JP7297294B2 - 液液系での抽出分離による特定物質の製造方法 - Google Patents

液液系での抽出分離による特定物質の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、液液系での抽出分離において、抽出容器(塔又は槽)の数を増加させることなく、循環送液を繰り返し行うことで得られる多段に相当する効果を利用して、水相内若しくは油相内で分離生成される特定の物質又はこれら両方の特定の物質を、簡単かつ経済的に製造する方法に関するものである。
液液系での抽出分離を利用して、目的成分(溶存成分又は固形成分若しくは浮遊液滴成分)を分離・濃縮したり、目的成分から不純物を分離・除去したりすることで、製品として、高品位な金属品、化学品(有機化合物など)などを得ることができる。液液系での抽出分離とは、互いに混じり合わない2つの液相の間における物質の分配の違いによって、金属イオン、有機化合物、生体高分子などを分離精製・濃縮する方法であり、工業的に幅広く利用されている。液液系での抽出分離では、扱う対象成分に応じて、錯形成反応、脱水和反応、溶媒和反応、イオン交換反応、酸塩基反応、酸化還元反応、触媒反応、自己組織化反応など、多くの化学反応が関与し得る。
液液系での抽出分離では、抽出単位操作を繰り返す多段抽出を行うことで、水溶液中の目的成分をより高精度に分離することができる。通常、必要な数の抽出容器(塔又は槽)を配置して順次処理することで多段抽出を行う。そのとき、より高度な分離を求めるほど、より多くの数の容器(塔又は槽)が必要になる。
一方、液液系での抽出分離を工業的に行う装置では、少なくとも、正抽出部と逆抽出部の2つ部位を有し、正抽出部の油相に抽出された目的成分は逆抽出部で逆抽出液(逆抽出部の水相)に回収され、同時に、リセットされた油相は正抽出部に運ばれて再利用される。また、必要に応じて、正抽出部と逆抽出部の間に洗浄部を挿入することで、より高い分離の精度を得ることもできる。
一般的に、正抽出部、洗浄部、及び逆抽出部のそれぞれに対して複数の容器(塔又は槽)を配置する、いわゆる多段化を行うことで、目的成分を必要とする純度にまで分離精製する。通常、多段化とは、従来、正抽出部、洗浄部、及び逆抽出部の各部に対して個別的に、必要な員数で容器を設置して抽出処理を行う方式を指す(便宜上、容器員数多段と称する)。
しかしながら、このような多段化によって、装置が大型かつ複雑になるため、初期コスト、運転コスト、維持コストのすべてが増加し、なおかつ、操作性が低下するために、扱いに熟練を要し、常時、監視と煩雑な調整作業が必要になることで、人件費も増加する。すなわち、液液系での抽出分離に基づく分離精製によって金属品、化学品などの製品を得ようとするときのコストを、多くの面から大幅に上げてしまう原因になっている。
従来技術において、正抽出部、洗浄部、及び逆抽出部は、通常、それぞれが独立的に機能しながら、必要とする抽出分離を行えるように構成される。例えば、正抽出部において目的成分を油相に抽出する操作を行った後、該正抽出部の油相を洗浄部に移送し、該洗浄部において目的成分に随伴して抽出された不純物等の油相に抽出したくない成分を水相に洗い流すことで油相中の前記目的成分をさらに分離精製する操作を行い、その後、前記洗浄部の油相を逆抽出部に移送し、このように分離精製された目的成分を該逆抽出部において水相に逆抽出することによって回収する操作を行い、最後に、リセットされた油相を前記正抽出部に移送してもどし、再度、利用する。
このように、順次、油相を後段に移送しながら処理を進め、リセットされた油相を、再度、前段にもどして再利用するという操作を繰り返し行うことで、油相が満足に機能する限りは、正抽出部、洗浄部、及び逆抽出部の各部の間で油相を持続的に循環利用(繰り返し利用)できる。具体的には、バルブ切換え操作と送液デバイス(循環ポンプ等)の作動のオンオフに基づいて、独立的に機能する各部位での操作を終える毎に油相を取り出し、正抽出部から洗浄部へ、洗浄部から逆抽出部へ、さらに逆抽出部から正抽出部へもどす周回の順番で、液を循環利用するためのポンプ(循環ポンプ)等を用いて順次移送する作業・動作を繰り返し行い、油相を再生しながら循環的に利用する(例えば、特許文献1)。
なお、水相については、基本的に、3つの部位(正抽出部、洗浄部、及び逆抽出部)を行き来させる必要はないが、油相の洗浄を行いながら抽出残液を効率的に回収したい都合上、処理する対象としてフィードされる水溶液(フィード水溶液)を正抽出部と洗浄部の間から引き込み、洗浄部から流れてきた洗浄液と合流させ、フィード水溶液と洗浄液が混合されながら正抽出部に導入される仕組みも、一般的によく知られている。
特許第3223132号公報 特許第5305382号公報 特許第5565719号公報 特許第5733691号公報 特許第6483886号公報 特許第6488512号公報
水溶液中の目的成分を高度に抽出分離したいとき、抽出単位操作を繰り返す多段抽出は不可欠である。例えば、特許文献1に開示されているように、従来のシステム構成では、通常、抽出反応を行う容器(塔又は槽)を必要な数だけ配置して、多段抽出を行うが、より高度な分離が求められるほど、より多くの数の容器(塔又は槽)を設置しなければならない。液液系での抽出分離を工業的に行うとき、場合によっては、100を超える数の容器(塔又は槽)が必要になる。そこで、容器(塔又は槽)の数を増やすことなく多段抽出を行える装置と方法について、鋭意検討を重ねた結果、以下に示す解決方法に到達した。
本発明の目的は、正抽出、洗浄、及び逆抽出を一体化して同期的に循環送液することで生じる多段効果を利用する新たなシステム(同期的循環送液多段と称する)に関するものであり、本発明の目的は、正抽出、洗浄、及び逆抽出に対して個別的に必要な員数の容器を設置している従来の方式(容器員数多段と称する)に対して、新しい多段化の概念を提案し、実際に、この概念を利用した装置により、水相内若しくは油相内で分離精製される特定の物質又はこれら両方の特定の物質を製造する方法を提供することにある。
多段抽出においては、抽出分離の対象となる成分を含む水溶液を処理した後、再度、処理することを繰り返す。この点においては、複数の容器を配して順次処理しても、同じ容器を用いて繰り返し処理しても、同様な多段効果が見込めることに思い至り、上記課題を解決するための手段として、正抽出部、洗浄部、及び逆抽出部を一体化し同期して動作するシステム(仕組み)に着目し、当該システムにおける循環送液の操作を工夫することで、容器(塔又は槽)の数を増やすことなく多段抽出を行える装置・方法を発想した。
同期的循環送液多段では、従来、容器員数に委ねられていた多段化を、循環送液を利用することによって実現する。すなわち、正抽出部、洗浄部、及び逆抽出部が一体化して同期的に機能するシステム構造において、正抽出部での水相(処理対象の水溶液)の循環回数が段数に相当する仕組みである。
本発明は、正抽出部、洗浄部、及び逆抽出部の3つの部位を一体化させ、それぞれの役割が同時進行するように連動させれば、コスト面、操作の簡便さ、及び大幅な省スペースにおいて、より合理的であるとの考えに基づいている。すなわち、連動によって、送液などに対するコスト負担が軽減され、それぞれの部位に対して独立的に調整作業を行う必要がなくなることで操作を簡便化でき、さらに、多段化に際して容器(塔又は槽)の数が増えないことで大幅な省スペースを実現できる。
例えば、水相若しくは油相又はこれら両相をノズルから微細な液滴として噴出させることで、水相と油相を乳濁混合状態(エマルション)に至るまで混合させると同時に、容器構造変化により該乳濁混合状態を解消させることで抽出分離を行うところの、特許文献2乃至6に記載のエマルションフロー法を利用し、正抽出部、洗浄部、及び逆抽出部を一体化させながら油相を同期的に横断循環送液することにより、それぞれの部位の役割が同時進行するように連動させることができる。この方法では、送液のみによって水相と油相の混合と分離を連続的に行うことができる。なお、微細な液滴を発生させるノズルとしては、ガラスビーズ焼結板を多孔体として利用したもの、細管又は細孔を集合させた構造体を利用したものなどがある。
具体的には、当該同期的一体化システムにおいて、正抽出部の水相を同正抽出部のみの単独部内で循環送液すると同時に、正抽出部の油相が洗浄部から逆抽出部を経て再び正抽出部に至る横断的な循環送液を行うように配管された抽出分離装置を用いて、正抽出部の水相の単独部内循環を複数回行うことで、多段に相当する効果を得ている。
また、水相の単独部内循環送液において、一度に処理できる一定量の処理対象水相(決まった循環回数で処理される1バッチの処理対象水相)の体積を大きくしたり、処理回数(バッチ数)を重ねるごとに進行する目的成分及び共存成分の濃縮を抑制したりする目的で、容器(塔又は槽)本体の外部に、同容器への水相の出入口と接続された水相タンクを設置することができる。
なお、容器本体外の水相タンクは、該容器内に供給される水相を溜め置くタンクと同容器から排出される水相を溜め置くタンクを個別に設置することもできる。その場合、1個のタンクに仕切りを設け、前記容器内に供給される水相と同容器から排出される水相を分けて溜め置く形での仕切り型タンクでも良い。個別型でも仕切り型でも、供給される水相と排出される水相が別々に溜め置かれるので両者は混合することがなく、その結果、より効率的に同期的循環送液多段の効果を発現させることができる。
従来の多段抽出では、容器(塔又は槽)の数を増やすことで、より高度な分離を実現させるのに対し、本発明の方法では、正抽出部の水相の単独部内循環の回数を増やすことで、容器(塔又は槽)の数を増やすことと同等な効果が得られる点に特徴がある。本発明の装置及び方法を用いれば、従来、正抽出部、洗浄部、及び逆抽出部で合わせて100個以上の容器(塔又は槽)を要していた分離対象に対しても、例えば3個から6個程度の極めて少数の容器(塔又は槽)で対応できるようになる。
同期的循環送液多段での正抽出部水相の単独部内循環回数は、容器員数多段での容器の個数に対応する。すなわち、同期的循環送液多段を利用することで、容器(塔又は槽)の数を増やすことなく、多段抽出を行うことができる。一方、処理対象の水相を同じ流速で送液した場合、当該水相が通過する流路の長さ(繰り返し通過する場合は延べの流路長)は、従来の容器員数多段の場合と同期的循環送液多段の場合で基本的に差がないため、処理に要する時間(プロセス・スピード)は同等である。同期的循環送液多段での処理対象の水相は、正抽出部(基本的に、1個の容器から成る)のみを繰り返し通過するので、同期的循環送液多段での1回の循環(1個の正抽出容器を1回通過)が、多数の容器を設置した容器員数多段での1個の容器の通過に相当する。
