以下、図面を参照しながら、いくつかの実施形態に係るインクジェットプリンタについて説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。以下の説明では、インクジェットプリンタを正面から見たときに、インクジェットプリンタから遠ざかる方を前方、インクジェットプリンタに近づく方を後方とする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表している。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、インクジェットプリンタの設置態様等を限定するものではない。
(第1実施形態)
図1は、一実施形態に係る大判のインクジェットプリンタ(以下、「プリンタ」とする。)10の正面図である。プリンタ10は、ロール状の記録媒体5を前後方向に移動させるとともに、左右方向に移動するキャリッジ20に搭載されたインクヘッド50からインクを吐出することによって、記録媒体5上に画像を印刷する。
記録媒体5は、画像が印刷される対象物である。記録媒体5は特に限定されない。記録媒体5は、例えば、普通紙やインクジェット用印刷紙等の紙類であってもよいし、樹脂製やガラス製などの透明なシートであってもよい。金属製やゴム製等のシートであってもよい。また、布帛であってもよい。
図1に示すように、プリンタ10は、キャリッジ20と、キャリッジ移動装置30と、搬送装置40と、インクヘッド50と、キャッピング装置90と、ワイピング装置95と、制御装置100とを備えている。
キャリッジ移動装置30は、ガイドレール31と、ベルト32と、左右のプーリ33aおよび33bと、キャリッジモータ34とを備えている。ガイドレール31には、キャリッジ20が摺動自在に係合している。ガイドレール31は、左右方向に延びている。ガイドレール31は、キャリッジ20の左右方向への移動をガイドする。ベルト32は、キャリッジ20に固定されている。ベルト32は、無端状のベルトである。ベルト32は、ガイドレール31の右側に設けられたプーリ33aおよび左側に設けられたプーリ33bに巻き掛けられている。右側のプーリ33aにはキャリッジモータ34が取り付けられている。キャリッジモータ34は、制御装置100と電気的に接続されている。キャリッジモータ34は、制御装置100によって制御される。キャリッジモータ34が駆動するとプーリ33aが回転し、ベルト32が走行する。それにより、キャリッジ20がガイドレール31に沿って左右方向に移動する。
キャリッジ20の下方には、プラテン12が配置されている。プラテン12は、左右方向に延びている。プラテン12には記録媒体5が載置される。プラテン12上の記録媒体5は、搬送装置40によって前後方向に移動される。搬送装置40は、ピンチローラ41と、グリットローラ42と、フィードモータ43とを備えている。ピンチローラ41はプラテン12の上方に設けられ、記録媒体5を上から押下する。ピンチローラ41は、キャリッジ20より後方に配置されている。プラテン12には、グリットローラ42が設けられている。グリットローラ42は、ピンチローラ41の下方に配置されている。グリットローラ42は、ピンチローラ41と対向する位置に設けられている。グリットローラ42は、フィードモータ43に連結されている。グリットローラ42は、フィードモータ43の駆動力を受けて回転可能に形成されている。フィードモータ43は、制御装置100と電気的に接続されている。フィードモータ43は、制御装置100によって制御される。ピンチローラ41とグリットローラ42との間に記録媒体5が挟まれた状態でグリットローラ42が回転すると、記録媒体5は前後方向に搬送される。
図2は、キャリッジ20の下面の構成を模式的に示す平面図である。図2に示すように、キャリッジ20の下面には、複数のインクヘッド50が設けられている。インクヘッド50は、インクを吐出する部材である。複数のインクヘッド50は、キャリッジ20において左右方向に並んで配置されている。複数のインクヘッド50の下面には、それぞれ、複数のノズル51が形成されている。ノズル51は、インクが吐出される微細な孔である。インクヘッド50の下面は、それぞれ、複数のノズル51が形成されたノズル面50aを構成している。ノズル面50aにおいて、複数のノズル51は前後方向に並んでノズル列を形成している。ここでは、ノズル列は、1つのインクヘッド50につき2列形成されている。ただし、インクヘッド50およびノズル51の配置は上記したものに限定されるわけではない。
図3は、ノズル51周辺の部分断面図である。図3に示すように、ノズル51の近傍には、ケース52と、振動板53と、アクチュエータ54とが設けられている。ケース52は、中空に形成されている。ケース52は、ここでは、上下に配置された2つの部分に仕切られている。ケース52の上方の部分と下方の部分との間には、開口52aが設けられている。ケース52の開口52aよりも下方の部分は、圧力室52bを構成している。ノズル51は、圧力室52bの下壁を上下方向に貫通している。圧力室52bには、インクが収容されている。インク吐出時には、圧力室52bに収容されているインクがノズル51から吐出される。
振動板53は、開口52aを塞ぐように取り付けられている。振動板53はケース52とともに、圧力室52bを区画している。振動板53は、圧力室52bの内側および外側に弾性変形可能な部材である。振動板53は、圧力室52bの容積を増加および減少させるように変形可能に構成されている。振動板53は、典型的には樹脂フィルムである。
圧力室52bの側壁には、インクが流入するインク流入口52cが形成されている。ただし、インク流入口52cは圧力室52bとつながっていればよく、インク流入口52cの位置は何ら限定されない。圧力室52bには、インク流入口52cを通じてインクが供給される。
振動板53の圧力室52bと反対側の面には、アクチュエータ54が当接している。アクチュエータ54は、振動板53を介して、圧力室52bの体積を増減させるように駆動する。これにより、圧力室52bの体積が変化し、圧力室52bの体積の変化によってノズル51からインクが吐出される。アクチュエータ54は、例えば、圧電材料と導電層とが交互に積層された積層体の圧電素子である。アクチュエータ54は、制御装置100に電気的に接続され、制御装置100によって制御されている。アクチュエータ54は、制御装置100からの駆動信号を受けると膨張または収縮し、振動板53を圧力室52bの外側または内側に弾性変形させる。
