JP7297390B2 - 机及び座位立位可変机 - Google Patents
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Description
自然人により立位で用いられるのに適する高さに設定可能である天板と、
前記天板を支える1以上の脚と、
前記脚に備えられ、立位の前記自然人が足を置いて利用するための、所定の範囲において可動するフィジェットバーと、
を備える。
即ち、以下、重力が働く方向と垂直な面(以下、「水平面」と適宜呼ぶ)を、軸X及び軸YからなるX-Y平面と呼ぶ。
本実施形態における座位立位可変机は、X-Y平面に設置されるものとして、X-Y平面と略平行に長方形状の天板を備えるものとする。なお、座位立位可変机の利用者は、天板の長手方向に対向して着座し、利用しているものとして説明する。
ここで、X-Y平面において、天板の短手方向に三次元直交座標系の軸Xが取られるものとする。この場合における、座位立位可変机側からみて、利用者が座る側の方向を、「軸Xが正の方向」と呼び、この反対方向を、「軸Xが負の方向」と呼ぶものとする。
また、X-Y平面において、天板の長手方向に三次元直交座標系の軸Yが取られるものとする。この場合における、利用者からみて、右側の向きを、「軸Yが正の方向」と呼び、この反対方向を、「軸Yが負の方向」と呼ぶものとする。
また、重力が働く方向と逆の方向に軸Z及びその方向をとる。即ち、座位立位可変机が設置された水平面(所謂、床面)に対して高さが高くなる方向を、「軸Zが正の方向」と呼び、この反対方向を「軸Zが負の方向」と呼ぶものとする。
図2は、図1の座位立位可変机の座位状態における斜視図である。
図3は、図2の座位立位可変机の正面図である。
図4は、図2の座位立位可変机の右側面図である。
図5は、図2の座位立位可変机の底面図である。
なお、以下、図1に示すように、天板11を構成する面のうち軸Zが正の方向の面11Tを、「上面11T」と呼ぶ。また、天板11を構成する面のうち、上面11Tと対の逆の面11Bを、「下面11B」と呼ぶ。
また、以下、机面上下昇降部12R,12Lを個々に区別する必要が無い場合、これらをまとめて、「机面上下昇降部12」と呼ぶ。また、脚部13R,13Lを個々に区別する必要がない場合、これらをまとめて「脚部13」と呼ぶ。また、キャスター14RF,14RB,14LF,14LBを個々に区別する必要が無い場合、これらをまとめて、「キャスター14」と呼ぶ。
なお、以下、天板11乃至フィジェットバー保持部16の夫々の座位立位可変机1の構成要素を「パーツ」とも呼ぶ。
また、本明細書において、フィジェットバー15の「高さ」とは、フィジェットバー15の足掛部位15Aと、座位立位可変机1が設置された床面からの長さをいう。つまり、図1や図4等に示すように、フィジェットバー15の足掛部位15Aと、座位立位可変机1の設置された水平面からの長さHが、フィジェットバー15の高さHである。
また、本明細書において、フィジェットバー15の「長さ」とは、詳細は後述するが、フィジェットバー15の足掛部位15Aの回転半径となる長さをいう。つまり、図3や図4等に示すように、フィジェットバー15の足掛部位15Aと、フィジェットバーを支持する、脚部13Rの支持軸13ARや脚部13Lの支持軸13ALとの軸Zの方向の長さLが、フィジェットバー15の長さLである。なお、以下、支持軸13ARと、支持軸13ALとを個々に区別する必要が無い場合、これらをまとめて、「支持軸13A」と呼ぶ。
利用者は、机面上下昇降部12により、天板11の高さを、座位において適切な高さと、立位において適切な高さとに変更することが可能である。更に言えば、利用者の夫々にとって適切な高さの夫々は、利用者の身長等により異なる。そこで、机面上下昇降部12は、複数の天板の高さに変更することが可能である。
また例えば、詳細は後述するが、利用者は座位立位可変机1に寄りかかるか否かにより、立位において適切な高さが異なる。そこで、机面上下昇降部12は、利用者が座位立位可変机1に寄りかかるか否かの夫々に対応した、適切な高さの夫々に変更することが可能である。
なお、キャスター14は、座位立位可変机1が移動しないようにすることができる機構を備えると好適である。具体的には例えば、キャスター14は、トータルロック機構やセルフブレーキ機構を備えるとよい。ここで、トータルロック機構とは、キャスターの向き及びキャスターの回転の両方をロックする機構である。また、セルフブレーキ機構とは、上から荷重がかかることで自動的にキャスターにブレーキがかかる機構である。
フィジェットバー15の足掛部位15Aは、脚部13の支持軸13Aを中心に、回転が可能である。利用者は、軸Xの方向に力を加えることにより、X-Z平面において、フィジェットバー15に載せた足を揺らすことができる。
ここで、「フィジェットバー」とは、利用者にとっての「そわそわ」、「いらいら」といった、「手持無沙汰」等を、解消することが可能な棒である。即ち、上述したように、利用者はフィジェットバー15に載せた足を揺らすことで、所謂貧乏ゆすり等と類似する動作により、手持無沙汰等を解消することができる。フィジェットバー15の効果については、図7乃至図14を用いて後述する。
これにより、利用者は、フィジェットバー15を利用しない場合において、フィジェットバー15が邪魔とならない。
以下、教育現場のニーズに適切なフィジェットバー15の奥行D、高さH、及び長さLについて検討すべき条件等について説明する。
ここで、上述の答申によれば、アクティブ・ラーニングとは、「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称」である。また、アクティブ・ラーニングにより、「学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る」ことができる。具体的には、「発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である」とされている。
また、学習用の机は、「様々な人数でグループ編成できる」机が望ましい。
また、学習用の机は、「様々な方向に移動しやすい」机が望ましい。
また、学習用の机は、「短時間で机面を上下昇降できる」机が望ましい。
また、学習用の机は、「立位学習時の足・腰の疲れを軽減できる」机が望ましい。
また、学習用の机は、「机同士を隙間なく合わられる」机が望ましい。
また、学習用の机は、「立位でも前にいる他の生徒が視界を遮らない」机が望ましい。
また、学習用の机は、「机を合わせて大きな教材資料を広げられる」机が望ましい。
また、学習用の机は、「発表で演台として使える」机が望ましい。
例えば、奥行Dは利用によりフィジェットバー15が揺らされた場合において、フィジェットバー15が利用者の他の足にぶつかる距離よりも長い奥行Dであると好適である。また例えば、奥行Dは、利用者の膝が伸びすぎる長さより短く、適度に屈曲する長さであると好適である。
以下、図6乃至図12を用いて、座位立位可変机1の幅W及び奥行Dの検討に係る実験とその結果について説明する。
図6に示すように、立位状態の座位立位可変机1の天板11の上面11Tは、立位の利用者に対して適切な高さを有する。上述したように、利用者は、机面上下昇降部12の状態を異ならせることにより、利用者自身の身長等に応じた天板11の上面11Tの高さに、変更させることができる。
図6(B)は、図1の座位立位可変机1を利用する利用者の姿勢のうち、座位立位可変机に寄りかかる姿勢の例を示す図である。
図6(A)及び(B)の例の夫々は、利用者が座位立位可変机1を利用する様子を軸Yが正の方向から描かれている。
ここで、図6(A)及び(B)の例の夫々は、以下の点で互いに異なる。
この時、図6(A)及び(B)に描かれているように、利用者が座位立位可変机1に寄りかかった場合、適切な座位立位可変机1の天板11の上面11Tの高さは、利用者が座位立位可変机1に寄りかかっていない場合と比較して高い。具体的には、利用者が座位立位可変机1に寄りかかった場合、適切な座位立位可変机1の天板11の上面11Tの高さは、利用者が座位立位可変机1に寄りかかっていない場合と比較して10cm程度高くなる。
図7に示すように、実験器具21は、フィジェットバー211を備え、フィジェットバー支持軸212R,212Lを有する。なお、以下、支持軸212Rと、支持軸212Lとを個々に区別する必要が無い場合、これらをまとめて、「支持軸212」と呼ぶ。
また、実験者は、異なる支持軸212にフィジェットバー211を支持させることにより、様々なフィジェットバー15の奥行Dや高さHを再現可能である。
また、フィジェットバー211の奥行D、高さH、及び長さLの夫々は、フィジェットバー15の奥行D、高さH、及び長さLの夫々と基本的に同様である。
本実験では、フィジェットバー211の奥行Dとして、0mm、80mm、160mm、240mmの4水準から設定可能とした。また、本実験では、フィジェットバー211の高さHとして、60mm、140mm、220mm、300mmの4水準から設定可能とした。即ち、フィジェットバー211を設置することが可能な位置は、奥行4水準×高さ4水準の計16水準であった。
1つ目の姿勢では、立位の被験者は、本実験用の座位立位可変机に体を寄りかからない姿勢をとる。即ち、被験者は、図6(A)を用いて説明したように、本実験用の座位立位可変机に体を寄りかからない姿勢で作業を行う。このような前提のもと、被験者は、被験者自身にとって作業しやすいと考える天板の上面の高さに設定する。
2つ目の姿勢では、立位の被験者(想定される利用者)は、本実験用の座位立位可変机に体を寄りかかる姿勢をとる。即ち、被験者は、図6(B)を用いて説明したように、本実験用の座位立位可変机に体を寄りかかる姿勢で作業を行う。このような前提のもと、被験者は、被験者自身にとって作業しやすいと考える天板の上面の高さに設定する。
この被験者の年齢等の平均値及び標準偏差は、以下の通りであった。
被験者の年齢は、21.2±0.8歳であった。また、被験者の身長は、1662.9±93.0mmであった。また、被験者の体重は、59.8±11.6kgであった。また、被験者のBMIは、21.5±3.3kg/m2であった。また、被験者の立位肘頭高は、1016.6±58.6mmであった。また、被験者の股下高は、744.4±54.1mmであった。また、被験者の利き手は、右手19名、左手1名であった。また、被験者の利き足は、右足20名であった。また、被験者の実験時の軸足(床上に接地する足)は全員左足であった。
本実験用の座位立位可変机に体を寄りかからない姿勢の条件では、「立机に体を寄りかからないで自然な立位姿勢をとってください。そして、机の高さを調節し字を書きやすい最適な机の高さを設定してください。つぎに、立机と体との適切な距離をとってください」と教示した。
本実験用の座位立位可変机に体を寄りかかる姿勢条件では、「立机に体を寄りかかる立位姿勢をとってください。その際に、字を書きやすく、体重分散できる楽な姿勢になるよう、立机の高さを設定してください」と教示した。
実験者は、立位の被験者の姿勢として、以下の項目を測定し、記録した。
実験者は、被験者に本実験用の座位立位可変机の天板の上面の高さを書字しやすい高さに調節してもらい、その高さを測定した。なお、本実験用の座位立位可変机の天板の上面の高さはフィジェットバー211の設置の位置を変えても変更しない。
次に、実験者は、被験者に最も良い軸足の位置を調節してもらい、被験者の軸足の中心の位置を軸足中心位置とした。実験者は、軸足中心位置に印をつけてずれないように基準点P2と軸足中心間の距離を床に貼り付けた定規により測定した。なお、被験者の軸足の位置は、フィジェットバー211の設置位置を変えても変更しない。
次に、実験者は、フィジェットバー211に乗せている足の位置を被験者が履いている靴に貼り付けた定規により測定した。被験者の靴の軸Xの方向の中央点をゼロとし、つま先側をプラス、踵側をマイナスとし、フィジェットバー211の足掛部の中心までの距離を測定した。
次に、実験者は、被験者の重心の位置を測定した。なお、通常、立位姿勢における人間の重心位置は骨盤の中心にある。そこで、被験者の腰の中心から重りを下垂し、軸足中心位置から重りの中心までの距離を測定した。
即ち、実験者は、被験者にフィジェットバー211の奥行Dと高さHに対して、以下の項目を主観により評価してもらい、記録した。
実験者は、被験者に対して、フィジェットバー211を揺らさないで乗せた場合のフィジェットバー211の奥行感について、「非常に近い」、「かなり近い」、「やや近い」、「丁度良い」、「やや遠い」、「かなり遠い」、「非常に遠い」の7段階評定尺度を用いて評価してもらった。
実験者は、被験者に対して、フィジェットバー211を揺らさないで乗せた場合のフィジェットバー211の高さ感について、「非常に低い」、「かなり低い」、「やや低い」、「丁度良い」、「やや高い」、「かなり高い」、「非常に高い」の7段階評定尺度を用いて評価してもらった。
実験者は、被験者に対して、フィジェットバー211を揺らして使用した場合のフィジェットバー211の奥行感について、「非常に近い」、「かなり近い」、「やや近い」、「丁度良い」、「やや遠い」、「かなり遠い」、「非常に遠い」の7段階評定尺度を用いて評価してもらった。
実験者は、被験者に対して、フィジェットバー211を揺らして使用した場合のフィジェットバー211の高さ感について、「非常に低い」、「かなり低い」、「やや低い」、「丁度良い」、「やや高い」、「かなり高い」、「非常に高い」の7段階評定尺度を用いて評価してもらった。
実験者は、被験者に対して、フィジェットバー211の揺らしやすさ感について、「非常に揺らしにくい」、「かなり揺らしにくい」、「やや揺らしにくい」、「少し揺らしにくい」、「よくも悪くもない」、「少し揺らしやすい」、「やや揺らしやすい」、「かなり揺らしやすい」、「非常に揺らしやすい」の9段階評定尺度を用いて評価してもらった。
実験者は、被験者に対して、フィジェットバー211使用による姿勢の安定性について、「安定しない」、「少し安定する」、「やや安定する」、「かなり安定する」、「非常に安定する」の5段階評定尺度を用いて評価してもらった。
実験者は、被験者に対して、フィジェットバー211使用による下肢の負担の軽減感について、「全く軽減しない」、「少し軽減する」、「やや軽減する」、「かなり軽減する」、「非常に軽減する」の5段階評定尺度を用いて評価してもらった。
実験者は、被験者に対して、フィジェットバー211に体重を乗せられているかについて、「乗せられていない(足を乗せているだけ)」、「少し乗せられる」、「やや乗せられる」、「かなり乗せられる」、「大いに乗せられる」の5段階評定尺度を用いて評価してもらった。
実験者は、被験者に対して、軸足にかかる体重分散度合、フィジェットバー211にかかる体重分散度合、天板の上面にかかる体重分散度合を、全体重を10として評価してもらった。
実験者は、被験者に対して、フィジェットバー211への体重のかけやすさとバーの揺らしやすさを総合して、フィジェットバー211のよいか/悪いかについて、「非常に悪い」、「かなり悪い」、「やや悪い」、「少し悪い」、「よくも悪くもない」、「少しよい」、「ややよい」、「かなりよい」、「非常によい」の9段階評定尺度を用いて評価してもらった。
即ち、実験者は、被験者にフィジェットバー211を利用してもらい、以下の項目を測定し、記録した。
被験者により調整された座位立位可変机の天板の上面の高さの平均は1086.8mm、標準偏差は55.8mmであった。また、被験者の軸足中心位置の平均は210.8mm、標準偏差は49.1mmであった。即ち、被験者の軸足中心位置の平均は基準点Cから平均210mm離れることがわかった。
フィジェットバー211の奥行が0mmの場合、いずれの被験者も、どの高さでも、足中心位置の平均は、-35mm乃至-25mmに位置した。つまり、フィジェットバー211に乗せている足は踵側に25~35mmずれていることがわかった。また、フィジェットバー211の奥行が奥になるほど、どのフィジェットバー211の高さでも、足中心位置はバーに近づく傾向がみられた。つまり、バーの位置が奥になるにしたがって、バー上に足中心を近づけて乗せていることがわかった。
また、基準点Bからの平均書字点位置は221.4mm、標準偏差は28.9mmであった。
また、被験者のフィジェットバー211の設置高さ毎に、フィジェットバー211の奥行と奥行に対する奥行感スコアとの回帰分析を行った。フィジェットバー211の設置高さ別に奥行感スコアをy、フィジェットバー211の奥行をxとし、回帰式を求めた。得られた回帰式より、丁度よい奥行(y=0のときのx値)を算出した。即ち、丁度良いと感じる奥行(奥行感スコア0の奥行)がみられ、その奥行はバーの高さによって異なっていた。
なお、図8及び図9において、被験者は、sub1乃至sub20という名称で特定されている。
全被験者の推定される最適な設置の位置の平均を成人用のフィジェットバーの最適な設置の位置とした。座位立位可変机に寄りかからない姿勢における成人用のフィジェットバーの最適な設置の位置は、奥行118.78mm、標準偏差34.21mmであった。また、座位立位可変机に寄りかからない姿勢における成人用のフィジェットバーの最適な設置の位置は、高さ166.62mm、標準偏差65.47mmであった。また、12歳から15歳の平均身長とフィジェットバー実験の被験者の平均身長との比を乗じて中学生用のフィジェットバーの最適な設置の位置を推定した。その結果、座位立位可変机に寄りかからない姿勢における中学生用のフィジェットバーの最適な設置の位置は奥行111.21mm、高さ156.01mmであった。
