JP7288358B2 - インクセット、インクセットを使用して形成された化粧板及び化粧板の製造方法 - Google Patents
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Description
本実施の形態に係るインクセットは、少なくともマゼンタインク及びイエローインクを含む化粧板用のインクセットである。本明細書におけるインクセットとは、例えばマゼンタインク及びイエローインクを含むような色の異なるインクを含むインクセットを意味するものであり、例えば、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインクからなるインクセットを意味するものである。
インク組成物は、少なくとも、顔料と、樹脂と、溶媒(水及び/又は有機溶媒)を含有する。以下、このインク組成物に含有される顔料、その他の添加剤について説明する。
インクセットに含まれるインク組成物には、顔料を含有する。具体的にはマゼンタインクの場合は、キナクリドン系顔料を含有する顔料を含有し、イエローインクの場合は、イソインドリノン系顔料を含有する顔料を含有する。
インク組成物には、必要に応じて、更に、従来公知の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、粘度調整剤、界面活性剤、pH調整剤、表面張力調整剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、電荷調整剤、湿潤剤等の公知の添加剤が任意成分として挙げられる。尚、これらの添加剤は、水性型のインク組成物及び溶剤型のインク組成物の双方において用いることができる。
水性型のインク組成物とは、水を主成分とし、水溶性有機溶媒を含有してもよいインク組成物である。このインク組成物は化粧板用印刷基材の表面に転移し、特にインクジェット方式の場合に於いては吐出されて、そのインク組成物から水や有機溶媒を揮発させて加飾層となる。水性型のインク組成物は、安全であり環境面でも優れるインク組成物である。
水性型のインク組成物において、含有される水としては、種々のイオンを含有するものではなく、脱イオン水を使用することが好ましい。水の含有量としては、各成分を分散又は溶解可能な含有量であれば特に限定されるものではないが、インク組成物全量中に10質量%以上であることが好ましく、中でもインク組成物全量中に20質量%以上であることが好ましく、特にインク組成物全量中に30質量%以上であることが好ましい。インク組成物全量中に95質量%以下であることが好ましく、中でもインク組成物全量中に90質量%以下であることがより好ましい。
[有機溶媒]
水性型のインク組成物に含有される有機溶媒は、インク組成物に含有される成分を分散又は溶解することができるものである。このような有機溶媒としては、水溶性を有する水溶性有機溶媒であっても非水溶性有機溶媒であってもよい。ここで、「水溶性を有する」とは、25℃の水100質量部中に、1気圧下で5質量部以上溶解することができるものをいう。
水性型のインク組成物には顔料分散剤が含有されていてもよい。ここで顔料分散剤とは、顔料表面の一部に付着することでインク内での顔料の分散性を向上させる機能を有する樹脂又は界面活性剤のことを意味する。
水性型のインク組成物にはバインダー樹脂を含有してもよい。バインダー樹脂は本実施の形態に係るインクセットにおいて必須ではないが、インク組成物にバインダー樹脂を含有することで、インク組成物により形成される加飾層の耐水性が向上する。又、水性型のインク組成物では、含有するバインダー樹脂の少なくとも一部は、樹脂エマルジョンとして含有してもよい。樹脂エマルジョンとは、連続相が水溶性溶媒であり、分散粒子が樹脂微粒子である水性分散液を意味する。記樹脂エマルジョンは、一般に連続相である水溶性溶媒が蒸発や浸透等により減少すると、増粘・凝集する性質を持ち、色材の基材への定着を促進する効果を有する。
水性型のインク組成物において、その他の添加剤として界面活性剤が含有されていてもよい。水性型のインク組成物において用いることのできる界面活性剤は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリシロキサン化合物、アニオン系界面活性剤、非イオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アルキレンオキサイド変性アセチレングリコール系界面活性剤、アルキレンオキサイド非変性アセチレングリコール系界面活性剤等を挙げることができる。