正抽出塔の油相の循環送液ライン上への逆抽出塔の設置を示す模式図。 正抽出塔の油相の循環送液ライン上への逆抽出塔及び洗浄塔の設置を示す模式図。 正抽出部のみで水相を単独部内循環送液する場合のシステム構造を示す模式図。 正抽出部のみで水相を単独部内循環送液する場合の別のシステム構造を示す模式図。 油相の分岐配管を用いる場合の水相循環について分離型の模式図。 油相の分岐配管を用いる場合の水相循環について連結型の模式図。 図3の正抽出部、洗浄部、逆抽出部に、それぞれ1個の容器を設置した場合の模式図。 図3の正抽出部に1個、洗浄部に2個、逆抽出部に1個の容器を設置した場合の模式図。 図3の正抽出部に1個、洗浄部に2個、逆抽出部に2個の容器を設置した場合の模式図。 図3の正抽出部に1個、洗浄部に3個、逆抽出部に2個の容器を設置した場合の模式図。 図5(a)に示すシステム構造を持つエマルションフロー装置の模式図。 すべての部位で水相を単独部内循環送液する場合のシステム構造を示す模式図。 洗浄部若しくは逆抽出部又はその両方で複数の容器を設置した場合の水相循環について分離型の模式図。 洗浄部若しくは逆抽出部又はその両方で複数の容器を設置した場合の水相循環について連結型の模式図。 図7の各部位にそれぞれ1個の容器(塔)を設置したエマルションフロー装置の模式図。 正抽出部及び洗浄部で水相を単独部内循環送液する場合のシステム構造を示す模式図。 図10の各部位にそれぞれ1個の容器(塔)を設置したエマルションフロー装置の模式図。 正抽出部及び逆抽出部で水相を単独部内循環送液する場合のシステム構造を示す模式図。 図12の各部位にそれぞれ1個の容器(塔)を設置したエマルションフロー装置の模式図。 正抽出容器の本体外に水相タンクを設置したシステム構造の一例を示す模式図。 正抽出容器の本体外に水相タンクを設置したシステム構造の別の例を示す模式図。 正抽出容器の本体外に水相タンクを設置したシステム構造のさらに別の例を示す模式図。 正抽出容器の本体外に水相タンクを設置したシステム構造のさらに別の例を示す模式図。 洗浄容器の本体外に水相タンクを設置したシステム構造の一例を示す模式図。 洗浄容器の本体外に水相タンクを設置したシステム構造の別の例を示す模式図。 逆抽出容器の本体外に水相タンクを設置したシステム構造の一例を示す模式図。 逆抽出容器の本体外に水相タンクを設置したシステム構造の別の例を示す模式図。 正抽出容器及び洗浄容器の本体外にそれぞれの水相タンクを設置したシステム構造の一例を示す模式図。 正抽出容器及び洗浄容器の本体外にそれぞれの水相タンクを設置したシステム構造の別の例を示す模式図。 正抽出容器及び逆抽出容器の本体外にそれぞれの水相タンクを設置したシステム構造の一例を示す模式図。 正抽出容器及び逆抽出容器の本体外にそれぞれの水相タンクを設置したシステム構造の別の例を示す模式図。 洗浄容器及び逆抽出容器の本体外にそれぞれの水相タンクを設置した、システム構造の一例を示す模式図。 正抽出容器、洗浄容器、及び逆抽出容器のすべてに対して、容器本体外にそれぞれの水相タンクを設置したシステム構造の一例を示す模式図。 図14(a)に示す水相タンクを供給側と排出側の水相で個別に設置したシステム構造の一例を示す模式図。 図14(b)に示す水相タンクを供給側と排出側の水相で個別に設置したシステム構造の一例を示す模式図。 図14(c)に示す水相タンクを供給側と排出側の水相で個別に設置したシステム構造の一例を示す模式図。 図14(d)に示す水相タンクを供給側と排出側の水相で個別に設置したシステム構造の一例を示す模式図。 図14(e)に示す水相タンクを供給側と排出側の水相で個別に設置したシステム構造の一例を示す模式図。 図14(f)に示す水相タンクを供給側と排出側の水相で個別に設置したシステム構造の一例を示す模式図。 図14(g)に示す水相タンクを供給側と排出側の水相で個別に設置したシステム構造の一例を示す模式図。 図14(h)に示す水相タンクを供給側と排出側の水相で個別に設置したシステム構造の一例を示す模式図。 図14(i)に示す水相タンクを供給側と排出側の水相で個別に設置したシステム構造の一例を示す模式図。 図14(j)に示す水相タンクを供給側と排出側の水相で個別に設置したシステム構造の一例を示す模式図。 図14(k)に示す水相タンクを供給側と排出側の水相で個別に設置したシステム構造の一例を示す模式図。 図14(l)に示す水相タンクを供給側と排出側の水相で個別に設置したシステム構造の一例を示す模式図。 図14(m)に示す水相タンクを供給側と排出側の水相で個別に設置したシステム構造の一例を示す模式図。 図14(n)に示す水相タンクを供給側と排出側の水相で個別に設置したシステム構造の一例を示す模式図。 図14(a)に示す水相タンクを仕切り付き水相タンクに変更した構造を示す模式図。 図14(b)に示す水相タンクを仕切り付き水相タンクに変更した構造を示す模式図。 図14(c)に示す水相タンクを仕切り付き水相タンクに変更した構造を示す模式図。 図14(d)に示す水相タンクを仕切り付き水相タンクに変更した構造を示す模式図。 図14(e)に示す水相タンクを仕切り付き水相タンクに変更した構造を示す模式図。 図14(f)に示す水相タンクを仕切り付き水相タンクに変更した構造を示す模式図。 図14(g)に示す水相タンクを仕切り付き水相タンクに変更した構造を示す模式図。 図14(h)に示す水相タンクを仕切り付き水相タンクに変更した構造を示す模式図。 図14(i)に示す水相タンクを仕切り付き水相タンクに変更した構造を示す模式図。 図14(j)に示す水相タンクを仕切り付き水相タンクに変更した構造を示す模式図。 図14(k)に示す水相タンクを仕切り付き水相タンクに変更した構造を示す模式図。 図14(l)に示す水相タンクを仕切り付き水相タンクに変更した構造を示す模式図。 図14(m)に示す水相タンクを仕切り付き水相タンクに変更した構造を示す模式図。 図14(n)に示す水相タンクを仕切り付き水相タンクに変更した構造を示す模式図。 図15(a)に示す個別に水相タンクを設置した装置構造に電磁弁を適用した構造を示す模式図。 図16(a)に示す仕切り付き水相タンクを設置した装置構造に電磁弁を適用した構造を示す模式図。 洗浄塔が1塔のときの正抽出部での水相の循環回数とTm、Lu濃度及びTm純度との関係を示すグラフ。 実施例1の実験で用いた2塔の洗浄塔を設置したシステム構造の一例を示す模式図。 洗浄塔が2塔のときの正抽出部での水相の循環回数とTm、Lu濃度及びTm純度との関係を示すグラフ。 洗浄塔が1塔のときの正抽出部での水相の循環回数とEr、Yb濃度及びEr純度との関係を示すグラフ。 洗浄塔が2塔のときの正抽出部での水相の循環回数とEr、Yb濃度及びEr純度との関係を示すグラフ。 洗浄塔が1塔のときの正抽出部での水相の循環回数とHo、Lu濃度及びHo純度との関係を示すグラフ。 洗浄塔が2塔のときの正抽出部での水相の循環回数とHo、Lu濃度及びHo純度との関係を示すグラフ。 比較例1の実験で用いた1つの塔だけによる循環送液システムで外付け水相タンクがないものの構造を示す模式図。 比較例1の実験で用いた1つの塔だけによる循環送液システムで外付け水相タンクがあるものの構造を示す模式図。 比較例2の実験で用いた正抽出部と洗浄部から成る循環送液システムで外付け水相タンクがないものの構造を示す模式図。 比較例2の実験で用いた正抽出部と洗浄部から成る循環送液システムで外付け水相タンクがあるものの構造を示す模式図。 比較例3の実験で用いた正抽出部と逆抽出部から成る循環送液システムで外付け水相タンクがないものの構造を示す模式図。 比較例3の実験で用いた正抽出部と逆抽出部から成る循環送液システムで外付け水相タンクがあるものの構造を示す模式図。
初めに、本発明の考え方の背景について、エマルションフロー法の装置でのシステム構成を例にして、図1及び図2を参照して説明する。なお、これらの図に示されたシステム構成は、従来技術に対応するものであり、本発明の特定物質を抽出分離するための新規なシステムについては、図3(a)以降を参照して説明する。
図1に示すように、正抽出塔内に油相を循環送液するライン上に逆抽出塔を設置すれば、送液の負担を増加させることなく、正抽出と逆抽出を同時進行させることができる。すなわち、密閉式の容器を用いれば、ポンプの数は増加しない。また、正抽出塔と逆抽出塔を一体化して同期的に機能するように動作させるため、それぞれの塔を個別的に動作させる場合よりも操作が簡便である。なお、正抽出と逆抽出が一体化したエマルションフロー法のシステムで非密閉式の容器を用いることも可能だが、ポンプの数は増加する。また、エマルションフロー法の装置に設置されている微細な液滴を発生させるためのノズルとしては、ガラスビーズ焼結板を多孔体として用いたもの、細管又は細孔を集合させた構造体などが利用できる。
図1の油相循環送液ライン上に設置された逆抽出塔では、リセットされた油相が相分離された状態で、再度、正抽出塔にもどされることが重要であり、水相(逆抽出液の相)は相分離される必要がない。よって、逆抽出塔は水相分離部を持つ必要がない。むしろ、水相分離部が設置されることで、水相と油相との混合効率が悪くなる点において、水相分離部の設置は好ましくない。
さらに、洗浄塔を挿入する場合でも、図2に示すように、正抽出塔、洗浄塔、及び逆抽出塔を一体化して、送液負担の増加なく、各塔を同時に動作させることができる。すなわち、密閉式の容器を用いれば、水相用のポンプ1台と油相用のポンプ1台(計2台)のみで、正抽出、洗浄、及び逆抽出を同時進行させられる。この場合も、洗浄塔、逆抽出塔は水相分離部を持つ必要がなく、むしろ、水相分離部が設置されることで、水相と油相との混合効率が悪くなる点において、水相分離部の設置は好ましくない。なお、正抽出、洗浄、及び逆抽出が一体化したエマルションフロー法のシステムでも非密閉式の容器を用いることが可能だが、ポンプの数は増加する。
また、エマルションフロー法の装置に限らず、循環送液に適応した装置であれば、上述のように、正抽出部、洗浄部、及び逆抽出部を一体化して同期的に機能させながら油相を循環送液することができる。このような一体化の仕組みは、密閉式の容器に限らず、非密閉の容器であっても適用できる(ただし、必要とするポンプ数は異なる)。すなわち、オーバーフロー(溢流)を利用した従来の液送り構造から圧力作用を利用した液送り構造に変更することにより、非密閉構造で動作する装置(密閉式が困難な装置)であっても、循環送液が容易になる。例えば、撹拌翼の回転によって水相と油相を混合し、重力分離によって分相を行うところのミキサーセトラー装置は、従来、オーバーフローによって液送りされるが、循環送液に適応させることで、前記エマルションフロー法の装置と同様なことが可能になる。
初めに、図3(a)を参照する。密閉式と非密閉式で数が異なるポンプは略している。正抽出部100の水相を同正抽出部100のみの単独部内で循環送液させると同時に、該正抽出部100の油相を洗浄部200から逆抽出部300を経て再び同正抽出部100にもどるように各部を横断的に循環送液させる。図1及び図2に示す従来技術では、正抽出部100に対応する正抽出塔に導入された水相は、ワンス・スルーで連続的に同正抽出部100から排出される。それに対して、図3(a)に示すシステム(仕組み)では、油相の横断的循環送液に同期させながら正抽出部100の水相を単独部内(正抽出部内)で繰り返し循環送液する点において、水相をワンス・スルーで処理する従来技術との違いがある。すなわち、水相の単独部内循環と油相の横断的循環が連動して同時進行する点が、本発明の最大の特徴でもある。
このシステム(仕組み)では、一度に処理できる分離精製対象成分含有水相の量は、正抽出部100に設置可能な水相の量に限られるので、その量を1バッチと考えるならば、一定量の水相(1バッチ)ごとに処理される点において、図3(a)に示す方式は、図1及び図2に示すような連続処理ではなく、バッチ処理(回分処理)の範疇と言える。一方で、正抽出、洗浄、及び逆抽出を同期させて順を追って逐次的に処理している点において、連続処理と言える側面も有している。
水相が重液相で油相が軽液相である場合、図3(a)の矢印が示す方向に従って、水相は容器の上から導入し下から排出するように送液し、油相は容器の下から導入して上から排出するように送液することが好ましい。なぜなら、重力や浮力を利用できることで送液負担を小さくでき、なおかつ、水相と油相が対向接触するように送液されるため、2液相の混合効率を高くできるからである。一方、逆に、水相が軽液相で油相が重液相である場合には、図3(b)に示すように、水相は容器の下から導入し上から排出するように送液し、油相は容器の上から導入し下から排出するように送液することが好ましい。なお、重液相とは、軽液相よりも比重が大きい液相であり、重液相と軽液相が相分離した状態で共存するとき、重液相が下で軽液相が上になる。
また、便宜上、これより先に示す図においては、特に明記していない限り、水相は重液相として、油相は軽液相として、表現することにする。
循環送液多段では、正抽出部100は、基本的に、容器(塔又は槽)の数は1個のみで良いが、洗浄部200、及び逆抽出部300は、必要に応じて、それぞれ複数の容器を配置する。とくに、洗浄部200での容器の数は、抽出分離の対象となる物質の純度及び回収率に大きく影響する。
