本発明の実施例について、図1乃至図8を用いて説明する。以下の実施例及び変更例に係る説明では同様な構成には同じ符号を付し、重複する説明を避け、異なる部分について説明する。
図1を用いて、燃料噴射弁1の全体構成について説明する。図1は、本実施例に係る燃料噴射弁1の中心軸線1aに沿う断面を示す縦断面図である。中心軸線1aは、後述する弁体17が一体に設けられた可動子27の軸心(弁軸心)に一致し、後述する筒状体5の中心軸線に一致している。また、中心軸線1aは、後述する弁座15bの中心線とも一致している。上述した中心軸線、軸心(弁軸心)及び中心線を区別せず、中心軸線1aとして説明する。
燃料噴射弁1には、上端部から下端部まで延設された金属材製の筒状体5が設けられている。この筒状体5の内側に燃料流路3がほぼ中心軸線1aに沿うように構成されている。図1において、上端部(上端側)を基端部(基端側)と呼び、下端部(下端側)を先端部(先端側)と呼ぶことにする。基端部(基端側)及び先端部(先端側)という呼び方は、燃料の流れ方向に基づいている。すなわち、燃料の流れ方向において、基端部が上流側となり、先端部が下流側となる。また、本明細書において用いられる上下関係は図1を基準とするもので、燃料噴射弁1の内燃機関への実装状態における上下方向とは関係がない。
筒状体5の基端部には燃料供給口2が設けられている。この燃料供給口2に、燃料フィルタ13が取り付けられている。燃料フィルタ13は燃料に混入した異物を取り除くための部材である。
筒状体5の基端部にはOリング11が配設されている。Oリング11は燃料噴射弁1が燃料配管に連結される際に、シール材として機能する。
筒状体5の先端部には、弁体17と弁座部材15とからなる弁部7が構成されている。弁座部材15は、弁体17を収容する段付きの弁体収容孔15aが形成されている。弁体収容孔15aの途中に円錐面が形成されており、この円錐面上に弁座15bが構成される。弁体収容孔15aの弁座15bよりも上流側(基端側)の部分には、中心軸線1aに沿う方向に弁体17の移動を案内するガイド面15cが形成されている。弁座15bと弁体17とは協働して、燃料通路の開閉を行う。弁体17が弁座15bに当接することにより、燃料通路は閉じられる。また、弁体17が弁座15bから離間することにより、燃料通路は開かれる。
弁座部材15は、筒状体5の先端側内側に挿入され、レーザ溶接により筒状体5に固定されている。レーザ溶接19は、筒状体5の外周側から全周に亘って実施されている。弁体収容孔15aは、中心軸線1aに沿う方向に、弁座部材15を貫通している。弁座部材15の下端面(先端面)にはノズルプレート21nが取り付けられている。ノズルプレート21nは弁体収容孔15aによって形成された弁座部材15の開口を塞いでいる。
本実施例では、弁座部材15とノズルプレート21nとによって旋回燃料を噴射する燃料噴射部21が構成される。ノズルプレート21nは、弁座部材15に対してレーザ溶接により、固定されている。レーザ溶接部23は、燃料噴射孔220-1,220-2,220-3,220-4(図3参照)が形成された噴射孔形成領域を取り囲むようにして、この噴射孔形成領域の周囲を一周している。弁座部材15は、筒状体5の先端側内側に圧入した上で、レーザ溶接により筒状体5に固定してもよい。
本実施例では、弁体17は、球状を成すボール弁を用いている。このため、弁体17におけるガイド面15cと対向する部位には、周方向に間隔を置いて複数の切欠き面17aが設けられている。この切欠き面17aは板座部材15の内周面との間に隙間を形成する。この隙間によって燃料通路が構成される。なお、ボール弁以外で弁体17を構成することも可能である。例えば、ニードル弁を用いてもよい。
本実施例において、弁座部材15及び弁体17を含む弁部7とノズルプレート21nとは燃料を噴射するためのノズル部を構成する。
筒状体5の中間部には弁体17を駆動するための駆動部9が配置されている。駆動部9は電磁アクチュエータで構成されている。具体的には、駆動部9は、固定鉄心25と、可動子(可動部材)27と、電磁コイル29と、ヨーク33とによって構成されている。
固定鉄心25は、磁性金属材料からなり、筒状体5の長手方向中間部の内側に圧入固定されている。固定鉄心25は筒状に形成され、中心部を中心軸線1aに沿う方向に貫通する貫通孔25aを有する。固定鉄心25は溶接により筒状体5に固定してもよいし、溶接と圧入を併用して筒状体5に固定してもよい。
