JP2017052992A - 鉱石スラリーの処理方法、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法 - Google Patents

鉱石スラリーの処理方法、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2017052992A
JP2017052992A JP2015177064A JP2015177064A JP2017052992A JP 2017052992 A JP2017052992 A JP 2017052992A JP 2015177064 A JP2015177064 A JP 2015177064A JP 2015177064 A JP2015177064 A JP 2015177064A JP 2017052992 A JP2017052992 A JP 2017052992A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ore
chromite
mixture containing
slurry
treatment
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2015177064A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6661926B2 (ja
Inventor
小原 剛
Takeshi Obara
剛 小原
浩隆 樋口
Hirotaka Higuchi
浩隆 樋口
今村 正樹
Masaki Imamura
正樹 今村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Mining Co Ltd filed Critical Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Priority to JP2015177064A priority Critical patent/JP6661926B2/ja
Publication of JP2017052992A publication Critical patent/JP2017052992A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6661926B2 publication Critical patent/JP6661926B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P10/00Technologies related to metal processing
    • Y02P10/20Recycling

Abstract

【課題】酸浸出処理に供給する鉱石スラリーによる配管やポンプ等の設備の磨耗を抑制するとともに、湿式製錬プロセスにおける最終中和工程から産出される最終中和残渣量を低減することができる方法を提供する。【解決手段】本発明に係る鉱石スラリーの処理方法は、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法における酸浸出処理に供する鉱石スラリーの処理方法であって、ニッケル酸化鉱石の鉱石スラリーに対して、ハイドロサイクロンを使用して分級処理を施し、オーバーフローとしてゲーサイトを含む混合物を分離し、アンダーフローとしてクロマイトを含む混合物を分離する分級工程S21と、所定の比重分離装置を使用して、ハイドロサイクロンのアンダーフローとして分離したクロマイトを含む混合物に対して比重分離処理を行い、クロマイトを含む混合物に含まれるゲーサイトを分離してクロマイトを濃縮させた混合物を得る比重分離工程とを有する。【選択図】図2