図1に示すように、インクはインク供給システムSSによってインクヘッド50に供給される。図4は、インク供給システムSSおよびキャッピング装置90の構成を示す模式図である。インク供給システムSSは、インクヘッド50にインクを供給するシステムである。ここでは、インク供給システムSSは、ノズル列ごとに設けられている。図4に示すように、インク供給システムSSは、インクカートリッジ60と、インク流路61と、バルブ62と、加圧ポンプ70と、ダンパ80とを備えている。
インクカートリッジ60は、インクが収容されたインク容器の一例である。インクカートリッジ60は、ここでは、密閉型に構成されている。収容されたインクの劣化等を抑制するためには、インクカートリッジ60は、密閉型に構成されていることが好ましい。インクカートリッジ60には、例えば、インクが収容された可撓性のパウチが内蔵されている。1つのインクカートリッジ60には、例えば、プロセスカラーインクおよび特色インクのうちの1つのインクが貯留されている。インクの材料は何ら限定されず、従来からインクジェットプリンタのインクの材料として用いられている各種の材料を使用することができる。上記インクは、例えば、ソルベント系(溶剤系)顔料インクや水性顔料インクであってもよい。あるいは、水性染料インクや、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化型顔料インク等であってもよい。
インクカートリッジ60は、着脱可能に構成されている。これにより、インクカートリッジ60を容易に交換することができる。インクカートリッジ60の交換により、インクを補充することができる。図1に示すように、インクカートリッジ60は、インクカートリッジ装着部60aに対して装着される。インクカートリッジ装着部60aの構成は特に限定されないが、例えば、パウチに突き刺さる針材を備えている。針材は、先端部において開口された内部流路を有している。インクカートリッジ60をインクカートリッジ装着部60aに装着すると、針材がパウチに突き刺さる。これにより、パウチ内と針材の内部流路とが連通する。針材の内部流路は、インク流路61に連通している。
インク流路61は、インクカートリッジ60とインクヘッド50とを接続している。インクは、インク流路61を通ってインクカートリッジ60からインクヘッド50に供給される。インク流路61の材質は限定されないが、例えば、可撓性のチューブによって構成されている。
加圧ポンプ70は、インク流路61に設けられている。加圧ポンプ70は、駆動時にはインクカートリッジ60からインクヘッド50に向かう方向に流体を送るように構成されている。詳しくは後述するが、加圧ポンプ70は、使用前の検査においては、空気を送出する。その他の場合には、基本的にインクカートリッジ60内のインクを送出する。加圧ポンプ70は、ここでは、チューブポンプである。ただし、加圧ポンプ70の種類は限定されず、例えば、ダイヤフラムポンプなどであってもよい。加圧ポンプ70は、制御装置100に電気的に接続され、制御装置100によって制御されている。
図5は、加圧ポンプ70の内部を模式的に示す断面図である。図5に示すように、加圧ポンプ70は、内部流路71と、一対のローラ72と、アーム73と、モータ74と、ゴム板75とを備えている。内部流路71は、可撓性のチューブで構成されている。内部流路71の上流側端部71aは、インク流路61のうち加圧ポンプ70よりも上流側(インクカートリッジ60側)の部分に接続されている。内部流路71の下流側端部71bは、インク流路61のうち加圧ポンプ70よりも下流側(インクヘッド50側)の部分に接続されている。内部流路71は、略半円弧状に構成されている。
加圧ポンプ70は、一対のローラ72で内部流路71をしごくことによってインクを送出する。図5に示すように、一対のローラ72は、それぞれアーム73の両端に配置されている。一対のローラ72は、内部流路71を押圧する位置P1と、内部流路71から離間した位置P2とに移行可能に構成されている。以下では適宜、一対のローラ72が位置P1に位置している状態を「加圧ポンプ70が閉鎖されている」と言い、一対のローラ72を位置P1に移動させることを「加圧ポンプ70を閉鎖する」と言う。加圧ポンプ70が閉鎖された状態では、内部流路71の上流側端部71aと下流側端部71bとは、一対のローラ72によって断絶されている。また、以下では適宜、一対のローラ72が位置P2に位置している状態を「加圧ポンプ70が開放されている」と言い、一対のローラ72を位置P2に移動させることを「加圧ポンプ70を開放する」と言う。加圧ポンプ70が開放された状態では、内部流路71の上流側端部71aと下流側端部71bとは、連通している。
アーム73は、回転軸73aを軸に回転可能に構成されている。アーム73が正回転方向Aに向かって回転すると、一対のローラ72もアーム73の回転軸73aの周りを正回転方向Aに公転する。加圧ポンプ70が閉鎖された状態で一対のローラ72が正回転方向Aに公転されると、内部流路71は、一対のローラ72によってしごかれる。それにより、インクが送出される。モータ74は、アーム73に接続され、アーム73を回転させる。
一対のローラ72は、アーム73を逆回転方向Bに回転させることにより、位置P1から位置P2に移動する。即ち、加圧ポンプ70は、モータ74を逆回転方向Bに回転させることにより、閉鎖状態から開放状態に移動する。アーム73が逆回転方向Bに回転すると、ローラ72は、ゴム板75に押されて位置P2に移動する。一対のローラ72を位置P2から位置P1に移動させるときには、アーム73を正回転方向Aに回転させる。アーム73を正回転方向Aに回転させると、一対のローラ72は、ゴム板75との間の摩擦力により位置P2から位置P1へと移動する。それにより、加圧ポンプ70は、開放状態から閉鎖状態に移動する。
ダンパ80は、インク流路61、より詳しくは、加圧ポンプ70とインクヘッド50との間に設けられている。ダンパ80は、インクが一時的に貯留される貯留室を備え、インクの圧力変動を緩和している。また、ダンパ80には、貯留室内の圧力を検出する圧力検出装置が設けられ、制御装置100は、圧力検出装置が検出する貯留室内の圧力に基づいて加圧ポンプ70の動作を制御している。
図6Aおよび図6Bは、ダンパ80の構成を模式的に示した断面図である。そのうち、図6Aは、ダンパ80の内部の圧力が所定の圧力よりも小さい状態を示している。図6Bは、ダンパ80の内部の圧力が所定の圧力以上の状態を示している。図6Aおよび図6Bに示すように、ダンパ80は、ダンパ本体81と、ダンパ膜82と、内部バネ83と、押圧部材84と、支持バネ85と、フィラー86と、センサ87とを備えている。
