I.定義
用語は、以下に別段の定義がない限り、当技術分野で一般的に使用されるように本明細書で使用される。
本明細書で使用される場合、抗原結合ドメインなどに関する「第1」、「第2」又は「第3」という用語は、各タイプの部分が2つ以上存在するときに区別の便宜のために使用される。これらの用語の使用は、そのように明示的に示されていない限り、部分の特定の順序又は向きを与えることを意図していない。しかしながら、概して、本明細書ではHLA-A2/MAGE-A4に結合する抗原結合ドメインを「第1の抗原結合ドメイン」と(そしてHLA-A2/MAGE-A4に結合するさらなる抗原結合ドメインが存在する場合,「第3の抗原結合ドメイン」と)呼び、第2の抗原に結合する抗原結合ドメインを本明細書で「第2の抗原結合ドメイン」と呼ぶ。
用語「抗HLA-A2/MAGE-A4抗体」及び「HLA-A2/MAGE-A4に結合する抗体」は、HLA-A2/MAGE-A4を標的とする診断剤及び/又は治療剤として有用であるために十分な親和性でHLA-A2/MAGE-A4に結合することのできる抗体を指す。一態様において、無関係な非HLA-A2/MAGE-A4タンパク質に対する抗HLA-A2/MAGE-A4抗体の結合度は、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定したとき、HLA-A2/MAGE-A4に対する抗体の結合の約10%未満である。一部の態様では、HLA-A2/MAGE-A4に結合する抗体は、≦1μM、≦500nM、≦200nM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、又は≦0.1nMの解離定数(KD)を有する。
「特異的に結合する」とは、その結合が抗原選択性であり、望ましくない相互作用又は非特異的な相互作用とは判別することができることを意味する。本発明の抗体の特異性を決定するための適切なアッセイは、本明細書では、例えば後述の実施例9に記載されている。一形態では、無関係なタンパク質に対する抗体の結合度は、例えばSPRによって測定される抗原に対する抗体の結合の約10%未満である。
「抗体」という用語は、本明細書では最も広い意味で使用され、限定されるものではないが、それらが所望の抗原結合活性を呈する限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び抗体断片を含めた、様々な抗体構造を包含する。
「抗体断片」は、インタクト抗体が結合する抗原に結合するインタクト抗体の一部を含むインタクト抗体以外の分子を指す。抗体断片の例として、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、ダイアボディ、線状抗体、一本鎖抗体分子(例えばscFv及びscFab)、単一ドメイン抗体、及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。特定の抗体断片の総説としては、Hollinger and Hudson,Nature Biotechnology 23:1126-1136(2005)を参照されたい。
「完全長抗体」、「インタクト抗体」及び「全抗体」という用語は、ネイティブ抗体構造に実質的に類似した構造を有する抗体を指すために、本明細書で互換可能に用いられる。
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書で使用される場合、実質的に均一な抗体の集合から得られる抗体を指し、即ち、集合に含まれる個々の抗体は、同一である及び/又は同じエピトープに結合するが、但し、例えば、天然に存在する変異又はモノクローナル抗体調製物の製造中に生じる変異を含む、可能なバリアント抗体は含まれず、このようなバリアントは一般的に少量で存在する。一般に異なる決定基(エピトープ)を対象とする異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、1つの抗原上の単一の決定基を対象とする。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の生成を必要とするものと解釈すべきではない。例えば、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組み換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法、例えば、本明細書に記載のモノクローナル抗体を作製するためのそのような方法及び他の例示的な方法を含むが、これらに限定されない多様な技術によって作製されうる。
「単離された」抗体は、その自然環境の構成成分から分離された抗体である。いくつかの態様では、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフィー(例えば、イオン交換又は逆相HPLC、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー)方法によって決定したとき、純度95%又は99%を超えるまで精製される。抗体純度の評価のための方法の総説については、例えば、Flatman et al.,J. Chromatogr. B 848:79-87(2007)を参照されたい。いくつかの態様では、本発明により提供される抗体は、単離抗体である。
「キメラ」抗体という用語は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の供給源又は種に由来し、重鎖及び/又は軽鎖の残りの部分が異なる供給源又は種に由来する抗体を指す。
「ヒト化」抗体は、非ヒトCDR由来のアミノ酸残基、及びヒトFR由来のアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。一部の態様では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインのすべてを実質的に含み、そのドメイン中ではCDRのすべて又は実質的にすべてが非ヒト抗体のCDRに対応し、FRのすべて又は実質的にすべてがヒト抗体のFRに対応する。このような可変ドメインは、本明細書では「ヒト化可変領域」と呼ばれる。ヒト化抗体は、任意選択的に、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含んでいてもよい。いくつかの態様では、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性又は親和性を回復又は改善するために、非ヒト抗体(例えば、CDR残基が由来する抗体)からの対応する残基で置換される。抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、ヒト化を受けた抗体を指す。
「ヒト抗体」は、ヒト若しくはヒト細胞によって生成されるか、又はヒト抗体のレパートリー若しくは他のヒト抗体コード配列を利用する非ヒト源から誘導される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するものである。このヒト抗体の定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特定的に除外する。一部の態様では、ヒト抗体は、非ヒトトランスジェニック哺乳動物、例えば、マウス、ラット、又はウサギに由来する。一部の態様では、ヒト抗体は、ハイブリドーマ細胞株に由来する。ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体又は抗体断片も、本発明のヒト抗体又はヒト抗体断片であると考えられる。
用語「抗原結合ドメイン」は、ある抗原の一部又は全部に結合し、且つある抗原の一部又はすべてに相補的な領域を含む抗体の一部を指す。抗原結合ドメインは、例えば、1つ又は複数の抗体可変ドメイン(抗体可変領域とも呼ばれる)によって与えられてもよい。好ましい態様では、抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)と抗体重鎖可変ドメイン(VH)とを含む。
用語「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の抗原への結合に関与する抗体重鎖又は軽鎖のドメインを指す。ネイティブ抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれVH及びVL)は、一般に同様の構造を有し、それぞれのドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と相補性決定領域(CDR)とを含む。例えば、Kindt et al.,Kuby Immunology、6th ed.,W.H. Freeman & Co.,page 91(2007)を参照されたい。単一のVH又はVLドメインは、抗原結合特異性を付与するために十分でありうる。さらに、特定の抗原に結合する抗体は、抗原に結合する抗体由来のVH又はVLドメインを使用してそれぞれ相補的VL又はVHドメインのライブラリーをスクリーニングして単離してもよい。例えば、Portolano et al.,J. Immunol. 150:880-887(1993);Clarkson et al.,Nature 352:624-628(1991)を参照されたい。可変領域配列と組み合わせて本明細書で使用される場合、「Kabat番号付け」は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed. Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)によって記載される番号付けシステムを指す。
本明細書で使用される場合、重鎖及び軽鎖のすべての定常領域及びドメインのアミノ酸位置は、本明細書では「Kabatによる番号付け」又は「Kabat番号付け」と呼ばれる、Kabat,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)に記載されるKabat番号付けシステムに従って番号付けされる。具体的には、Kabat番号付けシステム(Kabat,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)の647-660頁参照)を、カッパ及びラムダアイソタイプの軽鎖定常ドメインCLに使用し、Kabat EUインデックス番号付けシステム(661-723頁を参照)を、重鎖定常ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2及びCH3)に使用し、この場合には、「Kabat EUインデックスによる番号付け」又は「Kabat EUインデックス番号付け」と言及することによってさらに明確にしている。
本明細書で使用する場合、用語「超可変領域」又は「HVR」は、配列内で超可変であり、抗原結合特異性を決定する、抗体可変ドメインの領域、例えば「相補性決定領域」(CDR)の各々を指す。通常、抗体は6個のCDR、即ちVHに3個(HCDR1、HCDR2、HCDR3)、VLに3個(LCDR1、LCDR2、LCDR3)を含む。本明細書における例示的なCDRとしては、
(a)アミノ酸残基26-32(L1)、50-52(L2)、91-96(L3)、26-32(H1)、53-55(H2)及び96-101(H3)に生じる超可変ループ(Chothia and Lesk,J. Mol. Biol. 196:901-917(1987));
(b)アミノ酸残基24-34(L1)、50-56(L2)、89-97(L3)、31-35b(H1)、50-65(H2)及び95-102(H3)に生じるCDR(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed. Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991));並びに
(c)アミノ酸残基27c-36(L1)、46-55(L2)、89-96(L3)、30-35b(H1)、47-58(H2)及び93-101(H3)に生じる抗原接触(MacCallum et al. J. Mol. Biol. 262:732-745(1996))
が挙げられる。
別段の指示がない限り、CDRは、上記Kabat et al.に従い決定される。当業者は、CDRの表記は、上記Chothia、上記McCallum、又は、任意の他の科学的に認可された命名システムに従い決定することができることを理解するであろう。
「フレームワーク」又は「FR」は、相補性決定領域(CDR)以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、通常、FR1、FR2、FR3及びFR4の4つのFRドメインからなる。したがって、HVR配列及びFR配列は、通常VH(又はVL)中で以下の順序で現れる:FR1-HCDR1(LCDR1)-FR2-HCDR2(LCDR2)-FR3-HCDR3(LCDR3)-FR4。
別段の指示がない限り、CDR残基及び可変ドメイン内の他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書では上記のKabat et al.に従って番号付けされる。
本明細書の目的のために、「アクセプターヒトフレームワーク」は、以下に定義されるように、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク由来の軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワーク又は重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク「由来の」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含んでいてもよいか、又はアミノ酸配列の変更を含んでいてもよい。いくつかの態様では、アミノ酸変更の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、又は2以下である。いくつかの態様では、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列又はヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列が同一である。
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選択において、最も一般的に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。通常、ヒト免疫グロブリンVL又はVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループから行われる。通常、配列のサブグループは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91-3242,Bethesda MD(1991),vols. 1-3にあるようなサブグループである。
用語「免疫グロブリン分子」は、天然に存在する抗体の構造を有するタンパク質を指す。例えば、IgGクラスの免疫グロブリンは、約150,000ダルトンのヘテロテトラマー糖タンパク質であり、ジスルフィド結合した2つの軽鎖と2つの重鎖から構成される。N末端からC末端に向かって、各重鎖は、可変重鎖ドメイン又は重鎖可変領域とも呼ばれる可変ドメイン(VH)と、それに続く重鎖定常領域とも呼ばれる3つの定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)とを有する。同様に、N末端からC末端に向かって、各軽鎖は、可変軽鎖ドメイン又は軽鎖可変領域とも呼ばれる可変ドメイン(VL)と、それに続く軽鎖定常領域とも呼ばれる定常軽鎖(CL)ドメインとを有する。免疫グロブリンの重鎖は、α(IgA)、δ(IgD)、ε(IgE)、γ(IgG)又はμ(IgM)と呼ばれる5種類のうちの1つに割り当てられ、このうちのいくつかは、例えばγ1(IgG1)、γ2(IgG2)、γ3(IgG3)、γ4(IgG4)、α1(IgA1)及びα2(IgA2)などのサブタイプにさらに分けることができる。免疫グロブリンの軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2種類のうちの1つに割り当てることができる。免疫グロブリンは、本質的に、免疫グロブリンヒンジ領域を介して接続する2つのFab分子と1つのFcドメインからなる。
抗体又は免疫グロブリンの「クラス」は、抗体又は免疫グロブリンの重鎖が保有する定常ドメイン又は定常領域の種類を指す。抗体の5つの主要なクラス、即ち:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのうちの複数は、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2にさらに分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
「Fab分子」は、免疫グロブリンの重鎖(「Fab重鎖」)のVHドメイン及びCH1ドメインと、免疫グロブリンの軽鎖(「Fab軽鎖」)のVLドメイン及びCLドメインとからなるタンパク質を指す。
「クロスオーバー」Fab分子(「Crossfab」とも呼ばれる)は、Fab重鎖と軽鎖の可変ドメイン又は定常ドメインが交換された(即ち、互いにより置き換えられた)Fab分子を意味し、即ち、クロスオーバーFab分子は、軽鎖可変ドメインVL及び重鎖定常ドメイン1 CH1(VL-CH1、N末端からC末端方向に)で構成されるペプチド鎖と、重鎖可変ドメインVH及び軽鎖定常ドメインCL(VH-CL、N末端からC末端方向に)で構成されるペプチド鎖とを含む。明確性のために、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメインが交換されているクロスオーバーFab分子において、重鎖定常ドメイン1 CH1を含むペプチド鎖は、本明細書では(クロスオーバー)Fab分子の「重鎖」と呼ばれる。逆に、Fab軽鎖とFab重鎖の定常ドメインが交換されているクロスオーバーFab分子において、重鎖可変ドメインVHを含むペプチド鎖は、本明細書では(クロスオーバー)Fab分子の「重鎖」と呼ばれる。
これとは対照的に、「従来の」Fab分子は、その天然のフォーマットのFab分子、即ち、重鎖可変ドメイン及び定常ドメインで構成される重鎖(VH-CH1、N末端からC末端方向に)と、軽鎖可変ドメイン及び定常ドメインで構成される軽鎖(VL-CL、N末端からC末端方向に)とを含むFab分子を意味する。
「Fcドメイン」又は「Fc領域」という用語は、本明細書では、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を規定するために使用される。この用語は、ネイティブ配列Fc領域と変異Fc領域とを含む。一態様では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、又はPro230から、重鎖のカルボキシル末端まで延びる。しかしながら、宿主細胞によって産生される抗体は、重鎖のC末端から1つ又は複数の、特に1つ又は2つのアミノ酸の翻訳後開裂を受けてもよい。したがって、完全長重鎖をコードする特定の核酸分子の発現によって、宿主細胞によって産生する抗体は、完全長重鎖を含んでいてもよいか、又は全長重鎖の開裂したバリアントを含んでいてもよい。これは、重鎖の最終的な2つのC末端アミノ酸がグリシン(G446)及びリジン(K447、Kabat EUインデックスによる番号付け)である場合でありうる。したがって、Fc領域のC末端リジン(Lys447)、又はC末端グリシン(Gly446)及びリジン(Lys447)が存在してもよく、又は存在していなくてもよい。Fc領域(又は本明細書に定義されるFcドメインのサブユニット)を含む重鎖のアミノ酸配列は、別段の指示がない場合、本明細書ではC末端グリシン-リジンジペプチドを含まないもが示される。一態様では、本発明による抗体に含まれる、本明細書に明記されるFc領域(サブユニット)を含む重鎖は、さらなるC末端グリシン-リジンジペプチド(G446及びK447、Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む。一態様では、本発明による抗体に含まれる、本明細書に明記されるFc領域(サブユニット)を含む重鎖は、さらなるC末端グリシン残基(G446、Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む。本明細書で別段の指定がない限り、Fc領域又は定常領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed. Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991(上記も参照)に記載される、EU番号付けシステム(EUインデックスとも呼ばれる)に従う。Fcドメインの「サブユニット」は、本明細書で使用される場合、二量体Fcドメインを形成する2つのポリペプチドのうちの1つ、即ち、安定した自己会合が可能な、免疫グロブリン重鎖のC末端定常領域を含むポリペプチドを指す。例えば、IgG Fcドメインのサブユニットは、IgG CH2及びIgG CH3定常ドメインを含む。
「融合した」が意味するのは、構成要素(例えばFab分子及びFcドメインサブユニット)が、ペプチド結合によって直接的に又は1つ若しくは複数のペプチドリンカーを介して連結されていることである。
「多重特異性」という用語は、抗体が、少なくとも2つの別個の抗原決定基に特異的に結合することができることを意味する。多重特異性抗体は、例えば、二重特異性抗体でありうる。典型的には、二重特異性抗体は、2つの抗原結合部位を含み、それらの各々が異なる抗原決定基に対して特異的である。一部の態様では、多重特異性(例えば二重特異性)抗体は、2つの抗原決定基、特に、2つの別個の細胞で発現する2つの抗原決定基に同時に結合することができる。
用語「価数」は、本明細書で使用される場合、抗原結合分子内の特定数の抗原結合部位の存在を示す。したがって、用語「抗原に対する一価の結合」は、抗原結合分子内の抗原に特異的な1つ(及び1つを超えない)抗原結合部位の存在を示す。
「抗原結合部位」は、抗原との相互作用を与える抗原結合分子の部位、即ち1つ又は複数のアミノ酸残基を指す。例えば、抗体の抗原結合部位は、相補性決定領域(CDR)からのアミノ酸残基を含む。ネイティブ免疫グロブリン分子は、典型的には、2つの抗原結合部位を含み、Fab分子は、典型的には、1つの抗原結合部位を有する。
本明細書で使用される場合、「抗原決定基」又は「抗原」という用語は、抗原結合ドメイン-抗原複合体を形成する、抗原結合ドメインが結合するポリペプチド高分子上の部位(例えば、アミノ酸の連続伸長部又は異なる領域の非連続アミノ酸から構成される配座構成)を指す。有用な抗原決定基は、例えば、腫瘍細胞の表面上に、ウイルス感染した細胞の表面上に、他の疾患細胞の表面上に、免疫細胞の表面上に、血清中で遊離して、及び/又は細胞外マトリックス(ECM)内に認めることができる。好ましい態様では、抗原はヒトタンパク質である。
本明細書で使用される「T細胞活性化抗原」は、抗原結合分子との相互作用によりT細胞の活性化を誘導することのできる、Tリンパ球、特に細胞傷害性Tリンパ球の表面上に発現される抗原決定基を指す。具体的には、抗原結合分子のT細胞活性化抗原との相互作用は、T細胞受容体複合体のシグナル伝達のカスケードをトリガーすることによりT細胞活性化を誘導することができる。特定の態様では、T細胞活性化抗原は、CD3、特にCD3のイプシロンサブユニットである。
「CD3」は、別段の指示がない限り、霊長類(例えばヒト)、非ヒト霊長類(例えばカニクイザル)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物供給源由来の任意のネイティブCD3を指す。この用語は、「完全長」の、未処理CD3、及び、細胞内での処理によりもたらされる任意の形態のCD3を包含する。この用語は、CD3の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子バリアントも包含する。一態様では、CD3は、ヒトCD3、特にヒトCD3のイプシロンサブユニット(CD3ε)である。ヒトCD3εのアミノ酸配列は、配列番号76(シグナルペプチドを有しない)に示される。また、UniProt(www.uniprot.org)寄託番号P07766(バージョン189)、又はNCBI(www.ncbi.nlm.nih.gov/)RefSeq NP_000724.1を参照されたい。別の態様では、CD3は、カニクイザル(Macaca fascicularis)CD3、特にカニクイザルCD3εである。カニクイザルCD3εのアミノ酸配列は、配列番号77(シグナルペプチドを有しない)に示される。また、NCBI GenBank番号BAB71849.1を参照されたい。一部の態様では、本発明の抗体は、異なる種由来のCD3抗原、特にヒトCD3及びカニクイザルCD3の中に保存されているCD3のエピトープに結合する。好ましい態様では、抗体は、ヒトCD3に結合する。
「標的細胞抗原」は、本明細書で使用される場合、標的細胞、例えば、がん細胞又は(「腫瘍細胞抗原」の場合)腫瘍間質細胞といった腫瘍内の細胞の表面に提示された抗原決定基を意味する。本発明によれば、標的細胞抗原は、HLA-A2/MAGE-A4、特にHLA-A2/MAGE-A4p230-239である。
「MAGE-A4」は、がん精巣抗原(CTA)のMAGEファミリーのメンバーである「黒色腫関連抗原4」を表す。タンパク質のMAGE-Aファミリーは、Xq26-28でクラスター化された、保存ドメイン(MAGE相同性ドメイン、MHD)の存在を特徴とする12の高度に相同性の遺伝子を包含する。ヒトMAGE-A4は、UniProt(www.uniprot.org)寄託番号P43358(入力バージョン163)に記載されており、ヒトMAGE-A4のアミノ酸配列は本明細書の配列番号74にも示されている。本明細書で使用されるMAGE-A4は、別段の指示がない限り、霊長類(例えばヒト)、非ヒト霊長類(例えばカニクイザル)及び齧歯類(例えばマウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物供給源由来の任意のネイティブMAGE-A4を指す。この用語は、「完全長」の、未処理MAGE-A4、及び、細胞内での処理によりもたらされる任意の形態のMAGE-A4を包含する。この用語は、MAGE-A4の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子バリアントも包含する。一態様において、MAGE-A4は、ヒトMAGE-A4、特に配列番号74のタンパク質である。
「MAGE-A4p230-239」又は「p230-239ペプチド」が意味するのは、アミノ酸配列GVYDGREHTV(配列番号73;配列番号74のMAGE-A4タンパク質の位置230-239)を有するペプチド由来のMAGE-A4である。
「HLA-A2」、「HLA-A*02」、「HLA-A02」、又は「HLA-A*2」(互換可能に使用される)は、HLA-Aセロタイプ群のヒト白血球抗原セロタイプを指す。HLA-A2タンパク質(それぞれのHLA遺伝子によりコードされた)は、それぞれのクラスI MHC(主要組織適合複合体)タンパク質のα鎖を構成し、これはβ2ミクログロブリンサブユニットをさらに含む。特異的なHLA-A2タンパク質は、HLA-A201(HLA-A0201、HLA-A02.01、又はHLA-A*02:01とも呼ばれる)である。特定の態様では、本明細書に記載のHLA-A2タンパク質はHLA-A201である。
「HLA-A2/MAGE-A4」は、HLA-A2分子と、MAGE-A4から得られるペプチド(本明細書では「MAGE-A4ペプチド」とも呼ぶ)、具体的にはp230-239ペプチド(「HLA-A2/MAGE-A4p230-239」)の複合体を指す。
「親和性」は、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合相手(例えば、抗原)との間の、合計の非共有性相互作用の強度を指す。特に明記しない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、結合対(例えば、抗体と抗原)のメンバー間の1:1相互作用を反映する特異的結合親和性を指す。分子Xの、そのパートナーYに対する親和性は一般に、解離定数(KD)によって表し得る。親和性は、本明細書に説明するものを含め、当技術分野で公知の十分に確立された方法によって測定することができる。親和性を測定するための好ましい方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)である。
「親和性成熟」抗体とは、変化を有しない親抗体と比較して、1つ又は複数の相補性決定領域(CDR)において1つ又は複数の変化を有し、かかる改変によって抗原に対する抗体の親和性を改善する、抗体を指す。
「結合の低減」、例えば、Fc受容体に対する結合の低減は、例えば、SPRによって測定される場合、それぞれの相互作用についての親和性の低下を指す。明確性のために、この用語は、親和性がゼロ(又は分析方法の検出限界を下回る)まで低減すること、即ち、相互作用が完全に失われることも含む。逆に、「結合の増加」は、それぞれの相互作用に対する結合親和性の増加を指す。
本明細書で使用する「T細胞活性化」は、増殖、分化、サイトカイン分泌、細胞傷害性エフェクター分子の放出、細胞傷害性活性、及び活性化マーカーの発現から選択される、Tリンパ球、特に細胞傷害性Tリンパ球の1つ又は複数の細胞応答を指す。T細胞活性化を測定するために適したアッセイは、本技術分野で既知であり、本明細書に記載されている。
「Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの会合を促進する修飾」は、ホモ二量体を形成するためのFcドメインサブユニットを含むペプチドと同一のポリペプチドとの会合を低減又は防止する、ペプチド骨格の操作又はFcドメインサブユニットの翻訳後修飾である。会合を促進する修飾は、本明細書で使用される場合、好ましくは、会合することが望ましい2つのFcドメインサブユニット(即ち、Fcドメインの第1及び第2のサブユニット)の各々に対して行われる別個の改変を含み、この修飾は、2つのFcドメインサブユニットの会合を促進するために互いに相補性である。例えば、会合を促進する修飾は、それぞれ立体的又は静電的に好ましい会合を行うために、Fcドメインサブユニットの一方又は両方の構造又は電荷を変えてもよい。したがって、(ヘテロ)二量体化は、第1のFcドメインサブユニットを含むポリペプチドと、第2のFcドメインサブユニットを含むポリペプチドとの間で起こり、サブユニットの各々に融合するさらなる構成要素(例えば抗原結合ドメイン)が同じではないという意味で、同一ではなくてもよい。いくつかの態様では、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの会合を促進する修飾は、Fcドメイン内のアミノ酸変異、具体的にはアミノ酸置換を含む。好ましい態様では、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの会合を促進する修飾は、Fcドメインの2つのサブユニットの各々における別個のアミノ酸変異、具体的にはアミノ酸置換を含む。
「エフェクター機能」という用語は、抗体のFc領域に帰属可能な生体活性を指し、抗体アイソタイプによって変わる。抗体エフェクター機能の例としては、以下のものが挙げられる:C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、サイトカイン分泌、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性抗原取り込み、細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)の下方制御、及びB細胞活性化。
「活性化Fc受容体」は、抗体のFcドメインによる係合の後に、エフェクター機能を発揮するために受容体を含む細胞を刺激するシグナル伝達事象を誘発するFc受容体である。ヒト活性化Fc受容体としては、FcγRIIIa(CD16a)、FcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32)及びFcαRI(CD89)が挙げられる。
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)は、免疫エフェクター細胞による、抗体で被覆された標的細胞の溶解を引き起こす免疫機構である。標的細胞は、Fc領域を含む抗体又はその誘導体が、通常はFc領域に対してN末端であるタンパク質部分を介して、特異的に結合する細胞である。本明細書で使用される用語「ADCCの低減」は、上記に定義されたADCCの機序により、標的細胞を取り囲む培地中の抗体の所与の濃度において、所与の時間内に溶解する標的細胞の数の低減、及び/又はADCCの機序により、所与の時間内における所与の数の標的細胞の溶解を達成するために必要な、標的細胞を取り囲む培地中の抗体の濃度の上昇と定義される。ADCCの低減は、同じ標準の生成、精製、調合、及び貯蔵の方法(当業者に既知の)を使用して同種の宿主細胞により生成されたが操作されていない、同じ抗体により媒介されるADCCに対するものである。例えば、そのFcドメインに、ADCCを低下させるアミノ酸置換を含む抗体によって媒介されるADCCの低下は、Fcドメイン中にこのアミノ酸置換を含まない同じ抗体によって媒介されるADCCに対するものである。ADCCを測定するために適したアッセイは、当技術分野で周知である(例えば、国際公開第2006/082515号又は国際公開第2012/130831号を参照)。
本明細書で使用される用語「操作する」、「操作された」、「操作すること」は、天然に存在するポリペプチド又は組み換えポリペプチド又はこれらの断片のペプチド骨格の何らかの操作又は翻訳後修飾を含むと考えられる。操作することは、アミノ酸配列の修飾、グリコシル化パターンの修飾、又は個々のアミノ酸の側鎖基の修飾、及びこれらのアプローチの組み合わせを含む。
「アミノ酸変異」という用語は、本明細書で使用される場合、アミノ酸の置換、欠失、挿入及び修飾を包含することを意味している。置換、欠失、挿入及び修飾の任意の組み合わせは、最終構築物が、所望の特徴、例えば、Fc受容体に対する結合の低減、又は別のペプチドとの会合の増加を有する限り、最終構築物に到達するように行うことができる。アミノ酸配列の欠失及び挿入は、アミノ末端及び/又はカルボキシ末端のアミノ酸の欠失及び挿入を含む。好ましいアミノ酸変異はアミノ酸置換である。例えば、Fc領域の結合特性を変更する目的のために、非保存的アミノ酸置換、即ち、1つのアミノ酸を、構造特性及び/又は化学特性が異なる別のアミノ酸と置き換えることが特に好ましい。アミノ酸の置換には、非天然アミノ酸による置き換え、又は20の標準的なアミノ酸の天然に存在するアミノ酸誘導体(例えば、4-ヒドロキシプロリン、3-メチルヒスチジン、オルニチン、ホモセリン、5-ヒドロキシリジン)による置き換えが含まれる。アミノ酸変異は、当技術分野で周知の遺伝的方法又は化学的方法を使用して生じさせることができる。遺伝的方法には、特定部位の突然変異誘発、PCR、遺伝子合成などが含まれ得る。遺伝子工学以外の方法によってアミノ酸の側鎖基を変更する方法、例えば化学修飾も有用でありうると考慮される。同じアミノ酸変異を示すために、本明細書で様々な名称を使用することができる。例えば、Fcドメインの位置329のプロリンからグリシンへの置換は、329G、G329、G329、P329G又はPro329Glyと示すことができる。
基準となるポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、配列同一性最大パーセントが得られるように、配列をアライメントし、必要に応じてギャップを導入した後に、いかなる保存的置換も配列同一性の部分として考慮せずに、基準となるポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である、候補配列におけるアミノ酸残基の割合として定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するためのアラインメントは、当技術分野の技術の範囲内にある種々の様式で、例えば、公的に入手可能なコンピュータソフトウェア、例えば、BLAST、BLAST-2、Clustal W、Megalign(DNASTAR)ソフトウェア又はFASTAプログラムパッケージを用いて達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するのに必要とされる任意のアルゴリズムを含め、配列を整列させるために適切なパラメータを決定することができる。或いは、同一性パーセントの値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成することができる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.によって作成されたものであり、ソースコードは、U.S.Copyright Office(Washington D.C.,20559)のユーザドキュメンテーションにファイルされており、U.S.Copyright Registration No.TXU510087の下に登録されており、かつ、国際公開第2001/007611号に記載されている。
別段の指定がない限り、本明細書での目的のために、アミノ酸配列同一性%の値は、FASTAパッケージバージョン36.3.8cのggsearchプログラムを使用するか、又はその後にBLOSUM50比較マトリックスを用いて生成される。FASTAプログラムパッケージは、W.R.Pearson及びD.J.Lipman(“Improved Tools for Biological Sequence Analysis”、PNAS 85(1988)2444-2448),W. R. Pearson(“Effective protein sequence comparison” Meth. Enzymol. 266(1996)227- 258)、及びPearson et. al.(Genomics 46(1997)24-36)により作成されたものであり、www.fasta.bioch.virginia.edu/fasta_www2/fasta_down.shtml or www.ebi.ac.uk/Tools/sss/fastaから公的に入手可能である。代替的に、fasta.bioch.virginia.edu/fasta_www2/index.cgiでアクセス可能な公的なサーバーを使用して、ggsearch(global protein:protein)プログラム及びデフォルトオプション(BLOSUM50;オープン:-10;ext:-2;Ktup=2)を使用して、ローカルではなくグローバルのアラインメントを確実に行い、配列を比較することができる。アミノ酸同一性パーセントは、アウトプットアラインメントヘッダーで与えられる。
「ポリヌクレオチド」又は「核酸分子」という用語は、ヌクレオチドのポリマーを含む任意の化合物及び/又は物質を含む。各ヌクレオチドは、塩基、具体的には、プリン塩基又はピリミジン塩基(即ち、シトシン(C)、グアニン(G)、アデニン(A)、チミン(T)又はウラシル(U))、糖(即ちデオキシリボース又はリボース)、及びリン酸基で構成される。多くの場合、核酸分子は塩基配列によって記載され、それにより、前記塩基は、核酸分子の一次構造(線状構造)を表す。塩基の配列は、典型的には、5’~3’へと表される。本明細書では、核酸分子という用語は、例えば、相補性DNA(cDNA)及びゲノムDNA、リボ核酸(RNA)、特にメッセンジャーRNA(mRNA)、DNA又はRNAの合成形態、及びこれらの分子の2つ以上を含む混合ポリマーを含む、デオキシリボ核酸(DNA)を包含する。核酸分子は、線状又は環状でありうる。これに加えて、核酸分子という用語は、センス鎖及びアンチセンス鎖、並びに一本鎖形態及び二本鎖形態の両方を含む。さらに、本明細書に記載される核酸分子は、天然に存在するヌクレオチド又は天然に存在しないヌクレオチドを含みうる。誘導体化された糖又はホスフェート骨格結合又は化学修飾された残基を含む、天然に存在しないヌクレオチドの例として、修飾されたヌクレオチド塩基が挙げられる。核酸分子は、例えば、宿主又は患者において、インビトロ及び/又はインビボで本発明の抗体の直接的な発現のためのベクターとして適したDNA分子及びRNA分子も包含する。そのようなDNA(例えば、cDNA)又はRNA(例えば、mRNA)ベクターは、修飾されていなくてもよく、又は修飾されていてもよい。例えば、mRNAは、RNAベクターの安定性及び/又はコードされた分子の発現を増強するために化学修飾することができ、その結果、mRNAを対象に注射して、インビボで抗体を生成することができる(例えば、Stadler et al.(2017)Nature Medicine 23:815-817、又はEP2 101 823号B1を参照されたい)。
「単離された」核酸分子は、その自然環境の構成要素から分離された核酸分子を指す。単離された核酸分子には、通常核酸分子を含む細胞内に含まれる核酸分子が含まれるが、この核酸分子は、染色体外に存在するか、又はその本来の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
「抗体をコードする単離ポリヌクレオチド(又は核酸)」は、抗体の重鎖及び軽鎖(又はその断片)をコードする1つ又は複数のポリヌクレオチド分子を指し、単一のベクター又は別個のベクターにおいて、このようなポリヌクレオチド分子(複数可)が宿主細胞の1つ又は複数の位置に存在するこのようなポリヌクレオチド分子(複数可)を含む。
用語「ベクター」は、本明細書で使用される場合、連結している別の核酸を増殖することのできる核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、及びベクターが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれるベクターを含む。一部のベクターは、動作可能に連結された核酸の発現を指示することができる。そのようなベクターを、本明細書では「発現ベクター」と呼ぶ。
「宿主細胞」、「宿主細胞株」及び「宿主細胞培養」という用語は、互換的に使用され、外因性核酸が導入された細胞を指し、そのような細胞の子孫を含む。宿主細胞には、「形質転換体」及び「形質転換細胞」が含まれ、これらには、初代形質転換細胞及び継代の数に関わらず宿主細胞に由来する子孫が含まれる。子孫は、親細胞と核酸含有量の点で完全に同一でない場合があるが、変異を含んでもよい。元の形質転換細胞においてスクリーニング又は選択されたものと同じ機能又は生物活性を有する変異体の子孫は本明細書に含まれる。宿主細胞は、本発明の抗体を生成するために使用可能な任意の種類の細胞系である。宿主細胞としては、培養細胞、例えば、哺乳動物培養細胞、例えば、数例を挙げると、HEK細胞、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞又はハイブリドーマ細胞、酵母細胞、昆虫細胞及び植物細胞が挙げられるが、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物又は培養植物又は動物組織に含まれる細胞も含まれる。一態様では、本発明の宿主細胞は、真核細胞、特に哺乳動物細胞である。一態様では、宿主細胞は、ヒト身体中の細胞ではない。
「医薬組成物」又は「薬学的製剤」という用語は、調製物の中に含有される有効成分の生物活性が有効になるような形態であり、組成物が投与されるであろう対象にとって許容できない有毒を有する追加の成分を何も含有しない調製物を指す。
「薬学的に許容される担体」は、有効成分以外の医薬組成物又は製剤中の成分であって、対象にとって非毒性である成分を指す。薬学的に許容される担体には、緩衝剤、賦形剤、安定剤、又は防腐剤が含まれるが、これらに限定されない。
本明細書で使用される場合、「治療(treatment)」(及びその文法的な変化形、例えば、「治療する(treat)」又は「治療すること」(treating))は、治療される個体において疾患の本来の経過を変える試行における臨床的介入を指し、予防のために、又は臨床病理の経過の間に行うことができる。治療の所望の効果としては、疾患の発症又は再発を予防すること、症状の軽減、疾患の任意の直接的又は間接的な病理学的結果の減弱、転移を予防すること、疾患進行速度を低下させること、病状の寛解又は緩和、及び回復又は改善された予後が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様では、本発明の抗体は、疾患の発症を遅延させるために、又は疾患の進行を遅らせるために使用される。
「個体」又は「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物としては、限定されないが、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト及びサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、齧歯類(例えば、マウス及びラット)が挙げられる。一部の態様では、個体又は対象は、ヒトである。
薬剤、例えば、医薬組成物の「有効量」は、所望の治療結果又は予防結果を達成するために必要な投与量及び期間において有効な量を指す。
「添付文書」という用語は、治療製品の市販パッケージに通常含まれる指示を指すために用いられ、そのような治療製品の使用に関して適応症、使用、投薬量、投与、併用療法、禁忌及び/又は警告についての情報を含む。
II.組成物及び方法
本発明は、HLA-A2/MAGE-A4及び第2の抗原に結合する多重特異性抗体を含む、HLA-A2/MAGE-A4に結合する抗体を提供する。この(多重特異性)抗体は、例えば有効性及び安全性、薬物動態、並びに生産可能性に関して、治療的用途のための他の好ましい特性との組み合わせで、良好な親和性と顕著な特異性を示す。本発明の抗体は、例えば、がんなどの疾患の治療に有用である。
A.抗HLA-A2/MAGE-A4抗体
一態様では、本発明は、HLA-A2/MAGE-A4に結合する抗体を提供する。一態様では、HLA-A2/MAGE-A4に結合する単離抗体が提供される。一態様では、本発明は、HLA-A2/MAGE-A4に特異的に結合する抗体を提供する。
一態様において、本発明は、HLA-A2/MAGE-A4に結合する抗体を提供し、抗体は、