可動子27は、筒状体5の内部において、固定鉄心25よりも先端側に配置されている。可動子27の基端側には、可動鉄心27aが設けられている。可動鉄心27aは、固定鉄心25と微小ギャップδを介して対向する。可動子27の先端側には小径部27bが形成されており、この小径部27bの先端に弁体17が溶接により固定されている。本実施例では、可動鉄心27aと接続部27bとを一体(同一材料からなる一部材)に形成しているが、二つの部材を接合して構成してもよい。可動子27は弁体17を備え、弁体17を開閉弁方向に変位させる。可動子27は、弁体17が弁座部材15と接触し、可動鉄心27aの外周面が筒状体5の内周面に接触することにより、中心軸線1aに沿う方向(開閉弁方向)における移動を弁軸心方向の2点で案内される。
可動鉄心27aには、固定鉄心25と対向する端面に凹部27cが形成されている。凹部27cの底面にはスプリング(コイルばね)39のばね座27eが形成されている。ばね座27eの内周側には中心軸線1aに沿って小径部(接続部)27bの先端側端部まで貫通する貫通孔27fが形成されている。また、小径部27bには側面に開口部27dが形成されている。貫通孔27fが凹部27cの底面に開口し、開口部27dが小径部27bの外周面に開口することにより、固定鉄心25に形成された燃料通路3と弁部7とを連通する燃料流路3が構成される。
電磁コイル29は、固定鉄心25と可動鉄心27aとが微小ギャップδを介して対向する位置で、筒状体5の外周側に外挿されている。電磁コイル29は、樹脂材料で筒状に形成されたボビン31に巻回され、筒状体5の外周側に外挿されている。電磁コイル29はコネクタ41に設けられたコネクタピン43に配線部材45を介して電気的に接続されている。コネクタ41には図示しない駆動回路が接続され、コネクタピン43及び配線部材45を介して、電磁コイル29に駆動電流が通電される。
ヨーク33は、磁性を有する金属材料でできている。ヨーク33は、電磁コイル29の外周側で、電磁コイル29を覆うように配置され、燃料噴射弁1のハウジングを兼ねる。また、ヨーク33は、その下端部が可動鉄心27aの外周面と筒状体5を介して対向しており、可動鉄心27a及び固定鉄心25と共に、電磁コイル29に通電することにより生じた磁束が流れる閉磁路を構成する。
固定鉄心25の貫通孔25aと可動鉄心27aの凹部27cとに跨って、コイルばね39が圧縮状態で配設されている。コイルばね39は、可動子27を、弁体17が弁座15bに当接する方向(閉弁方向)に付勢する付勢部材として機能している。固定鉄心25の貫通孔25aの内側にはアジャスタ(調整子)35が配設されており、コイルばね39の基端側端部はアジャスタ35の先端側端面に当接している。中心軸線1aに沿う方向におけるアジャスタ35の貫通孔25a内での位置を調整することにより、コイルばね39による可動子27(すなわち弁体17)の付勢力が調整される。
アジャスタ35は、中心部を中心軸線1aに沿う方向に貫通する燃料流路3を有する。燃料は、アジャスタ35の燃料流路3を流れた後、固定鉄心25の貫通孔25aの先端側部分の燃料流路3に流れ、可動子27内に構成された燃料流路3に流れる。
筒状体5の先端部には、Oリング46が外挿されている。Oリング46は、燃料噴射弁1が内燃機関に取り付けられる際に、内燃機関側に形成された挿入口109a(図5参照)の内周面とヨーク33の外周面との間で液密及び気密を確保するシールとして機能する。
燃料噴射弁1の中間部から基端側端部の近傍まで、樹脂カバー47がモールドされて被覆している。樹脂カバー47の先端側端部はヨーク33の基端側の一部を被覆している。また、樹脂カバー47は配線部材45を被覆し、樹脂カバー47によりコネクタ41が一体的に形成されている。
次に、燃料噴射弁1の動作について説明する。
電磁コイル29に通電されていない(すなわち駆動電流が流れていない)場合、可動子27はコイルばね39により閉弁方向に付勢され、弁体17が弁座15bに当接(着座)した状態にある。この場合、固定鉄心25の先端側端面と可動鉄心27aの基端側端面との間には、ギャップδが存在する。なお、本実施例では、このギャップδは可動子27(すなわち弁体17)のストロークに等しい。
電磁コイル29に通電されて駆動電流が流れると、可動鉄心27aと固定鉄心25とヨーク33とによって構成される閉磁路に磁束が発生する。この磁束により、ギャップδを挟んで対向する固定鉄心25と可動鉄心27aとの間に磁気吸引力が発生する。この磁気吸引力が、コイルばね39による付勢力や、可動子27に対して閉弁方向に作用する燃料圧力などの合力に打ち勝つと、可動子が開弁方向に移動し始める。弁体17が弁座15bから離れると弁体17と弁座15bとの間に隙間(燃料流路)が形成され、燃料の噴射が始まる。本実施例では、可動子27が開弁方向にギャップδに等しい距離δだけ移動して、可動鉄心27aが固定鉄心25に当接すると、可動鉄心27aは開弁方向への移動を止められ、開弁して静止した状態に至る。