Description

本発明は、鉱石スラリーの処理方法、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法に関するものであり、より詳しくは、酸浸出によりニッケル酸化鉱石からニッケル及びコバルトを浸出させて回収する湿式製錬方法において、その浸出処理に供給する鉱石スラリーの処理方法及びその処理工程を含むニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法に関する。
近年、鉄、銅、ニッケル、コバルト、クロム、マンガン等の鉱物資源において、採掘権の寡占化がますます進んでいることにより、金属製錬での原料コストが大幅に上昇している。このコストの大幅な上昇に対処するため、従来、製錬の対象にならなかった低品位鉱石を使用するための技術開発が行われている。
例えばニッケル製錬では、高温高圧下において耐食性に優れた材料が開発されたこともあり、ニッケル酸化鉱石を硫酸で加圧下に酸浸出する高圧酸浸出(HPAL:High Pressure Acid Leach)法に基づく湿式製錬方法が注目されている。
この高圧酸浸出法は、従来の一般的なニッケル酸化鉱石の製錬方法である乾式製錬法と異なり、還元工程、乾燥工程等の乾式工程を有さないため、エネルギーコスト的に有利であり、今後も低品位ニッケル酸化鉱石(以下、単に「鉱石」という)の製錬方法として有力な技術となる。
また、この高圧酸浸出法に基づく湿式製錬法の製錬プロセスとしての完成度を上げるため、高温加圧下での浸出工程を中心として、ニッケル及びコバルトの浸出率の向上、浸出液の浄液、操業資材使用量の低減等に関して様々な提案がなされている。
ところで、高温加圧下での浸出処理を行うプロセスとして、特許文献1には、ニッケル、コバルト、マンガン等の有価金属を含有する鉱石から、下記工程(a)〜(c)からなる方法により、その有価金属を回収する方法が開示されている。
工程(a):スラリー化した鉱石を、工程(b)で得られた加圧酸浸出液により、硫酸酸性下で常圧浸出し、常圧浸出液と常圧浸出残留物を得る。
工程(b):工程(a)で得られた常圧浸出残留物を、高温高圧下の酸化性雰囲気で硫酸と反応させて加圧酸浸出液を得る。
工程(c):工程(a)で得られた常圧浸出液に中和剤を加えて中和し、次いで硫化アルカリ化合物を添加して、浸出液中のニッケル及びコバルトを硫化物として回収する。
この方法では、鉱石スラリーを工程(a)で常圧浸出し、次いで常圧浸出残渣を工程(b)で加圧酸浸出する2段浸出を行うことにより、鉱石からのニッケル浸出率を向上させ、同時に加圧酸浸出の浸出液中に含まれる過剰な酸を、常圧浸出残渣に含有されるアルカリ成分によって中和し、中和工程(工程(c))の負荷を低減させるものである。
しかしながら、2段浸出を行うプロセスであるため、設備点数が増えコストと手間が増加するといった問題や、浸出残渣を洗浄する際に発生する多量の薄液の処理にコストを要するといった問題があった。
これらの問題点を解決するため、特許文献2には、高温加圧下での浸出を利用する他のプロセスとして、下記(i)〜(iv)からなる工程を含む方法が開示されている。
(i)浸出工程:鉱石をスラリー化して硫酸を添加し、220〜280℃の温度で撹拌処理し、浸出スラリーを形成する。
(ii)固液分離工程:浸出スラリーを、多段階のシックナーを用いて洗浄し、ニッケル及びコバルトを含む浸出液と浸出残渣とに分離する。
(iii)中和工程:浸出液の酸化を抑制しながら、炭酸カルシウムを用いてpHが4以下となるよう調整し、3価の鉄を含有する中和澱物を生成し、中和澱物スラリーとニッケル回収用母液とに分離する。
(iv)硫化工程:ニッケル回収用母液に硫化水素ガスを吹きこみ、ニッケル及びコバルトを含む硫化物を生成し、ニッケル及びコバルトを含む硫化物と貧液とに分離する。
ここで、特許文献2に開示される技術に基づく実用プラントの概要について図1を用いて説明する。なお、図1は、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法に基づく実用プラントの一例における製錬工程図である。
図1の工程図に示すように、最初に、[1]鉱石処理工程において、原料とするニッケル酸化鉱石が水と混合され、得られた混合液から異物が除去され、また鉱石粒度の調整が行われ、ニッケル酸化鉱石の鉱石スラリーが形成される。
次に、[2]浸出工程において、得られた鉱石スラリーが、硫酸を用いた高温加圧浸出に付され、浸出液と浸出残渣とを含む浸出スラリーが形成される。
次に、[3]固液分離工程において、得られた浸出スラリーが多段洗浄された後、ニッケル及びコバルトを含む浸出液と、浸出残渣スラリーとに分離される。
次に、[4]中和工程において、分離された浸出液に対する中和処理が施され、3価の鉄水酸化物を含む中和澱物スラリーと、中和後液とに分離される。
次に、[5]亜鉛除去工程において、中和後液に対して硫化剤が添加され、その溶液中に含まれる亜鉛が硫化物となり、硫化亜鉛を含む硫化亜鉛澱物と、亜鉛を除去したニッケル回収用の母液とに分離される。
次に、[6]硫化工程において、ニッケル回収用の母液に対して硫化剤が添加され、その母液中に含まれるニッケル及びコバルトが硫化物となり、ニッケル及びコバルトの混合硫化物と、ニッケル等が除去された貧液とに分離される。なお、貧液は、固液分離工程[3]における浸出残渣の洗浄水として使用される。
最後に、[7]最終中和工程において、余剰の貧液と、固液分離工程[3]で分離された浸出残渣スラリーとに対して中和処理が施され、中和処理により生成した最終中和残渣がテーリングダムに貯留される。
このような製錬プロセスの特徴としては、固液分離工程[3]で浸出スラリーを多段階で洗浄することによって、次工程の中和工程[4]での中和剤消費量と澱物量を削減でき、また浸出残渣の真密度を高めることができるため、固液分離特性を改善きることが挙げられる。また、浸出工程[2]での浸出処理を高温加圧浸出のみで行うことにより、プロセスを簡素化することができるという特徴も挙げられ、特許文献1に開示されている方法よりも利点があるとされている。
さらに、固液分離工程[3]で用いる洗浄液として、硫化工程[6]で生じた貧液を使用することで、貧液中に残留する硫酸を利用して浸出残渣に付着したニッケルを浸出させて回収でき、効果的かつ効率的な水の繰り返し使用が可能になるとされている。またさらに、中和工程[4]にて生成した中和澱物のスラリーを固液分離工程[3]に戻すことにより、ニッケルのロスを低減することができ、より有利であるとされている。
しかしながら、この製錬プロセスにおいては、以下のような課題がある。
第1に、設備の磨耗の抑制が挙げられる。ニッケル酸化鉱石は、鉱石スラリーとして各工程における設備間を搬送されるが、その搬送に際して鉱石スラリーによる設備材料の磨耗が著しく、とりわけ浸出工程における処理設備の配管、ポンプ等では補修頻度が高くなり、メンテナンスコストの上昇やプラント稼働率低下の大きな原因となっている。
第2に、最終中和残渣の量の低減が挙げられる。固液分離工程[3]で生じる浸出残渣は、硫化工程[6]から産出される余剰の貧液と合一され、最終中和工程[7]において石灰石スラリー又は消石灰スラリーを用いた中和処理が施され、無害化される。この最終中和工程[7]から産出される最終中和残渣は、テーリングダムで貯留されることになるが、この最終中和残渣には浸出残渣中のヘマタイト、クロマイト等の不純物成分のほか、中和処理により形成される石膏が含有されるため、資源化できず、テーリングダムの建設及び維持管理のための大きなコスト負担が生じていた。
このように、従来の高圧酸浸出法に基づく湿式製錬方法を用いた実用プラントでは、上述した課題の解決策が求められている。さらに、その課題を、効果的にかつ経済的に解決するためには、鉱石又は浸出残渣に含まれる不純物成分を効率的に分離回収することが有効な手段となり、これら不純物成分を資源化して有効活用することも求められている。
特許文献3には、高圧酸浸出法に基づく湿式製錬において、鉱石スラリーからシリカ鉱物、クロマイト又はケイ苦土鉱から選ばれる少なくとも1種を含む粒子を物理分離して回収する工程と、浸出残渣スラリー中のヘマタイト粒子を物理分離して回収する工程とを含むニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法が開示されている。しかしながら、鉱石又は浸出残渣に含まれる不純物成分の効率的な分離回収には、更なる改善が求められている。
特開平6−116660号公報 特開2005−350766号公報 特開2010−95788号公報
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、酸浸出処理を用いたニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおいて、酸浸出処理に供給する鉱石スラリーによる配管やポンプ等の設備の磨耗を抑制するとともに、湿式製錬プロセスにおける最終中和工程から産出される最終中和残渣量を低減することができる方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、鉱石スラリーに対して分級処理を施してゲーサイトを含む混合物と、クロマイトを含む混合物と、を分離し、次いでそのクロマイトを含む混合物に対して比重分離処理を施すことにより、クロマイトを効果的に分離除去して酸浸出処理に供する鉱石スラリー中のクロマイトを低減させることができ、上述した課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のものを提供する。
(1)本発明の第1の発明は、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法における酸浸出処理に供する鉱石スラリーの処理方法であって、前記ニッケル酸化鉱石の鉱石スラリーに対して、第1の装置としてハイドロサイクロンを使用して分級処理を施し、オーバーフローとしてゲーサイトを含む混合物を分離し、アンダーフローとしてクロマイトを含む混合物を分離する分級工程と、第2の装置として、少なくともスパイラルコンセントレーター1段を使用して、前記ハイドロサイクロンのアンダーフローとして分離したクロマイトを含む混合物に対して比重分離処理を行い、該クロマイトを含む混合物に含まれるゲーサイトを分離してクロマイトを濃縮させた混合物を得る比重分離工程とを有し、前記分級工程及び前記比重分離工程にて分離した前記ゲーサイトを含む混合物を、前記酸浸出処理に供する鉱石スラリーとすることを特徴とする鉱石スラリーの処理方法である。
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、第3の装置としてハイドロサイクロンを使用して、前記第2の装置を使用した比重分離処理で得られたクロマイトを含む混合物に対して分級処理を施し、オーバーフローとしてゲーサイトを含む混合物を分離し、アンダーフローとしてクロマイトを含む混合物を分離する第2の分級工程をさらに有し、
前記第3の装置により分離した前記ゲーサイトを含む混合物を、前記酸浸出処理に供する鉱石スラリーに含めることを特徴とする鉱石スラリーの処理方法である。
(3)本発明の第3の発明は、第2の発明において、第4の装置としてハイドロサイクロンを使用して、前記第3の装置を使用した分級処理で得られたクロマイトを含む混合物に対して分級処理を施し、オーバーフローとしてゲーサイトを含む混合物を分離し、アンダーフローとしてクロマイトを含む混合物を分離する第3の分級工程をさらに有し、前記第4の装置により分離した前記ゲーサイトを含む混合物を、前記酸浸出処理に供する鉱石スラリーに含めることを特徴とする鉱石スラリーの処理方法である。
(4)本発明の第4の発明は、第2又は第3の発明において、前記第2の分級工程では、アンダーフロー粒子のうち、粒子サイズ−45μmのものの存在比率が30%以下となるように、前記第3の装置であるハイドロサイクロンの圧力と該分級処理の対象とするスラリーの濃度を調整することを特徴とする鉱石スラリーの処理方法である。
(5)本発明の第5の発明は、第3の発明において、前記第3の分級工程では、アンダーフロー粒子のうち、粒子サイズ−45μmのものの存在比率が30%以下となるように、前記第4の装置であるハイドロサイクロンの圧力と該分級処理の対象とするスラリーの濃度を調整することを特徴とする鉱石スラリーの処理方法である。
(6)本発明の第6の発明は、ニッケル酸化鉱石の鉱石スラリーに対して酸浸出処理を施してニッケルを浸出させて回収するニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法において、前記ニッケル酸化鉱石から調製した鉱石スラリーのうち、前記酸浸出処理に供する鉱石スラリーからクロマイトを分離する鉱石スラリーの処理工程を含み、前記鉱石スラリーの処理工程は、前記ニッケル酸化鉱石の鉱石スラリーに対して、第1の装置としてハイドロサイクロンを使用して分級処理を施し、オーバーフローとしてゲーサイトを含む混合物を分離し、アンダーフローとしてクロマイトを含む混合物を分離する分級工程と、第2の装置として、少なくともスパイラルコンセントレーター1段を使用して、前記ハイドロサイクロンのアンダーフローとして分離したクロマイトを含む混合物に対して比重分離処理を行い、該クロマイトを含む混合物に含まれるゲーサイトを分離してクロマイトを濃縮させた混合物を得る比重分離工程とを有し、前記分級工程及び前記比重分離工程にて分離した前記ゲーサイトを含む混合物を、前記酸浸出処理に供する鉱石スラリーとすることを特徴とするニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法である。
(7)本発明の第7の発明は、第6の発明において、前記鉱石スラリーの処理工程を経て得られたクロマイトを含む混合物に対して、水分率が7%以下となるように乾燥処理を施すことを特徴とするニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法である。
本発明によれば、酸浸出処理に供する鉱石スラリー中のクロマイトを効率的にかつ効果的に低減させることができる。これにより、鉱石スラリーの移送等に使用する配管やポンプ等の設備の磨耗を抑制することができ、また、湿式製錬プロセスにおける最終中和工程から産出される最終中和残渣量を低減することができる。
ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスの一例を示す工程図である。 鉱石スラリーの処理方法の一例を示す工程図である。 鉱石スラリーの処理方法を適用したニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスの一例を示す工程図である。
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。
≪1.鉱石スラリーの処理方法≫
本実施の形態に係る鉱石スラリーの処理方法は、ニッケル酸化鉱石を原料とした湿式製錬プロセスにおける、例えば高温高圧下での酸浸出処理に供する鉱石スラリーを処理するための方法であり、鉱石スラリーに対する酸浸出処理に先立つ前処理方法である。