なお、正抽出部100に対しては、逆抽出部300から正抽出部100に至る油相の配管及び正抽出部100から洗浄部200に至る油相の配管を分岐させたうえで、正抽出部100に複数の容器を設置することもできる。このような油相分岐配管は、例えば、正抽出部100を2箇所以上に分けて配置することによって床面積を効率的に利用したいときに役立つ。同じ理由で、洗浄部200若しくは逆抽出部300又はその両方の部位に対しても、同様な油相分岐配管を適用できる。油相分岐配管を用いる際の水相の単独部内循環の送液の方法としては、図4(a)に示す分離型水相循環及び図4(b)に示す連結型水相循環が可能である(密閉式と非密閉式で数が異なるポンプは略す)。分離型水相循環は、複数の容器内での水相と油相の体積バランスを保ちやすいメリットがある。一方、連結型水相循環は、複数の容器から排出される水相をまとめて回収できるメリットがある。
本発明に係る最も簡単な装置は、例えば、図3(a)に示すシステム構造において、正抽出部100、洗浄部200、逆抽出部300に対して、それぞれ1個の容器(塔又は槽)を設置したものであり、これを図5(a)に示す(密閉式と非密閉式で数が異なるポンプは略す)。なお、洗浄部200及び逆抽出部300に対しては、必要に応じて、複数の容器(塔又は槽)を設置する。
洗浄部200及び逆抽出部300に対しては、必要に応じて、複数の容器(塔又は槽)を設置することができる。代表例として図3(a)を容器ごとに記載すると、例えば、図5(a)、図5(b)、図5(c)、及び図5(d)のようになる(密閉式と非密閉式で数が異なるポンプは略す)。図5(a)は、正抽出容器、洗浄容器、逆抽出容器がそれぞれ1個ずつの場合、図5(b)は、正抽出容器が1個、洗浄容器が2個(A及びB)、逆抽出容器が1個の場合、図5(c)は、正抽出容器が1個、洗浄容器が2個(A及びB)、逆抽出容器が2個(A及びB)の場合、図5(d)は、正抽出容器が1個、洗浄容器が3個(A、B及びC)、逆抽出容器が2個(A及びB)の場合を示す。ただし、図5(a)から図5(d)までは、図3(a)に示されるシステム構造のすべてではない。洗浄部200及び逆抽出部300の容器の数は、必要に応じて、制限なく自由に増やすことができる。
エマルションフロー法の装置に対して図5(a)に示すシステム構造を適用すると、図6のようになる。ここで、洗浄塔と逆抽出塔の容器は水相分離部を持たない構造としている。洗浄塔と逆抽出塔では水相は送液されず、塔内に閉じ込めているだけなので、水相分離部が存在する構造では、同部に滞留した水相が油相と接触できず、水相と油相は効率的に混合されない。そこで、水相分離部を無くすことで、水相を効率的に油相と混合する。なお、洗浄塔と逆抽出塔では、装置が稼働している間、水相は排出も送液もされないので、水相は相分離される必要がない。
また、送液のみで稼働するエマルションフロー法の装置では、それぞれの塔を密閉容器にできるため、図6に示すように、ポンプの数を増やすことなく、すなわち、水相用のポンプ1台と油相用のポンプ1台のみで、洗浄塔及び逆抽出塔を正抽出塔と同時に稼働させられる。洗浄容器若しくは逆抽出容器又はその両方の容器が複数個になっても、ある程度の範囲までは(例えば、全体で10程度の容器数までは)、油相用のポンプは1台のみで対応できる。また、扱うべきポンプの数が少ないため、操作は簡便であり、各塔でポンプが共通なので同期性が高く、安定な運転状態を長時間にわたって持続できる。
エマルションフロー法の各塔は非密閉容器にしても良いが、必要とするポンプの台数、操作の簡便性などにおいては、密閉容器を用いた方が有利である。一方で、大量の気体が一気に発生する危険がある場合、密閉容器では安全上の問題が生じ得る。安全弁(逃がし弁)の設置によって破裂リスクは軽減できるとしても、密閉容器は必ずしも好ましいとは言えない。また、各塔の水相と油相の体積比を塔内圧変化によって変動させないための制限から、配管方法の自由度が小さい、という短所もある。よって、ケースバイケースで密閉式か非密閉式かを選択するのが好ましい。
なお、エマルションフロー法の装置に限らず、循環送液に適応した装置であれば、図3(a)又は図3(b)に示すシステム構造に用いることができる。例えば、循環送液適応型のミキサーセトラー装置にも、図3(a)又は図3(b)のシステム構造が利用できる。
次に、正抽出部100に限らず、洗浄部200、及び逆抽出部300でも、水相を単独部内循環送液するシステム構造の概要について、図7を例にして示す(密閉式と非密閉式で数が異なるポンプは略す)。水相が重液相で油相が軽液相である場合、図7の矢印が示す方向に従って、図3(a)の場合と同様に、水相が重液相で油相が軽液相である場合、水相は容器の上から導入し下から排出するように送液し、油相は容器の下から導入して上から排出するように送液することが好ましい。
洗浄部200若しくは逆抽出部300又はその両方の部位において、各部に複数の容器が設置されている場合、水相の単独部内循環送液の具体的な方法としては、図8(a)に示す分離型水相循環及び図8(b)に示す連結型水相循環が可能である(密閉式と非密閉式で数が異なるポンプは略す)。図4(a)及び図4(b)に示す分離型水相循環及び連結型水相循環と類似した配管構造であり、それぞれのメリットも図4(a)及び図4(b)の場合と共通している。
洗浄部200及び逆抽出部300において水相の体積を大きくしたい場合、水相が2液相混合部(ミキサー部)でしか存在できない容器構造には限界があるので、水相が相分離して集まる部位を有する容器構造が必要になる。相分離後の水相が油相から隔てられた状態で集まるエマルションフロー装置と、相分離後の水相と油相が界面を介して共存するミキサーセトラー装置で違いはあるものの、いずれの装置でも、水相が相分離して集まる容器構造が必要になる。一方で、水相が相分離して集まる部位(水相分離部)を持つ場合、油相の横断的循環送液だけでは、多くの水相が油相との接触にあずかることができないまま、取り残されてしまう。そこで、図7に示すように、洗浄部200及び逆抽出部300においても水相の単独部内循環送液を行うシステム構造を用いることで、水相分離部の水相が油相と接触することなく、当該水相分離部に滞留することを防ぐことができる。
なお、洗浄部200若しくは逆抽出部300での水相の単独部内循環送液では、正抽出部100での水相の単独部内循環送液とは異なり、同期的循環送液多段の効果は小さく、水相と油相の混合状態に差がなければ、洗浄部200若しくは逆抽出部300又はその両方で単独部内循環送液を行うか否かによって、同期的循環送液多段に起因すると言える明確な差異は現れない。同期的循環送液多段の効果が発現するには、油相に含まれる抽出分離対象のすべての成分に対して、その大部分が除去された状態、正確には、抽出分離対象の全成分の中で最も油相に残りやすい成分(最も油相に抽出されやすい元素)に対しても、その70%以上が除去(逆抽出)された状態にまで、油相がリセットされていることが重要であるが、洗浄部200及び逆抽出部300には、このようにリセットされた油相は導入されないため、同期的循環送液多段の効果は明瞭ではない、と考えられる。
図7に対しても、図3(a)又は図3(b)の場合と同様に、基本的に、1個の正抽出容器(ただし、油相流路を分岐配管する場合を除く)と1個以上の洗浄容器、及び1個以上の逆抽出容器を設置できる。すなわち、図7に示すシステム構造についても、図3(a)の場合と同様に、例えば、図5(a)、図5(b)、図5(c)、及び図5(d)に例として示すような容器個数・配置が可能であり、これらの例に限らず、必要に応じて自由に洗浄容器及び逆抽出容器の個数を設定した構造が可能である。
また、エマルションフロー法の装置に対して、正抽出容器、洗浄容器、及び逆抽出容器をそれぞれ1個ずつ有する場合の図7に示すシステム構造(図7の最も簡単な構造)を適用すると、図9のようになる。なお、図9は、密閉容器を用いた場合であり、油相用のポンプの数は、洗浄容器、逆抽出容器が加わっても1台のみである。この場合、洗浄容器若しくは逆抽出容器又はその両方の容器が複数個になっても、ある程度の範囲までは(例えば、全体で10程度の容器数までは)、油相用のポンプは1台のみで対応できる。
なお、図9に示されてはいないが、正抽出容器(正抽出塔)、洗浄容器(洗浄塔)、及び逆抽出容器(逆抽出塔)には、それぞれに対して、水相及び油相の排出口が設置してあり、分離精製の対象である成分は、これらの排出口から回収される。水相が重液相で油相が軽液相の場合には、水相の排出口は容器の下部に設置され、油相の排出口は容器の上部に設置される。一方、水相が軽液相で油相が重液相の場合には、水相の排出口は容器の上部に設置され、油相の排出口は容器の下部に設置される。
また、図9を例にとって、正抽出、洗浄、及び逆抽出が一体となって同期的に動作することについて、好ましい操作方法を示しながら説明する。まず、油相循環ポンプを作動すると、正抽出塔、洗浄塔、逆抽出塔の順番で、それぞれの塔の油相噴出ノズルから油相液滴の噴出が始まる。3塔同時に油相液滴を噴出しながら、乳濁混合した領域が水相噴出ノズルに到達したところで、それぞれの塔に設置された水相循環ポンプを同時に作動させる。このような一連の操作によって、正抽出塔、洗浄塔、及び逆抽出塔のすべてにおいて、2液相混合部での安定した乳濁混合と水相分離部及び油相分離部での清澄な相分離が同時進行した状態に至る。
なお、エマルションフロー法の装置に限らず、循環送液に適応した装置であれば、図7に示すシステム構造に用いることができる。例えば、循環送液適応型のミキサーセトラー装置にも、図7のシステム構造が利用できる。水相が軽液相で油相が重液相の場合も同様である。
また、正抽出部100と洗浄部200に対して水相の単独部内循環送液を行い、逆抽出部300では単独部内循環送液を行わない構造の概要について図10を例にして示す(密閉式と非密閉式で数が異なるポンプは略す)。水相が重液相で油相が軽液相である場合、図10の矢印が示す方向に従って、図3(a)及び図7の場合と同様に、水相(重液相)は容器の上から導入し下から排出するように送液し、油相(軽液相)は容器の下から導入して上から排出するように送液することが好ましい。
洗浄部200において水相の体積を大きくし、逆抽出部300ではその必要がない場合、図10に示すシステム構造が有効である。洗浄部200に導入できる水相の体積を大きくしたいとき、水相が相分離して集まる容器構造(水相分離部)を洗浄部200に設ける必要がある。水相分離部を設ける場合、油相の横断的循環送液だけでは、洗浄部200の中の多くの水相が油相との接触にあずかれないため、これを解消するため、洗浄部200においても水相の単独部内循環送液を行う。
図10に対しても、図3(a)、図3(b)及び図7の場合と同様に、基本的に、1個の正抽出容器(ただし、油相流路を分岐配管する場合を除く)と1個以上の洗浄容器、及び1個以上の逆抽出容器を設置できる。すなわち、図10に示すシステム構造についても、図3(a)及び図7の場合と同様に、例えば、図5(a)、図5(b)、図5(c) 、及び図5(d)に例として示すような容器個数・配置が可能であり、これらの例に限らず、必要に応じて自由に洗浄容器及び逆抽出容器の個数を設定した構造が可能である。
図10の構造をエマルションフロー法の装置に適用し、正抽出塔、洗浄塔、及び逆抽出塔をそれぞれ1塔ずつ配置した構造(図10の最も簡単な構造)を図11に示す。逆抽出部300の水相の体積を最小限にとどめたいとき、図11のようなシステムは有効である。なお、図11は、密閉容器を用いた場合であり、油相用のポンプの数は、洗浄容器、逆抽出容器が加わっても1台のみである。この場合、洗浄容器若しくは逆抽出容器又はその両方の容器が複数個になっても、ある程度の範囲までは(例えば、全体で10程度の容器数までは)、油相用のポンプは1台のみで対応できる。
なお、エマルションフロー法の装置に限らず、循環送液に適応した装置であれば、図10に示すシステム構造に用いることができる。例えば、循環送液適応型のミキサーセトラー装置にも、図10のシステム構造が利用できる。水相が軽液相で油相が重液相の場合も同様である。
正抽出部100と逆抽出部300において水相の単独部内循環を行い、洗浄部200では単独部内循環を行わないシステム構造も可能であり、図12を例にして、その概要を示す(密閉式と非密閉式で数が異なるポンプは略す)。水相が重液相で油相が軽液相である場合、図12の矢印が示す方向に従って、図3(a)、図7、及び図10の場合と同様に、水相(重液相)は容器の上から導入し下から排出するように送液し、油相(軽液相)は容器の下から導入して上から排出するように送液することが好ましい。
