JP6661936B2 - ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法、浸出処理設備 - Google Patents

ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法、浸出処理設備 Download PDF

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Description

本発明は、高圧酸浸出法によるニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法、及びその湿式製錬方法における浸出工程での処理に用いられる浸出処理設備に関する。
ニッケル酸化鉱石からニッケルやコバルトを回収する方法として、高圧酸浸出(HPAL:High Pressure Acid Leach)法が用いられている。この高圧酸浸出法は、従来の一般的なニッケル酸化鉱石の製錬方法である乾式製錬法と異なり、還元工程、乾燥工程等を含まないため、エネルギーコストの面から有利である。このことから、低品位のニッケル酸化鉱石の製錬方法として有力な技術であるとみられている。
また、この高圧酸浸出法によるニッケル酸化鉱石の製錬方法によれば、ニッケル品位を50質量%(以下、「質量%」を単に「%」という)程度まで高めたニッケルを含む硫化物(以下、「ニッケル硫化物」ともいう)を得ることができるという利点も有している。このニッケル硫化物は、ニッケル酸化鉱石(以下、単に「鉱石」ともいう)に対して浸出処理を施して得られた浸出液を浄液した後に、硫化工程として硫化水素ガス等の硫化剤を吹き込んで硫化反応を生じさせることにより沈殿生成される。
具体的に、高圧酸浸出法によりニッケル酸化鉱石からニッケルやコバルトを浸出し、硫化物として回収するプロセスとしては、例えば以下のような工程を有する。
すなわち、先ず、原料であるニッケル酸化鉱石をレパルプし、スラリー化する鉱石スラリー化工程S1と、スラリー化した鉱石を蒸気によって昇温し、高圧条件下にて硫酸を添加してニッケルやコバルトをはじめとした金属を浸出する浸出工程S2と、得られた浸出スラリー中の余剰の硫酸及び浸出液中に含まれる鉄分を沈殿除去する予備中和工程S3と、浸出スラリーに含まれる、浸出残渣及び予備中和工程で生成した沈殿物と液成分(浸出液)とを固液分離する固液分離工程S4と、固液分離して得られた浸出液中の残留硫酸と鉄分とを沈殿除去する中和工程S5と、中和後液に硫化水素ガス等の硫化剤を吹き込んでニッケル及びコバルトを硫化物として回収する硫化工程S6と、得られた貧液に対して中和処理を施して残存している重金属類等を沈殿除去する最終中和工程S7とを有する。
このような工程の中で特に、固液分離工程S4においては、浸出工程S2で生成した浸出残渣や予備中和工程S3で生成した沈殿物等の沈降性が悪く、液成分である浸出液を効率的に分離するために、大量の凝集剤を添加しなければならないという問題があった。
ここで、特許文献1には、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおいて、スラリー中の固形分を分離除去する固液分離処理を経て得られる上澄み液の透明度を向上させることを目的とした凝集剤の添加方法についての技術が開示されている。しかしながら、この特許文献1には、浸出スラリー中の固形分の沈降性を向上させて凝集剤の添加量を低減させることについては何ら示されていない。
また、特許文献2には、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおいて、浸出液に対して中和処理を施すとともに、濾過不良を抑制しながら効果的に不純物成分を沈殿物化した中和澱物を分離除去する方法が開示されている。しかしながら、この特許文献2の方法は、浸出スラリーを固液分離して得られた浸出液に対する中和処理に関する技術であり、浸出スラリーの固液分離に際して、浸出スラリー中の固形分の沈降性を向上させて凝集剤の添加量を低減させることについては何ら示されていない。
特開2014−138918号公報 特開2014−101548号公報
本発明は、上述したような実情に鑑みて提案されたものであり、高圧酸浸出法によるニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおいて、浸出処理後に生成した固形分の沈降性を改善させ、固液分離処理にて固形分を分離して浸出液を回収するにあたり凝集剤等の添加量を低減させることができる方法を提供することを目的とする。
本発明者らの検討により、浸出処理後の浸出スラリーを減圧させるフラッシュタンク(なお、「フラッシュベッセル」とも呼ばれるものである)において、高温高圧条件下での浸出処理で一度沈殿生成したはずのヘマタイトが再溶解しており、そのヘマタイトの再溶解は、浸出スラリーに含まれる遊離硫酸が促進力となって生じていることが分かった。そこで、そのフラッシュタンクにおいて、浸出スラリーを減圧させながら、その浸出スラリーに中和剤を添加して中和処理を施すことで、上述した課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
