JP7284691B2 - 廃石膏ボードの処理方法 - Google Patents

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Description

この発明は廃石膏ボードの処理に関し、特に岩綿による遠心ポンプのトラブルを少なくすることに関する。
発明者らは、廃石膏ボードからの二水石膏粒子の回収を提案した(特許文献1:WO2012/176688)。即ち、廃石膏ボードを破砕した後、か焼により半水あるいはIII型無水の石膏に変換し、含水媒体と混合し、石膏スラリーとする。石膏スラリー中に二水石膏粒子を析出させ、遠心ポンプにより石膏スラリーを送液し、固液分離により二水石膏粒子を抽出する。
WO2012/176688
発明者は、廃石膏ボード由来の半水あるいはIII型無水石膏中に、岩綿(ロックウール)が含まれることがあることに着目した。岩綿は石膏ボードに一体に接着されている岩綿吸音板に含まれている。そして岩綿吸音板付きの石膏ボードは、建物の内装材として用いられ、吸音、断熱、防火などに優れた性能を発揮する。後述のように、岩綿が混入するとトラブルの原因となるので、岩綿吸音板付きの石膏ボードを一般の石膏ボードと分別し、岩綿吸音板を石膏ボードから剥がすことが行われていた。しかし分別を完全に行うことは難しく、また岩綿吸音板を石膏ボードから完全に剥離することも難しいため、岩綿吸音板が処理対象の廃石膏ボードに混入することは避けられなかった。
半水石膏あるいはIII型無水石膏を含水媒体と混合する前の段階で、乾式で篩により岩綿を石膏と分離することは難しい。廃石膏ボードを粉砕すると、岩綿は繊維状となり、篩を通過する。岩綿を分離できる程度に篩の開口を小さくすると、石膏粉が篩の目に詰まってしまう。石膏スラリー中に混入した岩綿は析出槽内で凝集し、スラリーを固液分離装置へ送液する遠心ポンプに詰まり、ポンプを停止させてしまう。ポンプが停止すると、ポンプの入口側ケーシングを外し、インペラとケーシングの間に詰まった岩綿を取り除く必要がある。
この発明の課題は、岩綿が遠心ポンプのインペラとケーシングの間に詰まることを減らし、詰まった岩綿のため廃石膏ボードの処理が中断されることを減らすことにある。
この発明の廃石膏ボードの処理方法は、
廃石膏ボード由来の半水石及び/又はIII型無水石膏を含水媒体に混合し、
析出槽において、二水石膏粒子を前記含水媒体中に析出させて、前記含水媒体を二水石膏スラリーとし、
二水石膏スラリーを、ポンプにより、固液分離装置に送液し、二水石膏粒子を水と分離する、廃石膏ボードの処理方法において、
前記ポンプを、二水石膏スラリーを入口側から供給し、インペラにより遠心力を付与して排出する、遠心ポンプとすると共に、
前記遠心ポンプでの、入口側固定部とインペラとのクリアランスを1.5mm以上10mm以下とすることを特徴とする。
前記のクリアランスを大きくすることにより、凝集した岩綿がインペラとケーシングの間に詰まることを防止できる。実験によると、クリアランスを0.5mmとすると毎月2回程度の頻度で目詰まりが生じ、5mmとすると目詰まりは生じなかった。これらの幾何平均以上で目詰まり防止効果があると推定できるので、クリアランスの下限を1.5mmとする。クリアランスを増すほど、目詰まりの回数が減るので、好ましくはクリアランスを3mm以上、より好ましくは4mm以上、最も好ましくは5mm以上とする。
クリアランスを増すと遠心ポンプの効率が低下し、二水石膏スラリーの流量に比べて大きな吐出量の遠心ポンプが必要になり、またポンプを動作させるための電力も増す。そこでクリアランスの上限を10mmとする。以上のことから、入口側固定部とインペラとのクリアランスを1.5mm以上10mm以下とし、好ましくは3mm以上10mm以下とし、より好ましくは4mm以上10mm以下、最も好ましくは5mm以上10mm以下とする。