電磁コイル29の通電を打ち切ると、磁気吸引力が減少し、やがて消失する。磁気吸引力が減少する段階で、磁気吸引力がコイルばね39の付勢力よりも小さくなると、可動子27が閉弁方向へ移動を開始する。弁体17が弁座15bに当接すると、弁体17は弁部7を閉弁して静止した状態に至る。
次に、図2及び図3を用いて、弁部7及び燃料噴射部21の構造について、詳細に説明する。図2は、図1に示す燃料噴射弁1の弁部7及び燃料噴射部21の近傍(ノズル部)を拡大して示す縦断面図(図3のII-II矢視断面に対応する縦断面図)である。図3は、図1のIII-III矢視図であり、ノズルプレートのみを描く平面図である。
なお、図3の平面図は、ノズルプレート21nを燃料噴射孔の入口側から見た平面図であり、ノズルプレート21nの上端面21nu側の平面図である。上端面21nuは弁座部材15の先端面15tと対向する面である。上端面21nuに対して反対側の端面を下端面21nbと呼ぶ。
本実施例では、図2に示すように、ノズルプレート21nは両端面が平面で構成された板状部材で構成され、上端面21nuと下端面21nbとは平行である。すなわち、ノズルプレート21nは板厚が均一な平板で構成されている。なお、本実施例では、中心軸線1aがノズルプレート21nと中心21noで交差するように、燃料噴射弁1が構成されている。
弁座部材15の先端面(下端面)15tは、中心軸線1aに垂直な平らな面(平坦面)で構成されている。弁座部材15の先端面15tにはノズルプレート21nが接合されており、先端面15tはノズルプレート21nの上端面21nuと当接している。
ノズルプレート21nには、図3に示すように、横方向通路(第1横方向通路)211-1,211-2,211-3,211-4、旋回室(第1旋回室)212-1,212-2,212-3,212-4及び燃料噴射孔(第1燃料噴射孔)220-1,220-2,220-3,220-4が形成されている。横方向通路211及び旋回室212は、燃料に旋回力を付与して、燃料噴射孔220から旋回燃料を噴射するための旋回用通路(第1旋回用通路)210を構成する。
複数の旋回室(第1旋回室)212-1~212-4は、複数の燃料噴射孔(第1燃料噴射孔)220-1~220-4のそれぞれの上流側に配置され燃料噴射孔220-1~220-4に供給される燃料に旋回力を付与する。横方向通路(第1横方向通路)211-1~211-4は、複数の旋回室212-1~212-4のそれぞれに接続されて、複数の旋回室212-1~212-4のそれぞれに燃料を供給する。
4組の旋回用通路210-1~210-4と燃料噴射孔220-1~220-4とはそれぞれが同様に構成されるため、これらを区別せず、横方向通路211、旋回室212及び燃料噴射孔220として、説明する。各組で構成を変える場合は、適宜説明する。
図2に示すように、弁座部材15には、円錐状の弁座面15bが下流側に向かって縮径するように形成されている。弁座面15bの下流端は燃料導入孔300に接続されている。燃料導入孔300の下流端は弁座部材15の先端面15tに開口している。燃料導入孔300は旋回用通路210に燃料を導入する燃料通路を構成する。
旋回用通路210は、燃料導入孔300から燃料の供給を受けるために、横方向通路211の上流端部が燃料導入孔300の開口面に対向して設けられている。本実施例では、図3に示すように、4組の横方向通路211-1~211-4は上流端部が接続されて連通する構成であるが、各横方向通路211-1~211-4を独立して構成してもよい。
図2では、一枚の板状部材で構成したノズルプレート21nに、横方向通路211、旋回室212及び燃料噴射孔220の全てを形成している。ノズルプレート21nは、例えば厚さ方向に分割するなどして、複数のプレートで構成することができる。例えば、横方向通路211及び旋回室212を一枚のプレートに形成し、燃料噴射孔220を別のプレートに形成する。そしてこれら二枚のプレートを積層して、ノズルプレート21nを構成してもよい。
また、本実施例では、図2に示すように、燃料噴射孔220は中心軸線1aに平行に形成されているが、中心軸線1aに対して0°よりも大きな角度で傾斜させてもよい。
本実施例では、図3に示すように、旋回用通路210-1と燃料噴射孔220-1とが一つの燃料通路を形成し、旋回用通路210-2と燃料噴射孔220-2とが一つの燃料通路を形成し、旋回用通路210-3と燃料噴射孔220-3とが一つの燃料通路を形成し、旋回用通路210-4と燃料噴射孔220-4とが一つの燃料通路を形成している。旋回用通路210-1は横方向通路211-1と旋回室212-1とで構成され、旋回用通路210-2は横方向通路211-2と旋回室212-2とで構成され、旋回用通路210-3は横方向通路211-3と旋回室212-3とで構成され、旋回用通路210-4は横方向通路211-4と旋回室212-4とで構成される。
