図である。直流電源装置100は、交流電源1および負荷10に接続される。交流電源1は、直流電源装置100に交流電力を供給する。交流電源1は、一般的な商用電源であるが、これに限定されない。図1に示す交流電源1の電源電圧Vsの矢印の方向を正極とする。負荷10は、例えば、圧縮機、ファンなどを駆動するモータ、またはモータを駆動するインバータなどであるが、これらに限定されない。直流電源装置100は、交流電源1から出力される交流電力を直流電力に変換し、負荷10に出力する。以降の説明において、負荷10を第1の負荷と称することがある。
直流電源装置100の構成について説明する。直流電源装置100は、電流検出部2と、リアクタ3と、整流回路4と、コンデンサ9と、制御部11と、並列負荷接続部12と、負荷13と、を備える。なお、直流電源装置100は、交流電源1と電流検出部2との間に、電源オンオフ切替用途、および過電流時に強制遮断する用途で、交流電源1の遮断用スイッチ、すなわちブレーカーを備えていてもよい。
電流検出部2は、交流電源1と並列負荷接続部12との間に設置されている。電流検出部2は、並列負荷接続部12に負荷13が接続されている場合は整流回路4に流れる電流Irおよび負荷13に流れる電流Ilの合計電流である電流Isの電流値を検出する。電流検出部2は、並列負荷接続部12に負荷13が接続されていない場合は整流回路4に流れる電流Irである電流Isの電流値を検出する。電流Is、電流Ir、および電流Ilについては、図1に示す矢印の方向を正方向とする。なお、電流Isを一次電流と称することがある。電流検出部2は、例えば、カレントトランス、シャント抵抗などの電流検出素子、および電流検出素子で検出された電流Isの検出値を制御部11が取り扱い可能な範囲内の電圧に変換して出力する増幅器によって構成されるが、電流検出部2の構成はこれに限定されない。
リアクタ3は、力率改善を行うために挿入しており、リアクタ3を挿入することで交流電源1から出力される電流Isの通流期間を延ばすことで力率改善を行うことが可能となる。また特許文献1の図5に記載のように、リアクタ3を交流電源1に対して短絡するスイッチングを行うことで更なる力率改善、および整流回路4の出力電圧(直流電圧)を昇圧することも可能である。
整流回路4は、スイッチング素子S1~S4を備える。スイッチング素子S1~S4は、例えば、MOSFETなどの半導体スイッチ5~8である。半導体スイッチ5~8には各々ダイオード5a~8aが接続されているが、ダイオード5a~8aは、MOSFETに存在する寄生ダイオードであってもよいし、別途接続されるダイオードであってもよい。スイッチング素子S1~S4のオンオフは、制御部11によって制御される。整流回路4は、スイッチング素子S1~S4を用いて電力変換を行う。具体的には、整流回路4は、交流電源1から出力される交流電力を整流し、整流後の直流電力を、コンデンサ9を介して負荷10に出力する。整流回路4は、スイッチング素子S1~S4が全てオフの状態では、ダイオード5a~8aによってブリッジ整流器の構成となる。整流回路4では、ダイオード5a~8aに電流が流れる場合、ダイオード5a~8aの順方向損失およびリカバリー損失によって変換効率が低下することになる。
ここで、スイッチング素子S1~S4には、シリコンを用いた半導体素子を始め、炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)などを代表としたワイドバンドギャップ半導体を用いたスイッチング素子が用いられる。また、スイッチング素子S1~S4としては、MOSFETの他に、スーパージャンクションMOSFETなどが用いられる。ダイオード5a~8aについても、シリコン、炭化珪素(SiC)などの材料が用いられる。ダイオード5a~8aには、通常の整流ダイオード、リカバリー特性の良いファストリカバリ品、ショットキーバリアダイオードなどが用いられる。
コンデンサ9は、整流回路4による電力変換後の直流電力の電圧を平滑化するためのコンデンサである。コンデンサ9は、例えば、電界コンデンサである。コンデンサ9の両端には、負荷10が接続されている。
