JP7294048B2 - 積層体、及びその製造方法 - Google Patents
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Description
また、特許文献2には、大きな凹凸構造上に、微細構造が備わった反射防止構造体について記載されている。
さらに、特許文献3には、表面に凹凸構造を有する着色膜であり、凹凸の特性を最適化することで優れた低反射性、耐光性を有する着色膜、固体撮像素子が提案されている。
また、特許文献2に記載の発明は、大きな凹凸構造自体が光の波長に比べて大きいため、低反射性を損なうだけでなく、製造工程が煩雑である。
また、特許文献3に記載の発明は、着色膜の素材として、チタンブラック、カーボンブラック等の各種有機、無機顔料が用いられているが、黒色度、漆黒性の数値が劣り、黒色低反射膜としての性能は十分ではないのが現状である。
また、特許文献4に記載の発明は、漆黒性に優れるものの表面が平滑で光沢性に優れるものであり、低反射性のものではない。
よって、本発明は、全反射が小さく低反射性に優れ、漆黒性の高い積層体、並びに積層体の製造方法を提供することを目的とする。
前記クリア層(r2)表面の、高さ方向の表面粗さパラメーターである算術平均粗さRaが0.2~2.5μm、横方向の表面粗さパラメーターである粗さ曲線要素の平均長さRSmが0.1~2.5μm、RSm及びRaの比率(RSm/Ra)が0.1~3であることを特徴とする積層体に関する。
クリア層側から測定した積層体の波長400~700nmにおける最大反射率が、2.0%以下である上記積層体に関する。
本発明の積層体は、少なくともカーボンナノチューブ(a)とバインダー(b)とを含んでなるカーボンナノチューブ含有層(r1)の上に、表面に特定の微細凹凸構造を有するクリア層(r2)が積層されたものである。
本発明の積層体は、多数の微小突起が規則的に又は不規則的(ランダム)に、クリア層表面に形成された凹凸構造からなる光反射防止構造であり、こうした光反射防止構造は、微小突起が形成された面に平行な水平面内での、微小突起の断面積が、微小突起の最凸部から最凹部までに至る過程で漸増することで、光に対する屈折率の急激な変化がなくなり、物質界面での不連続な屈折率変化に起因する光の反射を、生じないようにしたものである。
さらに、本発明の積層体はカーボンナノチューブ含有層を含む積層体であるため、微細凹凸構造を有するクリア層内部に侵入した入射光は積層体と基材の界面まで到達することなくカーボンナノチューブが吸収するか、万が一入射光が界面に到達した場合は、界面で反射した光は再度積層体に侵入し、カーボンナノチューブが吸収するため、積層体外部への光の漏れは最大限抑制される。
よって、本発明の積層体は、極めて良好な低反射性と漆黒性とを両立することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の積層体は、少なくともカーボンナノチューブ(a)とバインダー(b)とを含むカーボンナノチューブ含有層(r1)を有する。
カーボンナノチューブ(a)は、グラファイトの1枚面を巻いて円筒状にした形状を有しており、そのグラファイト層が1層で巻いた構造を持つ単層カーボンナノチューブ、2層またはそれ以上で巻いた多層カーボンナノチューブでも、これらが混在するものであっても良いが、コスト面や着色効果の面から多層カーボンナノチューブであることが好ましい。また、カーボンナノチューブ(a)の側壁がグラファイト構造ではなく、アモルファス構造をもったカーボンナノチューブ(a)を用いることもできる。
また、多層カーボンナノチューブとしては、ARKEMA社製 Graphistre ngth(外径:10~15nm)、SUSUN Sinotech New Materials社製 HCNTs10(外径:10~20nm)、HCNTs40(外径:30~50nm)、Nanocyl社製 NC7000(外径:10nm)、NX7100(外径:10nm)、JEIO社製 JENOTUBE8A(外径:6~9nm)、JENOTUBE10A(外径:7~20nm)、JENOTUBE10B(外径:7~10nm)、Cnano社製 Flotube9100(外径:10~15nm)、Flotube9000(外径:10~15nm)、Flotube9110(外径:10~15nm)、Flotube7010(外径:7~11nm)、Kumho Petrochemical社製 K-Nanos100P(外径:10~15nm)、K-Nanos100T(外径:10~15nm)、K-Nanos200P(外径:5~15nm)、Shenzhen Nanotech Port社製 NTP3121(外径:20~35nm)、NTP3221(外径:15~25nm)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明に使用することができるバインダー(b)は特に制限されず、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ウレタンウレア樹脂、アルキッド樹脂、ブチラール樹脂、アセタール樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、スチレン-アクリル樹脂、スチレン樹脂、ニトロセルロース、ベンジルセルロース、セルロース(トリ)アセテート、カゼイン、シェラック、ギルソナイト、スチレン-無水マレイン酸樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/マレイン酸共重合体樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ケトン樹脂、石油樹脂、ロジン、ロジンエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルニトロセルロース、エチレン/ビニルアルコール樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、変性塩素化ポリオレフィン樹脂、及び塩素化ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
