JP7285796B2 - 粉塵飛散防止材調製用組成物、粉塵飛散防止材、粉塵飛散防止材の調製方法 - Google Patents

粉塵飛散防止材調製用組成物、粉塵飛散防止材、粉塵飛散防止材の調製方法 Download PDF

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Description

本発明は、粉塵飛散防止材調製用組成物、粉塵飛散防止材、粉塵飛散防止材の調製方法に関する。
土木工事現場や土壌貯蔵施設においては、土壌の表層が風によって飛散したり雨によって流出したりすることを防止するため、日々の作業の終了時に即日覆土したり、シートで覆ったりしている。土壌が粉塵として飛散することを防止するものとして、例えば特許文献1に開示されているとおり、ポリビニルアルコールを含む粉塵飛散防止材を土壌の表層に散布する方法が知られている。この粉塵飛散防止材は、適度な粘性を有しており散布しやすいものとなっている。
特開2019-1953号公報
粉塵飛散防止材は、散布のしやすさや対象土壌の含水比を考慮して、粘度調整のために増粘剤が添加される場合がある。しかしながら、増粘剤は水と接触したときにダマ(ランピング)になりやすい。ダマが生じると散布中にホースノズルやポンプが詰まる虞があり、散布不良や機械トラブル等の原因になり、飛散防止能力にも支障がでる。ダマが生じないように粉塵飛散防止材を調製するには増粘剤を少しずつ添加する必要があり、調製に長時間を要する。
そこで本発明は、増粘剤を含有する粉塵飛散防止材の調製時にダマを生じにくい粉塵飛散防止材調製用組成物を提供することを目的とする。また、その粉塵飛散防止材調製用組成物を用いて調製した粉塵飛散防止材、及び、粉塵飛散防止材の調製方法を提供することを目的とする。
本発明は、増粘剤と、常温で液体の分散剤(ただし、界面活性剤を除く。)と、水とを含み、増粘剤の重量(単位はg)に対する分散剤の体積(単位はmL)の比が1.0~4.0であり、分散剤及び水は、分散剤を水に溶解させて水溶液を調製したと仮定した場合に、分散剤の濃度が31体積%以上の濃度となる量で含まれている、粉塵飛散防止材調製用組成物を提供する。
この粉塵飛散防止材調製用組成物では、増粘剤が分散剤で保護された状態となっている。この粉塵飛散防止材調製用組成物を用いて粉塵飛散防止材を調製した場合、分散剤が増粘剤を水中に適度に分散させる働きをするので、増粘剤がダマになりにくい。
常温で液体の分散剤としては、エタノール又はポリエチレングリコールが好ましい。
この粉塵飛散防止材調製用組成物は、ペースト状であることが好ましい。ペースト状であると、その後の取り扱いが容易である。
また、本発明は、増粘剤と、常温で固体の分散剤(ただし、界面活性剤とポリエチレングリコール顆粒を除く。)とを含有し、増粘剤の重量に対する分散剤の重量の比が0.6~1.5である、粉塵飛散防止材調製用組成物を提供する。また、本発明は、増粘剤と、ポリエチレングリコール顆粒とを含有し、増粘剤の重量に対するポリエチレングリコール顆粒の重量の比が0.4~1.5である、粉塵飛散防止材調製用組成物を提供する。
この粉塵飛散防止材調製用組成物では、増粘剤が分散剤で保護された状態となっている。この粉塵飛散防止材調製用組成物を用いて粉塵飛散防止材を調製した場合、分散剤が増粘剤を水中に適度に分散させる働きをするので、増粘剤がダマになりにくい。
上記いずれの粉塵飛散防止材調製用組成物においても、増粘剤は多糖類であることが好ましい。
また、本発明は、水と、ポリ酢酸ビニルと、ポリビニルアルコールと、増粘剤と、分散剤とを含有する粉塵飛散防止材であって、水とポリ酢酸ビニルとの体積比が90:10~99.2:0.8であり、水とポリ酢酸ビニルとの合計体積を100%としたときのポリビニルアルコールの体積が0.005%~0.5%であり、増粘剤及び分散剤は、上記いずれかの粉塵飛散防止材調製用組成物を用いて含有されたものであり、増粘剤の含有量は、当該粉塵飛散防止材の全重量を100%としたとき、2.0重量%以下である、粉塵飛散防止材を提供する。
この粉塵飛散防止材は上記の粉塵飛散防止材調製用組成物を用いて調製されたものであるので、ダマの発生が抑制されておりノズルが詰まる虞が小さく、また、適度な粘性を有しており散布しやすい。