制御部11は、電流検出部2で検出された電流Isの電流値に基づいて、整流回路4が備えるスイッチング素子S1~S4の動作を制御する。以降の説明において、電流検出部2で検出された電流Isの電流値を検出値と称することがある。本実施の形態では、制御部11は、交流電源1の電源電圧Vsの極性に基づいて整流回路4のスイッチング素子S1,S2のオンオフを制御し、交流電源1の電流Isの電流値、すなわち電流検出部2の検出値に基づいて整流回路4のスイッチング素子S3,S4のオンオフを制御する。また、制御部11は、電流検出部2の検出値に基づいて、負荷10の動作を制御する。また、制御部11は、負荷13がファンモータのように負荷の値が変化する場合、電流検出部2の検出値に基づいて、負荷13の動作を制御する。すなわち、制御部11は、並列負荷接続部12に負荷13が接続されている場合は負荷13の動作を制御することができる。なお、図1に示す直流電源装置100では、制御部11が整流回路4および負荷10,13を直接制御しているが、一例であり、これに限定されない。直流電源装置100は、整流回路4を駆動するための駆動部、負荷10を駆動するための駆動部、および負荷13を駆動するための駆動部を備えていてもよい。この場合、制御部11は、制御信号を生成して各駆動部に出力する。各駆動部は、制御部11から取得した制御信号に基づいて、駆動信号を生成して出力する。
並列負荷接続部12は、電流検出部2とリアクタ3との間において、整流回路4と並列に、負荷13を接続可能な接続部である。並列負荷接続部12は、例えば、直流電源装置100が実装される基板において、負荷13と接続可能なように設けられたパターン、コネクタなどである。
負荷13は、ヒーターなどのように負荷の値が変化しないものであってもよいし、ファンモータなどのように負荷の値が変化するものであってもよい。負荷13は、負荷の値が変化する場合、制御部11からの制御信号、例えば、PWM信号によって動作が制御される。負荷13は、例えば、直流電源装置100に対してオプションとして接続可能な部品である。負荷13は、並列負荷接続部12に接続される。直流電源装置100において、負荷13は、電流検出部2の後段で整流回路4に対して並列に接続される。以降の説明において、負荷13を第2の負荷と称することがある。
つづいて、直流電源装置100の動作について説明する。直流電源装置100において、制御部11は、前述のように電流検出部2の検出値に基づいて、整流回路4のスイッチング素子S3,S4のオンオフを制御する。具体的には、制御部11は、電流検出部2の検出値の絶対値が電流閾値以上になる期間において、スイッチング素子S3またはスイッチング素子S4の一方をオンする。しかしながら、電流検出部2は、図1に示すように、負荷13が接続されていない場合は整流回路4に流れる電流Irの電流値を電流Isの電流値として検出するが、負荷13が接続されている場合は整流回路4に流れる電流Irおよび負荷13に流れる電流Ilの合計電流である電流Isの電流値を検出する。そのため、電流検出部2は、負荷13が接続されている場合、整流回路4に流れる電流Irの電流値のみを検出できない。この場合、電流Isには電流Irの他に電流Ilが含まれるため、制御部11は、電流Isの検出値と、整流回路4に流れる電流Irに対して設定された電流閾値とを比較しても、電流Irの絶対値が電流閾値以上になるタイミング、および電流Irの絶対値が電流閾値未満になるタイミングを正確に判断することができない。
ここで、直流電源装置100が空気調和機などの電気製品で使用されることを想定した場合、オプションとして接続される負荷13は、予め想定された既知の部品である。そのため、制御部11は、直流電源装置100の内部で負荷13が接続されている場合、負荷13の特性、すなわち負荷13の種類に応じて、電流検出部2で検出される電流Isの検出値と比較するための電流閾値を設定する。制御部11は、予め同期整流制御に使用する初期設定の電流閾値Ith1を保持しており、負荷13の動作状態によって、電流検出部2の検出値に対する電流閾値を、新たに求めた電流閾値Ith2に変更する。制御部11は、負荷13の動作状態に応じて、スイッチング素子S1~S4のうち検出値に応じてオンオフさせるスイッチング素子S3,S4がオンしているオン時間と、交流電源1から電流検出部2に流れる電流の導通時間の比率を変化させるとも言える。以降の説明において、スイッチング素子S3,S4を第1のスイッチング素子と称することがある。
