<第1実施形態>
図1は、第1実施形態におけるメタン製造装置1の概略構成を示した説明図である。メタン製造装置1は、二酸化炭素(CO2)と水素(H2)とからメタン(CH4)を製造する装置であって、反応器10と、ガス供給部20と、熱媒体供給部30と、これらを接続する複数の配管と、制御部90と、を備える。第1実施形態では、メタン製造装置1は、CH4を製造するとしているが、本実施形態は、CH4以外の炭化水素、例えば、エタンやプロパンなどの炭素と水素とから構成される化合物やメタノールなどの主に炭素と水素とから構成される化合物を製造する炭化水素製造装置にも適用可能である。
反応器10は、メタン化反応によりCH4を生成するための略筒形状の容器であり、二重管によって構成されている。反応器10が有する内側の管の内部10aには、第1触媒11と第2触媒12とが配置されている。
第1触媒11は、後述するガス供給部20から供給される空気によってH2を酸化させる酸化能を有する酸化触媒である。第2触媒12は、メタン化能を有する金属、例えば、RuやNiを含んでおり、CO2とH2との混合気(以下、「原料ガス」という)からCH4を生成させる。第1触媒11は、ガス供給部20から供給されるガスを反応器10の内部10aに流入させるガス入口13側に配置されており、第2触媒12は、反応器10の内部10aのガスを外部に流出させるガス出口14側に配置されている。
反応器10には、複数の熱電対が設けられている。本実施形態では、4個の熱電対15a、15b、15c、15dが設けられている。熱電対15aの測定点は、図1に示すように、第1触媒11の内部に配置されている。熱電対15bの測定点は、第2触媒12の内部において、第1触媒11側に配置されている。熱電対15cの測定点は、第2触媒12の略中央に配置されている。熱電対15dの測定点は、第2触媒12の内部において、ガス出口14側に配置されている。熱電対15a、15b、15c、15dは、制御部90に電気的に接続されており、それぞれの測定点での測定結果(温度)は、制御部90に出力される。ここでは、熱電対15a、15b、15c、15dのそれぞれが検出する温度を温度T1、T2、T3、T4とする。熱電対15bは、特許請求の範囲の「第2触媒温度検出部」に相当する。
反応器10には、外側の管と内側の管との間に内部流路16が形成されている。内部流路16は、反応器10の内部10aでのガス入口13からガス出口14に向けてのガスの流れ方向において、相対的に下流側に設けられている熱媒体入口17と、相対的に上流側に設けられている熱媒体出口18と、を有する。内部流路16は、後述する熱媒体供給部30が供給するオイル等の流体の熱媒体(熱流体)が流れる。
ガス供給部20は、3つのマスフローコントローラ(以下、「MFC」という)21、22、23と、反応器10に接続するガス供給管24と、を備える。ガス供給部20は、空気と、H2と、CO2を反応器10の内部10aに供給する。
MFC21は、反応器10の内部10aに供給される空気の量を調整する。MFC21は、図示しないコンプレッサに接続する配管25aに配置されている。配管25aのコンプレッサに接続していない側の端部は、ガス供給管24に接続されている。MFC21は、後述する制御部90と電気的に接続しており、制御部90からの指令に応じて、配管25aを流れる空気の流量を調整する。これにより、MFC21は、反応器10に供給される酸素の量を調整することができる。なお、配管25aが接続するガス供給源は、大気を加圧するコンプレッサに限定されず、酸素タンクなど、酸素を含むガスを供給可能であればよい。空気は、特許請求の範囲の「酸化剤」に相当する。
MFC22は、反応器10の内部10aに供給されるH2の量を調整する。MFC22は、図示しない水電解装置に接続する配管25bに配置されている。配管25bの水電解装置に接続していない側の端部は、ガス供給管24に接続されている。MFC22は、後述する制御部90と電気的に接続しており、制御部90からの指令に応じて、配管25bを流れるH2の流量を調整する、反応器10に供給されるH2の量を調整することができる。なお、配管25bが接続するガス供給源は、水電解装置に限定されず、水素タンクなど、H2を供給可能であればよい。
MFC23は、反応器10の内部10aに供給されるCO2の量を調整する。MFC23は、図示しない燃焼器からCO2を分離する二酸化炭素分離器に接続する配管25cに配置されている。配管25bのCO2分離器に接続していない側の端部は、ガス供給管24に接続されている。MFC23は、後述する制御部90と電気的に接続しており、制御部90からの指令に応じて、配管25cを流れるCO2の流量を調整する。これにより、反応器10に供給されるCO2の量を調整することができる。なお、配管25cが接続するガス供給源は、二酸化炭素分離器に限定されず、二酸化炭素タンクなど、CO2を供給可能であればよい。
反応器10のガス出口14には、生成ガス管26が接続されている。生成ガス管26には、反応器10から排出された生成ガスからH2Oを分離する冷却部26aが設けられている。生成ガスには、反応器10の第2触媒12において生成された生成物(CH4とH2O)と、H2などの未反応ガスが含まれている。冷却部26aは、例えば、100℃~200℃の生成ガスを常温(例えば、20℃±15℃)まで低下させてH2Oを分離する。H2Oが分離された常温の生成ガスは、メタン製造装置1の外部に排出される。
熱媒体供給部30は、熱媒体を圧送可能なポンプ31と、ポンプ31と反応器10とを接続する配管32とを有する。配管32は、ポンプ31と、反応器10の熱媒体入口17とに接続されており、ポンプ31が圧送する熱媒体を反応器10の内部流路16に供給する。反応器10の内部流路16に供給される熱媒体は、主に、メタン化反応によって発熱する第2触媒12と熱交換を行う。内部流路16を流れた熱媒体は、熱媒体出口18から反応器10の外部に排出され、熱媒体が有する熱を利用することができる熱活用先に送られる。
