JP7298126B2 - ニッケル酸化鉱石のオートクレーブ装置 - Google Patents
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Description
鉱石準備工程S1では、原料としてのニッケル酸化鉱石を必要に応じてジョークラッシャーなどの粉砕機に投入して粉砕した後、所定の目開きを有するスクリーンで篩別して例えば粒径2mm程度以下の鉱石を作製する。上記篩別は湿式で行ってもよく、この場合は粉砕した鉱石を適量の水と共に湿式スクリーンに導入することで、所定の粒度の鉱石を含んだ鉱石スラリーを原料スラリーとして篩下側に回収することができる。
HPAL工程S2では、上記鉱石準備工程S1で調製された鉱石スラリーをポンプ及びプレヒーターで主に構成される昇温昇圧設備で所定の温度及び圧力まで好適には段階的に昇温昇圧した後、同様に昇温昇圧された硫酸と共にオートクレーブに装入し、更に高圧蒸気を吹き込んで該鉱石スラリーに対して攪拌しながら3~4.5MPaG、220~280℃程度の高温高圧条件下で高圧酸浸出処理を施すことによって、浸出液と浸出残渣とからなる浸出スラリーを生成する。このHPAL工程S2では、上記の高温加圧下で浸出液の酸化還元電位を調整することで浸出反応及び高温熱加水分解反応が生じ、ニッケル、コバルト等の硫酸塩としての浸出と、浸出された硫酸鉄のヘマタイトとしての固定化が行われる。
上記HPAL工程S2は、浸出率を向上させる観点から浸出液のpHが0.1~1.0程度になるように過剰の硫酸が添加されるため、オートクレーブから抜き出される浸出スラリーには浸出反応に関与しなかった余剰の硫酸が遊離硫酸(フリー硫酸とも称する)として存在している。そこで、予備中和工程S3では、次工程の向流型水洗工程S4における多段洗浄の際に効率よく洗浄が行われるように、例えば炭酸カルシウム等の中和剤をスラリーの形態で添加することによって浸出スラリーのpHを好ましくは2.0~3.0程度の範囲内に調整する。このpHが2.0より低いと装置が腐食されやすくなるので好ましくなく、逆にpHが3.0より高いと、浸出スラリー中に浸出したニッケルが析出しやすくなり、後段の向流型水洗工程S4において洗浄効率が低下するので好ましくない。
向流型水洗工程S4では、直列に連結した複数基のシックナーに上記予備中和工程S3にてpH調整された浸出スラリーと、洗浄液として好適には後工程の硫化工程S7から排出される低pHの貧液とを互いに向流になるように導入し、更に好適にはアニオン系の凝集剤を添加することで、浸出スラリーを多段洗浄しながら重力沈降分離により浸出残渣の除去を行う。これによりニッケル及びコバルトのほか亜鉛等の不純物元素を含む粗硫酸ニッケル水溶液からなる貴液が得られる。シックナーから抜き出された浸出残渣を含むスラリーは後述する最終中和工程S8で中和処理を施すことで重金属の除去処理を行った後、テーリングダムに移送される。
中和工程S5では、上記向流型水洗工程S4において浸出残渣から分離された粗硫酸ニッケル水溶液からなる貴液に炭酸カルシウム等のpH調整剤を添加してpH調整することで該貴液の酸化を抑制しながら不純物元素を含む中和澱物を生成する。この中和澱物を固液分離により除去することで、ニッケル及びコバルトのほか、主に亜鉛からなる不純物元素を含むニッケル回収用母液の元となる中和終液が得られる。この中和工程S5では、中和終液のpHが4.0以下、好ましくは3.0~3.5、より好ましくは3.1~3.2になるように上記pH調整を行うのが好ましく、これにより貴液中に残留する主に3価の鉄イオンやアルミニウムイオンを中和澱物として除去できる。
脱亜鉛工程S6では、例えば加圧された容器内に上記中和工程S5で得た中和終液を導入し、該容器の気相中への硫化水素ガスの吹き込みなどによる硫化剤の添加により硫化処理が施され、これによりニッケル及びコバルトに対して亜鉛を選択的に硫化して亜鉛硫化物を生成させる。この亜鉛硫化物を分離除去することで、ニッケル及びコバルトを含む硫酸溶液からなるニッケル回収用母液(脱亜鉛終液)が得られる。なお、このニッケル回収用母液は、通常は不純物成分として鉄、アルミニウム、マンガン等の金属イオンを各々数g/L程度含んでいる。