単官能モノマーとしては特に制限されず、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、インデシル(メタ)アクリレート、イソクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(
メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシ化ノニフェノール(メタ)アクリレート、プロポキシ化ノニルフェノール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレン(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェニル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、及びジプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」はメタクリレート及びアクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイル」はメタクリロイル及びアクリロイルを意味する。
-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、(水素化)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、(水素化)エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、(水素化)プロピレングリコール変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2-エチル,2-ブチル-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、及び1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
カチオン反応性の成分を紫外線を用いて架橋させる場合に用いられるカチオン系開始剤としては、ルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨードニウム塩、ルイス酸のスルホニウム塩、ルイス酸のホスホニウム塩、その他のハロゲン化物、トリアジン系開始剤、ボーレート系開始剤、及びその他の光酸発生剤等が挙げられる。電子線を用いて架橋させる場合にはこれらを配合しなくてもよい。
本発明の積層体は、前記カーボンナノチューブ含有層(r1)の上に、表面に特定の微細凹凸構造を有するクリア層(r2)が積層されている。
本発明の積層体を構成するクリア層(r2)の表面は、高さ方向の表面粗さパラメーターである算術平均粗さRaが0.2~2.5μm、横方向の表面粗さパラメーターである粗さ曲線要素の平均長さRSmが0.1~2.5μm、RSm及びRaの比率(RSm/Ra)が0.1~3である。
表面粗さパラメーターRa及びRSmは、JIS B0601:2001に準拠した方法で測定した値を示す。Raは算術平均粗さを表し、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜取り部分について、平均線の方向にX軸を、縦倍率の方向にZ軸を取り、粗さ曲線を式:Z=f(x)で表し、基準長さをlrで表したときに、次の式によって求められる値である。RSmは、基準長さ(lr)中に輪郭曲線要素がm個あり、各輪郭曲線要素の長さXsの平均であり、次の式によって求められる値である。
本発明の積層体は、少なくともカーボンナノチューブ(a)とバインダー(b)とを含んでなるカーボンナノチューブ含有層(r1)の上に、表面に特定の微細凹凸構造(特定のRa、特定のRSm、特定のRSm/Ra)を有するクリア層(r2)が積層されたものである。ここでr1層とr2層は直接積層されていることが好ましいが、本発明の効果を妨げない範囲で、別の層を介して積層されていても構わない。
例えば、第一の製造方法として、(1)少なくともカーボンナノチューブ(a)とバインダー(b)と必要に応じて溶媒とを含有する黒色組成物を用意する工程と、(2)この黒色組成物を基材上に塗工し、塗工膜を乾燥/又は硬化してカーボンナノチューブ含有層(r1)を形成する工程と、(3)カーボンナノチューブ含有層(r1)上にクリア組成物を塗工し、乾燥/又は硬化時に表面に特定の微細凹凸構造を付与することで、クリア層(r2)を積層する工程、とを含む方法が挙げられる。