制御部90は、ROM、RAM、および、CPUを含んで構成されるコンピュータである。制御部90は、MFC21、22、23や、図示しないセンサ(温度センサ、流量センサ、濃度センサ等)、温度調整部等と電気的に接続され、メタン製造装置1の全体の制御をおこなう。本実施形態では、反応器10の熱電対15a、15b、15c、15dが出力する第1触媒11および第2触媒12の温度を用いて、MFC21、22、23を制御する。
図2は、本実施形態のメタン製造方法のフローチャートである。次に、本実施形態のメタン製造方法について説明する。本実施形態のメタン製造方法では、第2触媒12において、CO2をCH4に変換する前に、第1触媒11においてH2を酸化させて発熱させる。
時刻t=0において、最初に、加熱工程として、反応器10に、H2と空気を供給する(ステップS11)。制御部90は、ガス供給管24に空気とH2との混合気が流れるように、MFC21とMFC22を制御する。本実施形態では、制御部90は、反応器10に供給されるH2と空気との混合気における等量比が10以上、すなわち、H2過剰の状態となるように、MFC21とMFC22を制御する。これにより、反応器10の内部10aでは、H2が第1触媒11によって酸化されるため、水素の酸化熱が発生する。加熱工程における当量比を10以上とする理由は、後述する。
図3は、反応器10の触媒温度とガス種の時間変化を説明する図である。図3(a)には、反応器10の熱電対15bが検出した第2触媒12の温度の時間変化を示している。図3(b)には、反応器10に供給されるガス種と、それぞれのガス種が供給される時間帯とともに、反応器10においてCH4が生成される時間帯を示している。上述したように、時刻t=0において、反応器10にH2と空気が供給されると、第1触媒11による水素の酸化によって水素の酸化熱が発生するため、第2触媒12の温度が上昇する(図3(a)の時刻0以降)。
次に、熱電対15bが検出した第2触媒12の温度T2があらかじめ設定されている設定温度T2_target1より高いか否かを判定する(ステップS12)。制御部90は、熱電対15bが出力する第2触媒12の温度T2が設定温度T2_target1より高いか否かを判定する。ここで、設定温度T2_target1は、例えば、200℃である。設定温度T2_target1を200℃とする理由は、後述する。熱電対15bが出力する第2触媒12の温度T2が設定温度T2_target1より高い場合(ステップS12:YES)、第2触媒12がメタン化反応用に起動されたとして、ステップS13において、制御部90は、反応器10へのCO2の供給を開始する。熱電対15bが出力する第2触媒12の温度T2が設定温度T2_target1以下である場合(ステップS12:NO)、ステップS12を繰り返す。設定温度T2_target1は、特許請求の範囲の「第1の所定温度」に相当する。
ステップS13において、生成工程として、反応器10へのCO2の供給を開始されると、反応器10では、第2触媒12において、メタン化反応が開始(ライトオフ)され、原料ガスからCH4が生成される。原料ガスからCH4が生成される場合、以下の熱化学反応式(1)に示すように、発熱する。
CO2+4H2 → CH4+H2O+165kJ/mol・・・(1)
したがって、原料ガスからCH4が生成されると、反応器10の内部10aの温度は上昇する。また、本実施形態では、図3(b)に示すように、反応器10へのCO2の供給を開始(時刻td11)した後も、空気も供給しているため、H2の酸化反応も同時に進行している。これにより、反応器10の内部10aの温度上昇は、反応器10へのCO2の供給を開始する前に比べ速い。具体的には、図3(a)に示すように、時刻td11以降の第2触媒12の温度T2の上昇速度は、時刻0から時刻td11に比べ速くなる。
ステップS13の次に、温度T2があらかじめ設定されている設定温度T2_target2より高いか否かを判定する(ステップS14)。制御部90は、温度T2が設定温度T2_target2より高いか否かを判定する。ここで、設定温度T2_target2は、設定温度T2_target1より高い温度であって、例えば、500℃である。設定温度T2_target2を500℃とする理由は、後述する。熱電対15bが出力する第2触媒12の温度T2が設定温度T2_target2より高い場合(ステップS14:YES)、ステップS15において、制御部90は、反応器10への空気の供給を停止する。熱電対15bが出力する第2触媒12の温度T2が設定温度T2_target2以下である場合(ステップS14:NO)、ステップS14を繰り返す。設定温度T2_target2は、特許請求の範囲の「第2の所定温度」に相当する。
ステップS15において、反応器10への空気の供給が停止されると、これ以降(図3(a)の時刻td12以降)、反応器10では、第1触媒11におけるH2の酸化反応は停止し、第2触媒12におけるメタン化反応が進行する。このとき、第2触媒12におけるメタン化反応による発熱によって、第2触媒12の温度は、メタン化反応を自立的に進行させることが可能な温度に維持することができるため、連続してCH4を生成することができる。
次に、本実施形態のメタン製造方法の加熱工程における当量比および設定温度について説明する。本実施形態の加熱工程では、制御部90は、上述したように、反応器10に供給されるH2と空気との混合気における等量比が10以上、すなわち、H2過剰の状態となるように、MFC21とMFC22を制御する。
従来から、メタン化反応によってCH4を生成する反応器は、700℃前後の耐熱性を有する仕様で設計される場合がある。これは、メタン化反応の等圧断熱環境における化学平衡温度が700℃前後となるためであり、例えば、反応圧が2bar・Gであって、初期ガス温度が25℃の条件では、化学平衡温度は、670℃となる。しかしながら、例えば、H2の酸化反応によって、反応器の内部が700℃以上になる場合、反応器の耐熱性を強化しておく必要があり、反応器の製造コストが増加するおそれがある。したがって、本実施形態のように、触媒を加熱するためのH2の酸化反応は、断熱火炎温度が700℃以下となる条件で進行させる必要がある。
