JP7298519B2 - 温感拡張装置 - Google Patents
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1.温感拡張装置
図1は、第1の実施形態の温感拡張装置100の概略構成を示す側面図である。図2は、第1の実施形態の温感拡張装置100の概略構成を示す背面図である。図1および図2に示すように、温感拡張装置100は、人の身体を支持することができる。
2-1.制御系
図3は、第1の実施形態の温感拡張装置100の制御系を示すブロック図である。図3に示すように、制御部190は、変温部H1と加振部V1とを制御する。変温部H1は、人の皮膚表面の変温領域HR1の温度を変化させるためのものである。加振部V1は、人の皮膚表面の加振領域VR1、VR2に振動を与えるためのものである。ここで、変温領域HR1は、加振領域と重ならない領域である。
制御部190は、変温領域HR1の温度を変温させる第1制御と、加振領域VR1、VR2に振動を与える第2制御と、を実行可能である。制御部190は、第2制御を第1制御に連動して実行する。第1制御は、第1変温制御である。第2制御は、第1振動制御である。第1制御は、変温領域HR1の温度を上昇させる。
大腿部加熱部110a、110bは、パルス状に人の各部を加熱する。変温部H1は、変温領域HR1の変温速度の絶対値を0.1℃/秒以上10℃/秒以下で温度変化させる。制御部190は、変温領域HR1の変温速度の絶対値を0.1℃/sec以上10℃/sec以下の範囲内とする第1制御を行う。好ましくは、0.2℃/秒以上9.9℃/秒以下である。
一方、加振部は、加振領域VR1、VR2から最も近い第1の骨に振動を伝導する。第1の骨として、例えば、趾節骨や踵骨が挙げられる。また、加振部は、第1の骨に隣接する第2の骨に骨伝導により振動を伝導する。第2の骨として、例えば、脛骨や腓骨が挙げられる。もちろん、骨伝導により、さらに離れた骨にも振動が伝わる可能性がある。そして、骨に伝わった振動が、周囲の筋肉等にも伝わる。これにより、振動が温感領域SR1に伝わり、変温部による変温領域HR1への熱刺激と相まって、温感領域SR1に温感を生じさせる。
図1に示すように、温感拡張装置100においては、大腿部加熱部110a、110bが変温領域HR1を変温し、足裏振動部120a、120bが加振領域VR1を振動させるとともに臀部振動部130a、130bが加振領域VR2を振動させる。この振動は、皮膚表面の加振領域VR1、VR2から人体の骨に伝わり、骨伝導によりその他の骨に伝わる。これにより、人は、温感領域SR1に温感を感じる。温感領域SR1は、例えば、ふくらはぎのあたりである。ふくらはぎには熱も振動も直接与えていないにもかかわらず、人はふくらはぎに局所的な温感を感じる。なお、温感領域SR1には、個人差がある。
人に触刺激と温度刺激とを同時に異なる箇所に提示した場合に、触刺激を提示した箇所に温感を生じさせる現象をThermal Referralという。Thermal Referralは、実際には熱を与えていない領域に温感を生じさせる錯覚現象の一種である。
7-1.変温部
変温部は、必ずしも大腿部加熱部110a、110bに限らない。変温部は、人体のその他の箇所を加熱してもよい。つまり、変温領域は、図1の変温領域HR1に限らない。また、変温部は、加熱部以外に人の皮膚表面の温度を変化させるものであれば、その他のものを用いてよい。
加振部は、必ずしも足裏振動部120a、120bと、臀部振動部130a、130bとに限らない。加振部は、人体のその他の箇所に振動を与えてもよい。つまり、加振領域は、図1の加振領域VR1、VR2に限らない。ただし、加振領域は、骨に近い皮膚表面であることが好ましい。つまり、加振部V1は、人の骨の近傍に配置されているとよい。標準体重の人を対象として、加振部から骨までの距離は、例えば、1mm以上1cm以下である。好ましくは、5mm以下である。
温感領域は、変温部H1および加振部V1の位置等により変化する。そのため、温感領域は、図1の温感領域SR1に限らない。
変温部H1および加振部V1は、種々の組み合わせが可能である。表1は、変温部H1および加振部V1の箇所を例示する表である。表2は、変温部H1および加振部V1の連動性の組み合わせを例示する表である。
人体部位 骨 変温部 加振部