(i)配列番号25の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号26のHCDR2、及び配列番号27のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号28の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号29のLCDR2及び配列番号30のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL);
(ii)配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号3のHCDR3を含むVHと、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2及び配列番号6のLCDR3を含むVL;
(iii)配列番号41のHCDR1、配列番号42のHCDR2、及び配列番号43のHCDR3を含むVHと、配列番号44のLCDR1、配列番号45のLCDR2及び配列番号46のLCDR3を含むVL;
(iv)配列番号9のHCDR1、配列番号10のHCDR2、及び配列番号11のHCDR3を含むVHと、配列番号12のLCDR1、配列番号13のLCDR2及び配列番号14のLCDR3を含むVL;
(v)配列番号17のHCDR1、配列番号18のHCDR2、及び配列番号19のHCDR3を含むVHと、配列番号20のLCDR1、配列番号21のLCDR2及び配列番号22のLCDR3を含むVL;又は
(vi)配列番号33のHCDR1、配列番号34のHCDR2、及び配列番号35のHCDR3を含むVHと、配列番号36のLCDR1、配列番号37のLCDR2及び配列番号38のLCDR3を含むVL
を含む第1の抗原結合ドメインを含む。
一態様では、本発明は、HLA-A2/MAGE-A4に結合する抗体を提供し、抗体は、配列番号25の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号26のHCDR2、及び配列番号27のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号28の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号29のLCDR2、及び配列番号30のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む第1の抗原結合ドメインを含む。
一態様では、抗体は、ヒト化抗体である。一態様では、抗原結合ドメインは、ヒト化抗原結合ドメイン(即ちヒト化抗体の抗原結合ドメイン)である。一態様では、VH及び/又はVLは、ヒト化可変領域である。
一態様では、VH及び/又はVLは、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークを含む。
一態様では、抗体は、ヒト抗体である。一態様では、抗原結合ドメインは、ヒト化抗原結合ドメイン(即ちヒト化抗体の抗原結合ドメイン)である。一態様では、VH及び/又はVLは、ヒト可変領域である。
一態様において、VHは、配列番号7、配列番号15、配列番号23、配列番号31、配列番号39及び配列番号47からなる群から選択される重鎖可変領域配列、特に配列番号31の重鎖可変領域配列の1つ又は複数の重鎖フレームワーク配列(即ちFR1、FR2、FR3及び/又はFR4配列)を含む。一態様において、VHは、配列番号7、配列番号15、配列番号23、配列番号31、配列番号39及び配列番号47からなる群から選択されるアミノ酸配列、特に配列番号31のアミノ酸配列と、少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含む。一態様において、VHは、配列番号7、配列番号15、配列番号23、配列番号31、配列番号39及び配列番号47からなる群から選択されるアミノ酸配列、特に配列番号31のアミノ酸配列と、少なくとも約95%同一であるアミノ酸配列を含む。一態様において、VHは、配列番号7、配列番号15、配列番号23、配列番号31、配列番号39及び配列番号47からなる群から選択されるアミノ酸配列、特に配列番号31のアミノ酸配列と、少なくとも約98%同一であるアミノ酸配列を含む。一部の態様において、少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%の同一性を有するVH配列は、基準配列と比べて、置換(例えば、保存的置換)、挿入又は欠失を含有するが、その配列を含む抗体はHLA-A2/MAGE-A4に結合する能力を保持する。一部の態様では、合計1~10個のアミノ酸が、配列番号7、配列番号15、配列番号23、配列番号31、配列番号39又は配列番号47のアミノ酸配列内で、置換されている、挿入されている、及び/又は欠失している。一部の態様では、置換、挿入、又は欠失は、CDRの外側の領域で(即ち、FRで)生じる。一態様において、VHは、配列番号7、配列番号15、配列番号23、配列番号31、配列番号39及び配列番号47からなる群から選択されるアミノ酸配列、特に配列番号31のアミノ酸配列を含む。任意選択的に、VHは、配列番号7、配列番号15、配列番号23、配列番号31、配列番号39及び配列番号47からなる群から選択されるアミノ酸配列、特に配列番号31のアミノ酸配列を含み、それにはその配列の翻訳後修飾が含まれる。
一態様において、VLは、配列番号8、配列番号16、配列番号24、配列番号32、配列番号40及び配列番号48からなる群から選択される軽鎖可変領域配列、特に配列番号32の軽鎖可変領域配列の1つ又は複数の軽鎖フレームワーク配列(即ちFR1、FR2、FR3及び/又はFR4配列)を含む。一態様において、VLは、配列番号8、配列番号16、配列番号24、配列番号32、配列番号40及び配列番号48からなる群から選択されるアミノ酸配列、特に配列番号32のアミノ酸配列と、少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含む。一態様において、VLは、配列番号8、配列番号16、配列番号24、配列番号32、配列番号40及び配列番号48からなる群から選択されるアミノ酸配列、特に配列番号32のアミノ酸配列と、少なくとも約95%同一であるアミノ酸配列を含む。一態様において、VLは、配列番号8、配列番号16、配列番号24、配列番号32、配列番号40及び配列番号48からなる群から選択されるアミノ酸配列、特に配列番号32のアミノ酸配列と、少なくとも約98%同一であるアミノ酸配列を含む。一部の態様において、少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%の同一性を有するVL配列は、基準配列と比べて、置換(例えば、保存的置換)、挿入又は欠失を含有するが、その配列を含む抗体はHLA-A2/MAGE-A4に結合する能力を保持する。一部の態様では、合計1~10個のアミノ酸が、配列番号8、配列番号16、配列番号24、配列番号32、配列番号40又は配列番号48のアミノ酸配列内で、置換されている、挿入されている、及び/又は欠失している。一部の態様では、置換、挿入、又は欠失は、CDRの外側の領域で(即ち、FRで)生じる。一態様において、VLは、配列番号8、配列番号16、配列番号24、配列番号32、配列番号40及び配列番号48からなる群から選択されるアミノ酸配列、特に配列番号32のアミノ酸配列を含む。任意選択的に、VLは、配列番号8、配列番号16、配列番号24、配列番号32、配列番号40及び配列番号48からなる群から選択されるアミノ酸配列、特に配列番号32のアミノ酸配列を含み、それにはその配列の翻訳後修飾が含まれる。
一態様において、第1の抗原結合ドメインは、
(i)配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むVH、及び/又は配列番号32のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むVL;
(ii)配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むVH、及び/又は配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むVL;
(iii)配列番号47のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むVH、及び/又は配列番号48のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むVL;
(iv)配列番号15のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むVH、及び/又は配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むVL;
(v)配列番号23のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むVH、及び/又は配列番号24のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むVL;又は
(vi)配列番号39のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むVH、及び/又は配列番号40のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むVL
を含む。
一態様において、第1の抗原結合ドメインは、
(i)配列番号31のアミノ酸配列を含むVH、及び/又は配列番号32のアミノ酸配列を含むVL;
(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むVH、及び/又は配列番号8のアミノ酸配列を含むVL;
(iii)配列番号47のアミノ酸配列を含むVH、及び/又は配列番号48のアミノ酸配列を含むVL;
(iv)配列番号15のアミノ酸配列を含むVH、及び/又は配列番号16のアミノ酸配列を含むVL;
(v)配列番号23のアミノ酸配列を含むVH、及び/又は配列番号24のアミノ酸配列を含むVL;
(vi)配列番号39のアミノ酸配列を含むVH、及び/又は配列番号40のアミノ酸配列を含むVL
を含む第1の抗原結合ドメインを含む。
一態様では、第1の抗原結合ドメインは、配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一であえるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号32のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。一形態では、第1の抗原結合ドメインは、配列番号31のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号32のアミノ酸配列を含むVLとを含む。
さらなる態様では、本発明は、HLA-A2/MAGE-A4に結合する抗体を提供し、抗体は、
(i)配列番号31のアミノ酸配列を含むVH、及び/又は配列番号32のアミノ酸配列を含むVL;
(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むVH、及び/又は配列番号8のアミノ酸配列を含むVL;
(iii)配列番号47のアミノ酸配列を含むVH、及び/又は配列番号48のアミノ酸配列を含むVL;
(iv)配列番号15のアミノ酸配列を含むVH、及び/又は配列番号16のアミノ酸配列を含むVL;
(v)配列番号23のアミノ酸配列を含むVH、及び/又は配列番号24のアミノ酸配列を含むVL;
(vi)配列番号39のアミノ酸配列を含むVH、及び/又は配列番号40のアミノ酸配列を含むVL
を含む第1の抗原結合ドメインを含む。
一態様では、本発明は、HLA-A2/MAGE-A4に結合する抗体を提供し、抗体は、配列番号31のアミノ酸配列を含むVHと配列番号32のアミノ酸配列を含むVLとを含む第1の抗原結合ドメインを含む。
別の態様では、本発明は、HLA-A2/MAGE-A4に結合する抗体を提供し、抗体は、
(i)配列番号31のVHの重鎖CDR配列を含むVHと、配列番号32のVLの軽鎖CDR配列を含むVL;
(ii)配列番号7のVHの重鎖CDR配列を含むVHと、配列番号8のVLの軽鎖CDR配列を含むVL;
(iii)配列番号47のVHの重鎖CDR配列を含むVHと、配列番号48のVLの軽鎖CDR配列を含むVL;
(iv)配列番号15のVHの重鎖CDR配列を含むVHと、配列番号16のVLの軽鎖CDR配列を含むVL;
(v)配列番号23のVHの重鎖CDR配列を含むVHと、配列番号24のVLの軽鎖CDR配列を含むVL;又は
(vi)配列番号39のVHの重鎖CDR配列を含むVHと、配列番号40のVLの軽鎖CDR配列を含むVL
を含む第1の抗原結合ドメインを含む。
一態様では、本発明は、HLA-A2/MAGE-A4に結合する抗体を提供し、抗体は、配列番号31のVHの重鎖CDR配列を含むVH及び配列番号32のVLの軽鎖CDR配列を含むVLを含む第1の抗原結合ドメインを含む。
さらなる態様では、第1の抗原結合ドメインは、
(i)配列番号31のVHのHCDR1、HCDR2及びHCDR3のアミノ酸配列と、配列番号32のVLのLCDR1、LCDR2及びLCDR3のアミノ酸配列;
(ii)配列番号7のVHのHCDR1、HCDR2及びHCDR3のアミノ酸配列と、配列番号8のVLのLCDR1、LCDR2及びLCDR3のアミノ酸配列;
(iii)配列番号47のVHのHCDR1、HCDR2及びHCDR3のアミノ酸配列と、配列番号48のVLのLCDR1、LCDR2及びLCDR3のアミノ酸配列;
(iv)配列番号15のVHのHCDR1、HCDR2及びHCDR3のアミノ酸配列と、配列番号16のVLのLCDR1、LCDR2及びLCDR3のアミノ酸配列;
(v)配列番号23のVHのHCDR1、HCDR2及びHCDR3のアミノ酸配列と、配列番号24のVLのLCDR1、LCDR2及びLCDR3のアミノ酸配列;
(vi)配列番号39のVHのHCDR1、HCDR2及びHCDR3のアミノ酸配列と、配列番号40のVLのLCDR1、LCDR2及びLCDR3のアミノ酸配列
を含む。
一態様では、第1の抗原結合ドメインは、配列番号31のVHのHCDR1、HCDR2及びHCDR3アミノ酸配列と、配列番号32のVLのLCDR1、LCDR2及びLCDR3アミノ酸配列とを含む。
一態様において、第1の抗原結合ドメインは、
(i)配列番号31のVHの重鎖CDR配列と、配列番号31のVHのフレームワーク配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%、特に少なくとも95%又は少なくとも98%の配列同一性のフレームワークとを含むVH、及び/又は配列番号32のVLの軽鎖CDR配列と、配列番号32のVLのフレームワーク配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%、特に少なくとも95%又は少なくとも98%の配列同一性のフレームワークとを含むVL;
(i)配列番号7のVHの重鎖CDR配列と、配列番号7のVHのフレームワーク配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%、特に少なくとも95%又は少なくとも98%の配列同一性のフレームワークとを含むVH、及び/又は配列番号8のVLの軽鎖CDR配列と、配列番号8のVLのフレームワーク配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%、特に少なくとも95%又は少なくとも98%の配列同一性のフレームワークとを含むVL;
(i)配列番号47のVHの重鎖CDR配列と、配列番号47のVHのフレームワーク配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%、特に少なくとも95%又は少なくとも98%の配列同一性のフレームワークとを含むVH、及び/又は配列番号48のVLの軽鎖CDR配列と、配列番号48のVLのフレームワーク配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%、特に少なくとも95%又は少なくとも98%の配列同一性のフレームワークとを含むVL;
(i)配列番号15のVHの重鎖CDR配列と、配列番号15のVHのフレームワーク配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%、特に少なくとも95%又は少なくとも98%の配列同一性のフレームワークとを含むVH、及び/又は配列番号16のVLの軽鎖CDR配列と、配列番号16のVLのフレームワーク配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%、特に少なくとも95%又は少なくとも98%の配列同一性のフレームワークとを含むVL;
(i)配列番号23のVHの重鎖CDR配列と、配列番号23のVHのフレームワーク配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%、特に少なくとも95%又は少なくとも98%の配列同一性のフレームワークとを含むVH、及び/又は配列番号24のVLの軽鎖CDR配列と、配列番号24のVLのフレームワーク配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%、特に少なくとも95%又は少なくとも98%の配列同一性のフレームワークとを含むVL;又は
(i)配列番号39のVHの重鎖CDR配列と、配列番号39のVHのフレームワーク配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%、特に少なくとも95%又は少なくとも98%の配列同一性のフレームワークとを含むVH、及び/又は配列番号40のVLの軽鎖CDR配列と、配列番号40のVLのフレームワーク配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%、特に少なくとも95%又は少なくとも98%の配列同一性のフレームワークとを含むVL
を含む。
一態様では、VHは、配列番号31のVHの重鎖CDR配列と、配列番号31のVHのフレームワーク配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性のフレームワークとを含む。一態様において、VHは、配列番号31のVHの重鎖CDR配列と、配列番号31のVHのフレームワーク配列と少なくとも95%の配列同一性のフレームワークとを含む。別の態様において、VHは、配列番号31のVHの重鎖CDR配列と、配列番号31のVHのフレームワーク配列と少なくとも98%の配列同一性のフレームワークとを含む。
一態様では、VLは、配列番号32のVLの軽鎖CDR配列と、配列番号32のVLのフレームワーク配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性のフレームワークとを含む。一態様において、VLは、配列番号32のVLの軽鎖CDR配列と、配列番号32のVLのフレームワーク配列と少なくとも95%の配列同一性のフレームワークとを含む。別の態様において、VLは、配列番号32のVLの軽鎖CDR配列と、配列番号32のVLのフレームワーク配列と少なくとも98%の配列同一性のフレームワークとを含む。
一態様では、本発明は、HLA-A2/MAGE-A4に結合する抗体を提供し、抗体は、上記に提供した態様のいずれかのVH配列及び上記に提供した態様のいずれかのVL配列を含む第1の抗原結合ドメインを含む。
一態様では、抗体は、ヒト定常領域を含む。一態様では、抗体は、ヒト定常領域を含む免疫グロブリン分子、特にヒトCH1、CH2、CH3及び/又はCLドメインを含むIgGクラス免疫グロブリン分子である。ヒト定常ドメインの例示的な配列は、配列番号79及び80(それぞれ、ヒトカッパ及びラムダCLドメイン)、並びに配列番号81(ヒトIgG1重鎖定常ドメインCH1-CH2-CH3)で与えられる。一態様では、抗体は、配列番号79又は配列番号80のアミノ酸配列、特に配列番号79のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。一態様では、抗体は、配列番号81のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。特に、重鎖定常領域は、本明細書に記載のFcドメインにおけるアミノ酸変異を含んでもよい。
一態様では、第1の抗原結合ドメインは、ヒト定常領域を含む。一態様では、第1の抗原結合部分は、ヒト定常領域、特にヒトCH1及び/又はCLドメインを含むFab分子である。一態様では、第1の抗原結合ドメインは、配列番号79又は配列番号80のアミノ酸配列、特に配列番号79のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。特に、軽鎖定常領域は、「電荷修飾」の状態で本明細書に記載のアミノ酸変異を含んでいてもよい、及び/又は、クロスオーバーFab分子での場合、1つ又は複数の(特に2つの)N末端アミノ酸の欠失又は置換を含んでいてもよい。いくつかの態様では、第1の抗原結合ドメインは、配列番号81のアミノ酸配列に含まれるCH1ドメイン配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。特に、重鎖定常領域(具体的にはCH1ドメイン)は、「電荷修飾」状態において本明細書に記載のアミノ酸変異を含んでいてもよい。
一態様では、抗体は、モノクローナル抗体である。
一態様では、抗体は、IgG、特にIgG1抗体である。一態様では、抗体は、完全長抗体である。
別の態様では、抗体は、Fv分子、scFv分子、Fab分子、及びF(ab’)2分子の群から選択される抗体断片、特にFab分子である。別の態様では、抗体断片は、ダイアボディ、トリアボディ、又はテトラボディである。
一態様では、第1の抗原結合ドメインは、Fab分子である。好ましい態様では、第1の抗原結合ドメインは、従来のFab分子である。代替的な態様では、第1の抗原結合部分は、Fab軽鎖とFab重鎖の、可変ドメインVLとVH又は定常ドメインCLとCH1、特に可変ドメインVLとVHが、互いによって置き換えられているFab分子である(即ち第1の抗原結合ドメインはクロスオーバーFab分子である)。
さらなる態様では、上記態様のうちのいずれかによる抗体は、以下のセクションII.A.1.-10に記載される特徴のうちのいずれかを、単独で又は組み合わせで組み込んでもよい。
好ましい態様では、抗体は、Fcドメイン、特にIgG Fcドメイン、さらに詳細にはIgG1 Fcドメインを含む。一態様では、Fcドメインは、ヒトFcドメインである。一態様では、Fcドメインは、ヒトIgG1 Fcドメインである。Fcドメインは、第1及び第2のサブユニットから構成され、Fcドメインバリアントに関連して本明細書の以下(セクションII.A.10.)に記載される特徴のうちのいずれかを、単独で又は組み合わせて組み込んでもよい。
別の好ましい態様では、抗体は、第2の抗原に結合する第2の抗原結合ドメインを含む(即ち、抗体は、本明細書の以下(セクションII.A.9.)にさらに記載される多重特異性抗体である)。
1.抗体断片
一部の態様では、本明細書に提供される抗体は、抗体断片である。
一態様では、抗体断片は、Fab分子、Fab’分子、Fab’-SH分子、又はF(ab’)2分子であり、特に本明細書に記載のFab分子である。「Fab’分子」は、抗体ヒンジ領域から1つ又は複数のシステインを含むCH1ドメインのカルボキシ末端における残基の付加だけ、Fab分子とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を保持するFab’分子である。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位(2つのFab分子)と、Fc領域の一部とを有するF(ab’)2分子が得られる。
別の態様では、抗体断片は、ダイアボディ、トリアボディ、又はテトラボディである。ダイアボディは、二価又は二重特異性でありうる2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、EP 404,097;国際公開第1993/01161号;Hudson et al.,Nat. Med. 9:129-134(2003);及びHollinger et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448(1993)を参照されたい。トリアボディ及びテトラボディはまた、Hudson et al.,Nat. Med. 9:129-134(2003)にも記載がある。
さらなる態様では、抗体断片は、一本鎖Fab分子である。「一本鎖Fab分子」又は「scFab」は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)、抗体重鎖定常ドメイン1(CH1)、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、抗体軽鎖定常ドメイン(CL)、及びリンカーからなるポリペプチドであり、前記抗体ドメイン及び前記リンカーは、N末端からC末端への方向において、以下の順序:a)VH-CH1-リンカー-VL-CL、b)VL-CL-リンカー-VH-CH1、c)VH-CL-リンカー-VL-CH1、又はd)VL-CH1-リンカー-VH-CLのうちの1つを有する。特に、前記リンカーは、少なくとも30個のアミノ酸、好ましくは32~50個のアミノ酸のポリペプチドである。一本鎖Fab分子は、CLドメインとCH1ドメインとの間の天然ジスルフィド結合によって安定化される。加えて、これらの一本鎖Fab分子は、システイン残基の挿入(例えば、Kabat番号付けによれば、可変重鎖の44位及び可変軽鎖の100位)による鎖間ジスルフィド結合の生成によって、さらに安定化されるだろう。
別の態様では、抗体断片は一本鎖可変断片(scFv)である。「一本鎖可変断片」又は「scFv」は、リンカーにより接続された、抗体の重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変ドメインの融合タンパク質である。特に、リンカーは、10~25個のアミノ酸の短いポリペプチドであり、通常、柔軟性のためにグリシンが、かつ、溶解性のためにセリン又はトレオニンが豊富であり、VHのN末端をVLのC末端に、又はこの逆に、接続することができる。このタンパク質は、定常領域が取り除かれ、リンカーが導入されているにもかかわらず、元の抗体の特異性を保持する。scFv断片の総説としては、例えば、Pluckthun,in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol. 113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag、New York),pp. 269-315(1994)を参照;国際公開第93/16185号;並びに米国特許第5,571,894号及び同第5,587,458号も参照されたい。
別の態様では、抗体断片は単一ドメイン抗体である。「単一ドメイン抗体」は、抗体の重鎖可変ドメインの全部若しくは一部、又は軽鎖可変ドメインの全部若しくは一部を含む抗体断片である。一部の態様において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA;例えば、米国特許第6,248,516B1号を参照のこと)。
抗体断片は、限定されないが、本明細書に記載される、インタクト抗体のタンパク質分解による消化、及び組み換え宿主細胞(例えば、大腸菌)による組み換え産生を含む種々の技術によって作製することができる。
2.ヒト化抗体
一部の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、ヒトに対する免疫原性を低減させる一方で、親の非ヒト抗体の特異性及び親和性を保持するようにヒト化される。通常、ヒト化抗体は、CDR(又はその一部)が非ヒト抗体に由来する1つ又は複数の可変ドメインを含み、FR(又はその一部)はヒト抗体配列に由来する。ヒト化抗体はまた、任意選択的に、ヒト定常領域の少なくとも一部を含む。いくつかの態様では、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性又は親和性を回復又は改善するために、非ヒト抗体(例えば、CDR残基が由来する抗体)からの対応する残基で置換される。
ヒト化された抗体及びその作製方法については、例えば、Almagro and Fransson,Front. Biosci. 13:1619-1633(2008)に総説があり、さらに例えば、Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988);Queen et al.,Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 86:10029-10033(1989);米国特許第5、821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、及び同第7,087,409号;Kashmiri et al.,Methods 36:25-34(2005)(特異性決定領域(SDR)グラフトについて記載);Padlan,Mol. Immunol. 28:489-498(1991)(「リサーフェシング」について記載);Dall’Acqua et al.,Methods 36:43-60(2005)(「FRシャッフル」について記載);並びにOsbourn et al.,Methods 36:61-68(2005)及びKlimka et al.,Br. J. Cancer,83:252-260(2000)(FRシャッフルの「ガイド付き選択」アプローチについて記載)に記載がある。
ヒト化のために使用されうるヒトフレームワーク領域としては、限定されないが、「ベストフィット」法を使用して選択されたフレームワーク領域(例えば、Sims et al. J. Immunol. 151:2296(1993)を参照)、軽鎖又は重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89:4285(1992);及びPresta et al. J. Immunol.,151:2623(1993)を参照)、ヒト成熟(体細胞性変異)フレームワーク領域又はヒト生殖細胞フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front. Biosci. 13:1619-1633(2008)を参照)、並びにFRライブラリーのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J. Biol. Chem. 272:10678-10684(1997)and Rosok et al.,J. Biol. Chem. 271:22611-22618(1996)を参照)が挙げられる。
3.ヒト抗体
一部の態様では、本明細書に提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当技術分野で既知の様々な技術を使用して生成することができる。ヒト抗体は、一般に、van Dijk and van de Winkel,Curr. Opin. Pharmacol. 5:368-74(2001)及びLonberg,Curr. Opin. Immunol. 20:450-459(2008)に記載されている。
ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答して、インタクトなヒト抗体又はヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように修飾されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって調製することができる。このような動物は、典型的には、内因性免疫グロブリン遺伝子座を置き換えるか、又は染色体外に存在するか若しくは動物の染色体にランダムに統合されるヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含む。そのようなトランスジェニックマウスでは、内因性免疫グロブリン遺伝子座は、通常不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の概説については、Lonberg、Nat. Biotech. 23:1117-1125(2005)を参照のこと。また、例えば、XENOMOUSETM技術を記載する米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号;HUMAB(登録商標)技術を記載する米国特許第5,770,429号;K-M MOUSE(登録商標)技術を記載する米国特許第7,041,870号;及び、VELOCIMOUSE(登録商標)技術を記載する米国特許出願公開第2007/0061900号も参照されたい。このような動物によって生成されたインタクトな抗体からのヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによって、さらに修飾されてもよい。
また、ヒト抗体は、ハイブリドーマを用いた方法で作製することができる。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫細胞株及びマウス-ヒト異種骨髄腫細胞株が記載されている。(例えば、Kozbor J. Immunol.,133:3001(1984);Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp. 51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987);及びBoerner et al.,J. Immunol.,147:86(1991)を参照。)ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されるヒト抗体は、Li et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,103:3557-3562(2006)にも記載されている。さらなる方法としては、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の生成について記載)及びNi,Xiandai Mianyixue,26(4):265-268(2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマについて記載)に記載されるものが挙げられる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)は、Vollmers and Brandlein,Histology and Histopathology,20(3):927-937(2005)及びVollmers and Brandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185-91(2005)にも記載されている。
ヒト抗体はまた、ヒト由来のファージディスプレイライブラリーから選択される可変ドメイン配列を単離することによって生成することができる。次いで、そのような可変ドメイン配列は、所望のヒト定常ドメインと組み合わせることができる。抗体ライブラリーからヒト抗体を選択するための技術を、以下に記載する。
4.ライブラリー由来の抗体
一部の態様では、本明細書に提供される抗体はライブラリーから得られる。本発明の抗体は、1つ又は複数の所望の活性を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって単離されうる。コンビナトリアルライブラリーをスクリーニングするための方法は、例えば、Lerner et al. in Nature Reviews 16:498-508(2016)に総説がある。例えば、ファージディスプレイライブラリーを生成し、所望の結合特性を有する抗体についてそのようなライブラリーをスクリーニングするための様々な方法が当技術分野で知られている。このような方法は、例えば、Frenzel et al. in mAbs 8:1177-1194(2016);Bazan et al. in Human Vaccines and Immunotherapeutics 8:1817-1828(2012)及びZhao et al. in Critical Reviews in Biotechnology 36:276-289(2016)、並びにHoogenboom et al. in Methods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)及びMarks and Bradbury in Methods in Molecular Biology 248:161-175(Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ、2003)に総説がある。
一部のファージディスプレイ法において、VH遺伝子およびVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって個別にクローニングされ、ファージライブラリーにおいて無作為に組み換えられ、次いで、Winter et al. in Annual Review of Immunology 12:433-455(1994)に記載のように、抗原結合ファージについてスクリーニングすることができる。ファージは、典型的には、抗体断片を一本鎖Fv(scFv)断片又はFab断片としてディスプレイする。免疫源からのライブラリーは、ハイブリドーマを構築する必要なしに、免疫原に対する高親和性抗体を提供する。代替的に、Griffiths et al. in EMBO Journal 12:725-734(1993)によって記載されるように、ナイーブなレパートリーをクローン化し(例えば、ヒトから)、免疫化することなく、非自己及びさらには自己抗原の広範囲に対する単一の抗体源を得ることができる。最終的に、ナイーブライブラリーはまた、Hoogenboom and Winter in Journal of Molecular Biology 227:381-388(1992)により記載されるように、再整列していないV遺伝子セグメントを幹細胞からクローニングすること、およびランダム配列を含有するPCRプライマーを使用して、高度に可変性のCDR3領域をコードし、インビトロで再整列を達成することによって、合成により作製することができる。ヒト抗体ファージライブラリーについて記載する特許公報としては、例えば:米国特許第5,750,373号、同第7,985,840号、同第7,785,903号及び同第8,679,490号、並びに米国特許出願公開第2005/0079574号、同第2007/0117126号、同第2007/0237764号及び同第2007/0292936号が挙げられる。
1つ又は複数の所望の活性を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングするための当技術分野で知られている方法のさらなる例には、リボソーム及びmRNAディスプレイ、並びに細菌、哺乳動物細胞、昆虫細胞又は酵母細胞における抗体ディスプレイ及び選択のための方法が含まれる。酵母表面ディスプレイのための方法は、例えば、Scholler et al. in Methods in Molecular Biology 503:135-56(2012)及びCherf et al. in Methods in Molecular biology 1319:155-175(2015)並びにZhao et al. in Methods in Molecular Biology 889:73-84(2012)に概説がある。リボソームディスプレイのための方法は、例えば、He et al.Nucleic Acids Research 25:5132-5134(1997)and in Hanes et al、PNAS94:4937-4942(1997)に記載される。
ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体又は抗体断片は、本明細書ではヒト抗体又はヒト抗体断片とみなされる。
5.グリコシル化バリアント
一部の態様において、本明細書に提供される抗体は、抗体のグリコシル化の程度を増減させるために変更される。抗体に対するグリコシル化部位の付加又は欠失は、1つ又は複数のグリコシル化部位が生成又は除去されるようにアミノ酸配列を変更することにより簡便に達成されうる。
抗体がFc領域を含む場合、抗体に付着しているオリゴ糖を変更してもよい。哺乳動物細胞によって産生されるネイティブ抗体は、典型的には、通常Fc領域のCH2ドメインのAsn297へのN-連結によって結合された分岐した二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al. TIBTECH 15:26-32(1997)を参照されたい。オリゴ糖には、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、並びに二分岐型オリゴ糖構造の「幹」のGlcNAcに結合したフコースが含まれうる。いくつかの態様では、本発明の抗体中のオリゴ糖の修飾が、特定の改良された特性を有する抗体バリアントを生成するために行われてもよい。
一態様では、非フコシル化オリゴ糖、即ちFc領域へのフコース結合(直接又は間接)を欠くオリゴ糖構造を有する抗体バリアントが提供される。このような非フコシル化オリゴ糖(「アフコシル化」オリゴ糖とも呼ばれる)は特に、二分枝オリゴ糖構造の幹に第1のGlcNAcが結合したフコース残基を欠く、N結合オリゴ糖である。一態様では、内在性又は親抗体と比較して、Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の比率が増加した抗体バリアントを提供する。例えば、非フコシル化オリゴ糖の割合は、少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約60%、少なくとも約80%、又は場合によっては約100%(即ち、フコシル化オリゴ糖が存在しない)であってもよい。非フコシル化オリゴ糖の割合は、例えば、国際公開第2006/082515号に記載のMALDI-TOF質量分析法により測定した、Asn297に結合したすべてのオリゴ糖の合計(例えば、複合体、ハイブリッド、及びハイマンノース構造)に対する、フコース残基を欠くオリゴ糖の(平均)量である。Asn297は、Fc領域の約297位に位置するアスパラギン残基を指す(Fc領域残基のEU番号付け);しかしながら、Asn297は、抗体のマイナーな配列変化のために、位置297の上流又は下流、即ち位置294と300の間の約±3個のアミノ酸に位置していてもよい。Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の割合が増加したこのような抗体は、改善されたFcγRIIIa受容体結合、及び/又は改善されたエフェクター機能、特に改善されたADCC機能を有することができる。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号;同第2004/0093621号を参照されたい。
フコシル化が低下した抗体を産生可能な細胞株の例としては、タンパク質フコシル化が不足しているLec13CHO細胞(Ripka et al. Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545(1986);米国特許出願公開第2003/0157108号;及び国際公開第2004/056312号、特に実施例11)、及びノックアウト細胞株、例えばアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子のFUT8ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87:614-622(2004);Kanda,Y. et al.,Biotechnol. Bioeng.,94(4):680-688(2006);及び国際公開第2003/085107号を参照されたい)、又はGDP-フコース合成若しくはトランスポータータンパク質の活性が低下若しくは消滅した細胞(例えば、米国特許出願公開第2004259150号、同第2005031613号、同第2004132140号、同第2004110282号を参照されたい)が挙げられる。
さらなる態様では、抗体バリアントは、例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcにより二分されている二分されたオリゴ糖と共に提供される。そのような抗体バリアントは、上述のように、低下したフコシル化及び/又は改善されたADCC機能を有してもよい。そのような抗体バリアントの例は、例えば、Umana et al.,Nat Biotechnol 17,176-180(1999);Ferrara et al.,Biotechn Bioeng 93,851-861(2006);国際公開第99/54342号;同第2004/065540号、同第2003/011878号に記載されている。
Fc領域に付着したオリゴ糖に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体バリアントも提供される。このような抗体バリアントは、改善したCDCの機能を有しうる。このような抗体バリアントは、例えば、国際公開第1997/30087号、同第1998/58964号、及び同第1999/22764号に記載されている。
6.システイン操作抗体バリアント
一部の態様では、抗体の1つ又は複数の残基がシステイン残基で置換されているシステイン操作抗体、例えば、THIOMABTMを生成することが望ましい場合がある。好ましい態様では、置換された残基は、抗体のアクセス可能な部位で生じる。これらの残基をシステインで置換することにより、反応性チオール基は、それによって抗体のアクセス可能な部位に配置され、本明細書にさらに記載されるように、抗体を薬物部位又はリンカー-薬物部位といった他の部位にコンジュゲートしてイムノコンジュゲートを生成するために使用することができる。システイン操作抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号、同第8,30,930号、同第7,855,275号、同第9,000,130号、又は国際公開第2016040856号に記載のように生成することができる。