図4は、空気中で水素が燃焼するときの断熱火炎温度を説明する図である。図4では、横軸に、H2と空気との混合気における等量比を示し、縦軸に、断熱火炎温度を示す。図4に示すように、H2と空気との混合気の燃焼においては、断熱火炎温度を700℃以下にするには、等量比を10以上、すなわち、H2過剰の状態にする必要がある。したがって、本実施形態のメタン製造方法では、加熱工程において、制御部90は、反応器10に供給されるH2と空気との混合気における等量比が10以上となるようにMFC21とMFC22を制御する。なお、図4に示すように、H2と空気との混合気の等量比を、0.2以下、すなわち、H2希薄の状態にすることでも、断熱火炎温度を700℃以下にすることはできる。しかしながら、H2と空気との混合気の燃焼において、空気の供給を停止すると、反応器内では等量比が一時的に上昇するため、温度が700℃以上になるおそれがあり、好ましくない。
上述したように、加熱工程では、H2と空気との混合気の当量比を10以上とすることで反応器の耐熱性を強化することは不要となるが、H2を過剰に供給するため、酸化触媒を用いても酸化反応の反応速度が非常に遅くなる。すなわち、酸化触媒の昇温に必要な時間が長くなるおそれがある。また、酸化触媒を加熱しているとき、反応器に供給されたH2の多くは反応に関与することなく反応器の外部に排出されるため、昇温時間が長くなるほど、CH4に変換されないH2の量が増加するため、CH4の単位時間当たりの生産量が低下するおそれがある。さらに、本実施形態のメタン製造方法では、熱電対15bが検出した第2触媒12の温度T2が200℃になるとライトオフが可能となる。しかしながら、メタン化反応を開始すると、その後すぐに失活し、メタン化反応が継続されないおそれがあるため、第2触媒12の全体温度を、自立的にメタン化反応を行うことが可能な温度まで上昇させておく必要がある。
上述した点を踏まえ、本実施形態のメタン製造方法では、反応器10へのCO2の供給を開始する設定温度T2_target1を、原料ガスからCH4を生成可能な温度である200℃にするとともに、CO2の供給を開始しても空気の供給は継続し、H2の酸化熱を第2触媒12の温度上昇に利用する。また、空気の供給を停止する設定温度T2_target2を、CH4を生成する反応を自立的に進行させることが可能な温度である500℃とし、CH4の生成熱によって継続してCH4を生成する。なお、設定温度T2_target1、T2_target2の温度は、これらに限定されない。例えば、設定温度T2_target2は、失活しないように安全を見越して500℃より高く設定されてもよいし、H2の消費量を低減するために500℃より低く設定されてもよい。
以上説明した、第1実施形態のメタン製造装置1によれば、反応器10では、第1触媒11において、ガス供給部20が供給するH2と空気との反応によって水素の酸化熱が発生する。第1触媒11の下流側に配置されている第2触媒12は、第1触媒11において発生した酸化熱によって加熱される。これにより、第2触媒12の温度は、H2とCO2とによるCH4の生成に適した温度となるため、例えば、電気ヒータなどによってメタン成能を有する触媒を加熱する場合に比べ、CH4の製造コストを低減することができる。また、第1触媒11においてH2の酸化によって熱を発生させて第2触媒12を加熱したのちは、第2触媒12において酸素が存在しない環境下でH2とCO2とからCH4を生成する。これにより、第2触媒12でのCH4の生成において、CH4の原料として反応器10に供給されるH2が空気によって酸化されないため、CH4の単位時間当たりの生産量を増加させることができる。したがって、CH4の製造コストを低減しつつ、CH4の単位時間当たりの生産量を増加させることができる。なお、本実施形態のメタン製造装置1は、CH4を製造するとしているが、「炭化水素製造装置」が製造する炭化水素は、CH4だけでなく、例えば、エタンやプロパンなどの炭素と水素とから構成される化合物や、メタノールなどの主に炭素と水素とを含む化合物を含んでもよい。
また、第1実施形態のメタン製造装置1によれば、制御部90は、第2触媒12の温度に応じて、CO2と、H2と、空気との反応器10への供給を制御する。制御部90は、最初に、H2と空気とを供給し、水素の酸化反応によって発生する熱で第2触媒12を加熱し、第2触媒12の温度がCH4を生成可能な200℃より高くなると、原料ガスを供給することでCH4を生成させる。また、空気も供給することで、CH4の生成熱に加え、水素の酸化熱も利用して第2触媒12を速やかに昇温させる。さらに、第2触媒12の温度がCH4を自立的に生成可能な500℃より高くなると、空気の供給を停止し、供給されるH2の全量をCH4の生成に振り分ける。これにより、CH4の単位時間当たりの生産量をさらに増加させることができる。
また、第1実施形態のメタン製造方法によれば、加熱工程において、第1触媒11におけるガス供給部20が供給するH2と空気との反応によって水素の酸化熱が発生する。第2触媒12は、第1触媒11において発生した酸化熱によって加熱されるため、比較的容易に、H2とCO2とによってCH4を生成可能な温度となる。これにより、生成工程においてCH4を生成することができるため、例えば、電気ヒータなどによって炭化水素生成能を有する触媒を加熱する場合に比べ、炭化水素の製造コストを低減することができる。また、加熱工程において、第1触媒11においてH2の酸化によって熱を発生させて第2触媒12を加熱したのち、生成工程において、第2触媒12において酸素が存在しない環境下でH2CO2とからCH4を生成する。これにより、CH4の生成のために供給されるH2が空気によって酸化されないため、CH4の単位時間当たりの生産量を増加させることができる。したがって、CH4の製造コストを低減しつつ、CH4の単位時間当たりの生産量を増加させることができる。
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態におけるメタン製造装置2の概略構成を示した説明図である。第2実施形態のメタン製造装置2は、第1実施形態のメタン製造装置1(図1)と比較すると、2つの反応器を備える点が異なる。
