JP7300498B2 - 石膏粉末及び石膏スラリーの製造方法 - Google Patents

石膏粉末及び石膏スラリーの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、石膏粉末及び石膏スラリーの製造方法に関する。
歯科分野においては、口腔内に装着されるインレー、クラウン、ブリッジ、部分床義歯、全部床義歯等の歯科補綴物を作製する際に、患者の口腔内状態を再現した石膏模型(例えば、作業用模型、顎模型)が用いられている。
石膏模型は、一般に、印象材を用いて、口腔内の印象を採得した陰型内に、石膏スラリーを流し込んだ後、硬化させて作製する。
ここで、歯科医院や歯科技工所では、ゴム製の小型ボウル(ラバーボウル)に、石膏粉末と水を入れた後、石膏スパチュラを用いて練和することにより、石膏スラリーを調製する。
一方、高齢化社会に対応するために、訪問診療が増えると考えられている。
しかしながら、訪問診療時に、上記のようにして、石膏スラリーを調製すると、多種類の用具を用意する必要があり、煩雑である。
そこで、より簡便な石膏スラリーの調製方法として、石膏粉末と水をボトルに入れて密封した後、ボトルを振とうする方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
国際公開第2017/208662号
しかしながら、石膏スラリーの流動性及び石膏硬化体の強度をさらに向上させることが望まれている。
ここで、石膏スラリーを調製する際の石膏粉末に対する水の質量比、即ち、混水比を小さくすると、石膏硬化体の強度が向上するが、石膏スラリーの流動性が低下する。
本発明の一態様は、石膏スラリーの流動性及び石膏硬化体の強度を向上させることが可能な石膏粉末を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、石膏粉末と水を混合する石膏スラリーの製造方法であって、前記石膏粉末は、半水石膏と、20℃における水に対する溶解度が2g/L以上であるカルシウム塩を含み、前記半水石膏に対する前記カルシウム塩の質量比が0.1%以上3%以下であり、前記石膏粉末に対する前記水の質量比が0.18以上0.25以下である

本発明の一態様によれば、石膏スラリーの流動性及び石膏硬化体の強度を向上させることが可能な石膏粉末を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
<石膏粉末>
本実施形態の石膏粉末は、半水石膏と、20℃における水に対する溶解度が2g/L以上であるカルシウム塩を含むため、石膏スラリーの流動性及び石膏硬化体の強度を向上させることができる。
<半水石膏>
半水石膏としては、α半水石膏、β半水石膏が挙げられ、α半水石膏とβ半水石膏を併用してもよい。
<カルシウム塩>
カルシウム塩は、20℃における水に対する溶解度が2g/L以上であれば、特に限定されないが、例えば、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、過塩素酸カルシウム、ギ酸カルシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、乳酸カルシウム、L-アスコルビン酸カルシウム、安息香酸カルシウム等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、石膏スラリーの流動性及び石膏硬化体の強度の点で、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、ギ酸カルシウム、安息香酸カルシウムが好ましい。
なお、カルシウム塩の20℃における水に対する溶解度は、10g/L以上であることが好ましい。
表1に、カルシウム塩の20℃における水に対する溶解度を示す。
Figure 0007300498000001
なお、カルシウム塩の20℃における水に対する溶解度は、以下のようにして、測定することができる。まず、20℃において、所定量の水に過剰量のカルシウム塩を投入し、十分に攪拌することで、カルシウム塩の飽和水溶液とする。次に、水に溶解しなかったカルシウム塩をろ過した後、乾燥させ、質量を測定する。最後に、投入したカルシウム塩の質量から水に溶解しなかったカルシウム塩の質量を差し引いた後、水の体積で除する。
本実施形態の石膏粉末中の半水石膏に対するカルシウム塩の質量比は、0.1%以上3%以下であり、0.5%以上2%以下であることが好ましい。本実施形態の石膏粉末中の半水石膏に対するカルシウム塩の質量比が0.1%以上であると、石膏スラリーの流動性及び石膏硬化体の強度がさらに向上し、3%以下であると、石膏硬化体の硬化膨張を抑制することができる。
<二水石膏>
本実施形態の石膏粉末は、二水石膏をさらに含むことが好ましい。これにより、石膏スラリーの硬化性が向上する。