ダンパ本体81は中空に形成されている。貯留室81aは、ダンパ本体81の内部に構成されている。貯留室81aには、図示しない流入口と流出口とが形成されている。インクは、流入口を通って貯留室81aに流入し、流出口を通って貯留室81aから流出する。貯留室81aには、インクが一時的に貯留される。
ダンパ本体81には、開口81bが形成されている。ダンパ膜82は、開口81bを覆うように設けられている。貯留室81aは、ダンパ本体81とダンパ膜82とによって区画されている。ダンパ膜82は、例えば、可撓性を有する樹脂製のフィルムによって構成されている。ダンパ膜82は、貯留室81a内の圧力に反応して、貯留室81aの内側および外側に変形可能である。ダンパ膜82は、貯留室81aの内側および外側にそれぞれ撓むことができる程度の張力で取り付けられている。
図6Aおよび図6Bに示すように、貯留室81aの内部には、内部バネ83が設けられている。内部バネ83は、ダンパ膜82の貯留室81a側の面に接触している。内部バネ83は、圧縮された状態で貯留室81aに配置されている。内部バネ83は、ダンパ膜82に向かって弾性力を付与している。
押圧部材84は、ダンパ膜82の貯留室81aとは反対側の面に設けられている。押圧部材84は、内部バネ83に支持されており、ダンパ膜82の撓みとともに、貯留室81aの内側および外側に移動可能である。
フィラー86は、ダンパ本体81の外側に配置されている。フィラー86は、支持バネ85を介してダンパ本体81に支持されている。図6Aおよび図6Bに示すように、フィラー86は、略コの字状に形成されている。フィラー86は、接触部86aと、支持部86bと、被検出部86cとを有している。接触部86aは、伸長方向の中心付近で押圧部材84に対向している。支持部86bは、接触部86aの支持バネ85側の端部から、接触部86aに垂直に延びている。被検出部86cは、接触部86aのセンサ87側の端部から、接触部86aに垂直に延びている。接触部86aには、貯留室81a内部の圧力により押圧部材84が接触し、または離間する。支持部86bは、支持バネ85に支持されている。被検出部86cは、センサ87によって検出される部位である。
図6Aおよび図6Bに示すように、センサ87は、一対の検出部87aと87bとを有し、検出部87aと87bとの間にフィラー86の被検出部86cが位置しているかどうかを検出している。センサ87は、ここでは、非接触式のセンサである。図6Aに示すように、貯留室81aの圧力が所定の圧力を下回っているとき、フィラー86の被検出部86cは検出部87aと87bとの間に位置している。このとき、センサ87は、信号を発するように設定されている。図6Bに示すように、貯留室81aの圧力が大きくなるにしたがって、ダンパ膜82が貯留室81aの外側に撓む。このとき、押圧部材84によって、フィラー86が貯留室81aの外側に押される。それにより、フィラー86は、支持バネ85を軸に回転する。そして、貯留室81aの圧力が所定の圧力より大きくなったとき、フィラー86の被検出部86cは、検出部87aと87bとの間から外れた位置に移動する。このとき、センサ87は、信号を停止するように設定されている。センサ87は、制御装置100に接続されている。制御装置100は、センサ87からの信号を受信している。
ダンパ80のダンパ膜82、内部バネ83、押圧部材84、支持バネ85、フィラー86、およびセンサ87は、インク流路61内、より詳しくは、貯留室81a内の圧力を検出する圧力検出装置PSとして機能している。圧力検出装置PSは、インク流路61に設けられている。圧力検出装置PSは、インク流路61内の圧力を検出するとともに、検出した圧力に対応する信号を送信する。より詳しくは、圧力検出装置PSは、検出された圧力が所定の圧力(以下、第1圧力とも言う)を下回った場合に信号を送信するように構成されている。上記第1圧力は、大気圧よりも小さい圧力に設定されている。よって、インク流路61内の圧力は、大気圧よりも小さい圧力に維持されている。それにより、ノズル51からインクが垂れることが防止されている。
なお、本実施形態では、圧力検出装置PSは、インク流路61内の圧力が第1圧力を下回った場合に制御装置100に信号を送信するように設定されているが、圧力検出装置PSの信号発信動作はこれと逆動作であってもよい。「圧力検出装置PSは、インク流路61内の圧力が第1圧力を下回った場合に信号を送信する」とは、インク流路61内の圧力が第1圧力を上回っている状態と下回っている状態との間で信号発信動作が切り替わることを意味する。また、本実施形態では、圧力検出装置PSは、インク流路61内の圧力が所定の圧力を上回っているか、下回っているかを検出するように構成されていたが、例えば、圧力を連続的に測定できてもよい。その場合、圧力検出装置PSは、例えば、貯留室81a内のインクの圧力を連続的に測定できる圧力センサを備えていてもよい。
制御装置100は、センサ87から信号を受け取ると、加圧ポンプ70を駆動させる。加圧ポンプ70の駆動により貯留室81a内の圧力が第1圧力以上になると、センサ87は、信号を停止する。制御装置100は、センサ87からの信号が途切れると、加圧ポンプ70を停止させる。この制御により、消費されたインクに対応する量のインクがインクヘッド50に供給される。
図4に示すように、バルブ62は、インク流路61のうちインクカートリッジ60と加圧ポンプ70との間の部分に設けられている。バルブ62は、ここでは、インクカートリッジ60と加圧ポンプ70との間に設けられているが、少なくとも、インク流路61のうちインクカートリッジ60と圧力検出装置PSとの間の部分に設けられる。バルブ62は、インク流路61を開放または閉鎖する。バルブ62は、制御装置100に電気的に接続され、制御装置100によって制御されている。
図1に示すように、キャリッジ20の可動範囲の右端には、ホームポジションHPが設定されている。ホームポジションHPは、印刷待機時などにキャリッジ20が配置される位置である。ホームポジションHPにおけるキャリッジ20の下方には、キャッピング装置90が配置されている。図1および図4に示すように、キャッピング装置90は、キャップ91と、キャップ移動機構92と、吸引ポンプ93とを備えている。
キャップ91は、インクヘッド50に装着可能に構成されている。キャップ91は、インクヘッド50と同数設けられている。1つのインクヘッド50には1つのキャップ91が装着される。キャップ91は、上面が開口した容器状の形状を有している。キャップ91は、ゴム等によって形成されている。インクヘッド50への装着時、キャップ91の上縁がインクヘッド50のノズル面50aに密着される。
