JP7280963B2 - ハードコート層形成用組成物、ハードコートフィルム、ハードコートフィルムの製造方法、及びハードコートフィルムを含む物品 - Google Patents
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Description
本発明者らが検討したところ、特許文献1に記載の硬質膜を有するフィルムは、硬度、耐擦傷性、及び繰り返し折り曲げ耐性が鼎立できないことが分かった。
本発明の課題は、硬度、耐擦傷性、及び繰り返し折り曲げ耐性の全てに優れるハードコートフィルムを形成することができるハードコート層形成用組成物、上記ハードコートフィルム、上記ハードコートフィルムの製造方法、及び上記ハードコートフィルムを備えた物品を提供することにある。
[1]
重合性基(Q1)を有し、かつ、上記重合性基(Q1)と、上記重合性基(Q1)とは異なる、活性水素原子を含む置換基(Q2)とが反応して形成された架橋構造を有する、ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)を含有するハードコート層形成用組成物であって、
上記重合性基(Q1)がビニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、及びエポキシ基から選ばれる少なくとも1種であり、上記活性水素原子を含む置換基(Q2)がアミノ基、メルカプト基、水酸基、及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種である、ハードコート層形成用組成物。
[2]
重合性基(Q1)を有し、かつ、上記重合性基(Q1)と、上記重合性基(Q1)とは異なる、活性水素原子を含む置換基(Q2)とが反応して形成された架橋構造を有する、ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)を含有するハードコート層形成用組成物であって、
上記重合性基(Q1)と上記活性水素原子を含む置換基(Q2)の組合せが、以下の(X)又は(Y)のいずれかである、ハードコート層形成用組成物。
(X):上記重合性基(Q1)が(メタ)アクリロイルオキシ基及び(メタ)アクリロイルアミノ基から選ばれる少なくとも1種であり、上記活性水素原子を含む置換基(Q2)がアミノ基及びメルカプト基から選ばれる少なくとも1種である。
(Y):上記重合性基(Q1)がエポキシ基であり、上記活性水素原子を含む置換基(Q2)が水酸基、カルボキシ基、及びアミノ基から選ばれる少なくとも1種である。
[3]
上記ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)が、上記重合性基(Q1)を有する加水分解性シラン化合物と、上記活性水素原子を含む置換基(Q2)を有する加水分解性シラン化合物とを共加水分解縮合してなり、
上記活性水素原子を含む置換基(Q2)を有する加水分解性シラン化合物の含有量が、共加水分解縮合する全ての加水分解性シラン化合物中、0.1~10モル%である、[1]又は[2]に記載のハードコート層形成用組成物。
[4]
上記重合性基(Q1)が(メタ)アクリロイルオキシ基及び(メタ)アクリロイルアミノ基から選ばれる少なくとも1種であり、上記活性水素原子を含む置換基(Q2)がアミノ基である、[1]~[3]のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物。
[5]
上記ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)の重量平均分子量が5000以上200000以下である、[1]~[4]のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物。
[6]
基材と、[1]~[5]のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物から形成されたハードコート層と、を含むハードコートフィルム。
[7]
基材とハードコート層とを含むハードコートフィルムの製造方法であって、
(I)上記基材上に、[1]~[5]のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物を塗布して、ハードコート層塗膜を形成する工程、及び、
(II)上記ハードコート層塗膜を硬化することにより上記ハードコート層を形成する工程、を含むハードコートフィルムの製造方法。
[8]
[6]に記載のハードコートフィルムを備えた物品。
[9]
上記ハードコートフィルムを表面保護フィルムとして備えた[8]に記載の物品。
本発明は、上記[1]~[9]に係るものであるが、本明細書には参考のためその他の事項についても記載した。
重合性基(Q1)を有し、かつ、上記重合性基(Q1)と、上記重合性基(Q1)とは異なる、活性水素原子を含む置換基(Q2)とが反応して形成された架橋構造を有する、ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)を含有するハードコート層形成用組成物。
<2>
上記ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)が、上記重合性基(Q1)を有する加水分解性シラン化合物と、上記活性水素原子を含む置換基(Q2)を有する加水分解性シラン化合物とを共加水分解縮合してなり、
上記活性水素原子を含む置換基(Q2)を有する加水分解性シラン化合物の含有量が、共加水分解縮合する全ての加水分解性シラン化合物中、0.1~10モル%である、<1>に記載のハードコート層形成用組成物。
<3>
上記重合性基(Q1)がビニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、及びエポキシ基から選ばれる少なくとも1種であり、上記活性水素原子を含む置換基(Q2)がアミノ基、メルカプト基、水酸基、及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種である、<1>又は<2>に記載のハードコート層形成用組成物。
<4>
上記重合性基(Q1)が(メタ)アクリロイルオキシ基及び(メタ)アクリロイルアミノ基から選ばれる少なくとも1種であり、上記活性水素原子を含む置換基(Q2)がアミノ基である、<1>~<3>のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物。
<5>
上記ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)の重量平均分子量が5000以上200000以下である、<1>~<4>のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物。
<6>