図2は、実施の形態1に係る直流電源装置100が同期整流制御に使用する電流閾値を設定する動作を示すフローチャートである。直流電源装置100において、制御部11は、負荷13が並列負荷接続部12に、すなわち整流回路4の前段に接続されているか否かを判定する(ステップST1)。制御部11は、電流検出部2で検出される電流値を用いて判定してもよいし、整流回路4の前段において電圧を検出する図示しない検出器の検出値を用いて判定してもよいし、判定方法はこれらに限定されない。制御部11は、負荷13が整流回路4の前段に接続されている場合(ステップST1:Yes)、負荷13が制御オン状態か否かを判定する(ステップST2)。制御部11は、例えば、制御部11から負荷13へ送信している制御信号の有無によって判定することができるが、判定方法はこれに限定されない。
制御部11は、負荷13が制御オン状態の場合(ステップST2:Yes)、電流閾値を初期設定の電流閾値Ith1から変更するための新たな電流閾値Ith2を算出する(ステップST3)。制御部11は、負荷13を制御するPWM信号の値から電流閾値Ith2を算出してもよいが、これに限定されない。制御部11は、予め電流閾値Ith2を取得するためのテーブルを備え、負荷13を制御するPWM信号の値に関連付けてテーブルから電流閾値Ith2を取得してもよい。制御部11は、負荷13が接続されていないまたは制御されていない状態でスイッチング素子S3,S4がオンする第1の時間と、負荷13が接続されて制御されている状態でスイッチング素子S3,S4がオンする第2の時間とが同じになるように電流閾値Ith2を算出する。制御部11は、電流閾値Ith2の値を変更しながら実際に制御を行い、第1の時間と第2の時間とが同じになる電流閾値Ith2を求めてもよい。制御部11は、同期整流制御に使用する電流閾値として、新たに求めた電流閾値Ith2を設定する(ステップST4)。
制御部11は、負荷13が整流回路4の前段に接続されていない場合(ステップST1:No)、または、負荷13が制御オフ状態の場合(ステップST2:No)、同期整流制御に使用する電流閾値として、初期設定の電流閾値Ith1を設定する(ステップST5)。電流閾値Ith1は、予め制御部11が保持していたものである。制御部11は、上記動作を繰り返し実施することで、電流閾値をリアルタイムに変更することができる。制御部11は、直流電源装置100が運転されている間、上記動作を常時実施してもよいし、上記動作を一定の周期で間欠的に実施してもよいし、実施するタイミングは限定されない。このように、制御部11は、並列負荷接続部12における負荷13の接続有無によって電流閾値を変更することができる。なお、制御部11は、電流閾値Ith2について、値が線型的に連続するように算出してもよいし、値が段階的になるように算出してもよい。
なお、制御部11は、第1の時間と第2の時間とが同じになるような電流閾値Ith2を算出するが、これは、負荷10に対する制御内容が一定の場合である。制御部11は、負荷10に対する制御内容が変化した場合においては、第1の時間と第2の時間とが異なっていてもよい。また、制御部11は、第1の時間と第2の時間とが同じになるように制御する場合において、第1の時間と第2の時間とが厳密に同一でなくてもよく、誤差が規定された範囲内になるようにする。すなわち、制御部11は、負荷10の動作状態に変化がない場合、負荷13に対する制御内容によらず、スイッチング素子S1~S4のうち電流検出部2の検出値に応じてオンオフさせるスイッチング素子S3,S4がオンしているオン時間の誤差が規定された範囲内になるように制御する。
図3は、実施の形態1に係る直流電源装置100において負荷13がPWM信号によって制御されている場合の電流閾値Ith2とPWM信号のDutyON時間との関係の例を示す図である。図3(a)は、制御部11が負荷13の動作を制御するための制御用のPWM信号を示す。図3(b)は、PWM信号のDutyON時間ごとの電流閾値Ith2を示す。