逆抽出部300において水相の体積を大きくし、洗浄部200ではその必要がない場合、図12に示すシステム構造が有効である。逆抽出部300に導入できる水相の体積を大きくしたいとき、水相が相分離して集まる容器構造(水相分離部)を逆抽出部300に設ける必要がある。水相分離部を設ける場合、油相の横断的循環送液だけでは、逆抽出部300の中の多くの水相が油相との接触にあずかれないため、これを解消するため、逆抽出部300においても水相の単独部内循環送液を行う。
図12に対しても、図3(a)、図3(b)、図7、及び図10の場合と同様に、基本的に、1個の正抽出容器(ただし、油相流路を分岐配管する場合を除く)と1個以上の洗浄容器、及び1個以上の逆抽出容器を設置できる。すなわち、図12に示すシステム構造についても、図3(a)、図7、及び図10の場合と同様に、例えば、図5(a)、図5(b)、図5(c)、及び図5(d)に例として示すような容器個数・配置が可能であり、これらの例に限らず、必要に応じて自由に洗浄容器及び逆抽出容器の個数を設定した構造が可能である。
図12のシステム構造をエマルションフロー法の装置に適用し、正抽出塔、洗浄塔、及び逆抽出塔をそれぞれ1塔ずつ配置したシステム構造(図12の最も簡単なシステム構造)を図13に示す。洗浄部200の水相の体積を最小限にとどめたいとき、図13のようなシステムは有効である。なお、図13は、密閉容器を用いた場合であり、油相用のポンプの数は、洗浄容器、逆抽出容器が加わっても1台のみである。この場合、洗浄容器若しくは逆抽出容器又はその両方の容器が複数個になっても、ある程度の範囲までは(例えば、全体で10程度の容器数までは)、油相用のポンプは1台のみで対応できる。
なお、エマルションフロー法の装置に限らず、循環送液に適応した装置であれば、図12に示すシステム構造に用いることができる。例えば、循環送液適応型のミキサーセトラー装置にも、図12のシステム構造が利用できる。水相が軽液相で油相が重液相の場合も同様である。
1個の容器内で水相を循環送液させる場合、該容器本体の外に同容器への水相の出入口と接続された水相タンクを設置し、同容器内の水相と該タンク内の水相を一緒に循環送液することで、一度に処理できる一定量の水相(処理の対象のフィード水溶液)の体積(決まった循環回数で処理される1バッチの水相の体積)を自在に大きくすることができる。例えば、図3(a)の最も簡単な構造であるところの図5(a)に示すシステム構造において、正抽出容器の本体外に正抽出用器用の水相タンクを設置した場合を1つの例として、図14(a)に示す(密閉式と非密閉式で数が異なるポンプは略す)。図14(a)は、正抽出容器の本体外に水相タンクを設置して該正抽出容器内の水相と一緒に循環送液を行い、洗浄容器及び逆抽出容器では水相の単独部内循環送液を行わないシステム構造を模式的に示している。
このような容器本体外の水相タンクは、図3(a)、図7、図10、及び図12に示されるシステム構造のすべてに対して、設置可能な任意の位置に任意の数で設置できる。水相が軽液相で油相が重液相の場合も同様である。すなわち、水相を単独部内循環送液しているすべての容器に対して、そのうちの任意の容器を自由に選択して水相タンクを設置できる。
例えば、正抽出容器、洗浄容器、及び逆抽出容器がそれぞれ1個の場合について、以下に述べる。正抽出容器に対してのみ、容器本体外に正抽出容器用の水相タンクを設置した場合としては、図14(a)の他にも、図14(b)、図14(c)、及び図14(d)に示すシステム構造が可能である(密閉式と非密閉式で数が異なるポンプは略す)。ここで、図14(b)は、正抽出容器の本体外に水相タンクを設置して該正抽出容器内の水相と一緒に循環送液を行うとともに、洗浄容器では水相タンクを設置しないで該洗浄容器内の水相の単独部内循環送液を行い、逆抽出容器では水相の単独部内循環送液を行わないシステム構造を模式的に示している。また、図14(c)は、正抽出容器の本体外に水相タンクを設置して該正抽出容器内の水相と一緒に循環送液を行うとともに、逆抽出容器では水相タンクを設置しないで該逆抽出容器内の水相の単独部内循環送液を行い、洗浄容器では水相の単独部内循環送液を行わないシステム構造を模式的に示している。そして、図14(d)は、正抽出容器の本体外に水相タンクを設置して該正抽出容器内の水相と一緒に循環送液を行うとともに、洗浄容器及び逆抽出容器では水相タンクを設置しないで両容器内の水相の単独部内循環送液を行うシステム構造を模式的に示している。
図14(a)では、正抽出容器以外では水相を単独部内で循環させていないが、図14(b)では、正抽出容器以外でも、洗浄容器において、水相タンクを設置しないで水相を単独部内で循環させている。図14(c)では、正抽出容器以外に、逆抽出容器において、水相タンクを設置しないで水相を単独部内で循環させている。図14(d)では、正抽出容器以外に、洗浄容器と逆抽出容器の両方において、水相タンクを設置しないで水相を単独部内で循環させている。
洗浄容器に対してのみ、容器本体外に洗浄容器用の水相タンクを設置した場合としては、図14(e)と図14(f)に示すシステム構造が可能である(密閉式と非密閉式で数が異なるポンプは略す)。ここで、図14(e)は、洗浄容器の本体外に水相タンクを設置して該洗浄容器内の水相と一緒に循環送液を行うとともに、正抽出容器では水相タンクを設置しないで該正抽出容器内の水相の単独部内循環送液を行い、逆抽出容器では水相の単独部内循環送液を行わないシステム構造を模式的に示している。また、図14(f)は、洗浄容器の本体外に水相タンクを設置して該洗浄容器内の水相と一緒に循環送液を行うとともに、正抽出容器及び逆抽出容器では水相タンクを設置しないで両容器内の水相の単独部内循環送液を行うシステム構造を模式的に示している。
図14(e)では、洗浄容器以外には、正抽出容器のみにおいて水相タンクを設置しないで水相を単独部内で循環させているが、図14(f)では、洗浄容器以外に、正抽出容器と逆抽出容器の両方において、水相タンクを設置しないで水相を単独部内で循環させている。
逆抽出容器に対してのみ、容器本体外に逆抽出容器用の水相タンクを設置した場合としては、図14(g)と図14(h)に示すシステム構造が可能である(密閉式と非密閉式で数が異なるポンプは略す)。ここで、図14(g)は、逆抽出容器の本体外に水相タンクを設置して該逆抽出容器内の水相と一緒に循環送液を行うとともに、正抽出容器では水相タンクを設置しないで該正抽出容器内の水相の単独部内循環送液を行い、洗浄容器では水相の単独部内循環送液を行わないシステム構造を模式的に示している。また、図14(h)は、逆抽出容器の本体外に水相タンクを設置して該逆抽出容器内の水相と一緒に循環送液を行うとともに、正抽出容器及び洗浄容器では水相タンクを設置しないで両容器内の水相の単独部内循環送液を行うシステム構造を模式的に示している。
図14(g)では、逆抽出容器以外には、正抽出容器のみにおいて水相タンクを設置しないで水相を単独部内で循環させているが、図14(h)では、逆抽出容器以外に、正抽出容器と洗浄容器の両方において、水相タンクを設置しないで水相を単独部内で循環させている。
正抽出容器と洗浄容器の本体外に、それぞれ正抽出容器用の水相タンクと洗浄容器用の水相タンクを設置した場合として、図14(i)と図14(j)に示すシステム構造が可能である(密閉式と非密閉式で数が異なるポンプは略す)。ここで、図14(i)は、正抽出容器及び洗浄容器の本体外にそれぞれの水相タンクを設置して、それぞれの容器内の水相と一緒に循環送液を行うとともに、逆抽出容器では水相の単独部内循環送液を行わないシステム構造を模式的に示している。また、図14(j)は、正抽出容器及び洗浄容器の本体外にそれぞれの水相タンクを設置して、それぞれの容器内の水相と一緒に循環送液を行うとともに、逆抽出容器では水相タンクを設置しないで該逆抽出容器内の水相の単独部内循環送液を行うシステム構造を模式的に示している。
図14( i )では、逆抽出容器においては水相を単独部内で循環させていないが、図14( j )では、逆抽出容器において水相タンクを設置しないで水相を単独部内で循環させている。
正抽出容器と逆抽出容器の本体外に、それぞれ正抽出容器用の水相タンクと逆抽出容器用の水相タンクを設置した場合として、図14(k)と図14(l)に示すシステム構造が可能である(密閉式と非密閉式で数が異なるポンプは略す)。ここで、図14(k)は、正抽出容器及び逆抽出容器の本体外にそれぞれの水相タンクを設置して、それぞれの容器内の水相と一緒に循環送液を行うとともに、洗浄容器では水相の単独部内循環送液を行わないシステム構造を模式的に示している。また、図14(l)は、正抽出容器及び逆抽出容器の本体外にそれぞれの水相タンクを設置して、それぞれの容器内の水相と一緒に循環送液を行うとともに、洗浄容器では水相タンクを設置しないで該洗浄容器内の水相の単独部内循環送液を行うシステム構造を模式的に示している。
図14(k)では、洗浄容器においては水相を単独部内で循環させていないが、図14(l)では、洗浄容器において水相タンクを設置しないで水相を単独部内で循環させている。
洗浄容器と逆抽出容器の本体外に、それぞれ洗浄容器用の水相タンクと逆抽出容器用の水相タンクを設置した場合を図14(m)に示す(密閉式と非密閉式で数が異なるポンプは略す)。ここで、図14(m)は、洗浄容器及び逆抽出容器の本体外にそれぞれの水相タンクを設置して、それぞれの容器内の水相と一緒に循環送液を行うとともに、正抽出容器では水相タンクを設置しないで該正抽出容器内の水相の単独部内循環送液を行うシステム構造を模式的に示している。図14(m)では、正抽出容器においては水相タンクを設置しないで水相を単独部内で循環させている。また、図14(n)では、正抽出容器、洗浄容器、及び逆抽出容器のすべてに対して、水相タンクを設置して水相を単独部内で循環させている。
最後に、正抽出容器、洗浄容器、及び逆抽出容器すべての容器本体外に、それぞれ正抽出容器用の水相タンク、洗浄容器用の水相タンク及び逆抽出容器用の水相タンクを設置した場合を図14(n)に示す(密閉式と非密閉式で数が異なるポンプは略す)。ここで、図14(n)は、正抽出容器、洗浄容器及び逆抽出容器のすべてに対して、容器本体外にそれぞれの水相タンクを設置して、それぞれの容器内の水相と一緒に循環送液を行うシステム構造を模式的に示している。図14(n)では、正抽出容器、洗浄容器、及び逆抽出容器のすべてに対して、水相タンクを設置した形で水相を単独部内で循環させている。
図14(a)と図14(b)との比較において、図14(a)での洗浄容器及び逆抽出容器は、単独部内循環送液を行わないので、基本的に、相分離された水相が集まる部位(水相分離部)を持たない。よって、洗浄容器及び逆抽出容器での水相の体積は必要最小限にとどまる。それに対して、図14(b)は、洗浄容器において単独部内循環送液を行う構造であり、同洗浄容器内に水相分離部を設ける場合に適用される。別の言い方をすると、水相分離部が存在する容器構造では、当該水相分離部に滞留した水相を効率的に油相と接触させるため、単独部内循環送液を行う必要がある。容器内に水相分離部を設けることで、水相分離部を持たない容器と比較して、より多くの水相を設置することができる。すなわち、図14(b)に示す構造は、図14(a)との比較において、洗浄容器内に充填する水相の体積をより大きくしたいときに用いられる。
同様に、図14(c)は、図14(a)との比較において、逆抽出容器内に充填する水相の体積をより大きくしたい場合、図14(d)は、洗浄容器及び逆抽出容器の両方に対して、より大きな水相体積を確保したい場合に用いられる。
また、図14(e)から図14(n)までに示すように、洗浄容器若しくは逆抽出容器又はその両方の容器に対しても、容器本体外に水相タンクを設置することができる。図14(e)、図14(f)、図14(g)、図14(h)、及び図14(m)に示すように、正抽出容器には容器本体外水相タンクを設置しない場合もある。
