以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
(実施形態1)
[光学装置の構成]
図1は、本実施形態に係る光学装置の平面図を、図2は、図1のII-II線での断面図を示す。なお、図面に描かれた各部材の寸法、厚さ、細部の詳細形状などは実際のものとは異なることがある。
図1に示す光学装置100は、位置調整機構10と集光レンズ90とを有しており、集光レンズ90は、図示しない接着材により、位置調整機構10の移動部80に設けられた保持部81に保持固定されている。なお、接着材は、集光レンズ90に入射された光に対して透明な材料が用いられている。
位置調整機構10は、平面視で矩形の全体形状を有しており、SOI基板200(以下、単に基板200と呼ぶことがある。)に所定の加工が施されてなる以下の部材を有している。具体的には、位置調整機構10は、ベース部20と第1アクチュエータ30と第1押圧部50と第2アクチュエータ40と第2押圧部60と移動部80と支持部70とを備えている。位置調整機構10は、半導体微細加工技術を応用したマイクロマシニング技術を用いて基板200を加工して得られるMEMS素子である(図5参照)。
以下、説明の便宜上、第2押圧部60の長手方向をX方向、第1及び第2アクチュエータ30,40の長手方向をY方向、位置調整機構10の厚さ方向、つまり、基板200の厚さ方向をZ方向と称する。X方向とY方向とは直交しており、Z方向は、X方向とY方向とを面内に含むXY平面(以下、第1平面と呼ぶことがある)に直交している。なお、X方向、Y方向及びZ方向をそれぞれ第1方向、第2方向及び第3方向と呼ぶことがある。なお、X方向において、図1における左側を単に左側、図1における右側を単に右側と呼ぶこともある。Y方向において、図1における上側を単に上側、図1における下側を単に下側と呼ぶこともある。Z方向において、図2における上側を単に上側、図2における下側を単に下側と呼ぶこともある。
基板200は、単結晶シリコンで形成された第1シリコン層210と、SiO2で形成された絶縁層220と、単結晶シリコンで形成された第2シリコン層230と、がZ方向にこの順で積層されて構成されている。
基板200には、ベース部20とベース部20の内側に開口Aとが形成されており、ベース部20は、位置調整機構10の一部をなし、平面視で矩形の位置調整機構10の全体形状を規定している。なお、ベース部20は、一部を除いて基板200と同じ構造、つまり、第1シリコン層210と絶縁層220と第2シリコン層230との積層構造を有している。
また、位置調整機構10において、ベース部20、第1及び第2アクチュエータ30,40、第1及び第2押圧部50,60、支持部70及び移動部80は、シリコン素材で一体成形されている。なお、開口A内に配置された第1及び第2アクチュエータ30,40、第1及び第2押圧部50,60、さらに支持部70において、下面の絶縁層220及び第2シリコン層230は後述する製造工程において除去される。よって、第1及び第2アクチュエータ30,40と第1及び第2押圧部50,60と支持部70とでは、第1シリコン層210のみが残される。また、移動部80の一部である連結部83と固定リング82においても、下面の絶縁層220及び第2シリコン層230は除去され、第1シリコン層210のみが残される。
ベース部20は、Y方向上側に配置された第1ベース部材21及び第2ベース部材22と、第1ベース部材21及び第2ベース部材22にY方向で対向して配置された第3ベース部材23とを有した平面視で矩形状の部材である。なお、第1及び第2ベース部材22と第3ベース部材23とは、第1シリコン層210及び絶縁層220においてそれぞれY方向に分かれているが、第2シリコン層230では1つに繋がっている。第1ベース部材21と第2ベース部材22との間では第1シリコン層210及び絶縁層220が除去されているが、X方向において第2シリコン層230では1つに繋がっている。従って、第1~第3ベース部材21~23の相対位置は固定されており、第1~第3ベース部材21~23で第1及び第2アクチュエータ30,40や第1及び第2押圧部50,60や移動部80や支持部70等の可動部材を支持することができる。
このように、ベース部20は、可動部材の可動域を確保しつつできるだけ広い面積を占めるような形状にされていることで、可動部材を支持するフレームとして機能している。
第1アクチュエータ30は、Y方向に伸びた棒状の駆動ビームであり、Y方向上側端部は第1ベース部材21の第1シリコン層210に、Y方向下側端部は第3ベース部材23の第1シリコン層210にそれぞれ接続されている。また、第1アクチュエータ30の中間部31は第1押圧部50に接続されている。また、第1アクチュエータ30に電流が流れていない場合、言いかえると、第1アクチュエータ30の初期形状は、中間部31がその駆動方向であるX方向右側に突出するようにわずかに屈曲、あるいは全体的にX方向右側に膨らむようにわずかに湾曲している。
第2アクチュエータ40は、Y方向に伸びた棒状の駆動ビームであり、Y方向上側端部は第2ベース部材22の第1シリコン層210に、Y方向下側端部は第3ベース部材23の第1シリコン層210にそれぞれ接続されている。また、第2アクチュエータ40の中間部41は第2押圧部60に接続されている。また、第2アクチュエータ40に電流が流れていない場合、言いかえると、第2アクチュエータ40の初期形状は、中間部41がその駆動方向であるX方向右側に突出するようにわずかに屈曲、あるいは全体的にX方向右側に膨らむようにわずかに湾曲している。
第1及び第2アクチュエータ30,40は電流が流れることで発熱して各々の延在方向であるY方向に熱膨張する熱式アクチュエータである。また、上記のように、第1及び第2アクチュエータ30,40がその駆動方向であるX方向に沿って屈曲あるいは湾曲していることにより、加熱による熱膨張時に、第1及び第2アクチュエータ30,40が駆動方向と反対側に屈曲あるいは湾曲することがない。従って、所望の駆動方向に向かって第1及び第2アクチュエータ30,40を確実に屈曲あるいは湾曲させることができる。
また、図1に示すように、第1アクチュエータ30は位置調整機構10においてX方向左側に配置され、第2アクチュエータ40はX方向右側に配置され、第1アクチュエータ30と第2アクチュエータ40とは平面視で対向している。
第1押圧部50は、第1アクチュエータ30の中間部31に接続された第1バネ部51と、第1バネの先端に接続された第1当接部52と、を有する部材である。第1バネ部51は、X方向に複数回折り返された、いわゆるミアンダ構造を有している。また、第1バネ部51は、第1アクチュエータ30の中間部31からY方向で二股に分かれており、それぞれがX方向に複数回折り返された構造を有している。また、第1バネ部51の2つの先端に第1当接部52の両端がそれぞれ接続されており、第1当接部52はY方向に延びた棒状の部材である。また、第1当接部52は、移動部80に設けられた保持部81とX方向に第1間隔L1をあけて配置されている。第1間隔L1は数μm程度であるが、特にこれに限定されない。位置調整機構10のサイズや保持部81のサイズ等により適宜変更されうる。なお、以降の説明において、第1バネ部51における第1アクチュエータ30との接続部を第1押圧部50の基端と、第1当接部52における保持部81に近い側の面を第1押圧部50の先端とそれぞれ呼ぶことがある。
第1バネ部51はX方向に複数回折り返された構造であるため、X方向の曲げ剛性がY方向の曲げ剛性よりも高くなっている。このため、後述するように、第1当接部52が保持部81をX方向右側に押した状態で保持部81に対してY方向の力が作用する場合に、第1バネ部51がY方向に変形することで、第1押圧部50は保持部81のY方向への変位を妨げないようになっている。
第2押圧部60は、折り返し構造を有する棒状の部材であり、第2アクチュエータ40の中間部41から保持部81の近くまで延び、折り返し部61で第2アクチュエータ40の方に折り返されて第3ベース部材23に接続されている。また、第2押圧部60の折り返し部61は、移動部80に設けられた保持部81とY方向に第2間隔L2をあけて配置されている。第2間隔L2は数μm程度であるが、特にこれに限定されない。位置調整機構10のサイズや保持部81のサイズ等により適宜変更されうる。なお、後述するように、第2アクチュエータ40が駆動される場合、第2押圧部60の折り返し部61が保持部81に当接して保持部81をY方向上側に押すため、所定の強度を確保できるように折り返し部61は第2押圧部60の他の部分よりも幅広に形成されている。また、以降の説明において、第2押圧部60における第2アクチュエータ40との接続部を第2押圧部60の基端と、第3ベース部材23との接続部を第2押圧部60の先端とそれぞれ呼ぶことがある。
なお、第2アクチュエータ40のY方向上側端部からY方向下側端部に向けて電流が流れるようにするため、第3ベース部材23において、第2押圧部60の先端との接続部分は、後述する第3電極103が設けられた部分と互いに電気的に分離されている。具体的には、第2押圧部60の先端との接続部分と第3電極103が設けられた部分の間の第1シリコン層210及び絶縁層220を除去することで、これらの間が電気的に分離される。
