ところで、一般的に、ドレーンの先端は軟弱地盤層下の下部地盤層(例えば砂層)まで打設する。アンカーは下部地盤に食い込む形で把駐力を発揮してドレーン材の共上がりを防止している。アンカーは鉄板製でマンドレル断面よりも小さいサイズのものが使われている。
しかし、下部地盤が被圧水状態の場合や真空圧密工法の施工ではドレーン先端を下部地盤層まで打設しない。すなわち、真空圧密工法では軟弱地盤に対し、ドレーン材を通して真空圧を付与するので、ドレーン材の先端が透水性下部地盤層に接していると、その透水性下部地盤層内の水を吸引してしまい、圧密に関係ない透水性地層の水を大量に吸引してしまうことにより真空圧の低下を招くという問題があった。
この問題に対しては、ドレーン材の先端は透水性下部地盤層の上から約1.5mの高さの軟弱地盤内に深度設定されることが好ましいことが判明している。
また、軟弱地盤層厚が打設機の施工限界を超える場合もある。
しかし、アンカーを軟弱地盤層内に留める場合は、一般的なアンカーでは把駐力が不足してマンドレルを引き抜く際にドレーン材の共上がりが発生するという問題があった。
この対策には、古いワイヤを切断して使用したり、厚手のアンカープレートを使用したり、これらを組み合わせているが、いずれもアンカープレートを大きくできず、重いアンカーを用意するしかない現状にある。その理由は、大きいアンカープレートでは、マンドレルの打設抵抗が大きく打設困難になる。無理に押し込めば鉄製のアンカープレートが曲がって押し込まれ、マンドレルを引き上げても変形したままで把駐力を発揮できないためである。
このような多様なアンカーを事前に用意しておくことは合理的でなく、結局、工事毎に試作することで対応している。
かつて、金型で製造されドレーン材との把持部も含めて一体構造したポリエチレン製のアンカーが使用されていたことがある。サイズは一種類で軟弱地盤層下の硬い下部地盤層に定着させるものであった。
通常のアンカープレートでは把駐力が不足するとき、アンカープレートのサイズを変更するだけで対応できる構造のアンカーが望ましい。
そこで、本発明の目的は、上述したような従来の技術の実状に鑑み、上部地盤層と下部地盤層との間に存在する軟弱な改良対象地盤層に、ドレーン材とともに地表面からマンドレルにより容易に打設することができ、マンドレルの引き上げに際して共上がりすることなく、改良対象地盤層内において必要な把駐力を発揮することができるアンカープレート、アンカー装置及び軟弱地盤改良システムを提供することにある。
本発明のさらに他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下において図面を参照して説明される実施の形態から一層明らかにされる。
本発明では、上部地盤層と下部地盤層との間に存在する軟弱な改良対象地盤層に、ドレーン材とともに地表面からマンドレルにより容易に打設することができ、マンドレルの引き上げに際して共上がりすることなく、改良対象地盤層内において必要な把駐力を発揮することができるようにするために、適度な剛性をもった弾塑性的性質の材料から成る平板をアンカープレートとして用いることにより、アンカープレートは大型でもドレーン打設時にはマンドレル先端に沿って屈曲し、マンドレル引き上げ時には元の形に近い状態に戻ることができるようにする。すなわち、上部地盤層と下部地盤層との間に存在する軟弱な改良対象地盤層に、ドレーン材の先端部に取付けられて地表面からマンドレルにより打設される際に、マンドレル先端の扁平した尖塔状の貫入部の形状に倣ってアンカープレートが有底V面状に変形することによって、打設抵抗が大きくならないようにする。そして、上記改良対象地盤層内に配設された状態ではアンカープレートが拡開した有底V面状に変形することによって、把駐力を発揮できるようにする。アンカープレートの材料としては、適度な剛性をもった弾塑性的性質の合成樹脂材料(例えばポリエチレン)を使用する。アンカー装置はアンカープレートとドレーン材を把持するための把持部品で構成され、把持部品は通常のアンカーの部品と同じもの使用するものとすることができる。適度な剛性をもった弾塑性的性質の合成樹脂材料からなるアンカープレートは、ドレーン材の先端を把持するための把持部品に取付けられて、ドレーン材のアンカーとして機能する。