ここで、(2)の工程で塗工膜を乾燥/又は硬化させずに、ウェット状態で(3)の工程を実施し、その後にカーボンナノチューブ含有層(r1)とクリア層(r2)を同時に乾燥/硬化を行って積層体を製造しても良い。
また、上記(3)の工程の代わりに、片側表面に特定の微細凹凸構造を有するクリアフィルムを別途用意し、(2)のカーボンナノチューブ含有層(r1)上に貼付することにより、積層体を製造することもできる。
本発明の黒色組成物を得るには、カーボンナノチューブ(a)、バインダー(b)と必要に応じて溶媒とを、特に限定されるものではないが、例えば、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノーミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル、バスケットミル、ホモミキサー、ホモナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」等)、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、フーバーマーラー、3本ロールミル、エクストルーダー等を使用して分散処理を行うことが好ましい。さらに必要に応じて、分散剤や添加剤を加えても良い。
黒色組成物を塗工する基材としては特に限定されず、ガラス基材、プラスチック基材(有機高分子基材)、金属基材、紙基材、木基材(木製基材)、石基材、布基材、及び皮革基材等を挙げることができる。その形状としては、平板状、フィルム状、シート状、及び立体形状等が挙げられ、用途又は使用条件に応じて適宜選択することができる。
基材としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びナイロン等の合成樹脂のフィルム、これらフィルムを含む複合体、及びガラス等を用いることが好ましい。
表面に特定の微細凹凸構造を有するクリア層(r2)をカーボンナノチューブ含有層(r1)上に積層する方法としては、形成する物質により最適な方法を選択すれば良く、真空蒸着、EB蒸着、スパッタ蒸着などのドライ法、キャスト、スピンコート、ディップコート、バーコート、スプレー、ブレードコート、スリットダイコート、グラビアコート、リバースコート、スクリーン印刷、鋳型塗布、印刷転写、インクジェットなどのウエットコート法等、一般的な方法を挙げることができる。
クリア層(r2)表面に特定の微細凹凸構造を付与する方法としては、形状再現性の観点から光ナノインプリント法が好適に用いられる。具体的には、クリア組成物としてオリゴマー及び/又はモノマーを含む電子線又は紫外線硬化性材料を使い、カーボンナノチューブ含有層(r1)上にクリア組成物を塗布してパターン形成用膜を作製し、当該パターン形成用膜表面に光透過性モールドを圧接し、モールドパターンを転写する加工を行い、パターンが転写され特定の表面形状となった膜をモールドの裏面から露光して硬化させ、特定の表面形状を付与する。
また、クリア層(r2)との剥離性を向上するために、離型処理されたモールドを用いてもよく、シリコーン系やフッソ系等のシランカップリング剤による処理を行ったものを好適に用いることができる。
本発明の積層体のJIS Z8729に基づいたL*、a*、b*表色系におけるL*は5.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.0以下であることがさらに好ましい。L*が小さい程、黒度が高い(明度が低い)ことを示すため、漆黒性に優れた積層体となる。
また、a*は-2.0以上、2.0以下であることが好ましく、b*は-2.0以上0.3以下であることが好ましく、-2.0以上0以下であることがさらに好ましい。a*とb*はゼロ(0)に近い値である程、黒い色相であると言える。また、b*がマイナスである程、青味(青色)が強い色相であると言える。漆黒性という観点では、若干青味(青色)を有する黒色であることが好ましい。
また、本発明の積層体の400~700nmにおける、全反射率の最大値は、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.5%以下であり、さらに好ましくは1.0%以下である。全反射率の最大値が2.0%以下であることで、低反射性が発現し、蛍光灯等の映り込み等の外観不良が目立たなくなり、さらに漆黒性の高い膜となる。全反射率は、分光測色計(例えば、コニカミノルタ株式会社製、CM-700d)によって測定される。
本発明の積層体の膜厚は、1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましい。膜厚が1μm以上であることで、本発明の積層体は、低反射性及び漆黒性が良好となる。
走査型電子顕微鏡(日本電子(JEOL)社製:JSM-6700M)を用いて、加速電圧5kVにてCNTを観察し、5万倍の画像(画素数1024X1280)を撮影した。次いで、撮影された画像にて任意のCNT100個について、各々の短軸長を測定し、それら短軸長の数平均値をCNTの外径とした。
