JP7298552B2 - ステンレス鋼板および焼入成形品 - Google Patents

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Description

本発明は、ステンレス鋼板、および、該ステンレス鋼板を素材とする焼入成形品に関するものである。
二酸化炭素の排出量抑制という観点から、自動車の燃費向上が要求されている。自動車の燃費向上には、車体重量の低減、特に、ピラーやサイドシル等に代表される自動車構造部材の重量の低減が効果的である。そのため、自動車構造部材では、組織硬化鋼板、析出硬化鋼板、TRIP(変態誘起塑性)鋼板等の高強度鋼板の使用による薄肉軽量化が進められている。
自動車構造部材は、通常、鋼板を冷間プレスにより、所定の部材形状に加工して製造される。しかし、鋼板を高強度化すると、加工性が低下する。そのため、従来の冷間プレスでは、これらの高強度鋼板を所定の部材形状に加工することが困難になってきている。
そこで、ダイクエンチ(熱間プレスやホットプレス)と呼ばれる加工技術が注目されている。この加工技術は、素材とする鋼板(以下、素材鋼板ともいう)を加熱し、加熱した素材鋼板を、ダイとパンチからなる金型を用いて、プレス加工すると同時に急冷し、鋼を焼入れ(高強度化)するものである。
このようなダイクエンチ用の鋼板として、例えば、特許文献1には、
「質量%で、C:0.020~0.060%、N:0.020~0.070%、Si:0.05~1.0%、Mn:0.5~1.5%、P:0.040%以下、S:0.015%以下、Ni:0.01%~1.0%、Cr:10.5~13.5%、Cu:0.01~1.0%、V:0.01%~0.30%、及びAl:0.001~0.010%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物であり、下記式(1)で表わされる熱間時の相バランス指標であるγpが80~120であり、結晶粒度がGSNで7~10であることを特徴とする、マルテンサイト系ステンレス熱延鋼板。
γp=420C+470N+23Ni+9Cu+7Mn-11.5Cr-11.5Si-52Al-12Mo-47Nb-7Sn-49Ti-48Zr-49V+189 ・・・ 式(1)
なお、前記式(1)における各元素には、当該元素の含有量(質量%)が導入される。」
が開示されている。
また、特許文献2には、
「質量%で、C:0.03%以上0.15%未満、Si:0.1%以上2.0%以下、Mn:0.30%以上2.50%以下、P:0.05%以下、S:0.010%以下、Al:0.001%以上0.20%以下、Cr:11.0%超え15.0%以下、Ni:0.01%以上0.60%以下、N:0.005%以上0.09%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するダイクエンチ用ステンレス鋼板。」
が開示されている。
特開2019-173087号公報 特開2013-049919号公報
ところで、近年、自動車構造部材では、一層の薄肉軽量化の観点から、さらなる高強度化、具体的には、1780MPa以上の引張強さが求められている。ダイクエンチ用の鋼板は、通常、打ち抜き加工を施してから、ダイクエンチが施される。しかし、打ち抜き加工を施す段階で、鋼板の強度が過度に高いと、打ち抜き加工用の加工器具が短期間で摩耗し、生産性が低下する。そのため、素材鋼板では、750MPa以下の引張強さが求められている。
すなわち、(ダイクエンチ前の素材鋼板の段階では)引張強さが750MPa以下であり、かつ、当該鋼板にダイクエンチを施して得られる焼入成形品では引張強さが1780MPa以上となる、鋼板が求められている。
また、引張強さが1000MPa以上の鋼は、その強度が高くなるほど、水素脆化を起こしやすい。特に、ダイクエンチを施して得られる焼入成形品では、車体への装着により焼入成形品に生じた残留応力と焼入成形品が腐食した場合に鋼中に侵入する水素との相乗作用によって、破壊が生じる場合がある。このような水素脆化による焼入成形品の破壊を防ぐため、自動車構造部材等の焼入成形品では、優れた耐食性も求められる。
しかし、特許文献1および2に開示の鋼板では、上記の要求特性が同時に実現されていない。
本発明は、上記の現状に鑑み開発されたものであって、引張強さが750MPa以下であり、かつ、ダイクエンチ後に高い強度と優れた耐食性とが得られる、ステンレス鋼板を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記のステンレス鋼板を素材とする焼入成形品を提供することを目的とする。
ここで、引張強さは、以下の方法により測定する。
すなわち、ステンレス鋼板から、圧延方向と直角な方向(幅方向)が長手方向となるように、JIS Z 2241に準拠したJIS5号試験片を作製する。その後、JIS Z 2241に準拠した引張試験を行い、室温で引張強さを測定する。なお、引張速度は25mm/分、標点間距離は50mmとする。
また、ダイクエンチ後の予測引張強さは、上記のステンレス鋼板に、ダイクエンチを模擬した以下の条件による熱処理(以下、ダイクエンチを模擬した熱処理ともいう)を施して得られる鋼板を用いて測定される引張強さである。なお、引張強さの測定方法は、上記と同様である。
・熱処理条件
上記のステンレス鋼板を1000℃に加熱し、120秒保持する。ついで、上記のステンレス鋼板を、1000℃から250℃までの平均冷却速度:30℃/秒として冷却する
さらに、優れた耐食性(ダイクエンチ後の予測耐食性)とは、以下の要領で測定した孔食電位が、100mV vs SSE以上であることを意味する。なお、SSEは、試験溶液と電気的に導通の取れた飽和KCl溶液中に浸漬された銀・塩化銀電極(Ag/AgCl/飽和KCl)の電極電位を意味する。
