JP7298065B2 - 水性2液硬化性を有する遮熱性塗料組成物、遮熱性塗料塗装工法、および遮熱性舗装体 - Google Patents
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Description
車道の遮熱コート層に使用される塗料としては、従来は、溶剤型のMMA(メチルメタクリレート)系の樹脂を主剤とする遮熱塗料が使用されており、この種のMMA系遮熱塗料では、遮熱性と同時に、かなりの塗膜強度、耐久性を示す。
水性媒体中に分散される塗膜形成バインダ成分の粒子として、ヒドラジン構造を有するポリウレタンとカルボニル基含有アクリル系ポリマーとを含有させた水酸基含有常温架橋ポリマーエマルジョンポリオール(A)と、水酸基含有アクリルエマルジョンポリオール(B)と、水酸基含有ポリウレタンディスパージョンポリオール(C)とを含み、かつ有色顔料を含む主剤と;
前記主剤の塗膜形成バインダ成分と架橋反応を生じて塗膜を硬化させるポリマーからなる、硬化剤を兼ねた反応性造膜助剤と;
からなることを特徴とするものである。
前記主剤が、塗膜強度向上剤としてセルロースナノファイバーを含むことを特徴とするものである。
前記主剤全体に占めるセルロースナノファイバーの割合が0.01~10.0重量%の範囲内であることを特徴とすることを特徴とするものである。
前記塗膜形成バインダ成分全体に占める、水酸基含有常温架橋ポリマーエマルジョンポリオール(A)の配合割合が、50~90重量%の範囲内、水酸基含有アクリルエマルジョンポリオール(B)の配合割合が、10~40重量%の範囲内、水酸基含有ウレタンディスパージョンポリオール(C)の配合割合が、5~30重量%の範囲内であることを特徴とするものである。
前記水酸基含有常温架橋ポリマーエマルジョンポリオール(A)は、その水酸基価が10~30mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)が25~45℃の範囲内にあり、
前記水酸基含有アクリルエマルジョンポリオール(B)は、その水酸基価が50~70mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)が30~50℃の範囲内にあり、
前記水酸基含有ウレタンディスパージョンポリオール(C)は、その水酸基価が40~60mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)が-30~-10℃の範囲内にあることを特徴とするものである。
前記水酸基含有常温架橋ポリマーエマルジョンポリオールの平均粒径が130~230nm、前記水酸基含有アクリルエマルジョンポリオールの平均粒径が90~140nm、前記水酸基含有ポリウレタンディスパージョンポリオールの平均粒径が40~90nmであることを特徴とするものである。
前記遮熱性有色顔料が、酸化チタン、酸化鉄、複合酸化物系顔料のうちから選ばれた1種以上であることを特徴とするものである。
硬化剤を兼ねた前記反応性造膜助剤が、ポリイソシアネートからなることを特徴とするものである。
ポリイソシアネートからなる前記反応性造膜助剤と、主剤における塗膜形成バインダ成分との配合割合は、反応性造膜助剤のイソシアネート基と塗膜形成バインダ成分におけるポリオールの水酸基とのモル比が0.8~1.1の範囲内であることを特徴とするものである。
前記第1~第9のいずれかの態様の水性2液硬化性を有する遮熱性塗料組成物における前記主剤と前記反応性造膜助剤とを混練して水性塗料とし、その水性塗料を、舗装基材上に塗装することを特徴とするものである。
舗装基材の表面に遮熱性塗膜が形成された遮熱性舗装体であって、
前記遮熱性舗装体が、
塗膜形成バインダ成分として、ヒドラジン構造を有するポリウレタンとカルボニル基含有アクリル系ポリマーとを含有させた水酸基含有常温架橋ポリマーエマルジョンポリオール(A)と、水酸基含有アクリルエマルジョンポリオール(B)と、水酸基含有ポリウレタンディスパージョンポリオールとを含むとともに、有色顔料を含む主剤と;