アルミ試料板(外径φ46mm、厚さ3mm、試料部φ26.5mm、厚さ2mm)の中央凹部にCNTをのせ、スライドガラスを用いて、平坦化した。その後、試料を載せた面に薬包紙をのせ、さらにアルミハイシートパッキンをのせた面に対して、1トンの荷重をかけて平坦化した。その後、薬包紙とアルミハイシートパッキンを除去して、CNTの粉末X線回折分析用サンプルを得た。その後、X線回折装置(Ultima2100、株式会社リガク社製)にCNTの粉末X線回折分析用サンプルを設置し、15°から35°まで操作し、分析を行った。サンプリングは0.02°毎に行い、スキャンスピードは2°/min.とした。電圧は40kV、電流は40mA、X線源はCuKα線とした。この時得られる回折角2θ=25°±2°に出現するプロットをそれぞれ11点単純移動平均し、そのピークの半価幅をCNTの半価幅とした。ベースラインは2θ=16°および2θ=34°のプロットを結んだ線とした。
粉体抵抗率測定装置((株)三菱化学アナリテック社製:ロレスターGP粉体抵抗率測定システムMCP-PD-51))を用い、試料質量1.2gとし、粉体用プローブユニット(四探針・リング電極、電極間隔5.0mm、電極半径1.0mm、試料半径12.5mm)により、印加電圧リミッタを90Vとして、種々加圧下の導電性粉体の体積抵抗率[Ω・cm]を測定した。1g/cm3の密度におけるCNTの体積抵抗率の値について評価した。
CNTをマイクロ波試料前処理装置(マイルストーンゼネラル社製、ETHOS1)を使用し、酸分解し、CNTに含まれる金属を抽出した。その後、マルチ型ICP発光分光分析装置(Agilent社製、720-ES)を用いて分析を行い、抽出液に含まれる金属量を算出した。CNTの純度は次のようにして計算した。
CNT純度(%)=((CNT質量-CNT中の金属質量)÷CNT質量)×100
樹脂の重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー株式会社製HLC-8220)を用いて測定した。検量線は標準ポリスチレンサンプルにより作成した。また、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、カラムとしてTSKgel SuperHM-M(東ソー株式会社製)を3本用いた。測定は、流速1.0mL/分、注入量10μL、及びカラム温度40℃の条件下で行った。
(バインダー溶液1の作製)
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、滴下管および撹拌装置を取り付けた反応容器にシクロヘキサノン196部を仕込み、80℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下管より、n-ブチルメタクリレート37.2部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート12.9部、メタクリル酸12.0部、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亞合成株式会社製「アロニックスM110」)20.7部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル1.1部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続し、アクリル樹脂の溶液を得た。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2部をサンプリングして180℃、20分間加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が40%になるようにメトキシプロピルアセテートを添加してバインダー溶液1を調製した。重量平均分子量(Mw)は26,000であった。
(CNT-1の作製)
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、ペイントシェーカーで60分間分散し、黒色組成物CNT-1を作製した。
カーボンナノチューブ1 (Nanocyl社製、NC7000):0.7部
スチレン-アクリル樹脂(ジョンソンポリマー社製、ジョンクリル683):9.3部
メチルエチルケトン(MEK) :90.0部
カーボンナノチューブ1を表2のカーボンナノチューブに変更した以外は、上記のCNT-1と同様にして、黒色組成物CNT-2~5を作製した。
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、ペイントシェーカーで60分間分散し、黒色組成物CNT-6を作製した。
カーボンナノチューブ4 (Cnano社製、Flotube7010):0.3部
スチレン-アクリル樹脂(ジョンソンポリマー社製、ジョンクリル683):9.7部
メチルエチルケトン(MEK) :90.0部
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、ペイントシェーカーで60分間分散し、黒色組成物CNT-7を作製した。
カーボンナノチューブ4 (Cnano社製、Flotube7010):0.5部
スチレン-アクリル樹脂(ジョンソンポリマー社製、ジョンクリル683):9.5部
メチルエチルケトン(MEK) :90.0部
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、ペイントシェーカーで60分間分散し、黒色組成物CNT-8を作製した。
カーボンナノチューブ4 (Cnano社製、Flotube7010):1.0部
スチレン-アクリル樹脂(ジョンソンポリマー社製、ジョンクリル683):9.0部
メチルエチルケトン(MEK) :90.0部