すたわち、本発明は、上部地盤層と下部地盤層との間に存在する軟弱な改良対象地盤層に、ドレーン材を地表面からマンドレルにより打設して、上記改良対象地盤層内の土壌間隙水を上記ドレーン材を介して排水することにより地盤を改良する軟弱地盤改良システムにおける上記ドレーン材の先端部に取付けられて、上記マンドレルにより上記ドレーン材とともに打設されて上記改良対象地盤層内に配設されるアンカープレートであって、上記ドレーン材が挿通される開口が設けられた上記マンドレル先端の扁平した尖塔状の貫入部の長辺の長さL0に略等しい長さL1の短辺と長さL2(L1≦L2)の長辺を有する矩形状に形成され、上記マンドレルにより上記ドレーン材とともに打設される際に、上記貫入部により押圧される長辺方向の中央部分から両端側が上記貫入部の形状に倣って変形し、上記改良対象地盤層内に配設された状態では拡開した有底V面状に弾塑性変形することにより、上記マンドレルを引き上げる際に共上がり防止するアンカーとして機能する弾塑性変形可能な平板からなることを特徴とする。
本発明に係るアンカープレートにおいて、上記平板は、上記短辺の長さL1が150mmのとき弾性係数Eと断面二次モーメントIの積E・Iが1.2MN・mm2から2.2MN・mm2程度の合成樹脂板であるものとすることができる。
本発明に係るアンカープレートにおいて、上記平板は、厚さ4mm乃至6mm程度のポリエチレン板であるものとすることができる。
また、本発明は、アンカー装置であって、上記本発明に係る何れか一つのアンカープレートと、ドレーン材の先端部を把持する把持部品とからなり、上記アンカープレートが上記把持部品を介して上記ドレーン材の先端部に取り付けられることを特徴とする。
さらに、本発明は、軟弱地盤改良システムであって、上部地盤層と下部地盤層との間に存在する軟弱な改良対象地盤層に、上記本発明に係るアンカー装置をドレーン材の先端部に取付けてマンドレルにより上記ドレーン材とともに地表面から打設して、上記改良対象地盤層内の土壌間隙水を上記ドレーン材を介して排水することにより地盤を改良することを特徴とする。
本発明では、マンドレル先端の扁平した尖塔状の貫入部の長辺L0の長さに略等しい長さL1の短辺と長さL2(L1≦L2)の長辺を有する矩形状に形成された弾塑性変形可能な平板からなるアンカープレートが、上部地盤層と下部地盤層との間に存在する軟弱な改良対象地盤層に、ドレーン材とともにマンドレルにより地表面から打設される際に、上記形貫入部により押圧される長辺方向の中央部分から両端側が上部地盤層内では上記貫入部の形状に倣って変形することによってマンドレルの圧入抵抗が小さくなり、上記改良対象地盤層内に配設された状態では拡開した有底V 面状に弾塑性変形することにより、上記マンドレルを引き上げる際に共上がり防止するアンカーとして機能する。
したがって、上部地盤層と下部地盤層との間に存在する軟弱な改良対象地盤層に、ドレーン材とともにアンカープレートを地表面からマンドレルにより容易に打設することができ、マンドレルの引き上げに際して共上がりすることなく、改良対象地盤層内において必要な把駐力を発揮することができるアンカープレート、アンカー装置及び軟弱地盤改良システムを提供することができる。
すなわち、本発明によれば、適度な剛性と弾塑性的な特性を有する平板を使用することで、アンカープレートのサイズを選択することで共上がりしないアンカーを得ることができ、工事の度に種々の比較検討を実施する必要がなくなる。
さらに、アンカーの使用実績が増えれば、事前のボーリング調査から試験施工をしなくてもアンカープレートの適切なサイズを判断できるようになる。