基材と、<1>~<5>のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物から形成されたハードコート層と、を含むハードコートフィルム。
<7>
基材とハードコート層とを含むハードコートフィルムの製造方法であって、
(I)上記基材上に、<1>~<5>のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物を塗布して、ハードコート層塗膜を形成する工程、及び、
(II)上記ハードコート層塗膜を硬化することにより上記ハードコート層を形成する工程、
を含むハードコートフィルムの製造方法。
<8>
<6>に記載のハードコートフィルムを備えた物品。
<9>
上記ハードコートフィルムを表面保護フィルムとして備えた<8>に記載の物品。
本発明のハードコート層形成用組成物は、重合性基(Q1)を有し、かつ上記重合性基(Q1)と、上記重合性基(Q1)とは異なる、活性水素原子を含む置換基(Q2)とが反応して形成された架橋構造を有する、ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)を含有する。
本発明のハードコート層形成用組成物に含まれるポリオルガノシルセスキオキサン(a1)について説明する。
ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)は、重合性基(Q1)を有する。
重合性基(Q1)としては、特に限定されないが、例えば、ラジカル重合性基である、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の重合性不飽和基(炭素-炭素不飽和二重結合性基)を含む基や、カチオン重合性基である、エポキシ基、オキセタニル基等の開環重合性基を含む基等が挙げられる。重合性基(Q1)としては、ビニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、及びエポキシ基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基及び(メタ)アクリロイルアミノ基から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。なお、本発明では、脂環式エポキシ基(エポキシ基と脂環基の縮環構造を有する基。例えば下記式(e-1)で表される基。*は結合部位を表す。)もエポキシ基に包含されるものとする。
ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)は、重合性基(Q1)と活性水素原子を含む置換基(Q2)とが反応して形成された架橋構造を有する。
活性水素原子を含む置換基(Q2)は、重合性基(Q1)とは異なる基である。
活性水素原子とは、電気陰性度が大きな原子(例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等)に共有結合で結びついた水素原子である。
活性水素原子を含む置換基(Q2)としては、特に限定されないが、アミノ基、メルカプト基、水酸基、及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、アミノ基であることがより好ましい。上記アミノ基は、置換基(例えばアルキル基など)を有していても良い。
構成単位(S1)は重合性基(Q1)を有する。
構成単位(S1)が有する重合性基(Q1)は前述したとおりである。
ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)は、構成単位(S1)を1種のみ有していても良いし、2種以上有していても良い。
L11は単結合又は2価の連結基を表し、
R11は単結合、-NR-、-O-、-C(=O)-、-S-、-SO-、-SO2-、又はこれらを組み合わせて得られる2価の連結基を表し、Rは水素原子又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、
L12は置換又は無置換のアルキレン基を表し、
p1は0又は1を表し、
Q11は重合性基(Q1)を表す。
ポリオルガノシルセスキオキサンとは、加水分解性三官能シラン化合物に由来するシロキサン構成単位(シルセスキオキサン単位)を有するネットワーク型ポリマー又は多面体クラスターであり、シロキサン結合によって、ランダム構造、ラダー構造、ケージ構造などを形成し得る。本発明において、「SiO1.5」が表す構造部分は、上記のいずれの構造であってもよいが、ラダー構造を多く含有していることが好ましい。ラダー構造を形成していることにより、ハードコートフィルムの変形回復性を良好に保つことができる。ラダー構造の形成は、FT-IR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)を測定した際、1020-1050cm-1付近に現れるラダー構造に特徴的なSi-O-Si伸縮に由来する吸収の有無によって定性的に確認することができる。
例えば、-NR-、-O-、-C(=O)-を組み合わせて得られる2価の連結基としては、*-NH-C(=O)-**、*-C(=O)-NH-**、*-NH-C(=O)-O-**、*-O-C(=O)-NH-**、-NH-C(=O)-NH-、*-C(=O)-O-**、*-O-C(=O)-**、等が挙げられる。*は一般式(S1-1)におけるL11との結合手を表し、**は一般式(S1-1)におけるL12との結合手を表す。
L12が表すアルキレン基が置換基を有する場合の置換基としては、特に限定されなが、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、シリル基等が挙げられる。
L12は、炭素数1~3の直鎖状のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、又は2-ヒドロキシ-n-プロピレン基がより好ましく、メチレン基又はエチレン基がさらに好ましい。
構成単位(S2)は活性水素原子を含む置換基(Q2)を有する。
構成単位(S2)が有する活性水素原子を含む置換基(Q2)は前述したとおりである。
ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)は、構成単位(S2)を1種のみ有していても良いし、2種以上有していても良い。
L21は単結合又は2価の連結基を表し、
R21は単結合、-NR-、-O-、-C(=O)-、-S-、-SO-、-SO2-、又はこれらを組み合わせて得られる2価の連結基を表し、
Rは水素原子又はアルキル基を表し、
L22は置換又は無置換のアルキレン基を表し、
p2は0又は1を表し、
Q21は活性水素原子を含む置換基(Q2)を表す。
L21が表すアルキレン基が置換基を有する場合の置換基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、シリル基等が挙げられる。
