以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等は、室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で測定する。
また、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートの総称である。(メタ)アクリル酸等の(メタ)を含む化合物等も同様に、名称中に「メタ」を有する化合物と「メタ」を有さない化合物の総称である。
そして、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
<中間転写ベルトおよびその製造方法>
本発明の一形態は、基材を有し、前記基材は、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリエーテルイミドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂と、アルミニウム、亜鉛、スズ、鉛、シリコン、ジルコニウムおよびチタンからなる群より選択される少なくとも1種の金属の酸化物による表面処理(以下、単に「金属酸化物表面処理」とも称する)、ならびにカップリング剤による表面処理(以下、単に「カップリング剤表面処理」とも称する)からなる群より選択される、少なくとも1種の表面処理が施された高誘電無機粒子(以下、単に「表面処理高誘電無機粒子」とも称する)と、を含む、中間転写ベルトに関する。
本発明者らは、上記構成によって課題が解決されるメカニズムを以下のように推定している。
特許文献1や特許文献2のように、高誘電無機粒子を中間転写ベルトに添加することで中間転写ベルトの誘電率を高める方法では、当該粒子と中間転写ベルトを構成するマトリクス材料との親和性や、当該粒子の凝集性によっては、当該粒子の存在分布が不均一となり易い。そして、この存在分布の不均一性は、中間転写ベルトの特性面では、中間転写ベルト表面における静電容量の不均一性として表れ、静電引力が大きい部分が存在することとなり、当該部分の影響で薄紙分離性が不十分となる。
また、基材を構成するマトリクス材料中に分散された高誘電無機粒子は、当該高誘電無機粒子をキャパシタとして考えると、直列状態および並列状態が混在して分散された状態で存在することとなる。ここで、当該粒子数が同一であるとき、その存在分布が均一である場合と不均一である場合との比較では、直列状態を考えると、合成容量は個々の静電容量の和であることから、これらの合成容量は同一となる。しかしながら、並列状態を考えると、合成容量の逆数は個々の静電容量の逆数の和となることから、これらの合成容量は、不均一性の程度が大きい方がより小さくなる。よって、特許文献1や特許文献2のように、高誘電無機粒子を中間転写ベルトに添加することで中間転写ベルトの誘電率を高める方法では、高誘電無機粒子本来の機能が発揮されず、ベルト全体としての静電容量も小さくなり、転写率が十分に向上しない場合がある。
一方、本発明では、基材を構成するマトリクス材料として、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリエーテルイミドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を選択し、かつ、上記の特定の金属酸化物またはカップリング剤で表面処理された高誘電無機粒子を当該マトリクス材料中に分散させる。ここで、高誘電無機粒子は、上記の特定の金属酸化物により表面処理されることで、高い誘電率を維持しつつ、上記の樹脂に対する親和性が向上し、マトリクス材料中での分散性が向上し、その分布がより均一となる。また、高誘電無機粒子は、カップリング剤で表面処理されることで、高い誘電率を維持しつつ、高誘電無機粒子同士の凝集を生じ難くさせ、マトリクス材料中での分散性が向上し、その分布がより均一となる。これにより、本発明の一形態に係る中間転写ベルトでは、静電引力が大きな部分の発生が抑制されて、薄紙分離性がより向上する。また、ベルト表面における静電容量がより均一化され、高誘電無機粒子本来の機能が発揮され、ベルト全体としての静電容量が大きくなり、転写率がより向上する。
なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、その正誤が本発明の技術的範囲に影響を及ぼすものではない。
以下、本発明の一形態に係る中間転写ベルトの各構成要素について、詳細に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
[基材]
(膜厚)
本発明の一形態に係る中間転写ベルトが有する基材は、単層構造であっても、2層以上の複層構造であってもよい。基材の形状は、好ましくは無端ベルト状である。基材の厚さは、特に制限されないが、機械的強度、画質、製造コストなどの観点から、好ましくは50~250μmであり、より好ましくは50~150μmであり、さらに好ましくは60~100μmである。
(樹脂)
本発明の一形態に係る中間転写ベルトが有する基材は、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリエーテルイミドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む。これらの樹脂は、基材に自己支持性を付与しつつ、中間転写ベルトの転写性および薄紙分離性を向上させる作用をする。
これらの中でも、転写性および薄紙分離性をより向上させるとの観点から、ポリイミド、ポリアミドイミドであることが好ましく、ポリイミドであることがより好ましい。
これらの樹脂の重量平均分子量は、特に制限されないが、1,000以上であることが好ましい。また、これらの樹脂の重量平均分子量は、特に制限されないが、2,000,000以下であることが好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の値として求めることができる。
これらの樹脂は、合成品を用いても市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、ポリイミドを合成する前駆体(ポリイミド前駆体)として、宇部興産株式会社製、ユピア(登録商標)-AT1001、ST1001、ST1002、NF1001、NF2001、FN1001、FN2001、LB1001、LB2001等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これら樹脂は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
基材中の樹脂の含有量の下限は、特に制限されないが、転写性および薄紙分離性をより向上させるとの観点から、基材の総質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。また、基材中の樹脂の含有量の上限は、特に制限されないが、転写性をより向上させるとの観点から、基材の総質量に対して、99質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましい。
(表面処理高誘電無機粒子)
本発明の一形態に係る中間転写ベルトが有する基材は、アルミニウム、亜鉛、スズ、鉛、シリコン、ジルコニウムおよびチタンからなる群より選択される少なくとも1種の金属の酸化物による表面処理(金属酸化物表面処理)、ならびにカップリング剤による表面処理(カップリング剤表面処理)からなる群より選択される、少なくとも1種の表面処理が施された高誘電無機粒子(表面処理高誘電無機粒子)を含む。表面処理高誘電無機粒子は、中間転写ベルトの転写性および薄紙分離性を向上させる作用をする。
本明細書において、表面処理が施されていない状態の高誘電無機粒子(以下、未処理高誘電無機粒子とも称する)とは、比誘電率εrが100以上である無機粒子を表す。表面処理前の高誘電無機粒子の比誘電率εrが100未満であると、転写性が不十分となる。この理由は、かような粒子を分散させたとしても、ベルト全体としての比誘電率εrを十分に向上させることはできないからであると推測される。未処理高誘電無機粒子の比誘電率εrの下限は、中間転写ベルトの転写性を向上させるとの観点から、100以上であることが好ましく、500以上であることがより好ましく、1,000以上であることがさらに好ましい。また、未処理高誘電無機粒子の比誘電率εrの上限は、薄紙分離性をより向上させるとの観点から、10,000以下であることが好ましく、5,000以下であることがより好ましく、2,000以下であることがさらに好ましい。なお、2種以上の未処理高誘電無機粒子を用いる場合は、その質量比に対する平均値が上記範囲内であることが好ましい。
未処理高誘電無機粒子の比誘電率εrは、高圧成型機などを用いて直径30mm、厚み5mmのサイズにペレット化した材料を使用して、LCRメーターによって測定することができる。LCRメーターとしては、例えば、E4990Aインピーダンス・アナライザ(キーサイト社製)を用いることができる。
なお、中間転写ベルトの状態における未処理高誘電無機粒子の比誘電率εrは、中間転写ベルトから表面処理高誘電無機粒子を取り出した上で、表面処理層を除去して未処理高誘電無機粒子のみを取り出し、上記の測定を行うことで求めることができる。また、この状態における未処理高誘電無機粒子の比誘電率εrは、中間転写ベルトの解析をすることで未処理高誘電無機粒子の種類を特定した上で、同様の未処理高誘電無機粒子を準備し、上記の測定を行うことで求めることができる。
未処理高誘電無機粒子としては、比誘電率εrが100以上である無機粒子であれば特に制限されないが、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O3)、酸化タンタル(Ta2O3)、チタン酸バリウムストロンチウム(BST:(BaxSr1-x)TiO3)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT:(Pb,La)(Zr,Ti)O3:La(ランタン)を添加したチタン酸ジルコン酸鉛)等が挙げられる。これらの中でも、十分に高い誘電率を有し、かつ表面処理をより良好に行うことができるとの観点、そしてその結果として中間転写ベルトの転写性および薄紙分離性をより向上させるとの観点から、チタン酸バリウムまたはチタン酸ストロンチウムであることが好ましく、チタン酸バリウムであることがより好ましい。