支持部70は、第3バネ部71と第4バネ部72とが直列に接続された部材であり、X方向に所定の間隔をあけて2つ設けられている。支持部70の一方は第1ベース部材21の第1シリコン層210に、他方は第2ベース部材22の第1シリコン層210にそれぞれ接続されている。また、2つの支持部70は、Y方向上側から保持部81にそれぞれ接続されており、ベース部20と移動部80とを連結して移動部80を懸架している。なお、2つの支持部70におけるベース部20との接続端部70a,70c(以下、単に端部70a,70cという)は、X方向に関し、保持部81の中心からそれぞれ等しい距離にある。従って、保持部81の中心は、保持部81にX方向から力が作用した場合の回転モーメントの中心となる回転中心(以下、保持部81の回転中心Oと呼ぶことがある。)に相当する。
第3バネ部71は、Y方向に複数回折り返された、いわゆるミアンダ構造を有する弾性体である。また、第3バネ部71は、端部70a,70cが第1ベース部材21あるいは第2ベース部材22に接続され、他端が第4バネ部72の一端に接続されている。第4バネ部72は、X方向に複数回折り返された、いわゆるミアンダ構造を有する弾性体である。また、第4バネ部72の他端70b,70d(以下、単に端部70b,70dという)は保持部81の第1シリコン層210に接続されている。なお、第1アクチュエータ30を駆動させた場合、第3バネ部71及び第4バネ部72はそれぞれ折り返し部分が開くように変形する。同様に、第2アクチュエータ40を駆動させた場合、第3バネ部71及び第4バネ部72はそれぞれ折り返し部分が開くように変形する。
2つの支持部70のそれぞれは、Z方向の曲げ剛性がX方向の曲げ剛性及びY方向の曲げ剛性よりも高くなっている。また、第3バネ部71はY方向に複数回折り返された構造であるため、Y方向の曲げ剛性がX方向の曲げ剛性よりも高くなっている。第4バネ部72はX方向に複数回折り返された構造であるため、X方向の曲げ剛性がY方向の曲げ剛性よりも高くなっている。
移動部80は、集光レンズ90を保持する保持部81と、一端が保持部81に接続された連結部83と、連結部83の他端に接続された固定リング82とを有している。後述するように、固定リング82は、位置調整後の移動部80の位置を固定するための固定部である。
図2に示すように、保持部81は、第1シリコン層210と絶縁層220と第2シリコン層230とがZ方向にこの順で積層された上面視で環状の構造である。保持部81の各層は円環状に加工され、同心状に配置されている。ただし、円環状の第1シリコン層210はX方向右側に張り出した張り出し部81aを有している。また、上面視で、第2シリコン層230の内周面は第1シリコン層210の内周面の内側に位置している。具体的には、円環状の第1シリコン層210及び絶縁層220の内径は、円環状の第2シリコン層230の内径よりも長くなっている。このことにより、円環状の第2シリコン層230の上面と円環状の第1シリコン層210及び絶縁層220の内周面とで集光レンズ90が安定して保持される。また、円環状の第1シリコン層210の外径は、円環状の第2シリコン層230の外径よりも長くなっている。このことにより、第1シリコン層210からなる第1押圧部50及び第2押圧部60を確実に保持部81に当接させることができる。なお、後で詳述するように、第2アクチュエータ40を駆動させることで、第2押圧部60の折り返し部61は、保持部81の張り出し部81aに当接する。
なお、移動部80は、集光レンズ90が配置される予定の目標位置から、X方向左側及びY方向下側にそれぞれ所定の距離だけオフセットして配置されている(図4参照)。つまり、移動部80は、当該目標位置から第1及び第2押圧部50,60が移動部80をそれぞれ押して移動させる方向と逆の方向にオフセットして配置されている。これについては後で詳述する。
連結部83は、第1シリコン層210からなり、Y方向に延びる棒状の部材である。一方、固定リング82は、第1シリコン層210からなる複数の環状の部材が同心状に配置され、複数の環状の部材のそれぞれが半径方向に互いに接続されてなる部材であり、言い換えると、固定リング82は、第1シリコン層210が部分的に除去された肉抜き構造を有している。固定リング82の外径は連結部83のX方向の幅よりも大きい。つまり、固定リング82は連結部83よりも幅広に形成されている。また、後で述べるように、移動部80の位置調整が終了した後に、固定リング82を第1ベース部材21と第2ベース部材22との間に位置する第2シリコン層230に固着させることで、移動部80の位置が固定される。なお、固定リング82を図1に示す形状とすることで、固定リング82が自立しやすくなり、また、第2シリコン層230との固着が容易となるが、これについては後で述べる。また、固定リング82の形状は、図1に示した形状に特に限定されず、適宜変更されうる。例えば、固定リング82が、複数の肉抜き孔(例えば図9参照)を有する肉抜き構造であれば、固定リング82の質量が減少するため自立しやすくなり、また、接着材を用いた第2シリコン層230との固着が容易となる。この場合、固定リング82の平面形状は円形でも四角形でもよい。
第1電極101は、第1ベース部材21の上面に形成された金属膜であり、第2電極102は、第2ベース部材22の上面に形成された金属膜であり、第3電極103は、第3ベース部材23の上面に形成された金属膜である。当該金属膜として、例えば、Au/Ti膜を用いる。また、前述したように、第1ベース部材21と第2ベース部材22との間、第1ベース部材21と第3ベース部材23との間及び第2ベース部材22と第3ベース部材23との間では、それぞれ第1シリコン層210と絶縁層220とが除去されて第2シリコン層230のみが残された領域が形成されている。このことにより、第1~第3電極101~103は、互いに電気的に分離されている。
[集光レンズの位置調整手順]
続いて、図1に示す光学装置における集光レンズの位置調整手順について説明する。
図3は、集光レンズの位置を調整するための測定系の構成を、図4は、集光レンズの位置調整手順の説明図をそれぞれ示す。なお、説明の便宜上、図3において、位置調整機構の詳細構造については図示を省略している。また、図4において、移動部80と集光レンズ90と第1及び第2押圧部50,60以外の部材は図示を省略している。また、図4において、集光レンズ90及び保持部81の目標位置を二点鎖線で示している。
図3に示すように、光学装置100を挟んで、測定用光源LSが一方に、光ファイバOFBと光ファイバOFBと光学的に結合された受光デバイスPDが他方にそれぞれ設けられて、測定系400が構成される。なお、光学装置100と光ファイバOFBとの間に図示しない光学レンズが設けられていてもよい。また、光ファイバOFBを省略して図示しない光学レンズが設けられるようにしてもよい。
測定用光源LSから出射された入射光が光学装置100の集光レンズ90に入射され、所定の倍率で縮小された後、光ファイバOFBの端面に入射される。光ファイバOFBに入射された入射光は、光ファイバOFB内を伝搬して、受光デバイスPDに入射される。受光デバイスPDの受光信号が最大または極大となるように、位置調整機構10により集光レンズ90のXY平面での位置を調整した後、移動部80の位置を固定することで、集光レンズ90の位置が最終的に決定される。なお、XY平面内で複数に分割されたアレイ状の受光デバイスPDを用いて、集光レンズ90の位置を調整するようにすると、X方向及びY方向のそれぞれに関して高精度で集光レンズ90の位置を調整することができる。
なお、図3では、Z方向から光を入射させて集光レンズ90の位置を調整する例を示したが、XY平面と平行な方向から光を入射させて集光レンズ90の位置を調整することも可能である。
集光レンズ90の位置調整手順として、まず、図4の(a)図に示すように、図示しない接着材を用いて保持部81に集光レンズ90を固定する。次に、第1電極101と第3電極103との間に電圧を印加することで、(b)図に示すように第1アクチュエータ30を駆動させる。第1電極101と第3電極103との間に電圧が印加されると、第1ベース部材21及び第3ベース部材23を通じて第1アクチュエータ30に電流が流れる。このとき、シリコン素材でできた第1アクチュエータ30にジュール熱が発生し、第1アクチュエータ30は一瞬のうちに400~500℃に加熱される。
第1アクチュエータ30は、加熱されることにより全長が伸びるように熱膨張する。第1アクチュエータ30のY方向上側端部及びY方向下側端部は、それぞれベース部に接続されて位置が固定されているため、中間部31はあらかじめ突出している方向であるX方向右側へ押し出される。
第1アクチュエータ30の中間部31がX方向右側へ押し出されると、それに接続されている第1押圧部50もX方向右側へ押し出される。第1当接部52が第1間隔L1を越えてX方向右側に移動することで、第1当接部52が保持部81に当接して、保持部81を含む移動部80をX方向右側に押す。このとき、第1電極101と第3電極103との間に印加される電圧値を調整することで、第1アクチュエータ30の駆動量、ひいては第1押圧部50に押される移動部80のX方向の変位量を調整することができる。この場合は、移動部80をX方向で目標位置に移動させるように第1電極101と第3電極103との間に印加される電圧値を調整する。なお、保持部81に連結された支持部70のうち第3バネ部71は、折り返し部分が開くように変形する。