L21は、無置換の炭素数2~4の直鎖状のアルキレン基が好ましく、エチレン基、又はn-プロピレン基がより好ましく、さらに好ましくはn-プロピレン基である。
例えば、-NR-、-O-、-C(=O)-を組み合わせて得られる2価の連結基としては、*-NH-C(=O)-**、*-C(=O)-NH-**、*-NH-C(=O)-O-**、*-O-C(=O)-NH-**、-NH-C(=O)-NH-、*-C(=O)-O-**、*-O-C(=O)-**、等が挙げられる。*は一般式(S2-1)におけるL21との結合手を表し、**は一般式(S2-1)におけるL22との結合手を表す。
L22が表すアルキレン基が置換基を有する場合の置換基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、シリル基等が挙げられる。
L22は、炭素数1~3の直鎖状のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、又は2-ヒドロキシ-n-プロピレン基がより好ましく、メチレン基又はエチレン基がさらに好ましい。
ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)のMwが5000以上であると、本発明のハードコート層形成用組成物から形成されたハードコート層の機械特性及び伸縮特性が優れたものとなり、硬度、耐擦傷性、及び繰り返し折り曲げ耐性の全てにおいてより良好なハードコートフィルムを形成することが可能となる。また、ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)のMwが200000以下であると、ゲル化が起きにくく、ハードコート層形成用組成物の保存安定性や成膜時の膜の均一性に優れる。
測定装置:商品名「LC-20AD」((株)島津製作所製)
カラム:Shodex KF-801×2本、KF-802、及びKF-803(昭和電工(株)製)
測定温度:40℃
溶離液:N-メチルピロリドン(NMP)、試料濃度0.1~0.2質量%
流量:1mL/分
検出器:UV-VIS検出器(商品名「SPD-20A」、(株)島津製作所製)
分子量:標準ポリスチレン換算
ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)の製造方法は、特に限定されず、公知の製造方法を用いて製造することができるが、例えば、加水分解性シラン化合物を加水分解及び縮合させる方法により製造できる。上記加水分解性シラン化合物としては、重合性基(Q1)を有する加水分解性三官能シラン化合物(好ましくは下記一般式(Sd1-1)で表される化合物)、及び活性水素原子を含む置換基(Q2)を有する加水分解性三官能シラン化合物(好ましくは下記一般式(Sd2-1)で表される化合物)を使用することが好ましい。
下記一般式(Sd1-1)で表される化合物は、上記一般式(S1-1)で表される構成単位に対応し、下記一般式(Sd2-1)で表される化合物は、上記一般式(S2-1)で表される構成単位に対応する。
X1~X3は各々独立にアルコキシ基又はハロゲン原子を表し、
L11は単結合又は2価の連結基を表し、
R11は単結合、-NR-、-O-、-C(=O)-、-S-、-SO-、-SO2-、又はこれらを組み合わせて得られる2価の連結基を表し、Rは水素原子又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、
L12は置換又は無置換のアルキレン基を表し、
p1は0又は1を表し、
Q11は重合性基(Q1)を表す。
X4~X6は各々独立にアルコキシ基又はハロゲン原子を表し、
L21は単結合又は2価の連結基を表し、
R21は単結合、-NR-、-O-、-C(=O)-、-S-、-SO-、-SO2-、又はこれらを組み合わせて得られる2価の連結基を表し、
Rは水素原子又はアルキル基を表し、
L22は置換又は無置換のアルキレン基を表し、
p2は0又は1を表し、
Q21は活性水素原子を含む置換基(Q2)を表す。
一般式(Sd2-1)中のL21、R21、L22、p2及びQ21は、一般式(S2-1)中のL21、R21、L22、p2及びQ21とそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基等の炭素数1~4のアルコキシ基等が挙げられる。
上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
X1~X6としては、アルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。なお、X1~X6は、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。
上記溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール等が挙げられる。
上記溶媒としては、ケトン又はエーテルが好ましい。なお、溶媒は1種を単独で使用することも、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記酸触媒としては、特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の鉱酸;リン酸エステル;酢酸、蟻酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等のスルホン酸;活性白土等の固体酸;塩化鉄等のルイス酸等が挙げられる。
上記アルカリ触媒としては、特に限定されず、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属の炭酸塩;炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム等のアルカリ金属の炭酸水素塩;酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム等のアルカリ金属の有機酸塩(例えば、酢酸塩);酢酸マグネシウム等のアルカリ土類金属の有機酸塩(例えば、酢酸塩);リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムエトキシド、カリウムt-ブトキシド等のアルカリ金属のアルコキシド;ナトリウムフェノキシド等のアルカリ金属のフェノキシド;トリエチルアミン、N-メチルピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン等のアミン類(第3級アミン等);ピリジン、2,2'-ビピリジル、1,10-フェナントロリン等の含窒素芳香族複素環化合物等が挙げられる。
なお、触媒は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、触媒は、水又は溶媒等に溶解又は分散させた状態で使用することもできる。