(1)本発明の第1の発明は、ニッケル酸化鉱に対して高温高圧下で硫酸により浸出処理を施す浸出工程と、得られた浸出スラリーに含まれる遊離硫酸を中和する予備中和工程と、前記予備中和工程を経た浸出スラリーを浸出液と浸出残渣とに分離する固液分離工程とを含むニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法であって、前記浸出工程では、前記浸出処理により得られた浸出スラリーを減圧させながら、該浸出スラリーに中和剤を添加し、該浸出スラリーに含まれる少なくとも一部の遊離硫酸に対する中和処理を施すことを特徴とするニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法である。
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記中和剤は、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、及び酸化カルシウムからなる群から選ばれる1種以上である、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法である。
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記浸出工程では、前記浸出スラリー中の遊離硫酸濃度が7g/L以上15g/L以下となるように前記中和剤を添加する、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法である。
(4)本発明の第4の発明は、金属を含有する鉱石の鉱石スラリーを収容し、内部に高温高圧蒸気を保持して、該鉱石スラリーに対して硫酸による浸出処理を施すための加圧反応容器と、前記加圧反応容器にて生成した浸出スラリーを収容し、該浸出スラリーを減圧させるためのフラッシュタンクと、を備え、前記フラッシュタンクには、前記浸出スラリーに対して中和剤を添加するための中和剤添加ノズルが設けられていることを特徴とする浸出処理設備である。
(5)本発明の第5の発明は、第4の発明において、前記鉱石はニッケル酸化鉱石である、浸出処理設備である。
(6)本発明の第6の発明は、第4又は第5の発明において、前記フラッシュタンクは、直列に複数段備えられており、前記中和剤添加ノズルは、最終段のフラッシュタンクに設けられている、浸出処理設備である。
(7)本発明の第7の発明は、第4乃至第6のいずれかの発明において、前記中和剤添加ノズルには、逆止弁が設けられている、浸出処理設備である。
本発明によれば、高圧酸浸出法によるニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおいて、浸出処理後に生成した固形分の沈降性を改善させて、固液分離処理にて固形分を分離して浸出液を回収するにあたり凝集剤等の添加量を低減させることができる。
ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法の流れの一例を示す工程図である。 浸出処理設備の構成の一例を示した模式図である。
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。また、本明細書において、「x〜y」(x、yは任意の数値)との表記は、特に断らない限り「x以上y以下」の意味である。
≪1.概要≫
本実施の形態に係るニッケル酸化鉱石の湿式練方法は、原料であるニッケル酸化鉱石に対して高温高圧の条件下で硫酸により浸出処理を施し、得られた浸出スラリー中の浸出液に含まれるニッケル及びコバルトを硫化物として回収するものである。

このニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法において、浸出処理を行う浸出工程では、オートクレーブ等の加圧反応容器にニッケル酸化鉱石の鉱石スラリーを装入し、例えば、温度230℃〜270℃程度、圧力3MPa〜5MPa程度の雰囲気として、硫酸の添加により鉱石に含まれるニッケルやコバルト等の金属を浸出させる。そして、この浸出処理の後、得られた浸出スラリーをフラッシュタンクに移送し、高圧となった浸出スラリーを徐々に減圧させる。
減圧させた浸出スラリーは、次の予備中和工程における処理を行う予備中和処理槽に移送され、浸出スラリーに含まれる余剰の硫酸(以下、「遊離硫酸」ともいう)が中和される。その後、浸出スラリーは、シックナー等の固液分離槽に移送され、液成分である浸出液と、ヘマタイト等を含む固形分である浸出残渣とに固液分離される。
