以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図中同一又は相当する部分には同一符号を付す。
(実施形態1)
<熱膨張性シート10>
図1に、造形物を製造するための第1媒体である熱膨張性シート10の断面構成を示す。熱膨張性シート10は、加熱により膨張する熱膨張媒体の一種である。熱膨張性シート10のうちの予め選択された部分が加熱により膨張することにより、造形物が製造される。造形物とは、立体的な形状を有する物体であって、2次元状のシートにおいて、シートのうちの一部分がシートの表面から外側への方向に膨張することによって製造される。造形物は、立体物又は立体画像とも言う。造形物の形状は、単純な形状、幾何学形状、文字等の形状一般を含む。
言い換えると、造形物は、3次元空間内の特定の2次元面を基準とし、その2次元面に垂直な方向又は斜めの方向に凹凸を有する物体である。このような造形物は、立体(3次元)画像に含まれるが、所謂3Dプリンタ技術によって製造される立体画像と区別するため、2.5次元(2.5D)画像又は擬似3次元(pseudo-3D)画像と呼ぶ。また、このような造形物を製造する技術は、立体画像印刷技術に含まれるが、所謂3Dプリンタと区別するため、2.5次元印刷技術又は擬似3次元印刷技術と呼ぶ。
図1に示すように、熱膨張性シート10は、基材11と、熱膨張層12と、を備えている。なお、図1は、造形物が製造される前、すなわちどの部分も膨張していない状態における熱膨張性シート10の断面を示している。以下では、熱膨張性シート10の熱膨張層12側を表側と呼び、基材11側を裏側と呼ぶ。
基材11は、熱膨張性シート10の元となるシート状の媒体である。基材11は、熱膨張層12を支持する支持体であって、熱膨張性シート10の強度を保持する役割を担う。基材11として、例えば、一般的な印刷用紙を用いることができる。或いは、基材11の材質は、合成紙、キャンバス地等の布、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のプラスチックフィルムであっても良く、特に限定されるものではない。
熱膨張層12は、基材11の上側に積層されており、所定の膨張温度以上に加熱されることによって膨張する層である。熱膨張層12は、バインダと、バインダ内に分散配置された熱膨張剤と、を含む。バインダは、エチレン酢酸ビニル系ポリマー、アクリル系ポリマー等の熱可塑性樹脂である。熱膨張剤は、具体的には、プロパン、ブタン等の低沸点で気化する物質を、熱可塑性樹脂の外殻に内包した、粒径が約5~50μmの熱膨張性のマイクロカプセル(マイクロパウダー)である。熱膨張剤は、例えば80℃から120℃程度の温度に加熱されると、内包している物質が気化し、その圧力によって発泡及び膨張する。このようにして、熱膨張層12は、吸収した熱量に応じて膨張する。熱膨張剤は、発泡剤とも呼ぶ。
<転写フィルム20>
図2に、第2媒体である転写フィルム20の断面構成を示す。転写フィルム20は、熱膨張性シート10に転写される転写層22を有する転写媒体の一種である。図2に示すように、転写フィルム20は、ベース層21と、転写層22と、を備えている。以下では、転写フィルム20のベース層21側を表側と呼び、転写層22側を裏側と呼ぶ。
ベース層21は、転写層22が貼り付けられた層である。ベース層21の材質は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のプラスチックフィルムであるが、特に限定されるものではない。
転写層22は、被転写物である熱膨張性シート10に転写される層である。転写層22の厚みは、例えば10μmから100μm程度である。転写層22の材質は、ユーザが製造することを望む造形物に応じて選択される。例えば、熱膨張性シート10にカラーインクを転写することにより、装飾性を有する造形物を製造することができる。この場合、転写層22の材質は、所望の色のカラーインクが選択される。或いは、電極、抵抗、アンテナ、メンブレンスイッチ等の機能性を有する造形物を製造することができる。この場合、転写層22の材質は、その材料となる銅等の物質が選択される。
転写フィルム20において、ベース層21と転写層22との間には、図示を省略するが、転写層22をベース層21から離れやすくするための離型層(バインダ)が設けられている。離型層は、熱膨張性シート10の熱膨張層12が膨張を開始する温度である80℃程度の温度にまで加熱されると融解する。離型層が融解すると、転写層22がベース層21から剥がれて熱膨張性シート10に転写される。
また、転写フィルム20の裏側の面、すなわち転写層22側の面には、ベース層21から剥がれた転写層22を熱膨張性シート10に接着させるための接着層が設けられている。接着層は、熱膨張性シート10の表面に接着しやすい材質で形成されている。接着層は、熱膨張層12が膨張するために加えられる熱と熱膨張層12が膨張することにより生じる圧力とにより、熱膨張性シート10の表面に接着する。
なお、図1に示した熱膨張性シート10及び図2に示した転写フィルム20の各層の厚みの比率は例示であり、実際の比率と同じとは限らない。以降の図でも同様である。
<造形システム1>
次に、図3を参照して、熱膨張性シート10に造形物を製造するための造形システム1について説明する。図3に示すように、造形システム1は、端末装置30と、印刷装置40と、転写装置50と、を備える。
<端末装置30>
端末装置30は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット等の情報処理装置であって、印刷装置40及び転写装置50を制御する制御ユニットである。端末装置30は、図示を省略するが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含む制御部と、フラッシュメモリ、ハードディスク等の不揮発性メモリである記憶部と、を備える。また、端末装置30は、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力受付部と、液晶ディスプレイ等の表示部と、LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)等を介して外部の機器と通信するための通信部と、を備える。端末装置30は、制御部による制御のもとで、入力受付部を介してユーザから印刷装置40及び転写装置50における各種の設定を受け付け、受け付けた設定を通信部により印刷装置40及び転写装置50に送信する。
<印刷装置40>
印刷装置40は、被印刷媒体に画像を印刷するユニットである。印刷装置40は、画像形成装置とも呼ぶことができる。印刷装置40は、一例として、インクを微滴化し、被印刷媒体に対して直接に吹き付ける方式で画像を印刷するインクジェットプリンタである。印刷装置40は、熱膨張性シート10と転写フィルム20とのうちの少なくとも一方に、カーボン分子を含むインクを印刷することにより、電磁波を熱に変換する変換層を形成する。
図4に、印刷装置40の詳細な構成を示す。図4に示すように、印刷装置40は、被印刷媒体である熱膨張性シート10又は転写フィルム20が搬送される方向である副走査方向D1(Y方向)に直交する主走査方向D2(X方向)に往復移動可能なキャリッジ41を備える。
キャリッジ41には、印刷を実行する印刷ヘッド42と、インクを収容したインクカートリッジ43(43k,43c,43m,43y)が取り付けられている。インクカートリッジ43k,43c,43m,43yには、それぞれ、ブラックK、シアンC、マゼンタM、及びイエローYの色インクが収容されている。各色のインクは、印刷ヘッド42の対応するノズルから吐出される。
キャリッジ41は、ガイドレール44に滑動自在に支持されており、駆動ベルト45に狭持されている。キャリッジ41は、モータ45mの回転により駆動ベルト45が駆動することで、印刷ヘッド42及びインクカートリッジ43と共に、主走査方向D2に移動する。