なお、全固形分とは溶剤以外の全成分のことである。
本発明のハードコート層形成用組成物は、重合開始剤を含むことが好ましい。
ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)が有する重合性基(Q1)がラジカル重合性基であれば、ラジカル重合開始剤を含むことが好ましく、重合性基(Q1)がカチオン重合性基であれば、カチオン重合開始剤を含むことが好ましい。
重合開始剤は、ラジカル重合開始剤であることが好ましい。ラジカル重合開始剤は、ラジカル光重合開始剤でも、ラジカル熱重合開始剤でも良いが、ラジカル光重合開始剤であることがより好ましい。
重合開始剤は一種のみ用いてもよく、構造の異なる二種以上を併用してもよい。
以上のラジカル光重合開始剤および助剤は、公知の方法で合成可能であり、市販品として入手も可能である。
本発明のハードコート層形成用組成物は、溶媒を含んでいてもよい。
溶媒としては、有機溶媒が好ましく、有機溶媒の一種または二種以上を任意の割合で混合して用いることができる。有機溶媒の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;エチルセロソルブ等のセロソルブ類;トルエン、キシレン等の芳香族類;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;ジアセトンアルコール等が挙げられる。
ハードコート層形成用組成物中の溶媒の含有率は、ハードコート層形成用組成物の塗布適性を確保できる範囲で適宜調整することができる。例えば、ハードコート層形成用組成物の全固形分100質量部に対して、50~500質量部とすることができ、好ましくは80~200質量部とすることができる。
ハードコート層形成用組成物は、通常、液の形態をとる。
ハードコート層形成用組成物の固形分の濃度は、通常、10~90質量%であり、好ましくは20~80質量%、特に好ましくは40~70質量%である。
本発明のハードコート層形成用組成物は、上記以外の成分を含有していてもよく、たとえば、無機微粒子、分散剤、レベリング剤、防汚剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を含有していてもよい。
本発明は、基材と、上記ハードコート層形成用組成物から形成されたハードコート層とを有するハードコートフィルムにも関する。
本発明のハードコートフィルムは、基材上に上記ハードコート層を有する。
本発明のハードコートフィルムに用いる基材は、可視光領域の透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
基材はポリマーを含むプラスチック基材であることが好ましい。
ポリマーとしては、光学的な透明性、機械的強度、熱安定性などに優れるポリマーが好ましい。
アミド系ポリマーとしては、芳香族ポリアミド(アラミド系ポリマー)が好ましい。
基材は、イミド系ポリマー及びアラミド系ポリマーから選ばれる少なくとも1種のポリマーを含有することが好ましい。
基材は、上記のポリマーを更に柔軟化する素材を含有しても良い。柔軟化素材とは、破断折り曲げ回数を向上させる化合物を指し、柔軟化素材としては、ゴム質弾性体、脆性改良剤、可塑剤、スライドリングポリマー等を用いることが出来る。
柔軟化素材として具体的には、特開2016-167043号公報における段落番号[0051]~[0114]に記載の柔軟化素材を好適に用いることができる。
基材には、用途に応じた種々の添加剤(例えば、紫外線吸収剤、マット剤、酸化防止剤、剥離促進剤、レターデーション(光学異方性)調節剤、など)を添加できる。それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点又は沸点において特に限定されるものではない。また添加剤を添加する時期は基材を作製する工程において何れの時点で添加しても良く、素材調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。
その他の添加剤としては、特開2016-167043号公報における段落番号[0117]~[0122]に記載の添加剤を好適に用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール化合物、トリアジン化合物、ベンゾオキサジン化合物を挙げることができる。ここでベンゾトリアゾール化合物とは、ベンゾトリアゾール環を有する化合物であり、具体例としては、例えば特開2013-111835号公報段落0033に記載されている各種ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を挙げることができる。トリアジン化合物とは、トリアジン環を有する化合物であり、具体例としては、例えば特開2013-111835号公報段落0033に記載されている各種トリアジン系紫外線吸収剤を挙げることができる。ベンゾオキサジン化合物としては、例えば特開2014-209162号公報段落0031に記載されているものを用いることができる。基材中の紫外線吸収剤の含有量は、例えば基材に含まれるポリマー100質量部に対して0.1~10質量部程度であるが、特に限定されるものではない。また、紫外線吸収剤については、特開2013-111835号公報段落0032も参照できる。なお、本発明においては、耐熱性が高く揮散性の低い紫外線吸収剤が好ましい。かかる紫外線吸収剤としては、例えば、UVSORB101(富士フイルムファインケミカルズ株式会社製)、TINUVIN 360、TINUVIN 460、TINUVIN 1577(BASF社製)、LA-F70、LA-31、LA-46(ADEKA社製)などが挙げられる。
基材として、イミド系ポリマーを含む基材を好ましく用いることができる。本明細書において、イミド系ポリマーとは、式(PI)、式(a)、式(a’)及び式(b)で表される繰り返し構造単位を少なくとも1種以上含む重合体を意味する。なかでも、式(PI)で表される繰り返し構造単位が、イミド系ポリマーの主な構造単位であると、フィルムの強度及び透明性の観点で好ましい。式(PI)で表される繰り返し構造単位は、イミド系ポリマーの全繰り返し構造単位に対し、好ましくは40モル%以上であり、より好ましくは50モル%以上であり、さらに好ましくは70モル%以上であり、特に好ましくは90モル%以上であり、最も好ましくは98モル%以上である。
本明細書において、「系化合物」とは、「系化合物」が付される化合物の誘導体を指す。例えば、「ベンゾフェノン系化合物」とは、母体骨格としてのベンゾフェノンと、ベンゾフェノンに結合している置換基とを有する化合物を指す。
基材はフィルム状であることが好ましい(基材はプラスチックフィルムであることが特に好ましい)。