ここで、ニッケル酸化鉱石には、鉄分が30重量%〜50重量%程度の多くの割合で含まれており、浸出処理後に得られる浸出スラリーには鉄分も浸出されている。ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法では、このような鉄分を効率よく、製錬目的であるニッケルやコバルト等の金属から分離することが好ましい。一般に、高温高圧下での硫酸による浸出処理では、浸出反応と高温熱加水分解反応が生じて、ニッケルやコバルト等の硫酸塩としての浸出と、浸出された硫酸鉄のヘマタイトとしての固定化が行われる。
しかしながら、本発明者らは、浸出処理後の浸出スラリーを減圧させるフラッシュタンクにおいて、高温高圧条件下での浸出処理で一度沈殿生成したはずのヘマタイトが再溶解することを発見した。フラッシュタンクにおいて浸出スラリー中のヘマタイトが再溶解すると、再溶解したヘマタイト中の鉄分は、次の予備中和処理にて中和されて沈降分離することになる。ところが、その予備中和処理を経て沈殿する鉄の形態はゲーサイトや水酸化鉄であり、これらはヘマタイトよりも比重が小さいため、次の固液分離処理における処理槽内での沈降性を悪化させる。そのため、固液分離処理において十分に固液分離を行うためには、多量の凝集剤を添加して固形分を凝集させることが必要となり、薬剤使用量を増加させる原因となっていた。
本発明者らは、鋭意検討した結果、浸出処理後の浸出スラリーに含まれる余剰の硫酸が、沈殿生成したヘマタイトの再溶解の促進力となることを見出した。浸出処理では、ニッケル等の金属の浸出率を向上させる観点から過剰の硫酸を添加しているが、浸出反応に用いられなかった硫酸が浸出スラリー中に遊離硫酸として残存しているが、その遊離硫酸が、生成したヘマタイトを再溶解させることが分かった。
そこで、本実施の形態に係る湿式製錬方法では、浸出スラリーを減圧させためのフラッシュタンクにおいて、例えば中和剤を添加するためのノズルを設けるなどして、そのタンク内の浸出スラリーに対して適量の中和剤を添加し、ヘマタイトが再溶解する促進力となる遊離硫酸の少なくとも一部を中和する。このようにフラッシュタンクにおいて、遊離硫酸に対する部分的な中和処理を施すことにより、ヘマタイトの再溶解を効果的に抑制することができ、固液分離処理にあたっては、比重が大きく沈降性が良好な沈殿物、すなわちヘマタイトを適切に供給することができ、凝集剤の添加量を低減させることができる。
以下では、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法の各工程について詳細に説明し、続いて、湿式製錬方法における浸出処理に使用する浸出処理設備について説明する。
≪2.ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法≫
図1は、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法の流れの一例を示す工程図である。
図1に示すように、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法は、原料のニッケル酸化鉱石をスラリー化する鉱石スラリー化工程S1と、鉱石スラリーに硫酸を添加して高温高圧下で浸出処理を施す浸出工程S2と、得られた浸出スラリーのpHを調整して予備中和を行う予備中和工程S3と、pH調整された浸出スラリーを多段洗浄しながら残渣を分離してニッケル及びコバルトと共に不純物元素を含む浸出液を得る固液分離工程S4と、浸出液のpHを調整して不純物元素を含む中和澱物を分離し、ニッケル及びコバルトを含む中和終液を得る中和工程S5と、中和終液に硫化剤を添加することでニッケル及びコバルトの混合硫化物を生成させる硫化工程S6と、を有する。さらに、この湿式製錬方法では、固液分離工程S4で分離された浸出残渣や硫化工程S6にて排出された貧液を回収して無害化する最終中和工程S7を有する。
(1)鉱石スラリー化工程
鉱石スラリー化工程S1では、原料であるニッケル酸化鉱石を、例えば、所定の分級点で分級してオーバーサイズの鉱石粒子を除去した後に、所望とするアンダーサイズの鉱石粒子に水を添加して鉱石スラリーとする。
原料のニッケル酸化鉱石は、ニッケルやコバルトを含有する鉱石であり、主としてリモナイト鉱及びサプロライト鉱等のいわゆるラテライト鉱である。ラテライト鉱のニッケル含有量は、0.8%〜2.5%程度であり、ニッケルは水酸化物又は含水ケイ苦土(ケイ酸マグネシウム)鉱物として含有される。また、鉄の含有量は、30%〜50%であり、主として3価の水酸化物(ゲーサイト)の形態であるが、一部2価の鉄が含水ケイ苦土鉱物等に含有される。
ニッケル酸化鉱石の分級方法については、所望とする粒径に基づいて鉱石を分級できれば特に限定されない。例えば、グリズリーや振動篩等を用いた篩分けによって行うことができる。さらに、その分級点についても、特に限定されず、所望とする粒径値以下の鉱石粒子からなる鉱石スラリーを得るための分級点を適宜設定することができる。
(2)浸出工程
(2−1)浸出処理について
浸出工程S2では、オートクレーブ等の加圧反応容器に、ニッケル酸化鉱石の鉱石スラリーを装入して浸出処理を施す。なお、以下では、加圧反応容器としてオートクレーブを用いた場合を例として説明する。
