JP7290048B2 - 油脂組成物、油中水型乳化物、ミンチ肉加工冷凍食品 - Google Patents
油脂組成物、油中水型乳化物、ミンチ肉加工冷凍食品 Download PDFInfo
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Description
[1]
油中水型乳化物を形成するための油脂組成物であって、
以下の成分(A)~(C):
(A)食用油脂
(B)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル1.0~10.0質量%
(C)ポリグリセリン脂肪酸エステル0.1~3.0質量%
を含み、
前記(A)、(B)、(C)の質量比は、
(A)/[(B)+(C)]が7~90であり、かつ、(B)/(C)が10~2である、ミンチ肉加工冷凍食品用の油脂組成物。
[2]
前記[1]に記載の油脂組成物を10~50質量%含有する、油中水型乳化物。
[3]
前記[2]に記載の油中水型乳化物を含有する、ミンチ肉加工冷凍食品。
本発明の油脂組成物は、油中水型乳化物を形成するための油脂組成物であって、(A)食用油脂、(B)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル1.0~10.0質量%、(C)ポリグリセリン脂肪酸エステル0.1~3.0質量%を含み、前記(A)、(B)、(C)の質量比は、(A)/[(B)+(C)]が7~90であり、かつ、(B)/(C)が10~2であることを特徴とするものである。
本発明の油脂組成物は高い乳化性を有し、水分と混合することにより油中水型乳化物を作ることができる。この油中水型乳化物を含むミンチ肉加工冷凍食品は、一次加熱では油中水型乳化物の乳化が破壊されず、冷凍及び二次加熱をすると油中水型乳化物の乳化が破壊される。そのため、二次加熱後の喫食時には、強いジューシー感が得られ、また、透明感のある肉汁が流れ出すミンチ肉加工食品を提供することができる。さらに、このミンチ肉加工食品は、冷えてもジューシー感が維持することができる。
<油脂組成物>
[(A)食用油脂]
本発明で使用する食用油脂は、ジューシー感付与のために用いられる。
本発明で使用する食用油脂としては特に限定されないが、ナタネ油、大豆油、ヒマワリ油、綿実油、落花生油、米油、トウモロコシ油、サフラワー油、オリーブ油、ゴマ油、月見草油、パーム油、シア油、サル脂、イリッペ脂、ボルネオタロー脂、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油等の植物油脂ならびに乳脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の動物性油脂、更には、原料に応じて硬化、分別、エステル交換等の処理を施したものが使用できる。また、これらの油脂を各々単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明においては、肉汁の透明感が向上するという観点から、常温(25℃)で液状の油脂を使用することが好ましい。
本発明に使用するポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルは、ひまし油を原料とするリシノレイン酸を縮合したポリリシノレイン酸をポリグリセリンに結合させた油溶性乳化剤である。親油性が強いことから、油中水型乳化に適している。また、乳化力が強いことから、一次加熱における油水分離を抑制し、肉汁がドリップとして喪失することを抑制する。
本発明に使用するポリグリセリン脂肪酸エステルは、油中水型乳化物を含有した冷凍食品において、二次加熱時の乳化を不安定化するために用いられる。乳化を不安定化することで二次加熱中に油水分離を起こし、白濁感のない透明な肉汁が得られる。本来、油脂の自己乳化性付与に効果的な乳化剤ではあるが、(B)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとの特定比率の配合により、冷凍後の再加熱において、乳化破壊を引き起こす。
本発明の油中水型乳化物は、油相部として前記の油脂組成物を10~50質量%、水相部を50~90質量%含有する。水相部としては特に限定されず、水、水溶性調味料などの混合物を用いることができる。油脂組成物が10~50質量%とすることにより、本発明の効果を得ることができる。