7.抗体誘導体
一部の態様では、本明細書で提供される抗体は、技術分野で既知であり、容易に入手可能な、さらなる非タンパク質性部分を含むようにさらに修飾されてもよい。抗体の誘導体化に適した部位としては、水溶性ポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、これらに限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールの共重合体、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマー)、及びデキストラン又はポリ(N-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレンオキサイド/エチレンオキサイドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、及びこれらの混合物が挙げられる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中での安定性のため、製造上の利点を有しうる。ポリマーは、任意の分子量であってよく、分岐していても、分岐していなくてもよい。抗体に付着しているポリマーの数は様々であってよくj、複数のポリマーが付着している場合、それらは同じ分子であっても、異なる分子であってもよい。一般に、誘導体化のために使用されるポリマーの数及び/又は種類は、限定するものではないが、改善される抗体の特定の特性又は機能、抗体誘導体が規定の条件下で治療に使用されるかどうかなどの考慮事項に基づいて決定することができる。
8.イムノコンジュゲート
本発明はまた、細胞傷害性薬剤、化学療法剤、薬物、成長阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、若しくは動物起源の酵素活性毒素、又はそれらの断片)、又は放射性同位体などの1つ又は複数の治療剤にコンジュゲート(化学的に結合)した本明細書の抗HLA-A2/MAGE-A4抗体を含む、イムノコンジュゲートを提供する。
一態様において、イムノコンジュゲートは、抗体が、前述の治療剤の1つ又は複数にコンジュゲートしている、抗体薬物コンジュゲート(ADC)である。抗体は、典型的には、リンカーを使用して、治療薬の1つ又は複数に接続される。治療剤及び治療薬及びリンカーの例を含む、ADC技術の概説は、Pharmacol Review 68:3-19(2016)に記載されている。
別の態様では、イムノコンジュゲートは、酵素活性毒素又はその断片にコンジュゲートした本発明の抗体を含み、これには、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、エキソトキシンA鎖(緑膿菌からのもの)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、シナアブラギリのタンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウのタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、ツルレイシ阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、並びにトリコテセンが含まれるが、これらに限定されない。
別の態様では、イムノコンジュゲートは、放射性原子にコンジュゲートして放射性抱合体を形成する、本発明の抗体を含む。様々な放射性同位体が放射性抱合体の製造のために利用可能である。例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位体が挙げられる。放射性抱合体が検出のために使用されるとき、その例には、シンチグラフィー研究のための放射性原子、例えば、Tc99m若しくはI123、又は核磁気共鳴(NMR)画像法(別名、磁気共鳴画像法、MRI)のための、I123、I131、In111、F19、C13、N15、O17、ガドリニウム、マンガン、若しくは鉄などのスピン標識が含まれうる。
抗体と細胞毒性剤とのコンジュゲートは、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジピミデートHClなど)、活性エステル(スベリン酸ジスクシンイミジルなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビスアジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミンなど)、ジイソシアネート(トルエン2,6-ジイソシアネートなど)、及び二活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼンなど)といった様々な二官能性タンパク質カップリング剤を用いて作製することができる。例えば、Vitetta et al.,Science 238:1098(1987)に記載されているように、リシン免疫トキシンを調製することができる。炭素14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA)は、抗体へのラジヌクレオチドのコンジュゲートのための例示的なキレート剤である。国際公開第94/11026号を参照のこと。リンカーは、細胞内での細胞傷害性薬物の放出を促進する「開裂性リンカー」であってもよい。例えば、酸-ラビリンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、フォトラビリンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカー(Chari et al.,Cancer Res. 52:127-131(1992);米国特許第5,208,020号)を使用することができる。
本明細書のイムノコンジュゲート又はADCは、市販されている(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL.,U.S.Aから)BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、並びにSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)を含むがこれらに限定されない架橋試薬を用いて調製されたコンジュゲートを明示的に想起するが、それに限定されない。
9.多重特異性抗体
一部の態様では、本明細書に提供される抗体は多重特異性抗体、特に、二重特異性抗体である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原決定基(例えば、2つの異なるタンパク質、又は同じタンパク質上の2つの異なるエピトープ)に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。一部の態様では、多重特異性抗体は、3つ以上の結合特異性を有する。一部の態様では、結合特異性のうちの一方はHLA-A2/MAGE-A4に対するものであり、他方は任意の他の抗原に対するものである。一部の態様では、多重特異性抗体は、HLA-A2/MAGE-A4の2つ(又はそれ以上)の異なるエピトープに結合しうる。多重特異性(例えば、二重特異性)抗体は、細胞傷害性薬剤又は細胞を、HLA-A2/MAGE-A4を発現する細胞に局在化するために使用することもできる。多重特異性抗体は、完全長抗体又は抗体断片として調製することができる。
多重特異性抗体を作製するための技術には、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組み換え共発現(Milstein and Cuello,Nature 305:537(1983)参照)及び「ノブ・イン・ホール」操作(例えば、米国特許第5,731,168号及びAtwell et al.,J. Mol. Biol. 270:26(1997)参照)が含まれるが、これらに限定されない。多重特異性抗体は、また、抗体Fcヘテロ二量体分子を作製するための静電ステアリング効果の操作(例えば、国際公開第2009/089004号参照);2つ以上の抗体若しくは断片の架橋(例えば、米国特許第4,676,980号及びBrennan et al.,Science,229:81(1985)参照);ロイシンジッパーを使用した二重特異性抗体の生成(例えば、Kostelny et al.,J. Immunol.,148(5):1547-1553(1992)及び国際公開第2011/034605号参照);軽鎖の誤対合問題を回避するための一般的な軽鎖技術の使用(例えば、国際公開第98/50431号参照);二重特異性抗体断片を作製するための「ダイアボディ」技術の使用(例えば、Hollinger et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90:6444-6448(1993)参照);及び一本鎖Fv(sFv)二量体の使用(例えば、Gruber et al.,J. Immunol.,152:5368(1994)参照);並びに例えばTutt et al. J. Immunol. 147:60(1991)に記載されている三重特異性抗体の調製によって作製することができる。
例えば、「オクトパス(Octopus)抗体」を含む3つ以上の抗原結合部位を有する操作抗体、又はDVD-Igも本明細書に含まれる(例えば、国際公開第2001/77342号及び国際公開第2008/024715号を参照されたい)。3つ以上の抗原結合部位を有する多重特異性抗体の他の例は、国際公開第2010/115589号、国際公開第2010/112193号、国際公開第2010/136172号、国際公開第2010/145792号及び国際公開第2013/026831号に見出すことができる。多重特異性抗体又はその抗原結合断片は、CD3に、同様に別の異なる抗原に、又はCD3の2つの異なるエピトープに結合する抗原結合部位を含む「二重作用FAb」又は「DAF」も含む(例えば、米国特許出願公開第2008/0069820号及び国際公開第2015/095539号を参照されたい)。
多重特異性抗体は、同じ抗原特異性の1つ又は複数の結合アームにドメインクロスオーバーを有する非対称形態(いわゆる「クロスマブ(CrossMab)」技術)で、即ちVH/VLドメイン(例えば、国際公開第2009/080252号及び国際公開第2015/150447号参照)、CH1/CLドメイン(例えば、国際公開第2009/080253号参照)又は完全なFabアーム(例えば、国際公開第2009/080251号、同第2016/016299号参照、Schaefer et al,PNAS,108(2011)1187-1191、及びKlein at al.,MAbs 8(2016)1010-20)も参照)を交換することによっても提供されうる。非対称Fabアームは、荷電又は非荷電アミノ酸変異をドメインインターフェースに導入して正しいFabペアリングを指示することによって操作することもできる。例えば、国際公開第2016/172485号を参照。
多重特異性抗体の様々なさらなる分子フォーマットが当技術分野で知られており、本明細書に含まれる(例えば、Spiess et al.,Mol Immunol 67(2015)95-106参照)。
本明細書に同様に含まれる特定の種類の多重特異性抗体は、標的細胞、例えば腫瘍細胞上の表面抗原、及びT細胞受容体(TCR)複合体の活性化インバリアント構成成分、例えばT細胞を再標的化して標的細胞を死滅させるためのCD3に同時に結合するように設計された二重特異性抗体である。したがって、好ましい態様では、本明細書に提供される抗体は、結合特異性のうちの1つがHLA-A2/MAGE-A4に対するものであり、他がT細胞活性化抗原、特にCD3に対するものである、多重特異性抗体、特に二重特異性抗体である。
この目的のために有用でありうる二重特異性抗体フォーマットの例には、2つのscFv分子が柔軟なリンカーによって融合されている、いわゆる「BiTE」(二重特異性T細胞エンゲージャー(engager))分子(例えば、国際公開第2004/106381号、同第2005/061547号、同第2007/042261号及び同第2008/119567号、Nagorsen and Baeuerle,Exp Cell Res 317,1255-1260(2011)参照);ダイアボディ(Holliger et al.,Prot Eng 9,299-305(1996))及びその誘導体、例えばタンデムダイアボディ(「TandAb」;Kipriyanov et al.,J Mol Biol 293、41-56(1999));ダイアボディフォーマットに基づくが、安定化付加のためのC末端ジスルフィド架橋を特徴とする「DART」(二重親和性再標的化)分子(Johnson et al.,J Mol Biol 399,436-449(2010))、並びに全ハイブリッドマウス/ラットIgG分子であるいわゆるトリオマブ(triomab)(Seimetz et al.,Cancer Treat Rev 36、458-467(2010)に概説)が含まれるが、これらに限定されない。本明細書に含まれる具体的なT細胞二重特異性抗体フォーマットは、国際公開第2013/026833号、同第2013/026839号、同第2016/020309号;Bacac et al.,Oncoimmunology 5(8)(2016)e1203498に記載されている。
本発明の多重特異性抗体の好ましい態様を以下に記載する。
一態様において、本発明は、本明細書に記載の、HLA-A2/MAGE-A4に結合する第1の抗原結合ドメインを含み、第2の抗原 に結合する第2の抗原結合ドメイン(及び任意選択的に、HLA-A2/MAGE-A4に結合する第3の抗原結合ドメイン)を含む、HLA-A2/MAGE-A4に結合する抗体を提供する。
本発明の好ましい態様によれば、抗体に含まれる抗原結合ドメインはFab分子である(即ち、各々が可変ドメイン及び定常ドメインを含む、重鎖及び軽鎖から構成される抗原結合ドメインである)。一態様において、第1、第2及び/又は存在する場合は第3の抗原結合ドメインは、Fab分子である。一態様において、前記Fab分子は、ヒトのものである。別の態様では、前記Fab分子はヒト化のものである。また別の態様では、前記Fab分子は、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインを含む。
好ましくは、抗原結合ドメインの少なくとも1つは、クロスオーバーFab分子である。このような修飾は、異なるFab分子の重鎖と軽鎖の誤対合を低減し、それによって、組み換え生成における本発明の(多重特異性)抗体の収率及び純度を改善する。本発明の(多重特異性)抗体に有用な好ましいクロスオーバーFab分子では、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメイン(それぞれ、VL及びVH)が交換されている。しかしながら、このドメイン交換によっても、(多重特異性)抗体の調製は、誤対合重鎖及び軽鎖の間の、いわゆる、ベンス・ジョーンズ型相互作用に起因して、特定の副生成物を含むことがある(Schaefer et al,PNAS、108(2011)11187-11191を参照されたい)。本明細書にさらに記載されるように、異なるFab分子の重鎖及び軽鎖の誤対合をさらに減少させ、これにより望ましい(多重特異性)抗体の純度及び収率を上昇させるため、反対の電荷を有する荷電アミノ酸を、第1の抗原(HLA-A2/MAGE-A4)に結合するFab分子又は第2の抗原(例えばCD3)に結合するFab分子のCH1及びCLドメインにおける特定のアミノ酸位置に導入することができる。電荷修飾は、(多重特異性)抗体に含まれる従来のFab分子(複数可)(例えば、図1A~C、G~Jに示される)、又は(多重特異性)抗体に含まれるVH/VLクロスオーバーFab分子(例えば、図1D~F、K~Nに示される)において行われる(但し両方で行われることはない)。好ましい態様では、電荷修飾は、(多重特異性)抗体(好ましい態様では第1の抗原、即ちHLA-A2/MAGE-A4に結合する)に含まれる従来のFab分子(複数可)で行われる。
本発明による好ましい態様では、(多重特異性)抗体は、第1の抗原(即ちHLA-A2/MAGE-A4)と、第2の抗原(例えばCD3などのT細胞活性化抗原)とに同時結合することができる。一態様において、(多重特異性)抗体は、第2の抗原(例えばCD3などのT細胞活性化抗原)とHLA-A2/MAGE-A4への同時結合により、T細胞と標的細胞を架橋することができる。より好ましい態様では、そのような同時結合は、標的細胞、特に標的細胞抗原(例えばHLA-A2/MAGE-A4)発現腫瘍細胞の溶解を生じる。一態様では、そのような同時結合はT細胞の活性化を生じる。別の態様では、そのような同時結合は、増殖、分化、サイトカイン分泌、細胞傷害性エフェクター分子の放出、細胞傷害活性及び活性化マーカーの発現の群から選択されるTリンパ球、特に細胞傷害性Tリンパ球の細胞応答を生じる。一態様において、標的細胞抗原(即ちHLA-A2/MAGE-A4)への同時結合を伴わない(多重特異性)抗体の第2の抗原(例えばCD3などのT細胞活性化抗原)への結合は、T細胞活性化を生じない。
一態様において、(多重特異性)抗体は、T細胞の細胞傷害活性を標的細胞に向け直すことができる。好ましい態様において、前記向け直しは、標的細胞によるMHC媒介ペプチド抗原提示及び/又はT細胞の特異性と無関係である。
好ましくは、本発明のいずれかの態様によるT細胞は、細胞傷害性T細胞である。いくつかの態様では、T細胞は、CD4+又はCD8+T細胞、特にCD8+T細胞である。
a)第1(及び第3)の抗原結合ドメイン
本発明の(多重特異性)抗体は、HLA-A2/MAGE-A4に結合する少なくとも1つの抗原結合ドメイン(第1の抗原結合ドメイン)を含む。好ましい態様では、HLA-A2/MAGE-A4は、ヒトHLA-A2/MAGE-A4である。特定の態様では、HLA-A2/MAGE-A4は、HLA-A2/MAGE-A4p230-239である。
第1の抗原結合ドメインは、(多重特異性)抗体を標的部位へ、例えばHLA-A2/MAGE-A4を発現する特定の種類の腫瘍細胞へ向かわせることができる。
好ましい態様では、(多重特異性)抗体は、HLA-A2/MAGE-A4に結合する2つの抗原結合ドメインを含む。一態様において、(多重特異性)抗体は、HLA-A2/MAGE-A4に対する二価の結合を提供する。
一態様において、HLA-A2/MAGE-A4に結合する抗原結合ドメインは、Fv分子、scFv分子、Fab分子、及びF(ab’)2分子の群から選択される抗体断片である。好ましい態様において、HLA-A2/MAGE-A4に結合する抗原結合ドメインは、Fab分子である。
一部の態様において、(多重特異性)抗体は、HLA-A2/MAGE-A4に結合する2つの抗原結合ドメイン、特にFab分子を含む。特定の態様では、これらの抗原結合ドメインのすべては同一であり、即ち同じ分子フォーマット(例えば、従来又はクロスオーバーFab分子)を有し、(存在する場合)本明細書に記載されるCH1及びCLドメインに同じアミノ酸置換を含む同じアミノ酸配列を含む。一態様において、(多重特異性)抗体は、HLA-A2/MAGE-A4に結合する最大2つの抗原結合ドメイン、特にFab分子を含む。
好ましい態様では、HLA-A2/MAGE-A4に結合する抗原結合ドメイン(複数可)は、従来のFab分子である。このような態様において、第2の抗原に結合する抗原結合ドメインは、本明細書に記載されるクロスオーバーFab分子、即ち、Fab重鎖と軽鎖の可変ドメインVHとVL又は定常ドメインCH1とCLが交換されている/互いによって置き換えられているFab分子である。
代替的な態様では、HLA-A2/MAGE-A4に結合する抗原結合ドメイン(複数可)は、本明細書に記載されるクロスオーバーFab分子、即ち、Fab重鎖と軽鎖の可変ドメインVHとVL又は定常ドメインCH1とCLが交換されている/互いによって置き換えられているFab分子である。このような態様では、第2の抗原に結合する抗原結合ドメイン(複数可)は、従来のFab分子である。
一態様において、第1(及び存在する場合、第3)の抗原結合ドメインは、ヒト定常領域を含む。一態様において、第1(及び存在する場合、第3)の抗原結合ドメインは、ヒト定常領域、特にヒトCH1及び/又はCLドメインを含むFab分子である。ヒト定常ドメインの例示的な配列は、配列番号79及び80(それぞれ、ヒトカッパ及びラムダCLドメイン)、並びに配列番号81(ヒトIgG1重鎖定常ドメインCH1-CH2-CH3)で与えられる。一態様において、第1(及び存在する場合、第3)の抗原結合ドメインは、配列番号79又は配列番号80のアミノ酸配列、特に配列番号79のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。特に、軽鎖定常領域は、「電荷修飾」の状態で本明細書に記載のアミノ酸変異を含んでいてもよい、及び/又は、クロスオーバーFab分子での場合、1つ又は複数の(特に2つの)N末端アミノ酸の欠失又は置換を含んでいてもよい。いくつかの態様では、第1(及び存在する場合、第3)の抗原結合ドメインは、配列番号81のアミノ酸配列に含まれるCH1ドメイン配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。特に、重鎖定常領域(具体的にはCH1ドメイン)は、「電荷修飾」状態において本明細書に記載のアミノ酸変異を含んでいてもよい。
b)第2の抗原結合ドメイン
一部の態様では、本発明の(多重特異性)抗体は、第2の抗原に結合する少なくとも1つの抗原結合ドメイン、特にFab分子を含む。第2の抗原は、好ましくはHLA-A2/MAGE-A4でなく、即ちHLA-A2/MAGE-A4と異なる。一態様において、第2の抗原は、HLA-A2/MAGE-A4とは異なる細胞に発現される(例えば腫瘍細胞といった標的細胞以外の細胞に発現される)抗原である。一態様において、第2の抗原は、T細胞抗原、特にT細胞活性化抗原である。具体的な態様では、第2の抗原はCD3である。好ましい態様では、CD3はヒトCD3(配列番号76)又はカニクイザルCD3(配列番号77)、さらに詳細にはヒトCD3である。一態様において、第2の抗原結合ドメインは、ヒト及びカニクイザルCD3と交差反応性である(即ちそれらに特異的に結合する)。いくつかの態様では、CD3のサブユニット(CD3イプシロン)である。
好ましい態様では、(多重特異性)抗体は、第2の抗原(例えばCD3などのT細胞活性化抗原)に結合する1つを超えない抗原結合ドメインを含む。一態様において、(多重特異性)抗体は、第2の抗原(例えばCD3などのT細胞活性化抗原)に対する一価の結合を提供する。
一態様において、第2の抗原に結合する抗原結合ドメインは、Fv分子、scFv分子、Fab分子及びF(ab’)2分子の群から選択される抗体断片である。好ましい態様において、第2の抗原に結合する抗原結合ドメインはFab分子である。
好ましい態様では、第2の抗原(例えばCD3などのT細胞活性化抗原)に結合する抗原結合ドメインは、本明細書に記載されるクロスオーバーFab分子、即ち、Fab重鎖と軽鎖の可変ドメインVHとVL又は定常ドメインのCH1とCLが交換されている/互いによって置き換えらえているFab分子である。このような態様において、HLA-A2/MAGE-A4に結合する抗原結合ドメイン(複数可)は、好ましくは従来のFab分子である。(多重特異性)抗体に含まれるHLA-A2/MAGE-A4に結合する1つを超える抗原結合ドメイン、特にFab分子が存在する態様において、第2の抗原に結合する抗原結合ドメインは、好ましくはクロスオーバーFab分子であり、HLA-A2/MAGE-A4に結合する抗原結合ドメインは、従来のFab分子である。
代替的な態様では、第2の抗原(例えばCD3などのT細胞活性化抗原)に結合する抗原結合ドメインは、従来のFab分子である。このような態様では、HLA-A2/MAGE-A4に結合する抗原結合ドメイン(複数可)は、本明細書に記載されるクロスオーバーFab分子、即ち、Fab重鎖と軽鎖の可変ドメインVHとVL又は定常ドメインCH1とCLが交換されている/互いによって置き換えられているFab分子である。(多重特異性)抗体に含まれる第2の抗原に結合する1を超える抗原結合ドメイン、特にFab分子が存在する態様において、HLA-A2/MAGE-A4に結合する抗原結合ドメインは、好ましくはクロスオーバーFab分子であり、第2の抗原に結合する抗原結合ドメインは、従来のFab分子である。
好ましい態様では、第2の抗原結合ドメインは、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメインVLとVH又は定常ドメインCLとCH1、特に可変ドメインVLとVHが、互いによって置き換えられているFab分子である(即ち、そのような態様によれば、第2の抗原結合ドメインは、Fab軽鎖とFab重鎖の可変又は定常ドメインが交換されているクロスオーバーFab分子である)。1つのそのような態様では、第1(及び存在する場合、第3)の抗原結合ドメインは、従来のFab分子である。
好ましい態様では、第2の抗原は、本明細書で上述したように、CD3である。
一態様において、第2の抗原結合ドメインは、
(i)配列番号59の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号60のHCDR2、及び配列番号61のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号62の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、列番号63のLCDR2、及び配列番号64のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL);又は
(ii)配列番号51のHCDR1、配列番号52のHCDR2、及び配列番号53のHCDR3を含むVHと、配列番号54の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号55のLCDR2、及び配列番号56のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)
を含む。
一態様において、第2の抗原結合ドメインは、ヒト化抗体である(ヒト化抗体に由来する)。一態様では、第2の抗原結合ドメインは、ヒト化抗原結合ドメイン(即ち、ヒト化抗体の抗原結合ドメイン)である。一態様において、第2の抗原結合ドメインのVH及び/又はVLは、ヒト化可変領域である。
一態様において、第2の抗原結合ドメインのVH及び/又はVLは、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークを含む。
いくつかの態様では、第2の抗原結合ドメインは、(i)配列番号59の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号60のHCDR2、及び配列番号61のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号62の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号63のLCDR2、及び配列番号64のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
一態様において、第2の抗原結合ドメインのVHは、配列番号65の1つ又は複数の重鎖フレームワーク配列(即ち、FR1、FR2、FR3及び/又はFR4配列)を含む。一態様において、VHは、配列番号65のアミノ酸配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であるアミノ酸配列を含む。一態様において、VHは、配列番号65のアミノ酸配列と少なくとも約95%同一であるアミノ酸配列を含む。一態様において、VHは、配列番号65のアミノ酸配列と少なくとも約98%同一であるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVH配列は、基準配列と比べて、置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を含有するが、その配列を含む抗体は、第2の抗原(例えばCD3などのT細胞活性化抗原)に結合する能力を保持する。一部の態様では、合計で1~10個のアミノ酸が、配列番号65のアミノ酸配列において置換されている、挿入されている及び/又は欠失している。一部の態様では、置換、挿入、又は欠失は、CDRの外側の領域で(即ち、FRで)生じる。一態様において、VHは、配列番号65のアミノ酸配列を含む。任意選択的に、VHは、配列番号65のアミノ酸配列を含み、これにはその配列の翻訳後修飾が含まれる。
一態様において、第2の抗原結合ドメインのVLは、配列番号66の1つ又は複数の系さフレームワーク配列(即ち、FR1、FR2、FR3及び/又はFR4配列)を含む。一態様において、VLは、配列番号66のアミノ酸配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であるアミノ酸配列を含む。一態様において、VLは、配列番号66のアミノ酸配列と少なくとも約95%同一であるアミノ酸配列を含む。一態様において、VLは、配列番号66のアミノ酸配列と少なくとも約98%同一であるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVL配列は、基準配列と比べて、置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を含有するが、その配列を含む抗体は、第2の抗原(例えばCD3などのT細胞活性化抗原)に結合する能力を保持する。一部の態様では、合計で1~10個のアミノ酸が、配列番号66のアミノ酸配列において置換されている、挿入されている及び/又は欠失している。一部の態様では、置換、挿入、又は欠失は、CDRの外側の領域で(即ち、FRで)生じる。一態様において、VLは、配列番号66のアミノ酸配列を含む。任意選択的に、VLは、配列番号66のアミノ酸配列を含み、これにはその配列の翻訳後修飾が含まれる。
一態様において、第2の抗原結合ドメインのVHは、配列番号65のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含み、第2の抗原結合ドメインのVLは、配列番号66のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含む。一態様において、VHは配列番号65のアミノ酸配列を含み、VLは配列番号66のアミノ酸配列を含む。
さらなる態様において、第2の抗原結合ドメインは、配列番65の配列を含むVHと、配列番号66の配列を含むVLとを含む。
さらなる態様において、第2の抗原結合ドメインは、配列番号65のVH配列と、配列番号66のVL配列とを含む。
別の態様において、第2の抗原結合ドメインは、配列番号65のVHの重鎖CDR配列を含むVHと、配列番号66のVLの軽鎖CDR配列を含むVLとを含む。
さらなる態様では、第2の抗原結合ドメインは、配列番号65のVHのHCDR1、HCDR2及びHCDR3アミノ酸配列と、配列番号66のVLのLCDR1、LCDR2及びLCDR3アミノ酸配列とを含む。
一態様において、第2の抗原結合ドメインのVHは、配列番号65のVHの重鎖CDR配列と、配列番号65のVHのフレームワーク配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性のフレームワークとを含む。一態様において、VHは、配列番号65のVHの重鎖CDR配列と、配列番号65のVHのフレームワーク配列と少なくとも95%の配列同一性のフレームワークとを含む。別の態様において、VHは、配列番号65のVHの重鎖CDR配列と、配列番号65のVHのフレームワーク配列と少なくとも98%の配列同一性のフレームワークとを含む。
一態様において、第2の抗原結合ドメインのVLは、配列番号66のVLの軽鎖CDR配列と、配列番号66のVLのフレームワーク配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性のフレームワークを含む。一態様において、VLは、配列番号66のVLの軽鎖CDR配列と、配列番号66のVLのフレームワーク配列と少なくとも95%の配列同一性のフレームワークとを含む。別の態様において、VLは、配列番号66のVLの軽鎖CDR配列と、配列番号66のVLのフレームワーク配列と少なくとも98%の配列同一性のフレームワークとを含む。
いくつかの態様では、第2の抗原結合ドメインは、
(i)配列番号51の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号52のHCDR2、及び配列番号53のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号54の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号55のLCDR2、及び配列番号56のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
一態様において、第2の抗原結合ドメインのVHは、配列番号57の1つ又は複数の重鎖フレームワーク配列(即ち、FR1、FR2、FR3及び/又はFR4配列)を含む。一態様において、VHは、配列番号57のアミノ酸配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であるアミノ酸配列を含む。一態様において、VHは、配列番号57のアミノ酸配列と少なくとも約95%同一であるアミノ酸配列を含む。一態様において、VHは、配列番号57のアミノ酸配列と少なくとも約98%同一であるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVH配列は、基準配列と比べて、置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を含有するが、その配列を含む抗体は、第2の抗原(例えばCD3などのT細胞活性化抗原)に結合する能力を保持する。一部の態様では、合計で1~10個のアミノ酸が、配列番号57のアミノ酸配列において置換されている、挿入されている及び/又は欠失している。一部の態様では、置換、挿入、又は欠失は、CDRの外側の領域で(即ち、FRで)生じる。一態様において、VHは、配列番号57のアミノ酸配列を含む。任意選択的に、VHは、配列番号57のアミノ酸配列を含み、これにはその配列の翻訳後修飾が含まれる。
一態様において、第2の抗原結合ドメインのVLは、配列番号58の1つ又は複数の系さフレームワーク配列(即ち、FR1、FR2、FR3及び/又はFR4配列)を含む。一態様において、VLは、配列番号58のアミノ酸配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であるアミノ酸配列を含む。一態様において、VLは、配列番号58のアミノ酸配列と少なくとも約95%同一であるアミノ酸配列を含む。一態様において、VLは、配列番号58のアミノ酸配列と少なくとも約98%同一であるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVL配列は、基準配列と比べて、置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を含有するが、その配列を含む抗体は、第2の抗原(例えばCD3などのT細胞活性化抗原)に結合する能力を保持する。一部の態様では、合計で1~10個のアミノ酸が、配列番号58のアミノ酸配列において置換されている、挿入されている及び/又は欠失している。一部の態様では、置換、挿入、又は欠失は、CDRの外側の領域で(即ち、FRで)生じる。一態様において、VLは、配列番号58のアミノ酸配列を含む。任意選択的に、VLは、配列番号58のアミノ酸配列を含み、これにはその配列の翻訳後修飾が含まれる。
一態様において、第2の抗原結合ドメインのVHは、配列番号57のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含み、第2の抗原結合ドメインのVLは、配列番号58のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含む。一態様において、VHは配列番号57のアミノ酸配列を含み、VLは配列番号58のアミノ酸配列を含む。
さらなる態様において、第2の抗原結合ドメインは、配列番57の配列を含むVHと、配列番号58の配列を含むVLとを含む。
さらなる態様において、第2の抗原結合ドメインは、配列番号57のVH配列と、配列番号58のVL配列とを含む。
別の態様において、第2の抗原結合ドメインは、配列番号57のVHの重鎖CDR配列を含むVHと、配列番号58のVLの軽鎖CDR配列を含むVLとを含む。
さらなる態様では、第2の抗原結合ドメインは、配列番号57のVHのHCDR1、HCDR2及びHCDR3アミノ酸配列と、配列番号58のVLのLCDR1、LCDR2及びLCDR3アミノ酸配列とを含む。
一態様において、第2の抗原結合ドメインのVHは、配列番号57のVHの重鎖CDR配列と、配列番号57のVHのフレームワーク配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性のフレームワークとを含む。一態様において、VHは、配列番号57のVHの重鎖CDR配列と、配列番号57のVHのフレームワーク配列と少なくとも95%の配列同一性のフレームワークとを含む。別の態様において、VHは、配列番号57のVHの重鎖CDR配列と、配列番号57のVHのフレームワーク配列と少なくとも98%の配列同一性のフレームワークとを含む。
一態様において、第2の抗原結合ドメインのVLは、配列番号58のVLの軽鎖CDR配列と、配列番号58のVLのフレームワーク配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性のフレームワークを含む。一態様において、VLは、配列番号58のVLの軽鎖CDR配列と、配列番号58のVLのフレームワーク配列と少なくとも95%の配列同一性のフレームワークとを含む。別の態様において、VLは、配列番号58のVLの軽鎖CDR配列と、配列番号58のVLのフレームワーク配列と少なくとも98%の配列同一性のフレームワークとを含む。
c)電荷修飾
本発明の(多重特異性)抗体は、それに含まれるFab分子に、1つ(又は2つより多い抗原結合Fab分子を含む分子の場合には、さらに多くの)結合アーム中にVH/VL交換を有するFabベース多重特異性抗体の生成において生じうる、軽鎖と適合しない重鎖との誤対合(ベンス・ジョーンズ型副生成物)を低減するうえで特に効率的であるアミノ酸置換を含みうる(全体が本明細書に参照により組み込まれる国際公開第2015/150447号、特にその中の実施例も参照されたい)。望ましくない副生成物、特に、結合アームの1つにVH/VLドメイン交換を有する多重特異性抗体に生じるベンス・ジョーンズ型副生成物と比較した、所望の(多重特異性)抗体の比を、CH1及びCLドメインの特定のアミノ酸位置と反対の電荷を有する荷電アミノ酸を導入することによって改善することができる(本明細書で「電荷修飾」と呼ぶことがある)。
したがって、(多重特異性)抗体の第1及び第2の(及び存在する場合、第3の)抗原結合ドメインが両方ともFab分子であり、それら抗原結合ドメインの1つ(特に、第2の抗原結合ドメイン)において、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメインVLとVHが互いにより置き換えられているいくつかの態様では、
i)第1(及び存在する場合、第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、正に帯電したアミノ酸で置換されており(Kabatによる番号付け)、第1(及び存在する場合、第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸又は位置213のアミノ酸が、負に帯電したアミノ酸で置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)か、或いは
ii)第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、正に帯電したアミノ酸で置換されており(Kabatによる番号付け)、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸又は位置213のアミノ酸が、負に帯電したアミノ酸で置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
(多重特異性)抗体は、i)及びii)に記述されている修飾を両方とも含むことはない。VH/VL交換を有する抗原結合ドメインの定常ドメインCL及びCH1は、互いによって置き換えられていない(即ち、交換されていないままである)。
より具体的な態様では、
i)第1(及び存在する場合、第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)により独立して置換されており(Kabatによる番号付け)、第1(及び存在する場合、第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸又は位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)により独立して置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)か、或いは
ii)第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)により独立して置換されており(Kabatによる番号付け)、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸又は位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)により独立して置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
1つのこのような態様では、第1(及び存在する場合、第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)により独立して置換されており(Kabatによる番号付け)、第1(及び存在する場合、第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸又は位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)により独立して置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
さらなる態様では、第1(及び存在する場合、第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)により独立して置換されており(Kabatによる番号付け)、第1(及び存在する場合、第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)により独立して置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
好ましい態様では、第1(及び存在する場合、第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)により独立して置換されており(Kabatによる番号付け)、位置123のアミノ酸が、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)により独立して置換されており(Kabatによる番号付け)、第1(及び存在する場合、第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)により独立して置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)により独立して置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
より好ましい態様では、第1(及び存在する場合、第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸がリジン(K)により置換されており(Kabatによる番号付け)、位置123のアミノ酸がリジン(K)により置換されており(Kabatによる番号付け)、第1(及び存在する場合、第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸がグルタミン酸(E)により置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、位置213のアミノ酸がグルタミン酸(E)により置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
さらにより好ましい態様では、第1(及び存在する場合、第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸がリジン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、位置123のアミノ酸がアルギニン(R)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、第1(及び存在する場合、第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸がグルタミン酸(E)により置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、位置213のアミノ酸がグルタミン酸(E)により置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
好ましい態様において、上記の態様によるアミノ酸置換が、第1(及び存在する場合、第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCL及び定常ドメインCH1に行われる場合、第1(及び存在する場合、第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCLは、カッパアイソタイプである。