制御部11は、負荷13を制御する制御信号がPWM信号である場合、PWM信号のDutyON時間に比例して電流閾値Ith2を算出する。図3では、制御部11が電流閾値Ith2を算出するタイミングをPWM信号の処理周期ごとにしているが、制御部11が電流閾値Ith2を算出するタイミングはこれに限定されない。図3は、DutyON時間がDuty1→Duty2→Duty3へと変化していくときの電流閾値Ith2の変化を示している。電流閾値Ith2は、DutyON時間がDuty1の場合はIth2_Lo、DutyON時間がDuty2の場合はIth2_Mi、DutyON時間がDuty3の場合はIth2_Hiと変化する。なお、図3において、DutyON時間はDuty1<Duty2<Duty3の関係性を持ち、電流閾値Ith2はIth2_Lo<Ith2_Mi<Ith2_Hiの関係性を持つものとする。
図4は、実施の形態1に係る直流電源装置100に流れる電流Isと整流回路4のスイッチング素子S3,S4のオンオフのタイミングとの関係を表す第1の例を示す図である。図4は、一例として、直流電源装置100の内部で負荷13が制御されていない、または接続されていない場合の関係を示している。具体的には、図4は、図2のフローチャートのステップST1:NoおよびステップST2:Noの場合を示している。
図4(a)は、交流電源1の電源電圧Vsの波形を示す。図4(b)は、電流検出部2で検出される電流Isの波形を示す。
図4(c)は、交流電源1から出力される電源電圧Vsが正極性のときに制御部11で使用される電流閾値であり、+Ithとする。+Ithの値は、図2のフローチャートにおける電流閾値Ith1が設定されている。図4(d)は、交流電源1から出力される電源電圧Vsが負極性のときに制御部11で使用する電流閾値であり、-Ithとする。-Ithの値は、図4(c)のIthの値と同じ絶対値で符号が逆転しているものである。
図4(e)は、スイッチング素子S3を制御するため制御部11から出力される駆動信号である。制御部11は、電源電圧Vsが負極性の場合、電流検出部2で検出される電流Isが-Ithよりも小さくなったときにスイッチング素子S3をオンさせる。図4(f)は、スイッチング素子S4を制御するため制御部11から出力される駆動信号である。制御部11は、電源電圧Vsが正極性の場合、電流検出部2で検出される電流Isが+Ithよりも大きくなったときにスイッチング素子S4をオンさせる。
直流電源装置100において、制御部11は、図4に示す例では、通常の一般的な制御によって、スイッチング素子S3,S4のオンオフを制御する。
図5は、実施の形態1に係る直流電源装置100に流れる電流Isと整流回路4のスイッチング素子S3,S4のオンオフのタイミングとの関係を表す第2の例を示す図である。図5は、一例として、直流電源装置100の運転途中で制御部11が負荷13を制御オフ状態から制御オン状態に切り替えた場合の関係を示している。
図5(a)は、交流電源1の電源電圧Vsの波形を示す。図5(b)は、電流検出部2で検出される電流Isの波形を示す。
図5(c)は、交流電源1から出力される電源電圧Vsが正極性のときに制御部11で使用される電流閾値であり、+Ithとする。+Ithの値は、図2のフローチャートにおいて、負荷13が制御オフ状態のときは電流閾値Ith1が設定され、負荷13が制御オン状態になったタイミングで電流閾値Ith2に変更される。図5(d)は、交流電源1から出力される電源電圧Vsが負極性のときに制御部11で使用される電流閾値であり、-Ithとする。-Ithの値は、図5(c)の+Ithの値と同じ絶対値で符号が逆転しているものである。
図5(e)は、スイッチング素子S3を制御するため制御部11から出力される駆動信号である。制御部11は、電源電圧Vsが負極性の場合、電流検出部2で検出される電流Isが-Ithよりも小さくなったときにスイッチング素子S3をオンさせる。図5(f)は、スイッチング素子S4を制御するため制御部11から出力される駆動信号である。制御部11は、電源電圧Vsが正極性の場合、電流検出部2で検出される電流Isが+Ithよりも大きくなったときにスイッチング素子S4をオンさせる。
