JP7298626B2 - 固体電池 - Google Patents

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Description

本発明は、固体電池に関する。
従前より充放電が繰り返し可能な二次電池が様々な用途に用いられている。例えば、二次電池は、スマートフォン、ノートパソコン等の電子機器の電源として用いられている。
当該二次電池においてはイオンを移動させるための媒体として有機溶媒等の液体の電解質(電解液)が従来より使用されている。しかしながら、電解液を用いた二次電池においては、電解液の漏液等の問題がある。そのため、液体の電解質に代えて固体電解質を有して成る固体電池の開発が進められている。
特開2007-5279号公報
固体電池500’は、相互に対向する正極層10A’、負極層10B’、および正極層10A’と負極層10B’との間に介在する固体電解質層20’を備えた電池構成単位を有するところ、そのような電池構成単位が積層方向に沿って少なくとも2つ設けられた構成を採る場合がある(図6参照)。
正極層10A’は正極集電層11A’および正極活物質層12A’を有して成り、正極集電層11A’の一端が正極端子200A’と電気的に接続されるように構成され得る。負極層10B’は負極集電層11B’および負極活物質層12B’を有して成り、負極集電層11B’の一端が負極端子200B’と電気的に接続されるように構成され得る。かかる構成において、固体電解質層20’は、積層方向に沿って相互に対向する正極層10A’と負極層10B’との間に隙間無く設けられ得る。
ここで、固体電池500’の充放電時に、正極層10A’と負極層10B’との間にて固体電解質中をイオンが移動することに伴い、各電極層の活物質層12A’,12B’が膨張/収縮し得ることが当業者により知られている(図6参照)。かかる活物質層12A’,12B’の膨張/収縮が生じると、以下の問題が生じ得る。
具体的には、固体電池500’の充放電時にて活物質層の膨張/収縮が生じると、正極層10A’と負極層10B’との間に位置する固体電解質層20’が膨張/収縮し得ないか、あるいは、固体電解質層20’が膨張/収縮したとしても各電極層よりも膨張/収縮量が少なくなり得る。そのため、これに起因して、積層方向において各電極層と固体電解質層20’との間において、電極層には圧縮方向の応力が生じ得る一方、固体電解質層20’には引張方向の応力が生じ得る(図6参照)。具体的には、積層方向において正極層10A’と当該正極層10A’に接する固体電解質層20’との間において、正極層10A’には圧縮方向の応力が生じ得る一方、固体電解質層20’には引張方向の応力が生じ得る。また、積層方向において負極層10B’と当該負極層10B’に接する固体電解質層20’との間において、負極層10B’には圧縮方向の応力が生じ得る一方、固体電解質層20’には引張方向の応力が生じ得る。よって、このような応力の影響を受ける固体電解質層20’にはクラック40’が生じる虞がある(図7参照)。また、固体電解質層に限らず、充放電時に膨張/収縮し得ない電池構成材、または各電極層に対して膨張/収縮量が少なくなり得る電池構成材を含む固体電池の場合、かかる電池構成材にクラックが生じる虞がある。
本発明はかかる事情に鑑みて為されたものである。即ち、本発明の主たる目的は、固体電池の充放電時における電池構成材のクラックをより好適に抑制可能な固体電池を提供することである。
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態では、
固体電池であって、
正極層、負極層、および正極層と負極層との間に介在する固体電解質層を備える電池構成単位を積層方向に沿って少なくとも2つ備え、
積層方向に沿って相互に隣り合う一方の電池構成単位と他方の電池構成単位との間に絶縁層が設けられており、
絶縁層が、電池構成単位を構成する電池構成材よりも高いヤング率を有している、固体電池が提供される。
本発明の一実施形態によれば、固体電池の充放電時における電池構成材のクラックをより好適に抑制可能である。
図1は、本発明の一実施形態に係る固体電池を模式的に示した断面図である。 図2は、本発明の別の実施形態に係る固体電池を模式的に示した断面図である。 図3は、本発明の別の実施形態に係る固体電池を模式的に示した断面図である。 図4は、本発明の別の実施形態に係る固体電池を模式的に示した断面図である。 図5は、本発明の別の実施形態に係る固体電池を模式的に示した断面図である。 図6は、充放電時に膨張/収縮が生じる活物質層を有して成る従来の固体電池を模式的に示した断面図である。 図7は、充放電時にクラックが生じた固体電解質層を有して成る従来の固体電池を模式的に示した断面図である。
以下、本発明の「固体電池」を詳細に説明する。必要に応じて図面を参照して説明を行うものの、図示する内容は、本発明の理解のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観や寸法比などは実物と異なり得る。
本発明でいう「固体電池」とは、広義にはその構成要素が固体から構成されている電池を指し、狭義にはその構成要素(特に好ましくは全ての構成要素)が固体から構成されている全固体電池を指す。ある好適な態様では、本発明における固体電池は、電池構成単位を成す各層が互いに積層するように構成された積層型固体電池であり、好ましくはそのような各層が焼結体から成っている。なお、「固体電池」は、充電および放電の繰り返しが可能な、いわゆる「二次電池」のみならず、放電のみが可能な「一次電池」をも包含する。本発明のある好適な態様では「固体電池」は二次電池である。「二次電池」は、その名称に過度に拘泥されるものではなく、例えば、「蓄電デバイス」などの電気化学デバイスも包含し得る。
本明細書でいう「断面視」とは、固体電池を構成する活物質層の積層方向に基づく厚み方向に対して略垂直な方向からみたときの状態のことである。本明細書で直接的または間接的に用いる“上下方向”および“左右方向”は、それぞれ図中における上下方向および左右方向に相当する。特記しない限り、同じ符号または記号は、同じ部材・部位または同じ意味内容を示すものとする。ある好適な態様では、鉛直方向下向き(すなわち、重力が働く方向)が「下方向」に相当し、その逆向きが「上方向」に相当すると捉えることができる。