代替的に、上記の態様によるアミノ酸置換は、第1(及び存在する場合、第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCL及び定常ドメインCH1の代わりに、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCL及び定常ドメインCH1において行われてもよい。好ましいこのような態様において、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCLは、カッパアイソタイプである。
したがって、一態様では、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)により独立して置換されており(Kabatによる番号付け)、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸又は位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)により独立して置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
さらなる態様では、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)により独立して置換されており(Kabatによる番号付け)、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)により独立して置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
なお別の態様では、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)により独立して置換されており(Kabatによる番号付け)、位置123のアミノ酸が、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)により独立して置換されており(Kabatによる番号付け)、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)により独立して置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)により独立して置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
一態様では、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸がリジン(K)により置換されており(Kabatによる番号付け)、位置123のアミノ酸はリジン(K)により置換されており(Kabatによる番号付け)、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸がグルタミン酸(E)により置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、位置213のアミノ酸がグルタミン酸(E)により置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
別の態様では、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸がリジン(K)により置換されており(Kabatによる番号付け)、位置123のアミノ酸がアルギニン(R)により置換されており(Kabatによる番号付け)、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸がグルタミン酸(E)により置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、位置213のアミノ酸がグルタミン酸(E)により置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
好ましい態様において、本発明の(多重特異性)抗体は、
(A)HLA-A2/MAGE-A4に結合する第1の及び任意選択的に第3の抗原結合ドメインであって;
第1(及び、存在する場合第3)の抗原結合ドメインが、従来のFab分子であり、且つ
(i)配列番号25のHCDR1、配列番号26のHCDR2及び配列番号27のHCDR3を含むVHと、配列番号28のLCDR1、配列番号29のLCDR2及び配列番号30のLCDR3を含むVL;
(ii)配列番号25のHCDR1、配列番号26のHCDR2及び配列番号27のHCDR3を含むVHと、配列番号28のLCDR1、配列番号29のLCDR2及び配列番号30のLCDR3を含むVL;
(iii)配列番号25のHCDR1、配列番号26のHCDR2及び配列番号27のHCDR3を含むVHと、配列番号28のLCDR1、配列番号29のLCDR2及び配列番号30のLCDR3を含むVL;
(iv)配列番号25のHCDR1、配列番号26のHCDR2及び配列番号27のHCDR3を含むVHと、配列番号28のLCDR1、配列番号29のLCDR2及び配列番号30のLCDR3を含むVL;
(v)配列番号25のHCDR1、配列番号26のHCDR2及び配列番号27のHCDR3を含むVHと、配列番号28のLCDR1、配列番号29のLCDR2及び配列番号30のLCDR3を含むVL;
(vi)配列番号25のHCDR1、配列番号26のHCDR2及び配列番号27のHCDR3を含むVHと、配列番号28のLCDR1、配列番号29のLCDR2及び配列番号30のLCDR3を含むVL
を含み;
第1(及び存在する場合、第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸が、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)により独立して(好ましい態様では、リジン(K)又はアルギニン(R)により独立して)置換されており(Kabatによる番号付け)、位置123のアミノ酸が、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)により独立して(好ましい態様では、リジン(K)又はアルギニン(R)により独立して)置換されており(Kabatによる番号付け)、第2(及び存在する場合、第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸が、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)により独立して置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、位置213のアミノ酸が、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)により独立して置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)、
HLA-A2/MAGE-A4に結合する第1の及び任意選択的に第3の抗原結合ドメイン:
並びに
(B)第2の抗原、好ましくはCD3に結合する第2の抗原結合ドメインであって、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメインVLとVHが互いによって置き換えられているFab分子である、第2の抗原結合ドメイン
を含む。
d)多重特異性抗体フォーマット
本発明による(多重特異性)抗体は、様々な構造を有することができる。例示的な構造が図1に描写されている。
好ましい態様において、(多重特異性)抗体に含まれる抗原結合ドメインは、Fab分子である。このような態様において、第1、第2、第3などの抗原結合ドメインは、それぞれ本明細書において第1、第2、第3などのFab分子と呼ばれることがある。
一態様において、(多重特異性)抗体の第1及び第2の抗原結合ドメインは、任意選択的にペプチドリンカーを介して互いに融合している。好ましい態様において、第1及び第2の抗原結合ドメインは、各々がFab分子である。1つのそのような態様において、第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で第2の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合している。別のそのような態様において、第2の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で第1の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合している。(i)第1の抗原結合ドメインがFab重鎖のC末端で第2の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合しているか、又は(ii)第2の抗原結合ドメインがFab重鎖のC末端で第1の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合している態様において、追加的に、第1の抗原結合ドメインのFab軽鎖及び第2の抗原結合ドメインのFab軽鎖は、任意選択的にペプチドリンカーを介して、互いに融合していてもよい。
HLA-A2/MAGE-A4に特異的に結合することのできる単一の抗原結合ドメイン(例えばFab分子)を有する(多重特異性)抗体、(図1A、D、G、H、K、Lに示される実施例)は、特に抗原の内部移行が高親和性抗原結合ドメインの結合の後で予測される場合に有用である。そのような場合、HLA-A2/MAGE-A4に特異的な1つを超える抗原結合ドメインの存在は、抗原の内部移行を増強し、それによってその利用能を低減しうる。
しかしながら、他の場合では、HLA-A2/MAGE-A4に特異的な2つ以上の抗原結合ドメイン(例えば、Fab分子)を、例えば、標的部位への標的化を最適化するため又は標的細胞抗原の架橋を可能にするために含む(多重特異性)抗体(例えば、図1B、1C、1E、1F、1I、1J,1M又は1Nに示されている実施例を参照されたい)を有することが有利であろう。
したがって、好ましい態様では、本発明による(多重特異性)抗体は第3の抗原結合ドメインを含む。
一態様において、第3の抗原結合ドメインは、HLA-A2/MAGE-A4に結合する。一態様において、第3の抗原結合ドメインはFab分子である。
一態様において、第3の抗原結合ドメインは、第1の抗原結合ドメインと同一である。
いくつかの態様において、第3及び第1の抗原結合ドメインは、各々がFab分子であり、第3の抗原結合ドメインは、第1の抗原結合ドメインと同一である。したがって、これらの態様では、第1及び第3の抗原結合ドメインは、同じ重鎖及び軽鎖アミノ酸配列を含み、同じドメイン配置(即ち、従来の又はクロスオーバーの)を有する。さらに、これらの態様において、第3の抗原結合ドメインは、存在する場合、第1の抗原結合ドメインと同じアミノ酸置換を含む。例えば、本明細書において「電荷修飾」と記載されるアミノ酸置換は、第1の抗原結合ドメイン及び第3の抗原結合ドメインの各々の定常ドメインCL及び定常ドメインCH1において行われる。代替的に、前記アミノ酸置換は、第2の抗原結合ドメイン(好ましい態様ではFab分子でもある)の定常ドメインCL及び定常ドメインCH1において行われてもよく、第1の抗原結合ドメイン及び第3の抗原結合ドメインの定常ドメインCL及び定常ドメインCH1では行われない。
第1の抗原結合ドメインと同様に、第3の抗原結合ドメインは、好ましくは従来のFab分子である。しかしながら、第1及び第3の抗原結合ドメインがクロスオーバーFab分子である(且つ第2の抗原結合ドメインが従来のFab分子である)態様も考慮される。したがって、好ましい態様では、第1及び第3の抗原結合ドメインは、各々が従来のFab分子であり、第2の抗原結合ドメインは、本明細書に記載されるクロスオーバーFab分子、即ち、Fab重鎖と軽鎖の可変ドメインVHとVL又は定常ドメインCLとCH1が交換されている/互いによって置き換えられているFab分子である。他の態様では、第1及び第3の抗原結合ドメインは、各々がクロスオーバーFab分子であり、第2の抗原結合ドメインは従来のFab分子である。
第3の抗原結合ドメインが存在する場合、好ましい態様では、第1の及び第3の抗原結合ドメインはHLA-A2/MAGE-A4に結合し、第2の抗原ドメインは第2の抗原(例えばCD3などのT細胞活性化抗原)に結合する。
好ましい態様において、本発明の(多重特異性)抗体は、第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインを含む。Fcドメインの第1及び第2のサブユニットは、安定な会合が可能である。
本発明による(多重特異性)抗体は、異なる構造を有することができ、即ち、第1、第2(及び任意選択的に第3)の抗原結合ドメインは、互いに、異なる様式でFcドメインに融合していてもよい。構成要素は、直接的に、又は好ましくは1つ又は複数の適切なペプチドリンカーを介して、互いに融合していてもよい。Fab分子の融合が、FcドメインのサブユニットのN末端へのものである場合、それは典型的には免疫グロブリンヒンジ領域を介するものである。
いくつかの態様において、第1及び第2の抗原結合ドメインは、各々がFab分子であり、第2の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合している。そのような態様では、第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で、第2の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端又はFcドメインの他方のサブユニットのN末端に融合していてもよい。好ましいそのような態様では、第1の抗原結合ドメインは従来のFab分子であり、第2の抗原結合ドメインは本明細書に記載されるクロスオーバーFab分子、即ち、Fab重鎖と軽鎖の可変ドメインVHとVL又は定常ドメインCLとCH1が交換されている/互いによって置き換えられているFab分子である。他のそのような態様において、第1の抗原結合ドメインはクロスオーバーFab分子であり、第2の抗原結合ドメインは従来のFab分子である。
一態様において、第1及び第2の抗原結合ドメインは、各々がFab分子であり、第2の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合しており、第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で第2の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合している。具体的な態様において、(多重特異性)抗体は、第1及び第2のFab分子と、第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと、任意選択的に1つ又は複数のペプチドリンカーとから本質的になり、第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、第2のFab分子は、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合している。そのような構造は、図1G及び1Kに概略的に描写されている(これらの実施例における第2の抗原結合ドメインは、VH/VLクロスオーバーFab分子である)。任意選択的に、第1のFab分子のFab軽鎖及び第2のFab分子のFab軽鎖は、追加的に互いに融合していてもよい。
別の態様において、第1及び第2の抗原結合ドメインは、各々がFab分子であり、第1及び第2の抗原結合ドメインは、各々がFab重鎖のC末端でFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。具体的な態様において、(多重特異性)抗体は、第1及び第2のFab分子と、第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと、任意選択的に1つ又は複数のペプチドリンカーとから実質的になり、第1及び第2のFab分子は、各々がFab重鎖のC末端でFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。そのような構造は、図1A及び1Dに概略的に描写されている(これらの実施例において、第2の抗原結合ドメインはVH/VLクロスオーバーFab分子であり、第1の抗原結合ドメインは従来のFab分子である)。第1及び第2のFab分子は、Fcドメインに直接的に又はペプチドリンカーを介して融合していてもよい。好ましい態様において、第1及び第2のFab分子は、免疫グロブリンヒンジ領域を介して、それぞれFcドメインに融合している。具体的な態様において、特にFcドメインがIgG1 Fcドメインである場合に、免疫グロブリンヒンジ領域はヒトIgG1ヒンジ領域である。
一部の態様において、第1及び第2の抗原結合ドメインは、それぞれFab分子であり、第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合している。そのような態様において、第2の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で第2の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端又は(上記に記載されたように)Fcドメインの他方のサブユニットのN末端に融合していてもよい。好ましいそのような態様において、前記第1の抗原結合ドメインは従来のFab分子であり、第2の抗原結合ドメインは本明細書に記載されるクロスオーバーFab分子、即ち、Fab重鎖と軽鎖の可変ドメインVHとVL又は定常ドメインCLとCH1が交換されている/互いによって置き換えられているFab分子である。他のそのような態様において、前記第1の抗原結合ドメインはクロスオーバーFab分子であり、第2の抗原結合ドメインは従来のFab分子である。
一態様において、第1及び第2の抗原結合ドメインは、各々がFab分子であり、第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合しており、第2の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で第1の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合している。具体的な態様において、(多重特異性)抗体は、第1及び第2のFab分子と、第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと、任意選択的に1つ又は複数のペプチドリンカーとから本質的になり、第2のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合している。このような構造は、図1H及び1Lに概略的に描写されている(これらの実施例において、第2の抗原結合ドメインはVH/VLクロスオーバーFab分子であり、第1の抗原結合ドメインは従来のFab分子である)。任意選択的に、第1のFab分子のFab軽鎖及び第2のFab分子のFab軽鎖は、追加的に互いに融合していてもよい。
いくつかの態様において、第3の抗原結合ドメイン、特に第3のFab分子は、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合している。好ましいそのような態様において、前記第1及び第3の抗原結合ドメインは、各々が従来のFab分子であり、第2の抗原結合ドメインは本明細書に記載のクロスオーバーFab分子、即ち、Fab重鎖と軽鎖の可変ドメインVHとVL又は定常ドメインCLとCH1が交換されている/互いにより置き換えられているFab分子である。他のそのような態様において、前記第1及び第3の抗原結合ドメインは、各々がクロスオーバーFab分子であり、第2の抗原結合ドメインは従来のFab分子である。
好ましいそのような態様において、第2及び第3の抗原結合ドメインは、各々がFab重鎖のC末端でFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合しており、第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で第2の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合している。具体的な態様において、(多重特異性)抗体は、第1、第2及び第3のFab分子と、第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと、任意選択的に1つ又は複数のペプチドリンカーとから本質的になり、第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、第2のFab分子は、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第1のサブユニットのN末端に融合しており、第3のFab分子は、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第2のサブユニットのN末端に融合している。そのような構造は、図1B及び1E(これらの実施例において、第2の抗原結合ドメインはVH/VLクロスオーバーFab分子であり、第1及び第3の抗原結合ドメインは従来のFab分子である)と、図1J及び1N(これらの実施例において、第2の抗原結合ドメインは従来のFab分子であり、第1及び第3の抗原結合ドメインはVH/VLクロスオーバーFab分子である)に概略的に描写されている。第2及び第3のFab分子は、Fcドメインに直接的に又はペプチドリンカーを介して融合していてもよい。好ましい態様では、第2及び第3のFab分子は、免疫グロブリンヒンジ領域を介して、各々がFcドメインに融合している。具体的な態様において、特にFcドメインがIgG1 Fcドメインである場合に、免疫グロブリンヒンジ領域はヒトIgG1ヒンジ領域である。任意選択的に、第1のFab分子のFab軽鎖及び第2のFab分子のFab軽鎖は、追加的に互いに融合していてもよい。
別のそのような態様において、第1及び第3の抗原結合ドメインは、各々がFab重鎖のC末端でFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合しており、第2の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で第1の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合している。具体的な態様において、(多重特異性)抗体は、第1、第2及び第3のFab分子と、第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと、任意選択的に1つ又は複数のペプチドリンカーから本質的になり、第2のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第1のサブユニットのN末端に融合しており、第3のFab分子は、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第2のサブユニットのN末端に融合している。そのような構造は、図1C及び1F(これらの実施例において、第2の抗原結合ドメインはVH/VLクロスオーバーFab分子であり、第1及び第3の抗原結合ドメインは従来のFab分子である)、並びに図1I及び1M(これらの実施例において、第2の抗原結合ドメインは従来のFab分子であり、第1及び第3の抗原結合ドメインはVH/VLクロスオーバーFab分子である)に概略的に描写されている。第1及び第3のFab分子は、Fcドメインに直接的に又はペプチドリンカーを介して融合していてもよい。好ましい態様において、第1及び第3のFab分子は、免疫グロブリンヒンジ領域を介して、各々がFcドメインに融合している。具体的な態様において、特にFcドメインがIgG1 Fcドメインである場合に、免疫グロブリンヒンジ領域はヒトIgG1ヒンジ領域である。任意選択的に、第1のFab分子のFab軽鎖及び第2のFab分子のFab軽鎖は、追加的に互いに融合していてもよい。
Fab分子が、免疫グロブリンヒンジ領域を介してFab重鎖のC末端でFcドメインのサブユニットの各々のN末端に融合している(多重特異性)抗体の構造において、2つのFab分子、ヒンジ領域及びFcドメインは、免疫グロブリン分子を本質的に形成する。好ましい態様において、免疫グロブリン分子は、IgGクラス免疫グロブリンである。さらにより好ましい態様において、免疫グロブリンは、IgG1サブクラス免疫グロブリンである。別の態様において、免疫グロブリンは、IgG4サブクラス免疫グロブリンである。さらに好ましい態様において、免疫グロブリンは、ヒト免疫グロブリンである。他の態様において、免疫グロブリンは、キメラ免疫グロブリン又はヒト化免疫グロブリンである。一態様において、免疫グロブリンは、ヒト定常領域、特にヒトFc領域を含む。
本発明の(多重特異性)抗体のいくつかにおいて、第1のFab分子のFab軽鎖及び第2のFab分子のFab軽鎖は、任意選択的にペプチドリンカーを介して互いに融合している。第1及び第2のFab分子の構造に応じて、第1のFab分子のFab軽鎖は、そのC末端で第2のFab分子のFab軽鎖のN末端に融合していてもよく、又は第2のFab分子のFab軽鎖は、そのC末端で第1のFab分子のFab軽鎖のN末端に融合していてもよい。第1及び第2のFab分子のFab軽鎖の融合は、適合しないFab重鎖及び軽鎖の誤対合をさらに低減し、本発明の(多重特異性)抗体の一部の発現に必要なプラスミドの数も低減する。
抗原結合ドメインは、Fcドメインに又は互いに、直接的に又は1個又は複数個のアミノ酸、典型的には約2~20個のアミノ酸を含むペプチドリンカーを介して融合していてもよい。ペプチドリンカーは、当技術分野で既知であり、本明細書に記載される。適切な非免疫原性ペプチドリンカーには、例えば、(G4S)n、(SG4)n、(G4S)n又はG4(SG4)nペプチドリンカーが含まれる。「n」は、通常、1~10、典型的には2~4の整数である。一態様において、前記ペプチドリンカーは、少なくとも5個のアミノ酸長さ、一態様において5~100個、さらなる態様において10~50個のアミノ酸長さを有する。一態様において、前記ペプチドリンカーは、(GxS)n又は(GxS)nGmであり、ここでG=グリシン、S=セリン及び(x=3、n=3、4、5又は6、m=0、1、2又は3)又は(x=4、n=2、3、4又は5、m=0、1、2又は3)であり、一態様において、x=4及びn=2又は3であり、さらなる態様において、x=4及びn=2である。一態様において、前記ペプチドリンカーは(G4S)2である。第1及び第2のFab分子のFab軽鎖を互いに融合するために特に適したペプチドリンカーは、(G4S)2である。第1及び第2のFab断片のFab重鎖を接続するために適した例示的なペプチドリンカーは、配列(D)-(G4S)2(配列番号82及び83)を含む。別の適切なそのようなリンカーは、配列(G4S)4を含む。加えて、リンカーは、免疫グロブリンヒンジ領域(の一部)を含んでいてもよい。特に、Fab分子が、FcドメインサブユニットのN末端に融合する場合、免疫グロブリンヒンジ領域又はその一部を介して、さらなるペプチドリンカーを用いて又は用いずに融合してもよい。
一部の態様において、本発明の(多重特異性)抗体は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有し(即ち、第2のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が軽鎖可変領域により置き換えられている)、第2のFab分子のFab重鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、Fcドメインサブユニットと共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2)-CH2-CH3(-CH4))、並びに第1のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を、Fcドメインサブユニットと共有するポリペプチド(VH(1)-CH1(1)-CH2-CH3(-CH4))を含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2))及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))をさらに含む。一部の態様において、ポリペプチドは、例えばジスルフィド結合によって共有結合的に連結している。
一部の態様において、本発明の(多重特異性)抗体は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有し(即ち、第2のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が、軽鎖定常領域により置き換えられている)、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、Fcドメインサブユニットと共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2)-CH2-CH3(-CH4))、並びに第1のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を、Fcドメインサブユニットと共有するポリペプチド(VH(1)-CH1(1)-CH2-CH3(-CH4))を含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2))及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))をさらに含む。一部の態様において、ポリペプチドは、例えばジスルフィド結合によって共有結合的に連結している。
いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有し(即ち、第2のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が軽鎖可変領域により置き換えられている)、第2のFab分子のFab重鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab重鎖と共有し、第1のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を、Fcドメインサブユニットと共有する(VL(2)-CH1(2)-VH(1)-CH1(1)-CH2-CH3(-CH4))ポリペプチドを含む。他の態様において、(多重特異性)抗体は、第1のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域と共有し、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有し(即ち、第2のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が軽鎖可変領域により置き換えられている)、第2のFab分子のFab重鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、Fcドメインサブユニットと共有する(VH(1)-CH1(1)-VL(2)-CH1(2)-CH2-CH3(-CH4))ポリペプチドを含む。これらの態様のいくつかにおいて、(多重特異性)抗体は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有する第2のFab分子のクロスオーバーFab軽鎖ポリペプチド(VH(2)-CL(2))及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))をさらに含む。これらの態様の他のいくつかにおいて、適切であれば、(多重特異性)抗体は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有し、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチドと共有する(VH(2)-CL(2)-VL(1)-CL(1))ポリペプチド、又は第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチドが、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖可変領域と共有し、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有する(VL(1)-CL(1)-VH(2)-CL(2))ポリペプチドをさらに含む。これらの態様による(多重特異性)抗体は、(i)Fcドメインサブユニットポリペプチド(CH2-CH3(-CH4))、又は(ii)第3のFab分子のFab重鎖がカルボキシ末端ペプチド結合をFcドメインサブユニットと共有するポリペプチド(VH(3)-CH1(3)-CH2-CH3(-CH4))及び第3のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(3)-CL(3))をさらに含むことができる。一部の態様において、ポリペプチドは、例えばジスルフィド結合によって共有結合的に連結している。
いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有し(即ち、第2のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が軽鎖定常領域により置き換えられている)、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab重鎖と共有し、第1のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を、Fcドメインサブユニットと共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2)-VH(1)-CH1(1)-CH2-CH3(-CH4))を含む。他の態様において、(多重特異性)抗体は、第1のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖可変領域と共有し、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有し(即ち、第2のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が軽鎖定常領域により置き換えられている)、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、Fcドメインサブユニットと共有するポリペプチド(VH(1)-CH1(1)-VH(2)-CL(2)-CH2-CH3(-CH4))を含む。これらの態様のいくつかにおいて、(多重特異性)抗体は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有する第2のFab分子のクロスオーバーFab軽鎖ポリペプチド(VL(2)-CH1(2)、及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))をさらに含む。これらの態様の他のいくつかにおいて、適切であれば、(多重特異性)抗体は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有し、第2のFab分子のFab重鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチドと共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2)-VL(1)-CL(1))、又は第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチドが、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖可変領域と共有し、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有するポリペプチド(VL(1)-CL(1)-VH(2)-CL(2))をさらに含む。これらの態様による(多重特異性)抗体は、(i)Fcドメインサブユニットポリペプチド(CH2-CH3(-CH4))、又は(ii)第3のFab分子のFab重鎖がカルボキシ末端ペプチド結合をFcドメインサブユニットと共有するポリペプチド(VH(3)-CH1(3)-CH2-CH3(-CH4))及び第3のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(3)-CL(3))をさらに含むことができる。一部の態様において、ポリペプチドは、例えばジスルフィド結合によって共有結合的に連結している。
一部の態様において、(多重特異性)抗体はFcドメインを含まない。好ましいそのような態様において、前記第1の、及び存在する場合、第3の抗原結合ドメインは、各々が従来のFab分子であり、第2の抗原結合ドメインは、本明細書に記載のクロスオーバーFab分子、即ち、Fab重鎖と軽鎖の可変ドメインVHとVL又は定常ドメインCLとCH1が交換されている/互いによって置き換えられているFab分子である。他のそのような態様において、前記第1の、及び存在する場合、第3の抗原結合ドメインは、各々がクロスオーバーFab分子であり、第2の抗原結合ドメインは従来のFab分子である。
1つのそのような態様において、(多重特異性)抗体は、第1及び第2の抗原結合ドメイン、並びに任意選択的に1つ又は複数のペプチドリンカーから本質的になり、第1及び第2の抗原結合ドメインは、両方ともFab分子であり、第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で第2の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合している。そのような構造は、図1O及び1Sに概略的に描写されている(これらの実施例において、第2の抗原結合ドメインはVH/VLクロスオーバーFab分子であり、第1の抗原結合ドメインは従来のFab分子である)。
別のそのような態様において、(多重特異性)抗体は、第1及び第2の抗原結合ドメイン、並びに任意選択的に1つ又は複数のペプチドリンカーから本質的になり、第1及び第2の抗原結合ドメインは、両方ともFab分子であり、第2の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で第1の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合している。このような構造は、図1P及び1Tに概略的に描写されている(これらの実施例において、第2の抗原結合ドメインはVH/VLクロスオーバーFab分子であり、第1の抗原結合ドメインは従来のFab分子である)。
いくつかの態様において、第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、(多重特異性)抗体は、第3の抗原結合ドメイン、特に第3のFab分子をさらに含み、前記第3のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合している。一部のそのような態様において、(多重特異性)抗体は、第1、第2及び第3のFab分子、並びに任意選択的に1つ又は複数のペプチドリンカーから本質的になり、第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、第3のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合している。そのような構造は、図1Q及び1U(これらの実施例において、第2の抗原結合ドメインはVH/VLクロスオーバーFab分子であり、第1及び第3の抗原結合ドメインは各々が従来のFab分子である)、又は図1X及び1Z(これらの実施例において、第2の抗原結合ドメインは従来のFab分子であり、第1及び第3の抗原結合ドメインは各々がVH/VLクロスオーバーFab分子である)に概略的に描写されている。
いくつかの態様において、第2のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、(多重特異性)抗体は、第3の抗原結合ドメイン、特に第3のFab分子をさらに含み、前記第3のFab分子は、Fab重鎖のN末端で第1のFab分子のFab重鎖のC末端に融合している。一部のそのような態様において、(多重特異性)抗体は、第1、第2及び第3のFab分子、並びに任意選択的に1つ又は複数のペプチドリンカーから本質的になり、第2のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、第3のFab分子は、Fab重鎖のN末端で第1のFab分子のFab重鎖のC末端に融合している。そのような構造は、図1R及び1V(これらの実施例において、第2の抗原結合ドメインはVH/VLクロスオーバーFab分子であり、第1及び第3の抗原結合ドメインは各々が従来のFab分子である)、又は図1W及び1Y(これらの実施例において、第2の抗原結合ドメインは従来のFab分子であり、第1及び第3の抗原結合ドメインは各々がVH/VLクロスオーバーFab分子である)に概略的に描写されている。
一部の態様において、本発明による(多重特異性)抗体は、第1のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域と共有し、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有する(即ち、第2のFab分子がクロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が軽鎖可変領域によって置き換えられている)ポリペプチ(VH(1)-CH1(1)-VL(2)-CH1(2))ドを含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2))及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))をさらに含む。
一部の態様において、本発明による(多重特異性)抗体は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有し(即ち、第2のFab分子がクロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が軽鎖可変領域によって置き換えられている)、第2のFab分子のFab重鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab重鎖と共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2)-VH(1)-CH1(1))を含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2))及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))をさらに含む。
一部の態様において、本発明による(多重特異性)抗体は、第1のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖可変領域と共有し、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有する(即ち、第2のFab分子がクロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が軽鎖定常領域によって置き換えられている)ポリペプチド(VH(1)-CH1(1)-VH(2)-CL(2))を含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2))及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))をさらに含む。
一部の態様において、本発明による(多重特異性)抗体は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有し(即ち、第2のFab分子がクロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が軽鎖定常領域によって置き換えられている)、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab重鎖と共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2)-VH(1)-CH1(1))を含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2))及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))をさらに含む。
一部の態様において、本発明による(多重特異性)抗体は、第3のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab重鎖と共有し、第1のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域と共有し、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有する(即ち、第2のFab分子がクロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が軽鎖可変領域によって置き換えられている)ポリペプチド(VH(3)-CH1(3)-VH(1)-CH1(1)-VL(2)-CH1(2))を含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2))及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))をさらに含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第3のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(3)-CL(3))をさらに含む。