浸出工程S2では、オートクレーブに鉱石スラリーを装入した後、高温の蒸気により、例えば温度230℃〜270℃程度にするとともに、3MPa〜5MPa程度の高い圧力雰囲気とする。そして、オートクレーブ内の鉱石スラリーに対して硫酸を添加して攪拌処理を施し、浸出液と浸出残渣とからなる浸出スラリーを生成させる。
具体的に、浸出工程S2における浸出処理では、例えば下記式(a)〜(e)で表される浸出反応と高温熱加水分解反応が生じ、ニッケル、コバルト等の硫酸塩としての浸出と、浸出された硫酸鉄のヘマタイトとしての固定化が行われる。
・浸出反応
MO+HSO⇒MSO+HO ・・(a)
(なお、式中Mは、Ni、Co、Fe、Zn、Cu、Mg、Cr、Mn等を表す)
2Fe(OH)+3HSO⇒Fe(SO+6HO ・・(b)
FeO+HSO⇒FeSO+HO ・・(c)
・高温熱加水分解反応
2FeSO+HSO+1/2O⇒Fe(SO+HO ・・(d)
Fe(SO+3HO⇒Fe+3HSO ・・(e)
浸出工程S2における硫酸の添加量としては、特に限定されないが、鉱石中の鉄が浸出されるような過剰量が用いられる。例えば、鉱石1トン当り200kg〜400kgとして、得られる浸出液のpHが0.1〜1.0となるように調整することが好ましい。
(2−2)部分的な中和処理について
ここで、浸出工程S2では、浸出処理の終了後に、得られた浸出スラリーをオートクレーブからフラッシュタンクに移送して、高圧の浸出スラリーを減圧させる。具体的には、フラッシュタンクに設けられたフラッシュバルブを介して浸出スラリーをタンク内に装入するとともに蒸気を系外に排出することによって、浸出スラリーを減圧させる。
このとき、本実施の形態においては、フラッシュタンク内で減圧させた浸出スラリーに所定量の中和剤を添加し、浸出スラリーに対して部分的な中和処理を施すようにする。このことによって、浸出スラリーに含まれる遊離硫酸の少なくとも一部が中和され、浸出処理にて沈殿生成したヘマタイトの浸出スラリー中での再溶解を抑制することができる。
部分的な中和処理とは、浸出スラリーに含まれる遊離硫酸のすべてではなく、その一部のみを中和することを意味する。例えば、浸出スラリー中の遊離硫酸濃度が、好ましくは7g/L以上15g/L以下、より好ましくは9g/L以上12g/L以下となるように中和剤の添加量を調整して処理する。遊離硫酸濃度が7g/L未満となるように中和処理を施すと、多量の中和沈殿の生成によって、フラッシュタンクから浸出スラリーを排出するための配管を閉塞させ、またタンクレベルの上昇を引き起こす可能性がある。一方で、最終的な遊離硫酸濃度が15g/Lを超えるような中和処理では、十分に遊離硫酸が低減されていないことに基づいて、ヘマタイトの再溶解を引き起こす可能性がある。
また、中和剤の添加方法としては、特に限定されないが、例えば、フラッシュタンクの上部等の任意の位置に、中和剤を添加するためのノズル(以下、「中和剤添加ノズル」ともいう)を設けて、減圧させた浸出スラリーに対して適量の中和剤を添加する方法により行うことができる。なお、この態様については後で詳述する。
また、中和剤としては、特に限定されないが、炭酸カルシウム(石灰石)、水酸化カルシウム(消石灰)、酸化カルシウム(生石灰)から選ばれる1種以上であることが好ましい。これら、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウムといった中和剤は、入手が容易であり、かつ、価格が比較的安価であることから好ましい。その中でも特に、炭酸カルシウムを用いることが好ましい。炭酸カルシウムは、特に入手が容易であり、また極めて安価である。
また、中和剤としては、非カルシウム系中和剤を用いることもできる。上述したように、浸出処理では鉱石中の鉄がヘマタイトとして分離されるが、そのヘマタイト中に石膏の形態で硫黄が混入すると、湿式製錬プロセスの終了後に発生する多量のヘマタイトを鉄源として使用することが難しくなる。そこで、このフラッシュタンク内の浸出スラリーに対して添加する中和剤として、非カルシウム系中和剤を用いる。これにより、ヘマタイトに石膏の形態で硫黄が混入することを防ぐことができる。
非カルシウム系中和剤としては、特に限定されないが、母岩、水酸化ナトリウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムを用いることが好ましい。これらの中和剤は、入手が容易であり、また安価であるという点で、好ましい。
(3)予備中和工程
予備中和工程S3では、浸出工程S2にて得られた浸出スラリーのpHを所定範囲に調整して中和処理を施す。具体的には、例えば、浸出スラリーのpHを、所望とする範囲である、pH2.8〜3.2程度の範囲に調整する。
浸出工程S2では、浸出率を向上させる観点から過剰の硫酸を添加している。そのため、浸出スラリーには浸出反応に関与しなかった余剰の硫酸が遊離硫酸として含まれており、そのpHは低い。上述したように、浸出工程S2では、フラッシュタンクに移送させた浸出スラリーに中和剤を添加して、その遊離硫酸を部分的に中和するようにしているが、この予備中和工程S3では、フラッシュタンクから移送された浸出スラリーにさらに中和剤を添加してpHを所定範囲に調整することによって、遊離硫酸を中和する。