複数のキャップ91は、1つのキャップ移動機構92によって支持されている。キャップ移動機構92は、複数のキャップ91をインクヘッド50のノズル面50aに装着し、または離間させる。キャップ移動機構92は、キャップ91を下方から支持して上下方向に移動させる。それにより、キャップ91は、インクヘッド50に装着され、また離間される。キャップ移動機構92は、例えば、図示しない駆動モータを備えている。キャップ移動機構92は、制御装置100に電気的に接続され、制御装置100によって制御されている。なお、本実施形態では、キャップ移動機構92は、キャップ91を上下方向に移動させてインクヘッド50に装着したが、例えば、斜めにスライドさせて装着するように構成されていてもよい。
図4に示すように、吸引ポンプ93は、複数のキャップ91に接続されている。吸引ポンプ93は、キャップ91がインクヘッド50に装着された場合にキャップ91内を減圧する。それにより、インクヘッド50からインクを吸引する。吸引ポンプ93は、ここでは、チューブポンプである。吸引ポンプ93は、制御装置100に電気的に接続され、制御装置100によって制御されている。
図1に示すように、ホームポジションHPの左方には、ワイピング装置95が設けられている。ワイピング装置95は、インクヘッド50のノズル面50aを拭うワイピング動作を行う。ワイピング装置95は、ワイパー96と、ワイパー移動機構97とを備えている。
ワイパー96は、平板状に構成されている。ワイパー96は、ここでは、平面部が前後方向を向くように設けられている。ワイパー96は、例えば、ゴムによって形成されている。ワイパー96の上端は、インクヘッド50のノズル面50aよりもわずかに高い位置に設定されている。そこで、インクヘッド50がワイパー96の移動経路に位置している状態で、ワイパー移動機構97がワイパー96を移動させると、ワイパー96は、インクヘッド50のノズル面50aを払拭する。
ワイパー移動機構97は、ワイパー96を前後方向に移動させるように構成されている。ワイパー移動機構97は、例えば、図示しない駆動モータとベルトとを備えている。ワイパー移動機構97は、制御装置100に電気的に接続され、制御装置100によって制御されている。
図1に示すように、プリンタ10の右端部には、操作パネル200が設けられている。操作パネル200には、機器状態を表示する表示部と、ユーザーによって操作される入力キー等が設けられている。操作パネル200は、制御装置100と接続されている。
図7は、本実施形態に係るプリンタ10のブロック図である。図7に示すように、制御装置100は、キャリッジモータ34と、フィードモータ43と、インクヘッド50のアクチュエータ54と、バルブ62と、加圧ポンプ70のモータ74と、キャップ移動機構92と、吸引ポンプ93と、ワイパー移動機構97と、操作パネル200とにそれぞれ電気的に接続されており、それらを制御可能に構成されている。また、制御装置100は、圧力検出装置PSのセンサ87に電気的に接続され、センサ87からの信号を受信している。
制御装置100の構成は特に限定されない。制御装置100は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置とを備えている。なお、制御装置100は必ずしもプリンタ10の内部に設けられている必要はなく、例えば、プリンタ10の外部に設置され、有線または無線を介してプリンタ10と通信可能に接続されたコンピュータ等であってもよい。
図7に示すように、制御装置100は、印刷制御部110と、キャッピング制御部120と、ワイピング制御部130と、インク供給部140と、検査部150とを備えている。制御装置100は、その他の処理部を備えていてもよいが、ここでは図示および説明を省略する。
印刷制御部110は、プリンタ10の印刷動作を制御する。印刷制御部110は、キャリッジモータ34を制御してキャリッジ20を左右方向に移動させながら、インクヘッド50からインクを吐出させることにより、記録媒体5の一部に画像を印刷する。印刷制御部110は、さらに、フィードモータ43を制御して記録媒体5を前後方向に移動させることによって、記録媒体5上の印刷位置を移動させる。これらの動作により、記録媒体5上に画像が印刷される。
キャッピング制御部120は、プリンタ10のキャッピング動作およびインク吸引動作を制御する。キャッピング制御部120は、キャップ移動機構92を制御して、キャップ91をインクヘッド50に装着させる。また、印刷時には、キャップ91をインクヘッド50から離間させる。キャッピング制御部120は、また、キャップ91がインクヘッド50に装着された状態で吸引ポンプ93を駆動させ、インクヘッド50からインクを吸引する。インク吸引は、例えば印刷前などの所定の場合に実施される。
ワイピング制御部130は、プリンタ10のワイピング動作を制御する。ワイピング制御部130は、ワイパー移動機構97を制御してワイパー96を前後方向に走行させ、ワイパー96によってインクヘッド50のノズル面50aを払拭する。ワイピングは、例えばインク吸引の後などの所定の場合に実施される。
インク供給部140は、インクヘッド50へのインクの供給を制御している。図7に示すように、インク供給部140は、受信部141と、供給制御部142とを備えている。受信部141は、圧力検出装置PSからの信号を受信している。受信部141は、ダンパ80の貯留室81a内の圧力が所定値を下回ったときに信号を受信する。供給制御部142は、受信部141がセンサ87からの信号を受信した場合に、加圧ポンプ70を駆動させ、インク供給システムSSにインクを供給する。供給制御部142は、センサ87からの信号が途切れた場合には、加圧ポンプ70を停止させる。これにより、インク供給部140は、インクヘッド50で消費された量に対応する量のインクをインクヘッド50に供給している。また、インク供給システムSSにインクが充填されていない状況(例えば、プリンタ10の使用開始前など)では、供給制御部142は、加圧ポンプ70を駆動させて、インク供給システムSSにインクを充填する。この場合も、インク充填の完了は、通常のインクの補充と同様に、圧力検出装置PSからの信号がOFFになったかどうかによって判断される。