肩 上腕骨 - Va
背部 肩甲骨 Hb Vb
腰 腸骨 - Vi
臀部 坐骨 Hh Vh
大腿部 大腿骨 Ht -
膝 膝蓋骨 Hk Vk
下腿部 脛骨 Hc -
足部 踵骨 - Vf
Va Vb Vi Vh Vk Vf
Hb ○ ○ - - - -
Hh - - ○ ○ ○ ○
Ht - - ○ ○ ○ ○
Hk - - ○ ○ ○ ○
Hc - - ○ ○ ○ ○
○:連動あり -:連動なし
変温部は、人の上半身の一部と接触する位置に設けられており、加振部は、上腕骨と尺骨と肩甲骨との少なくとも一つの近傍と接触する位置に設けられているとよい。上半身に温感を感じさせることができるからである。
変温部は、人の下半身の一部と接触する位置に設けられており、加振部は、腸骨と坐骨と膝蓋骨と踵骨との少なくとも一つの近傍と接触する位置に設けられているとよい。下半身に温感を感じさせることができるからである。
加振部V1が加振領域VR1、VR2に与える振動は、変温部H1が変温領域HR1に温度変化を与える周期Tと同期しているとよい。
温感拡張装置100は、調整部を有するとよい。ユーザーが調整部により出力を調整することにより、ユーザーが変温部H1および加振部V1の出力を調整できる。人により快適な温度は異なるため、バス等の乗り合い車両の内部において、各人がそれぞれにとって好ましい温感を得ることができる。
第2制御の開始タイミングは、第1制御の終了タイミングより後であってもよい。このとき、加熱期間と振動期間とは重なっていない。ただし、加熱期間の終了後から振動期間の開始までの期間は短いほうがよい。そして、振動期間の開始時刻において、皮膚温度が上昇していることが好ましい。例えば、第2制御の開始タイミングは、第1制御の開始タイミング以後のタイミングであり、かつ、第1制御の終了タイミングから3秒経過した後の時刻より前のタイミングであってもよい。好ましくは、第1制御の終了タイミングから2秒経過した後の時刻より前のタイミングである。第2制御は、第1制御がオン状態の終了後まもない時刻に開始されてもよい。
上記の変形例を自由に組み合わせてもよい。
1.実験方法
1-1.実験装置
図1および図2に示す温感拡張装置100に類する実験装置を用いた。ただし、この実験装置においては、変温部および振動部は左半身に接触する箇所にのみ配置されている。また、変温部は左大腿部の裏を加熱し、振動部は左足裏(左足底)に振動を与える。変温部は左臀部を直接加熱しない。
被験者は、4名の成人男性であった。室温は27.1±0.5℃であった。湿度は49.1±7.9%であった。被験者はフリースズボンを着用し、下着、靴下、靴は被験者自身のものを使用した。また、被験者は中腰姿勢で実験を行った。
熱傷の評価法であるLund&Browderの法則を参考にして、温感面積の定量化を図った。そのために、次のStepを実行した。
Swhole = 72.46 × H0.725 × W0.425 …(1)
Step2 Lund&Browderの法則から全身の皮膚表面積Swholeに占める各部位の割合ρを求めるとともに、各部位の皮膚面積Sseg(cm2 )を求める。
Sseg = Swhole × ρ …(2)
Step3 部位の名称と百分率pn (%)を用いて被験者自身に温感が生じた範囲を申告させる。
Step4 申告された内容から温感面積Ssensを求める。
Ssens = Σn(Ssegn × pn ) …(3)
Step5 足裏の部位面積Ssoleを分母にして温感の拡大率M(%)を算出する。
M = 100 × Ssens / Ssole …(4)
図5は、実験結果を示す表である。図5には、被験者A、B、C、Dについて実験データが示されている。高比良の式を用いることにより、各被験者の身長および体重から、全身の表面積が算出されている。Lund&Browderの法則を用いることにより、全身の表面積から、左大腿部等の各部位の面積が算出されている。
このように、変温領域を加熱し、加振領域に振動を与えることにより、加振領域とは異なる温感領域に温感を感じさせることができた。温感領域には多少の個人差がある。このとき、足裏に与えられた振動は、骨伝導により脛骨または腓骨を伝わり、その先に伝達されたと考えられる。これにより、直接振動を与えていない領域(温感領域)に温感を生じさせたと考えられる。