硫化工程S7では、上記ニッケル回収用母液に対して硫化水素ガス等の硫化剤を吹き込み、これにより硫化反応を生じさせてニッケル及びコバルトを含む硫化物(NiCo混合硫化物)を生成する。生成したNiCo混合硫化物はろ過などの固液分離により回収することができ、その際、液相側に貧液が排出される。なお、この硫化工程S7で処理されるニッケル回収用母液には前述したようにFe、Al、Mn等の不純物金属イオンが含まれている場合があるが、これら不純物成分はニッケル及びコバルトに比べて硫化物としての安定性が低く、よって上記NiCo混合硫化物にはほとんど含有されない。
最終中和工程S8では、上記硫化工程S7から排出される鉄、アルミニウム、マンガン等の不純物金属イオン及び未反応のNiイオンを含む貧液と、上記向流型水洗工程S4から排出される浸出残渣スラリーとに対して、好適には石灰石を中和剤として用いた第1の中和処理と、消石灰を中和剤として用いた第2の中和処理とからなる2段階の処理で中和処理を施すことで、これら金属イオンをその濃度が排出基準を満たすまで除去する無害化処理を行う。これにより、処理後のスラリーを系外のテーリングダムに移送することができる。
[式1]
V=(2gΔh)0.5
[式2]
F=V×A
図2に示すような5枚の堰(隔壁)11によって内部が6つのスラリー貯留室に区分されたオートクレーブ装置10を用意し、その最も上流側の第1室13aに、Ni品位1.1%のニッケル酸化鉱石に水を加えてスラリー濃度42wt%に調製した原料スラリーを設計流量Fdの125%で連続的に供給し、温度253℃、圧力4450kPaG、遊離酸濃度48g/Lの反応条件で高圧酸浸出処理を行った。なお、上記原料スラリーのCa濃度は0.1g/L以下であった。
係数αに1.6に代えて4.6を採用した以外は上記の実施例1と同様にして高圧酸浸出処理を行った。その結果、原料スラリー中のニッケル酸化鉱石のNi浸出率は93.9%となった。実施例1と同様に高圧酸浸出処理を一定期間行った後にオートクレーブ装置10の開放点検時に内部を確認したところ、残渣の堆積はほとんど認められなかったものの、各堰(隔壁)11の壁面においてオートクレーブ装置10の内径の85%の液レベルよりも高い部分にはスケールがほとんど付着していなかった。このスケール付着状況から判断してオーバーフローが生じておらず、この場合はオートクレーブ装置10の全スラリー貯留室の保有液量はオートクレーブ装置10の全容積の85.6%になる。
11 堰(隔壁)
11a 通液口
12 攪拌機
13a~13f スラリー貯留室(第1室、第2室、・・・、最終室)
14 レベル計
15 抜出管
16 排出弁
MW マンウェイ
S1 鉱石準備工程
S2 HPAL工程
S3 予備中和工程
S4 向流型水洗工程
S5 中和工程
S6 脱亜鉛工程
S7 硫化工程
S8 最終中和工程
Claims (3)
- 横向きにした略円筒形の圧力容器の内部がその中心軸に垂直な壁面を有する複数の堰によって複数のスラリー貯留室に区画されたニッケル酸化鉱石の高温加圧酸浸出処理用のオートクレーブ装置であって、
前記複数の堰の各々は、その上端部でオーバーフローを生じさせると共に、その最下端部で且つ前記中心軸の真下に通液口を有しており、該堰によって区分されている前後のスラリー貯留室の液位の差をΔhとしたとき、該通液口の開口面積は、該オートクレーブに装入される原料スラリーの設計流量Fdの60%の流量が該通液口を流れる場合でも当該堰でオーバーフローが生じ得る条件下で求めた面積である0.6・Fd/(2gΔh) 0.5 の1.5~2.0倍の広さを有しており、該複数の堰の通液口の開口面積は下流側にいくに従って徐々に狭くなることを特徴とするオートクレーブ装置。 - 前記複数の堰の各々は、前記液位の差Δhが50~150mmの範囲内にあることを特徴とする、請求項1に記載のオートクレーブ装置。
- 前記複数の堰のうち、最も上流側に位置する堰は、その高さがオートクレーブ装置の内径の90%以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のオートクレーブ装置。
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