未処理高誘電無機粒子の形状は、特に制限されず、球状やこれに近い形状であってもよく、また板状、棒状、針状であってもよい。
未処理高誘電無機粒子の平均一次粒子径(個数平均粒子径)の下限は、特に制限されないが、ベルトの転写性および薄紙分離性をより向上させるとの観点から、1nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることがさらに好ましい。この範囲であると、表面処理をより良好に行うことができると考えられる。また、未処理高誘電無機粒子の平均一次粒子径(個数平均粒子径)の上限は、特に制限されないが、ベルトの転写性および薄紙分離性をより向上させるとの観点から、1,000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることがさらに好ましい。この範囲であると、表面処理高誘電無機粒子の存在状態をより均一化すると考えられる。未処理高誘電無機粒子の平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて粒子を観察し、SEM画像にて100個の粒子について粒子直径を確認し、その平均値を算出することで求めることができる。なお、粒子が異方性を有する場合、すなわち、粒子が最大径と、最小径とを有する場合、これらの平均値を上記の粒子直径として平均一次粒子径を算出する。
なお、中間転写ベルトにおける未処理高誘電無機粒子の平均一次粒子径は、中間転写ベルトから表面処理高誘電無機粒子を取り出し、表面処理層を除去し、未処理高誘電無機粒子のみを取り出して、上記の測定を行うことで求めることができる。また、この状態における未処理高誘電無機粒子の平均一次粒子径は、ベルトの厚み方向に走査型電子顕微鏡(SEM)試料作製用汎用断面カッターにて切断し、断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、表面処理高誘電無機粒子の未処理高誘電無機粒子部分について、上記の測定を行うことで求めることができる。
未処理高誘電無機粒子は、合成品を用いても市販品を用いてもよい。
未処理高誘電無機粒子は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
表面処理高誘電無機粒子は、未処理高誘電無機粒子に対して、金属酸化物表面処理およびカップリング剤表面処理からなる群より選択される少なくとも1種の表面処理が施されたものを表す。
金属酸化物表面処理によって高誘電無機粒子の表面に固定されるまたは担持される金属酸化物は、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化鉛、酸化ケイ素(シリカ)、酸化ジルコニウム、酸化チタンである。これらの中でも、ベルトの転写性および薄紙分離性をより向上させるとの観点から、アルミナ、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化鉛が好ましく、アルミナがより好ましい。すなわち、表面処理高誘電無機粒子は、表面にアルミナを有することがより好ましい。これら金属酸化物は、含水状態であってもよく、含水状態の金属酸化物の一例としては、含水アルミナ(Al2O3・nH2O)が挙げられる。
これら金属酸化物によって中間転写ベルトの転写性および薄紙分離性が向上する理由は、以下のように推測される。これら金属酸化物は、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリエーテルイミドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂との間で高い親和性を示し、その結果、基材中での表面処理高誘電無機粒子の存在状態の均一性が向上するからである。
金属酸化物は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
金属酸化物表面処理によって高誘電無機粒子の表面に存在することとなる化学種は、ベルトの厚み方向に走査型電子顕微鏡(SEM)試料作製用汎用断面カッター、イオンミリング、ミクロトーム等など適切な方法にて切断し、断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、高誘電無機微粒子を特定して、EDS(エネルギー分散型X線分光法)等にて元素分析をすることによって、確認することができる。
また、高誘電無機粒子の表面に存在する金属酸化物の量は、特に制限されないが、後述する好ましい表面処理量で表面処理をした結果として得られる量であることが好ましい。
カップリング剤表面処理によって高誘電無機粒子の表面に固定されるまたは担持されるカップリング剤は、特に制限されず、公知のものを使用することができる。これらの中でも、中間転写ベルトの転写性および薄紙分離性をより向上させるとの観点から、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤およびアルミネートカップリング剤が好ましく、シランカップリング剤がより好ましい。
カップリング剤によって中間転写ベルトの転写性および薄紙分離性が向上する理由は、以下のように推測される。高誘電無機粒子は一般的に高い凝集性を示すが、その周囲にカップリング剤が存在することで凝集が生じ難くなり、その結果、基材中での表面処理高誘電無機粒子の存在状態の均一性が向上するからである。
シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、p-スチリルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランまたは3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランが好ましく、3-アミノプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
チタネートカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート)、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、トリス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルジオクチルパイロホスフェートチタネート、イソプロピルトリス(ドデシルベンゼンスルフォニル)チタネートチタンテトラノルマルブトキシド、チタンテトラ-2-エチルヘキソキシド等が挙げられる。
アルミネートカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
カップリング剤は、合成品を用いても市販品を用いてもよい。例えば、カップリング剤の市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製のKBM-403、KBE-403、KBM-903、KBE-903、KBM-9007、KBE-9007N等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
シランカップリング剤は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
表面処理高誘電無機粒子は、特に制限されないが、表面に窒素元素を有することが好ましく、表面にアミノ基を有することがより好ましい。これらの化学種が表面に存在することで、中間転写ベルトの転写性および薄紙分離性をより向上させることができる。
よって、カップリング剤表面処理に用いられるカップリング剤としては、分子内に窒素原子を有することが好ましく、分子内にアミノ基を有することがより好ましく、分子内にアミノ基を有するシランカップリング剤であることがさらに好ましく、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、またはN-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩であることがよりさらに好ましく、3-アミノプロピルトリメトキシシランであることが特に好ましい。
これら表面処理は、金属酸化物表面処理およびカップリング剤表面処理の同種または異種の表面処理について、単独でもまたは2種以上組み合わせても施すことができる。よって、表面処理高誘電無機粒子は、金属酸化物表面処理およびカップリング剤表面処理の両方が施されたものが好ましく、金属酸化物表面処理の後、カップリング剤表面処理が施されたものであることがより好ましい。
カップリング剤表面処理によって高誘電無機粒子の表面に存在することとなる化学種は、ベルトの厚み方向に走査型電子顕微鏡(SEM)試料作製用汎用断面カッター、イオンミリング、ミクロトーム等など適切な方法にて切断し、断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、高誘電無機微粒子を特定して、EDS(エネルギー分散型X線分光法)等にて元素分析をすることによって、確認することができる。
高誘電無機粒子の表面に存在するカップリング剤の量としては、特に制限されないが、後述する好ましい表面処理量で表面処理をした結果として得られる量であることが好ましい。
基材中の表面処理高誘電無機粒子の含有量の下限は、特に制限されないが、中間転写ベルトの転写性をより向上させるとの観点から、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリエーテルイミドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、100質量部以上であることがさらに好ましい。また、基材中の樹脂の含有量の上限は、特に制限されないが、中間転写ベルトの転写性および薄紙分離性をより向上させるとの観点から、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリエーテルイミドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂100質量部に対して、1,000質量部以下であることが好ましく、500質量部以下であることがより好ましく、200質量部以下であることがさらに好ましい。
(導電剤)
本発明の一形態に係る中間転写ベルトが有する基材は、導電剤をさらに含むことが好ましい。導電剤を添加することによって中間転写ベルトの抵抗値を転写により適した範囲に調整することができ、その結果、中間転写ベルトの転写性がより向上する。