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、ペイントシェーカーで60分間分散し、CNT分散液1を作製した。
カーボンナノチューブ1 (Nanocyl社製、NC7000):3.0部
スチレン-アクリル樹脂(ジョンソンポリマー社製、ジョンクリル683):10.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート :87.0部
上記で得られたCNT分散液1に対し、下記を加えて撹拌混合し、黒色組成物CNT-9を得た。
CNT分散液1:50.0部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ダイセルオルネクス株式会社製、DPHA):14.0部
オキシムエステル系光重合開始剤(BASF社製、Irgacure OXE02):0.9部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:30.0部
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後、直径3mmのジルコニアビーズを用いて、ペイントシェーカーで60分間分散し、カーボンブラック分散液1を得た。
カーボンブラック(三菱ケミカル株式会社製、MA100:粒子径24nm、比表面積110m2/g、DBP吸油量100cm3/100g):5.0部
分散剤BYK111(ビックケミー株式会社製):1.25部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:50.0部
上記で得られたカーボンブラック分散液1に対し、下記を加えて撹拌混合し、黒色組成物CB-1を得た。
カーボンブラック分散液1:46.8部
バインダー溶液1(不揮発分40%):39.1部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:14.1部
上記で得られたカーボンブラック分散液1に対し、下記を加えて撹拌混合し、黒色組成物CB-2を得た。
カーボンブラック分散液1:56.25部
バインダー溶液1(不揮発分40%):12.5部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ダイセルオルネクス株式会社製、DPHA):13.0部
オキシムエステル系光重合開始剤(BASF社製、Irgacure OXE02):0.75部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:17.5部
(CR-1の作製)
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後、1.0μmのフィルタで濾過して、クリア組成物CR-1を得た。
バインダー溶液1(不揮発分40%):27.5部
トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学社製、NKエステルATMPT): 10.5部
光重合開始剤(BASF社製、Irgacure 907):2.0部
増感剤(保土ヶ谷化学社製、EAB-F):1.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:58.0部
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後、1.0μmのフィルタで濾過して、透明組成物CR-2を得た。
バインダー溶液1(不揮発分40%):25.0部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ダイセルオルネクス株式会社製、DPHA):25.0部
オキシムエステル系光重合開始剤(BASF社製、Irgacure OXE02):1.50部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:30.0部
(積層体1の作製)
得られた黒色組成物CNT-1をスピンコーターを用いて透明ガラス基板(コーニング社製、イーグル2000)上に塗工し、クリーンオーブン中60℃で5分乾燥(プリベーク)した後、230℃で20分加熱(ポストベーク)して溶剤を除去し、厚さ2.5μmの第一層(r1);黒色基板1を得た。
この黒色基板1を室温に冷却後、黒色基板1上にクリア組成物CR-1を塗工し、クリーンオーブン中70℃で15分間加温して溶剤を除去して1μmの塗膜を得た。次に超高圧水銀ランプを用いて紫外線を露光し、クリーンオーブン中230℃で30分間加熱して溶剤を除去し、クリア組成物塗膜を得た。基板を室温に冷却後、クリア組成物塗膜上にもう一度クリア組成物CR-1を塗工し、クリーンオーブン中70℃で15分間加温して溶剤を除去し1μmのクリア組成物塗膜を得た。次いで1.2μm幅(ピッチ2.4μm)ストライプパターンのフォトマスクを介して、再び超高圧水銀ランプを用いて紫外線を露光した。その後、この基板を23℃の炭酸ナトリウム水溶液を用いてスプレー現像した後、イオン交換水で洗浄、風乾し、クリーンオーブン中230℃で30分間加熱することによって、カーボンナノチューブ含有層(r1)上に表面に特定の微細凹凸構造を有するクリア層(r2)を積層した積層体1を作製した。
なお塗膜の膜厚は、Dektak 8(日本真空技術社製)を用いて測定した。
(積層体2の作製)