溶剤型のインク組成物とは、水を含有せず、有機溶剤(有機溶媒)を主成分とするインク組成物である。本明細書における溶剤型のインク組成物において「水を含有しない」とは、水を意図的に含有させずに製造されたインク組成物であることを意味し、例えば大気中等に含有される水蒸気等や添加剤に含有される水等に起因するような製造者が意図しないような原因により含有されてしまうような水は考慮しない。
溶剤型のインク組成物において、上述した水性型のインク組成物に含有される有機溶剤と同様の有機溶剤を使用することができる。
溶剤型のインク組成物には樹脂を含有する。インク組成物に樹脂を含有することで、インク組成物により形成される加飾層の耐水性が向上する。バインダー樹脂としては、特に限定はなく、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ウレタン樹脂、ロジン変性樹脂、フエノール樹脂、テルペン系樹脂、ポリアミド樹脂、ビニルトルエン-α-メチルスチレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル系共重合体、セルロースアセテートブチレート、シリコーン(シリコン)樹脂、アクリルアミド樹脂、エポキシ樹脂、或いはこれらの共重合樹脂や混合物を用いることができる。
溶剤型のインク組成物において必要に応じて分散剤を用いてもよい。分散剤としては、従来公知の溶剤型のインク組成物において用いられている任意の分散剤を用いることができる。分散剤としては、高分子分散剤(樹脂)を用いるとよい。こうした分散剤としては、主鎖がポリエステル系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリアミン系、ポリカプロラクトン系などからなり、側鎖としてアミノ基、カルボキシル基、スルホン基、ヒドロキシル基などの極性基を有するものである。ポリアクリル系分散剤では、例えば、Disperbyk-2000、2001、2008、2009、2010、2020、2020N、2022、2025、2050、2070、2095、2150、2151、2155、2163、2164、BYKJET-9130、9131,9132,9133,9151(ビック・ケミー社製)が用いられる。ポリカプロラクトン系分散剤では、例えば、アジスパーPB821、PB822、PB881(味の素ファインテクノ(株)製)が用いられる。好ましい分散剤としては、ポリエステル系分散剤であり、例えばヒノアクトKF-1000、T-6000、T-7000、T-8000、T-8000E、T-9050(川研ファインケミカル(株)製)、Solsperse20000、24000、32000、32500、32550、32600、33000、33500、34000、35200、36000、37500、39000、71000(ルーブリゾール社製)、フローレンDOPA-15BHFS、17HF、22、G-700、900、NC-500、GW-1500(共栄社化学(株)製)、Efka4310、4320、4330、4401、4402、4403N、4570、7411、7477、7700(BASF社製)の単独、又はそれらの混合物を用いることができる。
又、溶剤型のインク組成物においては、ノズル部やチューブ内等の機器内での溶剤型のインク組成物の揮発抑制、固化防止、又、固化した際の再溶解性を目的として、室温、大気圧下で液状の非イオン性ポリオキシエチレン誘導体を添加してもよい。例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類であるノニオンP-208、P-210、P-213、E-202S、E-205S、E-215、K-204、K-220、S-207、S-215、A-10R、A-13P、NC-203、NC-207(日本油脂(株)製)、エマルゲン106、108、707、709、A-90、A-60(花王(株)製)、フローレンG-70、D-90(共栄社化学(株)製)、ポエムJ-0081HV(理研ビタミン(株)製)、アデカトールNP-620、NP-650、NP-660、NP-675、NP-683、NP-686、アデカコールCS-141E、TS-230E((株)アデカ製)等、ソルゲン30V、40、TW-20、TW-80、ノイゲンCX-100(第一工業製薬(株)製)等が例示される。
