JP7288358B2 - インクセット、インクセットを使用して形成された化粧板及び化粧板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、インクセット、インクセットを使用して形成された化粧板及び化粧板の製造方法に関する。
インク組成物として、各種の水溶性染料を水、又は水と有機溶剤との混合液に溶解させた水性型のインク組成物や水を含有せず、有機溶剤を主成分とする溶剤型のインク組成物が広く用いられている。
建築物、家具、建具、造作部材等の表面化粧の手段としてこのインク組成物が用いられることがある。例えば、基材にこのインク組成物が用いて天然の木材と同じ木目調の図柄を印刷し、紙、不織布、織布等の繊維質基材中にメラミン樹脂等の熱硬化性樹脂の未硬化組成物を含浸して、熱プレス加工することによりメラミン化粧版等の化粧板を得て、被転写体となる建築物、家具、建具、造作部材等の被転写基材にこの化粧板を接着して、天然の木材と同じ意匠を有する化粧材を得ることができる。
例えば、特許文献1には、水溶性ポリアクリルアミド樹脂を含む、化粧板用のインク組成物が開示されている。
特許文献1によればそのインク組成物は、印刷時にガイドロールなどでの摩擦で印刷表面が乱れることなく基材との熱圧着後の密着性が良好である旨記載されている。
一方、化粧板は、建築物、家具、建具、造作部材等に用いられることから、化粧板を製造する際に、発色性、耐候性を高めるためインク組成物の印字濃度を高くして、纖維質の化粧板用印刷基材の表面に転移(吐出)することが行われる。すると、インク組成物が纖維質の化粧板用印刷基材へ浸透することにより裏抜けが発生し易い。又、熱硬化性樹脂の未硬化組成物を含侵する際に、纖維間の空気と樹脂組成物との置換が不十分で纖維間に空気が微量に殘留し、化粧板製造時の熱プレス加工時に、その纖維間殘留空気が熱膨張することにより、表面にスポット状の微小な膨れやへこみ(ブリスター)が発生して、化粧板の意匠性が低下することがある。
このような裏抜けやブリスターの発生を抑制するために化粧板用印刷基材の表面にインク受容層を積層して、そのインク受容層の表面にインク組成物を転移することが行われる(例えば、特許文献2)。これにより、インク組成物が化粧板用印刷基材に浸透することを抑制し、裏抜けを防止するとともに、インク受容層によって原紙中の空気を効果的に逃がすことが可能となってブリスターの発生を効果的に抑制することができる。
特開2017-179356 特開2017-081004
さて、このようなインク受容層を積層することは工程数が増えることとなり、生産性の観点からは、化粧板用印刷基材の表面に直接インク組成物を転移できることが好ましい。
本発明は、化粧板用印刷基材の表面にインク受容層を積層しない場合であっても、裏抜けやブリスターの発生を抑制することのできるインク組成物(インクセット)を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討をした結果、インク組成物における顔料(P)と樹脂(V)との含有比P/V及び所定の印刷パターンにおける印刷表面のOD値を特定することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明では、以下のようなものを提供する。
(1)少なくともマゼンタインク及びイエローインクを含む化粧板用のインクセットであって、前記マゼンタインクは、キナクリドン系顔料を含有する顔料と、樹脂と、を含有し、前記顔料(P)と前記樹脂(V)との含有比P/Vは、質量比で2.0以上であり、前記イエローインクは、イソインドリノン系顔料を含有する顔料と、樹脂と、を含有し、前記顔料(P)と前記樹脂(V)との含有比P/Vは、質量比で2.0以上であり、600×600dpi、12pl、前記マゼンタインク組成物100%の印刷パターンで化粧板用印刷基材の表面にインクジェット方式にて吐出したときのOD値が0.5以上であり、600×600dpi、12pl、前記イエローインク組成物100%の印刷パターンで化粧板用印刷基材の表面にインクジェット方式にて吐出したときのOD値が0.4以上であるインクセットである。
(2)前記キナクリドン系顔料の含有量はマゼンタインク100質量部中4質量部以上であり、前記イソインドリノン系顔料の含有量はイエローインク100質量部中4質量部以上である(1)に記載のインクセットである。
(3)さらに、シアンインク及びブラックインクを含む(1)又は(2)に記載のインクセットである。
(4)前記マゼンタインクに含有されるキナクリドン系顔料はPigment Violet 19であり、前記イエローインクに含有されるイソインドリノン系顔料はPigment Yellow 110である(1)から(3)のいずれかに記載のインクセットである。
(5)インクジェット方式によって化粧板用印刷基材の表面に印刷される(1)から(4)のいずれかに記載のインクセットである。
(6)インクセットに含まれるインク組成物は水性型のインク組成物である(1)から(5)のいずれかに記載のインクセットである。
(7)インクセットに含まれるそれぞれのインク組成物に含有される前記水溶性有機溶媒の含有量は、インク組成物100質量部中20質量部以上55質量部以下であり、インクセットに含まれるそれぞれのインク組成物に含まれる沸点が250℃以上の水溶性有機溶媒の含有量は、インク組成物100質量部中15質量部以下である(6)に記載のインクセットである。
(8)(1)から(7)のいずれかに記載のインクセットに含まれる少なくとも1つのインク組成物の加飾層が化粧板用印刷基材の表面に形成された化粧板である。
(9)(1)から(7)のいずれかに記載のインクセットに含まれる少なくとも1つのインク組成物をインクジェット方式にて化粧板用印刷基材の表面に印刷する化粧板の製造方法である。
本発明によれば、化粧板用印刷基材の表面にインク受容層を積層しない場合であっても、裏抜けやブリスターの発生を抑制することのできるインクセットである。
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
<1.インクセットの概要>
本実施の形態に係るインクセットは、少なくともマゼンタインク及びイエローインクを含む化粧板用のインクセットである。本明細書におけるインクセットとは、例えばマゼンタインク及びイエローインクを含むような色の異なるインクを含むインクセットを意味するものであり、例えば、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインクからなるインクセットを意味するものである。
そして、このインクセットに含まれるマゼンタインクは、キナクリドン系顔料を含有する顔料と、樹脂と、を含有し、顔料(P)と樹脂(V)との含有比P/Vは、質量比で2.0以上である。なお、本明細書中で顔料(P)と樹脂(V)との含有比とはインク組成物中の顔料と樹脂(固形分)の質量比を意味する。
P/V中の顔料(P)とは、インク組成物に含まれる色材を意味する。又、P/V中の樹脂(V)とは、低分子の繰り返し構造を有する重合体(高分子)を意味し、例えばインク組成物に含まれるバインダー樹脂(樹脂エマルジョンを含む)や高分子の顔料分散剤等に由来する樹脂を意味する。
従来の化粧板用ではない通常のインク組成物(インクセット)の場合、インク組成物(インクセット)の加飾層が印刷物において最表面に配置されることから、インク組成物の顔料(P)と樹脂(V)との含有比P/Vは、2.0未満程度にし、インク組成物の樹脂の含有量を増やすことで加飾層の耐久性を確保することが一般的である。なお、耐久性とは、加飾層の硬度等に由来する物理的な耐久性(例えば、耐傷性等)を意味する。
一方、化粧板に用いられる化粧板用のインク組成物の場合、発色性、耐候性は高める必要はあるものの、最表面にメラミン樹脂等の熱硬化樹脂の層が積層されることから、通常のインク組成物のような耐久性を確保する必要性は相対的に低い。しかしながら、化粧板は、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂に含浸してプレス加工して成形されることから、インク組成物が基材へ浸透することにより裏抜けが発生し、又、プレス加工時にブリスターが発生して、化粧板の意匠性が低下することがあった。