本実施例では、ノズルプレート21nに、全部で4組の旋回用通路210及び燃料噴射孔220からなる燃料通路が構成される。4組の燃料通路は、それぞれがノズルプレート21nの中心21no側から外周に向かって放射状に形成されている。すなわち、横方向通路211は、ノズルプレート21nの中心21no側から外周側に向けて放射状に設けられ、ノズルプレート21nの径方向に延設されている。また、それぞれの燃料通路は周方向に90°の角度間隔で形成されている。
旋回用通路210及び燃料噴射孔220は4組に限らず、2組或いは3組であってもよく、5組以上設けられてもよい。
さらにノズルプレート21nは、4つの燃料噴射孔220-1~220-4の径方向内側に燃料噴射孔320を有する。特に本実施例では、4つの燃料噴射孔220-1~220-4は、点21noを中心とする一つの配置円260A上に、周方向に等間隔に配置され、燃料噴射孔320はノズルプレート21nの中心21noに配置され、4つの横方向通路211-1~211-4が交わる部分(接続部、交差部)の通路内に配置されている。すなわち本実施例では、複数の燃料噴射孔(第1燃料噴射孔)220-1~220-4は一つの配置円(第1配置円)260A上に配置され、燃料噴射孔(第2燃料噴射孔)320は配置円(第1配置円)260Aの中心に配置される。
このように本実施例では、燃料噴射孔320は、配置円260Aの内側に配置される。
複数の燃料噴射孔(第1燃料噴射孔)220-1~220-4は、全ての燃料噴射孔が一つの配置円(第1配置円)260A上に配置される必要はなく、少なくとも一つの燃料噴射孔が他の燃料噴射孔と異なる配置円(第1配置円)260A上に配置されてもよい。この場合、燃料噴射孔(第2燃料噴射孔)320は最大径の配置円(第1配置円)260Aの径方向内側に配置されるようにするとよい。
本実施例では、燃料噴射孔220は旋回力が付与された燃料を噴射する燃料噴射孔であるのに対して、燃料噴射孔(第2燃料噴射孔)320は旋回力が付与されない燃料、または燃料噴射孔(第1燃料噴射孔)220-1~220-4から噴射される燃料に付与される旋回力よりも小さい旋回力が付与された燃料を噴射する燃料噴射孔である。このため、燃料噴射孔320は、旋回力が付与されない燃料を噴射する場合、上流側に旋回室を備えていない。言い方を変えれば、燃料噴射孔320は、旋回力が付与されない燃料を噴射する場合、燃料噴射孔320は旋回室と連通していない構成とする。この場合、燃料噴射孔320と旋回室212-1~212-4とは空間としては連通しているものの、燃料噴射孔320から噴射される燃料は旋回室212-1~212-4を流れないため、燃料が流れる通路(流路)としてみた場合、燃料噴射孔320は旋回室212-1~212-4に連通していない。すなわち、燃料噴射孔320に燃料を供給する燃料通路は、燃料に旋回力を付与する旋回室を通過しない構成とする。
ここで、図4を参照して、旋回室212と燃料噴射孔220との関係について、詳細に説明する。図4は、旋回室212及び燃料噴射孔220を拡大して示す平面図(図3に示すIV部の拡大平面図)である。
横方向通路211は、燃料噴射孔220の入口開口220i及び旋回室212の中心Oに対してオフセットするように、旋回室212に接続されている。横方向通路211の下流端は、旋回室212の内周壁(側壁)212cに接続され、内周壁212cに開口212coを形成する。
旋回室212の内周壁212cは、横方向通路211から旋回室212に流入した燃料を旋回させるように、燃料噴射孔220の入口開口220iの周囲に円周を成すように形成されている。すなわち、旋回室212の内周壁212cと燃料噴射孔220の入口開口220iとの間に燃料の旋回流路212dが形成されている。
横方向通路211は延設方向或いは燃料の流れ方向に対して垂直な横断面が矩形状を成し、側壁(側面)211o,211i及び底面211bはノズルプレート21nによって構成されている。また、横方向通路211の上面(天井面)211u(図2参照)は、弁座部材15の下端面15tで構成されている。
横方向通路211の側壁211oは下流端側で、旋回室212の内周壁212cの始端部212csに接続されている。また、横方向通路211の側壁211iは下流端側で、旋回室212の内周壁212cの終端部212ceに接続されている。