本実施の形態に係るマゼンタインクは、キナクリドン系顔料を含有する顔料と、樹脂と、を含有し、顔料(P)と樹脂(V)との含有比P/Vは、質量比で2.0以上、好ましくは2.5以上、より好ましくは3.0以上、さらに好ましくは3.5以上であり、好ましくは7.0以下、より好ましくは6.8以下である。キナクリドン系顔料の含有量は、マゼンタインク100質量部中4.0質量部以上が好ましく、より好ましくは5.0質量部以上、さらに好ましくは5.5質量部以上であり、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。さらに、このマゼンタインクは、600×600dpi、12pl、マゼンタインク100%の印刷パターンで化粧板用印刷基材の表面にインクジェット方式にて吐出したときのOD値が0.50以上、好ましくは0.55、より好ましくは0.60である。このようなマゼンタインクであれば、化粧板用印刷基材の表面にインク受容層を積層しない場合であっても、裏抜けやブリスターの発生を抑制することができる。
本実施の形態に係るイエローインクは、イソインドリノン系顔料を含有する顔料と、樹脂と、を含有し、顔料(P)と樹脂(V)との含有比P/Vは、質量比で2.0以上、好ましくは2.5以上、より好ましくは2.8以上であり、好ましくは、7.0以下、より好ましくは6.0以下である。イソインドリノン系顔料の含有量は、イエローインク100質量部中4.0質量部以上が好ましく、より好ましくは5.0質量部以上、さらに好ましくは5.5質量部以上であり、好ましくは20.0質量部以下、より好ましくは15.0質量部以下である。さらに、このイエローインクは、600×600dpi、12pl、イエローインク100%の印刷パターンで化粧板用印刷基材の表面にインクジェット方式にて吐出したときのOD値が0.40以上、好ましくは0.45以上、より好ましくは0.50以上である。このようなイエローインクであれば、化粧板用印刷基材の表面にインク受容層を積層しない場合であっても、裏抜けやブリスターの発生を抑制することができる。
化粧板用印刷基材とは、上記のインクセットに含まれる少なくとも1つのインク組成物に使用される化粧板の印刷用の基材である。斯かる基材としては、液状樹脂組成物の含侵性の有る纖維質の材料(繊維質基材)が好ましい。例えば、各種の紙、不織布、織布等が使用できるが、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂の未硬化液状組成物を含侵した後、含侵組成物を硬化させて所謂「熱硬化性樹脂化粧板」を得る場合は、代表的な例としては、原紙に酸化チタンの粒子が抄き込まれたチタン紙を用いることができる。これら化粧板用印刷基材の坪量は、50~200g/m2程度、一般的には、80~120g/m2程度とされる。所望の加飾層を積層した化粧板用印刷基材には、更に、例えばメラミン-ホルムアルデヒド樹脂溶液などの熱硬化性樹脂の未硬化液状組成物を含浸した後、加熱及び加圧等により含侵した該組成物を硬化せしめて化粧板とすることができる。加飾層表面の耐擦傷性等の耐久性を向上させる為に、加飾層を積層した化粧板用印刷基材の該加飾層上に、例えばメラミン-ホルムアルデヒド樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸した紙をオーバーレイ紙として積層することができる。
加飾層とは、被転体に杉、松、欅等の天然の木材板表面と同じ木目調の図柄などの意匠外観を与える層である。上記のインクセットに含まれる少なくとも1つのインク組成物から水や有機溶媒を揮発させて加飾層となる。
この積層体においては、必要に応じて加飾層の表面上に、更に、透明な表面保護層を積層してもよい。表面保護層は、樹脂層の積層、塗膜の塗工、又は樹脂層の積層と塗膜の塗工の併用により形成することができる。いずれの場合に於いても、表面保護層は、該層を透視して加飾層を視認可能な程度の透明性を有するものであればよく、無色透明、着色透明のいずれであってもよい。
上記のインクセットに含有されるインク組成物を基材の表面に転移する印刷方法は、インクジェット方式、オフセット方式、グラビア方式、スプレー方式、又は刷毛塗り方式等を挙げることができる。小ロット多品種に対応できる点でインクジェット方式にて転移(吐出)する印刷方法であることが好ましい。なお、本明細書中の「基材上」とは、基材の表面に直接形成する態様及び基材の表面にプライマー層等の他の層を介して形成する態様の双方を含む。
化粧板は、上記の化粧板用印刷基材の表面にインク組成物の加飾層が積層されたシートに熱硬化性樹脂の未硬化物である液状組成物(メラミン樹脂化粧板の場合であれば、メラミン樹脂の未硬化物であるメチロールメラミンを含有する液状組成物)を含浸して、加熱或いは加熱プレス加工して、することにより得ることができる。
顔料、樹脂(顔料分散剤、樹脂エマルジョン)、有機溶剤、界面活性剤、水(イオン交換水)を用いて下記表のように実施例及び比較例のインク組成物(インクセット)を調整した。各成分の数字は質量部を意味する。なお、「顔料」と「樹脂」は固形分の質量部を意味する。
実施例及び比較例のインクセットを用いて「OD値」、「平均粒径」、「発色性」、「ブリスター」、「耐候性」を確認した。