予備中和工程S3では、例えば中和処理槽に浸出スラリーを装入して、槽内の浸出スラリーに所定量の中和剤を添加することによって中和処理を行うことができる。中和処理槽としては、例えば1段の処理槽のみからなるもの、あるいは直列に並べた複数段の処理槽から構成されるものを用いることができ、上流側の最初の処理槽に、フラッシュタンクから排出された浸出スラリーを装入する。
なお、複数段の処理槽から構成される中和処理槽を用いることにより、中和剤を各槽に添加して多段階に中和処理を行うことができ、浸出スラリーの流量変動やpH変動への対応が容易となり、pHのバラつきを抑えることができる。
(4)固液分離工程
固液分離工程S4では、予備中和工程S3にてpH調整を行った浸出スラリーを多段洗浄して、ニッケルやコバルト等の有価金属を含む浸出液と浸出残渣とを得る。
固液分離工程S4では、浸出スラリーを洗浄液と混合した後、シックナー等の沈降分離による装置を用いて固液分離処理を施す。具体的には、先ず、浸出スラリーを洗浄液により希釈し、次に、浸出スラリー中の浸出残渣をシックナーの沈降物として濃縮させる。これにより、浸出残渣に付着するニッケル分をその希釈度合に応じて減少させることができる。実操業では、このような機能を持つシックナーを多段に連結して用いることで、ニッケルやコバルトの回収率の向上を図ることができる。なお、洗浄液としては、工程に影響を及ぼさないものであって、pHが1〜3の水溶液を用いることが好ましく、例えば硫化工程S6で得られる低pHの貧液を繰り返して利用することができる。
なお、シックナー等の固液分離装置から得られるオーバーフロー液は、浸出液として浸出残渣と分離して回収され、次工程に移送される。
ここで、固液分離工程S4における固液分離処理では、シックナー等の固液分離装置に装入した浸出スラリー中の沈降性が、固液分離能に大きく影響する。そのため、適宜、浸出スラリーに凝集剤を添加して固形分を凝集させ、シックナーの沈降物としての沈降性を高めるようにしている。
この点、本実施の形態では、浸出工程S2において、フラッシュタンクに装入された浸出スラリーに対して中和剤を添加して部分的な中和処理を施し、遊離硫酸を中和して、沈殿生成したヘマタイトの再溶解を抑制するようにしている。これにより、固液分離工程S4における固液分離処理には、比重が大きく、沈降性が良好なヘマタイトを含んだ浸出スラリーが供給されるようになるため、必要に応じて添加する凝集剤の添加量を効果的に低減させることができ、効率的に浸出液と浸出残渣とを分離することができる。
(5)中和工程
中和工程S5では、固液分離工程S4で分離回収された浸出液の酸化を抑制しながら、酸化マグネシウムや炭酸カルシウム等の中和剤を添加して中和処理を施し、3価の鉄を含む中和澱物スラリーとニッケル回収用母液である中和終液とを得る。
具体的に、中和工程S5では、浸出液の酸化を抑制しながら、得られる中和終液のpHが4.0以下、好ましくは3.0〜3.5、より好ましくは3.1〜3.2になるように、その浸出液に炭酸カルシウム等の中和剤を添加し、ニッケル及びコバルト回収用の母液となる中和終液と、不純物元素として3価の鉄を含む中和澱物スラリーとを形成する。
なお、中和終液は、中和処理により得られたスラリーを固液分離することによって回収される。この中和終液は、上述したように浸出工程S2において原料のニッケル酸化鉱石に対して硫酸による浸出処理を施して得られた浸出液に基づく溶液であって、ニッケル及びコバルトを含む硫酸酸性溶液である。
(6)硫化工程
硫化工程S6では、ニッケル及びコバルト回収用母液である中和終液を硫化反応始液として、その硫化反応始液に対して硫化剤としての硫化水素ガスを吹き込むことによって硫化反応を生じさせ、不純物成分の少ないニッケル及びコバルトの混合硫化物と、ニッケル及びコバルトの濃度を低い水準で安定させた貧液とを生成させる。
なお、中和終液中に亜鉛が含まれる場合には、硫化物としてニッケルやコバルトを分離するに先立って、亜鉛を硫化物として選択的に分離することができる。
硫化工程S6における硫化処理は、硫化反応槽等を用いて行うことができ、硫化反応槽に装入した硫化反応始液に対して、その反応槽内の気相部分に硫化水素ガスを吹き込み、溶液中に硫化水素ガスを溶解させることで硫化反応を生じさせる。この硫化処理により、硫化反応始液中に含まれるニッケル及びコバルトを混合硫化物として固定化する。硫化反応の終了後、得られたニッケル及びコバルト混合硫化物を含むスラリーをシックナー等の固液分離装置に装入して沈降分離処理を施し、その混合硫化物のみをシックナーの底部より分離回収する。
なお、硫化工程S6を経て分離された水溶液成分は、シックナーの上部からオーバーフローさせて貧液として回収する。回収した貧液は、ニッケル等の有価金属濃度の極めて低い溶液であり、硫化されずに残留した鉄、マグネシウム、マンガン等の不純物元素を含む。この貧液は、最終中和工程S7に移送されて無害化処理される。