また、本発明に係るアンカー装置では、アンカープレートとドレーン材を把持する把持部品とがそれぞれ分かれていることにより、事前に複数のアンカーを用意する必要が無くなる。アンカープレートは、板を切断するだけで簡単に作成することができ、施工現場において最適サイズのものを適宜採用することができる。把持部品は通常使用するアンカーのものをそのまま使用できる。
以下、本発明に係るアンカープレート及びそれを用いた軟弱地盤改良システムの実施の形態を図面を参照にして詳細に説明をする。
本発明は、例えば、図1に示すようなドレーン材打設装置50を用いて、図2に示すように、上部地盤層1と下部地盤層2との間に存在する軟弱な改良対象地盤層3に、ドレーン材10を地表面からマンドレル20により打設して、改良対象地盤層3内の土壌間隙水をドレーン材10を介して排水することにより地盤を改良する軟弱地盤改良システム100に適用される。
図2は、ドレーン材打設装置50によりドレーン材10をアンカープレート40とともに打設する工程を示す図であり、(A)は打設開始直前の状態、(B)はマンドレル20先端の貫入部21が上部地盤層1内に圧入されている状態、(C)は上部地盤層1を通過したマンドレル20先端の貫入部21が上部地盤層1と下部地盤層2との間に存在する軟弱な改良対象地盤層3に圧入されている状態、(D)はマンドレル20先端の貫入部21が改良対象地盤層3内の目標位置に到達した状態、(E)は先端の貫入部21が改良対象地盤層3内の目標位置に到達したマンドレル20を引き上げている状態、(F)はマンドレル20を引き上げて改良対象地盤層3内へのドレーン材10の打設を完了した状態、をそれぞれ模式的に示している。
図1は、ドレーン材打設装置50を主に外観から説明するための側面図(地下のみ断面図)であり、(A)は全体図、(B)は打設ポイント近傍90の拡大断面図である。このドレーン材打設装置50の構成および動作を説明するための模式説明図を図3に示してある。
ドレーン材打設装置50は、図1(A)に示すように、30mを超えて直立するタワー59を伴う重機の台座52(図3)が、人の歩行速度くらいで移動可能なキャタピラ装置51で懸架されており、鉛直に静止した状態のタワー59に沿ってマンドレル20を地中に圧入する。ドレーン材打設装置50は、マンドレル20に挿通したドレーン材10を毎秒0.3m位の速度で、最大打込深度30m近くまで打設することが可能である。
ドレーン材打設装置50は、上述したタワー59およびマンドレル20のほか、図3に示すように、油圧装置と、制御部53と、油圧抵抗検出器54と、ドレーンリール55と、バックテンション装置56と、打設長検出器57と備えて構成されている。長尺形状そのままのドレーン材では、輸送や取り扱いに不便であるため、ドレーンリール55に巻き取りと送り出しを可能に巻回されている。
油圧装置は、マンドレル20を地中に圧入するため、タワー59に対して下向きに15t位の貫入圧を発生させる。制御部53は、打設長検出器57および油圧抵抗検出器54の各検出出力に基づいて、マンドレル20の貫入圧により規定どおりの打設深度にドレーン材10を打設することが可能である。
図4はドレーン材10の構造を説明するために一部断裁した斜視図である。
ドレーン材10は、図4に示すように、改良対象地盤層3中の間隙水が通る芯材18と、芯材18の周囲に設けられ改良対象地盤層3中の間隙水が透過するフィルタ19とを有する。芯材18は、長尺体の両面に長手方向に亘る隔壁が幅方向に複数立設されることにより、長手方向に改良対象地盤層3内の水分の通水路となる溝18aが複数形成されている。この芯材18は、地盤沈下へ追随する可撓性と、変形しても通水性能を維持する材料である。この可撓性により長尺ものを供給容易なリール巻きにできるため、コンパクトで運搬等の利便性や使い勝手も良好である。この芯材18は、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、その他の樹脂材料を用いて形成される。また、芯材18は、例えば生分解性の樹脂材料で形成することにより、改良対象地盤層3中に残置した場合にも環境負荷を低減させることができる。