全被験者の推定最適な設置の位置の平均を成人用のフィジェットバーの最適な設置の位置とした。座位立位可変机に寄りかかる姿勢における成人用のフィジェットバーの最適な設置の位置は、奥行140.04mm、標準偏差31.71mmであった。また、座位立位可変机に寄りかかる姿勢における成人用のフィジェットバーの最適な設置の位置は、高さ181.29mm、標準偏差58.24mmであった。また、12歳から15歳の平均身長とフィジェットバー実験の被験者の平均身長との比を乗じて中学生用のフィジェットバーの最適な設置の位置を推定した。その結果、座位立位可変机に寄りかかる姿勢における中学生用のフィジェットバーの最適な設置の位置は奥行131.12mm、高さ169.74mmであった。
全被験者の座位立位可変机に寄りかからない姿勢におけるフィジェットバー211の振り幅平均と最大値、最小値、90%ile、95%ile、および平均振り角度、90%ile振り角度、95%ile振り角度は、図10に示す通りである。なお、振り角度は、振り幅角度=arctan(x/L)の式により求めた。ただし、この式において、xはフィジェットバー211の振り幅であって、Lはフィジェットバー211の長さ(270mm)である。
ここで、「%ile」とは、データを大きさ順で並べ、小さいほうからのどの位置にあるかを見る指標であって、当該位置をパーセントで表現した指標である。即ち例えば、「振り幅(mm)の90%ileの値が190mmである」とは、「図10に係る実験の被験者毎の振り幅を大きさ順で並べ、小さいほうから90%の振り幅が190mmである」ということを示す。換言すれば、この場合、190mmの振り幅が確保されていれば、90%の被験者自身の(好みの)振り幅が確保されていると認識する。
また、図10の結果は、各種データの分布を正規分布であるものとして分析した。即ち、実験結果として各種データに関して、平均値及び標準偏差を導出し、当該平均値及び当該標準偏差を持つ正規分布に対して、-∞から所定の幅Wまでを積分することにより、分析した。即ち例えば、当該正規分布の全体の積分値に対して、95%の積分値となる所定の振り幅を導出することで、95%ileとなる振り幅を導出した。
全被験者の座位立位可変机に寄りかかる姿勢におけるフィジェットバー211の振り幅平均と最大値、最小値、90%ile、95%ile、および平均振り角度、90%ile振り角度、95%ile振り角度は、図10に示す通りである。なお、振り角度は、上述の図10における式により同様に求めた。
具体的には、全被験者のフィジェットバーの振り幅平均は229mm(振り角度平均44.56度)、標準偏差は103mmであった。また、フィジェットバーの振り幅最大値は510mm、最小値は50mmであった。バーの振り幅は、かかと側よりもつま先側に大きい傾向がみられた。
実験器具が有するフィジェットバーの長さLが長くなるほど、フィジェットバーの可動範囲が広くなる。また、振り子の原理に基づけば、利用者が力を加えない場合のフィジェットバーの周期に対して、フィジェットバーの長さLが影響を及ぼす。
そこで、実験者は、被験者による評価として、「リズム(時間間隔)の好ましさ」を評価してもらった。また、実験者は、被験者による評価として、「総合的な好ましさ」を評価してもらった。
また、この実験の結果、寄りかからない姿勢において、被験者による「総合的な好ましさ」に基づく最適なフィジェットバーの長さLは、296.9mmであった。
これらをまとめると、寄りかからない姿勢において、フィジェットバー15の最適な長さLは、270mm乃至300mmの範囲に存在することがわかった。
また、この実験の結果、寄りかかる姿勢において、被験者による「総合的な好ましさ」に基づく最適なフィジェットバーの長さLは、312.0mmであった。
これらをまとめると、寄りかかる姿勢において、フィジェットバー15の最適な長さLは、306mm乃至312mmの範囲に存在することがわかった。
以下、揺れるフィジェットバー15が、揺れないフットレストバーに対してどれだけ有効性を有するかを検証した結果について説明する。