始端部212csは、旋回室212において、燃料が流入する側(上流側)に位置する端部である。すなわち、始端部212csは、旋回燃料の流れ方向における上流側に位置する端部である。一方、終端部212ceは旋回室212に流入した燃料が内周壁212cに沿って旋回室212を旋回しながら流下する側(下流側)に位置する端部である。
また、側壁211oは、旋回室212の径方向において、外径側に位置する側壁である。一方、側壁211iは、旋回室212の径方向において、内径側(外径よりも内側)に位置する側壁である。
本実施例では、一方の側壁211oが内周壁212cの旋回燃料の流れ方向における上流側に接続され、他方の側壁211iが内周壁212cの下流側に接続されて、横方向通路211の下流端が内周壁212cの開口212coに接続されている。
本実施例では、旋回室212は、始端部212csから終端部212ceまでの間の内周壁212cが中心Oからの半径Rが一定となるように形成されている。すなわち、内周壁212cは真円を成す円周の一部によって構成される。これにより、燃料噴射孔220の入口開口縁220iと旋回室212の内周壁212cとの間に、燃料通路(旋回流路)212dを構成する底面212bが形成される。
内周壁212cは、燃料を旋回させながら燃料噴射孔220の入口開口i或いはその中心Oに近付けていくように、螺旋曲線或いはインボリュート曲線を描くように形成されてもよい。この場合、旋回流路の横断面積は下流側に向かって漸減する。なお、内周壁212cが螺旋曲線を成す場合は、旋回室の中心Oは螺旋曲線の旋回中心である。また、内周壁212cがインボリュート曲線を成す場合は、旋回室の中心Oは基礎円の中心である。
なお本実施例では、燃料噴射孔220の入口開口220iは、その一部が側壁211iを延長した延長線211il(特に、旋回室212側に延長した延長線部分)を越えて、横方向通路211の側壁211o側に配置されている。すなわち燃料噴射孔220の入口開口220iは、延長線211ilが入口開口縁220icと交差して入口開口220iを横切るように、配置されている。しかし本発明に係る実施例は、燃料噴射孔220の入口開口220iのこのような配置に限定される訳ではない。
ここで、図5を参照して、燃料噴射孔320の機能について説明する。図5は、本発明に係る噴霧角度の挟角化の原理を説明する概念図である。なお図5において、燃料噴射孔220-1,201-3の符号「220-1」及び「220-3」に付記した「(d1)」、及び燃料噴射孔320の符号「320」に付記した「(d2)」はそれぞれの燃料噴射孔の噴射孔径を示している。
本実施例では、4つの燃料噴射孔220-1~220-4の配置円260Aの内側に配置された燃料噴射孔320を有する。特に本実施例では、燃料噴射孔320はノズルプレート21nの中心21noに配置されている。
図5の左図に示すように、燃料噴射孔320がない場合、旋回室212-1,212-3で旋回力を付与された燃料は燃料噴射孔220-1,201-3から噴射される際に径方向外側に広がる燃料噴霧FS1を形成し、複数の燃料噴射孔220から噴射される噴霧角度θ’が大きく(広角に)なる。
一方、本実施例では、図5の右図に示すように、燃料噴射孔320があることで、燃料噴射孔320から燃料噴霧FS2が噴射される。燃料噴霧FS2は燃料噴霧FS1よりも強いペネトレーションを有し、燃料噴射孔320の軸方向における燃料噴霧FS2の流速(軸方向流速)は、燃料噴射孔220-1,220-3の軸方向における燃料噴霧FS1の流速(軸方向流速)よりも大きい。このため、燃料噴霧FS2が燃料噴霧FS1に先行して燃料噴霧FS1を引き寄せることにより、複数の燃料噴射孔220から噴射される噴霧全体の噴霧角度θが小さく(挟角に)なる。
このように本実施例の燃料噴射弁1では、燃料噴射孔220-1~220-4から噴射される燃料噴霧FS1は、強い旋回力を付与されて微粒化されるが、燃料噴射孔320から噴射される燃料噴霧FS2により燃料噴霧全体の中心側に誘引され、噴霧全体の挟角化を実現することができる。すなわち、噴射される燃料に旋回力を付与することにより噴霧液滴の微粒化を実現し、燃料噴射孔320から噴射される燃料噴霧FS2により噴射後の燃料噴霧FS1の拡散を抑制することができ、燃料噴霧FSの微粒化と挟角化とを両立することができる。
燃料噴霧FS2は燃料噴射孔220-1~220-4から噴射される燃料噴霧FS1を誘引する燃料噴霧であり、誘引用燃料噴霧と呼んで説明する場合もある。
本実施例では、燃料噴射孔220-1~220-4により、噴霧全体の噴霧角度がθとなる、一つの方向を指向する噴霧(一方向噴霧)FSが形成される。特に本実施例では、一方向噴霧FSは中心軸線1aを中心軸線として、中心軸線1a方向を指向する噴霧として形成される。