具体的に、この鉱石スラリーの処理方法は、図2に示す工程図のように、ニッケル酸化鉱石のスラリーに対して、第1の装置としてハイドロサイクロンを使用して分級処理を施し、オーバーフローとしてゲーサイトを含む混合物を分離し、アンダーフローとしてクロマイトを含む混合物を分離する分級工程S21と、第2の装置として所定の比重分離装置を使用して、分級工程S21にてアンダーフローとして分離したクロマイトを含む混合物に対して比重分離処理を行い、そのクロマイトを含む混合物に含まれるゲーサイトを分離してクロマイトを濃縮させた混合物を得る比重分離工程S22とを有する。なお、詳しくは後述するが、分級工程S21は、「第1の分級工程S21」ともいう。
また、この鉱石スラリーの処理方法では、比重分離工程S22に続いて、第3の装置としてハイドロサイクロンを使用して、比重分離処理で得られたクロマイトを含む混合物に対して分級処理を施し、オーバーフローとしてゲーサイトを含む混合物を分離し、アンダーフローとしてクロマイトを含む混合物を分離する第2の分級工程S23をさらに備えるようにすることができる。
ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおいて処理される原料となるニッケル酸化鉱石は、主としてリモナイト鉱及びサプロライト鉱等のいわゆるラテライト鉱である。ラテライト鉱のニッケル含有量は、通常、0.8〜2.5重量%であり、ニッケルは水酸化物、又は含水ケイ苦土(ケイ酸マグネシウム)鉱物として含有されている。また、鉄の含有量は、10〜50重量%であり、主として3価の水酸化物(ゲーサイト)の形態であるが、一部2価の鉄が含水ケイ苦土鉱物等に含有される。
さらに、ラテライト鉱においてはクロムが含まれており、そのクロム分の多くは、鉄又はマグネシウムを含むクロマイト鉱物として、例えば1〜5重量%程度含有されている。また、マグネシア分は、含水ケイ苦土鉱物のほか、未風化で硬度が高いニッケルをほとんど含有しないケイ苦土鉱物に含有される。珪酸分は、石英、クリストバライト(無定形シリカ)等のシリカ鉱物及び含水ケイ苦土鉱物に含有されている。
このように、ラテライト鉱において含有される、クロマイト鉱物、ケイ苦土鉱物、及びシリカ鉱物は、ニッケルをほとんど含有していない、いわゆる脈石成分である。
さて、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおいて、主としてラテライト鉱である原料のニッケル酸化鉱石は、鉱石粒度の調整が行われた後に水と混合されて鉱石スラリーとして調製されるが、ニッケル酸化鉱石には上述のようにクロマイトが含まれている。このようなクロマイトを含有する鉱石スラリーを、酸浸出処理に供するために配管やポンプ等の設備を用いて移送すると、それら設備を著しく磨耗させることが知られており、設備のメンテナンスや操業効率に大きな影響を及ぼす。
このことから、酸浸出処理に供する鉱石スラリーとしては、その酸浸出処理に先立ってクロマイト分を分離除去したものを用いることが望ましい。
ここで、鉱石スラリーを構成する鉱石粒子中の各成分分布状態について説明する。ニッケル酸化鉱石をEPMA観察すると、クロム含有量の高い部分は、鉄含有量の高い部分とは独立した単独相として存在する比率が高く、かつ20〜1000μmの粒径の鉱石に含まれることが多い。このことは、クロムを含む鉱物は、約20μm以上の粒子に多く含まれており、一方で、ニッケル及び鉄を含む鉱物は、約20μm未満の粒子に多く含まれていることを示している。
したがって、鉱石スラリーからクロマイトを効果的に分離回収するためには、原料とするニッケル酸化鉱石から粗大な粒子を除いた後の鉱石をスラリー化し、この鉱石スラリー中のニッケル酸化鉱石を適切な粒度になるように解砕し、適切な分級粒度を設定することが肝要である。なお、このときの解砕粒度としては、鉱石スラリーを形成する際の本来の目的を考慮して決められるが、約2mm以下程度が好ましい。
表1に、原料のニッケル酸化鉱石を約2mm以下の粒度に破砕して得られた鉱石スラリーの鉱石粒度分布と、各粒度区分での金属元素成分の品位の一例を示す。
Figure 2017052992
表1に示すように、鉱石スラリー中の鉱石のうち、75μm以上の粗粒部に、クロム、珪素、マグネシウム等が濃縮されることが分かる。一方で、75μm以下の細粒部には、鉄が濃縮されることが分かる。
このことから、先ず、原料のニッケル酸化鉱石の粒度調整を行って得られた、例えば2mm以下の鉱石スラリーに対して、第1の装置としてのハイドロサイクロンを用いて所定の分級粒度(分級点)で分級処理を施し、粗粒部と細粒部とに分級する。すると、ハイドロサイクロンのアンダーフローとして分離される粗粒部にクロマイトを含む混合物が得られ、オーバーフローとして分離される細粒部に鉄を含有するゲーサイト等を含む混合物を得ることができる。これにより、第1段階として、鉱石スラリーからクロマイトを分離することができる。以下、より具体的にこのような分級処理を行う分級工程から説明する。
<1−1.分級工程(第1の分級工程)>
分級工程(第1の分級工程)S21では、ニッケル酸化鉱石の鉱石スラリーに対し、第1の装置としてハイドロサイクロンを使用して分級処理を施し、オーバーフロー(O/F)としてゲーサイトを含む混合物を分離し、アンダーフロー(U/F)としてクロマイトを含む混合物を分離する。ここで、オーバーフローとして分級されたゲーサイトを含む混合物は、クロマイトが分離除去された鉱石スラリーであり、そのまま、湿式製錬プロセスのオートクレーブ等の加圧反応容器にて行われる酸浸出処理に供給する鉱石スラリーとなる。
分級工程S21では、分級装置であるハイドロサイクロンの運転条件を決定することによって、ゲーサイトを含む混合物と、クロマイトを含む混合物とに分級分離することができる。この分級処理では、所定の分級粒度に基づいて、ハイドロサイクロンのオーバーフローである細粒部がゲーサイトを含む混合物となり、アンダーフローである粗粒部がクロマイトを含む混合物となって分離される。なお、粗粒部に分級されるクロマイトを含む混合物には、主として、クロマイトが含有されているが、一部のゲーサイトも混入して含まれている。
具体的に、この分級工程S21における分級処理では、特に限定されないが、クロマイトを含む混合物中のクロマイト濃度が41重量%以上程度にまで濃縮させるようにすることが好ましい。
具体的に、ハイドロサイクロンの運転条件に関して、処理対象とする鉱石スラリーの分級粒度(分級点)としては、ニッケルが含有されるゲーサイトを細粒部として効率よく分級分離できればよく、好ましくは20〜150μmの範囲、より好ましくは45〜75μmの範囲から選択することが好ましい。すなわち、工業的に実施可能な分級粒度の下限としては、おおむね20μmである。このことから、分級粒度が20μm未満であると、粗粒部へのクロマイトの濃縮が不十分になるとともに、酸浸出処理に供給される鉱石スラリー中のニッケルがロスすることになる。一方で、分級粒度が150μmを超えると、細粒部においてクロマイト、ケイ苦土鉱、及びシリカ鉱物の除去が不十分となってしまう可能性がある。
一般的に、クロマイトの比重はゲーサイト等の水酸化鉄の比重よりも大きい。そのため、分級装置としてハイドロサイクロンを使用することによって、その鉱石スラリーを粒度に基づき、アンダーフローとしてクロマイトを含む混合物を、オーバーフローとしてゲーサイトを含む混合物を、精度良く分離することができる。また、ハイドロサイクロンは、大量の鉱石スラリーの処理に適しており、また、オーバーフローへの分配が多い場合の処理に適している。なお、ハイドロサイクロンは、1段のみでもよく、2段以上の複数段を備えるようにしてもよい。
ハイドロサイクロンの運転圧力、すなわちハイドロサイクロンに供給するスラリーの圧力としては、特に限定されないが、分級性能や処理速度等を考慮すると、0.1〜0.3MPa程度とすることが好ましい。
また、ハイドロサイクロンとしては、アンダーフローのパルプ濃度が50重量%以上となるように、その形状等を調整することが好ましい。
また、ハイドロサイクロンに供する鉱石スラリーのパルプ濃度としては、特に限定されないが、10〜30重量%程度であることが好ましく、15〜20重量%であることがより好ましい。ハイドロサイクロンによる分級分離においては、パルプ濃度が10重量%未満でも処理は可能であるものの、水を大量に必要とし、さらに後工程の沈降濃縮にも不利となってしまう。また、パルプ濃度が30重量%を超えると、スラリーの粘度が上昇し、分級分離が困難になる場合がある。これらのことから、パルプ濃度としては10〜30重量%の範囲に設定することが好ましく、これにより新たに水を供給する必要がなく、また希釈のためのタンクも不要になる。
また、分級処理を行うにあたっては、上述したようにハイドロサイクロンの分級性能や処理速度等を考慮して運転圧力等を調整することが好ましいが、その中でも、得られる粗粒部の粒子のうち、粒子サイズ−45μm(45μm未満)のものの存在比率が30%以下となるように、ハイドロサイクロンに供給するスラリー圧力と分級処理の対象とする鉱石スラリーの濃度を調整することが好ましい。
なお、粗粒部に分級される粒子において、粒子サイズが45μm未満の粒子の存在比率としては0%に近いほど望ましいが、その45μm未満の粒子の割合を下げていくと、分離させた細粒部に粗粒の低ニッケル含有粒子が混じってしまうことがあり、湿式製錬プロセスにおけるニッケルの回収ロスの要因となる可能性がある。
このように、パルプ濃度、ハイドロサイクロンの運転圧力、ハイドロサイクロンの形状等を最適化することにより、オーバーフローとして分級される細粒部へのクロマイトの分配をほとんど無くすことが可能となり、クロマイトを効果的に分離することができる。
<1−2.比重分離工程>
比重分離工程S22では、分級工程S21にてアンダーフローとして分離したクロマイトを含む混合物に対して、第2の装置として所定の比重分離装置を使用して比重分離処理を行い、そのクロマイトを含む混合物に含まれるゲーサイトを分離してクロマイトを濃縮させた混合物を得る。
上述したように、分級工程S21にてアンダーフローとして分級分離したクロマイトを含む混合物には、主として、クロマイトが含まれているが、一部ゲーサイトも含まれている。比重分離工程S22では、このようなクロマイトを含む混合物に対して比重分離処理を施すことによって、さらにゲーサイトとクロマイトとを効果的に分離することができ、言い換えるとクロマイトをさらに濃縮することができる。一方、比重分離させたゲーサイトを含む混合物は、湿式製錬プロセスの酸浸出処理に供給する鉱石スラリーとすることができる。
比重分離工程S22における比重分離処理では、少なくともスパイラルコンセントレーターを1段使用する。また、この比重分離処理では、少なくともスパイラルコンセントレーターを1段と、さらに、シェーキングテーブル、デンシティーセパレーター、及びスパイラルコンセントレーターから選択される1段以上を使用して処理することが好ましい。その中でも特に、スパイラルコンセントレーターを1段と、大量処理に適したデンシティーセパレーターでの処理を組み合わせることが好ましい。
(スパイラルコンセントレーター)
スパイラルコンセントレーターによる比重分離処理では、特に限定されないが、これに供給するスラリーのパルプコンテントを、15重量%を超えて35重量%未満とすることが好ましく、20重量%を超えて30重量%未満とすることがより好ましい。パルプコンテントが15重量%以下であると、分離性能が悪化する可能性があり、一方で、35重量%以上であると、比重分離処理中にクロマイト濃縮側、すなわちスパイラルコンセントレーターの内側で粒子の流れが滞留してビルドアップが起こり、分離が十分に行われなくなる可能性がある。
また、スパイラルコンセントレーターによる比重分離処理では、当該スパイラルコンセントレーターを複数段備えるようにして、処理対象のスラリーに対して複数回の処理を施すようにすることが好ましい。具体的には、クロマイトを分離したスパイラルコンセントレーターの内側のスラリーに対して、複数回のスパイラル処理を施す。このことにより、そのスラリーに含まれるクロマイトの成分を効果的に分離させることができ、より一層にクロマイトを濃縮させてクロマイト回収率を高めることができる。
(デンシティーセパレーター)
デンシティーセパレーターによる比重分離処理では、特に限定されないが、Teeter Water量を0.5〜7.0m・h−1/mとすることが好ましい。Teeter Water量が0.5m・h−1/m未満であると、干渉落下の効果が小さくなり、比重分離が効率よく行われない可能性がある。一方、7.0m・h−1/mより大きいと、クロマイト粒子まで上昇させ、オーバーフロー側に移行してしまう可能性がある。なお、この場合には浸出処理に供給されるスラリー中のクロマイト量が多くなり、クロマイトの回収のみならず、ヘマタイト中に含まれるようなるCr量、すなわちヘマタイト中のCr品位を効果的に低減させることができなくなる。
また、デンシティーセパレーターによる比重分離処理では、当該デンシティーセパレーターを複数段備えるようにして、処理対象のスラリーに対して複数回の処理を施すようにすることが好ましい。このことにより、アンダーフロー側に比重分離させることができるCrの品位を上昇させることができ、より効果的にクロマイトを分離することができる。
(シェーキングテーブル)
シェーキングテーブルによる比重分離処理では、特に限定されないが、これに供給するスラリーのパルプコンテントを、15重量%を超えて35重量%未満とすることが好ましく、20重量%を超えて30重量%未満とすることがより好ましい。
以上のように、本実施の形態においては、湿式製錬プロセスにおける酸浸出処理に先立ち、ニッケル酸化鉱石のスラリーに対して、第1の装置としてハイドロサイクロンを使用して分級処理を施し、オーバーフローとしてゲーサイトを含む混合物を分離し、アンダーフローとしてクロマイトを含む混合物を分離し、次に、第2の装置として所定の比重分離装置を使用して、分級によりアンダーフローとして分離したクロマイトを含む混合物に対して比重分離処理を行う。
このことによって、クロマイトを有効に除去することができ、酸浸出処理に供給する鉱石スラリーによる配管やポンプ等の設備の磨耗を抑制することができる。また、湿式製錬プロセスにおける最終中和工程から産出される最終中和残渣中のCr品位を有効に低下させ、その残渣量も効果的に低減させることができる。
<1−3.第2の分級工程>
さて、ニッケル酸化鉱石のスラリーに対して、上述した第1の分級工程S21における分級処理と、続く比重分離工程S22における比重分離処理とを行うことによって、ゲーサイトを含む混合物と、クロマイトを含む混合物とに効果的に分離させることができる。例えば、そのクロマイトとしてはCr品位で41〜50重量%以上程度までの濃縮が可能である。ところが、さらにクロマイトを濃縮する観点から、分離されたクロマイトを含む混合物に微量に含まれる微細なゲーサイトを除去することが望ましい。
そこで、本実施の形態においては、第2の分級工程S23として、比重分離工程S22における比重分離処理で分離されたクロマイトを含む混合物に対して、第3の装置であるハイドロサイクロンを使用して分級処理を施すようにすることができる。これにより、そのクロマイトを含む混合物に微量に存在する微細なゲーサイトを除去する。