図5(g)は、負荷13の制御状態を示す。図5(g)において、制御オフ状態は制御部11が負荷13の動作を制御していない状態であり、制御オン状態は制御部11が負荷13の動作を制御している状態である。
直流電源装置100において、制御部11は、負荷13が接続されて制御オン状態の場合、電流閾値を電流閾値Ith1から電流閾値Ith2に変更する。これにより、制御部11は、負荷13が接続されていないまたは制御されていない状態でスイッチング素子S3,S4がオンする時間と、負荷13が接続されて制御されている状態でスイッチング素子S3,S4がオンする時間とを同じにすることができる。
ここで、交流電源1の電源電圧Vsが正極性の場合、図5において、タイミングAは負荷13の制御オフ状態において整流回路4に電流Irが流れ始めるタイミングを示し、タイミングDは負荷13の制御オフ状態において整流回路4に電流Irが流れなくなるタイミングを示す。また、タイミングBは負荷13の制御オフ状態においてスイッチング素子S4がオンするタイミングを示し、タイミングCは負荷13の制御オフ状態においてスイッチング素子S4がオフするタイミングを示す。交流電源1の電源電圧Vsが正極性の場合、図5において、タイミングEは負荷13の制御オン状態において整流回路4に電流Irが流れ始めるタイミングを示し、タイミングHは負荷13の制御オン状態において整流回路4に電流Irが流れなくなるタイミングを示す。また、タイミングFは負荷13の制御オン状態においてスイッチング素子S4がオンするタイミングを示し、タイミングGは負荷13の制御オン状態においてスイッチング素子S4がオフするタイミングを示す。制御部11は、電流検出部2の検出値の絶対値が電流閾値以上になる第1のタイミングであるタイミングB,Fでスイッチング素子S4をオンし、電流検出部2の検出値の絶対値が電流閾値未満になる第2のタイミングであるタイミングC,Gでスイッチング素子S4をオフする。
図5において、タイミングBとタイミングCとの間の時間が、負荷13の制御オフ状態のときのスイッチング素子S4のオン時間であり、タイミングFとタイミングGとの間の時間が、負荷13の制御オン状態のときのスイッチング素子S4のオン時間である。また、図5において、タイミングAとタイミングDとの間の時間が、負荷13の制御オフ状態のときに交流電源1から電流検出部2に電流Isが流れる時間であり、タイミングEとタイミングHとの間の時間が、負荷13の制御オン状態のときに交流電源1から電流検出部2に電流Isが流れる時間である。制御部11は、電流閾値を変更することによって、前述のように負荷13の動作状態に応じて、スイッチング素子S3,S4がオンしているオン時間と、交流電源1から電流検出部2に流れる電流Isの導通時間の比率を変化させる。なお、交流電源1の電源電圧Vsが正極性の場合について説明したが、交流電源1の電源電圧Vsが負極性の場合も同様である。
図6は、実施の形態1に係る直流電源装置100に流れる電流Isと整流回路4のスイッチング素子S3,S4のオンオフのタイミングとの関係を表す第3の例を示す図である。図6は、一例として、直流電源装置100の運転途中で制御部11が負荷13を制御オフ状態から制御オン状態に切り替え、さらにDutyON時間をDuty1からDuty2に変更した場合の関係を示している。
図6(a)は、交流電源1の電源電圧Vsの波形を示す。図6(b)は、電流検出部2で検出される電流Isの波形を示す。
図6(c)は、交流電源1から出力される電源電圧Vsが正極性のときに制御部11で使用される電流閾値であり、+Ithとする。+Ithの値は、図2のフローチャートにおいて、負荷13が制御オフ状態のときは電流閾値Ith1が設定され、負荷13が制御オン状態になったタイミングで電流閾値Ith2に変更される。Ith2の値は、DutyON時間がDuty1からDuty2に変化することで正比例して増大する。図6(d)は、交流電源1から出力される電源電圧Vsが負極性のときに制御部11で使用される電流閾値であり、-Ithとする。-Ithの値は、図5(c)の+Ithの値と同じ絶対値で符号が逆転しているものである。