フレーム47の下部には、印刷ヘッド42と対向する位置に、プラテン48が設けられている。プラテン48は、主走査方向D2に延在しており、熱膨張性シート10又は転写フィルム20の搬送路の一部を構成している。搬送路には、給紙ローラ対49a(下のローラは不図示)と排紙ローラ対49b(下のローラは不図示)とが設けられている。給紙ローラ対49aと排紙ローラ対49bとは、プラテン48に支持された熱膨張性シート10又は転写フィルム20を副走査方向D1に搬送する。
印刷装置40は、いずれも図示しないが、CPU等の制御部と、ROM、RAM、不揮発性メモリ等の記憶部と、を備えている。制御部において、CPUがRAMをワークメモリとして用いながらROMに格納された制御プログラムを実行することにより、印刷装置40の動作を制御する。また、印刷装置40は、フレキシブル通信ケーブル46を介して端末装置30と接続されている。印刷装置40は、制御部の制御のもと、フレキシブル通信ケーブル46を介して端末装置30から印刷データを取得し、取得した印刷データに従って印刷を実行する。印刷データは、カーボン分子を含むインクを印刷することで変換層を形成する位置を示すデータである。
具体的に説明すると、印刷装置40は、給紙ローラ対49a及び排紙ローラ対49bを制御して、熱膨張性シート10又は転写フィルム20を搬送させる。また、印刷装置40は、モータ45mを回転させてキャリッジ41を移動させ、印刷ヘッド42を主走査方向D2の適切な位置に搬送させる。そして、印刷装置40は、印刷ヘッド42に、搬送される熱膨張性シート10又は転写フィルム20に向けてインクを噴射させる。これにより、印刷装置40は、熱膨張性シート10又は転写フィルム20の表面に、少なくとも1色のインクで画像を印刷する。
図5及び図6に示すように、熱膨張性シート10と転写フィルム20とのうちの少なくとも一方の表面の一部には、印刷装置40の印刷により、電磁波を熱に変換する変換層14が形成される。変換層14は、電磁波を吸収することにより発熱する材料を含む層であって、例えばカーボン分子を含むインクで形成された層である。カーボン分子は、黒色(カーボンブラック)又は他の色のインクに含まれ、電磁波を吸収して熱に変換する電磁波熱変換材料(発熱剤)の一種である。
カーボン分子は、電磁波を吸収して熱振動することで発熱する。変換層14に含まれるカーボン分子が発熱すると、熱膨張性シート10における変換層14が形成された位置に対応する部分が加熱される。熱膨張性シート10に熱膨張層12が膨張可能な温度である膨張温度の熱が加えられると、熱膨張層12が発泡及び膨張する。その結果、熱膨張性シート10における熱が加えられた部分に対応する表面が、熱膨張層12の膨張により表側(基材11と反対側)に向けて隆起し、熱膨張性シート10の表面に凹凸が形成される。
熱膨張性シート10における隆起が形成された位置には、後述する転写装置50において転写フィルム20から転写層22が転写される。これにより、熱膨張性シート10に造形物が製造される。熱膨張性シート10における隆起の位置とそこに転写される転写層22の材質とを組み合わせることにより、多彩な造形物を得ることができる。造形(造型)によって視覚又は触覚を通じて美感又は質感を表現することを「加飾(造飾)」と呼ぶ。
熱膨張性シート10を表側(熱膨張層12側)から加熱する場合、変換層14は、図5に示すように、転写フィルム20の表側の面に設けられる。これに対して、熱膨張性シート10を裏側(基材11側)から加熱する場合、変換層14は、図6に示すように、熱膨張性シート10の裏側の面に設けられる。以下では、熱膨張性シート10を表側から加熱して発泡及び膨張させることを、表発泡(表面発泡)と呼び、熱膨張性シート10を裏側から加熱して発泡及び膨張させることを、裏発泡(裏面発泡)と呼ぶ。表発泡と裏発泡とのどちらで造形物を製造するかは、ユーザが自由に選択することができる。
<転写装置50>
転写装置50は、転写フィルム20の転写層22を熱膨張性シート10に転写させるユニットである。転写装置50は、熱膨張性シート10を加熱することで発泡及び膨張させるため、加熱装置、発泡装置、膨張装置等と呼ぶこともできる。
図7に、転写装置50の構成を模式的に示す。図7において、X方向は、転写装置50の幅方向に相当し、Y方向は、転写装置50の長手方向に相当し、Z方向は、鉛直方向に相当する。X方向とY方向とZ方向とは、互いに直交する。
転写装置50は、箱型の筐体51の内部に、トレイ100と、換気ファン54と、搬送モータ55と、搬送レール56と、照射部60と、電源部69と、制御部70と、を備える。
トレイ100は、熱膨張性シート10と転写フィルム20とを筐体51内の適正な位置に設置するための部材である。トレイ100は、熱膨張性シート10と転写フィルム20とを安定して保持するシート保持機構として機能する。トレイ100は、図8に示すように、載置部110と、ヒータ120と、押圧部材130と、を備える。
載置部110は、熱膨張性シート10と転写フィルム20とが重ねられた状態で載置される平面状の部材である。載置部110の縁部には、載置部110に載置された熱膨張性シート10及び転写フィルム20の位置を安定させるため、また熱が外部に逃げないようにするために、それらの4辺を囲うように枠状の凸部140が設けられている。載置部110は、熱膨張性シート10と転写フィルム20とが、転写層22が熱膨張性シート10に対向するように配置される配置部に相当する。
ヒータ120は、載置部110の下側に設けられており、載置部110に載置され、押圧部材130により押圧された熱膨張性シート10と転写フィルム20とを、照射部60により電磁波が照射される側とは反対側から加熱する。ヒータ120は、載置部110に載置された熱膨張性シート10及び転写フィルム20を全体的に加熱できるように、平板状をしている。
ヒータ120は、熱膨張性シート10と転写フィルム20とのうちの少なくとも一方に形成された変換層14に照射部60により電磁波が照射されている際に、熱膨張性シート10と転写フィルム20とをトレイ100の下側から補助的に加熱する。より詳細には、ヒータ120は、照射部60により電磁波が照射されている際に、熱膨張性シート10と転写フィルム20とを、熱膨張性シート10が膨張を開始する温度に達しない程度の温度である、例えば80℃未満の温度に加熱する。これにより、載置部110に載置された熱膨張性シート10と転写フィルム20とは、熱膨張性シート10が膨張を開始し、且つ、転写層22が転写可能な温度にまで効率的に加熱される。
押圧部材130は、載置部110に載置された熱膨張性シート10と転写フィルム20とを重ねた状態で押圧する部材である。押圧部材130は、厚さが数mm程度であって、熱膨張性シート10及び転写フィルム20を覆うサイズの平板状をしている。押圧部材130は、載置部110に載置された熱膨張性シート10及び転写フィルム20の表面全体をほぼ均一な力で押圧する。
押圧部材130は、ユーザにより開閉可能に載置部110に取り付けられている。押圧部材130は、熱膨張性シート10と転写フィルム20とを載置部110に載置する際、及び、熱膨張性シート10と転写フィルム20とを載置部110から取り出す際に開かれる。一方で、押圧部材130は、転写層22の転写処理を実行する際には閉じられて、載置部110に載置された熱膨張性シート10と転写フィルム20とを上から押圧して固定する。
押圧部材130は、例えばアクリル、ポリカーボネート等のような、照射部60により照射される電磁波に対する透過性を有し、且つ、断熱性を有する材質で形成されている。押圧部材130が照射部60により照射される電磁波に対する透過性を有する材質で形成されている理由は、照射部60が載置部110に載置された熱膨張性シート10と転写フィルム20とに対して、押圧部材130越しに電磁波を照射することができるようにするためである。具体的には後述するように、照射部60は、載置部110に載置された熱膨張性シート10と転写フィルム20とに対して、可視光領域又は赤外領域の波長域の電磁波を照射する。そのため、押圧部材130は、可視光領域又は赤外領域の波長域の電磁波に対して透明な材質で形成されている。
また、押圧部材130が断熱性を有する材質で形成されている理由は、載置部110に載置された熱膨張性シート10と転写フィルム20とが押圧部材130により押圧された際に、外部に熱が逃げることを抑制して、熱膨張性シート10と転写フィルム20とを効率良く加熱することができるようにするためである。具体的には、押圧部材130は、熱伝導率が0.6(W/m・K)程度よりも小さい材質で形成されることが好適である。