本実施形態のメタン製造装置2は、原料ガスからCH4を製造する装置であって、反応器10と、下流側反応器40と、ガス供給部50と、熱媒体供給部60と、これらを接続する複数の配管と、制御部90とを備える。本実施形態のメタン製造装置2は、第1実施形態と同様に、CH4以外の炭化水素を製造する炭化水素製造装置にも適用可能である。
下流側反応器40は、メタン化反応によりCH4を生成するための略筒形状の容器であり、反応器10の下流側に配置されている。下流側反応器40は、反応器10と同形状、同容量の容器であり、二重管によって構成されており、内側の管の内部40aには、第3触媒41と第4触媒42とが配置されている。
第3触媒41は、後述するガス供給部50から供給される酸化剤によってH2を酸化させる酸化能と、メタン化能との両方を有する触媒である。第3触媒41は、反応器10が排出し冷却部26aによってH2Oが分離された生成ガスを下流側反応器40の内部40aに流入させるガス入口43側に配置されている。第4触媒42は、メタン化能を有する金属、例えば、RuやNiを含んでおり、原料ガスからCH4を生成させる。第4触媒42は、下流側反応器40の内部40aのガスを外部に流出させるガス出口44側に配置されている。本実施形態では、第3触媒41の体積は、第3触媒41の体積と第4触媒42の体積との合計に対して、5~15%程度となっている。ガス入口43は、特許請求の範囲の「接続口」に相当する。
下流側反応器40には、4個の熱電対45a、45b、45c、45dが設けられている。熱電対45aの測定点は、図5に示すように、第3触媒41の内部に配置されている。熱電対45bの測定点は、第4触媒42の内部において、第3触媒41側に配置されている。熱電対45cの測定点は、第4触媒42の略中央に配置されている。熱電対45dの測定点は、第4触媒42の内部において、ガス出口44側に配置されている。熱電対45a、45b、45c、45dは、制御部90に電気的に接続されており、それぞれの測定点での測定結果(温度)は、制御部90に出力される。ここでは、熱電対45a、45b、45c、45dのそれぞれが検出する温度を温度T2-1、T2-2、T2-3、T2-4とする。熱電対45aは、特許請求の範囲の「第3触媒温度検出部」に相当する。熱電対45cは、特許請求の範囲の「第4触媒温度検出部」に相当する。
本実施形態では、反応器10が有する第1触媒11は、第3触媒41と同様に、水素の酸化能と、メタン化能との両方を有する触媒となっている。また、反応器10が有する熱電対15a、15b、15c、15dのそれぞれが検出する温度を温度T1-1、T1-2、T1-3、T1-4とする。
下流側反応器40には、外側の管と内側の管との間に内部流路46が形成されている。内部流路46は、下流側反応器40でのガス入口43からガス出口44に向けてのガスの流れ方向において、相対的に下流側に設けられている熱媒体入口47と、相対的に上流側に設けられている熱媒体出口48と、を有する。内部流路46は、反応器10の内部流路16を流れたあとの熱媒体が流れる。
ガス供給部50は、3つのMFC21、22、23と、ガス供給管24と、生成ガス管26と、下流側ガス供給管27と、ガス接続管28と、下流側生成ガス管29と、を有する。ガス供給部50は、反応器10に、空気と、H2と、CO2を供給しつつ、下流側反応器40に、直接空気を供給する。本実施形態では、ガス供給管24には、ガス供給管24における空気の流れを制御するバルブV1が配置されている。バルブV1は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90の指令に応じて、ガス供給管24における空気の流れを許容または遮断する。
下流側ガス供給管27は、図5に示すように、一方の端部がガス供給管24に接続し、他方の端部が下流側反応器40のガス入口43に接続する。下流側ガス供給管27は、MFC21によって流量が調整された空気を下流側反応器40に直接供給する。下流側ガス供給管27には、下流側ガス供給管27の空気の流れを制御するバルブV2が配置されている。バルブV2は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90の指令に応じて、下流側ガス供給管27における空気の流れを許容または遮断する。
ガス接続管28は、生成ガス管26と下流側ガス供給管27とに接続されている。ガス接続管28は、冷却部26aによってH2Oが分離された反応器10の生成ガスを、下流側ガス供給管27を介して、下流側反応器40の内部40aに供給する。
下流側生成ガス管29は、下流側反応器40のガス出口44に接続されている。下流側生成ガス管29には、冷却部29aが設けられている。冷却部29aは、下流側反応器40から排出された生成ガスからH2Oを分離する脱水装置である。冷却部29aは、下流側反応器40から排出された生成ガスを常温まで低下させてH2Oを分離する。H2Oが分離された常温の生成ガスはメタン製造装置2の外部に排出される。
熱媒体供給部60は、熱媒体を圧送可能なポンプ31と、ポンプ31と反応器10とを接続する配管32と、接続配管33と、を有する。接続配管33は、反応器10の熱媒体出口18と、下流側反応器40の熱媒体入口47とに接続する。接続配管33は、反応器10の内部流路16を流れた熱媒体を、下流側反応器40の内部流路46に供給する。下流側反応器40の内部流路46を流れる熱媒体は、主に、下流側反応器40の第4触媒42と熱交換を行う。内部流路46を流れた熱媒体は、熱媒体出口48から下流側反応器40の外部に排出され、熱媒体が有する熱を有効に利用できる熱活用先に送られる。
本実施形態では、制御部90は、反応器10の熱電対15a、15b、15c、15dと、下流側反応器40の熱電対45a、45b、45c、45dが出力する触媒の温度を用いて、MFC21、22、23での流量調整、および、バルブV1、V2での開閉を制御する。
図6は、本実施形態のメタン製造方法のフローチャートである。次に、本実施形態のメタン製造方法について説明する。本実施形態のメタン製造方法では、先に下流側反応器40からメタン化反応をライトオフさせたのち、反応器10のメタン化反応をライトオフさせる。なお、図6に示す制御処理を開始する前では、バルブV1とバルブV2とは、閉じられている。