(7)最終中和工程
最終中和工程S7では、上述した固液分離工程S4における固液分離処理により分離された浸出残渣や、硫化工程S6にて回収された、鉄、マグネシウム、マンガン等の不純物元素を含む貧液等に対して、排出基準を満たす所定のpH範囲に調整する中和処理(無害化処理)が施される。
pHの調整方法としては、特に限定されないが、例えば炭酸カルシウム等の中和剤を添加することによって所定の範囲に調整することができる。
≪3.浸出処理設備≫
次に、上述したニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法における浸出工程S2での処理に使用される浸出処理設備について説明する。
図2は、本実施の形態に係る浸出処理設備の構成の一例を示した模式図である。図2に示すように、浸出処理設備1は、ニッケル酸化鉱石を収容し、内部に高温高圧蒸気を保持して、その鉱石に対して硫酸による浸出処理を施すための加圧反応容器(オートクレーブ)11と、オートクレーブ11にて得られた浸出スラリーを収容し、その浸出スラリーを減圧させるためのフラッシュタンク12と、を備える。
ここで、フラッシュタンク12は、直列に複数段備えることが好ましく、複数段のフラッシュタンク12によって、浸出スラリーの圧力を段階的に減圧させることができる。図2の浸出処理設備1の例では、フラッシュタンクを2段(12(1),12(2))設けた例を示している。なお、フラッシュタンク12の設置段数としては、特に限定されず、オートクレーブ11での圧力条件や設置スペース等に応じて適宜設定することができる。例えば、2〜4段程度の段数とすることができる。
(オートクレーブ)
オートクレーブ11は、ニッケル酸化鉱石の鉱石スラリーを収容し、高温の蒸気により所定の高温条件及び高圧条件に保持して、硫酸の添加による浸出処理を施す。
オートクレーブ11としては、例えば加圧水蒸気の吹込みによって加熱される加圧容器が用いられる。また、外熱式で加熱されるものであってもよい。具体的に、オートクレーブ11は、原料の鉱石スラリーを供給する鉱石スラリー供給管11aと、鉱石スラリーに硫酸を添加する硫酸供給管11bとが備えられており、隔壁で複数に区画された各区画室において鉱石スラリーを攪拌しながら順次浸出処理が行われる。
具体的に、オートクレーブ11では、昇温昇圧設備であるプレヒーターにより段階的に昇温及び昇圧された鉱石スラリーが供給され、例えばそのオートクレーブ11内部を、温度230℃〜270℃程度、圧力3MPa〜5MPa程度の条件に保持する。そして、その高温高圧蒸気を保持した状態で、鉱石スラリーに対して硫酸による浸出処理を施し、高温高圧の浸出スラリーを生成する。なお、オートクレーブ11を高温高圧状態にする加熱熱媒体としては、上述したように、例えば水蒸気が用いられる。その水蒸気としては、ボイラー等の一般的な方法によって発生させた水蒸気を使用してもよいが、後述するフラッシュタンク12で発生した水蒸気を回収し循環使用してもよい。
オートクレーブ11のサイズや形状としては、特に限定されるものではなく鉱石スラリーの処理量等に応じて適宜設定することができる。例えば、オートクレーブ11として、直径が4m〜6m程度、長手方向の長さで25m〜30m程度であって、円筒形状の容器が横型に設置されるものが挙げられる。
また、オートクレーブ11には、フラッシュタンク12との間で配管13が連結されており、その配管13を介して、生成した高温高圧の浸出スラリーがフラッシュタンク12に移送される。より具体的には、その配管13は、オートクレーブ11の下部に設けられた浸出スラリー排出口11cと、後述するフラッシュタンク12の浸出スラリー装入口12bとの間を連結している。
(フラッシュタンク)
フラッシュタンク12は、オートクレーブ11にて生成した浸出スラリーを収容し、その浸出スラリーを減圧させる。具体的には、オートクレーブ11から移送された浸出スラリーを常温にし、また常圧程度にまで減圧させる。
フラッシュタンク12は、上述したように直列に複数段設けられていることが好ましく、その複数段の装置によって段階的に減圧させる。
具体的に、フラッシュタンク12は、例えば有底円筒状の胴部12aを備え、この胴部12aの上部を閉じた天井部に、浸出スラリーを装入する浸出スラリー装入口12bと、蒸気を排出する蒸気排出口12cとが設けられている。また、胴部12aの胴底部には、減圧させた浸出スラリーを排出する浸出スラリー排出口12dが設けられている。
浸出スラリー装入口12bには、オートクレーブ11にて生成した浸出スラリーをフラッシュタンク12内に装入するための配管13が連結され、浸出スラリー排出口12dには、減圧させた浸出スラリーを排出するための浸出スラリー排出管14が連結されている。なお、フラッシュタンク12を複数段設ける場合には、最終段以外のフラッシュタンク12の浸出スラリー排出口12dに連結されている浸出スラリー排出管14,14aは、次のフラッシュタンク12に浸出スラリーを移送するための移送配管となる。