次に、第2電極102と第3電極103との間に電圧を印加することで、(c)図に示すように第2アクチュエータ40を駆動させる。第2アクチュエータ40もまた、ジュール熱により全長が伸びるように熱膨張する。第2アクチュエータ40のY方向上側端部及びY方向下側端部は、それぞれベース部に接続されて位置が固定されているため、中間部41はあらかじめ突出している方向であるX方向右側へ押し出される。
第2アクチュエータ40の中間部41がX方向右側へ押し出されると、それに接続されている第2押圧部60はX方向右側に引っ張られる。一方、第2押圧部60の先端は、折り返し部61のY方向下側に位置する第3ベース部材23に接続されている。このため、折り返し部61は、X方向右側に引っ張られる力とY方向上側に引っ張られる力との合成力を受けて、第2押圧部60が座屈変形して折り返し部61がXY平面内で斜め右上側に移動する。折り返し部61が第2間隔L2を越えてY方向上側に移動することで、折り返し部61が保持部81の張り出し部81aに当接して、保持部81を含む移動部80をY方向上側に押す。このとき、第2電極102と第3電極103との間に印加される電圧値を調整することで、第2アクチュエータ40の駆動量、ひいては第2押圧部60に押される移動部80のY方向の変位量を調整することができる。この場合は、移動部80をY方向で目標位置に移動させるように第2電極102と第3電極103との間に印加される電圧値を調整する。なお、保持部81に連結された支持部70のうち第4バネ部72は、折り返し部分が開くように変形する。
最後に、(d)図に示すように、第1アクチュエータ30及び第2アクチュエータ40を駆動させた状態で、固定リング82と、そのZ方向下側に位置するベース部の第2シリコン層230との間に光硬化性接着材300を介在させ、紫外光を照射して固定リング82を第2シリコン層230に固着させる。固着工程が終了した後に、第1電極101と第3電極103との間及び第2電極102と第3電極103との間への電圧印加を終了し、第1アクチュエータ30及び第2アクチュエータ40をそれぞれ非駆動状態にする。この場合、(d)図に示すように、第1押圧部50と第2押圧部60とは元の位置に戻り、保持部81と間隔をあけた状態で静止する。集光レンズ90が保持された移動部80の位置を調整した後に、固定リング82をベース部の第2シリコン層230に固着させることで、所望の目標位置に配置された状態で、移動部80、ひいては集光レンズ90の位置が固定される。
なお、保持部81の第1シリコン層210は、X方向左側において円環状であるため、第1押圧部50の第1当接部52との接触面積は小さく、点接触に近い状態で第1当接部52が保持部81に当接する。また、第2押圧部60の折り返し部61は、第2押圧部60の先端を中心としてXY平面内で斜め右上側に回転するように移動するため、同様に、点接触に近い状態で、第2押圧部60の折り返し部61が保持部81の張り出し部81aに当接する。
[位置調整機構の製造方法]
続いて、位置調整機構の製造方法について説明する。図5は、本実施形態に係る位置調整機構の製造工程を示す。なお、図5では、説明の便宜上、位置調整機構10の一部のみが描かれている。また、図5の(a)~(d)図に描かれた各製造工程の図は、図2に示す断面図に対応しているが、説明の便宜上、一部を省略して図示している。
まず、第1シリコン層210、絶縁層220、及び第2シリコン層230からなるSOI基板200を用意する。例えば、第1シリコン層210の厚さは30μm、SiO2からなる絶縁層220の厚さは1μm、第2シリコン層230の厚さは250μmである。
第1シリコン層210の上面における所定の領域に第1~第3電極101~103をそれぞれ形成する((a)図)。第1~第3電極101~103は、例えば、厚さ20nmのTi及び厚さ300nmのAuからなるAu/Ti膜である。
第1マスクパターン241を第1シリコン層210の上面に形成した後、第1シリコン層210をエッチング処理して、第1シリコン層210に、ベース部20、第1及び第2アクチュエータ30,40(図示せず)、第1押圧部50(図示せず)、第2押圧部60(図示せず)、支持部70、連結部83及び固定リング82を一体形成する((b)図)。なお、この時点で、保持部81の第1シリコン層210も形成される。また、第1ベース部材21と第3ベース部材23との間、第2ベース部材22と第3ベース部材23との間及び第1ベース部材21と第2ベース部材22との間で、所定の領域の第1シリコン層210が除去される。また、なお、第1~第3電極101~103の下側にそれぞれ位置する第1シリコン層210が、エッチング処理で互いに物理的に分離されているため、第1~第3電極101~103は互いに電気的に分離される。第3ベース部材23における第2押圧部60との接続部と第3電極103との間でも第1シリコン層210が除去される。
第1~第3電極101~103が形成された第1シリコン層210の上面にワックス250でダミー基板260を貼り合わせる。さらに、第2シリコン層230の下面に第2マスクパターン242を形成した後、第2シリコン層230をエッチング処理する((c)図)。このエッチング処理により、ベース部20には第1シリコン層210、絶縁層220、及び第2シリコン層230の積層構造が残され、保持部81において、第2シリコン層230が所望の円環形状に加工される。
続けて、絶縁層220をエッチングすることで、位置調整機構10におけるその他の可動部材である第1及び第2アクチュエータ30,40、第1及び第2押圧部50,60、支持部70、移動部80における連結部83と固定リング82には、それぞれ第1シリコン層210のみが残され、各部材が自立してベース部20に懸架される。この場合のエッチングは、ウエットエッチングを用いることができる。
最後に、ワックス250及びダミー基板260を除去して位置調整機構10が完成する((d)図)。なお、図5に示す工程の後に、保持部81に集光レンズ90が固定されることで光学装置100が完成する。
[効果等]
以上説明したように、本実施形態に係る位置調整機構10は、ベース部20と、ベース部20に接続された第1アクチュエータ30と、基端側が第1アクチュエータ30に接続された第1押圧部50と、ベース部20に接続された第2アクチュエータ40と、基端側が第2アクチュエータ40に接続された第2押圧部60と、ベース部20に連結された移動部80と、X方向(第1方向)及びX方向と交差するY方向(第2方向)にそれぞれ変形可能な弾性体で構成され、移動部80をベース部20に連結して懸架する支持部70と、を備えている。
第1押圧部50は、X方向に関し移動部80と第1間隔L1をあけて配置され、第2押圧部60は、Y方向に関し前記移動部80と第2間隔L2をあけて配置されている。
位置調整機構10をこのように構成することで、X方向及びY方向の互いに異なる2方向に関して移動部80の位置を確実に調整することができる。
第1押圧部50、第2押圧部60がそれぞれ移動部80と第1間隔L1、第2間隔L2をあけて配置されているため、第1アクチュエータ30が駆動されていない状態では、第1押圧部50は移動部80に当接せず、第2アクチュエータ40が駆動されていない状態では、第2押圧部60は移動部80に当接しない。このことにより、第1アクチュエータ30及び第2アクチュエータ40の復元力が移動部80に作用せず、調整後の位置に移動部80を正しく固定することができる。これについてさらに説明する。
第1アクチュエータ30及び第2アクチュエータ40が駆動されていない状態で、第1押圧部50及び第2押圧部60が保持部81に当接している場合、例えば、第1アクチュエータ30を駆動させて移動部80の位置を調整し、移動部80の位置を固定した後に、第1アクチュエータ30を非駆動状態にしたとする。この場合、第1アクチュエータ30の復元力の影響を受けて、第1押圧部50は急速にX方向左側に変位する。当初より第1押圧部50が保持部81に当接している場合、両者の間の摩擦力に起因して移動部80にX方向左側に力が作用し、X方向での移動部80の位置が調整後の位置からずれてしまう場合がある。同様に、当初より第2押圧部60が保持部81に当接している場合、第2アクチュエータ40の復元力の影響を受けて、Y方向での移動部80の位置が調整後の位置からずれてしまう場合がある。
一方、本実施形態によれば、第1押圧部50と第2押圧部60がそれぞれ移動部80と第1間隔L1、第2間隔L2をあけて配置されているため、前述したような第1アクチュエータ30及び第2アクチュエータ40の復元力が移動部80に作用せず、調整後の位置に移動部80を正しく固定することができる。
また、移動部80の位置調整が終了した後には、第1及び第2アクチュエータ30,40をそれぞれ非駆動状態とできるため、消費電力を低減できる。また、特許文献1に示された従来の構成とは違って、移動部80の位置調整が終了した後には、第1及び第2アクチュエータ30,40は、移動部80に接触していないため、保持部81に保持された集光レンズ90に不要な熱が加わるのを防止でき、集光レンズ90の光学特性が変化したり、寿命が低下したりするのを抑制できる。また、第1及び第2アクチュエータ30,40から負荷がかかり続けることによって、第1押圧部50や第2押圧部60や移動部80が変形してしまうのを抑制できる。