導電剤は、特に制限されず公知のものを使用することができ、例えば、銀、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、ステンレス鋼等の金属や、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブなどの炭素を含む化合物等の炭素元素を含むもの等が挙げられる。これらの中でも、転写性や機械特性をより向上させるとの観点から、炭素元素を含む導電剤であることが好ましく、炭素化合物であることがより好ましく、カーボンブラックであることがさらに好ましい。
導電剤は、合成品を用いても市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、カーボンブラックとしては、Degussa社製のSPECIAL BLACK4や、エボニック デグサ ジャパン株式会社製のNIPex(登録商標)150等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
導電剤は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
基材中の導電剤の含有量の下限は、特に制限されないが、中間転写ベルトの転写性をより向上させるとの観点から、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリエーテルイミドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1質量部以上であることがさらに好ましい。また、基材中の導電剤の含有量の上限は、特に制限されないが、中間転写ベルトの機械特性をより向上させるとの観点から、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリエーテルイミドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがさらに好ましい。
(界面活性剤)
本発明の一形態に係る中間転写ベルトが有する基材は、界面活性剤をさらに含むことが好ましい。界面活性剤は、基材中における表面処理高誘電無機粒子や導電剤をより均一に分散させるよう作用する。
界面活性剤は、特に制限されず公知のものを使用することができる。これらの中でも、含フッ素有機化合物であることが好ましい。
界面活性剤は、合成品を用いても市販品を用いてもよい。市販品としては、含フッ素有機化合物としては、例えば、三菱マテリアル株式会社製のエフトップ(登録商標)EF-351等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
界面活性剤は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
基材中の界面活性剤の含有量の下限は、特に制限されないが、中間転写ベルトの転写性および薄紙分離性をより向上させるとの観点から、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリエーテルイミドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、0.005質量部以上であることがより好ましく、0.01質量部以上であることがさらに好ましい。また、基材中の導電剤の含有量の上限は、特に制限されないが、機械特性をより向上させるとの観点から、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリエーテルイミドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂100質量部に対して、1質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以下であることがさらに好ましい。
(他の成分)
本発明の一形態に係る中間転写ベルトが有する基材は、本発明の効果を損なわない限り、公知の基材に含有されうる他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、酸化防止剤、充填剤、滑剤、染料、有機顔料、無機顔料、可塑剤、レベリング剤、加工助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、発泡剤、ワックス、結晶核剤、離型剤、加水分解防止剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、ラジカル捕捉剤、防曇剤、防徽剤、イオントラップ剤、難燃剤、難燃助剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。他の成分の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で、所望の特性が得られるよう適宜設定すればよい。
[他の層]
本発明の一形態に係る中間転写ベルトは、本発明の効果を損なわない限り、公知の中間転写ベルトに含まれうる他の層をさらに有していてもよい。
他の層としては、例えば、弾性層や、表面層等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ここで、弾性層は、熱可塑性エラストマー(TPE)を主成分とする材料、加硫ゴムを主成分とする材料、あるいは高分子材料の発泡体等により形成されうる層であり、紙の厚さに対応して変形することで、転写性をより向上させるよう作用する。また、表面層は、通常、弾性層の表面上に形成され、例えば、アクリル系の材料で構成された場合は、弾性層を保護し、弾性層の変形に合わせて変形する適度な柔軟性と、接触に対する十分な耐久性(機械的強度や離型性など)とを付与することができる。
他の層の種類、組成、特性等については、本発明の効果を損なわない範囲で、所望の特性が得られるよう適宜設定すればよい。
[中間転写ベルトの製造方法]
本発明の他の一形態は、高誘電無機粒子に対して、アルミニウム、亜鉛、スズ、鉛、シリコン、ジルコニウムおよびチタンからなる群より選択される少なくとも1種の金属の酸化物による表面処理(金属酸化物表面処理)、ならびにカップリング剤による表面処理(カップリング剤表面処理)からなる群より選択される、少なくとも1種の表面処理を施し、少なくとも1種の表面処理が施された前記高誘電無機粒子(表面処理高誘電無機粒子)を得ることと、前記少なくとも1種の表面処理が施された高誘電無機粒子と、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドおよびこれらの前駆体からなる群より選択される少なくとも1種の材料と、を含む基材を形成することと、を含む、上記の中間転写ベルトの製造方法に関する。
(金属酸化物表面処理)
本発明の一形態に係る製造方法は、高誘電無機粒子に対して、金属酸化物表面処理を施し、表面処理高誘電無機粒子を得ることを含むことが好ましい。ここで、金属酸化物表面処理を施す高誘電無機粒子は、未処理高誘電無機粒子であっても、表面処理高誘電無機粒子であってもよい。また、金属酸化物表面処理を施す高誘電無機粒子としては、未処理高誘電無機粒子と、表面処理高誘電無機粒子とを併用してもよい。
金属酸化物表面処理方法は、特に制限されず、公知の粒子に対する金属酸化物を用いた表面処理方法を使用することができ、例えば、特開平3-275768号公報に記載の方法や、特開2007-09156号公報に記載の方法等が挙げられる。
これらの中でも、高誘電無機粒子を含む分散液と、金属酸化物前駆体とを混合して混合分散液を調製し、この混合分散液のpHを一定範囲内に保つようpH調整剤を添加し、一定期間熟成させる方法が好ましい。
高誘電無機粒子を含む分散液の分散媒は、水を含むことが好ましく、水のみであることがより好ましい。また、当該分散液中における高誘電無機粒子の濃度は、特に制限されないが、分散液の総質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、5質量%であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。この範囲であると、金属酸化物表面処理をより効率的に行うことができる。また、当該分散液中における高誘電無機粒子の濃度は、特に制限されないが、分散液の総質量に対して、60質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。この範囲であると、金属酸化物表面処理をより効率的に行うことができる。この範囲であると、より均一な表面処理が可能となり、表面処理状態がより良好となる。なお、高誘電無機粒子を含む分散液には、必要に応じて、他の添加物を含有させてもよい。
金属酸化物前駆体は、高誘電無機粒子を含む分散液中にそのまま添加してもよいが、溶液(分散液)の状態で添加することが好ましい。金属酸化物前駆体を含む溶液(分散液)の溶媒(分散媒)は、水を含むことが好ましく、水のみであることがより好ましい。また、当該溶液(分散液)中における金属酸化物前駆体の濃度は、特に制限されず、金属酸化物や高誘電無機粒子の種類、反応の方法に応じて適宜設定すればよい。
金属酸化物前駆体は、水溶性金属塩であることが好ましい。酸化アルミニウムによる表面処理に用いられる水溶性金属塩(水溶性アルミニウム塩)としては、特に制限されないが、例えば、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム等が挙げられる。酸化亜鉛による表面処理に用いられる水溶性金属塩(水溶性亜鉛塩)としては、特に制限されないが、例えば、硫酸亜鉛等が挙げられる。酸化スズによる表面処理に用いられる水溶性金属塩(水溶性スズ塩)としては、特に制限されないが、例えば、硫酸スズ、硝酸スズ、酢酸スズ、オキシ塩化スズ等が挙げられる。酸化鉛による表面処理に用いられる水溶性金属塩(水溶性鉛塩)としては、特に制限されないが、例えば、硝酸鉛、酢酸鉛等が挙げられる。酸化ケイ素による表面処理に用いられる水溶性金属塩(水溶性ケイ酸塩)としては、特に制限されないが、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等が挙げられる。酸化ジルコニウムによる表面処理に用いられる水溶性金属塩(水溶性ジルコニウム塩)としては、特に制限されないが、例えば、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、酸塩化ジルコニウム等が挙げられる。酸化チタンによる表面処理に用いられる水溶性金属塩(水溶性チタン塩)としては、特に制限されないが、例えば、四塩化チタン、硫酸チタン等が挙げられる。これらの中でも、水溶性アルミニウム塩、水溶性亜鉛塩、水溶性スズ塩、水溶性鉛塩が好ましく、水溶性アルミニウム塩がより好ましく、アルミン酸ナトリウムがさらに好ましい。