図6(e)は、スイッチング素子S3を制御するため制御部11から出力される駆動信号である。制御部11は、電源電圧Vsが負極性の場合、電流検出部2で検出される電流Isが-Ithよりも小さくなったときにスイッチング素子S3をオンさせる。図6(f)は、スイッチング素子S4を制御するため制御部11から出力される駆動信号である。制御部11は、電源電圧Vsが正極性の場合、電流検出部2で検出される電流Isが+Ithよりも大きくなったときにスイッチング素子S4をオンさせる。
図6(g)は、負荷13の制御状態を示す。図6(g)において、制御オフ状態は制御部11が負荷13の動作を制御していない状態であり、制御オン状態は制御部11が負荷13の動作を制御している状態である。図6(h)は、負荷13を制御する制御部11からのPWM信号のDutyON時間を示す。DutyON時間は0<Duty1<Duty2の関係にあり、制御オフ状態のときのDutyON時間は0に等しい。
直流電源装置100において、制御部11は、負荷13が接続されて制御オン状態の場合、電流閾値を電流閾値Ith1から電流閾値Ith2に変更する。さらに、制御部11は、負荷13を制御するPWM信号のDutyON時間に応じて、電流閾値Ith2の値を変更する。すなわち、制御部11は、負荷13を制御する制御信号に基づいて、電流閾値を変更する。制御部11は、負荷13をPWM制御、すなわちパルス幅制御によって制御している場合、パルス幅制御のDutyON時間に比例して電流閾値を変更する。これにより、制御部11は、負荷13が接続されていないまたは制御されていない状態でスイッチング素子S3,S4がオンする時間と、負荷13が接続されて制御されている状態でスイッチング素子S3,S4がオンする時間とを同じにすることができる。
つづいて、直流電源装置100が備える制御部11のハードウェア構成について説明する。図7は、実施の形態1に係る直流電源装置100が備える制御部11を実現するハードウェア構成の一例を示す図である。制御部11は、プロセッサ201およびメモリ202により実現される。
プロセッサ201は、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、DSP(Digital Signal Processor)ともいう)、またはシステムLSI(Large Scale Integration)である。メモリ202は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリー、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)といった不揮発性または揮発性の半導体メモリを例示できる。また、メモリ202は、これらに限定されず、磁気ディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、またはDVD(Digital Versatile Disc)でもよい。
以上説明したように、本実施の形態によれば、直流電源装置100は、スイッチング素子S1~S4を用いた整流回路4の前段に、整流回路4と並列に負荷13が接続されている場合、整流回路4および負荷13に流れる合計電流を検出する電流検出部2の検出値に対する電流閾値を、負荷13の動作状態に応じて変更することとした。これにより、直流電源装置100は、整流回路4に流れる電流Irの電流値に対して電流検出部2の検出値が変化する場合でも、整流回路4を安定して動作させることができる。直流電源装置100は、整流回路4に対してコンデンサ9から交流電源1への不用意な回生が行われることで発生する出力電圧の乱れ、リンギングなどを回避でき、安定かつ低損失な交直の電力変換を行うことができる。
なお、直流電源装置100は、商用電源である交流電源1から得られる交流電力を直流電力に変換する際に用いる整流回路4だけでなく、その他の整流回路においても適用可能である。
また、直流電源装置100は、並列負荷接続部12は直流電源装置100が実装される基板において負荷13と接続可能なように設けられたパターン、コネクタなどであることから、同一の基板を用いて、負荷13を備えない構成にすることも可能である。これにより、直流電源装置100は、負荷13の有無に係わらず、共通の基板を用いることができる。
実施の形態2.