また、当該効果を奏するため、第1アクチュエータ30を駆動させる一方、第2アクチュエータ40を駆動させない場合に、第2押圧部60は移動部80に当接しないように配置され、第2アクチュエータ40を駆動させる一方、第1アクチュエータ30を駆動させない場合に、第1押圧部50は移動部80に当接しないように配置されるのが好ましい。
また、第1アクチュエータ30を駆動させることで、第1押圧部50は移動部80に当接して移動部80をX方向に移動させ、第2アクチュエータ40を駆動させることで、第2押圧部60は移動部80に当接して移動部80をY方向に移動させ、第1及び第2押圧部60の少なくとも一方により移動部80を所定の距離移動させることで、X方向及びY方向での移動部80の位置を調整している。
第1アクチュエータ30及び第2アクチュエータ40をそれぞれ独立して駆動させることで、X方向及びY方向の互いに異なる2方向に関してそれぞれ独立して移動部80の位置を調整することができる。
また、移動部80は、目標位置から第1及び第2押圧部60が移動部80をそれぞれ移動させる方向と逆の方向にオフセットして配置されている。
移動部80をこのように配置することで、X方向及びY方向にそれぞれアクチュエータと押圧部とを1つずつ配置すれば移動部80の位置を調整することが可能となる。このことについてさらに説明する。製造上のばらつき等によって移動部80が所定の目標位置からずれて配置される場合がある。この場合、目標位置からのずれがX方向及びY方向に関してそれぞれ片側のみとは限らず、例えば、移動部80がX方向左側にずれたり、X方向右側にずれたりする。このような場合、移動部80の位置を目標位置に近づけようとすると、移動部80に対してX方向右側及び左側の両方から押す機構が必要となる。また、同様に、移動部80に対してY方向上側及び下側の両方から押す機構が必要となる。しかし、このような構成では、4つのアクチュエータ及び押圧部が必要となり位置調整機構10が大型化してしまうとともに、アクチュエータや押圧部や電極の配置構成が複雑になる。また、4つのアクチュエータを駆動させて移動部80の位置を調整するため、位置調整作業が複雑になってしまう。
一方、本実施形態によれば、予め、移動部80を前述の方向にオフセットして配置することで、目標位置に対する移動部80のずれをX方向及びY方向のそれぞれに対して片側のみとすることができる。このことにより、X方向及びY方向にそれぞれアクチュエータと押圧部とを1つずつ配置すれば、移動部80の位置を目標位置になるように調整することが可能となる。なお、第1間隔L1及び第2間隔L2は、前述した製造上のばらつきを考慮したオフセット量と第1及び第2アクチュエータ30,40の復元力の影響等を考慮して定める必要がある。
第1押圧部50は、第1バネ部51と、第1バネ部51の先端に接続された第1当接部52と、を有しており、第1アクチュエータ30を駆動させることで、第1当接部52が移動部80に設けられた保持部81と当接して移動部80をX方向右側に移動させる。また、第1バネ部51は、Y方向の曲げ剛性よりもX方向の曲げ剛性が高くなっている。
第1押圧部50をこのように構成することで、第1当接部52が保持部81をX方向右側に押した状態で保持部81に対してY方向の力が作用する場合に、第1バネ部51がY方向に変形することで、第1押圧部50は保持部81のY方向への変位を妨げないようになっている。このことにより、例えば、図4の(c)図に示すように、移動部80の位置をY方向に調整する場合に、第1押圧部50からの干渉を低減して、移動部80の位置を正しく調整することができる。
移動部80は、所定の部材、本実施形態では集光レンズ90を保持する保持部81を有している。保持部81はY方向に延びる連結部83の一端に接続され、連結部83の他端には固定リング(固定部)82が接続されている。また、第1押圧部50は、保持部81の回転中心Oに向かって移動部80を押すように配置されている。
保持部81に外力が作用した場合の回転モーメントの中心となる回転中心Oに向かって移動部80を押すように第1押圧部50を配置することで、移動部80の位置調整作業において、保持部81に余計な回転モーメントが加えられるのを抑制でき、精度良く保持部81の位置を調整できる。
ベース部20は、X方向とY方向とを面内に含むXY平面(第1平面)と交差するZ方向(第3方向)に第1シリコン層210と絶縁層220と第2シリコン層230とがこの順で積層された積層構造である。保持部81は、ベース部20と同じ積層構造を有し、上面視で環状の構造であり、上面視で、第2シリコン層230の内周面は第1シリコン層210の内周面の内側に位置している。
集光レンズ90等の部材の質量は、保持部81を含む移動部80の質量と同じかそれ以上であることが多い。このような場合に、例えば、保持部81を第1シリコン層210のみで構成すると、集光レンズ90を保持する強度を保てなくなることがある。一方、本実施形態によれば、保持部81をベース部と同じ積層構造とすることで、集光レンズ90を保持する際の強度を確保することができる。
また、保持部81において、第2シリコン層230の内周面が第1シリコン層210の内周面の内側に位置することで、集光レンズ90等の部材を第2シリコン層230の上面及び第1シリコン層210及び絶縁層220の内周面で囲まれた開空間に収容することができ、集光レンズ90を保持部81で確実に保持できるとともに、保持部81に対する集光レンズ90の位置決め固定が容易となる。なお、保持部81の第2シリコン層230をもとの厚さよりも薄くするように加工してもよい。このようにすることで、位置調整機構10が図示しない別の基板上に実装された場合に、保持部81と別の基板とが接触して摩擦が生じるのを抑制できる。このことにより、保持部81を含む移動部80が変形したり損傷したりするのを抑制できる。ただし、位置調整機構10を図示しない別の基板上に実装する場合、第2シリコン層230が所定以上に薄いと、別の基板との間隔が大きくなり、保持部81に集光レンズ90を実装する際に、移動部80に加わる衝撃が大きくなる。これに留意して、第2シリコン層230の厚さを設定する必要がある。
また、保持部81の第2シリコン層230をもとの厚さよりも薄くするように加工することで、保持部81、ひいては移動部80の質量を低減でき、低い駆動力で集光レンズ90が保持された移動部80を変位させることができる。なお、強度を確保するために、第2シリコン層230の厚さは数十μm以上であることが好ましい。
移動部80に設けられた固定リング(固定部)82の下方に所定の間隔をあけて第2シリコン層230が延在しており、固定リング82と当該第2シリコン層230とを固着させることで、移動部80の位置が固定されるようにしてもよく、その場合、固定リング82は肉抜き構造を有するのが好ましい。
本実施形態によれば、連結部83を介して保持部81と反対側に配置された固定リング82と、そのZ方向下方に設けられた第2シリコン層230とを固着させることで、移動部80の位置調整後に、第1及び第2アクチュエータ40を非駆動状態にできる。このことにより、位置調整機構10の消費電力を低減できる。また、第1及び第2アクチュエータ40を加熱する時間を低減でき、熱的ダメージによるこれらの寿命低下を抑制できる。ひいては、位置調整機構10や光学装置100の寿命低下を抑制できる。
また、固定リング82を肉抜き構造とすることで、移動部80の位置が調整された状態で、固定リング82の上方から滴下された光硬化性接着材300を固定リング82と第2シリコン層230との間に確実に介在させることができる。また、固定リング82の上方から光照射を行うことで、光硬化性接着材300を硬化して、固定リング82と第2シリコン層230とを確実に固着させることができる。なお、本実施形態では、光硬化性接着材300を用いたが、硬化条件によっては熱硬化性接着材を用いることもできる。
第1及び第2アクチュエータ30,40は、それぞれ所定の電流が流れることで熱膨張し、駆動力を発生させる熱式アクチュエータである。また、ベース部20には、第1アクチュエータ30を駆動するための第1電極101と、第2アクチュエータ40を駆動するための第2電極102と、第1及び第2アクチュエータ40の共通電極である第3電極103と、が少なくとも形成されており、第1~第3電極101~103は互いに電気的に分離されている。
第1及び第2アクチュエータ30,40を熱式アクチュエータとすることで、高い駆動力を得ることができる。このため、重量物である集光レンズ90が保持された移動部80を、X方向及びY方向のそれぞれに対して確実に変位させることができる。
また、第1~第3電極101~103を互いに電気的に分離してベース部20に形成することで、第1アクチュエータ30と第2アクチュエータ40とをそれぞれ独立して駆動させることができる。このことにより、移動部80をX方向及びY方向に関してそれぞれ独立して変位させることができ、移動部80の位置を正しく調整することができる。
第2押圧部60は、基端側が第2アクチュエータ40の中間部41に接続され、先端側がベース部20に接続されている。また、第2押圧部60は、保持部81の近くに配置された折り返し部61を有している。第2アクチュエータ40を駆動させることで、折り返し部61が保持部81に当接して、移動部80をY方向上側に押している。