前記主剤の塗膜形成バインダ成分と架橋反応を生じて塗膜を硬化させるポリマーからなる、硬化剤を兼ねた反応性造膜助剤と;
からなり、
前記各ポリオールと反応性造膜助剤とが架橋結合されてなることを特徴とするものである。
第11の態様の遮熱性舗装体において、
前記主剤が、塗膜強度向上剤としてセルロースナノファイバーを含むことを特徴とすることを特徴とするものである。
第11、第12のいずれかの態様の遮熱性舗装体において、
前記舗装基材が、アスファルト、コンクリート、もしくはゴムチップウレタンであることを特徴とするものである。
なお実際の施工では、舗装基材1の表面に、図示しないプライー層を形成してから、そのプライマー層の表面に本発明の遮熱性被覆組成物からなる水性2液塗料を塗装することもあるが、本明細書では、予めプライマー層を形成する場合も含めて、「舗装基材の上に本発明の遮熱性被覆組成物からなる水性2液塗料を塗装する」と表現している。
この実験に用いた本発明遮熱塗料組成物の構成は次の通りである。
塗膜形成バインダ成分の粒子として。
・ヒドラジン構造を有するポリウレタンとカルボニル基含有アクリル系ポリマーとを含有させた水酸基含有常温架橋ポリマーエマルジョンポリオール(A)、
・水酸基含有アクリルエマルジョンポリオール(B)、
・水酸基含有ポリウレタンディスパージョンポリオール(C)、
の3種のポリオールの粒子を配合し、さらに、セルロースナノファイバーと反応性造膜助剤、及び遮熱性有色顔料と骨材とを配合した。
具体的には、ヒドラジン構造を有するポリウレタンとカルボニル基含有アクリル系ポリマーとを含有させた水酸基含有常温架橋ポリマーエマルジョンポリオール(A)としては、水酸基価が20mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)が35℃であって、平均粒径が180nmのものを用い、水酸基含有アクリルエマルジョンポリオール(B)としては水酸基価が60mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)が40℃であって、平均粒径が120nmのものを用い、水酸基含有ポリウレタンディスパージョンポリオール(C)としては水酸基価が50mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)が-20℃であって、平均粒径が60nmのものを用いた。また反応性造膜助剤としては、ポリイソシアネートを用いた。
酸化チタン:10重量%、有機黒色顔料:1重量%、炭酸カルシウム:10重量%、アクリルエマルションの樹脂成分:15重量%、珪砂:33重量%、その他の水および添加剤:31%を混合したものを水性遮熱塗料とした。塗布条件としては、500g/m2×2回塗りしたものを比較体とした。
また溶剤型遮熱塗料であるMMA系遮熱塗料の配合組成、塗布条件は次の通りである。
酸化チタン:10重量%、有機黒色顔料:1重量%、炭酸カルシウム:10重量%、硬化性MMA樹脂:80重量%を混合したものを使用した。これに有機アミンを0.9重量%、過酸化ベンゾイルを2.4%添加して硬化させた。塗布条件としては、下塗として400g/m2塗布し、セラミック骨材を500g/m2散布後、さらに上塗として400g/m2塗布したものを比較体とした。
表1は、本発明遮熱舗装の日射反射率を、従来遮熱舗装と比較した測定結果である。この結果から、本発明遮熱舗装は近赤外領域で70%以上の日射反射率を示し、従来遮熱舗装と同等の日射反射率特性を備えていることがわかった。また、性能確認のために実施した室内照射試験でも、図2に示すように、従来遮熱舗装と遜色のない路面温度上昇抑制性能を備えていることを確認した。なお図2において、「一般舗装」とは、遮熱のためのトップコート層を持たないアスファルト舗装を意味している。なおまた、これらの評価試験では、本発明遮熱舗装としては、前述のように、主剤にセルロースナノファイバーを添加したものを用いているが、セルロースナノファイバーを添加しない場合でも、図2、表1に示した本発明遮熱舗装とほぼ同等の日射反射率特性、路面温度上昇抑制性能を示すことが確認されている。