図7に戻って、照射部60は、電磁波を照射する照射ユニットである。照射部60は、熱膨張性シート10と転写フィルム20とのうちの少なくとも一方に形成された変換層14に電磁波を照射して変換層14を発熱させることにより、載置部110に載置され、押圧部材130により押圧された熱膨張性シート10と転写フィルム20とを加熱する。これにより、照射部60は、熱膨張性シート10を膨張させ、且つ、転写フィルム20から熱膨張性シート10に転写層22を転写させる転写部として機能する。
図7に示すように、照射部60は、箱型のカバーの内部に、ランプヒータ61と、反射板62と、冷却ファン64と、を備える。ランプヒータ61は、例えば照射源としてハロゲンランプを備えており、電磁波として、熱膨張性シート10に対して、近赤外領域(波長750~1400nm)、可視光領域(波長380~750nm)、又は、中赤外領域(波長1400~4000nm)の光を照射する。照射部60及びランプヒータ61は、このような波長域の光を照射することにより、熱膨張性シート10にエネルギーを照射する。ランプヒータ61は、トレイ100に載置された熱膨張性シート10に対して、X方向(トレイ100の幅方向)に亘って略均一の電磁波を照射できるように、X方向に長い形状をしている。なお、ランプヒータ61によって照射される光は、電磁波であれば良く、上記波長域の光であることに限らない。
反射板62は、ランプヒータ61の上側を覆うように配置されており、ランプヒータ61から照射された光を下側に向けて反射する。冷却ファン64は、外気を吸入し、吸入した外気を反射板62及びその下方に送ることで照射部60及び筐体51の内部を冷却する。換気ファン54は、転写装置50における一方の端部に設けられており、筐体51の内部の空気を外部に排出することで筐体51の内部を換気する。
筐体51の内部には、Y方向に、すなわちトレイ100に載置された熱膨張性シート10又は転写フィルム20の表面に平行な方向に搬送レール56が設けられている。照射部60は、搬送レール56に沿って移動することができるように搬送レール56に取り付けられている。
搬送モータ55は、パルス電力に同期して動作するステッピングモータである。照射部60は、搬送モータ55の回転に伴う駆動力を動力源として、トレイ100との距離を一定に保ちながら、搬送レール56に沿って往復移動する。照射部60は、搬送レール56に沿って移動しながら、トレイ100に載置された熱膨張性シート10又は転写フィルム20に向けて電磁波を照射する。
電源部69は、電源IC(Integrated Circuit)等を備え、転写装置50内の各部に必要な電源を作り出して供給する。例えば、換気ファン54、搬送モータ55、ランプヒータ61及び冷却ファン64は、電源部69から電力を得て動作する。
制御部70は、筐体51の下部に配置された基板上に設けられている。制御部70は、CPU等のプロセッサと、ROM、RAM等のメモリと、を備えており、命令やデータを転送するための伝送経路であるシステムバスを介して転写装置50の各部と接続されている。また、制御部70は、いずれも図示しないが、フラッシュメモリ、ハードディスク等の不揮発性メモリと、RTC(Real Time Clock)等の計時デバイスと、端末装置30と通信するための通信インタフェースと、を備える。
制御部70において、CPUが、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出して、RAMをワークメモリとして用いながら、転写装置50全体の動作を制御する。具体的に説明すると、制御部70は、搬送モータ55を制御して、照射部60を指定された向きに指定された移動速度で移動させ、照射部60を制御して、トレイ100に載置された熱膨張性シート10及び転写フィルム20に向けて電磁波を照射させる。
<造形システム1の処理フロー>
以上のように構成された造形システム1において実行される造形物の製造処理の流れについて説明する。図9は、表発泡により造形物を製造する処理(表発泡処理)の流れを示すフローチャートである。これに対して、図14は、裏発泡により造形物を製造する処理(裏発泡処理)の流れを示すフローチャートである。
表発泡により造形物を製造する場合、ユーザは、図9に示す手順に従う。まず、ユーザは、転写層22の転写位置を設定する(ステップS101)。具体的に説明すると、ユーザは、端末装置30を操作して、熱膨張性シート10を膨張させて転写フィルム20から転写層22を転写させる熱膨張性シート10上の位置を設定する。
例えば、熱膨張性シート10にカラーインクを転写することにより装飾性を有する造形物を製造する場合、ユーザは、転写位置として、熱膨張性シート10上におけるカラーインクが転写される位置を設定する。或いは、電極、抵抗等の機能性を有する造形物を製造する場合、ユーザは、転写位置として、熱膨張性シート10上における電極、抵抗等が形成される位置を設定する。
転写層22の転写位置を設定すると、ユーザは、印刷装置40を用いて、転写フィルム20に変換層14を形成する(ステップS102)。具体的に説明すると、ユーザは、転写フィルム20の表側の面が印刷面となるように、転写フィルム20を印刷装置40に挿入する。印刷装置40は、挿入された転写フィルム20の表側の面における、ステップS101で設定された転写位置に、カーボン分子を含むインクを塗布する。その結果、図5に示したように、転写フィルム20の表側の面の一部に変換層14が形成される。なお、転写フィルム20に形成される変換層14の濃度は、転写装置50において電磁波が照射された場合に熱膨張層12が膨張温度にまで加熱される程度の濃度に予め設定されている。ステップS102は、形成ステップに相当する。
転写フィルム20に変換層14を形成すると、ユーザは、転写装置50のトレイ100に熱膨張性シート10と転写フィルム20とを重ねて載置する(ステップS103)。具体的には図10に示すように、ユーザは、熱膨張性シート10を、その表側の面を上側に向けて載置部110の上に載置する。そして、表側の面の一部に変換層14が形成された転写フィルム20を、その表側の面を上側に向けて熱膨張性シート10の上に重ねる。言い換えると、熱膨張性シート10と転写フィルム20とを、転写フィルム20の裏側の面が熱膨張性シート10の表側の面に対向するように配置する。これにより、熱膨張性シート10の表側の面に転写フィルム20の裏側の面が密着した状態で、載置部110に載置される。ステップS103は、配置ステップ(第1ステップ)に相当する。
熱膨張性シート10と転写フィルム20とをトレイ100に載置すると、ユーザは、載置された熱膨張性シート10と転写フィルム20とを押圧部材130により押圧する(ステップS104)。このとき、押圧部材130は、熱膨張性シート10の表側の面と転写フィルム20の裏側の面とが重ねられた状態で、熱膨張性シート10と転写フィルム20とを転写フィルム20の表側から押圧する。ステップS104は、押圧ステップに相当する。
具体的には図11に示すように、ユーザは、熱膨張性シート10に重ねて載置された転写フィルム20の表側の面に押圧部材130を被せる。そして、ユーザは、押圧部材130を転写フィルム20の表側の面に押し付けて圧力を加える。これにより、熱膨張性シート10と転写フィルム20とは、互いに密着した状態で押圧される。このとき、押圧部材130の上に重りを載せて加重をかけることで、熱膨張性シート10と転写フィルム20とをより強い力で密着させても良い。
トレイ100に載置された熱膨張性シート10と転写フィルム20とを押圧部材130により押圧すると、ユーザは、転写装置50を操作して、転写フィルム20の表側から電磁波を照射させる(ステップS105)。具体的に説明すると、転写装置50において、照射部60は、トレイ100に載置された転写フィルム20の表側の面に向けて、押圧部材130越しに電磁波を照射する。このとき、照射部60は、その一部に変換層14が形成された転写フィルム20の表側の面の全体に電磁波が照射されるように、搬送レール56に沿って移動しながら電磁波を照射する。これにより、照射部60は、熱膨張性シート10における変換層14が形成された部分に対応する表面を隆起させ、且つ、熱膨張性シート10の表面の隆起に伴って発生する転写層22への押圧力により、熱膨張性シート10の隆起した部分の表面に転写層22を選択的に転写させる。ステップS105は、転写ステップ(第2ステップ)に相当する。