容器本体外に水相タンクを設置することにより、洗浄容器若しくは逆抽出容器又はその両方の容器に対しても、扱うことが可能な水相の体積を自在に大きくできる。なお、その理由は、主として、正抽出容器での処理回数(バッチ数)を重ねるごとに進行する洗浄容器若しくは逆抽出容器又はその両方の容器内での成分の濃縮を抑制するためである。実際、洗浄容器若しくは逆抽出容器又はその両方の容器に対して、前述のような容器本体外タンクを設置することにより、正抽出容器での処理回数(バッチ数)が増えても、洗浄容器での洗浄液若しくは逆抽出容器での逆抽出液又はその両方について、その交換回数を抑制できる。
洗浄容器及び逆抽出容器については、必要に応じて、複数個の容器を設置しても良いので、各容器に付随する同容器本体外の水相タンクも、容器の数と同数を上限として設置することができる。なお、密閉式の装置では、洗浄容器若しくは逆抽出容器又はその両方の容器が複数個になっても、ある程度の範囲までは(例えば、全体で10程度の容器数までは)、油相用のポンプは1台のみで対応できる。また、水相用のポンプも、水相タンクを設置した場合においても、その台数は増加しない。
また、容器本体外の水相タンクとして、該容器内に供給される水相を溜め置くタンク(供給水相タンク)と同容器から排出される水相を溜め置くタンク(排出水相タンク)を個別に設置することもできる。例えば、正抽出容器、洗浄容器、及び逆抽出容器がそれぞれ1個の場合には、図15(a)から図15(n)に示す形態が可能である(密閉式と非密閉式で数が異なるポンプは略す)。図14(a)から図14(n)に示す水相タンクを供給側と排出側の水相で個別に設置した形である。このように、供給側の水相と排出側の水相を個別に溜め置くことで両者は混合せず、より効率的に同期的循環送液多段の効果が発現する。
なお、供給側の水相タンクと排出側の水相タンクを個別に設置する代わりに、1個のタンクに仕切りを設けて2槽とし、該容器内に供給される水相と同容器から排出される水相を分離して溜め置くこともできる。例えば、正抽出容器、洗浄容器、及び逆抽出容器がそれぞれ1個の場合には、図16(a)から図16(n)に示す形態が可能である(密閉式と非密閉式で数が異なるポンプは略す)。図14(a)から図14(n)に示す水相タンクを仕切り付き水相タンクに変更した形である。
個別型でも仕切り型でも、供給される水相と排出される水相が別々に溜め置かれることで両者は混合しないので、その結果、供給水相と排出水相が混合される場合と比べて、より効率的に同期的循環送液多段の効果が発現する。また、供給水相と排出水相が別々に溜め置かれる場合も、洗浄容器及び逆抽出容器は、必要に応じて、それぞれ複数個の容器を設置しても良いので、各容器に付随する同容器本体外の水相タンクの数も、前記個別型ならば容器の数の2倍を上限として、前記仕切り型ならば容器の数と同数を上限として、設置できる。
水相を単独部内循環送液している容器に対して供給される水相と排出される水相が別々に溜め置かれる場合、前記個別型と前記仕切り型の区別なく、供給側と排出側を交互に入れ替えながら、繰り返し該容器内に水相を循環送液させる必要がある。その際の流路の切換えは、手動で行っても良いが、電子制御を利用することによって容易に自動化できる。例えば、電子制御された電磁弁によって流路を切り替えることができる。
例として、図15(a)に示す供給と排出で個別に水相タンクを設置(個別型)した装置システム構造に電磁弁を適用した場合を図17に(密閉式と非密閉式で数が異なるポンプは略す)、図16(a)に示す仕切り付き水相タンクを設置(仕切り型)した装置システム構造に電磁弁を適用した場合を図18に示す(密閉式と非密閉式で数が異なるポンプは略す)。
以下、実施例により、本発明の装置及びそれを用いて分離精製される特定の物質の製造方法の具体例を示すが、本発明は、下記の実施例に制限されるものではない。
ツリウムTm(III)とルテチウムLu(III)の分離
本発明の装置の一例として、図15(d)に示すシステム構造を有するエマルションフロー法の密閉式容器の装置を用いて、ランタノイド系列の重希土類元素である原子番号69のツリウムTm(III)と原子番号71のルテチウムLu(III)の抽出分離を行った。両者は原子番号が近く(69と71)、化学的性質が非常に類似していることから分離が困難であり、多段抽出によらなければ高度な分離を達成できない。
重希土類元素群の抽出分離には、一般的に、同元素群に対する選択的分離能が高いリン酸系の抽出剤が利用される。具体例としては、リン酸系抽出剤の1つである2?エチルヘキシル(2-エチルヘキシル)ホスホネート(商品名PC-88A)を、アルカンを主成分とする希釈溶媒(商品名ShellSol D70)に溶解した有機溶液が、しばしば油相として用いられる。本実施例では、PC-88Aを0.01 M(mol dm-3)の濃度で溶解したShellSol D70を用いて、pH0.9の硝酸水溶液からTm(III)とLu(III)を抽出分離した。
まず、エマルションフロー装置を用いた実験に先だって、PC-88Aを0.01 Mの濃度で含有するShellSol D70有機溶液を用いて、pH0.9の硝酸水溶液からTm(III)とLu(III)を抽出分離するバッチ実験(回分式での実験)を行った。具体的には、共栓付き試験管に水相と油相を2.5 mLずつ投入し、縦振り振とう器により180回/分で20分間振とうし、抽出平衡に達せしめた後、遠心分離器を使って十分に2液相が分離するまで遠心分離した。なお、振とう時間に対して分配比(油相中の対象物質の濃度を水相中の対象物質の濃度で割った値)が変化しなくなったところを抽出平衡に到達した領域と見なした。
その結果、この条件において、Lu(III)の分配比は0.475、Tm(III)の分配比は0.078であり、Tm(III)に対するLu(III)の分離係数は6.1であった。なお、分離係数(=6.1)は、Lu(III)の分配比をTm(III)の分配比で割った値である。また、1M(mol dm-3)硝酸水溶液を用いることで、油相(0.01M PC-88A/ShellSol D70)に含まれるLu(III)及びTm(III)の全量を逆抽出することができた。そこで、正抽出及び洗浄における水相はpH0.9の硝酸水溶液とし、逆抽出における水相は1M硝酸水溶液とした。
図15(d)に示すシステム構造は、1個の正抽出容器、1個の洗浄容器、及び1個の逆抽出容器によって構成されている。本実施例の実験では、3個とも同じ形状で同体積(480 mL)のエマルションフロー法の容器(塔)を用いた。また、該容器3個に取付けられた水相噴出ノズル及び油相噴出ノズルも正抽出容器、洗浄容器、及び逆抽出容器で同一であり、該水相噴出ノズルは直径0.3 mmの穿孔15個を有する一方の端が閉じたポリプロピレン製のチューブ、該油相噴出ノズルは液滴噴出面の孔径(ポアサイズ)が0.04 mmから0.05 mmのガラスビーズ焼結板を用いた。
また、正抽出塔、洗浄塔、及び逆抽出塔に設置された水相の容量は、いずれも265 mLである。なお、正抽出塔の本体外に附属した水相タンクの供給側に設置した水相(処理対象のフィード水溶液)の容量も同じく265 mLである。一方、正抽出塔、洗浄塔、及び逆抽出塔に設置された油相の容量は、いずれも245 mLである。この状態で、各塔の2液相混合部(水相と油相が乳濁混合される部位)における液液界面は、2液相混合部の体積をちょうど半分にする位置にあり、2液相混合部での水相と油相の体積比が1:1になるようにした。
上述の装置を用いたTm(III)とLu(III)の抽出分離実験において、正抽出塔、洗浄塔、及び逆抽出塔を横断して循環送液される油相は、0.01 M PC-88A 含有ShellSol D70溶液であり、3塔で共通している。一方、正抽出塔及び洗浄塔の水相はpH0.9に調整した硝酸水溶液であって両塔で同じものを設置しており、逆抽出塔の水相は1 M 硝酸水溶液であって逆抽出塔のみに設置してある。また、正抽出塔に付属している供給水相タンクには、フィード水溶液として、Tm(III)とLu(III)を含む硝酸水溶液(pH0.9)が設置されていて、排出水相タンクは空である。なお、供給水相タンクの水相(フィード水溶液)は、正抽出塔に供給され、処理された後、排出水相タンクに排出される形で、2つの水相タンクを介して正抽出塔において単独部内循環送液され、一方、洗浄塔及び逆抽出塔の水相は、水相タンクを介さずに単独部内循環送液される。
処理対象のフィード水溶液(正抽出容器内に循環送液される水相)、洗浄液(洗浄容器内で循環送液される水相)、及び逆抽出液(逆抽出容器内で循環送液される水相)は、いずれも流速20 mL/minで送液した。なお、正抽出塔及び洗浄塔の水相には、フィード水溶液と同じpHの硝酸水溶液(ブランク液)が設置してある。一方、正抽出容器、洗浄容器及び逆抽出容器を横断循環する油相は、流速40 mL/minで送液した。
図19は、図15(d)に示すエマルションフロー装置のシステム構造により、PC-88Aを0.01 Mの濃度でShellSol D70に溶解した有機溶液を用いて、pH0.9の硝酸水溶液からTm(III)とLu(III)を抽出分離した結果である。横軸は、正抽出部100(正抽出塔及び同塔に付属する水相タンク)における水相の単独部内循環の回数であり、循環回数と称する。なお、外付けの供給水相タンク及び排出水相タンクが設置してある本実施例の場合、供給水相タンクの水相の全量が処理されて空になり、排出水相タンクが満たされた時点において、単独部内循環の回数を1回と数え、1回分が完了する毎に供給側と排出側を切り替えて、これを繰り返し行った回数が循環回数である。縦軸左は、正抽出塔における水相中のTm(III)とLu(III)の濃度であり、それぞれの初濃度を100として規格化された質量分率濃度(wt%、ppm等)であって、循環回数0回では、Tm(III)濃度、Lu(III)濃度ともに100としている。また、縦軸右は、正抽出塔における水相中のTm(III)の純度(%)である。なお、循環回数ごとに排出側の水相を採取し、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)で各元素の濃度を測定した。
循環回数が20回のとき、正抽出塔の水相におけるTm(III)の純度は95%に達し、そのときのTm(III)の回収率(正抽出塔水相での残存率)は40%であった。なお、油相に分配しやすい方の元素のLu(III)は、正抽出部100(正抽出塔及び同塔に付属する水相タンク)の水相にほとんど残らなかった。同時に、洗浄塔の水相においては、純度90%のTm(III)が18%の回収率で回収され、正抽出塔での回収分の40%と合わせると、高純度Tm(III)の回収率は58%となった。一方、逆抽出塔では、純度72%のLu(III)が92%の回収率で回収された。
Tm(III)とLu(III)の分離係数は6.1であり、例えば、Tm(III)を95%程度に高純度化するためには、通常、正抽出、洗浄、及び逆抽出を合わせて20塔(20段)程度の塔数(段数)を要する。それに対して、本実施例に示す同期的循環送液多段では、3塔のみで20塔と同等な分離性能を実現することができた。
なお、フィード水溶液を同じ流速で送液する場合、当該フィード水溶液が通過する流路の長さ(繰り返し通過する場合は延べの流路長)は、従来の容器員数(塔数)を増やす多段の場合と同期的循環送液多段の場合で差がないため、処理に要する時間(プロセス・スピード)は同等であった。
一方で、正抽出塔、洗浄塔及び逆抽出塔を各1塔で設置するシステム構造では、循環回数を多くすることにより水相残存側(水相に残りやすい側)の元素の純度が向上する一方で回収率は低下する、油相移動側(油相に移動しやすい側)の元素の純度が低い、といった問題があった。そこで、2塔の洗浄塔を設置したシステム構造を検討し、洗浄塔が1塔の場合と比較した。図20に、実験に用いた洗浄塔を2塔設置したシステム構造を示す。上述の洗浄等が1塔の場合と同様に、密閉式容器から成るエマルションフロー法の装置システムであり、図15(d)と同様に、正抽出塔の本体外に供給水相タンクと排出水相タンクを個別に設置している。なお、正抽出部100の水相のpHと洗浄塔A及び洗浄塔Bの水相のpHは、すべて同じ値に設定した。