基材の厚みは、100μm以下であることがより好ましく、80μm以下であることが更に好ましく、50μm以下が最も好ましい。基材の厚みが薄くなれば、折り曲げ時の表面と裏面の曲率差が小さくなり、クラック等が発生し難くなり、複数回の折れ曲げでも、基材の破断が生じなくなる。一方、基材の取り扱いの容易さの観点から基材の厚みは3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、15μm以上が最も好ましい。
基材は、熱可塑性のポリマーを熱溶融して製膜しても良いし、ポリマーを均一に溶解した溶液から溶液製膜(ソルベントキャスト法)によって製膜しても良い。熱溶融製膜の場合は、上述の柔軟化素材及び種々の添加剤を、熱溶融時に加えることができる。一方、基材を溶液製膜法で作製する場合は、ポリマー溶液(以下、ドープともいう)には、各調製工程において上述の柔軟化素材及び種々の添加剤を加えることができる。またその添加する時期はドープ作製工程において何れでも添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。
本発明のハードコートフィルムは上記ハードコート層形成用組成物から形成されたハードコート層を有する。
ハードコート層は、基材の少なくとも一方の面上に形成されていることが好ましい。
本発明のハードコートフィルムが後述の耐擦傷層を有する場合は、少なくとも1層のハードコート層を、基材と耐擦傷層との間に有することが好ましい。
ハードコート層は、上記ハードコート層形成用組成物を基材上に塗布して得られた塗膜に光照射及び加熱の少なくとも一方による硬化処理を施されて形成されたものであることが好ましい。すなわち、ハードコート層は、上記ハードコート層形成用組成物の硬化物を含むことが好ましい。
本発明のハードコートフィルムのハードコート層は、ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)を含むハードコート層形成用組成物の硬化物を含むものであり、好ましくは、ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)及び重合開始剤を含むハードコート層形成用組成物の硬化物を含むものである。
ハードコート層形成用組成物の硬化物は、少なくとも、ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)の重合性基(Q1)が重合反応により結合してなる硬化物を含むことが好ましい。
本発明のハードコートフィルムのハードコート層における、上記ハードコート層形成用組成物の硬化物の含有率は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。
ハードコート層の膜厚は特に限定されないが、0.5~30μmであることが好ましく、1~25μmであることがより好ましく、2~20μmであることが更に好ましい。
ハードコート層の膜厚は、ハードコートフィルムの断面を光学顕微鏡で観察して算出する。断面試料は、断面切削装置ウルトラミクロトームを用いたミクロトーム法や、集束イオンビーム(FIB)装置を用いた断面加工法などにより作成できる。
本発明のハードコートフィルムは、上記ハードコート層以外の機能層を有していても良い。機能層としては、特に限定されないが、例えば、耐擦傷層が挙げられる。
本発明のハードコートフィルムが耐擦傷層を有する場合、少なくとも1層の耐擦傷層を、ハードコート層の基材と反対側の表面上に有することが好ましい。
本発明のハードコートフィルムの耐擦傷層は、ラジカル重合性化合物(c1)を含む耐擦傷層形成用組成物の硬化物を含むことが好ましい。
ラジカル重合性化合物(c1)(「化合物(c1)」ともいう。)について説明する。
化合物(c1)は、ラジカル重合性基を有する化合物である。
化合物(c1)におけるラジカル重合性基としては、特に限定されず、一般に知られているラジカル重合性基を用いることができる。ラジカル重合性基としては、重合性不飽和基が挙げられ、具体的には、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。なお、上記した各基は置換基を有していてもよい。
化合物(c1)は、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましく、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることがより好ましい。
化合物(c1)の分子量は特に限定されず、モノマーでもよいし、オリゴマーでもよいし、ポリマーでもよい。
上記化合物(c1)の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等が好適に例示される。
1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルが挙げられる。具体的には、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート,ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート,ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、高架橋という点ではペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、もしくはジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、又はこれらの混合物が好ましい。
本発明における耐擦傷層形成用組成物は、ラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。
ラジカル重合開始剤は一種のみ用いてもよく、構造の異なる二種以上を併用してもよい。また、ラジカル重合開始剤は光重合開始剤でも良く、熱重合開始剤でも良い。
耐擦傷層形成用組成物中のラジカル重合開始剤の含有率は、特に限定されるものではないが、例えば化合物(c1)100質量部に対して、0.1~200質量部が好ましく、1~50質量部がより好ましい。
本発明における耐擦傷層形成用組成物は、溶媒を含んでいてもよい。
溶媒としては、前述の樹脂組成物が含んでいてもよい溶媒と同様である。
本発明における耐擦傷層形成用組成物における溶媒の含有率は、耐擦傷層形成用組成物の塗布適性を確保できる範囲で適宜調整することができる。例えば、耐擦傷層形成用組成物の全固形分100質量部に対して、50~500質量部とすることができ、好ましくは80~200質量部とすることができる。
耐擦傷層形成用組成物は、通常、液の形態をとる。
耐擦傷層形成用組成物の固形分の濃度は、通常、10~90質量%程度であり、好ましくは20~80質量%、特に好ましくは40~70質量%程度である。
耐擦傷層形成用組成物は、上記以外の成分を含有していてもよく、たとえば、無機粒子、レベリング剤、防汚剤、帯電防止剤、滑り剤、溶媒等を含有していてもよい。