第2押圧部60をこのように構成することで、第2アクチュエータ40の中間部41が変位する方向と交差する方向、この場合、Y方向上側に折り返し部61を変位させることができる。つまり、第2アクチュエータ40を駆動させることで、折り返し部61が保持部81に当接して、移動部80をY方向上側に押し、移動部80のY方向の位置を調整することができる。
また、第1アクチュエータ30及び第2アクチュエータ40の駆動力を互いに異なる方向から移動部80に作用させつつ、これらの長手方向をともに同じ方向、この場合はY方向とすることができる。このことにより、位置調整機構10、ひいては光学装置100が大型化するのを抑制できる。
また、第1及び第2アクチュエータ30,40をそれぞれ駆動させた場合、第1押圧部50及び第2押圧部50,60は、それぞれ点接触に近い状態で移動部80に当接し、移動部80をX方向及びY方向のそれぞれに押して移動させている。
第1押圧部50及び第2押圧部60を点接触に近い状態で移動部80に当接させることで、第1及び第2アクチュエータ30,40の駆動力を移動部80に対してそれぞれ所定の方向に向けて伝達できる。このことにより、第1及び第2押圧部50,60が保持部81の回転中心Oに向かって確実に保持部81を押すことができる。また、第1押圧部50及び第2押圧部60と移動部80との接触面積が小さいため、移動部80に対してX方向及びY方向の両方から力が加わるような場合、より弱く力が加わる方向には当接部分がすべりやすく、より強く力が加わる方向に移動部80を移動させやすくなる。例えば、第2押圧部60の折り返し部61が保持部81の張り出し部81aに当接した場合、当接部分がX方向にすべりやすくなることで、X方向への変位を抑制しつつ、保持部81を確実にY方向に変位させることができる。このことにより、移動部80の位置調整精度を向上できるとともに、X方向への位置の再調整作業が発生するのを抑制できる。
支持部70は、X方向及びX方向と交差するY方向にそれぞれ変形可能な弾性体で構成されている。支持部70は、X方向の曲げ剛性よりもY方向の曲げ剛性が高い第3バネ部71と、第3バネ部71と直列に接続され、Y方向の曲げ剛性よりもX方向の曲げ剛性が高い第4バネ部72とを含んでいる。
支持部70をこのように構成することで、第1押圧部50及び第2押圧部60が、それぞれ移動部80をX方向及びY方向に押して移動させる際、支持部70がX方向及びY方向に対してそれぞれ変形しやすくなっており、支持部70に接続された移動部80のX方向及びY方向への変位が容易となる。このことにより、第1アクチュエータ30及び第2アクチュエータ40の駆動力に応じて、支持部70に懸架された移動部80を所望の距離だけ移動させることができ、移動部80の位置が目標位置となるように調整することが可能となる。
支持部70は、Z方向の曲げ剛性がX方向の曲げ剛性及びY方向の曲げ剛性よりも高くなっており、X方向の軸やY方向の軸回りに支持部70がZ方向に傾動するのを抑制することができる。また、支持部70によってベース部20に接続された移動部80のZ方向への変位が抑制され、移動部80は安定してベース部20に懸架される。
このことにより、移動部80に対して第1押圧部50及び第2押圧部60を正しく当接させることができ、移動部80の位置を正確に調整できる。また、支持部70のZ方向への傾動を抑制することで、位置調整後に、移動部80が振動したりせず、移動部80の位置を確実に固定することができる。
なお、第1アクチュエータ30及び第2アクチュエータ40を駆動させて、移動部80が初期位置から移動した場合に、第3バネ部71及び第4バネ部72は、それぞれ折り返し部分が開くように変形する。このようにすることで、支持部70がX方向及びY方向に変形するのが妨げられず、移動部80を所望の位置に移動させることができる。
また、支持部70は複数設けられており、複数の支持部70のそれぞれが、移動部80の互いに異なる箇所に接続されるとともに、ベース部20の互いに異なる箇所に接続されている。このようにすることで、移動部80を安定してベース部20に懸架できる。また、支持部70と移動部80との接続部の位置及びベース部と支持部70との接続部の位置を保持部81の回転中心Oにあわせて設定することで、保持部81に余計な回転モーメントが加わるのを防止して、精度良く保持部81の位置を調整できる。
また、本実施形態に係る光学装置100は、位置調整機構10と、移動部80に保持された光学部材、この場合は集光レンズ90と、を備えている。
光学装置100をこのように構成することで、位置調整機構10により、集光レンズ90の位置を開口A内の所望の位置に調整できる。このことにより、集光レンズ90に入射され、所定の倍率で集光された入射光を所定の位置に配置された光学部品あるいは受光デバイスPD等に正しく入射させることができ、例えば、光スイッチ等において、信号利用効率を高められるとともに、漏れ光等によるノイズ発生を低減でき、高品質の光学装置100を実現できる。
<変形例1>
図6は、本変形例に係る位置調整機構の平面図を、図7は、図6のVII-VII線での断面図をそれぞれ示す。なお、説明の便宜上、図6,7において、実施形態1と同様の箇所については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。また、図7の(a)図において、ベース部20の第2シリコン層230に固着された後の固定リング82を二点鎖線で示している。
本変形例に示す位置調整機構11と実施形態1に示す位置調整機構10とは以下の点で異なる。まず、第1ベース部材21において、第1電極101が形成された領域と支持部70が接続された領域との間で第1シリコン層210及び絶縁層220が除去されている。同様に、第2ベース部材22において、第2電極102が形成された領域と支持部70が接続された領域との間で第1シリコン層210及び絶縁層220が除去されている。さらに、第1及び第2ベース部材21,22において、支持部70が接続された領域の第1シリコン層210の上面にそれぞれ第4電極104、第5電極105が形成されており、第4電極104及び第5電極105は、第1~第3電極101~103と互いに電気的に分離されている。なお、図示しないが、ベース部20の第2シリコン層230は、グラウンド電位あるいは零電位に固定されている。ベース部20の第2シリコン層230の電位を固定するために、第1及び第2ベース部材21,22の間で露出された第2シリコン層230の上面に図示しない電極を設けるようにしてもよい。
本変形例によれば、第4及び第5電極105の所定の電圧、例えば、数十Vを印加することで、支持部70を介して移動部80の第1シリコン層210に同じ電圧が印加される。ここで、Z方向における固定リング82とベース部の第2シリコン層230との間の距離は絶縁層220の厚さ、つまり1μmにほぼ等しい。グラウンド電位に固定されたベース部の第2シリコン層230と電圧が印加された固定リング82との間に静電引力が働き、固定リング82がベース部の第2シリコン層230に静電吸着して固着される。このことにより、移動部80の位置が調整された後に、移動部80、ひいては保持部81に保持固定された集光レンズ90の位置を固定することができる。
また、図7の(b)図に示すように、接着材を用いて、固定リング82をベース部20の第2シリコン層230に固着させる場合、接着材の硬化時に生じる体積変化の度合いによっては、移動部80の位置ずれが生じたり、極端な場合には、固定リング82が破損したりすることがある。一方、図7の(a)図に示すように、本変形例によれば、固定リング82をベース部20の第2シリコン層230に固着させるにあたって、接着材を用いないため、前述の問題は生じない。
また、第4電極104及び第5電極105は、第1~第3電極101~103と互いに電気的に分離されているため、第4電極104及び第5電極105に電圧が印加されても、第1アクチュエータ30、第2アクチュエータ40ともに駆動されることがない。また、第1電極101または第2電極102に電圧が印加されても、意図せずに固定リング82がベース部20の第2シリコン層230に静電吸着されることがない。このように、第1及び第2アクチュエータ30,40を用いた移動部80の位置調整作業と、移動部80の固定作業とを独立して行えるため、移動部80、ひいては保持部81に保持固定された集光レンズ90の位置を所望の位置に正しく固定することができる。
なお、第4電極104と第5電極105のいずれか一方のみを形成するようにしてもよい。この場合も、形成された電極から移動部80の第1シリコン層210に所定の電圧を印加することができ、固定リング82がベース部の第2シリコン層230に静電吸着して固着される。
また、固定リング82とベース部の第2シリコン層230とが意図せずに固着されるのを防止するために、固定リング82の表面及び第2シリコン層230の上面の少なくとも一方に所定以上の厚さの絶縁層、例えば、SiO2層を設けるようにしてもよい。例えば、図4の(b)図に示す工程で、固定リング82の下面あるいは第2シリコン層230の上面に絶縁層220が一部残るようにしてもよい。また、図4の(c)図に示す工程の前に基板200を熱酸化して、固定リング82の表面及びその下方に位置する第2シリコン層230の上面に所定以上の厚さのSiO2からなる絶縁層を新たに形成するようにしてもよい。なお、この場合、第1~第5電極101~105の形成前に、各電極される予定の領域において、第1シリコン層210の上面に形成された絶縁層220は除去される。