金属酸化物前駆体は、合成品を用いても市販品を用いてもよい。
金属酸化物前駆体は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
高誘電無機粒子の表面処理量としては、特に制限されないが、高誘電無機粒子(表面処理高誘電無機粒子を表面処理する場合は表面処理高誘電無機粒子)100質量部に対して、金属酸化物前駆体の量が金属酸化物換算で、0.1質量部以上とすることが好ましく、0.5質量部以上とすることがより好ましく、1質量部以上とすることがさらに好ましい。この範囲であると、中間転写ベルトの転写性および薄紙分離性がより向上する。この理由は、表面処理がより十分に行われるからであると推測される。また、高誘電無機粒子の表面処理量は、特に制限されないが、高誘電無機粒子(表面処理高誘電無機粒子を表面処理する場合は表面処理高誘電無機粒子)100質量部に対して、金属酸化物前駆体の量が金属酸化物換算として、100質量部以下とすることが好ましく、50質量部以下とすることがより好ましく、10質量部以下とすることがさらに好ましい。この範囲であると、生産効率がより向上する。なお、金属酸化物表面処理後に含水状態の金属酸化物が得られる場合であっても、上記金属酸化物前駆体の量は、含水状態ではない金属酸化物の量に換算した値とする。
高誘電無機粒子を含む分散液と、金属酸化物前駆体とを混合する際の温度は、特に制限されず、金属酸化物や高誘電無機粒子の種類、反応の方法に応じて適宜設定すればよい。
金属酸化物前駆体として水溶性金属塩を用いる場合、金属酸化物表面処理は、水溶性金属塩を中和することで行うことが好ましい。その具体的な方法としては、水溶性金属塩とpH調整剤とを同時に並行添加する方法や、水溶性金属塩の添加後にpH調整剤を添加する方法等が挙げられる。これらの中でも、より均一な表面処理を可能とし、表面処理状態をより良好とするとの観点から、水溶性金属塩の添加後にpH調整剤を添加する方法が好ましい。
pH調整剤は、水酸化金属塩を中和することができる化合物であることが好ましく、かような化合物としては、公知の酸または塩基を使用することができる。pH調整剤としては、特に制限されないが、例えば、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸や、酢酸、ギ酸、プロピオン酸等の有機酸等の酸性化合物、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物または炭酸塩、アンモニウム化合物等の塩基性化合物等が挙げられる。これらの中でも、無機酸であることが好ましく、硫酸であることがより好ましい。
pH調整剤は、そのまま添加してもよいが、溶液の状態で添加することが好ましい。pH調整剤を含む溶液の溶媒は、水を含むことが好ましく、水のみであることがより好ましい。また、当該溶液中におけるpH調整剤の濃度は、特に制限されず、金属酸化物や高誘電無機粒子の種類、反応の方法に応じて適宜設定すればよく、例えば、0.1~10規定(0.1g/L~10g/L)とすればよい。
pH調整剤の添加は、添加対象である混合分散液のpHを一定範囲に保ちながら行うことが好ましい。pH値の範囲は、特に制限されないが、より均一な表面処理を可能とし、表面処理状態をより良好とするとの観点から、4.5~9.5であることが好ましく、4.5~9.0であることがより好ましく、5.0~8.0であることがさらに好ましい。
pH調整剤の添加により中和反応を行う際の温度(中和温度)は、特に制限されず、金属酸化物や高誘電無機粒子の種類、反応の方法に応じて適宜設定すればよい。
pH調整剤の添加終了後、得られた分散液を一定期間熟成させることが好ましい。
熟成は、攪拌しながら行うことが好ましい。
熟成期間としては、特に制限されないが、より均一な表面処理を可能とし、表面処理状態をより良好とするとの観点から、1分以上であることが好ましく、10分以上であることがより好ましく、30分以上であることがさらに好ましい。また、熟成期間としては、特に制限されないが、生産効率の観点から、3,600分以下であることが好ましく、360分以下であることがより好ましく、180分以下であることがさらに好ましい。
熟成を行う際の温度(熟成温度)は、特に制限されず、金属酸化物や高誘電無機粒子の種類、反応の方法に応じて適宜設定すればよい。
熟成後、得られた分散液を濾過して表面処理高誘電無機粒子を取り出して必要に応じて純水等で洗浄した後、加熱乾燥を行い、その後粉砕をすることが好ましい。加熱乾燥条件としては、特に制限されないが、乾燥温度は100~200℃であることが好ましく、乾燥時間は1~72時間であることが好ましい。また、粉砕方法は、特に制限されず、一例としては、自動乳鉢(日陶科学株式会社製、ANM1000)等を用いて行うことができる。
(カップリング剤表面処理)
本発明の一形態に係る製造方法は、高誘電無機粒子に対して、カップリング剤表面処理を施し、表面処理高誘電無機粒子を得ることを含むことが好ましい。ここで、カップリング剤表面処理を施す高誘電無機粒子は、未処理高誘電無機粒子であっても、表面処理高誘電無機粒子であってもよい。また、カップリング剤表面処理を施す高誘電無機粒子としては、未処理高誘電無機粒子と、表面処理高誘電無機粒子とを併用してもよい。
カップリング剤表面処理方法は、高誘電無機粒子を含む分散液と、カップリング剤を含む溶液(分散液)とを混合し、得られた混合分散液を一定期間経時させる方法が好ましい。
高誘電無機粒子を含む分散液の分散媒は、有機溶剤または水を含むことが好ましく、有機溶剤を含むことがより好ましい。有機溶剤としては、特に制限されず、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒等が挙げられる。これらの中でもアルコール系溶媒が好ましい。アルコール系溶媒としては、特に制限されないが、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、sec-ブタノール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、ベンジルアルコール等が挙げられる。これらの中でも、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、sec-ブタノールが好ましく、メタノールがより好ましい。これら有機溶剤は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
また、高誘電無機粒子を含む分散液中における高誘電無機粒子の濃度は、特に制限されないが、分散液の総質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、5質量%であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。この範囲であると、金属酸化物表面処理をより効率的に行うことができる。また、当該分散液中における高誘電無機粒子の濃度は、特に制限されないが、分散液の総質量に対して、80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましい。この範囲であると、金属酸化物表面処理をより効率的に行うことができる。
なお、高誘電無機粒子を含む分散液には、必要に応じて、他の添加物を含有させてもよい。
カップリング剤を含む溶液(分散液)の分散媒は、有機溶剤または水を含むことが好ましく、有機溶剤および水を含むことがより好ましい。有機溶剤としては、特に制限されず、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒等が挙げられる。これらの中でもアルコール系溶媒が好ましい。アルコール系溶媒としては、特に制限されないが、例えば、高誘電無機粒子を含む分散液の分散媒で挙げたものと同様のものが挙げられる。これらの中でも、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、sec-ブタノールが好ましく、メタノールがより好ましい。特に、カップリング剤を含む溶液(分散液)に含まれる有機溶媒と、高誘電無機粒子を含む分散液に含まれる有機溶媒とが同じであることが好ましい。
カップリング剤を含む溶液(分散液)の溶媒(分散媒)が有機溶剤および水であるとき、溶媒(分散媒)の総質量に対する水の含有量は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましい。この範囲であると、カップリング剤表面処理をより効率的に行うことができる。例えば、アルコキシ基を有するカップリング剤では、アルコキシ基がシラノールとなり、無機粒子表面の水酸基と水素結合しやすい。また、溶媒(分散媒)の総質量に対する水の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下あることがさらに好ましい。この範囲であると、十分な表面処理量を維持しつつ、経済性がより向上する。
また、カップリング剤を含む溶液(分散液)中におけるカップリング剤の濃度は、特に制限されないが、当該溶液(分散液)の総質量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%であることがより好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましい。この範囲であると、カップリング剤表面処理をより効率的に行うことができる。また、当該溶液(分散液)中におけるカップリング剤の濃度は、特に制限されないが、当該溶液(分散液)の総質量に対して、30質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。この範囲であると、カップリング剤表面処理をより効率的に行うことができる。