すなわち、上記のダイクエンチを模擬した熱処理を施して得られる鋼板から、20mm角サイズの試験片を5枚切り出す。ついで、試験片の試験面を、エメリー紙により600番の湿式研磨仕上げとし、5枚の試験片を用いて、30℃の3.5質量%NaCl水溶液中にてJIS G 0577に準拠した孔食電位測定を5回行い、Vc'10を測定する。そして、Vc'10の測定値の平均値を、孔食電位とする。なお、Vc'10は、アノード分極曲線において電流密度10μA・cm-2に対応する電位のうち最も高い値である。
加えて、焼入成形品とは、素材とするステンレス鋼板に、ダイクエンチを施して得られる成形品であり、熱間プレス部材などと称される場合もある。
さて、発明者らは、上記の目的を達成すべく、鋭意検討を重ねた。
まず、発明者らは、水素脆化による焼入成形品、特には自動車構造部材の破壊を防止する観点から必要になる焼入成形品の耐食性について検討した。その結果、一般的な自動車走行環境においては、孔食電位を100mV vs SSE以上とすることにより、水素脆化による焼入成形品の破壊を有効に防止できることを見出した。
次に、発明者らは、引張強さが750MPa以下であり、かつ、ダイクエンチ後に高い強度、具体的には、ダイクエンチ後の予測引張強さが1780MPa以上になるという機械特性(以下、単に上記の機械特性ともいう)を実現すべく、検討を行った。
ダイクエンチは、上述したように、比較的軟質な素材鋼板(特には、フェライト相主体の組織を有する素材鋼板)を加熱し、加熱した素材鋼板を、ダイとパンチからなる金型を用いて、プレス加工すると同時に急冷し、鋼を焼入れするものである。つまり、鋼の焼入れにより、焼入成形品の組織をマルテンサイト相主体の組織として、高強度化するものである。
そのため、発明者らは、焼入成形品の強度を高める効果のあるCの含有量を増加させることを検討した。しかし、単にCの含有量を増加させるだけでは、上記の機械特性を実現できず、また、耐食性についても不十分となる場合があった。
そこで、発明者らは、上記の機械特性と耐食性とを両立すべく、種々の成分組成についてさらに検討を重ねた。
その結果、発明者らは、
・各元素の含有量、特に、Cに加え、Mn、NおよびCrの含有量を所定の範囲に調整し、かつ、
・各元素の含有量の関係を適切に制御する、具体的には、次式(1)および式(2)を同時に満足させる、
420C+470N+23Ni+9Cu+7Mn-11.5Cr-11.5Si-52Al-12Mo+189 ≧ 120 ・・・(1)
900-27Cr-16Ni-300(C+N)-10Si-30(Mn+Mo) ≧ 300 ・・・(2)
ことにより、上記の機械特性と優れた耐食性とを両立できることを知見した。
本発明は、上記の知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.質量%で、
C:0.190~0.500%、
Si:0.01~1.00%、
Mn:0.01~2.00%、
P:0.050%以下、
S:0.020%以下、
Cr:10.5~14.5%、
Al:1.0%以下、
Ni:0.01~2.00%および
N:0.010~0.060%
を含有するとともに、次式(1)および(2)を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
引張強さが750MPa以下である、ステンレス鋼板。
420C+470N+23Ni+9Cu+7Mn-11.5Cr-11.5Si-52Al-12Mo+189 ≧ 120 ・・・(1)
900-27Cr-16Ni-300(C+N)-10Si-30(Mn+Mo) ≧ 300 ・・・(2)
ここで、式中の元素記号はそれぞれ、成分組成における各元素の含有量(質量%)である。また、式中の元素記号について、成分組成に含有されていない元素は0とする。
2.前記成分組成が、さらに、質量%で、
Cu:0.01~2.00%、
Co:0.01~2.00%、
Mo:0.01~2.00%および、
W:0.01~2.00%
のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する、前記1に記載のステンレス鋼板。
3.前記成分組成が、さらに、質量%で、
Ti:0.01~0.30%、
Nb:0.01~0.30%、
V:0.01~0.30%および
Zr:0.01~0.30%
のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する、前記1または2に記載のステンレス鋼板。
4.前記成分組成が、さらに、質量%で、
B:0.0002~0.0050%、
Mg:0.0005~0.0100%、
Ca:0.0003~0.0030%、
Y:0.01~0.20%、
REM(希土類金属):0.01~0.20%、
Sn:0.01~0.50%および
Sb:0.01~0.50%
のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する、前記1~3のいずれかに記載のステンレス鋼板。
5.自動車構造部材用である、前記1~4のいずれかに記載のステンレス鋼板。
6.前記1~4のいずれかに記載のステンレス鋼板を素材とする焼入成形品であって、
引張強さが1780MPa以上であり、かつ、孔食電位が100mV vs SSE以上である、焼入成形品。
7.自動車構造部材である、前記6に記載の焼入成形品。
本発明によれば、引張強さが750MPa以下であり、かつ、ダイクエンチ後に高い強度と優れた耐食性とが得られる、ステンレス鋼板が得られる。
そして、本発明のステンレス鋼板を素材としてダイクエンチを行うことにより、高い強度と優れた耐食性とを有する所定形状の焼入成形品を、高い生産性の下、製造することが可能になる。
本発明を、以下の実施形態に基づき説明する。
まず、本発明の一実施形態に係るステンレス鋼板の成分組成について、説明する。なお、成分組成における単位はいずれも「質量%」であるが、以下、特に断らない限り、単に「%」で示す。
C:0.190~0.500%