また、本発明は、ポリ酢酸ビニルと、ポリビニルアルコールと、上記いずれかのいずれか一項記載の粉塵飛散防止材調製用組成物と、水とを混合し、水とポリ酢酸ビニルとの体積比が90:10~99.2:0.8であり、水とポリ酢酸ビニルとの合計体積を100%としたときのポリビニルアルコールの体積が0.005%~0.5%であり、増粘剤の含有量は、当該粉塵飛散防止材の全重量を100%としたとき、2.0重量%以下である、粉塵飛散防止材の調製方法を提供する。
この調製方法では上記の粉塵飛散防止材調製用組成物を用いて粉塵飛散防止材を調製するので、ダマの発生が抑制される。そして、調製された粉塵飛散防止材はノズル内で詰まる虞が小さく、また、適度な粘性を有しており散布しやすい。
本発明によれば、増粘剤を含有する粉塵飛散防止材の調製時にダマを生じにくい粉塵飛散防止材調製用組成物を提供することができる。また、その粉塵飛散防止材調製用組成物を用いて調製した粉塵飛散防止材、及び、粉塵飛散防止材の調製方法を提供することができる。
試験例1~7で調製した溶液の粘度の経時的変化を示すグラフである。 試験例8~14で調製した溶液の粘度の経時的変化を示すグラフである。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
<粉塵飛散防止材>
本実施形態の粉塵飛散防止材は、土壌の表層に散布する液状の混合物であって、水と、ポリ酢酸ビニルと、ポリビニルアルコールと、増粘剤と、分散剤とを含有する。
水とポリ酢酸ビニルとの体積比は90:10~99.2:0.8であり、この体積比は98:2~99.2:0.8であることが好ましい。体積比がこれらの範囲内にあると、粉塵飛散防止材の粘性が散布に程よい状態に維持され、且つ、土壌に散布した場合に土壌の表面に高分子からなる皮膜を形成することができる。
ポリビニルアルコールの含有量は、水とポリ酢酸ビニルとの合計体積を100%としたとき、0.005体積%~0.5体積%である。下限値としては0.01体積%や0.05体積%であってもよく、上限値としては0.3体積%や0.1体積%であってもよい、ポリビニルアルコールの含有量が高すぎると粉塵飛散防止材の粘性が高くなって散布しにくくなる傾向がある。また、ポリビニルアルコールの含有量が低すぎると、ポリ酢酸ビニルが水に溶解しにくくなる傾向がある。これらの事情からポリビニルアルコールの含有量は上記範囲内にあることが好ましい。
ポリビニルアルコールは、粉塵飛散防止材中ではポリビニルアルコール分子の状態で存在していてもよく、酢酸ビニルの乳化重合の残余物の形態として存在していてもよい。その他、ポリビニルアルコール分子に由来する分子構造の形態で存在していればよい。
粉塵飛散防止材中の水、ポリ酢酸ビニル及びポリビニルアルコールの組成割合は、例えば、核磁気共鳴分光法(NBR)、赤外吸収分光法(IR)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、液体クロマトグラフィー(LC)、熱分解-質量分析法(Pyrolysis-MS)によって測定することができる。
増粘剤は、粉塵飛散防止材の粘性を高くし、特に、対象土壌の含水比が高い場合に粉塵飛散防止材を適用するのに役立つ。増粘剤の含有量は、粉塵飛散防止材の全重量を100%として、2.0重量%以下であり、1.5重量%以下であることが好ましく、1.0重量%以下であることがより好ましく、0.6重量%以下であることが更に好ましい。下限値としては、0.1重量%、0.2重量%、0.4重量%が好ましい。増粘剤の含有量が2.0重量%を超えると粉塵飛散防止材の粘性が高くなり、散布しにくくなる傾向がある。
増粘剤としては、水溶性であることが好ましく、中でも多糖類が好ましい。多糖類としては、グアガム、アラビアガム、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、タマリンドシードガム、カラギーナン、カラヤガム、スクシノグリカン、ローカストビーンガム、大豆多糖類、プルラン、サイリウムシードガム、カードラン、アルギン酸・PGA、ジェランガム、グルコマンナン、寒天、ペクチン等が挙げられる。これらの中でもガラクトマンナンを主成分とするグアガムが好ましい。
分散剤(ただし、界面活性剤を除く。)としては、常温で液体又は固体のものを用いる。ここで常温とは15℃~25℃をいう。常温で液体の分散剤としては、エタノール、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、1-プロパノール、2-プパノール、2-ブタノール等が挙げられる。常温で固体の分散剤としては、ショ糖、カプサイシン、デキストリン、グルコース、フルクトース、乳糖、パノチノース、マルトオリゴ糖、フルクオリゴ糖、ポリエチレングリコール粉末、ポリエチレングリコール顆粒等が挙げられる。なかでもカプサイシンは、その特有の色から散布後の視認性がよく、その刺激性から散布した土壌に動物を近寄らせない忌避効果がある。
粉塵飛散防止材中の増粘剤及び分散剤の組成割合は、例えば、ガスクロマトグラフ法、液体クロマトグラフィー法によって測定することができる。
<粉塵飛散防止材の調製方法>
粉塵飛散防止材の調製に際し、増粘剤及び分散剤をあらかじめ混合して粉塵飛散防止材調製用組成物とする。
(粉塵飛散防止材調製用組成物)
分散剤が常温で液体のものである場合は、増粘剤との混合に先立ち、分散剤を水溶液とする。このときの分散剤水溶液の濃度は、31体積%以上の濃度とする。この濃度は35体積%以上であってもよく、40体積%以上であってもよい。また、この濃度の上限としては、80体積%、70体積%、60体積%、50体積%が挙げられる。増粘剤と分散剤との混合比としては、増粘剤の重量(単位はg)に対する分散剤の体積(単位はmL)の比を1.0~4.0とする。この比は1.5~3.5であってもよく、2.0~3.0であってもよく、2.2~2.8であってもよく、2.4~2.6であってもよい。その後の取り扱いや保存が容易になる観点から、増粘剤と分散剤水溶液とを混合して調製された粉塵飛散防止材調製用組成物は、ペーストであることが好ましい。
分散剤が常温で固体のものである場合は、増粘剤と分散剤とを混合して粉塵飛散防止材調製用組成物とする。増粘剤と分散剤との混合比としては、重量の比として0.6~1.5とする。この比は0.7~1.3であってもよく、0.8~1.1であってもよく、0.9~1.0であってもよい。分散剤が顆粒状(例えばポリエチレングリコール顆粒)である場合は、重量の比として0.4~1.5とする。この比は0.6~1.3であってもよく、0.8~1.1であってもよく、0.9~1.0であってもよい。
(粉塵飛散防止材の調製方法)
粉塵飛散防止材の調製方法としては、ダイライトタンク等の大きな容器に水を入れ、この水に対して粉塵飛散防止材調製用組成物と、ポリ酢酸ビニルと、ポリビニルアルコールとを投入し、ハンドミキサー等で撹拌することが好ましい。また、ポリ酢酸ビニルとポリビニルアルコールとを適量の水に混合して溶解させた後に、加水して上記組成割合とする方法が好ましい。例えば、ポリ酢酸ビニル及びポリビニルアルコールを、ポリ酢酸ビニルの1倍~3倍の体積の水に混合し(つまりポリ酢酸ビニルとして25体積%~50体積%とし)、これを常温で、又は加温しながら撹拌して溶解させたものを調整しておく。
また、ポリ酢酸ビニル及びポリビニルアルコールを水に投入すると水が白く濁って不透明となるので、視認性の観点から、先に粉塵飛散防止材調製用組成物を投入して撹拌し、粉塵飛散防止材調製用組成物が十分に拡散した後にポリ酢酸ビニル及びポリビニルアルコールを投入することが好ましい。最後に、全体の組成割合及び濃度が上記組成割合及び濃度の範囲内となるように水を追加する。このようにして粉塵飛散防止材を調製することができる。
上記のようにして調製された粉塵飛散防止材は、分散剤が増粘剤を水中に適度に分散させる働きをするので、増粘剤がダマになりにくい。そして、上記組成割合を有しているので、適度な粘性を有しており散布しやすい。そして、散布された粉塵飛散防止材は土壌の表面で皮膜を形成するため、土壌の表層から粉塵が飛散することが防止される。
粉塵飛散防止材の散布方法としては、エンジンポンプと消防ホース、散水車(機)、ハイドロシーダー(車)、ディストリビュータ、ウオータージェット、解体現場の粉塵散水用、無線式散水機(重機)、散水スプリンクラー等を用いる方法が挙げられる。
また、粉塵飛散防止材が増粘剤を含んでいることによって、粉塵飛散防止材が土壌に含まれる水で薄まったとしても十分な皮膜を形成することができる。例えば、降雨直後等のように土壌の含水比が高い場合は、散布した粉塵飛散防止材が土壌中の水によって薄まることや、土壌表面に留まらず材料成分が流出してしまうことが考えられるが、増粘剤の添加によって粘性が高められていると、土壌に浸み込みにくく、土壌の表面に皮膜が形成されて飛散防止効果が奏される。
また、調製過程における粉塵飛散防止材調製用組成物は、ペースト状であると、ある程度の期間保存をしやすく、袋詰めにして運搬することが容易である。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
以下、試験例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明は下記試験例に限定されるものではない。はじめに、分散剤を用いた場合の増粘剤のダマの発生具合と溶液の粘度について調べた。
(試験例1)
1L用のハイテール瓶(角瓶)に水を500mL程度入れた。増粘多糖類としてのグアガムと、分散剤としてのショ糖(比重0.68)とを重量比で1:1となるように秤量・混合した。この粉体混合物をグアガムの濃度が0.5%(グアガム重量/全量体積)となる量で上記ハイテール瓶に投入し、その後200(±20)rpmで1.5分間撹拌し、0.5分、1分、1.5分の各時点でダマが生じているかどうかの観察を行った。その後24時間の間静置した。その過程において、0.5分、1分、1.5分、2時間、5時間、24時間の各時点で粘度を測定した。粘度の測定は、粘度計((株)エー・アンド・ディ社製SV型粘度計(SV-10))で行った。結果を表1に示す。なお、「ダマ判定」の評価基準は以下のとおりである。
◎…まったくダマにならずに溶解した。
○…若干ダマになったが、概ね良好に溶解した。
△…表面に小さいダマが複数点在した。
×…ダマになって溶け切らなかった。
(試験例2)
試験例1の手順のうち、ショ糖をカプサイシン(かさ比重0.44)に変更したこと以外は試験例1と同様にして試験を行った。結果を表1に示す。
(試験例3)
試験例1の手順のうち、ショ糖をエタノールに変更し、グアガムとの混合比をグアガムの重量(g)とエタノールの体積(mL)との比で1:2となるように変更したこと以外は試験例1と同様にして試験を行った。グアガムとエタノールとの混合物は、ペースト状であった。結果を表1に示す。
(試験例4)
試験例3の手順のうち、エタノールを液体のポリエチレングリコール(PEG)(分子量:200、凝固点:-45℃)に変更したこと以外は試験例3と同様にして試験を行った。グアガムとポリエチレングリコールとの混合物は、ペースト状であった。結果を表1に示す。
(試験例5)
試験例1の手順のうち、分散剤を用いずグアガムのみをハイテール瓶に投入したこと以外は試験例1と同様にして試験を行った。結果を表1に示す。
(試験例6)
試験例1の手順のうち、ショ糖をポリエチレングリコール(PEG)の粉末(かさ比重0.52、分子量:3100、凝固点:55℃)に変更したこと以外は試験例1と同様にして試験を行った。結果を表1に示す。
(試験例7)
試験例1の手順のうち、ショ糖をポリエチレングリコール(PEG)の顆粒(かさ比重0.64、分子量:3100、凝固点:55℃)に変更したこと以外は試験例1と同様にして試験を行った。結果を表1に示す。
Figure 0007285796000001
(試験例8)
2L用のビーカー(円筒瓶)に水を1000mL入れた。増粘多糖類としてのグアガムと、分散剤としてのショ糖とを重量比で1:1となるように秤量・混合した。この混合物をグアガムの濃度が0.5%(グアガム重量/全量体積)となる量で上記ビーカー瓶に投入し、その後200(±20)rpmで1.5分間撹拌し、0.5分、1分、1.5分の各時点でダマが生じているかどうかの観察を行った。その後24時間の間静置した。その過程において、0.5分、1分、1.5分、2時間、5時間、24時間の各時点で粘度を測定した。粘度の測定は、粘度計((株)エー・アンド・ディ社製SV型粘度計(SV-10))で行った。結果を表2に示す。なお、「ダマ判定」の評価基準は以下のとおりである。
◎…まったくダマにならずに溶解した。
○…若干ダマになったが、概ね良好に溶解した。
△…表面に小さいダマが複数点在した。
×…ダマになって溶け切らなかった。
(試験例9)
試験例8の手順のうち、ショ糖をカプサイシンに変更したこと以外は試験例8と同様にして試験を行った。結果を表2に示す。