第1の分級工程S21において第1の装置として使用するハイドロサイクロンと、当該第2の分級工程S23にて第3の装置として使用するハイドロサイクロンとは、いずれも鉱石スラリーに含まれるゲーサイトの除去のために使用するが、その役割が異なる。すなわち、第1の装置としてのハイドロサイクロンは、鉱石スラリー中に多く含まれるゲーサイトを除去して、次工程の比重分離工程S22での処理の負荷を軽減する目的で行う。これに対して、第2の分級工程S23にて使用するハイドロサイクロンは、微量に残存したゲーサイトを除去してクロマイトを濃縮のために行うことを目的とする。
ハイドロサイクロンの装置としては、第1の分級工程S21における処理、第2の分級工程S23における処理で、それぞれ同じものを用いることができる。
また、分級処理を行うにあたっては、ハイドロサイクロンの分級性能や処理速度等を考慮して運転圧力等を調整することが好ましいが、その中でも、得られるアンダーフローの粒子のうち、粒子サイズ−45μm(45μm未満)のものの存在比率が30%以下となるように、ハイドロサイクロンに供給するスラリー圧力と分級処理の対象とするスラリーの濃度を調整することが好ましい。
なお、アンダーフローに分級される粒子において、粒子サイズが45μm未満の粒子の存在比率としては0%に近いほど望ましいが、その45μm未満の粒子の割合を下げていくと、分離させたオーバーフローに粗粒の低ニッケル含有粒子が混じってしまうことがあり、湿式製錬プロセスにおけるニッケルの回収ロスの要因となる可能性がある。
このように、第2の分級工程として、比重分離処理を経て得られたクロマイトを含む混合物に対してハイドロサイクロンを使用して分級処理を施すことにより、オーバーフロー(O/F)としてゲーサイトを含む混合物を分離し、アンダーフロー(U/F)としてクロマイトを含む混合物を分離することができる。オーバーフローとして分級されたゲーサイトを含む混合物は、クロマイトが分離除去された鉱石スラリーであり、そのまま、湿式製錬プロセスのオートクレーブ等の加圧反応容器にて行われる酸浸出処理に供給する鉱石スラリーとなる。
<1−4.第3の分級工程>
さらに、第3の分級工程S24として、第2の分級工程S23により分級分離されたアンダーフローのクロマイトを含む混合物に対して、第4の装置であるハイドロサイクロンを使用して分級処理を施すようにすることができる。これにより、そのクロマイトを含む混合物に微量に存在する微細なゲーサイトをさらに除去することができる。
ハイドロサイクロンの装置としては、第1の分級工程S21における処理、第2の分級工程S23における処理で使用するものと同じものを用いることができる。
また、分級処理を行うにあたっては、ハイドロサイクロンの分級性能や処理速度等を考慮して運転圧力等を調整することが好ましいが、その中でも、得られるアンダーフローの粒子のうち、粒子サイズ−45μm(45μm未満)のものの存在比率が30%以下となるように、ハイドロサイクロンに供給するスラリー圧力と分級処理の対象とするスラリーの濃度を調整することが好ましい。
このように、第3の分級工程S24として、第2の分級工程S23での分級処理を経て得られたクロマイトを含む混合物に対してハイドロサイクロンを使用して分級処理をさらに施すことにより、オーバーフロー(O/F)としてゲーサイトを含む混合物を分離し、アンダーフロー(U/F)としてクロマイトを含む混合物を分離することができる。オーバーフローとして分級されたゲーサイトを含む混合物は、クロマイトが分離除去された鉱石スラリーであり、そのまま、湿式製錬プロセスのオートクレーブ等の加圧反応容器にて行われる酸浸出処理に供給する鉱石スラリーとなる。
以上のように、本実施の形態に係る鉱石スラリーの処理方法では、より好ましくは、第2の分級工程S23、第3の分級工程S24として、クロマイト含む混合物に対してハイドロサイクロンを用いた分級処理をさらに施すようにすることができる。これにより、酸浸出処理に供する鉱石スラリー中のクロマイトをより効果的に除去することができ、ニッケルの実収率の低下を抑えながら、酸浸出処理において使用する配管やポンプ等の設備の摩耗を防ぐことができる。
また、鉱石スラリー中のクロマイトを効果的に除去することができるため、湿式製錬プロセスにて生じる残渣、特に、最終中和工程を経て得られる最終中和残渣の量を低減させることができる。
<1−5.分離回収されるクロマイトについて>
上述したように、本実施の形態に係る鉱石スラリーの処理方法によれば、ニッケル酸化鉱石の鉱石スラリーからクロマイトを濃縮分離することができる。ここで、濃縮分離されたクロマイトは、その水分含有率が40%程度と高い。
一般的に、固体物質の運送においては、水分の含有量が多いと船舶輸送中に液状化現象を生じさせ、船舶の転覆を引き起こす可能性があると言われ、日本海事検定協会の調査結果では、クロマイトの運送許容水分値(Transportable Moisture Limit:TML)としては7%以下となっている。このため、分離回収したクロマイトを船舶搬送する場合には、その得られたクロマイトの水分含有率を下げる必要がある。
そこで、得られたクロマイトに対して脱水処理等を行って水分含有率の調整を行うことが好ましい。ところが、例えば水分含有率40%程度のクロマイトから水分を除去する脱水処理を行うに際しては、以下の問題点がある。
一般に、例えば浸出残渣の脱水方法としては、天日干し、加熱・焙焼法、フィルタープレス法、遠心分離法等の方法が挙げられ、水分除去効率の高さや経済性の観点からフィルタープレスによる方法が有望となる。しかしながら、特に効率性の高い高圧フィルタープレス(高温加圧濾過装置)を使用した脱水処理であっても、複数回の処理を繰り返し行わなければ水分率7%以下を達成することは困難である。また、例えば天日干し方法の場合には、天候により操業に要する時間、脱水時間の推測が難しく正確性に欠け、好ましい水分含有量に調整することが作業上困難である。さらに、加熱・焙焼の方法の場合には、エネルギー消費量が高くなり、経済性に悪影響を及ぼす。またさらに、遠心分離法の場合には、水分率として8%程度まで低下させるのが限界である。
そこで、本実施の形態においては、クロマイトに対する脱水処理の方法として、過熱蒸気方式を用いた脱水処理を行うようにする。
過熱蒸気方式による脱水処理は、被脱水物と過熱蒸気とを接触させて、過熱蒸気により被脱水物を加熱し、同時に被脱水物中の水分を過熱蒸気中に取り込んで脱水乾燥させるというものである。このような過熱蒸気方式による脱水処理により、クロマイトを含む残渣の水分含有率を、1回の脱水処理操作によって7%以下にすることができる。
具体的に、過熱蒸気方式による脱水処理の条件としては、特に限定されないが、脱水に供するクロマイトを含む残渣の水分率を40%程度とし、過熱蒸気の圧力を0.5〜0.7MPa(6bar)、過熱蒸気の温度を150〜180℃として行うことができる。
また、被脱水物としてのクロマイトを含む残渣(水分含有率が約40%)と、過熱蒸気との接触方法としては、特に限定されるものではなく、例えばドラム乾燥機方式でもよく、向流式熱交換器方式であってもよい。なお、ドラム乾燥方式とは、濾布で形成された円筒形のドラムにクロマイトを含む残渣を付着させ、過熱蒸気を吹き付ける方式であり、向流式熱交換器方式とは、乾燥機本体の上部からクロマイトを含む残渣を供給し、下部から過熱蒸気を供給して向流接触させ、必要に応じ残渣の落下途上に邪魔板を設置して接触効率を向上させる方式である。
なお、過熱蒸気を被脱水物に接触させるに際しては、脱水条件としての圧力や温度を適切に設定することが重要であり、例えば上述のように、過熱蒸気の圧力を0.5〜0.7MPa(6bar)とし、過熱蒸気の温度を150〜180℃として行うことができる。
過熱蒸気の圧力が低すぎると、乾燥が不十分となり得られるクロマイトケーキの水分含有率は7%を超えてしまう可能性があり、一方で、過熱蒸気の圧力が高すぎると、乾燥過剰となる可能性があり、また耐圧のための装置コストが割高になる。また、過熱蒸気の温度が低すぎる場合であっても、乾燥が不十分となり得られるクロマイトケーキの水分含有率は7%を超えてしまう可能性があり、一方で過熱蒸気の温度が高すぎる場合であっても、乾燥過剰となる可能性があり、エネルギー消費が多くなって経済的に好ましくない。
≪2.ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスについて≫
次に、上述した鉱石スラリーの処理方法を適用した、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスについて具体的に説明する。ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスは、例えば高圧酸浸出法(HPAL法)を用いて、ニッケル酸化鉱石からニッケルを浸出させて回収する製錬プロセスである。
図3は、ニッケル酸化鉱石の高圧酸浸出法による湿式製錬プロセスの流れの一例を示す工程図である。図3の工程図に示すように、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスは、ニッケル酸化鉱石をスラリー化する鉱石処理工程S1と、鉱石スラリーに硫酸を添加して高温高圧下で酸浸出処理を施す浸出工程S3と、得られた浸出スラリーを多段洗浄しながら残渣を分離してニッケルと共に不純物元素を含む浸出液を得る固液分離工程S4と、浸出液のpHを調整して不純物元素を含む中和澱物を分離しニッケルを含む中和終液を得る中和工程S5と、中和終液に硫化剤を添加することで亜鉛を含む硫化物(硫化亜鉛澱物)とニッケル回収用の母液を生成する亜鉛除去工程S6と、ニッケル回収用の母液に硫化剤を添加することでニッケルを含む硫化物(ニッケル硫化物)を生成させる硫化工程S7とを有する。さらに、この湿式製錬プロセスは、固液分離工程S4にて分離された浸出残渣スラリーや硫化工程S7にて排出された貧液を回収し、それらを無害化して最終中和残渣を生成する最終中和工程S8を有する。
そして、本実施の形態においては、鉱石スラリーに対する硫酸による酸浸出処理を施すに先立ち、鉱石処理工程S1にてスラリー化した鉱石スラリーに対して、クロマイトを除去する処理を施す鉱石スラリー処理工程S2を有することを特徴としている。
(1)鉱石処理工程
鉱石処理工程S1では、原料鉱石であるニッケル酸化鉱石に対して、所定の分級点で分級してオーバーサイズの鉱石粒子を除去した後に、アンダーサイズの鉱石粒子に水を添加して粗鉱石スラリーとする。
ここで、原料鉱石であるニッケル酸化鉱石は、ニッケルやコバルトを含有する鉱石であり、上述したように、主としてリモナイト鉱及びサプロライト鉱等のいわゆるラテライト鉱である。ラテライト鉱のニッケル含有量は、0.8〜2.5重量%程度であり、ニッケルは水酸化物、又は含水ケイ苦土(ケイ酸マグネシウム)鉱物として含有される。また、鉄の含有量は、10〜50重量%であり、主として3価の水酸化物(ゲーサイト)の形態であるが、一部2価の鉄が含水ケイ苦土鉱物等に含有される。
さらに、ラテライト鉱においてはクロムが含まれており、そのクロム分の多くは、鉄又はマグネシウムを含むクロマイト鉱物として、例えば1〜5重量%程度含有されている。また、マグネシア分は、含水ケイ苦土鉱物のほか、未風化で硬度が高いニッケルをほとんど含有しないケイ苦土鉱物に含有される。また、珪酸分は、石英、クリストバライト(無定形シリカ)等のシリカ鉱物及び含水ケイ苦土鉱物に含有されている。
ニッケル酸化鉱石の分級方法については、所望とする粒径に基づいて鉱石を分級できるものであれば特に限定されず、例えば、グリズリーや振動篩等を用いた篩分けによって行うことができる。さらに、その分級点についても、特に限定されず、所望とする粒径値以下の鉱石粒子からなる鉱石スラリーを得るための分級点を適宜設定することができる。
(2)鉱石スラリー処理工程
本実施の形態においては、鉱石スラリーに対して浸出工程S3にて酸浸出処理を施すに先立ち、鉱石処理工程S1を経て得られた鉱石スラリーに対して、クロマイトを分離除去する処理を施すことを特徴としている。
鉱石スラリー処理工程S2は、鉱石スラリーに対して、第1の装置としてハイドロサイクロンを使用して分級処理を施し、オーバーフローとしてゲーサイトを含む混合物を分離し、アンダーフローとしてクロマイトを含む混合物を分離する分級工程S21と、第2の装置として所定の比重分離装置を使用して、分級工程S21にてアンダーフローとして分離したクロマイトを含む混合物に対して比重分離処理を行い、そのクロマイトを含む混合物に含まれるゲーサイトを分離してクロマイトを濃縮させた混合物を得る比重分離工程S22とを有する。
また、鉱石スラリー処理工程S2は、比重分離工程S22に続いて、比重分離されたクロマイト含む混合物に対して、第3の装置としてハイドロサイクロンを使用して分級処理を施し、オーバーフローとしてゲーサイトを含む混合物を分離し、アンダーフローとしてクロマイトを含む混合物を分離する第2の分級工程S23を備えるようにすることができる。
さらに、鉱石スラリー処理工程S2は、第2の分級工程S23に続いて、分級分離されたアンダーフローのクロマイトを含む混合物に対して、第4の装置としてハイドロサイクロンを使用してさらに分級処理を施し、オーバーフローとしてゲーサイトを含む混合物を分離し、アンダーフローとしてクロマイトを含む混合物を分離する第3の分級工程S24をさらに備えるようにすることができる。
鉱石スラリー処理工程S2におけるクロマイトの除去処理の詳細な説明は、上述したものと同様であるためここでは省略するが、このように鉱石スラリーに対して処理を施すことによって、鉱石スラリーから、クロマイトを効率的にかつ効果的に分離除去することができ、ニッケル実収率の低下を抑えながら、鉱石スラリーに対して酸浸出処理を施す際の、配管やポイプ等の設備の摩耗を防ぐことができる。また、湿式製錬プロセスにおいて最終的に得られる最終中和残渣の量を低減させることもできる。
なお、鉱石スラリー処理工程S2における、第1の分級工程S21にて分級分離したゲーサイトを含む混合物と、比重分離工程S22にて分離したゲーサイトを含む混合物とが、後述する浸出工程S3における酸浸出処理に供される鉱石スラリーとなる。また、第2の分級工程S23、第3の分級工程S24にて分級処理を施した場合には、それぞれの処理により得られたゲーサイトを含む混合物が、酸浸出処理に供される鉱石スラリーとなる。なお、これらの鉱石スラリーは、ポンプによる圧力で配管を通って、酸浸出処理を行うオートクレーブ等の加圧反応容器に装入される。
(3)浸出工程
浸出工程S3では、鉱石スラリー処理工程S2を経てクロマイトが分離除去された後の鉱石スラリーに対して、例えば高圧酸浸出法を用いた酸浸出処理を施す。具体的には、オートクレーブ等の加圧反応容器内で、原料となる鉱石スラリーに硫酸を添加し、220〜280℃、好ましくは240〜270℃の高温の温度条件下で加圧しながら鉱石スラリーを攪拌し、浸出液と浸出残渣とからなる浸出スラリーを生成させる。
浸出工程S3における浸出処理では、下記式(i)〜(iii)で表される浸出反応と下記式(iv)及び(v)で表される高温熱加水分解反応が生じ、ニッケルやコバルト等の硫酸塩としての浸出と、浸出された硫酸鉄のヘマタイトとしての固定化が行われる。