[固体電池の基本的構成]
固体電池は、正極層、負極層、およびそれらの間に介在する固体電解質層から成る電池構成単位を積層方向に沿って少なくとも1つ備えた固体電池積層体を有して成る。
固体電池は、それを構成する各層が焼成によって形成され得る。つまり、好ましくは、正極層、負極層および固体電解質層などが焼結層を成している。より好ましくは、正極層、負極層および固体電解質は、それぞれが互いに一体焼成されており、それゆえ電池構成単位が一体焼結体を成している。ここで「一体焼成」とは、各層を積層させた焼成前の積層体を同時に焼成させることを指し、かかる焼成前の積層体における各層は、スクリーン印刷法等の印刷法および/またはグリーンシートを用いるグリーンシート法などいずれの方法で形成されていてもよい。また、「一体焼結された」とは、「一体焼成」により形成されたことを指し、「一体焼結体」とは、「一体焼成」により形成されたものを指す。
正極層は、少なくとも正極活物質を含んで成る電極層である。正極層は、更に固体電解質材および/または正極集電層を含んで成っていてよい。ある好適な態様では、正極層は、正極活物質粒子と固体電解質材と正極集電層とを少なくとも含む焼結体から構成されている。一方、負極層は、少なくとも負極活物質を含んで成る電極層である。負極層は、更に固体電解質材および/または負極集電層を含んで成っていてよい。ある好適な態様では、負極層は、負極活物質粒子と固体電解質材と負極集電層とを少なくとも含む焼結体から構成されている。
正極活物質および負極活物質は、固体電池において電子の受け渡しに関与する物質である。固体電解質層を介してイオンは正極層と負極層との間で移動(伝導)して電子の受け渡しが行われることで充放電がなされる。正極層および負極層は特にリチウムイオンまたはナトリウムイオンを吸蔵放出可能な層であることが好ましい。つまり、固体電解質層を介してリチウムイオンまたはナトリウムイオンが正極層と負極層との間で移動して電池の充放電が行われる全固体型二次電池であることが好ましい。
(正極活物質)
正極層に含まれる正極活物質としては、例えば、ナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物、オリビン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物、リチウム含有層状酸化物、および、スピネル型構造を有するリチウム含有酸化物等から成る群から選択される少なくとも1種が挙げられる。ナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物の一例としては、Li(PO等が挙げられる。オリビン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物の一例としては、LiFe(PO、LiMnPO等が挙げられる。リチウム含有層状酸化物の一例としては、LiCoO、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3等が挙げられる。スピネル型構造を有するリチウム含有酸化物の一例としては、LiMn、LiNi0.5Mn1.5等が挙げられる。
また、ナトリウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質としては、ナシコン型構造を有するナトリウム含有リン酸化合物、オリビン型構造を有するナトリウム含有リン酸化合物、ナトリウム含有層状酸化物およびスピネル型構造を有するナトリウム含有酸化物等から成る群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
(負極活物質)
負極層に含まれる負極活物質としては、例えば、Ti、Si、Sn、Cr、Fe、Nb、およびMoから成る群から選ばれる少なくとも1種の元素を含む酸化物、黒鉛-リチウム化合物、リチウム合金、ナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物、オリビン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物、ならびに、スピネル型構造を有するリチウム含有酸化物等から成る群から選択される少なくとも1種が挙げられる。リチウム合金の一例としては、Li-Al等が挙げられる。ナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物の一例としては、Li(PO等が挙げられる。オリビン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物の一例としては、LiFe(PO等が挙げられる。スピネル型構造を有するリチウム含有酸化物の一例としては、LiTi12等が挙げられる。
また、ナトリウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質としては、ナシコン型構造を有するナトリウム含有リン酸化合物、オリビン型構造を有するナトリウム含有リン酸化合物およびスピネル型構造を有するナトリウム含有酸化物等から成る群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
正極層および/または負極層は、電子伝導性材料を含んでいてもよい。正極層および/または負極層に含まれる電子伝導性材料としては、銀、パラジウム、金、プラチナ、アルミニウム、銅およびニッケル等の金属材料、ならびに炭素などから成る少なくとも1種を挙げることができる。特に限定されるわけではないが、銅は、正極活物質、負極活物質および固体電解質材などと反応し難く、固体電池の内部抵抗の低減に効果を奏するのでその点で好ましい。
正極層および/または負極層は、焼結助剤を含んでいてもよい。焼結助剤としては、リチウム酸化物、ナトリウム酸化物、カリウム酸化物、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化ビスマスおよび酸化リンから成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。