押圧部材130は、照射部60から照射された電磁波を透過する材質で形成されているため、電磁波は、押圧部材130を透過して転写フィルム20の表側の面に達する。転写フィルム20の表側の面に形成された変換層14に電磁波が照射されると、変換層14において電磁波が熱に変換され、変換層14が発熱する。変換層14で生じた熱は、転写フィルム20の表側から裏側に伝導し、更に熱膨張性シート10の熱膨張層12に伝導する。その結果、熱膨張層12のうちの、変換層14が形成された位置に対応する部分、すなわち転写フィルム20における変換層14が形成された位置に重ねられた部分が主に加熱される。
具体的には図12に示すように、熱膨張層12は、膨張温度にまで加熱されると、表側に向けて、すなわち転写フィルム20が重ねられた側に向けて膨張する。熱膨張層12が膨張すると、膨張により生じる圧力と変換層14で生じる熱とにより、転写層22の裏側に設けられた接着層が熱膨張層12に接着される。また、変換層14で生じる熱により離型層が融解することで、転写層22が転写フィルム20から離れる。これにより、転写フィルム20における変換層14が形成された部分の転写層22が、熱膨張性シート10に転写される。
なお、ステップS105において、転写装置50は、照射部60から電磁波を照射すると共に、ヒータ120を稼働させる。これにより、転写装置50は、熱膨張性シート10と転写フィルム20とをトレイ100の下側から更に加熱し、転写層22が転写フィルム20から熱膨張性シート10に転写しやすくする。
このようにして熱膨張性シート10を膨張させて転写層22を転写させると、ユーザは、熱膨張性シート10から転写フィルム20を取り外す(ステップS106)。具体的に説明すると、ユーザは、熱膨張性シート10と転写フィルム20とをトレイ100から取り出す。そして、ユーザは、転写フィルム20を熱膨張性シート10から剥がす。
その結果、図13に示すように、熱膨張性シート10の膨張した領域に、転写フィルム20の対応する部分の転写層22が転写された造形物が得られる。このとき、転写フィルム20のうちの、熱膨張性シート10の膨張していない領域に重ねられた部分の転写層22は転写されず、転写フィルム20に残される。以上のような手順によって、熱膨張性シート10上の隆起が形成された部分に転写層22が転写された造形物が製造される。
一方で、裏発泡により造形物を製造する場合、ユーザは、図14に示す手順に従う。まず、ユーザは、転写層22の転写位置を設定する(ステップS201)。具体的に説明すると、表発泡処理におけるステップS101と同様に、ユーザは、端末装置30を操作して、熱膨張性シート10を膨張させて転写フィルム20から転写層22を転写させる熱膨張性シート10上の位置を設定する。
転写層22の転写位置を設定すると、ユーザは、印刷装置40を用いて、熱膨張性シート10に変換層14を形成する(ステップS202)。具体的に説明すると、ユーザは、熱膨張性シート10の裏側の面が印刷面となるように、熱膨張性シート10を印刷装置40に挿入する。印刷装置40は、挿入された熱膨張性シート10の裏側の面における、ステップS201で設定された転写位置に、カーボン分子を含むインクを塗布する。その結果、図6に示したように、熱膨張性シート10の裏側の面の一部に変換層14が形成される。なお、熱膨張性シート10に形成される変換層14の濃度は、転写装置50において電磁波が照射された場合に熱膨張層12が膨張温度にまで加熱される程度の濃度に予め設定されている。ステップS202は、形成ステップに相当する。
熱膨張性シート10に変換層14を形成すると、ユーザは、転写装置50のトレイ100に熱膨張性シート10と転写フィルム20とを重ねて載置する(ステップS203)。具体的には図15に示すように、ユーザは、転写フィルム20を、その裏側の面を上側に向けて載置部110の上に載置する。そして、裏側の面の一部に変換層14が形成された熱膨張性シート10を、その裏側の面を上側に向けて転写フィルム20の上に重ねる。言い換えると、熱膨張性シート10と転写フィルム20とを、熱膨張性シート10の表側の面が転写フィルム20の裏側の面に対向するように配置する。これにより、転写フィルム20の裏側の面に熱膨張性シート10の表側の面が密着した状態で、載置部110に載置される。ステップS203は、配置ステップ(第1ステップ)に相当する。
熱膨張性シート10と転写フィルム20とをトレイ100に載置すると、ユーザは、載置された熱膨張性シート10と転写フィルム20とを押圧部材130により押圧する(ステップS204)。このとき、押圧部材130は、熱膨張性シート10の表側の面と転写フィルム20の裏側の面とが重ねられた状態で、熱膨張性シート10と転写フィルム20とを熱膨張性シート10の裏側から押圧する。ステップS204は、押圧ステップに相当する。
具体的には図16に示すように、転写フィルム20に重ねて載置された熱膨張性シート10の裏側の面に押圧部材130を被せる。そして、押圧部材130を熱膨張性シート10の裏側の面に押し付けて圧力を加える。これにより、熱膨張性シート10と転写フィルム20とは、互いに密着した状態で押圧される。このとき、押圧部材130の上に重りを載せて加重をかけることで、熱膨張性シート10と転写フィルム20とをより強い力で密着させても良い。
トレイ100に載置された熱膨張性シート10と転写フィルム20とを押圧部材130により押圧すると、ユーザは、転写装置50を操作して、熱膨張性シート10の裏側から電磁波を照射させる(ステップS205)。具体的に説明すると、転写装置50において、照射部60は、トレイ100に載置された熱膨張性シート10の裏側の面に向けて、押圧部材130越しに電磁波を照射する。このとき、照射部60は、その一部に変換層14が形成された熱膨張性シート10の裏側の面の全体に電磁波が照射されるように、搬送レール56に沿って移動しながら電磁波を照射する。これにより、照射部60は、熱膨張性シート10における変換層14が形成された部分に対応する表面を隆起させ、且つ、熱膨張性シート10の表面の隆起に伴って発生する転写層22への押圧力により、熱膨張性シート10の隆起した部分の表面に転写層22を選択的に転写させる。ステップS205は、転写ステップ(第2ステップ)に相当する。
押圧部材130は、照射部60から照射された電磁波を透過する材質で形成されているため、電磁波は、押圧部材130を透過して熱膨張性シート10の裏側の面に達する。熱膨張性シート10の裏側の面に形成された変換層14に電磁波が照射されると、変換層14において電磁波が熱に変換され、変換層14が発熱する。変換層14で生じた熱は、熱膨張性シート10の裏側から基材11を通って熱膨張層12に伝導し、更に転写フィルム20に伝導する。その結果、熱膨張層12のうちの、変換層14が形成された位置に対応する部分が主に加熱される。
具体的には図17に示すように、熱膨張層12は、膨張温度にまで加熱されると、表側に向けて、すなわち転写フィルム20が重ねられた側に向けて膨張する。熱膨張層12が膨張すると、膨張により生じる圧力と変換層14で生じる熱とにより、転写層22の裏側に設けられた接着層が熱膨張層12に接着される。また、変換層14で生じる熱により離型層が融解することで、転写層22が転写フィルム20から離れる。これにより、転写フィルム20における変換層14が形成された部分の転写層22が、熱膨張性シート10に転写される。
なお、ステップS205において、転写装置50は、ステップS105と同様に、照射部60から電磁波を照射すると共に、ヒータ120を稼働させる。これにより、転写装置50は、熱膨張性シート10と転写フィルム20とをトレイ100の下側から更に加熱し、転写層22が転写フィルム20から熱膨張性シート10に転写しやすくする。