<変形例2>
図8は、本変形例に係る位置調整機構の平面図を示す。なお、説明の便宜上、図8において、実施形態1と同様の箇所については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
本変形例に示す位置調整機構12と実施形態1に示す位置調整機構10とは以下の点で異なる。まず、第2アクチュエータ40がX方向に延び、保持部81のY方向下側に配置されている。また、第2アクチュエータ40の中間部41に接続された第2押圧部60が図1に示す第1押圧部50と同様の構造を有している。
具体的には、第2押圧部60は、第2アクチュエータ40の中間部41に接続された第2バネ部62と、第2バネの先端に接続された第2当接部63と、を有する部材である。第2バネ部62は、Y方向に複数回折り返された、いわゆるミアンダ構造を有している。また、第2バネ部62は、第2アクチュエータ40の中間部41からX方向で二股に分かれており、それぞれがY方向に複数回折り返された構造を有している。また、第2バネ部62の2つの先端に第2当接部63の両端がそれぞれ接続されている。このように、第2当接部63はX方向に延びた棒状の部材であり、また、移動部80に設けられた保持部81とY方向に第2間隔L2をあけて配置されている。第2アクチュエータ40を駆動させることで、第2当接部63が移動部80に設けられた保持部81と当接して移動部80をY方向上側に移動させる。なお、本変形例に示す保持部81には、図1に示す張り出し部81aは設けられておらず、保持部81の第1シリコン層210は円環状に形成されている。
また、本変形例では、第2ベース部材22は、Y方向に関して第1ベース部材21と対向する位置に配置されている。さらに、第3ベース部材23は、Y方向に関して第1ベース部材21と対向する位置に配置される一方、X方向に関して第2ベース部材22と対向して配置されている。また、ベース部は、Y方向に関して第2ベース部材22と対向する一方、X方向に関して第1ベース部材21と対向して配置された第4ベース部材24をさらに有している。
第1ベース部材21と第3ベース部材23との間及び第4ベース部材24と第3ベース部材23との間の領域では、第1シリコン層210及び絶縁層220が除去されている。また、第1ベース部材21と第4ベース部材24との間及び第2ベース部材22と第3ベース部材23との間の領域でも同様に、第1シリコン層210及び絶縁層220が除去されている。このように、第1~第4ベース部材21~24において、第1シリコン層210は互いに分離されている一方、第2シリコン層230では1つに繋がっている。従って、第1~第4ベース部材21~24の相対位置は固定されており、第1~第4ベース部材21~24で第1及び第2アクチュエータ30,40や第1及び第2押圧部50,60や移動部80や支持部70等の可動部材を支持することができる。
本変形例によれば、第2押圧部60によってY方向からのみ移動部80を押すことができる。実施形態1に示す構成では、第2押圧部60の折り返し部61は、保持部81の張り出し部81aに当接して、保持部81を含む移動部80をXY平面内で右方向かつ上側に押している。従って、第2押圧部60に押される保持部81はわずかにX方向にも変位する。しかし、第1押圧部50による保持部81のX方向への変位量が小さい場合、第2押圧部60によって保持部81がX方向へ変位すると、X方向の位置調整を再度行うことがあり、位置調整作業が複雑となるおそれがあった。
一方、本変形例によれば、第2押圧部60によってY方向からのみ移動部80を押すため、前述したように、保持部81のX方向の位置を再調整する必要がなく、位置調整作業を簡素化できる。
また、第2バネ部62はY方向に複数回折り返された構造であるため、Y方向の曲げ剛性がX方向の曲げ剛性よりも高くなっている。このため、第2当接部63が保持部81をY方向上側に押した状態で保持部81に対してX方向の力が作用する場合に、第2バネ部62がX方向に変形することで、第2押圧部60は保持部81のX方向への変位を妨げないようになっている。
第2バネ部62をこのように構成することで、集光レンズ90の位置調整作業において、第1及び第2押圧部60は、それぞれ保持部81に当接した状態で保持部81の変位を妨げないため、X方向及びY方向のいずれから位置調整作業を開始してもよく、また、正確な位置調整が行えるとともに、位置調整作業を簡素化できる。
(実施形態2)
図9は、本実施形態に係る位置調整機構の平面図を、図10は、図9のX-X線での断面図をそれぞれ示す。なお、説明の便宜上、図9,10において、実施形態1と同様の箇所については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
本実施形態に示す位置調整機構13は、位置調整機構13aがY方向に2つ整列して配置された、いわゆるアレイ状の構造である点で実施形態1に示す構成と異なる。なお、2つの位置調整機構13a,13aはY方向上側に位置する位置調整機構13a及びその構成部材とY方向下側に位置する位置調整機構13a及びその構成部材とは互いに線対称な位置関係となるように配置されている。このため、図9において、Y方向上側に位置する位置調整機構13aに関する符号の図示を省略している。
Y方向下側に位置する位置調整機構13aのベース部20では、X方向左側かつY方向下側に第1ベース部材21が配置され、X方向右側かつY方向下側に第2ベース部材22が配置され、これらの間の領域では第1シリコン層210及び絶縁層220が除去されている。また、第1及び第2ベース部材22のY方向上側に第5ベース部材25が配置されている。第1及び第2ベース部材22及び第5ベース部材25の間の領域では第1シリコン層210及び絶縁層220が除去されている。一方、第1ベース部材21と第2ベース部材22と第5ベース部材25とは第2シリコン層230で1つに繋がっている。
Y方向上側に位置する位置調整機構13aのベース部20でも同様に、第1ベース部材21と第2ベース部材22と第5ベース部材25とが配置され、これらの間で第1シリコン層210は互いに分離される一方、1つに繋がっている。なお、前述したように、2つの位置調整機構13a,13aはY方向に関して互いに線対称な位置関係であるため、例えば、Y方向上側に位置する位置調整機構13aにおいて、第1ベース部材21はX方向左側かつY方向上側に配置され、第5ベース部材25は第1及び第2ベース部材22のY方向下側に配置されている。なお、2つの位置調整機構13a,13aにおいて、第3ベース部材23は共通して設けられている。具体的には、図9に示すように、2つの位置調整機構13a,13aの間でX方向に延びる第1部分23aと、X方向右側で、2つの位置調整機構に跨がってY方向に延びる第2部分23bと後述する第3及び第4部分23dとが、第3ベース部材23にあたる。また、位置調整機構13では、ベース部の外周部分において第1シリコン層210及び絶縁層220が除去されている。これは、図5に示すような工程で、1枚の基板200に複数の位置調整機構13を形成する場合、レーザダイシング等により異なる位置調整機構13を互いに分割して個片化するためである。このことにより、第1~第3ベース部材21~23及び第5ベース部材25は、第1シリコン層210で互いに分離されている。一方で、これらは、第2シリコン層230で1つに繋がっているため、ベース部20は全体として可動部材を支持するフレームとして機能している。
なお、第5ベース部材25において、第2押圧部60との接続部と支持部70との接続部は、その間の第1シリコン層210及び絶縁層220が除去されることで互いに分離されている。このようにすることで、第2押圧部60に接続された第2アクチュエータ40と支持部70に接続された保持部81とを互いに電気的に分離することができる。
また、第3ベース部材23は、第1部分23aからY方向上下にそれぞれ延びる第3部分23c及び第4部分23dを有している。第3部分23cは支持部70及び第1押圧部50の第3部材55に接続されている。なお、第1部分23aと第3部分23cとの間の領域では、第1シリコン層210及び絶縁層220が除去されている。また、第4部分23dは、第1シリコン層210及び絶縁層220が除去されて、第2シリコン層230のみで構成され、保持部81のZ方向下側に延在している。なお、第4部分23dと保持部81とのZ方向での間隔は、絶縁層220の厚さ(=1μm)にほぼ等しい。
また、本実施形態に示す構成では、保持部81が第1シリコン層210のみで構成され、かつX方向及びY方向にそれぞれ整列して設けられた複数の肉抜き孔81aを有する平板状の部材である。なお、本実施形態において、移動部80は保持部81のみで構成されており、図1に示す連結部83及び固定リング82は設けられていない。