塗膜の耐摩耗性と乾燥性を確認するため、テーバー摩耗試験と速乾性評価を実施した。表2に示すように、摩耗性の評価では、従来遮熱舗装と比較して、本発明遮熱舗装が耐摩耗性に優れることがわかる。速乾性の評価でも、本発明遮熱舗装が5℃の条件下でも従来遮熱舗装に比べ約1/3の養生時間で乾燥し、乾燥性が改善されていることを確認した。なおこの評価試験でも、本発明遮熱舗装としては、前述のような主剤にセルロースナノファイバーを添加したものを用いているが、セルロースナノファイバーを添加しない場合でも、表2に示した本発明遮熱舗装とほぼ同等の耐摩耗性と乾燥性を示すことが確認されている
本発明遮熱舗装の耐久性を検討するため、ポーラスアスファルトに遮熱材を塗布した後に、はがれ抵抗性試験を実施した。本発明遮熱舗装としては、前述のような主剤にセルロースナノファイバー(CNF)を添加したもの、及びセルロースナノファイバー(CNF)を添加ないもの(CNF以外の配合については、CNFを添加したものと同じ)を用いこれらのCFF添加品とCNF添加無しの物について評価した。また比較例として、従来遮熱舗装と、主に車道に適用されているMMA系遮熱舗装についても同様に試験を実施した。
図3は、ねじれ法による試験結果である。結果より、CNFを添加した本発明遮熱舗装は、従来遮熱舗装に比べてはがれ面積率が約5 割であり、はがれ抵抗性が大幅に改善されている。このことは、図4に示す打撃法による試験結果からも確認できる。なおCNFを添加した本発明遮熱舗装のはがれ抵抗性は、MMA系遮熱舗装と比較しても遜色ない結果である。これらは、本実験で添加したセルロースナノファイバーにより塗膜の靱性が向上したためと推察すされる。なお、CNFを添加しない本発明遮熱舗装のはがれ抵抗性も、従来遮熱舗装と比較すれば、かなり改善されていることが、図3、図4から明らかである。
CNFを添加した本発明遮熱舗装の供用開始後の耐久性を検討するため、メタルハライドランプによる耐候性試験(照射50時間)後に、はがれ抵抗性試験(ねじれ法)を実施した。試験結果を図5に示す。
結果より、本発明遮熱舗装は従来遮熱舗装と比較し、耐候性試験後のはがれ面積率が約5割となり、試験後でも規格値を満足していることがわかる。これより,従来遮熱舗装に比べて耐候性が大幅に改善していることを確認した。MMA系遮熱舗装と比較しても、はがれ面積率の差は10%以内であり、本発明遮熱舗装は良好な耐候性を有している。なお、CNFを添加しない本発明遮熱舗装の場合も、良好な耐候性を有していることが確認されている。
塗膜の耐水性を評価するために、乳剤系表面処理工法の評価で用いられているウェットトラック試験を実施した。
表3は,CNFを添加した本発明遮熱舗装及び従来遮熱舗装についての、ウェットトラック試験前後の塗装表面とはがれ面積率である。結果より、従来遮熱舗装では水浸の影響で耐摩耗性が顕しく低下しているのに対して、本発明遮熱舗装では、はがれは確認されなかった。このことから、施工直後の本発明遮熱舗装は優れた耐水性を備えていることがわかった。なお、CNFを添加しない本発明遮熱舗装の場合も、従来遮熱舗装よりも良好な耐水性を有していることが確認されている。
現場における作業性と品質を確認するために、CNFを添加した本発明遮熱舗装工区と従来遮熱舗装工区を設けた構内試験施工を実施した。施工時の外気温は約5℃であり、吹付けはリシンガンで行った。施工時の塗布幅は均一であり、塗布してから約90 分で完全に乾燥したことから、本発明遮熱舗装の作業性と乾燥性は良好であったと判断した。