(試験例10)
試験例8の手順のうち、ショ糖をエタノールに変更し、グアガムとの混合比をグアガムの重量(g)とエタノールの体積(mL)との比で1:2となるように変更したこと以外は試験例8と同様にして試験を行った。結果を表2に示す。
(試験例11)
試験例10の手順のうち、エタノールをポリエチレングリコールに変更したこと以外は試験例10と同様にして試験を行った。結果を表2に示す。
(試験例12)
試験例8の手順のうち、分散剤を用いずグアガムのみをハイテール瓶に投入したこと以外は試験例8と同様にして試験を行った。結果を表2に示す。
(試験例13)
試験例8の手順のうち、ショ糖をポリエチレングリコール粉末(かさ比重0.52)に変更したこと以外は試験例8と同様にして試験を行った。結果を表1に示す。
(試験例14)
試験例8の手順のうち、ショ糖をポリエチレングリコール顆粒(かさ比重0.64)に変更したこと以外は試験例8と同様にして試験を行った。結果を表1に示す。
Figure 0007285796000002
表1及び表2に示した結果から、グアガムのみを水に投入した場合はダマが生じていたところ(試験例5及び試験例12)、グアガムを分散剤と混合したうえで水に投入すると、ダマが発生しにくくなることが確認された。特に、分散剤としてエタノール又はポリエチレングリコールを用いた場合にその効果が高いことが分かった。また、粘度の測定結果から、分散剤を添加しても溶液の粘度が極端に高まることがないことが確認された。したがって、分散剤の添加によって粉塵飛散防止材として散布しにくくなることは生じないと考えられる。なお、試験例1及び試験例2のダマ判定の結果が試験例8及び試験例9のダマ判定の結果よりも少々悪くなっているのは、ハイテール瓶(角瓶)とビーカー(円筒瓶)との撹拌効率の差によるものと考えられる。
なお、表1及び表2の粘度のデータをグラフ化したものをそれぞれ図1及び図2に示す。
次に、グアガムと各種分散剤との混合比について検討した。特に、エタノールとポリエチレングリコールについては、グアガムとの混合時の希釈の程度についても検討した。
(試験例15~19)
2L用のビーカー(円筒瓶)に水を所定量入れ、約200rpmで撹拌した。この水の量は、後に添加するグアガム及び分散剤の体積を考慮して、グアガムの濃度が0.5%となる量とした。増粘多糖類としてのグアガムと、分散剤としてのショ糖とを重量比で表3に示した量で混合した。このときの混合物の性状を表3の「グアガムと分散剤の混合具合」の項目に示す。
この混合物を上記ビーカー瓶に投入し、その後1.5分後の時点でダマが生じているかどうかの観察を行った。観察結果を表3に示す。なお、「ダマ判定」の評価基準は以下のとおりである。
◎…まったくダマにならずに溶解した。
○…若干ダマになったが、概ね良好に溶解した。
△…表面に小さいダマが複数点在した。
×…ダマになって溶け切らなかった。
(試験例20~24)
試験例15~19の手順のうち、ショ糖をカプサイシンに変更したこと以外は試験例15~19と同様にして試験を行った。試験例20~24の結果を表3に示す。
(試験例25~29)
試験例15~19の手順のうち、ショ糖をポリエチレングリコール粉末に変更したこと以外は試験例15~19と同様にして試験を行った。試験例25~29の結果を表3に示す。
(試験例30~34)
試験例15~19の手順のうち、ショ糖をポリエチレングリコール顆粒に変更したこと以外は試験例15~19と同様にして試験を行った。試験例30~34の結果を表3に示す。
(試験例35)
試験例15の手順のうち、ショ糖をエタノールに変更し、グアガムとの混合比をグアガムの重量(g)とエタノールの体積(mL)との比で表3に示した量(グアガム5g、エタノール32mL)となるように変更したこと以外は試験例15と同様にして試験を行った。ここで、エタノールは5%水溶液としてからグアガムと混合した。すなわち、32mLのエタノールを用いて調製したエタノール水溶液640mLをグアガムと混合し、その混合物を、水を入れたビーカーに投入した。結果を表3に示す。
(試験例36~41)
試験例21の手順のうち、エタノールの使用量とエタノール水溶液の濃度を表3に示したものに変更したこと以外は試験例35と同様にして試験を行った。結果を表3に示す。
(試験例42)