そこで、マゼンタインク中のキナクリドン系顔料の含有量と顔料(P)と樹脂(V)との含有比P/Vを上記の範囲に特定することにより、少量のインク組成物であっても化粧板に必要な発色性や耐候性を好ましいものとすることができることから、化粧板用のインク組成物独自の課題である裏抜けやブリスターの発生を効果的に抑制することができる。なお、マゼンタインクの顔料(P)と樹脂(V)との含有比P/Vは、2.5以上が好ましく、3.0以上がより好ましく、3.5以上が最も好ましい。
なお、マゼンタインクの顔料(P)と樹脂(V)との含有比P/Vは、7.0以下が好ましく6.8以下がより好ましい。顔料の化粧板用印刷基材との定着性が向上し、プレス加工時に顔料の流出を効果的に抑制できる。
さらに、このインク組成物は、600×600dpi、12pl、マゼンタインク100%の印刷パターンで化粧板用印刷基材の表面にインクジェット方式にて吐出したときのOD値が0.50以上である。なお、本明細書においてOD値とは、化粧板用印刷基材の表面にインクジェット方式にて吐出されて製造される化粧板表面のOD値を意味する。
このように、所定の印刷パターン及び所定量のインク組成物(マゼンタインク)により製造される化粧板表面のOD値が0.50以上となるようなマゼンタインクであれば、少量のインク組成物であっても化粧板に必要な発色性や耐候性を好ましいものとすることができる。
なお、600×600dpi、12pl、マゼンタインク100%の印刷パターンで化粧板用印刷基材の表面にインクジェット方式にて吐出したときのOD値は0.55以上であることがより好ましく0.60以上であることがさらに好ましい。
なお、OD(Optical Density(光学濃度))値とは、反射率の常用対数値であって、OD=Log10[I/R](Iは入射光強度、Rは反射光強度)で定義される。このOD値はX-Rite eXact(エックスライト社製)を用いて測定することができる。
一方、本実施の形態に係るインクセットに含まれるイエローインクは、イソインドリノン系顔料を含有する顔料と、樹脂と、を含有し、顔料(P)と樹脂(V)との含有比P/Vは、質量比で2.0以上である。さらに、600×600dpi、12pl、イエローインク100%の印刷パターンでインクジェット方式にて化粧板用印刷基材に吐出したときのOD値が0.4以上である。なお、イエローインクの顔料(P)と樹脂(V)との含有比P/Vは、2.5以上が好ましく、2.8以上がより好ましい。
このように、所定の印刷パターンでインクジェット方式にて化粧板用印刷基材に吐出したときのOD値が0.40以上となるようなイエローインクであれば、上記のマゼンタインクと同様の理由により少量のインク組成物であっても化粧板に必要な発色性や耐候性を好ましいものとすることができる。つまり、印字濃度を低くしても十分に発色性や耐候性を有する化粧板を製造することができることから、印字濃度を高くすることにより発生する裏抜けやブリスターの発生を効果的に抑制することができる。化粧板表面のOD値が0.45以上であることが好ましく、0.50以上であることがより好ましい。
イエローインクの顔料(P)と樹脂(V)との含有比P/Vは、7.0以下が好ましく、6.8以下がより好ましい。顔料の化粧板用印刷基材との定着性が向上し、プレス加工時に顔料の流出を効果的に抑制できる。
なお、化粧板表面のOD値は、インクジェット方式にて化粧板用印刷基材に吐出したときのOD値を採用しているが、本実施の形態に係るインクセットは、インクジェット方式に限定して使用されるものではない。しかしながら、本実施の形態に係るインクセットは小ロット多品種に対応できる点でインクジェット方式に使用されることが好ましい。
本発明者らの見解によれば、上記の条件を満たすイエローインク及びマゼンタインクを含むインクセットであれば、裏抜けやブリスターの発生を効果的に抑制することができる。所定の画像が形成されている積層体全体において印字濃度を高くすることにより発生する裏抜けやブリスターの発生を効果的に抑制することができる。
本実施の形態に係るインクセットに含まれるマゼンタインク及びイエローインク以外のインク組成物(例えば、シアンインク、ブラックインク)は特に制限されずに使用することができる。インクセットに含まれるイエローインク及びマゼンタインク以外の1つのインク組成物(例えば、シアンインク)の顔料(P)と樹脂(V)との含有比P/Vが2.0以上であることが好ましく、2.5以上であることがより好ましい。インクセットに含まれるイエローインク及びマゼンタインク以外の1つのインク組成物(例えば、シアンインク)の顔料(P)と樹脂(V)との含有比P/Vが7.0以下であることが好ましい。インクセットに含まれるイエローインク及びマゼンタインク以外の2つのインク組成物(例えば、シアンインク、ブラックインク)の顔料(P)と樹脂(V)との含有比P/Vが2.0以上であることが好ましく、2.5以上であることがより好ましい。インクセットに含まれるイエローインク及びマゼンタインク以外の2つのインク組成物(例えば、シアンインク、ブラックインク)の顔料(P)と樹脂(V)との含有比P/Vが7.0以下であることが好ましい。
次に、インクセットを構成するインク組成物ついて説明する。
<2.インク組成物>
インク組成物は、少なくとも、顔料と、樹脂と、溶媒(水及び/又は有機溶媒)を含有する。以下、このインク組成物に含有される顔料、その他の添加剤について説明する。
[顔料]
インクセットに含まれるインク組成物には、顔料を含有する。具体的にはマゼンタインクの場合は、キナクリドン系顔料を含有する顔料を含有し、イエローインクの場合は、イソインドリノン系顔料を含有する顔料を含有する。
なお、「キナクリドン系顔料を含有する顔料」「イソインドリノン系顔料を含有する顔料」という文言は、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料以外の色材を含んでもよいものとして理解される。
キナクリドン系顔料としては、C.I.ピグメントレッド122、202、206、207、209、C.I.ピグメントバイオレット19、42等が挙げられ、ピグメントレッド122、202、C.I.ピグメントバイオレット19が特に好ましい。
イソインドリノン系顔料としては、C.I.ピグメントイエロー109、110、173等が挙げられる。C.I.ピグメントイエロー110が特に好ましい。
なお、例えば、シアンインク、ブラックインクなどのマゼンタインク及びイエローインク以外のインク組成物については、従来公知の色材を用いればよい。色材は、従来の水性型や溶剤型のインク組成物に通常用いられている染料や無機顔料、有機顔料等どのようなものであってもよい。例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムイエロー、カドミウムイエロー、チタンイエロー、酸化チタン、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、コバルトブルー、ジケトピロロピロール、アンスラキノン、ベンズイミダゾロン、アンスラピリミジン、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料、アルミペースト、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、沈降性硫酸バリウム、パール顔料等が挙げられる。
マゼンタインクの場合、キナクリドン系顔料の含有量は、マゼンタインク100質量部中4.0質量部以上であることが好ましい。これにより、化粧板用印刷基材の表面に形成された加飾層の発色性を向上させることができる。又、キナクリドン系顔料の含有量が小さいと、マゼンタインクを含むインクセットの加飾層の発色性を向上させようとして印字濃度を高くして加飾層を形成するとブリスターが発生して化粧板の意匠性が低下する傾向がある。キナクリドン系顔料の含有量がマゼンタインク100質量部中4.0質量部以上であることにより、印字濃度を高くしなくとも加飾層の発色性を向上させることが可能となり、ブリスターの発生を効果的に抑制することができる。