施工翌日に、はがれ抵抗性を確認するため、実車据え切り試験を実施した。表4に示す結果より、従来遮熱舗装では部分的なはがれが確認されたのに対して、本発明遮熱舗装では、はがれは見られず健全だった。これより、本発明遮熱舗装は、速乾性と耐久性に優れており、車道での適用が期待できることが確認された。なお、CNFを添加しない本発明遮熱舗装の場合も、従来遮熱舗装よりも良好な速乾性と耐久性を有していることが確認されている。
そしてまた、セルロースナノファイバーを添加しない場合においても、セルロースナノファイバーを添加した場合と同等か、又は少なくとも従来の一般的な水性塗料による遮熱舗装(従来遮熱舗装)よりも良好な施工性と耐久性が得られることが確認された。
(A): ヒドラジン構造を有するポリウレタンとカルボニル基含有アクリル系ポリマーとを含有させた水酸基含有常温架橋ポリマーエマルジョンポリオール
(B): 水酸基含有アクリルエマルジョンポリオール
(C): 水酸基含有ポリウレタンディスパージョンポリオール
・粒子径:水溶性型は10nm以下、ディスパージョン型は10nm~100nm、エマルジョン型は50nm~500nm、に大別される。
・分子量:水溶性型は小(103~104)、ディスパージョン型は中(103~106)、エマルジョン型は大(103以上)、に大別される。
・粘度:水溶性型は高粘度で分子量に相関し、ディスパージョン型は中粘度で分子量にやや相関し、エマルジョン型は低粘度で分子量に相関しない、に大別される。
・流動性:水溶性型はニュートン流動、ディスパージョン型はチキソトロピー性、エマルジョン型はチキソトロピー性、に大別される。
・造膜性:水溶性型は溶剤系樹脂に近い緻密な塗膜を形成、ディスパージョン型は水溶性型とエマルジョン型の中間の性質、エマルジョン型は粒子融着で塗膜形成し緻密性に欠ける、に大別される。
・耐水性:水溶性型は、やや不良ないし良好、ディスパージョン型は良好、エマルジョン型は非常に良好、に大別される。
水酸基含有アクリルエマルジョンポリオール(A)は、水性2液常温架橋型の遮熱性塗料組成物における塗膜形成バインダ成分の主成分であって、ヒドラジン構造を有するポリウレタンとカルボニル基含有アクリル系ポリマーとを含有しているため、ケチミン反応による自己架橋性を示し、そのため、水性塗料としての塗布後の乾燥過程において早期に自己架橋して硬化する。また同時にこの水酸基含有アクリルエマルジョンポリオール(A)は、水酸基(-OH)を有するため、常温でウレタン反応による架橋(2液硬化)を進行させることができ、特に、反応性造膜助剤の添加により十分にウレタン反応による架橋を進行させることができる。このように、水酸基含有アクリルエマルジョンポリオール(A)は、塗膜に硬さを付与して強度、耐久性を確保すると同時に、乾燥性(速乾性)を良好にするために必要な水性樹脂である。この水酸基含有アクリルエマルジョンポリオール(A)としては、水酸基価が10~30mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)が25~45℃の範囲内のものを使用することが望ましい。さらに水酸基含有常温架橋ポリマーエマルジョンポリオール(A)の粒径は、平均粒径で130~230nmの範囲内が好ましい。
水酸基含有アクリルエマルジョンポリオールも、水酸基(-OH)を有するため、常温で反応性造膜助剤の添加により架橋反応(2液硬化)を十分に進行させ得る水性樹脂である。特に反応性造膜助剤の添加により十分にウレタン反応による架橋を進行させることができる水性樹脂である。このような水酸基含有アクリルエマルジョンポリオール(B)を、前述の塗膜形成バインダの主成分である水酸基含有常温架橋ポリマーエマルジョンポリオール(A)に対して組み合わせて比較的少量を配合することによって、主として塗膜の強度(強靭性)を向上させ、また乾燥性(速乾性)の向上にも寄与する。この水酸基含有アクリルエマルジョンポリオール(B)としては、水酸基価が50~70mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)が30~50℃の範囲内のものを使用することが望ましい。さらに水酸基含有アクリルエマルジョンポリオール(B)の粒径は、平均粒径で90~140nmの範囲内が好ましい。