時刻t=0において、最初に、加熱工程として、バルブV2を開くとともに、反応器10にH2を供給しつつ、下流側反応器40に空気を供給する(ステップS21)。制御部90は、バルブV2を開いてから、MFC21とMFC22を制御して、空気の流量とH2の流量を調整する。本実施形態では、制御部90は、第1実施形態と同様に、H2過剰の状態となるように、MFC21とMFC22を制御する。MFC21によって流量が調整された空気は、バルブV1は閉じられているため、バルブV2が開かれている下流側ガス供給管27を通って、下流側反応器40に供給される。一方、MFC22によって流量が調整されたH2は、ガス供給管24を通って反応器10に供給される。反応器10に供給されたH2は、第1触媒11と第2触媒12とを素通りし、ガス接続管28と下流側ガス供給管27を通って、下流側反応器40に供給される。これにより、下流側反応器40の内部40aでは、H2の酸化反応が進行する。
図7は、反応器10を流れるガス種と温度の時間変化を説明する図である。図7(a)には、反応器10が備える熱電対15a、15b、15c、15dのそれぞれが検出する第1触媒11と第2触媒12の温度T1-1、T1-2、T1-3、T1-4の時間変化が示されている。図7(b)には、反応器10を流れるガスの種類、および、それぞれのガスが流れる時間帯が示されている。反応器10では、図7(b)の時刻0から時刻td21までの間に示すように、H2しか供給されないため、H2は反応せず、反応器10の内部10aを素通りする。このため、第1触媒11および第2触媒12の温度は、変化しない(図7(a)の時刻0から時刻td21までの間)。
図8は、下流側反応器40を流れるガス種と温度の時間変化を説明する図である。図8(a)には、下流側反応器40が備える熱電対45a、45b、45c、45dのそれぞれが検出する第3触媒41と第4触媒42の温度T2-1、T2-2、T2-3、T2-4の時間変化が示されている。図8(b)には、下流側反応器40を流れるガスの種類、および、それぞれのガスが流れる時間帯が示されている。下流側反応器40では、図8(b)の時刻0から時刻td21までの間に示すように、空気とH2が供給されるため、H2が第3触媒41によって酸化され、水素の酸化熱が発生する。これにより、第3触媒41の温度T2-1が上昇し(図8(a)の時刻0から時刻td21までの間)、第3触媒41の下流側に位置する第4触媒42の温度T2-2、T2-3、T2-4も順次上昇する。
次に、熱電対45aが検出した第3触媒41の温度T2-1があらかじめ設定されている設定温度T2-1_target1より高いか否かを判定する(ステップS22)。制御部90は、熱電対45aが出力する第3触媒41の温度T2-1が設定温度T2-1_target1より高いか否かを判定する。ここで、設定温度T2-1_target1は、例えば、200℃である。設定温度T2-1_target1を200℃とする理由は、第1実施形態と同様である。熱電対45aが出力する第3触媒41の温度T2-1が設定温度T2-1_target1より高い場合(ステップS22:YES)、ステップS23において、制御部90は、第3触媒41がメタン化反応用に起動されたとして、反応器10へのCO2の供給を開始する。熱電対45aが出力する第3触媒41の温度T2-1が設定温度T2-1_target1以下である場合(ステップS22:NO)、ステップS22を繰り返す。設定温度T2-1_target1は、特許請求の範囲の「第3の所定温度」に相当する。
ステップS23において、反応器10にCO2が供給されると、反応器10には、H2とCO2とが供給されることとなる(図7(b)の時刻td21から時刻td22までの間)。しかしながら、反応器10の第1触媒11と第2触媒12のそれぞれの温度は、図7(a)に示すように、比較的低温であるため、反応器10において、メタン化反応は進行しない。
一方、反応器10に供給されたH2とCO2とは、反応器10の内部10aとガス接続管28を通って、下流側反応器40の内部40aに流入する(図8(b)の時刻td21から時刻td22までの間)。下流側反応器40では、第3触媒41で進行する水素の酸化熱によって第3触媒41と第4触媒42が加熱されているため、それぞれの触媒においてメタン化反応が進行する。これにより、CH4が生成されるとともに、メタン化反応で発生する熱によって、第3触媒41と第4触媒42とはさらに加熱される(図8(a)の時刻td21から時刻td22までの間)。
ステップS23の次に、第3触媒41の温度T2-1があらかじめ設定されている設定温度T2-1_target2より高いか否かを判定する(ステップS24)。制御部90は、温度T2-1が設定温度T2-1_target2より高いか否かを判定する。ここで、設定温度T2-1_target2は、設定温度T2-1_target1より高い温度であって、例えば、第1実施形態と同様に、500℃である。設定温度T2-1_target2を500℃とする理由は、第1実施形態と同様である。熱電対45aが出力する第3触媒41の温度T2-1が設定温度T2-1_target2より高い場合(ステップS24:YES)、ステップS25において、制御部90は、バルブV2を閉じて、下流側反応器40への空気の供給を停止する。熱電対45aが出力する第3触媒41の温度T2-1が設定温度T2-1_target2以下である場合(ステップS24:NO)、ステップS24を繰り返す。設定温度T2-1_target2は、特許請求の範囲の「第4の所定温度」に相当する。
ステップS25では、下流側反応器40への空気の供給が停止されるものの、下流側反応器40の内部40aには、反応器10を通ったH2とCO2とが流入し、メタン化反応によって熱が継続的に発生している。これにより、下流側反応器40では、特に、第3触媒41の温度がメタン化反応を自立的に進行させる程度に高くなっているため(図8(a)の時刻td22から時刻td23までの間)、第3触媒41では、メタン化反応が自立的に進行する。第3触媒41においてメタン化反応が自立的に進行すると、第4触媒42の温度は、図8(a)の時刻td22から時刻td23までの間に示すように、上昇し続ける。