正極層および負極層の厚みは特に限定されず、例えば、それぞれ独立して、2μm以上50μm以下、特に5μm以上30μm以下であってよい。
(固体電解質)
固体電解質は、リチウムイオンまたはナトリウムイオンが伝導可能な材質である。特に固体電池で電池構成単位を成す固体電解質は、正極層と負極層との間においてリチウムイオンが伝導可能な層を成している。なお、固体電解質は、正極層と負極層との間に少なくとも設けられていればよい。つまり、固体電解質は、正極層と負極層との間からはみ出すように当該正極層および/または負極層の周囲においても存在していてもよい。具体的な固体電解質としては、例えば、ナシコン構造を有するリチウム含有リン酸化合物、ペロブスカイト構造を有する酸化物、ガーネット型またはガーネット型類似構造を有する酸化物等が挙げられる。ナシコン構造を有するリチウム含有リン酸化合物としては、Li(PO(1≦x≦2、1≦y≦2、Mは、Ti、Ge、Al、GaおよびZrから成る群から選ばれた少なくとも1種)が挙げられる。ナシコン構造を有するリチウム含有リン酸化合物の一例としては、例えば、Li1.2Al0.2Ti1.8(PO等が挙げられる。ペロブスカイト構造を有する酸化物の一例としては、La0.55Li0.35TiO等が挙げられる。ガーネット型またはガーネット型類似構造を有する酸化物の一例としては、LiLaZr12等が挙げられる。
なお、ナトリウムイオンが伝導可能な固体電解質としては、例えば、ナシコン構造を有するナトリウム含有リン酸化合物、ペロブスカイト構造を有する酸化物、ガーネット型またはガーネット型類似構造を有する酸化物等が挙げられる。ナシコン構造を有するナトリウム含有リン酸化合物としては、Na(PO(1≦x≦2、1≦y≦2、Mは、Ti、Ge、Al、GaおよびZrから成る群より選ばれた少なくとも一種)が挙げられる。
固体電解質層は、焼結助剤を含んでいてもよい。固体電解質層に含まれる焼結助剤は、例えば、正極層および/または負極層に含まれ得る焼結助剤と同様の材料から選択されてもよい。
固体電解質層の厚みは特に限定されず、例えば、1μm以上15μm以下、特に1μm以上5μm以下であってもよい。
(正極集電層/負極集電層)
正極集電層を構成する正極集電材および負極集電層を構成する負極集電材としては、導電率が大きい材料を用いるのが好ましい。例えば、正極集電材および負極集電材の各々としては、銀、パラジウム、金、プラチナ、アルミニウム、銅およびニッケルなどから成る群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。特に、銅は正極活物質、負極活物質および固体電解質材と反応し難く、固体電池の内部抵抗の低減に効果があるため好ましい。正極集電層および負極集電層はそれぞれ、外部と電気的に接続するための電気的接続部を有し、端子と電気的に接続可能に構成されていてもよい。正極集電層および負極集電層はそれぞれ箔の形態を有していてもよい。一体焼結による電子伝導性向上および製造コスト低減の観点から、正極集電層および負極集電層はそれぞれ一体焼結の形態を有することが好ましい。なお、正極集電層および負極集電層が焼結体の形態を有する場合、それらの各々は、例えば、電子伝導性材料および焼結助剤を含む焼結体より構成されてもよい。正極集電層および負極集電層の各々に含まれる電子伝導性材料は、例えば、正極層および/または負極層に含まれ得る電子伝導性材料と同様の材料から選択されてもよい。正極集電層および負極集電層の各々に含まれる焼結助剤は、例えば、正極層および/または負極層に含まれ得る焼結助剤と同様の材料から選択されてもよい。
正極集電層および負極集電層の各厚みは特に限定されない。例えば、正極集電層および負極集電層の各厚みは1μm以上5μm以下、特に1μm以上3μm以下であってよい。
(絶縁層)
絶縁層は、積層方向に沿って相互に隣接する一方の電池構成単位と他方の電池構成単位との間に形成され得るもので、かかる隣接する電池構成単位間のイオンの移動を回避し、過度のイオンの吸蔵放出を防止するためのものである。特に限定されるものではないが、当該絶縁層は、例えば、ガラス材、セラミック材および/または焼結助剤等から構成され得る。ある1つの好適な態様では、絶縁層として、例えばガラス材が選択されてよい。特に限定されるものではないが、ガラス材としては、ソーダ石灰ガラス、カリガラス、ホウ酸塩系ガラス、ホウケイ酸塩系ガラス、ホウケイ酸バリウム系ガラス、ホウ酸亜塩系ガラス、ホウ酸バリウム系ガラス、ホウケイ酸ビスマス塩系ガラス、ホウ酸ビスマス亜鉛系ガラス、ビスマスケイ酸塩系ガラス、リン酸塩系ガラス、アルミノリン酸塩系ガラス、および、リン酸亜塩系ガラスから成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。また、セラミック材としては、アルミナ、ジルコニア、スピネルおよびフォルステライトから成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。
絶縁層は、焼結助剤を含んでいてもよい。絶縁層に含まれる焼結助剤は、例えば、正極層および/または負極層に含まれ得る焼結助剤と同様の材料から選択されてもよい。
絶縁層の厚みは特に限定されず、例えば、1μm以上15μm以下、特に1μm以上5μm以下であってもよい。
(保護層)
保護層は、一般に固体電池の最外側に設けられ得るもので、電気的、物理的および/または化学的に固体電池積層体を保護するためのものである。保護層を構成する材料としては絶縁性、耐久性および/または耐湿性に優れ、環境的に安全であることが好ましい。例えば、ガラス材、セラミックス材、熱硬化性樹脂および/または光硬化性樹脂等を用いることが好ましい。
(端子)
固体電池には、一般に端子(例えば外部端子)が設けられている。特に、固体電池の側面に端子が設けられている。より具体的には、正極層と接続された正極側の端子と、負極層と接続された負極側の端子とが対向するように設けられていてよい。そのような端子は、導電率が大きい材料を用いることが好ましい。端子の材質としては、特に制限するわけではないが、銀、金、プラチナ、アルミニウム、銅、スズおよびニッケルから成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。