キナクリドン系顔料の含有量は、マゼンタインク100質量部中5.0質量部以上であることが好ましく、マゼンタインク100質量部中5.5質量部以上であることがより好ましい。キナクリドン系顔料の含有量は、インク組成物100質量部中20.0質量部以下であることが好ましく、15.0質量部以下であることがより好ましい。
イエローインクの場合、イソインドリノン系顔料の含有量は、イエローインク100質量部中4.0質量部以上であることが好ましい。これにより、化粧板用印刷基材の表面に形成された加飾層の発色性を向上させることができる。又、イソインドリノン系顔料の含有量が小さいと、イエローインクを含むインクセットの加飾層の発色性を向上させようとして印字濃度を高くして加飾層を形成するとブリスターが発生して化粧板の意匠性が低下する傾向がある。イソインドリノン系顔料の含有量がイエローインク100質量部中4.0質量部以上であることにより、印字濃度を高くしなくとも加飾層の発色性を向上させることが可能となり、ブリスターの発生を効果的に抑制することができる。
イソインドリノン系顔料の含有量は、インク組成物100質量部中5.0質量部以上であることがより好ましく、イエローインク100質量部中5.5質量部以上であることがさらに好ましい。イソインドリノン系顔料の含有量は、イエローインク100質量部中20.0質量部以下であることが好ましく、15.0質量部以下であることがより好ましい。
マゼンタインク及びイエローインク以外のインク組成物については、顔料の含有量は、特に限定されるものではないが、インク組成物100質量部中4.0質量部以上であることが好ましく、インク組成物100質量部中5.0質量部以上であることがより好ましく、インク組成物100質量部中5.5質量部以上であることが更に好ましい。顔料の含有量は、インク組成物100質量部中20.0質量部以下であることが好ましく、15.0質量部以下であることがより好ましい。
顔料の平均分散粒径は、所望の発色が可能なものであれば特に限定されるものではない。顔料の種類によっても異なるが、顔料の分散安定性が良好で、充分な着色力を得る点から、顔料の平均粒径は、70nm以上が好ましく、500nm以下が好ましい。平均分散粒径が500nm以下であれば、特にインクジェット方式でインク組成物を吐出する場合に於いては、インクジェットヘッドのノズル目詰まりを起こしにくく、再現性の高い均質な画像を得ることができる。平均分散粒径が70nm以上であれば、得られる化粧板の耐候性を良好なものとすることができる。なお、顔料の平均分散粒径は、測定温度25℃にて濃厚系粒径アナライザー(大塚電子(株)製、型式:FPAR-1000)を用いて測定することができる。
マゼンタインクの場合、キナクリドン系顔料は、顔料100質量%中60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく90質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以上であることが更になお好ましく、99質量%以上であることが更により好ましく、100質量%(マゼンタインクに含まれる顔料がキナクリドン系顔料のみ)であることが最も好ましい。
イエローインクの場合、イソインドリノン系顔料は、顔料100質量%中60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく90質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以上であることが更になお好ましく、99質量%以上であることが更により好ましく、100質量%(イエローインクに含まれる顔料がイソインドリノン系顔料のみ)であることが最も好ましい。
なお、各インクには、顔料以外の色材(例えば染料)を含んでいてもよい。
[その他の添加剤]
インク組成物には、必要に応じて、更に、従来公知の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、粘度調整剤、界面活性剤、pH調整剤、表面張力調整剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、電荷調整剤、湿潤剤等の公知の添加剤が任意成分として挙げられる。尚、これらの添加剤は、水性型のインク組成物及び溶剤型のインク組成物の双方において用いることができる。
なお、インク組成物にはエチレン性不飽和二重結合を有する化合物のような活性エネルギー線を照射することにより重合される活性エネルギー線重合性化合物は含まないことが好ましい。活性エネルギー線重合性化合物は含まないことにより、ブリスターの発生をより効果的に抑制することができる。
以下、水性型のインク組成物と溶剤型のインク組成物について説明する。
<2-1.水性型のインク組成物>
水性型のインク組成物とは、水を主成分とし、水溶性有機溶媒を含有してもよいインク組成物である。このインク組成物は化粧板用印刷基材の表面に転移し、特にインクジェット方式の場合に於いては吐出されて、そのインク組成物から水や有機溶媒を揮発させて加飾層となる。水性型のインク組成物は、安全であり環境面でも優れるインク組成物である。
本実施の形態に係る化粧板用のインクセットにおいて、インクセットに含まれるインク組成物は水性型のインク組成物であることが好ましい。水を主成分とするインク組成物であれば、化粧板用印刷基材に対する浸透性が低いことから、インク組成物が基材裏面(基材の加飾層形成側とは反対側の面)側へ浸透することが抑制され、より効果的に裏抜けを抑制することができる。
以下、水性型のインク組成物に含まれる各成分について各々説明する。
[水]
水性型のインク組成物において、含有される水としては、種々のイオンを含有するものではなく、脱イオン水を使用することが好ましい。水の含有量としては、各成分を分散又は溶解可能な含有量であれば特に限定されるものではないが、インク組成物全量中に10質量%以上であることが好ましく、中でもインク組成物全量中に20質量%以上であることが好ましく、特にインク組成物全量中に30質量%以上であることが好ましい。インク組成物全量中に95質量%以下であることが好ましく、中でもインク組成物全量中に90質量%以下であることがより好ましい。
[有機溶媒]
水性型のインク組成物に含有される有機溶媒は、インク組成物に含有される成分を分散又は溶解することができるものである。このような有機溶媒としては、水溶性を有する水溶性有機溶媒であっても非水溶性有機溶媒であってもよい。ここで、「水溶性を有する」とは、25℃の水100質量部中に、1気圧下で5質量部以上溶解することができるものをいう。
水溶性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ペンタノール等の炭素数1~5のアルキルアルコール類;3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール、3-メトキシ-n-ブタノール等の1価のアルコール類;1-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、3-メトキシプロパンアミド、3-ブトキシプロパンアミド、N,N-ジメチル-3-メトキシプロパンアミド、N,N-ジブチル-3-メトキシプロパンアミド、N,N-ジブチル-3-ブトキシプロパンアミド、N,N-ジメチル-3-ブトキシプロパンアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン又はオキシプロピレン共重合体;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、イソブチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール等のジオール類;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール等のトリオール類:メソエリスリトール、ペンタエリスリトール等の4価アルコール類;エチレングリコールモノメチル(又はエチル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル)エーテル、プロピレングリコールモノメチル(又はエチル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル)エーテル、ジプロピレングリコールモノメチル(又はエチル、イソプロピル、n-ブチル,イソブチル)エーテル等のモノアルキルエーテル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等の多価アルコールのジアルキルエーテル類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン類;N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等の含窒素複素環化合物;γ-ブチロラクトン、スルホラン等の環状化合物等が挙げられる。
水溶性有機溶媒の含有量は、インク組成物100質量部中20質量部以上であることが好ましい。水溶性有機溶媒の含有量は、インク組成物100質量部中55質量部以下であることが好ましい。これにより、インク組成物に含まれる色材(顔料)や樹脂の分散性や溶解性を向上させることができる。
又、沸点が250℃以上の水溶性有機溶媒を含有してもよいが、インクセットに含まれるそれぞれのインク組成物に含まれる沸点が250℃以上の水溶性有機溶媒の含有量は、インク組成物100質量部中15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましい。
[顔料分散剤]
水性型のインク組成物には顔料分散剤が含有されていてもよい。ここで顔料分散剤とは、顔料表面の一部に付着することでインク内での顔料の分散性を向上させる機能を有する樹脂又は界面活性剤のことを意味する。
水性型のインク組成物において、用いることのできる顔料分散剤は特に限定されない。例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン(シリコン)系、フッ素系等の界面活性剤を使用できる。界面活性剤の中でも、次に例示するような高分子界面活性剤(高分子分散剤)が好ましい。
水性型のインク組成物おいて用いることのできる顔料分散剤としては、水溶性高分子分散剤を好ましく用いることができる。水溶性高分子分散剤としては、例えば、ポリエステル系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリアミン系、ポリカプトラクトン系の主鎖を有し、側鎖に、アミノ基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等の極性基を有する分散剤等が挙げられる。例えば、ポリアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体類;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物とアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの共重合体類;ポリアクリル酸等の不飽和カルボン酸の(共)重合体の(部分)アミン塩、(部分)アンモニウム塩や(部分)アルキルアミン塩類;水酸基含有ポリアクリル酸エステル等の水酸基含有不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体やそれらの変性物;ポリウレタン類;不飽和ポリアミド類;ポリシロキサン類;長鎖ポリアミノアミドリン酸塩類;ポリエチレンイミン誘導体(ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離カルボキシル基含有ポリエステルとの反応により得られるアミドやそれらの塩基);ポリアリルアミン誘導体(ポリアリルアミンと、遊離のカルボキシル基を有するポリエステル、ポリアミド又はエステルとアミドの共縮合物(ポリエステルアミド)の3種の化合物の中から選ばれる1種以上の化合物とを反応させて得られる反応生成物)等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル樹脂を含有する水溶性高分子分散剤が、インクの分散安定性と、化粧板の画像鮮明性の観点から好ましい。
水溶性高分子分散剤の具体例としては、SARTOMER社製SMA1440、SMA2625、SMA17352、SMA3840、SMA1000、SMA2000、SMA3000、BASFジャパン社製JONCRYL67、JONCRYL678、JONCRYL586、JONCRYL611、JONCRYL680、JONCRYL682、JONCRYL690、JONCRYL819、JONCRYL-JDX5050、EFKA4550、EFKA4560、EFKA4585、EFKA5220、EFKA6230、ルーブリゾール社製SOLSPERSE20000、SOLSPERSE27000、SOLSPERSE41000、SOLSPERSE41090、SOLSPERSE43000、SOLSPERSE44000、SOLSPERSE46000、SOLSPERSE47000、SOLSPERSE54000、ビックケミー社製BYKJET-9150、BYKJET-9151、BYKJET-9170、DISPERBYK-168、DISPERBYK-190、DISPERBYK-198、DISPERBYK-2010、DISPERBYK-2012、DISPERBYK-2015、等が挙げられる。これらの顔料分散剤は、水性のインク組成物において好適に用いることができる。
水性型のインク組成物において、用いることのできる顔料は、顔料を顔料分散剤によって水溶性溶媒中に分散させた顔料分散体、であっても、顔料の表面に直接に親水性基を修飾した自己分散型顔料とした顔料分散体であってもよい。水性型のインク組成物に用いることのできる顔料は、複数の先述した有機顔料や無機顔料を併用してもよく、先述した顔料分散剤によって水溶性溶媒中に分散させた顔料分散体と自己分散型顔料を併用したものであってもよい。自己分散型顔料を用いる場合、従来公知の自己分散型顔料を用いることができる。
[バインダー樹脂]
水性型のインク組成物にはバインダー樹脂を含有してもよい。バインダー樹脂は本実施の形態に係るインクセットにおいて必須ではないが、インク組成物にバインダー樹脂を含有することで、インク組成物により形成される加飾層の耐水性が向上する。又、水性型のインク組成物では、含有するバインダー樹脂の少なくとも一部は、樹脂エマルジョンとして含有してもよい。樹脂エマルジョンとは、連続相が水溶性溶媒であり、分散粒子が樹脂微粒子である水性分散液を意味する。記樹脂エマルジョンは、一般に連続相である水溶性溶媒が蒸発や浸透等により減少すると、増粘・凝集する性質を持ち、色材の基材への定着を促進する効果を有する。
しかしながら、本実施の形態に係る化粧板用のインクセットにおいては、樹脂エマルジョンをできるだけ含有しないことの方が好ましい。樹脂エマルジョンの含有量は、インク組成物100質量部中3質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以下であることが更に好ましく、0質量部であることが最も好ましい。樹脂エマルジョンの含有量が3質量部以下であることにより、化粧板用印刷基材中の空気を効果的に抜けるようにすることが可能となり、ブリスターの発生を効果的に抑制することができる。
水性型のインク組成物に含有されるバインダー樹脂は、所望の耐水性を示すことができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン(シリコン)樹脂、アクリルアミド樹脂、エポキシ樹脂、硝化綿等のセルロース系樹脂或いはこれらの共重合樹脂や混合物を用いることができる。これらのものは耐水性に加えて耐溶剤性も向上させることができる点で好ましい。中でも、耐水性及び耐溶剤性を向上させることができ、特にインクジェット方式でインク組成物を吐出する場合に於いては、高速印刷時の吐出応答性を向上する点、及び吐出安定性を向上させることができることから、アクリル樹脂を含むものであることが好ましい。
アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルモノマーを構成するモノマーの主成分として含むものであれば特に限定されるものではない。(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、公知の化合物を使用することができ、単官能の(メタ)アクリル酸エステルを好ましく用いることができる。例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル等を挙げることができる。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸-iso-プロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸-sec-ブチル、(メタ)アクリル酸-iso-ブチル、(メタ)アクリル酸-tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸-iso-オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸-iso-ノニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-2-メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸プロパギル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸アントラセニル、(メタ)アクリル酸アントラニノニル、(メタ)アクリル酸ピペロニル、(メタ)アクリル酸サリチル、(メタ)アクリル酸フリル、(メタ)アクリル酸フルフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ピラニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェネチル、(メタ)アクリル酸クレジル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシシクロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸-1,1,1-トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロ-n-プロピル、(メタ)アクリル酸パーフルオロ-iso-プロピル、(メタ)アクリル酸ヘプタデカフルオロデシル、(メタ)アクリル酸トリフェニルメチル、(メタ)アクリル酸クミル、(メタ)アクリル酸-3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-シアノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸トリエトキシシリルプロピル、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリル酸エステル類、等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の両者を意味するものである。これらのモノマーは、三菱レイヨン(株)、日本油脂(株)、三菱化学(株)、日立化成工業(株)等から入手することができる。
市販の樹脂エマルジョンとしては、例えば、アクリットWEM-031U、WEM-200U、WEM-321、WEM-3000、WEM-202U、WEM-3008、(大成ファインケミカル(株)製、アクリル-ウレタン樹脂エマルジョン)、アクリットUW-550CS、UW-223SX、AKW107、RKW-500(大成ファインケミカル(株)製、アクリル樹脂エマルジョン)、LUBRIJET N240(ルーブリゾール製、アクリル樹脂エマルジョン)、スーパーフレックス150、210、470、500M、620、650、E2000、E4800、R5002(第一工業製薬(株)製、ウレタン樹脂エマルジョン)、ビニブラン701FE35、701FE50、701FE65、700、701、711、737、747(日信化学(株)製、塩ビ-アクリル樹脂エマルジョン)、ビニブラン2706、2685(日信化学(株)製、アクリル樹脂エマルジョン)、モビニール743N、6600、7470、7720、(日本合成化学(株)製、アクリル樹脂エマルジョン)、PRIMAL AC-261P、 AC-818(ダウ・ケミカル社製 アクリル樹脂粒子エマルジョン)等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
水性型のインク組成物において、インク組成物100質量部中に含まれるバインダー樹脂(樹脂エマルジョン)の質量部は、所望の耐水性及び耐溶剤性を有する化粧板を形成可能であれば特に限定されるものではないが、例えば、インク組成物100質量部に0.05質量部以上であることが好ましく、中でも、0.1質量部以上であることが好ましく、更に0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上より好ましい。インク組成物100質量部に20質量部以下であることが好ましく、中でも、15質量部以下であることが好ましい。
[界面活性剤]
水性型のインク組成物において、その他の添加剤として界面活性剤が含有されていてもよい。水性型のインク組成物において用いることのできる界面活性剤は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリシロキサン化合物、アニオン系界面活性剤、非イオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アルキレンオキサイド変性アセチレングリコール系界面活性剤、アルキレンオキサイド非変性アセチレングリコール系界面活性剤等を挙げることができる。
水性型のインク組成物においては、中でも、アルキレンオキサイド非変性アセチレングリコール系界面活性剤、アルキレンオキサイド変性アセチレングリコール系界面活性剤、及びポリシロキサン化合物のいずれかを、表面張力調整剤として含むことが、インクの化粧板用印刷基材に対する濡れ広がり性をより優れたものとすることができるため、好ましい。
<2-2.溶剤型のインク組成物>
溶剤型のインク組成物とは、水を含有せず、有機溶剤(有機溶媒)を主成分とするインク組成物である。本明細書における溶剤型のインク組成物において「水を含有しない」とは、水を意図的に含有させずに製造されたインク組成物であることを意味し、例えば大気中等に含有される水蒸気等や添加剤に含有される水等に起因するような製造者が意図しないような原因により含有されてしまうような水は考慮しない。
[有機溶剤]
溶剤型のインク組成物において、上述した水性型のインク組成物に含有される有機溶剤と同様の有機溶剤を使用することができる。
[バインダー樹脂]
溶剤型のインク組成物には樹脂を含有する。インク組成物に樹脂を含有することで、インク組成物により形成される加飾層の耐水性が向上する。バインダー樹脂としては、特に限定はなく、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ウレタン樹脂、ロジン変性樹脂、フエノール樹脂、テルペン系樹脂、ポリアミド樹脂、ビニルトルエン-α-メチルスチレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル系共重合体、セルロースアセテートブチレート、シリコーン(シリコン)樹脂、アクリルアミド樹脂、エポキシ樹脂、或いはこれらの共重合樹脂や混合物を用いることができる。
溶剤型のインク組成物においては、中でも、耐水性及び耐溶剤性を向上させることができ、特にインクジェット方式でインク組成物を吐出する場合に於いては、高速印刷時の吐出応答性を向上する点、及び吐出安定性を向上させることができることから、アクリル樹脂を含むものであることが好ましい。
アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーを構成するモノマーの主成分として含むものであれば特に限定されるものではなく、上述の水性型のインク組成物と同様のものを用いることができる。アクリル樹脂は、1種のラジカル重合性モノマーの単独重合体であってもよいし、ラジカル重合性モノマーを2種以上選択して用いた共重合体のいずれであってもよく、特に、溶剤型のインク組成物として好ましいアクリル樹脂は、メタクリル酸メチル単独の重合体、或いは、メタクリル酸メチルと、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エトキシエチル、及びメタクリル酸ベンジルよりなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の化合物との共重合体である。
溶剤型のインク組成物において、インク組成物100質量部中に含まれるバインダー樹脂の質量部は、特に限定されるものではないが、例えば、インク組成物中に0.05質量部以上であることが好ましく、中でも、0.1質量部以上であることが好ましく、更に0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましい。インク組成物100質量部中に含まれる樹脂の質量部は、特に限定されるものではないが、例えば、インク組成物中に20質量部以下であることが好ましく、中でも、15質量部以下であることがより好ましい。
[分散剤]
溶剤型のインク組成物において必要に応じて分散剤を用いてもよい。分散剤としては、従来公知の溶剤型のインク組成物において用いられている任意の分散剤を用いることができる。分散剤としては、高分子分散剤(樹脂)を用いるとよい。こうした分散剤としては、主鎖がポリエステル系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリアミン系、ポリカプロラクトン系などからなり、側鎖としてアミノ基、カルボキシル基、スルホン基、ヒドロキシル基などの極性基を有するものである。ポリアクリル系分散剤では、例えば、Disperbyk-2000、2001、2008、2009、2010、2020、2020N、2022、2025、2050、2070、2095、2150、2151、2155、2163、2164、BYKJET-9130、9131,9132,9133,9151(ビック・ケミー社製)が用いられる。ポリカプロラクトン系分散剤では、例えば、アジスパーPB821、PB822、PB881(味の素ファインテクノ(株)製)が用いられる。好ましい分散剤としては、ポリエステル系分散剤であり、例えばヒノアクトKF-1000、T-6000、T-7000、T-8000、T-8000E、T-9050(川研ファインケミカル(株)製)、Solsperse20000、24000、32000、32500、32550、32600、33000、33500、34000、35200、36000、37500、39000、71000(ルーブリゾール社製)、フローレンDOPA-15BHFS、17HF、22、G-700、900、NC-500、GW-1500(共栄社化学(株)製)、Efka4310、4320、4330、4401、4402、4403N、4570、7411、7477、7700(BASF社製)の単独、又はそれらの混合物を用いることができる。
[界面活性剤]
又、溶剤型のインク組成物においては、ノズル部やチューブ内等の機器内での溶剤型のインク組成物の揮発抑制、固化防止、又、固化した際の再溶解性を目的として、室温、大気圧下で液状の非イオン性ポリオキシエチレン誘導体を添加してもよい。例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類であるノニオンP-208、P-210、P-213、E-202S、E-205S、E-215、K-204、K-220、S-207、S-215、A-10R、A-13P、NC-203、NC-207(日本油脂(株)製)、エマルゲン106、108、707、709、A-90、A-60(花王(株)製)、フローレンG-70、D-90(共栄社化学(株)製)、ポエムJ-0081HV(理研ビタミン(株)製)、アデカトールNP-620、NP-650、NP-660、NP-675、NP-683、NP-686、アデカコールCS-141E、TS-230E((株)アデカ製)等、ソルゲン30V、40、TW-20、TW-80、ノイゲンCX-100(第一工業製薬(株)製)等が例示される。
界面活性剤としては、上記に限られずアニオン系、カチオン系、両性又は非イオン系のいずれの界面活性剤も用いることができ、添加目的に合わせて適宜選択されればよい。
<2-3.マゼンタインク>
本実施の形態に係るマゼンタインクは、キナクリドン系顔料を含有する顔料と、樹脂と、を含有し、顔料(P)と樹脂(V)との含有比P/Vは、質量比で2.0以上、好ましくは2.5以上、より好ましくは3.0以上、さらに好ましくは3.5以上であり、好ましくは7.0以下、より好ましくは6.8以下である。キナクリドン系顔料の含有量は、マゼンタインク100質量部中4.0質量部以上が好ましく、より好ましくは5.0質量部以上、さらに好ましくは5.5質量部以上であり、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。さらに、このマゼンタインクは、600×600dpi、12pl、マゼンタインク100%の印刷パターンで化粧板用印刷基材の表面にインクジェット方式にて吐出したときのOD値が0.50以上、好ましくは0.55、より好ましくは0.60である。このようなマゼンタインクであれば、化粧板用印刷基材の表面にインク受容層を積層しない場合であっても、裏抜けやブリスターの発生を抑制することができる。
<2-4.イエローインク>
本実施の形態に係るイエローインクは、イソインドリノン系顔料を含有する顔料と、樹脂と、を含有し、顔料(P)と樹脂(V)との含有比P/Vは、質量比で2.0以上、好ましくは2.5以上、より好ましくは2.8以上であり、好ましくは、7.0以下、より好ましくは6.0以下である。イソインドリノン系顔料の含有量は、イエローインク100質量部中4.0質量部以上が好ましく、より好ましくは5.0質量部以上、さらに好ましくは5.5質量部以上であり、好ましくは20.0質量部以下、より好ましくは15.0質量部以下である。さらに、このイエローインクは、600×600dpi、12pl、イエローインク100%の印刷パターンで化粧板用印刷基材の表面にインクジェット方式にて吐出したときのOD値が0.40以上、好ましくは0.45以上、より好ましくは0.50以上である。このようなイエローインクであれば、化粧板用印刷基材の表面にインク受容層を積層しない場合であっても、裏抜けやブリスターの発生を抑制することができる。
<3.化粧板用印刷基材>
化粧板用印刷基材とは、上記のインクセットに含まれる少なくとも1つのインク組成物に使用される化粧板の印刷用の基材である。斯かる基材としては、液状樹脂組成物の含侵性の有る纖維質の材料(繊維質基材)が好ましい。例えば、各種の紙、不織布、織布等が使用できるが、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂の未硬化液状組成物を含侵した後、含侵組成物を硬化させて所謂「熱硬化性樹脂化粧板」を得る場合は、代表的な例としては、原紙に酸化チタンの粒子が抄き込まれたチタン紙を用いることができる。これら化粧板用印刷基材の坪量は、50~200g/m程度、一般的には、80~120g/m程度とされる。所望の加飾層を積層した化粧板用印刷基材には、更に、例えばメラミン-ホルムアルデヒド樹脂溶液などの熱硬化性樹脂の未硬化液状組成物を含浸した後、加熱及び加圧等により含侵した該組成物を硬化せしめて化粧板とすることができる。加飾層表面の耐擦傷性等の耐久性を向上させる為に、加飾層を積層した化粧板用印刷基材の該加飾層上に、例えばメラミン-ホルムアルデヒド樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸した紙をオーバーレイ紙として積層することができる。