この発明は、岩綿吸音板付き廃石膏ボードのみを処理する方法ではなく、岩綿が処理対象の廃石膏ボード中に混入することを許容する処理方法である。岩綿の発生源は主として廃石膏ボードに接着されている岩綿吸音板である。即ち、この発明が処理対象とする廃石膏ボードは、必ずしも岩綿吸音板付き廃石膏ボードが含まれているとは限らない。この発明では、岩綿吸音板付きは石膏ボードが処理対象に混ざった場合でも、中断せずに処理を行える。またこの発明では、事前に岩綿吸音板付き廃石膏ボードを分別し、岩綿吸音板を剥がす手間も省ける。この発明は、岩綿吸音板付き廃石膏ボードを少なくとも一部に含む廃石膏ボードを処理する場合に、最大の効果が得られる。
実施例の廃石膏ボードの処理方法を示す図 実施例での遠心ポンプの長手方向部分断面図
以下にこの発明を実施するための実施例を示す。この発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に基づき、明細書の記載とこの分野での周知技術とを参酌し、当業者の理解に従って定められるべきである。実施例はこの発明の範囲を限定するものではない。
図1,図2に実施例を示す。図1に廃石膏ボードの処理工程を示す。廃石膏ボードを破砕機2により破砕し、粉砕機4により粉粒体状に粉砕し、振動篩等の篩6により乾式で篩上の紙片と篩下の石膏とに篩い分けする。この時、岩綿の大部分は石膏と共に篩6を通過する。廃石膏ボード中の石膏は二水石膏で、これをか焼機8中で130℃程度に加熱し、半水石膏及び/又はIII型無水石膏に変化させる。
半水石膏及び/又はIII型無水石膏と、後述の含水媒体を混合槽10で混合し、析出槽12へ移送し、析出槽12中で二水石膏粒子が水中に析出した二水石膏スラリーとする。なお混合槽10と析出槽12を一体にし、析出槽12へ半水石膏及び/又はIII型無水石膏を投入しても良い。また析出槽12を直列に複数段配置し、上流側の段から下流側の段へ二水石膏スラリーを移動させても良い。
遠心ポンプ14により析出槽12の二水石膏スラリーを送液し、振動篩等の篩16により、湿式で岩綿を分離し、岩綿を含まない二水石膏スラリーとする。岩綿を篩い分けした後の二水石膏スラリーを、フィルタープレス等の固液分離装置18へ供給し、二水石膏粒子を抽出する。固液分離装置18の種類は任意である。篩16の種類は任意であるが、目開きは0.3mm以上1mm程度が好ましく、例えば0.5mmとする。二水石膏粒子の平均粒径は0.1mm未満なので、二水石膏粒子は篩16を通過し、岩綿繊維は凝集しているため目開き1mm未満の篩16をほとんど通過しない。
上記固液分離装置18で二水石膏粒子を分離した後のろ液に、必要に応じて析出槽12の二水石膏スラリーを加え、さらに抽出した二水石膏粒子に随伴して失われた水を補うように水を加えて、含水媒体とする。なお含水媒体は、例えば単なる水ないし石膏を含むスラリーを意味する。含水媒体に二水石膏スラリーを含ませるのは、循環形のプロセスとするためと、スラリー中の二水石膏粒子にさらに成長させるためである。
岩綿は繊維状の物質で、析出槽12内で凝集することにより、遠心ポンプ14に絡まるようになる。なお混合槽10と析出槽12の間に、図1の鎖線で示す遠心ポンプ19を設けても、岩綿が絡まって遠心ポンプが停止するなどのトラブルは生じなかった。この原因を発明者は以下のように推定した。図1の配置では、析出槽12から混合槽10へスラリーを還流させるため、遠心ポンプ19の流量は遠心ポンプ14の流量よりも数倍以上大きい。大流量の遠心ポンプは、後述のクリアランスに岩綿が絡まってもクリアランスから岩綿を押し出す力がある。これに対して、固液分離装置18へ送液する遠心ポンプ14は流量が少なく小出力のため、クリアランスに岩綿が絡まると、岩綿を押し出すことが難しい。このため実施例では、入口側固定部とインペラとのクリアランスを大きくする必要があるのは、固液分離装置18へ送液する遠心ポンプ14である。
図2を参照し、遠心ポンプ14での入口側固定部とインペラ20とのクリアランスを説明する。インペラ20は複数の羽根21を備え、駆動軸22により回転する。インペラ20は入口側のケーシング24と駆動軸側のケーシング25の間に収容され、ケーシング24には入口側のライナ26が固定され、ケーシング25には駆動軸側のライナ27が固定されている。ケーシング24は締結部28によりケーシング25に締結され、30は遠心ポンプ14の吸い込み口で、ポンプの入口である。31は吐出口で、二水石膏スラリーを吐出する。