実施の形態2では、実施の形態1で説明した直流電源装置100を備えるモータ駆動装置について説明する。
図8は、実施の形態2に係るモータ駆動装置101の構成例を示す図である。モータ駆動装置101は、負荷であるモータ42を駆動する。モータ駆動装置101は、実施の形態1の直流電源装置100と、インバータ41と、モータ電流検出部44と、インバータ制御部43とを備える。インバータ41は、直流電源装置100に接続される負荷10に相当する。インバータ41は、直流電源装置100から供給される直流電力を交流電力に変換してモータ42へ出力することにより、モータ42を駆動する。なお、モータ駆動装置101の負荷がモータ42である場合の例を説明しているが、一例であり、インバータ41に接続される機器は、交流電力が入力される機器であればよく、モータ42以外の機器でもよい。
インバータ41は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)をはじめとするスイッチング素子を、3相ブリッジ構成または2相ブリッジ構成とした回路である。インバータ41に用いられるスイッチング素子は、IGBTに限定されず、ワイドバンドギャップ半導体で構成されたスイッチング素子、IGCT(Integrated Gate Commutated Thyristor)、FET(Field Effect Transistor)またはMOSFETでもよい。
モータ電流検出部44は、インバータ41とモータ42との間に流れる電流を検出する。インバータ制御部43は、モータ電流検出部44で検出された電流を用いて、モータ42が所望の回転数にて回転するように、インバータ41内のスイッチング素子を駆動するためのPWM信号を生成してインバータ41へ印加する。インバータ制御部43は、制御部11と同様に、プロセッサおよびメモリにより実現される。なおモータ駆動装置101のインバータ制御部43と、直流電源装置100の制御部11は、1つの回路で実現してもよい。
直流電源装置100がモータ駆動装置101に用いられる場合、インバータ41の制御に必要な母線電圧Vdcが、モータ42の運転状態に応じて変化する。一般に、モータ42の回転数が高回転になる程、インバータ41の出力電圧を高くする必要がある。このインバータ41の出力電圧の上限は、インバータ41への入力電圧、すなわち直流電源装置100の出力である母線電圧Vdcにより制限される。インバータ41からの出力電圧が、母線電圧Vdcにより制限される上限を超えて飽和する領域を過変調領域と呼ぶ。
このようなモータ駆動装置101において、モータ42が低回転の範囲、すなわち過変調領域に到達しない範囲では、母線電圧Vdcを昇圧させる必要はない。一方、モータ42が高回転となった場合には、母線電圧Vdcを昇圧させることで、過変調領域をより高回転側にすることができる。これにより、モータ42の運転範囲を高回転側に拡大できる。
また、モータ42の運転範囲を拡大する必要がなければ、その分、モータ42が備える固定子への巻線の巻数を増やすことができる。巻線の巻数を増やすことにより、低回転の領域では、巻線の両端に発生するモータ電圧が高くなり、その分、巻線に流れる電流が低下するため、インバータ41内のスイッチング素子のスイッチング動作で生じる損失を低減できる。モータ42の運転範囲の拡大と、低回転の領域の損失改善との双方の効果を得る場合には、モータ42の巻線の巻数は適切な値に設定される。
以上説明したように、本実施の形態によれば、直流電源装置100を用いることによってアーム間の発熱の偏りが低減され、信頼性が高く高出力のモータ駆動装置101を実現できる。
実施の形態3.