基材としてチタン紙を用いる場合には、溶媒として水を主成分とする水性型のインク組成物を使用することが好ましい。水を主成分とするインク組成物であれば、液状の熱硬化性樹脂の未硬化組成物を加飾層が積層されたチタン紙に含侵する工程で、この基材中の紙纖維間に存在している空気が液状組成物に多く置換されることとなる。これにより、熱硬化性樹脂化粧板の成型時や成型後の加熱する工程において、纖維間における残留空気の熱膨張に起因して発生するスポット状の微小な膨れやへこみ(ブリスター)を効果的に抑制することができる。特に、この未硬化組成物が水を溶媒又は分散媒に含む場合には、ブリスターの発生をより効果的に抑制することができる。
さらに、水を主成分とするインク組成物は、化粧板用印刷基材に対する浸透性が低いことから、インク組成物が基材裏面(基材の加飾層形成側とは反対側の面)側へ浸透することが抑制され、より効果的に裏抜けを抑制することができる。
尚、ここで、熱硬化性樹脂化粧板に用いられる熱硬化性樹脂としては、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等を挙げることができる。
<4.インク組成物の加飾層>
加飾層とは、被転体に杉、松、欅等の天然の木材板表面と同じ木目調の図柄などの意匠外観を与える層である。上記のインクセットに含まれる少なくとも1つのインク組成物から水や有機溶媒を揮発させて加飾層となる。
加飾層は、その平面視形状、即ち該積層体をその厚み方向(加飾層の法線方向でもある)から観察した形状が所望の意匠外観を与える。斯かる意匠外観としては、木目調の図柄の他にも花崗岩、大理石等の天然の石材面の図柄、即ち、石目模樣、各種纖維の糸から織られ或いは編まれ、必要に応じて、各種の色や模樣上に染色したり、刺繍された織布の表面の図柄、即ち、布目模樣、天然皮革の表面の図柄、即ち、革シボ(革絞)模樣、花柄模様、水玉模様、縞模樣、雷紋模樣、唐草模様、各種幾何学模様のような所謂抽象模樣柄を挙げることができる。
加飾層の層厚(乾燥状態)は、特に限定されるものではないが、例えば0.5μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましい。尚、加飾層の層厚の上限は特に制限はないが、生産性の観点から、例えば100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。
加飾層には、着色顔料、着色染料、光安定化剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤等が含有されていてもよい。着色顔料は、有機顔料又は無機顔料を挙げることができるが、加飾層における耐候性の観点から無機顔料を含有してもよい。
<5.表面保護層>
この積層体においては、必要に応じて加飾層の表面上に、更に、透明な表面保護層を積層してもよい。表面保護層は、樹脂層の積層、塗膜の塗工、又は樹脂層の積層と塗膜の塗工の併用により形成することができる。いずれの場合に於いても、表面保護層は、該層を透視して加飾層を視認可能な程度の透明性を有するものであればよく、無色透明、着色透明のいずれであってもよい。
表面保護層に用いる樹脂層としては、基材の例示に於いて、先に例示した樹脂の中から適宜選択することができる。
塗膜の塗工の場合には、例えば、熱硬化型ウレタン樹脂、熱硬化型ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等の公知の熱硬化型樹脂(1液硬化型又は2液硬化型のもの)、紫外線、電子線等の電離放射線の照射により架橋乃至重合するアクリル酸エステル系、エポキシ系、不飽和ポリエステル系等の公知の電離放射線硬化型樹脂等の中から適宜選択することができる。塗膜の厚さは、通常、1μm以上100μm以下程度(硬化後の膜厚)とすることができる。
又、上記の基材や加飾層と組み合わせて必要に応じて更に、加飾層上への塗工、他の基材との積層、エンボス加工等による賦形、樹脂含侵、加熱処理、加圧処理、所望の形状及び寸法への裁断乃至切り抜き、粘着剤乃至接着剤層の形成等の加工や処理を施した上で、各種用途に用いることもできる。
<6.印刷方法>
上記のインクセットに含有されるインク組成物を基材の表面に転移する印刷方法は、インクジェット方式、オフセット方式、グラビア方式、スプレー方式、又は刷毛塗り方式等を挙げることができる。小ロット多品種に対応できる点でインクジェット方式にて転移(吐出)する印刷方法であることが好ましい。なお、本明細書中の「基材上」とは、基材の表面に直接形成する態様及び基材の表面にプライマー層等の他の層を介して形成する態様の双方を含む。
インクジェット方式にて吐出する印刷方法は、特に限定されるものではないが、ピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等の従来公知の方式を挙げることができる。印刷装置が備えるインクジェットヘッドは特に限定されず、シリアルヘッドであってもラインヘッド型であってもよい。
<7.化粧板>
化粧板は、上記の化粧板用印刷基材の表面にインク組成物の加飾層が積層されたシートに熱硬化性樹脂の未硬化物である液状組成物(メラミン樹脂化粧板の場合であれば、メラミン樹脂の未硬化物であるメチロールメラミンを含有する液状組成物)を含浸して、加熱或いは加熱プレス加工して、することにより得ることができる。
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
<インク組成物の調整>
顔料、樹脂(顔料分散剤、樹脂エマルジョン)、有機溶剤、界面活性剤、水(イオン交換水)を用いて下記表のように実施例及び比較例のインク組成物(インクセット)を調整した。各成分の数字は質量部を意味する。なお、「顔料」と「樹脂」は固形分の質量部を意味する。
Figure 0007288358000001
Figure 0007288358000002
表1、2中「P.Bk7」とは、C.I.ピグメントブラック7(カーボンブラック)を意味する。なお、この「P.Bk7」は顔料(P)である。
表1、2中「P.B15:3」とは、C.I.ピグメントブルー15:3(フタロシアニン)を意味する。なお、この「P.B15:3」は顔料(P)である。
表1、2中「P.V19」とは、C.I.ピグメントバイオレット19(キナクリドン系顔料)を意味する。なお、この「P.V19」は顔料(P)である。
表1、2中「P.R.177」とは、C.I.ピグメントレッド177(アントラキノン系顔料)を意味する。なお、この「P.R.177」は顔料(P)である。
表1、2中「P.Y.110」とは、C.I.ピグメントイエロー110(イソインドリノン系顔料)を意味する。なお、この「P.Y.110」は顔料(P)である。
表1、2中「P.Y.155」とは、C.I.ピグメントイエロー155(アゾ系顔料)を意味する。なお、この「P.Y.155」は顔料(P)である。
表1、2中「分散剤」とは、DISPERBYK-190(ビックケミー社製)を意味する。そして、このDISPERBYK-190(分散剤)は樹脂(V)であり、低分子の繰り返し構造を有する重合体(高分子)に該当する。
表1、2中「アクリルEm」とは、PRIMAL AC-261P(ダウ・ケミカル社製)のバインダー樹脂(エマルジョン樹脂)を意味する。そして、このバインダー樹脂(エマルジョン樹脂)は樹脂(V)であり、低分子の繰り返し構造を有する重合体(高分子)に該当する。
表1、2中「1,3-PD」とは、1,3-ペンタンジオール(沸点:210℃)を意味する。
表1、2中「PEG200」とは、ポリエチレングリコール(沸点:250℃)を意味する。
表1、2中「GLY」とは、グリセリン(沸点:290℃)を意味する。
表1、2中「Dynol 604(エボニック社製)」とは、2,5,8,11-テトラメチル-6-ドデシン-5,8-ジオール,エトキシラテドを意味する。
表1、2中の「P/V」とはインク組成物中の顔料(P)と樹脂(V)との含有比(質量比)を意味する。
表1、2、4中の「Bk」とは、ブラックインクを意味し、「Cy」とは、シアンインクを意味し、「Mg」とは、マゼンタインクを意味し、「Ye」とは、イエローインクを意味する。「Mg」及び「Ye」については表3においても同様の意味である。
[評価1]