[本発明の固体電池の特徴部分]
固体電池の基本的構成を考慮した上で、以下、本発明の一実施形態に係る固体電池の特徴部分について説明する。
本願発明者らは、固体電池において電池構成材が隙間無く設けられている構成を採る場合において、固体電池の充放電時にて電池構成材にクラックが発生することをより好適に抑制すべく解決策について鋭意検討した。その結果、本願発明者らは、電池構成単位(正極層、負極層、および正極層と負極層との間に介在する固体電解質層を備えるもの)が積層方向に沿って少なくとも2つ供される場合において、従来の延長線上ではない手法での解決策を案出するに至った。
本願発明者らは、「固体電池500において、積層方向に沿って相互に隣り合う一方の電池構成単位101(100)と他方の電池構成単位102(100)との間に電池構成単位100を構成する電池構成材(例えば、正極層10A、負極層10Bおよび固体電解質層20の少なくとも1つ又はそれら一体物)よりもヤング率の高い絶縁層50を供する」という技術的思想を案出するに至った(図1参照)。
この点につき、従来の固体電池500’(図6参照)では、積層方向に沿って相互に隣り合う一方の電池構成単位と他方の電池構成単位とが固体電解質層20’を介して連続する形態を採り得る。具体的には、従来の固体電池500’では、一方の電池構成単位に含まれる正極(または負極)と、これに直接対向する他方の電池構成単位に含まれる負極(または正極)との間において、固体電解質層20’が連続した形態を採る。
これに対して、上記の本発明の技術的思想によれば、図1に例示する断面視のように、一方の電池構成単位101に含まれる正極(または負極)と、それに直接対向する他方の電池構成単位102に含まれる負極(または正極)との間の領域では、絶縁層50によって固体電解質層20が非連続の形態を採る。つまり、当該領域では、絶縁層50によって固体電解質層20が2つに分断される。ここで、絶縁層50は、電池構成単位100を構成する電池構成材よりも高いヤング率を有している。すなわち、絶縁層50のヤング率は、好ましくは正極層10A、負極層10Bおよび固体電解質層20のヤング率よりも高くなっている。逆にいえば、正極層10A、負極層10Bおよび固体電解質層20のヤング率は、絶縁層50のヤング率よりも低くなっている。なお、ヤング率は、対象となる層が複数存在する場合、それぞれのヤング率であってよいものの、複数の層を全体として単一物とみなすことで得られる当該単一物のヤング率であってもよい。したがって、ここでいう「正極層、負極層および固体電解質層のヤング率」とは、正極層、負極層および固体電解質層のそれぞれのヤング率であってよく、あるいは、正極層、負極層および固体電解質層を全体として単一の一体物として捉えた場合のヤング率であってもよい。
上記のような構成とすることで、固体電池の充放電時の電極層の膨張/収縮に起因して生じ得る電池構成材のクラックをより好適に抑制することができる。具体的には、絶縁層50は高剛性であるため、電極層の膨張/収縮による変形に起因して生じ得る電池構成材のクラックを抑制し得る強度を有することができる。また、絶縁層50は電池構成単位101と電池構成単位102とを分断するため、電池構成単位間の応力(ひずみ)の伝播を防ぐことができる。それによって、充放電時に生じ得る電池構成材のクラックをより好適に抑制することができる。
本発明における「絶縁層」とは、広義には電子およびイオンを通さない材質、すなわち電子絶縁性およびイオン絶縁性を有する材から構成される層を指し、狭義には絶縁性物質材料から構成されるものを指す。特に限定されるものではないが、絶縁層は、例えば、ガラス材、セラミック材および/または焼結助剤等を含んでいてよい。
絶縁層がイオン絶縁性材から成ることで、電池構成単位間でのイオンの移動を防止することができる。これにより、電池構成単位間のイオンの移動に伴う電極層の膨張/収縮を低減することができる。そのため、充放電時に生じ得る電池構成材のクラックをより好適に抑制することができる。
絶縁層を構成する材料は、例えばガラス材および/またはセラミック材であってよい。特に限定されるものではないが、ガラス材は、ソーダ石灰ガラス、カリガラス、ホウ酸塩系ガラス、ホウケイ酸塩系ガラス、ホウケイ酸バリウム系ガラス、ホウ酸亜塩系ガラス、ホウ酸バリウム系ガラス、ホウケイ酸ビスマス塩系ガラス、ホウ酸ビスマス亜鉛系ガラス、ビスマスケイ酸塩系ガラス、リン酸塩系ガラス、アルミノリン酸塩系ガラス、および、リン酸亜塩系ガラスから成る群から選択される少なくとも1種を含んで成ってよい。また、セラミック材は、アルミナ、ジルコニア、スピネルおよびフォルステライトから成る群から選択される少なくとも1種を含んで成ってよい。
本明細書において「電池構成材」とは、広義には、固体電池を構成している部分を意味しており、狭義には、正極層、負極層、固体電解質層、正極集電層、負極集電層、保護層、および、絶縁層(電池構成単位間に介在する絶縁層以外の絶縁層)の少なくとも1つを指している。ある1つの好適な態様では、電池構成材は、正極層、負極層および固体電解質層から少なくとも構成された固体電池積層体である。
ある好適な態様では、絶縁層は電池構成単位を構成する電池構成材(例えば、正極層、負極層および固体電解質層の少なくとも1つ)よりも低い熱膨張係数を有している。好ましくは、絶縁層は、正極層、負極層および固体電解質層よりも低い熱膨張係数を有している。そのような構成とすると、固体電池の製造工程において、各電池構成材を共焼結させる場合、絶縁層内に圧縮応力を生じさせることで強度を高めることができ、充放電時に生じ得る電池構成材のクラックを特に抑制することができる。なお、焼成によって各電池構成材の熱膨張係数は変化し得るが、各電池構成材間における熱膨張係数の大小関係自体は焼成の前後で変化しない。なお、熱膨張係数は、対象となる層が複数存在する場合、それぞれの熱膨張係数であってよいものの、複数の層を全体として単一物とみなすことで得られる当該単一物の熱膨張係数であってもよい。したがって、ここでいう「正極層、負極層および固体電解質層よりも熱膨張係数」とは、正極層、負極層および固体電解質層のそれぞれの熱膨張係数であってよく、あるいは、正極層、負極層および固体電解質層を全体として単一の一体物として捉えた場合の熱膨張係数であってもよい。