岩綿が詰まるのは、入口側のライナ26と羽根21とのクリアランスである。図2の拡大部32に、クリアランスとその周囲を示し、クリアランスの大きさをcで示す。入口側のケーシング24とライナ26の全体が、入口側固定部である。またライナ26を他の部材に代えても、羽根21とのクリアランスに岩綿が詰まりやすいことに変わりはない。ライナ26の有無及び形状ではなく、ライナ26等の入口側固定部と羽根21とのクリアランスの大きさcが問題である。
駆動軸側のライナ27の背面はケーシング25により支持され、入口側のライナ26と駆動軸側のライナ27との間に、環状のパッキン34がある。図2の拡大部36に、パッキン34とその周囲を示す。実施例では、パッキン34の厚さを調整することにより、クリアランスを調整する。ただしクリアランスの調整方法は任意である。
実験例1
岩綿吸音板付きの廃石膏ボードが通常の廃石膏ボードに混入する条件で、図1のシステムにより廃石膏ボードを処理した。遠心ポンプ14(最大吐出量15m/h)での二水石膏スラリーの吐出量は12m/hとした。遠心ポンプ14のクリアランスcを0.5mmとすると、24時間/日、330日/年で1年間処理する間に、遠心ポンプ14の停止トラブルが23件発生した。これらのトラブルは何れも岩綿の凝集体がライナ26と羽根21間のクリアランスに詰まったためで、その都度、締結部28を外し、岩綿凝集体を除く作業が必要であった。岩綿凝集体の形状はほぼ球状で、直径は1~10mm程度であった。なお直径が10mmを越える岩綿凝集体は析出槽12の底部に沈降し、遠心ポンプ14では検出されなかった。
実験例2
実験例1と同じ条件で、遠心ポンプでのライナ26と羽根21間のクリアランスの大きさcを5mmとした。クリアランスを拡げるとポンプの効率が低下するので、遠心ポンプ14の最大吐出量を30m/hに変更した。実施例では、実際の吐出量に比べ最大吐出量が大きい、例えば70%以上大きい、遠心ポンプが必要になる。実験例2では、実験例1と同じ運転条件で、1年間、遠心ポンプ14のトラブルは生じなかった。
実験例3
実験例2では遠心ポンプ14からの二水石膏スラリーに岩綿が含まれている。そこで目開き0.5mmの振動篩16により二水石膏スラリーを処理すると、篩上の岩綿と篩下の二水石膏に高精度に分離でき、篩下に岩綿は検出できなかった。
実施例では、岩綿による遠心ポンプ停止のトラブルを少なくし、岩綿吸音板付き廃石膏ボードを処理できる。遠心ポンプを通過した岩綿は、湿式の篩い分けにより二水石膏と高精度に分離できる。
2 破砕機
4 粉砕機
6,16 篩
8 か焼機
10 混合槽
12 析出槽
14,19 遠心ポンプ
18 固液分離装置
20 インペラ
21 羽根
22 駆動軸
24,25 ケーシング
26,27 ライナ
28 締結部
30 吸い込み口
31 吐出口
34 パッキン

c クリアランス

Claims (1)

  1. 廃石膏ボード由来の半水石及び/又はIII型無水石膏を含水媒体に混合し、
    析出槽において、二水石膏粒子を前記含水媒体中に析出させて、前記含水媒体を二水石膏スラリーとし、
    二水石膏スラリーを、ポンプにより、固液分離装置に送液し、二水石膏粒子を水と分離する、廃石膏ボードの処理方法において、
    前記廃石膏ボードの少なくとも一部が岩綿吸音板付き廃石膏ボードであり、
    前記ポンプを、二水石膏スラリーを入口側から供給し、インペラにより遠心力を付与して排出する、遠心ポンプとすると共に、
    前記遠心ポンプでの、入口側のケーシングとライナの全体から成る入口側固定部とインペラとのクリアランスを1.5mm以上10mm以下とすることを特徴とする、廃石膏ボードの処理方法。
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