一部の態様において、本発明による(多重特異性)抗体は、第3のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab重鎖と共有し、第1のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖可変領域と共有し、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有する(即ち、第2のFab分子がクロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が軽鎖定常領域によって置き換えられている)ポリペプチド(VH(3)-CH1(3)-VH(1)-CH1(1)-VH(2)-CL(2))を含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2))及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))をさらに含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第3のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(3)-CL(3))をさらに含む。
一部の態様において、本発明による(多重特異性)抗体は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有し(即ち、第2のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が、軽鎖可変領域によって置き換えられている)、第2のFab分子のFab重鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab重鎖と共有し、第1のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第3のFab分子のFab重鎖と共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2)-VH(1)-CH1(1)-VH(3)-CH1(3))を含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2))及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))をさらに含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第3のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(3)-CL(3))をさらに含む。
一部の態様において、本発明による(多重特異性)抗体は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有し(即ち、第2のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が、軽鎖定常領域によって置き換えられている)、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab重鎖と共有し、第1のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第3のFab分子のFab重鎖と共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2)-VH(1)-CH1(1)-VH(3)-CH1(3))を含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2))及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))をさらに含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第3のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(3)-CL(3))をさらに含む。
一部の態様において、本発明による(多重特異性)抗体は、第2のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab軽鎖可変領域と共有し、第1のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab重鎖定常領域と共有し(即ち、第1のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が、軽鎖可変領域によって置き換えられている)、第1のFab分子のFab重鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第3のFab分子のFab軽鎖可変領域と共有し、第3のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第3のFab分子のFab重鎖定常領域と共有する(即ち、第3のFab分子がクロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が軽鎖可変領域によって置き換えられている)ポリペプチド(VH(2)-CH1(2)-VL(1)-CH1(1)-VL(3)-CH1(3))を含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第1のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有するポリペプチド(VH(1)-CL(1))及び第2のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(2)-CL(2))をさらに含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第3のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第3のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有するポリペプチド(VH(3)-CL(3))をさらに含む。
一部の態様において、本発明による(多重特異性)抗体は、第2のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab重鎖可変領域と共有し、第1のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有し(即ち、第1のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が、軽定常領域によって置き換えられている)、第1のFab分子のFab軽鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第3のFab分子のFab重鎖可変領域と共有し、第3のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第3のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有する(即ち、第3のFab分子がクロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が、軽鎖定常領域によって置き換えられている)ポリペプチド(VH(2)-CH1(2)-VH(1)-CL(1)-VH(3)-CL(3))を含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第1のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab重鎖定常領域と共有するポリペプチド(VL(1)-CH1(1))及び第2のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(2)-CL(2))をさらに含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第3のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第3のFab分子のFab重鎖定常領域と共有するポリペプチド(VL(3)-CH1(3))をさらに含む。
一部の態様において、本発明による(多重特異性)抗体は、第3のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第3のFab分子のFab重鎖定常領域と共有し(即ち、第3のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が、軽鎖可変領域によって置き換えられている)、第3のFab分子のFab重鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab軽鎖可変領域と共有し、第1のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab重鎖定常領域と共有し(即ち、第1のFab分子がクロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が軽鎖可変領域によって置き換えられている)、第1のFab分子のFab重鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖と共有するポリペプチド(VL(3)-CH1(3)-VL(1)-CH1(1)-VH(2)-CH1(2))を含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第1のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有するポリペプチド(VH(1)-CL(1))及び第2のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(2)-CL(2))をさらに含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第3のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第3のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有するポリペプチド(VH(3)-CL(3))をさらに含む。
一部の態様において、本発明による(多重特異性)抗体は、第3のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第3のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有し(即ち、第3のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が、軽鎖定常領域によって置き換えられている)、第3のFab分子のFab軽鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab重鎖可変領域と共有し、第1のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有し(即ち、第1のFab分子がクロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が軽鎖定常領域によって置き換えられている)、第1のFab分子のFab軽鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖と共有するポリペプチド(VH(3)-CL(3)-VH(1)-CL(1)-VH(2)-CH1(2))を含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第1のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab重鎖定常領域と共有するポリペプチド(VL(1)-CH1(1))及び第2のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(2)-CL(2))をさらに含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第3のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第3のFab分子のFab重鎖定常領域と共有するポリペプチド(VL(3)-CH1(3))をさらに含む。
一態様において、本発明は、
(A)HLA-A2/MAGE-A4に結合する第1の抗原結合ドメインであって、(従来の)Fab分子であり、且つ
(i)配列番号25のHCDR1、配列番号26のHCDR2及び配列番号27のHCDR3を含むVHと、配列番号28のLCDR1、配列番号29のLCDR2及び配列番号30のLCDR3を含むVL;
(ii)配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号3のHCDR3を含むVHと、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2及び配列番号6のLCDR3を含むVL;
(iii)配列番号41のHCDR1、配列番号42のHCDR2、及び配列番号43のHCDR3を含むVHと、配列番号44のLCDR1、配列番号45のLCDR2及び配列番号46のLCDR3を含むVL;
(iv)配列番号9のHCDR1、配列番号10のHCDR2、及び配列番号11のHCDR3を含むVHと、配列番号12のLCDR1、配列番号13のLCDR2及び配列番号14のLCDR3を含むVL;
(v)配列番号17のHCDR1、配列番号18のHCDR2、及び配列番号19のHCDR3を含むVHと、配列番号20のLCDR1、配列番号21のLCDR2及び配列番号22のLCDR3を含むVL;又は
(vi)配列番号33のHCDR1、配列番号34のHCDR2、及び配列番号35のHCDR3を含むVHと、配列番号36のLCDR1、配列番号37のLCDR2及び配列番号38のLCDR3を含むVL;
(特に、配列番号25のHCDR1、配列番号26のHCDR2及び配列番号27のHCDR3を含むVHと、配列番号28のLCDR1、配列番号29のLCDR2及び配列番号30のLCDR3を含むVL)
を含む第1の抗原結合ドメインと;
(B)第2の抗原、特にT細胞活性化抗原、より詳細にはCD3に結合する第2の抗原結合ドメインであって、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメインVLとVH又は定常ドメインCLとCH1が互いによって置き換えられているFab分子である、第2の抗原結合ドメインと;
(C)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む(多重特異性)抗体を提供し、
ここで、
(i)(A)の第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で(B)の第2の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合し、(B)の第2の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で(C)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合しているか、又は
(ii)(B)の第2の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で(A)の第1の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合し、(A)の第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で(C)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
好ましい態様において、本発明は、
(A)HLA-A2/MAGE-A4に結合する第1及び第3の抗原結合ドメインであって、第1及び第3の抗原結合ドメインの各々が、(従来の)Fab分子であり、且つ
(i)配列番号25のHCDR1、配列番号26のHCDR2及び配列番号27のHCDR3を含むVHと、配列番号28のLCDR1、配列番号29のLCDR2及び配列番号30のLCDR3を含むVL;
(ii)配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号3のHCDR3を含むVHと、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2及び配列番号6のLCDR3を含むVL;
(iii)配列番号41のHCDR1、配列番号42のHCDR2、及び配列番号43のHCDR3を含むVHと、配列番号44のLCDR1、配列番号45のLCDR2及び配列番号46のLCDR3を含むVL;
(iv)配列番号9のHCDR1、配列番号10のHCDR2、及び配列番号11のHCDR3を含むVHと、配列番号12のLCDR1、配列番号13のLCDR2及び配列番号14のLCDR3を含むVL;
(v)配列番号17のHCDR1、配列番号18のHCDR2、及び配列番号19のHCDR3を含むVHと、配列番号20のLCDR1、配列番号21のLCDR2及び配列番号22のLCDR3を含むVL;又は
(vi)配列番号33のHCDR1、配列番号34のHCDR2、及び配列番号35のHCDR3を含むVHと、配列番号36のLCDR1、配列番号37のLCDR2及び配列番号38のLCDR3を含むVL;
(特に、配列番号25のHCDR1、配列番号26のHCDR2及び配列番号27のHCDR3を含むVHと、配列番号28のLCDR1、配列番号29のLCDR2及び配列番号30のLCDR3を含むVL)
を含む第1及び第3の抗原結合ドメインと;
(B)第2の抗原、特にT細胞活性化抗原、より詳細にはCD3に結合する第2の抗原結合ドメインであって、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメインVLとVH又は定常ドメインCLとCH1が互いによって置き換えられているFab分子である、第2の抗原結合ドメインと;
(C)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む(多重特異性)抗体を提供し、
ここで、
(i)(A)の第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で(B)の第2の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合し、(B)の第2の抗原結合ドメイン及び(A)の第3の抗原結合ドメインは、各々がFab重鎖のC末端で(C)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合しているか、又は
(ii)(B)の第2の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で(A)の第1の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合し、(A)の第1の抗原結合ドメイン及び(A)の第3の抗原結合ドメインは、各々がFab重鎖のC末端で(C)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
別の態様において、本発明は、
(A)HLA-A2/MAGE-A4に結合する第1の抗原結合ドメインであって、(従来の)Fab分子であり、且つ
(i)配列番号25のHCDR1、配列番号26のHCDR2及び配列番号27のHCDR3を含むVHと、配列番号28のLCDR1、配列番号29のLCDR2及び配列番号30のLCDR3を含むVL;
(ii)配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号3のHCDR3を含むVHと、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2及び配列番号6のLCDR3を含むVL;
(iii)配列番号41のHCDR1、配列番号42のHCDR2、及び配列番号43のHCDR3を含むVHと、配列番号44のLCDR1、配列番号45のLCDR2及び配列番号46のLCDR3を含むVL;
(iv)配列番号9のHCDR1、配列番号10のHCDR2、及び配列番号11のHCDR3を含むVHと、配列番号12のLCDR1、配列番号13のLCDR2及び配列番号14のLCDR3を含むVL;
(v)配列番号17のHCDR1、配列番号18のHCDR2、及び配列番号19のHCDR3を含むVHと、配列番号20のLCDR1、配列番号21のLCDR2及び配列番号22のLCDR3を含むVL;又は
(vi)配列番号33のHCDR1、配列番号34のHCDR2、及び配列番号35のHCDR3を含むVHと、配列番号36のLCDR1、配列番号37のLCDR2及び配列番号38のLCDR3を含むVL;
(特に、配列番号25のHCDR1、配列番号26のHCDR2及び配列番号27のHCDR3を含むVHと、配列番号28のLCDR1、配列番号29のLCDR2及び配列番号30のLCDR3を含むVL)
を含む第1の抗原結合ドメインと;
(B)第2の抗原、特にT細胞活性化抗原、より詳細にはCD3に結合する第2の抗原結合ドメインであって、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメインVLとVH又は定常ドメインCLとCH1が互いによって置き換えられているFab分子である、第2の抗原結合ドメインと;
(C)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む(多重特異性)抗体を提供し、
ここで、
(i)(A)の第1の抗原結合ドメイン及び(B)の第2の抗原結合ドメインは、各々がFab重鎖のC末端で(C)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
本発明による(多重特異性)抗体の異なる構造のすべてにおいて、本明細書に記載されるアミノ酸置換(「電荷修飾」)は、存在する場合、第1及び(存在する場合)第3の抗原結合ドメイン/Fab分子のCH1及びCLドメイン、又は第2の抗原結合ドメイン/Fab分子のCH1又はCLドメインにおけるものでありうる。好ましくは、それらは、第1及び(存在する場合)第3の抗原結合ドメイン/Fab分子のCH1ドメイン及びCLドメインにおけるものである。本発明の概念によれば、本明細書に記載されるアミノ酸置換が、第1(及び存在する場合、第3)の抗原結合ドメイン/Fab分子において行われる場合、このようなアミノ酸置換は、第2の抗原結合ドメイン/Fab分子において行われない。逆に、本明細書に記載されるアミノ酸置換が、第2の抗原結合ドメイン/Fab分子において行われる場合、このようなアミノ酸置換は、第1(及び存在する場合、第3)の抗原結合ドメイン/Fab分子において行われない。アミノ酸置換は、好ましくは、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメインVLとVH1が互いによって置き換えらえているFab分子を含む(多重特異性)抗体において行われる。
本発明による(多重特異性)抗体の好ましい態様において、特に、本明細書に記載されるアミノ酸置換が第1(及び存在する場合、第3)の抗原結合ドメイン/Fab分子において行われる場合、第1(及び存在する場合、第3)のFab分子の定常ドメインCLは、カッパアイソタイプのものである。本発明による(多重特異性)抗体の他の態様において、特に、本明細書に記載されるアミノ酸置換が、第2の抗原結合ドメイン/Fab分子において行われる場合、第2の抗原結合ドメイン/Fab分子の定常ドメインCLは、カッパアイソタイプのものである。いくつかの態様において、第1(及び存在する場合、第3)の抗原結合ドメイン/Fab分子の定常ドメインCL、並びに第2の抗原結合ドメイン/Fab分子の定常ドメインCLは、カッパアイソタイプのものである。
一態様において、本発明は、
(A)HLA-A2/MAGE-A4に結合する第1の抗原結合ドメインであって、(従来の)Fab分子であり、且つ
(i)配列番号25のHCDR1、配列番号26のHCDR2及び配列番号27のHCDR3を含むVHと、配列番号28のLCDR1、配列番号29のLCDR2及び配列番号30のLCDR3を含むVL;
(ii)配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号3のHCDR3を含むVHと、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2及び配列番号6のLCDR3を含むVL;
(iii)配列番号41のHCDR1、配列番号42のHCDR2、及び配列番号43のHCDR3を含むVHと、配列番号44のLCDR1、配列番号45のLCDR2及び配列番号46のLCDR3を含むVL;
(iv)配列番号9のHCDR1、配列番号10のHCDR2、及び配列番号11のHCDR3を含むVHと、配列番号12のLCDR1、配列番号13のLCDR2及び配列番号14のLCDR3を含むVL;
(v)配列番号17のHCDR1、配列番号18のHCDR2、及び配列番号19のHCDR3を含むVHと、配列番号20のLCDR1、配列番号21のLCDR2及び配列番号22のLCDR3を含むVL;又は
(vi)配列番号33のHCDR1、配列番号34のHCDR2、及び配列番号35のHCDR3を含むVHと、配列番号36のLCDR1、配列番号37のLCDR2及び配列番号38のLCDR3を含むVL;
(特に、配列番号25のHCDR1、配列番号26のHCDR2及び配列番号27のHCDR3を含むVHと、配列番号28のLCDR1、配列番号29のLCDR2及び配列番号30のLCDR3を含むVL)
を含む第1の抗原結合ドメインと;
(B)第2の抗原、特にT細胞活性化抗原、より詳細にはCD3に結合する第2の抗原結合ドメインであって、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメインVLとVHが互いによって置き換えられているFab分子である、第2の抗原結合ドメインと;
(C)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む(多重特異性)抗体を提供し、
ここで、(A)の第1の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸がリジン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、位置123のアミノ酸が、リジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も好ましくはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによる番号付け)、(A)の第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、位置213のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、
ここで、
(i)(A)の第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で(B)の第2の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合し、(B)の第2の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で(C)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合しているか、又は
(ii)(B)の第2の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で(A)の第1の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合し、(A)の第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で(C)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
好ましい態様において、本発明は、
(A)HLA-A2/MAGE-A4に結合する第1及び第3の抗原結合ドメインであって、第1及び第3の抗原結合ドメインの各々が、(従来の)Fab分子であり、且つ
(i)配列番号25のHCDR1、配列番号26のHCDR2及び配列番号27のHCDR3を含むVHと、配列番号28のLCDR1、配列番号29のLCDR2及び配列番号30のLCDR3を含むVL;
(ii)配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号3のHCDR3を含むVHと、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2及び配列番号6のLCDR3を含むVL;
(iii)配列番号41のHCDR1、配列番号42のHCDR2、及び配列番号43のHCDR3を含むVHと、配列番号44のLCDR1、配列番号45のLCDR2及び配列番号46のLCDR3を含むVL;
(iv)配列番号9のHCDR1、配列番号10のHCDR2、及び配列番号11のHCDR3を含むVHと、配列番号12のLCDR1、配列番号13のLCDR2及び配列番号14のLCDR3を含むVL;
(v)配列番号17のHCDR1、配列番号18のHCDR2、及び配列番号19のHCDR3を含むVHと、配列番号20のLCDR1、配列番号21のLCDR2及び配列番号22のLCDR3を含むVL;又は
(vi)配列番号33のHCDR1、配列番号34のHCDR2、及び配列番号35のHCDR3を含むVHと、配列番号36のLCDR1、配列番号37のLCDR2及び配列番号38のLCDR3を含むVL;
(特に、配列番号25のHCDR1、配列番号26のHCDR2及び配列番号27のHCDR3を含むVHと、配列番号28のLCDR1、配列番号29のLCDR2及び配列番号30のLCDR3を含むVL)
を含む第1の抗原結合ドメインと;
(B)第2の抗原、特にT細胞活性化抗原、より詳細にはCD3に結合する第2の抗原結合ドメインであって、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメインVLとVHが互いによって置き換えられているFab分子である、第2の抗原結合ドメインと;
(C)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む(多重特異性)抗体を提供し、
ここで、(A)の第1の抗原結合ドメイン及び(A)の第3の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸はリジン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、位置123のアミノ酸はリジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も好ましくはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによる番号付け)、(A)の第1の抗原結合ドメイン及び(A)の第3の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸はグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、位置213のアミノ酸はグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、
ここで、
(i)(A)の第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で(B)の第2の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合し、(B)の第2の抗原結合ドメイン及び(A)の第3の抗原結合ドメインは、各々がFab重鎖のC末端で(C)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合しているか、又は
(ii)(B)の第2の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で(A)の第1の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合し、(A)の第1の抗原結合ドメイン及び(A)の第3の抗原結合ドメインは、各々がFab重鎖のC末端で(C)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
別の態様において、本発明は、
(A)HLA-A2/MAGE-A4に結合する第1の抗原結合ドメインであって、(従来の)Fab分子であり、且つ
(i)配列番号25のHCDR1、配列番号26のHCDR2及び配列番号27のHCDR3を含むVHと、配列番号28のLCDR1、配列番号29のLCDR2及び配列番号30のLCDR3を含むVL;
(ii)配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号3のHCDR3を含むVHと、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2及び配列番号6のLCDR3を含むVL;
(iii)配列番号41のHCDR1、配列番号42のHCDR2、及び配列番号43のHCDR3を含むVHと、配列番号44のLCDR1、配列番号45のLCDR2及び配列番号46のLCDR3を含むVL;
(iv)配列番号9のHCDR1、配列番号10のHCDR2、及び配列番号11のHCDR3を含むVHと、配列番号12のLCDR1、配列番号13のLCDR2及び配列番号14のLCDR3を含むVL;
(v)配列番号17のHCDR1、配列番号18のHCDR2、及び配列番号19のHCDR3を含むVHと、配列番号20のLCDR1、配列番号21のLCDR2及び配列番号22のLCDR3を含むVL;又は
(vi)配列番号33のHCDR1、配列番号34のHCDR2、及び配列番号35のHCDR3を含むVHと、配列番号36のLCDR1、配列番号37のLCDR2及び配列番号38のLCDR3を含むVL;
(特に、配列番号25のHCDR1、配列番号26のHCDR2及び配列番号27のHCDR3を含むVHと、配列番号28のLCDR1、配列番号29のLCDR2及び配列番号30のLCDR3を含むVL)
を含む第1の抗原結合ドメインと;
(B)第2の抗原、特にT細胞活性化抗原、より詳細にはCD3に結合する第2の抗原結合ドメインであって、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメインVLとVHが互いによって置き換えられているFab分子である、第2の抗原結合ドメインと;
(C)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む(多重特異性)抗体を提供し、
ここで、(A)の第1の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸はリジン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、位置123のアミノ酸は、リジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も好ましくはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによる番号付け)、(A)の第1の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸はグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、位置213のアミノ酸はグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、
(A)の第1の抗原結合ドメイン及び(B)の第2の抗原結合ドメインは、各々がFab重鎖のC末端で(C)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
上記の態様のいずれかによると、(多重特異性)抗体の構成要素(例えば、Fab分子、Fcドメイン)は、直接的に又は様々なリンカーを介して、特に本明細書に記載される又は当技術分野において知られている、1個又は複数個のアミノ酸、典型的には約2~20個のアミノ酸を含むペプチドリンカーを介して融合されていてもよい。適切な非免疫原性ペプチドリンカーには、例えば、(G4S)n、(SG4)n、(G4S)n又はG4(SG4)nペプチドリンカーが含まれ、「n」は通常1~10、典型的には2~4の整数である。
さらに、上記の態様のいずれかによれば、第2の抗原結合ドメインは、(i)配列番号59のHCDR1、配列番号60のHCDR2、及び配列番号61のHCDR3を含むVHと、配列番号62のLCDR1、配列番号63のLCDR2及び配列番号64のLCDR3を含むVL、又は(ii)配列番号51のHCDR1、配列番号52のHCDR2、及び配列番号53のHCDR3を含むVHと、配列番号54のLCDR1、配列番号55のLCDR2及び配列番号56のLCDR3を含むVL(特に配列番号59のHCDR1、配列番号60のHCDR2、配列番号61のHCDR3を含むVHと、配列番号62のLCDR1、配列番号63のLCDR2及び配列番号64のLCDR3を含むVL);及び/又は(i)配列番号65のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号66のアミノ酸配列を含むVL、又は(ii)配列番号57のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号58のアミノ酸配列を含むVL(特に配列番号65のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号66アミノ酸配列を含むVL)を含みうる。
好ましい態様において、本発明は、
(A)HLA-A2/MAGE-A4に結合する第1及び第3の抗原結合ドメインであって、第1及び第3の抗原結合ドメインの各々が、(従来の)Fab分子であり、且つ
(i)配列番号25のHCDR1、配列番号26のHCDR2及び配列番号27のHCDR3を含むVHと、配列番号28のLCDR1、配列番号29のLCDR2及び配列番号30のLCDR3を含むVL;
(ii)配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号3のHCDR3を含むVHと、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2及び配列番号6のLCDR3を含むVL;
(iii)配列番号41のHCDR1、配列番号42のHCDR2、及び配列番号43のHCDR3を含むVHと、配列番号44のLCDR1、配列番号45のLCDR2及び配列番号46のLCDR3を含むVL;
(iv)配列番号9のHCDR1、配列番号10のHCDR2、及び配列番号11のHCDR3を含むVHと、配列番号12のLCDR1、配列番号13のLCDR2及び配列番号14のLCDR3を含むVL;
(v)配列番号17のHCDR1、配列番号18のHCDR2、及び配列番号19のHCDR3を含むVHと、配列番号20のLCDR1、配列番号21のLCDR2及び配列番号22のLCDR3を含むVL;又は
(vi)配列番号33のHCDR1、配列番号34のHCDR2、及び配列番号35のHCDR3を含むVHと、配列番号36のLCDR1、配列番号37のLCDR2及び配列番号38のLCDR3を含むVL;
(特に、配列番号25のHCDR1、配列番号26のHCDR2及び配列番号27のHCDR3を含むVHと、配列番号28のLCDR1、配列番号29のLCDR2及び配列番号30のLCDR3を含むVL)
を含む第1の抗原結合ドメインと;
(B)第2の抗原、特にT細胞活性化抗原、より詳細にはCD3に結合する第2の抗原結合ドメインであって、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメインVLとVHが互いによって置き換えられているFab分子であり、且つ
(i)配列番号59のHCDR1、配列番号60のHCDR2、及び配列番号61のHCDR3を含むVHと、配列番号62のLCDR1、配列番号63のLCDR2及び配列番号64のLCDR3を含むVL;又は
(ii)配列番号51のHCDR1、配列番号52のHCDR2、及び配列番号53のHCDR3を含むVHと、配列番号54のLCDR1、配列番号55のLCDR2及び配列番号56のLCDR3を含むVL;
(特に、配列番号59のHCDR1、配列番号60のHCDR2及び配列番号61のHCDR3を含むVHと、配列番号62のLCDR1、配列番号63のLCDR2及び配列番号64のLCDR3を含むVL)
を含む第2の抗原結合ドメインと;
(C)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含む(多重特異性)抗体を提供し、
ここで、
(A)の第1及び第3の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸はリジン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、位置123のアミノ酸はリジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も好ましくはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによる番号付け)、(A)の第1及び第3の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸はグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、位置213のアミノ酸はグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、
さらに、
(A)の第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で(B)の第2の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合し、(B)の第2の抗原結合ドメイン及び(A)の第3の抗原結合ドメインは、各々がFab重鎖のC末端で(C)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
さらに好ましい態様において、本発明は、
(A)HLA-A2/MAGE-A4に結合する第1及び第3の抗原結合ドメインであって、第1及び第3の抗原結合ドメインの各々が、(従来の)Fab分子であり、且つ
(i)配列番号31のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号32のアミノ酸配列を含むVL;
(i)配列番号7のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号8のアミノ酸配列を含むVL;
(i)配列番号47のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号48のアミノ酸配列を含むVL;
(i)配列番号15のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号16のアミノ酸配列を含むVL;
(i)配列番号23のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号24のアミノ酸配列を含むVL;
(i)配列番号39のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号40のアミノ酸配列を含むVL;
(特に配列番号31のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号32のアミノ酸配列を含むVL)
を含む第1及び第3の抗原結合ドメイン;
(B)第2の抗原、特にT細胞活性化抗原、より詳細にはCD3に結合する第2の抗原結合ドメインであって、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメインVLとVHが互いによって置き換えられているFab分子であり、且つ
(i)配列番号65のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号66のアミノ酸配列を含むVL;又は
(ii)配列番号57のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号58のアミノ酸配列を含むVL;
(特に配列番号65のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号66のアミノ酸配列を含むVL)
を含む第2の抗原結合ドメイン;並びに
(C)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメイン
を含む(多重特異性)抗体を提供し、
ここで、
(A)の第1及び第3の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸はリジン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、位置123のアミノ酸はリジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も好ましくはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによる番号付け)、(A)の第1及び第3の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸はグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、位置213のアミノ酸はグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、
さらに、
(A)の第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で(B)の第2の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合し、(B)の第2の抗原結合ドメイン及び(A)の第3の抗原結合ドメインは、各々がFab重鎖のC末端で(C)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