ある好適な態様において、絶縁層は、ガラス材の母材においてセラミック材が分散されて成っている。すなわち、絶縁層は、ガラス材を含む連続相と、その連続相中に分散されたセラミック材を含む分散相とを有する。絶縁層がガラス材の母材から成ることで、絶縁層の熱膨張係数をより低くすることができる。また、絶縁層が、ガラス材の母材においてセラミック材が分散されて成ることで、絶縁層のヤング率をより高くすることができる。そのため、充放電時に生じ得る絶縁層のクラックを特に抑制し易くなる。
ある好適な態様では、絶縁層を構成するセラミック材は、アルミナ、ジルコニア、スピネルおよびフォルステライトから成る群から選択される少なくとも1種の材料を含んで成っている。絶縁層を構成するセラミック材が上記セラミック材を含んで成ることで、他の電池構成材よりもヤング率を高くし易くなる。
ある好適な態様では、ガラス材の母材におけるセラミック材の含有率は、1重量%以上30重量%以下である。かかる含有率が1重量%以上であると、絶縁層のヤング率をより高くすることができるため、充放電時に生じ得る電池構成材のクラックをより効果的に抑制し得る。かかる含有率が30重量%以下であると、絶縁層の熱膨張係数をより低くすることができるため、共焼結時において絶縁層内により大きな圧縮応力を生じさせることができ、充放電時に生じ得る電池構成材のクラックを特に抑制し易くなる。好ましくは、ガラス材の母材におけるセラミック材の含有率は2重量%以上25重量%以下であり、さらに好ましくは3重量%以上20重量%以下である。
セラミック材の含有率は、例えば、エネルギー分散型X線分析装置(例えば、日本電子株式会社製のJED-2200F)を用い、エネルギー分散法(EDS)により得られた値を指すものであってよい。この場合、測定条件は、走査電圧15kV、照射電流10μAであってもよい。
図4に示す例示態様でいえば、固体電池500IIIにおける絶縁層50IIIは、ガラス材およびセラミック材の混合物から成る。具体的には、絶縁層50IIIは、ガラス材の母材にセラミック材51IIIが分散している形態である。そのような構成とすることで、絶縁層50IIIのヤング率が高くなり易くなる。また、そのような構成では、電池構成単位100IIIを構成する電池構成材(すなわち、正極層10AIII、負極層10BIII、固体電解質層20III)よりも絶縁層50IIIの熱膨張係数がより低くなり易く、焼結時において絶縁層50III内に圧縮応力を生じさせることで強度をより高めることができる。よって、充放電時に生じ得る電池構成材のクラックをより効果的に抑制し易くなる。
ある好適な態様では、絶縁層のヤング率が、150GPa以上250GPa以下である。かかるヤング率が150GPa以上であると、充放電時に生じ得る電池構成材のクラックをより効果的に抑制し得る強度を持たせ易くなり、250GPa以下であると、絶縁層と電池構成単位を構成する電池構成材との間に生じる応力がより効果的に低減され得る。好ましくは、ヤング率は160GPa以上230GPa以下であり、さらに好ましくは180GPa以上220GPa以下である。
本明細書でいう「ヤング率」は、JIS規格(JIS R 1602)に則った手法により測定した値を指す。より具体的には、本明細書における「ヤング率」の値は、卓上形精密万能試験機(島津製作所製 型番AGS-5kNX)を用いた測定で得られる値であってよい。
図1に示す例示態様でいえば、固体電池500において、絶縁層50は互いに隣接する電池構成単位の間に介在している。つまり、絶縁層50は各電池構成単位100を分断している。絶縁層50はイオン絶縁性を有するため、一方の電池構成単位101に含まれる正極層(または負極層)と、積層方向に沿ってこれに直接対向する他方の電池構成単位102に含まれる負極層(または正極層)との間における、固体電解質層20を通じたイオンの移動が防止され得る。つまり、電池構成単位の間に挟持されるように設けられる絶縁層50は、電池構成単位101と電池構成単位102との間におけるイオンの移動に伴う電極層の膨張/収縮を減じ得る。すなわち、電池構成単位の間の絶縁層は、固体電池500の充放電時に、活物質層12の膨張/収縮に起因する電池構成材に生じ得る応力を低減し得る。図1の断面視に示すように、絶縁層50は、好ましくは電池構成単位の間において隙間なく設けられており、また、そのような絶縁層50の厚みは、電池構成単位の各々の厚みよりも小さくてよい。
ある好適な態様では、電池構成単位の正極層および負極層の少なくとも一方における相互に対向する主面の一方(すなわち、そのような電極層における2つの主面のうちの一方)が、絶縁層と接している(特には直接的に接している)。図2に示す例示態様でいえば、電池構成単位101Iにおける負極層10BI、および電池構成単位102Iにおける正極層10AIが、それぞれ絶縁層50Iと接している(特には直接的に接している)。
かかる態様において、相互に隣り合う一方の電池構成単位101Iと他方の電池構成単位102Iとの間に固体電解質層が非存在の状態となる(図2参照)。具体的には、相互に隣り合う一方の電池構成単位101Iと他方の電池構成単位102Iとの間に絶縁層50Iのみが存在し、固体電解質層は存在しない。そのような構成とすることで、充放電時に膨張/収縮が生じ得る電極層に接する固体電解質層を減ずることができ、電池構成材のクラックをより効果的に抑制することができる。
上記のように、本発明は、「固体電池において、相互に隣り合う一方の電池構成単位と他方の電池構成単位との間に絶縁層を供する」という技術的思想を有する。かかる技術的思想に従うならば、その具体的態様としては種々の態様が採られ得る。例えば、固体電池は、積層方向に沿って互いに隣接する電池構成単位を3つ以上(少なくとも3つ)備えていてもよい。