・浸出反応
MO+HSO⇒MSO+HO・・・(i)
(なお、式中Mは、Ni、Co、Fe、Zn、Cu、Mg、Cr、Mn等を表す)
2Fe(OH)+3HSO⇒Fe(SO+6HO・・・(ii)
FeO+HSO→FeSO+HO・・・(iii)
・高温熱加水分解反応
2FeSO+HSO+1/2O⇒Fe(SO+HO・・・(iv)
Fe(SO+3HO⇒Fe+3HSO・・・(v)
酸浸出処理で用いる硫酸の使用量としては、特に限定されず、鉱石中の鉄が浸出され、へマタイトに変化するのに必要な化学当量よりもやや過剰量、例えば、鉱石1トン当り300〜400kgが用いられる。特に、鉱石1トン当りの硫酸添加量が400kgを超えると、硫酸コスト及び後工程での中和剤コストが増加して好ましくない。また、生成物からみた硫酸使用量としては、浸出終了時の遊離硫酸の濃度が25〜50g/Lとなることを目標とし、好ましくは35〜45g/Lになるような硫酸使用量とする。このような条件を満足することによって、浸出残渣の真密度を高めて高密度の浸出残渣を安定的に産出し、スラリーの固液分離性を向上させることができ、次工程の固液分離工程S4の設備の簡素化を行うことができる。
ここで、酸浸出処理においては、鉱石スラリー処理工程S2を経て得られた鉱石スラリーが、配管等の設備を通じて、例えばオートクレーブ等に移送される。このとき、鉱石スラリー中にクロマイトが含まれていると、その配管やポンプ等の設備を著しく摩耗させ、補修頻度を高めてメンテナンスコストを上昇させてしまう。また、補修時にはプラントの稼働を停止させる必要も生じ、操業効率を悪化させる大きな要因となる。
この点、本実施の形態では、鉱石スラリー処理工程S2において、鉱石スラリーからクロマイトを効率的にかつ効果的に分離除去しているので、浸出工程S3における酸浸出処理に供される鉱石スラリー中のクロマイトが低減されている。その結果、鉱石スラリーを配管等の設備を介して移送するに際しても、その配管等の設備の摩耗を抑制することができ、操業効率の低下を防ぐことが可能となる。
(4)固液分離工程
固液分離工程S4では、浸出工程S3を経て得られた浸出スラリーを多段で洗浄しながら、ニッケル及びコバルトのほか不純物元素を含む浸出液と、浸出残渣とを分離する。
固液分離工程S4では、例えば、浸出スラリーと洗浄液とを混合した後、シックナー等の固液分離設備により固液分離処理を施す。具体的には、先ず、浸出スラリーが洗浄液により希釈され、次に、スラリー中の浸出残渣がシックナーの沈降物として濃縮される。これにより、浸出残渣に付着するニッケル分をその希釈の度合いに応じて減少させることができる。なお、固液分離処理においては、例えばアニオン系の凝集剤を添加して行うようにしてもよい。
固液分離工程S4では、このように浸出スラリーを多段洗浄しながら固液分離をすることが好ましい。多段洗浄方法としては、例えば、浸出スラリーに対して洗浄液を向流に接触させる連続向流洗浄法を用いることができる。これにより、系内に新たに導入する洗浄液を削減できるとともに、ニッケル及びコバルトの回収率を95%以上に向上させることができる。また、洗浄液(洗浄水)としては、特に限定されないが、ニッケルを含まず、工程に影響を及ぼさないものを用いることが好ましい。例えば、洗浄液として、好ましくは、後工程の硫化工程S7で得られる貧液を繰り返して利用することができる。
(5)中和工程
中和工程S5では、固液分離工程S4にて分離された浸出液のpHを調整し、不純物元素を含む中和澱物を分離して、ニッケルやコバルトを含む中和終液を得る。
具体的に、中和工程S5では、分離された浸出液の酸化を抑制しながら、得られる中和終液のpHが4以下、好ましくは3.0〜3.5、より好ましくは3.1〜3.2になるように、その浸出液に炭酸カルシウム等の中和剤を添加して、中和終液と不純物元素として3価の鉄やアルミニウム等を含む中和澱物スラリーとを生成させる。中和工程S5では、このようにして不純物を中和澱物として除去し、ニッケル回収用の母液となる中和終液を生成させる。
(6)亜鉛除去工程
亜鉛除去工程S6では、ニッケル及びコバルトを硫化物として分離するに先立って、中和工程S5で得られた中和終液に対して、硫化水素ガス等の硫化剤を添加して硫化反応を生じさせ、亜鉛を含む硫化物を生成し、その硫化亜鉛澱物のスラリーとニッケル回収用の母液とを生成する。
亜鉛除去工程S6における処理では、硫化反応の際に弱い条件を作り出すことで硫化反応の速度を抑制し、亜鉛と比較して濃度の高い共存するニッケルの共沈を抑制する。このことにより、中和終液から亜鉛を選択的に除去する。この亜鉛除去処理により得られた硫化亜鉛澱物のスラリーは、中和工程S5で得られる中和澱物スラリーと同様に、最終中和工程S8に移送させて処理することができる。
(7)硫化工程
硫化工程S7では、亜鉛除去工程S6を経て得られたニッケル回収用の母液に対して、硫化水素ガス等の硫化剤を添加して硫化反応を生じさせ、ニッケル及びコバルトを含む硫化物(以下、「ニッケル・コバルト混合硫化物」ともいう)と貧液とを生成させる。
ニッケル回収用の母液は、浸出液から中和工程S5を経て不純物成分が低減され、また亜鉛除去工程S6を経て亜鉛が除去された硫酸酸性溶液である。なお、このニッケル回収用の母液には、不純物成分として鉄、マグネシウム、マンガン等が数g/L程度含まれている可能性があるが、これら不純物成分は、回収するニッケル及びコバルトに対して硫化物としての安定性が低く、したがって生成するニッケル・コバルト混合硫化物に含有されることはない。
硫化工程S7における硫化処理は、ニッケル及びコバルトの回収設備にて実行される。回収設備は、例えば、母液に対して硫化水素ガス等を吹き込んで硫化反応を行う硫化反応槽と、硫化反応後液からニッケル・コバルト混合硫化物を分離回収する固液分離槽とを備える。固液分離槽は、例えばシックナー等によって構成され、生成した硫化物を含んだ硫化反応後のスラリーに対して沈降分離処理を施すことで、沈殿物であるニッケル・コバルト混合硫化物をシックナーの底部より分離回収する。一方で、水溶液成分はオーバーフローさせて貧液として回収する。なお、回収した貧液は、ニッケル等の有価金属濃度が極めて低い溶液であり、硫化されずに残留した鉄、マグネシウム、マンガン等の不純物元素を含む。この貧液は、後述する最終中和工程S8に移送されて無害化処理される。
(8)最終中和工程
最終中和工程S8では、上述した硫化工程S7にて排出された鉄、マグネシウム、マンガン等の不純物元素を含む貧液に対して、排出基準を満たす所定のpH範囲に調整する中和処理(無害化処理)を施す。この最終中和工程S8では、固液分離工程S4における固液分離処理から排出された浸出残渣のスラリーも併せて処理することもできる。また、必要に応じて、亜鉛除去工程S6にて得られる硫化亜鉛澱物のスラリーを併せて処理することもできる。
最終中和工程S8における無害化処理の方法、すなわちpHの調整方法としては、特に限定されないが、例えば炭酸カルシウム(石灰石)スラリーや水酸化カルシウム(消石灰)スラリー等の中和剤を添加することによって所定の範囲に調整することができる。具体的には、pHを8〜9程度に調整する。
このような中和剤を用いた中和処理によって、最終中和残渣が生成され、テーリングダムに貯留される。一方で、中和処理後の溶液は、排出基準を満たすものとなり、系外に排出される。
ここで、最終中和工程S8にて生成される最終中和残渣には、浸出残渣中のヘマタイトやクロマイト等の不純物成分のほか、中和工程S5等にて発生した石膏等を含有する。そして、当然に、これらの不純物成分等の量が多ければ、最終中和残渣の量も多くなり、テーリングダムの建設や維持管理のコスト負担も大きくなる。
この点に、本実施の形態では、鉱石スラリー処理工程S2において、鉱石スラリーからクロマイトを効率的にかつ効果的に分離除去しているので、浸出工程S3における酸浸出処理に供される鉱石スラリー中のクロマイトが低減されている。このことにより、その酸浸出処理により生成する浸出残渣中のクロマイトの量も抑制させることができ、したがって、最終中和工程S8にて生成される最終中和残渣の量も有効に低減させることができる。これにより、テーリングダムの建設や維持管理のコスト上昇も抑えることができ、効率的な操業を行うことが可能となる。
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における金属の分析は、蛍光X線分析法又はICP発光分析法を用いて行った。
[実施例1:鉱石スラリーに対する処理]
ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセス(図1の工程図を参照)において、オートクレーブを使用した硫酸による酸浸出処理を行うにあたって、ニッケル酸化鉱石から調製した鉱石スラリーのうち、その酸浸出処理に供する鉱石スラリーからクロマイトを分離する鉱石スラリーの処理(図2の工程図を参照)を行った。
(第1の分級工程)
先ず、第1の分級工程として、湿式製錬の原料となるニッケル酸化鉱石から調製した鉱石スラリーに対し、第1の装置としてハイドロサイクロン(アタカ大機株式会社製、MD−9型)を使用して分級処理を行った。なお、ハイドロサイクロンにおいては、スラリー濃度を15重量%、スラリー温度を常温とし、その運転圧力を0.2MPaとして分級処理を行った。また、下記表2に、分級処理の対象とした鉱石スラリーの組成と、ハイドロサイクロンのアンダーフロー(ハイドロサイクロンU/F)の組成を併せて示す。表2中の組成数値の単位は「重量%」である。
Figure 2017052992
ハイドロサイクロンを用いた分級処理により、ハイドロサイクロンのオーバーフロー(O/F)としてゲーサイトを含む混合物を、ハイドロサイクロンのアンダーフロー(U/F)としてクロマイトとゲーサイトとを含む混合物を、それぞれ分離した。具体的には、ハイドロサイクロンにより得られる粗粒部であるアンダーフローでは、Crが処理のために供給した鉱石スラリー中の2.5重量%に対して13.5重量%となり、SiOが供給した鉱石スラリー中の4.4重量%に対して6.0重量%となり、それぞれ上昇した。一方で、Fe品位は供給した鉱石スラリー中の51.5重量%に対して45.2重量%となり低下した。
これらのことから、鉱石スラリーに対する分級処理により、ハイドロサイクロンのアンダーフローである粗粒部にクロマイト、シリカ鉱物が濃縮され、鉄の水酸化物であるゲーサイトと分離されていることが分かった。
(比重分離について実証)
次に、デンシティーセパレーター、スパイラルコンセントレーターによる分離性を把握するための実証試験を行った。
(1)デンシティーセパレーターによる比重分離
先ず、デンシティーセパレーターによる分離性を把握するために、第1の分級工程にて得られたハイドロサイクロンU/F(スラリー濃度:33重量%)を、デンシティーセパレーター(Density Separator:OutotecInc.社製,「Tanksizer TS−Lab」,タンク内径228.6mm)に供給して比重分離試験を行った。なお、デンシティーセパレーターへのスラリーの供給速度は56kg/Hrとし、スラリーの温度は常温とした。また、このときのTeeterWater量は、6.9m・h−1/m、SetPoint(密度計の設定値)を20として行った。
表3に、デンシティーセパレーターへのフィード(ハイドロサイクロンU/F)及びアンダーフロー(デンシティーセパレーターU/F)の組成をそれぞれ記す。表3中の組成数値の単位は「重量%」である。
Figure 2017052992
表3に示すように、デンシティーセパレーターにより得られる粗粒部(デンシティーセパレーターU/F)では、Crがハイドロサイクロンによる分級処理時(ハイドロサイクロンU/F)の13.5重量%に対して16.9重量%となり上昇した。一方で、SiOはハイドロサイクロンU/Fの6.0重量%に対して1.9重量%となり、Fe品位はハイドロサイクロンU/Fの45.2重量%に対して35.2重量%となり、それぞれ低下した。
この結果から、デンシティーセパレーターによる比重分離処理により、デンシティーセパレーターのアンダーフローである粗粒部にクロマイトがさらに濃縮され、鉄の水酸化物であるゲーサイトと分離されていることが分かった。
(2)スパイラルコンセントレーターによる比重分離
次に、スパイラルコンセントレーターによる分離性を把握するために、第1の分離工程にて得られたハイドロサイクロンU/F(スラリー濃度:33重量%)を、スパイラルコンセントレーター(Spiral Concentrator:OutotecInc.社製、「MC7000」)に供給して比重分離試験を行った。
表4に、分離試験の結果を示す。表4中の組成数値の単位は「重量%」である。
Figure 2017052992
表4に示すように、スパイラルコンセントレーターにより得られる『Concentrate』では、Crがハイドロサイクロンによる分級処理時(ハイドロサイクロンU/F)の13.5重量%に対して41.1重量%に上昇し、『Middling』では24.4重量%に上昇した。一方で、『Tailing』では5.3重量%となった。
この結果から、スパイラルコンセントレーターによる処理によっても、クロマイトをさらに濃縮して分離できることが分かった。
(比重分離工程)
上述した比重分離の実証試験を踏まえて、上述した第1の分級工程に続く比重分離工程として比重分離処理を行った。この比重分離工程では、第2の装置として、デンシティーセパレーターと、スパイラルコンセントレーターとを用いて比重分離処理を行った。
具体的には、上述したデンシティーセパレーターを用いた実証試験で得られたデンシティーセパレーターU/F(スラリー濃度75重量%)を水で希釈してスラリー濃度を25重量%とし、そのスラリーをスパイラルコンセントレーター(Spiral Concentrator:OutotecInc.社製、「MC7000」)に供給して分離試験を行った。
表5に、比重分離処理の結果を示す。表5中の組成数値の単位は「重量%」である。
Figure 2017052992
表5に示すように、スパイラルコンセントレーターにより得られる『Concentrate』では、CrがデンシティーセパレーターU/F中の16.9重量%に対して41.2重量%に上昇し、『Middling』では24.3重量%に上昇した。一方で、『Tailing』では5.0重量%となった。
この結果から、上述した比重分離工程における処理によって、クロマイトを濃縮させて分離できることが分かった。
[実施例2:ハイドロサイクロンによる第2の分級処理の検討]
実施例2では、実施例1における比重分離処理、具体的にはスパイラルコンセントレーターによる処理で得られた『Concentrate』をスラリー濃度20重量%に希釈し、第3の装置としてハイドロサイクロンを用いた第2の分級処理を行った(第2の分級工程)。なお、このハイドロサイクロンによる運転圧力は0.2MPaとした。
表6に、分級処理の結果を示す。表6中の組成数値の単位は「重量%」である。
Figure 2017052992
表6に示すように、ハイドロサイクロンにより得られるハイドロサイクロンU/Fでは、Crが供給されたスラリー中の41.2重量%に対して45.2重量%に上昇した。一方で、Feは供給されたスラリー中の28.5重量%に対して24.1重量%に低下した。