カップリング剤を含む溶液(分散液)は、酸性化合物をさらに含むことが好ましい。酸性化合物としては、特に制限されず公知のものを使用することができるが、例えば、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸や、酢酸、ギ酸、プロピオン酸等の有機酸等が挙げられる。これらの中でも、有機酸が好ましく、酢酸がより好ましい。
なお、カップリング剤を含む溶液(分散液)には、必要に応じて、他の添加物を含有させてもよい。
高誘電無機粒子を含む分散液と、カップリング剤を含む溶液(分散液)とを混合する際の温度は、特に制限されず、金属酸化物や高誘電無機粒子の種類、反応の方法に応じて適宜設定すればよい。
高誘電無機粒子を含む分散液と、カップリング剤を含む溶液(分散液)とを混合後、得られた混合分散液を一定期間経時させることが好ましい。
経時は、攪拌しながら行うことが好ましい。
経時期間としては、特に制限されないが、より均一な表面処理を可能とし、表面処理状態をより良好とするとの観点から、1分以上であることが好ましく、10分以上であることがより好ましく、30分以上であることがさらに好ましい。また、熟成期間としては、特に制限されないが、生産効率の観点から、3,600分以下であることが好ましく、360分以下であることがより好ましく、180分以下であることがさらに好ましい。
経時を行う際の温度は、特に制限されず、金属酸化物や高誘電無機粒子の種類、反応の方法に応じて適宜設定すればよい。
経時後、得られた分散液について、減圧乾燥により溶媒を蒸発させた後、加熱乾燥を行い、その後粉砕をすることが好ましい。加熱乾燥条件としては、特に制限されないが、乾燥温度は100~200℃であることが好ましく、乾燥時間は0.5~24時間であることが好ましい。また、粉砕方法は、特に制限されず、一例としては、自動乳鉢(日陶科学株式会社製、ANM1000)等を用いて行うことができる。
カップリング剤表面処理は、粉末状の高誘電無機粒子と、カップリング剤とを機械的に混合攪拌する方法や、粉末状の高誘電無機粒子にカップリング剤を噴霧しながら、機械的に混合攪拌する方法で行うこともまた好ましい。これらの方法では、添加したカップリング剤は、ほぼ全量が高誘電無機粒子の粒子表面に被覆される。
カップリング剤で均一に高誘電無機粒子の粒子表面を被覆するためには、粉末状の高誘電無機粒子の凝集を、あらかじめ粉砕機を用いて解きほぐしておくことが好ましい。
粉末状の高誘電無機粒子と、カップリング剤とを混合するための機器としては、特に制限されないが、粉体(粉末状の高誘電無機粒子と、カップリング剤とを含む混合物)にせん断力を加えることのできる装置であることが好ましい。これらの中でも、せん断、へらなでおよび圧縮が同時に行える装置、例えば、ホイール型混練機、ボール型混練機、ブレード型混練機、ロール型混練機がより好ましく、ホイール型混練機がさらに好ましい。
ホイール型混練機としては、例えば、エッジランナー(「ミックスマラー」、「シンプソンミル」、「サンドミル」と同義語である)、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、コナーミル、リングマラー等が挙げられる。これらの中でも、エッジランナー、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、リングマラーが好ましく、エッジランナーがより好ましい。ボール型混練機としては、例えば、振動ミル等が挙げられる。上記ブレード型混練機としては、例えば、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー、ナウタミ キサー等が挙げられる。ロール型混練機としては、例えば、エクストルーダー等が挙げられる。
混合時における処理条件は、カップリング剤によって高誘電無機粒子を被覆することができれば特に制限されない。処理時間は、適宜調整すればよく、一例としては、5~120分であることが好ましく、10~90分であることがより好ましい。また、撹拌速度は、適宜調整すればよく、一例としては、2~2,000rpmであることが好ましく、5~1000rpmであることがより好ましく、10~800rpmであることがさらに好ましい。
また、高速で粉体にせん断力を加えることのできる装置としては、高速せん断ミル、ブレード型混練機、遊星ミル等が挙げられる。これらの中でも、高速せん断ミルが好ましい。
高速せん断ミルとしては、例えば、ハイブリダイザー、ノビルタ(ホソカワミクロン製)等が挙げられる。
高速で粉体にせん断力を加えることのできる装置の処理条件は、特に制限されない。混合時における攪拌速度は、適宜調整すればよく、一例としては、100~100,000rpmが好ましく、1,000~50,000rpmがより好ましい。処理時間は、適宜調整すればよく、一例としては、1~120分であることが好ましく、2~90分であることがより好ましい。
混合処理時または混合処理終了後に、加熱、乾燥処理をさらに行ってもよい。加熱温度としては、特に制限されず適宜調整すればよいが、一例としては、50~200℃であることが好ましい。
なお、カップリング剤表面処理に用いられるカップリング剤および高誘電無機粒子は、それぞれ上記の中間転写ベルトの説明にて述べたものと同様である。
また、高誘電無機粒子の表面処理量としては、特に制限されないが、高誘電無機粒子(表面処理高誘電無機粒子を表面処理する場合は表面処理高誘電無機粒子)100質量部に対して、カップリング剤の量が0.1質量部以上とすることが好ましく、1質量部以上とすることがより好ましく、3質量部以上とすることがさらに好ましく、5質量部以上とすることが特に好ましい。この範囲であると、中間転写ベルトの転写性および薄紙分離性がより向上する。この理由は、表面処理がより十分に行われるからであると推測される。また、高誘電無機粒子の表面処理量は、特に制限されないが、高誘電無機粒子(表面処理高誘電無機粒子を表面処理する場合は表面処理高誘電無機粒子)100質量部に対して、カップリング剤の量が100質量部以下とすることが好ましく、60質量部以下とすることがより好ましく、30質量部以下とすることがさらに好ましく、20質量部以下とすることが特に好ましい。この範囲であると、生産効率がより向上する。
(表面処理の順序)
本発明の一形態に係る製造方法において、金属酸化物表面処理およびカップリング剤表面処理の両方を行う場合、いずれを先に行ってもよい。しかしながら、中間転写ベルトの転写性および薄紙分離性をより向上させるとの観点から、金属酸化物表面処理を施した後、カップリング剤表面処理を施すことが好ましい。この順序で表面処理を行うことで、より均一な表面処理を可能とし、表面処理状態をより良好とすることができるからであると推測される。
(基材の形成)
本発明の一形態に係る中間転写ベルトの製造方法は、上記の表面処理高誘電無機粒子と、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドおよびこれらの前駆体からなる群より選択される少なくとも1種の材料と、を含む基材を形成することと、を含む。
基材を形成する方法は、特に制限されず、公知の基材形成方法を使用することができる。例えば、塗膜形成工程、乾燥・焼成工程等を有する方法等が挙げられる。
塗膜形成工程としては、例えば、基材形成用塗布液を円筒状金型の内周面または外周面に浸漬して塗膜を形成する方法が挙げられる。また、基材形成用塗布液を内周面または外周面に塗布して塗膜を形成する方法や、必要に応じてさらに遠心して塗膜を形成する方法が挙げられる。さらに、円筒状金型を、円筒軸を中心に回転させながら、ディスペンスノズルを軸方向に移動させ、当該ノズルから基材形成用塗布液を吐出して当該金型の内周面上または外周面上にらせん状に塗布し、それらがつながった無端ベルト状の塗膜を形成する方法が挙げられる。当該方法の中でも、円筒状金型の内周面上に塗布を行う方法が好ましい。ただし、塗膜形成工程はこれらに限定されるものではない。
また、乾燥工程としては、例えば、円筒状金型上に形成された塗膜を、必要に応じて円筒軸を中心に回転させながら、加熱乾燥する方法や、必要に応じてさらに塗膜を加熱処理(例えば、熱イミド化処理等)する方法が挙げられる。ただし、塗膜形成工程はこれらに限定されるものではない。
また、無端ベルト状の基材の製造に際しては、金型の離型処理や脱泡処理などの適宜な処理を施すことができる。
基材形成用塗布液は、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドおよびこれらの前駆体からなる群より選択される少なくとも1種の材料と、表面処理高誘電無機粒子と、溶媒とを含む。また、基材形成用塗布液は、必要に応じて、導電剤、界面活性剤や、他の成分をさらに含んでいてもよい。これら成分は、上記の中間転写ベルトの説明にて述べたものと同様である。
基材形成用塗布液中の固形分濃度は、特に制限されないが、基材中の表面処理高誘電無機粒子や導電剤の存在状態の均一性をより高めるとの観点や、塗布性の向上や塗膜故障の低減の観点から、基材形成用塗布液の総質量に対して、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、1質量%以上30質量%以下がより好ましく、5質量%以上25質量%以下がさらに好ましい。
なお、基材形成用塗布液中のポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドおよびこれらの前駆体からなる群より選択される少なくとも1種の材料100質量部に対する表面処理高誘電無機粒子、導電剤、界面活性剤の好ましい含有比率の範囲は、それぞれ、上記中間転写ベルトの基材中のポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリエーテルイミドからなる群より選択される樹脂100質量部に対する好ましい含有比率の範囲と同様である。
基材形成用塗布液の調製方法は、特に制限されず、公知の分散液の調製方法を使用することができる。これらの中でも、基材形成用塗布液は、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドおよびこれらの前駆体からなる群より選択される少なくとも1種の材料と、上記の表面処理高誘電無機粒子を含む分散液A(以下、「表面処理高誘電無機粒子分散液A」とも称する)と、上記の導電剤を含む分散液B(以下、「導電剤分散液B」とも称する)と、必要に応じてさらに他の添加成分とを混合して調製することが好ましい。これらの混合手段、混合方法、混合条件は特に制限されず、公知の手段、方法、条件を適宜採用することができる。また、これらの混合順序も特に限定されるものではない。