ステップS25の次に、第4触媒42の温度T2-3があらかじめ設定されている設定温度T2-3_targetより高いか否かを判定する(ステップS26)。制御部90は、温度T2-3が設定温度T2-3_targetより高いか否かを判定する。ここで、設定温度T2-3_targetは、設定温度T2-1_target1より高い温度であって、設定温度T2-1_target2より低い温度である。熱電対45cが出力する第4触媒42の温度T2-3が設定温度T2-3_targetより高い場合(ステップS26:YES)、ステップS27において、制御部90は、バルブV1を開き、反応器10への空気の供給を開始する。熱電対45cが出力する第4触媒42の温度T2-3が設定温度T2-3_target以下である場合(ステップS26:NO)、ステップS26を繰り返す。設定温度T2-3_targetは、特許請求の範囲の「第5の所定温度」に相当する。
ステップS27において、反応器10への空気の供給が開始される(図7(b)の時刻td23)と、すでに反応器10に供給されているH2が酸化されることで、水素の酸化熱が発生する。この水素の酸化熱によって、反応器10の第1触媒11が加熱される(図7(a)の時刻td23から時刻td24までの間)。このとき、下流側反応器40では、メタン化反応が自立的に進行しているため、第3触媒41の温度と第4触媒42の温度は、上昇し続け、図8(a)の時刻td23以降に示すように、安定して推移する。
ステップS27の次に、第1触媒11の温度T1-1があらかじめ設定されている設定温度T1-1_targetより高いか否かを判定する(ステップS28)。制御部90は、温度T1-1が設定温度T1-1_targetより高いか否かを判定する。ここで、設定温度T1-1_targetは、例えば、第1触媒11においてメタン化反応が自立的に進行する温度である、500℃である。熱電対15aが出力する第1触媒11の温度T1-1が設定温度T1-1_targetより高い場合(ステップS28:YES)、ステップS29において、制御部90は、第1触媒11がメタン化反応用に起動されたとして、バルブV1を閉じて、反応器10への空気の供給を停止する。熱電対15aが出力する第1触媒11の温度T1-1が設定温度T1-1_target以下である場合(ステップS28:NO)、ステップS28を繰り返す。
ステップS29において、反応器10への空気の供給が停止されるものの、反応器10では、メタン化反応によって熱が継続的に発生しており、メタン化反応を自立的に進行させることができる。第2実施形態のメタン製造方法では、このようにして、下流側反応器40から先にメタン化反応をライトオフさせたのち、反応器10のメタン化反応をライトオフさせて、メタン製造装置2でのメタンの単位時間当たりの生産量を向上させる。
次に、本実施形態のメタン製造装置2において、下流側反応器40からメタン化反応をライトオフさせる理由を説明する。一般的に、CH4の単位時間当たりの生産量を増加させるには、メタン製造装置において、メタン化反応のライトオフ後から定常運転となるまでの時間を短くすることが必要となる。これは、ライトオフ後から定常運転となるまでの間に生成されるCH4の濃度は比較的低いため、製品として利用することが難しく、このライトオフ後から定常運転となるまでの間に反応器に供給されたH2を製品として利用できないためである。すなわち、メタン化反応のライトオフ後、短時間でメタン化反応を高効率で進行させる必要があり、このためには、反応器の原料ガスが流れる方向において、広い範囲で触媒を速やかに昇温させる必要がある。
図9は、反応器の触媒温度の分布を説明する図である。図9に示す3つのグラフのそれぞれでは、横軸に、反応器の原料ガスが流れる方向における位置を示し、縦軸に、触媒温度を示している。図9(a)には、原料ガスからCH4を生成する比較例の反応器の触媒温度の分布を示している。図9(b)には、メタン製造装置2が備える下流側反応器40における触媒温度の分布を示している。図9(c)には、メタン製造装置2が備える反応器10における触媒温度の分布を示している。なお、図9(b)と図9(c)とのそれぞれは、図8と図7とのそれぞれに示した触媒温度の時間変化から、特定の時刻における温度をプロットしたものである。
図9(a)に触媒温度の分布を示している比較例の反応器では、反応器の内部の上流側に、水素の酸化能とメタン化能との両方を有する触媒が配置されており、反応器の内部の下流側に、炭化水素生成能を有する触媒が配置されている。比較例の反応器において、上流側の触媒が水素の酸化熱によって加熱されCH4の生成が開始されても、図9の点線La1に示すように、反応器の広い範囲において触媒の温度がCH4を効率的に生成できる温度(図9(a)に示す温度Tc)となっていないため、反応器全体で生成されるメタンの量は少なくなる。したがって、触媒温度の分布が図9(a)の実線La2で示す状態となるまで、触媒を加熱する必要がある(図9(a)に示す白抜き矢印F9)。
また、従来から、メタン製造装置は、低い反応圧で、CH4の単位時間当たりの生産量の増加につながる高いCO2転化率を得るため、本実施形態のように、直列に接続された2つの反応器を備える場合がある。このようなメタン製造装置では、大部分のメタン化反応は、一段目の反応器(本実施形態では、反応器10)で進行しており、二段目の反応器(本実施形態では、下流側反応器40)で生成されるCH4の量は少ない。また、二段目の反応器には、一段目の反応器で生成された多量のCH4が含まれるガスが供給されるため、二段目の反応器は、一段目の反応器に比べ、反応速度(発熱速度)が遅くなるおそれがある。このため、二段目の反応器では、メタン化反応がライトオフしても、メタン化反応そのものが多く進行しないため、触媒の温度の上昇は、緩慢になりやすい。一方で、直列に接続された2つの反応器を備えるメタン製造装置におけるCO2転化率は、図9(a)を用いて説明したCH4の単位時間当たりの生産量と同様に、下流側の触媒、すなわち、直列に接続された2つの反応器では二段目の反応器が備える触媒の温度に強く依存するため、高いCO2転化率を短時間で実現するためには、二段目の反応器が備える触媒の温度をいち早く上昇させる必要がある。