この結果から、第2の分級工程としてハイドロサイクロンによる分級処理をさらに施すことによって、ゲーサイトをより効果的に分離することができ、クロマイトのCr品位を上昇させることができることが分かった。このような処理により、一般に市販されるクロマイトのCr品位を上回る濃度まで濃縮が可能であることが分かった。
[実施例3:ハイドロサイクロンによる第2の分級処理の条件検討]
次に、実施例2にて行った最終のハイドロサイクロン、すなわちハイドロサイクロンを用いた第2の分級処理における条件を検討した。
具体的には、ハイドロサイクロンに投入するスラリーの固形分濃度(wt%)と、投入圧力を表7及び表8に示すように変化させて、ハイドロサイクロンU/Fにおけるゲーサイトの存在割合の変化を調べた。また、そのときのCrの濃度を測定した。表7及び表8にそれぞれ結果を示す。なお、Feedスラリーとしては、上記表6に示したゲーサイト存在割合が9.5wt%のスラリーを用いた。
Figure 2017052992
Figure 2017052992
表7及び表8に示すように、ハイドロサイクロンに供給するスラリー中の固形分を下げることにより、あるいは投入圧力を下げることにより、ゲーサイトの分離効果は大きくなり、それに伴ってCr品位も上昇してより効果的にクロマイトを濃縮できることが分かった。
この結果から、ハイドロサイクロンを用いた第2の分級処理においては、安定的にCr品位が45重量%を超える条件、すなわちスラリー中の固形分濃度が17重量%以下、スラリー投入圧力が0.2MPa以下の条件で操業することが特に好ましいことが分かった。
[実施例4:鉱石スラリーに対する処理]
ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセス(図1の工程図を参照)において、オートクレーブを使用した硫酸による酸浸出処理を行うにあたって、ニッケル酸化鉱石から調製した鉱石スラリーのうち、その酸浸出処理に供する鉱石スラリーからクロマイトを分離する鉱石スラリーの処理(図2の工程図を参照)を行った。
より具体的に、実施例4では、第1の分級工程を経た後、デンシティーセパレーターによる比重分離を2処理繰り返した後にスパイラルコンセントレーターを用いた比重分離処理を施す比重分離工程を行った。
(第1の分級工程)
先ず、第1の分級工程として、湿式製錬の原料となるニッケル酸化鉱石から調製した鉱石スラリーに対し、第1の装置としてハイドロサイクロン(アタカ大機株式会社製、MD−9型)を使用して分級処理を行った。なお、ハイドロサイクロンにおいては、スラリー濃度を15重量%、スラリー温度を常温とし、その運転圧力を0.2MPaとして分級処理を行った。また、下記表9に、分級処理の対象とした鉱石スラリーの組成と、ハイドロサイクロンのアンダーフロー(ハイドロサイクロンU/F)の組成を併せて示す。表9中の組成数値の単位は「重量%」である。
Figure 2017052992
表9に示すように、ハイドロサイクロンを用いた分級処理により、ハイドロサイクロンのオーバーフロー(O/F)としてゲーサイトを含む混合物を、ハイドロサイクロンのアンダーフロー(U/F)としてクロマイトとゲーサイトとを含む混合物を、それぞれ分離した。具体的には、ハイドロサイクロンにより得られる粗粒部であるアンダーフローでは、Crが処理のために供給した鉱石スラリー中の2.5重量%に対して13.5重量%となり、SiOが供給した鉱石スラリー中の4.4重量%に対して6.0重量%となり、それぞれ上昇した。一方で、Fe品位は供給した鉱石スラリー中の51.5重量%に対して45.2重量%となり低下した。
これらのことから、鉱石スラリーに対する分級処理により、ハイドロサイクロンのアンダーフローである粗粒部にクロマイト、シリカ鉱物が濃縮され、鉄の水酸化物であるゲーサイトと分離されていることが分かった。
(比重分離工程)
(1)1段目のデンシティーセパレーターによる比重分離
次に、第1の分級工程にて得られたハイドロサイクロンU/F(スラリー濃度:33重量%)を、デンシティーセパレーター(Density Separator:OutotecInc.社製,「Tanksizer TS−Lab」,タンク内径228.6mm)に供給した。なお、デンシティーセパレーターへのスラリーの供給速度は56kg/Hrとし、スラリーの温度を常温とした。また、このときのTeeterWater量は、6.9m・h−1/m、SetPoint(密度計の設定値)を20として行った。
表10に、デンシティーセパレーターへのフィード(ハイドロサイクロンU/F)及びアンダーフロー(デンシティーセパレーターU/F)の組成をそれぞれ記す。表10中の組成数値の単位は「重量%」である。なお、この比重分離処理では、デンシティーセパレーターを2段用いて処理したことから、便宜的に、1段目のデンシティーセパレーターを「デンシティーセパレーター[1]」と記し、2段目のデンシティーセパレーターを「デンシティーセパレーター[2]」と記して区別する。
Figure 2017052992
表10に示すように、デンシティーセパレーター[1]により得られる粗粒部(デンシティーセパレーター[1]U/F)では、Crがハイドロサイクロンによる分級処理時(ハイドロサイクロンU/F)の13.5重量%に対して16.9重量%となり上昇した。一方で、SiOはハイドロサイクロンU/Fの6.0重量%に対して1.9重量%となり、Fe品位はハイドロサイクロンU/Fの45.2重量%に対して35.2重量%となり、それぞれ低下した。
このことから、デンシティーセパレーターによる比重分離処理により、デンシティーセパレーターのアンダーフローである粗粒部にクロマイトがさらに濃縮され、鉄の水酸化物であるゲーサイトと分離されていることが分かった。
(2)2段目のデンシティーセパレーターによる比重分離
続いて、そのデンシティーセパレーター[1]U/F(スラリー濃度75重量%)を水で希釈してスラリー濃度を40重量%とし、再度デンシティーセパレーターを用いた比重分離処理を行った。
表11に、デンシティーセパレーター[2]へのフィード(1段目のデンシティーセパレーターによる処理で得られたデンシティーセパレーター[1]U/F)及びアンダーフロー(2回目のデンシティーセパレーター処理で得られたデンシティーセパレーター[2]U/F)の組成をそれぞれ記す。
Figure 2017052992
表11に示すように、デンシティーセパレーター[2]により得られる粗粒部(デンシティーセパレーター[2]U/F)では、Crがデンシティーセパレーター[1]U/Fの16.9重量%に対して21.1重量%となり上昇した。一方で、SiOはデンシティーセパレーター[1]U/Fの1.9重量%に対して1.3重量%となり、Fe品位はデンシティーセパレーター[1]U/Fの35.2重量%に対して30.6重量%となり、それぞれ低下した。
このことから、デンシティーセパレーターによる比重分離処理を繰り返すことにより、クロマイトの濃縮がさらに進行することが分かった。
(3)1段目のスパイラルセパレーターによる比重分離
次に、デンシティーセパレーター[2]で得られたデンシティーセパレーター[2]U/F(スラリー濃度75重量%)を水で希釈してスラリー濃度を25重量%とし、スパイラルセパレーター(Spiral Concentrator:OutotecInc.社製,「MC7000」)を用いて比重分離処理を行った。
表12に、スパイラルセパレーターによる比重分離処理の結果を示す。表12中の組成数値の単位は「重量%」である。
Figure 2017052992
表12に示すように、スパイラルコンセントレーターにより得られる『Concentrate』では、Crがデンシティーセパレーター[2]U/F中の21.1重量%に対して44.5重量%に上昇し、『Middling』では30.3重量%に上昇した。一方で、『Tailing』では6.3重量%となった。
この結果から、上述した比重分離処理によって、クロマイトをさらに濃縮させて分離できることが分かった。
(4)2段目のスパイラルセパレーターによる比重分離
続いて、Cr濃度30.3重量%となった1段目のスパイラルコンセントレーターの『Middling』に対して、再度スパイラルコンセントレーターを用いた比重分離処理を施した。
表13に、比重分離処理の結果を示す。表13中の組成数値の単位は「重量%」である。なお、便宜上、1段目のスパイラルコンセントレーターにより得られたMiddlingを『Middling[1]』と記し、2段目のスパイラルコンセントレーターにより得られたMiddlingを『Middling[2]』と記して区別する。
Figure 2017052992
表13に示すように、1段目のスパイラルコンセントレーターにより得られた『Middling[1]』に対して再度スパイラルコンセントレーターを用いた比重分離処理を施すことにより、得られた『Concentrate』では、CrがMiddling[1]の30.3重量%に対して42.5重量%に上昇した。一方で、『Middling[2]』では19.4重量%に、『Tailing』では19.5重量%にそれぞれ低下した。
なお、得られた『Middling[2]』、『Tailing』については、必要に応じて再度スパイラルコンセントレーターを用いた処理を行うこともできる。
(第2の分級工程)
次に、比重分離工程を経て、1段目及び2段目のスパイラルコンセントレーターで得られた『Concentrate』を混合して、スラリー濃度を20重量%に希釈し、ハイドロサイクロンを用いて第2の分級処理を行った(第2の分級工程)。なお、このハイドロサイクロンによる運転圧力は0.2MPaとした。
表14に、分級処理の結果を示す。表14中の組成数値の単位は「重量%」である。
Figure 2017052992
表14に示すように、ハイドロサイクロンにより得られるハイドロサイクロンU/Fでは、Crが供給されたスラリー中の44.1重量%に対して46.1重量%に上昇した。一方で、Feは供給されたスラリー中の24.7重量%に対して23.5重量%に低下した。
このことから、ハイドロサイクロンによる第2の分級処理により、ゲーサイトがより効果的に分離され、クロマイトのCr品位をより一層に濃縮させることができることが分かった。
[実施例5:乾燥処理について]
実施例4にて得られたハイドロサイクロンU/Fのスラリー(水分含有率40%)、すなわちクロマイトを濃縮させたすラリーを、過熱蒸気方式の脱水装置(蒸気圧力0.6MPa、温度165℃)に装入して乾燥処理を施した。
その結果、水分率5%のクロマイトケーキを得ることができた。
[実施例6:ニッケル酸化鉱石の湿式製錬処理]
(浸出工程)
実施例1及び実施例2において、第1の分級工程でのハイドロサイクロンのオーバーフローと、比重分離工程でのデンシティーセパレーターのオーバーフロー及びスパイラルコンセントレーターの『Tailing』を、オートクレーブにそれぞれ装入し、これに濃度98%の硫酸を添加して、以下の条件で高温加圧下での硫酸浸出を行い、浸出スラリーを生成させた。
<浸出条件>
浸出温度:245℃
浸出時間:60分
最終(浸出終了時の)遊離硫酸濃度:40g/L
スラリー濃度:30重量%
オートクレーブ容量:5L
(固液分離工程)
次に、得られた浸出スラリーに対してシックナーを用いた固液分離処理を施し、浸出液と浸出残渣スラリーとに分離した。
(最終中和工程)
次に、分離した浸出残渣スラリー中のCr品位を測定するために、その浸出残渣スラリーに中和剤として濃度20重量%のMg(OH)スラリーを添加し、70℃で、pH2.5になるように中和処理を施した。
続いて、スラリーを5C濾紙で固液分離し、さらにMg(OH)スラリーをpH6になるまで添加した後、さらに5C濾紙で固液分離した。
このような中和処理を施すことによって、最終中和残渣を得た。得られた最終中和残渣のCr品位は0.8重量%であり、非常に低い値であった。また、生成したMgSOの溶解度が大きいため、残渣のイオウ品位は0.61重量%であった。
[比較例1]
ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセス(図1の工程図を参照)において、オートクレーブを使用した硫酸による酸浸出処理を行うにあたって、ニッケル酸化鉱石から調製した鉱石スラリーに対して、実施例1で行ったようなハイドロサイクロンによる分級処理、デンシティーセパレーター及びスパイラルコンセントレーターによる比重分離処理を行うことなく、そのままオートクレーブに装入して酸浸出処理を行った。なお、酸浸出処理以降については、実施例1と同様に処理した。
浸出工程、固液分離工程、最終中和工程を経て得られた最終中和残渣のCr品位を測定したところ、2.3重量%であった。また、生成したMgSOの溶解度が大きいため、残渣のイオウ品位は0.55重量%であった。
なお、この比較例1の結果と比較しても明らかなように、酸浸出処理を行うに先立ち、処理対象となる鉱石スラリーに対して、実施例1のように、ハイドロサイクロンによる分級処理と、スパイラルコンセントレーターやデンシティーセパレーターの比重分離装置を用いた比重分離処理とを施すことで、その鉱石スラリー中のクロマイトを効果的に分離除去することができ、最終中和残渣中のCr品位を有効に低減できることが分かった。
[比較例2]
ニッケル酸化鉱石から調製した鉱石スラリーに対して、ハイドロサイクロンを用いた分級処理を行わずに、デンシティーセパレーターとスパイラルコンセントレーターとを用いた比重分離処理を施し、その後、ハイドロサイクロンによる分級処理を実施した。このこと以外は、実施例1と同じ条件とした。
表15に、ハイドロサイクロンによる分級処理を行わずに、鉱石スラリーに対してデンシティーセパレーターによる比重分離処理を行った結果を示す。
Figure 2017052992
分級処理を施すことなくデンシティーセパレーターによる比重分離を行った場合、Cr品位はあまり上昇せず、有効に濃縮することができなかった。
続いて、このデンシティーセパレーターU/Fに対して、スパイラルセパレーターを用いた比重分離処理を施した、表16に、比重分離処理の結果を示す。
Figure 2017052992
表16に示すように、デンシティーセパレーターによる処理に引き続き、スパイラルセパレーターを用いた比重分離処理を行っても、Cr品位は15.3重量%となりあまり上昇しなかった。このことは、デンシティーセパレーターによる処理で粗粒と細粒との分離が効果的にできず、ゲーサイトが粗粒中に残ってしまったために、スラリー粘度が高くなり、その結果としてスパイラルコンセントレーターによる比重分離の効果が十分に発揮できなかったためと考えられる。
次に、比重分離処理を経て、スパイラルコンセントレーターで得られた『Concentrate』に対して、ハイドロサイクロンを用いた分級処理を行った。なお、このハイドロサイクロンによる運転圧力は0.2MPaとした。
表17に、分級処理の結果を示す。表17中の組成数値の単位は「重量%」である。
Figure 2017052992
表17に示すように、ハイドロサイクロンにより得られるハイドロサイクロンU/Fでは、Cr品位が25.3重量%となりあまり上昇しなかった。このように、比較例2における処理では、一般に市販されるクロマイトのCr品位を上回る濃度まで濃縮することができなかった。