特に、滑り剤として下記の含フッ素化合物を含有することが好ましい。
含フッ素化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーいずれでもよい。含フッ素化合物は、耐擦傷層中で化合物(c1)との結合形成あるいは相溶性に寄与する置換基を有していることが好ましい。この置換基は同一であっても異なっていてもよく、複数個あることが好ましい。
この置換基は重合性基が好ましく、ラジカル重合性、カチオン重合性、アニオン重合性、縮重合性及び付加重合性のうちいずれかを示す重合性反応基であればよく、好ましい置換基の例としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基が挙げられる。その中でもラジカル重合性基が好ましく、中でもアクリロイル基、メタクリロイル基が特に好ましい。
含フッ素化合物はフッ素原子を含まない化合物とのポリマーであってもオリゴマーであってもよい。
一般式(F): (Rf)-[(W)-(RA)nf]mf
(式中、Rfは(パー)フルオロアルキル基又は(パー)フルオロポリエーテル基、Wは単結合又は連結基、RAは重合性不飽和基を表す。nfは1~3の整数を表す。mfは1~3の整数を表す。)
ここで、(パー)フルオロアルキル基は、フルオロアルキル基及びパーフルオロアルキル基のうち少なくとも1種を表し、(パー)フルオロポリエーテル基は、フルオロポリエーテル基及びパーフルオロポリエーテル基のうち少なくとも1種を表す。耐擦傷性の観点では、Rf中のフッ素含有率は高いほうが好ましい。
(パー)フルオロアルキル基は、直鎖構造(例えば-CF2CF3、-CH2(CF2)4H、-CH2(CF2)8CF3、-CH2CH2(CF2)4H)であっても、分岐構造(例えば-CH(CF3)2、-CH2CF(CF3)2、-CH(CH3)CF2CF3、-CH(CH3)(CF2)5CF2H)であっても、脂環式構造(好ましくは5員環又は6員環で、例えばパーフルオロシクロへキシル基及びパーフルオロシクロペンチル基並びにこれらの基で置換されたアルキル基)であってもよい。
上記pf及びqfはそれぞれ独立に0~20の整数を表す。ただしpf+qfは1以上の整数である。
pf及びqfの総計は1~83が好ましく、1~43がより好ましく、5~23がさらに好ましい。
上記含フッ素化合物は、耐擦傷性に優れるという観点から-(CF2O)pf-(CF2CF2O)qf-で表されるパーフルオロポリエーテル基を有することが特に好ましい。
Wとして、好ましくは、エチレン基、より好ましくは、カルボニルイミノ基と結合したエチレン基である。
本発明で用いられる含フッ素化合物のMwは400以上50000未満が好ましく、400以上30000未満がより好ましく、400以上25000未満が更に好ましい。
本発明のハードコートフィルムの耐擦傷層は、化合物(c1)を含む耐擦傷層形成用組成物の硬化物を含むものであることが好ましく、より好ましくは、化合物(c1)及びラジカル重合開始剤を含む耐擦傷層形成用組成物の硬化物を含むものである。
耐擦傷層形成用組成物の硬化物は、少なくとも、化合物(c1)のラジカル重合性基が重合反応してなる硬化物を含むことが好ましい。
本発明のハードコートフィルムの耐擦傷層における耐擦傷層形成用組成物の硬化物の含有率は、耐擦傷層の全質量に対して60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。
耐擦傷層の膜厚は、繰り返し折り曲げ耐性の観点から、3.0μm未満であることが好ましく、0.1~2.0μmであることがより好ましく、0.1~1.0μmであることが更に好ましい。
本発明のハードコートフィルムは、優れた鉛筆硬度を有する。
本発明のハードコートフィルムは、鉛筆硬度が4H以上であることが好ましく、5H以上であることがより好ましい。
鉛筆硬度は、 JIS(JISは、Japanese Industrial Standards(日本工業規格)である) K5400に従い評価することができる。
本発明のハードコートフィルムは、優れた繰り返し折り曲げ耐性を有する。
本発明のハードコートフィルムは、ハードコート層を内側にして、曲率半径2mmで180°折り曲げ試験を10万回繰り返し行った場合にクラックが発生しないことが好ましい。
繰り返し折り曲げ耐性は具体的には以下のように測定する。
ハードコートフィルムから幅15mm、長さ150mmの試料フィルムを切り出し、温度25℃、相対湿度65%の状態に1時間以上静置させる。その後、180°耐折度試験機((株)井元製作所製、IMC-0755型)を用いて、ハードコート層を内側にして繰り返し折り曲げ耐性の試験を行う。上記試験機は、試料フィルムを直径4mmの棒(円柱)の曲面に沿わせて曲げ角度180°で長手方向の中央部分で折り曲げた後、元に戻す(試料フィルムを広げる)という動作を1回の試験とし、この試験を繰り返し行うものである。上記180°折り曲げ試験を繰り返し行った場合にクラックが発生するか否かを目視で評価する。
本発明のハードコートフィルムは、優れた耐擦傷性を有する。
本発明のハードコートフィルムは、ハードコート層上に、200gの荷重でスチールウール擦り試験を行った際に、10回(10往復)擦っても傷が付かないことが好ましく、50回(50往復)擦っても傷が付かないことがより好ましく、100回(100往復)擦っても傷が付かないことが更に好ましい。
耐擦傷性は具体的には以下のように測定する。
ハードコートフィルムの基材とは反対側の表面(ハードコート層側表面)を、ラビングテスターを用いて、以下の条件で擦りテストを行う。
評価環境条件:25℃、相対湿度60%
擦り材:スチールウール(日本スチールウール(株)製、グレードNo.0)
試料と接触するテスターの擦り先端部(1cm×1cm)に巻いて、バンド固定
移動距離(片道):13cm、
こすり速度:13cm/秒、
荷重:200g、先端部
先端部接触面積:1cm×1cm、
試験後のハードコートフィルムの擦った面とは逆側の面に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、スチールウールと接触していた部分に傷が入ったときの擦り回数を計測した。
本発明のハードコートフィルムの製造方法について説明する。
本発明のハードコートフィルムの製造方法は、下記工程(I)及び(II)を含む製造方法であることが好ましい。
(I)基材上に、上記ハードコート層形成用組成物を塗布してハードコート層塗膜を形成する工程
(II)上記ハードコート層塗膜を硬化することによりハードコート層を形成する工程
(III)上記ハードコート層上に、ラジカル重合性化合物(c1)を含む耐擦傷層形成用組成物を塗布して耐擦傷層塗膜を形成する工程
(IV)上記耐擦傷層塗膜を硬化することにより耐擦傷層を形成する工程
工程(I)は、基材上に上記ハードコート層形成用組成物を塗布してハードコート層塗膜を設ける工程である。