本発明のこれらの態様による一態様では、Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、位置366のトレオニン残基がトリプトファン残基で置き換えられており(T366W)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、位置407のチロシン残基がバリン残基で置き換えられており(Y407V)、任意選択的に位置366のトレオニン残基がセリン残基で置き換えられており(T366S)、位置368のロイシン残基がアラニン残基で置き換えられている(L368A)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
本発明のこれらの態様によるさらなる態様では、Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、追加的に、位置354のセリン残基がシステイン残基で置き換えられている(S354C)か又は位置356のグルタミン酸残基がシステイン残基で置き換えられており(E356C)(特に、位置354のセリン残基がシステイン残基で置き換えられており)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、追加的に、位置349のチロシン残基がシステイン残基と置により置き換えられて(Y349C)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
本発明のこれらの態様によるさらなる態様では、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの各々において、位置234のロイシン残基がアラニン残基(L234A)と置き換わっており、位置235のロイシン残基がアラニン残基と置き換わっており(L235A)、位置329のプロリン残基がグリシン残基により置き換えられている(P329G)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
本発明のこれらの態様によるさらなる態様では、Fcドメインは、ヒトIgG1 Fcドメインである。
具体的な態様では、(多重特異性)抗体は、配列番号68の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号69の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号70の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド(特に、2つのポリペプチド)、及び配列番号72の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。さらに具体的な態様では、(多重特異性)抗体は、配列番号68のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号69のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号70のアミノ酸配列を含むポリペプチド(特に、2つのポリペプチド)、及び配列番号72のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
一態様において、本発明は、配列番号68の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号69の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号70の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド(特に、2つのポリペプチド)、及び配列番号72の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む、HLA-A2/MAGE-A4及びCD3に結合する(多重特異性)抗体を提供する。一態様において、本発明は、配列番号68のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号69のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号70のアミノ酸配列を含むポリペプチド(特に、2つのポリペプチド)、及び配列番号72のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む、HLA-A2/MAGE-A4及びCD3に結合する(多重特異性)抗体を提供する。
さらなる具体的な態様では、(多重特異性)抗体は、配列番号67の配列に少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号69の配列に少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号70の配列に少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド(特に、2つのポリペプチド)、及び配列番号71の配列に少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。さらなる具体的な態様では、(多重特異性)抗体は、配列番号67のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号69のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号70のアミノ酸配列を含むポリペプチド(特に、2つのポリペプチド)、及び配列番号71のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
一態様において、本発明は、配列番号67の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号69の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号70の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド(特に、2つのポリペプチド)、及び配列番号71の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む、HLA-A2/MAGE-A4及びCD3に結合する(多重特異性)抗体を提供する。一態様において、本発明は、配列番号67のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号69のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号70のアミノ酸配列を含むポリペプチド(特に、2つのポリペプチド)、及び配列番号71のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む、HLA-A2/MAGE-A4及びCD3に結合する(多重特異性)抗体を提供する。
10.Fcドメインバリアント
好ましい態様において、本発明の(多重特異性)抗体は、第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインを含む。
(多重特異性)抗体のFcドメインは、免疫グロブリン分子の重鎖ドメインを含む一対のポリペプチド鎖からなる。例えば、免疫グロブリンG(IgG)分子のFcドメインは、ダイマーであり、その各サブユニットは、CH2及びCH3 IgG重鎖定常ドメインを含む。Fcドメインの2つのサブユニットは、互いに安定な会合が可能である。一態様において、本発明の(多重特異性)抗体は1つを超えるFcドメインを含まない。
一態様において、(多重特異性)抗体のFcドメインは、IgG Fcドメインである。好ましい態様において、FcドメインはIgG1 Fcドメインである。別の態様において、Fcドメインは、IgG4 Fcドメインである。より具体的な態様において、Fcドメインは、位置S228にアミノ酸置換、特にアミノ酸置換S228Pを含むIgG4 Fcドメインである(Kabat EUインデックス番号付け)。このアミノ酸置換は、インビボでのIgG4抗体のFabアーム交換を低減する(Stubenrauch et al.,Drug Metabolism and Disposition 38,84-91(2010)を参照されたい)。さらなる好ましい態様において、Fcドメインは、ヒトFcドメインである。より好ましい態様において、Fcドメインは、ヒトIgG1 Fcドメインである。ヒトIgG1 Fc領域の例示的な配列は、配列番号78で与えられる。
a)ヘテロ二量体化を促進するFcドメイン修飾
本発明による(多重特異性)抗体は、Fcドメインの2つのサブユニットの一方又は他方に融合し得る異なる抗原結合ドメインを含み、したがってFcドメインの2つのサブユニットは、典型的には2つの非同一ポリペプチド鎖に含まれる。これらのポリペプチドの組み換え共発現及びその後の二量体化によって、2つのポリペプチドのいくつかの可能な組み合わせが生じる。組み換え産生における(多重特異性)抗体の収率及び純度を改善するため、(多重特異性)抗体のFcドメインに、所望のポリペプチドの会合を促進する修飾を導入することが有利である。
したがって、好ましい態様において、本発明による(多重特異性)抗体のFcドメインは、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの会合を促進する修飾を含む。ヒトIgG Fcドメインの2つのサブユニット間の最も広範なタンパク質-タンパク質相互作用の部位は、FcドメインのCH3ドメイン内にある。したがって、一態様では、上記修飾は、FcドメインのCH3ドメインの中にある。
ヘテロ二量体化を強化するために、FcドメインのCH3ドメイン中の修飾に複数の手法が存在し、それらは例えば、国際公開第96/27011号、国際公開第98/050431号、欧州特許第1870459号、国際公開第2007/110205号、国際公開第2007/147901号、国際公開第2009/089004号、国際公開第2010/129304号、国際公開第2011/90754号、国際公開第2011/143545号、国際公開第2012058768号、国際公開第2013157954号、国際公開第2013096291号に十分に記載されている。典型的には、すべてのこのような手法において、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメイン及びFcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインは、両方とも、各CH3ドメイン(又はそれを含む重鎖)がもはやそれ自体とホモ二量体化することができず、相補的に操作された他のCH3ドメインとヘテロ二量体化させるような(第1及び第2のCH3ドメインがヘテロ二量体化し、2つの第1又は2つの第2のCH3ドメインの間にホモ二量体が形成されないような)、相補的な様式で操作される。改善された重鎖ヘテロ二量体化のためのこれらの異なる手法は、重鎖/軽鎖の誤対合及びベンス・ジョーンズ型副生成物を低減する、(多重特異性)抗体における重鎖-軽鎖修飾との組み合わせでの異なる代替例として考慮される(例えば、1つの結合アームにおけるVH及びVLの交換/置き換え、並びにCH1/CL界面における反対の電荷を有する荷電アミノ酸の置換の導入)。
具体的な態様において、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの会合を促進する前記修飾は、いわゆる「ノブ・イントゥ・ホール(knob-into-hole)」修飾であり、Fcドメインの2つのサブユニットの一方に「ノブ(knob)」修飾及びFcドメインの2つのサブユニットの他方に「ホール(hole)」修飾を含む。
ノブ・イントゥ・ホール技術は、例えば、米国特許第5,731,168号、米国特許第7,695,936号、Ridgway et al.,Prot Eng 9、617-621(1996)及びCarter、J Immunol Meth 248、7-15(2001)に記載される。通常、この方法は、第1のポリペプチドの界面にある突起(「ノブ」)と、第2のポリペプチドの界面にある空洞(「ホール」)とを導入することを含み、これにより、ヘテロ二量体形成を促進し、ホモ二量体形成を妨害するように、突起を空洞内に位置させることができる。突起は、第1のポリペプチドの界面からの小さなアミノ酸側鎖を、より大きな側鎖(例えば、チロシン又はトリプトファン)で置き換えることによって構築される。突起と同一又は同様の大きさの相補性空洞は、大きなアミノ酸側鎖を、より小さなアミノ酸側鎖(例えば、アラニン又はトレオニン)で置き換えることによって、第2のポリペプチドの界面に生成される。
したがって、好ましい態様では、(多重特異性)抗体のFcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基は、より大きな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置き換えられ、それによって、第1のサブユニットのCH3ドメイン内に、第2のサブユニットのCH3ドメイン内の空洞に位置することが可能な突起を生成し、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基は、より小さな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置き換えられ、それによって、第2のサブユニットのCH3ドメイン内に空洞を生成し、その中に、第1のサブユニットのCH3ドメイン内の突起が位置することが可能である。
好ましくは、より大きな側鎖体積を有する前記アミノ酸残基は、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)及びトリプトファン(W)からなる群から選択される。
好ましくは、より小さな側鎖体積を有する前記アミノ酸残基は、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)及びバリン(V)からなる群から選択される。
突起及び空洞は、ポリペプチドをコードする核酸を変更することによって、例えば、部位特異的変異導入法によって、又はペプチド合成によって作製することができる。
具体的な態様では、Fcドメインの第1のサブユニット(「ノブ」サブユニット)(のCH3ドメイン)において、位置366のトレオニン残基がトリプトファン残基で置き換えられており(T366W)、Fcドメインの第2のサブユニット(「ホール」サブユニット)(のCH3ドメイン)において、位置407のチロシン残基がバリン残基で置き換えられている(Y407V)。一態様では、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、追加的に、位置366のトレオニン残基がセリン残基で置き換えられており(T366S)、位置368のロイシン残基がアラニン残基で置き換えられている(L368A)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
さらなる態様では、Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、追加的に位置354のセリン残基がシステイン残基で置き換えられており(S354C)又は位置356のグルタミン酸残基がシステイン残基で置き換えられており(E356C)(特に、位置354のセリン残基がシステイン残基で置き換えられており)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、追加的に位置349のチロシン残基がシステイン残基で置き換えられている(Y349C)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。これら2つのシステイン残基の導入によって、Fcドメインの2つのサブユニットの間にジスルフィド架橋の形成が生じ、二量体がさらに安定化する(Carter,J Immunol Methods 248,7-15(2001))。
好ましい態様において、Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換S354C及びT366Wを含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換Y349C、T366S、L368A及びY407Vを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
好ましい態様では、好ましくはT細胞活性化抗原、例えばCD3に結合する第2の抗原結合ドメインは、Fcドメインの第1のサブユニット(「ノブ」修飾を含む)に融合する(任意選択的に、HLA-A2/MAGE-A4に結合する第1の抗原結合ドメイン、及び/又はペプチドリンカーを介して)。理論に束縛されるものではないが、第2の抗原(例えばCD3)に結合する抗原結合ドメインの、Fcドメインのノブ含有サブユニットへの融合は、第2の抗原に結合する2つの抗原結合ドメインを含む抗体の生成(2つのノブ含有ポリペプチドの立体的衝突(steric clash))を(さらに)最小化する。
ヘテロ二量体化を強化するCH3修飾のための他の技術が本発明による代替例として考慮され、例えば、国際公開第96/27011号、国際公開第98/050431号、EP1870459、国際公開第2007/110205号、国際公開第2007/147901号、国際公開第2009/089004号、国際公開第2010/129304号、国際公開第2011/90754号、国際公開第2011/143545号、国際公開第2012/058768号、国際公開第2013/157954号、国際公開第2013/096291号に記載されている。
一態様では、EP1870459に記載されているヘテロ二量体化手法が代替的に使用される。この手法は、Fcドメインの2つのサブユニット間のCH3/CH3ドメイン界面における特定のアミノ酸位置における反対の電荷を有する荷電アミノ酸の導入に基づく。本発明の(多重特異性)抗体の特定の態様は、(Fcドメインの)2つのCH3ドメインの一方におけるアミノ酸変異R409D、K370E及びFcドメインのCH3ドメインの他方におけるアミノ酸変異D399K、E357Kである(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
別の態様において、本発明の(多重特異性)抗体は、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおけるアミノ酸変異T366W及びFcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおけるアミノ酸変異T366S、L368A、Y407Vを含み、追加的に、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおけるアミノ酸変異R409D、K370E及びFcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおけるアミノ酸変異D399K、E357Kを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
別の態様において、本発明の(多重特異性)抗体は、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおけるアミノ酸変異S354C、T366W及びFcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおけるアミノ酸変異Y349C、T366S、L368A、Y407Vを含むか、又は前記(多重特異性)抗体は、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメイン内のアミノ酸変異Y349C、T366W及びFcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメイン内のアミノ酸変異S354C、T366S、L368A、Y407Vを含み、追加的に、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメイン内のアミノ酸変異R409D、K370E及びFcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメイン内のアミノ酸変異D399K、E357Kを含む(すべてKabat EUインデックスによる番号付け)。
一態様では、国際公開第2013/157953号に記載されているヘテロ二量体化手法が代替的に使用される。一態様において、第1のCH3ドメインはアミノ酸変異T366Kを含み、第2のCH3ドメインはアミノ酸変異L351Dを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。さらなる態様において、第1のCH3ドメインは、さらなるアミノ酸変異L351Kを含む。さらなる態様において、第2のCH3ドメインは、Y349E、Y349D及びL368Eから選択されるアミノ酸変異(特に、L368E)をさらに含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
一態様では、国際公開第2012/058768号に記載されているヘテロ二量体化手法が代替的に使用される。一態様において、第1のCH3ドメインはアミノ酸変異L351Y、Y407Aを含み、第2のCH3ドメインはアミノ酸変異T366A、K409Fを含む。さらなる態様において、第2のCH3ドメインは、位置T411、D399、S400、F405、N390又はK392に、例えば、a)T411N、T411R、T411Q、T411K、T411D、T411E又はT411W、b)D399R、D399W、D399Y又はD399K、c)S400E、S400D、S400R又はS400K、d)F405I、F405M、F405T、F405S、F405V又はF405W、e)N390R、N390K又はN390D、f)K392V、K392M、K392R、K392L、K392F又はK392Eから選択されるさらなるアミノ酸変異を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。さらなる態様において、第1のCH3ドメインは、アミノ酸変異L351Y、Y407Aを含み、第2のCH3ドメインはアミノ酸変異T366V、K409Fを含む。さらなる態様において、第1のCH3ドメインはアミノ酸変異Y407Aを含み、第2のCH3ドメインはアミノ酸変異T366A、K409Fを含む。さらなる態様において、第2のCH3ドメインは、アミノ酸変異K392E、T411E、D399R及びS400Rをさらに含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
一態様では、国際公開第2011/143545号に記載されているヘテロ二量体化手法が代替的に使用され、例えば、368及び409からなる群から選択される位置にアミノ酸修飾を有する(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
一態様では、上記に記載されたノブ・イントゥ・ホール技術も使用する、国際公開第2011/090762号に記載されているヘテロ二量体化手法が代替的に使用される。一態様において、第1のCH3ドメインはアミノ酸変異T366Wを含み、第2のCH3ドメインはアミノ酸変異Y407Aを含む。一態様において、第1のCH3ドメインはアミノ酸変異T366Yを含み、第2のCH3ドメインはアミノ酸変異Y407Tを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
一態様において、(多重特異性)抗体又はそのFcドメインは、IgG2サブクラスのものであり、国際公開第2010/129304号に記載されているヘテロ二量体化手法が代替的に使用される。
代替的な態様では、Fcドメインの第1のサブユニット及び第2のサブユニットの会合を促進する修飾は、例えば、国際公開第2009/089004号に記載されるように、静電ステアリング効果を媒介する修飾を含む。通常、この方法は、2つのFcドメインサブユニットの界面に、ホモ二量体形成が静電的に望ましくないが、ヘテロ二量体化が静電的に望ましくなるように、帯電したアミノ酸残基による1つ又は複数のアミノ酸残基の置き換えを含む。1つのこのような態様において、第1のCH3ドメインは、負に帯電したアミノ酸によるK392又はN392のアミノ酸置換(例えば、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)による、特にK392D又はN392D)を含み、第2のCH3ドメインは、正に帯電したアミノ酸によるD399、E356、D356又はE357のアミノ酸置換(例えば、リジン(K)又はアルギニン(R)による、特にD399K、E356K、D356K又はE357K、より詳細にはD399K及びE356K)を含む。さらなる態様において、第1のCH3ドメインは、負に帯電したアミノ酸によるK409又はR409のアミノ酸置換(例えば、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)による、特にK409D又はR409D)をさらに含む。さらなる態様において、第1のCH3ドメインは、負に帯電したアミノ酸(例えば、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D))によるK439及び/又はK370のアミノ酸置換を追加的に又は代替的に含む(すべてKabat EUインデックスによる番号付け)。
さらなる態様では、国際公開第2007/147901号に記載されているヘテロ二量体化手法が代替的に使用される。一態様において、第1のCH3ドメインは、アミノ酸変異K253E、D282K及びK322Dを含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸変異D239K、E240K及びK292Dを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
また別の態様では、国際公開第2007/110205号に記載されているヘテロ二量体化手法を代替的に使用することができる。
一態様において、Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換K392D及びK409Dを含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換D356K及びD399Kを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
b)Fc受容体結合及び/又はエフェクター機能を低下させるFcドメイン修飾
Fcドメインは、(多重特異性)抗体に、標的組織における良好な蓄積に寄与する長い血清半減期を含む好ましい薬物動態特性及び好ましい組織血液分布比を付与する。しかしながら、それは同時に、好ましい抗原担持細胞ではなく、Fc受容体を発現する細胞への(多重特異性)抗体の望ましくない標的化をもたらすことがある。さらに、Fc受容体シグナル伝達経路の同時活性化はサイトカイン放出をもたらすことがあり、これはT細胞活性化特性及び(多重特異性)抗体の長い半減期と組み合わさって、全身投与するとサイトカイン受容体の過剰な活性化及び重篤な副作用を生じる。T細胞以外の(Fc受容体担持)免疫細胞の活性化は、例えば、NK細胞によるT細胞の破壊の可能性によって、(多重特異性)抗体の有効性さえも低減しうる。
したがって、好ましい態様において、本発明による(多重特異性)抗体のFcドメインは、ネイティブIgG1 Fcドメインと比較して、Fc受容体への結合親和性の低減及び/又はエフェクター機能の低減を呈する。1つのこのような態様において、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む(多重特異性)抗体)は、ネイティブIgG1 Fcドメイン(又はネイティブIgG1 Fcドメインを含む(多重特異性)抗体)と比較して、50%未満、特に20%未満、さらに詳細には10%未満、最も詳細には5%未満の結合親和性をFc受容体に対して呈する、及び/又はネイティブIgG1 Fcドメインドメイン(又はネイティブIgG1 Fcドメインを含む(多重特異性)抗体)と比較して、50%未満、特に20%未満、さらに詳細には10%未満、最も詳細には5%未満のエフェクター機能を呈する。一態様において、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む(多重特異性)抗体)は、Fc受容体に実質的に結合しない及び/又はエフェクター機能を誘導しない。好ましい態様において、Fc受容体はFcγ受容体である。一態様では、Fc受容体は、ヒトFc受容体である。一態様では、Fc受容体は、活性化Fc受容体である。具体的な態様では、Fc受容体は、活性化ヒトFcγ受容体であり、さらに具体的には、ヒトFcγRIIIa、FcγRI又はFcγRIIaであり、最も詳細には、ヒトFcγRIIIaである。一態様において、エフェクター機能は、CDC、ADCC、ADCP及びサイトカイン分泌の群から選択される1つ又は複数である。好ましい態様では、エフェクター機能はADCCである。一態様において、Fcドメインは、ネイティブIgG1 Fcドメインと比較して、新生児Fc受容体(FcRn)に実質的に同様の結合親和性を呈する。FcRnへの実質的に同様の結合は、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む(多重特異性)抗体)が、ネイティブIgG1 Fcドメイン(又はネイティブIgG1 Fcドメインを含む(多重特異性)抗体)の約70%超、特に約80%超、さらに詳細には約90%超の結合親和性をFcRnに対して呈するとき、達成される。
一部の態様において、Fcドメインは、非操作Fcドメインと比較して、Fc受容体への結合親和性が低減される及び/又はエフェクター機能が低減されるように操作される。好ましい態様において、(多重特異性)抗体のFcドメインは、Fc受容体へのFcドメインの結合親和性及び/又はエフェクター機能を低減する1つ又は複数のアミノ酸変異を含む。典型的には、Fcドメインの2つのサブユニットそれぞれに、同じ1つ以上のアミノ酸変異が存在する。一態様では、アミノ酸変異は、Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性を下げる。一態様において、アミノ酸変異は、Fc受容体へのFcドメインの結合親和性を、少なくとも2分の1、少なくとも5分の1又は少なくとも10分の1に低減する。Fc受容体へのFcドメインの結合親和性を低減する1つを超えるアミノ酸変異が存在する態様において、これらのアミノ酸変異の組み合わせは、Fc受容体へのFcドメインの結合親和性を少なくとも10分の1、少なくとも20分の1又はさらには少なくとも50分の1にまで低減し得る。一態様において、操作Fcドメインを含む(多重特異性)抗体は、非操作Fcドメインを含む(多重特異性)抗体と比較して、20%未満、特に10%未満、さらに詳細には5%未満の結合親和性をFc受容体に対して呈する。好ましい態様において、Fc受容体はFcγ受容体である。一部の態様において、Fc受容体はヒトFc受容体である。いくつかの態様では、Fc受容体は、活性化Fc受容体である。具体的な態様では、Fc受容体は、活性化ヒトFcγ受容体であり、さらに具体的にはヒトFcγRIIIa、FcγRI又はFcγRIIaであり、最も具体的にはヒトFcγRIIIaである。好ましくは、これらの受容体の各々に対する結合が低減される。いくつかの態様では、補体成分に対する結合親和性、具体的にはC1qに対する結合親和性も低下する。一態様では、新生児Fc受容体(FcRn)に対する結合親和性は低減されない。FcRnへの実質的に同様の結合、即ち、前記受容体へのFcドメインの結合親和性の保存は、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む(多重特異性)抗体)が、Fcドメインの非操作形態(又は前記Fcドメインの非操作形態を含む(多重特異性)抗体)の結合親和性の約70%超をFcRn対して呈するとき、達成される。Fcドメイン又は前記Fcドメインを含む本発明の(多重特異性)抗体は、そのような親和性の約80%超、さらには約90%超を呈しうる。一部の態様において、(多重特異性)抗体のFcドメインは、非操作Fcドメインと比較して、エフェクター機能が低減されるように操作される。エフェクター機能の低減として、補体依存性細胞傷害(CDC)の低減、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)の低減、抗体依存性細胞食作用(ADCP)の低減、サイトカイン分泌の低減、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性抗原取り込みの低減、NK細胞への結合の低減、マクロファージへの結合の低減、単球への結合の低減、多形核細胞への結合の低減、直接的なシグナル伝達誘導性アポトーシスの低減、標的結合抗体の架橋の低減、樹状細胞成熟の低減、又はT細胞プライミングの低減のうちの1つ又は複数を挙げることができるが、これらに限定されない。一態様において、エフェクター機能の低減は、CDCの低減、ADCCの低減、ADCPの低減及びサイトカイン分泌の低減の群から選択される1つ又は複数である。好ましい態様では、エフェクター機能の低減は、ADCCの低減である。一態様において、ADCCの低減は、非操作Fcドメイン(又は非操作Fcドメインを含む(多重特異性)抗体)により誘導されるADCCの20%未満である。
一態様において、Fc受容体へのFcドメインの結合親和性及び/又はエフェクター機能を低減するアミノ酸変異は、アミノ酸置換である。一態様において、Fcドメインは、E233、L234、L235、N297、P331及びP329の群から選択される位置にアミノ酸置換を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。より具体的な態様において、Fcドメインは、L234、L235及びP329の群から選択される位置にアミノ酸置換を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。いくつかの態様において、Fcドメインは、アミノ酸置換L234A及びL235Aを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。1つのこのような態様において、Fcドメインは、IgG1 Fcドメイン、特にヒトIgG1 Fcドメインである。一態様では、Fcドメインは、P329位にアミノ酸置換を含む。より具体的な態様において、アミノ酸置換は、P329A又はP329G、特にP329Gである(Kabat EUインデックスによる番号付け)。一態様において、Fcドメインは、位置P329にアミノ酸置換を含み、E233、L234、L235、N297及びP331から選択される位置にさらなるアミノ酸置換を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。より具体的な態様において、さらなるアミノ酸置換は、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297D又はP331Sである。好ましい態様において、Fcドメインは、位置P329、L234及びL235にアミノ酸置換を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。より好ましい態様において、Fcドメインは、アミノ酸変異L234A、L235A及びP329G(「P329G LALA」、「PGLALA」又は「LALAPG」)を含む。具体的には、好ましい態様において、Fcドメインの各サブユニットは、アミノ酸置換L234A、L235A及びP329Gを含み(Kabat EUインデックス番号付け)、即ち、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの各々において、位置234のロイシン残基はアラニン残基と置き換えられており(L234A)、位置235のロイシン残基はアラニン残基で置き換えられており(L235A)、位置329のプロリン残基はグリシン残基により置き換えられている(P329G)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
1つのこのような態様において、Fcドメインは、IgG1 Fcドメイン、特にヒトIgG1 Fcドメインである。アミノ酸置換の「P329G LALA」の組み合わせは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2012/130831号に記載されているように、ヒトIgG1 FcドメインのFcγ受容体(同様に補体)結合をほとんど完全に消滅させる。国際公開第2012/130831号は、このような変異Fcドメインの調製方法及びその特性、例えばFc受容体結合又はエフェクター機能を決定するための方法も記載する。
IgG4抗体は、IgG1抗体と比較して、Fc受容体への結合親和性の低減及びエフェクター機能の低減を呈する。したがって、いくつかの態様において、本発明の(多重特異性)抗体のFcドメインは、IgG4 Fcドメイン、特にヒトIgG4 Fcドメインである。一態様において、IgG4 Fcドメインは、位置S228にアミノ酸置換を含み、具体的にはアミノ酸置換S228Pを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。Fc受容体への結合親和性及び/又はエフェクター機能をさらに低減させるため、一態様において、IgG4 Fcドメインは、位置L235におけるアミノ酸置換、具体的にはアミノ酸置換L235Eを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。別の態様において、IgG4 Fcドメインは、位置P329におけるアミノ酸置換、具体的にはアミノ酸置換P329Gを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。好ましい態様において、IgG4 Fcドメインは、位置S228、L235及びP329におけるアミノ酸置換、具体的にはアミノ酸置換S228P、L235E及びP329Gを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。このようなIgG4 Fcドメイン変異体及びこれらのFcγ受容体結合特性は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2012/130831号に記載されている。
好ましい態様において、ネイティブIgG1 Fcドメインと比較して、Fc受容体への結合親和性の低減及び/又はエフェクター機能の低減を呈するFcドメインは、アミノ酸置換L234A、L235A及び任意選択的にP329Gを含むヒトIgG1 Fcドメイン、又はアミノ酸置換S228P、L235E及び任意選択的にP329Gを含むヒトIgG4 Fcドメインである(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
一部の態様では、FcドメインのN-グリコシル化が排除された。1つのこのような態様において、Fcドメインは、位置N297におけるアミノ酸変異、特にアスパラギンをアラニンにより置き換えるアミノ酸置換(N297A)又はアスパラギン酸に置き換えるアミノ酸置換(N297D)を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
本明細書に上述され、且つ国際公開第2012/130831号に記載されているFcドメインに加え、Fc受容体結合及び/又はエフェクター機能が低減されたFcドメインには、Fcドメイン残基238、265、269、270、297、327及び329のうちの1つ又は複数の置換を有するものも含まれる(米国特許第6,737,056号)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。そのようなFc変異体には、アミノ酸位置265、269、270、297及び327のうちの2つ以上に置換を有するFc変異体が含まれ、残基265及び297がアラニンに置換されている、いわゆる「DANA」Fc変異体が含まれる(米国特許第7,332,581号)。
変異体Fcドメインは、本技術分野で周知の遺伝的方法又は化学的方法を使用する、アミノ酸の欠失、置換、挿入又は修飾によって調製することができる。遺伝的方法は、コードDNA配列の部位特異的変異導入法、PCR、遺伝子合成などを含みうる。正しいヌクレオチド変化は、例えば配列決定によって確認することができる。
Fc受容体に対する結合は、例えばELISAによって、又はBIAcore装置(GE Healthcare)などの標準的な装置と組み換え発現によって取得されうるFc受容体を使用する表面プラズモン共鳴(SPR)によって、容易に決定することができる。代替的に、Fc受容体に関するFcドメイン又はFcドメインを含む(多重特異性)抗体の結合親和性は、特定のFc受容体を発現することが知られている細胞株、例えば、FcγIIIa受容体を発現するヒトNK細胞を使用して評価してもよい。
Fcドメイン又はFcドメインを含む(多重特異性)抗体のエフェクター機能は、当技術分野に既知の方法によって測定することができる。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの例は、米国特許第5,500,362号;Hellstrom et al. Proc Natl Acad Sci USA 83、7059-7063(1986)及びHellstrom et al.,Proc Natl Acad Sci USA 82、1499-1502(1985);米国特許第5,821,337号;Bruggemann et al.,J Exp Med 166,1351-1361(1987)に記載されている。代替的に、非放射性アッセイを用いてもよい(例えば、ACTITMフローサイトメトリー用非放射性細胞傷害アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA)及びCytoTox96(登録商標)非放射性細胞傷害アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照されたい)。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。代替的に、又は追加的に、目的の分子のADCC活性は、インビボで、例えばClynes et al.,Proc Natl Acad Sci USA 95,652-656(1998)に開示されるような動物モデルにおいて評価されてもよい。
いくつかの態様では、相補性構成要素、具体的にはC1qに対するFcドメインの結合が低減される。したがって、エフェクター機能が低減されるようにFcドメインが操作されるいくつかの態様では、前記エフェクター機能の低減はCDCの低減を含む。C1q結合アッセイを実行し、Fcドメイン、又はFcドメインを含む(多重特異性)抗体がC1qに結合することができ、したがってCDC活性を有するかどうかを決定してもよい。例えば、国際公開第2006/029879号及び同第2005/100402号のC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを行ってもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al.,J Immunol Methods 202,163(1996);Cragg et al.,Blood 101,1045-1052(2003);及びCragg and Glennie,Blood 103,2738-2743(2004)を参照されたい)。
FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期の決定は、当技術分野で既知の方法を使用して実施することもできる(例えば、Petkova、S.B. et al.,Int’l. Immunol. 18(12):1759-1769(2006);国際公開第2013/120929号を参照されたい)。
B.ポリヌクレオチド
本発明は、本発明の抗体をコードする単離ポリヌクレオチドをさらに提供する。前記単離ポリヌクレオチドは、単一のポリヌクレオチド又は複数のポリヌクレオチドであってよい。
本発明の(多重特異性)抗体をコードするポリヌクレオチドは、完全な抗体をコードする単一のポリヌクレオチドとして発現されてもよく、又は共発現される複数の(例えば、2つ以上の)ポリヌクレオチドとして発現されてもよい。共発現されるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドは、例えば、ジスルフィド結合又は他の手段を介して会合し、機能的な抗体を形成しうる。例えば、抗体の軽鎖部分は、抗体の重鎖を含む抗体の一部分に由来する別個のポリヌクレオチドによってコードされてもよい。共発現すると、重鎖ポリペプチドは、軽鎖ポリペプチドと会合し、抗体を形成する。別の例では、2つのFcドメインサブユニットのうち一方と、任意選択的に1つ又は複数のFab分子(の一部)とを含む抗体の一部分は、2つのFcドメインサブユニットの他方と、任意選択的にFab分子(の一部)とを含む抗体の一部分に由来する別個のポリヌクレオチドによってコードされてもよい。共発現すると、Fcドメインサブユニットは会合してFcドメインを形成する。
いくつかの態様では、単離ポリヌクレオチドは、本明細書に記載されるように本発明による抗体分子全体をコードする。他の態様では、単離ポリヌクレオチドは、本明細書に記載されるように本発明による抗体に含まれるポリペプチドをコードする。
一部の態様では、ポリヌクレオチド又は核酸はDNAである。他の態様では、本発明のポリヌクレオチドはRNAであり、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)の形態である。本発明のRNAは、一本鎖又は二本鎖であってよい。
C.組み換え方法