Claims (7)

  1. ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法における酸浸出処理に供する鉱石スラリーの処理方法であって、
    前記ニッケル酸化鉱石の鉱石スラリーに対して、第1の装置としてハイドロサイクロンを使用して分級処理を施し、オーバーフローとしてゲーサイトを含む混合物を分離し、アンダーフローとしてクロマイトを含む混合物を分離する分級工程と、
    第2の装置として、少なくともスパイラルコンセントレーター1段を使用して、前記ハイドロサイクロンのアンダーフローとして分離したクロマイトを含む混合物に対して比重分離処理を行い、該クロマイトを含む混合物に含まれるゲーサイトを分離してクロマイトを濃縮させた混合物を得る比重分離工程とを有し、
    前記分級工程及び前記比重分離工程にて分離した前記ゲーサイトを含む混合物を、前記酸浸出処理に供する鉱石スラリーとする
    ことを特徴とする鉱石スラリーの処理方法。
  2. 第3の装置としてハイドロサイクロンを使用して、前記第2の装置を使用した比重分離処理で得られたクロマイトを含む混合物に対して分級処理を施し、オーバーフローとしてゲーサイトを含む混合物を分離し、アンダーフローとしてクロマイトを含む混合物を分離する第2の分級工程をさらに有し、
    前記第3の装置により分離した前記ゲーサイトを含む混合物を、前記酸浸出処理に供する鉱石スラリーに含める
    ことを特徴とする請求項1に記載の鉱石スラリーの処理方法。
  3. 第4の装置としてハイドロサイクロンを使用して、前記第3の装置を使用した分級処理で得られたクロマイトを含む混合物に対して分級処理を施し、オーバーフローとしてゲーサイトを含む混合物を分離し、アンダーフローとしてクロマイトを含む混合物を分離する第3の分級工程をさらに有し、
    前記第4の装置により分離した前記ゲーサイトを含む混合物を、前記酸浸出処理に供する鉱石スラリーに含める
    ことを特徴とする請求項2に記載の鉱石スラリーの処理方法。
  4. 前記第2の分級工程では、アンダーフロー粒子のうち、粒子サイズ−45μmのものの存在比率が30%以下となるように、前記第3の装置であるハイドロサイクロンの圧力と該分級処理の対象とするスラリーの濃度を調整する
    ことを特徴とする請求項2又は3に記載の鉱石スラリーの処理方法。
  5. 前記第3の分級工程では、アンダーフロー粒子のうち、粒子サイズ−45μmのものの存在比率が30%以下となるように、前記第4の装置であるハイドロサイクロンの圧力と該分級処理の対象とするスラリーの濃度を調整する
    ことを特徴とする請求項3に記載の鉱石スラリーの処理方法。
  6. ニッケル酸化鉱石の鉱石スラリーに対して酸浸出処理を施してニッケルを浸出させて回収するニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法において、
    前記ニッケル酸化鉱石から調製した鉱石スラリーのうち、前記酸浸出処理に供する鉱石スラリーからクロマイトを分離する鉱石スラリーの処理工程を含み、
    前記鉱石スラリーの処理工程は、
    前記ニッケル酸化鉱石の鉱石スラリーに対して、第1の装置としてハイドロサイクロンを使用して分級処理を施し、オーバーフローとしてゲーサイトを含む混合物を分離し、アンダーフローとしてクロマイトを含む混合物を分離する分級工程と、
    第2の装置として、少なくともスパイラルコンセントレーター1段を使用して、前記ハイドロサイクロンのアンダーフローとして分離したクロマイトを含む混合物に対して比重分離処理を行い、該クロマイトを含む混合物に含まれるゲーサイトを分離してクロマイトを濃縮させた混合物を得る比重分離工程とを有し、
    前記分級工程及び前記比重分離工程にて分離した前記ゲーサイトを含む混合物を、前記酸浸出処理に供する鉱石スラリーとする
    ことを特徴とするニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
  7. 前記鉱石スラリーの処理工程を経て得られたクロマイトを含む混合物に対して、水分率が7%以下となるように乾燥処理を施す
    ことを特徴とする請求項6に記載のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
JP2015177064A 2015-09-08 2015-09-08 鉱石スラリーの処理方法、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法 Expired - Fee Related JP6661926B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015177064A JP6661926B2 (ja) 2015-09-08 2015-09-08 鉱石スラリーの処理方法、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015177064A JP6661926B2 (ja) 2015-09-08 2015-09-08 鉱石スラリーの処理方法、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017052992A true JP2017052992A (ja) 2017-03-16
JP6661926B2 JP6661926B2 (ja) 2020-03-11