基材及びハードコート層形成用組成物については前述したとおりである。
工程(II)は、上記ハードコート層塗膜を硬化することによりハードコート層を形成する工程である。なお、ハードコート層塗膜を硬化するとは、ハードコート層塗膜に含まれるポリオルガノシルセスキオキサン(a1)の重合性基(Q1)の少なくとも一部を重合反応させることをいう。
工程(III)は、上記ハードコート層上に、ラジカル重合性化合物(c1)を含む耐擦傷層形成用組成物を塗布して耐擦傷層塗膜を形成する工程である。
ラジカル重合性化合物(c1)、及び耐擦傷層形成用組成物については前述したとおりである。
工程(IV)は、上記耐擦傷層塗膜を硬化することにより耐擦傷層を形成する工程である。
本発明のハードコートフィルムは、鉛筆硬度、耐擦傷性、及び繰り返し折り曲げ耐性に優れるものである。また、本発明のハードコートフィルムの用途は特に限定されないが、例えば、画像表示装置の表面保護フィルムとして用いることができる。また、本発明のハードコートフィルムの上記特性を活用できる好適な用途として、例えば、フォルダブルデバイス(フォルダブルディスプレイ)の表面保護フィルムとして用いることができる。フォルダブルデバイスとは、表示画面が変形可能であるフレキシブルディスプレイを採用したデバイスのことであり、表示画面の変形性を利用してデバイス本体(ディスプレイ)を折りたたむことが可能である。
フォルダブルデバイスとしては、例えば、有機エレクトロルミネッセンスデバイスなどが挙げられる。
(ポリイミド粉末の製造)
攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた1Lの反応器に、窒素気流下、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)832gを加えた後、反応器の温度を25℃にした。ここに、ビストリフルオロメチルベンジジン(TFDB)64.046g(0.2mol)を加えて溶解した。得られた溶液を25℃に維持しながら、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)31.09g(0.07mol)とビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)8.83g(0.03mol)を投入し、一定時間撹拌して反応させた。その後、塩化テレフタロイル(TPC)20.302g(0.1mol)を添加して、固形分濃度13質量%のポリアミック酸溶液を得た。次いで、このポリアミック酸溶液にピリジン25.6g、無水酢酸33.1gを投入して30分撹拌し、さらに70℃で1時間撹拌した後、常温に冷却した。ここにメタノール20Lを加え、沈澱した固形分を濾過して粉砕した。その後、100℃下、真空で6時間乾燥させて、111gのポリイミド粉末を得た。
100gの上記ポリイミド粉末を670gのN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶かして13質量%の溶液を得た。得られた溶液をステンレス板に流延し、130℃の熱風で30分乾燥させた。その後フィルムをステンレス板から剥離して、フレームにピンで固定し、フィルムが固定されたフレームを真空オーブンに入れ、100℃から300℃まで加熱温度を徐々に上げながら2時間加熱し、その後、徐々に冷却した。冷却後のフィルムをフレームから分離した後、最終熱処理工程として、さらに300℃で30分間熱処理して、ポリイミドフィルムからなる、厚み50μmの基材S-1を得た。
3-(アクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン63.3g(270mmol)、3-アミノプロピルトリメトキシシラン5.38g(30mmol)、およびアセトン300gを50℃で撹拌しながら、5質量%炭酸カリウム水溶液8.28gを5分間かけて滴下した。さらに純水54.2gを20分かけて滴下し、そのまま50℃で5時間撹拌した。
反応液を室温(20℃)に戻した後、メチルイソブチルケトン(MIBK)300g、5質量%食塩水300gを添加し、分液ロートに移して有機層を抽出し、5質量%食塩水300g、純水300g×2回で順次洗浄した。有機層を減圧濃縮することにより、ポリオルガノシルセスキオキサン(SQ-1-1)を45.9質量%含有するMIBK溶液、78.8gを得た(収率75%)。得られたポリオルガノシルセスキオキサン化合物(SQ-1-1)の重量平均分子量(Mw)は28200であった。
1H NMR(Nuclear Magnetic Resonance)(300MHz、CDCl3)において、アクリロイルオキシ基とアミノ基とのマイケル付加体生成を示す2.79ppm(brs)および2.39ppm(brs)のピークが観測された。ppmはparts per millionの略であり、brsはbroad singletの略である。この結果より、SQ-1-1は、アクリロイルオキシ基とアミノ基とが反応して形成された架橋構造を有していることが分かった。また、合成に使用したモノマーの使用量より、SQ-1-1がアクリロイルオキシ基を有するのは明らかである。
<ハードコート層形成用組成物1の調製>
上記で得られたポリオルガノシルセスキオキサン(SQ-1-1)を含有するMIBK溶液に、IRGACURE 127(ラジカル光重合開始剤、BASF社製)、メガファックF-554(レベリング剤、DIC(株)社製)、及びMIBKを添加し、各含有成分の濃度が下記表1に記載したものとなるように調整し、ハードコート層形成用組成物1を得た。
厚さ50μmのポリイミド基材S-1上に上記ハードコート層形成用組成物1をワイヤーバー#18を用いて、硬化後の膜厚が5μmとなるようにバー塗布した。塗布後、塗膜を120℃で5分間加熱した。次いで、高圧水銀灯ランプを1灯用いて、塗膜表面から18cmの高さから、積算照射量が600mJ/cm2となるよう紫外線を照射した。さらに140℃で3時間加熱し、塗膜を硬化させた。こうして、基材フィルム上にハードコート層を有するハードコートフィルム1を作製した。
ポリオルガノシルセスキオキサン(SQ-1-1)を含むMIBK溶液を他のポリオルガノシルセスキオキサンを含むMIBK溶液にそれぞれ変更した以外は同様にして、実施例2~9、比較例1~3のハードコート層形成用組成物2~9、1X~3X及びハードコートフィルム2~9、1X~3Xを得た。
得られたハードコートフィルムについて、下記の評価を実施した。
JIS(JISは、Japanese Industrial Standards(日本工業規格)である) K5400に従い鉛筆硬度評価を行った。各実施例及び比較例のハードコートフィルムを、温度25℃、相対湿度60%で2時間調湿した後、ハードコート層表面の異なる5箇所について、JIS S 6006に規定するH~9Hの試験用鉛筆を用いて4.9Nの荷重にて引っ掻いた。その後、目視で傷が認められる箇所が0~2箇所であった鉛筆の硬度のうち、最も硬度の高い鉛筆硬度を評価結果とし、下記A~Dの4段階で記載した。鉛筆硬度は、「H」の前に記載される数値が高いほど、硬度が高く好ましい。