芯材18の周囲を覆うフィルタ19は、透水性を有する材料、例えばポリエステル製の不織布から形成されている。フィルタ19は、芯材18の周囲に巻回され、熱溶着等によって接着されることにより芯材18の周囲を覆う。また、フィルタ19も、芯材18同様に、例えば生分解性の不織布で形成することにより、環境負荷を低減させることができる。
ドレーン材10は、予め製造工場において、上述のように芯材18をフィルタ19で覆うことにより製造されるとともに、ロール状に巻回された後、施工現場に搬入され、改良対象地盤層3に所定間隔で打設され、ドレーン材10は、地表に突出されている余長部を不図示の水平ドレーン材の上に重ねて接続される。
ドレーンリール55に巻回された長巻状のドレーン材10は、埋設用ガイド体であるマンドレル20に挿通させておく。
マンドレル20は、図5に示すように、その下方先端がマイナスドライバーのように扁平した尖塔状の貫入部21にスリット状の開口22を有する筒体である。
図5は、マンドレル20に挿通したドレーン材10の先端にアンカープレート40を係止して打設可能な状態を示す図であり、(A)は全体の側断面図、(B)は平面略図である。
ドレーン材10は、マンドレル20の上方から筒内に挿通したドレーン材下端部11を、下方のスリット状の開口22から引き出して、ドレーン材下端部11にアンカープレート40が取り付けられ、アンカープレート40をマンドレル20の下方先端の外側に引き寄せることにより、打設可能な状態とされる。なお、ドレーン材10の上方は、バックテンション装置56により上向きにバックテンションが付与されているため、ドレーン材下端部11および、そこに固定されたアンカープレート40を、上向きに引っ張る応力が作用するので、ドレーン材10に弛みは無い。
アンカープレート40には、例えば、図6に示すように、ドレーン材10の下方先端部の把持するための略逆U字状に形成された把持部品45がネジ止め等により取り付けられる。
そして、ドレーン材10の下方先端部をアンカープレート40の上面と把持部品45の中央長さ部45Aの間に挿通し、挿通したドレーン材10の下方先端部側の長さ部分が把持部品45を包むように上方に折り返され、折り返されたドレーン材10の下方先端部側の長さ部分を互いに対向するように重ね合わせ、重ね合わせたドレーン材10の長さ部分同士をステープラ33等により接合することにより、ドレーン材10の下方先端部にアンカープレート40が取り付けられる。
アンカープレート40は、例えば、図7に示すように、ドレーン材10が挿通される開口22が設けられたマンドレル20先端の扁平した尖塔状の貫入部21の長辺の長さL0に略等しい長さL1の短辺と長さL2(L1≦L2)の長辺を有する矩形状に形成されており、マンドレル20によりドレーン材10とともに打設される際に、貫入部21により押圧される長辺方向の中央部分から両端側が貫入部21の形状に倣って変形し、改良対象地盤層3内に配設された状態では拡開する弾塑性変形可能な平板からなる。
これら、アンカープレート40に接続されたドレーン材10は、ドレーン材打設装置50を用いて、地表面から、マンドレル20により、アンカープレート40とともに改良対象地盤層3に圧入される。
ドレーン材10は、ドレーンリール55から巻きほぐされながら連続して送り出される。
ドレーン材10の下方先端部に取り付けられたアンカープレート40は、その弾塑性変形特性により、図2の(A)に示すように、打設開始直前の状態は平板状であるが、マンドレル20先端の貫入部21が地表面から上部地盤層1内に圧入される際の圧入抵抗により、図2の(B)に示すように、貫入部21により押圧される長辺方向の中央部分から両端側が貫入部21の形状に倣って有底V面状に変形する。
このように、このアンカープレート40は、長辺方向の中央部分から両端側が上部地盤層1内に圧入されたマンドレル20先端の貫入部21の形状に倣って有底V面状に変形することにより、上部地盤層1内におけるマンドレル20の貫入抵抗を小さい状態に保つことができる。