Family

ID=58317333

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015177064A Expired - Fee Related JP6661926B2 (ja) 2015-09-08 2015-09-08 鉱石スラリーの処理方法、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6661926B2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN108580021A (zh) * 2018-01-25 2018-09-28 包头钢铁(集团)有限责任公司 一种高碳铬铁冶炼干渣的重选尾矿中回收铬精矿的工艺方法
CN112916197A (zh) * 2021-01-28 2021-06-08 内蒙古金陶股份有限公司 矿石加工前的预处理方法
JP7151848B1 (ja) * 2021-09-15 2022-10-12 住友金属鉱山株式会社 クロム鉄鉱石の回収方法

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS4825619A (ja) * 1971-08-06 1973-04-03
JPS5156720A (en) * 1974-09-23 1976-05-18 Amax Inc Nitsukeru rateraitojokosekikara tetsukosekitokuromuochushutsusuruhoho
JP2013095971A (ja) * 2011-11-01 2013-05-20 Sumitomo Metal Mining Co Ltd ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法
WO2013150642A1 (ja) * 2012-04-06 2013-10-10 住友金属鉱山株式会社 クロマイト回収方法、並びにニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法
WO2014125558A1 (ja) * 2013-02-12 2014-08-21 住友金属鉱山株式会社 ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法
WO2014175093A1 (ja) * 2013-04-23 2014-10-30 住友金属鉱山株式会社 ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法

Patent Citations (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS4825619A (ja) * 1971-08-06 1973-04-03
JPS5156720A (en) * 1974-09-23 1976-05-18 Amax Inc Nitsukeru rateraitojokosekikara tetsukosekitokuromuochushutsusuruhoho
JP2013095971A (ja) * 2011-11-01 2013-05-20 Sumitomo Metal Mining Co Ltd ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法
WO2013150642A1 (ja) * 2012-04-06 2013-10-10 住友金属鉱山株式会社 クロマイト回収方法、並びにニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法
US20150014225A1 (en) * 2012-04-06 2015-01-15 Sumitomo Metal Mining Co., Ltd. Method for recovering chromite, and method for wet smelting of nickel oxide ore
WO2014125558A1 (ja) * 2013-02-12 2014-08-21 住友金属鉱山株式会社 ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法
US20150284820A1 (en) * 2013-02-12 2015-10-08 Sumitomo Metal Mining Co., Ltd. Hydrometallurgical process for nickel oxide ore
WO2014175093A1 (ja) * 2013-04-23 2014-10-30 住友金属鉱山株式会社 ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法
US20160076121A1 (en) * 2013-04-23 2016-03-17 Sumitomo Metal Mining Co., Ltd. Hydrometallurgical process for nickel oxide ore

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN108580021A (zh) * 2018-01-25 2018-09-28 包头钢铁(集团)有限责任公司 一种高碳铬铁冶炼干渣的重选尾矿中回收铬精矿的工艺方法
CN112916197A (zh) * 2021-01-28 2021-06-08 内蒙古金陶股份有限公司 矿石加工前的预处理方法
JP7151848B1 (ja) * 2021-09-15 2022-10-12 住友金属鉱山株式会社 クロム鉄鉱石の回収方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP6661926B2 (ja) 2020-03-11

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5867768B2 (ja) ニッケル酸化鉱石の湿式製錬におけるニッケル酸化鉱石からのクロマイト粒子回収方法及びニッケル酸化鉱石の湿式製錬設備
JP5446226B2 (ja) ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法
JP5403033B2 (ja) ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法
WO2014125558A1 (ja) ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法
JP2013095971A5 (ja)
WO2013150642A1 (ja) クロマイト回収方法、並びにニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法
AU2016261416B2 (en) Mineral ore slurry pretreatment method, and method for manufacturing mineral ore slurry
JP5556608B2 (ja) クロマイト回収方法、並びにニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法
JP6183788B2 (ja) ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法
JP6969262B2 (ja) ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法
JP6661926B2 (ja) 鉱石スラリーの処理方法、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法
JP2015206068A5 (ja)
JP5790839B2 (ja) クロマイト回収方法
CA2977602C (en) Ore slurry pre-treatment method and ore slurry manufacturing method
JP6565511B2 (ja) 鉱石スラリーの処理方法、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法
JP6977458B2 (ja) ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法
WO2021193424A1 (ja) 鉱石スラリーの処理方法、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180906

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190517

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190702

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190829

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200114

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200127

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6661926

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R154 Certificate of patent or utility model (reissue)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R154

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees