<プーリ構造体の構造>
図1に示す、本発明の実施形態に係るプーリ構造体1は、例えば、自動車の補機駆動システムにおいて、オルタネータの駆動軸Sに取り付けられる。補機駆動システムは、エンジンのクランク軸に取り付けられた駆動プーリと、オルタネータ等の補機を駆動する従動プーリ及びプーリ構造体1と、これらプーリ及びプーリ構造体1に巻回されたベルトBとを含む。クランク軸の回転がベルトBを介して従動プーリ及びプーリ構造体1に伝達されることで、オルタネータ等の補機が駆動される。クランク軸の回転速度がエンジンの燃焼に応じて変動するのに伴い、ベルトBの走行速度も変動する。
図1、図2に示すように、プーリ構造体1は、外回転体2と、内回転体3と、ねじりコイルばね4(以下、単に「ばね4」という)と、エンドキャップ5と、滑り軸受6及び転がり軸受7からなる一対の軸受6、7とを含む。
外回転体2及び内回転体3は、共に略円筒状であり、同一の回転軸A(プーリ構造体1の回転軸であり、以下、単に「回転軸A」という)を有する。回転軸Aは、図1の左右方向(軸方向)に沿って延在する。また、以下では、図1の右側を軸方向の一端側、図1の左側を軸方向の他端側という。
外回転体2の外周面に、ベルトBが巻回される。
内回転体3は、外回転体2の内側に設けられ、外回転体2に対して相対回転可能である。内回転体3は、オルタネータの駆動軸Sが嵌合される筒本体3aと、筒本体3aの他端の外側に配置された外筒部3bと、筒本体3aの他端と外筒部3bの他端とを連結する円環板部3cとを有する。駆動軸Sは、筒本体3aの内周面のネジ溝に螺合される。
ばね4は、外回転体2と内回転体3との間に配置されている。具体的には、ばね4は、外回転体2の内周面及び内回転体3の外筒部3bの内周面と、内回転体3の筒本体3aの外周面と、内回転体3の円環板部3cとによって画定された、転がり軸受7よりも他端側にある空間Uに収容されている。ばね4は、断面が正方形状の線材(例えば、ばね用オイルテンパー線(JISG3560:1994に準拠)等)で構成されており、左巻き(ばね4の他端から一端に向かって反時計回り)である。
空間Uには、グリース等の潤滑剤が封入されている。潤滑剤は、プーリ構造体1の組み付け時に、ペースト状の塊の状態で、空間Uに投入される。投入量は、例えば0.2g程度である。プーリ構造体1を動作させると、空間Uの温度上昇やせん断発熱(摩擦熱)によって、潤滑剤の粘度が下がり、潤滑剤が空間U全体に拡散する。
エンドキャップ5は、外回転体2及び内回転体3の他端に配置されている。
滑り軸受6は、外回転体2の軸方向において他端側に位置する他端側部分2aの内周面2a1と、内回転体3の外筒部3bの外周面3b1との間の隙間(以下「筒状隙間」という)に介在している。転がり軸受7は、外回転体2の一端側の内周面と内回転体3の筒本体3aの一端側の外周面との間に介在している。そして、一対の軸受6、7によって、外回転体2及び内回転体3が相対回転可能に連結されている。外回転体2及び内回転体3は、他端から一端に向かう方向から見て時計回り(図2の矢印方向。以下、「正方向」という)に回転する。
図2、図3に示すように、滑り軸受6は、無端環状の部材である。滑り軸受6の外周面6aの径は周方向の全周にわたってほぼ一定である。滑り軸受6の外周面6aは、外回転体2の他端側部分2aの内周面2a1と接触している。
また、滑り軸受6は、ロックウェルRスケール(JIS K7202-2:2001に準拠)が80~130である硬質の熱可塑性樹脂で形成されている。具体的には、滑り軸受6は、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエステル(ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等)、フッ素樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリサルホン、非晶ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン類、液晶ポリマー、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド類、シンジオ型ポリスチレン、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、スチレン系樹脂(ABS樹脂、ポリスチレン等)、ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン系樹脂、メタクリル樹脂、ポリビニルアルコール、スチレン系ブロックコポリマー樹脂などによって形成されている。ただし、低摩擦摺動性や耐摩耗性等の観点から、滑り軸受6は、これらの材料のうち、ポリアセタール樹脂及びポリアミド樹脂で形成されたものとすることがより好ましい。また、滑り軸受6のロックウェルRスケールによる硬さは、85~125程度がより好ましい。
また、滑り軸受6は、1種の樹脂組成物によって形成された1層のものであってもよいし、2種以上の樹脂組成物によって形成される2層以上のものでもよい。ただし、製造コストの観点から、滑り軸受6は1種の樹脂組成物によって形成された1層のものとすることがより好ましい。
また、図3、図4に示すように、外回転体2の他端側部分2aの外周面2a1には、一対の凸部11と一対の凹部12とが形成されている。
一対の凸部11は、他端側部分2aの内周面2a1の、回転軸A(外回転体2の軸)を中心に互いに180°ずれた2つの部分に設けられている(図3の角度θa=180°である)。また、凸部11は、軸方向において滑り軸受6よりも他端側に位置している。凸部11は、他端側部分2aの内周面2a1から、外回転体2の径方向の内側に突出し、滑り軸受6の一部分と軸方向に接触可能となっている。これにより、滑り軸受6は、凸部11によって、軸方向への抜け落ちが防止される。ここで、滑り軸受6の抜け落ちを確実に防止する観点から、凸部11が、外回転体2の軸を中心に、42°程度の範囲にわたって延びている。また、凸部11の高さH(径方向内側への突出量)は、滑り軸受6の厚み(例えば、2mm)の半分の長さ以上、滑り軸受6の厚み以下の範囲(例えば、1mm)に設定されている。
一対の凹部12は、他端側部分2aの外周面2a1のうち、回転軸Aを中心に各凸部11から90°(図3の角度θb=90°である)ずれた2つの部分に設けられている。これにより、一対の凹部12は、回転軸Aを中心に互いに180°ずれている(図3の角度θc=180°である)。また、各凹部12は、回転軸Aを中心に、例えば87°程度の範囲にわたって延びている。また、凹部12は、軸方向において、凸部11が配置される範囲と、滑り軸受6が配置される範囲とにわたって延びている。また、凹部12は、他端側部分2aの内周面2a1から、外回転体2の径方向の外側に窪んでいる。また、凹部12の深さの最大値D(以下、単に「凹部12の深さD」とすることがある)は、滑り軸受6の外回転体2への装着性との兼ね合いにより、凸部11の高さH以上に設定される。例えば、凸部11高さHが1mmの場合に、凹部12の深さDが1~3mm程度に設定される。ここで、凹部12の深さDが大きいほど、後述するように滑り軸受6を外回転体2に装着する際に、滑り軸受6を楕円状に弾性変形させる度合いを大きく(短径を小に)できるため、滑り軸受6の装着の際に滑り軸受6が凸部11に干渉するのを避けやすくなる。
そして、滑り軸受6の外周面6aは、凹部12と対向する部分を除いた部分において、他端側部分2aの内周面2a1と接触している。滑り軸受6の外周面6aは、例えば、他端側部分2aの内周面2a1の、回転軸Aを中心に93°(=180°-87°)程度の範囲の2つの部分(合計186°程度の範囲の部分)と接触している。
また、他端側部分2aの内周面2a1の、軸方向において滑り軸受6の一端側に位置する部分には、外回転体2の径方向の内側に突出し、外回転体2の周方向の全周にわたって延びた位置決め部13が設けられている。そして、滑り軸受6の軸方向の一端部が位置決め部13に接触することによって、滑り軸受6が外回転体2に対して軸方向に位置決めされる。ただし、滑り軸受6は、上記一対の凸部11と位置決め部13との間で、多少軸方向に移動可能である。
また、外筒部3bの外周面3b1の滑り軸受6の内周面6bと対向する部分は、内回転体3の周方向の全周にわたって回転軸Aと平行な平坦な面となっている。また、滑り軸受6の内周面6bと内回転体3の外筒部3bの外周面3b1との間には、例えば0.1mm程度の隙間(摺動隙間)が存在する。この隙間に空間Uに封入された潤滑剤が入り込むことで、滑り軸受6の摩擦面(滑り軸受6における外回転体2との接触面)の摩耗が抑制される。なお、潤滑剤がこの隙間から他端側に漏れ出すことはほとんどない。
転がり軸受7は、接触シール式の密閉形玉軸受であって、外回転体2の内周面に固定された外輪7aと、内回転体3の筒本体3aの外周面に固定された内輪7bと、外輪7aと内輪7bとの間に転動自在に配置された複数の玉(転動体)7cと、複数の玉7cの軸方向両側に配置された環状の接触シール部材7dとを有する。転がり軸受7の内部にグリース等の潤滑剤(例えば、空間Uに封入された潤滑剤と同じ潤滑剤)が封入されることで、転がり軸受7の摩擦面(玉7cにおける外輪7a及び/又は内輪7bとの接触面)の摩耗が抑制される。
また、外回転体2は、他端側部分2aよりも軸方向の一端側において、軸方向の他端から一端に向かって内径が2段階で小さくなっている。最も小さい内径部分における外回転体2の内周面を圧接面2b、2番目に小さい内径部分における外回転体2の内周面を環状面2cという。圧接面2bにおける外回転体2の内径は、内回転体3の外筒部3bの内径よりも小さい。環状面2cにおける外回転体2の内径は、内回転体3の外筒部3bの内径と同じか、それよりも小さい。
内回転体3の筒本体3aは、他端側において外径が大きくなっている。この部分における内回転体3の筒本体3aの外周面を接触面3axという。
ばね4は、一端側で外回転体2に接触する一端側領域4aと、他端側で内回転体3に接触する他端側領域4bと、一端側領域4a及び他端側領域4bの間において外回転体2及び内回転体3のいずれにも接触しない中領域4cとを有する。一端側領域4a及び他端側領域4bは、それぞれ、ばね4の一端及び他端から半周以上(回転軸回りに180°以上)に亘った領域をいう。また、他端側領域4bのうち、ばね4の他端から回転軸回りに90°離れた位置付近を第2領域4b2、第2領域4b2よりも他端側の部分を第1領域4b1、残りの部分を第3領域4b3という(図2参照)。
ばね4は、外力を受けていない状態において、全長に亘って径が一定であり、このときのばね4の外径は、環状面2cにおける外回転体2の内径よりも小さく、圧接面2bにおける外回転体2の内径よりも大きい。ばね4は、一端側領域4aが縮径された状態で、空間Uに収容されている。
ばね4は、プーリ構造体1に外力が付与されていない状態(即ち、プーリ構造体1が停止した状態)において、軸方向に圧縮されている。このとき、ばね4の一端側領域4aの外周面はばね4の拡径方向の自己弾性復元力によって圧接面2bに押し付けられ、ばね4の他端側領域4bは若干拡径された状態で接触面3axと接触している。つまり、ばね4の他端側領域4bの内周面は、ばね4の縮径方向の自己弾性復元力によって、接触面3axに押し付けられている。
図2に示すように、内回転体3の他端部分には、ばね4の他端面4bxと対向する当接面3dが形成されている。また、外筒部3bの内周面には、外筒部3bの径方向内側に突出して他端側領域4bの外周面と対向する突起3eが設けられている。突起3eは、第2領域4b2と対向している。
ばね4の他端側領域4bの内周面が接触面3axと接触している状態において、ばね4の他端側領域4bの外周面と内回転体3の外筒部3bの内周面との間には、隙間が形成されている。また、外回転体2の環状面2cとばね4の外周面との間には、隙間が形成されている。本実施形態では、プーリ構造体1に外力が付与されていない状態において、図2に示すように、ねじりコイルばね4の外周面と突起3eとは、互いに離隔しており、両者の間に隙間が形成されているが、互いに接してもよい。
<プーリ構造体の動作>
ここで、プーリ構造体1の動作について説明する。
先ず、外回転体2の回転速度が内回転体3の回転速度よりも大きくなった場合(即ち、外回転体2が加速する場合)について説明する。
この場合、外回転体2は、内回転体3に対して正方向(図2の矢印方向)に相対回転する。外回転体2の相対回転に伴って、ばね4の一端側領域4aが、圧接面2bと共に移動し、内回転体3に対して相対回転する。これにより、ばね4が拡径方向にねじれる。ばね4の一端側領域4aの圧接面2bに対する圧接力は、ばね4の拡径方向のねじり角度が大きくなるほど増大する。第2領域4b2は、ねじり応力を最も受け易く、ばね4の拡径方向のねじり角度が大きくなると、接触面3axから離れる。このとき、第1領域4b1及び第3領域4b3は、接触面3axに圧接している。第2領域4b2が接触面3axから離れると略同時に、又は、ばね4の拡径方向のねじり角度がさらに大きくなったときに、第2領域4b2の外周面が突起3eに当接する。第2領域4b2の外周面が突起3eに当接することで、他端側領域4bの拡径方向の変形が規制され、ねじり応力がばね4における他端側領域4b以外の部分に分散され、特にばね4の一端側領域4aに作用するねじり応力が増加する。これにより、ばね4の各部に作用するねじり応力の差が低減され、ばね4全体で歪エネルギーを吸収できるため、ばね4の局部的な疲労破壊を防止できる。
また、第3領域4b3の接触面3axに対する圧接力は、ばね4の拡径方向のねじり角度が大きくなるほど低下する。第2領域4b2が突起3eに当接すると同時に、又は、ばね4の拡径方向のねじり角度がさらに大きくなったときに、第3領域4b3の接触面3axに対する圧接力が略ゼロとなる。このときのばね4の拡径方向のねじり角度をθ1(例えば、θ1=3°)とする。ばね4の拡径方向のねじり角度がθ1を超えると、第3領域4b3は、拡径方向に変形することで、接触面3axから離れていく。しかし、第3領域4b3と第2領域4b2との境界付近において、ばね4が湾曲(屈曲)することはなく、他端側領域4bは円弧状に維持される。つまり、他端側領域4bは、突起3eに対して摺動し易い形状に維持されている。そのため、ばね4の拡径方向のねじり角度が大きくなって他端側領域4bに作用するねじり応力が増加すると、他端側領域4bは、第2領域4b2の突起3eに対する圧接力及び第1領域4b1の接触面3axに対する圧接力に抗して、突起3e及び接触面3axに対して外回転体2の周方向に摺動する。そして、他端面4bxが当接面3dを押圧することにより、外回転体2と内回転体3との間で確実にトルクを伝達できる。
なお、ばね4の拡径方向のねじり角度がθ1以上且つθ2(例えば、θ2=45°)未満の場合、第3領域4b3は、接触面3axから離隔し且つ内回転体3の外筒部3bの内周面に接触しておらず、第2領域4b2は、突起3eに圧接されている。そのため、この場合、ばね4の拡径方向のねじり角度がθ1未満の場合に比べて、ばね4の有効巻数が大きく、ばね定数が小さい。また、ばね4の拡径方向のねじり角度がθ2になると、ばね4の中領域4cの外周面が環状面2cに当接すること、又は、ばね4の拡径方向のねじり角度が限界に達することにより、ばね4のそれ以上の拡径方向の変形が規制され、外回転体2及び内回転体3が一体的に回転する。これにより、ばねの拡径方向の変形による破損を防止できる。
次に、外回転体2の回転速度が内回転体3の回転速度よりも小さくなった場合(即ち、外回転体2が減速する場合)について説明する。
この場合、外回転体2は、内回転体3に対して逆方向(図2の矢印方向と逆の方向)に相対回転する。外回転体2の相対回転に伴って、ばね4の一端側領域4aが、圧接面2bと共に移動し、内回転体3に対して相対回転する。これにより、ばね4が縮径方向にねじれる。ばね4の縮径方向のねじり角度がθ3(例えば、θ3=10°)未満の場合、一端側領域4aの圧接面2bに対する圧接力は、ねじり角度がゼロの場合に比べて若干低下するものの、一端側領域4aは圧接面2bに圧接している。また、他端側領域4bの接触面3axに対する圧接力は、ねじり角度がゼロの場合に比べて若干増大する。ばね4の縮径方向のねじり角度がθ3以上の場合、一端側領域4aの圧接面2bに対する圧接力は略ゼロとなり、一端側領域4aは圧接面2bに対して外回転体2の周方向に摺動する。したがって、外回転体2と内回転体3との間でトルクは伝達されない。
このように、ばね4は、内回転体3が外回転体2に対して正方向に相対回転するとき外回転体2及び内回転体3のそれぞれと係合して外回転体2と内回転体3との間でトルクを伝達する一方、内回転体3が外回転体2に対して逆方向に相対回転するとき外回転体2及び内回転体3の少なくとも一方(本実施形態では、圧接面2b)に対して摺動(本実施形態では、外回転体2の周方向に摺動)して外回転体2と内回転体3との間でトルクを伝達しない。また、プーリ構造体1は、ばね4の拡径又は縮径により外回転体2及び内回転体3の間でトルクを伝達又は遮断するように構成されている。
<滑り軸受の製造方法>
次に、滑り軸受6の製造方法について説明する。滑り軸受6は、射出成型法によって製造する。具体的には、無端環状のキャビティを有する金型を備えた射出成型機を用いて、熱可塑化(加熱溶融)された樹脂組成物をキャビティ内に射出充填した後、樹脂組成物を冷却固化させることによって、無端環状の滑り軸受6を製造する。
<プーリ構造体の製造方法>
次に、プーリ構造体1の製造方法について説明する。
プーリ構造体1を製造するには、まず、内回転体3にばね4を軸方向の一端側から圧入して、内回転体3にばね4を装着する。また、外回転体2の他端側部分2aに滑り軸受6を装着する。続いて、ばね4が装着された内回転体3に、滑り軸受6が装着された外回転体2を軸方向の一端側から装着する。次に、外回転体2の軸方向の一端部と内回転体3の軸方向の一端部との間に、転がり軸受7を圧入する。その後、外回転体2の軸方向の他端部にエンドキャップ5を装着する。これにより、プーリ構造体1が完成する。
<外回転体への滑り軸受の装着方法>
次に、上述の外回転体2に滑り軸受6を装着する方法について、詳細に説明する。外回転体2に滑り軸受6を装着するには、無端環状の滑り軸受6の、周方向に180°離れた2か所に、作業者の手などによって径方向内向きの外力を加えて、図5、図6(a)、(b)に示すように、滑り軸受6を楕円状に弾性変形させる。このとき、滑り軸受6に加える外力を調整して、楕円状の滑り軸受6の長径T1が2つの凹部12の最も深い部分間の距離K1以下で、且つ、楕円状の滑り軸受6の短径T2が2つの凸部11の先端部間の距離K2以下となるように、滑り軸受6を弾性変形させる。なお、図5、図6(a)、(b)では、凸部11の高さHと凹部12の深さDとがほぼ同じであり、長径T1を距離K1とほぼ同じとし、短い径T2を距離K2とほぼ同じとした場合を示している。
そして、楕円状の滑り軸受6の長径側の2つ端部が2つの凹部12内に位置し、且つ、楕円状の滑り軸受6の短径側の2つ端部が2つの凸部11の間に位置するように、弾性変形させた滑り軸受6を軸方向の他端側から外回転体2に挿入し、滑り軸受6に加えていた上記外力を解除する。すると、滑り軸受6は、長径側の2つ端部が2つの凹部12内に位置し、且つ、短径側の2つ端部が2つの凸部11の先端部の間に位置した状態で、外回転体2に係合する。これにより、滑り軸受を6は、凸部11に干渉することなく、軸方向の一端側へのさらなる挿入が可能となる。
このとき、凹部12の深さDが、凸部11の高さHよりも大きければ、楕円状の滑り軸受6の長径T1が距離K1とほぼ同じとなる程度に滑り軸受6を弾性変形させると、滑り軸受6の短径T2が距離K2よりも短くなり、滑り軸受6の短径側の2つの端部が、凸部11から外回転体2の径方向内側に離間した状態となる。したがって、凹部12の深さDを凸部11の高さHよりも大きくする場合には、凹部12の深さDと凸部11の高さHとを同じとする場合よりも、滑り軸受6が凸部11に干渉しにくくなる。
続いて、滑り軸受6を、位置決め部13と接触する図5、図6(a)、(b)に破線で示す位置(図1の位置に対応)まで軸方向の一端側に挿入する。すると、滑り軸受6は、凸部11よりも軸方向の一端側まで挿入されたときに、弾性復元力により円形の状態に戻ろうとする。これにより、滑り軸受6の外周面6aのうち凹部12と対向する部分を除いた部分が、外回転体2の他端側部分2aの内周面2a1に接触する。また、滑り軸受6の一部が凸部11と軸方向に接触可能になる。これにより、滑り軸受6の外回転体2への装着が完了する。
<効果>
本実施形態では、滑り軸受6が、熱可塑性樹脂からなり、無端環状に形成されているため、上述したように、射出成形法によって製造した滑り軸受6の厚みが周方向の位置によらず均一となる。そして、このような滑り軸受6を用いて構成したプーリ構造体1では、外回転体2が振動して、異音が発生してしまうのを防止することができる。
さらに、本実施形態では、上述したように、滑り軸受6を軸方向の他端側から外回転体2に挿入して、滑り軸受6を外回転体2に装着する際に、滑り軸受6を楕円状に弾性変形させた状態で外回転体2に挿入する。これにより、滑り軸受6を凸部11と干渉することなく、外回転体2に挿入して、外回転体2に装着することができる。また、滑り軸受6が外回転体2に装着されたときには、滑り軸受6が弾性復元力により円形に戻ろうとすることで、滑り軸受6の一部が凸部11と軸方向に接触可能となる。これにより、滑り軸受6が抜け落ちてしまうのを凸部11によって防止することができる。また、滑り軸受6の装着性を確保し、且つ、滑り軸受6が抜け落ちてしまうのを防止するために、外回転体2及び内回転体3とは別の専用の部材が必要なく、プーリ構造体1の構造が複雑化することがない。
また、本実施形態では、一対の凸部11が、他端側部分2aの内周面2a1の、外回転体2の軸を中心に互いに180°ずれた2つの部分に設けられている。さらに、一対の凹部12が、他端側部分2aの内周面2a1の、外回転2の軸を中心に、各凸部11から90°ずれた2つの部分に設けられている。したがって、滑り軸受6の長径方向が2つの凹部12の周方向の中心同士を結ぶ方向と平行となり、滑り軸受6の短径方向が2つの凸部11の周方向の中心同士を結ぶ方向と平行となるように、滑り軸受6を楕円状に弾性変形させれば、簡単に、滑り軸受6を凸部11に干渉しないように弾性変形させることができる。
また、本実施形態では、滑り軸受6の外周面6aと、外回転体2の他端側部分2aの内周面2a1とが接触しているため、滑り軸受6の外周面6aと他端側部分2aの内周面2a1との間に、隙間(摺動隙間)が設定されず、滑り軸受6と外回転体2とが略一体に回転する(殆ど相対回転しない)。一方で、滑り軸受6の内周面6bと、内回転体3の外筒部3bの外周面3b1との間に、例えば基準寸法0.1mm程度の隙間(摺動隙間)が設けられるため、滑り軸受6の内周面6bが内回転体3と摺接する。したがって、滑り軸受6が単に外回転体2と内回転体3との間に介在し、滑り軸受6と外回転体2との間、及び、滑り軸受6と内回転体3との間の両方に隙間(摺動隙間)が存在する場合と比較して、プーリ構造体1の作動中、滑り軸受6が振動するこということが起こりにくく、これにより、異音が発生してしまうのを防止することができる。
次に、本発明の実施例について説明する。
実施例、比較例及び参考例は、本実施形態のプーリ構造体1に対応するプーリ構造体を、異なる形状の滑り軸受を用いて形成したものである。実施例及び比較例では、それぞれ、図7(a)、(b)に示すような滑り軸受6A、6Bを用いてプーリ構造体を形成している。
図7(a)に示すように、実施例の滑り軸受6Aは、無端環状に形成されている。無端環状の滑り軸受6Aは、例えば、図7(a)の下端部が、射出成型法により製造したときに樹脂材料が充填されるゲート部に対応しており、ゲート部と反対側の図7(a)の上端部に、両側から流れてきた樹脂同士がつながったウェルド部6A1を有する。これに対して、図7(b)に示すように、比較例の滑り軸受け6Bは、有端環状に形成されている。有端環状の滑り軸受け6Bは、周方向の両端部の間に、隙間6B1を有する。
また、滑り軸受6Aを射出成型法で製造するときには、上記実施形態で説明したように、無端環状のキャビティを有する金型を備えた射出成型機を用いて、熱可塑化(加熱溶融)された樹脂組成物をキャビティ内に射出充填した後、樹脂組成物を冷却固化させる。一方、滑り軸受6Bを射出成形法によって製造するときには、有端環状のキャビティを有する金型を備えた射出成型機を用いて、熱可塑化(加熱溶融)された樹脂組成物をキャビティに射出充填した後、樹脂組成物を冷却固化させる。
参考例では、滑り軸受6C(図示省略)を用いてプーリ構造体を形成している。滑り軸受6Cは、比較例の滑り軸受6Bに研磨加工を施すことによって、周方向の全周にわたって厚みがほぼ一定となるようにしたものである。
表1は、滑り軸受6A、6B、6Cの部分毎の厚みを示している。ここで、表1のX=0、1、2mmは、滑り軸受6Aについてはウェルド部6A1からの周方向の距離が0mm、1mm、2mmの部分を示しており、滑り軸受6B、6Cについては周方向における端からの距離が0mm、1mm、2mmの部分を示している。また、表1の「最大値」とは、滑り軸受6Aについてはウェルド部6A1からの周方向の距離が0~2mmの範囲に位置する部分の厚みの最大値のことであり、滑り軸受6B、6Cについては周方向における端からの距離が0~2mmの範囲に位置する部分の厚みの最大値のことである。
また、滑り軸受6Aのウェルド部6A1からの周方向の距離が2mmよりも大きい部分の厚み、及び、滑り軸受6B、6Cの周方向における端からの周方向の距離が2mmよりも大きい部分の厚みは、いずれも2.00mmであった。
表1などの結果から、実施例の場合は、作製される滑り軸受6Aの厚みに、周方向に偏りが殆どないものにできていることがわかる。一方、比較例の場合は、作製された滑り軸受6Bの周方向の両端部は、周方向の両端部以外の部分よりも、若干厚みが大きくなっていることがわかる。また、参考例に係る滑り軸受6Cは、厚みが周方向の全周にわたってほぼ一定であることがわかる。なお、表2において、滑り軸受6Cの厚みにばらつきがある(1.98~2.01となっている)のは、研磨加工を行ったときの誤差である。
また、滑り軸受6Aのウェルド部6A1からの周方向の距離が2mmよりも大きい部分、及び、滑り軸受6B、6Cの周方向における端からの周方向の距離が2mmよりも大きい部分は、いずれも、内径が55mmであった。また、滑り軸受6A、6B、6Cの軸方向の長さはいずれも6mmであった。また、滑り軸受6A、6B、6Cでは、ベルトが掛けられる前の状態の筒状隙間が2.1mmであり、摺動隙間が0.1mmであった。
また、実施例、比較例及び参考例では、滑り軸受6A、6B、6Cを、ロックウェルRスケールが114のポリアセタール樹脂(商品名「ベスタールG」(三ツ星ベルト社製))からなるものとした。
また、実施例、比較例及び参考例では、射出成形時の樹脂の温度は、可塑化シリンダ後部(ノズルと反対側の部分)において170℃程度、可塑化シリンダ前部(ノズル側の部分)において200℃程度、ノズル部において210℃程度であった。また、金型の温度は70℃程度であった。また、樹脂の射出圧力は80MPa程度であり、樹脂の射出速度は30mm/秒程度であった。また、成形収縮率は共に約2%であった。
なお、実施例、比較例及び参考例では、上述したような射出成形法及び射出条件によって、各部分の厚みが表1に記載されている厚みとなる滑り軸受が再現性良く作製されることを確認したうえで、表1に記載の厚みを有する滑り軸受を用いてプーリ構造体を形成した。
また、実施例、比較例及び参考例では、エンドキャップの組込みは省いた。これは、プーリ構造体の作動中、滑り軸受6がエンドキャップ側に抜け出ることなく、試験前の装着位置に抜け落ちることなく保持されていることを、試験後に目視にて直接観察できるようにするためである。