そして、マンドレル20先端の貫入部21が上部地盤層1を通過して上部地盤層1と下部地盤層2との間に存在する軟弱な改良対象地盤層3に圧入される状態になると、軟弱な改良対象地盤層3内では上部地盤層1内よりも圧入抵抗が小さくなるので、アンカープレート40は、図2の(C)、(D)に示すように、長辺方向の中央部分から両端側が拡開して有底V面状に変形する。
このように有底V面状に拡開した状態のアンカープレート40は、図2の(E)に示すように、先端の貫入部21が改良対象地盤層3内の目標位置に到達したマンドレル20を引き上げる際に、共上がりすることなく、改良対象地盤層3内のドレーン材10の先端位置においてアンカーとして機能し、図2の(F)に示すように、改良対象地盤層3内へのドレーン材10の打設を完了させることができる。
アンカープレート40は、ドレーン材10の先端部に把持部品45を介して取付けられて、マンドレル20によりドレーン材10とともに打設されて改良対象地盤層3内に配設されことにより、マンドレル20を引き抜く際にドレーン材10の共上がりを防止するアンカーとして機能する。
ここで、アンカープレート40には、上述の如き弾塑性変形が可能な特性を有する合成樹脂材料から成る平板(合成樹脂板)、例えば、ポリエチレン板を用いることができる。
安価で入手し易い市販の厚さtが5mmのポリエチレン板を次の表1に示す各種サイズに切断したアンカープレートのサンプル40a~40fを作製して、図8に示すような打設実験を行い、打設したアンカープレートのサンプル40a~40f等を掘り出したところ、図9に示すように拡開して有底V面状に弾塑性変形することが確認された。
図8は、アンカープレートのサンプル例40a~40f等について打設実験を行った際の各工程を示す図であり、(A)は圧入開始直前の状態を示し、(B)は圧入開始直後の状態を示し、(C)はアンカープレート40の両端まで地表面の上部地盤層に圧入した状態を示し、(D)は地表面の上部地盤層の奥までアンカープレート40全体を圧入した状態を示している。
打設実験には、図10の(A)、(B)に示すように、貫入部21の頂角θ0≒22.5度で、開口22を有する先端が長辺の長さL0≒140mmで短辺の長さL≒40mmの長方形状になっているマンドレル20を用いた。
アンカープレートのサンプル40a~40fは、打設を開始すると全て、貫入部21の外径形状に倣って、短辺の長さL≒40mmに対応する底部を有する頂角θ0≒22.5度程度の有底V面状に変形した状態で圧入された。
地表面の上部地盤層の奥5m程度まで打設した後に掘り出したアンカープレートのサンプル40a~40fは、図9に示すように、貫入部21の長辺の長さL0≒140mmよりも60mm長い短辺の長さL1が200mmの各サンプル40b、40fでは、圧入の際に、貫入部21の長辺方向にはみ出した部分が変形してしまい、サンプル40bは破損していたが、貫入部21の長辺の長さL0≒140mmに近い短辺の長さL1が150mmの各サンプル40a、40c、40d、40eでは、元の平面状態までは戻りはしないが、拡開した有底V面状に弾塑性変形していた。
この打設実験によって明らかなように、マンドレル20先端の貫入部21が上部地盤層内に圧入されている状態では、図11の(A)に示すように、アンカープレート40は、上部地盤層内に圧入されたマンドレル20先端の貫入部21の形状に倣って鋭角(θ1)の有底V面状に変形する。これにより、上部地盤層内におけるマンドレル20の貫入抵抗を小さい状態に保つことができる。
また、地表面の上部地盤層に打設後に掘り出して得られたアンカープレートのサンプル40a~40fの打設実験後の状態から明らかなように、アンカープレートのサンプル例40a、40c、40d、40eは、拡開した有底V面状に弾塑性変形していることから、上部地盤層内よりも圧入抵抗が小さくなる軟弱な改良対象地盤層内では、図11の(B)に示すように、拡開して鈍角(θ2)の有底V面状に弾塑性変形して、アンカーとして機能する。