検査部150は、インク供給システムSSおよびキャッピング装置90の検査を行うように設定されている。本実施形態では、検査部150がプリンタ10の検査を行うタイミングは特に設定されず、ユーザーが決定する。好適には、検査部150によるプリンタ10の検査は、インク供給システムSSにインクを充填する前、例えば、プリンタ10の使用開始前などに行われる。図7に示すように、検査部150は、吸引検査部160と、リーク検査部170と、送出検査部180とを備えている。
吸引検査部160は、インク流路61に閉塞箇所や大きなリーク箇所がないかを検査する。同時に、吸引検査部160は、吸引ポンプ93および圧力検出装置PSに異常がないかについても検査している。図7に示すように、吸引検査部160は、第1バルブ開放部161と、加圧ポンプ開放部162と、バルブ閉鎖部163と、キャップ装着部164と、減圧制御部165と、第1記憶部166と、第1診断部167とを備えている。
第1バルブ開放部161は、後述する吸引検査において、バルブ62を開放する。加圧ポンプ開放部162は、加圧ポンプ70の一対のローラ72を後退させ、加圧ポンプ70を開放する。インクカートリッジ60が装着されていない状態では、バルブ62の開放および加圧ポンプ70の開放により、インク流路61内が外部と連通する。それにより、インク流路61内の圧力が大気圧になる。本実施形態では、圧力検出装置PSは、大気圧よりも小さい圧力を境界として信号のON/OFFを切り替えるように構成されている。そこで、第1バルブ開放部161がバルブ62を開放し、加圧ポンプ開放部162が加圧ポンプ70を開放すると、圧力検出装置PSの信号がOFFする。または、バルブ62の開放および加圧ポンプ70の開放の前から圧力検出装置の信号がOFFであった場合には、その状態が維持される。
バルブ閉鎖部163は、第1バルブ開放部161がバルブ62を開放し、加圧ポンプ開放部162が加圧ポンプ70を開放した後に、再度バルブ62を閉鎖する。これにより、インク流路61内が大気圧であり、圧力検出装置の信号がOFFの状態のまま、インク流路61のインクカートリッジ60側が閉鎖される。キャップ装着部164は、キャップ移動機構92を制御してキャップ91をインクヘッドに装着する。
減圧制御部165は、バルブ閉鎖部163の制御によってバルブ62が閉鎖され、かつ、キャップ装着部164の制御によってキャップ91がインクヘッド50に装着された後に、吸引ポンプ93を駆動させる。これにより、インク流路61のインクカートリッジ60側が閉鎖された状態のまま、インク流路61内が減圧される。
第1記憶部166は、減圧制御部165の制御によって吸引ポンプ93が駆動する上限の時間(以下、上限減圧時間と呼ぶ)を記憶している。第1診断部167は、減圧制御部165の制御によって吸引ポンプ93が駆動した時間が上限減圧時間に達しても、圧力検出装置PSが検出する圧力が第1圧力以上である場合(言い換えれば、減圧制御部165の制御によって吸引ポンプ93が駆動した時間が上限減圧時間に達しても、受信部141が圧力検出装置PSからの信号を受信しない場合)には第1の異常と診断する。第1の異常については後述する。
リーク検査部170は、吸引検査部160によって異常が認められなかった場合に、インク流路61およびキャッピング装置90にリーク箇所がないかどうかを検査する。図7に示すように、リーク検査部170は、減圧停止部171と、第2記憶部172と、第2診断部173とを備えている。減圧停止部171は、第1診断部167が第1の異常と診断しなかった場合に、吸引ポンプ93を停止する。第2記憶部172は、所定の保持時間を記憶している。第2診断部173は、減圧停止部171の制御によって吸引ポンプ93が停止された後、上記保持時間が経過する前に、圧力検出装置PSが検出する圧力が所定の圧力以上となった場合に第2の異常と診断する。
本実施形態では、上記所定の圧力は、第1圧力である。本実施形態では、圧力検出装置PSは、インク流路61内の圧力が第1圧力を下回っている場合に信号を送信し、インク流路61内の圧力が第1圧力以上である場合に信号を停止する。そこで、第2診断部173は、受信部141が圧力検出装置PSからの信号を受信しているかどうかに基づき、保持時間が経過する前に圧力検出装置PSからの信号が途切れた場合に第2の異常と診断する。言い換えれば、第2診断部173は、減圧停止部171の制御によって吸引ポンプ93が停止された後、上記保持時間が経過する前に、圧力検出装置PSが検出する圧力が第1圧力以上となった場合に第2の異常と診断する。第2の異常については後述する。
送出検査部180は、リーク検査部170によって異常が認められなかった場合に、インク供給システムSSに異常がないかを確認する検査(送出検査)を行う。図7に示すように、送出検査部180は、加圧ポンプ閉鎖部181と、第2バルブ開放部182と、キャップ離間部183と、加圧制御部184と、第3記憶部185と、第3診断部186とを備えている。加圧ポンプ閉鎖部181は、送出検査において、まず加圧ポンプ70を閉鎖する。第2バルブ開放部182は、加圧ポンプ70が閉鎖された後にバルブ62を開放する。キャップ離間部183は、キャップ移動機構92を制御して、キャップ91をインクヘッド50から離間させる。加圧制御部184は、バルブ62が開放され、キャップ91がインクヘッド50から離間された後に、加圧ポンプ70を駆動させる。第3記憶部185は、加圧制御部184の制御によって加圧ポンプ70が駆動する上限の時間(以下、上限加圧時間と言う)を記憶している。第3診断部186は、加圧制御部184の制御によって加圧ポンプ70が駆動した時間が上限加圧時間に達しても圧力検出装置PSが検出する圧力が所定の圧力以下である場合に第3の異常と診断する。上記所定の圧力は、本実施形態では、第1圧力である。第3の異常については後述する。
以下では、プリンタ10の使用前検査のプロセスについて説明する。図8は、吸引検査の流れを示すフローチャートである。図9は、リーク検査の流れを示すフローチャートである。図10は、送出検査の流れを示すフローチャートである。これらの検査では、インク流路61の検査を中心に、インク供給システムSSとキャッピング装置90の検査を行っている。このうちインク流路61の異常は、例えば、プリンタ10を分解して搬送した後、再組立を行ったときなどに発生する可能性がある。従って、プリンタ10を分解搬送したような場合には、以下に説明する検査を行うとよい。ただし、使用前検査は1つの好適な検査の例であり、検査は適時に実施されてよい。