Cは、焼入れ時に生成するマルテンサイト相の強度を高めて、ダイクエンチにより得られる焼入成形品(以下、単に焼入成形品ともいう)の強度を高める効果がある。ここで、C含有量が0.190%未満では、この効果が十分には得られない。しかし、C含有量が0.500%を超えると、焼入成形品の耐食性が低下する。そのため、C含有量は0.190~0.500%の範囲とする。C含有量は、好ましくは0.250~0.350%の範囲である。C含有量は、より好ましくは0.300~0.320%の範囲である。
Si:0.01~1.00%
Siは、鋼溶製時に脱酸剤として作用する元素である。また、Siは、焼入れ時に生成するマルテンサイト相の強度を高めて、焼入成形品の強度を高める効果がある。これらの効果を得るため、Si含有量を0.01%以上とする。しかし、Si含有量が1.00%を超えると、焼入成形品の組織においてフェライト相が含まれるようになり、焼入成形品の強度が低下する。そのため、Si含有量は0.01~1.00%の範囲とする。Si含有量は、好ましくは0.20~0.60%の範囲である。
Mn:0.01~2.00%
Mnは、焼入れ時に生成するマルテンサイト相の強度を高めて、焼入成形品の強度を高める効果がある。この効果を得るため、Mn含有量を0.01%以上とする。しかし、Mn含有量が2.00%を超えると、焼入成形品の耐食性が低下する。そのため、Mn含有量は0.01~2.00%の範囲とする。Mn含有量は、好ましくは0.40~0.80%の範囲である。
P:0.050%以下
Pは、鋼を脆化させ、鋼板の製造性を低下させる元素である。そのため、Pは、可能な限り低減することが望ましい。よって、P含有量は0.050%以下とする。P含有量は、好ましくは0.040%以下、より好ましくは0.030%以下である。
S:0.020%以下
Sは、MnS等の硫化物系介在物として鋼中に存在して、耐食性等を低下させる元素である。そのため、Sは、可能な限り低減することが望ましく、特にS含有量が0.020%を超えると、その影響が大きくなる。
よって、S含有量は0.020%以下とする。S含有量は、好ましくは0.015%以下である。
Cr:10.5~14.5%
Crは、耐食性の向上に寄与する元素である。この効果を得るため、Cr含有量を10.5%以上とする。しかし、Cr含有量が14.5%を超えると、焼入成形品の組織においてフェライト相が含まれるようになり、焼入成形品の強度が低下する。そのため、Cr含有量は10.5~14.5%の範囲とする。Cr含有量は、好ましくは11.5~14.0%の範囲である。Cr含有量は、より好ましくは12.5~13.5%の範囲である。
Al:1.0%以下
Alは、Siと同様に脱酸剤として作用する元素である。この効果を得るため、Al含有量を0.001%以上とすることが好ましい。しかし、Al含有量が1.0%を超えると、焼入成形品の組織においてフェライト相が含まれるようになり、焼入成形品の強度が低下する。そのため、Al含有量は1.0%以下とする。Al含有量は好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.01%以下である。
Ni:0.01~2.00%
Niは、高温域、換言すれば、ダイクエンチにおける加熱および保持の際に、フェライト相の生成を抑制し、焼入成形品の組織においてフェライト相を含まれにくくする元素である。つまり、Niは、焼入成形品の強度の向上に寄与する。この効果を得るため、Ni含有量を0.01%以上とする。しかし、Ni含有量が2.00%を超えると、応力腐食割れを起こしやすくなる。そのため、Ni含有量は0.01~2.00%の範囲とする。Ni含有量は、好ましくは0.05~1.00%の範囲である。Ni含有量は、より好ましくは0.10~0.60%の範囲である。
N:0.010~0.060%
Nは、Cと同様に、焼入れ時に生成するマルテンサイト相の強度を高めて、焼入成形品の強度を高める効果がある。ここで、N含有量が0.010%未満では、この効果が十分には得られない。しかし、N含有量が0.060%を超えると、焼入成形品の耐食性の低下を招く。そのため、N含有量は0.010~0.060%の範囲とする。N含有量は、好ましくは0.015~0.040%の範囲である。N含有量は、より好ましくは0.020~0.030%の範囲である。
また、本発明の一実施形態に係るステンレス鋼板では、各元素の含有量を上記の範囲に調整するとともに、次式(1)および式(2)を同時に満足させることが重要である。
420C+470N+23Ni+9Cu+7Mn-11.5Cr-11.5Si-52Al-12Mo+189 ≧ 120 ・・・(1)
900-27Cr-16Ni-300(C+N)-10Si-30(Mn+Mo) ≧ 300 ・・・(2)
ここで、式中の元素記号はそれぞれ、成分組成における各元素の含有量(質量%)である。また、式中の元素記号について、成分組成に含有されていない元素は0とする。
420C+470N+23Ni+9Cu+7Mn-11.5Cr-11.5Si-52Al-12Mo+189 ≧ 120 ・・・(1)
本発明の一実施形態に従うステンレス鋼板を素材としてダイクエンチを施して得た焼入成形品の組織は、マルテンサイト相主体の組織となる。この焼入成形品において、マルテンサイト相を十分量確保し、その強度を高めるためには、
・ダイクエンチにおける加熱および保持の際に、素材鋼板の組織においてオーステナイト相の安定度を高め、かつ、
・ダイクエンチにおける保持後の冷却の際に、マルテンサイト相の安定度を高める(換言すれば、オーステナイト相からマルテンサイト相への変態を促す)、
必要がある。
ここで、420C+470N+23Ni+9Cu+7Mn-11.5Cr-11.5Si-52Al-12Mo+189(以下、式(1)の左辺値ともいう)が120未満であると、ダイクエンチにおける加熱および保持の際に、素材鋼板の組織に十分量のオーステナイト相が生成せず、焼入成形品の強度が不十分になる。そのため、式(1)の左辺値は120以上とする。式(1)の左辺値は、好ましくは160以上、より好ましくは200以上である。式(1)の左辺値の上限については特に限定されるものではないが、300以下とすることが好ましい。