基材形成用塗布液の調製において、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドまたはこれらの前駆体は、そのまま添加してもよいが、溶液(分散液)の状態で添加することが好ましい。これらの樹脂を含む溶液(分散液)の溶媒は、特に制限されず、公知のものを用いることができる。例えば、水、アルコール系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、スルホキシド系溶媒、ホルムアミド系溶媒、アセトアミド系溶媒、ピロリドン系溶媒等が挙げられる。これらの中でも、ジメチルスルホキシド、N,N’-ジメチルアセトアミド、N,N’-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドンが好ましく、N-メチル-2-ピロリドンがより好ましい。
これらの樹脂またはこれらの前駆体を含む溶液(分散液)中のこれらの樹脂またはこれらの前駆体の濃度は、特に制限されないが、基材中の表面処理高誘電無機粒子や導電剤の存在状態の均一性をより高めるとの観点から、これらの樹脂またはこれらの前駆体を含む溶液(分散液)の総質量に対して、1質量%以上50質量%以下が好ましく、5質量%以上40質量%以下がより好ましく、10質量%以上30質量%以下がさらに好ましい。
なお、これらの樹脂またはこれらの前駆体を含む溶液(分散液)には、必要に応じて、他の添加物を含有させてもよい。
これらの樹脂またはこれらの前駆体を含む溶液(分散液)は、市販品を用いてもよく、市販品としては、例えば、宇部興産株式会社製、ユピア(登録商標)-AT1001、ST1001、ST1002、NF1001、NF2001、FN1001、FN2001、LB1001、LB2001等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
表面処理高誘電無機粒子分散液Aの分散媒は、特に制限されず、公知のものを用いることができる。例えば、水、アルコール系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、スルホキシド系溶媒、ホルムアミド系溶媒、アセトアミド系溶媒、ピロリドン系溶媒等が挙げられる。これらの中でも、ジメチルスルホキシド、N,N’-ジメチルアセトアミド、N,N’-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドンが好ましく、N-メチル-2-ピロリドンがより好ましい。特に、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドおよびこれらの前駆体からなる群より選択される少なくとも1種の材料を含む溶液(分散液)に含まれる溶媒(分散媒)と同じであることが好ましい。
表面処理高誘電無機粒子分散液A中の表面処理高誘電無機粒子の濃度は、特に制限されないが、基材中の当該粒子の存在状態の均一性をより高めるとの観点から、表面処理高誘電無機粒子分散液Aの総質量に対して、1質量%以上50質量%以下が好ましく、5質量%以上40質量%以下がより好ましく、10質量%以上30質量%以下がさらに好ましい。
なお、表面処理高誘電無機粒子分散液Aには、必要に応じて、他の添加物を含有させてもよい。
表面処理高誘電無機粒子分散液Aの調製において、分散液の均一性をより向上させるとの観点から、表面処理高誘電無機粒子と、分散媒との混合後、超音波を印加することが好ましい。
導電剤分散液Bの分散媒は、特に制限されず、公知のものを用いることができる。例えば、水、アルコール系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、スルホキシド系溶媒、ホルムアミド系溶媒、アセトアミド系溶媒、ピロリドン系溶媒等が挙げられる。これらの中でも、ジメチルスルホキシド、N,N’-ジメチルアセトアミド、N,N’-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドンが好ましく、N-メチル-2-ピロリドンがより好ましい。特に、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドおよびこれらの前駆体からなる群より選択される少なくとも1種の材料を含む溶液(分散液)に含まれる溶媒(分散媒)と同じであることが好ましい。
導電剤分散液B中の導電剤の濃度は、特に制限されないが、基材中の導電剤の存在状態の均一性をより高めるとの観点から、導電剤分散液Bの総質量に対して、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、1質量%以上40質量%以下がより好ましく、10質量%以上30質量%以下がさらに好ましい。
導電剤分散液Bは、上記の導電剤と、分散媒とに加え、上記のポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドおよびこれらの前駆体からなる群より選択される少なくとも1種の材料を含むことが好ましい。これらの樹脂または前駆体を含有させることで、基材中で導電剤をより均一に分散させることができるからである。これらの樹脂または前駆体は、基材形成用塗布液の調製の際に混合するものと同様であることが好ましい。また、導電剤分散液B中のこれらの樹脂または前駆体の含有量は、特に制限されないが、導電剤分散液B中の導電剤100質量部に対して、10質量部以上500質量部以下であることが好ましく、25質量部以上200質量部以下であることがより好ましく、50質量部以上100質量部以下であることがさらに好ましい。
また、導電剤分散液Bは、上記の導電剤と、分散媒とに加え、上記の界面活性剤をさらに含むことが好ましい。界面活性剤を含有させることで、基材中での導電剤をより均一に分散させることができるからである。導電剤分散液B中の界面活性剤の含有量は、特に制限されないが、導電剤分散液B中の導電剤100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.25質量部以上2質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上1質量部以下であることがさらに好ましい。
なお、導電剤分散液Bには、必要に応じて、他の添加物を含有させてもよい。
基材形成用塗布液の塗布は、回転軸を中心として円筒状金型を回転させつつ行うことが好ましい。一例としては、円筒状金型の内周面に、ディスペンサーを介して基材形成用塗布液を投入し、当該金型を回転させて均一な厚さを有する展開層(塗工層)を形成する方法等が挙げられる。金型の周速は、特に制限されないが、10rpm以上3,000rpm以下が好ましく、100rpm以上2,500rpm以下がより好ましく、1,000rpm以上2,000rpm以下がさらに好ましい。また、塗布液投入後に金型を回転させる場合、金型の回転時間は、特に制限されないが、1分以上60分以下であることが好ましく、5分以上30分以下であることがより好ましく、10分以上20分以下であることがさらに好ましい。
塗膜の乾燥条件としては、特に制限されず、公知の条件を用いることができる。塗膜の乾燥は、複数の段階で行ってもよい。
乾燥温度は、基材形成用塗布液の組成によっても異なるが、25℃以上450℃以下が好ましく、加熱乾燥を行う場合、加熱乾燥温度は50℃以上450℃以下が好ましい。なお、加熱乾燥は、常温(25℃)での乾燥の後に行ってもよい。加熱乾燥を他段階で行う場合は、1回目の加熱乾燥温度は、50℃以上150℃以下が好ましい。また、2回目の加熱乾燥温度は、150℃以上450℃以下が好ましく、150℃以上400℃以下がより好ましい。そして、3回目以降の加熱乾燥温度は、200℃以上450℃以下が好ましく、200℃以上400℃以下がより好ましい。
なお、基材形成用塗布液がポリイミド、ポリアミドイミドまたはポリエーテルイミドの前駆体を含む場合、2回目以降の加熱乾燥温度が上記範囲であれば、2回目以降の加熱乾燥は後述の熱イミド化処理を兼ねることができる。
塗膜の加熱乾燥時間は、基材形成用塗布液の組成によっても異なり、塗膜を十分に乾燥することができれば特に制限されない。ここで、加熱乾燥を他段階で行う場合は、各段階における加熱乾燥時間は、共に、5分以上180分以下が好ましい。また、1回目および2回目の加熱乾燥時間は、共に、10分以上90分以下がより好ましく、10分以上60分以下がさらに好ましい。そして、熱イミド化処理を兼ねる加熱乾燥では、加熱乾燥時間は、10分以上180分以下がより好ましく、30分以上180分以下がさらに好ましい。
熱イミド化処理を行う場合の条件としては、特に制限されず、公知の条件を用いることができる。熱イミド化温度は、ポリイミド、ポリアミドイミドまたはポリエーテルイミドの前駆体(ポリアミド酸、ポリアミド-ポリアミド酸共重合体等)をはじめとする基材形成材料の組成によっても異なるが、150℃以上450℃以下が好ましい。
熱イミド化処理の時間は、ポリイミドやポリアミドイミドの前駆体(ポリアミド酸、ポリアミド-ポリアミド酸共重合体等)をはじめとする基材形成材料の組成によっても異なるが、5分以上180分以下であることが好ましい。
塗膜の乾燥および熱イミド化処理は、回転軸を中心として円筒状金型を回転させつつ行うことが好ましい。乾燥時の円筒状金型の周速は、特に制限されないが、1rpm以上1,000rpm以下が好ましく、5rpm以上800rpm以下がより好ましく、10rpm以上400rpm以下がさらに好ましい。
(他の層の形成)
基材に加え、必要に応じてさらに設けられる他の層の形成方法は、特に制限されず、それぞれの層について公知の方法によって形成することができる。例えば、弾性層の形成方法としては、弾性材料、導電剤および必要に応じて用いられうる他の成分を含む弾性層形成材料を溶媒に溶解させた弾性層形成用塗布液を用いて塗膜を形成する方法や、弾性材料、導電剤および必要に応じて用いられうる他の成分を含む弾性層形成材料を溶融させて膜を形成する方法等が挙げられる。また、表面層の形成方法としては、例えば、硬化性樹脂材料を含み、さらに重合開始剤を含む表面層形成用塗布液を塗布し塗膜を形成した後、硬化を行う方法等が挙げられる。
<画像形成装置および画像形成方法>