第1の態様における温感拡張装置は、人の皮膚表面の変温領域の温度を変化させるための変温部と、人の皮膚表面の加振領域に振動を与える加振部と、変温部と加振部とを制御する制御部と、を有する。加振領域は、変温領域と重ならない領域である。変温部および加振部は、人の身体の少なくとも一部または衣類等と接触するためのものである。制御部は、変温領域の温度を変温させる第1制御と、加振領域に振動を与える第2制御と、を実行可能である。制御部は、第2制御を第1制御に連動して実行する。
110a、110b…大腿部加熱部
120a、120b…足裏振動部
130a、130b…臀部振動部
170…支持部
180…床
190…制御部
Claims (8)
- 人体のある温感領域において人が感じる温度を、その温感領域の現実の温度以上とする温感拡張装置において、
人体を支持する支持部と、
人の皮膚表面の変温領域に熱を加えてその変温領域の温度を変化させる変温部と、
前記変温領域と異なる皮膚表面の領域である加振領域に存在する、前記加振領域から最も近い第1の骨に骨伝導可能な振動を与えて、前記加振領域以外の領域に骨伝導により振動を伝搬させる加振部と、
前記変温部と前記加振部とを制御する制御部と、
を有し、
前記変温部および前記加振部は、人の身体の少なくとも一部または衣類等と接触しており、
前記制御部は、前記加振部を制御して前記加振領域に振動を与える第2制御を、前記変温部を制御して前記変温領域の温度を変温させる第1制御に連動させる制御部であり、
人の上半身に前記温感領域を発生させる場合には、前記変温部は、人の上半身の一部と接触する位置に設けられており、前記加振部は、上腕骨と尺骨と肩甲骨との少なくとも一つである前記第1の骨の近傍に接触して、前記第1の骨に前記振動を与えられる位置に設けられており、
人の下半身に前記温感領域を発生させる場合には、前記変温部は、人の下半身の一部と接触する位置に設けられており、前記加振部は、腸骨と坐骨と膝蓋骨と踵骨との少なくとも一つである前記第1の骨の近傍に接触して、前記第1の骨に前記振動を与えられる位置に設けられており、
前記温感領域を、前記変温領域及び前記加振領域以外の領域に発生させる
ことを特徴とする温感拡張装置。 - 請求項1に記載の温感拡張装置において、
前記加振領域は足裏であり、前記変温領域は大腿部の裏側であり、前記温感領域を、下腿部または臀部に発生させる
ことを特徴とする温感拡張装置。 - 請求項1または請求項2に記載の温感拡張装置において、
前記加振部は正弦波の振動を前記加振領域に与えることを特徴とする温感拡張装置。 - 請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の温感拡張装置において、
前記加振部はボイスコイル型スピーカーの出力する正弦波の振動を前記加振領域に与えることを特徴とする温感拡張装置。 - 請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の温感拡張装置において、
前記変温部は、加熱期間と、非加熱期間とを有するパルス状の周期的加熱であり、前記変温領域の変温速度の絶対値を0.1℃/sec以上10℃/sec以下の範囲内とし、
前記第2制御の開始タイミングは、前記第1制御の開始タイミング以後のタイミングであり、かつ、前記第1制御の終了タイミングから3秒経過した後の時刻より前のタイミングである
ことを特徴とする温感拡張装置。 - 請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の温感拡張装置において、
前記加振部は、前記第1の骨に隣接する第2の骨に、前記第1の骨を介する骨伝導により振動を伝導させることを特徴とする温感拡張装置。 - 請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の温感拡張装置において、
前記変温領域における変温前後の接触範囲の圧力変動が、人の弁別閾値未満であることを特徴とする温感拡張装置。 - 請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の温感拡張装置において、
前記変温部および前記加振部は、前記支持部により支持されていることを特徴とする温感拡張装置。
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