また、Y方向下側に位置する位置調整機構13aでは、図1に示す構成に対して、第1アクチュエータ30と第2アクチュエータ40の配置がX方向に関し反転している。つまり、保持部81を挟んで、第1アクチュエータ30はX方向右側に配置されており、第2アクチュエータ40はX方向左側に配置されている。従って、第1アクチュエータ30に接続され、保持部81をX方向に押す第1押圧部50はX方向右側に配置されており、第2アクチュエータ40に接続され、保持部81をY方向に押す第2押圧部60はX方向右側に配置されている。なお、第1及び第2アクチュエータ30,40は、それぞれ初期形状が、中間部31,41がX方向左側に突出するようにわずかに屈曲、あるいは全体的にX方向左側に膨らむようにわずかに湾曲している。つまり、第1及び第2アクチュエータ30,40ともに所定の電流が流れるとX方向左側に向かって屈曲あるいは湾曲する。
第1押圧部50は、折り返し構造を有する棒状の部材であり、第1~第3部材53~55を有している。なお、第1~第3部材53~55ともに、第1シリコン層210からなる部材である。
Y方向下側に位置する位置調整機構13aにおいて、第1部材53は、第1アクチュエータ30の中間部31からX方向左側に延び、さらにY方向上側に折り曲げられた棒状の部材である。第2部材54は、第1部材53に接続された一端からX方向左側に保持部81の近くまで延び、第1折り返し部54aで第1アクチュエータ30の方に折り返されて、他端が第1部材53に接続された部材である。第1折り返し部54aから第1部材53まで延びる部分は、Y方向に所定の間隔をあけて互いに並列して配置された2本の棒状の部材からなる。第3部材55は、X方向に所定の間隔をあけて互いに並列して配置された2本の棒状の部材からなり、2本の棒状の部材の一端は第1部材53に、他端は第5ベース部材25にそれぞれ接続されている。第3部材55のY方向の曲げ剛性はX方向の曲げ剛性よりも高くなっており、第3部材55は、第1押圧部50がX方向に変位する場合のバネ部として機能する。なお、第1部材53の幅は、第2部材54を構成する棒状の部材の幅及び第3部材55を構成する棒状の部材の幅よりも太くなっている。このため、第1部材53のX方向及びY方向の曲げ剛性は、第2及び第3部材55の当該剛性よりも高くなっている。なお、図9において、第1部材53の幅は第1アクチュエータ30の幅と同程度に描かれているが、特にこれに限定されない。また、第1折り返し部54aは、その先端、この場合、X方向左側端部が平面視で保持部81に向かって凸状の曲面となっている。なお、図示しないが、第1折り返し部54aと保持部81とのX方向に関する間隔は図1に示す第1間隔L1と同じである。
第1アクチュエータ30を駆動させると、中間部31はあらかじめ突出している方向であるX方向左側へ押し出され、中間部31に接続された第1部材53もX方向左側へ押し出される。ここで、前述したように、第1部材53のX方向及びY方向の曲げ剛性は、第3部材55の当該剛性よりも高くなっている。従って、第3部材55がX方向左側に向かって湾曲するように変形する一方、第1部材53自体は変形せずに、保持部81に向かってX方向左側に変位する。第1部材53の変位に伴い、これに接続された第2部材54もX方向左側に変位し、第1折り返し部54aが第1間隔L1を越えてX方向左側に移動することで、第1折り返し部54aが保持部81に当接して、保持部81をX方向左側に押す。このとき、第1電極101と第3電極103との間に印加される電圧値を調整することで、第1アクチュエータ30の駆動量、ひいては第1押圧部50に押される移動部80のX方向の変位量を調整することができる。なお、第2部材54は、Y方向の幅よりもX方向の長さが長い2本の棒状の部材からなるため、X方向の剛性がY方向の剛性よりも高くなっている。このため、第1折り返し部54aが保持部81をX方向左側に押した状態で保持部81に対してY方向の力が作用する場合に、第2部材54がY方向に湾曲することで、第1押圧部50は保持部81のY方向への変位を妨げないようになっている。また、第1折り返し部54aの先端は前述した形状となっているため、第1折り返し部54aは、保持部81と点接触に近い状態で当接し、保持部81をX方向左側に押す。
また、第2押圧部60は、実施形態1に示すのと同様に折り返し構造を有する棒状の部材である。つまり、第1押圧部50と第2押圧部60とは同様に折り返し構造を有する棒状の部材である。なお、第2押圧部60の第2折り返し部64は、Y方向上側に突出し、その先端が平面視でY方向上側に向かって凸状の曲面となっている。また、第2押圧部60の先端側が第2ベース部材22に接続されている。なお、図示しないが、第2折り返し部64と保持部81とのY方向に関する間隔は図1に示す第2間隔L2と同じである。
第2アクチュエータ40を駆動させると、第2アクチュエータ40の中間部41がX方向左側へ押し出されると、それに接続されている第2押圧部60はX方向左側に引っ張られる。一方、第2押圧部60の先端は、折り返し部のY方向下側に位置する第5ベース部材25に接続されている。このため、折り返し部は、X方向左側に引っ張られる力とY方向上側に引っ張られる力との合成力を受けて、第2押圧部60が座屈変形して第2折り返し部64がXY平面内で斜め左上側に移動する。第2折り返し部64が第2間隔L2を越えてY方向上側に移動することで、第2折り返し部64が保持部81に当接して、保持部81をY方向上側に押す。このとき、第2電極102と第3電極103との間に印加される電圧値を調整することで、第2アクチュエータ40の駆動量、ひいては第2押圧部60に押される移動部80のY方向の変位量を調整することができる。なお、第2折り返し部64の先端がX方向にわずかに変位するのに応じて、保持部81もX方向にわずかに変位する。また、第2折り返し部64の先端は前述した形状となっているため、第2折り返し部64は、保持部81と点接触に近い状態で当接し、保持部81をY方向上側に押す。
また、保持部81は、集光レンズ90が配置される予定の目標位置(図示せず)から、X方向右側及びY方向下側にそれぞれ所定の距離だけオフセットして配置されている。つまり、保持部81は、当該目標位置から第1及び第2押圧部60が移動部80をそれぞれ押す方向と逆の方向にオフセットして配置されている。
また、本実施形態に示す構成では、第2アクチュエータ40が、保持部81が4つの支持部70でベース部に接続されている点で実施形態1に示す構成と異なる。4つの支持部70のそれぞれが、保持部81の互いに異なる箇所に接続されるとともに、ベース部20の互いに異なる箇所に接続されている。Y方向下側に位置する位置調整機構13aにおいて、一方の端部70eが第3ベース部材23に接続された支持部70は、保持部81のX方向右側の辺でかつ第1押圧部50の第2部材54よりもY方向上側に位置する箇所に他方の端部70fが接続されている。一方の端部70gが第3ベース部材23に接続された支持部70は、保持部81の左上の角部に他方の端部70hが接続されている。一方の端部70iが第5ベース部材25に接続された支持部70は、保持部81のX方向右側の辺でかつ第1押圧部50の第2部材54よりもY方向下側に位置する箇所に他方の端部70jが接続されている。一方の端部70kが第5ベース部材25に接続された支持部70は、保持部81の右下の角部に他方の端部70lが接続されている。
ここで、X方向に関して、端部70hと端部70lとの中間点が保持部81の回転中心位置に相当し、Y方向に関して、端部70eと端部70iとの中間点が保持部81の回転中心位置に相当する。第1アクチュエータ30が駆動されると、第1押圧部50の第1折り返し部54aは、端部70eと端部70iとのY方向に関する中間点に向かって保持部81を押し、第2アクチュエータ40が駆動されると、第2押圧部60の第2折り返し部64は、端部70hと端部70lとのX方向に関する中間点に向かって保持部81を押す。つまり、第1及び第2押圧部60はそれぞれ、第1及びアクチュエータが駆動されると、保持部81の回転中心Oに向かって変位し、保持部81を押す。このことにより、実施形態1に示すのと同様に、位置調整作業において、保持部81に余計な回転モーメントが加えられるのを抑制でき、精度良く保持部81の位置を調整できる。
本実施形態によれば、アレイ状の位置調整機構13に含まれる2つの位置調整機構13a,13aのそれぞれにおいて、実施形態1に示すのと同様の効果を奏することができる。また、2つの位置調整機構13a,13aをY方向に関して互いに線対称な位置関係となるように配置しているため、位置調整機構13の設計が容易となる。また、光学部材を保持する保持部81のY方向での間隔を近づけることができ、アレイ状の位置調整機構13の小型化が図れる。
また、本実施形態によれば、移動部80が第1シリコン層210からなる保持部81のみで構成されているため、移動部80の質量を小さくでき、例えば、実施形態1に示す構成と比べて、移動部80を変位させるための駆動力を低減できる。このことにより、より低い電圧で第1及び第2アクチュエータ40を駆動でき、位置調整時の消費電力を小さくできる。あるいは、第1及び第2アクチュエータ30,40の全長をそれぞれ短くでき、位置調整機構13の小型化が図れる。また、移動部80の質量を小さくできるため、支持部70に懸架された移動部80が自立しやすくなる。
また、複数の肉抜き孔81aを設けて保持部81を肉抜き構造とすることで、さらに移動部80の質量を小さくできる。また、集光レンズ90等の部材が保持された保持部81の位置を調整した後に、保持部81と、そのZ方向下側に位置する第2シリコン層230との間に光硬化性あるいは熱硬化性接着材(図示せず)を設け、硬化させることで、保持部81を当該第2シリコン層230に固着させることができる。このことにより、移動部80である保持部81の位置が調整された後に、保持部81に保持固定された集光レンズ90等の部材の位置を固定することができる。