このようにして熱膨張性シート10を膨張させて転写層22を転写させると、ユーザは、熱膨張性シート10から転写フィルム20を取り外す(ステップS206)。具体的に説明すると、ユーザは、熱膨張性シート10と転写フィルム20とをトレイ100から取り出す。そして、ユーザは、転写フィルム20を熱膨張性シート10から剥がす。
その結果、図18に示すように、熱膨張性シート10の膨張した領域に、転写フィルム20の対応する部分の転写層22が転写された造形物が得られる。このとき、転写フィルム20のうちの、熱膨張性シート10の膨張していない領域に重ねられた部分の転写層22は転写されず、転写フィルム20に残される。以上のような手順によって、熱膨張性シート10上の隆起が形成された部分に転写層22が転写された造形物が製造される。
以上説明したように、実施形態1に係る造形システム1は、印刷装置40において、熱膨張性シート10と転写フィルム20とのうちの少なくとも一方に電磁波を熱に変換する変換層14を形成し、転写装置50において、印刷装置40で少なくとも一方に変換層14が形成された熱膨張性シート10と転写フィルム20とを重ねてトレイ100に載置し、押圧部材130により押圧する。そして、転写装置50において、変換層14に電磁波を照射して変換層14を発熱させることにより、熱膨張性シート10を膨張させ、且つ、転写フィルム20から熱膨張性シート10に転写層22を転写させる。
このように、実施形態1に係る造形システム1は、変換層14で生じる熱により熱膨張性シート10を膨張させ、且つ、変換層14で生じる熱と熱膨張性シート10の膨張により生じる圧力とにより転写層22を転写させる。そのため、熱膨張性シート10を膨張させて隆起を形成する処理と、熱膨張性シート10に転写層22を転写させる処理とを、別の工程では無く、1つの工程で実現することができる。その結果、実施形態1に係る造形システム1は、隆起を有し、且つ、転写層22が転写された造形物を、少ない工程で製造することができる。
また、実施形態1に係る転写装置50は、1つの工程で熱膨張性シート10を膨張させて転写層22を転写させるため、熱膨張性シート10における隆起が形成された部分に高精度で転写層22を転写させることができる。言い換えると、転写層22の転写位置のずれを抑えることができる。特に、もし熱膨張性シート10を膨張させた後で転写層22を転写させると、転写層22は、熱膨張性シート10に形成された隆起の最も高い部分には転写しやすいが、隆起の側面には転写しにくい。一方で、転写層22を転写させた後で熱膨張性シート10を膨張させると、膨張により転写層22の位置がずれる等の不具合が生じやすくなる。これに対して、実施形態1に係る転写装置50は、熱膨張性シート10を膨張させて隆起を形成する処理と、熱膨張性シート10に転写層22を転写させる処理とを、1つの工程で実行するため、隆起の側面のような曲面状の部分も含めて、熱膨張性シート10における隆起が形成された部分に高精度に転写層22が転写させることができる。
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2について説明する。実施形態1と同様の事項については適宜説明を省略する。
実施形態1では、転写フィルム20又は熱膨張性シート10に形成された変換層14に電磁波を照射することにより変換層14を発熱させて、熱膨張性シート10を膨張させた。これに対して、実施形態2では、変換層14を用いず、サーマルヘッドにより熱膨張性シート10を加熱させることにより、熱膨張性シート10を膨張させる。
図19に、実施形態2に係る造形システム1aの構成を示す。図19に示すように、実施形態2に係る造形システム1aは、端末装置30と、転写装置50aと、を備える。一方で、実施形態2に係る造形システム1aは、実施形態1に係る造形システム1とは異なり、熱膨張性シート10又は転写フィルム20に変換層14を形成する必要がないため、印刷装置40を備えない。
図20に、実施形態2に係る転写装置50aの内部構成を示す。図20に示すように、転写装置50aは、筐体51aの内部に、搬送ローラ対150a,150bと、搬送ガイド151a,151bと、サーマルヘッド160と、プラテンローラ170と、を備える。また、転写装置50aは、熱膨張性シート10と転写フィルム20とを筐体51aの内部に搬入するための搬入部152と、熱膨張性シート10と転写フィルム20とを筐体51aの外部に搬出するための搬出部153と、を備える。
搬送ローラ対150a,150bは、搬入部152から搬入された熱膨張性シート10と転写フィルム20とを、搬送ガイド151a,151bに沿って搬送する。搬送ローラ対150a,150bは、それぞれ一対のローラを備えており、一対のローラによって熱膨張性シート10と転写フィルム20とを挟持する。一対のローラは、搬送モータ(図示を省略)と接続されており、搬送モータの回転に伴う駆動力を動力源として回転する。搬送モータは、例えばパルス電力に同期して動作するステッピングモータである。
搬送ローラ対150aは、サーマルヘッド160よりも搬入部152側に設置されている。搬送ローラ対150aは、搬入部152から搬入された熱膨張性シート10と転写フィルム20とを、搬送ガイド151bに沿って搬送し、サーマルヘッド160により加熱される位置に導く。搬送ローラ対150bは、サーマルヘッド160よりも搬出部153側に設置されている。搬送ローラ対150bは、サーマルヘッド160により加熱された後の熱膨張性シート10を、搬送ガイド151bに沿って搬送し、搬出部153に搬出する。
サーマルヘッド160は、搬送ローラ対150a,150bにより搬送される熱膨張性シート10と転写フィルム20とのうちの一方に当接して加熱する。これにより、サーマルヘッド160は、熱膨張性シート10を膨張させ、且つ、転写フィルム20から熱膨張性シート10に転写層22を転写させる転写部として機能する。
サーマルヘッド160は、搬送ローラ対150a,150bにより搬送される熱膨張性シート10又は転写フィルム20の表面に当接する部分に、予め定められたピッチで配列された複数の微小な発熱体161を備える。サーマルヘッド160は、複数の発熱体161のうちの、熱膨張性シート10を膨張させる部分に対応する少なくとも1つの発熱体161を選択的に発熱させる。これにより、サーマルヘッド160は、膨張温度の熱を熱膨張性シート10に部分的に加える。
プラテンローラ170は、サーマルヘッド160の下側に設けられており、熱膨張性シート10と転写フィルム20とを、サーマルヘッド160との間で挟み込んで搬送する。プラテンローラ170は、熱膨張性シート10と転写フィルム20とがサーマルヘッド160により加熱される際に、熱膨張性シート10と転写フィルム20とをサーマルヘッド160との間で押圧して圧力を加える押圧部材として機能する。プラテンローラ170により加えられる圧力により、サーマルヘッド160による加熱によって膨張した熱膨張性シート10に、転写フィルム20の転写層22を的確に転写させることが可能になる。
また、転写装置50aは、図示を省略するが、実施形態1に係る転写装置50と同様に、転写装置50a内の各部に必要な電源を作り出して供給する電源部69と、転写装置50a内の各部を制御する制御部70と、を備える。
次に、実施形態2に係る造形システム1aにおいて実行される造形物の製造処理の流れについて説明する。図21は、表発泡により造形物を製造する処理(表発泡処理)の流れを示すフローチャートである。これに対して、図26は、裏発泡により造形物を製造する処理(裏発泡処理)の流れを示すフローチャートである。実施形態1と同様に、表発泡と裏発泡とのどちらで造形物を製造するかは、ユーザが自由に選択することができる。
表発泡により造形物を製造する場合、ユーザは、図21に示す手順に従う。まず、ユーザは、転写層22の転写位置を設定する(ステップS301)。具体的に説明すると、ユーザは、端末装置30を操作して、熱膨張性シート10を膨張させて転写フィルム20から転写層22を転写させる熱膨張性シート10上の位置を設定する。