本発明の他の一形態は、上記の中間転写ベルトを有する画像形成装置に関する。上記の中間転写ベルトを用いる画像形成装置は、特に制限されず公知の画像形成装置に用いることができる。これらの中でも、例えば、電子写真方式の画像形成装置である。電子写真方式の画像形成装置は、像担持体(感光体ドラム)上に静電的に形成された画像(例えば、トナー像等)を、循環移動する上記の中間転写ベルトに1次転写する1次転写手段と、当該中間転写ベルト上に形成される画像(例えば、中間トナー像等)を画像支持体に2次転写する2次転写手段と、を具える画像形成装置に用いることが好ましい。
すなわち、上記の中間転写ベルトは、画像を当該中間転写ベルトに1次転写することと、前記中間転写ベルトに転写された画像を画像支持体に2次転写することを含む、画像形成方法に用いられることが好ましい。そして、当該画像形成方法は、像担持体上に静電的に画像を形成することと、当該画像を循環移動する上記の中間転写ベルトに1次転写することと、当該中間転写ベルト上に形成される画像を画像支持体に2次転写することと、を含む画像形成方法に用いられることがより好ましい。
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の一形態に係る画像形成装置および画像形成方法を説明する。ただし、本発明は以下で説明する一形態のみに限定されるものではない。
図1は、中間転写ベルトを用いた画像形成装置の構成の一例を示す説明用断面図である。
画像形成装置100は、電子写真方式の作像プロセスを用いてカラー画像を画像支持体である記録媒体(例えば、用紙等)上に形成する。
この画像形成装置100は、タンデム型カラー画像形成装置とも称され、4組の画像形成部によりカラー画像を形成する。4組の画像形成部は、イエロー(Y)色の画像を形成する画像形成部10Y、マゼンタ(M)色の画像を形成する画像形成部10M、シアン(C)色の画像を形成する画像形成部10C、ブラック(K)色の画像を形成する画像形成部10Kである。
画像形成部10Yは、像担持体としての感光体ドラム1Yと、その周囲に配置された帯電部2Y、光書込部3Y、現像装置4Yおよび感光体ドラムクリーニング装置5Yとを有する。同様に、画像形成部10Mは、像担持体としての感光体ドラム1Mと、その周囲に配置された帯電部2M、光書込部3M、現像装置4Mおよび感光体ドラムクリーニング装置5Mとを有する。画像形成部10Cは、像担持体としての感光体ドラム1Cと、その周囲に配置された帯電部2C、光書込部3C、現像装置4Cおよび感光体ドラムクリーニング装置5Cとを有する。画像形成部10Kは、像担持体としての感光体ドラム1Kと、その周囲に配置された帯電部2K、光書込部3K、現像装置4Kおよび感光体ドラムクリーニング装置5Kとを有する。なお、画像形成部10Y、10M、10Cおよび10Kのそれぞれの感光体ドラム1Y、1M、1Cおよび1K、帯電部2Y、2M、2Cおよび2K、光書込部3Y、3M、3Cおよび3K、現像装置4Y、4M、4Cおよび4K、ならびに感光体ドラムクリーニング装置5Y、5M、5Cおよび5Kは、それぞれ同様の機能を有する構成である。
中間転写ベルト1は上記の中間転写ベルトである。中間転写ベルト1は複数の支持ローラー16により走行可能に架設されている。
画像形成部10Y、10M、10Cおよび10Kに形成された各色のトナー像は、1次転写部7Y、7M、7Cおよび7Kにより走行する中間転写ベルト1上に逐次転写される。これにより中間転写ベルト1上には、各色(Y、M、C、K)の層が重畳したカラー画像(トナー像)が1次転写される。
中間転写ベルト1に当接して2次転写ローラー30が配設されている。2次転写ローラー30は、中間転写ベルト1の動きに合わせて従動する。2次転写ローラー30の中間転写ベルト1を介して対向する位置には、複数の支持ローラー16の一つが配設されている。2次転写ローラー30と中間転写ベルト1とによって2次転写ニップ部18が形成されている。
用紙搬送部20は、用紙Sを搬送する。用紙Sは、給紙トレイ291、292および293に収容されており、第1給紙部21により給紙され、ループ形成ローラー対22およびレジストローラー対23を経て、2次転写ニップ部18に搬送される。
2次転写ニップ部18において中間転写ベルト1上に形成されたカラー画像が用紙S上に2次転写される。カラー画像が転写された用紙Sは、定着装置50のニップ部Nにおいて熱と圧力とが加えられることにより、用紙S上のトナー像が溶融定着される。そして、用紙Sは、排紙ローラー25により装置外に排紙される。
画像形成装置100の上記各部は、制御部90と接続されており、制御部90により適宜制御される。制御部90の一部として構成されるCPU(不図示)は、画像形成された画像のピクセル数をカウントして積算する処理、または画像形成処理された用紙Sの枚数をカウントして積算する処理等を実行する。これらの処理の詳細については後述する。なお、これらの処理に対応するプログラムは、制御部90に含まれる記憶部(不図示)等に格納される。画像形成装置100の各部の各機能は、CPUが対応するプログラムを実行することにより発揮される。
なお、画像形成装置100は、それぞれ上述した構成要素以外の構成要素を含んでいてもよく、あるいは、上述した構成要素のうちの一部が含まれていなくてもよい。
次に、画像形成装置100により用紙に画像形成する電子写真プロセスについて説明する。
まず、スリットSLを頂部に備える原稿台に原稿が載置され、載置された原稿は、画像読取り装置SCの走査露光装置の光学系により画像が走査露光され、原稿からの反射光がミラーを介してラインイメージセンサーによって読み込まれ光電変換される。光電変換されて生成された色毎の画像情報信号は、画像処理部(不図示)によりアナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等が施された後、対応する色の画像形成部10Y、10M、10Cおよび10Kの光書込部3Y、3M、3Cおよび3Kにそれぞれ入力される。
画像形成部10Y、10M、10Cおよび10Kの光書込部3Y、3M、3Cおよび3Kは、画像情報信号を感光体ドラム1Y、1M、1Cおよび1Kに書き込み、感光体ドラム1Y、1M、1Cおよび1K上に画像情報信号に基づく潜像を形成する。具体的には、感光体ドラム1Y、1M、1Cおよび1Kは、有機光導電体(Organic Photo Conductor:OPC)を含むポリカーボネート等の樹脂からなる感光層を金属基体上に有している。感光体ドラム1Y、1M、1Cおよび1Kの表面は、スコロトロンタイプ等のコロナ放電極からなる帯電部2Y、2M、2Cおよび2Kにより生成されるイオンにより帯電され、光書込部3Y、3M、3Cおよび3Kは画像情報信号に基づいて感光体ドラム1Y、1M、1Cおよび1K上を走査露光する。帯電された感光体ドラム1Y、1M、1Cおよび1Kの露光された部分は電位が低下し、画像情報信号に対応する静電潜像が感光体ドラム1Y、1M、1Cおよび1K上に形成される。現像装置4Y、4M、4Cおよび4Kは、静電力を利用して感光体ドラム1Y、1M、1Cおよび1K上に形成された静電潜像をトナーで現像し、各色に対応するトナー像が形成される。
ここで、現像するためのトナーは、感光体ドラム1Y、1M、1Cおよび1Kと同じ極性に帯電している。例えば、感光体ドラム1Y、1M、1Cおよび1Kは負極に帯電している。負極に帯電された感光体ドラム1Y、1M、1Cおよび1K上の領域のうち、光書込部3Y、3M、3Cおよび3Kにより電位が低下した潜像部分にだけ、負極に帯電したトナーが付着され、感光体ドラム1Y、1M、1Cおよび1K上に静電潜像を形成できる。感光体ドラム1Y、1M、1Cおよび1K上の静電潜像は、中間転写ベルト1上に1次転写され、中間転写ベルト1上にトナー像を形成できる。この時、中間転写ベルト1を正極にすることによって、負極に帯電したトナーの中間転写ベルト1への転写を促すことができる。なお、中間転写ベルト1上には、印刷濃度や、色または画像形成位置の補正等のために、用紙Sに転写させないパッチが形成される。パッチを形成するためのトナーは、静電潜像を形成するためのトナー同様、負極に帯電している。それから、中間転写ベルト1上に形成されたトナー像は、2次転写ニップ部18において、用紙S上に2次転写される。この時、用紙Sを負極に帯電することによって、中間転写ベルト1により正極に帯電されたトナー像の、用紙Sへの転写を促すことができる。
以上のような画像形成装置において、上記の中間転写ベルトを用いることにより、優れた画像の転写性と、薄紙分離性との両立が実現されうる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。以下の実施例においては、特記しない限り、「部」および「%」はそれぞれ「質量部」および「質量%」を意味する。なお、本発明は以下実施例に限定されるものではない。
<中間転写ベルトの製造>
[表面処理高誘電無機粒子の準備]
以下の手順に従い、表面処理高誘電無機粒子1~7をそれぞれ準備した。
(表面処理高誘電無機粒子1)
高誘電無機粒子であるチタン酸バリウム粒子(BaTiO3、比重6.02g/m3、比誘電率εr 1,000、個数平均粒子径(平均一次粒子径)100nm)100質量部と、水400質量部とを混合、撹拌して、チタン酸バリウム粒子の水分散液を得た。次いで、当該水分散液に、前記チタン酸バリウム粒子100質量%に対してAl2O3換算で5質量%に相当する量のアルミン酸ナトリウムを含有する水溶液(両性金属添加液)を加え、さらに、硫酸(1規定)をpHが7.5前後に保持されるように滴下した後、得られた分散液を1時間撹拌して熟成させることで、前記チタン酸バリウム粒子について含水アルミナによる表面処理をした。続いて、得られた含水アルミナ表面処理チタン酸バリウム粒子をろ過、洗浄し、120℃で15時間乾燥した。その後、乾燥した含水アルミナ表面処理チタン酸バリウム粒子を自動乳鉢(日陶科学株式会社製、ANM1000)にて粉砕して、アルミナにより表面処理されたチタン酸バリウム粒子である表面処理高誘電無機粒子1を得た。
(表面処理高誘電無機粒子2)
高誘電無機粒子であるチタン酸バリウム粒子(BaTiO3、比重6.02g/m3、比誘電率εr 1,000、個数平均粒子径(平均一次粒子径)300nm)100質量部と、メタノール200質量部とを混合、撹拌して、チタン酸バリウム粒子のメタノール分散液を得た。また、メタノール160質量部と、酢酸2質量部と、水0.2質量部と、カップリング剤である3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM-903)14質量部と、を混合、攪拌して、カップリング剤を含む溶液を得た。次いで、前記チタン酸バリウム粒子のメタノール分散液に、前記カップリング剤を含む溶液を添加し、常温(25℃)にて1時間攪拌した。その後、得られた分散液を減圧乾燥して溶媒を蒸発させ、120℃にて2時間加熱した。その後、乾燥した3-アミノプロピルトリメトシキシシラン表面処理チタン酸バリウム粒子を自動乳鉢(日陶科学株式会社製、ANM1000)にて解砕し、カップリング剤により表面処理されたチタン酸バリウム粒子である表面処理高誘電無機粒子2を得た。