油中水型乳化物は、前記の油相部と水相部を混合することにより得ることができる。水相部と油相部の混合様式は特に限定されず、プロペラ攪拌のような簡便な攪拌、あるいは均質機などを用いて製造することができる。混合後、冷却の方法としては、放冷、公知の熱交換器、公知の急冷混練装置などを使用する方法がある。
本発明のミンチ肉加工冷凍食品は、前記の油中水型乳化物を含有する。油中水型乳化物は、特に、ハンバーグ、ミートボール、餃子、小籠包、肉まん、シューマイ、メンチカツ、ロールキャベツ、魚肉つみれなど、畜肉、魚肉などのミンチ肉加工冷凍食品に5~20質量%練り込むことによりその効果を発揮することができる。
本発明のミンチ肉加工冷凍食品は、一次加熱後、冷凍することにより得ることができ、喫食時に二次加熱を行い、二次加熱直後、あるいは、弁当容器などに入れ室温保管後、喫食することができる。
ミンチ肉加工食品は、前記の冷凍食品を加熱調理したものである。ミンチ肉加工食品は、加熱調理するだけで、簡単にジューシーで、透明感のある肉汁が流れ出るミンチ肉加工食品を提供することができる。加熱調理の方法は特に制限されず、例えば、電子レンジや熱湯等で加熱したり、オーブンやフライパンで焼いたりすればよい。
[油脂組成物の製造]
(実施例1)
表1の配合組成(質量%)で以下の方法により油脂組成物を製造した。すなわち、油相部として食用油脂(A)988g、ポリグリセリン縮合リシノイン酸エステル(B)10gおよびポリグリセリン脂肪酸エステル(C)2gを計量し、食用油脂(A)に(B)および(C)を添加し、プロペラ攪拌にて撹拌しながら70℃に加熱し5分間保持して溶解させたのち、その後リアクテーターを用いて冷却することで本発明の油脂組成物を得た。
実施例2~6および比較例1~6は表1および表2に示した配合で、実施例1に準じて油脂組成物を製造した。
(実施例1~6および比較例1~6)
上記の方法で作製した実施例1~6および比較例1~6の油脂組成物を、ミキサーを用いて撹拌しながら水を加えることで油中水型乳化物を得た。混合比率は、油脂組成物100部に対し水600部とした。
(実施例7)
実施例1の油脂組成物を、ミキサーを用いて撹拌しながら水を加えることで油中水型乳化物を得た。混合比率は油脂組成物100部に対し水100部とした。
(実施例8)
実施例2の油脂組成物を、ミキサーを用いて撹拌しながら水を加えることで油中水型乳化物を得た。混合比率は油脂組成物100部に対し水900部とした。
[水中油型乳化物の製造]
表3に示した配合で以下の方法にて水中油型乳化物を製造した。水にカゼインナトリウム、乳化剤を加えて撹拌しながら70℃まで加熱し、食用油脂を加えて撹拌した後、高圧ホモジナイザーを用いて、水中油型乳化物を得た。
[練り込み用ゲルの製造]
表4に示した配合で以下の方法にて練り込み用ゲルを作製した。水に増粘剤を加えて85℃まで昇温し、増粘剤を溶解させた。その後、10℃まで冷却してゲル状に固化させた後、3~5mm角にカットして練り込み用ゲルを得た。
表5に示した配合にて、挽肉、たまねぎソテー、パン粉、全卵、食塩を混合し、さらに油中水型乳化物、水中油型乳化物またはゲルを加えて混合して、ハンバーグの生地を製造した。80gの円形に成型し、230℃のオーブンにて8分間加熱(一次加熱)した後、急速冷凍機を用いて凍結し、-20℃で7日間冷凍保管した。冷凍されたハンバーグを500Wの電子レンジで2分間加熱(二次加熱)して、評価に用いた。評価項目は、「二次加熱後のジューシー感の評価(焼成歩留)」、「二次加熱直後のジューシー感の評価(目視評価)」、「肉汁の透明感の評価(目視評価)」、「冷えたときのジューシー感の評価(目視確認)」、「冷えたときの肉汁の透明感の評価(官能評価)」とし、評価結果は、表1~表4に示した。
二次加熱したハンバーグの重量を測定し、焼成前の生地重量で除して、焼成歩留を計算した。焼成歩留が大きいほうが、一次加熱、二次加熱で肉汁がドリップせず、ジューシー感が維持できていることを表す。
8枚測定した平均値にて以下の通りジューシー感を評価した。
◎:85.0%以上
○:82.5%以上、85.0%未満
△:80.0%以上、82.5%未満
×:80.0%未満