転写層22の転写位置を設定すると、ユーザは、転写装置50aの搬入部152に、熱膨張性シート10と転写フィルム20とを重ねて載置する(ステップS302)。具体的には図22に示すように、ユーザは、熱膨張性シート10の表側の面に転写フィルム20の裏側の面を重ねる。言い換えると、熱膨張性シート10と転写フィルム20とを、転写フィルム20の裏側の面が熱膨張性シート10の表側の面に対向するように配置する。そして、ユーザは、転写フィルム20の表側の面がサーマルヘッド160に当接する側である上側を向くように、熱膨張性シート10と転写フィルム20とを重ねた状態で、搬入部152に載置する。ステップS302は、配置ステップ(第1ステップ)に相当する。
熱膨張性シート10と転写フィルム20とを搬入部152に載置すると、ユーザは、転写装置50aを操作して、転写フィルム20の表側からサーマルヘッド160により加熱する(ステップS303)。これにより、熱膨張性シート10の膨張処理と転写層22の転写処理とを実行する。ステップS303は、押圧ステップ及び転写ステップ(第2ステップ)に相当する。
具体的に説明すると、転写装置50aは、搬送ローラ対150a,150bとプラテンローラ170とを駆動させることにより、重ねた状態で搬入部152から搬入された熱膨張性シート10と転写フィルム20とを搬送する。このように熱膨張性シート10と転写フィルム20とが搬送される際に、サーマルヘッド160は、サーマルヘッド160とプラテンローラ170との間で押圧されて搬送される熱膨張性シート10と転写フィルム20とを加熱する。
具体的には図23に示すように、プラテンローラ170は、熱膨張性シート10の裏側の面に当接し、熱膨張性シート10の表側の面と転写フィルム20の裏側の面とが重ねられた状態で、熱膨張性シート10と転写フィルム20とを熱膨張性シート10の裏側、すなわち転写フィルム20に対向する面とは反対側から押圧する。そして、サーマルヘッド160は、転写フィルム20の表側の面、すなわち熱膨張性シート10に対向する面とは反対側の面に当接し、プラテンローラ170により押圧された熱膨張性シート10と転写フィルム20とを転写フィルム20の表側から加熱する。これにより、サーマルヘッド160は、熱膨張性シート10における熱が加えられた部分に対応する表面を隆起させ、且つ、熱膨張性シート10の表面の隆起に伴って発生する転写層22への押圧力により、熱膨張性シート10の隆起した部分の表面に転写層22を選択的に転写させる。
具体的には図23に示すように、転写装置50aは、サーマルヘッド160に設けられた複数の発熱体161のうちの、ステップS301で設定された転写位置に対応する発熱体161を発熱させる。発熱体161で生じた熱は、転写フィルム20内を表側から裏側に伝導し、更に熱膨張性シート10の熱膨張層12に伝導する。その結果、熱膨張層12のうちの、発熱した発熱体161の位置に対応する部分が主に加熱される。
熱膨張層12は、膨張温度にまで加熱されると、図24に示すように、表側に向けて、すなわち転写フィルム20が重ねられた側に向けて膨張する。熱膨張層12が膨張すると、膨張により生じる圧力と発熱体161で生じた熱とにより、転写層22の裏側に設けられた接着層が熱膨張層12に接着される。また、発熱体161で生じた熱により離型層が融解することで、転写層22が転写フィルム20から離れる。これにより、転写フィルム20における発熱体161により加熱された部分の転写層22が、熱膨張性シート10に転写される。このようにして転写処理が実行された熱膨張性シート10と転写フィルム20とは、転写装置50aの搬出部153に搬出される。
このようにして熱膨張性シート10を膨張させて転写層22を転写させると、ユーザは、熱膨張性シート10から転写フィルム20を取り外す(ステップS304)。具体的に説明すると、ユーザは、熱膨張性シート10と転写フィルム20とを搬出部153から取り出す。そして、ユーザは、転写フィルム20を熱膨張性シート10から剥がす。
その結果、図25に示すように、熱膨張性シート10の膨張した領域に、転写フィルム20の対応する部分の転写層22が転写された造形物が得られる。このとき、転写フィルム20のうちの、熱膨張性シート10の膨張していない領域に重ねられた部分の転写層22は転写されず、転写フィルム20に残される。以上のような手順によって、熱膨張性シート10上の隆起が形成された部分に転写層22が転写された造形物が製造される。
一方で、裏発泡により造形物を製造する場合、ユーザは、図26に示す手順に従う。まず、ユーザは、転写層22の転写位置を設定する(ステップS401)。具体的に説明すると、ユーザは、端末装置30を操作して、熱膨張性シート10を膨張させて転写フィルム20から転写層22を転写させる熱膨張性シート10上の位置を設定する。
転写層22の転写位置を設定すると、ユーザは、転写装置50aの搬入部152に、熱膨張性シート10と転写フィルム20とを重ねて載置する(ステップS402)。具体的には図27に示すように、ユーザは、熱膨張性シート10の表側の面に転写フィルム20の裏側の面を重ねる。言い換えると、熱膨張性シート10と転写フィルム20とを、熱膨張性シート10の表側の面が転写フィルム20の裏側の面に対向するように配置する。そして、ユーザは、熱膨張性シート10の裏側の面がサーマルヘッド160に当接する側である上側を向くように、熱膨張性シート10と転写フィルム20とを重ねた状態で、搬入部152に載置する。ステップS402は、配置ステップ(第1ステップ)に相当する。
熱膨張性シート10と転写フィルム20とを搬入部152に載置すると、ユーザは、転写装置50aを操作して、熱膨張性シート10の裏側からサーマルヘッド160により加熱する(ステップS403)。これにより、熱膨張性シート10の膨張処理と転写層22の転写処理とを実行する。ステップS403は、押圧ステップ及び転写ステップ(第2ステップ)に相当する。
具体的に説明すると、転写装置50aは、搬送ローラ対150a,150bとプラテンローラ170とを駆動させることにより、重ねた状態で搬入部152から搬入された熱膨張性シート10と転写フィルム20とを搬送する。このように熱膨張性シート10と転写フィルム20とが搬送される際に、サーマルヘッド160は、サーマルヘッド160とプラテンローラ170との間で押圧されて搬送される熱膨張性シート10と転写フィルム20とを加熱する。
具体的には図28に示すように、プラテンローラ170は、転写フィルム20の表側の面に当接し、熱膨張性シート10の表側の面と転写フィルム20の裏側の面とが重ねられた状態で、熱膨張性シート10と転写フィルム20とを転写フィルム20の表側、すなわち熱膨張性シート10に対向する面とは反対側から押圧する。そして、サーマルヘッド160は、熱膨張性シート10の裏側の面、すなわち転写フィルム20に対向する面とは反対側の面に当接し、プラテンローラ170により押圧された熱膨張性シート10と転写フィルム20とを熱膨張性シート10の裏側から加熱する。これにより、サーマルヘッド160は、熱膨張性シート10における熱が加えられた部分に対応する表面を隆起させ、且つ、熱膨張性シート10の表面の隆起に伴って発生する転写層22への押圧力により、熱膨張性シート10の隆起した部分の表面に転写層22を選択的に転写させる。
具体的には図28に示すように、転写装置50aは、サーマルヘッド160に設けられた複数の発熱体161のうちの、ステップS401で設定された転写位置に対応する発熱体161を発熱させる。発熱体161で生じた熱は、熱膨張性シート10の裏側から基材11を通って熱膨張層12に伝導し、更に転写フィルム20に伝導する。その結果、熱膨張層12のうちの、発熱した発熱体161の位置に対応する部分が主に加熱される。
熱膨張層12は、膨張温度にまで加熱されると、図29に示すように、表側に向けて、すなわち転写フィルム20が重ねられた側に向けて膨張する。熱膨張層12が膨張すると、膨張により生じる圧力と発熱体161で生じた熱とにより、転写層22の裏側に設けられた接着層が熱膨張層12に接着される。また、発熱体161で生じた熱により離型層が融解することで、転写層22が転写フィルム20から離れる。これにより、転写フィルム20における発熱体161により加熱された部分の転写層22が、熱膨張性シート10に転写される。このようにして転写処理が実行された熱膨張性シート10と転写フィルム20とは、転写装置50aの搬出部153に搬出される。