そこで、本実施形態では、CO2転化率への影響がより高い下流側反応器40を反応器10より先行してライトオフさせる(図6に示すフローチャートでのステップS21からステップS23まで)。このとき、反応器10では、メタン化反応が進行するほど触媒の温度が上昇していないため、下流側反応器40に流入するガスにはCH4は含まれていない。これにより、下流側反応器40でのメタン化反応が進行しやすくなるため、急峻な反応で先行して下流側反応器40の第3触媒41と第4触媒42とを昇温することができる。
具体的には、図9(b)と図9(c)とを比較して説明すると、下流側反応器40の触媒全体の温度は、時刻td23(ステップS27)において、温度Tcより高くなっている(図9(b)参照)。一方、反応器10の触媒全体の温度は、時刻td23より後の時刻td24(ステップS28)においても、温度Tcより高くなっていない(図9(c)参照)。反応器10では、時刻td24よりもさらに後の時刻td25(ステップS29)において、触媒全体の温度が温度Tcより高くなっている。このように、本実施形態のメタン製造装置2では、直列に接続されている2つの反応器において、下流側の反応器(下流側反応器40)の方が反応器10よりも早く昇温されるため、CH4の単位時間当たりの生産量を増加させることができる。
以上説明した、第2実施形態のメタン製造装置2によれば、水素の酸化能を有する第1触媒11は、メタン化能も有する。これにより、第1触媒11が水素の酸化熱で加熱されると、そのまま加熱された第1触媒11を用いてCH4を生成することができる。第1触媒11においてCH4が生成されると、CH4の生成熱によって第1触媒11がさらに加熱されるとともに、第1触媒11の下流に配置されている第2触媒12も加熱されるため、メタン化能を有する第2触媒12を速やかにCH4の生成に適した温度とすることができる。これにより、CH4の単位時間当たりの生産量をさらに増加させることができる。
また、第2実施形態のメタン製造装置2によれば、メタン製造装置2は、反応器10の下流側に、水素の酸化能とメタン化能の両方を有する第3触媒41と、メタン化能を有する第4触媒42が配置されている下流側反応器40を備えている。これにより、制御部90によって、下流側反応器40にH2と空気を供給することで、下流側反応器40では、H2と空気との反応によって第3触媒41が加熱される。また、メタン化能も有している第3触媒41の温度T2-1が温度T2-1_target1より高いとき、制御部90は、反応器10にCO2を供給することで、下流側反応器40の第3触媒41において、CH4を生成させたのち、反応器10に空気を供給する。これにより、下流側反応器40が備えるメタン化能を有する第3触媒41を単独で加熱しCH4を生成するように下流側反応器40を起動してから、下流側反応器40の上流側に位置する反応器10に空気を供給することで、下流側反応器40を起動してから反応器10を起動することができる。したがって、上流側の反応器10を起動してから下流側反応器40を起動する場合に比べ、メタン製造装置2全体としての起動時間が短くなるとともに、触媒を昇温するときに消費するH2の量が減少するためCH4の製造コストを低減することができる。また、反応器10と下流側反応器40とを直列に接続することで、反応器10においてCH4とならなかったCO2とH2を下流側反応器40でCH4とすることができるため、CH4の単位時間当たりの生産量をさらに増加させることができる。
また、第2実施形態のメタン製造装置2によれば、制御部90は、下流側反応器40において第3触媒41の温度T2-1が温度T2-1_target1より高く温度T2-1_target2より低いとき、CO2とH2とを反応器10に供給しつつ、下流側反応器40に空気を供給することで、第3触媒41でCH4を生成しつつ、第3触媒41でH2の酸化熱を発生させる。これにより、第3触媒41の温度を、H2の酸化熱と、CH4の生成熱とによって速やかに昇温することができる。また、第3触媒41の温度T2-1が温度T2-1_target2より高いとき、第3触媒41において自立して炭化水素を生成することができるため、下流側反応器40への空気の供給を停止した後、反応器10に空気を供給する。これにより、第3触媒41においてCH4を自立的に生成可能となった下流側反応器40に供給されるH2の全量をCH4の生成に振り分けることができる。したがって、CH4の単位時間当たりの生産量をさらに増加させることができる。
また、第2実施形態のメタン製造装置2によれば、下流側反応器40の第4触媒42の温度T2-3が温度T2-3_targetになるとき、第4触媒42において自立してCH4を生成することができるため、下流側反応器40の起動が完了する。そこで、反応器10に空気を供給し、第2触媒22の温度を、CH4を生成可能な温度まで昇温する。これにより、下流側反応器40での触媒の加熱での無駄なH2の消費量を低減するとともに、反応器10においてCH4の生成に利用されなかったCO2とH2とを下流側反応器40においてCH4とすることができる。したがって、CH4の単位時間当たりの生産量をさらに増加させることができる。
また、第2実施形態のメタン製造装置2によれば、下流側反応器40には、ガス供給部50からの空気が直接供給される下流側ガス供給管27が接続されている。メタン製造装置2によるメタン製造方法では、最初に、バルブV2を開くとともに、反応器10にH2を供給しつつ、下流側反応器40に空気を供給することで、反応器10を素通りしたH2と下流側反応器40に供給された空気との酸化反応を、下流側反応器40で進行させる。これにより、反応器10の触媒を加熱する前に、H2の酸化熱によって下流側反応器40の触媒を加熱することができる。したがって、比較的簡素な配管構成で、下流側反応器40を反応器10に先駆けて起動させることができる。
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