また、蒸気排出口12cには、浸出スラリーの装入に伴ってフラッシュタンク12内に発生する蒸気を回収するための蒸気排出配管15が連結されている。
ここで、フラッシュタンク12においては、内部に収容した浸出スラリーに対して所定量の中和剤を添加するための中和剤添加ノズル20が設けられていることを特徴としている。このように、フラッシュタンク12では、任意の位置に中和剤添加ノズル20を設け、所定量の中和剤を浸出スラリーに添加して浸出スラリーに対する中和処理を施す。
具体的には、中和剤添加ノズル20から添加される中和剤の添加量を調整し、浸出スラリー中の遊離硫酸濃度が、好ましくは7g/L以上15g/L以下、より好ましくは9g/L以上12g/L以下となるように中和処理を施す。このようにしてフラッシュタンク12において、浸出スラリーに対する部分的な中和処理を施すことで、余剰の遊離硫酸の一部が中和されて、オートクレーブ11にて沈殿生成したヘマタイトが浸出スラリー中で再溶解することを抑制することができる。
中和剤添加ノズル20は、複数段のフラッシュタンク12が備えられている場合、最終段のフラッシュタンク12に設けることが好ましい。なお、図2の例では、フラッシュタンク12(2)が最終段のフラッシュタンクである。最終段のフラッシュタンク12,12(2)では、浸出スラリーの温度が最も下がっているため、浸出スラリー中のヘマタイトの再溶解が発生し易い。そのため、最終段のフラッシュタンク12,12(2)に中和剤添加ノズル20を設けて、その最終段のフラッシュタンク12,12(2)にて余剰の遊離硫酸を部分的に中和することで、ヘマタイトの再溶解をより効果的に抑えることができる。また、最終段にフラッシュタンク12,12(2)では、1段目等のフラッシュタンクに比べて内部の圧力が下がっているため、中和剤添加ノズル20を容易に設置できるという点からも好ましい。
また、中和剤添加ノズル20には、逆止弁が設けられていることが好ましい。この中和剤添加ノズル20が設けられているフラッシュタンク12には、高温高圧の浸出スラリーが収容されるため、その蒸気によって圧力が高くなっている。このことから、中和剤添加ノズル20に逆止弁を設けることによって、添加する中和剤の逆流や、高圧の浸出スラリーが中和剤添加ノズル20に侵入することを防ぐことができる。
なお、中和剤添加ノズル20から添加する中和剤としては、上述したように、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム等を用いることができ、また、母岩、水酸化ナトリウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム等の非カルシウム系中和剤を用いてもよい。
フラッシュタンク12にて浸出スラリーに対する減圧処理が行われたのち、その浸出スラリーは、最終段のフラッシュタンク12,12(2)の浸出スラリー排出口12dから排出され、浸出スラリー排出管14を介して次の処理装置、具体的には予備中和処理を行うための処理装置に移送される。
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
ニッケル酸化鉱石の鉱石スラリーを用いて、高圧酸浸出法に基づく湿式製錬を行った。
先ず、ニッケル酸化鉱石の鉱石スラリーをオートクレーブに装入して、温度270℃程度、圧力6MPaの条件下で浸出処理を施した。その後、得られた浸出スラリーをオートクレーブからフラッシュタンクに移送して、高圧の浸出スラリーを降圧させた。
浸出処理設備としては、高温高圧下で浸出処理を行うオートクレーブと、オートクレーブにて得られた浸出スラリーを降圧させるフラッシュタンクとを備える設備を用いた。この浸出処理設備においては、フラッシュタンクを複数段設置して、浸出スラリーに対する降圧処理を段階的に行った。また、その最終段のフラッシュタンクには中和剤添加ノズルを設け、浸出スラリーに所定量の中和剤を添加するようにした。
具体的には、オートクレーブにおける浸出処理により得られた浸出スラリーをフラッシュタンクに移送し、最終段のフラッシュタンクに収容された浸出スラリーに対して、そのスラリー中に残留する遊離硫酸濃度が10g/Lとなるように中和剤である石灰石スラリーを添加した。このとき、浸出スラリーの液成分に含まれるFe濃度は1.5g/Lであった。
次に、浸出スラリーをフラッシュタンクから中和処理槽に移送させて、残留した遊離硫酸を除去するための予備中和処理を行った。具体的には、中和処理槽にて、浸出スラリーに対して石灰石スラリーを添加してpH2に調整した。
次に、予備中和処理を経て排出されたスラリーを、続いて設けられている6連のシックナーから構成される固液分離処理槽に供給し、浸出液と浸出残渣とに分離する固液分離処理を行った。この固液分離処理では、凝集剤を添加して行ったが、固液分離処理全体での凝集剤添加率は固形分1トン(t)あたり300g程度であった。なお、浸出スラリー中の固形分の重量は、固液分離処理に供給した浸出スラリーの流量(m/h)×スラリー密度(t/m)×スラリー中の固形分率(%)から求めた。