実施例及び比較例のインクセットを用いて「OD値」、「平均粒径」、「発色性」、「ブリスター」、「耐候性」を確認した。
表1、2中の「OD値」とは、600×600dpi、12pl、インク組成物100%の印刷パターンで化粧板用印刷基材(KJ特殊紙社製 KSH-801P)の表面に室温環境下でインクジェット方式にて吐出したときのOD値である。OD値は、X-Rite eXact(エックスライト社製)を用い、視野角2°、測定範囲 4mmφ、D65光源の条件で反射濃度を測定することにより求めた。
表1、2中の「平均粒径」とは、インク組成物中の顔料の粒径を意味し、大塚電子(株)製、型式:FPAR-1000を用いて測定した平均粒径である。
[発色性試験]
実施例及び比較例のインクセットについて発色性試験を行った。具体的には、化粧板の加飾層が設けられた面側から目視により観察し、下記評価基準により評価をした。
(評価基準)
○:濃度が高く、発色性が良好
×:濃度が低く、発色性が劣る(実用上問題あり)
[ブリスター試験]
実施例及び比較例のインクセットについてブリスター試験を行った。具体的には、上下熱盤間に介在させた金属鏡面板の間に、インクジェット方式にて吐出することにより加飾層が積層された化粧板、メラミン樹脂の未硬化物であるメチロールメラミンを含有する液状組成物を含浸したオーバーレイ紙、コア紙を重ねて150℃、14MPa(約140kgf/cm)、20分の条件で加熱圧縮して熱プレス成形した際のブリスター発生を目視により観察し、下記評価基準により評価をした。
(評価基準)
○:ブリスター発生無し
×:ブリスター発生有り
[耐候性試験]
実施例及び比較例のインクセットについて耐候性試験を行った。具体的には、加飾層が積層された化粧板をJIS K 7350-2に準拠した試験を行い、キセノンアークウェザオメーターに500h暴露後の外観変化によって評価した。
具体的には、耐候性試験前と試験後の加飾層を、エックスライト社製x-rite eXactを用い、D65光源、2°視野角の条件によってLを測定した。試験前後のLの差をΔL、試験前後のaの差をΔa、試験前後のbの差をΔb、とした時、ΔE=〔(ΔL+(Δa+(Δb1/2により算出されるΔEにより評価をした。
(評価基準)
○:500h暴露後のΔEが10未満
×:500h暴露後のΔEが10以上
表1、2より、インク組成物における顔料(P)と樹脂(V)との含有比P/V及び所定の印刷パターンにおける印刷表面のOD値が特定されたインク組成物(インクセット)であれば、化粧板用印刷基材の表面に直接積層した場合であっても、ブリスターの発生を抑制し、化粧板は耐候性が高いものであることがわかる。
なお、樹脂エマルジョンを含むインク組成物を含む実施例3と、樹脂エマルジョンを含まないインク組成物を含む実施例1,2と、の間で、ブリスターの発生について有意差は確認できなかった。しかしながら、実施例1,2のインクセットは、樹脂エマルジョンの含有量がインク組成物100質量部中0質量部であることから、実施例3のインクセットと比べて、よりブリスターの発生を効果的に抑制することができることが推認される。今回は室温環境で評価を行ったが、例えば、より高温高湿環境のようなブリスターが発生しやすい環境下で評価を行った場合には、実施例1,2のインクセットと実施例3のインクセットとの間ではブリスターの発生に有意差が出るものと推認される。
[評価2]
実施例及び比較例のインクセットについて裏抜け試験を行った。具体的には、実施例及び比較例の各インクセットに含まれるマゼンタインク組成物について、化粧板用印刷基材の表面にOD値が0.5となるように、化粧板用印刷基材の表面にインクジェット方式にて吐出して化粧板を製造し、裏抜けの有無を観察し、下記評価基準により評価をした。評価結果を表3に示す。
同様に、実施例及び比較例の各インクセットに含まれるイエローインク組成物について、化粧板用印刷基材の表面にOD値が0.4となるように、化粧板用印刷基材の表面にインクジェット方式にて吐出して化粧板を製造し、裏抜けの有無を観察し、下記評価基準により評価をした。評価結果を表3に示す。
(評価基準)
○:裏抜けなし
×:裏抜けあり(インクがしみ通っている)
Figure 0007288358000003
表1、2中の「OD値」が所定値(マゼンタは0.5、イエローは0.4)未満であった比較例2のマゼンタインク、比較例2のイエローインク、比較例3のイエローインクは、「OD値」が所定値になるように化粧板用印刷基材の表面にインクジェット方式にて吐出して化粧板を製造したときには、裏抜けが発生していることが分かる。
[評価3]
実施例1におけるインクセットの複数のインク組成物を用いて化粧板用印刷基材に印刷をした。そして化粧板用印刷基材の表面に積層し、「ブリスター」と「耐候性」と「裏抜け」とをそれぞれ上記同様に評価をした。
Figure 0007288358000004
表4より、インク組成物における顔料(P)と樹脂(V)との含有比P/V及び所定の印刷パターンにおける印刷表面のOD値が特定されたインク組成物(インクセット)であれば、複数のインク組成物を用いて化粧板用印刷基材に印刷をした場合であっても同様にブリスターの発生及び裏抜けを抑制し、その化粧板は耐候性が高いものであることがわかる。

Claims (9)

  1. 少なくともマゼンタインク及びイエローインクを含む化粧板用のインクセットであって、
    前記マゼンタインクは、キナクリドン系顔料を含有する顔料と、樹脂と、を含有し、前記顔料(P)と前記樹脂(V)との含有比P/Vは、質量比で2.0以上であり、
    前記イエローインクは、イソインドリノン系顔料を含有する顔料と、樹脂と、を含有し、前記顔料(P)と前記樹脂(V)との含有比P/Vは、質量比で2.0以上であり、
    前記マゼンタインクは、該マゼンタインクに含有される顔料を分散する高分子分散剤を含有し、
    前記イエローインクは、該イエローインクに含有される顔料を分散する高分子分散剤を含有し、
    600×600dpi、12pl、前記マゼンタインク100%の印刷パターンで化粧板用印刷基材の表面にインクジェット方式にて吐出したときのOD値が0.5以上であり、
    600×600dpi、12pl、前記イエローインク100%の印刷パターンで化粧板用印刷基材の表面にインクジェット方式にて吐出したときのOD値が0.4以上である
    インクセット。
  2. 前記キナクリドン系顔料の含有量はマゼンタインク100質量部中4質量部以上であり、
    前記イソインドリノン系顔料の含有量はイエローインク100質量部中4質量部以上である
    請求項1に記載のインクセット。
  3. さらに、シアンインク及びブラックインクを含む
    請求項1又は2に記載のインクセット。
  4. 前記マゼンタインクに含有される前記キナクリドン系顔料はPigment Violet 19であり、
    前記イエローインクに含有される前記イソインドリノン系顔料はPigment Yellow 110である
    請求項1から3のいずれかに記載のインクセット。
  5. インクジェット方式によって化粧板用印刷基材の表面に吐出される
    請求項1から4のいずれかに記載のインクセット。
  6. インクセットに含まれるインク組成物は水性型のインク組成物である
    請求項1から5のいずれかに記載のインクセット。
  7. インクセットに含まれるそれぞれのインク組成物に含有される水溶性有機溶媒の含有量は、インク組成物100質量部中20質量部以上55質量部以下であり、
    インクセットに含まれるそれぞれのインク組成物に含まれる沸点が250℃以上の水溶性有機溶媒の含有量は、インク組成物100質量部中15質量部以下である
    請求項6に記載のインクセット。
  8. 請求項1から7のいずれかに記載のインクセットに含まれる少なくとも1つのインク組成物の加飾層が化粧板用印刷基材の表面に形成された化粧板。
  9. 請求項1から7のいずれかに記載のインクセットに含まれる少なくとも1つのインク組成物をインクジェット方式にて化粧板用印刷基材の表面に吐出する化粧板の製造方法。

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