[変形例1]
上述の実施形態では、「炭化水素製造装置」としてのメタン製造装置は、「炭化水素」としてのメタンを製造するとした。しかしながら、炭化水素製造装置が製造する炭化水素は、メタンだけでなく、例えば、エタンやプロパンなどの炭素と水素とから構成される化合物や、メタノールなどの主に炭素と水素とから構成される化合物を含んでもよい。
[変形例2]
第1実施形態では、制御部90は、ステップS13において反応器10へのCO2の供給を開始したのちに、ステップS14において、第2触媒12の温度T2が設定温度T2_target2より高い場合に、反応器10への空気の供給を停止するとした。しかしながら、反応器10への空気の供給停止のタイミングは、これに限定されない。
図10は、変形例の反応器の触媒温度とガス種の時間変化を説明する図である。図10(a)には、反応器10の熱電対15a、15b、15c、15dが検出した第1触媒11および第2触媒12の温度の時間変化を示している。図10(b)には、反応器10の内部10aを流れるガスの種類、および、それぞれのガスが流れる時間帯とともに、反応器10においてCH4が生成される時間帯を示している。図10に示す変形例では、時刻0から、反応器10にH2と空気とを供給することで、水素の酸化熱によって第2触媒12を加熱する(図10(a)に示す温度T2)。その後、第2触媒12の温度がCH4を生成可能な温度になる時刻td11において、反応器10への空気の供給を停止するとともに、CO2を反応器10に供給する(図10(b)の時刻td11)。これにより、時刻td11以降において、CH4が生成される(図10(b)の時刻td11以降)。第1実施形態のメタン製造装置1では、このようにしても、CH4の単位時間当たりの生産量を増加させることができる。
[変形例3]
第1実施形態では、第1触媒11は、水素の酸化能を有し、第2触媒12は、メタン化能を有するとした。第1触媒11は、第2実施形態の第3触媒41と同様に、水素の酸化能とメタン化能との両方を有してもよい。
図11は、変形例の反応器の温度の時間変化を説明する図である。図11(a)に示す変形例のメタン製造装置1では、反応器10は、第1触媒11として、水素の酸化能とメタン化能との両方を有する触媒が配置されている。第2触媒12は、第1実施形態と同様に、メタン化能を有する触媒である。図11(b)には、熱電対15aで検出される温度T1の時間変化を示している。変形例のメタン製造装置1では、制御部90は、水素の酸化能とメタン化能との両方を有する第1触媒11の温度に応じて、ガス供給部20を制御する。具体的には、制御部90は、最初に、H2と空気とを供給し、H2の酸化反応によって発生する熱で第1触媒11を加熱し、第1触媒11の温度がCH4を生成可能な温度より高くなると、CO2とH2とを供給することでCH4を生成させる。また、制御部90は、空気も供給することで、CH4の生成熱に加え、H2の酸化熱も利用して第1触媒11を速やかに昇温させる。さらに、第1触媒11の温度がCH4を自立的に生成可能な温度より高くなると、空気の供給を停止し、供給されるH2の全量をCH4の生成に振り分ける。これにより、図11に示すメタン製造装置1では、CH4の単位時間当たりの生産量を増加させることができる。
[変形例4]
第2実施形態では、反応器10の第1触媒11と、下流側反応器40の第3触媒41はいずれも、水素の酸化能とメタン化能との両方を有する触媒であるとした。しかしながら、第1触媒11および第3触媒41は、水素の酸化能のみを有する触媒であってもよい。
図12は、変形例の炭化水素製造方法のフローチャートを示した図である。ここで説明する炭化水素製造方法によってCH4を生成するメタン製造装置では、反応器10の第1触媒11と、下流側反応器40の第3触媒41のいずれも、水素の酸化能のみを有する触媒となっている。この場合、ステップS22と、ステップS24における判定は、熱電対45bが検出する第4触媒42の温度T2-2を用いて行う。また、ステップS28における判定は、熱電対15bが検出する第2触媒12の温度T1-2を用いて行う。第2実施形態のメタン製造装置2では、このようにして下流側反応器40を起動してから反応器10を起動することで、メタン製造装置全体としての起動時間が短くなるとともに、触媒を昇温するときに消費するH2の量が減少するためCH4の製造コストを低減することができる。また、CH4の単位時間当たりの生産量を増加させることができる。
[変形例5]
第1実施形態では、反応器10は、熱電対15a、15b、15c、15dを備えるとした。しかしながら、熱電対の数はこれに限定されない。第1触媒11が水素の酸化能のみを有する場合、第2触媒12の温度を検出する熱電対15b、15c、15dのいずれか一つあればよい。また、第1触媒11が水素の酸化能とメタン化能の両方を有する場合、第1触媒11の温度を検出する熱電対15aと、第2触媒12の温度を検出する熱電対15b、15c、15dのいずれか一つあればよい。
[変形例6]
第1実施形態では、200℃を反応器10へのCO2の供給を開始する「第1の所定温度」とし、500℃を反応器10への空気の供給を停止する「第2の所定温度」とした。しかしながら、「第1の所定温度」および「第2の所定温度」は、これに限定されない。
[変形例7]
第2実施形態では、下流側反応器40は、4個の熱電対45a、45b、45c、45dを有するとした。しかしながら、熱電対の数はこれに限定されない。第3触媒41が水素の酸化能とメタン化能の両方を有する場合、熱電対45aであってもよい。また、第3触媒41が水素の酸化能のみを有する場合、熱電対45aと、第4触媒42の温度を検出する熱電対45b、45c、45dのいずれか一つあればよい。
[変形例8]
第2実施形態では、200℃を下流側反応器40へのCO2の供給を開始する「第3の所定温度」とし、500℃を下流側反応器40への空気の供給を停止する「第4の所定温度」とした。しかしながら、「第3の所定温度」および「第4の所定温度」は、これに限定されない。
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。