実施例に係るプーリ構造体1Aは、図1、図2に示すプーリ構造体1と同様のものである。比較例に係るプーリ構造体1Bは、図8、図9に示すようなものである。図8、図9は、比較例に係るプーリ構造体1Bの、図1、図2に対応する図である。参考例に係るプーリ構造体1C(図示省略)は、比較例に係るプーリ構造体1Bにおいて、滑り軸受6Bを滑り軸受6Cに置き換えたものである。
プーリ構造体1Aが滑り軸受6Aを用いて構成されているのに対して、プーリ構造体1Bは滑り軸受6Bを用いて構成されている。また、プーリ構造体1Aにおいて外回転体2に凸部11、凹部12、位置決め部13を設けているのに対して、プーリ構造体1Bでは、軸方向において内回転体3の外筒部3bの他端部及び滑り軸受6Bよりも一端側の部分に、径方向の外側に突出した突起3b2及び位置決め部3b3を設けている。そして、プーリ構造体1Aでは、滑り軸受6Aの外周面が外回転体2の他端側部分2aの内周面2a1に接触しているのに対して、プーリ構造体1Bでは、滑り軸受6Bの内周面が内回転体3の外筒部3bの外周面3b1に接触している。
また、プーリ構造体1B、1Cを製造するには、まず、内回転体3にばね4を軸方向の一端側から圧入して、内回転体3にばね4を装着し、続いて、内回転体3の外筒部3bに滑り軸受6Bを他端側から圧入して、内回転体3に滑り軸受6B、6Cを装着する。このとき、有端環状の滑り軸受6Bは拡径された状態で突起3b2を乗り越えて、外筒部3bの突起3b2と位置決め部3b3との間の部分まで移動する。続いて、ばね4及び滑り軸受6B、6Cが装着された内回転体3に、外回転体2を軸方向の一端側から装着する。そして、この後、プーリ構造体1Aの製造時と同様の工程によりプーリ構造体1B、1Cが完成する。
また、実施例、比較例及び参考例では、外回転体(実施例は凸部、凹部を含む)及び内 回転体が、材質が炭素鋼(S45C)であり、全ての部位が機械加工(切削加工)で形 成されたものとした。
そして、実施例、比較例及び参考例の供試体(プーリ構造体)を用いて図10に示すようなアイドル試験機80を形成し、このアイドル試験機80を作動させて異音の発生の有無の評価を行った。アイドル試験機80は、オルタネータ81と、オルタネータ81の駆動軸Sに取り付けられた供試体(プーリ構造体)1xを、クランクプーリ83と、クランクプーリ83と供試体1xとに巻回されたVリブドベルト84と、クランクプーリ83と同軸に固定されたタイミングプーリ85と、モータ86と、モータ86の駆動軸に連結されたタイミングプーリ87と、タイミングプーリ85,87に巻回されたタイミングベルト88とを含む。また、オルタネータ81、供試体1x、クランクプーリ83及びVリブドベルト84を含む空間を、恒温槽82とし、雰囲気温度を一定に保った。
また、上記評価を行ったときには、アイドル試験機80における、クランクプーリ83の回転数が約700rpmであり、オルタネータ81(補機)及び試供体1xの回転数が約1500rpmであった。また、これらの回転数の変動率は10%程度であった。また、オルタネータ81(補機)及び試供体1xの表面温度を約130℃とした(恒温槽82を実車のアイドルリング状態と同じ130℃に保った)。また、実施例、比較例及び参考例では、アイドル試験機80を、約20分間の慣らし運転の後、約3分間運転させて測定を行った。また、このときのベルト張力は300N/本程度であった。
実施例、比較例及び参考例について、それぞれ、滑り軸受の装着性、滑り軸受の保持性、外回転体の径方向の振動幅、オルタネータ81の振動加速度、及び、異音の発生の有無の評価を行った。表2はその結果を示している。ただし、参考例については、後述するように異音の有無の評価の基準として用いるものであるため、表2の評価結果にうち、異音の発生の有無に影響を与える、外回転体の径方向の振動幅、及び、オルタネータ81の振動加速度の評価結果のみを示している。
外回転体の径方向の振動幅は、滑り軸受の周方向の両端部が、外回転体のベルトの巻き掛け部分と対向する位置にあるときと、この位置から回転軸を中心に180°回転した位置にあるときとの、外回転体の径方向の位置のずれ量のことである。表2で示しているのは、アイドル試験機を作動させない状態で、変位計(ダイヤルゲージ)を用いて測定を行った測定結果である。
オルタネータ81の振動加速度については、加速度ピックアップを、オルタネータの外面(径方向内向き)に固定し、測定を行った。このようにしたのは、外回転体が径方向に振動したときには、外回転体の振動がオルタネータ軸を介してプーリ構造体に接続されたオルタネータに伝播することで、オルタネータ本体部を覆うハウジングが共振し、このハウジングがスピーカ代わりとなって異音が発生すると考えられるからである。