二次加熱したハンバーグを半分に切り、レオメーターにてφ30mmの円形平板冶具で50Nの荷重をかけたときに断面から流れ出る肉汁の量について、8名のパネラーで、以下の評価基準で目視評価した。目視評価においては、一次加熱のみ(冷凍なし)したものを2点とし、それよりも肉汁が多ければ3点、少なければ1点とした。
パネラー8名の平均値が、2.5点以上3.0点を◎、2.0点以上2.5点未満を○、1.5点以上2.0点未満を△、1.5点未満を×と評価した。
二次加熱したハンバーグを半分に切り、断面から流れる肉汁の透明感について、8名のパネラーで、以下の評価基準で目視評価した。目視評価においては、白濁がなく透明なものを3点、肉汁の一部に白濁しているところがあるものを2点、肉汁が白濁しているものを1点として評価した。
パネラー8名の平均値が、2.5点以上を◎、2.0点以上2.5点未満を○、1.5点以上2.0点未満を△、1.5点未満を×と評価した。
二次加熱したハンバーグを常温にて1時間放置した後に半分に切り、レオメーターにてφ30mmの円形平板冶具で50Nの荷重をかけたときに断面から流れ出る肉汁の量について、8名のパネラーで、以下の評価基準で目視評価した。目視評価においては、一次加熱直後のものを2点とし、それよりも肉汁が多ければ3点、少なければ1点とした。
パネラー8名の平均値が、2.5点以上を◎、2.0点以上2.5点未満を○、1.5点以上2.0点未満を△、1.5点未満を×と評価した。
二次加熱したハンバーグを常温にて1時間放置した後に半分に切り、断面から流れる肉汁の透明感について、8名のパネラーで、以下の評価基準で目視評価した。目視評価においては、白濁がなく透明なものを3点、肉汁の一部に白濁しているところがあるものを2点、肉汁が白濁しているものを1点として評価した。
パネラー8名の平均値が、2.5点以上を◎、2.0点以上2.5点未満を○、1.5点以上2.0点未満を△、1.5点未満を×と評価した。
一方、表2に示すように、比較例1の油脂組成物では、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(B)の含有量が1.0質量%未満であることから、肉汁が流出してしまい、焼成歩留まりが低下し、ジューシー感も得られなかった。
また、比較例2の油脂組成物では、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(B)の含有量が10.0質量%超であることから、二次加熱時に乳化が壊れず、肉汁が白濁していた。
比較例3の油脂組成物では、ポリグリセリン脂肪酸エステル(C)の含有量が0.1質量%未満であることにより、肉汁に白濁が認められた。ポリグリセリン脂肪酸エステル(C)の含有量が0.1質量%未満であることにより、二次加熱時に乳化が破壊されず、白濁した肉汁となると推察される。
比較例4の油脂組成物では、ポリグリセリン脂肪酸エステル(C)の含有量が3.0質量%超であることにより、肉汁が流出してしまい、焼成歩留まりが低下し、ジューシー感も得られなかった。ポリグリセリン脂肪酸エステル(C)の過剰配合により、乳化が不安定となり、一次加熱時に乳化が破壊されて肉汁が流れ出てしまったと推察される。
比較例5、6の油脂組成物では、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(B)とポリグリセリン脂肪酸エステル(C)の質量比((B)/(C))が、10~2の範囲外であるため、ジューシー感と肉汁の透明感を両立して優れた効果を得ることができなかった。
実施例9は表6に示した配合で、実施例1に準じて油脂組成物および油中水型乳化物を製造した。
表7に示した配合にて、魚肉すりみ、全卵、馬鈴薯澱粉、食塩を混合し、さらに油中水型乳化物を加えて混合して、魚肉つみれの生地を製造した。18gの球形に成型し、沸騰水中で3分間ボイル(一次加熱)した後、急速冷凍機を用いて凍結し、-20℃で7日間冷凍保管した。冷凍された魚肉つみれを500Wの電子レンジで1分間加熱(二次加熱)して、評価に用いた。評価項目は、「二次加熱後のジューシー感の評価(焼成歩留)」、「二次加熱直後のジューシー感の評価(目視評価)」、「肉汁の透明感の評価(目視評価)」、「冷えたときのジューシー感の評価(目視確認)」、「冷えたときの肉汁の透明感の評価(官能評価)」とし、評価結果は、表6に示した。