即ち、発明者は、フィジェットバー15の有効性を検証するため、揺れないフットレストバーを備える実験器具22を作成して検証した。
図12に示すように、実験器具22は、フットレストバー221を備え、フットレストバー支持軸222R,222Lを有する。なお、以下、支持軸222Rと、支持軸222Lとを個々に区別する必要が無い場合、これらをまとめて、「支持軸222」と呼ぶ。
また、実験者は、異なる支持軸222にフットレストバー221を支持させることにより、様々なフットレストバーの奥行Dや高さHを再現可能である。
基本的な条件は、上述の実験と同様である。即ち、実験者は、20人の被験者に対し、座位立位可変机の天板の高さを調整させ、1分間の書字を行わせた。この時実験者は、上述の実験器具21,22の夫々を利用させ、フィジェットバーとフットレストバーを比べて、長時間使用したいと思うのはどちらかについて、「フィジェットバーを使用したい」、「ほぼ同じ」、「フットレストバーを使用したい」の3件法で評価してもらった。
図14は、図6の利用者の姿勢のうち座位立位可変机に寄りかかる姿勢における、フィジェットバーの有効性の実験結果を示す図である。
即ち、図13及び図14に示すように、被験者は、座位立位可変机に寄りかかる姿勢及び寄りかからない姿勢のいずれにおいても、フィジェットバーを長時間利用したいと評価した。即ち、フィジェットバー15は、フットレストバーと比較して有効であると把握される。
以上、揺れるフィジェットバーが、揺れないフットレストバーに対してどれだけ有効性を有するかを検証した結果について説明した。
以下、利用者がどのように座位立位可変机1を利用するのかについて説明する。
以上、利用者がどのように座位立位可変机1を利用するのかについて説明した。
自然人により立位で用いられるのに適する高さ(例えば、図1の天板11の高さ)に設定可能である天板と、
前記天板を支える1以上の脚(例えば、図1の机面上下昇降部12、脚部13、キャスター14からなる脚)と、
前記脚に備えられ、立位の前記自然人が足を置いて利用するための、所定の範囲において可動するフィジェットバー(例えば、図1のフィジェットバー15)と、
を備える机でれば足りる。
また、利用者は、一方の足を軸足として体重をかけることができる。この場合、利用者の体重は、分散される。これにより、利用者は、自身の下肢や腰に対する負担を軽減させることができる。また、利用者は、フィジェットバー15を揺らすことにより、机を利用しながらにして下肢を動かすことができる。これにより、利用者は、自身の筋肉によるポンプとしての作用により血の流れが促進される。従って、改善することにより、利用者の脳は活性化することが考えられる。
また、このような机は、上述のように、手持無沙汰等を解消することができるとともに、血流の改善に伴って脳の活性化を図ることができる。更に言えば、このような机のうち一人用のものは、移動が容易である。即ち、このような机は、特に学習用において好適であると言える。
をさらに備えることができる。
前記自然人が所定の作業をするのに適するとして予め設定された範囲(例えば、設置場所や利用目的から決まる取りうる奥行Dの範囲)の中から選択されたパラメータ(例えば、当該自然人の判断結果)に基づいて設定された奥行と、
前記自然人が所定の作業をするのに適するとして予め設定された範囲(例えば、設置場所や利用目的から決まる取りうる高さHの範囲)の中から選択されたパラメータ(例えば、当該自然人の判断結果)に基づいて設定された高さとを有する、
ことができる。
前記自然人が長時間作業をするのに適するとして予め設定された範囲(例えば、設置場所や利用目的から決まる取りうる長さLの範囲)の中から選択されたパラメータ(例えば、当該自然人の判断結果)に基づいて設定された長さを有する、
ことができる。
Claims (4)
- 利用者により立位で用いられるのに適する高さに設定可能である天板(11)と、
前記天板(11)を床面上に支える1以上の脚部(13)と、
立位の前記利用者が足を置いて利用するためのフィジェットバー(15)を備え、
前記フィジェットバー(15)は、前記脚部(13)に設けられた支持軸(13A)の周りに回動可能な足掛部位(15A)を備え、
前記足掛部位(15A)は、前記利用者が足を前記足掛部位(15A)に置かない状態においては、自重によって前記支持軸(13A)に対し垂下した垂下位置を呈し、