黒色組成物CNT-1を黒色組成物CNT-5に変えた以外は全て実施例1と同様にして、積層体2を作製した。
(積層体3の作製)
実施例1と同様にして、黒色組成物CNT-1を用いて黒色基板1を得た。次に、得られた黒色基板1上にクリア組成物CR-2をスピンコーターを用いて塗工し、クリーンオーブン中80℃で20分間乾燥して溶剤を除去し、厚さ3μmのクリア組成物塗膜を形成した。得られたクリア組成物塗膜に、石英板の表面をドライエッチングによって特定の表面状態を形成した透明モールド(Ra=0.3μm、RSm=0.3μm、RSm/Ra=1.0)を用いて、下記条件で光ナノインプリントを用い、モールドを離脱させることにより、カーボンナノチューブ含有層(r1)上に表面に特定の微細凹凸構造を有するクリア層(r2)積層した積層体3を作製した。
≪ナノインプリント条件≫
装置名:SCIVAX社製、X-100U
プレス圧 0.7MPa
保持時間:100秒
照度:30.0mW/cm2(波長365nmのLED光源)
露光時間:100秒
モールド裏面からの光照射
(積層体4~10の作製)
黒色組成物CNT-1を表2の黒色組成物CNT-2~8に変えた以外は全て実施例3と同様にして、積層体4~10を作製した。
(積層体11~14の作製)
実施例6で使用したモールドを表2の表面状態のモールドに変えた以外はすべて実施例3と同様にして、積層体11~14を作製した。
(積層体101の作製)
黒色組成物CNT-1を黒色組成物CB-1に変えた以外は全て実施例3と同様にして、積層体101を作製した。
(黒色膜102の作製)
黒色組成物CB-2をスピンコート法によりガラス基板に塗工し、クリーンオーブン中で80℃で20分加温して溶剤を除去し、厚さ3μmの黒色塗膜を形成した。得られた黒色塗膜に、特定の表面状態を形成する透明モールド(Ra=0.3μm、RSm=0.3μm、RSm/Ra=1.0)を用いて、実施例3と同様の条件で光ナノインプリントを用い、モールドを離脱させることにより、黒色膜102を作製した。
(黒色膜103の作製)
黒色組成物CB-2を黒色組成物CNT-9に替えた以外は全て比較例2と同様にして、黒色膜103を作製した。
(積層体104の作製)
実施例3と同様にして、黒色組成物CNT-1を用いて得られた黒色基板1上にクリア組成物CR-2をスピンコーターを用いて塗工し、クリーンオーブン中80℃で20分間乾燥して溶剤を除去し、厚さ3μmのクリア組成物塗膜を形成した。得られたクリア組成物塗膜に、特定の表面状態を形成する透明モールド(Ra=0.1μm、RSm=0.05μm、RSm/Ra=0.5)を用いて、実施例3と同様の条件で光ナノインプリントを用い、モールドを離脱させることにより、積層体104を作製した。
得られた積層体について、以下の評価を実施した。結果を表3に示す。
積層体の表面粗さRa及びRSmは、前記の通りJIS B0601:2001に準拠した方法で測定した。
積層体のr2表面からの反射率は、白色校正板の上に各積層体を載せ、400nm~700nmの全反射率を分光測色計(コニカミノルタ株式会社製、CM-700d)を用い、視野角10°、光源D65の条件で測定した。なお、全反射率とは正反射率と拡散反射率を合計したものであり、400~700nmの測定値のうち最大の全反射率を最大反射率とした。
積層体のr2表面からのL*値は、白色校正板の上に各積層体を載せ、分光測色計(コニカミノルタ株式会社製、CM-700d)を用い、視野角10°、光源D65の条件で測定した。L*の測定値から下記の基準で漆黒性を評価した。
◎:L*が2.0以下
○:L*が2.0を超え、5.0以下
×:L*が5.0を超える
一方、比較例1では黒色顔料として、カーボンナノチューブを含まないため、低反射性、漆黒性ともに十分でない結果であった。比較例2、3では、優れた低反射性は有していたものの、表面にクリア層(r2)を積層していないため、漆黒性が不十分であった。また比較例4では、漆黒性は十分であったが、クリア層表面が特定の表面粗さパラメーターを満足していないため、低反射性が不十分な結果であった。
Claims (5)
- 少なくともカーボンナノチューブ(a)とバインダー(b)とを含んでなるカーボンナノチューブ含有層(r1)の上に、表面に凹凸構造を有するクリア層(r2)が積層された積層体であって、
前記クリア層(r2)表面の、高さ方向の表面粗さパラメーターである算術平均粗さRaが0.2~2.5μm、横方向の表面粗さパラメーターである粗さ曲線要素の平均長さRSmが0.1~2.5μm、RSm及びRaの比率(RSm/Ra)が0.1~3であることを特徴とする積層体。 - クリア層側から測定した積層体のL*が、5.0以下であり、
クリア層側から測定した積層体の波長400~700nmにおける最大反射率が、2.0%以下である請求項1記載の積層体。 - カーボンナノチューブ(a)の外径が、3~50nmであることを特徴とする請求項1または2記載の積層体。
- カーボンナノチューブ含有層(r1)中の全固形分に対するカーボンナノチューブ(a)の含有量が、3~15質量%であることを特徴とする請求項1~3いずれか記載の積層体。
- 請求項1~4いずれか記載の積層体の製造方法であって、クリア層の表面の凹凸構造をナノインプリント法またはフォトリソグラフィー法で形成することを特徴とする積層体の製造方法。
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