900-27Cr-16Ni-300(C+N)-10Si-30(Mn+Mo) ≧ 300 ・・・(2)
上述したように、本発明の一実施形態に従うステンレス鋼板を素材としてダイクエンチを施して得た焼入成形品の組織は、マルテンサイト相主体の組織となる。この焼入成形品において、マルテンサイト相を十分量確保し、その強度を高めるためには、
・ダイクエンチにおける加熱および保持の際に、素材鋼板の組織においてオーステナイト相の安定度を高め、かつ、
・ダイクエンチにおける保持後の冷却の際に、マルテンサイト相の安定度を高める(換言すれば、オーステナイト相からマルテンサイト相への変態を促す)、
必要がある。
ここで、900-27Cr-16Ni-300(C+N)-10Si-30(Mn+Mo) (以下、式(2)の左辺値ともいう)が300未満であると、ダイクエンチにおける保持後の冷却の際に十分量のマルテンサイト相が生成せず、焼入成形品の強度が不十分になる。そのため、式(2)の左辺値は300以上とする。式(2)の左辺値は、好ましくは370以上、より好ましくは440以上である。式(2)の左辺値の上限については特に限定されるものではないが、500以下とすることが好ましい。
以上、本発明の一実施形態に係るステンレス鋼板の基本成分組成について説明したが、さらに、
Cu:0.01~2.00%、Co:0.01~2.00%、Mo:0.01~2.00%およびW:0.01~2.00%のうちから選ばれた1種または2種以上、
Ti:0.01~0.30%、Nb:0.01~0.30%、V:0.01~0.30%およびZr:0.01~0.30%のうちから選ばれた1種または2種以上
ならびに/または、
B:0.0002~0.0050%、Mg:0.0005~0.0100%、Ca:0.0003~0.0030%、Y:0.01~0.20%、REM(希土類金属):0.01~0.20%、Sn:0.01~0.50%およびSb:0.01~0.50%のうちから選ばれた1種または2種以上、
を含有させることができる。
Cu:0.01~2.00%
Cuは、焼入成形品の強度を高める効果がある。この効果は、Cu含有量が0.01%以上で得られる。しかし、Cu含有量が2.00%を超えると、焼入成形品の耐食性が低下する。そのため、Cuを含有させる場合、Cu含有量は0.01~2.00%の範囲とする。Cu含有量は、好ましくは0.10~0.50%の範囲である。Cu含有量は、より好ましくは0.10~0.20%の範囲である。
Co:0.01~2.00%
Coは、焼入成形品の強度を高める効果がある。この効果は、Co含有量が0.01%以上で得られる。しかし、Co含有量が2.00%を超えると、焼入成形品の靱性の低下を招く。そのため、Coを含有させる場合、Co含有量は0.01~2.00%の範囲とする。Co含有量は、好ましくは0.10~0.50%の範囲である。Co含有量は、より好ましくは0.10~0.20%の範囲である。
Mo:0.01~2.00%
Moは、焼入成形品の耐食性を向上させる元素である。この効果は、Mo含有量が0.01%以上で得られる。しかし、Mo含有量が2.00%を超えると、焼入成形品の靱性の低下を招く。そのため、Moを含有させる場合、Mo含有量は0.01~2.00%の範囲とする。Mo含有量は、好ましくは0.10~0.80%の範囲である。Mo含有量は、より好ましくは0.50~0.80%の範囲である。Mo含有量は、さらに好ましくは0.50~0.65%の範囲である。
W:0.01~2.00%
Wは、焼入成形品の耐食性を向上させる元素である。この効果は、W含有量が0.01%以上で得られる。しかし、W含有量が2.00%を超えると、焼入成形品の靱性の低下を招く。そのため、Wを含有させる場合、W含有量は0.01~2.00%の範囲とする。W含有量は、好ましくは0.10~0.50%の範囲である。W含有量は、より好ましくは0.10~0.20%の範囲である。
Ti:0.01~0.30%
Tiは、CrよりもCおよびNとの親和力が高く、CおよびNと微細な炭窒化物を形成する元素である。そのため、Tiは、焼入れによる鋭敏化を防止して、焼入成形品の耐食性を向上させる効果がある。この効果は、Ti含有量が0.01%以上で得られる。しかし、Ti含有量が0.30%を超えると、焼入成形品の靭性が低下する。そのため、Tiを含有させる場合、Ti含有量は0.01~0.30%の範囲とする。Ti含有量は、好ましくは0.02~0.20%の範囲である。Ti含有量は、より好ましくは0.03~0.10%の範囲である。
Nb:0.01~0.30%
Nbは、Tiと同様に、焼入成形品の耐食性を向上させる効果がある。この効果は、Nb含有量が0.01%以上で得られる。しかし、Nb含有量が0.30%を超えると、金属間化合物の析出に起因して、焼入成形品の靭性が低下する。そのため、Nbを含有させる場合、Nb含有量は0.01~0.30%の範囲とする。Nb含有量は、好ましくは0.02~0.20%の範囲である。Nb含有量は、より好ましくは0.03~0.10%の範囲である。
V:0.01~0.30%
Vは、TiやNbと同様に、焼入成形品の耐食性を向上させる効果がある。この効果は、V含有量が0.01%以上で得られる。しかし、V含有量が0.30%を超えると、焼入成形品の靭性が低下する。そのため、Vを含有させる場合、V含有量は0.01~0.30%の範囲とする。V含有量は、好ましくは0.02~0.20%の範囲である。V含有量は、より好ましくは0.03~0.10%の範囲である。
Zr:0.01~0.30%
Zrは、TiやNbと同様に、焼入成形品の耐食性を向上させる効果がある。この効果は、Zr含有量が0.001%以上で得られる。しかし、Zr含有量が0.30%を超えると、金属間化合物の析出に起因して、焼入成形品の靭性が低下する。そのため、Zrを含有させる場合、Zr含有量は0.01~0.30%の範囲とする。Zr含有量は、好ましくは0.02~0.20%の範囲である。Zr含有量は、より好ましくは0.03~0.10%の範囲である。
B:0.0002~0.0050%