燃料噴霧FS2のペネトレーションを燃料噴霧FS1のペネトレーションよりも大きくするため、燃料噴射孔320における噴射孔長さL2と噴射孔径d2との比L2/d2を燃料噴射孔220における噴射孔長さL1と噴射孔径d1との比L1/d1よりも大きくする(L2/d2>L1/d1)。本実施例では、燃料噴射孔320の噴射孔長さL2はノズルプレート21nの板厚Tと同じであり、燃料噴射孔220はノズルプレート21nに旋回室212と共に板厚方向に重ねられて形成されるため、噴射孔長さL1は板厚T(=L2)よりも小さくなる。このため、噴射孔径d2と噴射孔径d1とを同じ大きさにしても、或いは噴射孔径d2を噴射孔径d1よりも多少大きくしても、L2/d2>L1/d1の関係は満足される。しかし、d2をd1よりも小さく(d2<d1)して、燃料噴霧FS2のペネトレーションを燃料噴霧FS1のペネトレーションに対してより強めるようにしてもよい。
本実施例では、4組の旋回用通路210-1~210-4が同じ形状に形成され、L2/d2>L1/d1の関係を満たしているが、4組の旋回用通路210-1~210-4のうち少なくとも一つの旋回用通路が他の旋回用通路と異なる形状(例えば後述する図6に示すような形状)に形成されていてもよい。ただし、4組の旋回用通路210-1~210-4から噴射される燃料噴霧FS1のペネトレーションが燃料噴射孔320から噴射される燃料噴霧FS2のペネトレーションよりも小さくなるように、個々の燃料噴射孔220-1~220-4はL2/d2>L1/d1の関係を満たすように構成される。
次に、図6を参照して、ノズルプレート21nの形態を変更した変更例(第1変更例)について説明する。図6は、ノズルプレート21nの第1変更例を示す図3と同様な平面図である。
本変更例では、旋回用通路210-1~210-4の形態を変更している。具体的には、4組の横方向通路211-1~211-4は上流端部が接続されておらず、各横方向通路211-1~211-4が独立した構成である。各横方向通路211-1~211-4は、上流側端部(ノズルプレート21nの中心21no側の端部)が燃料導入孔300に連通するように配置されている。すなわち、各横方向通路211-1~211-4の上流側端部は、燃料導入孔300の径方向内側に位置している。
また旋回室212の内周壁212c(図4参照)は、螺旋曲線或いはインボリュート曲線を描くように形成されている。本変更例において、旋回室212-1~212-4は、少なくとも一つの形状が図4に示すような形状、或いはさらに異なる形状であってもよい。
その他の構成は、上述した実施例と同じように構成され、燃料噴射孔320からの燃料噴霧FS2は燃料噴射孔220からの燃料噴霧FS1よりも強いペネトレーションを有する。
次に、図7を参照して、ノズルプレート21nの形態を変更した変更例(第2変更例)について説明する。図7は、ノズルプレート21nの第2変更例を示す図3と同様な平面図である。
本変更例では、上述した実施例の燃料噴射孔320の代りに、4つの燃料噴射孔320-1~320-4を設けている。燃料噴射孔320-1~320-4は横方向通路211-1~211-4が交差する部位よりも径方向外側に配置され、且つ燃料導入孔300の内側に配置されている。
本変更例では、燃料噴射孔320-1~320-4は点21no(第1配置円260Aの中心)を中心とする一つの配置円260B上に配置され、配置円260Bの直径は燃料噴射孔220-1~220-4の配置円260Aの直径よりも小さい。特に本変更例では、燃料噴射孔220-1~220-4及び燃料噴射孔320-1~320-4は点21noを中心とする周方向に等間隔に配置され、各燃料噴射孔220-1~220-4と各燃料噴射孔320-1~320-4との間は中心角が45度となる位置に配置されている。その結果、燃料噴射孔(第2燃料噴射孔)320-1~320-4は、複数の横方向通路(第1横方向通路)211-1~211-4に対して、横方向通路211-1~211-4を挟むように、横方向通路211-1~211-4の幅方向の両側に複数配置される。
旋回用通路210-1~210-4を含むその他の構成は、上述した実施例及び変更例と同じように構成され、燃料噴射孔320-1~320-4からの燃料噴霧FS2は燃料噴射孔220からの燃料噴霧FS1よりも強いペネトレーションを有する。
本変更例では、複数の燃料噴射孔320-1~320-4を備えることで複数の燃料噴霧FS2を噴射することができ、誘引用燃料噴霧FS2の誘引力を大きくすることができる。