このようにして熱膨張性シート10を膨張させて転写層22を転写させると、ユーザは、熱膨張性シート10から転写フィルム20を取り外す(ステップS404)。具体的に説明すると、ユーザは、熱膨張性シート10と転写フィルム20とを搬出部153から取り出す。そして、ユーザは、転写フィルム20を熱膨張性シート10から剥がす。
その結果、図30に示すように、熱膨張性シート10の膨張した領域に、転写フィルム20の対応する部分の転写層22が転写された造形物が得られる。このとき、転写フィルム20のうちの、熱膨張性シート10の膨張していない領域に重ねられた部分の転写層22は転写されず、転写フィルム20に残される。以上のような手順によって、熱膨張性シート10上の隆起が形成された部分に転写層22が転写された造形物が製造される。
以上説明したように、実施形態2に係る造形システム1aは、転写装置50aにおいて、搬送ローラ対150a,150bにより搬送される熱膨張性シート10と転写フィルム20とのうちの一方に当接するサーマルヘッド160を備える。そして、造形システム1aは、サーマルヘッド160により熱膨張性シート10と転写フィルム20とを加熱することにより、熱膨張性シート10を膨張させ、且つ、転写フィルム20から熱膨張性シート10に転写層22を転写させる。
このように、サーマルヘッド160により熱膨張性シート10と転写フィルム20とを加熱するため、実施形態2に係る造形システム1aは、実施形態1のように印刷装置40により熱膨張性シート10又は転写フィルム20に変換層14を形成する必要がない。そのため、隆起を有し、且つ、転写層22が転写された造形物を、より少ない工程且つよりシンプルな構成で製造することができる。
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3について説明する。実施形態1,2と同様の事項については適宜説明を省略する。
実施形態2では、転写装置50aは、搬入部152に載置された熱膨張性シート10と転写フィルム20とを搬送ローラ対150a,150b及びプラテンローラ170により搬送した。これに対して、実施形態3に係る転写装置50bは、いわゆるラベルプリンタであって、ロール状に巻かれて保持された熱膨張性シート10と転写フィルム20とを巻き出して、上述した膨張処理と転写処理とを実行する。
図31に、実施形態3に係る転写装置50bの内部構成を示す。図31に示すように、転写装置50bは、筐体51bの内部に、搬送ローラ対150a,150bと、サーマルヘッド160と、プラテンローラ170と、ロール保持部181,182と、ロール巻取部183と、を備える。
ロール保持部181,182は、それぞれ長尺状の媒体である熱膨張性シート10と転写フィルム20とをロール状に巻き回して保持する。搬送ローラ対150aは、ロール保持部181に保持された熱膨張性シート10とロール保持部182に保持された転写フィルム20とを巻き出す。そして、搬送ローラ対150aは、熱膨張性シート10の表側の面と転写フィルム20の裏側の面とを重ねた状態で、サーマルヘッド160に搬送する。
サーマルヘッド160は、サーマルヘッド160とプラテンローラ170との間で押圧されて搬送される熱膨張性シート10と転写フィルム20とのうちの一方に当接し、熱膨張性シート10と転写フィルム20とを加熱する。これにより、サーマルヘッド160は、熱膨張性シート10を膨張させ、且つ、転写フィルム20から熱膨張性シート10に転写層22を転写させる。
具体的に説明すると、表発泡の場合は、図31に示すように、プラテンローラ170は、熱膨張性シート10の裏側の面に当接し、熱膨張性シート10の表側の面と転写フィルム20の裏側の面とが重ねられた状態で、熱膨張性シート10と転写フィルム20とを熱膨張性シート10の裏側から押圧する。そして、サーマルヘッド160は、転写フィルム20の表側の面に当接し、プラテンローラ170により押圧された熱膨張性シート10と転写フィルム20とを転写フィルム20の表側から加熱する。
一方で、裏発泡の場合は、図示を省略するが、転写装置50bは、図31とは逆に、サーマルヘッド160が熱膨張性シート10の裏側の面に当接し、プラテンローラ170が転写フィルム20の表側の面に当接するように構成される。この場合、プラテンローラ170は、熱膨張性シート10の表側の面と転写フィルム20の裏側の面とが重ねられた状態で、熱膨張性シート10と転写フィルム20とを転写フィルム20の表側から押圧する。そして、サーマルヘッド160は、プラテンローラ170により押圧された熱膨張性シート10と転写フィルム20とを熱膨張性シート10の裏側から加熱する。
搬送ローラ対150bは、サーマルヘッド160により膨張処理と転写処理とが実行された後の熱膨張性シート10と転写フィルム20とを搬送する。膨張処理と転写処理とが実行された後の熱膨張性シート10と転写フィルム20とは、搬送ローラ対150bを通過した後、互いに剥がされて、2つに分かれて搬送される。
具体的に説明すると、転写フィルム20のうちの熱膨張性シート10に転写された転写層22以外の部分は、熱膨張性シート10から剥がされて、ロール巻取部183によりロール状に巻き取られて収納される。一方で、熱膨張性シート10は、膨張処理と転写処理とが実行された後、搬出部から筐体51bの外部に搬出される。これにより、長尺状の熱膨張性シート10上に隆起が形成され、且つ、転写層22が転写された造形物が製造される。
以上説明したように、実施形態3に係る転写装置50bは、熱膨張性シート10と転写フィルム20とがロール状に巻かれて保持された長尺状の媒体である場合にも、熱膨張性シート10を膨張させる処理と、熱膨張性シート10に転写層22を転写させる処理とを、サーマルヘッド160で加熱するという1つの工程で実現することができる。そのため、隆起を有し、且つ、転写層22が転写された造形物を、少ない工程で製造することができる。
(変形例)
以上に本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は一例であり、本発明の適用範囲はこれに限られない。すなわち、本発明の実施形態は種々の応用が可能であり、あらゆる実施形態が本発明の範囲に含まれる。
例えば、上記実施形態1では、転写装置50は、トレイ100に載置された熱膨張性シート10及び転写フィルム20に沿って照射部60を移動させながら、照射部60に電磁波を照射させた。しかしながら、本発明において、転写装置50は、実施形態2に係る転写装置50aのように熱膨張性シート10を搬送する搬送ローラ対150a,150b等の搬送機構を備えており、搬送機構により搬送される熱膨張性シート10に向けて、位置が固定された照射部60から電磁波を照射しても良い。或いは、熱膨張性シート10を膨張させて転写層22を転写させる領域のサイズが相対的に小さい場合のように、当該領域の全体に照射部60から一度に電磁波が照射することが可能である場合には、照射部60と熱膨張性シート10及び転写フィルム20とのいずれも移動せずに、位置が固定されていても良い。
上記実施形態2では、転写装置50aは、熱膨張性シート10及び転写フィルム20を搬送ローラ対150a,150bにより搬送させながら、位置が固定されたサーマルヘッド160により熱膨張性シート10及び転写フィルム20を加熱した。しかしながら、本発明において、転写装置50aは、実施形態1に係る転写装置50のように熱膨張性シート10及び転写フィルム20が載置されるトレイ100を備えており、トレイ100に載置された熱膨張性シート10及び転写フィルム20に沿ってサーマルヘッド160を移動させる方式で、熱膨張性シート10及び転写フィルム20を加熱しても良い。
上記実施形態では、熱膨張性シート10は、基材11と熱膨張層12とを備えており、転写フィルム20は、ベース層21と転写層22とを備えていた。しかしながら、本発明において、熱膨張性シート10及び転写フィルム20は、他の任意の材料による層を備えていても良い。例えば、転写層22として熱膨張性シート10に少なくとも1色のインクを転写させる場合には、熱膨張性シート10は、熱膨張層12の表面に、インクを表面に定着させるのに好適な材料で形成されたインク受容層を備えていても良い。或いは、裏発泡の場合に熱膨張性シート10の裏側の面に形成された変換層14を膨張処理後に除去できるように、熱膨張性シート10は、裏側に剥離可能な剥離層を備えており、剥離層の上から変換層14が形成されても良い。