なお、変形例1に示すように、図示しない電極を第3及び第5ベース部材25の適切な位置に配置し、所定の電圧を印加して、静電引力により、保持部81を当該第2シリコン層230に固着させるようにしてもよい。
<変形例3>
図11は、本変形例に係る位置調整機構の平面図を示す。なお、説明の便宜上、図11において、実施形態1,2と同様の箇所については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
本変形例に示す位置調整機構14は、X方向に2つ及びY方向に2つそれぞれ配置された4つの位置調整機構14aを含むアレイ状の構造である点で、実施形態1,2に示す構成と異なる。なお、X方向に整列して配置された2つの位置調整機構14a,14aは、X方向に関して互いに線対称となるように、Y方向に整列して配置された2つの位置調整機構14a,14aは、Y方向に関して互いに線対称となるようにそれぞれ配置されている。このため、図11において、Y方向下側かつX方向右側に位置する位置調整機構14a以外の位置調整機構14aに関する符号の図示を一部省略している。
また、Y方向下側かつX方向右側に位置する位置調整機構14aと、Y方向下側かつX方向左側に位置する位置調整機構14aとは、第1ベース部材21が共有されている。ただし、第1ベース部材21の中間部分ではY方向に沿って第1シリコン層210及び絶縁層220が除去されている。同様に、Y方向上側かつX方向右側に位置する位置調整機構14aと、Y方向上側かつX方向左側に位置する位置調整機構14aとは、第1ベース部材21が共有され、中間部分ではY方向に沿って第1シリコン層210及び絶縁層220が除去されている。このことにより、アレイ状の位置調整機構14の面積を低減しつつ、これに含まれる4つの位置調整機構14aのそれぞれに設けられた第1電極101を互いに電気的に分離して、4つの第1アクチュエータ30をそれぞれ独立して駆動することができる。
また、4つの位置調整機構14aのそれぞれにおいて、第3ベース部材23が共有されている。なお、第3ベース部材23には、それぞれ保持部81に近い側にY方向に凹む凹部23eが設けられている。凹部23eと所定の間隔をあけつつ、上面視で凹部23eの内側に保持部81が収容されている。また、本変形例に示す構成では、第1アクチュエータ30に接続される第3電極103と第2アクチュエータ40に接続される第3電極103とは別々に形成されている。4つの位置調整機構14aのそれぞれにおいて、第1アクチュエータ30に接続される第3電極103は共通して形成されている。また、Y方向で対向する第2アクチュエータ40に接続される第3電極103は共通して形成されている。
また、本変形例に示す構成は、実施形態1に示す構成に対して、連結部83を挟んで、保持部81と固定部82の位置がY方向に関して入れ替わっている点で異なる。なお、固定部82は、連結部83の一端に接続され、連結部83よりも幅広に形成されている。さらに、実施形態1,2に示す構成では、第1及び第2アクチュエータ30,40を駆動させた場合、第1及び第2押圧部50,60がそれぞれ保持部81に当接して、保持部81をX方向やY方向に押している。一方、本変形例に示す構成では、第1及び第2アクチュエータ30,40を駆動させた場合、第1及び第2押圧部50,60がそれぞれ固定部82に当接して、固定部82をX方向やY方向に押している。なお、図示しないが、第1押圧部50と固定部82とのX方向に関する間隔は図1に示す第1間隔L1と、第2押圧部60と固定部82とのY方向に関する間隔は図1に示す第2間隔L2とそれぞれ同じである。
本変形例によれば、4つの位置調整機構14aをX方向及びY方向に関してそれぞれ互いに線対称となるように配置しているため、実施形態2に示すのと同様に、位置調整機構14の設計が容易となる。また、保持部81のY方向での間隔を近づけることができ、アレイ状の位置調整機構14の小型化が図れる。
また、本変形例によれば、保持部81が、上面視で第3ベース部材23に設けられた凹部23eの内側に配置されている。このことにより、XY平面内での保持部81の位置を大まかに規制することができる。このようにした上で、第1及び第2押圧部50,60により固定部82をX方向及びY方向に押すことで、保持部81の位置を細かく調整することができる。
また、第3ベース部材23から図示しない第2シリコン層230をY方向に延在させて固定部82のZ方向に配置するようにしてもよい。保持部81の位置を調整した後に、固定部82と、そのZ方向下側に位置する第2シリコン層230との間に光硬化性あるいは熱硬化性接着材を設け、硬化させることで、固定部82を当該第2シリコン層230に固着させることができる。このことにより、移動部80の位置が調整された後に、保持部81に保持固定された図示しない光学部材の位置を固定することができる。なお、変形例1に示すように、図示しない電極を第1及び第2ベース部材21,22の適切な位置に配置し、所定の電圧を印加して、静電引力により、固定部82を当該第2シリコン層230に固着させるようにしてもよい。なお、この場合も、保持部81に保持された光学部材に入射される入射光の光路を避けて第2シリコン層230を延在させるのが好ましい。
(その他の実施形態)
上記の各実施形態及び変形例で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。例えば、図9に示す1つの位置調整機構13aの構成や図11に示す1つの位置調整機構14aの構成をそれぞれ単独で光学装置100に適用してもよい。同様に、図1,6及び8に示す位置調整機構10,11,12の構成をそれぞれ、X方向及びY方向に複数配置してアレイ状の構造としてもよい。また、図9に示す2つの位置調整機構13a,13aをX方向及び/またはY方向にさらに1または複数配置してアレイ状の構造としてもよい。また、図1,6,8及び11に示す位置調整機構10,11,12,14において、ベース部20の外周部分の第1シリコン層210及び絶縁層220を除去するようにしてもよい。
また、上記の各実施形態及び変形例では、保持部81に集光レンズ90が保持される構成を例に取って説明したが、これ以外の光学部材が保持部81に保持されるようにしてもよい。例えば、入射光の光路を変更する光路変更部材、例えば、コリメートレンズ等であってもよいし、単純に平板状の石英ガラス等であってもよい。また、入射光のうち一部の波長の光を透過する光学フィルターであってもよい。これに限られず、他の種類の光学部材が保持部81に保持されるようにしてもよい。上記の各実施形態や変形例に示す位置調整機構に光学部材が搭載された光学装置100によれば、光学装置100に入射された入射光を所定の位置に正しく導波することができる。
また、集光レンズ90は、受光面がXY平面と交差するように保持部81に保持されていてもよい。XY平面と平行な方向から入射した光が光学装置100外の所定の位置に集光される。また、入射した光を反射するミラーを保持部81に実装してもよい。この場合、反射面がXY平面と平行となるようにミラーを配置してもよいし、反射面がXY平面と交差するようにミラーを配置してもよい。
また、上記の各実施形態及び変形例では、第1及び第2アクチュエータ30,40として熱式アクチュエータを使用したが、別の構造であってもよい。例えば、第1アクチュエータ30及び第2アクチュエータ40の少なくとも一方を圧電方式としてもよいし、あるいは、静電容量方式としてもよい。また、第1アクチュエータ30と第2アクチュエータ40の駆動方式が異なっていてもよい。熱式アクチュエータを使用することで、第1及び第2アクチュエータ30,40の構造が簡素化されるとともに、高い駆動力を得ることができる。
また、第1シリコン層210、絶縁層220及び第2シリコン層230の厚さは、実施形態1に示した値に限られず、位置調整機構10~14の要求仕様等に応じて適宜変更されうる。例えば、第1シリコン層210が10μm以下の厚さであってもよいし、絶縁層220が1μm層以下の厚さ、例えば、0.5μm程度であってもよい。
また、第1~第4バネ部51,62,71,72のX方向及びY方向の長さや折り返し回数、あるいは幅等も、位置調整機構10~14の要求仕様や保持部81に保持される光学部材の重量等に応じて適宜変更されうる。例えば、第1~第4バネ部51,62,71,72が折り返し構造を有していなくてもよい。第1バネ部51のX方向の曲げ剛性がY方向の曲げ剛性よりも高くなるように構成されていればよく、また、第2バネ部62のY方向の曲げ剛性がX方向の曲げ剛性よりも高くなるように構成されていればよい。第3及び第4バネ部71,72を含む支持部70はX方向及びY方向にそれぞれ変形可能な弾性体であればよく、かつ、支持部70のZ方向の曲げ剛性が、X方向の曲げ剛性及びY方向の曲げ剛性よりも高くなるように構成されていればよい。また、第3バネ部71のY方向の曲げ剛性がX方向の曲げ剛性よりも高くなるように構成されていればよい。また、第4バネ部72のX方向の曲げ剛性がY方向の曲げ剛性よりも高くなるように構成されていればよい。