図8に示すように、本実施形態に係る吸引検査では、まず、ステップS01において、インクカートリッジ60が取り外されているかどうかを確認する。本実施形態では、ステップS01は、ユーザーが実施する。インクカートリッジ60が取り外されている場合(「YES」の場合)、ステップはステップS03に進む。インクカートリッジ60が取り外されていない場合(「NO」の場合)、ステップS02において、インクカートリッジ60が取り外される。本実施形態では、ステップS02は、ユーザーが実施する。ステップS03以降のステップは、プリンタ10が実施する。ただし、ユーザーがプリンタ10を操作して、同様の動作を行わせてもよい。
続くステップS03では、バルブ62が開放される。さらに、ステップS04では、加圧ポンプ70が開放される。ステップS03およびS04は、インクカートリッジ60が装着されていない状態でバルブ62および加圧ポンプ70を開放し、インク流路61内の圧力を大気圧にする準備ステップである。大気圧は、第1圧力よりも大きいため、インク流路61内の圧力が大気圧になると、圧力検出装置PSの信号がOFFする。ここまでのステップにより、検査前には状態が不明であったバルブ62および加圧ポンプ70が開放され、同じく検査前には状態が不明であった圧力検出装置PSがOFFする。
続くステップS05では、バルブ62が閉鎖される。ステップS05のバルブ62の閉鎖は、ステップS03およびS04の準備ステップの後に行われる。これにより、インクカートリッジ60がインク流路61から断絶される。
ステップS06では、キャップ91がインクヘッド50に装着される。ただし、ステップS06は、ステップS01の前からステップS07の前までのどのタイミングで行われてもよい。キャップ91が装着されるタイミングは、吸引ポンプ93が駆動される前であれば、特に限定されない。
バルブ62が閉鎖されるステップ(ステップS05)と、キャップ91がインクヘッド50に装着されるステップ(ステップS06)とが終了した後、ステップS07では、吸引ポンプ93が駆動される。ステップS08では、圧力検出装置PSからの信号がONしているかどうかが確認される。本実施形態では、圧力検出装置PSが検出する圧力が第1圧力を下回ると、圧力検出装置PSが送信する信号がONする。ステップS08において、圧力検出装置PSからの信号がONしている場合(「YES」の場合)、吸引検査の結果は正常と診断され、リーク検査に進む。
ステップS08において、圧力検出装置PSからの信号がONしていない場合(「NO」の場合)、ステップはステップS09に進む。ステップS09では、ステップS08において吸引ポンプ93を駆動させた駆動時間T1が、予め定められた上限減圧時間T1maxに達したかどうかが判定される。図8に示すように、駆動時間T1が上限減圧時間T1maxに達していない場合、吸引ポンプ93による吸引は継続される。駆動時間T1が上限減圧時間T1maxに達する前にステップS08の結果が「YES」となった場合には、吸引検査は正常に終了する。インク流路61に異常がなく、かつ、キャッピング装置90が正常に動作すれば、インク流路61内は減圧され、インク流路61内の圧力は、少しの時間で第1圧力を下回る。その場合、圧力検出装置PSは、遅くとも上限減圧時間T1maxまでにはONする。
一方、ステップS09が「YES」となり、吸引ポンプ93の駆動時間T1が上限減圧時間T1maxに達しても圧力検出装置PSの信号がONにならない(つまり、圧力検出装置PSが検出する圧力が第1圧力以上である)場合に、ステップはステップS10に進み、プリンタ10が第1の異常であると診断される。ステップS08~S10は、吸引ポンプ93の駆動時間が上限減圧時間に達しても圧力検出装置PSが検出する圧力が第1圧力以上である場合に第1の異常と診断するステップである。
第1の異常と診断された場合の原因としては、可能性として、いくつかの原因が考えられる。1つの可能性は、インク流路61またはキャッピング装置90に大きなリーク経路があり、インク流路61内が十分に減圧されない可能性である。他の1つの可能性は、インク流路61およびキャッピング装置90のうち、圧力検出装置PSよりも下流のどこかが閉塞しており、そのためにインク流路61内が十分に減圧されない可能性である。さらに他の可能性は、吸引ポンプ93に異常がある可能性である。または、圧力検出装置PSに異常があり、インク流路61内が減圧されているにもかかわらず、センサ87がONしない可能性である。
ステップS10の時点では、上記した可能性のうちいずれが異常の原因なのかを確定することはできない。しかし、第1の異常の報知により、少なくともインク流路61にリークあるいは閉塞の異常が発生している可能性があることが報知される。インク流路61にリークや閉塞がある状態でプリンタ10を使用すると、インクの漏出や、インク供給システムSSに係る部材(例えば、ダンパ80など)の破損などに繋がるおそれがある。本実施形態に係るプリンタ10によれば、このようなインク流路61の不具合の可能性を検知できるため、上記したようなインク漏出や部材の破損を防ぐことができる。
従来のインクジェットプリンタでは、インク流路の異常が発見されるためにはインク流路にインクが充填される必要があり、異常が発見されたときには、インクの漏出やインク供給システムに係る部材の破損などが既に発生しているおそれがあった。しかし、本実施形態に係るインクジェットプリンタの異常診断方法によれば、吸引検査は、インクカートリッジ60が装着されていない状態で行われる。また、たとえインクカートリッジ60が装着された状態になっていたとしても、バルブ62が閉鎖されているため、インク流路61にインクは流入しない。よって、インク流路61からのインクの漏出や部材の破損のリスクが抑えられる。
さらに、本実施形態に係るインクジェットプリンタの異常診断方法は、インクカートリッジ60が装着されていない状態でバルブ62を開放し、インク流路61内の圧力を大気圧にする準備ステップを含んでいる。バルブ62を閉鎖し、吸引ポンプ93を駆動させる各ステップは、この準備ステップの後に行われる。本実施形態に係るインクジェットプリンタの異常診断方法によれば、このように吸引検査の開始条件が安定しているため、検査結果の信頼性が高い。
なお、第1の異常が出ても、その原因はまだ不明であるため、プリンタ10の使用を中止し、原因の究明が行われることが好ましい。また、第1の異常と診断されなかった場合には、少なくとも、インク流路61またはキャッピング装置90の大きなリーク、インク流路61およびキャッピング装置90のうち圧力検出装置PSよりも下流の閉塞、吸引ポンプ93の異常、および圧力検出装置PSがONしない異常は発生していないものと考えられる。