水酸基含有ポリウレタンディスパージョンポリオールも、常温でウレタン反応による2液硬化可能な水性樹脂として、前述の塗膜形成バインダの主成分である水酸基含有常温架橋ポリマーエマルジョンポリオール(A)に対して組み合わせて比較的少量を配合することによって、強靭性、柔軟性の向上に有効である。ここで、水酸基含有ポリウレタンディスパージョンポリオール(C)は、その骨格自体にウレタンを含有しているため、反応性造膜助剤が比較的少量でも硬化するから、反応性造膜助剤の添加量を少なくして、柔軟性を維持することが可能である。ここで使用する水酸基含有ポリウレタンディスパージョンポリオール(C)は、水酸基価が40~60mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)が-30~-10℃の範囲内のものが望ましい。さらに水酸基含有ポリウレタンディスパージョンポリオール(C)の粒径は、平均粒径で40~90nmの範囲内が好ましい。
セルロースナノファイバー(CNF)は、木材繊維(パルプ)等の植物繊維をナノオーダーまで微細化したバイオマス素材であり、塗膜中で絡み合って網目状に存在することにより、塗膜の強度、とりわけ耐剥がれ性、耐摩耗性を向上させて、遮熱塗膜の耐久性を向上させるのに有効である。また同時に、水濡れ性が良好な水溶性のファイバーであって、水性塗料中において均一に分散させることができ、しかも強度的にも他の多くの水溶性ファイバーよりも有利である。
有色顔料としては、遮熱性有色顔料を用いることが望ましい。有色顔料として遮熱性有色顔料を用いれば、その顔料は遮熱用フィラーとしても機能する。すなわち遮熱性有色顔料を用いれば、別途遮熱用フィラーを添加することなく(あるいは別途添加する遮熱用フィラーの添加量を少なくして)、遮熱性を確保することが可能となる。遮熱性有色顔料としては、遮熱性に優れた酸化チタンを用いることが好ましく、また酸化チタンのほか、色相によって遮熱性を示す酸化鉄(例えば赤色酸化鉄、黄色酸化鉄など)、そのほか複合酸化物系顔料などを使用することができる。酸化チタンで代表される遮熱性有色顔料としては、一般的な酸化チタン粉末の粒子径(平均で約0.2μm)よりも粒子径が大きくて、太陽光中の近赤外線を反射する効果が大きい大粒径遮熱性有色顔料、例えば平均粒子径が0.5~2.0μmの大粒径酸化チタンなどの遮熱性有色顔料を用いることが好ましい。酸化チタンなどの遮熱性有色顔料の平均粒子径が0.5μm未満では、近赤外線を反射して遮熱性を高める効果が充分に得られず、一方、2.0μmを越えれば、耐候性、耐水性が低下する。
さらに、主剤には、トップコート遮熱層の表面の滑り止め材として、必要に応じて、珪砂やセラミック粉末などの骨材を含んでいてもよい。滑り止め材としての骨材は、その平均粒径が0.053~1.5mm程度が望ましく、またその量は、塗料組成物の重量に対して例えば50~70重量%程度であればよい。
このようなポリイソシアネートは、それ自体がポリマーであるため、下地のアスファルト舗装などの表面と塗膜との間に不要な樹脂膜が形成されて結合力が失われたり、被覆膜中に溶剤成分が残存して塗膜の凝集破壊が生じたりすることがなく、成膜した際に耐水性等に悪影響を及ぼすおそれが少ない。
次に、本発明の塗料組成物の主剤と反応性助剤とを所定の重量比で調合するとともに、水性媒体として水を添加し、ハンドミキサ等の混合手段を用いて十分に攪拌し、水性塗料とする。なお、必要に応じて、前述のように珪砂等のすべり止め骨材を水性塗料に添加してもよい。
また、必要に応じてアスファルト舗装面などの基材舗装面にプライマー層を塗布などで形成した後、そのプライマー層の表面に上記の水性塗料を吹き付けなどによって塗装してもよい。
その後、マスキングテープを取り除き、吹き付けた水性塗料が十分に乾燥(硬化)したことを確認した後、交通開放すればよい。なお乾燥時間は、通常、常温で15分~2時間程度で充分である。