次に、図8を参照して、ノズルプレート21nの形態を変更した変更例(第3変更例)について説明する。図8は、ノズルプレート21nの第3変更例を示す図3と同様な平面図である。なお図8において、燃料噴射孔220-1~220-4の符号「220-1」~「220-4」に付記した「(d1)」、及び燃料噴射孔320-1~320-4の符号「320」~「320-4」に付記した「(d2)」はそれぞれの燃料噴射孔の噴射孔径を示している。
本変更例では、変更例2における誘引用燃料噴射孔320-1~320-4を、旋回燃料を噴射する燃料噴射孔として構成している。すなわち、誘引用燃料噴射孔320-1~320-4の上流側に横方向通路311-1~311-4及び旋回室312-1~312-4を有する旋回用通路310-1~310-4を設け、旋回用通路310-1~310-4により旋回力を付与した燃料を誘引用燃料噴射孔320-1~320-4から噴射する。
旋回室(第2旋回室)312-1~312-4は、誘引用燃料噴射孔(第2燃料噴射孔)320-1~320-4の上流側に配置され、誘引用燃料噴射孔320-1~320-4に供給される燃料に旋回力を付与する。横方向通路(第2横方向通路)311-1~311-4は、旋回室(第2旋回室)312-1~312-4に燃料を供給する。
誘引用燃料噴射孔320-1~320-4は、上述した実施例及び変更例と同じように、燃料噴射孔220-1~220-4に対して、ノズルプレート21nの径方向内側に配置される。
燃料噴射孔220-1~220-4及び燃料噴射孔320-1~320-4は、配置円260A,260B上に、第2変更例と同じように配置され、燃料噴射孔220-1~220-4と燃料噴射孔320-1~320-4との間の中心角も第2変更例と同じように配置される。また燃料噴射孔(第2燃料噴射孔)320-1~320-4が複数の横方向通路(第1横方向通路)211-1~211-4を挟むように複数配置される構成も、第2変更例と同じである。
本変更例では、誘引用燃料噴射孔320-1~320-4から噴射される燃料噴霧FS2のペネトレーションを燃料噴射孔220-1~220-4から噴射される燃料噴霧FS1のペネトレーションよりも強くする。
燃料噴射孔320-1~320-4からの燃料噴霧FS2のペネトレーションを燃料噴射孔220-1~220-4からの燃料噴霧FS1のペネトレーションよりも強くする場合、旋回用通路310-1~310-4が燃料に対して付与する旋回力を旋回用通路210-1~210-4が燃料に対して付与する旋回力よりも小さくするとよい。すなわち、旋回室(第2旋回室)312-1~312-4が誘引用燃料噴射孔(第2燃料噴射孔)320-1~320-4に供給される燃料に付与する旋回力は、旋回室(第1旋回室)212-1~212-4が燃料噴射孔(第1燃料噴射孔)220-1~220-4に供給される燃料に付与する旋回力よりも小さくなるようにするとよい。
或いは、燃料噴射孔320-1~320-4における噴射孔長さL2と噴射孔径d2との比L2/d2を燃料噴射孔220-1~220-4における噴射孔長さL1と噴射孔径d1との比L1/d1よりも大きく(L2/d2>L1/d1)することで、燃料噴射孔320-1~320-4からの燃料噴霧FS2のペネトレーションを燃料噴射孔220-1~220-4からの燃料噴霧FS1のペネトレーションよりも強くすることができる。
本変更例では、旋回用通路310-1~310-4が旋回用通路210-1~210-4と同じ形状である場合、噴射孔長さL2と噴射孔長さL1とが同じ長さになる。この場合は、噴射孔径d2を噴射孔径d1よりも小さくして、燃料噴射孔320-1~320-4から噴射される燃料噴霧FS2のペネトレーションを燃料噴射孔220-1~220-4から噴射される燃料噴霧FS1のペネトレーションよりも強くするとよい。
或いは、ノズルプレート21nの板厚方向にける旋回室312-1~312-4の寸法(旋回室高さ)を、旋回室212-1~212-4の旋回室高さよりも小さくすることで、噴射孔長さL2を噴射孔長さL1よりも長くし、L2/d2>L1/d1の関係が満たされるようにしてもよい。これらの方法に限らず、要は、燃料噴射孔320-1~320-4から噴射される燃料噴霧FS2のペネトレーションを燃料噴射孔220-1~220-4から噴射される燃料噴霧FS1のペネトレーションよりも強くすればよい。
燃料噴射孔220-1~220-4から噴射される燃料の旋回方向と誘引用燃料噴射孔320-1~320-4から噴射される燃料の旋回方向とは逆方向となるように、横方向通路311-1~311-4及び旋回室312-1~312-4を構成するとよい。これにより、燃料噴射孔220-1~220-4から噴射される燃料噴霧FS1と誘引用燃料噴射孔320-1~320-4から噴射される燃料噴霧FS2との衝突を抑制し、噴霧液滴の粗大化を抑制することができる。