異音の発生の有無の評価では、聴覚障害のない5名の評価者によって、異音を聞き取ることができたか否かを判定した。具体的には、アイドル試験機を上述したように作動させたときに、オルタネータから後方(プーリ構造体と反対側)に2m離れた位置で、評価者の聴覚によって異音を聞き取ることができたか否かを判定した。
そして、5名全員が異音を聞き取れなかった場合に、評価を○とした。また、5名中2名以下(過半数未満)の評価者によって異音が聞き取られた場合には、評価を△とした。また、5名中3名以上(過半数以上)の評価者によって異音が聞き取られた場合には、評価を×とした。なお、表2からわかるように、評価が△となる例はなかった。
そして、表2に示すように、実施例及び比較例のいずれにおいても、滑り軸受の装着時間はいずれも5秒で差異がなかった。すなわち、実施例では、比較例で内回転体に滑り軸受を装着するのと比べても、遜色なくスムーズに外回転体に滑り軸受を装着できた。このことから、実施例は、比較例と同様に、滑り軸受の装着性に優れることが確認できた。
また、実施例について、約50時間のアイドル耐久試験後、前方から目視にて直接観察した結果、滑り軸受は前方の開口部に抜け出る兆候(痕跡)は全く認められず、試験前に装着した所定位置に正常に保持されていた。このことから、実施例について、滑り軸受の装着及び保持に外回転体又は内回転体以外の別部材を必要としなかった。また、実施例では、比較例と同様に、プーリ構造体が作動中も滑り軸受の保持性に優れることが確認できた。
また、実施例のように、無端環状に形成された熱可塑性樹脂からなる滑り軸受を採用し、射出成形法によって作製される滑り軸受の厚みに関して、周方向に偏りが殆どないものにする場合、及び、参考例のように、有端環状に形成された熱可塑性樹脂からなる滑り軸受を採用し、射出成形法によって作製される滑り軸受の厚みに関して、研磨加工を施すことによって周方向に偏りが殆どないものにする場合には、比較例のように、滑り軸受において、周方向の両端部が周方向の両端部以外の部分よりも厚みが大きくなる場合と比較して、外回転体(オルタネータ)の振動加速度が小さく、外回転体の振動による異音が発生しにくいことがわかった。
また、比較例では、実施例及び参考例よりも、外回転体の径方向の振動幅が大きくなっている。このことから、外回転体の径方向の振動幅が大きくなると、上記異音が発生しやすくなることを確認できた。また、比較例では、実施例及び参考例よりもオルタネータの振動加速度が高くなっている。このことから、上記のとおり、オルタネータの共振によって異音が発生しやすくなることが確認できた。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載の限りにおいて様々な変更が可能である。
上述の実施形態では、一対の凸部11が、他端側部分2aの内周面2a1のうち、回転軸Aを中心に互いに180°ずれた2つの部分に設けられている。また、一対の凹部12が、他端側部分2aの外周面2a1のうち、回転軸Aを中心に各凸部11から90°ずれた2つの部分に設けられている。しかしながら、これには限られない。例えば、一対の凹部12が、他端側部分2aの外周面2a1のうち、回転軸Aを中心に各凸部11から90°以外の角度ずれた2つの部分に設けられていてもよい(角度θbが90°以外の角度でもよい)。また、一対の凸部11と一対の凹部12とが、外回転体2の周方向に交互に設けられていれば、一対の凸部11が、回転軸Aを中心に180°以外の角度ずれていてもよいし(角度θaが180°以外の角度でもよいし)、一対の凹部12が、回転軸Aを中心に180°以外の角度ずれていてもよい(角度θcが180°以外の角度でもよい)。
また、上述の実施形態では、滑り軸受6が外回転体2の他端側部分2aの内周面2a1に接触していたが、これには限られない。例えば、滑り軸受6は、外回転体2の他端側部分2aとの間、及び、内回転体3の外筒部3bとの間に、それぞれ隙間(摺動隙間)が存在するように、単に外回転体2と内回転体3との間に介在されていてもよい。
また、プーリ構造体において、ねじりコイルばねを含むコイルスプリング式のクラッチとは別の構成のクラッチによって、外回転体と内回転体との間でトルクを伝達又は遮断するように構成されていてもよい。さらには、プーリ構造体は、外回転体と内回転体との間でトルクを伝達又は遮断するクラッチが設けられていないものであってもよい。すなわち、プーリ構造体において、外回転体と内回転体との間で常にトルクが伝達されるようになっていてもよいし、外回転体と内回転体との間で常にトルクが遮断されるようになっていてもよい。