このように、マンドレル20先端の扁平した尖塔状の貫入部21の長辺の長さL0に略等しい長さL1の短辺と長さL2(L1≦L2)の長辺を有する矩形状に形成されたポリエチレン板は、マンドレル20によりドレーン材10とともに打設される際に、貫入部21により押圧される長辺方向の中央部分から両端側が貫入部21の形状に倣って有底V面状に変形し、改良対象地盤層3内に配設された状態では拡開した有底V面状に変形する弾塑性変形可能なアンカープレート40として用いることができ、マンドレル20によりドレーン材10とともに打設されて改良対象地盤層3内に配設されことにより、マンドレル20を引き抜く際にドレーン材10の共上がりを防止するアンカーとして機能する。
なお、アンカープレート40は、軟弱地盤層においてアンカーとして機能するために適した面積を必要とし、短辺L1と長辺L2の長さが短かい場合、把駐力を発揮することができずアンカーとして機能しなくなってしまう。また、アンカープレート40の短辺の長さL1をマンドレル20先端の貫入部21の長辺の長さL0よりも大きくしてしまうと、上部地盤層1に圧入した際に、貫入部21の長辺方向にはみ出した部分も変形することにより、アンカープレート40が貫入部21を包み込むように変形して貫入部21から離れなくなってしまい、共上がりすることになる。また、アンカープレート40は、短辺の長さL1を貫入部21の長辺の長さL0よりも短くしておけば共上がりしないのであるが、アンカーとしての機能が低下する。同様に、長辺の長さL2が短いと軟弱地盤層においてアンカーとしての機能が低下するが、短辺の長さL1以上の長さとしておくことにより、軟弱地盤層においてアンカーとして機能することが、図12に示す各サイズのアンカープレートのサンプルサンプル例40A~40Dを用いた試験施工により確認されている。
図12は、各サイズのアンカープレートのサンプル例を示す図であり、(A)は150mm×150mmの正方形で厚さ5mmのポリエチレン板を用いたアンカープレートのサンプル例40A、(B)は200mm×150mmの長方形で厚さ5mmのポリエチレン板を用いたアンカープレートのサンプル例40B、(C)は300mm×150mmの長方形で厚さ5mmのポリエチレン板を用いたアンカープレートのサンプル例40C、(D)は350mm×170mmの長方形で厚さ5mmのポリエチレン板を用いたアンカープレートのサンプル例40D、をそれぞれ示している。
ここで、ポリエチレンの弾性係数Eは、E=1080N/mm2であり、厚さtが5mmで幅150mmの断面二次モーメントIは、I=1562.5mm4であるから、ポリエチレンの弾性係数Eと厚さtが5mmで幅150mmの断面二次モーメントIの積E・I(E・I=1687500N・mm2 )程度、すなわち、短辺の長さL1が150mmのとき弾性係数Eと断面二次モーメントIの積E・Iが1.2MN・mm2から2.2MN・mm2の弾塑性変形可能な合成樹脂材料からなる平板であれば、マンドレル20先端の貫入部21の長辺の長さL0に略等しい長さL1の短辺と長さL2(L1≦L2)の長辺を有する矩形状のアンカープレート40とすることにより、図11に示すように、マンドレル20によりドレーン材10とともに打設される際に、貫入部21により押圧される長辺方向の中央部分から両端側が貫入部21の形状に倣って有底V面状に変形し、改良対象地盤層3内に配設された状態では拡開した有底V面状に変形する弾塑性変形可能なアンカープレート40として用いることができ、マンドレル20によりドレーン材10とともに打設されて改良対象地盤層3内に配設されことにより、マンドレル20を引き抜く際にドレーン材10の共上がりを防止するアンカーとして機能する。