実施の形態3では、実施の形態2で説明したモータ駆動装置101の適用例について説明する。
図9は、実施の形態3に係る空気調和機700の構成例を示す図である。空気調和機700は、冷凍サイクル装置の一例であり、実施の形態2のモータ駆動装置101およびモータ42を備える。空気調和機700は、圧縮機構87およびモータ42を内蔵した圧縮機81と、四方弁82と、室外熱交換器83と、膨張弁84と、室内熱交換器85と、冷媒配管86と、を備える。空気調和機700は、室外機が室内機から分離されたセパレート型空気調和機に限定されず、圧縮機81、室内熱交換器85および室外熱交換器83が1つの筐体内に設けられた一体型空気調和機でもよい。モータ42は、モータ駆動装置101により駆動される。
圧縮機81の内部には、冷媒を圧縮する圧縮機構87と、圧縮機構87を動作させるモータ42と、が設けられる。圧縮機81、四方弁82、室外熱交換器83、膨張弁84、室内熱交換器85および冷媒配管86に冷媒が循環することにより、冷凍サイクル装置が構成される。なお、空気調和機700が備える構成要素は、冷凍サイクル装置を備える冷蔵庫または冷凍庫といった機器にも適用可能である。
実施の形態3では、圧縮機81の駆動源にモータ42が利用され、モータ駆動装置101によりモータ42を駆動する場合について説明した。しかしながら、空気調和機700が備える不図示の室内機送風機および室外機送風機を駆動する駆動源にモータ42を適用し、当該モータ42をモータ駆動装置101で駆動してもよい。また、室内機送風機、室外機送風機および圧縮機81の駆動源にモータ42を適用し、当該モータ42をモータ駆動装置101で駆動してもよい。
ここで、図9における四方弁82、膨張弁84などは、内蔵されたモータにより駆動されるため、電気的なアクチュエータであり、駆動源となる電源が必要となる。電源の生成方法として、例えば、図9における電源装置91を、交流電源1に対してモータ駆動装置101と並列に接続する手段が取られることがある。このとき、電源装置91、四方弁82、および膨張弁84は、前述の負荷13に該当する。また、室外機における消費電力は、圧縮機81および内蔵されるモータ42での消費電力が支配的であり、その電力源となるモータ駆動装置101は、大きな電力変換を扱うこととなる。そのため、いかに高効率な電力変換回路を搭載したとしても、大きな損失が発生することになり、半導体素子の熱破壊を防ぐためにも冷却が必要となる。そこで、図9のように、例えば、外付けの空冷ファン92などを設置したときにも電源が必要となり、図9のように電源装置91から電力供給する場合も考えられる。空冷ファン92は、前述の負荷13に該当する。
また、暖房も行う空気調和機700において、極低温における暖房時には室内熱交換器85が着霜する場合がある。これを防止するため、例えば、図9に示すような凍結防止用のヒーター93を設置する場合がある。これは、空気調和機700に限らず、例えば、冷蔵庫においても同様であり、特に冷蔵庫では、空気調和機700のような除霜運転が出来ないため、ヒーター93を搭載する割合が比較的高い。このようなヒーター93に電源装置91から電力供給する場合にも、ヒーター93は、前述の負荷13に該当する。
実施の形態1では、負荷13の状態に応じてスイッチング素子S1~S4のスイッチング方式を適宜変更することについて説明した。具体的には、実施の形態3において、四方弁82、膨張弁84、空冷ファン92、ヒーター93などの負荷13に相当する前段負荷の状態に応じて、スイッチング素子S1~S4のスイッチング手法を適宜変更する。これにより、直流電源装置100、モータ駆動装置101などを安定的かつ高効率に運転することが可能となる。
ここで、図9では、電源装置91を介して空冷ファン92、ヒーター93などに電力供給を行う構成としているが、これに限定されるものではない。空気調和機700は、例えば、電源装置91を介さずに交流電源1から直接、空冷ファン92、ヒーター93などに電力供給する構成であってもよい。また、空気調和機700において、四方弁82、膨張弁84、空冷ファン92、ヒーター93などに対するスイッチ、リレーなどの操作手段についての記載を省略したが、適宜挿入しても問題ない。また、負荷13として、四方弁82、膨張弁84、空冷ファン92、ヒーター93などを記載したが、これらは実施の形態3における例であり、これら以外の負荷装置、アクチュエータであっても問題ない。
以上説明したように、本実施の形態によれば、空気調和機700は、電源装置91、空冷ファン92、ヒーター93などを備える場合においても、直流電源装置100、モータ駆動装置101などを安定的かつ高効率に運転することが可能となる。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。