二次加熱した魚肉つみれの重量を測定し、ボイル前の生地重量で除して、歩留を計算した。歩留が大きいほうが、一次加熱、二次加熱で肉汁がドリップせず、ジューシー感が維持できていることを表す。
8個測定した平均値にて以下の通りジューシー感を評価した。
◎:85.0%以上
○:82.5%以上、85.0%未満
△:80.0%以上、82.5%未満
×:80.0%未満
二次加熱した魚肉つみれを半分に切り、レオメーターにてφ30mmの円形平板冶具で50Nの荷重をかけたときに断面から流れ出る肉汁の量について、8名のパネラーで、以下の評価基準で目視評価した。目視評価においては、一次加熱のみ(冷凍なし)したものを2点とし、それよりも肉汁が多ければ3点、少なければ1点とした。
パネラー8名の平均値が、2.5点以上を◎、2.0点以上2.5点未満を○、1.5点以上2.0点未満を△、1.5点未満を×と評価した。
二次加熱した魚肉つみれを半分に切り、断面から流れる肉汁の透明感について、8名のパネラーで、以下の評価基準で目視評価した。目視評価においては、白濁がなく透明なものを3点、肉汁の一部に白濁しているところがあるものを2点、肉汁が白濁しているものを1点として評価した。
パネラー8名の平均値が、2.5点以上を◎、2.0点以上2.5点未満を○、1.5点以上2.0点未満を△、1.5点未満を×と評価した。
二次加熱した魚肉つみれを常温にて1時間放置した後に半分に切り、レオメーターにてφ30mmの円形平板冶具で50Nの荷重をかけたときに断面から流れ出る肉汁の量について、8名のパネラーで、以下の評価基準で目視評価した。目視評価においては、一次加熱直後のものを2点とし、それよりも肉汁が多ければ3点、少なければ1点とした。
パネラー8名の平均値が、2.5点以上を◎、2.0点以上2.5点未満を○、1.5点以上2.0点未満を△、1.5点未満を×と評価した。
二次加熱した魚肉つみれを常温にて1時間放置した後に半分に切り、断面から流れる肉汁の透明感について、8名のパネラーで、以下の評価基準で目視評価した。目視評価においては、白濁がなく透明なものを3点、肉汁の一部に白濁しているところがあるものを2点、肉汁が白濁しているものを1点として評価した。
パネラー8名の平均値が、2.5点以上を◎、2.0点以上2.5点未満を○、1.5点以上2.0点未満を△、1.5点未満を×と評価した。
表8に示した配合にて、豚挽肉と、たまねぎ、椎茸、茹で筍、醤油、オイスターソース、砂糖、食塩、片栗粉を混合し、さらに実施例2の油中水型乳化物を加えて混合して、中華まんの具を調製した。次いで、得られた中華まんの具を皮で包み、蒸し器で加熱することで中華まんを得た。
表9に示した配合にて、牛挽肉、豚挽肉、玉ねぎ、パン粉、全卵、食塩、胡椒を混合し、さらに実施例8の油中水型乳化物を加えて混合して、メンチカツの具を調製した。次いで、このメンチカツの具に、バッター液、パン粉を付けて、約180℃の油で油ちょうし、メンチカツを得た。
表10に示した配合にて、豚挽肉、鶏挽肉、玉ねぎ、パン粉、全卵、固形コンソメ、食塩、胡椒を混合し、さらに実施例7の油中水型乳化物を加えて混合して、ロールキャベツの具を得た。この調製した具を、キャベツで包み、コンソメスープで煮込むことでロールキャベツを得た。
Claims (3)
- 油中水型乳化物を形成するための油脂組成物であって、
以下の成分(A)~(C):
(A)食用油脂
(B)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル2.0~10.0質量%
(C)ポリグリセリン脂肪酸エステル0.1~3.0質量%
を含み、
前記(A)、(B)、(C)の質量比は、
(A)/[(B)+(C)]が7~17.2であり、かつ、(B)/(C)が10~2であり、
前記(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンの平均重合度が2~4であり、不飽和脂肪酸のモノエステル体の含有量が50質量%以上である、ミンチ肉加工冷凍食品用の油脂組成物。 - 請求項1に記載の油脂組成物を10~50質量%含有する、油中水型乳化物。
- 請求項2に記載の油中水型乳化物を含有する、ミンチ肉加工冷凍食品。
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