したがって、上部地盤層1と下部地盤層2との間に存在する軟弱な改良対象地盤層3に、アンカープレート40をドレーン材10の先端部に取付けてマンドレル20によりドレーン材10とともに地表面から打設して、ドレーン材10を地表面からマンドレル20により打設して、改良対象地盤層3内の土壌間隙水をドレーン材10を介して排水することにより地盤を改良する軟弱地盤改良システム100において、アンカープレート40をドレーン材10が挿通される開口22が設けられたマンドレル20先端の貫入部21の長辺の長さL0に略等しい長さL1の短辺と長さL2(L1≦L2)の長辺を有する矩形状に形成された弾塑性変形可能な平板からなり、マンドレル20によりドレーン材10とともに打設される際に、貫入部21により押圧される長辺方向の中央部分から両端側が貫入部21の形状に倣って有底V面状に変形し、改良対象地盤層3内に配設された状態では拡開した有底V面状に変形する弾塑性変形可能な平板からなるものとすることにより、アンカープレート40を上部地盤層1と下部地盤層2との間に存在する軟弱な改良対象地盤層3に、ドレーン材10とともに地表面からマンドレル20により容易に打設することができ、マンドレル20を引き上げに際して共上がりすることなく、改良対象地盤層3内において必要な把駐力を発揮することができる。
軟弱地盤改良システム100では、適度な剛性と弾塑性的な特性を有する平板をアンカープレート40として使用することで、アンカープレート40のサイズを選択することで共上がりしないアンカーを得ることができ、工事の度に種々の比較検討する必要がなくなる。
アンカーの使用実績が増えれば、事前のボーリング調査から試験施工をしなくてもアンカープレート40の適切なサイズを判断できるようになる。
この軟弱地盤改良システム100において、ドレーン材10の先端部に把持部品45を介して取付けられるアンカープレート40は、把持部品45とともにアンカー装置200を構成している。
このアンカー装置200では、アンカープレート40とドレーン材10を把持するための把持部品45とがそれぞれ分かれていることにより、事前に複数のアンカーを用意する必要が無くなる。アンカープレート40は板を切断するだけで施工現場でも簡単に作製することができる。把持部品45は通常使用するアンカーのものをそのまま使用することができる。
以上の説明では、軟弱地盤改良システム100により、地表面にある上部地盤層1と下部地盤層2との間に存在する軟弱な改良対象地盤層3に、ドレーン材10を地表面からマンドレル20により打設して、改良対象地盤層3内の土壌間隙水をドレーン材10を介して排水することにより地盤を改良するようにしたが、軟弱地盤改良システム100では、図13に示すように、地表面から順に、第1の上部地盤層1A、第1の軟弱地盤層3A、第2の上部地盤層1B、第2の軟弱地盤層3B、下部地盤層2が存在する地層構造の第1の軟弱地盤層3Aと第2の軟弱地盤層3Bを改良対象盤層として、地盤を改良することもできる。
この場合、軟弱地盤改良システム100は、ドレーン材打設装置50を用いて、図13に示すように、先端にアンカープレート40が取り付けられたドレーン材10をアンカープレート40とともに地表面からマンドレル20により打設して、マンドレル20先端の貫入部21を第1の上部地盤層1A、第1の軟弱地盤層3A、第2の上部地盤層1Bを通過させて、改良対象盤層である第2の軟弱地盤層3B内の目標位置まで圧入して、マンドレル20を引き上げることにより、改良対象盤層である第2の軟弱地盤層3B内にドレーン材10をアンカープレート40とともに設置する。
適度な剛性と弾塑性的な特性を有する平板から成るアンカープレート40は、第1の上部地盤層1A内と第2の上部地盤層1B内ではマンドレル20先端の貫入部21の形状に倣って有底V面状に変形することにより、第1の上部地盤層1Aと第1の軟弱地盤層3Aと第2の上部地盤層1Bを容易に通過して、改良対象盤層である第2の軟弱地盤層3B内の目標位置に設置することができ、第2の軟弱地盤層3B内において拡開した有底V面状に弾塑性変形することにより、アンカーとして機能するので、改良対象盤層である第2の軟弱地盤層3B内からマンドレル20を引き上げる際に共上がりすることがない。