二水石膏としては、天然石膏、化学石膏が挙げられ、天然石膏と化学石膏を併用してもよい。
本実施形態の石膏粉末中の半水石膏に対する二水石膏の質量比は、0.5%以上8%以下であることが好ましく、1%以上5%以下であることがさらに好ましい。本実施形態の石膏粉末中の半水石膏に対する二水石膏の質量比が0.5%以上であると、石膏スラリーの硬化性がさらに向上し、8%以下であると、石膏硬化体の硬化膨張を抑制することができる。
<減水剤>
本実施形態の石膏粉末は、減水剤をさらに含むことが好ましい。これにより、石膏スラリーの流動性がさらに向上する。
減水剤としては、特に限定されないが、変性ポリカルボン酸系減水剤、ポリエーテル・ポリカルボン酸系減水剤、メラミンスルホン酸系減水剤、ナフタレンスルホン酸系減水剤、リグニンスルホン酸系減水剤等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
変性ポリカルボン酸系減水剤の市販品としては、例えば、MELFLUX AP 101 F(SKWイーストアジア製)等が挙げられる。
ポリエーテル・ポリカルボン酸系減水剤の市販品としては、例えば、MELFLUX 2641 F、MELFLUX 2651 F、MELFLUX 4930 F、MELFLUX 5581 F、MELFLUX 6681 F、MELFLUX BF 11 F(以上、SKWイーストアジア製)等が挙げられる。
メラミンスルホン酸系減水剤の市販品としては、例えば、MELMENT F10M、MELMENT F4000(以上、SKWイーストアジア製)NL-G400(BASF製)等が挙げられる。
ナフタレンスルホン酸系減水剤の市販品としては、例えば、マイテイ100(花王製)、POWERCON-100(SKWイーストアジア製)等が挙げられる。
リグニンスルホン酸系減水剤の市販品としては、例えば、LIGNOSULFONATE ARBO N18、LIGNOSULFONATE ARBO S01P、NORLIG SA(以上、SKWイーストアジア製)等が挙げられる。
本実施形態の石膏粉末中の半水石膏に対する減水剤の質量比は、0.05%以上0.5%以下であることが好ましく、0.1%以上0.3%以下であることがさらに好ましい。本実施形態の石膏粉末中の半水石膏に対する減水剤の質量比が0.05%以上であると、石膏スラリーの流動性がさらに向上し、0.5%以下であると、石膏硬化体の強度がさらに向上する。
<硫酸カリウム>
本実施形態の石膏粉末は、硫酸カリウムをさらに含むことが好ましい。これにより、石膏スラリーの硬化性が向上する。
本実施形態の石膏粉末中の半水石膏に対する硫酸カリウムの質量比は、0.1%以上2%以下であることが好ましく、0.5%以上1.5%以下であることがさらに好ましい。本実施形態の石膏粉末中の半水石膏に対する硫酸カリウムの質量比が0.1%以上2%以下であると、石膏スラリーの硬化性がさらに向上する。
<酒石酸カリウム>
本実施形態の石膏粉末は、酒石酸カリウムをさらに含むことが好ましい。これにより、石膏硬化体の硬化膨張を抑制することができる。
本実施形態の石膏粉末中の半水石膏に対する酒石酸カリウムの質量比は、0.05%以上1%以下であることが好ましく、0.1%以上0.5%以下であることがさらに好ましい。本実施形態の石膏粉末中の半水石膏に対する硫酸カリウムの質量比が0.05%以上であると、石膏硬化体の硬化膨張をさらに抑制することができ、1%以下であると、石膏スラリーの硬化性が向上する。
<他の成分>
本実施形態の石膏粉末は、硫酸ナトリウム等の硬化膨張抑制剤、硫酸マグネシウム等の顔料等をさらに含んでいてもよい。
<石膏粉末の用途>
本実施形態の石膏粉末は、歯科用石膏粉末、医療用ギプス包帯成形用石膏粉末、陶磁器型材用石膏粉末、工業模型用石膏粉末等に適用することができる。
<石膏スラリーの製造方法>
本実施形態の石膏粉末と水を混合することにより、石膏スラリーを製造することができる。
例えば、本実施形態の石膏粉末と水をゴム製の小型ボウル(ラバーボウル)に入れた後、石膏スパチュラを用いて練和することにより、石膏スラリーを製造することができる。
また、本実施形態の石膏粉末と水をボトルに入れて密封した後、ボトルを振とうすることにより、石膏スラリーを製造することができる。
本実施形態の石膏粉末に対する水の質量比(混水比)は、0.18以上0.25以下であることが好ましく、0.19以上0.20以下であることがさらに好ましい。本実施形態の石膏粉末に対する水の質量比が0.18以上であると、石膏スラリーの流動性がさらに向上し、0.25以下であると、石膏硬化体の強度がさらに向上する。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、実施例に限定されない。
<実施例1~14、比較例1、2>