実施例及び比較例のインクセットについて発色性試験を行った。具体的には、化粧板の加飾層が設けられた面側から目視により観察し、下記評価基準により評価をした。
(評価基準)
○:濃度が高く、発色性が良好
×:濃度が低く、発色性が劣る(実用上問題あり)
実施例及び比較例のインクセットについてブリスター試験を行った。具体的には、上下熱盤間に介在させた金属鏡面板の間に、インクジェット方式にて吐出することにより加飾層が積層された化粧板、メラミン樹脂の未硬化物であるメチロールメラミンを含有する液状組成物を含浸したオーバーレイ紙、コア紙を重ねて150℃、14MPa(約140kgf/cm2)、20分の条件で加熱圧縮して熱プレス成形した際のブリスター発生を目視により観察し、下記評価基準により評価をした。
(評価基準)
○:ブリスター発生無し
×:ブリスター発生有り
実施例及び比較例のインクセットについて耐候性試験を行った。具体的には、加飾層が積層された化粧板をJIS K 7350-2に準拠した試験を行い、キセノンアークウェザオメーターに500h暴露後の外観変化によって評価した。
○:500h暴露後のΔEが10未満
×:500h暴露後のΔEが10以上
実施例及び比較例のインクセットについて裏抜け試験を行った。具体的には、実施例及び比較例の各インクセットに含まれるマゼンタインク組成物について、化粧板用印刷基材の表面にOD値が0.5となるように、化粧板用印刷基材の表面にインクジェット方式にて吐出して化粧板を製造し、裏抜けの有無を観察し、下記評価基準により評価をした。評価結果を表3に示す。
○:裏抜けなし
×:裏抜けあり(インクがしみ通っている)
実施例1におけるインクセットの複数のインク組成物を用いて化粧板用印刷基材に印刷をした。そして化粧板用印刷基材の表面に積層し、「ブリスター」と「耐候性」と「裏抜け」とをそれぞれ上記同様に評価をした。
Claims (9)
- 少なくともマゼンタインク及びイエローインクを含む化粧板用のインクセットであって、
前記マゼンタインクは、キナクリドン系顔料を含有する顔料と、樹脂と、を含有し、前記顔料(P)と前記樹脂(V)との含有比P/Vは、質量比で2.0以上であり、
前記イエローインクは、イソインドリノン系顔料を含有する顔料と、樹脂と、を含有し、前記顔料(P)と前記樹脂(V)との含有比P/Vは、質量比で2.0以上であり、
前記マゼンタインクは、該マゼンタインクに含有される顔料を分散する高分子分散剤を含有し、
前記イエローインクは、該イエローインクに含有される顔料を分散する高分子分散剤を含有し、
600×600dpi、12pl、前記マゼンタインク100%の印刷パターンで化粧板用印刷基材の表面にインクジェット方式にて吐出したときのOD値が0.5以上であり、
600×600dpi、12pl、前記イエローインク100%の印刷パターンで化粧板用印刷基材の表面にインクジェット方式にて吐出したときのOD値が0.4以上である
インクセット。 - 前記キナクリドン系顔料の含有量はマゼンタインク100質量部中4質量部以上であり、
前記イソインドリノン系顔料の含有量はイエローインク100質量部中4質量部以上である
請求項1に記載のインクセット。 - さらに、シアンインク及びブラックインクを含む
請求項1又は2に記載のインクセット。 - 前記マゼンタインクに含有される前記キナクリドン系顔料はPigment Violet 19であり、
前記イエローインクに含有される前記イソインドリノン系顔料はPigment Yellow 110である
請求項1から3のいずれかに記載のインクセット。 - インクジェット方式によって化粧板用印刷基材の表面に吐出される
請求項1から4のいずれかに記載のインクセット。 - インクセットに含まれるインク組成物は水性型のインク組成物である
請求項1から5のいずれかに記載のインクセット。 - インクセットに含まれるそれぞれのインク組成物に含有される水溶性有機溶媒の含有量は、インク組成物100質量部中20質量部以上55質量部以下であり、
インクセットに含まれるそれぞれのインク組成物に含まれる沸点が250℃以上の水溶性有機溶媒の含有量は、インク組成物100質量部中15質量部以下である
請求項6に記載のインクセット。 - 請求項1から7のいずれかに記載のインクセットに含まれる少なくとも1つのインク組成物の加飾層が化粧板用印刷基材の表面に形成された化粧板。
- 請求項1から7のいずれかに記載のインクセットに含まれる少なくとも1つのインク組成物をインクジェット方式にて化粧板用印刷基材の表面に吐出する化粧板の製造方法。
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