Bは、熱間圧延時の鋼板の端部割れを防止し、鋼板の生産性を向上させる元素である。この効果は、B含有量が0.0002%以上で得られる。しかし、B含有量が0.0050%を超えると、焼入成形品の靭性が低下する。そのため、Bを含有させる場合、B含有量は0.0002~0.0050%の範囲とする。B含有量は、好ましくは0.0002~0.0030%の範囲である。B含有量は、より好ましくは0.0005~0.0020%の範囲である。
Mg:0.0005~0.0100%
Mgは、溶鋼中でAlとともにMg酸化物を形成し、脱酸剤として作用する。この効果は、Mg含有量が0.0005%以上で得られる。一方、Mg含有量が0.0100%を超えると、焼入成形品の靭性が低下する。そのため、Mgを含有する場合、Mg含有量は0.0005~0.0100%とする。Mg含有量は、好ましくは0.0010~0.0030%の範囲である。
Ca:0.0003~0.0030%
Caは、溶鋼中で酸化物を形成し、脱酸剤として作用する。この効果は、Ca含有量が0.0003%以上で得られる。しかし、Ca含有量が0.0030%を超えると、焼入成形品の靭性が低下する。そのため、Caを含有させる場合、Ca含有量は0.0003~0.0030%の範囲とする。Ca含有量は、好ましくは0.0005~0.0025%の範囲である。Ca含有量は、より好ましくは0.0007~0.0015%の範囲である。
Y:0.01~0.20%
Yは、熱間圧延時の鋼板の端部割れを防止し、鋼板の生産性を向上させる元素である。この効果は、Y含有量が0.01%以上で得られる。しかし、Y含有量が0.20%を超えると、焼入成形品の靱性が低下する。そのため、Yを含有させる場合、Y含有量は0.01~0.20%の範囲とする。Y含有量は、好ましくは0.02~0.05%の範囲である。
REM:0.01~0.20%
REM(Rare Earth Metals:希土類金属)は、熱間圧延時の鋼板の端部割れを防止し、鋼板の生産性を向上させる元素である。この効果は、REM含有量が0.01%以上で得られる。しかし、REM含有量が0.20%を超えると、焼入成形品の靱性が低下する。そのため、REMを含有させる場合、REM含有量は0.01~0.20%の範囲とする。REM含有量は、好ましくは0.02~0.05%の範囲である。
Sn:0.01~0.50%
Snは、熱間圧延時の鋼板の肌荒れを防止し、鋼板の生産性を向上させる元素である。この効果は、Sn含有量が0.01%以上で得られる。しかし、Sn含有量が0.50%を超えると、焼入れ時に焼割れが生じやすくなって、所定の製品を得ることが困難となる。そのため、Snを含有させる場合、Sn含有量は0.01~0.50%の範囲とする。Sn含有量は、好ましくは0.03~0.20%の範囲である。
Sb:0.01~0.50%
Sbは、熱間圧延時の鋼板の肌荒れを防止し、鋼板の生産性を向上させる元素である。この効果は、Sb含有量が0.01%以上で得られる。しかし、Sb含有量が0.50%を超えると、焼入れ時に焼割れが生じやすくなって、所定の製品を得ることが困難となる。そのため、Sbを含有させる場合、Sb含有量は0.01~0.50%の範囲とする。Sb含有量は、好ましくは0.03~0.20%の範囲である。
上記以外の成分の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
次に、本発明の一実施形態に係るステンレス鋼板の組織について、説明する。
本発明の一実施形態に係るステンレス鋼板の組織は、フェライト主体の組織により構成される。これにより、上記の成分組成とした場合にも、引張強さを750MPa以下とすることが可能となる。
ここで、フェライト主体の組織とは、フェライト相が体積率で80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上である金属組織である。フェライト相の体積率が100%であってもよい。フェライト相以外の残部組織としては、マルテンサイト相やオーステナイト相、析出物が挙げられる。残部組織の体積率は、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下、よりさらに好ましくは2%以下である。残部組織の体積率は0%であってもよい。
また、フェライト相やマルテンサイト相などといった各相の体積率は、以下のようにして求める。
すなわち、供試材となる鋼板の板幅中央部から組織観察用の試験片を採取する。ついで、試験片の圧延方向断面を鏡面研磨後、ピクリン酸塩酸水溶液を用いてエッチングを行い、倍率:500倍の条件でSEM法およびSEM-EBSD法を用いて断面組織の二次電子像および結晶方位マップを10視野取得する。取得した二次電子像および結晶方位マップにおいて、組織形状と結晶構造から各相を区別する(例えば、マルテンサイト相は、フェライト相と異なり、粒内にパケット構造を有する。また、オーステナイト相は、フェライト相やマルテンサイト相とは結晶構造が異なる。)。ついで、画像処理により、視野ごとに各相の面積率を算出する。ついで、視野ごとに得られた各相の面積率の算術平均値を算出し、その値を各相の体積率とする。
なお、本発明の一実施形態に係るステンレス鋼板の厚みは特に限定されるものではないが、ダイクエンチ実施時の鋼板の焼入性や加工性の観点から、0.5~4.0mmとすることが好適である。好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.4mm以上である。また、好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.0mm以下である。
また、本発明の一実施形態に係るステンレス鋼板は、引張強さが750MPa以下であり、かつ、ダイクエンチ後には高い強度、特には、ダイクエンチ後の予測引張強さが1780MPa以上となる機械特性を有する。
これにより、ダイクエンチ前の段階では加工性が担保される一方、ダイクエンチにより得られる焼入成形品では、高い強度を得ることが可能となる。