なお旋回用通路310-1~310-4及び旋回用通路210-1~210-4は、少なくともいずれか一つの旋回用通路を他の旋回用通路から独立した構成にしてもよい。
その他の構成は、上述した実施例及び変更例と同じように構成され、燃料噴射孔320-1~320-4からの燃料噴霧FS2は燃料噴射孔220からの燃料噴霧FS1よりも強いペネトレーションを有する。
次に、図9を参照して、ノズルプレート21nの形態を変更した変更例(第4変更例)について説明する。図9は、ノズルプレート21nの第4変更例を示す図3と同様な平面図である。
変更例3において、旋回用通路310-1~310-4及び旋回用通路210-1~210-4は、少なくともいずれか一つの旋回用通路を他の旋回用通路から独立した構成にしてもよい。例えば、図9に示す例では、旋回用通路210-1~210-4を上述した実施例(図3)と同じ構成にし、旋回用通路310-1~310-4をそれぞれが独立した構成としている。その他の構成は、第3変更例と同じように構成することができる。
さらに本変更例では、旋回用通路310-1~310-4の形状を図6の第1変更例と同じ形状にしている。このように、旋回用通路310-1~310-4の形状を、さらには旋回用通路210-1~210-4を変更してもよい。要するに、燃料噴射孔320-1~320-4から噴射される燃料噴霧FS2のペネトレーションが燃料噴射孔220-1~220-4から噴射される燃料噴霧FS1のペネトレーションよりも強くなるように、旋回用通路310-1~310-4及び旋回用通路210-1~210-4を構成すればよい。
上述した実施例及び変更例において、燃料噴射孔220-1~220-4の少なくともいずれか一つを、他の燃料噴射孔の配置円260Aとは異なる配置円上に配置することも可能である。この場合、誘引用燃料噴霧FS2を噴射する燃料噴射孔320,320-1~320-4は、燃料噴射孔220-1~220-4のうち、ノズルプレート21nの中心21noから最も離れた位置に配置される燃料噴射孔の配置円の径方向内側に配置することで、最も径方向外側に噴射される燃料噴霧FS1を径方向内側に誘引し、燃料噴霧全体の噴霧角度θを小さく(挟角化)することができる。なお、燃料噴射孔220-1~220-4,320-1~320-4の配置円は、ノズルプレート21nの中心21noを中心とする円として定義される。一般的に、ノズルプレート21nの中心21noは燃料噴射弁1の中心軸線1aとノズルプレート21nとの交点に一致する。
本発明に係る実施例及びその変更例によれば、燃料噴射孔(第2燃料噴射孔)320-1~320-4から噴射されるペネトレーションの大きい第2燃料噴霧FS2が、複数の燃料噴射孔(第1燃料噴射孔)220-1~220-4から噴射されるペネトレーションの小さい複数の第1燃料噴霧FS1に先行して複数の第1燃料噴霧FS1を中心側に誘引することで、複数の第1燃料噴射孔から噴射された燃料噴霧FSの広がりを抑制する。
図10を参照して、本発明に係る燃料噴射弁を搭載した内燃機関について説明する。図10は、燃料噴射弁1が搭載された内燃機関の断面図である。
内燃機関100のエンジンブロック101にはシリンダ102が形成されおり、シリンダ102の頂部に吸気口103と排気口104とが設けられている。吸気口103には、吸気口103を開閉する吸気弁105が、また排気口104には排気口104を開閉する排気弁106が設けられている。エンジンブロック101に形成され、吸気口103に連通する吸気流路107の入口側端部107aには吸気管108が接続されている。
燃料噴射弁1の燃料供給口2(図1参照)には燃料配管110が接続される。
吸気管108には燃料噴射弁1の取付け部109が形成されており、取付け部109に燃料噴射弁1を挿入する挿入口109aが形成されている。挿入口109aは吸気管108の内壁面(吸気流路)まで貫通しており、挿入口109aに挿入された燃料噴射弁1から噴射された燃料は吸気流路内に噴射される。一方向噴霧の場合、エンジンブロック101に吸気口103が二つ設けられた形態の内燃機関を対象として、一つのシリンダ102あたり一つの燃料噴射弁1が設けられ、各燃料噴射弁1の燃料噴霧が各吸気口103(吸気弁105)を指向して噴射される。
なお、本発明は上術した実施例及び変更例に限定されるものではなく、一部の構成の削除や、記載されていない他の構成の追加が可能である。また、実施例及び各変更例の間において、構成の入れ替えや追加を行うことも可能である。