図9に示すように、吸引検査で異常が認められなかった場合には、引き続きリーク検査が行われる。リーク検査では、まず、ステップS11において、吸引ポンプ93が停止される。吸引ポンプ93は、ここでは、チューブポンプであり、停止後に開放動作を行わなければ、内部流路が閉鎖されている。そこで、インク流路61およびキャッピング装置90のうち、バルブ62と吸引ポンプ93との間の部分が密閉される。
続くステップS12では、圧力検出装置PSの信号がONしているかどうかが確認される。ステップS12の結果が「YES」の場合(圧力検出装置PSの信号がONしている場合)、ステップはステップS13に進む。ステップS13では、ステップS11の後の経過時間T2が予め定められた保持時間T2maxに達したかどうかが判定される。図9に示すように、ステップS13の結果が「NO」の場合(ステップS11の後の経過時間T2が予め定められた保持時間T2maxに達していない場合)、リーク検査は継続する。圧力検出装置PSの信号がONした状態のまま、すなわち、インク流路61およびキャッピング装置90のうちバルブ62と吸引ポンプ93との間の部分の内部圧力が第1圧力よりも小さい状態を保ったまま保持時間T2maxが経過すると、ステップS13は「YES」となる。これにより、リーク検査は正常に終了する。
一方、保持時間T2maxが経過する前にインク流路61およびキャッピング装置90のうちバルブ62と吸引ポンプ93との間の部分の内部圧力が第1圧力以上となった場合(ステップS12の結果が「NO」となった場合)には、ステップS14において、第2の異常と診断される。ステップS12~S14は、吸引ポンプ93が停止された(ステップS11の)後、保持時間T2maxが経過する前に圧力検出装置PSが検出する圧力が所定の圧力以上となった場合に、第2の異常と診断するステップである。
第2の異常と診断された場合の原因としては、インク流路61またはキャッピング装置90のリークが考えられる。このリークは、吸引検査においてインク流路61内の減圧を著しく妨げるほどではないが、吸引ポンプ93が停止すると減圧状態が維持できない程度のリークである。逆に、リーク検査において第2の異常が認められなかったときは、インク流路61およびキャッピング装置90のうち、バルブ62と吸引ポンプ93との間の部分についてリークがないものと認められる。
このように、吸引検査に引き続くリーク検査によれば、インク流路61およびキャッピング装置90のうち、バルブ62と吸引ポンプ93との間の部分についてリークがあるかないかを確認することができる。
図10に示すように、リーク検査で異常が認められなかった場合には、引き続き送出検査が行われる。送出検査では、まず、ステップS15において、加圧ポンプ70が閉鎖される。続くステップS16では、バルブ62が開放される。これにより、ダンパ80内を減圧状態に保ったまま(圧力検出装置PSの信号をONさせたまま)、バルブ62を開放することができる。続くステップS17では、インクヘッド50からキャップ91が離間される。これにより、インク流路61は、ノズル51を介して外部と連通するが、ノズル51は微細であるため、すぐにはダンパ80内の圧力は上昇しない。よって、圧力検出装置PSは、すぐにはOFFにならない。なお、インクヘッド50からキャップ91を離間するのは、この後のステップS18でインク流路61内を加圧したときの空気の出口を確保するためである。
続くステップS18では、加圧ポンプ70が駆動される。ステップS18は、インクカートリッジ60が装着されず、また、バルブ62が開放された状態で行われる。プリンタ10が正常な場合、これによりインク流路61に空気が送出され、インク流路61内の圧力が上昇する。ステップS19では、圧力検出装置PSからの信号がOFFであるかどうかが確認される。本実施形態では、圧力検出装置PSが検出する圧力が第1圧力以上になると、圧力検出装置PSが送信する信号がOFFする。ステップS19において、圧力検出装置PSからの信号がOFFしている場合(「YES」の場合)、送出検査の結果は正常と診断され、検査のプロセスは終了する。
ステップS19において、圧力検出装置PSからの信号がONしている場合(「NO」の場合)、ステップはステップS20に進む。ステップS20では、ステップS18において加圧ポンプ70を駆動させた駆動時間T3が、予め定められた上限加圧時間T3maxに達したかどうかが判定される。図10に示すように、駆動時間T3が上限加圧時間T3maxに達していない場合、加圧ポンプ70による空気の送出は継続される。駆動時間T3が上限加圧時間T3maxに達する前にステップS19の結果が「YES」となった場合には、送出検査は正常に終了する。インク流路61に閉塞がなく、かつ、加圧ポンプ70が正常に動作すれば、インク流路61内は加圧され、インク流路61内の圧力は、少しの時間で第1圧力を上回る。その場合、圧力検出装置PSは、遅くとも上限加圧時間T3maxまでにはOFFする。
一方、ステップS20が「YES」となり、加圧ポンプ70の駆動時間T3が上限加圧時間T3maxに達しても圧力検出装置PSの信号がOFFにならない(つまり、圧力検出装置PSが検出する圧力が第1圧力を下回っている)場合、ステップはステップS21に進み、プリンタ10が第3の異常であると診断される。ステップS19~S21は、加圧ポンプ70の駆動時間T3が上限加圧時間T3maxに達しても圧力検出装置PSが検出する圧力が所定の圧力を下回っている場合に第3の異常と診断するステップである。
第3の異常と診断された場合には、以下の3つの原因が考えられる。考えられる原因の1つは、加圧ポンプ70の故障等により空気が送れない異常である。他の1つは、圧力検出装置PSに故障等があり、インク流路61内が加圧されているにもかかわらず、センサ87がOFFしない異常である。さらに他の1つは、インク流路61のうち、圧力検出装置PSよりも上流のどこかが閉塞しており、そのためにインク流路61内が十分に加圧されない異常である。なお、リーク検査により、インク流路61のうちバルブ62より下流の部分についてリークがないことが確認されているため、第3の異常の原因からは、リークは除外される。
このように、本実施形態に係る送出確認によれば、インク流路61にインクを充填することなく、インク供給システムSSの異常を検出することができる。よって、インク供給システムSSの検査によって、インク流路61からインクが漏出したり、部材を破損させたりするリスクを低減できる。なお、本実施形態に係る送出確認によれば、インク供給システムSSの異常の原因を、加圧ポンプ70が空気を送っていない可能性、圧力検出装置PSがOFFしない可能性、または、インク流路61のうち圧力検出装置PSよりも上流のどこかが閉塞している可能性まで絞ることができる。