通常、積層方向に沿った電池構成単位の数が増えると、それに伴い活物質層の数も増える。活物質層の数が増えると、これに起因して多数の活物質層がそれぞれ膨張/収縮し得る。そのため、全体として、活物質層の膨張/収縮の程度がより大きくなり得る。活物質層の膨張/収縮の程度がより大きくなると、固体電池の充放電時に、膨張/収縮し得ない固体電解質層側に生じ得る応力がより大きくなり得る。
かかる事情に鑑み、電池構成単位が積層方向に沿って3つ以上供される場合、各電池構成単位を分断するという作用効果を奏し、電池構成単位を構成する電池構成材に対して高いヤング率を有する絶縁層が、互いに隣接する少なくとも3つの電池構成単位の各々の間に供されることが好ましい。そのような構成とすることで、電池構成単位間のイオンの移動を好適に減ずることができ、固体電池の充放電時に生じ得る電極層の膨張/収縮を好適に減ずることができる。また、絶縁層は、電池構成単位を構成する電池構成材よりも高いヤング率を有しているため、電極層の膨張/収縮による変形に起因して生じ得る電池構成材のクラックを抑制し得る強度を有することができる。さらに、絶縁層が高いヤング率を有することによって、電池構成単位間の応力(ひずみ)の伝播を好適に防ぐことができ、電池構成材に生じる応力を好適に低減することが可能となる。
図3に示す例示態様でいえば、電池構成単位100IIを積層方向に沿って少なくとも3つ備え、絶縁層50IIが、相互に隣り合う電池構成単位100IIの間に少なくとも設けられている。
かかる態様について、正極層および負極層の少なくとも一方が活物質層に加えて集電層も有して成る場合を前提に説明する。図3に示す態様では、集電層11IIの一方の側に活物質層12IIが設けられ、集電層11IIの他方の側に絶縁層50IIが設けられている。
電極層が活物質層のみならず集電層をも有して成る前提では、活物質層は種々の態様を採ることができる。ある態様では、集電層の一方の主面側に活物質層が供されると共に、他方の主面側にも活物質層が供され得る(図1参照)。しかしながら、活物質層12IIは集電層11IIの一方の主面11II側のみに供されてもよい(図3参照)。この場合、本発明の「固体電池において、相互に隣り合う一方の電池構成単位と他方の電池構成単位との間に絶縁層を供する」という技術的思想に従えば、集電層11IIの一方の主面11II側に活物質層12IIが設けられる一方で、他方の主面11II側には絶縁層50IIが設けられる。
集電層11IIの他方の主面11II側に絶縁層50IIが設けられる場合、かかる他方の主面11II側には活物質層12IIが存在しないこととなる。当該他方の主面11II側に活物質層12IIが存在しないと、他方の主面11II側に活物質層12IIが存在する場合と比べて、所定の単一の電極層に着目した場合における活物質層12IIの体積が半減され得る。固体電池500IIの充放電時において、活物質層12IIは膨張/収縮し得るところ、活物質層12IIの体積が半減されると、これに起因して半減前と比べて所定の単一の電極層10IIにおける活物質層12IIの膨張/収縮の程度を半減させることが可能となる。
上述するように、本態様では、所定の単一の電極層10IIにおける「活物質層12IIの体積」が半減されたことに伴い、当該活物質層12IIの膨張/収縮の程度も半減させることが可能となる。したがって、所定の単一の電極層10IIにおける活物質層12IIの膨張/収縮の程度をより好適に減じることが可能となる。これにより、固体電池500IIの充放電時に膨張/収縮し得ない、または各電極層に対して膨張/収縮量が少なくなり得る固体電解質20II層側に生じ得る応力をより好適に低減することが可能となる。
ある好適な態様では、絶縁層50IIIが、ガラス材の母材にセラミック材51IIIが分散している形態となっている(図4参照)。すなわち、絶縁層50IIIは、ガラス材を含む連続相と、その連続相中に分散されたセラミック材を含む分散相51IIIとを有する。絶縁層50IIIがガラス材の母材から成ることで、絶縁層50IIIの熱膨張係数をより低くすることができる。また、絶縁層50IIIがガラス材の母材においてセラミック材51IIIが分散されて成ることで、絶縁層のヤング率をより高くすることができる。それによって、絶縁層が、電極層の膨張/収縮による変形に起因して生じ得る電池構成材のクラックを抑制し得る強度を有することができる。さらに、絶縁層が電池構成単位間の応力(ひずみ)の伝播を好適に防ぐことができ、電池構成材に生じ得る応力をより好適に低減することが可能となる。
ある好適な態様では、集電層11IVが多孔質形態となっている(図5参照)。すなわち、集電層11IVにミクロサイズの多数のポア51IVが形成されている。そのため、中実部分のみで構成される集電層のヤング率と比べて、多孔質形態の集電層11IVのヤング率は低くなり得る。
別の好適な態様では、集電層がヤング率の低い金属材を含んで成る。特に限定されるものではないが、例えば、集電層は、銀、金、および/またはアルミニウム等を含んで成る。さらに好適な態様では、集電層が多孔質形態となっており、かつヤング率の低い金属材を含んで成る。
上記のような構成とすることで、積層方向に沿った活物質層12IVの膨張/収縮に起因する押圧力が集電層11IVに伝わる際に生じ得る応力をより好適に低減することができる(図5参照)。よって、積層方向に沿った電池構成単位100IVの膨張/収縮に起因して生じる電池構成材の応力をより好適に低減させることが可能となる。したがって、固体電池の充放電時の電極層の膨張/収縮に起因して生じ得る電池構成材のクラックをより好適に抑制することができる。
ある好適な態様では、集電層のヤング率が、130GPa以下である。かかるヤング率が130GPa以下であると、集電層と電池構成材との間に生じる応力をより効果的に低減できる。好ましくは、ヤング率は100GPa以下であり、さらに好ましくは90GPa以下である。集電層のヤング率は、上記する絶縁層のヤング率と同一の方法により測定した値を指す。
[本発明の固体電池の製造方法]
以下、本発明の一実施形態に係る固体電池の製造方法について説明する。本製造方法は、上述の本発明の一実施形態に係る固体電池を製造するための方法に対応する。