[比較例1]
比較例1では、ニッケル酸化鉱石の鉱石スラリーに対して高圧酸浸出法による浸出処理を行った後、フラッシュタンクにて中和剤を添加せずに、次の予備中和処理に移送したこと以外は、実施例1と同様にして処理した。なお、最終段のフラッシュタンクから排出された浸出スラリーの液成分に含まれるFe濃度は2.4g/Lであった。
予備中和処理では、実施例1と同様に、フラッシュタンクから排出された浸出スラリーに対して石灰石スラリーを添加してpH2に調整した。その後、予備中和処理を経て排出されたスラリーを、続いて設けられている6連のシックナーから構成される固液分離処理槽に供給し、凝集剤を添加しながら固液分離処理を行った。このとき、固液分離処理全体での凝集剤添加率は固形分1トンあたり380g程度であった。
[比較例2]
比較例2では、浸出処理に供する鉱石スラリーの供給流量を2割減じたこと以外は、実施例1と同様にして浸出処理を施した。鉱石スラリーの供給量を2割減じたことにより、フラッシュタンクの滞留時間が2割長くなった。なお、最終段のフラッシュタンクから排出された浸出スラリーの液成分に含まれるFe濃度は3.2g/Lであった。
浸出処理の後、フラッシュタンクから予備中和処理槽に移送して予備中和処理を施した。予備中和処理では、実施例1と同様に、フラッシュタンクから排出された浸出スラリーに対して石灰石スラリーを添加してpH2に調整した。その後、予備中和処理を経て排出されたスラリーを、続いて設けられている6連のシックナーから構成される固液分離処理槽に供給し、凝集剤を添加しながら固液分離処理を行った。このとき、固液分離処理全体での凝集剤添加率は固形分1トンあたり400g程度であった。
[参考例]
参考例として、実施例1と同様に、ニッケル酸化鉱石の鉱石スラリーに対して高圧酸浸出法による浸出処理を行い、オートクレーブからフラッシュタンクに移送された浸出スラリーに対して、そのフラッシュタンクにて、浸出スラリーに残留する遊離硫酸濃度が5g/Lとなるように石灰石スラリーを添加した。
ところが、生成した中和澱物によってフラッシュタンクの排出配管が閉塞し、すなわち、フラッシュタンクにて浸出スラリー中の固形分濃度が増加したこと、あるいは石膏が生成したことにより、排出配管が閉塞してしまい、効率的な操業を行うことができなかった。
下記表1に、上述した実施例、比較例、及び参考例での操業の結果を示す。この表1では、浸出処理後に得られた浸出スラリー中のNi濃度、Fe濃度、残留遊離硫酸濃度を示し、また、その後の固液分離処理にて使用した凝集剤の添加量の結果を示す。
Figure 0006661936
1 浸出処理設備
11 オートクレーブ
12 フラッシュタンク
13 配管
14 浸出スラリー排出管
15 蒸気排出管
20 中和剤添加ノズル

Claims (5)

  1. ニッケル酸化鉱に対して硫酸により浸出処理を施す浸出工程と、
    得られた浸出スラリーに含まれる遊離硫酸を中和する予備中和工程と、
    前記予備中和工程を経た浸出スラリーを浸出液と浸出残渣とに分離する固液分離工程と
    を含むニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法であって、
    前記浸出工程では、前記浸出処理により得られた浸出スラリーを減圧させながら、該浸出スラリーに対して、該浸出スラリー中の遊離硫酸濃度が7g/L以上15g/L以下となるように中和剤を添加し、該浸出スラリーに含まれる少なくとも一部の遊離硫酸に対する中和処理を施す
    ことを特徴とするニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
  2. 前記中和剤は、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、及び酸化カルシウムからなる群から選ばれる1種以上である
    請求項1に記載のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
  3. ニッケル酸化鉱石の鉱石スラリーを収容し、内部に蒸気を保持して、該鉱石スラリーに対して硫酸による浸出処理を施すための加圧反応容器と、
    前記加圧反応容器にて生成した浸出スラリーを収容し、該浸出スラリーを減圧させるためのフラッシュタンクと、を備え、
    前記フラッシュタンクには、前記浸出スラリーに対して、該浸出スラリー中の遊離硫酸濃度が7g/L以上15g/L以下となるように中和剤を添加するための中和剤添加ノズルが設けられている
    ことを特徴とする浸出処理設備。
  4. 前記フラッシュタンクは、直列に複数段備えられており、
    前記中和剤添加ノズルは、最終段のフラッシュタンクに設けられている
    請求項に記載の浸出処理設備。
  5. 前記中和剤添加ノズルには、逆止弁が設けられている
    請求項3又は4に記載の浸出処理設備。
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