試験例15の手順のうち、ショ糖を液体のポリエチレングリコールに変更し、グアガムとの混合比をグアガムの重量(g)とポリエチレングリコールの体積(mL)との比で表3に示した量(グアガム5g、ポリエチレングリコール26mL)となるように変更したこと以外は試験例15と同様にして試験を行った。ここで、ポリエチレングリコールは10%水溶液としてからグアガムと混合した。すなわち、26mLのポリエチレングリコールを用いて調製したポリエチレングリコール水溶液260mLをグアガムと混合し、その混合物を、水を入れたビーカーに投入した。結果を表3に示す。
(試験例43~48)
試験例42の手順のうち、ポリエチレングリコールの使用量とポリエチレングリコール水溶液の濃度を表3に示したものに変更したこと以外は試験例42と同様にして試験を行った。結果を表3に示す。
(試験例49)
試験例15の手順のうち、ショ糖を非イオン系界面活性剤である油分散洗浄剤に変更し、グアガムとの混合比をグアガムの重量(g)と油分散洗浄剤の体積(mL)との比で表3に示した量(グアガム5g、油分散洗浄剤22mL)となるように変更したこと以外は試験例15と同様にして試験を行った。ここで、油分散洗浄剤は60%水溶液としてからグアガムと混合した。すなわち、22mLの油分散洗浄剤を用いて調製した油分散洗浄剤水溶液37mLをグアガムと混合し、その混合物を、水を入れたビーカーに投入した。結果を表3に示す。
(試験例50~52)
試験例49の手順のうち、油分散洗浄剤の使用量と油分散洗浄剤水溶液の濃度を表3に示したものに変更したこと以外は試験例49と同様にして試験を行った。結果を表3に示す。
Figure 0007285796000003
表3に示した結果から、グアガムがダマになることを抑制する観点からは、グアガムと分散剤との量比に適正な範囲があることが分かった。また、分散剤が液体である場合には、グアガムと混合する際の分散剤の水溶液濃度に適正な範囲があることが分かった。
本発明は、粉塵飛散防止材の調製に利用することができる。

Claims (6)

  1. 増粘剤と、常温で液体の分散剤と、水とを含み、
    前記分散剤は、エタノール、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、1-プロパノール、2-プロパノール又は2-ブタノールであり、
    前記増粘剤の重量(単位はg)に対する前記分散剤の体積(単位はmL)の比が1.0~4.0であり、
    前記分散剤及び前記水は、前記分散剤を前記水に溶解させて水溶液を調製したと仮定した場合に、前記分散剤の濃度が31体積%以上の濃度となる量で含まれている、粉塵飛散防止材調製用組成物。
  2. 前記分散剤は、エタノール又はポリエチレングリコールである、請求項1記載の粉塵飛散防止材調製用組成物。
  3. ペースト状である、請求項1又は2記載の粉塵飛散防止材調製用組成物。
  4. 前記増粘剤は、多糖類である、請求項1~のいずれか一項記載の粉塵飛散防止材調製用組成物。
  5. 水と、ポリ酢酸ビニルと、ポリビニルアルコールと、増粘剤と、分散剤とを含有する粉塵飛散防止材であって、
    前記水と前記ポリ酢酸ビニルとの体積比が90:10~99.2:0.8であり、
    前記水と前記ポリ酢酸ビニルとの合計体積を100%としたときの前記ポリビニルアルコールの体積が0.005%~0.5%であり、
    前記増粘剤及び前記分散剤は、請求項1~のいずれか一項記載の粉塵飛散防止材調製用組成物を用いて含有されたものであり、
    前記増粘剤の含有量は、当該粉塵飛散防止材の全重量を100%としたとき、2.0重量%以下である、粉塵飛散防止材。
  6. ポリ酢酸ビニルと、ポリビニルアルコールと、請求項1~のいずれか一項記載の粉塵飛散防止材調製用組成物と、水とを混合し、
    前記水と前記ポリ酢酸ビニルとの体積比が90:10~99.2:0.8であり、
    前記水と前記ポリ酢酸ビニルとの合計体積を100%としたときの前記ポリビニルアルコールの体積が0.005%~0.5%であり、
    前記増粘剤の含有量は、当該粉塵飛散防止材の全重量を100%としたとき、2.0重量%以下である、粉塵飛散防止材の調製方法。
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