本発明の一実施形態に係る固体電池は、グリーンシートを用いるグリーンシート法とスクリーン印刷法等の印刷法とを組み合わせて製造することができる。一態様では、グリーンシート法により所定の積層体を形成し、形成段階の積層体の側部領域にスクリーン印刷により固体電解質層シートまたは絶縁層シートを供することにより、最終的に本発明の一実施形態に係る固体電池を製造することができる。なお、以下では、当該態様を前提として説明するが、これに限定されることなく、スクリーン印刷法等により所定の積層体を形成してもよい。
(未焼成積層体の形成工程)
まず、支持基材として用いる各基材(例えばPETフィルム)上に固体電解質層用ペースト、正極活物質層用ペースト、正極集電層用ペースト、負極活物質層用ペースト、負極集電層用ペースト、絶縁層用ペースト、および保護層用ペーストを塗工する。
各ペーストは、正極活物質、負極活物質、導電性材料、固体電解質材料、絶縁性物質材料、および焼結助剤から成る群から適宜選択される各層の所定の構成材料と、有機材料を溶剤に溶解した有機ビヒクルとを湿式混合することによって作製することができる。正極活物質層用ペーストは、例えば、正極活物質、電子伝導性材料、固体電解質材料、有機材料および溶剤を含む。負極活物質層用ペーストは、例えば、負極活物質、電子伝導性材料、固体電解質材料、有機材料および溶剤を含む。固体電解質層用ペーストは、例えば、固体電解質材料、焼結助剤、有機材料および溶剤を含む。絶縁層用ペーストは、例えば、絶縁性物質材料、焼結助剤、有機材料および溶剤を含む。正極集電層用ペースト/負極集電層用ペーストとしては、例えば、銀、パラジウム、金、プラチナ、アルミニウム、銅、およびニッケルから成る群から少なくとも1種が選択されてよい。保護層用ペーストは、例えば、絶縁性物質材料、有機材料および溶剤を含む。
湿式混合ではメディアを用いることができ、具体的には、ボールミル法またはビスコミル法等を用いることができる。一方、メディアを用いない湿式混合方法を用いてよく、サンドミル法、高圧ホモジナイザー法またはニーダー分散法等を用いてもよい。
支持基材は、未焼成積層体を支持可能な限り特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の高分子材料から成る基材を用いることができる。未焼成積層体を基材上に保持したまま焼成工程に供する場合、基材は焼成温度に対して耐熱性を呈するものを用いてよい。
固体電解質層用ペーストに含まれる固体電解質材料としては、上述のようにナシコン構造を有するリチウム含有リン酸化合物、ペロブスカイト構造を有する酸化物、および/またはガーネット型またはガーネット型類似構造を有する酸化物からなる粉末を用いてよい。
正極活物質層用ペーストに含まれる正極活物質材としては、例えば、ナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物、オリビン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物、リチウム含有層状酸化物、およびスピネル型構造を有するリチウム含有酸化物等から成る群から少なくとも1種を用いてよい。
負極活物質層用ペーストに含まれる負極活物質材としては、例えば、Ti、Si、Sn、Cr、Fe、Nb、および、Moから成る群から選ばれる少なくとも1種の元素を含む酸化物、黒鉛-リチウム化合物、リチウム合金、ナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物、オリビン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物、ならびにスピネル型構造を有するリチウム含有酸化物等から成る群から少なくとも1種から選択される負極活物質材であってよい。負極活物質層用ペーストは、かかる負極活物質材の他、上記の固体電解質ペーストに含まれる材料、および/または電子伝導性材料等を含んでいてもよい。
絶縁層用ペーストに含まれる絶縁性物質材料としては、例えば、ガラス材、セラミック材、および/または焼結助剤等を用いてよい。保護層用ペーストに含まれる絶縁性物質材料としては、例えば、ガラス材、セラミック材、熱硬化性樹脂材、および光硬化性樹脂材等から成る群から選択される少なくとも1種を用いてよい。
固体電池の製造に用いるペーストに含まれる有機材料は特に限定されないが、ポリビニルアセタール樹脂、セルロース樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂およびポリビニルアルコール樹脂などから成る群から選択される少なくとも1種の高分子材料を用いることができる。ペーストには溶剤が含まれていてよい。かかる溶剤は上記有機材料を溶解可能な限り特に限定されず、例えば、トルエンおよび/またはエタノールなどを用いてよい。
焼結助剤としては、リチウム酸化物、ナトリウム酸化物、カリウム酸化物、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化ビスマス、および酸化リンから成る群から選択される少なくとも1種を用いてよい。
基材(例えばPETフィルム)に塗工したペーストを、30℃以上50℃以下に加熱したホットプレート上で乾燥させることで、基材上に所定厚みを有する固体電解質層シート、正極/負極シート、および絶縁層シートをそれぞれ形成する。
次に、各シートを基材から剥離する。剥離後、積層方向に沿って、一方の電池構成単位の各構成要素のシートを順に積層し、次いで絶縁層シートを積層する。その後、積層方向に沿って、当該絶縁層シート上に他方の電池構成単位の各構成要素のシートを順に積層する。積層後、後刻のプレス前に電極シートの側部領域にスクリーン印刷により固体電解質層シートまたは絶縁層シートを供してよい。次いで、所定圧力(例えば約50MPa以上約100MPa以下)による熱圧着と、これに続く所定圧力(例えば約150MPa以上約300MPa以下)での等方圧プレスを実施してよい。以上により、所定の積層体を形成することができる。
(焼成工程)
焼成工程では、未焼成積層体を焼成に付す。あくまでも例示にすぎないが、焼成は、酸素ガスを含む窒素ガス雰囲気中または大気中で、例えば500℃にて有機材料を除去した後、窒素ガス雰囲気中または大気中で例えば550℃以上1000℃以下で加熱することで実施してよい。焼成は、積層方向(場合によっては積層方向および当該積層方向に対する垂直方向)で未焼成積層体を加圧しながら行ってよい。