そして本発明の遮熱性舗装体を道路などに適用することにより、舗装の蓄熱を防止して、路面の温度上昇を抑制することができる。また、歩行者などの熱環境が改善され、夏期の熱中症対策として有効である。さらに、水系塗料であるため、人と環境への悪影響が少なく、施工時の臭気もほとんど発生しないなど、環境衛生や安全面で有利である。
また、比較のための塗膜強化剤として、一般的な水溶性セルロースである、繊維長1mm以下、繊維幅20~30μmのカルボキシルメチルセルロース(CMC)、および繊維長1mm以下、繊維幅20~30μmのヒドロキシエチルセルロース(HEC)を用意した。
・水酸基含有常温架橋ポリマーエマルジョンポリオール(A):60重量%
・水酸基含有アクリルエマルジョンポリオール(B):30重量%
・水酸基含有ポリウレタンディスパージョンポリオール(C):10重量%
また、従来の一般的な水系塗料を密粒アスファルトの表面に、常法にしたがって吹き付け塗装した従来品をNo.11とした。ここで、従来の一般的な水系塗料とは、歩道用として従来使用されているアクリルエマルション系の1液遮熱塗料であり、その具体的配合、塗布条件は、次の通りである。
酸化チタン:10重量%、有機黒色顔料:1重量%、炭酸カルシウム:10重量%、アクリルエマルションの樹脂成分:15重量%、珪砂:33重量%、その他の水および添加剤:31%を混合したものを水性遮熱塗料とした。塗布条件としては、500g/m2×2回塗りしたものを比較体とした。
各測定、評価試験の内容は、次のとおりである。
・乾燥性評価:気温20℃・湿度50%環境にて、指触評価(指で触った際に、塗料が付着しなくなるまでの時間の測定)、タックフリー評価(靴で踏んで、痕が残らなくなるまでの時間の測定)を行った。
・耐衝撃性評価:密粒アスファルトに塗装し、養生7日後に、重り3kgの分銅を高さ1mから落下させた際の剥離状態を観察した。
・ゴム輪ねじれ試験:ソリッドタイヤに試験者が乗り、90°に捩じる作業を行った際の剥離状態を観察した。
〇:剥離無し。
〇△:表面の凸部で骨材が若干露出。
△:直径5mm程度以下の小さな剥離が、20cm2当たり、5個以下認められる。
×:中程度(直径1cm程度)の剥離が認められる。
××:大きな剥離(直径2cm程度以上)が認められる。
×××:全面積の1/2以上が大きく剥離。
3・・・遮熱性塗膜
31・・・塗膜のマトリックス
32・・・セルロースナノファイバー
33・・・無機遮熱性有色顔料
Claims (10)
- 水性媒体中に分散される塗膜形成バインダ成分の粒子として、ヒドラジン構造を有するポリウレタンとカルボニル基含有アクリル系ポリマーとを含有させた水酸基含有常温架橋ポリマーエマルジョンポリオール(A)と、水酸基含有アクリルエマルジョンポリオール(B)と、水酸基含有ポリウレタンディスパージョンポリオール(C)とを含み、かつ有色顔料とを含む主剤と;
前記主剤の塗膜形成バインダ成分と架橋反応を生じて塗膜を硬化させるポリマーからなる、硬化剤を兼ねた反応性造膜助剤と;
からなり、
前記主剤が、塗膜強度向上剤としてセルロースナノファイバーを含み、
前記水酸基含有常温架橋ポリマーエマルジョンポリオール(A)は、その水酸基価が10~30mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)が25~45℃の範囲内にあり、
前記水酸基含有アクリルエマルジョンポリオール(B)は、その水酸基価が50~70mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)が30~50℃の範囲内にあり、
前記水酸基含有ウレタンディスパージョンポリオール(C)は、その水酸基価が40~60mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)が-30~-10℃の範囲内にあることを特徴とする、水性2液硬化性を有する遮熱性塗料組成物。 - 請求項1に記載の水性2液硬化性を有する遮熱性塗料組成物において、