(表面処理高誘電無機粒子3)
高誘電無機粒子(BaTiO3、比重6.02g/m3、比誘電率εr 1,000、個数平均粒子径(平均一次粒子径)100nm)100質量部をヘンシェルミキサーに投入し、撹拌羽根の周速35m/秒にて、10分間撹拌後、カップリング剤である3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBE-403)4質量部を添加し、撹拌羽根の周速35m/秒にて30分間混合した。得られた混合物をバットに取り出した後、100℃にて1時間加熱することで、カップリング剤により表面処理されたチタン酸バリウム粒子である表面処理高誘電無機粒子3を得た。
(表面処理高誘電無機粒子4)
表面処理高誘電無機粒子1の準備と同様にして、アルミナ処理されたチタン酸バリウム粒子である表面処理高誘電無機粒子を得た。次いで、表面処理高誘電無機粒子2の準備において、未処理の高誘電無機粒子をこの得られたアルミナ処理されたチタン酸バリウム粒子である表面処理高誘電無機粒子に代えた以外は同様にして、アルミナおよびカップリング剤により表面処理されたチタン酸バリウム粒子である表面処理高誘電無機粒子4を得た。
(表面処理高誘電無機粒子5)
表面処理高誘電無機粒子1の準備と同様にして、アルミナ処理されたチタン酸バリウム粒子である表面処理高誘電無機粒子を得た。次いで、表面処理高誘電無機粒子3の準備において、未処理の高誘電無機粒子をこの得られたアルミナ処理されたチタン酸バリウム粒子である表面処理高誘電無機粒子に代え、カップリング剤を3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBE-9007N)に代えた以外は同様にして、アルミナおよびカップリング剤により表面処理されたチタン酸バリウム粒子である表面処理高誘電無機粒子5を得た。
(表面処理高誘電無機粒子6)
表面処理高誘電無機粒子1の準備において、チタン酸バリウム粒子をチタン酸ストロンチウム粒子(SrTiO3、比重5.13g/m3、比誘電率εr 300、個数平均粒子径300nm)に代えた以外は同様にして、アルミナにより表面処理されたチタン酸ストロンチウム粒子である表面処理高誘電無機粒子6を得た。
(表面処理高誘電無機粒子7)
表面処理高誘電無機粒子6の準備と同様にして、アルミナ処理されたチタン酸ストロンチウム粒子である表面処理高誘電無機粒子を得た。次いで、表面処理高誘電無機粒子3の準備において、未処理の高誘電無機粒子をこの得られたアルミナ処理されたチタン酸ストロンチウム粒子である表面処理高誘電無機粒子に代え、カップリング剤を3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBE-9007N)に代えた以外は同様にして、アルミナおよびカップリング剤により表面処理されたチタン酸ストロンチウム粒子である表面処理高誘電無機粒子7を得た。
[高誘電無機粒子分散液A1~9の調製]
上記得られた表面処理高誘電無機粒子1~7、ならびに未処理のチタン酸ストロンチウム粒子(SrTiO3、比重5.13g/m3、比誘電率εr 300、個数平均粒子径(平均一次粒子径)300nm)および未処理のチタン酸バリウム粒子(BaTiO3、比重6.02g/m3、比誘電率εr 1,000、個数平均粒子径(平均一次粒子径)100nm)30質量部を、それぞれ分散媒であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)70質量部に混合し、超音波による分散処理を行うことで、高誘電無機粒子分散液A1~9を得た。
ここで、表面処理高誘電無機粒子1~7を含む分散液をそれぞれ(表面処理)高誘電無機粒子分散液A1~7と称し、未処理のチタン酸ストロンチウム粒子を含む分散液を(未処理)高誘電無機粒子分散液A8と称し、未処理のチタン酸バリウム粒子を含む分散液を(未処理)高誘電無機粒子分散液A9と称する。
[導電剤分散液Bの調製]
ポリイミド前駆体(宇部興産株式会社製、ユピア(登録商標)-ST1001(固形分18質量%))50質量部と、フッ素系界面活性剤である含フッ素有機化合物(三菱マテリアル株式会社製、エフトップ(登録商標)EF-351)0.1質量部と、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)50質量部と、を混合、攪拌して溶液を調整した。次いで、この得られた溶液に、導電剤であるカーボンブラック(エボニック デグサ ジャパン株式会社製、NIPex(登録商標)150(pH=4、揮発分:10質量%)13質量部を添加し、ボールミルで分散することで、導電剤分散液Bを調製した。
[中間転写ベルト1~9の製造]
(中間転写ベルト1)
ポリイミド前駆体ワニス(宇部興産株式会社製、ユピア(登録商標)-ST1001(固形分18質量%))100質量部と、上記得られた高誘電無機粒子分散液A1 65質量部と、上記得られた導電剤分散液B 15質量部と、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)20質量部とを混合して、基材形成用塗布液を得た。次いで、当該塗布液を脱泡後、1,500rpmで回転させた状態の円筒状金型の内周面に、ディスペンサーを介して乾燥後の厚さが60μmになるように塗布液を投入後、15分間回転させることで、均一な厚さを有する展開層(塗工層)を形成した。続いて、上記金型を250rpmで回転させながら、金型の外側より60℃の熱風を30分間、上記金型にあてた後、上記金型を150℃で60分間加熱した。その後、上記金型を360℃まで2℃/分の昇温速度で加熱し、さらに360℃で60分間加熱した。かような熱風の吹き付けおよび加熱によって、上記展開層から、蒸発した溶媒および脱水閉環に伴い発生した水を除去し、かつ上記展開層におけるイミド転化反応を完結させた。このようにして、ポリイミド樹脂と、表面処理高誘電無機粒子1とを含む、無端ベルト状の中間転写ベルト1を得た。
(中間転写ベルト2~9)
上記中間転写ベルト1の製造において、高誘電無機粒子分散液A1を高誘電無機粒子分散液A2~9に代えた以外は同様にして、中間転写ベルト2~9をそれぞれ製造した。
各中間転写ベルトの原料を下記表1-1および下記表1-2に示す。
<中間転写ベルトの評価>
[中間転写ベルト中の粒子の解析]
得られた中間転写ベルト1~9について、ベルトの厚み方向に走査型電子顕微鏡(SEM)試料作製用汎用断面カッターにて切断し、断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、高誘電無機微粒子を特定して、EDS(エネルギー分散型X線分光法)にて元素分析を行った。当該元素分析の結果、以下のことが確認された。
アルミナ表面処理が施された表面処理高誘電無機粒子1、4、5~7は、その表面にアルミナが存在することが、カップリング剤表面処理が施された表面処理高誘電無機粒子2~5、7は、その表面にシランカップリング剤が存在することが確認された。
また、表面処理高誘電無機粒子2、4、5、7は、その表面に窒素原子を有することが、表面処理高誘電無機粒子2、4は、その表面にアミノ基を有することが確認された。
[転写性]
画像形成装置(コニカミノルタ株式会社製、bizhub(登録商標) PRESS C1100)に上記製造された中間転写ベルトを取り付けた評価機を用いて、エンボス紙(特種東海製紙株式会社製、レザック紙 A3 Y目 302g/m2)上に、シアンおよびマゼンタの2次色であるブルーの100%のベタ画像を10枚ずつ出力した。次いで、得られた個々のベタ画像をスキャナーによってデジタル情報化し、画像編集・加工ソフト(アドビ システムズ社製、フォトショップ(登録商標))を用い、画像処理により、個々のベタ画像の画像濃度の平均値を求めた。続いて、この個々のベタ画像における、当該平均値の90%以下の画像濃度となる領域の面積率(%)をそれぞれ求めた。そして、この個々のベタ画像における、上記平均値の90%以下の画像濃度となる領域の面積率の総和を算出し、その総和を、個々のベタ画像の総数で割ることで、上記平均値の90%以下の画像濃度となる領域の面積率の平均値(%)をさらに求めた。この値を、画像濃度90%以下の面積率(%)とし、下記の評価基準にしたがって評価した。ここで、画像濃度90%以下の面積率が8%未満であると結果が良好であると判断した。各中間転写ベルトを用いた際の転写性の評価結果を下記表1-1および下記表1-2に示す;
≪評価基準≫
◎:画像濃度90%以下の面積率が2%未満である、
〇:画像濃度90%以下の面積率が2%以上5%未満である、
△:画像濃度90%以下の面積率が5%以上8%未満である、
×:画像濃度90%以下の面積率が8%以上である。
[薄紙分離性]
画像形成装置(コニカミノルタ株式会社製、bizhub(登録商標) PRESS C1100)に上記製造された中間転写ベルトを取り付け、中間転写ユニットの分離爪を外した評価機を用いて、温度10℃、相対湿度20%RHの環境下、二次転写の設定電流値を-200μAに設定した状態で、上質紙(日本製紙株式会社製、しらおい A3 Y目 52.3g/m2)に白ベタ画像(白紙)を連続印字した。そして、連続1,000枚を印字した際に分離不良が未発生のものを合格とし、連続1,000枚以下で分離不良が発生したものを不合格とした。分離不良が発生し、用紙が中間転写ベルトから分離できなかった場合、用紙が中間転写ベルトの駆動と共に移動し、中間転写ベルト付近に配置される部材に絡まり、装置の停止を引き起こすこととなる。なお、当該評価においては、画像形成装置、評価用紙、中間転写ベルトは全て、前日より温度10℃、相対湿度20%RHの環境下にて保管したものを使用した。各中間転写ベルトを用いた際の剥離分離性の評価結果を下記表1-1および下記表1-2に示す。
上記表1-1および上記表1-2の結果から、本発明に係る中間転写ベルトは、転写率が高く、薄紙分離性に優れることが確認された。一方、比較例に係る中間転写ベルトは、薄紙分離性に劣り、転写率も不十分となる場合があることが確認された。