次いで、得られた積層体に端子をつける。端子は正極層と負極層にそれぞれ電気的に接続可能に設ける。例えば、スパッタ等により端子を形成することが好ましい。特に限定されるものではないが、端子としては、銀、金、プラチナ、アルミニウム、銅、スズ、およびニッケルから選択される少なくとも1種から構成されることが好ましい。更に、スパッタ、スプレーコート等により端子が覆われない程度で保護層を設けることが好ましい。
(本発明における特徴部分の作製について)
電池構成単位を構成する電池構成材よりも高いヤング率を有する絶縁層は、絶縁層自体が所望のヤング率を有すれば、どのように作製されてもよい。特に限定されるものではないが、例えば、材料自体が高いヤング率を有するセラミック材(例えば、アルミナ)と有機ビヒクルとを湿式混合することによって絶縁層用ペーストを調製してよい。または、ガラス材中に粒子状のセラミック材が分散するように、ガラス材およびセラミック材と有機ビヒクルとを湿式混合することによって絶縁層用ペーストを調製してもよい。
多孔質形態を有する集電層は、例えば、多孔質形態を形成するように焼成後に消失し得る樹脂原料ペーストを用いて得ることができる。例えば、有機ビヒクルから成るペーストを多孔質形態の形成に用いてよい。かかる場合、そのようなペーストが塗布された部分が焼成時に消失し得るので、多孔質形態を有する所望の集電層を得ることができる。同様にして、多孔質形態を形成するように焼成時に消失し得る樹脂フィラーを含有する原料ペーストを用いることによって、多孔質形態を有する集電層を得ることができる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、あくまでも典型例を例示したに過ぎない。従って、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲において種々の態様が考えられることを当業者は容易に理解されよう。
例えば、上記説明においては、例えば図1などで例示される固体電池を中心にして説明したが、本発明は必ずしもこれに限定されない。本発明では電池構成単位を積層方向に沿って少なくとも2つ備え、積層方向に沿って相互に隣り合う一方の電池構成単位と他方の電池構成単位との間に、電池構成単位を構成する電池構成材よりも高いヤング率を有する絶縁層が設けられている固体電池であれば、どのようなものであっても同様に適用することができる。
本発明の一実施形態に係る固体電池は、蓄電が想定される様々な分野に利用することができる。あくまでも例示にすぎないが、本発明の一実施形態に係る固体電池は、モバイル機器などが使用される電気・情報・通信分野(例えば、携帯電話、スマートフォン、ノートパソコンおよびデジタルカメラ、活動量計、アームコンピューター、電子ペーパーなどのモバイル機器分野)、家庭・小型産業用途(例えば、電動工具、ゴルフカート、家庭用・介護用・産業用ロボットの分野)、大型産業用途(例えば、フォークリフト、エレベーター、湾港クレーンの分野)、交通システム分野(例えば、ハイブリッド車、電気自動車、バス、電車、電動アシスト自転車、電動二輪車などの分野)、電力系統用途(例えば、各種発電、ロードコンディショナー、スマートグリッド、一般家庭設置型蓄電システムなどの分野)、医療用途(イヤホン補聴器などの医療用機器分野)、医薬用途(服用管理システムなどの分野)、ならびに、IoT分野、宇宙・深海用途(例えば、宇宙探査機、潜水調査船などの分野)などに利用することができる。
500 固体電池
100 電池構成単位
101 (一方の)電極構成単位
102 (他方の)電極構成単位
10 電極層
10A 正極層
10B 負極層
11 集電層
11A 正極集電層
11B 負極集電層
12 電極活物質層
12A 正極活物質層
12B 負極活物質層
20,60 固体電解質層
50 絶縁層

Claims (9)

  1. 固体電池であって、
    正極層、負極層、および該正極層と該負極層との間に介在する固体電解質層を備える電池構成単位を積層方向に沿って少なくとも2つ備え、
    前記積層方向に沿って相互に隣り合う一方の前記電池構成単位と他方の前記電池構成単位との間に絶縁層が設けられ、相互に隣り合う一方の前記電池構成単位と他方の前記電池構成単位とは、前記絶縁層によって非連続とされており、
    前記絶縁層が、前記電池構成単位を構成する前記正極層のヤング率、前記負極層のヤング率および前記固体電解質層のヤング率よりも高いヤング率を有している、固体電池。
  2. 前記絶縁層が、前記電池構成単位を構成する前記正極層の熱膨張係数、前記負極層の熱膨張係数および前記固体電解質層の熱膨張係数よりも低い熱膨張係数を有している、請求項1に記載の固体電池。
  3. 前記絶縁層は、ガラス材の母材においてセラミック材が分散されて成る、請求項1または2に記載の固体電池。
  4. 前記セラミック材が、アルミナ、ジルコニア、スピネルおよびフォルステライトから成る群から選択される少なくとも1種を含んで成る、請求項3に記載の固体電池。
  5. 前記正極層および前記負極層の少なくとも一方における相互に対向する主面の一方が、前記絶縁層と接している、請求項1~4のいずれかに記載の固体電池。
  6. 前記電池構成単位を前記積層方向に沿って少なくとも3つ備え、前記絶縁層が、相互に隣り合う前記電池構成単位の間に設けられている、請求項1~5のいずれかに記載の固体電池。
  7. 前記正極層および前記負極層の少なくとも一方は、活物質層および集電層を有して成り、前記集電層の一方の側に活物質層が設けられ、該集電層の他方の側に前記絶縁層が設けられている、請求項1~6のいずれかに記載の固体電池。
  8. 前記集電層が多孔質形態となっている、請求項7に記載の固体電池。
  9. 前記正極層および前記負極層がリチウムイオンを吸蔵放出可能な層となっている、請求項1~8のいずれかに記載の固体電池。
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