前記利用者が足を置いて前記足掛部位(15A)を移動させた場合、前記足掛部位(15A)は前記支持軸(13A)を支点に前記垂下位置を含む所定範囲の振り幅で揺動可能である
机。 - 前記フィジェットバー(15)を、前記垂下位置よりも前記天板(11)の利用者が相対する側と反対側において利用されない状態として保持するフィジェットバー保持部(16)
をさらに備える請求項1に記載の机。 - 前記天板(11)は矩形であり、
前記支持軸(13A)は前記天板(11)の下方であって、前記天板(11)の前記利用者と対向する辺から反対側の辺側へ所定の奥行(D)の長さ位置に設けられ、
前記フィジェットバー(15)の前記足掛部位(15A)は、
前記支持軸(13A)から所定の長さ(L)の位置に配置されると共に、前記支持軸(13A)の垂下位置において、前記床面から所定の高さ(H)の位置に配置され、
前記支持軸(13A)は、前記利用者が立位において片足を前記足掛部位(15A)に乗せた状態において、前記足掛部位(15A)に乗せた片足の膝の位置よりも前記床面側に配置され、
前記高さ(H)は、前記利用者の立位において足を前記足掛部位(15A)に乗せた状態において、膝が鈍角に屈曲する位置である
請求項1又は2に記載の机。 - 天板(11)と、机面上下昇降部(12)と、脚部(13)と、フィジェットバー(15)を備える座位立位可変机(1)であって、
前記天板(11)は、長方形であって、当該長方形の長辺の一辺は利用者に対し左右方向に延在して相対し、当該長方形の短辺は前記利用者に対して前後方向に延在し、
前記机面上下昇降部(12)は、前記天板(11)の左短辺側に固定された左机面上下昇降部(12L)と前記天板(11)の右短辺側に固定された右机面上下昇降部(12R)を含み、
前記脚部(13)は、前記左机面上下昇降部(12L)を支える左の脚部(13L)と、前記右机面上下昇降部(12R)を支える右の脚部(13R)を含み、
前記左の脚部(13L)は、前記左机面上下昇降部(12L)に連続して下方に配置されるパーツと、前記左机面上下昇降部(12L)に連続して下方に配置されるパーツの下端部が取り付けられ、所定の長さで床面と並列に前記前後方向に延在されるパーツと、前記左机面上下昇降部(12L)に連続して下方に配置されるパーツの上部から前記前後方向の前方へ前記床面と並列に延在された後、下方に指向されて前記床面と並列に前記前後方向に延在されるパーツの前端部に固定されたパーツを含み、
前記右の脚部(13R)は、前記右机面上下昇降部(12R)に連続して下方に配置されるパーツと、前記右机面上下昇降部(12R)に連続して下方に配置されるパーツの下端部が取り付けられ、所定の長さで床面と並列に前記前後方向に延在されるパーツと、前記右机面上下昇降部(12R)に連続して下方に配置されるパーツの上部から前記前後方向の前方へ前記床面と並列に延在された後、下方に指向されて前記床面と並列に前後方向に延在されるパーツの前端部に固定されたパーツを含み、
前記フィジェットバー(15)は、前記左の脚部(13L)を構成する前記左机面上下昇降部(12L)に連続して下方に配置されるパーツの上部から前記前後方向の前方へ前記床面と並列に延在された後、下方に指向されて前記床面と並列に前後方向に延在して配置されるパーツの前記床面と並列に延在された部分に回転自在に支持される左の支持軸(13AL)と、前記左の支持軸(13AL)と同一軸線を有し、前記右の脚部(13R)に前記右机面上下昇降部(12R)に連続して下方に配置されるパーツの上部から前記前後方向の前方へ前記床面と平行に延在された後、下方に指向されて前記床面と平行に前後方向に延在して配置されるパーツの前記床面と平行に延在された部分に回転自在に支持される右の支持軸(13AR)と、前記左の支持軸(13AL)と前記右の支持軸(13AR)に対し所定の長さ(L)で偏倚した位置に設けられた足掛部位(15A)によってクランク形に形成され、
さらに、フィジェットバー保持部(16)は、前記左の脚部(13L)と前記右の脚部(13R)に固定され、前記利用者が相対する辺と反対側の辺側に延在するように設けられた棒状体と、前記棒状体に取り付けられたフック部(16AR、16AL)を含む
座位立位可変机。
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