石膏母材(α半水石膏、二水石膏)、添加剤(硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、酒石酸カリウム)、減水剤、カルシウム塩(表2参照)をポットミルに入れた後、30分間混合し、石膏粉末を作製した。
なお、表2における略称の意味は、以下の通りである。
MELFLUX 2651 F:ポリエーテル・ポリカルボン酸系減水剤(SKWイーストアジア製)
MELFLUX 4930 F:ポリエーテル・ポリカルボン酸系減水剤(SKWイーストアジア製)
MELFLUX 5581 F:ポリエーテル・ポリカルボン酸系減水剤(SKWイーストアジア製)
MELMENT F10M:メラミンスルホン酸系減水剤(SKWイーストアジア製)
NL-G400:メラミンスルホン酸系減水剤(BASF製)
次に、石膏粉末を用いて、石膏スラリーを調製した後、石膏スラリーの流動性、石膏スラリーの硬化時間、石膏硬化体の強度を測定した。
<石膏スラリーの調製方法A>
石膏粉末及び水を、所定の混水比(表2参照)で、ラバーボウルに入れた後、石膏スパチュラを用いて練和し、石膏スラリーを調製した。
<石膏スラリーの調製方法B>
石膏粉末及び水を、所定の混水比(表2参照)で、ポリスチレン製の円筒形状のボトルとしての、ラボランスチロール棒瓶200mL(アズワン製)に入れて密封した後、振とうし、石膏スラリーを調製した。
<石膏スラリーの流動性>
JIS T6601「歯科鋳造用こう系埋没材」に定められた方法により、石膏スラリーの流動性を測定した。なお、石膏スラリーの流動性が60mm以上である場合を優、40mm以上60mm未満である場合を良、40mm未満である場合を不可として、判定した。
<石膏スラリーの硬化時間>
JIS T6605「歯科用硬質石膏」に定められた方法により、石膏スラリーの硬化時間を測定した。
<石膏硬化体の強度A>
石膏スラリーを印象材へ流し込んだ後、10分経過した時点で、印象材から石膏硬化体(石膏模型)を取り外した。
JIS T6605「歯科用硬質石膏」に定められた方法により、石膏硬化体の強度Aを測定した。
なお、石膏硬化体の強度Aの判定基準は、下記の通りである。
優:石膏硬化体の強度Aが10MPa以上である場合
良:石膏硬化体の強度Aが5MPa以上10MPa未満である場合
不可:石膏硬化体の強度Aが5MPa未満である場合
<石膏硬化体の強度B>
石膏スラリーを印象材へ流し込んだ後、60分経過した時点で、印象材から石膏硬化体(石膏模型)を取り外した。
JIS T6605「歯科用硬質石膏」に定められた方法により、石膏硬化体の強度Bを測定した。
なお、石膏硬化体の強度Bの判定基準は、下記の通りである。
優:石膏硬化体の強度Bが50MPa以上である場合
良:石膏硬化体の強度Bが43MPa以上50MPa未満である場合
不可:石膏硬化体の強度Bが43MPa未満である場合
表2に、石膏スラリーの流動性、石膏スラリーの硬化時間、石膏硬化体の強度A、Bの測定結果を示す。
Figure 0007300498000002
表2から、実施例1~14の石膏粉末は、石膏スラリーの流動性及び石膏硬化体の強度A、Bが高いことがわかる。
これに対して、比較例1、2の石膏粉末は、20℃における水に対する溶解度が2g/L以上であるカルシウム塩を含まないため、混水比が0.20であると、石膏スラリーの流動性が低下し、混水比が0.23であると、石膏硬化体の強度Bが低下する。
本願は、日本特許庁に2019年2月28日に出願された基礎出願2019-035438号の優先権を主張するものであり、その全内容を参照によりここに援用する。

Claims (7)

  1. 石膏粉末と水を混合する石膏スラリーの製造方法であって、
    前記石膏粉末は、半水石膏と、20℃における水に対する溶解度が2g/L以上であるカルシウム塩を含み、
    前記半水石膏に対する前記カルシウム塩の質量比が0.1%以上3%以下であり、
    前記石膏粉末に対する前記水の質量比が0.18以上0.25以下である、石膏スラリーの製造方法
  2. 前記カルシウム塩は、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、ギ酸カルシウム及び安息香酸カルシウムからなる群より選択される一種以上である、請求項1に記載の石膏スラリーの製造方法
  3. 前記石膏粉末は、二水石膏をさらに含む、請求項1に記載の石膏スラリーの製造方法
  4. 前記石膏粉末は、減水剤をさらに含む、請求項1に記載の石膏スラリーの製造方法
  5. 前記石膏粉末は、硫酸カリウムをさらに含む、請求項1に記載の石膏スラリーの製造方法
  6. 前記石膏粉末は、酒石酸カリウムをさらに含む、請求項1に記載の石膏スラリーの製造方法
  7. 前記石膏粉末は、歯科用石膏粉末である、請求項1に記載の石膏スラリーの製造方法
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