本発明の抗体は、例えば、固体状態ペプチド合成(例えば、Merrifield固相合成)又は組み換え産生によって得られてもよい。組み換え産生について、抗体をコードする1つ又は複数のポリヌクレオチド、例えば、上述のものは、さらなるクローニング及び/又は宿主細胞での発現のために、単離され、1つ又は複数のベクターに挿入される。このようなポリヌクレオチドは、従来の手順を使用して容易に単離され、配列決定されうる。一態様では、本発明のポリヌクレオチド(とりわけ単一のポリヌクレオチド又は複数のポリヌクレオチド)を含むベクター、特に発現ベクターが提供される。当業者に周知の方法を使用し、適切な転写/翻訳制御シグナルと共に、抗体のコード配列を含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法としては、インビトロ組み換えDNA技術、合成技術及びインビボ組み換え/遺伝子組み換えが挙げられる。例えば、Maniatis et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,N.Y.(1989);及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y(1989)に記載される技術を参照されたい。発現ベクターは、プラスミド、ウイルスの一部とすることができるか、又は核酸断片であってもよい。発現ベクターは、抗体をコードするポリヌクレオチド(即ちコード領域)が、プロモーター及び/又は他の転写又は翻訳制御要素と共に操作可能に会合してクローン化される発現カセットを含む。本明細書で使用される場合、「コード領域」は、アミノ酸に翻訳されるコドンからなる核酸の一部である。「停止コドン」(TAG、TGA又はTAA)は、アミノ酸に翻訳されないが、存在する場合はコード領域の一部であると考えることができる。但し、あらゆるフランキング配列、例えばプロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロン、5’及び3’未翻訳領域などは、コード領域の一部ではない。2つ以上のコード領域が、単一のポリヌクレオチドコンストラクト中の、例えば単一のベクター上に、又は別個のポリヌクレオチドコンストラクト中の、例えば別個の(異なる)ベクター上に、存在していてもよい。さらに、任意のベクターは、単一のコード領域を含んでいてもよく、又は2つ以上のコード領域を含んでいてもよく、例えば本発明のベクターは、1種以上のポリペプチドをコードしてもよく、翻訳後又は翻訳と同時に、タンパク質分解による開裂によって、最終的なタンパク質へと分離される。これに加え、本発明のベクター、ポリヌクレオチド又は核酸は、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチド、又はそのバリアント若しくは誘導体に融合するか、又は融合しない、異種コード領域をコードしうる。異種コード領域としては、限定されないが、特殊な要素又はモチーフ、例えば分泌シグナルペプチド又は異種機能性ドメインが挙げられる。作動可能な会合は、遺伝子産物、例えばポリペプチドのコード領域が、制御配列(複数可)の影響下又は制御下で、遺伝子産物の発現を行うような様式で、1つ以上の制御配列と会合する。2つのDNA断片(例えば、ポリペプチドコード領域及びこれに関連するプロモーター)は、プロモーター機能の導入によって、所望の遺伝子産物をコードするmRNAの転写が起こる場合、及び2つのDNA断片間の結合の性質が、遺伝子産物の発現を指向する発現制御配列の能力を妨害しないか、又はDNAテンプレートを転写する能力を妨害しない場合、「作動可能に会合する」。したがって、プロモーター領域は、プロモーターが核酸の転写を行うことができる場合、ポリペプチドをコードする核酸と作動可能に会合しうる。プロモーターは、所定の細胞内でのDNAの実質的な転写のみを指向する細胞特異的なプロモーターであってもよい。プロモーター以外の他の転写制御要素、例えばエンハンサー、オペレーター、レプレッサー、及び転写停止シグナルは、細胞特異的な転写を指向するために、ポリヌクレオチドに作動可能に会合することができる。適切なプロモーター及び他の転写制御領域は、本明細書に開示される。種々の転写制御領域が当業者に知られている。これらとしては、限定されないが、脊椎動物細胞内で機能する転写制御領域、例えば、限定されないが、サイトメガロウイルス由来のプロモーター及びエンハンサーセグメント(例えば最初期プロモーター、イントロン-Aとの組み合わせで)、シミアンウイルス40(例えば初期プロモーター)及びレトロウイルス(例えばラウス肉腫ウイルス)が挙げられる。他の転写制御領域としては、脊椎動物遺伝子から誘導されるもの、例えば、アクチン、ヒートショックタンパク質、ウシ成長ホルモン及びウサギβ-グロビン、並びに真核細胞において遺伝子発現を制御することのできる他の配列が挙げられる。さらなる適切な転写制御領域としては、組織特異的なプロモーター及びエンハンサー、並びに誘導性プロモーター(例えばテトラサイクリン誘導性プロモーター)が挙げられる。同様に、種々の翻訳制御要素は当業者に知られている。これらとしては、限定されないが、リボソーム結合部位、翻訳開始及び停止コドン、及びウイルス系から誘導される要素(特に、内部リボソーム侵入部位、即ちIRES、CITE配列とも呼ばれる)が挙げられる。発現カセットは、例えば、複製の起源及び/又は染色体組み込み要素、例えば、レトロウイルスの長い末端反復(LTR)、又はアデノ随伴ウイルス(AAV)末端逆位配列(ITR)などの他の特徴も含んでいてもよい。
本発明のポリヌクレオチド及び核酸コード領域は、分泌又はシグナルペプチドをコードする追加のコード領域と会合してもよく、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの分泌を指向する。例えば、抗体の分泌が望ましい場合、シグナル配列をコードするDNAは、本発明の抗体又はその断片をコードする核酸の上流に置かれていてもよい。シグナル仮説によれば、哺乳動物細胞によって分泌されるタンパク質は、粗い小胞体全体に成長したタンパク質鎖が外に出始めると成熟タンパク質から切断される、シグナルペプチド又は分泌リーダー配列を有している。当業者は、脊椎動物細胞によって分泌されるポリペプチドが、通常ポリペプチドのN末端に融合するシグナルペプチドを有しており、これが翻訳されたポリペプチドから切断されてポリペプチドの分泌した形態又は「成熟」形態を生成することを知っている。一部の態様では、ネイティブシグナルペプチド、例えば免疫グロブリン重鎖又は軽鎖シグナルペプチドが使用されるか、又は作動可能に会合するポリペプチドの分泌を指示する能力を保持する配列の機能性誘導体が使用される。代替的に、異種哺乳動物シグナルペプチド、又はその機能性誘導体が使用されてもよい。例えば、野生型リーダー配列は、ヒト組織プラスミノーゲンアクティベーター(TPA)又はマウスβ-グルクロニダーゼのリーダー配列で置換されてもよい。
後の精製を容易にするため又は抗体を標識するのに役立てるために使用可能な短いタンパク質配列(例えば、ヒスチジンタグ)をコードするDNAが、ポリヌクレオチドをコードする抗体(断片)の中に、又はその末端に含まれていてもよい。
さらなる態様では、本発明のポリヌクレオチド(即ち単一のポリヌクレオチド又は複数のポリヌクレオチド)を含む宿主細胞が提供される。特定の態様において本発明のベクターを含む宿主細胞が提供される。ポリヌクレオチド及びベクターは、それぞれポリヌクレオチド及びベクターに関連して本明細書に記載する特徴のいずれかを、単独で又は組み合わせて組み込まれてもよい。1つのこのような態様では、宿主細胞は、本発明の抗体(の一部)をコードする1つ又は複数のポリヌクレオチドを含む1つ又は複数のベクターを含む(例えば、それらで形質転換又はトランスフェクトされている)。本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、本発明の抗体又はその断片を生成するように操作することが可能な任意の種類の細胞系を指す。抗体の複製及び発現補助に適した宿主細胞は、当技術分野で周知である。このような細胞は、適切な場合、特定の発現ベクターを用いてトランスフェクト又は形質導入されてよく、大規模発酵機に接種するために大量のベクターを含む細胞を成長させ、臨床用途に十分な量の抗体を得ることができる。適切な宿主細胞としては、原核微生物(例えば大腸菌)又は種々の真核生物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、昆虫細胞などが挙げられる。例えば、ポリペプチドは、特にグリコシル化が必要でないとき、細菌内で生成されうる。発現後、ポリペプチドは、適切なフラクション中の細菌細胞ペーストから単離されてもよく、さらに精製することができる。原核生物に加え、真核生物の微生物、例えば、糸状菌又は酵母は、ポリペプチドをコードするベクターに適切なクローニング又は発現の宿主であり、グリコシル化経路が「ヒト化」された真菌株及び酵母株を含み、部分的又は完全にヒトグリコシル化されたパターンを有するポリペプチドを生成する。Gerngross,Nat Biotech 22,1409-1414(2004)、及びLi et al.,Nat Biotech 24,210-215(2006)を参照されたい。(グリコシル化)ポリペプチドの発現に適した宿主細胞も、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)から誘導される。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞及び昆虫細胞が挙げられる。昆虫細胞と組み合わせて、特にヨウトガ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションのために使用することができる、多数のバキュロウイルス株が同定されている。植物細胞培養物も、宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号、及び同第6,417,429号(トランスジェニック植物で抗体を生成するためのPLANTIBODIESTM技術を記載している)を参照されたい。脊椎動物細胞も、宿主として使用することができる。例えば、懸濁物中で成長するように適合した哺乳動物細胞株が有用な場合がある。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40(COS-7)によって形質転換されたサル腎臓CV1株、ヒト胚腎臓株(例えばGraham et al.,J Gen Virol 36,59(1977)に記載される293細胞又は293T細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えばMather,Biol Reprod 23,243-251(1980)に記載されるTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリサル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト子宮頸癌細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK)、バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝臓細胞(Hep G2)、マウス乳房腫瘍細胞(MMT 060562)、TRI細胞(例えばMather et al.,Annals N.Y. Acad Sci 383、44-68(1982)に記載されるもの)、MRC 5細胞、及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株としては、dhfr-CHO細胞を含む、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub et al.,Proc Natl Acad Sci USA 77,4216(1980))、骨髄腫細胞株、例えばYO、NS0、P3X63及びSp2/0が挙げられる。タンパク質生成に適した特定の哺乳動物宿主細胞の総説としては、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol. 248(B.K.C. Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ)、pp. 255-268(2003)を参照されたい。宿主細胞としては、培養細胞、例えば、数例を挙げると、哺乳動物培養細胞、酵母細胞、昆虫細胞、細菌細胞及び植物細胞が挙げられるが、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物又は培養植物又は動物組織に含まれる細胞も含まれる。一態様では、宿主細胞は、真核細胞、特にチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胚腎臓(HEK)細胞又はリンパ球細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)といった哺乳動物細胞である。一態様では、宿主細胞は、ヒト身体中の細胞ではない。
これらの系において外来遺伝子を発現させる標準的な技術は、当技術分野で既知である。抗体などの抗原結合ドメインの重鎖又は軽鎖を含むポリペプチドを発現する細胞を操作して他方の抗体鎖も発現させ、発現した生成物が、重鎖及び軽鎖の両方を有する抗体となるようにすることができる。
一態様では、本発明による抗体を生成する方法が提供され、この方法は、抗体の発現に適した条件下で、本明細書に提供される抗体をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を培養すること、及び任意選択的に、宿主細胞(又は宿主細胞培地)から抗体を回収することを含む。
本発明の(多重特異性)抗体の成分は、互いに遺伝子的に融合していてよい。(多重特異性)抗体は、その構成要素が、互いに直接的に又はリンカー配列を通して間接的に融合されるように設計することができる。リンカーの組成及び長さは、当技術分野で周知の方法に従って決定されてもよく、有効性について試験されてもよい。(多重特異性)抗体の異なる構成要素の間のリンカー配列の例が、本明細書で提供される。必要に応じて、開裂部位を組み込んで融合の個々の構成要素を分離するために、追加の配列が含まれていてもよい(例えば、エンドペプチダーゼ認識配列)。
本明細書で記載するように調製される抗体は、例えば、高速液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーなどの当技術分野で既知の技術によって精製されてもよい。特定のタンパク質を精製するために使用される実際の条件は、部分的には、正味の電荷、疎水性、親水性などの因子に依存するであろうし、当業者には明らかであろう。アフィニティークロマトグラフィー精製のために、抗体が結合する抗体、リガンド、受容体又は抗原を使用することができる。例えば、本発明の抗体のアフィニティークロマトグラフィー精製のために、プロテインA又はプロテインGを含むマトリックスを使用することができる。連続したプロテインA又はGのアフィニティークロマトグラフィー及びサイズ排除クロマトグラフィーを使用して、実施例に本質的に記載されるように抗体を単離することができる。抗体の純度は、ゲル電気泳動、高圧液体クロマトグラフィーを含む種々の周知の分析方法のいずれかによって決定することができる。
D.アッセイ
本明細書に提供される抗体は、それらの物理的/化学的特性及び/又は生物活性について、当技術分野で既知の様々なアッセイによって、同定、スクリーニング、又は特性評価されうる。
1.結合アッセイ
Fc受容体又は標的抗原に対する抗体の結合(親和性)は、例えば、BIAcore機器(GE Healthcare)などの標準的な器具類、及び例えば組み換え発現により入手可能な受容体又は標的抗原を使用する表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定することができる。代替的に、異なる受容体又は標的抗原に対する抗体の結合が、特定の受容体又は標的抗原を発現する細胞株を使用して、例えばフローサイトメトリー(FACS)により、評価されてもよい。HLA-A2/MAGE-A4に対する結合活性を測定するための特定の説明的且つ例示的な態様が以下に記載される。
一態様において、本発明の(多重特異性)抗体のHLA-A2/MAGE-A4に対する結合親和性は、SPRにより以下のように決定される:
SPRを、Biacore T200機器(GE Healthcare)において、25℃で、ランニングバッファーとしてHBS-EP+(10mM HEPES、150mM NaCl pH7.4、0.005%界面活性剤P20(GE Healthcare,#BR-1006-69))を用いて実施する。抗ヒトFc特異性抗体(GE Healthcare,#BR-1008-39)を、CM5チップ(GE Healthcare)上にアミンカップリングにより直接固定化する。HLA-A2/MAGE-A4抗体を、60秒間2.5nMで捕捉する。HBS-EP(6.17~1500nM)中のHLA-A2/MAGE-A4p230-239複合体の3倍希釈系列を、240秒間30μl/分でリガンド上を通過させ、会合相を記録する。解離相を240秒間監視し、試料溶液からHBS-EP+へのスイッチングによってトリガーする。チップ表面を、3MのMgCl2注入を10μl/分で30秒間使用する各サイクルの後で再生する。バルク屈折率差を、抗ヒトFc抗体を含むが捕捉されたHLA-A2/MAGE-A4抗体を有さない基準フローセルに得られた応答を差し引くことにより、訂正する。親和性定数を、BIAevalソフトウェア(GE Healthcare)を使用した1:1ラングミュア結合へのフィッティングにより、動態速度定数から導出する。
2.活性アッセイ
本発明の(多重特異性)抗体の生物活性は、実施例に記載されるように、様々なアッセイによって測定することができる。生物活性には、例えばT細胞の増殖の誘導、T細胞内のシグナル伝達の誘導、T細胞内の活性化マーカーの発現の誘導、T細胞によるサイトカイン分泌の誘導、腫瘍細胞などの標的細胞の溶解の誘導、並びに腫瘍退縮及び/又は生存の向上の誘導が含まれうる。
E.組成物、製剤、及び投与経路
さらなる態様において、本発明は、例えば以下の治療方法のいずれかにおいて使用するための、本明細書に提供される抗体のうちのいずれかを含む医薬組成物を提供する。一態様では、医薬組成物は、本発明による抗体と、薬学的に許容される担体とを含む。別の態様では、医薬組成物は、本発明による抗体と、少なくとも1つの追加の治療剤、例えば、以下に記載するものとを含む。
さらには、インビボでの与に適した形態で本発明の抗体を生成する方法が提供され、この方法は、(a)本発明による抗体を得ること、及び(b)抗体と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを配合し、それによって、抗体の製剤を、インビボでの投与のために配合することとを含む。
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される担体に溶解又は分散した有効量の抗体を含む。「医薬的に許容される」との表現は、通常、使用する投薬量及び濃度でレシピエントに非毒性であり、即ち、適切な、例えばヒトといった動物に投与したときに、有害な反応、アレルギー反応又は他の不都合な反応を生まない分子要素及び組成物を指す。抗体と、任意選択的にさらなる有効成分とを含む医薬組成物の調製は、参照により本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed. Mack Printing Company,1990に例示される本開示の観点から、当業者に既知である。さらに、動物(例えば、ヒト)投与の場合、製剤が、FDA Office of Biological Standards又は他の国の対応する機関によって要求される滅菌性、発熱原性、一般的安全性及び純度基準を満たすべきであることが理解されるであろう。好ましい組成物は、凍結乾燥製剤又は水溶液である。本明細書で使用される場合、「医薬的に許容される担体」は、当業者に知られているように(例えば、参照により本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed. Mack Printing Company,1990,pp. 1289-1329を参照されたい)、任意及びすべての溶媒、緩衝液、分散媒体、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤(例えば抗菌剤、抗真菌剤)、等張化剤、吸収遅延剤、塩、防腐剤、酸化防止剤、タンパク質、薬物、薬物安定化剤、ポリマー、ゲル、バインダー、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤、染料、このような類似の材料及びこれらの組み合わせを含む。いずれかの従来の担体が有効成分と適合しない場合を除き、医薬組成物中にそれを使用することが企図されている。
本発明の抗体(及び任意の追加の治療剤)は、非経口、肺内、及び鼻腔内、並びに局所治療のために望まれる場合、病変内投与を含む、任意の適切な手段によって投与することができる。非経口注入には、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、又は皮下投与が含まれる。投薬は、任意の適切な経路により、例えば、投与が一時的であるか慢性的であるかに部分的に依存して、注射、例えば静脈内注射又は皮下注射により行うことができる。
非経口組成物としては、注射、例えば皮下、皮内、病巣内、静脈内、動脈内、筋肉内、髄腔内、又は腹腔内注射による投与のために設計されているものが挙げられる。注射のために、本発明の抗体は、水溶液、特にハンクス溶液、リンゲル液、又は生理食塩水緩衝液といった生理学的に適合性の緩衝液中で製剤化することができる。溶液は、配合剤、例えば懸濁剤、安定化剤及び分散剤を含有していてもよい。代替的に、抗体は、適切なビヒクル、例えば、滅菌した発熱性物質除去水と共に使用前に構成するための粉末形態であってもよい。滅菌した注射可能な溶液は、必要に応じて以下に列挙する種々の他の成分と共に、本発明の抗体を必要な量で適切な溶媒に組み込むことによって調製される。滅菌性は、例えば、滅菌濾過膜を通した濾過によって容易に達成されうる。一般的に、分散物は、種々の滅菌した有効成分を、塩基性分散媒体及び/又は他の成分を含む滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌した注射可能な溶液、懸濁物又は乳化物を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、以前に滅菌濾過した液体媒体から有効成分と任意の追加の所望の成分との粉末が得られる減圧乾燥又は凍結乾燥技術である。液体媒体は、必要に応じて適切に緩衝化されているべきであり、注射する前に、十分な食塩水又はグルコースで液体希釈剤をまず等張性にする。組成物は、製造条件及び保存条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物の混入作用から保護されなければならない。エンドトキシン汚染を安全なレベルに最小限に、例えば、0.5ng/mgタンパク質未満に維持すべきであることが認識されるだろう。適切な薬学的に許容される担体としては、限定されないが、緩衝液、例えば、ホスフェート、シトレート及び他の有機酸;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド;ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルパラベン又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジン;単糖類、二糖類及び他の炭水化物(グルコース、マンノース又はデキストリンを含む);キレート化剤、例えば、EDTA;糖類、例えば、ショ糖、マンニトール、トレハロース又はソルビトール;塩を形成する対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/又は非イオン性界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。注射懸濁液は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、デキストランなどといった懸濁物の粘度を上げる化合物を含んでいてもよい。任意選択的に、懸濁物は、適切な安定化剤、又は高度に濃縮した溶液の調製を可能にするために化合物の溶解度を高める薬剤を含んでいてもよい。加えて、活性化合物の懸濁物は、適切な油注射懸濁物として調製されてもよい。適切な親油性溶媒又はビヒクルとしては、ゴマ油、又は合成脂肪酸エステル、例えば、エチルクリート(ethyl cleat)又はトリグリセリド、若しくはリポソームといった脂肪族油が挙げられる。
有効成分は、例えば、コアセルベーション技術によって、又は界面重合、例えば、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)又はマクロエマルジョンにおいて、それぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタシレート)マイクロカプセルによって調製されたマイクロカプセル内に封入することができる。このような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(18th Ed. Mack Printing Company,1990)に開示されている。持続放出性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の適切な例としては、ポリペプチドを含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、成型物品の形態、例えばフィルム又はマイクロカプセルである。特定の態様では、注射可能組成物の持続性吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン、又はこれらの組み合わせの組成物での使用によってもたらすことができる。
前述の組成物に加え、抗体は、デポ剤として配合されてもよい。このような長く作用する製剤は、埋め込みによって(例えば、皮下又は筋肉内)、又は筋肉内注射によって投与されてもよい。したがって、例えば、抗体は、適切なポリマー若しくは疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルジョンとして)若しくはイオン交換樹脂を用いて、又は難溶性の誘導体として、例えば難溶性の塩として配合されてもよい。
本発明の抗体を含む医薬組成物は、従来の混合、溶解、乳化、カプセル化、封入又は凍結乾燥プロセスによって製造されてもよい。医薬組成物は、1つ又は複数の生理学的に許容可能な担体、希釈剤、賦形剤又はタンパク質を薬学的に使用可能な製剤へと加工するのを容易にする補助剤を使用して、従来の様式で配合されてもよい。適切な製剤は、選択する投与経路によって変わる。
抗体は、遊離酸若しくは遊離塩基、中性又は塩形態で組成物に配合されてもよい。薬学的に許容可能な塩は、遊離酸又は遊離塩基の生物活性を実質的に保持する塩である。薬学的に許容可能な塩としては、酸付加塩、例えば、タンパク質性組成物の遊離アミノ基と形成される酸付加塩、又は例えば塩酸若しくはリン酸といった無機酸と形成されるか、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸若しくはマンデル酸のような有機酸と形成されるものが挙げられる。遊離カルボキシル基と形成される塩も、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、又は水酸化第二鉄といった無機塩基から誘導されてもよく、又はイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン又はプロカインといった有機塩基から誘導されてもよい。医薬塩は、対応する遊離塩基形態よりも、水性及び他のプロトン性溶媒に溶けやすい傾向がある。
F.治療方法及び組成物
本明細書で提供される抗体のいずれも、治療方法に使用することができる。本発明の抗体は、例えばがんの治療において、免疫治療剤として使用されうる。
治療方法における使用のために、本発明の抗体は、医学行動規範と一致した様式で配合され、用量決定され、投与される。これに関連して考慮すべき要因としては、治療される特定の疾患、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、疾患の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医療従事者に既知である他の要因が挙げられる。
一態様では、医薬としての使用のための本発明の抗体が提供される。さらなる態様では、疾患の治療における使用のための本発明の抗体が提供される。一部の態様では、治療方法における使用のための本発明の抗体が提供される。一態様では、本発明は、疾患の治療を必要とする個体の疾患の治療における使用のための本発明の抗体を提供する。一部の態様では、本発明は、個体に有効量の抗体を投与することを含む、疾患を有する個体を治療する方法における使用のための抗体を提供する。一部の態様では、治療される疾患は、増殖性障害である。好ましい態様では、疾患は、がんである。一部の態様では、この方法は、さらに、個体に対し、少なくとも1つの追加の治療剤の有効量(例えば、治療される疾患ががんである場合は抗がん剤)を投与することを含む。さらなる態様では、本発明は、標的細胞、特に腫瘍細胞の溶解を誘導することに使用するための本発明の抗体を提供する。一部の態様では、本発明は、標的細胞の溶解を誘導するために個体に有効量の抗体を投与することを含む、個体において、標的細胞、特に腫瘍細胞の溶解を誘導する方法における使用のための本発明の抗体を提供する。上記のいずれかの態様による「個体」は、哺乳動物、好ましくはヒトであってよい。
さらなる態様では、本発明は、医薬の製造又は調製における本発明の抗体の使用を提供する。一態様では、医薬は、疾患の治療を必要とする個体における疾患の治療のためのものである。さらなる態様では、医薬は、疾患を有する個体に対し、有効量の医薬を投与することを含む、疾患を治療する方法における使用のためのものである。一部の態様では、治療される疾患は、増殖性障害である。好ましい態様では、疾患は、がんである。一態様では、この方法は、個体に対し、少なくとも1つの追加の治療剤(例えば、治療される疾患ががんである場合は抗がん剤)の有効量を投与することをさらに含む。さらなる態様では、医薬は、標的細胞、特に腫瘍細胞の溶解を誘導するためのものである。またさらなる態様では、医薬は、標的細胞の溶解を誘導するために個体に対して有効量の医薬を投与することを含む、個体において、標的細胞、特に腫瘍細胞の溶解を誘導する方法における使用のためのものである。上記のいずれかの態様による「個体」は、哺乳動物、好ましくはヒトであってよい。
さらなる態様において、本発明は、疾患を治療するための方法を提供する。一態様では、この方法は、このような疾患を有する個体に対し、本発明の抗体の有効量を投与することを含む。一態様では、組成物は、前記個体に投与され、本発明の抗体を薬学的に許容される形態で含んでいる。一部の態様では、治療される疾患は、増殖性障害である。好ましい態様では、疾患は、がんである。一部の態様では、この方法は、さらに、個体に対し、少なくとも1つの追加の治療剤の有効量(例えば、治療される疾患ががんである場合は抗がん剤)を投与することを含む。上記のいずれかの態様による「個体」は、哺乳動物、好ましくはヒトであってよい。
さらなる態様では、本発明は、標的細胞、特に腫瘍細胞の溶解を誘導するための方法を提供する。一態様では、この方法は、T細胞、特に細胞傷害性T細胞の存在下において、標的細胞を本発明の抗体と接触させることを含む。さらなる態様では、個体において、標的細胞、特に腫瘍細胞の溶解を誘導するための方法が提供される。1つのこのような態様では、方法は、個体に対し、標的細胞の溶解を誘導するために、有効量の本発明の抗体を投与することを含む。一態様では、「個体」は、ヒトである。
一部の態様では、治療される疾患は、増殖性障害、特にがんである。がんの非限定的な例としては、膀胱がん、脳がん、頭頸部がん、膵臓がん、肺がん、乳がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、食道がん、結腸がん、結腸直腸がん、直腸がん、胃がん、前立腺がん、血液がん、皮膚がん、扁平上皮癌、骨がん及び腎臓がんが挙げられる。本発明の抗体を用いて治療されうる他の細胞増殖障害としては、限定されないが、腹部、骨、乳房、消化器系、肝臓、膵臓、腹膜、内分泌腺(副腎、副甲状腺、脳下垂体、睾丸、卵巣、胸腺、甲状腺)、眼、頭頸部、神経系(中枢及び末梢)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟組織、脾臓、胸部領域及び泌尿生殖器系に位置する新生物が挙げられる。前がん状態又は病変及びがん転移も含まれる。一部の態様では、がんは、HLA-A2/MAGE-A4を発現するがんである。一部の態様では、がんは、肺がん、頭頸部がん、膀胱がん、食道がん、皮膚がん、胃がん及び卵巣がんからなる群から選択されるがんである。当業者であれば、多くの場合に、抗体は治癒を提供せずに部分的な恩恵のみを提供する場合があることを容易に認識する。いくつかの態様では、いくらかの恩恵を有する生理学的変化も治療上有益であるとみなされる。したがって、いくつかの態様では、生理学的変化を与える抗体の量は、「有効量」と考えられる。治療が必要な対象、患者又は個体は、典型的には哺乳動物であり、具体的にはヒトである。
いくつかの態様では、有効量の本発明の抗体が、疾患を治療するために個体に投与される。
疾患の予防又は治療のために、本発明の抗体の適切な投薬量(単独で又は1つ又は複数の他の追加の治療剤と組み合わせて使用される場合)は、治療される疾患の種類、投与経路、患者の体重、抗体の種類、疾患の重篤度及び経過、抗体が予防目的で投与されるか又は治療目的で投与されるか、以前又は現在の治療介入、患者の病歴及び抗体に対する応答、並びに主治医の裁量に依存するであろう。投与に責任を持つ施術者はいずれにせよ、組成物中の有効成分(複数可)の濃度、及び個々の対象のための適切な用量(複数可)を決定することになる。単回又は様々な時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス輸注を含むが、これらに限定されない様々な投薬スケジュールが本明細書で企図される。
抗体は、適切には、患者に一度に又は一連の治療にわたって投与される。疾患の種類及び重篤度に応じて、約1μg/kg~15mg/kg(例えば0.1mg/kg~10mg/kg)の抗体を、例えば、1回の又は複数回の別個の投与によるか、又は連続的な注入によるかに関わらず、患者に投与するための初期の候補投薬量とすることができる。典型的な1日投薬量は、上述の因子に依存して、約1μg/kg~100mg/kg以上の範囲となりうる。数日間又はそれ以上にわたる反復投与において、状態に応じ、治療は通常、疾患症状の所望の抑制が生じるまで続けられる。抗体の1つの例示的投与量は、約0.005mg/kg~約10mg/kgの範囲であろう。他の非限定的な例では、用量は、1回の投与当たり、約1μg/kg体重、約5μg/kg体重、約10μg/kg体重、約50μg/kg体重、約100μg/kg体重、約200μg/kg体重、約350μg/kg体重、約500μg/kg体重、約1mg/kg体重、約5mg/kg体重、約10mg/kg体重、約50mg/kg体重、約100mg/kg体重、約200mg/kg体重、約350mg/kg体重、約500mg/kg体重から、約1000mg/kg体重、又はそれよりも多く、及びこれらから誘導される任意の範囲を含んでもよい。本明細書に列挙される数から誘導可能な範囲の非限定的な例では、約5mg/kg体重~約100mg/kg体重、約5μg/kg体重~約500mg/kg体重などの範囲を、上述の数に基づいて投与することができる。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、5.0mg/kg又は10mg/kg(又はこれらの任意の組み合わせ)のうちの1つ又は複数の用量が、患者に投与されうる。このような用量は、断続的に、例えば毎週又は3週間毎(例えば、患者が約2~約20回、又は例えば約6回の用量の抗体を受容するように)投与されてもよい。より高い初回負荷用量を投与し、続いて1回又は複数回のより低い用量を投与してもよい。しかしながら、他の投薬レジメンも有用でありうる。この療法の進行は、従来の技術及びアッセイによって容易に監視される。
本発明の抗体は、通常、意図した目的を達成するために有効な量で使用される。疾患状態を治療又は予防するための使用のために、本発明の抗体、又はその医薬組成物が、有効量で投与又は塗布される。
全身投与の場合、有効な用量は、インビトロアッセイ、例えば細胞培養アッセイから最初に概算することができる。次いで、細胞培養物中で決定されるIC50を含む血中濃度範囲を達成するために、用量を動物モデルで配合してもよい。このような情報を使用し、ヒトにおける有用な用量をさらに正確に決定することができる。
初期用量も、インビボデータから、例えば、動物モデルから、当技術分野で周知の技術を使用して概算することができる。
治療効果を維持するために十分な抗体の血漿濃度を与えるように、投薬量及び投薬間隔は個々に調節されてもよい。注射による投与のための通常の患者用量は、約0.1~50mg/kg/日、典型的には約0.5~1mg/kg/日の範囲である。治療に有効な血漿レベルは、各日に複数回の用量を投与することによって達成されてもよい。血漿中のレベルは、例えば、HPLCによって測定することができる。
本発明の抗体の有効な用量は、通常、実質的な毒性を引き起こすことなく治療効果を提供する。抗体の毒性及び治療有効性は、細胞培養物又は実験動物における標準的な医薬手順によって決定することができる。細胞培養アッセイ及び動物実験を使用し、LD50(集団の50%が死に至る用量)及びED50(集団の50%において治療が有効である用量)を決定することができる。毒性と治療効果の間の用量比は、治療指数であり、比LD50/ED50として表すことができる。大きい治療指数を呈する抗体が好ましい。一態様では、本発明による抗体は、高い治療指数を呈する。細胞培養アッセイ及び動物実験から得られるデータを、ヒトでの使用に適した投薬範囲を配合する際に使用することができる。投薬量は、好ましくは、毒性がほとんど又はまったくないED50を含む血中濃度の範囲内にある。投薬量は、例えば、用いられる投薬量、利用される投与経路、対象の状態などの種々の因子に依存して、この範囲内で変動しうる。正確な製剤、投与経路及び投薬量は、患者の状態という観点から個々の医師によって選択されうる(例えば、その全体が本明細書に参考として組み込まれる、Fingl et al.,1975、in:The Pharmacological Basis of Therapeutics、Ch. 1、p. 1参照)。
本発明の抗体で治療される患者の主治医は、毒性、臓器不全などに起因して、どのように、いつ、投与を中止、中断、又は調整するかを知っているであろう。逆に、主治医は、臨床応答が十分でない場合(毒性を生じずに)、治療をもっと高レベルにするように調整することも知っている。目的の疾患の管理において投与される用量の大きさは、治療される状態の重篤度、投与経路などにより変わるであろう。状態の重篤度は、例えば、部分的には、標準的な診断評価方法によって評価されてもよい。さらに、用量と、おそらく投与頻度は、個々の患者の年齢、体重及び応答によっても変わるであろう。
本発明の抗体は、治療において、1つ又は複数の他の薬剤と組み合わせて投与されてもよい。例えば、本発明の抗体は、少なくとも1つの追加の治療剤と共投与されてもよい。用語「治療剤」は、このような治療が必要な個体において、症状又は疾患を治療するために投与される任意の薬剤を包含する。このような追加の治療剤は、治療される特定の疾患に適した任意の有効成分、好ましくは、互いに有害な影響を与えない相補的な活性を有するものを含むことができる。一部の態様では、追加の治療剤は、免疫制御剤、細胞増殖抑制剤、細胞接着の阻害剤、細胞傷害性薬剤、細胞アポトーシスの活性化剤、又はアポトーシス誘導因子に対する細胞の感受性を高める薬剤である。好ましい態様では、追加の治療剤は、抗がん剤、例えば、微小管破壊剤、代謝拮抗物質、トポイソメラーゼ阻害剤、DNAインターカレーター、アルキル化剤、ホルモン治療、キナーゼ阻害剤、受容体アンタゴニスト、腫瘍細胞アポトーシスの活性化剤、又は抗血管形成剤である。
このような他の薬剤は、適切には、意図する目的にとって有効な量の組み合わせで存在する。このような他の薬剤の有効量は、使用される抗体の量、障害又は治療の種類、及び上述の他の因子に依存する。抗体は、通常、同じ投薬量で、本明細書に記載の投与経路で使用されるか、又は約1~99%の本明細書に記載の投薬量で、又は経験的/臨床的に適切であると決定される任意の投薬量及び任意の経路で使用される。
上述のこのような併用療法は、組み合わせた投与(2つ以上の治療剤が、同じ又は別個の組成物に含まれる)、及び別個の投与を包含し、この場合、本発明の抗体の投与は、追加の治療剤及び/又はアジュバントの投与前、投与と同時及び/又は投与後に行うことができる。本発明の抗体は、放射線療法と組み合わせて使用されてもよい。
G.製造物品
本発明の別の態様では、上述の障害の処置、予防、及び/又は診断に有用な材料を含有する製造物品が提供される。製造物品は、容器と、容器上の又は容器に付随するラベル又は添付文書とを備えている。適切な容器としては、例えば、瓶、バイアル、シリンジ、IV溶液バッグなどが挙げられる。容器は、ガラス又はプラスチックなどの種々の材料から形成することができる。容器は、状態を治療、予防、及び/又は診断するために、単独で又は有効な別の組成物と組み合わせて使用される組成物を保持し、無菌アクセスポートを有することができる(例えば、容器は、静脈内溶液バッグ又は皮下注射針によって穿孔可能なストッパーを有するバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本発明の抗体である。ラベル又は添付文書は、組成物が、選択される状態を治療するために使用されることを示す。さらに、製造物品は、(a)本発明の抗体を含む組成物が入った第1の容器、及び(b)細胞障害性剤又は他の治療剤をさらに含む組成物が入った第2の容器を備えることができる。本発明のこの態様における製造物品は、組成物が特定の状態を治療するために使用されうることを示す添付文書をさらに含んでいてもよい。代替的に又は追加的に、製造物品は、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル溶液、デキストロース溶液などの薬剤学的に許容される緩衝剤を含む第2の(又は第3の)容器をさらに備えることができる。製造物品は、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、注射器を含む、商業的な及び使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含んでいてもよい。
H.診断及び検出のための方法及び組成物
一部の態様において、本明細書に提供される抗体はいずれも、生体試料中のその標的(例えば、HLA-A2/MAGE-A4)の存在を検出するために有用である。本明細書で使用される「検出」という用語は、定量的又は定性的な検出を包含する。一部の態様において、生体試料は、細胞又は組織、例えば前立腺組織を含む。
一態様において、診断又は検出の方法における使用のための、本発明による抗体が提供される。さらなる態様において、生体試料中のHLA-A2/MAGE-A4の存在を検出する方法が提供される。一部の態様において、方法は、生体試料と、本発明の抗体とを、HLA-A2/MAGE-A4に対する抗体の結合を許容する条件下で接触させることと、複合体が、抗体とHLA-A2/MAGE-A4との間で形成されるかどうかを検出することとを含む。このような方法は、インビトロ法でも又はインビボ法でもよい。一態様において、本発明の抗体は、例えばHLA-A2/MAGE-A4が患者の選択のためのバイオマーカーである場合、HLA-A2/MAGE-A4に結合する抗体を用いた治療法に的確な対象を選択するために使用される。
本発明の抗体を使用して診断されうる例示的な障害としては、がん、特に皮膚がん又は脳がんが挙げられる。
一部の態様において、標識された、本発明による抗体が提供される。標識には、直接検出される標識又は部分(例えば、蛍光標識、発色性標識、電子密度標識、化学発光標識、及び放射性標識)、並びに酵素反応又は分子間相互作用を介して間接的に検出される部分、例えば、酵素又はリガンドが含まれるが、これらに限定されない。例示的な標識には、限定されないが、放射性同位元素32P、14C、125I、3H及び131I、希土類キレート又はフルオレセイン及びその誘導体といったフルオロフォア、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、例えばホタルルシフェラーゼ及び細菌性ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカライドオキシダーゼ、例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、HRP、ラクトペルオキシダーゼ、又はマイクロペルオキシダーゼといった色素前駆体を酸化するために過酸化水素を用いる酵素、ビオチン/アビジン、スピンラベル、バクテリオファージラベル、及び安定したフリーラジカルなどと結合した、ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼといった複素環オキシダーゼが含まれる。
IV.実施例
以下は、本発明の方法及び組成物の実施例である。上述の一般的な説明を考慮すると、種々の他の態様が実施されうることが理解される。
実施例1.HLA-A2/MAGE-A4バインダーの生成
抗HLA-A2/MAGE-A4 Fabの選択とスクリーニング
抗HLA-A2/MAGE-A4 Fabが、異なるV-ドメインファミリーから得られたVLとVHの対合からなる合成Fabライブラリーからファージディスプレイにより選択した。これらのライブラリーは、VL及びVHドメインのCDR1、CDR2及びCDR3に配列多様性を有するヒトフレームワーク全体に基づくものである。