図21に、洗浄塔を2塔にした場合の実験結果を示す。図19と図21との比較からわかるように、正抽出部100の水相でのTm(III)の濃度(Tm(III)の回収率)とLu(III)の濃度(Lu(III)の残余率)及びTm(III)の純度は、洗浄塔の数が1塔と2塔でほとんど差がなかった。すなわち、水相残存側(水相に残りやすい側)のTm(III)は、洗浄塔の数の違いにかかわらず、正抽出部100の水相において、全体の40%が純度95%で回収された。なお、油相移動側(油相に移動しやすい側)の元素のLu(III)は、いずれの場合も正抽出部100の水相にほとんど残らなかった。
一方で、正抽出部100での水相の循環回数20回を終えた後で、洗浄塔及び逆抽出塔の水相における各元素の濃度を測定した結果、洗浄塔を2塔に増やすことで、全体としてのTm(III)の回収率が増加し、Lu(III)の純度が向上することが分かった。
具体的には、洗浄塔が1塔の場合には、洗浄塔の水相に18%のTm(III)が純度90%で回収され、逆抽出塔の水相には、91%のLu(III)が純度72%で回収されたのに対して、洗浄塔が2塔の場合には、洗浄塔Aの水相に16%のTm(III)が純度89%で、洗浄塔Bの水相に13%のTm(III)が純度86%で回収され、逆抽出塔の水相には、87%のLu(III)が純度78%で回収された。すなわち、洗浄塔を1塔から2塔にすることで、Tm(III)は、正抽出部100の水相での純度95%を維持したままで、全体での回収率が58%(正抽出で40%と洗浄で18%の合計)から69%(正抽出で40%、洗浄Aで16%及び洗浄Bで13%の合計)に増加し、逆抽出塔の水相に回収されるLu(III)の純度が、72%から78%に向上した。なお、さらに洗浄塔の数を増やすことで、Tm(III)の全体での回収率及びLu(III)の純度は、さらに向上した。
また、分離対象の2つの元素を、可能な限り高純度で、なおかつ無駄にすることなく可能な限り高回収率で分離回収したいとき、例えば、水相残存側の元素(本実施例ではTm(III))が正抽出塔よりも低い純度で回収される洗浄塔の水相を、再度、処理する必要がある。このとき、pHを調整することなく(酸あるいは塩基を添加することなく)、再度、同じ同期的循環送液多段システムに投入できることが好ましい。本実施例に示す同期的循環送液多段システムでは、正抽出部100と洗浄部200のpHを同じにしているので、洗浄部200の水相に対して、pHを調整することなく、再度、同じ処理を行うことができる(洗浄部200の水相を、そのままフィード水溶液として導入できる)。
一方で、逆抽出塔の水相(逆抽出液)に回収された水相残存側の元素(本実施例ではTm(III))を、再度、同様な処理によって分離回収しようとすると、逆抽出液に含まれる高濃度の酸を中和するため、大量の塩基を添加して正抽出部100の水相と同じpH(フィード水溶液と同じpH)になるようにpHを調整する必要がある。このような薬剤(塩基など)と作業(中和によるpH調整作業)の無駄を省くという観点から、逆抽出塔の水相(逆抽出液)に回収される水相残存側の元素の割合は、可能な限り小さくすることが好ましい。
実際に、洗浄塔が1塔の場合、逆抽出塔の水相に移行するTm(III)は36%であったが、洗浄塔を2塔にすると、逆抽出塔の水相に移行するTm(III)は25%に減少した。さらに洗浄塔の数を増やすことで、Tm(III)の逆抽出塔水相への移行率(損失率)は、さらに減少した。
なお、同じシステム構造かつ同じ循環送液操作で、より洗浄効率を高めたい場合(本実施例では、より油相に抽出されやすいLu(III)の純度を上げたい場合)、正抽出部100と洗浄部200のpHを同じにすることは、必ずしも最適ではない。例えば、PC-88Aのような酸性抽出剤(酸解離型の抽出剤)を用いたとき、正抽出部100のpHよりも洗浄部200のpHを小さくした方が、より高い洗浄効率を得ることができた。
エルビウムEr(III)とイッテルビウムYb(III)の分離
同じくランタノイド系列の重希土類元素である原子番号68のエルビウムEr(III)と原子番号70のイッテルビウムYb(III)の抽出分離についても、洗浄塔1塔の場合と洗浄塔2塔の場合で、両者の抽出分離実験を行った。これらの元素も原子番号が近く(68と70)、化学的性質が非常に類似していることから分離が困難である。なお、用いた抽出剤とその濃度、希釈溶媒、フィード水溶液のpHなどの条件、並びに、同期的循環送液多段として用いた装置、各塔での水相の条件、実験時の水相及び油相の流速も、実施例1の抽出分離実験と同一である。
Er(III)とYb(III)に対しても、PC-88A(0.01 M)を用いてpH0.9の硝酸水溶液からShellSol D70に抽出分離するバッチ実験を行ったところ、この条件において、Yb(III)の分配比は0.265、Er(III)の分配比は0.022であり、Er(III)に対するYb(III)の分離係数は12であった。なお、分離係数(=12)は、Yb(III)の分配比をEr(III)の分配比で割った値である。また、1M硝酸水溶液を用いることで、油相(0.01M PC-88A/ShellSol D70)に含まれるYb(III)及びEr(III)の全量を逆抽出することができた。そこで、正抽出及び洗浄における水相はpH0.9の硝酸水溶液とし、逆抽出における水相は1M硝酸水溶液とした。
図22及び図23に、正抽出部100の水相における当該2元素の濃度と水相残存側の元素(Er)の純度を、洗浄塔1塔の場合(図22)と洗浄塔2塔の場合(図23)で示す。これらの図に示すように、正抽出部100の水相でのEr(III)の濃度(Er(III)の回収率)とYb(III)の濃度(Yb(III)の残余率)及びEr(III)の純度は、洗浄塔の数が1塔と2塔でほとんど差がなかった。すなわち、水相残存側のEr(III)は、洗浄塔の数の違いにかかわらず、20回の循環回数により、正抽出部100の水相において、全体の74%が純度89%で回収された。なお、油相に分配しやすい方の元素のYb(III)は、いずれの場合も正抽出部100の水相に10%程度しか残らなかった。
また、正抽出部100での水相の循環回数20回を終えた後、洗浄塔が1塔の場合には、洗浄塔の水相に13%のEr(III)が純度67%で回収され、逆抽出塔の水相には、80%のYb(III)が純度88%で回収された。一方で、洗浄塔が2塔の場合には、洗浄塔Aの水相に12%のEr(III)が純度68%で、洗浄塔Bの水相に7%のEr(III)が純度53%で回収され、逆抽出塔の水相には、72%のYb(III)が純度94%で回収された。すなわち、洗浄塔を1塔から2塔にすることで、Er(III)は、正抽出部100の水相での純度89%を維持したままで、全体での回収率が87%(正抽出で74%と洗浄で13%の合計)から93%(正抽出で74%、洗浄Aで12%及び洗浄Bで7%の合計)に増加し、逆抽出塔の水相に回収されるYb(III)の純度が、88%から94%に向上した。
また、水相残存側の元素(Er)の逆抽出塔の水相(逆抽出液)への移行率(損失率)は、洗浄塔1塔の場合には11%、洗浄塔2塔の場合には5%であり、洗浄塔の追加によって半分以下に軽減された。
ホルミウムHo(III)とルテチウムLu(III)の分離
重希土類元素の間での相互分離として、分離係数が比較的大きいケースについても検討した。原子番号67のホルミウムHo(III)と原子番号71のルテチウムLu(III)の抽出分離について、洗浄塔1塔の場合と洗浄塔2塔の場合で、両者の抽出分離実験を行った。これらの元素は原子番号がある程度離れており(67と71)、分離はさほど困難ではない。なお、用いた抽出剤とその濃度、希釈溶媒、フィード水溶液のpHなどの条件、並びに、同期的循環送液多段として用いた装置、各塔での水相の条件、実験時の水相及び油相の流速も、実施例1及び実施例2の抽出分離実験と同一である。
Ho(III)とLu(III)に対しても、PC-88A(0.01 M)を用いてpH0.9の硝酸水溶液からShellSol D70に抽出分離するバッチ実験を行ったところ、この条件において、Lu(III)の分配比は0.475、Ho(III)の分配比は0.0084であり、Ho(III)に対するLu(III)の分離係数は57であった。なお、分離係数(=57)は、Lu(III)の分配比をHo(III)の分配比で割った値である。また、1M硝酸水溶液を用いることで、油相(0.01M PC-88A/ShellSol D70)に含まれるLu(III)及びHo(III)の全量を逆抽出することができた。そこで、正抽出及び洗浄における水相はpH0.9の硝酸水溶液とし、逆抽出における水相は1M硝酸水溶液とした。
図24及び図25に、正抽出部100の水相における当該2元素の濃度と水相残存側の元素(Ho)の純度を、洗浄塔1塔の場合(図24)と洗浄塔2塔の場合(図25)で示す。これらの図に示すように、正抽出部100の水相でのHo(III)の濃度(Ho(III)の回収率)とLu(III)の濃度(Lu(III)の残余率)及びHo(III)の純度は、洗浄塔の数が1塔と2塔でほとんど差がなかった。すなわち、水相残存側のHo(III)は、洗浄塔の数の違いにかかわらず、20回の循環回数により、正抽出部100の水相において、全体の87%が純度97%で回収された。なお、油相に分配しやすい方の元素のLu(III)は、いずれの場合も正抽出部100の水相にほとんど残らなかった。
また、正抽出部100での水相の循環回数20回を終えた後、洗浄塔が1塔の場合には、洗浄塔の水相に7%のHo(III)が純度77%で回収され、逆抽出塔の水相には、91%のLu(III)が純度96%で回収された。一方で、洗浄塔が2塔の場合には、洗浄塔Aの水相に7%のHo(III)が純度74%で、洗浄塔Bの水相に3%のHo(III)が純度54%で回収され、逆抽出塔の水相には、87%のLu(III)が純度99%で回収された。すなわち、洗浄塔を1塔から2塔にすることで、Ho(III)は、正抽出部100の水相での純度97%を維持したままで、全体での回収率が94%(正抽出で87%と洗浄で7%の合計)から97%(正抽出で87%、洗浄Aで7%及び洗浄Bで3%の合計)に増加し、逆抽出塔の水相に回収されるLu(III)の純度が、96%から99%に向上した。
また、水相残存側の元素(Ho)の逆抽出塔の水相(逆抽出液)への移行率(損失率)は、洗浄塔1塔の場合には4%、洗浄塔2塔の場合には1.3%であり、洗浄塔の追加によって3分の1程度に軽減された。
正抽出部水相の循環回数の効果
実施例1から実施例3までにおいて、TmとLu、ErとYb、及びHoとLuの抽出分離に対して、正抽出部100(正抽出塔及び同塔に付属する水相タンク)の水相の循環回数の効果について述べたが、これらの実施例に限らず、14のランタノイド元素(放射性のPmを除く全ランタノイド元素)の中のいかなる任意の組合せに対しても、同様な効果が発現することがわかった。具体的には、14のランタノイド元素を含む標準水溶液(硝酸水溶液)を用いて、実施例1から実施例3までに記載の方法と同様な実験を行い、循環回数ごとに排出側水相を採取し、その中のすべてのランタノイド元素(14元素)の濃度を測定した。
得られた実験結果について、任意に2つのランタノイド元素を選び、20組の組合せに対して正抽出部100の水相の循環回数と分離・回収の関係を調べた。なお、便宜上、以下、選択したランタノイド元素(記号Lnで示す)をLn1、Ln2と表記し、分配比が大きい方をLn2とする(分配比はLn1<Ln2)。
循環回数を多くすることで、1)正抽出塔ではLn1の純度が向上する一方でLn1の回収率は低下する、2)洗浄塔ではLn1の純度とLn1の回収率の両方が向上する、3)逆抽出塔ではLn2の回収率を高くできる一方でLn2の純度が減少する、ということがわかった。なお、洗浄塔若しくは逆抽出塔又はその両方の数を増やしても、上述の2)及び3)に示すところの各塔(洗浄塔と逆抽出塔)での傾向は同じであった。例えば、2つの洗浄塔(洗浄塔A及び洗浄塔B)を設置した場合、循環回数を多くすることで、洗浄塔A、洗浄塔Bのいずれにおいても、Ln1の純度とLn1の回収率の両方が向上した。
洗浄塔の数の効果