A:5H以上
B:4H
C:3H
D:2H以下
各実施例及び比較例により製造されたハードコートフィルムの繰り返し折り曲げ耐性を評価するために、屈曲半径2.0mmの屈曲試験(bending test)をハードコート層を内側にして繰り返し、これによるクラック(crack)発生有無を確認し、その結果を下記A~Cの3段階で評価した。
より具体的には、製造した各実施例及び比較例のハードコートフィルムから幅15mm、長さ150mmの試料フィルムを切り出し、温度25℃、相対湿度65%の状態に1時間以上静置させた。その後、180°耐折度試験機((株)井元製作所製、IMC-0755型)を用いて、ハードコート層を内側にして繰り返し折り曲げ耐性の試験を行った。使用した試験機は、試料フィルムを屈曲半径2.0mm棒(円柱)の曲面に沿わせて曲げ角度180°で長手方向の中央部分で折り曲げた後、元に戻す(試料フィルムを広げる)という動作を1回の試験とし、この試験を繰り返し行うものである。
A:300000回以上でもクラックの発生なし
B:100000回以上、300000回未満の間でクラック発生
C:100000回未満でクラック発生
ラビングテスターを用いて、温度25℃、相対湿度60%の環境下で、評価対象(ハードコートフィルム)と接触するテスターの擦り先端部(1cm×1cm)にスチールウール(日本スチールウール製、No.0)を巻いて動かないようバンド固定し、各実施例及び比較例のハードコートフィルムのハードコート層表面を以下の条件で擦った。
移動距離(片道):13cm、
こすり速度:13cm/秒、
荷重:200g、先端部
接触面積:1cm×1cm。
試験後の各実施例および比較例のハードコートフィルムのハードコート層とは逆側の面に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、スチールウールと接触していた部分に傷が入ったときの擦り回数を計測し、以下の4段階で評価した。なお下記擦り回数は往復の回数である。
A:100回擦っても傷が付かない。
B:50回擦っても傷が付かないが、100回擦る間に傷が付く。
C:10回擦っても傷が付かないが、50回擦る間に傷が付く。
D:10回擦る間に傷が付く。
本発明によれば、硬度、耐擦傷性、及び繰り返し折り曲げ耐性の全てに優れるハードコートフィルムを形成することができるハードコート層形成用組成物、上記ハードコートフィルム、上記ハードコートフィルムの製造方法、及び上記ハードコートフィルムを備えた物品を提供することができる。
本出願は、2019年9月27日出願の日本特許出願(特願2019-177948)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
Claims (9)
- 重合性基(Q1)を有し、かつ、前記重合性基(Q1)と、前記重合性基(Q1)とは異なる、活性水素原子を含む置換基(Q2)とが反応して形成された架橋構造を有する、ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)を含有するハードコート層形成用組成物であって、
前記重合性基(Q1)がビニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、及びエポキシ基から選ばれる少なくとも1種であり、前記活性水素原子を含む置換基(Q2)がアミノ基、メルカプト基、水酸基、及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種である、ハードコート層形成用組成物。 - 重合性基(Q1)を有し、かつ、前記重合性基(Q1)と、前記重合性基(Q1)とは異なる、活性水素原子を含む置換基(Q2)とが反応して形成された架橋構造を有する、ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)を含有するハードコート層形成用組成物であって、
前記重合性基(Q1)と前記活性水素原子を含む置換基(Q2)の組合せが、以下の(X)又は(Y)のいずれかである、ハードコート層形成用組成物。
(X):前記重合性基(Q1)が(メタ)アクリロイルオキシ基及び(メタ)アクリロイルアミノ基から選ばれる少なくとも1種であり、前記活性水素原子を含む置換基(Q2)がアミノ基及びメルカプト基から選ばれる少なくとも1種である。
(Y):前記重合性基(Q1)がエポキシ基であり、前記活性水素原子を含む置換基(Q2)が水酸基、カルボキシ基、及びアミノ基から選ばれる少なくとも1種である。 - 前記ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)が、前記重合性基(Q1)を有する加水分解性シラン化合物と、前記活性水素原子を含む置換基(Q2)を有する加水分解性シラン化合物とを共加水分解縮合してなり、
前記活性水素原子を含む置換基(Q2)を有する加水分解性シラン化合物の含有量が、共加水分解縮合する全ての加水分解性シラン化合物中、0.1~10モル%である、請求項1又は2に記載のハードコート層形成用組成物。 - 前記重合性基(Q1)が(メタ)アクリロイルオキシ基及び(メタ)アクリロイルアミノ基から選ばれる少なくとも1種であり、前記活性水素原子を含む置換基(Q2)がアミノ基である、請求項1~3のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物。
- 前記ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)の重量平均分子量が5000以上200000以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物。
- 基材と、請求項1~5のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物から形成されたハードコート層と、を含むハードコートフィルム。
- 基材とハードコート層とを含むハードコートフィルムの製造方法であって、
(I)前記基材上に、請求項1~5のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物を塗布して、ハードコート層塗膜を形成する工程、及び、
(II)前記ハードコート層塗膜を硬化することにより前記ハードコート層を形成する工程、を含むハードコートフィルムの製造方法。 - 請求項6に記載のハードコートフィルムを備えた物品。
- 前記ハードコートフィルムを表面保護フィルムとして備えた請求項8に記載の物品。
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