次に、本発明の一実施形態に係るステンレス鋼板の好適な製造方法について説明する。
まず、上記の成分組成を有する被焼鈍処理板を準備する。
例えば、一態様としては、転炉、電気炉、真空溶解炉等の溶解炉で溶鋼を溶製し、上記の成分組成に調整した溶鋼を得る。ついで、該溶鋼を、連続鋳造法または造塊-分塊法等により、鋼素材(鋼スラブ)とする。ついで、鋼素材を、1150~1350℃に加熱し、該温度域で30分~24時間保持したのち、または、加熱することなくそのまま、熱間圧延を施して熱延鋼板とする。そして、この熱延鋼板を、被焼鈍処理板とする。
また、別態様としては、上記のようにして得た熱延鋼板に、さらに、熱延板焼鈍を施したのち、冷間圧延を施して、冷延鋼板とする。そして、この冷延鋼板を、被焼鈍処理板とする。
なお、上記の熱延板焼鈍は、例えば、後述する最終焼鈍と同様の条件で行う。また、上記の熱間圧延および冷間圧延の条件については特に限定されず、常法に従えばよい。例えば、冷間圧延については、タンデムミルおよびクラスターミルのいずれを用いても良い。また、冷間圧延率は、特に限定されるものではないが、鋼板の加工性や形状矯正の観点から、50%以上とすることが好ましい。
ついで、上記のようにして準備した被焼鈍処理板に、650~800℃の温度範囲で5秒~24時間保持する最終焼鈍を施す。
なお、被焼鈍処理板が熱延鋼板の場合には、最終焼鈍は熱延板焼鈍に相当する。また、被焼鈍処理板が冷延鋼板の場合には、最終焼鈍は冷延板焼鈍に相当する。ここで、最終焼鈍が冷延板焼鈍に相当する場合、途中工程の熱延板焼鈍条件は特に限定されず、常法に従えばよい。
最終焼鈍における保持温度(以下、最終焼鈍温度ともいう):650~800℃
最終焼鈍温度が650℃未満になると、鋼板の組織が軟質化されず、鋼板の引張強さを750MPa以下とすることができなくなる。一方、最終焼鈍温度が800℃を超えると、最終焼鈍時にオーステナイト相が生成する。この場合に、保持後の冷却速度が速くなると、焼鈍時に生成するオーステナイト相がマルテンサイト相へと変態し、鋼板が硬質化する。そのため、最終焼鈍温度は650~800℃とする。最終焼鈍温度は、好ましくは700~750℃である。
なお、最終焼鈍温度は、保持中、一定であってもよく、また、上記の温度範囲内にあれば、保持中、常に一定としなくてもよい。
最終焼鈍における保持温度(以下、最終焼鈍時間ともいう):5秒~24時間
最終焼鈍時間が5秒未満の場合、鋼板の組織が軟質化されず、鋼板の引張強さを750MPa以下とすることができなくなる。一方、最終焼鈍時間が24時間を超えると、結晶粒径や炭化物サイズが過度に増大して鋼板が脆化し、鋼板の製造性や加工性が低下する。そのため、最終焼鈍時間は5秒~24時間とする。最終焼鈍時間は、好ましくは15秒~10時間である。最終焼鈍時間は、より好ましくは1分間~30分間である。
また、最終焼鈍後に得られた鋼板(以下、最終焼鈍鋼板ともいう)に、任意に、酸洗処理や表面研磨等を施して脱スケールを行ってもよい。また、任意に、スキンパス圧延を行ってもよい。また、最終焼鈍を、1体積%以上の水素ガスを含有する還元性雰囲気で行うことにより、脱スケール処理を省略することができる。
このようにして、本発明の一実施形態に従うステンレス鋼板を製造することができる。なお、上記以外の条件については特に限定されず、常法に従えばよい。
次に、本発明の一実施形態に従う焼入成形品について、説明する。
本発明の一実施形態に従う焼入成形品は、上記のステンレス鋼板を素材とする焼入成形品であり、引張強さが1780MPa以上であり、かつ、孔食電位が100mV vs SSE以上である。
また、本発明の一実施形態に従う焼入成形品は、上記のステンレス鋼板と同じ成分組成を有するとともに、マルテンサイト主体の組織により構成される。
ここで、マルテンサイト主体の組織とは、マルテンサイト相が体積率で80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上である金属組織である。マルテンサイト相の体積率が100%であってもよい。マルテンサイト相以外の残部組織としては、フェライト相やオーステナイト相、析出物が挙げられる。残部組織の体積率は、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下、よりさらに好ましくは2%以下である。残部組織の体積率は0%であってもよい。
また、各相の体積率は、供試材となる焼入成形品の任意の位置から組織観察用の試験片を採取して、上述した方法と同様にして測定すればよい。
なお、本発明の一実施形態に従う焼入成形品は、例えば、ピラーやサイドシル等に代表される自動車構造部材である。
次に、本発明の一実施形態に従う焼入成形品の好適な製造方法について、説明する。
本発明の一実施形態に従う焼入成形品の好適な製造方法は、上記した本発明の一実施形態に従うステンレス鋼板を980℃以上1100℃以下の温度域へと加熱し、
該ステンレス鋼板を、金型により、プレス加工すると同時に冷却する、というものである。
上記以外のダイクエンチ条件は特に限定されず、常法に従えばよい。
例えば、本発明の一実施形態に従うステンレス鋼板に任意に打ち抜き加工を施して所望の形状へと加工する。ついで、該ステンレス鋼板を、電気炉等を用いて980℃以上1100℃以下の温度域へと加熱し、該温度域で、好適には20秒以上保持する。ここで、加熱温度が980℃未満になると、鋼中の炭化物が十分に固溶せず、鋼の強度を向上させる固溶Cの量が鋼中において不十分となる。そのため、焼入成形品の強度が十分に得られなくなる場合がある。一方、加熱温度が1100℃を超えると、酸化スケールが厚くなって、その後の脱スケール処理が困難となる。
ついで、該ステンレス鋼板を電気炉等から取り出し、ダイとパンチからなる金型を有する加工装置へと搬送する。そして、該加工装置によって、該ステンレス鋼板を金型で挟み込み、プレス加工すると同時に、該金型による抜熱により、該ステンレス鋼板を急冷して、焼入成形品を得る。この際、冷却過程における鋭敏化に起因した耐食性劣化を回避するために、プレス開始温度は800℃以上とすることが好ましい。