実施例4と同様な方法で、任意のランタノイド元素の組合せ20組に対して、洗浄塔の数の効果を検討した。実施例1から実施例3までにおいて、TmとLu、ErとYb、及びHoとLuの抽出分離に対して、洗浄塔の数を増やすことで生じる効果を述べたが、これらの実施例に限らず、14のランタノイド元素の中のいかなる任意の組合せに対しても、同様な効果が発現した。すなわち、洗浄塔の数を増やすことで、1)Ln1の全体での回収率が増加する、2)逆抽出塔でのLn2の純度が向上する、3)Ln1の逆抽出液への移行率(損失率)が減少する、ということがわかった。
上述の1)は、正抽出塔だけではなく洗浄塔でもLn1を回収できるので、全体でのLn1の回収率が増加することを意味する。なお、洗浄塔は、実施例4で示されたように、循環回数が多くなれば、Ln1の純度とLn1の回収率の両方が向上する点で、その存在意義はきわめて大きい。
洗浄塔での元素濃度の変化を詳細に検討した結果、設置した洗浄塔の数にかかわらず、いずれの洗浄塔においても、その水相中での各元素の濃度及び純度の変化に共通点が存在することがわかった。すなわち、循環回数を重ねることで、Ln1に対しては純度及び回収率の両方が常に一方的に向上したが、Ln2では濃度がピークとなる循環回数が存在し、そのピークを越えるとLn2の濃度は一方的に減少した。このことに呼応して、Ln2濃度がピークを越えたあたりから、Ln1の純度が急激に上昇した。
すなわち、循環回数の増加でLn1の純度及び回収率の両方が向上するという洗浄塔が持つ利点は、すべての洗浄塔で共通する現象であるため、循環回数を多くすればするほど、洗浄塔の数を増やすことの効果がより顕著になる。とくに、Ln2濃度がピークを越えた循環回数から生じる急激なLn1純度の向上は、注目に値する。
また、上述の2)は、洗浄塔の挿入により、逆抽出塔でのLn2の純度を底上げできることを意味する。より正確には、Ln2を全量回収する際に、循環回数の増加に伴うLn2の純度の減少幅を狭くすることができる。実施例4で示されたように、循環回数を多くすると、逆抽出塔でのLn2の回収率を高くできる一方で、純度が減少してしまうが、洗浄塔の数を増やすことで、その際のLn2純度の減少幅を狭くできることがわかった。なお、Ln2純度の減少幅を狭くできることは、同時に、上述の3)に示すところのLn1の逆抽出液への移行(損失)を少なくできることを意味している。
以上のように、洗浄塔を設けることで、Ln1とLn2の両方に対して、高純度化と高回収率を両立できるようになり、その数を増やせば、両元素に対する純度及び回収率を自在に向上させられることがわかった。別の言い方をすると、目標とする純度と回収率に合わせて、洗浄塔の数を設定すればよい。
分離対象の個々の物質の分配比の大きさの影響
同期的循環送液多段でも、従来の容器員数多段と同様に、目的とする分離精度(純度及び回収率の度合い)を得るのに必要な段数(同期的循環送液多段では循環回数)は、分離の対象となる物質の間の分離係数だけではなく、分離対象物質の分配比の数値そのものにも左右されることがわかった。産業利用において、目的とする分離精度を得るために、どのように分配比の値を設定すべきかを理解することは重要である。
分離係数が大きいほど、同じ循環回数で、より高い純度及びより高い回収率を得ることができる点は、従来の容器員数多段において同じ容器員数のとき、分離係数が大きいほど、より高い純度及びより高い回収率が得られることと同様である。一方、分離対象となる個々の物質の分配比の値の大きさが抽出分離に与える影響に関しては、必ずしも、従来の容器員数多段と同様ではないことがわかった。
抽出剤の濃度、水相のpHなどの抽出条件を変えても、多くの場合、分離係数は変化しないが、個々の物質の分配比の値そのものは、当然ながら大きく変化する。よって、どの程度の大きさの分配比に設定すれば目的の分離精度が得られるのか、事前に把握する必要がある。そこで、分離対象の個々の物質の分配比の大きさの影響について、鋭意、検討した。
その結果、1)高純度と高回収率を両立させたい場合、分配比の値は、より小さい方が好ましい(同じ純度であれば、回収率をより高くできる)、2)一方で、分配比の値が小さいほど、目的とする純度を得るまでに、より多くの循環回数を要する、ということがわかった。よって、回収率を犠牲にしても良いので、短時間で(少ない循環回数で)高純度品を得たい場合、分配比の値を大きめに設定すれば良いし、逆に、多少時間をかけても無駄なく高回収率で高純度品を得たい場合には、分配比の値を小さめに設定すれば良い、と言える。
以上のように、目的物質を高い純度で無駄なく回収したい場合、分配比は、より小さい値に設定することが好ましく、この点が、同期的循環送液多段の特徴であると同時に、従来の容器員数多段とは異なる点でもある。
産業上、最も広く用いられている酸性抽出剤(酸解離によって生じた酸アニオンが金属イオンに配位するタイプの抽出剤)の場合、金属イオン(多くは陽イオン)と水素イオンのイオン交換によって抽出が進行するため、処理対象の水溶液に含まれる金属イオンの濃度が高いときには、イオン交換によって水相に分配される水素イオンの濃度も高くなる。すなわち、油相中の金属濃度が高くなれば、それだけ水相の水素イオン濃度が増加するため、金属イオンの抽出の前後で水相のpHが大きく変動してしまう(pHが大幅に下がる)。設定されたpHが大きいほど、このような水相でのpH変動がより顕著になる。一方で、酸性抽出剤は、より大きなpHでより大きな分配比が得られるため、一般的には、上述のpH変動に対応しつつも、抽出条件としては比較的大きなpHが選択されることが多い。すなわち、pH調整のための塩基を頻繁に投入したり、緩衝液にしてpH変動を緩和したり、といった対応が必要になる。それに対して、本発明の同期的循環送液多段では、分配比が小さい条件が好ましいことから、抽出条件として低いpH(高い水素イオン濃度)を選択できる。低いpHの条件では、金属イオンの抽出の前後におけるpH変動は小さいため、pH調整などの対応は不要になることが多い。
また、分配比が小さい条件が好ましいということは、抽出能力が高くない抽出剤でも、分離係数が大きければ十分に利用できることを意味する。よって、抽出能力の低さから今まで注目されなかった抽出剤に対しても、高い利用価値が生まれる。
排出水相と供給水相が混合する場合と混合しない場合の違い
図14(a)から図14(n)まで、図15(a)から図15(n)まで、並びに図16(a)から図16(n)までにおいて示す、3つの種類の外付け水相タンクを設置した様々なタイプのシステム構造について、正抽出容器、洗浄容器及び逆抽出容器としてエマルションフロー装置を設置し、実験を行った。図14(a)から図14(n)までは、排出水相と供給水相が混合する水相タンク、図15(a)から図15(n)まで、並びに図16(a)から図16(n)までは、排出水相と供給水相が混合しない水相タンクを設置した場合である。なお、水相タンクを設置しないで水相を単独部内で循環させている場合と循環させていない場合があるが、水相分離部を持つエマルションフロー容器を用いる場合には、水相分離部の水相が滞留して油相との接触が不足しないように、外付け水相タンクの有無にかかわらず水相の単独部内循環を行った。
正抽出部100に水相タンクが設置されている場合、排出水相と供給水相が混合しない仕組みの方が、より顕著に同期的循環送液多段の効果が発現した。具体的には、図14(a)、図15(a)、及び図16(a)の間、図14(b)、図15(b)、及び図16(b)の間、図14(c)、図15(c)、及び図16(c)の間、図14(d)、図15(d)、及び図16(d)の間、図14(i)、図15(i)、及び図16(i)の間、図14(j)、図15(j)、及び図16(j)の間、図14(k)、図15(k)、及び図16(k)の間、図14(l)、図15(l)、及び図16(l)の間、並びに図14(n)、図15(n)、及び図16(n)の間では、排出水相と供給水相が混合する場合(図14(a)から図14(n)までに示すシステム)と混合しない場合(図15(a)から図15(n)までに示すシステム、並びに図16(a)から図16(n)までに示すシステム)で違いが生じた。すなわち、供給水相と排出水相が混合してしまう図14(a)から図14(n)までに示すシステムでは、正抽出部100の水相の単独部内循環送液の回数(循環回数)が、より多く必要になった。一方、排出水相と供給水相が混合しない場合で、水相タンクが個別式2槽(図15(a)から図15(n)までに示すシステム)と仕切板式1槽(図16(a)から図16(n)までに示すシステム)の間では差はなかった。
一方、正抽出部100に水相タンクが設置されずに洗浄部200若しくは逆抽出部300又はその両方に水相タンクが設置されている場合には、排出水相と供給水相が混合しても混合しなくても、有意な差は生じなかった。具体的には、図14(e)、図15(e)、及び図16(e)の間、図14(f)、図15(f)、及び図16(f)の間、図14(g)、図15(g)、及び図16(g)の間、図14(h)、図15(h)、及び図16(h)の間、並びに図14(m)、図15(m)、及び図16(m)の間では、有意な違いは見られなかった。
電磁弁による外付け水相タンクの排出側と供給側の自動切り替え
電磁弁によって供給側と排出側を交互に自動切換えするシステムは、供給水相タンクと排出水相タンクが分離した個別型(図17に示す個別式2槽)の場合でも、供給水相タンクと排出水相タンクが結合した仕切り型(図18に示す仕切板式1槽)の場合でも、いずれも的確に動作した。なお、個別型と仕切り型で、性能等に大きな違いはないが、仕切り型の方が正抽出部100での流路の長さを短くできる点で、処理速度(プロセス・スピード)において若干の優位性があった。一方で、仕切り型の水相タンクは、必然的にサイズが大きくなるため、床面積を効率的に利用したいときには、個別型の方が柔軟に対応できる利点がある。
比較例1
1つの塔(あるいは槽)だけでの循環送液システム
比較例1として、1個の容器(塔あるいは槽)のみで、水相及び油相の単独部内循環を行う場合のランタノイド元素の分配比と循環回数の関係について、正抽出、洗浄、及び逆抽出のそれぞれに対して検討した。図26(a)及び図26(b)に示すエマルションフロー装置のシステムを用いて実験を行った結果、正抽出、洗浄、及び逆抽出のいずれに対しても、同期的循環送液多段の効果は現れず、対象物質の分配比及び分離係数は、最終的に、回分式での実験(バッチ実験)によって得られる抽出平衡時の値と一致した。なお、外付け水相タンクの有無にかかわらず、結果は同じであった。
また、水相若しくは油相又はその両方の循環回数を多くすることで、徐々に分配比が増加したり、分離係数が大きくなったりすることがあったが、この現象は、循環回数を重ねることで徐々に抽出平衡に近づいていく現象であって、実際にはバッチ実験での抽出平衡時の値を超えることはなかった。工業的に連続的な抽出処理を行う装置は、通常の運転条件では化学平衡(抽出平衡)にまで至らないことが多いため、分離対象の物質の抽出速度が異なる場合、見かけ上、分離係数が小さくなる場合がある。例えば、このようなケースでは、水相と油相を繰り返し循環送液させるうちに、徐々に分離係数の値が大きくなるため、これを循環送液による多段の効果と錯覚しやすい(実際には、多段の効果は存在しない)。
比較例2
正抽出部と洗浄部から成る循環送液システム
比較例2として、正抽出部100と洗浄部200から成る循環送液システムに対して、ランタノイド元素の分配比と循環回数の関係を検討した。図27(a)及び図27(b)に示すエマルションフロー装置のシステムを用いて行った実験の結果、当該循環送液システムで発現する同期的循環送液多段の効果は、限定的範囲にとどまった。すなわち、水相及び油相の循環送液を繰り返しても、ランタノイド元素間の分離は有意に向上しなかった。
その原因は、当該循環送液システムが逆抽出部300を持たないことにあると考えられる。このことに関して、鋭意、検討した結果、同期的循環送液多段の効果は、油相に含まれる抽出分離対象の全元素に対して、その大部分が除去された状態、より正確には、抽出分離対象元素の中で最も油相に残りやすい元素であっても、その70%以上が除去された状態にまで油相がリセットされ、再度、正抽出部100に導入されることで初めて有意に発現する現象であることがわかった。なお、外付け水相タンクの有無にかかわらず、結果は同じであった。