上記実施形態では、加熱により膨張する第1媒体として熱膨張性シート10を例にとって説明し、転写層22を有する第2媒体として転写フィルム20を例にとって説明した。しかしながら、本発明において、第1媒体は、シート状であることに限らず、加熱により膨張する熱膨張剤を含むものであれば、例えば立体的な形状を有する媒体であっても良いし、その他のどのような形状の媒体であっても良い。また、第2媒体は、フィルム状であることに限らず、第1媒体に転写される転写層22を有するものであれば、どのような形状の媒体であっても良い。
上記実施形態では、熱膨張性シート10と転写フィルム20とは、互いに独立したシートであった。しかしながら、熱膨張性シート10と転写フィルム20とが最初から重ねられていても良い。言い換えると、転写層22が転写された後で熱膨張性シート10から転写フィルム20を剥離可能なように、熱膨張性シート10の表側(熱膨張層12側)の面に転写フィルム20の裏側(転写層22側)の面が接着された状態で生産及び出荷されても良い。
上記実施形態では、端末装置30と印刷装置40と転写装置50,50a,50bとは、それぞれ独立した装置であった。しかしながら、本発明において、端末装置30と印刷装置40と転写装置50,50a,50bとのうちの少なくともいずれか2つが一体となっていても良い。
印刷装置40の印刷方式は、インクジェット方式に限らない。例えば、印刷装置40は、レーザー方式のプリンタであって、トナーと現像剤とによって画像を印刷しても良い。或いは、変換層14は、印刷装置40以外の手段によって形成されるものであっても良い。また、変換層14は、電磁波を熱に変換しやすい材料であれば、カーボン分子を含むインク以外の材料によって形成されても良い。電磁波を熱に変換しやすい材料の例として、特に近赤外領域で吸収率が高く(透過率が低く)、かつ可視光領域の透過率が高い、例えば六ホウ化ランタン(LaB6)やセシウム酸化タングステン等を使用しても良い。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲とが含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記1)
加熱により膨張する熱膨張層を有した第1媒体と、転写層を有した第2媒体とを、前記転写層が前記第1媒体に対向するように配置する第1ステップと、
前記熱膨張層が膨張可能な温度の熱を前記第1媒体に部分的に加えることにより、当該第1媒体における前記熱が加えられた部分に対応する表面を前記熱膨張層の膨張により隆起させて当該第1媒体の表面に凹凸を形成するとともに、前記隆起した部分の表面に当該表面の隆起に伴って発生する前記転写層への押圧力により前記転写層を選択的に転写させる第2ステップと、
を有することを特徴とする造形物の製造方法。
(付記2)
前記第1ステップで配置された前記第1媒体と前記第2媒体とを重ねた状態で押圧する押圧ステップ、を更に有し、
前記第2ステップでは、前記押圧ステップで押圧された前記第1媒体に前記熱を加える、
ことを特徴とする付記1に記載の造形物の製造方法。
(付記3)
前記第1媒体と前記第2媒体とのうちの少なくとも一方の表面の一部に、電磁波を熱に変換する変換層を形成する形成ステップ、を更に有し、
前記第2ステップでは、前記形成ステップで形成された前記変換層に前記電磁波を照射して前記変換層を発熱させることにより、前記第1媒体に前記熱を部分的に加える、
ことを特徴とする付記2に記載の造形物の製造方法。
(付記4)
前記形成ステップでは、前記変換層を、前記第2媒体の表側の面の一部に形成し、
前記第1ステップでは、前記第1媒体と、前記形成ステップで前記変換層が形成された前記第2媒体とを、前記第2媒体の裏側の面が前記第1媒体に対向するように配置し、
前記押圧ステップでは、前記第1ステップで配置された前記第1媒体と前記第2媒体とを、前記第2媒体の表側から押圧し、
前記第2ステップでは、前記第2媒体の表側の面に前記電磁波を照射して前記変換層を発熱させることにより、前記押圧ステップで押圧された前記第1媒体に前記熱を部分的に加える、
ことを特徴とする付記3に記載の造形物の製造方法。
(付記5)
前記形成ステップでは、前記変換層を、前記第1媒体の裏側の面の一部に形成し、
前記第1ステップでは、前記形成ステップで前記変換層が形成された前記第1媒体と、前記第2媒体とを、前記第1媒体の表側の面が前記第2媒体に対向するように配置し、
前記押圧ステップでは、前記第1ステップで配置された前記第1媒体と前記第2媒体とを、前記第1媒体の裏側から押圧し、
前記第2ステップでは、前記第1媒体の裏側の面に前記電磁波を照射して前記変換層を発熱させることにより、前記押圧ステップで押圧された前記第1媒体に前記熱を部分的に加える、
ことを特徴とする付記3に記載の造形物の製造方法。
(付記6)
前記押圧ステップでは、前記電磁波に対する透過性を有する押圧部材により、前記第1ステップで配置された前記第1媒体と前記第2媒体とを押圧し、
前記第2ステップでは、前記押圧部材越しに、前記形成ステップで形成された前記変換層に電磁波を照射する、
ことを特徴とする付記3から5のいずれか1つに記載の造形物の製造方法。
(付記7)
前記第2ステップでは、ヒータにより、前記押圧ステップで押圧された前記第1媒体を、前記電磁波が照射される側とは反対側から更に加熱する、
ことを特徴とする付記3から6のいずれか1つに記載の造形物の製造方法。
(付記8)
前記押圧ステップでは、断熱性を有する押圧部材により、前記第1ステップで配置された前記第1媒体と前記第2媒体とを押圧する、
ことを特徴とする付記2から7のいずれか1つに記載の造形物の製造方法。
(付記9)
前記第2ステップでは、前記押圧ステップで押圧された前記第1媒体と前記第2媒体とのうちの一方に当接するサーマルヘッドにより、前記第1媒体に前記熱を部分的に加える、
ことを特徴とする付記2に記載の造形物の製造方法。
(付記10)
前記押圧ステップでは、前記第1ステップで配置された前記第1媒体と前記第2媒体とを、前記第1媒体の、前記第2媒体に対向する面とは反対側から押圧し、
前記第2ステップでは、前記第2媒体の、前記第1媒体に対向する面とは反対側の面に当接する前記サーマルヘッドにより、前記押圧ステップで押圧された前記第1媒体に前記熱を部分的に加える、
ことを特徴とする付記9に記載の造形物の製造方法。
(付記11)
前記押圧ステップでは、前記第1ステップで配置された前記第1媒体と前記第2媒体とを、前記第2媒体の、前記第1媒体に対向する面とは反対側から押圧し、
前記第2ステップでは、前記第1媒体の、前記第2媒体に対向する面とは反対側の面に当接する前記サーマルヘッドにより、前記押圧ステップで押圧された前記第1媒体に前記熱を部分的に加える、
ことを特徴とする付記9に記載の造形物の製造方法。
(付記12)
前記押圧ステップでは、前記サーマルヘッドとの間で前記第1媒体と前記第2媒体とを挟んで搬送するプラテンローラにより、前記第1媒体と前記第2媒体とを押圧する、
ことを特徴とする付記9から11のいずれか1つに記載の造形物の製造方法。
(付記13)
加熱により膨張する熱膨張層を有した第1媒体と、転写層を有した第2媒体とが、前記転写層が前記第1媒体に対向するように配置される配置部と、
前記熱膨張層が膨張可能な温度の熱を前記第1媒体に部分的に加えることにより、当該第1媒体における前記熱が加えられた部分に対応する表面を前記熱膨張層の膨張により隆起させて当該第1媒体の表面に凹凸を形成するとともに、前記隆起した部分の表面に当該表面の隆起に伴って発生する前記転写層への押圧力により前記転写層を選択的に転写させる転写部と、
を備えることを特徴とする転写装置。
(付記14)
付記13に記載の転写装置と、
前記第1媒体と前記第2媒体とのうちの少なくとも一方の表面の一部に、電磁波を熱に変換する変換層を形成する印刷装置と、
を備え、
前記転写部は、前記印刷装置により形成された前記変換層に前記電磁波を照射して前記変換層を発熱させることにより、前記第1媒体に前記熱を部分的に加える、
ことを特徴とする造形システム。