また、ダイクエンチ後に、200℃以上500℃以下の温度域に保持する焼戻しを行って、剛性等の特性を調整してもよい。
このようにして、本発明の一実施形態に従う焼入成形品を製造することができる。なお、上記以外の条件については特に限定されず、常法に従えばよい。例えば、成形下死点での保持時間は、1~60秒とすればよい。
・実施例1
表1に示した成分組成を有する鋼(残部はFeおよび不可避的不純物)を、100kg鋼塊に溶製した後、該鋼塊を1200℃に加熱し、ついで、熱間圧延を行って、板厚:2.9mmの熱延鋼板とした。この熱延鋼板に対し、表2に示す種々の条件で熱延板焼鈍を行い、表裏面の研削によりスケールを除去して、熱延焼鈍鋼板を得た。
また、試験No.1-4~1-10および1-14~1-16では、得られた熱延焼鈍鋼板に、さらに、冷間圧延を行って、板厚:1.6mmの冷延鋼板とした。この冷延鋼板に対し、表2に示す条件で種々の冷延板焼鈍を行い、表裏面の研削によりスケールを除去して、冷延焼鈍鋼板を得た。
上記のようにして得た熱延焼鈍鋼板または冷延焼鈍鋼板を用いて、上述の方法により、(イ)引張強さを測定し、以下の基準により評価した。評価結果を表2に併記する。
(イ)引張強さ
〇(合格):750MPa以下
×(不合格):750MPa超
また、上記のようにして得た熱延焼鈍鋼板または冷延焼鈍鋼板に、ダイクエンチを模擬した熱処理を施したのち、上述の方法により、(ロ)ダイクエンチ後の予測引張強さ、および、(ハ)ダイクエンチ後の予測耐食性(孔食電位)を測定し、以下の基準により評価した。評価結果を表2に併記する。
なお、ダイクエンチを模擬した熱処理は、不活性ガス吹付による速度可変の冷却機構を有する管状炉を用いて行った。
(ロ)ダイクエンチ後の予測引張強さ
〇(合格):1780MPa以上
×(不合格):1780MPa未満
(ハ)ダイクエンチ後の予測耐食性
〇(合格):孔食電位が100mV vs SSE以上
×(不合格):孔食電位が100mV vs SSE未満
さらに、上述した方法により、(ニ)ダイクエンチを模擬した熱処理前の鋼板組織((熱延焼鈍鋼板または冷延焼鈍鋼板の鋼組織)、および、(ホ)ダイクエンチを模擬した熱処理後の鋼板組織(予測される焼入成形品の鋼組織)の同定(各相の体積率の算出)を行った。結果を表2に併記する。
なお、表2中、(ニ)および(ホ)の欄内の記号は、それぞれ以下を意味する。
(ニ)ダイクエンチを模擬した熱処理前の鋼板組織
F:フェライト相の体積率が80%以上
F+M:フェライト相の体積率が50%以上80%未満であり、フェライト相以外の残部組織の50%以上がマルテンサイト相である
F+A:フェライト相の体積率が50%以上80%未満であり、フェライト相以外の残部組織の50%以上がオーステナイト相である
(ホ)ダイクエンチを模擬した熱処理後の鋼板組織
M:マルテンサイト相の体積率が80%以上
M+F:マルテンサイト相の体積率が50%以上80%未満であり、マルテンサイト相以外の残部組織の50%以上がフェライト相である
M+A:マルテンサイト相の体積率が50%以上80%未満であり、マルテンサイト相以外の残部組織の50%以上がオーステナイト相である
Figure 0007298552000001
Figure 0007298552000002
表2に示したように、発明例ではいずれも、上記(イ)~(ハ)の要求特性を同時に満足していた。
一方、試験No.1-11および1-14の比較例は、最終焼鈍時間が不十分であるため、引張強さが750MPa超となり、上記(イ)~(ハ)の要求特性を同時に満足させることができなった。
試験No.1-12および1-15の比較例は、最終焼鈍温度が適正範囲を超えたために、引張強さが750MPa超となり、上記(イ)~(ハ)の要求特性を同時に満足させることができなった。
試験No.1-13および1-16の比較例は、最終焼鈍温度が適正範囲に満たないために、引張強さが750MPa超となり、上記(イ)~(ハ)の要求特性を同時に満足させることができなった。
・実施例2
表3に示した成分組成を有する鋼(残部はFeおよび不可避的不純物)を、100kg鋼塊に溶製した後、実施例1の試験No.1-5と同じ条件にて、ステンレス鋼板(冷延焼鈍鋼板)を作製した。
かくして得られたステンレス鋼板を用いて、上述の方法により、(イ)引張強さを測定し、実施例1と同じ基準により評価した。評価結果を表3に併記する。
また、上記のようにして得たステンレス鋼板に、ダイクエンチを模擬した熱処理を施したのち、上述の方法により、(ロ)ダイクエンチ後の予測引張強さ、および、(ハ)ダイクエンチ後の予測耐食性(孔食電位)を測定し、実施例1と同じ基準により評価した。評価結果を表3に併記する。
また、上述した方法により、(ニ)ダイクエンチを模擬した熱処理前の鋼板組織(冷延焼鈍鋼板の鋼組織)、および、(ホ)ダイクエンチを模擬した熱処理後の鋼板組織(予測される焼入成形品の鋼組織)の同定(各相の体積率の算出)を行った。結果を表3に併記する。なお、表3中、(ニ)および(ホ)の欄内の記号は、実施例1と同じ意味である。
Figure 0007298552000003
表3に示したように、発明例ではいずれも、上記(イ)~(ハ)の要求特性を同時に満足していた。
一方、試験No.2-26、2-29の比較例は、C含有量およびN含有量がそれぞれ適正範囲に満たないため、ダイクエンチ後の予測引張強さが1780MPa未満となり、上記(イ)~(ハ)の要求特性を同時に満足させることができなった。
試験No.2-27の比較例は、C含有量が適正範囲を超えるため、十分な耐食性が得られず、上記(イ)~(ハ)の要求特性を同時に満足させることができなった。
試験No.2-28の比較例は、Cr含有量が適正範囲に満たないため、十分な耐食性が得られず、上記(イ)~(ハ)の要求特性を同時に満足させることができなった。