比較例3
正抽出部と逆抽出部から成る循環送液システム
比較例3として、正抽出部100と逆抽出部300から成る循環送液システムに対して、ランタノイド元素の分配比と循環回数の関係を検討した。図28(a)及び図28(b)に示すエマルションフロー装置のシステムを用いて行った実験の結果、油相がリセットされる当該循環送液システムでは、同期的循環送液多段の効果が現れた。具体的には、正抽出部100の水相において、循環回数に対する分離対象の2つのランタノイド元素の濃度及び水相残存側の元素(Ln1)の純度の変化は、洗浄塔の有無にかかわらず、同じであった。なお、同期的循環送液多段の効果は、供給側と排出側が分かれた外付け水相タンクが設置されている場合(図28(b)の場合)の方が、より顕著であった。この点も、洗浄塔の有無にかかわらず、同様であった。
実施例1から実施例3までの実験結果の図(図19、図21、図22、図23、図24、及び図25)において示されたように、正抽出部100の水相における元素の濃度と純度の変化は、洗浄塔の数が1塔と2塔でほとんど差がないことがわかったが、洗浄塔が存在しない場合(洗浄塔の数が0塔)でも同様であった。すなわち、洗浄部200を設けなくても、正抽出部100と逆抽出部300だけで同期的循環送液多段システムを形作ることが可能であった。しかしながら、洗浄部200が欠如することで、以下に述べるような様々な問題が発生することもわかった。
まずは、水相残存側の元素(Ln1)の多くが逆抽出液に移行(損失)してしまう問題がある。循環回数を多くすることで、正抽出部100の水相でのLn1の純度は向上したが、その一方で、Ln1の回収率は減少した。正抽出部100と逆抽出部300しか存在しない場合、正抽出部100の水相から減少したLn1は、基本的に、その減少分のすべてが逆抽出部300に移行してしまう。すなわち、Ln1に対して満足な純度と回収率を同時に得るためには、逆抽出液から、さらなる抽出分離を繰り返し行わなければならない。その際、必要量の塩基、酸又は塩を添加して逆抽出の条件から正抽出の条件にもどしたうえで、同様な循環処理を行う必要があり、しかも、それを何度も繰り返す必要がある。
なお、抽出剤の種類によって、逆抽出の条件から正抽出の条件にもどす際に、添加するべき薬剤が異なる。酸性抽出剤(酸解離によって生じた酸アニオンが金属イオンに配位するタイプの抽出剤)を用いる場合、高濃度の酸を含む水溶液を逆抽出液として用いるので、大量の塩基(例えば、水酸化ナトリウム)を添加して正抽出時の条件にまで酸を中和しなければならない。また、分子性抽出剤(電気的に中性な分子として金属イオンに配位するタイプの抽出剤)を用いる場合には、純粋な水又は低濃度の酸若しくは塩の水溶液を逆抽出液として用いるので、正抽出時の条件にまでイオン強度を大きくするために、大量の酸又は塩を添加しなければならない。しかも、この操作は、求める純度と回収率が得られるまで、何回も繰り返し行われるため、その度毎に、大量の塩基、酸又は塩を消費することになる。よって、何度も大量の薬剤を投入することに伴う高コスト及び循環処理を何セットも繰返さなければならない煩雑さから、実用的ではない。
一方、実施例1から実施例3までに示した通り、同期的循環送液多段において、正抽出塔の水相と同じpHの水溶液(ブランク液)を配置した洗浄塔を必要数だけ組み込むことで、塩基、酸又は塩の添加は一切不要になる。また、エマルションフロー法で密閉容器を用いる場合、図1と図2の比較からもわかるように、洗浄塔が新たに加わっても、油相用のポンプの数は変わらず1台のみである。すなわち、洗浄塔を組み込んでも大きなコスト負担増にはならない。よって、実用面において、洗浄部200を組み込んだ同期的循環送液多段の方が、正抽出部100と逆抽出部300のみから成る同期的循環送液多段よりも、圧倒的に有利である。
本明細書、特許請求の範囲、要約書、及び図面において、特に明記していない限り、水相は重液相であり、油相は軽液相であるが、実際には、水相が軽液相となり、油相が重液相になる場合もある。本発明の概要を示す4つの基本図、すなわち、図3(a)、図7、図10、及び図12においては、水相を重液相、油相を軽液相と仮定して、該水相は容器の上から導入して下から排出するように送液し、該油相は容器の下から導入して上から排出するように送液するシステムを示しているが、この限りではない。すなわち、水相が軽液相、油相が重液相である場合には、重力や浮力を利用して送液負担を小さくする点において、該水相は容器の下から導入して上から排出するように送液し、該油相は容器の上から導入して下から排出するように送液するシステムが好ましい。なお、重液相とは、軽液相に対しての相対表現であり、それより比重が大きいことを意味している。
本製造方法において分離精製の対象となる成分は、正抽出部100の油相に抽出される成分だけではなく、正抽出部100の水相に残される成分も分離精製の対象である。また、洗浄部200で水相に洗い流される成分、洗浄部200で油相に残される成分、逆抽出部300で水相にもどされる成分、及び逆抽出部300で油相に残される成分も、分離精製の対象である。したがって、図示していないが、分離精製物は各部から回収される。
本発明は、抽出容器(塔又は槽)の数を増加させることなく、循環送液を繰り返し行うことで多段に相当する効果が得られるシステム(仕組み)に基づく液液抽出分離により、分離精製される物質の製造方法に関するものである。液液系での抽出分離は、互いに混じり合わない2つの液相の間における物質の分配の違いによって、金属イオン、有機化合物、生体高分子などの物質を分離精製する方法であり、工業的に幅広く利用されている。
水溶液中の目的成分を高度に抽出分離したいとき、抽出単位操作を繰り返す多段抽出は不可欠である。一般的に、正抽出部100、洗浄部200、及び逆抽出部300のそれぞれに対して、抽出単位操作の繰り返しに必要な数の容器(塔又は槽)を配置することで、目的成分を求める純度にまで分離精製できるようにする。より高精度な分離が求められるほど、あるいは、より困難な分離の対象であるほど、より多くの数の容器(塔又は槽)を設置しなければならない。工業的な液液系での抽出分離では、場合によっては、100段を超える多段抽出を要するため、その際には100を超える数の容器(塔又は槽)を配置しなければならない。
このような通常の多段化では、より高精度な分離、あるいは、より困難な分離において、装置が大型かつ複雑になるため、初期コスト、運転コスト及び維持コストのすべてが増加し、なおかつ、操作性が低下するために、扱いに熟練を要し、さらに、常時、監視と煩雑な調整作業を要するために、人件費も増加する。すなわち、多くの面からコストを大幅に上げてしまう原因になっている。また、多段化により装置が大型になれば、設置床面積の不足から導入が不可能になる場合も考えられる。
本発明の製造方法を用いれば、従来、正抽出部100、洗浄部200、及び逆抽出部300で合わせて100個以上の容器(塔又は槽)を要していた分離精製に対しても、例えば3個から6個程度の極めて少数の容器(塔又は槽)で対応できるようになる。よって、上述の様々なコスト増加の問題、設置床面積の問題などが解決できるため、エマルションフロー法などの循環送液型の溶媒抽出法の産業上の利用可能性は、さらに拡大すると考えられる。
1:水相供給(循環)ポンプ
2:供給水相
3:水相噴出ノズル
4:油相噴出ノズル
5:排出水相
6:油相分離部
7:油相の循環送液ライン
8:2液相混合部
9:油相循環ポンプ
10:水相分離部
11:水相の循環送液ライン
12:水相タンク
13:供給水相タンク
14:排出水相タンク
15:仕切り付き水相タンク
16:電磁弁
17:切換え式供給・排出水相タンク
18:切換え式仕切り付き水相タンク
100:正抽出部
200:洗浄部
300:逆抽出部

Claims (6)

  1. 第1の容器内で、水相から特定物質を油相に液液抽出する第1段階と、
    その後、前記第1の容器内の油相を第2の容器に循環送液し、前記第1の容器において油相に抽出したい前記特定物質に随伴して抽出された前記第1の容器内の水相に残したい物質を、前記第2の容器内の水相に洗い流す第2段階と、
    その後、前記第2の容器の油相を、第3の容器に循環送液し、前記第3の容器内の油相に存在する前記特定物質を前記第3の容器内の水相に逆抽出する第3段階と、
    前記第3段階において前記特定物質が前記第3の容器内の水相に逆抽出された後の前記第3の容器内の油相を、前記第1の容器に循環送液し、前記第1段階での油相として使用する第4段階、及び
    前記第3の容器において水相内に分離生成される前記特定物質を取り出す第5段階とから成る特定物質の製造方法であって、
    前記第1の容器内の水相が、前記第1の容器と並列に設けられた送液循環ラインを介して、複数回にわたって前記第1の容器循環送液させられると共に、これと連動して、
    前記第1の容器内の油相が、前記第1の容器内の水相の循環送液と同時に、前記第1の容器から前記第2及び第3の容器を経て前記第1の容器に至るように、順番に各容器を連続的に通過するようにして循環送液させられる、ことを特徴とする液液系での抽出分離による特定物質の製造方法。
  2. 請求項1おいて、前記第1の容器の水相が該第1の容器に並列に設けられた送液循環ラインを介して該第1の容器内で循環送液させられると同時に、前記第2の容器若しくは前記第3の容器又はそれら両方の容器においても、それぞれの容器内の水相がそれぞれの容器に並列に設けられた送液循環ラインを介してそれぞれの容器に循環送液させられることを特徴とする液液系での抽出分離による特定物質の製造方法。
  3. 請求項1又は2において、前記各容器の水相が重液相で前記各容器の油相が軽液相である場合には、水相を前記容器の上から導入して下から排出し、油相を前記容器の下から導入して上から排出するように送液することを特徴とし、前記各容器の水相が軽液相で前記各容器の油相が重液相である場合には、水相を前記容器の下から導入して上から排出し、油相を前記容器の上から導入して下から排出するように送液することを特徴とする液液系での抽出分離による特定物質の製造方法。
  4. 第1の容器内で、水相から特定物質を油相に液液抽出する第1段階と、
    その後、前記第1の容器内の油相を第2の容器に循環送液し、前記第1の容器からの油相に存在する前記特定物質を前記第2の容器内の水相に逆抽出する第2段階と、
    前記第2段階において前記特定物質が水相に逆抽出された後の油相を、前記第1の容器に循環送液し、前記第1段階での油相として使用する第3段階、及び
    前記第2の容器において水相内に分離生成される前記特定物質を取り出す第4段階とから成る特定物質の製造方法であって、
    前記第1の容器内の水相が、前記第1の容器と並列に設けられた送液循環ラインを介して、複数回にわたって前記第1の容器循環送液させられると共に、これと連動して、
    前記第1の容器内の油相が、前記第1の容器内の水相の循環送液と同時に、前記第1の容器から前記第2の容器を経て前記第1の容器に至るように、順番に各容器を連続的に通過するようにして循環送液させられる、ことを特徴とする液液系での抽出分離による特定物質の製造方法。
  5. 請求項4おいて、前記第1の容器の水相が該第1の容器に並列に設けられた送液循環ラインを介して該第1の容器内で循環送液させられると同時に、前記第2の容器においても、該第2の容器内の水相が該第2の容器に並列に設けられた送液循環ラインを介して該第2の容器に循環送液させられることを特徴とする液液系での抽出分離による特定物質の製造方法。
  6. 請求項4又は5において、前記各容器の水相が重液相で前記各容器の油相が軽液相である場合には、水相を前記容器の上から導入して下から排出し、油相を前記容器の下から導入して上から排出するように送液することを特徴とし、前記各容器の水相が軽液相で前記各容器の油相が重液相である場合には、水相を前記容器の下から導入して上から排出し、油相を前記容器の上から導入して下から排出するように送液することを特徴とする液液系での抽出分離による特定物質の製造方法。
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