以下のプロトコルに従って、溶液中で選択操作(バイオパニング)を実施した:1.500nMの無関係のビオチン化HLA-A2/WT1RMF複合体でコーティングされたニュートラアビジン被覆96ウェルプレート上でのライブラリープール当たり~1012個のファージミド粒子のプレクリアリング(WTRMFペプチドについては配列番号84を参照)、2.総容積800μlでの0.5時間にわたる、100nMのビオチン化HLA-A2/MAGEA4p230-239複合体を用いた非HLA-A2/WT1RMF結合ファージミド粒子のインキュベーション、3.シェーカーに80μlのストレプトアビジン被覆磁性粒子を20分間加えることによるビオチン化HLA-A2/MAGE-A4p230-239及び特異的結合ファージの捕捉、4.磁性粒子セパレーターを使用した、それぞれ1mlのPBS/Tween20で5~10x及び1mlのPBSで5-10xの磁性粒子の洗浄、5.100mMのトリエチルアミン(TEA)lmlを5~10分間加えることによるファージ粒子の溶出、及び1MのTris/HCl(pH7.4)の1/2容積の付加による中和、6. 溶出されたファージ粒子を用いた対数期大腸菌TG1細胞の再感染、37℃で0.5時間のシェーカーでのインキュベーション、ヘルパーファージVCSM13による感染、30℃で一晩のシェーカーでのインキュベーション、及びその後の、次の選択操作に使用されるファージミド粒子のPEG/NaCl沈殿。
選択は、それぞれ100nM、50nM、50nM及び10nmの漸減抗原濃度を使用して3~4回にわたり実行した。
HLA-A2/MAGE-A4結合アッセイ:ファージディスプレイによって得られたFabの特性評価のためのサンドイッチELISA法
個々のクローンを、96ウェルフォーマットにおいて1mlの培養物として細菌により発現させ、上清(FLAG又はT7配列でタグ付けした、可溶型Fabフォーマットのバインダーを有する)をELISAによるスクリーニングに供した。特異的なバインダーは、HLA-A2/MAGEp230-239については5x背景を上回るシグナルを、HLA-A2/WT1RMF(無関係のHLA-A2/ペプチド複合体)については3x背景を下回るシグナルを有するものとして定義された。さらに詳細には、ニュートラアビジン96ウェルストリッププレート(Thermo Fisher)を、10nMのHLA-A2/MAGEp230-239又は50nMのHLA-A2/WT1RMFで37℃で30分間コーティングし、続いてプレートを、2%(w/v)のmilk-リン酸緩衝生理食塩水(MPBS)(200μl/ウェル)で1~2時間室温でブロックした。プレートをPBSで3回洗浄し、次いでFab含有細菌上清を加え、プレートを室温で1時間インキュベートした。PBSでのさらに3回の洗浄工程の後、抗FLAG-HRP二次抗体(1:4000)又は抗T7-HRP二次抗体(1:10000)を加え、プレートを1時間室温でインキュベートした。プレートをPBSで3回洗浄し、100μl/ウェルのBM Blue POD(Roche)を加えることにより発展させた。酵素反応を、50μl/ウェルの1M H2SO4を加えることにより停止させた。OD450-900の最終読み出しのために、ODを450nmで読み取った(900nmでの参照)。ELISA陽性クローンを、後述の動態スクリーニング実験に供した。
HLA-A2/MAGE-A4結合アッセイ:ファージディスプレイによって得られたFabの速度論的特性評価のための表面プラズモン共鳴(SPR)
特異的バインダーは、ProteOn XPR36バイオセンサー(BioRad)を使用したFab含有細菌培養上清の表面プラズモン共鳴-スクリーニングにより同定した。簡単には、溶出されたファージ粒子による対数期大腸菌TG1細胞の感染後、単一コロニー形成単位(cfu)を蒔き、96ディープウェルプレートに1mlの発現培養物の播種のために採取した。
すべての実験は、ランニングバッファーとしてPBSTを使用し(10mM PBS、pH7.4、及び0.005%(v/v)Tween20)、25℃で実施した。GLMセンサーチップを備えたProteOn XPR36バイオセンサー及びカップリング試薬(10mMの酢酸ナトリウム、pH4.5、スルホ-N-ヒドロキシスクシンイミド[スルホ-NHS]、1-エチル-3-(3-ジメチルアミンプロピル)-カルボジイミド塩酸塩[EDC]及びエタノールアミン)を使用した(すべてBioRad)。
GLMチップ上で30μl/分で固定化を実施した。pAb(ヤギ)抗ヒトIgG、F(ab)2特異性抗体(Jackson ImmunoResearch)を、標準的なアミンカップリング手順を使用して垂直方向にカップリングした:6個すべてのリガンドチャネルを5分間EDC(200mM)とスルホ-NHS(50mM)の混合物で活性化した。表面が活性化された直後に、pAb(ヤギ)抗ヒトIgG、F(ab)2特異性抗体(50μg/ml、10mMの酢酸ナトリウム、pH5)を6個すべてのチャネルに5分間注入した。最後に、チャネルを、1Mのエタノールアミン-HCl(pH8.5)の5分の注入によりブロックした。最終的な固定化レベルはすべてのチャネルで同様であり、10000~11500RUの範囲であった。Fab抗体を、個別の水平チャネル(30μl/min)のうちの5つに沿った5分間の同時注入により大腸菌上清から捕捉し、それは上清中のFabの濃度に応じて200~900RUの範囲のレベルであった。調整された培地を6つ目のチャネルに沿って注入し、二重参照目的のための「インライン」ブランクを提供した。ワンショット反応速度測定を、垂直チャネルに沿った2分間のHLA-A2/MAGEp230-239又はHLA-A2/WT1RMFの希釈系列(100、50、25、12.5、6.25、0nM、50μl/分)の注入により実施した。解離を3分間監視した。反応速度データをProteOn Manager v. 2.1で分析した。反応スポットデータの処理には、インラインバッファーブランクを使用するスポット間参照及び二重参照工程の適用が含まれた(Myszka,J Mol Recognit(1999)12,279-284)。複製ワンショット注入からの処理データを、物質輸送なしで試料の1:1ラングミュア結合モデルにフィッティングした(O’Shannessy et al.,Anal Biochem(1993)212,457-468)。
48ウェルフォーマットにおけるHEK生成物の上清由来のIgGの測定のために、分離した別個の水平チャネル全体のうちの5つに沿った5分間の同時注入(30μl/分)によりIgGバリアントがHEK293上清から捕捉され、それは200~400RUの範囲のレベルであった。調整された培地を6つ目のチャネルに沿って注入し、二重参照目的のための「インライン」ブランクを提供した。ワンショット反応速度測定を、垂直チャネルに沿った3分間のHLA-A2/MAGEp230-239又はHLA-A2/WT1RMFの希釈系列(100、50、25、12.5、6.25、0nM、50μl/分)の注入により実施した。解離を5分間監視した。反応速度データを上述のように分析した。
結合プロファイル及び測定された抗原に対する結合の特異性に基づいて、バインダーを最終候補に入れ、機能アッセイにおいて測定した。
選択されたすべてのバインダー(007A09、007D10、057B04、057D03、032G09、034F05)の配列を、本明細書に含まれる配列表に提供し、以下の表1にまとめる。
表1.選択されたHLA-A2/MAGE-A4バインダーのアミノ酸配列
実施例2.HLA-A2/MAGE-A4 IgG及びHLA-A2/MAGE-A4 CD3T細胞二重特異性(TCB)抗体の調製
CD3二重特異性抗体は、本明細書では「T細胞二重特異性抗体」、「TCB抗体」、又は「TCB」も指す。この実施例で調製される二重特異性抗体の概略図が図2に例示されている。
CD3バインダーとして、抗体CH2527又は抗体V9を使用した。これらのバインダーの配列は、本明細書に含まれる配列表に提供されており、以下の表2にまとめられている。
TCB抗体の例示的配列は、配列番号67、69、70及び71(分子D)と、配列番号68、69、70及び72(分子R)に与えられている。他のTCB抗体を、対応するHLA-A2/MAGE-A4バインダーのVH及びVL配列を使用して同様に構築した。
対照として、国際公開第2016/199141号に記載されている、バインダー「C106B9」に基づくHLA-A2/MAGE-A4 IgG抗体及びTCB抗体を調製した。このバインダーのVH及びVL領域配列は、それぞれ配列番号49及び50に示される。
以下の表3は、生成されたIgG及びTCB抗体分子と、これらの分子について本明細書で使用される名称を示している。
表3.生成されたIgG及びTCB抗体分子と本明細書で使用されるそれらの名称
一般的な方法及びツール
組み換えDNA技術標準的な方法を使用して、Sambrook、J. et al、Molecular cloning:A laboratory manual;Cold Spring Harbor Laboratory press,Cold spring Harbor,New York,1989に記載されるように、DNAを操作した。分子生物学的試薬は、製造元の説明書に従って使用した。ヒト免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖のヌクレオチド配列に関する一般的な情報は、以下に与えられる:Kabat、E.A. et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Ed.,NIH Publication No 91-3242。
DNA配列決定DNA配列は、二本鎖配列決定によって決定した。
遺伝子の合成必要な場合、望ましい遺伝子セグメントは、適切なテンプレートを使用してPCRにより生成したか、又はGeneart AG(Regensburg,Germany)で合成オリゴヌクレオチドとPCR生成物から自動遺伝子合成によって合成した。単一の制限エンドヌクレアーゼ開裂部位に隣接する遺伝子セグメントを、標準的なクローニング/配列決定ベクター内へとクローニングした。プラスミドDNAを形質転換細菌から精製し、濃度をUV分光法によって決定した。サブクローニングした遺伝子断片のDNA配列は、DNA配列決定によって確認した。遺伝子セグメントは、それぞれの発現ベクター内へのサブクローニングを可能にする適切な制限部位を用いて設計した。すべてのコンストラクトは、真核細胞における分泌のためのタンパク質を標的とするリーダー配列についてコードする5’末端DNA配列を用いて設計した。
IgG及びTCB抗体の生成
HLA-A2/MAGE-A4バインダー(及び、必要に応じて、CD3バインダー)の可変重鎖及び軽鎖領域をコードするDNA配列を、従来のクローニング技術を使用して哺乳動物の発現ベクター内へとクローニングした。
HEK293 EBNA細胞又はCHO EBNA細胞の一過性トランスフェクションにより、IgG及びTCB抗体を生成した。細胞を遠心分離し、予め温めたCD CHO培地(Thermo Fisher、#10743029)により培地を置き換えた。CD CHO培地中で発現ベクターを混合し、ポリエチレンイミン(PEI、Polysciences,#23966-1)を加え、溶液をボルテックスして室温で10分間インキュベートした。その後、細胞(2mio/mL)をベクター/PEI溶液と混合し、フラスコに移し、5%CO2雰囲気の振盪インキュベーター内で、3時間37℃でインキュベートした。インキュベーションの後、補充液(全体積の80%)を含むExcell培地を付加した(W. Zhou and A. Kantardjieff,Mammalian Cell Cultures for Biologics Manufacturing,DOI:10.1007/978-3-642-54050-9;2014)。トランスフェクションの1日後に、補充液(Feed、全体積の12%)を付加した。7日後に、遠心分離、及びその後の濾過(0.2μmフィルター)により細胞上清を回収し、後述の標準的な方法により、回収した上清を精製した。
或いは、従来の(非PCRベースの)クローニング技術を用いる専有のベクターシステムを使用し、懸濁適応性CHO K1細胞を使用して(元はATCCより受託し、Evitriaでの懸濁培養液中無血清増殖に適合した)、Evitria(Schlieren,Switzerland)により、本明細書に記載のIgG及びTCB抗体を調製した。生成のために、Evitriaは、専有の動物構成成分非含有無血清培地(eviGrow及びeviMake2)、並びに専有のトランスフェクション試薬(eviFect)を用いた。遠心分離、及びその後の濾過(0.2μmフィルター)により上清を回収し、標準的な方法により、回収した上清からタンパク質を精製した。
IgG及びTCB抗体の精製
タンパク質を、標準プロトコルを参照し、濾過した細胞培養物上清から精製した。簡単には、Fc含有タンパク質を細胞培養上清からプロテインA-アフィニティークロマトグラフィーにより精製した(平衡バッファー:20mMのクエン酸ナトリウム,20mMのリン酸ナトリウム、pH7.5;溶出バッファー:20mMのクエン酸ナトリウム、pH3.0)。溶出はpH3.0で達成され、続いて試料をすぐにpH中和した。遠心分離(Millipore Amicon(登録商標)ULTRA-15、#UFC903096)によりタンパク質を濃縮し、凝集したタンパク質を、20mMヒスチジン、140mM塩化ナトリウム、pH6.0のサイズ排除クロマトグラフィーにより、単量体タンパク質から分離した。
IgG及びTCB抗体の分析
Pace,et al.,Protein Science,1995,4,2411-1423によるアミノ酸配列に基づいて計算した質量減衰係数を使用して、280nmにおける吸収を測定することにより、精製したタンパク質の濃度を決定した。LabChipGXII又はLabChip GX Touch(Perkin Elmer)を使用して、還元剤の存在下及び非存在下で、CE-SDSによりタンパク質の純度及び分子量を分析した。凝集物含有量の決定を、ランニングバッファー(200mM KH2PO4、250mM KCl pH6.2、0.02%NaN3)中で平衡化した分析用サイズ排除カラム(TSKgel G3000 SW XL又はUP-SW3000,Tosoh Bioscience)を使用して、25℃でHPLCクロマトグラフィーにより実施した。
CE-SDSでほぼ100%の単量体含有量と100%の純度を有するすべての分子について、最終的な品質は極めて良好であった。
実施例3.HLA-A2/MAGE-A4抗体の親和性分析
HLA-A2/MAGE-A4p230-239に対するHLA-A2/MAGE-A4抗体の親和性を決定するために、表面プラズモン共鳴(SPR)実験を、ランニングバッファーとしてHBS-EP+を用いる(0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、0.005% Surfactant P20(GE Healthcare,#BR-1006-69))Biacore T200で25℃で実施した。抗ヒトFc特異性抗体(GE Healthcare,#BR-1008-39)を、アミンカップリングによりCM5チップ(GE Healthcare)に直接固定化した。HLA-A2/MAGE-A4抗体を、2.5nMで60秒間捕捉した。HBS-EP(6.17~1500nM)中のHLA-A2/MAGE-A4p230-239複合体の3倍希釈系列を、240秒間30μl/分でリガンド上を通過させ、会合相を記録した。解離相を240秒間監視し、試料溶液からHBS-EP+へのスイッチングによってトリガーした。チップ表面を、3MのMgCl2注入を10μl/分で30秒間使用する各サイクルの後で再生した。バルク屈折率差を、抗ヒトFc抗体を含むが捕捉されたHLA-A2/MAGE-A4抗体を有さない基準フローセルに得られた応答を差し引くことにより、訂正した。親和性定数を、BIAevalソフトウェア(GE Healthcare)を使用して、1:1ラングミュア結合へのフィッティングにより、動態速度定数から導出した。測定は、独立した希釈系列を用いて3連で実施した。
試験したすべての分子(分子H、I、J、K、L及びM(すべてIgG抗体)と分子R(TCB抗体))について、1:1ラングミュア結合の速度定数を表4にまとめる。
試験したすべてのHLA-A2/MAGE-A4抗体は、2桁のナノモル(一価の)親和性でHLA-A2/MAGE-A4p230-239に結合し、IgGから二重特異性フォーマットに変換すると同じ親和性を保つ(分子K及びRについて示されるように)。
表4.選択されたHLA-A2/MAGE-A4 IgG及びHLA-A2/MAGE-A4 CD3 TCB抗体についてSPRにより決定したHLA-A2/MAGE-A4
p230-239に対する親和性データのまとめ
実施例4.HLA-A2/MAGE-A4 CD3T細胞二重特異性(TCB)抗体により誘導されたペプチド-パルスT2細胞のT細胞媒介性の溶解
異なるHLA-A2/MAGE-A4 CD3 TCB抗体により媒介されるT細胞殺傷を、ペプチド-パルスT2細胞で評価した。ヒトPBMCがエフェクターとして称され、二重特異性抗体を用いたインキュベーションを24時間行ったところで殺傷を検出した。
T2細胞を回収し、洗浄し、及び0.8μMのMAGE-A4p230-239ペプチド(GVYDGREHTV、配列番号73)又は無関係なペプチド(NY-ESO1p157-165:SLLMWITQC、配列番号85)を用いて37℃で2時間パルスした。PBSでの1回の洗浄工程の後、ペプチド-パルス標的細胞を、平底96ウェルプレートを使用して30000細胞/ウェルの密度で蒔いた。
末梢血単核細胞(PBMC)を、健康なヒトドナーから得られたヘパリン添加血液の濃縮リンパ球調製物のHistopaque密度遠心分離により調製した。新鮮血を、滅菌PBSで希釈し、Histopaque勾配(Sigma,#H8889)に積層した。遠心分離(450xg、30分、室温)後、PBMC含有界面相より上方の血漿を廃棄し、PBMCを新しいfalconチューブに移し、続いてPBS 50mlで満たした。混合物を遠心分離(400xg,10分,室温)し、上清を廃棄し、PBMCペレットを滅菌PBSで2回洗浄した(遠心分離工程350xg,10分)。結果として得られたPBMC集団を、自動的にカウントし(ViCell)、10%FCS及び1%L-アラニル-L-グルタミン(Biochrom#K0302)を含有するRPMI1640培地に37℃、5%CO2で、さらなる使用まで細胞インキュベーター内に保存した(24時間以内)。
殺傷アッセイのために、抗体を指定の濃度まで加えた(3連で0.02pM~50nMの範囲)。PBMCを標的細胞に加え、最終E:t比10:1を得た。標的細胞殺傷を、37℃、5%CO2での24時間のインキュベーション後に、アポトーシス/ネクローシス細胞によって細胞上清内に放出されたLDHの定量化により評価した(LDH検出キット,Roche Applied Science,#11 644 793 001)。標的細胞の最大溶解(=100%)は、1%Triton X-100での標的細胞のインキュベーションによって達成された。最小溶解(=0%)は、二重特異性構築物を有しないエフェクター細胞と共インキュベートした標的細胞を基準とする。
図3に示すように、評価したすべてのHLA-A2/MAGE-A4 CD3 TCB抗体は、24時間のインキュベーション後にMAGE-A4ペプチド-パルスT2細胞の殺傷を誘導する。HLA-A2/MAGE-A4 CD3 TCB抗体のランク付けは以下の通りである:分子D>分子A=分子F>分子E≧分子C=分子B。
GraphPadPrism6を使用して計算した腫瘍細胞溶解の対応するEC50値を表5に示す。
表5.示されるHLA-A2/MAGE-A4 CD3 TCB抗体により誘導されたMAGE-A4ペプチドパルスT2細胞のT細胞媒介性溶解のEC50値(pM)
実施例5.ペプチド-パルスT2細胞(Jurkat-NFAT活性化アッセイ)でのHLA-A2/MAGE-A4 CD3 TCB抗体-誘導Jurkat細胞活性化
細胞上のCD3とHLA-A2/MAGE-A4ペプチドMHC(pMHC)複合体への同時結合時に、Jurkat-NFATエフェクター細胞のCD3-媒介活性化を誘導するHLA-A2/MAGE-A4 CD3 TCB抗体の能力を、MAGE-A4p230-239ペプチド(GVYDGREHTV)又は無関係なペプチド(NY-ESO1p157-165:(SLLMWITQC))及びJurkat-NFATレポーター細胞(NFATプロモーターを含むCD3-発現ヒト急性リンパ性白血病レポーター細胞株、GloResponse Jurkat NFAT-RE-luc2P、Promega #CS176501)でパルスしたT2細胞の共培養物を使用して評価した。MAGE-A4ペプチドパルスT2細胞上のHLA-A2/MAGE-A4とCD3抗原(Jurkat-NFATレポーター細胞上に発現)にTCB抗体が同時結合すると、NFATプロモーターが活性化され、活性ホタルルシフェラーゼの発現を引き起こす。(ルシフェラーゼ基質の付加時に得られる)発光シグナルの強度は、CD3活性化及びシグナル伝達の強度に比例する。
アッセイのために、T2細胞を回収し、洗浄し、及び0.8μMの(MAGE-A4p230-239ペプチド(GVYDGREHTV))又は無関係なペプチド(NY-ESO1p157-165:(SLLMWITQC)でパルスした。8000細胞/ウェルを平底、白色384ウェルプレート(Falcon、#353963)に蒔き、希釈した抗体又は培地(対照用)を加えた(0.1pM~100nMの範囲)。
続いて、Jurkat-NFATレポーター細胞を回収し、ViCellを使用して生存度を評価した。細胞を細胞培地に再懸濁し、腫瘍細胞に加え、指示通り2.5:1の最終E:T、及び採集容積30μl/ウェルを得た。細胞を、加湿したインキュベーター内において37℃で6時間インキュベートした。インキュベーション時間の最後に、10μl/ウェルのONE-Glo溶液(Promega;1ウェル当たり1:4のONE-Gloとアッセイ培地容積)をウェルに加え、暗所で10分間室温でインキュベートした。発光を、WALLAC Victor3 ELISAリーダー(PerkinElmer2030)を使用して、検出時間1秒/ウェルで検出した。
図4に示すように、評価したすべてのHLA-A2/MAGE-A4 CD3 TCB抗体は、MAGE-A4ペプチドでパルスしたT2細胞と共にインキュベートすると、CD3を介してT細胞架橋を、その後T細胞活性化を引き起こす。EC50及び誘導される活性化の全体のレベル両方を考慮すると、HLA-A2/MAGE-A4 CD3 TCB抗体のランク付けは以下の通りである:分子D>分子A=分子F>分子C>分子E>分子B。
GraphPadPrism6を使用して計算したJurkat活性化の対応するEC50値を表6に示す。
表6.6時間のインキュベーション後に、発光により測定したJurkat-NFATレポーター細胞のHLA-A2/MAGE-A4 CD3 TCB抗体-媒介活性化のEC50値(pM)
実施例6.HLA-A2/MAGE-A4 CD3 TCB抗体により誘導されるHLA-A2+ MAGE-A4発現腫瘍細胞株のパネルのT細胞媒介性の溶解
異なるHLA-A2/MAGE-A4 CD3 TCB抗体により媒介されるT細胞殺傷を、HLA-A2+ MAGE-A4発現腫瘍細胞株(NCI-H1755、NCI-H2023、IM-9、U266B1、A-375、UMUC-3、C-33A)のパネルにおいて評価した。HLA-A2+ MAGE-A4陰性細胞株MDA-MB-231を、陰性対照として含めた。アッセイは実施例4に記載の通り行った。
殺傷アッセイのために、抗体を指定の濃度まで加えた(3連で0.02pM~50nMの範囲)。
24時間後の結果(図5)は、すべてのHLA-A2/MAGE-A4 CD3 TCB抗体が、HLA-A2+ MAGE-A4発現腫瘍細胞株の殺傷を誘導できることを示している。殺傷の度合は、異なるTCB抗体及び異なる腫瘍細胞株間で変わる。NCI-H1755及びIM-9細胞が最も多く殺傷される。HLA-A2/MAGE-A4 CD3 TCB抗体分子A、D及びFは、試験した6つのTCB抗体の中で最も強力である。
GraphPadPrism6を使用して計算した腫瘍細胞溶解の対応するEC50値を表7に示す。
表7.示されるHLA-A2/MAGE-A4 CD3 TCB抗体により誘導された、種々のHLA-A2+ MAGE-A4+腫瘍細胞株のT細胞媒介性溶解のEC50値(pM)
実施例7.HLA-A2/MAGE-A4 CD3 TCB抗体により誘導されるHLA-A2+ MAGE-A4陰性腫瘍細胞株のパネルのT細胞媒介性腫瘍溶解
異なるHLA-A2/MAGE-A4 CD3 TCB抗体により媒介されるT細胞殺傷を、HLA-A2+ MAGE-A4陰性腫瘍細胞株(MDA-MA-231、SKM-1、SW-480、Colo-205、HCT-116、SW-620、Saos-2、L363)のパネルにおいて評価した。HLA-A2+ MAGE-A4陽性細胞株NCI-H1755を、陽性対照として含めた。アッセイは実施例4に記載の通り行った。
殺傷アッセイのために、抗体を指定の濃度まで加えた(3連で0.02pM~50nMの範囲)。
24時間後の結果(図6)は、HLA-A2/MAGE-A4 CD3 TCB抗体のうち、HLA-A2+ MAGE-A4陰性腫瘍細胞の殺傷を引き起こすものがないことを示している。試験したすべてのTCBは、HLA-A2のみに対する選択性を示し、MAGE-A4発現の非存在下で標的細胞殺傷を誘導しない。
実施例8.アラニンスキャンアッセイによる、選択されたHLA-A2/MAGE-A4 CD3 TCBの結合残基の定義
本発明者らのTCB抗体によるMAGE-A4ペプチドの有望な結合モチーフの特性評価のため、本発明者らは、各アミノ酸をアラニンで個々に置き換えることにより、天然配列に由来するペプチドを使用するアラニンスキャンアッセイを設定し、これらのペプチドでパルスしたT2細胞によりNFAT-レポーターシグナルを測定した。
アッセイのために、T2細胞を回収し、洗浄し、0.8μMのMAGE-A4p230-239ペプチド(GVYDGREHTV)又はアラニンで置き換えられたペプチドでパルスした。20000細胞/ウェルを平底白色96ウェルプレート(Greiner Bio-One、#655098)に蒔き、希釈した抗体又は培地(対照用)を加えた。続いて、Jurkat-NFATレポーター細胞を回収し、ViCellを使用して生存度を評価した。細胞を細胞培地に再懸濁し、腫瘍細胞に加え、指示通り5:1の最終E:T、及び採集容積100μl/ウェルを得た。細胞を、加湿したインキュベーター内において37℃で6時間インキュベートした。インキュベーション時間の最後に、100μl/ウェルのONE-Glo溶液(Promega;1ウェル当たり1:1のONE-Gloとアッセイ培地容積)をウェルに加え、暗所で10分間室温でインキュベートした。発光を、WALLAC Victor3 ELISAリーダー(PerkinElmer2030)を使用して、検出時間5秒/ウェルで検出した。
GraphPadPrism6を使用して計算したNFAT-レポーターシグナルのEC50値を図7Aに示す。さらに、陰性ペプチドのEC50に対するEC50の倍率変化を計算し、≧5の倍率変化を有意であると考慮した(図7B)。
アラニンスキャンの結果は、TCB抗体によるMAGE-A4ペプチドの異なる結合モチーフを示している。
実施例9.ペプチド-パルスT2細胞(Jurkat-NFAT活性化アッセイ)上での異なるMAGE-A4 CD3 TCB抗体に対する予測標的外ペプチド(POTP)評価
細胞上のCD3とHLA-A2/MAGE-A4ペプチドMHC(pMHC)複合体への同時結合時に、Jurkat-NFAT細胞のCD3-媒介活性化を誘導するHLA-A2/MAGE-A4 CD3 TCB抗体の能力を、MAGE-A4p230-239ペプチド(GVYDGREHTV)又は33の予測される標的外ペプチド(図8)、及びJurkat-NFATレポーター細胞(NFATプロモーターを含むCD3-発現ヒト急性リンパ性白血病レポーター細胞株、GloResponse Jurkat NFAT-RE-luc2P、Promega #CS176501)でパルスした、T2細胞の共培養物を使用して評価した。MAGE-A4ペプチドパルスT2細胞上のHLA-A2/MAGE-A4複合体とCD3抗原(Jurkat-NFATレポーター細胞上に発現)にTCB抗体が同時結合すると、NFATプロモーターが活性化され、活性ホタルルシフェラーゼの発現を引き起こす。(ルシフェラーゼ基質の付加時に得られる)発光シグナルの強度は、CD3活性化及びシグナル伝達の強度に比例する。
アッセイのために、T2細胞を回収し、洗浄し、96ウェルプレートを使用し、10μMのMAGE-A4p230-239ペプチド(GVYDGREHTV)又はPOTPを用いて、1mio細胞/mlで2時間37℃でパルスした。パルスしたT2細胞を洗浄し、2%FCS、1%L-アラニル-L-グルタミン(Biochrom、#K0302)及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Sigma、#P4333)(Automation培地)を含有するRPMI1640培地中濃度0.4mio細胞/mlで96ディープウェルプレートに移した。
続いて、Jurkat-NFATレポーター細胞を回収し、ViCellを使用して生存度を評価した。細胞を、Automation培地に濃度1mio/mlで再懸濁し、最終アッセイプレートにE:T比2.5:1を得た。
HLA-A2/MAGE-A4 CD3 TCB抗体をAutomation培地に希釈し、最終アッセイ濃度10nMを得て、使用まで4℃で貯蔵した。
以下の工程は、TECAN EVO 200プラットフォームを使用して自動で実行された:
ペプチド-パルスT2細胞、Jurkat-NFATレポーター細胞及びMAGE-A4 CD3 TCB抗体を、平底白色384ウェルプレート(Falcon、#353963)に加え、加湿したインキュベーター内で16時間37℃でインキュベートした。インキュベーション時間の最後に、20μl/ウェルのONE-Glo溶液(Promega;アッセイ培地で1:2に希釈)を加え、混合物を暗所で10分間室温でインキュベートした。発光を、Tecan Sparkリーダーを使用して、検出時間0.5秒/ウェルで検出した。
その結果得られたJurkat-NFATレポーター細胞活性化シグナルを、1秒当たりのカウントとして定量化された相対光単位として測定した(CPSシグナル)。POTPシグナルとMAGE-A4誘導シグナルのパーセントでの比を以下のように計算した:(CPS[POTP]-CPS[非パルス細胞])/(CPS[MAGE-A4]-CPS[非パルス細胞])*100MAGE-A4ペプチドでパルスしたT2細胞により誘導された100%と比較して2%を上回るシグナルを誘導したPOTPは、関連性があるとして定義され、さらなる評価のために考慮された。
図8に示すように、分子Cを除き、評価したすべてのHLA-A2/MAGE-A4 CD3 TCB抗体は、Jurkat-NFATレポーター細胞上のCD3と、示されたPOTPでパルスしたT2細胞上のpMHCとへの同時結合時に、T細胞活性化を誘導した。分子CはJurkat-NFATレポーター細胞活性化を誘導したが、それはMAGE-A4ペプチドでパルスしたT2細胞の存在下においてのみであり、示されたPOTPのいずれかでパルしたT2細胞の存在下では誘導せず、高レベルの特異性を示した。しかしながら、以前の腫瘍細胞溶解実験で明らかとなったインビトロでの抗腫瘍効果はかなり低いものであった(図5参照)。
したがって、分子Dは、好ましい力価(図5参照)と安全性プロファイルとの対比に基づいて、さらなる評価のために選択され、肺及び心臓といった高リスク器官に広く発現しないペプチドでパルスしたT2細胞の存在下においてのみJurkat活性化Jurkat活性化を示す。
次に、POTPのパネルを503個のペプチド(配列番号86~589)に拡大し、分子Dを、上述のようにパルスしたT2細胞の存在下で同様のJurkat-NFATレポーター細胞アッセイにおいて評価した。図9は、結果として得られたJurkat-NFATレポーター細胞活性化シグナルを、2%を上回るシグナルを誘導したMAGE-A4誘導シグナルに対するPOTPシグナルのパーセントでの比としてまとめたものである。
2%を上回るシグナルを誘導したPOTPを、それぞれのペプチドでパルスしたT2を使用したJurkat NFATアッセイにおいて検証した。アッセイは実施例4に記載の通り行った。以前に同定されたペプチドを標的外として確認することができた(図10)。それでも、MAGE-A4標的ペプチドと試験したPOTPとの間には明らかな治療濃度域が存在している。GraphPadPrism6を使用して計算したJurkat-NFATレポーター細胞のHLA-A2/MAGE-A4 CD3 TCB抗体-媒介活性化の対応するEC50値を表8に示す。
表8.発光によって測定したJurkat-NFATレポーター細胞のHLA-A2/MAGE-A4 CD3 TCB抗体-媒介活性化のEC50値(nM)
MAGE-A8誘導ペプチドは、10xの治療濃度域を示すのみであり、これはMAGE-A8-誘導ペプチド(GLYDGREHSV)とMAGE-A4標的ペプチド(GVYDGREHTV)との強い相同性により説明することができる。しかしながら、同定されたPOTPの中に、高リスク器官に広く発現されるものはない。これは、分子Dの好ましい安全性プロファイルが維持されていることを明らかに実証する。
上述と同様のアッセイ設計を使用して、分子Gの特異性を分析した。503個のPOTPの拡大されたパネルを、10μMのMAGE-A4p230-239ペプチド(GVYDGREHTV)又は示されたPOTPでパルスしたT2細胞の存在下で、Jurkat-NFATレポーター細胞アッセイにおいて評価した。図11は、MAGE-A4ペプチドでパルスしたT2細胞により誘導される100%と比較して2%を上回るシグナルを誘導したPOTPシグナルとMAGE-A4誘導シグナルのパーセントでの比を示している。検証したPOTPのうちのいくつか(TPC、RBBP5及びRENT1)はかなり広い発現プロファイルを示し、潜在的な関連安全リスクを判断するためのより詳細なリスク評価の必要性を示唆している。したがって、分子Dに含まれるHLA-A2/MAGE-A4バインダーを含む分子が、分子Gに含まれるHLA-A2/MAGE-A4バインダーを含む同様の分子よりはるかに良好な治療濃度域/安全性プロファイルを有するであろうことが期待される。
実施例10.ペプチド-パルスT2細胞上でのHLA-A2/MAGE-A4 IgG-誘導Jurkat細胞活性化(PGLALA-CAR-J活性化アッセイ)
IgGフォーマットのHLA-A2/MAGE-A4バインダーのPGLALA-CAR-Jエフェクター細胞活性化能を、以下に記載のように評価した。T2細胞をMAGE-A4p230-239ペプチド(GVYDGREHTV)でパルスし、IgG分子のFc部分内にあってNFATプロモーターを含む、抗PGLALA-CAR-Jエフェクター細胞(PGLALA(P329G、L234A、L235A(EU番号付け))に対して指向された(キメラ 抗原受容体(CAR)を発現するJurkat-NFATヒト急性リンパ性白血病レポーター細胞株)変異で共培養した。国際公開第2019/122046号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。IgG分子がMAGE-A4ペプチド-パルスT2細胞上のHLA-A2/MAGE-A4複合体とPGLALA-CAR-J細胞に同時結合すると、NFAT プロモーターが活性化され、活性ホタルルシフェラーゼの発現を引き起こす。
アッセイのために、T2細胞を回収し、洗浄し、10μMのMAGE-A4p230-239ペプチド(GVYDGREHTV)でパルスした。同時に、HLA-A2+/MAGE-A4- MDA-MB-231細胞を回収し、播種した。8000細胞/ウェルを平底白色384ウェルプレート(Falcon、#353963)に蒔き、希釈した抗体又は培地(対照用)を加えた(0.01pM~10nMの範囲)。
続いて、PGLALA-CAR-Jレポーター細胞を回収し、ViCellを使用して生存度を評価した。細胞を細胞培地に再懸濁し、腫瘍細胞に加え、指示通り2.5:1の最終E:T、及び採集容積30μl/ウェルを得た。細胞を、加湿したインキュベーター内において37℃で16時間インキュベートした。インキュベーション時間の最後に、10μl/ウェルのONE-Glo溶液(Promega;1ウェル当たり1:4のONE-Gloとアッセイ培地容積)をウェルに加え、暗所で10分間室温でインキュベートした。発光を、Tecan Spark機器を使用して、検出時間0.5秒/ウェルで検出した。
図12に示すように、評価したすべてのHLA-A2/MAGE-A4 IgGは、PGLALA-CAR-JとMAGE-A4ペプチドでパルスしたT2細胞とに同時結合すると、CAR-J活性化を誘導する。MAGE-A4陰性MDA-MB231細胞にはCAR-J活性化を観察することができず、このことは、MAGE-A4ペプチドの非存在下では、試験したIgGはHLA-A2に対する交差反応性を有さないことを示唆している。力価の観点から、EC50値(表9)、並びにシグナルの最大振幅の両方によって決定した場合、試験したIgGの中で分子H及び分子Kが最も強力である。
表9.MAGE-A4ペプチドパルスT2細胞の存在下において、示されたIgGにより誘導されたPGLALA-CAR-J細胞の活性化のEC50値(pM)
実施例11.HLA-A2/MAGE-A4 CD3 TCB抗体によって誘導されるHLA-A2+ MAGE-A4+腫瘍細胞株のパネルのT細胞媒介性腫瘍溶解
異なるHLA-A2/MAGE-A4バインダー及び異なるCD3バインダーを含むHLA-A2/MAGE-A4 CD3 TCB抗体により媒介されるT細胞殺傷を、HLA-A2+ MAGE-A4+腫瘍細胞株(UM-UC3、A375、NCI-H2013)のパネルにおいて評価した。アッセイは実施例4に記載の通り行った。
殺傷アッセイのために、抗体を指定の濃度まで加えた(3連で1pM~50nMの範囲)。
48時間後の結果(図13)は、異なるHLA-A2/MAGE-A4バインダーを含む2つのTCB抗体間の(分子D対G及び分子R対U)TCB誘導標的細胞溶解に差がないことを示している。
標的細胞の溶解は、CH2527(分子D及びG)を含むTCBと比べ、CD3バインダーとしてV9を含む2つのTCB抗体(分子R及びU)で増大する。
GraphPadPrism6を使用して計算した腫瘍細胞溶解の対応するEC50値を表10に示す。
表10.示されるHLA-A2/MAGE-A4 CD3 TCB抗体により誘導された、種々のHLA-A2+ MAGE-A4+腫瘍細胞株のT細胞媒介性溶解のEC50値(nM)
実施例12.HLA-A2+ MAGE-A4発現A375細胞、HLA-A2を過剰発現するように操作したA375細胞及びMAGE-A4ノックアウトを含むA375細胞上でHLA-A2/MAGE-A4 CD3 TCB抗体(分子R)により誘導されるT細胞媒介性腫瘍溶解及びサイトカイン放出
分子Rによって媒介されたT細胞殺傷を、異なるレベルのHLA-A2/MAGE-A4ペプチドMHC(pMHC)複合体を発現するA375細胞(A375細胞、HLA-A2を過剰発現するように遺伝子操作された(レンチウイルスで)A375細胞、及びMAGE-A4ノックアウトを含むA375細胞(CRISPR-Cas9により生成))で評価した。
異なるA375細胞のMHC-Associated Peptide Proteomics(MAPPS)により検出されたMAGE-A4/HLA-A2 pMHCコピー数を表11に示す。
表11.MHC-Associated Peptide Proteomics(MAPPS)により検出されたMAGE-A4/HLA-A2 pMHCコピー数.
アッセイは実施例4に記載の通り行った。殺傷アッセイのために、分子Rを指定の濃度で加えた(3連で1pM~50nMの範囲)。
24時間後の結果(図14)は、分子RはA375細胞の殺傷を誘導することができるが、HLA-A2過剰発現を有するA375細胞の場合により強い度合までそれが可能であることを示している。MAGE-A4ノックアウトを有するA375細胞は、MAGE-A4発現の不足に起因して標的pMHC複合体を提示しないため、殺傷されなかった。
GraphPadPrism6を使用して計算した腫瘍細胞溶解の対応するEC50値を表12に示す。
表12.分子Rによって誘導されたA375及びA375過剰発現HLA-A2のT細胞媒介性溶解のEC50値(pM)
24時間後と48時間後、Luminexアッセイ(Human Custom ProcartaPlex 7-plex;Thermo Fisher Scientific;#PPX-07-MXFVK4Y)によるサイトカインTNFα及びIFNγのその後の分析のために上清を収集した。アッセイは製造元の説明書に従って実施した。
1.4nMの分子Rを用いた24時間のインキュベーション後のIFNγ放出と48時間のインキュベーション後のTNFα放出を図15に示す。分子R媒介性殺傷時の両サイトカインの放出は、A375 HLA-A2過剰発現細胞で強力に増加しており、これはIFNγ及びTNFα放出がMAGE-A4/HLA-A2 pMHC複合体の発現レベルと相関していることを示している。A375 MAGE-A4ノックアウト細胞にサイトカイン放出を観察することはできない。
実施例13.HLA-A2/MAGE-A4 CD3 TCB抗体(分子R)による治療時の腫瘍細胞増殖
異なる濃度の分子Rによる治療時の腫瘍細胞増殖を監視するために、異なるHLA-A2+/MAGE-A4+細胞株(A375、NCI-H1755、ScaBer、UM-UC3、NCI-H2023、NCI-H1703)を、Essen CellPlayer NucLight Red Lentivirus(Essenbioscience、#4476;EF1α、ピューロマイシン)で形質導入し、核に制限されたNucLight Red蛍光性タンパク質を安定して発現させた。1ウェル当たりの経時的定量化により、腫瘍細胞溶解又は増殖のこのようなリアルタイム評価が可能である。
エフェクター細胞(PBMC)を、実施例4に記載の健康なボランティアの血液から単離した。
HLA-A2+/MAGE-A4+ NucLight赤血球(A375、NCI-H1755、ScaBer、UM-UC3、NCI-H2023、NCI-H1703)を、細胞解離バッファー(Invitrogen、#13151-014)を使用して回収し、インキュベーター内において、滅菌96ウェル平底接着組織培養物プレート(TPP、#92096)中の細胞培養培地に1ウェル当たり15×103細胞(A375、UM-UC3、NCI-H2023、NCI-H1703)、5×103細胞/ウェル(ScaBer)又は25×103細胞/ウェル(NCI-H1755)の密度で、一晩37℃及び5%CO2で蒔いた。分子Rを、指定の濃度で加えた(3連で1pM~50nMの範囲)。PBMCを、エフェクター細胞として各ウェルにE:t比5:1で加えた。
プレートを、Incucyte(登録商標)Zoom System(Essenbioscience、HD 相コントラスト、赤色蛍光、10×の対物レンズ)を使用して、蛍光顕微鏡検査ハイコンテントライフイメージングにより、3時間間隔で96時間37℃及び5%CO2で監視した。腫瘍細胞増殖を監視するために、健康な腫瘍細胞(Count(Per Image))の量を、IncucyteZoom Softwareを使用して定量化した。それぞれの時点及び使用したTCB濃度に対する条件について値をプロットし、T細胞の細胞傷害能に対する効果を分析した。
図16は、分子RがHLA-A2+/MAGE-A4+腫瘍細胞株の腫瘍増殖を阻害できることを示している。腫瘍増殖阻害の度合及び有効濃度は、異なる細胞株間で変化し、このことは、異なるHLA-A2/MAGE-A4 pMHC複合体の発現レベル及びがん細胞株の異なる起源によって説明することができる。
実施例14.ヒト化マウスのIM-9異種移植片にHLA-A2/MAGE-A4 CD3 TCB抗体(分子R)を用いた用量設定有効性試験
この実施例に記載される有効性試験の目的は、完全ヒト化NSGマウスにおける腫瘍退縮及びImmuno-PDの観点から分子Rの用量依存性の有効性を理解することであった。
ヒトIM-9細胞(ヒト多発性骨髄腫)は、DMSZから最初に得られ、増殖後、Roche Glycart内部細胞バンクに寄託された。細胞をRPMI 1640+10%FCS+1%Glutamax+10mM HEPES+1mMピルビン酸ナトリウム中において37℃で5%CO2の水飽和雰囲気で培養した。インビトロ継代12を98%の生存率で皮下注射に使用した。
50マイクロリットルのマトリゲルと混合した50マイクロリットルの腫瘍細胞懸濁液を、22G~30Gの針を用いて、麻酔したマウスの脇腹に皮下注射した。
実験開始時に4~5週齢の雌NSGマウス(Jackson Laboratory)を、特定の病原体のいない条件に維持し、1日のサイクルは、関連するガイドライン(GV-Solas;Felasa;TierschG)に従って、12時間明状態/12時間暗状態であった。この実験研究プロトコルは、地方自治体によって検閲及び承認された(P 2011/128)。到着後、動物を、新しい環境に慣れさせ、観察するために、1週間維持した。連続的な健康モニタリングを、定期的に行った。
雌NSGマウスに対し、15mg/kgのブスルファンを腹腔内注射し、1日後、臍帯血から単離した1x105個のヒト造血幹細胞を静脈注射した。幹細胞注入から14~16週後、マウスを舌下で出血させ、ヒト化を成功させるために、血液をフローサイトメトリーによって分析した。効率的に移植されたマウスは、そのヒトT細胞の頻度に従って、異なる処置群に無作為に分けられた。この時、マウスに上述の腫瘍細胞を注射し、腫瘍サイズが概ね200mm3(7日目)に到達したら、週に1回異なる用量のR又はビヒクルで処置した(図17)。適用は、200μlの注入容積で静脈内に行われた。ノギスを用いて腫瘍増殖を週2回測定し、腫瘍体積を以下のように計算した:
Tv:(W2/2)×L(W:幅、L:長さ)
試験15日目に、1つの群につき4匹のスカウトマウスを屠殺し、腫瘍を除去し、計量し、PFAで一晩固定し、組織学的評価のためにパラフィンに包埋した。腫瘍のスライドを抗マウスCD3抗体で染色し、すべての群の腫瘍内T細胞頻度を評価した。試験28日目に試験を終了した。
図18は、すべての群における腫瘍増殖動態(平均、+/-SEM)と、マウス1匹当たりの個体腫瘍増殖を示している。すべての用量の単剤としての分子Rが、腫瘍増殖の阻害を誘導した。試験した最低用量(0.1mg/kg)は、比較的不均一な阻害を示し、2匹のマウスが低用量処置から離脱した。スカウト動物の腫瘍におけるヒトT細胞浸潤の分析(図19)は、ビヒクルと比較して、すべての群において腫瘍中のT細胞頻度が良好に上昇していることを明らかにしたが、用量間で差は見られなかった。
上述の発明は、理解を明確にする目的で、説明及び実施例によって、ある程度詳細に記載されたが、記載及び実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。本明細書に引用されるすべての特許及び科学文献の開示は、参照によりその全体が明示的に組み込まれる。