試験No.2-30比較例は、式(1)を満足していないため、ダイクエンチ後の予測引張強さが1780MPa未満となり、上記(イ)~(ハ)の要求特性を同時に満足させることができなった。
試験No.2-31の比較例は、式(2)を満足していないため、ダイクエンチ後の予測引張強さが1780MPa未満となり、上記(イ)~(ハ)の要求特性を同時に満足させることができなった。
本発明のステンレス鋼板は、ダイクエンチを用いて製造されるピラーやサイドシル等に代表される自動車構造部材に加え、包丁や医療用メス、ハサミ等の刃物、ピンセット等の精密工具ならびに食事用のナイフやカトラリー等への適用に好適である。また、焼入れ温度を調整することで強度を低い側へと調整することができるため、上述した用途等において、比較的低強度の鋼の要求にも応えることができる。

Claims (9)

  1. 質量%で、
    C:0.190~0.500%、
    Si:0.01~1.00%、
    Mn:0.01~2.00%、
    P:0.050%以下、
    S:0.020%以下、
    Cr:10.5~14.5%、
    Al:1.0%以下、
    Ni:0.01~2.00%および
    N:0.010~0.060%
    を含有し、
    さらに
    u:0.01~2.00%、
    Co:0.01~2.00%、
    Mo:0.01~0.65%および、
    W:0.01~0.50
    のうちから選ばれた1種または2種以上を含有するとともに、次式(1)および(2)を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
    引張強さが750MPa以下である、ステンレス鋼板。
    420C+470N+23Ni+9Cu+7Mn-11.5Cr-11.5Si-52Al-12Mo+189 ≧ 120 ・・・(1)
    900-27Cr-16Ni-300(C+N)-10Si-30(Mn+Mo) ≧ 300 ・・・(2)
    ここで、式中の元素記号はそれぞれ、成分組成における各元素の含有量(質量%)である。また、式中の元素記号について、成分組成に含有されていない元素は0とする。
  2. 前記成分組成が、さらに、質量%で、
    Ti:0.09~0.30%および
    Zr:0.01~0.30%
    のうちから選ばれた1種または2種を含有する、請求項1に記載のステンレス鋼板。
  3. 前記成分組成が、さらに、質量%で、
    B:0.0002~0.0050%、
    Mg:0.0005~0.0100%、
    Ca:0.0003~0.0030%、
    Y:0.01~0.20%、
    REM(希土類金属):0.01~0.20%、
    Sn:0.01~0.50%および
    Sb:0.01~0.50%
    のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する、請求項1または2に記載のステンレス鋼板。
  4. 自動車構造部材用である、請求項1~のいずれかに記載のステンレス鋼板。
  5. テンレス鋼板を素材とする焼入成形品であって、
    引張強さが1780MPa以上であり、かつ、孔食電位が100mV vs SSE以上であり、
    前記ステンレス鋼板は、
    質量%で、
    C:0.190~0.500%、
    Si:0.01~1.00%、
    Mn:0.01~2.00%、
    P:0.050%以下、
    S:0.020%以下、
    Cr:10.5~14.5%、
    Al:1.0%以下、
    Ni:0.01~2.00%および
    N:0.010~0.060%
    を含有するとともに、次式(1)および(2)を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
    前記ステンレス鋼板の引張強さが750MPa以下である、焼入成形品。
    420C+470N+23Ni+9Cu+7Mn-11.5Cr-11.5Si-52Al-12Mo+189 ≧ 120 ・・・(1)
    900-27Cr-16Ni-300(C+N)-10Si-30(Mn+Mo) ≧ 300 ・・・(2)
    ここで、式中の元素記号はそれぞれ、成分組成における各元素の含有量(質量%)である。また、式中の元素記号について、成分組成に含有されていない元素は0とする。
  6. 前記成分組成が、さらに、質量%で、
    Cu:0.01~2.00%、
    Co:0.01~2.00%、
    Mo:0.01~0.65%および、
    W:0.01~0.50%
    のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する、請求項5に記載の焼入成形品。
  7. 前記成分組成が、さらに、質量%で、
    Ti:0.01~0.30%、
    Nb:0.01~0.30%、
    V:0.01~0.30%および
    Zr:0.01~0.30%
    のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する、請求項5または6に記載の焼入成形品。
  8. 前記成分組成が、さらに、質量%で、
    B:0.0002~0.0050%、
    Mg:0.0005~0.0100%、
    Ca:0.0003~0.0030%、
    Y:0.01~0.20%、
    REM(希土類金属):0.01~0.20%、
    Sn:0.01~0.50%および
    Sb:0.01~0.50%
    のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する、請求項5~7のいずれかに記載の焼入成形品。
  9. 自動車構造部材である、請求項5~8のいずれかに記載の焼入成形品。
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