前記主剤全体に占めるセルロースナノファイバーの割合が0.01~10.0重量%の範囲内であることを特徴とする、水性2液硬化性を有する遮熱性塗料組成物。 - 請求項1または2に記載の水性2液硬化性を有する遮熱性塗料組成物において、
前記塗膜形成バインダ成分全体に占める、水酸基含有常温架橋ポリマーエマルジョンポリオール(A)の配合割合が、50~90重量%の範囲内、水酸基含有アクリルエマルジョンポリオール(B)の配合割合が、10~40重量%の範囲内、水酸基含有ウレタンディスパージョンポリオール(C)の配合割合が、5~30重量%の範囲内であることを特徴とする、水性2液硬化性を有する遮熱性塗料組成物。 - 請求項1~請求項3のいずれかの請求項に記載の水性2液硬化性を有する遮熱性塗料組成物において、
前記有色顔料が、平均粒子径が、0.5~2.0μmの範囲内にある遮熱性有色顔料であることを特徴とする、水性2液硬化性を有する遮熱性塗料組成物。 - 請求項4に記載の水性2液硬化性を有する遮熱性塗料組成物において、
前記遮熱性有色顔料が、酸化チタン、酸化鉄、複合酸化物系顔料のうちから選ばれた1種以上であることを特徴とする、水性2液硬化性を有する遮熱性塗料組成物。 - 請求項1~請求項5のいずれかの請求項に記載の水性2液硬化性を有する遮熱性塗料組成物において、
硬化剤を兼ねた前記反応性造膜助剤が、ポリイソシアネートからなることを特徴とする、水性2液硬化性を有する遮熱性塗料組成物。 - 請求項6に記載の水性2液硬化性を有する遮熱性塗料組成物において、
ポリイソシアネートからなる前記反応性造膜助剤と、主剤における塗膜形成バインダ成分との配合割合は、反応性造膜助剤のイソシアネート基と塗膜形成バインダ成分におけるポリオールの水酸基とのモル比が0.8~1.1の範囲内であることを特徴とする、水性2液硬化性を有する遮熱性塗料組成物。 - 請求項1~請求項7のいずれかの請求項に記載の遮熱性塗料組成物における前記主剤と前記反応性造膜助剤とを混練して水性塗料とし、その水性塗料を、舗装基材上に塗装することを特徴とする、遮熱性塗料塗装工法。
- 舗装基材の表面に遮熱性塗膜が形成された遮熱性舗装体であって、前記遮熱性舗装体が、
塗膜形成バインダ成分として、ヒドラジン構造を有するポリウレタンとカルボニル基含有アクリル系ポリマーとを含有させた水酸基含有常温架橋ポリマーエマルジョンポリオール(A)と、水酸基含有アクリルエマルジョンポリオール(B)と、水酸基含有ポリウレタンディスパージョンポリオール(C)とを含むとともに、有色顔料を含む主剤と;
前記主剤の塗膜形成バインダ成分と架橋反応を生じて塗膜を硬化させるポリマーからなる、硬化剤を兼ねた反応性造膜助剤と;
からなり、
前記主剤が、塗膜強度向上剤としてセルロースナノファイバーを含み、
前記水酸基含有常温架橋ポリマーエマルジョンポリオール(A)は、その水酸基価が10~30mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)が25~45℃の範囲内にあり、
前記水酸基含有アクリルエマルジョンポリオール(B)は、その水酸基価が50~70mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)が30~50℃の範囲内にあり、
前記水酸基含有ウレタンディスパージョンポリオール(C)は、その水酸基価が40~60mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)が-30~-10℃の範囲内にあり、
前記各ポリオールと反応性造膜助剤とが架橋結合されてなることを特徴とする遮熱性舗装体。 - 請求項9に記載の遮熱性舗装体において、
前記舗装基材が、アスファルト、コンクリート、もしくはゴムチップウレタンであることを特徴とする遮熱性舗装体。
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