なお、本実施形態では、上記検査においてインク流路61内の圧力を検出する圧力検出装置として、本来はインクの供給制御のために設けられている圧力検出装置PSが利用されている。かかる構成によれば、検査においてインク流路61内の圧力を検出する圧力検出装置を別に設ける必要がないため、部材が節約できる。
(第2実施形態)
第2実施形態は、インクカートリッジが取り外されていることをプリンタが確認した上で検査が行われる実施形態である。第2実施形態は、上記差異点を除いて第1実施形態と同様である。そこで、以下の第2実施形態の説明では、第1実施形態と共通する部材には共通の符号を付すこととし、重複する説明は、省略または簡略化する。
図11は、第2実施形態に係るプリンタ10のブロック図である。図11に示すように、本実施形態に係るプリンタ10は、インクカートリッジ60の着脱状態を検出可能に構成された着脱検知装置CSを備えている。着脱検知装置CSは、インクカートリッジ60の着脱状態に対応した信号を送信するように構成されている。ここでは、着脱検知装置CSは、インクカートリッジ60がインクカートリッジ装着部60aに装着されている場合に信号を送信し、装着されていない場合に信号を送信しないように構成されている。ただし、着脱検知装置CSの信号発信動作は、上記と逆動作でもよい。
着脱検知装置CSの構成は特に限定されないが、例えば、着脱検知装置CSは、インクカートリッジ装着部60aに設けられた投光部と受光部とを備えるとよい。かかる構成によれば、インクカートリッジ装着部60aにインクカートリッジ60が装着されていないとき、受光部は投光部からの光を受光する。一方、インクカートリッジ装着部60aにインクカートリッジ60が装着されているとき、投光部からの光はインクカートリッジ60によって遮られ、受光部は投光部からの光を受光しない。それにより、インクカートリッジ60がインクカートリッジ装着部60aに装着されているかどうかを検知できる。ただし、上記は好適な1つの例であり、着脱検知装置CSの構成は特に限定されない。例えば、着脱検知装置CSは、インクカートリッジ60がインクカートリッジ装着部60aに装着されるとONまたはOFFする機械式のスイッチを備えていてもよい。
図11に示すように、本実施形態では、制御装置100は、第2受信部190を備えている。第2受信部190は、着脱検知装置CSが送信する信号を受信するように構成されている。吸引検査において、バルブ開放部161は、インクカートリッジ60が装着されていないことを示す信号を第2受信部190が受信している状態でバルブ62を開放し、インク流路61内の圧力を大気圧にする。本実施形態では、プリンタ10は、使用前検査において、インクカートリッジ60が装着されているかどうかを確認している。よって、インクカートリッジ60の取り外し忘れが防止され、インク漏れ等のリスクがさらに低減される。なお、第2受信部190が受信する信号は、印刷中などには、例えば、インクカートリッジ60が装着されていないことを警告するために使用されてもよい。
以上、好適ないくつかの実施形態について説明した。しかし、上記の実施形態は例示に過ぎず、ここに開示する技術は他の種々の形態で実施することができる。例えば、上記実施形態では、送出検査は、吸引検査およびリーク検査に引き続いて行われたが、そうでなくてもよい。送出検査は、吸引検査およびリーク検査とは別に行われてもよい。その場合、送出検査は、インク容器を取り外すステップ(インク容器が取り外された状態から開始する場合には省略可)と、インク容器が装着されていない状態で加圧ポンプを駆動させる加圧ステップと、診断ステップとを含む。診断ステップでは、上記加圧ステップにおいて加圧ポンプを駆動させた時間が予め定められた上限時間に達しても圧力検出装置が検出する圧力が所定の圧力を下回っている場合に異常と診断する。かかる送出検査の単独実施によれば、インク流路にインクを充填することなくインク流路の検査が行われるため、検査によってインク流路からインクが漏出したり、部材を破損させたりするリスクを低減しつつ、インク流路の異常の可能性を検出することができる。なお、かかる単独の送出確認によれば、インク供給システムの異常の原因を、加圧ポンプが流体を送出しない可能性、インク流路内が加圧されているにもかかわらず圧力検出装置がそれを検出しない可能性、インク流路のうち圧力検出装置よりも上流のどこかが閉塞している可能性、または、インク流路のうち加圧ポンプよりも下流側のどこかがリークしている可能性まで絞ることができる。
また、上記した実施形態では、インク流路61内の圧力を検出する圧力検出装置PSは、本来はインクの供給を制御するためのものであり、インク供給システムSSおよびキャッピング装置90の検査はインク供給制御用の圧力検出装置PSを利用したものであったが、それには限定されない。インク供給システムおよびキャッピング装置の検査のための圧力検出装置は、インク供給制御用の圧力検出装置とは別に構成されていてもよい。また、その設けられる位置はダンパでなくてもよい。
上記した実施形態では、リーク検査において診断に利用されるインク流路内の圧力は、吸引検査において診断に利用されるインク流路内の圧力(第1圧力)と同じであったが、同じでなくてもよい。プリンタは、予め定められた保持時間が経過する前に圧力検出装置が検出する圧力が第1圧力とは異なる第2圧力以上となった場合に第2の異常と診断してもよいし、第1圧力と同じ第2圧力以上となった場合に第2の異常と診断してもよい。送出検査についても同様であり、プリンタは、加圧ステップにおいて加圧ポンプを駆動させた時間が予め定められた上限時間に達しても圧力検出装置が検出する圧力が第1圧力とは異なる第3圧力を下回っている場合に第3の異常と診断してもよいし、第1圧力と同じ第3圧力を下回っている場合に第3の異常と診断してもよい。
さらに、インク供給システムの構成は、上記したものに限定されない。インク供給システムには、適宜他の部材、例えば、バルブや循環流路などが追加されてもよく、一部の部材が削除されてもよい。
その他、インクジェットプリンタの構成については、特に言及がない限りにおいて限定されない。例えば、ここに開示する技術は、フラットベッドタイプのインクジェットプリンタなどに対しても利用できる。また、例えば、カッティングヘッド付きインクジェットプリンタなどのように、その一部にインクジェットプリンタが組み込まれた装置にも利用できる。